JP2011026204A - タバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患の予防及び/又は治療用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】タバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防及び/又は治療用組成物の提供。
【解決手段】オロット酸とその誘導体であるオロチジル酸及びウリジン一リン酸(UMP)、並びにそれらの無機塩や有機塩よりなる群から選択される1又は2以上の物質を有効成分として含有する組成物。さらに、グルタチオン、Nアセチルシステイン、コエンザイムQ10、αリポ酸、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、カロチノイド等の抗酸化剤を含有する組成物が好ましい。該組成物の投与方法として、経口投与や吸引投与を挙げることができる。
【選択図】なし
【解決手段】オロット酸とその誘導体であるオロチジル酸及びウリジン一リン酸(UMP)、並びにそれらの無機塩や有機塩よりなる群から選択される1又は2以上の物質を有効成分として含有する組成物。さらに、グルタチオン、Nアセチルシステイン、コエンザイムQ10、αリポ酸、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、カロチノイド等の抗酸化剤を含有する組成物が好ましい。該組成物の投与方法として、経口投与や吸引投与を挙げることができる。
【選択図】なし
Description
本発明は、オロット酸、オロチジル酸、ウリジン一リン酸、及びそれらの塩よりなる群から選択される1又は2以上の物質を有効成分として含有する、タバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患の予防及び/又は治療用組成物や、該組成物を対象に投与することを含むタバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患を予防及び/又は治療する方法や、医薬用組成物の調製における該組成物の使用などに関する。
タバコの喫煙は肺疾患を含む多くの疾患を引き起こすと考えられている。特に、慢性閉塞性肺疾患 (Chronic Obstructive Pulmonary Disease : COPD)は、気道の障害や機能不全によって、主として閉塞性の換気障害をきたし、そのために呼吸困難を主症状とする疾患群であるが、その原因の9割以上が喫煙によるものであると考えられており、喫煙量の増加に伴いCOPDによる死亡数は急激に増加している(非特許文献1)。また、COPDに高齢者患者が多いのは、加齢による肺機能低下に加え、長期の喫煙歴が原因であると考えられる(非特許文献2)。COPDは、2006年の全世界の死亡原因の第4位であり、2020年には第3位になると予想されている。わが国においても、急激な人口の増加と、高い喫煙率によりCOPDの患者数は急激に増加しており、2000年に行われた調査では、40歳以上の日本人の10.9%が閉塞性障害を有していると報告されている。
COPDは、完全に可逆性ではない気流制限に特徴づけられる病態である(非特許文献3)。具体的には、気道の障害や肺末梢における広範囲な不可逆的構造破壊によって慢性・持続性の閉塞性換気傷害を呈する疾患群であり、その基本病態は肺の気腫性病変、末梢気道病変ならびに慢性気管支炎といわれる(非特許文献4及び5)。これらの基本病態のなかで最も重要なものは肺の気腫性病変(本発明においては、肺気腫と同義を示す)、すなわち肺胞壁の破壊性変化を伴い、明らかな線維症のない、終末細気管支より遠位の気腔の異常な永続的腫大と定義されるものである(非特許文献6)。肺気腫の発生機序として、エラスチン分解酵素とインヒビターのバランス崩壊による分解酵素優位によるもの(非特許文献6及び7)やコラーゲンなどの肺細胞外マトリックス成分分解によるもの(非特許文献8)などが考察されているが、詳細はまだ解明されていない。
また、COPDは、慢性の咳や痰、体動時の息切れなど喘息と似た症状を呈するが、COPDは喘息と違って一度障害された肺機能が正常化することはない。さらに、喘息の炎症反応が好酸球主体であるのに対し、COPDではマクロファージ、好中球が主要な炎症細胞であることから、喘息とCOPDの炎症反応は異なるメカニズムによるものであると考えられている。実際、喘息においては有効な抗炎症治療薬であるステロイド薬が、COPDに対して明確な効果が確認できないことが大規模な臨床研究により報告されている(非特許文献9)。COPDの病態進行を改善/抑制する有効な薬物療法は確立されておらず、現在のところ「禁煙」により症状の進行を抑えることが治療の第一歩で、症状や重症度にあわせて抗コリン薬、β2刺激薬、テオフィリン製剤などの気管支拡張剤、呼吸リハビリテーション、酸素治療といった対症療法により対処しているのが実状である。COPDの病態進行を改善/抑制するための有効な治療薬の開発が急がれている。
オロット酸(オロト酸、ウラシル6-カルボン酸、オロチン酸、又はビタミンB13とも呼ばれる)は、ピリミジンヌクレオチド生合成系における主要中間物質であり、ジヒドロオロト酸からジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼによって誘導され、オロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(PRPP)によってオロチジル酸となる。オロチジル酸は、さらに速やかにウリジン一リン酸(UMP)に変換され、その後ウリジン三リン酸、シチジン三リン酸などのピリミジンヌクレオチドが合成される。国際公開02/100409号パンフレット(特許文献1)は、卵白アルブミン(OA)を感作させたアレルギー性喘息発作モデル動物にオロット酸を投与し、気管支肺胞洗浄液中の各細胞数を検討している。その結果、気管支肺胞洗浄液中の好酸球と好中球の細胞数はともにOA感作により顕著に増加すること、オロット酸の投与により好酸球は有意に減少したが、好中球数は逆に増加する傾向が見られることが明らかとなった。これらの結果は、オロット酸が好酸球による炎症をともなう喘息などのアレルギー性気道疾患に有効であることを示しているが、好中球が主要な炎症細胞であるCOPDへのオロット酸の効果は不明である。
また、アデノシン三リン酸(ATP)やウリジン三リン酸(UTP)等のヌクレオシド三リン酸が、P2Y2プリン作動性レセプターのアゴニストとして、気道の機能調節に関与することが知られている。例えば、国際公開第98/19685号パンフレット(特許文献2)は、UTPを気道に投与された動物では、肺粘膜繊毛のクリアランス機能が高められたことから、UTPが気管支炎に有効であることを開示している。また、ヒト肺上皮細胞を用いた実験により、P2Y2レセプターのアゴニストとしての作用は、ヌクレオシド三リン酸だけでなく、ADPやUDPのようなヌクレオシド二リン酸にも認められるが、アデノシン一リン酸(AMP)やウリジン一リン酸(UMP)では認められないことが明らかにされている(非特許文献10)。
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国際公開第02/100409号パンフレット
国際公開第98/19685号パンフレット
本発明の課題は、現在までに有効な治療薬・治療法が確立されていない、タバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患の予防及び/又は治療用組成物を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行い、タバコ煙曝露モルモットを用いた実験により、タバコ煙曝露による呼吸機能の低下がオロット酸投与により改善されることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、(1)オロット酸、オロチジル酸、ウリジン一リン酸、及びそれらの塩よりなる群から選択される1又は2以上の物質を有効成分として含有する、タバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患の予防及び/又は治療用組成物や、(2)オロット酸、オロチジル酸、ウリジン一リン酸、及びそれらの塩よりなる群から選択される1又は2以上の物質を、抗酸化剤とともに含有することを特徴とする上記(1)記載の組成物や、(3)抗酸化剤が、グルタチオン、Nアセチルシステイン、コエンザイムQ10、αリポ酸、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール及びカロチノイドよりなる群から選択される1又は2以上の物質であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の組成物に関する。
また、本発明は、(4)タバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患が肺疾患である上記(1)〜(3)いずれか記載の組成物や、(5)肺疾患が慢性閉塞性肺疾患である上記(4)記載の組成物や、(6)タバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患を予防及び/又は治療する方法であって、上記(1)〜(5)いずれか記載の組成物を対象に投与することを含む方法や、(7)タバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患の予防及び/又は治療するための医薬用組成物の調製における、上記(1)〜(5)いずれか記載の組成物の使用に関する。
本発明によると、タバコ煙曝露による呼吸機能の低下をオロット酸、オロチジル酸、ウリジン一リン酸、又はそれらの塩の投与により改善することができる。したがって、本発明のタバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患の予防及び/又は治療用組成物等は、COPDを含むタバコ煙の吸入により引き起こされる疾患に対し有効である。
本発明のタバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患の予防及び/又は治療用組成物は、オロット酸とその誘導体であるオロチジル酸及びウリジン一リン酸(UMP)、並びにそれらの塩よりなる群から選択される1又は2以上の物質を有効成分として含有するものであれば特に限定されるものではなく、本発明において治療とは、疾患の症状改善や症状軽減を意味する。本発明の組成物に用いるオロット酸は、オロト酸、ウラシル6-カルボン酸、オロチン酸、又はビタミンB13とも呼ばれる物質で、ジヒドロオロト酸からジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼによって誘導される物質であり、本発明の組成物に用いるオロチジル酸は、6‐カルボキシウリジル酸、6‐カルボキシウリジン5’‐リン酸とも呼ばれる物質で、オロト酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(PRPP)によってオロット酸より誘導される物質であり、本発明の組成物に用いるウリジン一リン酸は、ウリジル酸とも呼ばれ、ウラシル、五炭糖のリボース、1つのリン酸より構成されるヌクレオチド構造を持つ有機化合物の一種であり、オロチジル酸より誘導される物質である。
本発明の組成物に用いられるオロット酸、オロチジル酸、又はウリジン一リン酸(UMP)は、ピリミジン要求性やピリミジンアナログ耐性の変異を導入した様々な微生物を用いた発酵法により、培養液中に生成蓄積させることが可能であり(例えば、特許第2927882号公報)、上記培養物から、すでに公知にされている通常の精製手段、例えば、沈澱法、イオン交換樹脂や活性炭などによるクロマトグラフィー法などの分離精製法を用いることにより精製、採取することができる。
本発明の組成物に用いられる塩としては、生理学的に許容される塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩を挙げることができる。とりわけ生理学的に許容されるナトリウム塩やカリウム塩などのアルカリ金属塩や、カルシウム塩およびマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩や、亜鉛塩などの重金属塩や、アンモニウム塩や、アルギニンなどの塩基性アミノ酸塩や、トリエチルアミン塩等のアミン塩や、コリン塩や、カルニチン塩等を好例として挙げることができる。
本発明の組成物には、さらに抗酸化剤が含まれているものが好ましい。好ましい抗酸化剤には、グルタチオン、Nアセチルシステイン、コエンザイムQ10、αリポ酸、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、カロチノイドを例示することができ、カロチノイドの中でも、特にリコペンを好例として挙げることができる。抗酸化剤活性の増強は、脂質過酸化反応及び遊離基形成の阻害による抗酸化剤化合物の全身性利用率の増強を通して生じるものと思われる。本発明の好ましい組成物は、特別の個体群において特に必要とされる上記成分のうちのいずれの種類を含んでいてもよい。
本発明の組成物は、喫煙により主流煙を吸入することや、非喫煙者が副流煙を吸入することにより引き起こされる疾患の予防及び/又は治療に有効であり、上記疾患として具体的には、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞等)、肺疾患、がん等を例示することが出来るが、とりわけ慢性閉塞性肺疾患(COPD)を好例として挙げることができる。
本発明の組成物を医薬品として用いる場合は、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。また、これら治療薬や抗脳腫瘍剤は、経口的又は非経口的に投与することができる。すなわち通常用いられる投与形態、例えば粉末、顆粒、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液、霧状物等の剤型で経口的に投与することができ、あるいは、例えば溶液、乳剤、懸濁液、霧状物等の剤型にしたものをスプレー剤や圧ネブライザーの型で吸引投与することもできる。
本発明のタバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患を予防及び/又は治療する方法としては、オロット酸、オロチジル酸、ウリジン一リン酸、及びそれらの塩よりなる群から選択される1又は2以上の物質を有効成分として含有する、本発明の組成物を、対象に投与することを含む方法であれば特に制限されず、オロット酸、オロチジル酸、ウリジン一リン酸、及びそれらの塩よりなる群から選択される1又は2以上の物質を、グルタチオン、Nアセチルシステイン、コエンザイムQ10、αリポ酸、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、カロチノイド等の抗酸化剤とともに投与することが好ましい。また、上記タバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患としては、肺疾患を好適に例示することができ、より具体的には、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞等)、肺疾患、がん等を例示することが出来るが、とりわけ慢性閉塞性肺疾患(COPD)を好例として挙げることができる。投与方法としては特に制限されないが、経口投与、吸引投与を好適に例示することができる。オロット酸等の投与量は、症状、剤形、体重等により変わりうるが、経口投与の場合では、通常成人1日あたり、50mg〜10g、好ましくは500mg〜3gである。
本発明は、また、タバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患の予防及び/又は治療するための医薬用組成物の調製における、本発明の組成物の使用に関する。医薬用組成物の調製には、オロット酸、オロチジル酸、ウリジン一リン酸、又はそれらの塩に加えて、グルタチオン、Nアセチルシステイン、コエンザイムQ10、αリポ酸、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール、カロチノイド等の抗酸化剤の他、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
モデル動物としてモルモットを用い、オロット酸を投与、又は投与しない条件下で4週間タバコ煙の曝露を実施し、オロット酸の影響について検討した。なお、タバコ煙曝露モルモットは、ヒト慢性閉塞性肺疾患(COPD)病態に類似した病変を示すことが知られている。実験の詳細を以下に示す。
[実験動物]
実験動物として、気道系の試験に汎用されている系統であるHartley系雄モルモット(日本エスエルシー株式会社製)を用いた。4週齢の雄モルモット35匹を検疫馴化期間として11日間飼育した。飼育は、恒温(23〜25℃)、恒湿(51〜59%)、12時間照明(午前7時点灯、午後7時消灯)の条件下で行い、換気は10〜20回/時の頻度で行った。ケージは、アルミニウム製ケージ (W350 × H350 × D500mm)を用い、1ケージ当たりの収容数は、検疫馴化期間中は5匹、群分け後は1〜4匹とした。ケージは給器とともに2週間に1回交換した。検疫馴化期間中は毎日の一般状態の観察及び4回の体重測定を行い、全例、健康であると判断し実験に供した。なお、実験は受託試験会社(株式会社パナファーム・ラボラトリーズ)の動物倫理委員会の「実験動物に関する指針」に従って承認されたものである。
実験動物として、気道系の試験に汎用されている系統であるHartley系雄モルモット(日本エスエルシー株式会社製)を用いた。4週齢の雄モルモット35匹を検疫馴化期間として11日間飼育した。飼育は、恒温(23〜25℃)、恒湿(51〜59%)、12時間照明(午前7時点灯、午後7時消灯)の条件下で行い、換気は10〜20回/時の頻度で行った。ケージは、アルミニウム製ケージ (W350 × H350 × D500mm)を用い、1ケージ当たりの収容数は、検疫馴化期間中は5匹、群分け後は1〜4匹とした。ケージは給器とともに2週間に1回交換した。検疫馴化期間中は毎日の一般状態の観察及び4回の体重測定を行い、全例、健康であると判断し実験に供した。なお、実験は受託試験会社(株式会社パナファーム・ラボラトリーズ)の動物倫理委員会の「実験動物に関する指針」に従って承認されたものである。
タバコ煙の曝露開始日の被験物質投与前に群分けを実施した。曝露開始直前の体重と特異的(あるいは単に気道抵抗値)気道抵抗値(Specific airwayresistance : sRaw)を測定し、その値を基にブロック割付法で群分けした。なお、群分け前の特異的気道抵抗値は0.500〜1.000cmH2O×mL/(mL/sec)の個体を使用した。群分けにて除外となった動物については、除外になった当日に、ペントバルビタールナトリウムの過剰投与による安楽死処分とした。群分け後は、個体識別のために、色の異なる油性フェルトペンで背に番号を示すマーク(動物番号)を記入し、各ケージの前面に試験番号、試験項目、試験期間、動物種、群分け時週齢、動物番号、試験群、系統、性別及び試験責任者を記入したラベルを付けた。
[投与用オロット酸の調製]
モルモットへのオロット酸の投与は、経口投与、気管内投与、吸入投与を組み合わせて行った。経口投与用のオロット酸は、オロット酸マグネシウム塩(ロット#OY61083、協和醗酵株式会社製;以下、オロット酸Mgと記載する)を乳棒および乳鉢を用いて0.5%HPMC溶液(信越化学工業株式会社製)に懸濁し、200mg/mL(高濃度)及び50 mg/mL(低濃度)になるように調製した。調整は一週間ごとに行い、調製した懸濁液は1日に使用する量ごとにガラスバイアルへ分注し遮光下で冷所保存した。また、気管内投与用のオロット酸は、オロット酸Mgを2及び16mg/mLになるよう、日本薬局方注射用水にて溶解し調整した。調整は1週間ごとに行い、調製した懸濁液は1日に使用する量ごとにガラスバイアルへ分注し遮光下で冷所保存した。
モルモットへのオロット酸の投与は、経口投与、気管内投与、吸入投与を組み合わせて行った。経口投与用のオロット酸は、オロット酸マグネシウム塩(ロット#OY61083、協和醗酵株式会社製;以下、オロット酸Mgと記載する)を乳棒および乳鉢を用いて0.5%HPMC溶液(信越化学工業株式会社製)に懸濁し、200mg/mL(高濃度)及び50 mg/mL(低濃度)になるように調製した。調整は一週間ごとに行い、調製した懸濁液は1日に使用する量ごとにガラスバイアルへ分注し遮光下で冷所保存した。また、気管内投与用のオロット酸は、オロット酸Mgを2及び16mg/mLになるよう、日本薬局方注射用水にて溶解し調整した。調整は1週間ごとに行い、調製した懸濁液は1日に使用する量ごとにガラスバイアルへ分注し遮光下で冷所保存した。
[オロット酸の投与]
投与開始から8日目までは経口投与と気管内投与を組み合わせて行い、投与開始9日目から24日目までは経口投与と、気管内投与又は吸入投与を組み合わせて行った。これらの投与経路は被験物質の予想臨床投与経路であるため選択された。但し、気管内投与の動物は著しい体重の減少が認められたため、投与開始9日目より気管内投与の代替方法として圧ネブライザーによる吸入投与に変更した。経口投与はフィーディングチューブを用いて行った。気管内投与は気管内投与器具を用い無麻酔下で投与した。吸入投与は投与液を圧ネブライザー(パリ社製)に約10mL入れ、圧縮空気のボンベを接続し、1.5kgf/cm2にて送気してエアゾールを発生させ、吸入チャンバーに導いた。吸入時間は30分間とした。
投与開始から8日目までは経口投与と気管内投与を組み合わせて行い、投与開始9日目から24日目までは経口投与と、気管内投与又は吸入投与を組み合わせて行った。これらの投与経路は被験物質の予想臨床投与経路であるため選択された。但し、気管内投与の動物は著しい体重の減少が認められたため、投与開始9日目より気管内投与の代替方法として圧ネブライザーによる吸入投与に変更した。経口投与はフィーディングチューブを用いて行った。気管内投与は気管内投与器具を用い無麻酔下で投与した。吸入投与は投与液を圧ネブライザー(パリ社製)に約10mL入れ、圧縮空気のボンベを接続し、1.5kgf/cm2にて送気してエアゾールを発生させ、吸入チャンバーに導いた。吸入時間は30分間とした。
各投与法における投与量を以下に示す。
経口投与:500又は2000mg/kgを、タバコ煙曝露日は5mL/kg×2回、タバコ煙曝露を実施しない日は10mL/kg×1回を投与した。
気管内投与:150μL/匹を投与した。また、気管内投与の影響を検討するため,媒体−気管内投与群には150μL/匹の注射用水を投与した。
吸入投与:30分間行った。
経口投与:500又は2000mg/kgを、タバコ煙曝露日は5mL/kg×2回、タバコ煙曝露を実施しない日は10mL/kg×1回を投与した。
気管内投与:150μL/匹を投与した。また、気管内投与の影響を検討するため,媒体−気管内投与群には150μL/匹の注射用水を投与した。
吸入投与:30分間行った。
経口投与は、タバコの煙曝露の実施日には2回/日、タバコの煙曝露を実施しない日は1回/日行い、2回/日の場合は午前(11:00まで)と午後(16:00〜18:00)、1回/日の場合には朝に投与した。気管内投与はタバコの煙の曝露前に実施した。また,吸入投与はタバコの煙の曝露後に実施した。1回目の経口投与及び気管内投与はタバコ煙曝露の60〜120分前に実施した。
[タバコ煙曝露]
群分けしたモルモットへのタバコ煙曝露を具体的に示す。モルモットを曝露ホルダー(RMH-TUBES;Muenster社製)に入れ、曝露チャンバー(Flow-past type nose-only inhalation chamber;Muenster社製)に固定し、喫煙曝露装置(Hamburg II,Borgwaldt Technik)を用いてタバコ(ハイライト;日本たばこ産業株式会社製)の煙を吸入させた。タバコ煙曝露は、1日約60分間、3週目までは5日/週、4週間目は3日/週の頻度で実施した。また、オロット酸投与前のモルモットの体重を、一日一回、動物天秤を用いて測定した。
群分けしたモルモットへのタバコ煙曝露を具体的に示す。モルモットを曝露ホルダー(RMH-TUBES;Muenster社製)に入れ、曝露チャンバー(Flow-past type nose-only inhalation chamber;Muenster社製)に固定し、喫煙曝露装置(Hamburg II,Borgwaldt Technik)を用いてタバコ(ハイライト;日本たばこ産業株式会社製)の煙を吸入させた。タバコ煙曝露は、1日約60分間、3週目までは5日/週、4週間目は3日/週の頻度で実施した。また、オロット酸投与前のモルモットの体重を、一日一回、動物天秤を用いて測定した。
[モルモットの呼吸機能測定]
呼吸機能測定は、株式会社 M・I・P・Sのdouble flow plethysmograph法(総合呼吸機能解析システム Pulmos-I)を用い、モルモットの換気量やsRawを覚醒下で測定した。測定はタバコ煙曝露開始日から、13日(2週目)、20日(3週目)及び25日目(4週目)に行った。測定はオロット酸投与前に実施した。sRaw値は、各個体あたり100呼吸分のsRawを測定し、その平均値を測定値とした。また、以下に示す計算式により、タバコ煙曝露開始前からのsRaw値の変化量を算出した。
呼吸機能測定は、株式会社 M・I・P・Sのdouble flow plethysmograph法(総合呼吸機能解析システム Pulmos-I)を用い、モルモットの換気量やsRawを覚醒下で測定した。測定はタバコ煙曝露開始日から、13日(2週目)、20日(3週目)及び25日目(4週目)に行った。測定はオロット酸投与前に実施した。sRaw値は、各個体あたり100呼吸分のsRawを測定し、その平均値を測定値とした。また、以下に示す計算式により、タバコ煙曝露開始前からのsRaw値の変化量を算出した。
[数1]
各測定週のsRawの変化量=各測定日のsRaw値−タバコ煙曝露前のsRaw値
各測定週のsRawの変化量=各測定日のsRaw値−タバコ煙曝露前のsRaw値
図1に示すように、気管内投与の媒体対照群はタバコの煙の曝露開始10日目に4例すべて死亡した。オロット酸の気管内投与0.3及び2.4mg/kg群は、試験期間中に共に3例が死亡したが、各1例は実験終了時まで生存した。
また、経口投与の対照群においてもタバコの煙を曝露によって4例中3例が死亡したが、オロット酸の経口投与250及び1000mg/kg群では2及び1例が死亡したのみで、2および3例が実験終了時まで生存した。どちらの投与方法においても、オロット酸の投与量が多いほど生存率が高く、これらの結果から、オロット酸投与により、タバコ煙曝露した場合の死亡率が抑制されることが明らかとなった。さらに、表1に示すように、生存個体における一回換気量(TV)の測定値は、オロット酸投与により改善していく傾向が認められ、また、減少しつつあった体重も増加に転じていた。
また、経口投与の対照群においてもタバコの煙を曝露によって4例中3例が死亡したが、オロット酸の経口投与250及び1000mg/kg群では2及び1例が死亡したのみで、2および3例が実験終了時まで生存した。どちらの投与方法においても、オロット酸の投与量が多いほど生存率が高く、これらの結果から、オロット酸投与により、タバコ煙曝露した場合の死亡率が抑制されることが明らかとなった。さらに、表1に示すように、生存個体における一回換気量(TV)の測定値は、オロット酸投与により改善していく傾向が認められ、また、減少しつつあった体重も増加に転じていた。
上記実験(実施例1〜6)では、モルモットにタバコ煙曝露によるCOPD病態に類似したモルモットタバコ煙曝露モデル実験を定法に従って行ったが、経口投与の対照群では1例を残して死亡し、さらにオロット酸の気管内投与の媒体対照群では10日目までに4例すべてが死亡した。死亡率が高かった理由は不明であるが、使用したモルモットのロット等の影響も考えられる。気管内投与において煙害のダメージが大きかった理由としては、気管内への注射水投与をタバコ暴露前に実施した結果、気管や肺内の表面液量が増えた結果として、タバコ中の有害物質の組織表面液への溶解が進んだ結果とも推測された。そこで、次の実験では、異なるロットのモルモットを使用し、さらに、気管内投与をタバコ煙曝露後に実施するように計画を変更し、オロット酸の気管内投与による効果を検討した。
モルモットへのタバコ煙曝露は、実施例3のスケジュールと同様に1日約60分間、3週目までは5日/週、4週間目は3日/週の頻度で実施した。タバコ煙曝露後にオロット酸を気管内投与し、呼吸機能を測定した。その結果、一回換気量(TV)の測定値は、オロット酸投与により顕著に改善された(表2)。また、タバコ(タバコ煙曝露のみ)及びタバコ+注射水(タバコ煙曝露+水の気管内投与)グループでは、気道抵抗を示すsRaw値が3週目から4週目にかけて顕著に上昇したのに対し、タバコ+ORT(タバコ煙曝露+オロット酸の気管内投与)グループのsRaw値はほとんど変化が認められず、その値は無処置(タバコ煙曝露をしていない)グループの値と同等であった(図2)。また、気管内投与での媒体対照群(タバコ煙暴露+注射水)では試験期間中に2例が死亡したのに対して、オロット酸投与群では1例のみが死亡した。これらの結果は、タバコ煙による呼吸機能の低下が、オロット酸投与により改善されることを示している。
Claims (7)
- オロット酸、オロチジル酸、ウリジン一リン酸、及びそれらの塩よりなる群から選択される1又は2以上の物質を有効成分として含有する、タバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患の予防及び/又は治療用組成物。
- オロット酸、オロチジル酸、ウリジン一リン酸、及びそれらの塩よりなる群から選択される1又は2以上の物質を、抗酸化剤とともに含有することを特徴とする請求項1記載の組成物。
- 抗酸化剤が、グルタチオン、Nアセチルシステイン、コエンザイムQ10、αリポ酸、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノール及びカロチノイドよりなる群から選択される1又は2以上の物質であることを特徴とする請求項2記載の組成物。
- タバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患が肺疾患である請求項1〜3いずれか記載の組成物。
- 肺疾患が慢性閉塞性肺疾患である請求項4記載の組成物。
- タバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患を予防及び/又は治療する方法であって、請求項1〜5いずれか記載の組成物を対象に投与することを含む方法。
- タバコの煙を吸入することにより引き起こされる疾患の予防及び/又は治療するための医薬用組成物の調製における、請求項1〜5いずれか記載の組成物の使用。
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