JP2011020973A - 難治性の皮膚潰瘍治療用の医薬組成物、及び、皮膚潰瘍予防用化粧料 - Google Patents

難治性の皮膚潰瘍治療用の医薬組成物、及び、皮膚潰瘍予防用化粧料 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は難治性の皮膚潰瘍、特に褥瘡(とこずれ)および熱傷の治療に速やかに奏効する新規医薬品を提供することを課題とする。
【解決手段】 多機能性たんぱく質であるラクトフェリンを有効成分とする医薬組成物を褥瘡および熱傷の治療薬として開発した。
【効果】 皮膚の難治性潰瘍、特に褥瘡および熱傷に対してすぐれた治療効果を奏することをラットおよびヒトを用いた試験により立証した。
【選択図】 図5

Description

この発明は、難治性皮膚深部組織損傷(deep tissue injury)である褥瘡及び熱傷等を治療する医薬品及びそれらを予防する化粧料に関する。
本発明の課題は、難治性皮膚深部組織損傷の治療法を提供することである。一般に創傷は次のようにして修復されると考えられている。(第一期)まず傷口に血小板が凝集すると、血管が収縮して止血し、マクロファージは壊死組織を貪食して傷口を清掃する。(第2期)繊維芽細胞が分泌するコラーゲンを主要な構成成分とした肉芽組織が形成され、傷口の収縮が起こる。(第3期)肉芽組織が瘢痕組織へと分化し、それとともに上皮細胞が移動し創が安定し治癒に向かう。ちなみに創傷は、消毒した後に乾かして治すという認識が広く行き渡っている。しかし、実際には小さな擦り傷や切り傷の場合、乾かすよりも、まず傷口をよく水で洗った後、出てきた体液を乾燥させずに湿った状態に保つ方が治癒は早い。従来、広く使われた消毒剤は、有害で創傷の治癒を遅延させるので使われなくなった。
創傷治癒の第一段階は、受傷後約4,5日間の炎症反応期である。創傷部位に炎症が起こり浸出液で腫脹する。次に局所は毛細血管の拡張で発赤し、熱を発し局所の温度が上昇する。また、末梢神経が刺激され疼痛がおこる。 第二段階の増殖期は、肉芽組織を形成する時期で、治癒過程の初期には、マクロファージの放出するサイトカインにより繊維芽細胞が創傷局所に遊走・集積し、修復の主役である3型コラーゲンを産生する。局所に移動した繊維芽細胞は血小板凝集能が高い3型コラーゲンを産生蓄積し,やがて3型コラーゲンは太く密なコラーゲン線維である1型コラーゲンに置き換えられ、組織は安定し血管新生、毛細血管の発達が起こり創傷は治癒過程に向かう。
褥瘡は皮膚組織の消耗性壊死の一種で、血管が圧迫されて循環が完全あるいは不完全に停止して組織が圧迫壊死するためにおこる。衰弱したいわゆる“寝たきり老人”におこりやすいので、超高齢化社会を迎えるわが国にとって、寝たきり老人を介護するため、優れた褥瘡治療薬の開発は重要な課題となりつつある。特に在宅介護においては、治療者は必ずしも専門医でないため、安全、効果的かつ簡便な治用方法が必須である。寝たきり老人に起こる褥瘡は、骨の突出した部分に生じやすく、褥瘡またある種の皮膚壊瘍(熱傷壊瘍、糖尿病性壊瘍、下腿壊瘍)は物理的な要因による血液循環の不全に起因する部分が非常に大きいといわれている。現在の褥瘡治療法としては、主として、寝衣および寝床を褶壁のないようにすることであり、例えば空気入りまたは柔らかいベッドにすること、また円座を当て直接患部を圧迫しないこと、さらにはしばしば体位を変換させることが主要な予防法である。
現在褥瘡治療に用いられている薬剤は、
1)糜爛したときは、チンク油のような無刺激油の塗布、
2)抗炎症性作用を有する物質を含有する軟膏あるいはクリームの塗布、
3)最近では肉芽形成促進効果を有する塩化リゾチーム(lysozyme chloride)軟膏、カデックス軟膏0.9%(ヨウ素含有軟膏)、ユーパスタ、ゲーベンクリーム及びトコレチネート軟膏等が補助的に用いられているが、十分な治療効果を期待できない場合も多く存在するのが現状である。それどころか上記の外用剤のある種のものは、かえって創傷を悪化させると一部から批判されているのが現状である。
重症の熱傷も難治性皮膚深部組織損傷である。熱傷が重いか、軽いかは主として範囲と深さの程度によって決まる。深さについては重症度の順に1度、2度、3度に分類されている。1度は日焼けと同じでただ赤くなってヒリヒリ痛むが、放置しても自然に治癒するので医療機関による治療の対象にならない。水疱をつくる2度および3度の熱傷は治癒が遷延するので、生活の質(QOL)を高め速やかに治癒させることが治療上の課題である。同じ2度の熱傷でも深い2度と浅い2度とでは症状も治り方もかなり違う。浅い2度の場合は水疱に赤みがあって痛みが強いが、ほとんど痕を残さず治癒する。深い2度の場合は赤みが少なく、むしろやや白っぽく見え痛みも少ないのが普通である。水疱の下に死んだ皮膚の白っぽい痂皮が生成する。これがとれると下に皮膚が形成されてくるが、それまでにかなり日数がかかり、治った後にもかなり目立った後遺症を残す。
深い2度と3度の熱傷は、植皮が必要となる場合が多い。3度は皮膚が全部やられてしまうので、ごく狭い範囲の場合をのぞいて植皮が必須である。2度、3度の熱傷面積が、体表面積の15%以上あれば、重症で生命を脅かす危険があり、入院して積極的な治療を行う必要がある。小児や老人の場合は10%ぐらいでもショックになることがある。またもっと小範囲のものでも3度や2度の深い場合や、体の部位によっては入院加療の対象になる。
熱傷の後遺症として一番問題になるのは、治癒後の醜い瘢痕と、創痕のひきつれによる瘢痕拘縮である。熱傷のあとの醜い創痕に対しては、まずしばらく経過をみることが大切であり、積極的な治療法はない。2〜3年待ってそれでも瘢痕が目立つようならこの瘢痕を切り取って植皮をするか、範囲が狭ければ縫合する。しかし植皮の場合でも非常にうまくいったとしても、完全にもとの状態に回復するわけでは無いので、醜い瘢痕と引きつれが生じない治療法が求められている。
以上の説明から明らかなように、褥瘡および熱傷治療の現状は、その安全性、簡便性、そして効果と言う観点からは満足から程遠いといわざるを得ない。治療する上での問題点は、難治性皮膚深部組織損傷の修復が著しく遅いこと、QOLが低いこと及び、表皮を覆う角質層が消失するので、創傷部位は大気と直接接触することにより大きな酸化ストレスを受けることである。さらに角質層を失うので、創傷部位は大気と直接接触することにより過度に水分を喪失し、修復組織は病原菌感染の危険にさらされるようになる。したがって、QOLを高く保つ一方、創傷局所における酸化ストレスを抑制し、免疫能を賦活することができて、皮膚の修復を促進することができる薬物が望まれている。しかも、安全、簡便かつ効果的なことが求められている。
速やかに安全かつ簡便に難治性皮膚深部組織損傷を治癒させる方法の開発が課題である。有効物質として選んだラクトフェリンは、1939年シェーレンゼン等が牛乳から単離し、1986年、ベーカー等がX線回折法による構造(非特許文献1)を決定した多機能性の糖たんぱく質である。
本発明者らはラクトフェリンの強力な上皮修復作用(非特許文献2)、免疫賦活作用(非特許文献3)、鎮痛作用(非特許文献4)、酸化ストレスの防御作用(非特許文献5)および血管拡張作用(非特許文献6)に着目した。ラクトフェリンを皮膚に塗布すると、皮膚血流量が増大し皮膚温が上昇(特許文献2)することから、難治性の褥瘡、熱傷における血管循環不全の改善され、優れた褥瘡・皮膚潰瘍治療薬になり得ると考えられた。
[発明の効果〜1]
本発明の褥瘡及び熱傷等治療剤を用いると、これらの難治性皮膚深部組織損傷を速やかに治癒させることができる。
[発明の効果〜2]
本発明の治療剤は、鎮痛効果並びに免疫賦活効果を示すので患者は疼痛及び感染症から解放され、QOLを高く維持できる。また、外科的方法をとらないので患者に苦痛を与えない。安全、簡便かつ効果的なため、在宅医療でも充分対処可能である。
[発明の効果〜3]
特に、難治性皮膚深部組織損傷の患部が大きい場合、本発明の治療剤は、従来の外用剤を凌駕する治療効果を示すので、患者に精神的及び経済的な苦痛を与えずに治療できる。
[発明の効果〜4]
さらに、治療効果が必ず発現するので、患者は希望を持って治療を受けることができる。
[発明の効果〜5]
そして、本発明の治療剤は、副作用が皆無又は極めて小さい。
[発明の効果〜6]
国民医療費の観点からも、それを抑制できる意義は大きいと考えられる。
この発明の上述の目的、 その他の目的、特徴及び利点は、発明を実施するための形態
の説明から一層明らかとなろう。
[課題を解決するための手段]
本発明者等は、育児用調製粉乳並びにヨーグルトに添加され、健康食品の有効成分とし
て使用されるラクトフェリンが、驚くべきことに、難治性皮膚深部組織損傷を治癒せしめるという知見を初めて見出した。
本発明者らは、この知見に基づき、研究を鋭意推進した結果、本願発明の完成に到達した。本願発明は、ラクトフェリンを含有してなる皮膚疾患の治療用若しくは予防用医薬組成物、又は、化粧品に関する。
本出願に係る発明は、次の[請求項1]乃至[請求項8]に記載した事項により特定さ
れる。
[特許請求の範囲]
[請求項1]
多機能たんぱく質であるラクトフェリンを有効成分とする皮膚潰瘍治療用医薬組成物及び予防用化粧料。
[請求項2]
治療対象の皮膚潰瘍が褥瘡及び熱傷潰瘍である請求項1に記載の医薬組成物及び予防用化粧料。
[請求項3]
請求項1および2の治療薬が、全身投与用製剤又は局所投与用製剤であることを特徴とする褥瘡および熱傷治療用の医薬組成物。
本願発明におけるラクトフェリンは、特に制限されるものではないが、牛乳由来のラク
トフェリン、遺伝子工学的にラクトフェリン遺伝子を組替えた微生物がつくるラクトフェ
リン(非特許文献8)、トランスジェニック動物がつくるラクトフェリン(非特許文献9)等
を包含する。
また、投与経路は、静脈内、経口、皮下、DDS(drug delivery system、薬物送達シ
ステム)等の全身投与経路に加え、軟膏、クリーム、ローション、ガーゼ付き絆創膏(例
えば、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製「バンドエイド(登録商標)」等)、エマル
ジョン(乳液、懸濁液等)、フォーム、混合相又は両親媒性エマルジョン系(油/水−水
/油−混合相)のクリーム、リポソーム、ペースト又は粉末の剤形等の一般的な外用剤、
パッチ剤等による経皮投与、噴霧剤や粉末剤等による経鼻粘膜投与、座剤等による経直腸
投与等に適用することも可能である。
しかも、本発明のラクトフェリン製剤は、全身投与と外用とを問わず、副作用が皆無又
は軽微であることが期待されることが最大の特徴である。治療に際しては、入院はもちろん、頻繁な通院も必要がなく、安全、簡便かつ効果的であるため、医療費の大きな削減を期待できる。
ラクトフェリンは、乳汁、成熟好中球の顆粒及び各種の外分泌液に含まれる重量平均分
子量(Mw)約8万の糖たんぱく質である(非特許文献1)。
ラクトフェリンは、感染防御効果(非特許文献10)、抗ウイルス作用(非特許文献11)、抗腫瘍作用(非特許文献12)、鎮痛作用(非特許文献13)、抗炎症作用(非特許文献14)、自然免疫の賦活作用(非特許文献15)、骨粗鬆症の改善効果(非特許文献16)、鉄欠乏性貧血の改善効果(非特許文献17)等々、多彩な薬理作用を示すことが報告されている。
最近では、免疫賦活の鍵を握る抗原提示細胞である樹状細胞の成熟を促進し、抗原提示
能を活性化することが注目されている(非特許文献18)。しかし、ラクトフェリンが難治性皮膚深部組織損傷を速やかに修復する作用があることは全く知られていなかった。
本発明者等は、ラクトフェリンが呈する多彩な生理作用に関心を寄せ、多年に亘りその
用途について研究開発を行ってきた。
本発明者等によるラクトフェリンが呈する多彩な生理作用に関する研究成果の要約は以下のとおりである。
ラクトフェリンが哺乳動物の脂質代謝に及ぼす影響を検討し、ラクトフェリンがマウスの基礎代謝を促進すること(非特許文献18、特許文献1)、及び腸溶性ラクトフェリン錠剤を摂取したヒトでは基礎体温と食後1時間の体温を上昇させることにより体重減少と腹囲の縮小が起こることを証明した。この発見は事業化され、メタボリック症候群の治療・予防に貢献することが期待されている(非特許文献19)。ラクトフェリンは皮下脂肪よりメタボリック症候群の発症と密接な関係がある内臓脂肪を優先的に減少させるからである。
さらに、本発明者と共同研究者等は、ラクトフェリンの鎮痛作用と抗ストレス作用を見いだしている(非特許文献20、特許文献)。ラクトフェリンの精神作用はモルヒネ、コデインなどのオピオイド化合物と類似するが、ラクトフェリン自体はオピオイドの受容体に結合しない。ラクトフェリンは血液脳関門を越えて脳脊髄液に取り込まれ(非特許文献21)、脳神経のシナップスにおいて一酸化窒素の生合成を促進することにより内因性オピオイドの作用を増幅するためである (非特許文献22)。内因性オピオイドは別名、脳内麻薬といわれ、哺乳類が精神的及び肉体的なストレスを緩和するため、自らの脳内でつくりだすモルヒネ様作用物質である。この作用は、年間自殺者が3万人を超えるわが国のようなストレス社会では、精神へ及ぼすストレスの弊害を緩和するうえできわめて有用である。
一方、ラクトフェリンが呈する多彩な効能・効果の根底には、何らかの共通したメカニ
ズムが働いているはずである。慈恵会医科大学の坪田昭人等は、ヒトのウイルソン病に酷似した病態モデル、LECラットにラクトフェリンを摂取させメカニズムを解明した(非特許文献23)。銅イオンが胆管経由で排泄される経路が、LECラットでは遺伝的に欠損しているため、肝臓及び脳神経組織に銅イオンが蓄積し、ミトコンドリアが多量の酸素ラジカルを発生させる。
通常、ミトコンドリアは消費する酸素の0.4〜4%の活性酸素を発生させるが、グル
タチオンとNADPHの系と共役して活性酸素を水に還元するためほとんど障害を与えな
い。しかし、LECラットのようにたんぱく質とキレートしていない遊離銅イオンが肝臓に存在すると、活性酸素を瞬時に毒性が強い酸素ラジカルに変換する。
酸素ラジカルは非常に反応性が高いので、瞬間的に周囲のたんぱく質、脂質及び核酸を
酸化する。酸素ラジカルがDNAを酸化すると、遺伝形質を発現させる機能を喪失し、細胞はアポトーシス、ネクローシスにより死滅するか、あるいはがん化する。
哺乳類の細胞は酸素ラジカルにより酸化された核酸塩基を引き抜き、新しい塩基をはめ
込むDNA修復酵素を持っている。グアニンを例にとると、酸素ラジカルにより8-ヒドロキシデオキシグアニン(8OHdG)に酸化されると、修復酵素は8OHdGを切り出し、新しいデオキシグアノシンを嵌め込みDNAの機能を修復させる。
この修復酵素の遺伝子には、SNIPがあり、活性が高い遺伝子の保有者は、低い保有
者より肺がんの発症率が1/4低いことがわかっている。
LECラットのように多量の酸素ラジカルにさらされると、修復酵素のDNA発現を調節するプロモーター部位のDNA塩基が化学的な修飾を受け変異が起こることがわかっている。プロモーター部位は哺乳動物としては例外的に(5‘)シトシン−リン酸−グアニン(3’)、いわゆるCpGが結合した部分が多い。これをCpG islandと呼んでいる。哺乳動物は多量の酸素ラジカルにさらされると、プロモーター部位CpGのシトシンがメチル化されるのである。
OGG1のプロモーターにはCpGが25ペアー含まれているが、LECラットの肝臓では25個のシトシンすべてがメチル化されていた。こうなるとプロモーター部位に転写因子が結合できないため、修復酵素はほとんど発現しなくなる。ウイルソン病とその病態モデルのLECラットに肝臓がんが多発する一因は、CpG islandの目潰しにより修復酵素が発現しなくなったことにあったのである。これを遺伝子外変異(epi−genetic変異)と呼んでいる。
驚くべきことに、生後4週目あたりからLECラットにラクトフェリンを与え続けると、ラットは延命し、ミトコンドリアDNAの酸化度合いと肝臓DNAにおける遺伝子外変異は有意に抑制される。ラクトフェリン群では25個のシトシンのうちでメチル化されたのは13個だったのである。ラクトフェリンはミトコンドリアにおける酸素ラジカル発生を抑制することにより、ミトコンドリアDNAの酸化と細胞核遺伝子の遺伝子外変異を抑制するのである。
皮膚は強力なバリアーである角質層により被覆されているので、通常は大気中の酸素と接触することはない。しかし、褥瘡及び熱傷などにより角質層を喪失すると、酸素と直接接触することになり、大きな酸化ストレスを受けることは確実である。ラクトフェリンによる褥瘡及び熱傷等の速やかな修復は、ラクトフェリンが酸素ラジカルの発生を抑制する効果が働いているものと思われる。
ラクトフェリンによる褥瘡及び熱傷等の治療効果は、酸化ストレスの抑制と並んで創傷修復のカスケードにおいて炎症の引金となるラクトフェリンの作用が関与しているはずである(非特許文献24)。炎症局所に最初に駆けつけるのは、好中球である。好中球は局所で直ちに脱顆粒し、顆粒に貯えたラクトフェリンを炎症が起こっている微小環境に放出するからである。
糖尿病性神経症にともなって発症する脚の壊疽は、治癒が難しい難病で、しばしば、足を切断する原因となってきた。ところが、ヒトのラクトフェリン遺伝子を組替えたコウジカビが産生するヒト遺伝子組み換えラクトフェリン(rhLF)は、5%を含有するゲル軟膏として足の壊疽を起こした患者の創傷部位に塗布すると、速やかに修復が起こることが報告されている(非特許文献25)。
糖尿病を発症すると、皮膚損傷の治癒が遷延することは、実験動物でも再現することができる。ストレプトゾトシンのような催糖尿病薬で誘発したげっ歯類の糖尿病及び遺伝的に発症する糖尿病動物に実験的な創傷を与えると、正常の対照動物と比べ治癒が著しく遅延するが、ラクトフェリンを有効成分とする軟膏を塗布すると、治癒が有意に促進されることがわかっている(非特許文献26)。しかし、非特許文献26は、ラクトフェリンが難治性皮膚深部組織損傷の修復に有効か否かについては全く触れていない。
さらに興味深い現象は、実験的な糖尿病動物から切り出した皮膚を培養して得た繊維芽細胞は、ペトリ皿で培養すると分裂増殖が緩やかだが、培養液にラクトフェリンを添加すると分裂増殖が促進されることである(非特許文献27)。これらの事実は、ラクトフェリンが表皮を構成するケラチノサイト、ランゲルハンス細胞、メラニン細胞と真皮に存在する繊維芽細胞の分裂増殖と細胞分化を調節することを示唆している。
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PCT出願;WO2003/057245、(株)NRLファーマ 特願2009−79832、2008年3月27日、(株)NRLファーマ
この発明は、難治性皮膚深部組織損傷を治療しうる安価な治療剤、ラクトフェリンを治験することによって実現した。
本発明にかかるラクトフェリンを有効成分とする褥瘡及び熱傷等等治療剤について以下に説明する。本発明のラクトフェリンにより難治性皮膚深部組織損傷を予防または治療する場合、経口投与、静脈内投与、経皮投与等の投与形態が可能である。
投与量は、疾患の程度、投与経路、患者の年齢、性別、体重などにより適宜選択される。通常は、例えば、経口投与の場合、好ましくは0.001〜10000mg/kg/日ほどを採用すればよい。
一方、注射投与などの非経口投与の場合は、通常、前記投与の場合の1/2から1/1
00程度が採用される。
外用剤として用いられる医薬組成物ないし化粧品におけるラクトフェリン含有量は、製
剤重量の0.01%〜10%の範囲にあり、好ましくは0.1%〜5%の範囲である。
本発明で示されたラクトフェリンを褥瘡及び熱傷等の治療・予防用として人に投与する場合、ラクトフェリンを通常、それ自体公知の薬理学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝材、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味料、粘ちょう剤、矯味剤、溶解補助剤、その他の添加剤などと混合して錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、座剤、注射剤、点眼剤、液剤、カプセル剤、トローチ剤、エアゾール剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤などの形態により経口または非経口的に投与することができる。
固体製剤とする場合は、添加剤、例えば、蔗糖、乳糖、セルロース糖、D−マンニトー
ル、マルチトール、デキストラン、でんぷん類、寒天、アルギネイト類、キチン類、キト
サン類、ペクチン類、トランガム類、アラビラゴム類、ゼラチン類、コラーゲン類、カゼ
イン、アルブミン、乳清たんぱく質類、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン、カ
ルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒ
ドロキシメチルプロピルセルロース、グリセリン、ポリエチレングリコール、炭酸水素ナ
トリウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク等が用いられる。更に、錠剤に必要に応じて通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣錠、腸溶性コーティング錠、フィルムコーティング錠あるいは二層錠、多層錠とすることができる。
半固体製剤とする場合は、動植物性油脂(オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマシ油)、鉱
物性油脂(ワセリン、白色ワセリン、固形パラフィン等)、ロウ類(ホホバ油、カルナバロウ、ミツロウ等)、部分合成若しくは全合成グリセリン脂肪酸エステル(ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等)などが用いられる。
液体製剤とする場合は、添加剤、例えば、塩化ナトリウム、グルコース、ソルビトール、グリセリン、オリーブ油、プロピレングリコール、エチルアルコール等が挙げられる。特に注射剤とする場合は、無菌の水溶液、例えば、生理食塩水、等張液、油性液、例えば、ゴマ油、大豆油が用いられる。
また、必要により適当な懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、
非イオン性界面活性剤、溶解補助剤、例えば、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等
を併用してもよい。
さらに、点眼剤とする場合は水性液剤または水溶液が用いられ、特に、無菌の注射用水
溶液が挙げられる。
この点眼溶液剤には緩衝剤、等張剤、溶解補助剤、保存剤、粘ちょう剤、キレート剤、pH調整剤、芳香剤のような各種添加剤を適宜添加してもよい。
また、本発明は、人用医薬としての使用はもちろん、獣医薬、動物用医薬としても使用できる。
本発明は、また、褥瘡及び熱傷等を予防・治療するための化粧品に関する。
この場合、本発明の化粧料中におけるラクトフェリンの配合量は、特に限定するもので
はないが、0.001〜5質量%、好ましくは0.01から1.0質量%であるのが好ましい。
本発明の化粧品は、乳液、クリーム、化粧水、パック、清浄料などのスキンケア化粧品、口紅、ファンデーションなどのメーキャップ化粧品、頭皮用化粧品等として使用することができる。化粧品(化粧料)の種類の具体例としては、例えば、一般化粧料、皮膚用、基礎化粧料(プレメーク,化粧下地を含む)、化粧水、乳液、クリーム、化粧油、パック、メーキャップ化粧料、ファンデーション(白粉、パウダーを含む)、口紅、アイメーキャップ、制汗、デオドラント(ボディパウダーを含む)、脱毛、除毛剤、日焼け止め(サンタンを含む)、虫除け、ひげそり用化粧料、身体の清浄用、洗浄剤(清拭剤、洗顔料、ボディ洗浄剤、肛門洗浄剤、女性外性器清浄剤等)、浴用剤、爪用、除去液(リムーバー)、毛髪用、頭皮用、整髪料(セット料)、ヘアトリートメント、コンディショニング、パーマ剤(ウェーブ剤)、脱色剤(ブリーチ剤)、染毛剤、養毛、育毛、発毛剤、除毛、シャンプー、リンス、口腔用、歯科用、義歯洗浄剤等を包含する。
化粧品(化粧料)の製品形態の具体例としては、例えば、透明(半透明)、白濁(パール、ラスターも含む)、多色(模様入り含む)、多層(相)、多剤、エアゾール(スプレー,フォームも含む)、スティック状(棒状,ペンシル状)、シート状(フィルムも含む)、カプセル、錠剤、顆粒(粒状)、粉末(パウダー)、固型状物、半固型状物(ペースト)、液状物、気体、水系、非水系、乳化系(クリーム状,乳液状)、W/O、O/W、多層乳化(W/O/W,O/W/O)、マイクロエマルジョン、可溶化系、分散系、ゲル、ゾル、液晶(ラメラ、ヘキサゴナル、キュービック)、リポソーム等を包含する。
本発明の化粧料を調製する場合、化粧品に通常使用される成分を配合することができる。このような成分としては、油脂類、界面活性剤、香料、防腐剤、顔料、紫外線吸収剤及び抗酸化剤などが挙げられる。
褥瘡及び熱傷等々治療剤には、有効成分たるラクトフェリンのみならず、炎症を防止する薬剤等が添加されていてもよい。炎症を防止する薬剤としてはステロイド性抗炎症剤(例えば、ヒドロコルチゾン)、非ステロイド性抗炎症剤(例えば、アセチルサリチル酸)等がある。
抗炎症剤とともに、又は単独で、病原性の微生物感染を防止するために、抗生物質等が
添加されていてもよい。抗生物質等としては、例えば、ペニシリン系薬剤、セフェム系薬剤、カルバペネム系薬剤、テトラサイクリン系薬剤、アミノグリコシド系薬剤、ニューキノロン系薬剤等が挙げられる。
また、本薬剤の使用にあたっては、その使用態様により、上記以外の薬剤等が添加され
ていてもよい。例えば、溶解補助剤(例えば、安息香酸ナトリウム)、酸化防止剤(例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム)、キレート剤(例えば、EDTA)、緩衝剤(例えば、クエン酸塩)、保存剤(例えば、パラオキシ安息香酸エステル類)、無痛化剤(例えば、塩酸キシロカイン)等が添加されていてもよい。
褥瘡及び熱傷等等治療剤は、注射剤、経口剤、注入剤、軟膏剤(含クリーム剤、ゲル剤)、貼付剤等として、褥瘡及び熱傷等等に適用される。
「注射剤」とは、皮膚内又は皮膚若しくは粘膜を通して体内に直接適用する医薬品の溶液、懸濁液、乳濁液または用時溶剤に溶解若しくは懸濁して用いる製剤であり、局所に適量の当該薬剤を付与することができる。
適所に適量投与しうることから、例えば、組織壊死作用を有する薬剤を含む場合であっ
ても、組織壊死作用を最小限とすることができる。
注射部位は褥瘡及び熱傷の周辺部位に直接、又は、褥瘡及び熱傷の基底部等に注射することができる。なお、基底部とは、創傷と正常細胞部の境界領域をいう。
注射剤を使用する場合にあっては、褥瘡及び熱傷等部位への局所注射回数は、特に制限されるものではないが、通常、3〜5日に1回の割合で、同一部位への最大投与回数は5回程度までが好ましい。通常、副作用の程度は、皆無又は極小である。
また、1回当たりの局所注射剤量は、特に制限される物ではないが、通常、0.5〜2
ml、好ましくは1ml程度までが好ましく、複数の該部位へ局所注射を行なっても、患
者に与える負担の程度は小さい。なお、該部位へ直接局所注射するにあたっては、該部位が柔らかいため、局所注射は容易になしうる。
ケロイド、肥厚性瘢痕等への局所注射回数にあっては、一般的には、患部が硬いために注射をすることが困難な場合が多く、また、一回の注射だけでは、全体をカバーすることが困難な場合が多い。従って、褥瘡及び熱傷等の後遺症を退縮させるためには、1回当たりの注射量を少なくし、複数箇所に局所注射を行なうことが好ましい。
「注入剤」とは、皮膚内に直接適用する医薬品の溶液、懸濁液、乳濁液又は用時溶剤に
溶解若しくは懸濁して用いる製剤であり、局所に当該薬剤を適切に投与しうることから、
例えば、組織壊死作用を有する薬剤を含む場合であっても、組織壊死作用を最小限とする
ことができる。褥瘡及び熱傷等等部位に直接、適用することができる。
軟膏剤とは、適当な稠度の全質均等な半固形状の外用剤をいい、注入剤とは異なり、患部全体を覆い得ることから、患部の大小に係わらず対応することができる。油脂、ラノリン、ワセリン、パラフィン、ろう、樹脂、プラスティック、グリコール類、高級アルコール、グリセリン、水、乳化剤、懸濁化剤、または他の適当な添加剤を基材とし、ラクトフェリンを加え、混和して全質を均等にしたものである。
なお、保存剤、酸化防止剤、湿潤剤等が添加されていてもよい。また、軟膏の調剤法としては練合法、溶融法等があるが、その何れを用いるかは、基剤により適合した方法が採られる。軟膏は、基剤により油脂性、乳剤性、水溶性、懸濁性軟膏に分類されるが、これらの何れであってもよい。また、懸濁性基剤にはヒドロゲル基剤・リオゲル基剤があり、ゲル剤と称されるが、軟膏剤に含まれる。
軟膏剤にあっては、有効成分たるラクトフェリン以外にも、経皮吸収を促進させうる薬
剤を添加してもよい。
経皮吸収を促進させる薬剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエ
チレンエーテル等の界面活性剤、オレイルアルコール等のアルコール類、モノラウリン酸
ソルビタン等のソルビタンエステル類等を挙げることができるが、これらに制限されるも
のではなく、公知の経皮吸収促進剤が用いられる。
貼付剤には、パップ剤やプラスター剤があり、簡便に使用することができる。また、貼付剤に用いられる薬剤としては、軟膏剤と同様の薬剤が使用される。
以下、実施例において更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
日本薬局方のゴマ油 1000g、当帰 100g、紫根 100g、蜜蝋 380g、豚脂 25gに牛乳から抽出したラクトフェリン32g(タツア・バイオロジクス製造、純度93%)を懸濁し、ポリトロン・ホモジナイザーで高速攪拌して軟膏を調製した。それとは別に、ラクトフェリンを含まない軟膏を調製し、対照薬剤とした。
レーザー・ドップラー血流計を用い、皮膚血流量を測定した結果を示す。
体重200g前後の雄ラットの背部を剃毛し(5×5cm)、その中央部約2×2cmにわたり、実施例1で調製した軟膏を0.5ml/site(冷暗所に保管)の割合で4日間にわたり1日1回塗布した。毎回塗布後、動物がなめることを防ぐため伸縮包帯にて3時間固定した。試験2および4日目の塗布1時間後にラットを背位に固定し、レーザー・ドップラー血流計にて皮膚血流量(nl/mm3 /sec )を測定した。
数値=平均値±標準誤差。* p<0.05, ** p<0.01 で対照群に比べ有意差あり。(n=6)表1のように、ラクトフェリン軟膏をラット背部皮膚へ塗布したとき、皮膚血流量を有意に増加させた。
綿球法によりラット肉芽形成促進効果を試験した結果を示す。
体重200g前後の雄ラットをエーテル麻酔下に背部皮膚を正中線に沿って(2.5cm)切開し、左右肩甲部皮下にそれぞれ1個ずつの綿球(約50mg)を挿入し、切開部を縫合した。綿球埋込日を試験0日として試験7日に屠殺して、綿球周囲に形成された肉芽組織を綿球ごと摘出した。完全に肉芽組織のみを取りだし、血液成分、浸出液成分等の除去処理をして乾燥重量を測定した。ラクトフェリンは生理食塩液として、0.2ml/綿球の割合で綿球に浸潤させた後、室温で減圧乾燥し、この綿球を上記のごとく埋め込んだ。
数値=平均値±標準誤差。* p<0.05, ** p<0.01 (n=6)ラクトフェリン溶液に浸した綿球をラット皮下に1週間放置すると、用量依存性に有意な肉芽形成促進効果が見られた。
ラット熱傷モデルを用いて創傷治癒促進効果を試験した結果を示す。
ラットをエーテル麻酔下に剃毛後、予めシリコーンオイル5mlを入れて密閉し100℃に加熱した円柱型ガラス製平底バイアル(16mm×高さ45mm)の底面を、正中線のやや右側に自重(12g)によって10秒間押しあてることにより、熱傷を作成した。
ラクトフェリン軟膏塗布および投与期間は実施例2と同じである。投与期間は創傷作成日(試験0日)より試験11日までとした。評価熱傷部位に形成された痂皮が脱落するまでに要した日数の平均値(平均痂皮脱落日数)を効果の指標とした。
数値=平均値±標準誤差。* p<0.05, ** p<0.01 (n=7)ラット熱傷モデルに連日ラクトフェリン軟膏を塗布したとき、痂皮脱落に至る日数は、対照群に比べ有意に短縮した。
入院患者(褥瘡7、熱傷潰瘍2)にラクトフェリン軟膏を病巣の広さに応じて適量を使用した。原則として1日1回潰瘍面を清拭後に適用、投与間隔は8週間とした。
《評価》 治療前と比較して次の5段階評価をおこなった。
著明改善;潰瘍の著明な縮小を認める。
改善;潰瘍の縮小、肉芽・表皮形成および分泌物の改善、壊死物質の除去などを明らかに認める。
軽度改善;潰瘍の縮小、肉芽・表皮形成および分泌物の改善、壊死物質の除去などの性状所見の一部に改善を認める。
不変;改善傾向が全く認められない。
悪化;悪化傾向を認める。
《結果》
褥瘡および熱傷9人の患者に実施例1の0.2%ラクトフェリン含有の軟膏を連続8週間塗布し、8週後の全般改善度を著明改善、改善、軽度改善、不変、悪化で示すと、表に示すとおりであった。
図1は、経験例1として治療方法を示す図である。図1に示すように、
1 用意するもの、紙おむつ、ガーゼ、紫雲膏、ラクトフェリン300mgを紫雲膏100gに混入、ガーゼに塗布する。
2 塗布したガーゼを患部に巻く。
3 紙おむつを巻く。
毎日もしくは1日おきをめどに交換。交換するときは患部は水洗する。
図2ラクトフェリン軟膏による創傷治癒の一例(48歳男性)を示す図であり、いわゆる靴ずれ(下肢、伸側)の治癒状況を示す。靴ずれを生じたので“紫雲膏+ラクトフェリン+バンドエイド”で治療した。紫雲膏単独よりも治癒速度がはやい。腫脹、発熱、疼痛も著名に軽減し、周辺部の収縮も著しい。36時間後には中央部からも表皮の再生を示す白色化(矢印)が観察される。
図3は、褥瘡症例1の治療状況を示す図であり、認知症、糖尿病で在宅療養中の寝たきり老人(89歳女性)の褥瘡を治療した治験例を示す。
図3に示すように、“ゲーベンクリーム+0.2%ラクトフェリン”による黒色カ皮溶解剥離が認められず、退色し膜様形成が認められ、速やかな肉芽形成が観察される。黄色の懐死組織に見える部分も、膜様の組織になっている。途中で、黒色懐死組織が融解したためデブリードした。治癒過程は順調でしかも治癒経過が早い。
図4は、褥瘡症例2の治療状況を示す図である。糖尿病、末梢神経障害、55歳男性、在宅療養以前にも踵に褥瘡を形成し、治癒に1年近く要した。今回は当初紫雲膏のみで治療していたが、途中よりラクトフェリンを加えることにより治癒速度が非常に加速した。特徴はday31に認められる黄色の懐死様組織は膜様かつ線維様組織でその下から肉芽が形成されてきている。
図5は、褥瘡症例3の治療状況を示す図である。糖尿病、慢性腎不全、慢性心不全、老人性認知症の男性(88歳)に生成した 仙骨部の褥瘡で、大きさは小さいが難治性。紫雲膏+ラクトフェリン(0.2%)で治療した。塗布33日目で褥瘡は完全に塞がり、瘢痕化して治癒した。
図6は、広範囲熱傷の治療状況を示す図である。59歳男性(在宅療養)、9年前両下肢に3度の熱傷を負うものの事情にて手術を拒否した。対症療法を継続し、現在にいたるものの、搬痕様脂肪組織を形成するものの、潰瘍形成を繰り返している。紫雲膏プラスラクトフェリンで、健全な肉芽が形成されはじめ、皮膚の形成が再開される傾向にある。この例に関して今までこのような変化は認められたことはない。下肢伸側にもかかわらず潰瘍周辺で皮膚の形成が認められる。懐死様組織も、線維化しその下から肉芽が形成されてる。今後腸溶錠を追加し治癒過程が促進するか検討する予定。5月11日から腸溶性ラクトフェリン製剤をラクトフェリンとして一日当たり900mg開始した。
高齢社会に突入した日本では、寝たきり老人は当分のあいだ増加し続けるので、褥瘡の治療は喫緊の課題である。一方、重度の熱傷は修復が遅延し、治療の過程及び治療が終了しても後遺症に悩まされる。ラクトフェリンは難治性の褥瘡及び熱傷等を速やかに治癒させ、しかも、全く副作用がない。したがって、産業上に利用される可能性はきわめて高い。
経験例1として治療方法を示す図である。 ラクトフェリン軟膏による創傷治癒の一例(48歳男性)を示す図である。 褥瘡症例1の治療状況を示す図である。 褥瘡症例2の治療状況を示す図である。 褥瘡症例3の治療状況を示す図である。 広範囲熱傷の治療状況を示す図である。

Claims (3)

  1. 多機能たんぱく質であるラクトフェリンを有効成分とする皮膚潰瘍治療用医薬組成物及び予防用化粧料。
  2. 治療対象の皮膚潰瘍が褥瘡及び熱傷潰瘍である請求項1に記載の医薬組成物及び予防用化粧料。
  3. 請求項1および2の治療薬が、全身投与用製剤又は局所投与用製剤であることを特徴とする褥瘡および熱傷治療用医薬組成物。
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