JP2011015565A - 分散電源の単独運転検出方法および装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数個の次数の高調波アドミタンスの変化率を判定して分散電源の単独運転を検出する技術において、不要動作の発生を防止して単独運転検出の信頼性を高める。
【解決手段】単独運転検出装置20は、各次数nについて、当該次数の高調波アドミタンスの変化率がしきい値を超えているか否かを判定してその判定結果JSnを出力するアドミタンス変化率判定回路36と、各次数nについて、当該次数の高調波アドミタンスが下限値以下または当該次数の連系点Pにおける高調波電圧が下限値以下であるというロック条件が成立しているか否かを判定してその判定結果JSnを出力するロック条件判定回路38と、ロック条件が成立している次数を除外した残り全ての次数についての判定結果JSnが、高調波アドミタンスの変化率がしきい値を超えていることを表すものであるときに、単独運転検出信号ISを出力する出力制御回路40とから構成される。
【選択図】図1
【解決手段】単独運転検出装置20は、各次数nについて、当該次数の高調波アドミタンスの変化率がしきい値を超えているか否かを判定してその判定結果JSnを出力するアドミタンス変化率判定回路36と、各次数nについて、当該次数の高調波アドミタンスが下限値以下または当該次数の連系点Pにおける高調波電圧が下限値以下であるというロック条件が成立しているか否かを判定してその判定結果JSnを出力するロック条件判定回路38と、ロック条件が成立している次数を除外した残り全ての次数についての判定結果JSnが、高調波アドミタンスの変化率がしきい値を超えていることを表すものであるときに、単独運転検出信号ISを出力する出力制御回路40とから構成される。
【選択図】図1
Description
この発明は、商用電力系統に連系している分散電源が単独運転になったことを検出する単独運転検出方法および装置に関する。
分散電源が単独運転になったことを検出する方式には、大別して、受動的方式および能動的方式がある(例えば非特許文献1参照)。
受動的方式に属する技術の一つとして、特許文献1には、商用電力系統と分散電源との連系点における複数個の次数(但しいずれも3次以上の奇数次)の高調波アドミタンスを測定し、かつ当該各高調波アドミタンスの、所定時間前の値からどの程度変化したかの割合を表す変化率をそれぞれ判定して、分散電源の単独運転を検出する技術(単独運転検出方法および装置)が記載されている。
上記特許文献1に記載の技術は、より具体的には、上記複数個の次数の内の少なくとも一つの次数の高調波アドミタンスの変化率が所定のしきい値を超えているときに、分散電源が単独運転であると判定するものである。
高調波アドミタンスの値そのものや、高調波アドミタンスの変化量を判定する場合は、元の高調波アドミタンスの大きさに応じて判定の基準値を変えなければならないのに対して、高調波アドミタンスの変化率を判定する場合は、元の高調波アドミタンスの大小に依らずに、判定の基準値を一定にすることができるという利点がある。
「分散型電源系統連系技術指針(電気技術指針分散型電源系統連系編)」、JEAG 9701−2001、社団法人日本電気協会 分散型電源系統連系専門部会、平成14年4月15日第3版第2刷発行、38−45頁
商用電力系統側と分散電源側との高調波源の大きさや位相によっては、高調波アドミタンスが0近くになったり、極めて大きくなったりする場合がある。その場合には、高調波アドミタンスの変化率が、分散電源の単独運転以外の原因によって大きく変動して、特許文献1に記載の技術のように高調波アドミタンスの変化率が所定のしきい値を超えたことでもって単独運転と判定する技術では、連系運転時(系統健全時とも言う)であるのにも拘わらず、分散電源が単独運転になったと誤って検出する不要動作(誤検出)を起こす可能性のあることが分かった。
これを図8を参照して更に説明する。図8(A)に示すように、系統電源6および変電所の遮断器8を含む商用電力系統10に、一般の負荷12および分散電源14が接続されている系統を取り上げる。Pは商用電力系統10と分散電源14との連系点である。
上記図8(A)の回路の連系運転時の(即ち遮断器8はオンしているときの)高調波等価回路を図8(B)に示す。高調波源は分散電源14側だけでなく、系統電源6側にも存在しており、その高調波の次数をnとし、次数nの系統電源6側の高調波電流源をIsn 、高調波アドミタンスをYsn 、分散電源14側(分散電源14と同じ構内の負荷を含む)の高調波電流源をIdn 、高調波アドミタンスをYdn 、連系点Pにおける高調波電圧をVn 、連系点Pを流れる高調波電流をIn で表している。連系点Pにおける高調波アドミタンスYn は数1で表される。なお、負荷12の高調波電流源および高調波アドミタンスは、系統電源6側のそれらIsn 、Ysn に比べて小さいのでこの等価回路では無視(省略)している。
[数1]
Yn =In /Vn
Yn =In /Vn
上記系統電源6側、分散電源14側の高調波電流源Isn 、Idn を高調波電圧源Vsn 、Vdn にそれぞれ変換すると、数2で表される。
[数2]
Vsn =Isn /Ysn
Vdn =Idn /Ydn
Vsn =Isn /Ysn
Vdn =Idn /Ydn
ここで、Vsn ≒Vdn の場合、連系点Pには高調波電流In は殆ど流れないので、即ちIn ≒0となるので、数1からYn ≒0となる。・・・ケースA
また、Isn =−Idn の場合、回路には循環電流が流れるだけであって高調波電圧Vn は殆ど発生しないので、即ちVn ≒0となるので、数1からYn ≒無限大になる。・・・ケースB
前記高調波アドミタンスの所定時間前からの変化率をΔYn として、前記高調波アドミタンスの変化率をΔYn /Yn で表すと、Yn ≒0(即ちIn ≒0)やYn ≒無限大(即ちVn ≒0)の場合は、高調波アドミタンスの変化率ΔYn /Yn は、分散電源14の単独運転以外の原因によって大きく変動する。これは、In やVn のちょっとした変動が高調波アドミタンスYn の大きな変動となってしまうからである。
この他、In とVn の両方共がほぼ0(即ちIn ≒0かつVn ≒0)の場合も、高調波アドミタンスYn の値が0/0で不定となるために、分散電源14の単独運転以外の原因によって高調波アドミタンスYn の大きな変動が発生し、ひいては高調波アドミタンスの変化率ΔYn /Yn が大きく変動する。・・・ケースC
以上をまとめると表1となる。
分散電源14の単独運転以外の原因によって高調波アドミタンスの変化率ΔYn /Yn が大きく変動すると、単独運転になっていないのに当該変化率ΔYn /Yn が前記しきい値を超えることが起こり、前述したように不要動作を起こす可能性がある。
更に、特許文献1に記載の技術は、上記複数個の次数の内の少なくとも一つの次数の高調波アドミタンスの変化率が所定のしきい値を超えているときに分散電源が単独運転であると判定するので、即ち複数個の次数についてOR条件で判定するので、一つの次数でも誤判定すると不要動作を起こすことになり、不要動作を起こす可能性が高いという課題もある。
そこでこの発明は、複数個の次数の高調波アドミタンスの変化率を判定して分散電源の単独運転を検出する技術において、上記のような不要動作の発生を防止して、単独運転検出の信頼性を高めることを主たる目的としている。
この発明では、前述した高調波アドミタンスYn 、高調波電圧Vn または高調波電流In が極端な状況になった場合には、その次数の使用をロック(阻止)することにした。そのようなロックをするときのロック条件1〜4について、具体的内容と対処可能ケースについてまとめた結果を表2に示す。
この表2の見方を、ロック条件1を例に説明すると、(1)高調波アドミタンスYn が所定の下限値以下のときにその次数の使用をロックすると、上記ケースAの状態の次数の使用を除外することができるので、ケースAに対処することができる。また、(2)高調波電圧Vn が所定の下限値以下のときにその次数の使用をロックすると、上記ケースBおよびCの状態の次数の使用を除外することができるので、ケースBおよびCに対処することができる。従って、上記(1)または(OR)(2)でロック条件1を構成することによって、ケースA〜Cの全てに対処することができる。
ロック条件2および3についても同様である。ロック条件4では、ケースCに対処することができない。従って、ロック条件1〜3のいずれかを採用すれば、上記ケースA〜Cの全てに対処することができるので、前述したような不要動作の発生を防止することができる。この発明は上記思想に基づくものである。
具体的には、この発明に係る単独運転検出方法の一つは、商用電力系統と分散電源との連系点における複数個の次数(但しいずれも3次以上の奇数次)の高調波アドミタンスを測定し、かつ当該各高調波アドミタンスの、所定時間前の値からどの程度変化したかの割合を表す変化率をそれぞれ判定して、前記分散電源の単独運転を検出する方法において、前記複数個の次数のそれぞれについて、当該次数の前記高調波アドミタンスが所定の下限値以下または当該次数の前記連系点における高調波電圧が所定の下限値以下であるというロック条件が成立しているか否かを判定し、前記複数個の次数の内で前記ロック条件が成立している次数を除外した残り全ての次数の前記高調波アドミタンスの変化率がそれぞれ所定のしきい値を超えているときに、前記分散電源が単独運転であると判定することを特徴としている。この発明は、簡単に言えば、上記ロック条件1を採用したものである。
また、この発明に係る単独運転検出装置の一つは、商用電力系統と分散電源との連系点における複数個の次数(但しいずれも3次以上の奇数次)の高調波アドミタンスを測定し、かつ当該各高調波アドミタンスの、所定時間前の値からどの程度変化したかの割合を表す変化率をそれぞれ判定して、前記分散電源の単独運転を検出する装置において、前記複数個の次数のそれぞれについて、当該次数の前記高調波アドミタンスの変化率が所定のしきい値を超えているか否かを判定してその判定結果を出力するアドミタンス変化率判定手段と、前記複数個の次数のそれぞれについて、当該次数の前記高調波アドミタンスが所定の下限値以下または当該次数の前記連系点における高調波電圧が所定の下限値以下であるというロック条件が成立しているか否かを判定してその判定結果を出力するロック条件判定手段と、前記アドミタンス変化率判定手段の判定結果および前記ロック条件判定手段の判定結果に基づいて、前記複数個の次数の内で前記ロック条件が成立している次数を除外した残り全ての次数についての前記アドミタンス変化率判定手段の判定結果が、前記高調波アドミタンスの変化率が前記しきい値を超えていることを表すものであるときに、前記分散電源が単独運転であることを表す単独運転検出信号を出力する出力制御手段とを備えていることを特徴としている。この発明も、簡単に言えば、上記ロック条件1を採用したものである。
上記ロック条件1の代わりに、上記ロック条件2または3を採用しても良い。
請求項1〜12に記載の発明によれば、複数個の次数の内でロック条件が成立している次数を除外した残り全ての次数の高調波アドミタンスの変化率がそれぞれ所定のしきい値を超えているときに、分散電源が単独運転であると判定するので、ロック条件が成立している次数による不要動作の発生を防止することができる。その結果、単独運転検出の信頼性を高めることができる。
しかも、複数個の次数の内でロック条件が成立している次数を除外した残り全ての次数の高調波アドミタンスの変化率がそれぞれ所定のしきい値を超えているときに分散電源が単独運転であると判定するので、即ちロック条件が成立している次数を除外した残り全ての次数のAND条件で(但し残りの次数が一つの場合はその次数で)判定するので、単独運転判定を慎重に行うことができる。従ってこの観点からも、不要動作の発生を防止して、単独運転検出の信頼性を高めることができる。
請求項4、10に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、前記各次数の高調波アドミタンスが小さくなったときは、分散電源が単独運転になった可能性があるので、単独運転検出に要する時間内はロックをかけないのが好ましい。これを、前記各次数の高調波電流の判定については、当該高調波電流が前記下限値以下の状態が所定時間継続したときに前記ロック条件が成立していると判定することによって実現することができる。それによって、分散電源の単独運転をより確実に検出することができる。
請求項5、11に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、前記各次数の高調波電流が小さくなったときも、分散電源が単独運転になった可能性があるので、単独運転検出に要する時間内はロックをかけないのが好ましい。それをこの発明によれば実現することができるので、分散電源の単独運転をより確実に検出することができる。
請求項6、12に記載の発明によれば次の更なる効果を奏する。即ち、電力系統に存在する高調波の内で、5次および7次の高調波が比較的大きくかつ安定しているので、この次数を用いることによって、高調波アドミタンス等の判定が容易かつ正確になる。その結果、分散電源の単独運転検出の信頼性をより高めることができる。
図1は、この発明に係る単独運転検出方法を実施する単独運転検出装置の一実施形態を商用電力系統の一例と共に示す図である。
以下においては、単独運転検出装置20を主体に説明しているが、各実施形態の単独運転検出装置20は、その機能に相当する単独運転検出方法をそれぞれ実施するものであると言うことができる。
系統電源6および変電所の遮断器8を含む商用電力系統10に、負荷12および分散電源14が接続されている。負荷12は、幾つかの負荷をまとめて図示したものである。分散電源14が商用電力系統10に連系して運転中に、何らかの事故等によって遮断器8が開放されると、分散電源14は単独運転になる。
分散電源14は、より具体的には、引込線16および遮断器18を介して、商用電力系統10に接続されている。分散電源14は、例えば、コージェネレーション発電設備、太陽光発電設備、燃料電池発電設備、風力発電設備等である。
引込線16には、商用電力系統10と分散電源14との連系点Pにおける電圧および電流を測定する計器用変圧器22および計器用変流器24が接続されており、これらで連続的に測定して得られる測定電圧Vt および測定電流It が、分散電源14用の単独運転検出装置20に供給される。連系点は引込線16上にあるが、通常は、計器用変圧器22および計器用変流器24の近くの箇所を連系点Pとして扱っている。
なお、引込線16には、構内機器として、図示以外の遮断器、変圧器等が接続されている場合があるが、ここではその詳しい説明の必要はないので図示を省略している。
単独運転検出装置20は、連系点Pにおける複数個の次数n(但しいずれも3次以上の奇数次)の高調波アドミタンスYn を測定し、かつ当該各高調波アドミタンスYn の、所定時間前の値からどの程度変化したかの割合を表す変化率をそれぞれ判定して、分散電源14の単独運転を検出するものである。高調波アドミタンスYn は前記数1で表される。高調波アドミタンスの変化率は、例えば前述したΔYn /Yn であるが、これについては後で詳述する。
次数nは、より具体的には、3次、5次、7次、9次、11次、13次等の内の複数個である。
上記複数個の次数nは、2個の場合は、5次および7次が好ましい。これは、電力系統に存在する高調波の内で、5次および7次の高調波が比較的大きくかつ安定しているので(特に高圧の電力系統においてはそうである)、この次数を用いることによって、高調波アドミタンスYn 等の判定が容易かつ正確になるからである。3次の高調波は、3相が互いに同位相になって線間電圧としては殆ど表れないので値が小さい。11次以上の高調波は、基本波から離れ過ぎていて値が小さい。従って、5次および7次を用いることによって、分散電源14の単独運転検出の信頼性をより高めることができる。
なお、この出願においては、高調波電圧Vn 、高調波電流In 、高調波アドミタンスYn 等の符号に付した添字のnは、上記複数個の次数nを包括的に表している。個々の次数nを具体的に表す場合は、その数字を添字として付している。例えば、5次の高調波電圧はV5 、高調波電流はI5 、高調波アドミタンスはY5 と表している。
単独運転検出装置20は、高調波抽出回路32、34、アドミタンス変化率判定回路36、ロック条件判定回路38および出力制御回路40を備えている。これらの各回路のより具体例は後で説明する。
高調波抽出回路32は、上記測定電圧Vt に基づいて、複数個の次数nの高調波電圧Vn を抽出して出力する。例えば、5次の高調波電圧V5 および7次の高調波電圧V7 を抽出して出力する。
高調波抽出回路34は、上記測定電流It に基づいて、複数個の次数nの高調波電流In を抽出して出力する。例えば、5次の高調波電流I5 および7次の高調波電流I7 を抽出して出力する。
複数個の次数nの高調波電圧Vn および高調波電流In を抽出する手段は、アドミタンス変化率判定回路36およびロック条件判定回路38の内部に個別に設けても良いけれども、この実施形態のように共通の高調波抽出回路32および34として設ける方が、回路構成を簡素化することができるので好ましい。
従ってこの実施形態では、高調波抽出回路32、34およびアドミタンス変化率判定回路36がアドミタンス変化率判定手段を構成しており、高調波抽出回路32、34およびロック条件判定回路38がロック条件判定手段を構成している。
アドミタンス変化率判定回路36は、複数個の次数nのそれぞれについて、当該次数nの高調波アドミタンスYn の前記変化率が所定のしきい値を超えているか否かを判定してその判定結果を出力する。より具体的には、超えている次数nについてそれを表す超過判定信号JSn を出力する。
ロック条件判定回路38は、この実施形態では、複数個の次数nのそれぞれについて、当該次数nの高調波アドミタンスYn が所定の下限値以下または当該次数nの連系点Pにおける高調波電圧Vn が所定の下限値以下であるというロック条件(これは表2に示したロック条件1と実質的に同じであるので、以下、ロック条件1と呼ぶことにする)が成立しているか否かを判定してその判定結果を出力する。より具体的には、当該ロック条件1が成立している次数についてそれを表すロック信号LSn を出力する。
出力制御回路40は、アドミタンス変化率判定回路36の判定結果およびロック条件判定回路38の判定結果に基づいて、複数個の次数nの内でロック条件1が成立している次数を除外した残り全ての次数についてのアドミタンス変化率判定回路36の判定結果が、高調波アドミタンスの変化率が前記しきい値を超えていることを表すものであるときに、分散電源14が単独運転であることを表す単独運転検出信号ISを出力する。
高調波抽出回路32、34、アドミタンス変化率判定回路36およびロック条件判定回路38においては、(a)各次数nの高調波電圧Vn 、高調波電流In および高調波アドミタンスYn をそのまま扱っても良いし、(b)それらの主要対称成分を扱っても良い。まず、複数個の次数nが5次および7次であり、かつ上記(a)の場合の上記各回路32、34、36、38、40のより具体例を説明する。
高調波抽出回路32は、5次の高調波電圧V5 および7次の高調波電圧V7 をそれぞれ抽出して出力する二つのフィルタ回路(図示省略)を備えている。
高調波抽出回路34は、5次の高調波電流I5 および7次の高調波電流I7 をそれぞれ抽出して出力する二つのフィルタ回路(図示省略)を備えている。
アドミタンス変化率判定回路36、ロック条件判定回路38および出力制御回路40の一例を図2に示す。
アドミタンス変化率判定回路36は、5次のアドミタンス変化率判定回路42および7次のアドミタンス変化率判定回路44を備えている。
アドミタンス変化率判定回路42のより具体例を図3に示す。このアドミタンス変化率判定回路42は、アドミタンス演算回路90、アドミタンス変化率演算回路92および判定回路94を備えている。
アドミタンス演算回路90は、高調波抽出回路32、34からの高調波電圧V5 、高調波電流I5 に基づいて、前記数1に従って、5次の高調波アドミタンスY5 を演算して出力する。
アドミタンス変化率演算回路92は、上記高調波アドミタンスY5 に基づいて、当該高調波アドミタンスY5 の、所定時間前の値からどの程度変化したかの割合を表す変化率RY5 を演算して出力する。
高調波アドミタンスの変化率RY5 のより具体例を述べるが、これは他の次数についても共通であるので、ここでは次数nを用いて述べると(5次であればnを5と、7次であればnを7と読み替えれば良い)、次のとおりである。この実施形態では、高調波アドミタンスの変化率RYn は、所定時間前(例えば0.3秒〜0.5秒程度前)の高調波アドミタンスをYnp、現在の高調波アドミタンスをYn とすると、次の数3で表されるものとしている。
[数3]
RYn =(Yn −Ynp)/Ynp
=(Yn /Ynp)−1
RYn =(Yn −Ynp)/Ynp
=(Yn /Ynp)−1
但し、高調波アドミタンスの変化率RYn は、上記数3以外のものでも良い。例えば、次の数4〜数6のいずれかでも良い。数4の変化率RYn は、数3の変化率RYn を単に+1だけシフトしたものである。数5の変化率RYn は、数3の分母を高調波アドミタンスYn にしたものである。数6の変化率RYn は、数5の変化率RYn を単に−1だけシフトしたものである。数3または数5の変化率RYn が前述した変化率ΔYn /Yn に相当している。
[数4]
RYn =(Yn /Ynp)
RYn =(Yn /Ynp)
[数5]
RYn =(Yn −Ynp)/Yn
=1−(Ynp−Yn )
RYn =(Yn −Ynp)/Yn
=1−(Ynp−Yn )
[数6]
RYn =−(Ynp/Yn )
RYn =−(Ynp/Yn )
また、数3、数5の分子を(Ynp−Yn )にしても良い。
判定回路94は、上記のような高調波アドミタンスの変化率RY5 を所定のしきい値RYT5 と比較して、前者が後者を超えたときにそれを表す超過判定信号JS5 を出力する。
変電所の遮断器8が開放されて分散電源14が単独運転になると、連系点Pにおける高調波アドミタンスYn は、それに系統電源6側の高調波アドミタンスが含まれなくなるので、小さくなるように変化する。従って、数3の変化率RY5 は、連系運転状態では約0になり、単独運転発生時は0と−1との間(その内でも−1に近い方の値)になる。従って、上記しきい値RYT5 は、0と−1との間の値、例えば、−0.7や−0.9にすれば良い。図6、図7は−0.9にした場合の例である。
アドミタンス変化率判定回路44は、次数が7次である以外は上記アドミタンス変化率判定回路42と同様の構成・機能を有しており、7次の高調波アドミタンスの変化率RY7 が所定のしきい値RYT7 (図示省略)を超えているか否かを判定して、超えているときにそれを表す超過判定信号JS7 を出力する。上記しきい値RYT7 は、上記しきい値RYT5 と同じ考えで定めれば良い。
分散電源14が単独運転になると、上記理由によって、5次の高調波アドミタンスY5 だけでなく7次の高調波アドミタンスY7 も小さくなる(他の次数nの高調波アドミタンスYn も小さくなる)。従って、上記超過判定信号JS5 およびJS7 の両方が出力される。
なお、この出願では、上記超過判定信号JS5 、JS7 、以下に述べるロック信号LS5 、LS7 、信号S1 〜S11、単独運転検出信号IS0 、IS等のような、判定結果を表す信号は、論理値1の信号である(図6、図7参照)。
ロック条件判定回路38は、5次用のアドミタンス判定回路46、電圧判定回路48、タイマー62、63およびOR回路70と、7次用のアドミタンス判定回路50、電圧判定回路52、タイマー64、65およびOR回路72とを備えている。
アドミタンス判定回路46は、高調波抽出回路32、34からの高調波電圧V5 、高調波電流I5 に基づいて、前記数1に従って5次の高調波アドミタンスY5 を演算し、更に、当該高調波アドミタンスY5 が所定の下限値YL5 (図6参照)以下であるか否かを判定して、以下のときにそれを表す信号S1 を出力する。下限値YL5 は、分散電源14が連系運転状態のときの高調波アドミタンスY5 と、単独運転に移行したときの高調波アドミタンスY5 との間の値にしておけば良い。例えば連系運転時の高調波アドミタンスY5 の30%〜70%程度にしておけば良い。図6は0.03S(ジーメンス)にした場合の例である。
電圧判定回路48は、上記高調波電圧V5 に基づいて、当該高調波電圧V5 が所定の下限値VL5 (図7参照)以下であるか否かを判定して、以下のときにそれを表す信号S2 を出力する。下限値VL5 は、例えば、0よりも少し大きい値、具体的には商用電力系統10の基本波電圧の相電圧の波高値の0.02%程度にすれば良い。これは、基本波電圧が6.6kVの場合は約1Vである。図7は1Vにした場合の例である。
両信号S1 、S2 は、そのままOR回路70に入力しても良いけれども、この実施形態のようにタイマー62、63を介してOR回路70に供給するのが好ましい。OR回路70は、与えられた両信号S1 、S2 の論理和(OR)を求めてロック信号LS5 を出力する。従って、OR回路70からは、5次についての前述したロック条件1が成立しているときにロック信号LS5 が出力される。
タイマー62は、オンディレイタイマーとも呼ばれるものであり、信号S1 がオンになって所定時間継続したときに初めて当該信号S1 を出力するものである。この所定時間は、分散電源14の単独運転検出に要する時間相当の時間にすれば良い。例えば0.5秒程度にすれば良い。
高調波アドミタンスY5 が小さくなったときは、分散電源14が単独運転になった可能性があるので、単独運転検出に要する時間内はロックをかけないのが好ましい。これを、上記タイマー62を設けておくことによって実現することができる。それによって、分散電源14の単独運転をより確実に検出することができる。
タイマー63は、オフディレイタイマーとも呼ばれるものであり、信号S2 がオンになると同時に当該信号S2 を出力し、かつ信号S2 のオフ後に所定時間経過したときに信号S2 の出力を停止するものである。この所定時間は、例えば0.8秒程度にすれば良い。図7は、0.8秒にした場合の例である。
高調波電圧V5 が何らかの原因で上記下限値VL5 以下に低下した後に復帰しても、しばらくは高調波電圧V5 が安定しない場合があるので、しばらくはロック解除を待つのが好ましい。これを、上記タイマー63を設けておくことによって実現することができる。それによって、分散電源14の単独運転の信頼性をより高めることができる。
7次用のアドミタンス判定回路50、電圧判定回路52は、次数が7次である以外は、上記アドミタンス判定回路46、電圧判定回路48とそれぞれ同様の機能を有している。
即ち、アドミタンス判定回路50は、高調波抽出回路32、34からの高調波電圧V7 、高調波電流I7 に基づいて、前記数1に従って7次の高調波アドミタンスY7 を演算し、更に、当該高調波アドミタンスY7 が所定の下限値YL7 (図示省略)以下であるか否かを判定して、以下のときにそれを表す信号S3 を出力する。下限値YL7 は、上記下限値YL5 と同じ考え方で定めれば良い。
電圧判定回路52は、上記高調波電圧V7 に基づいて、当該高調波電圧V7 が所定の下限値VL7 (図示省略)以下であるか否かを判定して、以下のときにそれを表す信号S4 を出力する。下限値VL7 は、上記下限値VL5 と同じ考え方で定めれば良い。
タイマー64、65、OR回路72は、上記タイマー62、63、OR回路70とそれぞれ同様の機能を有している。従って、OR回路72からは、7次についての前述したロック条件1が成立しているときにロック信号LS7 が出力される。
出力制御回路40は、スイッチ回路74、76、AND回路78〜80、OR回路84およびタイマー86を備えている。
スイッチ回路74、76、はそれぞれ、常時はオンしているがロック信号LS5 、LS7 が与えられている間は、オフになってアドミタンス変化率判定回路36からの超過判定信号JS5 、JS7 の出力を阻止する。即ち、ロック条件1が成立している次数nの超過判定信号JSn の出力をロックする(換言すれば阻止する、あるいは無効にする)。
(a)ロック信号LS5 、LS7 のどちらも出力されていないときは、ロックする次数はないので、5次と7次のAND(論理積)で単独運転検出を行う。即ち、AND回路78において超過判定信号JS5 とJS7 の論理積を取って信号S9 を出力する。
(b)ロック信号JS7 が出力されているときは、7次をロックして、5次で単独運転検出を行う。即ち、ロック信号JS7 が出力されているときは、AND回路80において当該ロック信号LS7 と超過判定信号JS5 との論理積を取って信号S10を出力する。
(c)ロック信号JS5 が出力されているときは、5次をロックして、7次で単独運転検出を行う。即ち、ロック信号JS5 が出力されているときは、AND回路79において当該ロック信号LS5 と超過判定信号JS7 との論理積を取って信号S11を出力する。
OR回路84は、上記(a)〜(c)の3状態のOR(論理和)で、即ち上記信号S9 〜S10の論理和を取って、単独運転検出信号IS0 を出力する。
この単独運転検出信号IS0 を出力制御回路40からそのまま出力しても良いけれども、この実施形態のように、タイマー86によって、単独運転検出信号IS0 が所定時間継続したことを判定して、所定時間継続したときに単独運転検出信号ISを出力するようにする方が好ましい。そのようにすると、単独運転以外の何らかの原因による高調波アドミタンスの変化率RYn の瞬時変動による不要動作を防止することができるので、分散電源14の単独運転検出の信頼性をより高めることができる。上記タイマー86は、オンディレイタイマーとも呼ばれるものである。上記所定時間は、例えば0.1秒〜0.2秒程度にすれば良い。
以上のような構成および作用によって、出力制御回路40は、複数個の次数n(具体的には5次と7次)の内で前記ロック条件1が成立している次数を除外した残り全ての次数についてのアドミタンス変化率判定回路36の判定結果が、高調波アドミタンスの変化率RYn が所定のしきい値を超えていることを表すものであるときに、分散電源14が単独運転であることを表す単独運転検出信号ISを出力する。
上記単独運転検出から更に進めて、単独運転検出信号ISによって遮断器18を開放して、分散電源14の単独運転を防止するようにしても良い。但し、この発明は単独運転検出が主目的であるので、遮断器18を開放する構成は必須ではない。
なお、図2に示す実施形態では、5次および7次の両方同時にロック条件1が成立していると、その間は単独運転検出を行うことはできないが、それは極めて希であるので、実用上は差し支えない。必要に応じて、次に述べるように次数nを3個以上に増やしても良い。そのようにすれば、全ての次数nが同時にロックされる状態は実質的に起こらないと言うことができる。
上記のように高調波アドミタンスの変化率RYn を判定する次数nの数を3個(例えば、5次、7次および3次)またはそれ以上にしても良い。その場合は、次数nが2個の場合の図2の例の考え方を、3個以上の次数に拡張すれば良い。
即ち、高調波抽出回路32、34は、3個以上の次数nの高調波電圧Vn 、高調波電流In をそれぞれ抽出して出力するものにすれば良い。
アドミタンス変化率判定回路36は、アドミタンス変化率判定回路42まはた44に相当する回路を次数の数だけ有するものにすれば良い。
ロック条件判定回路38は、上記OR回路70または72のグループに相当する回路を次数の数だけ有するものにすれば良い。これは、図4および図5に示すロック条件判定回路38の場合も同様である。
出力制御回路40は、スイッチ回路74または76に相当するスイッチ回路を次数の数だけ有するものにすれば良い。更に、次数nが3個の場合を例にとると、ロックをかける次数がない場合に全ての超過判定信号JSn のANDを取るAND回路(AND回路78に相当)と、一つの次数にロックをかけ残り二つの超過判定信号JSn のANDを取るAND回路(AND回路79、80の考え方を拡張したもの)と、二つの次数にロックをかけ残り一つの超過判定信号JSn を出力するAND回路(AND回路78、80の考え方を拡張したもの)と、上記全てのAND回路の出力のORを取るOR回路(OR回路84に相当)と、上記タイマー86とを有するものにすれば良い。
以上のようにこの単独運転検出装置20によれば、あるいはそれによる単独運転検出方法によれば、複数個の次数nの内で前記ロック条件1が成立している次数を除外した残り全ての次数の高調波アドミタンスの変化率RYn がそれぞれ所定のしきい値を超えているときに、分散電源14が単独運転であると判定するので、前述したケースA〜Cの全てに対処することができ、ロック条件が成立している次数による不要動作(誤検出)の発生を防止することができる。その結果、単独運転検出の信頼性を高めることができる。
しかも、複数個の次数nの内で前記ロック条件1が成立している次数を除外した残り全ての次数の高調波アドミタンスの変化率RYn がそれぞれ所定のしきい値を超えているときに分散電源14が単独運転であると判定するので、即ちロック条件が成立している次数を除外した残り全ての次数のAND条件で(但し残りの次数が一つの場合はその次数で)判定するので、単独運転判定を慎重に行うことができる。従ってこの観点からも、不要動作(誤検出)の発生を防止して、単独運転検出の信頼性を高めることができる。
単独運転検出装置20は、図2に示したロック条件判定回路38の代わりに、図4または図5に示すロック条件判定回路38を備えていても良い。ここでは、図2に示したロック条件判定回路38と同一または相当する部分には同一符号を付して、図2に示したロック条件判定回路38との相違点を主体に説明する。
図4に示すロック条件判定回路38は、前記複数個の次数nのそれぞれについて、当該次数nの前記連系点Pにおける高調波電流In が所定の下限値以下または当該次数nの前記高調波アドミタンスYn が所定の上限値以上であるというロック条件(これは表2に示したロック条件2と実質的に同じであるので、以下、ロック条件2と呼ぶことにする)が成立しているか否かを判定してその判定結果を出力する。より具体的には、当該ロック条件2が成立している次数についてそれを表すロック信号LSn (具体的にはLS5 、LS7 )を出力する。
この図4に示すロック条件判定回路38は、判定回路54、56、58、60以外は、図2に示したロック条件判定回路38と同じである。
電流判定回路54は、高調波抽出回路34からの5次の高調波電流I5 に基づいて、当該高調波電流I5 が所定の下限値IL5 (図示省略)以下であるか否かを判定して、以下のときにそれを表す信号S5 を出力する。下限値IL5 は、例えば0.1A程度にすれば良い。
アドミタンス判定回路56は、高調波抽出回路32、34からの高調波電圧V5 、高調波電流I5 に基づいて、前記数1に従って5次の高調波アドミタンスY5 を演算し、更に、当該高調波アドミタンスY5 が所定の上限値YH5 (図示省略)以上であるか否かを判定して、以上のときにそれを表す信号S6 を出力する。上限値YH5 は、例えば2.0S(ジーメンス)程度にすれば良い。
7次用の電流判定回路58、アドミタンス判定回路60は、次数が7次である以外は、上記電流判定回路54、アドミタンス判定回路56とそれぞれ同様の機能を有しており、信号S7 、S8 をそれぞれ出力する。
このロック条件判定回路38の場合も、次数nを3個以上にしても良く、そのときは、前述したように、OR回路70または72のグループに相当する回路を次数の数だけ設ければ良い。図5に示すロック条件判定回路38においても同様である。
このロック条件判定回路38を備えている単独運転検出装置20によれば、あるいはそれによる単独運転検出方法によれば、複数個の次数nの内で前記ロック条件2が成立している次数を除外した残り全ての次数の高調波アドミタンスの変化率RYn がそれぞれ所定のしきい値を超えているときに、分散電源14が単独運転であると判定するので、前述したケースA〜Cの全てに対処することができる。従って、図2に示したロック条件判定回路38を備えている場合の前記効果と同様の効果を奏することができる。
図5に示すロック条件判定回路38は、前記複数個の次数nのそれぞれについて、当該次数nの前記連系点Pにおける高調波電流In が所定の下限値以下または当該次数nの前記連系点Pにおける高調波電圧Vn が所定の下限値以下であるというロック条件(これは表2に示したロック条件3と実質的に同じであるので、以下、ロック条件3と呼ぶことにする)が成立しているか否かを判定してその判定結果を出力する。より具体的には、当該ロック条件3が成立している次数についてそれを表すロック信号LSn (具体的にはLS5 、LS7 )を出力する。
この図5に示すロック条件判定回路38を構成する電流判定回路54、58は、図4に示したものと同じであり、電圧判定回路48、52は図2に示したものと同じである。それ以外は、図2に示したロック条件判定回路38と同じである。
従ってこのロック条件判定回路38を備えている単独運転検出装置20によれば、あるいはそれによる単独運転検出方法によれば、複数個の次数nの内で前記ロック条件3が成立している次数を除外した残り全ての次数の高調波アドミタンスの変化率RYn がそれぞれ所定のしきい値を超えているときに、分散電源14が単独運転であると判定するので、前述したケースA〜Cの全てに対処することができる。従って、図2に示したロック条件判定回路38を備えている場合の前記効果と同様の効果を奏することができる。
ところで、電力系統における対称成分は、良く知られているように、高調波の次数nに応じて、零相成分、正相成分および逆相成分の内のどれかに集中する。これを主要対称成分と呼ぶ。具体的には次のとおりである。
[数7]
n=7、13・・・ならば正相成分
n=3、9、15・・・ならば零相成分
n=5、11、17・・・ならば逆相成分
n=7、13・・・ならば正相成分
n=3、9、15・・・ならば零相成分
n=5、11、17・・・ならば逆相成分
従って、上記高調波抽出回路32、34、アドミタンス変化率判定回路36およびロック条件判定回路38においては、各次数nの高調波電圧Vn 、高調波電流In および高調波アドミタンスYn の上記主要対称成分を扱っても良い。例えば、5次は逆相成分、7次は正相成分を扱う。図6、図7に示すシミュレーションでは5次の逆相成分を扱っている。
主要対称成分を扱う場合は、高調波抽出回路32、34において、各次数nの高調波電圧Vn 、高調波電流In の主要対称成分をそれぞれ抽出して、それをアドミタンス変化率判定回路36およびロック条件判定回路38において用いれば良い。即ち、主要対称成分の高調波アドミタンスYn 、高調波アドミタンスの変化率RYn 等を演算し判定すること等を行えば良い。
高調波抽出回路32、34において各次数nの高調波電圧Vn 、高調波電流In の主要対称成分を抽出するには、例えば、特開2007−174742号公報、特開2008−29065号公報等に記載の公知の技術を用いれば良い。即ち、3相の相電圧をVa 、Vb 、Vc とすると、3相回路の対称成分である零相成分V0 、正相成分V1 および逆相成分V2 は、公知の次式で表されるので、これに基づいて抽出すれば良い。
[数8]
V0 =(Va +Vb +Vc )/3
V1 =(Va +a・Vb +a2 ・Vc )/3
V2 =(Va +a2 ・Vb +a・Vc )/3
a=exp(j2π/3)
V0 =(Va +Vb +Vc )/3
V1 =(Va +a・Vb +a2 ・Vc )/3
V2 =(Va +a2 ・Vb +a・Vc )/3
a=exp(j2π/3)
上記のように主要対称成分を用いると、高調波アドミタンスYn 、高調波アドミタンスの変化率RYn 等の算出のSN比が向上するので、単独運転検出の信頼性がより向上する。
次に、上記のようにロックをかける技術を採用した場合のシミュレーション結果の例を図6、図7に示す。このシミュレーションは、複数個の次数nの内の5次を取り上げて(5次で代表させて)行っている。7次等もこれと似た結果になると考えられるからである。このシミュレーションには、図2に示した回路の内の5次側の回路のみを用いた。
図6は、高調波アドミタンスの下限値YL5 (その値は0.03S)をロック条件にした場合の例である。高調波アドミタンスY5 は、図の左端の時刻4秒よりも前で既に、通常の値に比べて極めて小さくなっており、時刻t1 でロック信号LS5 が出力されている。
上記のように高調波アドミタンスY5 が通常の値に比べて極めて小さくなっているために、高調波アドミタンスの変化率RY5 の変動が大きく、単独運転が発生していないのに、時刻t2 でしきい値RYT5 (その値は−0.9)を超えた。しかし、上記ロック信号LS5 によってロックがかけられているので、単独運転検出信号ISは時刻t2 の後も実線で示すように0のままである。これによって、不要動作を防止することができたことが分かる。
ちなみに、ロックをかける技術を採用していない場合は、図6中に二点鎖線で示すように、上記時刻t2 から所定時間(図2中のタイマー86の時間)経過後に単独運転検出信号ISe が誤って出力されてしまう。即ち不要動作を起こす。
図7は、高調波電圧の下限値VL5 (その値は1.0V)をロック条件にした場合の例である。高調波電圧V5 は、極めて小さくなった後に通常の値に復帰している。高調波電圧V5 は時刻t3 で下限値VL5 以下になり、ロック信号LS5 が出力されている。高調波電圧V5 は時刻t4 で復帰したが、この例では図2に示したタイマー63を設けているので、時刻t6 までロック信号LS5 の出力を続けてロック状態を継続している。
上述したように高調波電圧V5 が通常の値に比べて極めて小さくなっているために、高調波アドミタンスの変化率RY5 の変動が大きく、単独運転が発生していないのに、時刻t5 でしきい値RYT5 (その値は−0.9)を超えた。しかし、上記ロック信号LS5 によってロックがかけられているので、単独運転検出信号ISは時刻t4 の後も実線で示すように0のままである。これによって、不要動作を防止することができたことが分かる。
ちなみに、ロックをかける技術を採用していない場合は、図7中に二点鎖線で示すように、上記時刻t5 から所定時間(図2中のタイマー86の時間)経過後に単独運転検出信号ISe が誤って出力されてしまう。即ち不要動作を起こす。
10 商用電力系統
14 分散電源
20 単独運転検出装置
32、34 高調波抽出回路
36 アドミタンス変化率判定回路
38 ロック条件判定回路
40 出力制御回路
P 連系点
14 分散電源
20 単独運転検出装置
32、34 高調波抽出回路
36 アドミタンス変化率判定回路
38 ロック条件判定回路
40 出力制御回路
P 連系点
Claims (12)
- 商用電力系統と分散電源との連系点における複数個の次数(但しいずれも3次以上の奇数次)の高調波アドミタンスを測定し、かつ当該各高調波アドミタンスの、所定時間前の値からどの程度変化したかの割合を表す変化率をそれぞれ判定して、前記分散電源の単独運転を検出する方法において、
前記複数個の次数のそれぞれについて、当該次数の前記高調波アドミタンスが所定の下限値以下または当該次数の前記連系点における高調波電圧が所定の下限値以下であるというロック条件が成立しているか否かを判定し、
前記複数個の次数の内で前記ロック条件が成立している次数を除外した残り全ての次数の前記高調波アドミタンスの変化率がそれぞれ所定のしきい値を超えているときに、前記分散電源が単独運転であると判定することを特徴とする分散電源の単独運転検出方法。 - 商用電力系統と分散電源との連系点における複数個の次数(但しいずれも3次以上の奇数次)の高調波アドミタンスを測定し、かつ当該各高調波アドミタンスの、所定時間前の値からどの程度変化したかの割合を表す変化率をそれぞれ判定して、前記分散電源の単独運転を検出する方法において、
前記複数個の次数のそれぞれについて、当該次数の前記連系点における高調波電流が所定の下限値以下または当該次数の前記高調波アドミタンスが所定の上限値以上であるというロック条件が成立しているか否かを判定し、
前記複数個の次数の内で前記ロック条件が成立している次数を除外した残り全ての次数の前記高調波アドミタンスの変化率がそれぞれ所定のしきい値を超えているときに、前記分散電源が単独運転であると判定することを特徴とする分散電源の単独運転検出方法。 - 商用電力系統と分散電源との連系点における複数個の次数(但しいずれも3次以上の奇数次)の高調波アドミタンスを測定し、かつ当該各高調波アドミタンスの、所定時間前の値からどの程度変化したかの割合を表す変化率をそれぞれ判定して、前記分散電源の単独運転を検出する方法において、
前記複数個の次数のそれぞれについて、当該次数の前記連系点における高調波電流が所定の下限値以下または当該次数の前記連系点における高調波電圧が所定の下限値以下であるというロック条件が成立しているか否かを判定し、
前記複数個の次数の内で前記ロック条件が成立している次数を除外した残り全ての次数の前記高調波アドミタンスの変化率がそれぞれ所定のしきい値を超えているときに、前記分散電源が単独運転であると判定することを特徴とする分散電源の単独運転検出方法。 - 前記ロック条件の判定の際に、前記各次数の高調波アドミタンスの判定については、当該高調波アドミタンスが前記下限値以下の状態が所定時間継続したときに前記ロック条件が成立していると判定する請求項1記載の分散電源の単独運転検出方法。
- 前記ロック条件の判定の際に、前記各次数の高調波電流の判定については、当該高調波電流が前記下限値以下の状態が所定時間継続したときに前記ロック条件が成立していると判定する請求項2または3記載の分散電源の単独運転検出方法。
- 前記複数個の次数は、5次および7次である請求項1ないし5のいずれかに記載の分散電源の単独運転検出方法。
- 商用電力系統と分散電源との連系点における複数個の次数(但しいずれも3次以上の奇数次)の高調波アドミタンスを測定し、かつ当該各高調波アドミタンスの、所定時間前の値からどの程度変化したかの割合を表す変化率をそれぞれ判定して、前記分散電源の単独運転を検出する装置において、
前記複数個の次数のそれぞれについて、当該次数の前記高調波アドミタンスの変化率が所定のしきい値を超えているか否かを判定してその判定結果を出力するアドミタンス変化率判定手段と、
前記複数個の次数のそれぞれについて、当該次数の前記高調波アドミタンスが所定の下限値以下または当該次数の前記連系点における高調波電圧が所定の下限値以下であるというロック条件が成立しているか否かを判定してその判定結果を出力するロック条件判定手段と、
前記アドミタンス変化率判定手段の判定結果および前記ロック条件判定手段の判定結果に基づいて、前記複数個の次数の内で前記ロック条件が成立している次数を除外した残り全ての次数についての前記アドミタンス変化率判定手段の判定結果が、前記高調波アドミタンスの変化率が前記しきい値を超えていることを表すものであるときに、前記分散電源が単独運転であることを表す単独運転検出信号を出力する出力制御手段とを備えていることを特徴とする分散電源の単独運転検出装置。 - 商用電力系統と分散電源との連系点における複数個の次数(但しいずれも3次以上の奇数次)の高調波アドミタンスを測定し、かつ当該各高調波アドミタンスの、所定時間前の値からどの程度変化したかの割合を表す変化率をそれぞれ判定して、前記分散電源の単独運転を検出する装置において、
前記複数個の次数のそれぞれについて、当該次数の前記高調波アドミタンスの変化率が所定のしきい値を超えているか否かを判定してその判定結果を出力するアドミタンス変化率判定手段と、
前記複数個の次数のそれぞれについて、当該次数の前記連系点における高調波電流が所定の下限値以下または当該次数の前記高調波アドミタンスが所定の上限値以上であるというロック条件が成立しているか否かを判定してその判定結果を出力するロック条件判定手段と、
前記アドミタンス変化率判定手段の判定結果および前記ロック条件判定手段の判定結果に基づいて、前記複数個の次数の内で前記ロック条件が成立している次数を除外した残り全ての次数についての前記アドミタンス変化率判定手段の判定結果が、前記高調波アドミタンスの変化率が前記しきい値を超えていることを表すものであるときに、前記分散電源が単独運転であることを表す単独運転検出信号を出力する出力制御手段とを備えていることを特徴とする分散電源の単独運転検出装置。 - 商用電力系統と分散電源との連系点における複数個の次数(但しいずれも3次以上の奇数次)の高調波アドミタンスを測定し、かつ当該各高調波アドミタンスの、所定時間前の値からどの程度変化したかの割合を表す変化率をそれぞれ判定して、前記分散電源の単独運転を検出する装置において、
前記複数個の次数のそれぞれについて、当該次数の前記高調波アドミタンスの変化率が所定のしきい値を超えているか否かを判定してその判定結果を出力するアドミタンス変化率判定手段と、
前記複数個の次数のそれぞれについて、当該次数の前記連系点における高調波電流が所定の下限値以下または当該次数の前記連系点における高調波電圧が所定の下限値以下であるというロック条件が成立しているか否かを判定してその判定結果を出力するロック条件判定手段と、
前記アドミタンス変化率判定手段の判定結果および前記ロック条件判定手段の判定結果に基づいて、前記複数個の次数の内で前記ロック条件が成立している次数を除外した残り全ての次数についての前記アドミタンス変化率判定手段の判定結果が、前記高調波アドミタンスの変化率が前記しきい値を超えていることを表すものであるときに、前記分散電源が単独運転であることを表す単独運転検出信号を出力する出力制御手段とを備えていることを特徴とする分散電源の単独運転検出装置。 - 前記ロック条件判定手段は、前記各次数の高調波アドミタンスの判定については、当該高調波アドミタンスが前記下限値以下の状態が所定時間継続したときに前記ロック条件が成立していると判定するものである請求項7記載の分散電源の単独運転検出装置。
- 前記ロック条件判定手段は、前記各次数の高調波電流の判定については、当該高調波電流が前記下限値以下の状態が所定時間継続したときに前記ロック条件が成立していると判定するものである請求項8または9記載の分散電源の単独運転検出装置。
- 前記複数個の次数は、5次および7次である請求項7ないし11のいずれかに記載の分散電源の単独運転検出装置。
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