JP2011003514A - 透明電極の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】透明導電膜を結晶化させることにより透明電極の耐薬品性を高めることができると共に、透明導電膜の結晶化時に高分子材料基板を変形・劣化させることがない透明電極の製造方法を提供する。
【解決手段】高分子材料基板上に、Snを含有する非晶質透明導電膜を形成する工程と、非晶質透明導電膜を110℃以上130℃未満の温度で熱処理して結晶質透明電極とする工程とを含むことを特徴とする、透明電極の製造方法である。ここで、非晶質透明導電膜のSn濃度は、SnO2換算で1〜5質量%であることが好ましい。
【選択図】図1
【解決手段】高分子材料基板上に、Snを含有する非晶質透明導電膜を形成する工程と、非晶質透明導電膜を110℃以上130℃未満の温度で熱処理して結晶質透明電極とする工程とを含むことを特徴とする、透明電極の製造方法である。ここで、非晶質透明導電膜のSn濃度は、SnO2換算で1〜5質量%であることが好ましい。
【選択図】図1
Description
本発明は、透明導電膜を用いた透明電極の製造方法に関し、特には、高分子材料フィルムよりなる基板(高分子材料基板)上に形成した透明導電膜を用いた透明電極の製造方法に関するものである。
従来、液晶表示素子(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示素子(EL)等の各種表示素子、或いは、薄膜太陽電池の電極部には、可視光線透過率が高く且つ低抵抗な透明導電膜を用いた透明電極が使用されている。具体的には、透明基板上に積層したインジウム(In)、錫(Sn)および酸素原子(O)を主成分とする透明導電膜(ITO膜)をパターニングしてなる透明電極が使用されている。
そして、上記透明電極の製造方法としては、透明基板上に透明導電膜が形成されてなる透明導電積層体をエッチング処理して該透明導電膜をパターニングする工程を含む電極基板の製造方法において、エッチング処理以前は透明導電膜を結晶化させず、エッチング処理後に透明導電膜を130〜200℃で熱処理して結晶化させることを特徴とする電極基板の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この製造方法によれば、エッチング工程(透明導電膜表面にパターンを与える工程)で透明基板にダメージを与えることなく、抵抗値の低い透明導電膜を製造することができる。
しかしながら、上記エッチング処理後に130〜200℃で透明導電膜を熱処理して結晶化させる透明電極の製造方法では、130℃以上の高温で透明導電膜を結晶化させているため、透明基板に高分子材料基板を用いた場合、熱処理時に高分子材料基板が熱により変形・劣化する恐れがあった。一方、非晶質の透明導電膜は耐薬品性が低いため、透明導電膜を結晶化させずに透明電極に用いた場合には、空気中に含まれている酸素等の酸性成分により透明電極の腐食が発生するという問題があった。
そのため、透明導電膜を結晶化させることにより透明電極の耐薬品性を高めることができると共に、透明導電膜の結晶化時に高分子材料基板を変形・劣化させることがない透明電極の製造方法の確立が求められていた。
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の透明電極の製造方法は、高分子材料基板上に、Snを含有する非晶質透明導電膜を形成する工程と、非晶質透明導電膜を110℃以上130℃未満の温度で熱処理して結晶質透明電極とする工程とを含むことを特徴とする。このように、高分子材料基板上に形成した非晶質透明導電膜を熱処理して結晶化し結晶質透明電極とすれば、結晶化した透明導電膜は高い耐薬品性を有しているので、製造された結晶質透明電極が腐食し難くなる。更に、非晶質透明導電膜がSnを含んでおり、非晶質透明導電膜の熱処理による結晶化を110℃以上130℃未満の低い温度で行うことができるので、熱処理時に高分子材料基板が熱により変形・劣化するのを防止できると共に、低温条件下、低エネルギーで結晶質透明電極を製造することができる。なお、高分子材料基板の熱による変形・劣化をより確実に防止するという観点からは、非晶質透明導電膜の熱処理温度は110℃以上130℃未満であることが好ましい。また、本発明において、非晶質とはX線回折でITOの結晶ピークが見られない状態を指し、結晶質とはX線回折でITOの結晶ピークが30〜31°(2θ)の間に見られる状態を指す。
ここで、本発明の透明電極の製造方法は、前記非晶質透明導電膜のSn濃度がSnO2換算で1〜5質量%であることが好ましい。非晶質透明導電膜中のSn濃度を低濃度とすれば、より低い熱処理温度で非晶質透明導電膜を結晶化することができるからである。なお、透明導電膜中のSnO2濃度は、例えばターゲットの組成により決定することができる。
また、本発明の透明電極の製造方法は、前記高分子材料基板が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)またはポリエーテルスルホン(PES)のいずれか、或いは、それらの組合せからなることが好ましい。透明性および折り曲げ性が良く、スパッタリングに耐えうる程度の耐熱性を持ち、且つ汎用性の樹脂のため安価であるからである。なお、本発明において、高分子材料基板は、単層の基板であっても良いし、複数の層が積層された基板であっても良い。
更に、本発明の透明電極の製造方法は、前記非晶質透明導電膜を110℃以上130℃未満の温度で熱処理して結晶質透明電極とする工程の前に、非晶質透明導電膜をエッチング処理してパターニングする工程を含むことが好ましい。非晶質透明導電膜は耐薬品性が低いためにエッチング処理し易く、結晶化した透明導電膜は耐薬品性が高いためにエッチング処理し難いところ、高分子材料基板上に形成した非晶質透明導電膜をパターニングした後に熱処理して結晶化させれば、パターニングを容易に行うことができるからである。
そして、本発明の透明電極の製造方法は、前記非晶質透明導電膜の形成を、真空度6×10−4Pa以下(絶対圧基準)の雰囲気下でスパッタリングにより行うことが好ましい。通常、スパッタリングは真空度6×10−1Pa程度で実施するが、スパッタリングの前処理はなるべく減圧下で行うことが好ましい。そこで、このようにすれば、水分を除去した雰囲気下で非晶質透明導電膜の成膜を行うことができ、透明電極の結晶性を向上することができるからである。
本発明の透明電極の製造方法によれば、透明導電膜を結晶化させることにより透明電極の耐薬品性を高めることができると共に、透明導電膜の結晶化時に高分子材料基板を熱により変形・劣化させることがない。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ここに、本発明の製造方法を用いて製造する透明電極は、帯電粒子移動方式(気体中飛翔方式および液体中電気泳動方式)の画像表示パネルや情報表示パネル、液晶表示素子(LCD)、エレクトロルミネッセンス表示素子(EL)等の電子画像表示素子、或いは、薄膜太陽電池の電極部などに用いることができるものである。そして、本発明の製造方法は、高分子材料基板上に、Snを含有する非晶質透明導電膜を形成する工程と、該非晶質透明導電膜を110℃以上130℃未満の温度で熱処理して結晶質透明電極とする工程とを含むことを特徴とする。
ここで、本発明の製造方法において用いる高分子材料基板としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレートといったポリエステル系高分子材料、ポリオレフィン系高分子材料や、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート等の単一成分の高分子材料、或いは、これらの高分子材料に第二、第三成分を共重合した共重合高分子からなる基板を挙げることができる。より具体的には、例えば軟化点が130℃以下の高分子(PET等)からなる基板を用いることができる。なお。上記した高分子材料基板は概ね可とう性基板として用いられる。また、高分子材料基板は、単層基板であっても良いし、積層(多層)基板であっても良い。
また、高分子材料基板に形成する非晶質透明導電膜としては、既知の透明導電膜、例えば、In、SnおよびOを主成分とする透明導電膜(ITO膜)が挙げられる。ここで、この非晶質透明導電膜は、スパッタ法や、蒸着法、イオンプレーティング法等の既知の成膜法を用いて基板上に形成することができるが、水分を除去した雰囲気下で非晶質透明導電膜の成膜を行い、透明電極の結晶性を向上するという観点から、真空度6×10−4Pa以下(絶対圧基準)でスパッタリングすることにより成膜することが好ましい。また、スパッタリングの前処理を10−5Pa以下の雰囲気下で行うことが好ましい。更に、低い熱処理温度で結晶質透明電極を形成するという観点から、非晶質透明導電膜中のSn濃度はSnO2換算で1〜5質量%、好ましくは1〜3質量%とすることが好ましい。なお、非晶質透明導電膜中のSnO2濃度は、ターゲットの組成を変更することにより制御することができる。
そして、高分子材料基板上に形成された非晶質透明導電膜には、任意にパターニングを行うことができる。ここで、パターニングは常法に従い非晶質透明導電膜にエッチング処理を施すことにより行うことができる。なお、エッチング処理には既知の水溶液エッチャント、例えば王水、ハロゲン化水素、リン酸、硫酸、硝酸、塩素酸、酢酸や蓚酸等の有機酸、ヨウ素、塩化第二鉄(FeCl3)、或いは、これらの組み合わせ等を用いることができる。
ここで、結晶化した透明導電膜は耐薬品性が高くエッチングし難いので、パターニングは非晶質透明導電膜を熱処理する前に行う必要がある。
そして、高分子材料基板上に形成され、任意にパターニングを施された非晶質透明導電膜は、110℃以上130℃未満の温度、好ましくは110〜120℃の温度で熱処理されて結晶質透明電極となる。ここで、熱処理は、例えば熱風オーブン、赤外線加熱ヒーターを用いて行うことができ、また、熱処理を行う際の雰囲気は、例えば大気雰囲気下または窒素等の不活性雰囲気下とすることができる。
上述した本発明の製造方法によれば、透明導電膜を結晶化させることにより透明電極の耐薬品性を高めることができる。また、非晶質透明導電膜の結晶化時に130℃未満の温度で熱処理を行っているので、高分子材料基板を熱により変形・劣化させることがない。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(非晶質透明導電膜の形成)
ヒラノ光音製MIC1050Vを用い、DC4kWにて非晶質透明導電膜を形成した。具体的には、ヒラノ光音製MIC1050VにITOターゲット(SnO2含有割合:2質量%)をセットし、ターボ分子ポンプで5×10−4Paまで排気した後、ArガスとO2ガスの混合ガスを、Arガス160sccm、O2ガス40sccmの流量で導入し、0.5Paになるように調整した。その後、DC4kWの電力を印加し、膜厚30nmの非晶質透明導電膜を高分子材料基板上に成膜した。そして、成膜した非晶質透明導電膜に対し、フォトリソ法によりパターニング処理を行った。
ヒラノ光音製MIC1050Vを用い、DC4kWにて非晶質透明導電膜を形成した。具体的には、ヒラノ光音製MIC1050VにITOターゲット(SnO2含有割合:2質量%)をセットし、ターボ分子ポンプで5×10−4Paまで排気した後、ArガスとO2ガスの混合ガスを、Arガス160sccm、O2ガス40sccmの流量で導入し、0.5Paになるように調整した。その後、DC4kWの電力を印加し、膜厚30nmの非晶質透明導電膜を高分子材料基板上に成膜した。そして、成膜した非晶質透明導電膜に対し、フォトリソ法によりパターニング処理を行った。
(実施例1)
上述のようにして高分子材料基板上に形成した非晶質透明導電膜を、熱風クリーンオーブン(エスペック製)を用いて温度110℃で60分間熱処理し、透明電極を製造した。そして、製造した透明電極について、以下の方法で結晶性および耐薬品性を評価した。結果を図1および図2に示す。
(実施例2,3)
熱処理温度を120℃(実施例2)、125℃(実施例3)とした以外は実施例1と同様にして透明電極を製造し、実施例2については結晶性および耐薬品性を、実施例3については耐薬品性を評価した。結果を図1および図2に示す。
上述のようにして高分子材料基板上に形成した非晶質透明導電膜を、熱風クリーンオーブン(エスペック製)を用いて温度110℃で60分間熱処理し、透明電極を製造した。そして、製造した透明電極について、以下の方法で結晶性および耐薬品性を評価した。結果を図1および図2に示す。
(実施例2,3)
熱処理温度を120℃(実施例2)、125℃(実施例3)とした以外は実施例1と同様にして透明電極を製造し、実施例2については結晶性および耐薬品性を、実施例3については耐薬品性を評価した。結果を図1および図2に示す。
(比較例1)
高分子材料基板上に形成した非晶質透明導電膜(熱処理なし)について、結晶性および耐薬品性を評価した。結果を図1および図2に示す。
(比較例2〜5)
熱処理温度を130℃(比較例2)、140℃(比較例3)、150℃(比較例4)、105℃(比較例5)とした以外は実施例1と同様にして透明電極を製造し、比較例2〜4については結晶性および耐薬品性を、比較例5については耐薬品性を評価した。結果を図1および図2に示す。
高分子材料基板上に形成した非晶質透明導電膜(熱処理なし)について、結晶性および耐薬品性を評価した。結果を図1および図2に示す。
(比較例2〜5)
熱処理温度を130℃(比較例2)、140℃(比較例3)、150℃(比較例4)、105℃(比較例5)とした以外は実施例1と同様にして透明電極を製造し、比較例2〜4については結晶性および耐薬品性を、比較例5については耐薬品性を評価した。結果を図1および図2に示す。
(結晶性の評価)
ロックサイエンス製MXP3−HF(光源:CuKα線(波長1.54Å、2θ法))を用いて、X線回折強度を測定した。そして、得られたX線回折図形より求めたITO結晶の(222)面からのX線反射強度(30〜31°(2θ)のピークの反射強度)から、結晶性を評価した。具体的には、反射強度が600cps以上であれば結晶質透明電極(結晶化している)とし、600cps未満であれば非晶質透明電極(結晶化していない)とした。
ロックサイエンス製MXP3−HF(光源:CuKα線(波長1.54Å、2θ法))を用いて、X線回折強度を測定した。そして、得られたX線回折図形より求めたITO結晶の(222)面からのX線反射強度(30〜31°(2θ)のピークの反射強度)から、結晶性を評価した。具体的には、反射強度が600cps以上であれば結晶質透明電極(結晶化している)とし、600cps未満であれば非晶質透明電極(結晶化していない)とした。
(耐薬品性の評価)
製造した透明電極を、ITO−06N(関東化学製)に温度23℃で所定時間浸漬し、水洗した後に三菱化学(株)製Lowresterで表面抵抗値を測定した。60秒の浸漬により表面抵抗値が200%以上上昇したものは、耐薬品性が無いとした。
製造した透明電極を、ITO−06N(関東化学製)に温度23℃で所定時間浸漬し、水洗した後に三菱化学(株)製Lowresterで表面抵抗値を測定した。60秒の浸漬により表面抵抗値が200%以上上昇したものは、耐薬品性が無いとした。
図1より、110℃以上、特には120℃以上の温度で熱処理することにより結晶質透明電極を得られることが分かる。また、図2より、105℃以下の温度で熱処理をした場合には透明電極の十分な耐薬品性が得られないことが分かる。
Claims (5)
- 高分子材料基板上に、錫元素(Sn)を含有する非晶質透明導電膜を形成する工程と、
前記非晶質透明導電膜を110℃以上130℃未満の温度で熱処理して結晶質透明電極とする工程と、
を含むことを特徴とする、透明電極の製造方法。 - 前記非晶質透明導電膜のSn濃度がSnO2換算で1〜5質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の透明電極の製造方法。
- 前記高分子材料基板が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートまたはポリエーテルスルホンのいずれか、或いは、それらの組合せからなることを特徴とする、請求項1または2に記載の透明電極の製造方法。
- 前記非晶質透明導電膜を110℃以上130℃未満の温度で熱処理して結晶質透明電極とする工程の前に、非晶質透明導電膜をエッチング処理してパターニングする工程を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の透明電極の製造方法。
- 前記非晶質透明導電膜の形成を、真空度6×10−4Pa以下の雰囲気下でスパッタリングにより行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の透明電極の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009148020A JP2011003514A (ja) | 2009-06-22 | 2009-06-22 | 透明電極の製造方法 |
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JP2009148020A JP2011003514A (ja) | 2009-06-22 | 2009-06-22 | 透明電極の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2009148020A Withdrawn JP2011003514A (ja) | 2009-06-22 | 2009-06-22 | 透明電極の製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101317803B1 (ko) | 2011-01-28 | 2013-10-15 | 삼성코닝정밀소재 주식회사 | 상전이형 산화인듐주석 투명전도막을 전극으로 갖는 액정 디스플레이 장치, 유기 발광 표시장치 및 터치스크린 |
-
2009
- 2009-06-22 JP JP2009148020A patent/JP2011003514A/ja not_active Withdrawn
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KR101317803B1 (ko) | 2011-01-28 | 2013-10-15 | 삼성코닝정밀소재 주식회사 | 상전이형 산화인듐주석 투명전도막을 전극으로 갖는 액정 디스플레이 장치, 유기 발광 표시장치 및 터치스크린 |
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