JP2011000702A - 工程間フレキシブル自動搬送システム - Google Patents

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Abstract

【課題】レイアウト変更の自由度を高めつつ低コストで実施可能な、被加工対象物を自動搬送するのに適した工程間フレキシブル自動搬送システムを提供する。
【解決手段】複数のマシニングセンタ10に対応して配置されるワークステーションキット100と、これらを連結するレールキット200と、レールキット間又はレールキットとワークステーションキット間に配置されるターンキット300と、レールキット又はワークステーションキットの何れかに連結されるワーク投入キット410と、レールキット又はワークステーションキットの何れかであってワーク投入キットとは別のレールキット又はワークステーションキットに連結されるワーク排出キット420と、互いに連結されたこれらのキット上を移動可能な複数のワーク搬送車とを有し、レールキットは、ワークステーションキット、ターンキット、ワーク投入キット、ワーク排出キットと着脱自在である。
【選択図】図1

Description

本発明は、複数の加工機を配置してなる工程間において被加工対象物を自動搬送するのに適した工程間フレキシブル自動搬送システムに関する。
例えばコネクティングロッド(以下、単に「コンロッド」とする)のようなエンジン部品を加工するマシニングセンタ等の加工機同士間でワークを自動搬送する装置として、ガントリーローダー搬送装置、コンベヤー搬送装置、パレット搬送装置などが従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2009−34801号公報
ガントリーローダー搬送装置(以下、「ガントリーローダー」とする)は、工場の天井搬送レールとこれに吊り下げられるクレーンを配置して、複数の互いに離間したマシニングセンタ間のワークの搬送を行う装置である。このようなガントリーローダーで頭上搬送を行う場合、レイアウトは直線ラインのみから構成され、設備計画当初から能力増強を見越して十分余裕を持った長さを確保する必要があり、これに伴って工場スペースも十分広く確保しておかなければならない。
従来のように小品種多量生産の場合は、決められた製品を多量に製造する形態をなしているので、このような一旦工場に配設したガントリーローダーを介してワークを各マシニングセンタに効率良く搬送することが可能であった。しかしながら、近年の多品種少量生産の場合、多品種製品の生産計画の頻繁な見直しに応じて、工場の製造ラインのレイアウトの変更も頻繁に行わなければならなくっていた。しかし、工場の天井に一旦設置したガントリーローダーを製造ラインのレイアウト変更に伴って設置し直すことは、設備投資上費用が非常に嵩み、対応が困難となっていた。
より具体的には、ガントリーローダーによる搬送の場合、ワークをチャックするアーム及び上下させる構造物が大きくなるため、搬送レールを有するフレームが直線構造になり、かつ頭上において大掛かりとなり、増築、削減が容易にできないという欠点があった。
特に昨今の経済状況のような急激な減衰等による設備の統廃合が頻繁に行われる環境下では、搬送装置を改造する費用が多額となり、改造期間にも時間を有してしまう問題も生じていた。
また、ガントリーローダーを用いた場合、生産台数の減少した部品を各製造ラインでフレキシブルに流すことが難しく或は不可能となっていた。更に、ガントリーローダーの構造上、搬送爪を含む上下駆動部がどうしても大きくなるため、上下動やキャリーの動力に大きなモータ、動力が必要となっていた。具体的には、例えば、コンロッドのようにワーク重量1kg以下のものを2〜4個搬送するのに数10KWの出力を有するモータを使用しなければならず、省エネ上問題となっていた。
一方、各マシニングセンタ間の部品搬送をコンベヤー搬送を介して行う場合、レイアウト変更に伴い各マシニングセンタ間を連結するコンベヤーのベルトやチェーンをそれぞれ縁切りして設置しなければならなかった。即ち、この場合も製造ラインのレイアウト変更に伴ってそのレイアウト変更に適したコンベヤーを準備する必要があり、設備投資上費用がかかり問題となっていた。また、マシニングセンタ前面にコンベヤーを設置してワークを搬送する必要があり、その都度ワークがフリーになる為、マシニングセンタの治具にワークを投入する際に位置決めするための装置が特別に必要となって設備投資費用がかなり嵩み、問題となっていた。また、生産能力の向上、レイアウト変更に関してガントリーローダー搬送と同様の問題を抱えていた。
他方、各マシニングセンタ間の部品搬送をパレットを介して行う場合、パレット自体をコンベヤーに直接搭載して部品を搬送するため、搬送中の振動や衝撃に耐えられるようにパレットの強度を十分もたせると共に、各マシニングセンタにおけるワークのハンドリングを容易にするために、各マシニングセンタにおいて停止する際の位置決め精度向上のための工夫を全てのパレットに施さなければならなかった。また、各パレットのワークを固定するクランプ(治具)を設けなければならず、パレットを搬送する搬送装置も専用品となってレイアウト変更に対応できない構成となっていた。
このような理由により各パレットの製造コストが嵩んでいた。また、多品種少量生産の下、ワークの設計変更を行う毎に、このようなしっかりした造りのパレットをそのワークに対応して変更しなければならず、この点でもコスト高を招いていた。また、パレットでワークを搬送する場合、各パレットの精度を揃える必要がありコストが嵩んでいた。また、パレットを搬送する装置も大掛かりで、能力増強する場合、ガントリーローダーによるワーク搬送の場合と同様の問題を抱えていた。
本発明の目的は、複数の加工機を配置してなる工程間において多品種少量生産に伴う設備のレイアウト変更が頻繁に行われても、レイアウト変更の自由度を高めつつこれを低コストで実施できる、被加工対象物を自動搬送するのに適した工程間フレキシブル自動搬送システムを提供することにある。
上述の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る工程間フレキシブル自動搬送システムは、
複数の工程からなる部品製造工程の各工程ごとに設置されたマシニングセンタに対応して配置されるワークステーションキットと、前記各ワークステーションキットを連結するレールキットと、前記レールキット間又はレールキットとワークステーションキット間に配置されるターンキットと、前記レールキット又はワークステーションキットの何れかに連結されるワーク投入キットと、前記レールキット又はワークステーションキットの何れかであって前記ワーク投入キットとは別のレールキット又はワークステーションキットに連結されるワーク排出キットと、前記互いに連結されたワーク投入キット、ワークステーションキット、レールキット、ワーク排出キット上を移動可能な複数のワーク搬送車とを有した工程間フレキシブル自動搬送システムであって、
前記レールキットは、前記ワークステーションキット、ターンキット、ワーク投入キット、ワーク排出キットと着脱自在となっており、
前記ターンキットは、前記ワーク搬送車の走行方向を決める各レールキットの配置方向を変更可能となっており、
前記ワーク搬送車は、製造するワーク毎のトレーを交換可能に載置して搬送できるようになっており、
前記ワークステーションキットには、前記ワーク搬送車の有無、ワーク搬送車が搬送するワークの前記マシニングセンタとの関係に関する情報を少なくとも管理するサブコントローラが備わり、かつ前記サブコントローラが備わっていないワークステーションキット又はワーク投入キットには、前記サブコントローラからの情報を無線通信又は有線通信で集中管理すると共に、前記複数のワーク搬送車のレールキット上の走行状態やワーク投入キット、ワークステーションキット、ワーク排出キット上の停止状態を無線通信で制御するメインコントローラが備わっていることを特徴としている。
本発明がこのような構成を有することで、従来のようにガントリーローダーを天井に設置した後に工場内の各工程のレイアウト変更が生じた際に、このガントリーローダーの配置を全て変えるというような面倒で設備投資上コスト高につくような不都合を解消できる。また、ガントリーローダーを設置した場合に、将来のレイアウト変更に備えて不必要な範囲までガントリーローダーを設置して設備コストの向上を招いていたが、本発明によるとこのような不都合も解消できる。
また、従来のように各マシニングセンタ間の部品搬送をコンベヤー搬送を介して行う不都合、即ちレイアウト変更に伴いコンベヤーのベルトやチェーンをそれぞれそのレイアウト変更に適合するように縁切りすることを必要とせず、レイアウト変更を低コストで簡単かつ容易に行うことができる。
また、従来のようにパレットを用いて各マシニングセンタ間の部品搬送を行う場合の不都合、即ちパレット自体に十分な強度を持たしたりワークを固定するクランプ(治具)を設けたりする必要がなく、パレットを搬送する専用品である搬送装置も準備する必要がなくなり、レイアウト変更を簡単かつ容易に行うことができる。
このように本発明によると、多品種少量生産に伴う製造工程の頻繁なレイアウト変更に迅速かつ新たな設備投入などのコストをかけずに対応することが可能となり、現代の対品種少量生産の流れにうまく調和することができる。
また、レールキットが、ワークステーションキット、ターンキット、ワーク投入キット、ワーク排出キットと着脱自在に連結されるようになっているので、レイアウト変更すべきスペースに他の設備や工場の柱等の障害物があっても、これを迂回してレイアウト変更でき、レイアウト変更の自由度が向上する。
また、ワーク搬送車は、製造するワーク毎のトレーを交換可能に載置して搬送できるようになっているので、ワーク搬送車による様々なワークの搬送に迅速に対応できる。即ち、ワークの種類の切替に迅速に対応可能となっており、多品種少量生産に適している。
また、本発明の請求項2に係る工程間フレキシブル自動搬送システムは、請求項1に記載の工程間フレキシブル自動搬送システムにおいて、
前記レールキットは、異なるワーク搬送車が並列して走行可能な少なくとも2列の走行路を有するレールキットからなり、前記ターンキットは、当該ターンキットに連結される一方のレールキットの各走行路に他方のレールキットの各走行路をそれぞれ対応するように接続可能となっており、前記ワークステーションキットは、当該ワークステーションキットに位置するワーク搬送車が走行するレールキット上の走行路を択一的に変更可能な走行路切り替え手段を有していることを特徴としている。
本発明がこのような構成を有することで、特定のワークステーションキットの作業が終わった場合にそのワーク搬送車を他のワークステーションキットに留まっているワーク搬送車を抜かしてワーク排出位置に移動させることができる。
これによって、この作業が終わったワークステーションキットに新たなワーク搬送車を他のワークステーションキットに待機しているワーク搬送車を抜かして向かわせることができる。その結果、複数のワークステーションキットで常に効率良く作業を行うことができ、部品製造工程全体の作業効率を向上させることができるようになる。
また、本発明の請求項3に係る工程間フレキシブル自動搬送システムは、請求項2に記載の工程間フレキシブル自動搬送システムにおいて、
前記レールキットに配置された複数の走行路は、当該レールキットの設置状態で上下方向に並列して配置され、前記走行路切り替え手段は、前記複数の走行路を前記ワーク搬送車が択一的に変更可能な昇降装置からなることを特徴としている。
本発明がこのような構成を有することで、各工程をつなぐレールキットの配置面積が工場の床面に対して占める割合を少なくすることができる。その結果、その省スペース分を他の設備の設置スペースとして利用したり作業者の安全確保の空間として活用したりすることができ、作業環境の向上を図ることができる。
また、本発明の請求項4に係る工程間フレキシブル自動搬送システムは、請求項1に記載の工程間フレキシブル自動搬送システムにおいて、
前記レールキットは、1列の走行路からなり、前記ワークステーションキットは、前記レールキットの走行路に連結可能に設けられたワーク通過停止位置と、当該ワーク通過停止位置と離れて位置するワーク受け渡し位置を有し、前記ワーク通過停止位置とワーク受け渡し位置間で前記ワーク搬送車を移動手段を介して移動可能とし、前記ワーク受け渡し位置に前記ワーク搬送車が移動した状態で前記ワーク通過停止位置の両側に接続されたレールキットのワーク走行路を通って別のワーク搬送車が前記ワークステーションキットを通過可能であることを特徴としている。
本発明がこのような構成を有することで、レールキットの構造が一列となるため、システム全体の構造が簡単となる。これによって、設備全体のコスト低減に貢献する。また、レールキットの高さを低くできる。これによって、作業者がその上を跨ぐことができ、作業エリア内での作業者の移動が容易となり、作業効率の向上を図ることができる。
また、本発明の請求項5に係る工程間フレキシブル自動搬送システムは、請求項4に記載の工程間フレキシブル自動搬送システムにおいて、
前記ワークステーションキットの通過停止位置とワーク受け渡し位置とは、当該ワークステーションキットを設置した際に何れか一方が上側、何れ他方が下側に位置すると共に、前記移動手段は、前記ワーク搬送車をワーク通過停止位置とワーク受け渡し位置間で昇降させる昇降手段からなることを特徴としている。
本発明がこのような構成を有することで、ワークステーションキットの幅方向のスペースを余分に確保しなくて済む。これによって、設備レイアウトの省スペース化を更に図ると共に、空いたスペースの有効活用を可能とする。
また、本発明の請求項6に係る工程間フレキシブル自動搬送システムは、請求項4に記載の工程間フレキシブル自動搬送システムにおいて、
前記ワーク通過停止位置は、ワークステーションキットを設置した際に下側に位置し、前記ワーク受け渡し位置は上側に位置することを特徴としている。
本発明がこのような構成を有することで、ガントリーローダーをワークステーションキットの上側に設けることができ、作業スペースの更なる省スペース化を図ることができると共に、ワークの搬送車とマシニングセンタ間におけるワークの受け渡しを行い易くすることができる。
本発明によると複数の加工機を配置してなる工程間において多品種少量生産に伴う設備のレイアウト変更が頻繁に行われても、レイアウト変更の自由度を高めつつこれを低コストで実施可能な、被加工対象物を自動搬送するのに適した工程間フレキシブル自動搬送システムを提供できる。
本発明の第1の実施形態に係る工程間フレキシブル自動搬送システムを利用したラインレイアウトの一例を示す概略平面図である。 図1とは異なるラインレイアウトの一例であり、工場の床面に障害物が設置されている場合のラインレイアウトを示す概略平面図である。 第1の実施形態においてワーク搬送車がレールキットを走行中の状態をレールキットの長手方向から見た端面図である。 第1の実施形態において利用される無線式のワーク搬送車の外観構成を示す斜視図である。 第1の実施形態において利用される無線のワーク搬送車の内部構成を概略的に示す斜視図である。 第1の実施形態における各構成要素の動きを制御するメインコントローラ及びサブコントローラを示す概略ブロック図である。 第1の実施形態の具体的な一態様を示す斜視図である。 図7におけるワーク投入ステーション及びその近傍を拡大して示す正面図である。 図7におけるワーク投入ステーション及びその近傍を拡大して示す側面図である。 本発明の第2の実施形態に係る工程間フレキシブル自動搬送システムを利用したラインレイアウトの一例を示した概略平面図である。 図10とは異なるラインレイアウトの一例であり、工場の床面に障害物が設置されている場合のラインレイアウトを示した概略平面図である。 第2の実施形態の具体的な一態様を示す斜視図である。 図12におけるワークステーションキット及びその近傍を拡大して示す斜視図である。 図12におけるワークステーションキットとしてのワーク投入装置を拡大して示す斜視図である。 第2の実施形態においてワーク搬送車がワークステーションキットを走行中の状態をワークステーションキットとしてのワーク投入装置のレール長手方向から見た端面図である。 第2の実施形態における各構成要素の動きを制御するメインコントローラ及びサブコントローラを示す概略ブロック図である。
以下、本発明の第1の実施形態に係る工程間フレキシブル自動搬送システムについて図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る工程間フレキシブル自動搬送システムを利用したラインレイアウトの一例を示す概略平面図である。また、図2は、図1とは異なるラインレイアウトの一例であり、工場の床面に障害物が設置した場合のラインレイアウトを示す概略平面図である。
本発明の第1の実施形態に係る工程間フレキシブル自動搬送システムは、図1に示すように、複数の工程からなる部品製造工程の各工程に設置されたマシニングセンタ10(11,12,13,・・・)に対応して配置されるワークステーションキット100(110,120,130,・・・)と、各ワークステーションキット100を連結するレールキット200(210,220,230,・・・)と、レールキット間又はレールキットとワークステーションキット間に配置されるターンキット300(310,320,330,・・・)と、レールキット又はワークステーションキットの何れかに連結されるワーク投入キット410と、レールキット200又はワークステーションキット100の何れかであってワーク投入キット410とは別のレールキット200又はワークステーションキット100に連結されるワーク排出キット420と、互いに連結されたワーク投入キット410、ワークステーションキット100、レールキット200、ワーク排出キット420上を移動可能な複数のワーク搬送車500とを有している。なお、図1においては、ワーク投入キット410とワーク排出キット420とが一体となってワーク投入排出キット430を構成している。
そして、レールキット200は、異なるワーク搬送車500が並列して走行可能な少なくとも2列の走行路を有するレールキットからからなっている。レールキット200に配置された複数の走行路201,202は、レールキットの設置状態で上下方向に並列して配置され、走行路切り替え手段は、複数の走行路をワーク搬送車が択一的に変更可能な昇降装置(図示せず)からなっている。昇降装置は、各ワークステーションキットに設けられワークステーションキット100に位置するワーク搬送車500が走行するレールキット上の走行路を択一的に変更可能になっている。各マシニングセンタ10には、ワーク搬送車500と各マシニングセンタ10との間でワークWをハンドリングするローダー10a(11a,12a,13a,・・・)が備わっている。
ターンキット300は、ワーク搬送車500の走行方向を決める各レールキット200の配置方向を変更できるようになっている。ターンキット300は、これに連結される一方のレールキット200の各走行路に他方のレールキット200の各走行路をそれぞれ対応するように接続可能となっている。
また、ワーク搬送車500は、製造するワーク毎のトレー580(図4参照)を載置して搬送できるようになっている。ワーク搬送車500の走行や停止の制御は、後述するメインコントローラ610(図6参照)との情報の無線による送受信を介して行われるようになっている。
また、後述するメインコントローラ610の設置された1台のワークステーションキット100を除く他のワークステーションキット100のそれぞれには、ワーク搬送車500の有無、ワーク搬送車500が搬送するワークのマシニングセンタ10との関係に関する情報を少なくとも管理するサブコントローラ620が備わっている(図6参照)。
また、ワークステーションキット100のうち、サブコントローラ620が設置されていない1台のワークステーションキット100にメインコントローラ610が備わり、サブコントローラ620からの情報を有線通信を介して集中管理すると共に、複数のワーク搬送車500のレールキット上の走行状態やワーク投入キット410、ワークステーションキット100、ワーク排出キット420上の停止状態を制御するようになっている。なお、メインコントローラ610はワーク投入キット410に備わり、各ワークステーションキット100にサブコントローラ620が備わるようにしても良い。
以下、上述した工程間フレキシブル自動搬送システムを構成する各構成要素について詳細に説明する。図3は、第1の実施形態においてワーク搬送車500がレールキット200を走行中の状態をレールキット200の長手方向から見た端面図である。
レールキット200は、図3に示すように、工程間フレキシブル自動搬送システムが設置された工場の床に着脱可能に固定するベース板205と、ベース板上に垂設された支持部206と、支持部上に設けられた下段走行路201と、下段走行路201の幅方向両側面に形成された側板207と、側板207の上部で支持される上段走行路202と、上段走行路202の幅方向両側に設けられたガイド板208とを備えている。そして、レールキット200は、図1及び図2に示すように、隣接するワークステーションキット同士やワークステーションキット100とターンキット300同士を連結してこれらの間をワーク搬送車500が搬送できる長さを有している。また、レールキット200の下段走行路201と上段レールの幅は、それぞれの走行路201,202にワーク搬送車500が余裕を持って走行できる程度の幅を有している。なお、レールキット200は、上述したように工場の床面に対してここでは図示しない締結部を介して着脱可能になっており、ラインレイアウトの変更に迅速に対応できるようになっている。
図1及び図2に示すターンキット300は、レールキット200の下段走行路201と上段走行路202のそれぞれを走行するワーク搬送車500の走行方向を変えるためのもので、例えば走行方向が90度の角度をなして配置されるレールキット同士の間に介在させてこれらレールキット上を走行するワーク搬送車の走行方向を変えるようになっている。ターンキット300は、上述したレールキット200の上段走行路202と下段走行路201にそれぞれ対応する方向転換テーブルを有すると共に、それぞれの方向転換テーブルを一方のレールキット200及び他方のレールキット200に対応してその向きを変える図示しないアクチュエータを備えている。そして、このアクチュエータは、後述するメインコントローラ610の有線通信を介した指示に基づいて適切な向きに適宜回転するようになっている。
図1及び図2に示すワークステーションキット100は、ワークW(第1の実施形態ではコンロッド)の加工を行う各マシニングセンタ10に対応して配置され、2つのレールキット間又はレールキット200とターンキット300との間に挟まれるように配置される。そして、第1の実施形態の場合、メインコントローラ610の設けられた1台のホストワークステーションキット100を除く他のワークステーションキット100にはそれぞれサブコントローラ620が設けられている。ワークステーションキット100は、レールキット200の下段走行路201に対応する位置にワーク搬送車通過用の通過路が設けられると共に、レールキット200の上段走行路202に対応する位置にワーク搬送車通過及び停止用の作業ステーションが設けられている。
ホストワークステーションキット100を除く各ワークステーションキット100に設けられたサブコントローラ620は、図6に示すように、これに対応する各マシニングセンタ10と加工情報を有線で送受信すると共に、後述するメインコントローラ610にこの情報を有線で送受信するようになっている。この情報の通信に関しては適当なプロトコルが利用されている。なお、サブコントローラ620は、一般的に使われるプログラマブルロジックコントーラ(以下、「PLC」とする)が用いられている。
メインコントローラ610は、上述した通り図6に示すように特定の1台のワークステーションキット100、即ちホストワークステーションキット100に対応して設けられ、残りのワークステーションキット100に対応して設けられたサブコントローラ620と上述した各マシニングセンタ10の加工情報の送受信を第1の実施形態では有線で行うようになっている。メインコントローラ610にもサブコントローラ620と同様にPLCが用いられると共に、メインコントローラ610に対応するマシニングセンタ10との間で有線で加工情報を送受信するようになっている。
なお、メインコントローラ610は、サブコントローラ620とは異なり、各サブコントローラ620からの加工情報及び各サブコントローラ620に対応するマシニングセンタ10からの情報を集めるためのハブ(HUB)611を有すると共に、後述するワーク搬送車500との通信を無線で行う無線送受信部612が備わっている。そして、メインコントローラ610は、無線送受信部612を介して、ワークステーションキット100やレールキット200、ターンキット300上にいるワーク搬送車500との間で、各ワーク搬送車500の行き先や加工終了情報、加工のOK/NG情報、機種情報、ワーク種類情報等を無線で送受信するようになっている。
ワーク搬送車500は、図4に示す外観構成を有すると共に、図5に示す内部構成を有している。具体的には、ワーク搬送車500は、直方体の枠組みをなすフレーム510と、フレーム510の下側に備わった支持プレート520と、フレーム510の下端の四隅に備わった車輪530(531〜534)を有している。そして、支持プレート520には車輪530を駆動するモータ551、モータ駆動用のドライバ552、モータ551の駆動電源となるバッテリ553、及びモータ551の駆動を制御するPLC554、メインコントローラ610とデータを送受信する無線機555を備えている。
また、フレーム510の上部にはローダー10aが誤った動作を行うことでワーク搬送車500に載せられたトレー580やトレー上のワークWに無理な力がかかったときにワーク搬送車500が破損するのを防止するクラッシュ吸収ダンパー590が備わっている。クラッシュ吸収ダンパー590は、ここでは詳細には示さないが、コイルスプリングや弾性のあるゴムブッシュでできている。
モータ551は、図示しない減速ギアを介してワーク搬送車500の車輪530に機械的に連結されて車輪530を逐次回転させるようになっている。ドライバ552は、バッテリ553から供給された電力をモータ551を介して車輪530を回転させるためのものである。無線機555は、上述したようにメインコントローラ610との間で情報を非接触で送受信するためのものである。また、PLC554は、無線機555を介してメインコントローラ610との間で通信した情報に基づいてワーク搬送車500の走行や停止を制御するものである。
ワーク搬送車500は、上述したフレーム510の外側に、例えばフレーム全体を覆うボディパネル570を備えており、ボディパネル570から上方に突出した上述のクラッシュ吸収ダンパー上にワーク載置用のトレー580が載置されている。
ボディパネル570には、その前後方向に衝突防止センサ571がそれぞれ設けられると共に、ワーク搬送車500の位置をメインコントローラ610に知らせるポジションセンサ572がワーク搬送車500の内部の適所に備わっている。また、ボディパネル上面とトレーとの間には、クラッシュ予報センサ573が設けられ、後述するローダー10aがトレーに無理な下向きの力を加えたときや、既にワークWを保持しているローダー10aが更に別のワークWをハンドリングしようとしたときに、ワーク搬送車500に無理な力がかかってこれが破損するのを防止している。
ワーク搬送車500に載せられたトレー580は、図4から明らかなように、従来のパレットのような複雑な構成を有さず、簡易な構成を有している。第1の実施形態ではトレー580にコンロッド(ワークW)が4つ並べて所定位置に載せられるようになっており、ワークステーションキット100に到達して停止した時にローダー10aを介して必要なワークWをマシニングセンタ10にハンドリングするようになっている。トレー580のワーク収容部の近傍には在場センサ581〜584がトレー580に載せられるワークWに対応してそれぞれ設けられ、各ワークWの有無を検知してこれをワーク搬送車500のPLC554及び無線機555を介してメインコントローラ610に知らせるようになっている。トレー580は、ワーク搬送車500の4つのクラッシュ吸収ダンパー590に嵌合する凹み部を有し、この凹み部をクラッシュ吸収ダンパー590から外すことで、必要に応じて簡単に他のトレーに交換可能になっている。
続いて、上述した各構成要素を組み合わせた工程間フレキシブル自動搬送システムを、図1及び図2に示す例示的なラインレイアウトに基づいて実際に説明する。
図1は、上述したレールキット200、ターンキット300及びワークステーションキット100を利用して形成したワーク加工工程のラインレイアウトの一形態を示している。また、図2は、同じくレールキット200、ターンキット300及びワークステーションキット100を用いて図1と異なるラインレイアウト構成に変更した別の形態を示している。なお、これらのラインレイアウト間の構成は、平面的に並べたおもちゃのブロックを単に並びかえるように簡単に行うことができ、この点が従来のガントリーローダー、コンベヤー、パレット等を用いた場合の搬送ラインレイアウト変更とは異なる本発明の特徴点となっている。
両図を比較すると分かるように、図1にはラインレイアウト中に障害物がなくクローズドタイプのラインレイアウト構成になっている。一方、図2のラインレイアウトは、工場内の所定エリアに障害物があるため、この障害物を避けて配置したオープンタイプのラインレイアウト構成となっている。このようなラインレイアウト構成の変更は上述した通り、従来のガントリーローダー、コンベヤー、及びパレットによるワーク搬送設備と異なり手間及び費用をかけずに簡単かつ迅速に変更することができる。
図1は、上述したようにループ型(クローズドタイプ)のラインレイアウトの構成例であり、例えば同図の上側に示す4つのマシニングセンタ10は、左から穴あけ加工、面取り加工、ボーリング、タッピングの作業を行うようになっている。そして、それぞれのマシニングセンタ10に配置したワークステーションキット100に対応してローダー10a(15a,16a,17a,・・・)が配置されている。各ローダー10aは、ワーク搬送車500が各ワークステーションキット上に到達して停止した時に、第1の実施形態では所定のコンロッド(ワークW)をトレー580から取り出してマシニングセンタ上の治具に備え付けたり、加工が終わったコンロッドをマシニングセンタ上の治具からトレー上に載置するハンドリング装置としての役目を果たしている。ローダー10aには、例えば直交座標型のロボットが用いられている。
また、図1の下側に示す4つのマシニングセンタ10も上述と同様にそれぞれが予め決められたコンロッド(ワークW)の加工作業を行うようになっている。
そして、この4つのマシニングセンタ10にもワークステーションキット100が配置されると共に、各ワークステーションキット100にそれぞれローダー10a(11a,12a,13a,・・・)が配置されている。
また、第1の実施形態においては、図1中右側に示すように、ワーク投入キット410とワーク排出キット420がワーク投入排出キット430として共通して設けられている。そして、同図に示すように、このワーク投入排出キット430の前に作業者が立ち、各種パレット、素材、完成品を管理するようになっている。また、ワーク投入排出キット430と対向する部分には、ターンキット間を連結する長さの長いレールキット240が配置されている。そして、このレールキット240の側方には、ワーク搬送車500へのバッテリ充電及び交換を行なうピットステーション450が配置されている。また、ピットステーション450の図中下側には、ターンキット300の下側であってターンキット300に隣接して清掃ステーション460が配置され、レールキット200やワークステーションキット100、ターンキット300、ワーク投入排出キット430を清掃する清掃用自走車がこのレール内を適時走行するようになっている。
また、上側の4台のワークステーションキット100及び下側の4台のワークステーションキット100及びこれらの間に連結されたレールキット200、ワーク投入排出キット430によってワーク搬送車500の走行路が形成される。即ち、ワーク搬送車500が走行のみ行う下側走行レーンと、ワーク搬送車500が各ワークステーションキット100の作業ステーションで停止すると共にレールキット上を走行する上側走行レーンがこれらワークステーションキット100、ターンキット300、レールキット200、ワーク投入排出キット430によって形成される。
続いて、図2に示す別のラインレイアウトについて説明する。第1の実施形態では、図1に示したラインレイアウトに対して、製造する製品の変更等何らかの事情が生じた場合に、ワークステーションキット100、レールキット200、ターンキット300の並び順や並び方向を変えると共に、ワーク投入排出キット430の代わりにワーク投入キット410を配置することで、図2に示すようなラインレイアウトに手間及び費用をかけずに迅速かつ簡単に変更することができる。そして、第1の実施形態によると、図2に示すラインレイアウトから明らかなように、工場内の一部に柱や他の設備等の障害物がある場合、これを迂回してレイアウト変更できるようになっている。
以下、図2に示すラインレイアウトについて説明する。このラインレイアウトは、図1に示したクローズドタイプのラインレイアウトとは異なるオープンタイプのラインレイアウトをなしている。そして、図2の左下に示すようにワーク投入キット410が配置され、このワーク投入キット410の右側には、作業者が管理する各種パレット及び素材の置き場が配置されている。また、ワーク投入キット410の左側には、ワーク搬送車500へのバッテリ充電及び交換を行なうピットステーション450が配置されている。ワーク投入キット410の上側にはターンキット310が配置され、このターンキット310の更に上側には清掃ステーション460が配置されている。そして、ターンキット300の右側に各マシニングセンタ10に対応したワークステーションキット100(110,120,130,・・・)及びこれらのワークステーションキット間を連結するレールキット200(210,220,230,・・・)が配置されている。そして、最も右側のワークステーションキット140に隣接してターンキット320が配置され、この横にある障害物を迂回して、この上側に向かって配置したレールキット240においてワーク搬送車500を方向転換させて走行させるようになっている。また、上側にもターンキット330が配置され、このターンキット330から右側に各マシニングセンタ15,16,17に対応したワークステーションキット150,160,170及びこれらのワークステーションキット間を連結するレールキット250,260が配置されている。そして、最も右側のワークステーションキット170の更に右側に完成品を排出するスペースが設けられている。なお、図2では示さないが、この完成品を排出するスペースにワーク排出キットを設けても良い。
なお、図2に示すオープンタイプのラインレイアウトにおいては、左側の4台のマシニングセンタがワーク加工作業の穴あけ工程、面取り工程、ボーリング工程、タッピング工程等の初工程を行うようになっている。また、右側の3台のマシニングセンタ10はワーク研磨等の仕上げ工程を行うようになっている。
各ワークステーションキット100には、隣接するレールキット200の上段走行路202に対応して位置するワーク搬送車500を下段走行路201に対応して位置するように下降させると共に、下段走行路201に対応して位置するワーク搬送車500を上段走行路202に対応して位置するように上昇させる昇降装置が備わっている。これによって、例えばあるワークステーションキット100において、マシニングセンタ10による作業が終了して下降されたワークWがローダー10aを介してワーク搬送車500のトレー上に収容された後に、このワーク搬送車500を昇降装置により下側に移動させて各レールキット200及びワークステーションキット100の下側に形成された走行路を介してワーク排出キット420に到達させたり、このワーク排出キット420でワークWを排出した後にワーク投入キット410に戻したりすることができる。
即ち、第1の実施形態では、ワークステーションキット100でいち早く作業を行ってワークWを載せたワーク搬送車500が他のワーク搬送車500を抜かしてワーク排出キット420に向かい、作業の終えたワークWを排出して未作業のワークWを搭載するため、ワーク投入キット410に向かう場合に特に適している。これは、特に以下に記載するラインレイアウト構成において特別な効果を発揮する。
図1に示すクローズドタイプのラインレイアウトでは、各マシニングセンタ10が穴あけ工程や面取り工程、ボーリング工程、タッピング工程等をそれぞれ担当していたが、このような形態に限らず、例えばワークWを大量生産する場合にこのようなクロ−ズドタイプのラインレイアウトを複数設けて、それぞれのラインレイアウトにおける全てのマシニングセンタ10が穴あけ工程のみを担当したり、面取り工程のみを担当したり、ボーリング工程のみを担当したり、タッピング工程のみを担当したりするようにしても良い。
この場合、例えば面取り工程のみを担当するラインレイアウトにおいては、複数あるマシニングセンタ10の内、最も早くワークWの面取り作業を行ったマシニングセンタ10に対応するワークステーションキット100におけるワーク搬送車500を、ワークステーションキット100の昇降装置を介して下段走行路201に下降させ、下段走行路201を走行することで上側のワークステーションキット100にいる他のワーク搬送車500を抜かしてワーク排出キット420まで到達させてワークWを排出し、下段走行路201を走行してワーク投入キット410まで戻り、その後に新たなワークWを搭載して元のワークステーションキット100に戻り、昇降装置を介して上昇してマシニングセンタ10のローダー10aにワークWを供給することが可能である。これによって、ワークWの加工作業を常に無駄なく行うことができるようになり、生産性が格段に向上する。
図7は、上述した図1及び図2に示すラインレイアウトの部分的な一例を具体的に示したものである。また、図8はこのラインレイアウトのワーク投入キット410の部分及びその近傍を示した正面図である。また、図9はこのラインレイアウトのワーク投入キット410の部分及びその近傍を示した側面図である。これらの図から明らかなように、ワークステーションキット100(110,120)にはワーク投入用のローダー10a(11a,12a)が備わると共に、この近傍にキット用タッチパネル10b(11b,12b)が備わっている。また、これらの図においては上述した図1及び図2とは異なり、レールキット200(210,220)は上下方向に3列の走行路が形成されるようにレールが配置されている。そして、ワーク投入キット410及びワークステーションキット110においては、これらの上下方向に3段形成されたレールの昇降を行う昇降装置が備わっている。この昇降装置による昇降を行うに当たって、例えば最上段のレールに位置するワーク搬送車が最下段にレールに下降する場合、中段のレールをその側方を支点として起立させ、その状態で最上段に位置するワーク搬送車500を最下段まで下降させるようになっている。
なお、実際の実施形態においては、上述した図7に示す各キットが、図1及び図2に示すように多数並んで構成されている。この並べ方は、上述したように工場内のスペースの関係や障害物の有無等に基づいて自由な向きで並べられることが本発明の特徴点となっている。また、各キットを簡単に組み合わせて自由に並び替えることでレイアウト変更ができるので、従来のようなガントリーローダー、ベルトコンベア、パレット等を用いたラインレイアウトのような欠点、即ち工場にこれらの搬送装置を一旦設置するとその後にラインレイアウトの変更を行う場合に多大なコストや時間を要してしまうという欠点を全て解消することができる。
なお、上述の実施形態と異なり、レールキットのレールは単数(単線)であっても良い。しかしながら、レールキットのレールが複数平行に配置されている方が、加工作業を終えたワークを搬送するワーク搬送車が他のワーク加工作業中であってワークステーションキットに待機しているワーク搬送車を抜き去ってワーク排出キットに向かい、ワークを排出してワーク投入キットに再び戻ってワークを搭載し、空きのあるワークステーションキットに再度タイムリーに向かうことができるので、作業効率を向上させることができるというメリットがある。
また、レールキットのレールは、工程間フレキシブル自動搬送システムの設置状態において水平方向に並列して設置されていても良いが、上述した実施形態のように垂直方向に並列して設置された方がラインレイアウトの省スペース化を図ることができる点で好ましいと言える。
また、上述の実施形態においては、メインコントローラとサブコントローラ間やメインコントローラとマシニングセンタ間の通信を有線により行ったが、これらの間の通信を状況に応じて無線により行っても構わない。
また、トレーは各ワークに対応するトレーを多数用意しておけば、同一のラインレイアウト構成においても、ワーク搬送車に載置されたトレーをワーク毎に簡単に取り換えることで、ラインの多品種少量生産に対応することが可能となる。
以上説明したように、第1の実施形態がこのような構成を有することで、従来のようにガントリーローダーを天井に設置した後に工場内の各工程のレイアウト変更が生じた際に、このガントリーローダーの配置を全て変えるというような面倒で設備投資上コスト高につくような不都合を解消できる。また、ガントリーローダーを設置した場合に、将来のレイアウト変更に備えて不必要な範囲までガントリーローダーを設置して設備コストの向上を招いていたが、本発明によるとこのような不都合も解消できる。
また、従来のように各マシニングセンタ間の部品搬送をコンベヤー搬送を介して行う不都合、即ちレイアウト変更に伴いコンベヤーのベルトやチェーンをそれぞれそのレイアウト変更に適合するように縁切りすることを必要とせず、レイアウト変更を低コストで簡単かつ容易に行うことができる。
また、従来のようにパレットを用いて各マシニングセンタ間の部品搬送を行う場合の不都合、即ちパレット自体に十分な強度を持たせたりワークを固定するクランプ(治具)を設けたりする必要がなく、パレットを搬送する専用品である搬送装置も準備する必要がなくなり、レイアウト変更を簡単かつ容易に行うことができる。
このように本発明によると、多品種少量生産に伴う製造工程の頻繁なレイアウト変更に迅速かつ新たな設備投入などのコストをかけずに対応することが可能となり、現代の多品種少量生産の流れにうまく調和することができる。
また、レールキットが、ワークステーションキット、ターンキット、ワーク投入キット、ワーク排出キットと着脱自在に連結されるようになっているので、レイアウト変更すべきスペースに他の設備や工場の柱等の障害物があっても、これを迂回してレイアウト変更でき、レイアウト変更の自由度が向上する。
また、ワーク搬送車は、製造するワーク毎のトレーを交換可能に載置して搬送できるようになっているので、ワーク搬送車による様々なワークの搬送に迅速に対応できる。即ち、ワークの種類の切替に迅速に対応可能となっており、多品種少量生産に適している。
好ましくは、レールキットは、異なるワーク搬送車が並列して走行可能な少なくとも2列の走行路を有するレールキットからなり、ターンキットは、当該ターンキットに連結される一方のレールキットの各走行路に他方のレールキットの各走行路をそれぞれ対応するように接続可能となっており、ワークステーションキットは、当該ワークステーションキットに位置するワーク搬送車が走行するレールキット上の走行路を択一的に変更可能な走行路切り替え手段を有しているのが良い。
本発明がこのような構成を有することで、特定のワークステーションキットの作業が終わった場合に他のワークステーションキットに止まっているワーク搬送車を抜かしてワーク排出位置にワーク搬送車を移動させることができる。
これによって、他のワークステーションキットに待機しているワーク搬送車を抜かしてこの作業が終わったワークステーションキットに新たなワーク搬送車を向かわせることができる。その結果、複数のワークステーションキットで常に効率良く作業を行うことができ、部品製造工程全体の作業効率を向上させることができるようになる。
また、好ましくは、レールキットに配置された複数の走行路は、当該レールキットの設置状態で上下方向に並列して配置され、走行路切り替え手段は、複数の走行路を前記ワーク搬送車が択一的に変更可能な昇降装置からなるのが良い。
本発明がこのような構成を有することで、各工程をつなぐレールキットの配置面積が工場の床面に対して占める割合を少なくすることができるので、その省スペース分を他の設備の設置スペースとして利用したり作業者の安全確保の空間として活用したりすることができ、作業環境の向上を図ることができる。
続いて、本発明の第2の実施形態に係る工程間フレキシブル自動搬送システムについて図面に基づいて説明する。なお、第1の実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
図10は、本発明の第2の実施形態に係る工程間フレキシブル自動搬送システムを利用したラインレイアウトの一例を示す概略平面図である。また、図11は、図10とは異なるラインレイアウトの一例であり、工場の床面に障害物が設置した場合のラインレイアウトを示す概略平面図である。
本発明の第2の実施形態に係る工程間フレキシブル自動搬送システムは、図10に示すように、複数の工程からなる部品製造工程の各工程に設置されたマシニングセンタ10(11,12,13,・・・)に対応して配置されるワークステーションキット700(710,720,730,・・・)と、各ワークステーションキット700を連結するレールキット800(810,820,830,・・・)と、レールキット間又はレールキットとワークステーションキット間に配置されるターンキット900(910,920,930,・・・)と、レールキット又はワークステーションキットの何れかに連結されるワーク投入キット415と、レールキット800又はワークステーションキット700の何れかであってワーク投入キット415とは別のレールキット800又はワークステーションキット700に連結されるワーク排出キット425と、互いに連結されたワーク投入キット415、ワークステーションキット700、レールキット800、ワーク排出キット425上を移動可能な複数のワーク搬送車500とを有している。なお、図10においては、ワーク投入キット415とワーク排出キット425とが一体となってワーク投入排出キット435を構成している。
レールキット800は、図12及び図13に示すように、第1の実施形態と異なりワーク搬送車500が走行可能な1列の走行路からなっている。レールキット800に配置された走行路801は、レールキットの設置状態で各レールキットを床に設置した状態で床から同等の高さを有している。各マシニングセンタ10には、ワーク搬送車500と各マシニングセンタ10との間でワークWをハンドリングするローダー10a(11a,12a,13a,・・・)が備わっている。
ターンキット900は、ワーク搬送車500の走行方向を決める各レールキット800の配置方向を変更できるようになっている。ターンキット900は、これに連結される一方のレールキット800の走行路に他方のレールキット800の走行路をそれぞれ対応するように接続可能となっている。
また、ワーク搬送車500は、製造するワーク毎のトレー580(図4参照)を載置して搬送できるようになっている。ワーク搬送車500の走行や停止の制御は、第1の実施形態と同様にメインコントローラ615との情報の無線による送受信を介して行われるようになっている。
また、後述するメインコントローラ615の設置された1台のワークステーションキット700を除く他のワークステーションキット700のそれぞれには、第1の実施形態と同様に、ワーク搬送車500の有無、ワーク搬送車500が搬送するワークのマシニングセンタ10との関係に関する情報を少なくとも管理するサブコントローラ625が備わっている(図16参照)。
また、第1の実施形態と同様に、ワークステーションキット700のうち、サブコントローラ625が設置されていない1台のワークステーションキット700にメインコントローラ615が備わり、サブコントローラ625からの情報を有線通信を介して集中管理すると共に、複数のワーク搬送車500のレールキット上の走行状態やワーク投入キット415、ワークステーションキット700、ワーク排出キット425上の停止状態を制御するようになっている。なお、メインコントローラ615はワーク投入キット415に備わり、各ワークステーションキット700にサブコントローラ625が備わるようにしても良い。
以下、上述した工程間フレキシブル自動搬送システムを構成する各構成要素について詳細に説明する。図12は、第2の実施形態の具体的な一態様を示す斜視図である。また、図13は、図12におけるワークステーションキット及びその近傍を拡大して示す斜視図である。また、図14は、図12におけるワークステーションキットとしてのワーク投入装置を拡大して示す斜視図である。また、図15は、第2の実施形態においてワーク搬送車がワークステーションキットを走行中の状態をワークステーションキットとしての投入装置のレール長手方向から見た端面図である。また、図16は、第2の実施形態における各構成要素の動きを制御するメインコントローラ及びサブコントローラを示す概略ブロック図である。
図12から明らかなように、ワークステーションキット700(710,720)にはワーク投入用のローダー10aが備わると共に、制御盤707が備わっている。
なお、実際の実施形態においては、上述した図12に示す各キットが、図10及び図11に示すように多数並んで構成されている。この並べ方は、上述したように工場内のスペースの関係や障害物の有無等に基づいて自由な向きで並べられることが本発明の特徴点となっている。また、各キットを簡単に組み合わせて自由に並び替えることでレイアウト変更ができるので、従来のようなガントリーローダー、ベルトコンベア、パレット等を用いたラインレイアウトのような欠点、即ち工場にこれらの搬送装置を一旦設置するとその後にラインレイアウトの変更を行う場合に多大なコストや時間を要してしまうという欠点を全て解消することができる。
レールキット800は、図13に示すように、工程間フレキシブル自動搬送システムが設置された工場の床に着脱可能に固定するベースフレーム805と、ベースフレーム上に垂設された支持部806と、支持部上に設けられた走行路801を有している。そして、レールキット800は、図10及び図11に示すように、隣接するワークステーションキット同士やワークステーションキット700とターンキット900同士を連結してこれらの間をワーク搬送車500が搬送できる長さを有している。また、レールキット800の走行路801の幅は、走行路801にワーク搬送車500が余裕を持って走行できる程度の幅となっている。なお、レールキット800は、上述したように工場の床面に対してここでは詳細に図示しない締結部を介して着脱可能になっており、ラインレイアウトの変更に迅速に対応できるようになっている。
図10及び図11に示すターンキット900は、レールキット800の走行路801を走行するワーク搬送車500の走行方向を変えるためのもので、例えば走行方向が90度の角度をなして配置されるレールキット同士の間に介在させてこれらレールキット上を走行するワーク搬送車の走行方向を変えるようになっている。ターンキット900は、上述したレールキット800の走行路801にそれぞれ対応する方向転換テーブルを有すると共に、それぞれの方向転換テーブルを一方のレールキット800及び他方のレールキット800に対応してその向きを変える図示しないアクチュエータを備えている。そして、このアクチュエータは、後述するメインコントローラ610の有線通信を介した指示に基づいて適切な向きに適宜回転するようになっている。
図10及び図11に示すワークステーションキット700は、ワークW(第2の実施形態ではコンロッド)の加工を行う各マシニングセンタ10に対応して配置され、2つのレールキット間又はレールキット800とターンキット900との間に挟まれるように配置される。そして、第2の実施形態の場合、メインコントローラ615の設けられた1台のホストワークステーションキット700を除く他のワークステーションキット700にはそれぞれサブコントローラ625が設けられている(図16参照)。
ワークステーションキット700には、レールキット800の走行路801に対応する位置にワーク搬送車通過用の通過路が設けられると共に、レールキット800の走行路801の上側に対応する位置にマシニングセンタとのワーク受け渡し位置が設けられている。
ワークステーションキット700は、ワーク搬送車500を上昇させた状態でガントリーローダー10aを介してマシニングセンタとの間でワーク受け渡し作業を行うと共に、このワーク受け渡し作業中に他のワーク搬送車500がこのワークステーションキットを通過できるようにする役目を果たす。
ワークステーションキット700は、いわゆるワーク投入装置700の名前として呼ばれているので、以下にワーク投入装置700としてその構造を説明する。
ワーク投入装置700は、矩形状のベース板701と、ベース板701の四隅から垂設した支柱702とを有し、ベース板701には、レールキット800の走行路と連結してレールキット800を走行してきた搬送車500が停止した状態でこれを昇降させる昇降テーブル703及び、昇降テーブル上のワーク搬送車500が搬送車昇降装置において上昇している際に、他のワーク搬送車500を通過させる搬送車通過テーブル704が備わっている。
支柱702は、搬送車500の走行方向前後の支柱がそれぞれ上端部で連結されて角型U字状の2対の支柱をなし、それぞれ十分な剛性を保っている。一方の対の支柱702には、レールキット800からワークステーションキット700に進行する搬送車500と干渉しない高さに制御盤707が備わっている。
搬送車走行方向に対して幅方向一方の側の2本の支柱702には、搬送車昇降装置が備わっている。搬送車昇降装置は、支柱に備わったガイド705及びスライダ706と、スライダ706をガイド705に沿って上昇させたり下降させたりする駆動アクチュエータ(ここでは詳細には図示せず)を備えている。スライダ706は、搬送車昇降装置の上下2箇所に独立して配置され、各スライダ706には、上側に昇降テーブル703が備わると共に下側に搬送車通過テーブル704が備わっている。
通常、上側の昇降テーブル703は、搬送車昇降装置の下側に位置し、隣接するレールキット800の走行路801と接続してレールキット800を走行している搬送車500をこの昇降テーブル703に受け入れ、停止した搬送車500をワーク受け渡し位置まで上昇させるようになっている。
搬送車通過テーブル704は、昇降テーブル703がレールキット800の走行路801と連結している状態では、この昇降テーブル703よりも更にその下方に収容されている。そして、昇降テーブル703が上昇して後述するワーク受け渡し位置に止まった際に搬送車通過テーブル704は、わずかに上昇して隣接するレールキット800の走行路801に連結するようになっている。これによって、レールキット上を走行する搬送車は、搬送車通過テーブル704を介してワークステーションキット700を通過できるようになっている。
搬送車昇降装置が備わった2本の支柱702と反対側の支柱702の中程の高さには、ヒンジ部708を介して水平状態と垂直状態の2つの状態となることができるカバー709を備えている。カバー709は、通常は垂直に起立しており、昇降テーブル703が搬送車昇降装置を介して上昇する際に垂直に起立して、昇降テーブル703を支柱上端のワーク受け渡し位置まで移動可能としている。カバー709は、必要に応じて水平状態まで倒すことができ、作業者がこのカバー709の上に乗り、ここでは図示しないマシニングセンタのメンテナンス等を行う際の踏み台にすることができる。なお、カバー709は、本発明においては必ずしも必要とするものではない。
昇降テーブル703に載った搬送車のガントリーローダーによるマシニングセンタとのワークの受け渡しが終了すると、搬送車昇降装置を介して昇降テーブル703をワークステーションキット700に隣接するレールキット800の走行路801と同じ高さまで下降させる。この際、搬送車通過テーブル704は、搬送車昇降装置を介して若干下降し、昇降テーブル703の下側に収容される。
このようにして、昇降テーブル703がワーク受け渡し位置にいる状態において搬送車通過テーブル704が隣接するレールキット800と協働して搬送車通過路を形成させているので、他のワークステーションキット700における作業を終了したワーク搬送車500を、レールキット800と昇降テーブル703の搬送車を上昇させてワーク受け渡し中のワークステーションキット700において搬送車通過テーブル704とレールキット800を介して、所望の場所に自由に行き来できるようになっている。
続いて、第2の実施形態のメインコントローラとサブコントローラについて説明する。ホストワークステーションキット700を除く各ワークステーションキット700に設けられたサブコントローラ625は、図16に示すように、これに対応する各マシニングセンタ10と加工情報を有線で送受信すると共に、後述するメインコントローラ615にこの情報を有線で送受信するようになっている。この情報の通信に関しては適当なプロトコルが利用されている。なお、サブコントローラ625は、一般的に使われるプログラマブルロジックコントーラ(以下、「PLC」とする)が用いられている。
メインコントローラ615は、上述したように図16に示すように特定の1台のワークステーションキット700、即ちホストワークステーションキット700に対応して設けられ、残りのワークステーションキット700に対応して設けられたサブコントローラ625と上述した各マシニングセンタ10の加工情報の送受信を第2の実施形態では有線で行うようになっている。メインコントローラ615にもサブコントローラ625と同様にPLCが用いられると共に、メインコントローラ615に対応するマシニングセンタ10との間で有線で加工情報を送受信するようになっている。
なお、メインコントローラ615は、サブコントローラ625とは異なり、各サブコントローラ625からの加工情報及び各サブコントローラ625に対応するマシニングセンタ10からの情報を集めるためのハブ(HUB)611を有すると共に、後述するワーク搬送車500との通信を無線で行う無線送受信部612が備わっている。そして、メインコントローラ615は、無線送受信部612を介して、ワークステーションキット700やレールキット800、ターンキット900上にいるワーク搬送車500との間で、各ワーク搬送車500の行き先や加工終了情報、加工のOK/NG情報、機種情報、ワーク種類情報等を無線で送受信するようになっている。
ワーク搬送車500の構成については、第1の実施形態と同等であるので、その詳細な説明を省略する。
続いて、上述した各構成要素を組み合わせた工程間フレキシブル自動搬送システムを、図10及び図11に示す例示的なラインレイアウトに基づいて実際に説明する。
図10は、上述したレールキット800、ターンキット900及びワークステーションキット700を利用して形成したワーク加工工程のラインレイアウトの一形態を示している。また、図11は、同じくレールキット800、ターンキット900及びワークステーションキット700を用いて図10と異なるラインレイアウト構成に変更した別の形態を示している。なお、これらのラインレイアウト間の構成は、平面的に並べたおもちゃのブロックを単に並びかえるように簡単に行うことができ、この点が従来のガントリーローダー、コンベヤー、パレット等を用いた場合の搬送ラインレイアウト変更とは異なる本発明の特徴点となっている。
両図を比較すると分かるように、図10にはラインレイアウト中に障害物がなくクローズドタイプのラインレイアウト構成になっている。一方、図11のラインレイアウトは、工場内の所定エリアに障害物があるため、この障害物を避けて配置したオープンタイプのラインレイアウト構成となっている。このようなラインレイアウト構成の変更は上述した通り、従来のガントリーローダー、コンベヤー、及びパレットによるワーク搬送設備と異なり手間及び費用をかけずに簡単かつ迅速に変更することができる。
図10は、上述したようにループ型(クローズドタイプ)のラインレイアウトの構成例であり、例えば同図の上側に示す4つのマシニングセンタ10は、左から穴あけ加工、面取り加工、ボーリング、タッピングの作業を行うようになっている。そして、それぞれのマシニングセンタ10に配置したワークステーションキット700に対応してローダー10a(15a,16a,17a,・・・)が配置されている。各ローダー10aは、ワーク搬送車500が各ワークステーションキット上に到達して停止した時に、第2の実施形態では所定のコンロッド(ワークW)をトレー580から取り出してマシニングセンタ上の治具に備え付けたり、加工が終わったコンロッドをマシニングセンタ上の治具からトレー上に載置するハンドリング装置としての役目を果たしている。ローダー10aには、例えば直交座標型のロボットが用いられている。
また、図10の下側に示す4つのマシニングセンタ10も上述と同様にそれぞれが予め決められたコンロッド(ワークW)の加工作業を行うようになっている。
そして、この4つのマシニングセンタ10にもワークステーションキット700が配置されると共に、各ワークステーションキット700にそれぞれローダー10a(11a,12a,13a,・・・)が配置されている。
また、第2の実施形態においては、図10中右側に示すように、ワーク投入キット415とワーク排出キット425がワーク投入排出キット435として共通して設けられている。そして、同図に示すように、このワーク投入排出キット435の前に作業者が立ち、各種パレット、素材、完成品を管理するようになっている。また、ワーク投入排出キット435と対向する部分には、ターンキット間を連結する長さの長いレールキット840が配置されている。そして、このレールキット800の側方には、ワーク搬送車500へのバッテリ充電及び交換を行なうピットステーション455が配置されている。また、ピットステーション455の図中下側には、ターンキット900の下側であってターンキット900に隣接して清掃ステーション465が配置され、レールキット800やワークステーションキット700、ターンキット900、ワーク投入排出キット435を清掃する清掃用自走車がこのレール内を適時走行するようになっている。
また、上側の4台のワークステーションキット700及び下側の4台のワークステーションキット700及びこれらの間に連結されたレールキット800、ワーク投入排出キット435によってワーク搬送車500の走行路が形成される。即ち、ワーク搬送車500が走行する走行レーンがワークステーションキット700、ターンキット900、レールキット800、ワーク投入排出キット435によって形成される。
続いて、図11に示す別のラインレイアウトについて説明する。第2の実施形態では、図10に示したラインレイアウトに対して、製造する製品の変更等何らかの事情が生じた場合に、ワークステーションキット700、レールキット800、ターンキット900の並び順や並び方向を変えると共に、ワーク投入排出キット435の代わりにワーク投入キット415を配置することで、図11に示すようなラインレイアウトに手間及び費用をかけずに迅速かつ簡単に変更することができる。そして、第2の実施形態によると、図11に示すラインレイアウトから明らかなように、工場内の一部に柱や他の設備等の障害物がある場合、これを迂回してレイアウト変更できるようになっている。
以下、図11に示すラインレイアウトについて説明する。このラインレイアウトは、図10に示したクローズドタイプのラインレイアウトとは異なるオープンタイプのラインレイアウトをなしている。そして、図11の左下に示すようにワーク投入キット415が配置され、このワーク投入キット415の右側には、作業者が管理する各種パレット及び素材の置き場が配置されている。また、ワーク投入キット415の左側には、ワーク搬送車500へのバッテリ充電及び交換を行なうピットステーション455が配置されている。ワーク投入キット415の上側にはターンキット910が配置され、このターンキット910の更に上側には清掃ステーション465が配置されている。そして、ターンキット900の右側に各マシニングセンタ10に対応したワークステーションキット700(710,720,730,・・・)及びこれらのワークステーションキット間を連結するレールキット800(810,820,830,・・・)が配置されている。そして、最も右側のワークステーションキット740に隣接してターンキット920が配置され、この横にある障害物を迂回して、この上側に向かって配置したレールキット840においてワーク搬送車500を方向転換させて走行させるようになっている。また、上側にもターンキット930が配置され、このターンキット930から右側に各マシニングセンタ15,16,17に対応したワークステーションキット750,760,770及びこれらのワークステーションキット間を連結するレールキット850,860が配置されている。そして、最も右側のワークステーションキット770の更に右側に完成品を排出するスペースが設けられている。なお、図11では示さないが、この完成品を排出するスペースにワーク排出キットを設けても良い。
なお、図11に示すオープンタイプのラインレイアウトにおいては、左側の4台のマシニングセンタがワーク加工作業の穴あけ工程、面取り工程、ボーリング工程、タッピング工程等の初工程を行うようになっている。また、右側の3台のマシニングセンタ10はワーク研磨等の仕上げ工程を行うようになっている。
各ワークステーションキット700には、隣接するレールキット800の走行路801に対応して走行停止位置に位置するワーク搬送車500を各ワークステーションの作業位置まで上昇させたり、各ワークステーションの作業位置から走行停止位置までワーク搬送車500を下降させる昇降装置が備わっている。これによって、例えばあるワークステーションキット700において、マシニングセンタ10による作業が終了して下降されたワークWがローダー10aを介してワーク搬送車500のトレー上に収容された後に、このワーク搬送車500を昇降装置により下側に移動させてワークステーションキット700の下側に形成された走行路及び各レールキット800を介してワーク排出キット425に到達させたり、このワーク排出キット425でワークWを排出した後にワーク投入キット415に戻したりすることができる。
即ち、第2の実施形態では、ワークステーションキット700でいち早く作業を行ってワークWを載せたワーク搬送車500が他のワーク搬送車500を抜かしてワーク排出キット425に向かい、作業の終えたワークWを排出して未作業のワークWを搭載するため、ワーク投入キット415に向かう場合に特に適している。これは、特に以下に記載するラインレイアウト構成において特別な効果を発揮する。
図10に示すクローズドタイプのラインレイアウトでは、各マシニングセンタ10が穴あけ工程や面取り工程、ボーリング工程、タッピング工程等をそれぞれ担当していたが、このような形態に限らず、例えばワークWを大量生産する場合にこのようなクロ−ズドタイプのラインレイアウトを複数設けて、それぞれのラインレイアウトにおける全てのマシニングセンタ10が穴あけ工程のみを担当したり、面取り工程のみを担当したり、ボーリング工程のみを担当したり、タッピング工程のみを担当したりするようにしても良い。
この場合、例えば面取り工程のみを担当するラインレイアウトにおいては、複数あるマシニングセンタ10の内、最も早くワークWの面取り作業を行ったマシニングセンタ10に対応するワークステーションキット700におけるワーク搬送車500を、ワークステーションキット700の昇降装置を介して走行路801に下降させ、走行路801を走行することでワークステーションキット700の作業ステーションにいる他のワーク搬送車500を抜かしてワーク排出キット425まで到達させてワークWを排出し、走行路801を走行してワーク投入キット415まで戻り、その後に新たなワークWを搭載して元のワークステーションキット700に戻り、昇降装置を介して上昇してマシニングセンタ10のローダー10aにワークWを供給することが可能である。これによって、ワークWの加工作業を常に無駄なく行うことができるようになり、生産性が格段に向上する。
なお、上述の実施形態と異なり、ワークステーションキットの昇降テーブルと搬送車通過テーブルは、工程間フレキシブル自動搬送システムの設置状態において水平方向に並列して設置されていても良いが、上述した実施形態のように垂直方向に並列して設置された方がラインレイアウトの省スペース化を図ることができる点で好ましいと言える。
また、上述の実施形態においては、メインコントローラとサブコントローラ間やメインコントローラとマシニングセンタ間の通信を有線により行ったが、これらの間の通信を状況に応じて無線により行っても構わない。
また、トレーは各ワークに対応するトレーを多数用意しておけば、同一のラインレイアウト構成においても、ワーク搬送車に載置されたトレーをワーク毎に簡単に取り換えることで、ラインの多品種少量生産に対応することが可能となる。
以上説明したように、第2の実施形態がこのような構成を有することで、従来のようにガントリーローダーを天井に設置した後に工場内の各工程のレイアウト変更が生じた際に、このガントリーローダーの配置を全て変えるというような面倒で設備投資上コスト高につくような不都合を解消できる。また、ガントリーローダーを設置した場合に、将来のレイアウト変更に備えて不必要な範囲までガントリーローダーを設置して設備コストの向上を招いていたが、本発明によるとこのような不都合も解消できる。
また、従来のように各マシニングセンタ間の部品搬送をコンベヤー搬送を介して行う不都合、即ちレイアウト変更に伴いコンベヤーのベルトやチェーンをそれぞれそのレイアウト変更に適合するように縁切りすることを必要とせず、レイアウト変更を低コストで簡単かつ容易に行うことができる。
また、従来のようにパレットを用いて各マシニングセンタ間の部品搬送を行う場合の不都合、即ちパレット自体に十分な強度を持たせたりワークを固定するクランプ(治具)を設けたりする必要がなく、パレットを搬送する専用品である搬送装置も準備する必要がなくなり、レイアウト変更を簡単かつ容易に行うことができる。
このように本発明によると、多品種少量生産に伴う製造工程の頻繁なレイアウト変更に迅速かつ新たな設備投入などのコストをかけずに対応することが可能となり、現代の多品種少量生産の流れにうまく調和することができる。
また、レールキットが、ワークステーションキット、ターンキット、ワーク投入キット、ワーク排出キットと着脱自在に連結されるようになっているので、レイアウト変更すべきスペースに他の設備や工場の柱等の障害物があっても、これを迂回してレイアウト変更でき、レイアウト変更の自由度が向上する。
また、ワーク搬送車は、製造するワーク毎のトレーを交換可能に載置して搬送できるようになっているので、ワーク搬送車による様々なワークの搬送に迅速に対応できる。即ち、ワークの種類の切替に迅速に対応可能となっており、多品種少量生産に適している。
また、第2の実施形態が上述の構成を有することで、レールキットの構造が一列となるため、システム全体の構造が簡単となる。これによって、設備全体のコスト低減に貢献する。また、レールキットの高さを低くできる。これによって、作業者がその上を跨ぐことができ、作業エリア内での作業者の移動が容易となり、作業効率の向上を図ることができる。
なお、ワークステーションキットの通過停止位置とワーク受け渡し位置とは、ワークステーションキットを設置した際にワーク受け渡し位置が上側、通過停止位置が下側に位置すると共に、ワーク搬送車をワーク通過停止位置とワーク受け渡し位置間で昇降させる昇降手段を有しているので、ワークステーションキットの幅方向のスペースを余分に確保しなくて済む。これによって、設備レイアウトの省スペース化を更に図ると共に、空いたスペースの有効活用を可能とする。
また、ガントリーローダーをワークステーションキットの上側に設けることができ、作業スペースの更なる省スペース化を図ることができると共に、ワークの搬送車とマシニングセンタ間におけるワークの受け渡しを行い易くすることができる。
以下、上述した各実施形態を含む本発明のメリットについて、一実施例に基づいて分かり易く説明する。この一実施例は、コンロッドの破断工程に基づくもので、例えば説明の容易化のために、コンロッドの破断工程が、工程順にコンロッドの穴あけ工程、コンロッドの破断工程、破断されたコンロッドのボーリング工程の3つの工程からなるとする。そして、この場合ワーク投入キットで投入されたワークが、コンロッドの穴あけ工程に設けられた全く同一のコンロッド穴あけ用マシニングセンタ(A−1,A−2)によって、作業上並行して穴あけされるようになっている。次いで、その下流工程であるコンロッド破断工程において、全く同一のマシニングセンタによって作業上並行してコンロッドが破断されるようになっている。更には、この下流工程における破断されたコンロッドのボーリング工程において、全く同一のボーリング用マシニングセンタが2台備わり、破断されたワークを作業上並行してボーリング作業を行うようになっている。更にその下流には、ワーク排出キットが備わっている。そして、それぞれ2対のワークステーションキットとワーク投入キット、ワーク排出キット間にはレールキット及び、必要に応じてターンキットが備わっている。
ここで、コンロッドの穴あけに対応するワークステーションキット(A−1,A−2)及び、コンロッドの破断工程に対応するワークステーションキット(B−1,B−2)、それに破断されたコンロッドのボーリング工程に対応するワークステーションキット(C−1,C−2)の全てにおいて、対応するマシニングセンタにワークが渡され、全てのマシニングセンタで作業中であると仮定する。
そして、例えばコンロッドの穴あけに関するワークステーションキットA−1に対応するマシンニングセンタの作業が終了し、コンロッドの破断工程に関するワークステーションキットB−2に対応するマシニングセンタの作業が終了し、破断されたコンロッドのボーリング工程に関するワークステーションキットC−2に対応するマシニングセンタの作業が終了したと仮定する。
この場合、ワークステーションキットA−1 ,B−2,C−2それぞれの昇降テーブルを上昇させた状態で、ガントリーローダーを介してマシニングセンタからそれぞれ作業が終了したワークをワーク搬送車に移し変える。そして、タイミング上、最初にワークステーションキットC−2の昇降テーブルを下降させ、この上に乗った搬送車を排出ステーションまで移動させる。
続いて、ワークステーションキットB−2の昇降テーブルを下降させ、搬送車を走行位置まで移動させた後、その搬送車をワークステーションキットC−1の下側の搬送車通過テーブルを通過させて、ワークステーションキットC−2に移動させ、ワークステーションキットC−2の昇降テーブルに乗せて上昇させ、ワークステーションキットC−2のガントリーローダーにワークを受け渡す。
そして、ワークステーションキットA−1の昇降テーブルを下降させて走行位置まで移動させ、ワークステーションキットA−2の搬送車通過テーブル、及びワークステーションキットB−1の搬送車通過テーブルを介して、ワークテーションキットB−2の昇降テーブルまで移動させ、この昇降テーブルを上昇させ、ワークステーションキットB−2のガントリーローダーに受け渡す。
そして、ワークステーションキットA−1とB−2の昇降テーブルが上側に位置している間に、排出キットでワークを排出したワーク搬送車を、各ステーションの搬送車通過テーブル及びこれらの間のレールキットの走行路を介して、ワーク投入ステーションまで搬送車を戻し、新たなワークを再び搭載する。
なお、上述した搬送車を介した効率的なワークの受け渡し及び搬送に関しては、各ステーションに備わったメインコントローラやサブコントローラが、マシニングセンタの作業状況や、各ステーションにおける搬送車の有無及びその位置を逐次把握しておくことによって管理するようになっている。
本発明によると、このようにして、同一種類の作業を行うワークステーションキットがそれぞれ複数台ある場合に、一番早く作業の終わったマシニングセンタに対応するワークステーションキットを介してワークの受け渡しを行い、搬送車をワークステーションキットの走行位置まで下降させて同一種類の他のワークステーションキットの下側を通って、次の作業工程に対応するワークステーションキットまで移動させることができる。
また、本発明によると、全ての作業が終わったワークを、搬送車に乗せて排出キットでワークを全て排出してから、ワーク投入キットまで走行レーンを通って戻すことができる。これによって各マシニングセンタの作業の空き時間を作ることなく、常に全てのマシニングセンタで作業を行うことができ、作業効率を格段に高めることが可能となる。
10(11,12,13,・・・) マシニングセンタ
10a(11a,12a,13a,・・・) (ガントリー)ローダー
10b(11b,12b) キット用タッチパネル
100(110,120,130,・・・) (ホスト)ワークステーションキット
200(210,220,230,・・・) レールキット
201 下段走行路
202 上段走行路
205 ベース板
206 支持部
207 側板
208 ガイド板
300(310,320,330,・・・) ターンキット
410 ワーク投入キット
415 ワーク投入キット
420 ワーク排出キット
425 ワーク排出キット
430 ワーク投入排出キット
435 ワーク投入排出キット
450 ピットステーション
455 ピットステーション
460 清掃ステーション
465 清掃ステーション
500 搬送車
500 ワーク搬送車
510 フレーム
520 支持プレート
530 車輪(531〜534)
551 モータ
552 ドライバ
553 バッテリ
554 PLC
555 無線機
570 ボディパネル
571 衝突防止センサ
572 ポジションセンサ
573 クラッシュ予報センサ
580 トレー
581〜584 在場センサ
590 クラッシュ吸収ダンパー
610 メインコントローラ
611 ハブ(HUB)
612 無線送受信部
615 メインコントローラ
620 サブコントローラ
625 サブコントローラ
700(710,720,730,・・・) (ホスト)ワークステーションキット(ワーク投入装置)
701 ベース板
702 支柱
703 昇降テーブル
704 搬送車通過テーブル
705 ガイド
706 スライダ
707 制御盤
708 ヒンジ部
709 カバー
800(810,820,830,・・・) レールキット
801 走行路
805 ベースフレーム
806支持部
900(910,920,930,・・・) ターンキット

Claims (6)

  1. 複数の工程からなる部品製造工程の各工程ごとに設置されたマシニングセンタに対応して配置されるワークステーションキットと、前記各ワークステーションキットを連結するレールキットと、前記レールキット間又はレールキットとワークステーションキット間に配置されるターンキットと、前記レールキット又はワークステーションキットの何れかに連結されるワーク投入キットと、前記レールキット又はワークステーションキットの何れかであって前記ワーク投入キットとは別のレールキット又はワークステーションキットに連結されるワーク排出キットと、前記互いに連結されたワーク投入キット、ワークステーションキット、レールキット、ワーク排出キット上を移動可能な複数のワーク搬送車とを有した工程間フレキシブル自動搬送システムであって、
    前記レールキットは、前記ワークステーションキット、ターンキット、ワーク投入キット、ワーク排出キットと着脱自在となっており、
    前記ターンキットは、前記ワーク搬送車の走行方向を決める各レールキットの配置方向を変更可能となっており、
    前記ワーク搬送車は、製造するワーク毎のトレーを交換可能に載置して搬送できるようになっており、
    前記ワークステーションキットには、前記ワーク搬送車の有無、ワーク搬送車が搬送するワークの前記マシニングセンタとの関係に関する情報を少なくとも管理するサブコントローラが備わると共に、前記サブコントローラが備わっていないワークステーションキット又はワーク投入キットには、前記サブコントローラからの情報を無線通信又は有線通信で集中管理すると共に、前記複数のワーク搬送車のレールキット上の走行状態やワーク投入キット、ワークステーションキット、ワーク排出キット上の停止状態を無線通信で制御するメインコントローラが備わっていることを特徴とする工程間フレキシブル自動搬送システム。
  2. 前記レールキットは、異なるワーク搬送車が並列して走行可能な少なくとも2列の走行路を有するレールキットからなり、前記ターンキットは、当該ターンキットに連結される一方のレールキットの各走行路に他方のレールキットの各走行路をそれぞれ対応するように接続可能となっており、前記ワークステーションキットは、当該ワークステーションキットに位置するワーク搬送車が走行するレールキット上の走行路を択一的に変更可能な走行路切り替え手段を有していることを特徴とする、請求項1に記載の工程間フレキシブル自動搬送システム。
  3. 前記レールキットに配置された複数の走行路は、当該レールキットの設置状態で上下方向に並列して配置され、前記走行路切り替え手段は、前記複数の走行路を前記ワーク搬送車が択一的に変更可能な昇降装置からなることを特徴とする、請求項2に記載の工程間フレキシブル自動搬送システム。
  4. 前記レールキットは、1列の走行路からなり、前記ワークステーションキットは、前記レールキットの走行路に連結可能に設けられたワーク通過停止位置と、当該ワーク通過停止位置と離れて位置するワーク受け渡し位置を有し、前記ワーク通過停止位置とワーク受け渡し位置間で前記ワーク搬送車を移動手段を介して移動可能とし、前記ワーク受け渡し位置に前記ワーク搬送車が移動した状態で前記ワーク通過停止位置の両側に接続されたレールキットのワーク走行路を通って別のワーク搬送車が前記ワークステーションキットを通過可能であることを特徴とする、請求項1に記載の工程間フレキシブル自動搬送システム。
  5. 前記ワークステーションキットの通過停止位置とワーク受け渡し位置とは、当該ワークステーションキットを設置した際に何れか一方が上側、何れ他方が下側に位置すると共に、前記移動手段は、前記ワーク搬送車をワーク通過停止位置とワーク受け渡し位置間で昇降させる昇降手段からなることを特徴とする、請求項4に記載の工程間フレキシブル自動搬送システム。
  6. 前記通過停止位置は、ワークステーションキットを設置した際に下側に位置し、前記ワーク受け渡し位置は上側に位置することを特徴とする、請求項5に記載の工程間フレキシブル自動搬送システム。

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