JP2011026882A - アンカー構造、支圧拘束具、アンカー構造の施工方法 - Google Patents

アンカー構造、支圧拘束具、アンカー構造の施工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 アンカー長をなるべく短く抑えつつ、大きな引抜耐力を発揮できるアンカー構造を提供する。
【解決手段】アンカー造成部は、土留め用の張線S1,S2を地盤10内に定着させるためのものであり、支圧拘束具1を用いて構築される。支圧拘束具1は、注入ロッド9により注入されたグラウトを吐出する吐出口4Aを備えた拘束具本体2と、拘束具本体2に拘束された袋材Fとを備えている。支圧拘束具1は、地盤10内に配置されており、張線掛部材52に張線S1,S2を掛け止められている。アンカー造成部は、支圧拘束具1の吐出口4Aから吐出されたグラウトを袋材Fに充填されて、地盤10内に支圧拘束具1を配置するために形成された削孔13の内径よりも大きな外径まで拡径し、充填されたグラウトの固化体と共に拘束具本体2及び張線S1,S2と一体化されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、土留め用の張材を地盤内に定着させるアンカー構造並びにその施工方法、及びアンカー構造の構築に用いる支圧拘束具に関する。
軟弱地盤等では、掘削した斜面等の崩壊防止のために、地盤中に構築したアンカー造成部により張材としての張線を地盤内に定着させ、この張線で土留壁を支持することが行われている。アンカー造成部は、地盤に形成した削孔の最深部に土留め用の張線を掛け止めた耐荷体を設置した後、削孔内にセメントミルク等の固化材を加圧注入することで構築される。
下記の特許文献1では、ケーシングパイプで地盤を掘削して削孔を形成し、収縮状態のアンカー体(耐荷体)をテンドン及び供給ホースと共にケーシングパイプ内に挿入して、ケーシングパイプの先端部に設置する。次いで、ケーシングパイプを引き抜いてアンカー体内に流動体を供給し、膨張状態とすることによりアンカー構造が構築されている。
特開2002−47651号公報
しかしながら、上記従来のアンカー造成部では、十分な引抜耐力を得ることができなかった。
本発明の目的は斯かる課題に鑑みてなされたもので、アンカー長を短く抑えつつ大きな引抜耐力を発揮できるアンカー構造,支圧拘束具,アンカー構造の施工方法を提供することである。
このような目的を達成するために、本発明のアンカー構造は、土留め用の張材を地盤内に定着させるアンカー構造であって、注入ロッドにより注入された固化材を吐出する吐出口を備えて前記地盤内に配置され、前記張材を掛け止められた拘束具本体と、前記拘束具本体に拘束されて前記吐出口から吐出された固化材を充填され、前記拘束具本体を前記地盤内に配置するために形成された削孔の内径よりも大きな外径まで拡径し、充填された固化材の固化体と共に前記拘束具本体及び前記張材と一体化された袋材とを備えていることを特徴とする。
また、本発明は、前記袋材から延びた前記張材が埋設されて前記地盤内に配置され、前記削孔の内径よりも大きな外径まで拡径した固化材の固化体を備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記拘束具本体の外周面から突出して前記袋材に充填された固化材に埋設される支圧部材を備えることを特徴とする。
また、本発明の支圧拘束具は、土留め用の張材を地盤に定着させるアンカー構造を前記地盤内に構築するための支圧拘束具であって、固化材を注入するための注入ロッドを着脱自在に構成されて、前記注入ロッドにより注入された固化材を吐出する吐出口を備えた拘束具本体と、前記拘束具本体の外周面から突出した支圧部材と、前記拘束具本体及び前記支圧部材を覆うようにして前記拘束具本体に拘束され、前記吐出口から吐出された固化材を充填されて拡径する袋材とを備えることを特徴とする。
また、本発明のアンカー構造の施工方法は、土留め用の張材を地盤内に定着させるアンカー構造の施工方法であって、固化材注入用の注入ロッドが装着されて前記張材を掛け止められた支圧拘束具を、前記地盤に開口した削孔内に挿入する支圧拘束具挿入工程と、前記支圧拘束具挿入工程で前記削孔内に挿入された前記支圧拘束具が備える袋材に、前記注入ロッドで固化材を注入し、前記袋材を前記削孔の内径よりも大きな外径まで拡径させる袋材拡径工程と、袋材拡径工程で固化材を注入した前記注入ロッドを、前記支圧拘束具から離脱させる注入ロッド離脱工程と、前記注入ロッド離脱工程で前記支圧拘束具から離脱させた前記注入ロッドから前記削孔内に固化材を注入し、前記削孔の内径よりも大きな外径を有した固化材の固化体を形成する固化体形成工程を備えることを特徴とする。
本発明によれば、アンカー長をなるべく短く抑えつつ、大きな引抜耐力を発揮できるアンカー構造を提供することが出来る。
本発明の一実施形態の支圧拘束具を示す平面図である。 図1に示す支圧拘束具から袋材を取り除いた状態を示す図であり、(a)は平面図,(b)は右側面図,(c)は正面図である。 図1に示す支圧拘束具を示す図であり、(a)は図2のA−A線,(b)はB−B線,C−C線,D−D線での断面図である。 支圧拘束具の拘束具本体を構成するプレートを示す図であり、(a)は連結プレート,(b)は袋止プレート,(c)は係止プレート及び支圧プレートを示す図である。 支圧拘束具の先端袋止部材3を構成するプレートを示す図であり、(a)は袋止プレート,(b)は係止プレート,(c)は先端プレートを示す図である。 支圧拘束具を用いてアンカー造成部を構築するアンカー工法の処理手順を示すフローチャートである。 図6に示す各処理の内容を模式的に示す第1の図である。 図6に示す各処理の内容を模式的に示す第2の図である。 支圧拘束具を構成する袋材の変形例を示す右側面図であり、(a)は第1の変形例,(b)は第2の変形例を示している。 支圧拘束具の変形例を示す右側面図である。 (a)は図10の支圧拘束具が備える支圧プレートを示す正面図,(b)は拘束具を示す断面図である。 引抜き試験を実施するアンカー造成部の構造の概略を示す第1の図である。 引抜き試験を実施するアンカー造成部の構造の概略を示す第2の図である。 アンカー造成部を構築された地盤の深度と地盤の強度との関係を示す図である。 アンカー造成部の仕様を示す図である。 引抜き試験での引抜荷重とアンカー造成部の変位量との関係を示すグラフである。 引抜き試験での極限引抜荷重とグラウト体の全長との関係を極限引抜力の試算値と比較して示すグラフである。
以下、図面を参照して、本発明の最良の形態を説明する。
図1に示すように、支圧拘束具1は、地盤に形成された削孔内に固化材としてのグラウトで耐荷体14を形成するためのものであり、拘束具本体2に連結部材8で先端袋止部材3を固定すると共に、拘束具本体2の外周を覆うようにして拘束具本体2及び先端袋止部材3に袋材Fを取り付けて構成されている。拘束具本体2は、中央管材4の前端部に連結部5を、後端部に袋止部6をそれぞれ備え、連結部5と袋止部6との間に位置する中央管材4の長さ方向の中央部には、一対の支圧部7を中央管材4の長さ方向に並べて備えている。
図2,図3に示すように、中央管材4は、円筒状の鋼管から構成されており、前端部には係止ピンPが螺着される一対のネジ孔41が設けられている。両ネジ孔41は、中央管材4の軸心を挟んで向き合って配置されており、それぞれ中央管材4の周壁を貫通している。中央管材4の前端部には、グラウト注入用の注入ロッド9が取り付けられる。注入ロッド9の先端部には、注入ロッド9の先端からL字状に延びた一対の切欠部91が設けられている。注入ロッド9は、中央管材4の後端部を先端部に挿入され、中央管材4のネジ孔41に螺着された一対の係止ピンPが切欠部91内に係止することで、中央管材4に取り付けられる。
連結部5は、3枚の連結プレート51を重ね合わせて隣り合う連結プレート51同士を固着し、前端側の連結プレート51の前面に一対の張線掛部材52を溶接等で固着して一体化することで構成されており、中央管材4の外周面に溶接等で固着されている。連結部5の外周面には、連結部5の長さ方向に沿って延びる4本の張線収容溝5aが、連結部5の周方向に沿って並んで設けられている。張線収容溝5aには、支圧拘束具1で形成された耐荷体14を壁材に支持するための張線(張材)S1,S2が収容される。また、隣り合う張線収容溝5aの間に位置する連結部5の外周面には、連結部5の長さ方向に沿って延びる4本の連結凹溝5bが、連結部5の周方向に沿って等間隔で並んで設けられている。連結凹溝5bには、拘束具本体2に先端袋止部材3を固定するための連結部材8が挿通される。
図4(a)に示すように、連結プレート51は、張線収容溝5aを構成する4つの収容凹部51aと連結凹溝5bを構成する4つの連結凹部51bとを備えた円環状の平板体から構成されており、中央部に備える嵌合孔51cを中央管材4に嵌合させて中央管材4に固着される。図2及び図3に示すように、張線掛部材52は、円弧状の前縁部を備えた略矩形の平板体から構成されており、上縁部から前縁部を通って下縁部にまで延びた張線収容溝52aが上下及び前の端面に設けられている。張線収容溝52aには、上述した張線S1,S2が収容が収容される。張線S1,S2は、張線収容溝52aに収容されて張線掛部材52に掛け止められる。張線掛部材52は、後端面を連結プレート51の前面に後端面を当接させて、連結プレート51に固着されている。
図2に示すように、袋止部6は、5枚の袋止プレート61を一対の係止プレート62で挟み込んで重ね合わせ、隣り合う袋止プレート61又は係止プレート62同士を溶接等で固着して一体化することで構成されており、中央管材4の外周面に溶接等で固着されている。袋止部6の外周面には、袋止部6の長さ方向に沿って延びる4本の張線収容溝6aが、袋止部6の周方向に沿って並んで設けられている。張線収容溝6aには、上述した張線S1,S2が収容される。袋止部6は、連結部5の張線収容溝5aと張線収容溝6aとが中央管材4の軸心に沿って並ぶように配置されて、中央管材4の外周面に固着されている。
図4(b)に示すように、袋止プレート61は、張線収容溝6aを構成する4つの収容凹部61aを備えた円環状の平板体から構成されており、中央部に備える嵌合孔61cに中央管材4を嵌合させて中央管材4に固着される。図4(c)に示すように、係止プレート62は、張線収容溝6aを構成する4つの収容凹部62aを備えて袋止プレート61よりも大きな外径を有した円環状の平板体から構成されており、中央部に備える嵌合孔62cに中央管材4を嵌合させて中央管材4に固着される。
図2に示すように、各支圧部7は、2枚の支圧プレート71を重ね合わせて溶接等で固着して一体化することで構成されている。支圧部7の外周面には、支圧部7の長さ方向に沿って延びる4本の張線収容溝7aが、支圧部7の周方向に沿って並んで設けられている。図4(c)に示すように、支圧プレート71は、張線収容溝7aを構成する4つの収容凹部71aを備えた円環状の平板体から構成されており、中央部に備える嵌合孔71cに中央管材4を嵌合させて中央管材4に固着される。支圧部7は、連結部5の張線収容溝5aと張線収容溝7aとが中央管材4の軸心に沿って並ぶように配置されて、中央管材4の外周面に固着されている。
図2に示すように、先端袋止部材3は、5枚の袋止プレート31を一対の係止プレート32で挟み込んで重ね合わせ、隣り合う袋止プレート31又は係止プレート32同士を溶接等で固着して一体化して構成された先端袋止部30と、先端袋止部30の前側の係止プレート32の前面に溶接等で固着された先端プレート33とを備えて構成されている。先端袋止部30の外周面には、先端袋止部30の長さ方向に沿って延びる4本の連結溝30aが、先端袋止部30の周方向に沿って並んで設けられている。連結溝30aには、拘束具本体2に先端袋止部材3を固定するための連結部材8が挿通される。
図5(a)に示すように、先端袋止部30を構成する袋止プレート31は、連結溝30aを構成する4つの連結凹部31aを備えた円板状の平板体から構成されている。図5(b)に示すように、係止プレート32は、連結溝30aを構成する4つの連結凹部32aを備えて、袋止プレート31よりも大きな外径を有した円板状の平板体から構成されている。図5(c)に示すように、先端プレート33は、円弧状の前縁部を備えた略矩形の平板体から構成された第1プレート33aの両主面に、第1プレート33aを前後方向に延びる軸心を境に2分した概略形状の第2プレート33bを溶接等で固着して構成されており、後端面を係止プレート32の前面に溶接等で固着されている。
図2に示すように、連結部材8は、前端部を先端袋止部材3の連結溝30aに挿通されて、前端部に螺着された一対のナット8aが先端袋止部30を挟み込むことで先端袋止部材3に固定されている。また、連結部材8は、後端部を袋止部6の張線収容溝6aに挿通されて、後端部に螺着された一対のナット8bで袋止部6を挟み込むことで拘束具本体2に固定されている。
図1に示すように、拘束具本体2及び先端袋止部材3に取り付けられる袋材Fは、ポリエステルから形成されて円筒状を呈しており、前端開口部に先端袋止部材3を、後端開口部に袋止部6をそれぞれ挿通され、両開口部をの紐状の部材等からなる拘束具(不図示)で先端袋止部材3,袋止部6に拘束されることで、拘束具本体2の外周を覆うようにして拘束具本体2及び先端袋止部材3に取り付けられる。
支圧拘束具1は、注入ロッド9から拘束具本体2の中央管材4にグラウトを注入されると、注入されたグラウトを図1に矢印で示すように中央管材4の先端吐出口4Aから袋材F内に吐出してグラウチングする。袋材Fは、グラウトをグラウチングされると前後の端部から中央部にかけて外径を徐々に大きくさせる筒状に拡径する。袋材Fに充填されたグラウトが硬化して、袋材F内にグラウトの固化体が生成されると、拘束具本体2,先端袋止部材3,及び袋材Fは、張線掛部材52に掛け止められた張線S1,S2と共に固化体と一体化される。張線S1,S2からの荷重は、拘束具本体2が備える連結部5及び支圧部7により、図1に一点鎖線の矢印で示すように、効率良く袋材F内の固化体に伝達される。
次に、支圧拘束具1を用いてアンカー造成部を構築するアンカー工法について説明する。図6は、支圧拘束具1を用いてアンカー造成部を構築するアンカー工法の処理手順を示すフローチャートである。図7,8は、アンカー工法の各処理の内容を模式的に示す図である。
このアンカー工法では、図7(a)に示すように、削孔機11で地盤10に削孔13を形成しながら削孔13内にケーシングパイプ12を挿入する(図6,S1)。耐荷体14を形成する深さまで削孔13が形成されると、図7(b)に示すように、注入ロッド9を部組みされた支圧拘束具1をケーシングパイプ12内に挿入する(S2)。支圧拘束具1が削孔13の最深部まで挿入されたのを確認してから、図7(c)に示すように支圧拘束具1の後端部までがケーシングパイプ12から削孔13内に露出するように、ケーシングパイプ12を削孔13から引き抜く(S3)。
その後、注入ロッド9から支圧拘束具1にグラウトを充填すると(S4)、支圧拘束具1の中央管材4が備える先端吐出口4Aからグラウトが吐出されて袋材F内にグラウチングされる。グラウトをグラウチングされた袋材Fは、図7(d)に示すように、削孔13の内周壁を外方に押し拡げて拡径する。
袋材Fを拡径させるのに十分な量のグラウトをグラウチングした後、注入ロッド9を周方向に回転させると共に引き抜くことで、注入ロッド9を支圧拘束具1から離脱させる(S5)。次に、図8(a)に示すように、支圧拘束具1から離脱した注入ロッド9をグラウト体(グラウトの固化体)15を形成する位置まで引き上げると共に、注入ロッド9の先端がケーシングパイプ12から削孔13内に露出するまで、ケーシングパイプ12を削孔13から引き抜く(S6)。
その後、注入ロッド9から支圧拘束具1にグラウトを注入し、削孔13内にグラウチングすると、グラウチングされたグラウトが、図8(b)に示すように、削孔13の内周壁を外方に押し広げて削孔13内に球根状に溜まりグラウト体15が形成される(S7)。なお、ケーシングパイプ12内には、注入ロッド9から吐出されたグラウトがケーシングパイプ12内を逆流するのを防止するための逆流防止部材が、注入ロッド9と共に挿入されている。
このS6,S7の処理を、削孔13内に形成されるグラウト体15の個数分だけ繰り返すことで、図8(c)に示すように、S6,S7の処理回数分のグラウト体15と1つの耐荷体14とが削孔13内に形成される。図8(c)では、S6,S7の処理を6回繰り返すことで、合計6つのグラウト体15が削孔13内に形成されている。
必要な数量のグラウト体15と耐荷体14とを削孔13内に形成した後、ケーシングパイプ12を先端まで削孔13から抜き出すと共に、ケーシングパイプ12内から注入ロッド9を抜き取り(S8)、図8(d)に示すように、削孔13内に残された張線S1,S2を緊張し、端部を削孔13の入口の壁材16に固定すると(S9)、張線S1,S2が生ずる張力によって支圧拘束具1が支持される。これにより、耐荷体14とグラウト体15とを張線S1,S2で壁材16に支持して構成されるアンカー造成部が地盤10中に構築される。
本実施形態によれば、削孔13の内径よりも大きな外径に袋材Fが拡径するまで袋材F内にグラウトを注入して固化させて耐荷体14を形成することで、アンカー造成部の長さ(アンカー長)を短く抑えつつ大きな引抜耐力を得ることができる。この結果、軟弱地盤でも堅固なアンカー造成部を構築することが可能となる。
また、袋材F内にグラウトを注入して耐荷体14を形成することで、削孔13から地盤10内にグラウトが漏れ出したり、耐荷体14の形状や大きさにばらつきが生じて、所期の引抜耐力を得られないといったことを防止することができる。
また、削孔13内にグラウトを直接注入して形成されたグラウト体15と地盤10の摩擦抵抗力が、耐荷体14(袋材F)と地盤10の摩擦抵抗力に比べてはるかに大きいことから、耐荷体14単体でアンカー造成部を構築する場合に比べて、より大きな引抜耐力を得ることができる。しかも、圧縮力によって耐荷体14からグラウト体15へ荷重が伝達されるため、グラウト体15に引張り亀裂が生じにくく、グラウト体15単体でアンカー造成部を構築する場合に比べて、力学的に安定した構造のアンカー造成部を提供することができる。
また、拘束具本体2の備える連結部5及び支圧部材7が袋材F内で固化材と一体化されることで、拘束具本体2と固化材との付着強度を高めることができる。
上記実施形態では、連結部5が3枚の連結プレート51を重ね合わせて隣り合う連結プレート51同士を固着することで構成されていたが、連結プレート51の枚数は任意である。また、袋止部6を構成する袋止プレート61及び係止プレート62の枚数も、前側及び後側の両端に係止プレート62が位置するのであれば任意である。また、支圧部7を構成する支圧プレート71の枚数も任意である。また、先端袋止部材3を構成する袋止プレート31及び係止プレート32の枚数も、前側及び後側の両端に係止プレート32が位置するのであれば任意である。また、先端袋止部材3,連結部5,袋止部6,支圧部7がプレート31,32,51,61,62,71を重ね合わせて構成されているのではなく、1つの円筒体から先端袋止部材3,連結部5,袋止部6,支圧部7が構成されていてもよい。この場合、先端袋止部材3,袋止部6は前側及び後側の両端部が拡径された円筒体から構成することができる。また、拘束具本体2が備える支圧部7の数量も任意であり、2つには限定されない。
また、上記実施形態では、中央管材4のネジ孔41に螺着された係止ピンPに注入ロッド9の切欠部91を係脱させることで、中央管材4に対する注入ロッド9の着脱を行えるように構成されていたが、中央管材4に対する注入ロッド9の着脱方法は任意である。
また、上記実施形態では、袋材Fが前側から後側にかけてほぼ等しい径を有した円筒状を呈している場合について説明したが、図9(a)に示す袋材F1のように、後側から前側にかけて拡径して、前側に最大径部を備える形状を有していてもよい。このような形状の袋材Fを用いることで、耐荷体14による支圧効果を高めて、アンカー造成部を堅固な構造とすることが可能となる。また、図9(b)に示す袋材F2のように、前側及び後側から前後方向の中央部にかけて拡径した形状を有していてもよい。このような形状の袋材Fを用いても、耐荷体14による支圧効果を高めて、アンカー造成部を堅固な構造とすることが可能となる。
また、上記実施形態では、拘束具本体2の先端吐出口4Aから袋材F内にグラウトを吐出させてグラウチングをした場合について説明したが、図10に示す支圧拘束具1Aのように、拘束具本体2の周壁に設けられた吐出口21からグラウトを吐出させる構成としてもよい。図10は、支圧拘束具1Aを示す右側面図である。
図10に示すように、支圧拘束具1Aは、拘束具本体2Aの前端から後端にかけての外周面に、複数(図では9つ)の支圧プレート22を溶接等で固着し、前端の支圧プレート22に張線S1,S2を掛け止めるための張線掛部材23を溶接等で固着して構成されている。図示しないが、拘束具本体2Aの後側の端部には、拘束具本体2Aに着脱される注入ロッド9を係止するための係止手段が備えられている。
前側の2つの支圧プレート22の間に位置する拘束具本体2Aの外周面、及び、後側の2つの支圧プレート22の間に位置する拘束具本体2Aの外周面は、袋材Fが拘束具24(図11(b)参照)で拘束される袋材拘束部2A1となっている。袋材拘束部2A1の間に位置する拘束具本体2Aの外周面には、2つの吐出口21が開口している。吐出口21は、注入ロッド9から拘束具本体2A内に注入されたグラウトを袋材F内に吐出するためのものであり、拘束具本体2Aの周壁を貫通している。
図11(a)は支圧拘束具1Aが備える支圧プレート22を示す正面図,(b)は拘束具24を示す断面図である。
図11(a)に示すように、支圧プレート22は、円環状の平板体から構成されており、外周面には支圧プレート22の長さ方向に沿って延びる4本の張線収容溝22aが、支圧プレート22の周方向に沿って並んで設けられている。張線収容溝22aには、支圧拘束具1Aで形成された耐荷体14を壁材16に支持するための張線S1,S2が収容される。支圧プレート22は、中央部に備える嵌合孔22bに拘束具本体2Aを嵌合されて、拘束具本体2Aの外周面に溶接等で固着されている。
図10に示すように、張線掛部材23は、半球面状の前端面に、張線S1,S2を拘束するための2つの張線収容溝23aを備えており、拘束具本体2Aの前端に固着された支圧プレート22の前面に後面を当接させて溶接等で固着されている。
袋材Fを拘束具本体2Aに拘束するための拘束具24は、略U字の断面形状を有した一対の拘束体25を備えて構成されている。拘束体25は、両拘束体25が両縁部に備える接合部同士を重ね合わせるようにして、張線S1,S2と共に拘束具本体2Aを覆った袋材Fを挟み込んで拘束する。両拘束体25は、接合部の挿通孔251にボルト26を挿通すると共にボルト26の雄ネジ部にナット27を螺着することで、互いがネジ止めされる。
上記実施形態では、紐状の部材からなる拘束具を用いて先端袋止部材3及び連結部5に袋材Fを拘束した場合について説明したが、拘束具の構成は任意である。例えば、図10に示す支圧拘束具1Aの拘束具24のような拘束具を用いて先端袋止部材3及び連結部5に袋材Fを拘束してもよい。また、図10に示す支圧拘束具1Aでも上記実施形態の支圧拘束具1のように紐状の部材からなる拘束具を用いて拘束具本体2Aに袋材Fを拘束してもよい。
次に、支圧拘束具1を用いたアンカー工法で構築されたアンカー造成部の引抜き試験について説明する。図12,図13は、引抜き試験を実施するアンカー造成部の構造の概略を示す図である。図14は、アンカー造成部を構築された地盤の深度と地盤の強さとの関係を示す図である。図15は、アンカー造成部の仕様を示す図である。
引抜き試験は、土工ピットに形成された地盤10でCASE1〜CASE4の4ケース(図12参照)、土工ピット外の原地盤10でCASE5(図13参照)の合計5ケースを、それぞれアンカー打設角度又はアンカー長を変えて実施した。
図12(a)に示すように、CASE1では削孔長L1の削孔13内に耐荷体長L2の耐荷体14のみを鉛直打設し、CASE2では耐荷体長L2の耐荷体14と2つのグラウト体15とを鉛直打設した(図12(b)参照)。同様に、CASE3では耐荷体14と3つのグラウト体15とを鉛直打設し(図12(c)参照)、CASE4では耐荷体14と6つのグラウト体15とを打設角度θで斜め打設した(図12(a)参照)。また、図13に示すように、CASE5では耐荷体14と6つのグラウト体15とを鉛直打設した。図14に示すように、何れのケースもN値10程度の軟弱な地盤10で実施されている。
各ケースでの打設角度θ,ケーシング引き上げ長,削孔長L1,耐荷体長L2,グラウト体及びCPG注入材の注入量に関する仕様は、図15に示すように定められている。ケーシング引き上げ長の欄には、耐荷体14を打設する際に削孔13からケーシングパイプ12を引き抜く長さが定められている。耐荷体長L2の欄には、耐荷体14の前後方向(打設方向)の長さが定められている。グラウト体の欄には、打設した全てのグラウト体15の全長を表すグラウト体長L3の他に、グラウト体15間のピッチ,グラウト体15の個数が定められている。グラウト体15間のピッチは、グラウト体15の打設時におけるケーシングパイプ12の引き抜き長さで定められている。CPG注入材の注入量の欄には、耐荷体14の打設時,グラウト体15の打設時におけるCPG注入材の注入量がそれぞれ定められている。なお、何れのケースでも、支圧拘束具1の袋材Fとしてφ500mm×L750mmの円筒状を呈したポリエステル製のものが用いられている。
このような条件で耐荷体14及びグラウト体15を打設した後に5〜7日の養生をしてアンカー造成部を構築し、構築した各ケースのアンカー造成部について引抜き試験を実施した。引抜き試験では、載荷荷重を120kNから120kNずつ増大させて繰り返し載荷する地盤工学会基準に準じた多サイクル載荷を実施した。各サイクルでは、初期荷重60kNを載荷した後に荷重120kNを載荷し、その後最大荷重まで引抜荷重を120kNずつ増大させ、次のサイクルに移行するようにした。最大荷重の載荷に至るまでの各載荷の保持時間は1分,最大荷重の保持時間は5分とした。
図16は、引抜き試験での引抜荷重とアンカー造成部の変位量との関係を示すグラフである。
図16(a)に示すように、耐荷体14単体からなるCASE1のアンカー造成部に比べて、耐荷体14にグラウト体15を組み合わせたCASE2,3ではアンカー造成部の引抜強度が増大していることが伺える。また、CASE3はCASE2に対してグラウト体15の数量が1つ多いにすぎず、グラウト体長L3が0.33mしか変わらないが、CASE2に対して引抜強度が大きく増加していることが伺える。
CASE4では、引抜試験時に変位計が頻繁に外れたため、第5サイクル以降の結果を図16(b)に示しているが、600kNまでの載荷ではほぼ弾性挙動を示しており、アンカー造成部で引き抜けが生じていないことが伺える。CASE5では、引抜荷重780kNで張線S1,S2が破断するまでアンカー造成部が弾性挙動を示していることから、地盤10とアンカー造成部との間で十分な付着強度が発揮され、耐荷体14も適切に機能していると評価できる。
これらの実験結果から、耐荷体14単体よりもグラウト体15を組み合わせることで、また、より多くのグラウト体15を組み合わせてグラウト体長L3を長くすることが、アンカー造成部の引抜強度を高める上で好ましいことが確認できる。特に、少なくとも6つのグラウト体15を組み合わせて構築されて約2.0mのグラウト体長L3を有したアンカー造成部によれば、山留壁のアンカーとして標準的に要求されると考えられる極限引抜力600kNを、N値10程度の地盤でも満足させられることが確認できる。
図17は、引抜き試験での極限引抜荷重とグラウト体の全長との関係を、極限引抜力の試算値と比較して示すグラフである。図17では、各ケースでの実験結果をグラウト体長L3を横軸に、極限引抜荷重を縦軸にとって表している。図中の破線は、N値10の砂地盤10で使用可能と判断できる極限引抜力の試算値である(グラウンドアンカーの設計施工基準・同解説、地盤工学会、2000.3参照)。なお、試算値は、極限周面摩擦抵抗としてN値10の砂地盤で用いることができる最大値=0.14MN/mを採用して計算した。
図17に示すように、CASE1〜5の何れのケースでも、アンカー造成部で得られた極限引抜力が試算値をほぼ満足していることが伺える。土被りが2〜4mと小さな値であったにも関わらず、何れのケースでも実験結果が試算値をほぼ満足しているということは、耐荷体14によりアンカー造成部による付着強度が十分に得られていると考えられる。
このことから、グラウト体長L3が長いアンカー造成部の方が高い付着強度を得られるものの、耐荷体14単体やこれにグラウト体15を2つ又は3つ組み合わせて構築された全長の短いアンカー造成部でも、N値10程度の地盤で使用可能であることが伺える。従って、支圧拘束具1を用いて耐荷体14を構築することで、グラウト体長L3を短く抑えつつ、N値10程度の軟弱な地盤でも使用可能なアンカー造成部を構築できることが確認できた。
F,F1,F2 袋材
S1,S2 張線(張材)
1 支圧拘束具
2 拘束具本体
3 先端袋止部材
30 先端袋止部
30a 連結溝
31 袋止プレート
31a 連結凹部
32 係止プレート
32a 連結凹部
33 先端プレート
33a 第1プレート
33b 第2プレート
4 中央管材
41 ネジ孔
5 連結部
5a 張線収容溝
5b 連結凹溝
51 連結プレート
51a 収容凹部
51b 連結凹部
51c 嵌合孔
52 張線掛部材
6 袋止部
6a 張線収容溝
61 袋止プレート
61a 収容凹部
61c 嵌合孔
62 係止プレート
62a 収容凹部
62c 嵌合孔
7 支圧部(支圧部材)
7a 張線収容溝
71 支圧プレート
71a 収容凹部
71c 嵌合孔
8 連結部材
8a ナット
8b ナット
9 注入ロッド
91 切欠部
10 地盤
11 削孔機
12 ケーシングパイプ
13 削孔
14 耐荷体
15 グラウト体
16 壁材
1A 支圧拘束具
2A 拘束具本体
2A1 袋材拘束部
21 吐出口
22 支圧プレート
22a 張線収容溝
23 張線掛部材
23a 張線収容溝
24 拘束具
25 拘束体
251 挿通孔
26 ボルト
27 ナット

Claims (5)

  1. 土留め用の張材を地盤内に定着させるアンカー構造であって、
    注入ロッドにより注入された固化材を吐出する吐出口を備えて前記地盤内に配置され、前記張材を掛け止められた拘束具本体と、
    前記拘束具本体に拘束されて前記吐出口から吐出された固化材を充填され、前記拘束具本体を前記地盤内に配置するために形成された削孔の内径よりも大きな外径まで拡径し、充填された固化材の固化体と共に前記拘束具本体及び前記張材と一体化された袋材とを備えていることを特徴とするアンカー構造。
  2. 前記袋材から延びた前記張材が埋設されて前記地盤内に配置され、前記削孔の内径よりも大きな外径まで拡径した固化材の固化体を備えることを特徴とする請求項1に記載のアンカー構造。
  3. 前記拘束具本体の外周面から突出して前記袋材に充填された固化材に埋設される支圧部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンカー構造。
  4. 土留め用の張材を地盤に定着させるアンカー構造を前記地盤内に構築するための支圧拘束具であって、
    前記固化材を注入するための注入ロッドを着脱自在に構成されて、前記注入ロッドにより注入された固化材を吐出する吐出口を備えた拘束具本体と、
    前記拘束具本体の外周面から突出した支圧部材と、
    前記拘束具本体及び前記支圧部材を覆うようにして前記拘束具本体に拘束され、前記吐出口から吐出された固化材を充填されて拡径する袋材とを備えることを特徴とする支圧拘束具。
  5. 土留め用の張材を地盤内に定着させるアンカー構造の施工方法であって、
    固化材注入用の注入ロッドが装着されて前記張材を掛け止められた支圧拘束具を、前記地盤に開口した削孔内に挿入する支圧拘束具挿入工程と、
    前記支圧拘束具挿入工程で前記削孔内に挿入された前記支圧拘束具が備える袋材に、前記注入ロッドで固化材を注入し、前記袋材を前記削孔の内径よりも大きな外径まで拡径させる袋材拡径工程と、
    袋材拡径工程で固化材を注入した前記注入ロッドを、前記支圧拘束具から離脱させる注入ロッド離脱工程と、
    前記注入ロッド離脱工程で前記支圧拘束具から離脱させた前記注入ロッドから前記削孔内に固化材を注入し、前記削孔の内径よりも大きな外径を有した固化材の固化体を形成する固化体形成工程を備えることを特徴とするアンカー構造の施工方法。
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