JP2011012239A - 難燃化助剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】安全かつ安価であり、しかも熱可塑性樹脂、特にオレフィン系樹脂に優れた難燃性を付与することが可能な添加剤を提供する。
【解決手段】スメクタイト系粘土粒子からなる難燃化助剤において、前記スメクタイト系粘土粒子は、レーザー回折法で測定したエタノール中での体積基準平均粒径(D50)が5.0μm以下であり、ナトリウム含有率がNaO換算で1.5乃至3.5重量%の範囲にあり、粉末X線回折法で回折角2θが8.5乃至9.5度の領域に、スメクタイトの[001]面由来の回折ピークを示し、且つ150℃乾燥基準での水分含有率が4.0重量%以下であることを特徴とする。
【選択図】無し

Description

本発明は、オレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂に配合されて難燃性を向上させる難燃化助剤に関する。
近年、高層ビル内の火災や地下街に張り巡らされたケーブルの火災が多発しているが、このような火災は場合によっては大火災に拡大する恐れがある。このような火災を防止するため、家電装置、産業機械装置、コンピュータ等に用いる電気配線用被覆樹脂類、及び建築資材としての内外装用有機合成樹脂類には難燃性の付与が要求されている。また最近では、環境問題が注目されている中で、人体に対する安全性が強く要求されており、環境に優しい難燃材料が望まれてきている。
例えば、分子内にハロゲン元素をもっているポリ塩化ビニル、クロロプレンゴム等の塩素含有重合体は、それ自身難燃性を有し、その上加工性、経済性、その他多くの点でバランスのとれた材料であることから多用されてきた。しかし、燃焼時における発煙量が他の樹脂に比較して多く、火災時の避難や消火活動の障害となっている。このような観点から、分子内にハロゲンを持たないポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等に、難燃性を付与することが強く望まれている。
上記のようなオレフィン系樹脂に難燃性を付与するための難燃剤としては、例えば水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の結晶性金属水酸化物が代表的であり、さらにはベントナイトなどのスメクタイト系粘土粒子も難燃性の付与の目的でオレフィン系樹脂等に配合することが知られている(特許文献1〜3参照)。
特開昭55−112248号公報 特表2006−519895号公報 特開2006−89712号公報
上記特許文献1〜3に開示されているような従来公知の金属水酸化物系難燃剤は、高温に加熱されたときに著しい吸熱と同時に水分子などの不燃性ガスを放出させるものであり、この吸熱・分解による水分子ガス(水蒸気)の発生に起因する冷却効果と同時に周囲に形成される不燃性ガス(水蒸気)層による酸素(空気)遮断効果により樹脂に難燃性を付与するという性質のものである。
しかしながら、上記のような機構により難燃性を付与する場合には、その難燃性付与効果が不十分であり、例えば、十分な難燃性を付与するためには、オレフィン系樹脂に多量の難燃剤を配合することが必要となり、コストが増大してしまうという問題がある。従って、安価であり、且つできるだけ少量の配合により大きな難燃性を付与する難燃剤が求められている。
従って、本発明の目的は、安全性が高く、安価であり、しかも各種の熱可塑性樹脂、特にオレフィン系樹脂に対しても優れた難燃性を付与することが可能な添加剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、公知の難燃剤、特に金属水酸化物との併用により、熱可塑性樹脂、特にオレフィン系樹脂の難燃性を大きく向上させることができるか、またはこれ等の難燃剤の添加量を大幅に減量して使用できることにより、樹脂製品の高価格化、機械物性の低下、若しくは難燃剤自体の有害性や燃焼時発生ガスの有害性などの安全性に関わるデメリットを大幅に削減することが可能な難燃化助剤を提供することにある。
本発明者等は、従来公知の難燃剤に比して安全かつ安価なスメクタイト系粘土の難燃性付与効果について検討した結果、スメクタイトの基本三層同士の間の層間が著しく収縮したものは、特に水酸化マグネシウム等の結晶性金属水酸化物との併用により、オレフィン系樹脂の難燃性を大きく向上させ得るとの新規知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、スメクタイト系粘土粒子からなる難燃化助剤において、
前記スメクタイト系粘土粒子は、レーザー回折法で測定したエタノール中での体積基準平均粒径(D50)が5.0μm以下であり、ナトリウム含有率がNaO換算で1.5乃至3.5重量%の範囲にあり、粉末X線回折法で測定して、回折角2θが8.5乃至9.5度の領域に、スメクタイトの[001]面由来の回折ピークを示し、且つ150℃乾燥基準での水分含有率が4.0重量%以下であることを特徴とする難燃化助剤が提供される。
本発明の難燃化助剤は、
(1)前記スメクタイト系粘土粒子は、粉末X線回折法で測定して、回折角2θが21.5乃至22.5度の領域にピークを有するオパール成分を含有していること、
(2)前記スメクタイト系粘土粒子が、疎水性表面処理剤によって表面処理されていること、
(3)前記疎水性表面処理剤を、スメクタイト系粘土粒子100重量部当り1乃至10重量部の量で含むこと、
(4)前記疎水性表面処理剤が、高級脂肪酸もしくはその誘導体、樹脂酸、パラフィンワックス、またはシランカップリング剤であること、
が好適である。
本発明によれば、また、上記難燃化助剤(A)と難燃剤粒子(B)とをA:B=15:85乃至65:35の重量比で含むことを特徴とする難燃剤組成物が提供される。
かかる難燃剤においては、前記難燃剤粒子(B)が水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムであることが好適である。
本発明によれば、さらに、上記の難燃剤組成物と熱可塑性樹脂とを含み、該難燃剤組成物が、該熱可塑性樹脂100重量部当り前記スメクタイト系粘土粒子を5乃至80重量部の量で含むように配合されていることを特徴とする難燃性樹脂組成物が提供される。
本発明によれば、さらにまた、
ナトリウム含有率がNaO換算で0.3乃至2.5重量%の範囲にあるベントナイトをスメクタイト系粘土原料として用意し、
前記ベントナイトを水中に投入してベントナイト水性懸濁液を調製し、
前記水性懸濁液を遠心分離に付し、その上澄みのスラリーを取り出し、必要に応じて炭酸ナトリウム等の添加によりナトリウム分を補充し、
前記スラリーを加熱乾燥処理して、粉末X線回折で回折角2θが8.5乃至9.5度の領域に、スメクタイトの[001]面由来の回折ピークを有する固形分を得、
前記固形分を粉砕し、レーザー回折法で測定したエタノール中での体積基準平均粒径(D50)が5.0μm以下となる様に分級すること、
を特徴とする難燃化助剤の製造法が提供される。
上記の製造方法においては、前記スラリーの加熱乾燥に先立って、疎水性表面処理剤を混合することが好適である。
本発明の難燃化助剤は、それ自体公知の難燃剤、例えば水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの結晶性金属水酸化物との組み合わせでオレフィン系樹脂に配合することにより、その難燃性を大きく向上させることができる。
特にこの難燃化助剤は、難燃剤として従来公知の各種化合物に比してかなり安価であり、しかも、公知の難燃剤との併用により難燃性を大きく向上させ得ることから、オレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂中への難燃剤の配合量を少なくしてコストダウンを図ることができる。
更にこの難燃化助剤は、極めて安全性の高い天然のベントナイトからなることより、例えば臭素系難燃剤、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛など安全性においてやや問題がある従来公知の難燃剤の配合量を減じて安全性の向上も図ることができる。
スメクタイト系粘土粒子を難燃性付与のために使用すること自体は従来から知られている。しかしながら、このような目的で使用されているスメクタイト系粘土粒子は、難燃剤として公知の水酸化マグネシウムなどの結晶性水酸化物と同様、基本三層同士の層間に含まれている水分を高温時に放出することにより難燃性を付与するというものである。このため、その難燃性付与効果が大きくなく、例えば金属水酸化物等の難燃剤と併用された場合にも、難燃剤の配合量を低減させて難燃性を向上させ得るまでには至っていない。
ところで、上記のような層間水等を有するものは、スメクタイトの基本三層同士の層間が大きく、そのX線回折像は、スメクタイトの[001]面由来の回折ピークは、回折角2θが6度前後に存在しているが、本発明において使用するスメクタイト系粘土粒子では、そのX線回折像は、スメクタイトの[001]面由来の回折ピークが、回折角2θが8.5乃至9.5度の領域に発現している。即ち、このことは、本発明で用いるスメクタイト系粘土粒子は、基本三層同士の層間が収縮してしまっており、この層間に水は実質上存在しておらず、またこの層間に窒素化合物などの不燃性ガスを発生するようなイオン等も導入されていないことを意味している。かかる事実から理解されるように、このように層間が収縮しているスメクタイト系粘土粒子は、従来公知の機構とは全く異なる機構で熱可塑性樹脂に不燃性が付与されるものである。
本発明において用いるスメクタイト系粘土粒子が、どのような機構で不燃性を付与するのかは、完全に解明されるには至っていないが、本発明者等は、次のように推定している。
即ち、スメクタイト系粘土粒子をオレフィン系樹脂に分散させた場合、層間水を含んでいたり、層間に有機イオンが導入されているような場合には、この粒子は、基本三層間の間隔が大きく、膨潤した状態で熱可塑性樹脂に練りこまれるために、基本三層がばらばらの状態でランダムに分散された状態にある。従って、マトリックスである熱可塑性樹脂が高温になり、液状になった場合でも、その分散形態は変化しない。従って、この熱可塑性樹脂が燃焼するまでの過程で水分や窒素酸化物等の不燃性ガスがスメクタイト系粒子から放出されることにより、不燃性が付与されることとなる。
一方、前述した層間が収縮しているスメクタイト系粘土粒子を熱可塑性樹脂に分散させた場合には、基本三層同士が密に積層して凝集した二次粒子の状態で分散された形態で分散される。従って、この状態で、マトリックスの熱可塑性樹脂が高温になって液状化すると、液状樹脂が、このスメクタイト系粘土粒子の粒子間の隙間に流れ込み、さらに、基本三層の層間に侵入し、基本三層の層間が押し広げられる。このため、基本三層が液状樹脂を取り囲むように配列し、特に液状樹脂の表面に多く分布し、液状樹脂と雰囲気中の酸素との接触を防ぐバリヤーとして機能するようになる。即ち、このようなバリヤー機能によって、樹脂の燃焼が抑制され、難燃性が付与されるものと推定される。
このように、上述した層間が収縮したスメクタイト系粘土粒子からなる本発明の難燃化助剤は、従来公知の難燃剤、特に結晶性金属水酸化物と併用したときに、結晶性金属水酸化物の添加量が減量されたにも拘らず、該難燃剤による難燃性付与効果を補い、熱可塑性樹脂の難燃性を飛躍的に高めるか、若しくは実用上充分に高く維持することができる。
二つの粉末試料のX線回折像を示す図である。[1−1]は調製例1で得られたスメクタイト系粘土粒子からなる難燃化助剤の回折像であり、[1−2]は比較調製例4で用意された有機ベントナイト(層間にジアルキルジメチルアンモニウムイオンを含有)の回折像を示す図である。
発明が実施しようとする形態
<難燃化助剤>
本発明の難燃化助剤は、スメクタイト系粘土粒子からなるものであるが、このスメクタイト系粘土は、AlO八面体層が二つのSiO四面体層でサンドイッチされた三層構造を基本層単位とし、この基本層単位がc軸方向に積層された積層構造を有している。また、上記のAlO八面体層のAlは、その一部がMgやFe(II)で同形置換され、SiO四面体層のSiの一部はAlで同形置換され、c軸方向に積層されている基本層単位間の層間には、同形置換による電荷の不足を補う形で金属カチオン(例えばNaイオン)が存在している。このようなジオクタヘドラル型スメクタイトは、火山灰や溶岩等が海水の影響下に変性されることにより生成したものと考えられており、粘土鉱物分類上、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイトなどがある。天然に産する所謂酸性白土やベントナイトは、これらのスメクタイトを主要成分として含有している粘土である。
このようなスメクタイト系粘土は、上記の基本層単位の層間に水を取り込むことにより膨潤する性質を有しており、層間に含まれるNa、Kなどのアルカリ金属イオンの量やCa2+などのアルカリ土類金属イオンの量により、膨潤性が異なっているが、本発明では、NaO換算でのナトリウム含有率が0.3乃至2.5重量%の範囲にあるものが使用される。即ち、このようなナトリウム含有率を有しているスメクタイト系粘土は、高い膨潤・剥離性を示し、例えば高温に加熱された液状樹脂を層間に取り込みやすく、従って、雰囲気中の酸素と液状樹脂との接触を防止するバリヤー能が高く、難燃付与効果が高いものと信じられる。
尚、本発明で用いるスメクタイト系粘土は、上記のようなナトリウム含有率を有しており、層間にNaイオンを多く含んでいることから、例えば、1%食塩水を使用して5重量%濃度で測定したときのpHが8.5以上であり、この点において、スメクタイト系粘土の中でもベントナイトが好適に使用される。即ち、所謂酸性白土は、スメクタイト系粘土に属するが、pHが中性乃至酸性サイドにあり、ナトリウム含有率が低く、膨潤・剥離性が低いため、本発明では適当でない。
また、本発明で用いるスメクタイト系粘土は、ナトリウム含有率が上記範囲にあるものであれば、天然産のものでもよいし、天然産のベントナイトを炭酸アルカリや水酸化アルカリなどで処理して活性を高めた所謂活性ベントナイトであってもよいが、特に粉末X線回折法で測定して、2θ=21.5〜22.5度の領域にピークを有するオパール成分を含有していることが好適である。
上記のオパール成分(SiO)は、ベントナイトなどのスメクタイトに含まれる形で天然に産出し、粉末X線回折法による測定によって、上記の回折角(2θ)の領域に回折ピークを示すことにより確認することができる。このオパール成分は、高結晶性のα‐クリストバライト(SiO)などとは異なり、低結晶性であり、従って、上記のX線回折ピークの半値幅(2θ/°)は、0.40乃至0.8度の範囲にある。このようなオパール成分を含むベントナイトは、細孔容積が大きく且つ比表面積も大きいため、例えば後述する難燃剤と併用した場合において、ハロゲンガスや窒素酸化物などの有毒ガスが発生したときに、これを吸着捕捉できるという機能を発揮することと、加熱液状化した樹脂を、このスメクタイト系粘土粒子とオパール成分粒子の粒子間の隙間(細孔)が瞬時に吸収し、樹脂の分解・気化も抑制できるため、極めて好ましい。
本発明において使用されるスメクタイト系粘土の化学組成は、粘土の成因、産地及び同じ産地でも埋蔵場所(切羽)等によっても相違するが、特にオパール成分を含み、好適に使用されるものの化学組成は、一般に、酸化物換算で以下の通りである。
SiO;50乃至75重量%
Al;11乃至25重量%
Fe;1乃至10重量%
MgO;1乃至6重量%
CaO;0.1乃至3重量%
NaO;0.1乃至3重量%
O;0.1乃至3重量%
その他の酸化物(TiOなど);2重量%以下
さらに、本発明において、難燃化助剤として使用されるスメクタイト系粘土は、基本三層同士の層間が収縮しているものでなければならず、粉末X線回折によるX線回折像において、スメクタイトの[001]面由来の回折ピークが、回折角2θが8.5乃至9.5度の領域に発現するものでなければならない。即ち、層間に水を含有していたり、或いは窒素酸化物などの有害ガス発生源となる有機アンモニウムイオンなどが層間に導入されている場合には、層間が広がっており、このため、スメクタイトの[001]面由来の回折ピークが、回折角2θが6度前後、或いはこれよりも低角度の領域に発現するが、本発明では、回折角2θがこれよりも高い領域にスメクタイトの[001]面由来の回折ピークが発現しているものを使用する。このような領域にスメクタイトの[001]面由来の回折ピークが発現していることは、層間が収縮しており、この層間に水分や有機イオンが存在していないことを示している。
さらに、本発明で用いるスメクタイト系粘土粒子は、上記のような領域にスメクタイトの[001]面由来の回折ピークが発現しており、基本三層同士の層間が収縮していることに関連して、例えば示差熱分析において、500℃以下での熱減量がほとんどない(具体的には2%以下)。即ち、このような事実から、本発明で用いるスメクタイト系粘土粒子が示す難燃付与効果は、水分子や他の不燃性ガスを放出することにより燃焼を抑制するという機構によるものではないことを物語っており、かかる事実から、このようなスメクタイト系粘土粒子は、基本三層の層間或いは粒子間隙に液状樹脂及びその分解気化物を取り込み、基本三層が液状樹脂を取り囲むように多く分布して液状樹脂と酸素との接触が抑制されることにより難燃性が付与されるものと推定されるのである。
尚、上記のような領域に回折ピークが発現しているスメクタイト系粘土は、前述した組成を有しているベントナイト等のスメクタイト原料粘土が分散した水性スラリーを、後述する熱処理に付することにより得られる。
また、本発明で用いるスメクタイト系粘土は、樹脂に均一に分散し、難燃性を効果的に付与するために、エタノール中に分散させてレーザー回折法で測定した体積基準での平均粒径(D50)が5.0μm以下であることが必要である。尚、エタノール中で測定しているのは、例えば水に分散した状態で測定すると、層間に水が浸入して膨潤し一次粒子にまで分散してしまうからである。
本発明において、上述したスメクタイト系粘土の粒子は、それ単独で難燃化助剤として使用することもできるが、好適には、疎水性表面処理剤で表面処理するのがよい。スメクタイト系粒子単独では、大気中の水分の吸収によって基本三層の層間が拡大し、さらには樹脂加工時の発泡の原因となってしまうおそれもあるが、疎水性表面処理剤での表面処理によって、このような不都合を有効に回避することができる。
疎水性表面処理剤としては、特に限定されるものではないが、高級脂肪酸もしくはその誘導体が代表的である。高級脂肪酸としては、特に炭素数が18以上の飽和脂肪酸、例えばステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等を例示することができ、その誘導体としては、アマイドや、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、バリウム塩等の金属塩を例示することができる。
また、上記以外にも、樹脂酸(ロジン)やパラフィンワックスを疎水性表面処理剤として使用することができ、さらには、トリ、ジまたはモノアルキルアルコキシシラン等のシランカップリング剤なども疎水性表面処理剤として好適に使用することができる。
上記のような疎水性表面処理剤は、1種単独または2種以上の組み合わせで使用することができるが、必要以上に多量に使用すると、上述したスメクタイト系粘土粒子による難燃性付与効果が損なわれたり、或いはコストの増大などの点で不利となり、また使用量が少ないと、水分の吸収を抑制するに十分な疎水性が付与されないおそれがある。従って、この疎水性表面処理剤の処理量は、スメクタイト系粘土粒子100重量部当り1乃至10重量部、特に2乃至6重量部の範囲であることが好ましい。
<難燃化助剤の製造>
上述した難燃化助剤として使用するスメクタイト系粘土粒子を製造するには、例えば、スメクタイト当りのナトリウム含有率が前述した範囲にあるベントナイトを原料粘土として使用するのがよい。この原料粘土は、天然産であってもよいし、またアルカリ処理されたものであってもよい。
上記の原料粘土(ベントナイト)での基本三層の層間を収縮するために熱処理を行うことにより、本発明で用いるスメクタイト系粘土を得ることができるのであるが、この熱処理に先立って、原料粘土中に含まれる長石、石英などの結晶性の不純物を除去するのがよい。
例えば、上記の原料粘土を水中に投入してベントナイト水性懸濁液を調製し、この水性懸濁液を遠心分離に供し、沈澱固化部(即ち、不純物)を除去する。このときの水性懸濁液のベントナイト濃度は、遠心分離が効果的に行われるように適宜の濃度とすればよい。尚、原料ベントナイトに前述したオパール成分が含まれている場合、このオパール成分は、ベントナイトと複合一体化しているため、遠心分離によっては除去されないが、先にも述べたように、このようなオパール成分を含有するベントナイトは、好適に使用できるので、これを除去する必要はない。
上記のように結晶性不純物が取り除かれた精製ベントナイト(上記遠心分離での非沈降部のスラリーに含まれている)では、層間水を多く含んでおり、従って、スメクタイトの[001]面由来の回折ピークが6度前後の領域に発現している。従って、[001]面由来の回折ピークが前述した8.5乃至9.5度の領域にシフトするように加熱乾燥処理が行われる。具体的には、遠心分離後の上澄みのスラリーを加熱処理して、分散媒である水と層間水を除去し、この層間を収縮させるわけである。
従って、上記の加熱乾燥処理は、スメクタイトの[001]面由来の回折ピークが所定の領域にシフトするように行われる限り、加熱条件や乾燥処理手段を特に制限されないが、一般的には、加熱乾燥の処理温度は、80乃至400℃の範囲がよい。処理温度が低いと、上記領域に回折ピークがシフトするまでに長時間を要したり、場合によっては、層間水を完全に除去することができず、回折ピークがシフトしないこともある。また、乾燥処理手段としては、固化ケーキの生成を防止し、効率よく層間水を除去できるという観点から、熱風乾燥が好適である。
上記のような乾燥処理によって、本発明で使用するスメクタイト系粘土が得られ、このスメクタイト系粘土は、粉砕され、前述した平均粒径を有する微細な粒子に分級されて難燃化助剤としての用途に供される。粉砕等は、当然乾式で行われ、ボールミル粉砕、ジェットミル粉砕等の公知の手段で行われるが、実使用上白色度が良好なものが有利である。
また、乾燥処理に先立って、適宜、水溶性のナトリウム塩、例えば炭酸ナトリウムを遠心分離後に回収された上澄み液のスラリーに添加することにより、Na含量を調整することも可能である。
また、疎水性表面処理剤での表面処理は、上記のようにして得られたスメクタイト系粘土粒子と疎水性表面処理剤とを乾式で適宜加熱しながら混合攪拌することによって行うこともできるが、好適には、[001]面由来の回折ピークをシフトさせるための熱処理に先立って、例えば精製ベントナイトのスラリー(遠心分離後の上澄みのスラリー)に表面処理剤を加えて加熱下に混合攪拌することにより行うのがよい。尚、表面処理のための加熱温度は、通常、85℃以上である。
<難燃剤組成物>
上記のようにして得られる本発明の難燃化助剤は、それ単独で各種の樹脂に配合されて難燃性を向上させることができるが、特に、難燃剤と併用して難燃剤組成物として使用することが最適である。
上記の難燃剤としては、結晶性金属水酸化物、ハロゲン系化合物、リン系化合物、アンチモン系化合物、ホウ酸亜鉛など、それ自体公知のものを使用することができるが、これらの中でも、有毒ガスを発生させず、また人体に有害な重金属を含んでいないという観点から、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの結晶性金属水酸化物が好適であり、特に、前述した難燃化助剤との併用により、その難燃性付与効果が相乗的に大きく高められるという観点からも好適である。
このような結晶性金属水酸化物粒子は、従来から難燃剤としての用途に使用されており、高温で脱水して水分を放出することにより、気化による冷却や水蒸気が酸素に対するバリヤーとして作用することなどによって難燃性を付与するものであり、特に、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムは、脱水温度がオレフィン系樹脂の熱分解温度近辺であることから、最も好適である。即ち、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムは、オレフィン系樹脂が燃焼する直前に水分を放出するという性質を有しており、オレフィン系樹脂の燃焼を防止する上で最も好適な水酸化物である。
また、上記の難燃剤も、前述したスメクタイト系粘土粒子と同程度の微細粒子であることが好ましく、例えば、エタノール中に分散させてレーザー回折法で測定した体積基準での平均粒径(D50)が5.0μm以下であることが好ましい。即ち、難燃剤の粒子及びスメクタイト系粘土粒子の何れもが同程度の微細粒子であるときに、これらの粒子の特性が相乗的に発揮され、難燃性付与効果が著しく向上するからである。
さらに、難燃剤の粒子も、前述した疎水性表面処理剤により表面処理されていることがオレフィン系樹脂中への分散性を高める上で好適である。この表面処理量も、スメクタイト系粘土粒子と同程度でよく、例えば、スメクタイト系粘土粒子100重量部当り1乃至10重量部、特に2乃至6重量部とするのがよい。
このような難燃化助剤(A)と難燃剤粒子(B)とが混合された難燃剤組成物において、その混合比は、A:B=15:85乃至65:35(重量比)、特に25:75乃至60:40の範囲とする。後述する実施例に示されているように、このような量比で難燃化機構の異なる両成分を使用することにより、両成分が発揮する難燃化付与機構が相乗的に採用し、熱可塑性樹脂の難燃性が飛躍的に向上する。
本発明において、前述した難燃化助剤は極めて安価であるという利点を有しており、従って、上記のような難燃剤組成物は、難燃化助剤(A)を含有している分だけ、コストダウンを図ることができ、しかもコストダウンされながらも難燃性を著しく向上できるというのが、本発明の最大の利点である。
<難燃性オレフィン系樹脂組成物>
上述した難燃剤組成物は、種々の樹脂、特に熱可塑性樹脂に配合されてその難燃性を著しく高めることができる。
このような熱可塑性樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン重合体;エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同志のランダムあるいはブロック共重合体;α−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体等のα−オレフィンと不飽和モノマーとの共重合体;などのオレフィン系樹脂が最も好適である。また、このようなオレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂も使用することができ、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン・スチレン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル・塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のポリビニル化合物、ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフエニレンオキサイド等や、ポリ乳酸など生分解性樹脂に、前述した難燃剤組成物を配合することもできる。
また、上記難燃剤組成物の配合量は、該難燃剤組成物中のスメクタイト系粘土粒子の量が熱可塑性樹脂100重量部当り5乃至80重量部、特に18乃至50重量部の範囲となるように設定される。即ち、熱可塑性樹脂に対してスメクタイト系粘土粒子の量をこのような範囲に設定することにより、このスメクタイト系粘土粒子の難燃化付与効果を最大限に発揮させ、最も優れた難燃性を付与することができる。
上記難燃性樹脂組成物では、難燃剤組成物以外にも種々の配合剤、例えば、可塑剤、滑剤、着色剤、補強剤乃至充填剤、酸化防止剤等を配合し得ることは言うまでもない。
上述した本発明では、特にコストダウンを図りながら、オレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂の難燃性を大きく向上させることができるが、本発明で難燃化助剤として用いるスメクタイト系粘土粒子が不燃性ガスを発生して難燃性を付与するものではないため、例えば有害なハロゲンガスや窒素酸化物を発生させずに難燃性を高めることができるというのも、本発明の大きな利点である。
本発明の優れた効果を実施例で説明する。なお、実施例における測定は、以下の方法で行った。
(1)pH
ガラス電極式pHメーターを用いて、JIS K 5101−17−2:2004に準拠して調製した5重量%濃度懸濁液のpH値/25±1℃を測定した。
(2)NaO含有量(%)、化学組成(%)
蛍光X線分析装置((株)リガク製、ZSX−Primus−II)を用いて測定した。
(3)平均粒径(D50
レーザー回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製、マスターサイザー2000)を用いて測定した。
粉末試料をエタノールに分散し、体積基準粒度分布曲線より50%体積平均径d(0.5)(μm)を求め、体積基準平均粒径(D50)とした。
(4)粉末X線回折
X線回折装置((株)リガク製、MultiFlex、Cu−Kα)を使用して、以下の条件で測定した。
管電圧:40kV、管電流:30mA、発散スリット:0.15mm、散乱スリット:1°、受光スリット:0.3mm。
(5)水分(%)
40×40mmの秤量瓶に試料約2gを入れて精秤し、次に150℃のオーブンに入れて2時間乾燥する。2時間後、秤量瓶をオーブンから取り出して蓋をしてからデシケーター中で放冷後、重量を精秤する。最初の試料重量と乾燥後の試料重量の差から、計算により水分(%)を求めた。
(6)比表面積(m/g)
窒素ガスの吸着等温線から、BET法により測定した。
(7)白色度(%)
ハンター白色度計を使用し、常法により測定した。
(8)燃焼試験:酸素指数(OI)
JIS K 7201(酸素指数による燃焼性の試験方法)に準拠して測定した。
UL94垂直試験
UL燃焼試験(試験片厚:3.0mm)によって測定した。
以下に、本発明実施の為の難燃化助剤の調製方法について調製例(1〜11)として記述する。
<調製例1>
新潟県新発田市小戸N地区産の原料粘土(含水物)50kgをφ10mmの造粒板を装着したスクリュー式一軸押出成型機を用いて粗砕する。次いで、100Lのステンレス鋼製タンクに水56.5Lを張り込み、攪拌下に上記粗砕した原料粘土23.5kgをパラパラと加え、加え終わったら攪拌機の回転を高速にして24時間攪拌し、スラリー状(固形分濃度:20%)となす。
次に、スクリューデカンター(高速遠心分離機:G=3000)で湿式分級を行い、水分散液中の平均粒径が0.51μmであるスラリー(固型分濃度:5.2%)を65kg得た。この微粒子スラリーに水を加えて80Lとした後、攪拌下、徐々に加熱して80℃で安定させる。
一方、1Lのステンレス鋼製容器に水600gを秤取り、NaCO(試薬1級、和光純薬(株)製)104gを加えて攪拌溶解後80℃に加熱し、さらにステアリン酸(試薬特級)51gを加えて加熱溶解する。
このステアリン酸溶解液を湿式分級スラリーに添加し80℃で1時間攪拌反応させた後、フラッシュドライヤー(入口温度:380℃)で乾燥した。
この乾燥品を0.3mmのスクリーンを装着した小型ハンマーミル(東京アトマイザー(株)製)で粉砕後、風力分級機を用いて粗粒部分をカットし、本発明のベントナイト微粒子粉末(=スメクタイト系粘土粒子)からなる難燃化助剤を得た。
この微粒子粉末のpH、NaO含有量(%、無水物基準)、エタノール分散液中の平均粒径、X線回折パターン(図1)から求めた(001)面のピーク位置、オパールCTのピーク位置、水分、BET法による比表面積、白色度についての測定値を表1に示した。
<調製例2>
調製例1で得られるベントナイト微粒子粉末3kgに脂肪酸系表面処理剤ロキシオールG21を120g(4部)添加し、ポリ袋中で軽く混合後、スーパーミキサーに移し、140℃の温度下、撹拌混合(回転数:800rpm×処理時間:2時間)により表面処理を行い、本発明のスメクタイト系粘土粒子からなる難燃化助剤を調製した。
この微粒子粉末の前記一連の項目についての測定値を表1に示した。
<調製例3>
調製例1で得られるベントナイト微粒子粉末3kgをスーパーミキサーに充填し、低速回転(150rpm)下、エタノール希釈ロジン樹脂溶液(エタノール:ロジン樹脂=1:1)240gをゆっくり加え、注加終了後徐々に回転を上げ、800rpmに到達した時点から加熱を開始する。140℃に到達したらそのままの温度で2時間表面処理をし、本発明のスメクタイト系粘土粒子からなる難燃化助剤を調製した。
この微粒子粉末の前記一連の項目についての測定値を表1に示した。
<調製例4>
新潟県新発田市小戸N地区産の原土粘土(含水物)20kgを10mmの波目型を有する造粒板を装着したスクリュー式一軸押出成型機を用いて粗砕後、5mmφの造粒板に交換し、1回の造粒工程を経て粒状化する。
次いで、固形分換算でNaCO分が3.5%になるようにNaCO(試薬1級、和光純薬(株)製)粉末をふりかけ、十分混合後、前記同様の一軸押出成型機(5mmφの造粒板装着)で3回の繰り返し操作により混練・造粒し、粒状成型物を調製する。
この混練成型物を150℃に設定した恒温電気乾燥機(オーブン)で5時間乾燥し、乾燥後に2mmのスクリーンを装着したスピードミルで粗粉砕を行い、次いで0.3mmのスクリーンを装着した小型ハンマーミルで2回粉砕してから、小型風力遠心分級機を使用して粗粉部分をカットし、本発明のベントナイト微粒子粉末(=スメクタイト系粘土粒子)からなる難燃化助剤を得た。
この微粒子粉末の前記一連の項目についての測定値を表1に示した。
<調製例5>
調製例4で得られるベントナイト微粒子粉末3kgに脂肪酸系表面処理剤ロキシオールG21を120g(4部)添加しポリ袋で軽く混合した後、スーパーミキサーに移し、140℃の温度下、撹拌混合(回転数:800rpm×処理時間:2時間)により表面処理を行い、本発明のスメクタイト系粘土粒子からなる難燃化助剤を調製した。
この微粒子粉末の前記一連の項目についての測定値を表1に示した。
<調製例6>
調製例4で得られるベントナイト微粒子粉末を、超音速ジェットミルを用いてエタノール分散中の平均粒径が2.5μmになるように調製した。次にこの超微粉末ベントナイトを使用して調製例5と同様の表面処理を行ない、本発明のスメクタイト系粘土粒子からなる難燃化助剤を調製した。
この微粒子粉末の前記一連の項目についての測定値を表1に示した。
<調製例7>
調製例4で得られるベントナイト微粒子粉末3kgをスーパーミキサーに充填し、低速回転(150rpm)下、エタノール希釈シランカップリング剤(KBE−502信越シリコーン社製:エタノール=1:1)180gをゆっくり加え、注加終了後徐々に回転を上げ、800rpmに到達した時点から加熱を開始する。140℃に到達したらそのままの温度で2時間表面処理をし、本発明のスメクタイト系粘土粒子からなる難燃化助剤を調製した。
この微粒子粉末の前記一連の項目についての測定値を表1に示した。
次に、比較の為に本発明外の材料の調製方法について比較調製例(1〜4)として記述する。
<比較調製例1>
市販の酸性白土粉末を風力遠心分級機で分級して粗粉部分をカット後、150℃のオーブンで2時間乾燥し、酸性白土の微粉末を得た。
この酸性白土微粉末の前記一連の項目についての測定値も表1に示した。
<比較調製例2>
市販のベントナイト粉末を購入し、小型風力遠心分級機を使用して粗粉部分をカットし、ベントナイトの微粉末を得た。
このベントナイト微粉末の前記一連の項目についての測定値も表1に示した。
<比較調製例3>
比較調製例1で得られた酸性白土微粉末3kgに脂肪酸系表面処理剤ロキシオールG21を120g(4部)添加しポリ袋で軽く混合した後、スーパーミキサーに移し、140℃の温度下、撹拌混合(回転数:800rpm×処理時間:2時間)により表面処理を行った。
この表面処理された酸性白土微粉末の前記一連の項目についての測定値も表1に示した。
<比較調製例4>
市販の有機ベントナイト(層間にジアルキルジメチルアンモニウムイオンを含有)を比較試料として用意した。
この粉末の前記一連の項目についての測定値も表1に示した。
Figure 2011012239
<実施例1〜実施例13,B1,B2>
EVA樹脂(住友化学工業(株)製、スミエート KA30)に、難燃剤として水酸化マグネシウム、本発明の難燃化助剤として調製例1〜7で調製したスメクタイト系粘土粒子を、それぞれ表2に記載の配合部数で添加し、二軸押出成型機にかけて混練後、射出成型し、燃焼試験により酸素指数(OI)を求めて難燃性評価を行なった。
その結果については表2にまとめて示した。
尚、B1,B2は、従来一般使用の難燃剤のみを添加して難燃化助剤は無添加の場合の対照試験(Blank Test)の例である。
Figure 2011012239
<比較例1〜比較例6>
EVA樹脂(住友化学工業(株)製、スミエート KA30)に、難燃剤として水酸化マグネシウム、本発明との比較の為の比較調製例1〜4で調製したスメクタイト系粘土粒子を、それぞれ表3に記載の配合部数で添加し、二軸押出成型機にかけて混練後、射出成型し、燃焼試験により酸素指数(OI)を求めて難燃性評価を行なった。
その結果については表3にまとめて示した。
Figure 2011012239
以上のEVA樹脂組成物の燃焼試験結果より、実施例1〜13においては水酸化マグネシウム系難燃剤と本発明の難燃化助剤の併用による難燃性向上効果が大いに認められたが、比較例1〜6においては難燃性向上効果が見られなかった。しかも、比較例1は発泡が激しくて成型が不可能であり、比較例2および3では異臭発生と変色が見られた。さらに、比較例4では異臭と変色(青みがかった黄色)が激しかった。
<実施例14〜実施例20,B3,B4>
PP樹脂(日本ポリケム(株)製、ノバテックBC3)に、難燃剤として水酸化マグネシウム、本発明の難燃化助剤として調製例1〜7で調製したスメクタイト系粘土粒子を、それぞれ表4に記載の配合部数で添加し、二軸押出成型機にかけて混練後、射出成型し、燃焼試験により酸素指数(OI)を求めて難燃性評価を行なった。
その結果については表4にまとめて示した。
尚、B3,B4は、従来一般使用の難燃剤のみを添加して難燃化助剤は無添加の場合の対照試験(Blank Test)の例である。
Figure 2011012239
<比較例7〜比較例11>
PP樹脂(日本ポリケム(株)製、ノバテックBC3)に、難燃剤として水酸化マグネシウム、本発明との比較の為の比較調製例1〜4で調製したスメクタイト系粘土粒子を、それぞれ表5に記載の配合部数で添加し、二軸押出成型機にかけて混練後、射出成型し、燃焼試験により酸素指数(OI)を求めて難燃性評価を行なった。
その結果については表5にまとめて示した。
Figure 2011012239
以上のPP樹脂組成物の燃焼試験結果より、実施例14〜17においては水酸化マグネシウム系難燃剤を減量して、その分を本発明の難燃化助剤で代替添加しても難燃性向上効果が認められたが、比較例7〜11においては難燃性向上効果が見られなかった。しかも、全ての成型品に異臭発生と変色が見られた。
<実施例21〜実施例26,B5,B6>
PVC-Cp(塩化ビニルコンパウンド、PVC/DOP/安定剤=100:50:2)に、難燃剤として三酸化アンチモン((株)鈴裕化学製、FCP-AT-3CN)または水酸化アルミニウム(日本軽金属(株)製、BF-013)、本発明の難燃化助剤として調製例2,4,6で調製したスメクタイト系粘土粒子を、それぞれ表6に記載の配合部数で添加し、ロール混練後、手動式油圧プレスで成型し、燃焼試験により酸素指数(OI)を求めて難燃性評価を行なった。
その結果については表6に示した。
尚、B5,B6は、従来一般使用の難燃剤のみを添加して難燃化助剤は無添加の場合の対照試験(Blank Test)の例である。
Figure 2011012239
以上の元々或る程度の難燃性を有するPVC樹脂組成物での燃焼試験結果より、実施例21〜26においては三酸化アンチモンまたは水酸化アルミニウムの半量を、高安全かつ安価な本発明の難燃化助剤で置き換えても難燃効果の低下は全く起こらなかった。
<実施例27,実施例28,B7,B8,R1〜R6>
PP樹脂(日本ポリケム(株)製、ノバテックBC3)またはABS樹脂(テクノポリマー (株)製、テクノABS350)に、難燃剤として臭素系難燃剤((株)鈴裕化学製、FCP-801)または三酸化アンチモン((株)鈴裕化学製、FCP-AT-3CN)、本発明の難燃化助剤として調製例1,5,6で調製したスメクタイト系粘土粒子を、それぞれ表7に記載の配合部数で添加し、二軸押出成型機にかけて混練後、射出成型し、燃焼試験により酸素指数(OI)を求めて難燃性評価を行なった。
その結果については表7にまとめて示した。
尚、B7,B8は、従来一般使用の難燃剤のみを添加し、難燃化助剤は無添加の場合の対照試験(Blank Test)の例である。
また、R1〜R6は、従来一般使用の難燃剤の添加量は減量せずに、難燃化助剤を追加添加し、その追加添加の分だけ樹脂分を減量して参考例としたものであり、以下の比較例(12〜15)に対応する組成にしたものである。
Figure 2011012239
<比較例12〜比較例15>
PP樹脂(日本ポリケム(株)製、ノバテックBC3)またはABS樹脂(テクノポリマー(株)製、テクノABS350)に、難燃剤として臭素系難燃剤((株)鈴裕化学製、FCP-801)および三酸化アンチモン((株)鈴裕化学製、FCP-AT-3CN)、本発明との比較の為の比較調製例3,4で調製したスメクタイト系粘土粒子を、それぞれ表8に記載の配合部数で添加し、二軸押出成型機にかけて混練後、射出成型し、燃焼試験により酸素指数(OI)を求めて難燃性評価を行なった。
その結果については表8にまとめて示した。
Figure 2011012239
以上のPP樹脂組成物またはABS樹脂組成物の燃焼試験結果より、実施例27および実施例28においては臭素系難燃剤および三酸化アンチモンを4割減量して、その分を本発明の難燃化助剤で代替添加しても難燃性は同等乃至やや向上が認められた。また、参考例(R1〜R6)と比較例(7〜11)の比較からは、難燃化助剤として調製例1、調製例5および調製例6で得られたものを用いた参考例において、対応する処方での比較例に比べて可なり高い難燃性を示した。しかも、比較例では臭素系難燃剤や三酸化アンチモンへの代替乃至追加の添加効果が見られないどころか、難燃性は低下し、樹脂加工時の異臭と成形品の変色も激しかった。
<実施例29〜実施例36,B9>
PVC-Cp(塩化ビニルコンパウンド、PVC/DOP/安定剤=100:75:2)に、難燃剤として三酸化アンチモン((株)鈴裕化学製、FCP-AT-3CN)およびホウ酸亜鉛(BORAX社製、Firebrake ZB2335)、本発明の難燃化助剤として調製例1,4で調製したスメクタイト系粘土粒子を、それぞれ表9に記載の配合部数添加し、150〜160℃でロール混練後、手動式油圧プレス(200℃)で成型し、燃焼試験により酸素指数(OI)を求めて難燃性評価を行なった。さらに、ホウ酸亜鉛の配合部数を順次減量し、その分置き換えて難燃化助剤(調製例4)の配合量を順次増量した実施例33〜36についてはUL94燃焼試験(垂直試験)も行なった。
その結果については表9に示した。
尚、B9は、従来一般使用の難燃剤のみを添加して難燃化助剤は無添加の場合の対照試験(Blank Test)の例である。
Figure 2011012239
燃焼試験結果より、ホウ酸亜鉛の半量50〜60%を高安全かつ安価な本発明の難燃化助剤で置き換えても難燃効果の低下は全く起こらず、むしろ難燃性が向上した。特に、対照試験B9と実施例33〜36でのUL94燃焼試験においては、いずれもV−1の評価であり、ノンドリップ(→ドリップ抑制効果大)でグロータイムも無く(0秒)、しかも燃焼時間合計は本発明の難燃化助剤による置換配合量の増量につれて短くなるという大きな利点が認められた。

Claims (11)

  1. スメクタイト系粘土粒子からなる難燃化助剤において、
    前記スメクタイト系粘土粒子は、レーザー回折法で測定したエタノール中での体積基準平均粒径(D50)が5.0μm以下であり、ナトリウム含有率がNaO換算で1.5乃至3.5重量%の範囲にあり、粉末X線回折法で測定して、回折角2θが8.5乃至9.5度の領域に、スメクタイトの[001]面由来の回折ピークを示し、且つ150℃乾燥基準での水分含有率が4.0重量%以下であることを特徴とする難燃化助剤。
  2. 前記スメクタイト系粘土粒子は、粉末X線回折法で測定して、回折角2θが21.5乃至22.5度の領域にピークを有するオパール成分を含有している請求項1に記載の難燃化助剤。
  3. 前記スメクタイト系粘土粒子が、疎水性表面処理剤によって表面処理されている請求項1に記載の難燃化助剤。
  4. 前記疎水性表面処理剤を、スメクタイト系粘土粒子100重量部当り1乃至10重量部の量で含む請求項3に記載の難燃化助剤。
  5. 前記疎水性表面処理剤が、高級脂肪酸もしくはその誘導体、樹脂酸、パラフィンワックス、またはシランカップリング剤である請求項3に記載の難燃化助剤。
  6. 請求項1に記載の難燃化助剤(A)と難燃剤粒子(B)とをA:B=15:85乃至65:35の重量比で含むことを特徴とする難燃剤組成物。
  7. 前記難燃剤粒子(B)が水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムである請求項6に記載の難燃剤組成物。
  8. 請求項6に記載の難燃剤組成物と熱可塑性樹脂とを含み、該難燃剤組成物が、該熱可塑性樹脂100重量部当り前記スメクタイト系粘土粒子を5乃至80重量部の量で含むように配合されていることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
  9. 前記熱可塑性樹脂がオレフィン系樹脂である請求項8に記載の難燃性樹脂組成物。
  10. ナトリウム含有率がNaO換算で0.3乃至2.5重量%の範囲にあるベントナイトをスメクタイト系粘土原料として用意し、
    前記ベントナイトを水中に投入してベントナイト水性懸濁液を調製し、
    前記水性懸濁液を遠心分離に付し、その上澄みのスラリーを取り出し、
    前記スラリーを加熱乾燥処理して、粉末X線回折で回折角2θが8.5乃至9.5度の領域に、スメクタイトの[001]面由来の回折ピークを有する固形分を得、
    前記固形分を粉砕し、レーザー回折法で測定したエタノール中での体積基準平均粒径(D50)が5.0μm以下となる様に分級すること、
    を特徴とする難燃化助剤の製造法。
  11. 前記スラリーの加熱乾燥に先立って、疎水性表面処理剤を混合する請求項10に記載の難燃化助剤の製造法。
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