JP2011000058A - ターゲットdnaの増幅方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ターゲットDNAを特異的に増幅する方法を提供する。
【解決手段】両末端にオーバーハングを有し、前記ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片を二本鎖DNAからなり前記オーバーハングにそれぞれ相補的な塩基配列を有する相補的オーバーハングを有する環化アダプターによる環状化を経て少なくも一つの一本鎖環状DNA鎖である第1のDNA鎖を含む二本鎖環状DNAを調製し、前記第1のDNA鎖中のターゲットDNAに関連付けられる第1の塩基配列と相補的な塩基配列を有する第1のプライマーと、前記第1のDNA鎖の相補鎖の一部に相補的な塩基配列を有する第2のプライマーと、を用いて前記第1のDNA鎖及びその相補鎖を増幅するようにする。こうすることで、ダーゲットDNAを高い特異性と増幅性により増幅できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、ターゲットDNAの増幅方法に関し、特に、ターゲットDNAを高い特異性で増幅する方法及びその利用に関する。
DNAの増幅方法には、例えば、PCR(Poymerase Chain Reaction)、RCA(Rolling Circle Amplification)、LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)、SMAP(Smart amplification process)等のDNAの特定の一部の配列のみを増幅する方法と、LMP、MDA等の全ての配列が増幅できるWGA法とがある。特異的DNA増幅方法は、主として特定のDNA検出や、遺伝子操作に用いられている。
PCR法は最も広く普及しているDNA増幅法であり、各種分野において不可欠な技術である。また、RCA法(非特許文献1)は、環状化したDNAを効率的に増幅することができる。自然界におけるλファージなどの複製機構を模倣したRCA法により得られる増幅産物は、環状DNAの一周分のDNA配列が反復した直鎖状の一本鎖DNAであり、プライマーを用いて103倍までの増幅が可能である。更に第2のプライマーを加えて109倍以上増幅できるHRCA(Hyperbranched RCA)法も開発されている。このHRCA法の特徴は、恒温(30℃〜65℃)のままでDNAの増幅を行う点である。さらに、標的DNAと特異的にハイブリダイズする100mer程度のプローブが標的DNAと特異的にハイブリダイズしたときにライゲーションにより環状化し、この環状化DNAを増幅するL−RCA(Ligation-RCA)法が開発されている(非特許文献2)。
LAMP法(非特許文献3)及びSMAP法も、恒温でDNAを特異的に増幅することができる。これらの方法は短時間でDNA試料、プライマー及び鎖置換型DNAポリメラーゼを混合し、検出までの工程をワンステップで行うため、特定の遺伝子の有無を効率的に判定することができる。
Dean et al., Genome Res 11(6):1095-1099(2001) Lizardi et al. Nature genetics volume 19, 1998 Notomi, T., Okayama, H., Masubuchi, H., Yonekawa, T., Watanabe, K., Amino, N. and Hase., (2000), Nucleic Acid Res., 28 (12) : e63
しかしながら、PCR法は、60℃〜95℃の範囲で加熱・冷却を繰り返す高度の温度調節装置を要するため、エネルギー消費量が多く、コストも高い。また、二重鎖DNAの変性とハイブリダイゼーションとを繰り返すため、特に、テンプレートDNAの濃度が低い場合には、非特異的な増幅もしばしば発生する。さらに、多数の特定のDNA領域を同時に増幅することも困難である。また、RCA及びHRCAを用いて、検出対象となるような特定のDNAを環状化して増幅するものではなく、L−RCA法は、あくまで100塩基前後のプローブを環状化するものであり、一旦非特異的な環状化が生じてしまえば、非特異的な増幅が起こりやすいという問題があった。加えて、検出・増幅特異性はライゲーションに依存しているほか、比較的短い標的配列には有効であるが長いDNAを標的とするとトポロジー的な拘束により増幅効率が低下し、さらに標的配列に応じた温度制御をしなければ、非特異的増幅が生じてしまっていた。
さらに、LAMP法やSMAP法では、プライマーの設計が困難であり、非特異的な増幅が生じやすいという欠点があった。
以上のように、現状において、検出対象となるような特定のDNAを非特異的な増幅を効果的に抑制して増幅することは困難であった。また、温度制御のほか煩雑な操作も必要であった。
そこで、本発明は、非特異的な増幅を効果的に抑制して高い特異性と増幅性でターゲットDNAを増幅できるターゲットDNAの増幅方法及びその利用を提供することを一つの目的とする。
本発明者らは、ターゲットDNAの増幅に際し、ターゲットDNA自体を環状化して二本鎖環状DNAとし、この一方のDNA鎖を鋳型としてこの相補鎖を増幅し、さらにこの相補鎖中のターゲットDNAの特異的配列を利用して前記一方の鎖を増幅することで、効果的にバックグラウンドを抑制し、しかも高効率にターゲットDNAを増幅できるという知見を得た。本発明によれば、以下の手段が提供される。
本明細書の開示によれば、ターゲットDNAを増幅する方法であって、両末端にオーバーハングを有し、前記ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片を調製する工程と、前記二本鎖DNA断片を二本鎖DNAからなり前記オーバーハングにそれぞれ相補的な塩基配列を有する相補的オーバーハングを有する環化アダプターによる環状化を経て少なくも一つの一本鎖環状DNA鎖である第1のDNA鎖を含む二本鎖環状DNAを調製する工程と、前記第1のDNA鎖中のターゲットDNAに関連付けられる第1の塩基配列と相補的な塩基配列を有する第1のプライマーと、前記第1のDNA鎖の相補鎖の一部に相補的な塩基配列を有する第2のプライマーと、を用いて前記第1のDNA鎖及びその相補鎖を増幅する工程と、
を備える、方法が提供される。
この増幅方法においては、前記増幅工程は、前記第1のDNA鎖の相補鎖中のターゲットDNAに関連付けられる第2の塩基配列に相補的な塩基配列を有する前記第2のプライマーを用いる工程であることが好ましい。また、前記第2のプライマーは、前記第1のDNA鎖の相補鎖中の前記環化アダプターに由来する塩基配列の少なくとも一部に相補的な塩基配列を有するプライマーとすることができる。前記二本鎖環状DNA調製工程は、前記第1のDNA鎖と相補的であり、かつ少なくとも一つのギャップを有する一本鎖DNA鎖である第2のDNA鎖とを有する前記二本鎖環状DNAを調製する工程であり、前記増幅工程は、前記第2のDNA鎖の前記ギャップにおいて露出された3’末端から前記第2のDNA鎖の増幅を開始するステップを含むことができる。前記ギャップは0塩基以上であればよいが、1塩基以上であることが好ましい。
この増幅方法において、前記環化アダプターは、ステム(二本鎖)を形成する第1のステムと当該第1のステムの一方の末端に1塩基以上の長さのギャップを形成するための追加の塩基配列と二重鎖DNA断片の一方のオーバーハングと相補的でかつ同じ長さの塩基配列とを有する第1の相補的オーバーハングとを有する第1のアダプター鎖と、前記ステムを形成する第2のステムと当該第2のステムの一方の末端に二本鎖DNA断片の他方のオーバーハングと相補的でかつ同じ長さの塩基配列を有する第2の相補的オーバーハングとを有する第2のアダプター鎖と、を備えることができる。
この増幅方法において、前記増幅工程は、鎖置換型DNAポリメラーゼを用いて実施する工程とすることができる。また、前記増幅工程は、前記二本鎖環状DNAを変性することなく実施する工程とすることができる。さらに、前記増幅工程は、超分岐ローリングサークル増幅工程とすることができる。
この増幅方法において、前記オーバーハングは前記ターゲットDNAを含む前記二本鎖DNA断片に特異的な配列を有し、前記環化アダプターの前記相補的オーバーハングは前記オーバーハングに相補的な塩基配列を有することができる。さらに、前記二本鎖DNA断片調製工程は、前記ターゲットDNAを含む試料を5塩基以上のオーバーハングを有する断片を生成可能な制限酵素で処理する工程とすることができる。さらにまた、前記二本鎖DNA断片調製工程は、100bp以上5000bp以下の前記二本鎖DNA断片を調製する工程とすることができる。
本明細書の開示によれば、ターゲットDNAを検出する方法であって、両末端にオーバーハングを有し、前記ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片を調製する工程と、前記二本鎖DNA断片を二本鎖DNAからなり前記オーバーハングにそれぞれ相補的な塩基配列を有する相補的オーバーハングを有する環化アダプターによる環状化を経て少なくも一つの一本鎖環状DNA鎖である第1のDNA鎖を含む二本鎖環状DNAを調製する工程と、前記第1のDNA鎖中のターゲットDNAに関連付けられる第1の塩基配列と相補的な塩基配列を有する第1のプライマーと、前記第1のDNA鎖の相補鎖の一部に相補的な塩基配列を有する第2のプライマーと、を用いて前記第1のDNA鎖及びその相補鎖を増幅する工程と、前記増幅工程での増幅産物を検出する工程と、を備える、方法が提供される。

本明細書の開示の開示によれば、ターゲットDNAを増幅又は検出するキットであって、両末端に5塩基以上のオーバーハングを有する二本鎖DNA断片を生成可能な制限酵素と、二本鎖DNAであって、ステムと、該ステムの一方のDNA鎖から一方に延び前記二本鎖DNA断片の一方のオーバーハングに相補的な塩基配列を有する第1の相補的オーバーハングと、前記ステムの他方のDNA鎖から他方に延び前記二本鎖DNA断片の他方のオーバーハングに相補的な塩基配列を有する第2の相補的オーバーハングと、を備える環化アダプターと、を含む、キットが提供される。
本発明の概要の一例を示す図である。 実施例1で調製するターゲットDNA、アダプター及びプライマーの配列設計を示す図である。 実施例1において360塩基対のターゲットDNAに対して、増幅したDNAの泳動結果を示す図である。(a)は、ターゲットDNA濃度を0.05pM〜5pMの範囲で変化させたときの増幅産物の泳動結果を示し、(b)は、ヒトゲノムDNAの混在下でのターゲットDNAの増幅産物、ターゲットDNAのみの増幅産物及びヒトゲノムのみの増幅産物の各泳動結果を対比する図である。 実施例2〜5において、861塩基対のターゲットDNA及び242塩基対のターゲットDNAに対して、増幅したDNAの泳動結果を示す図である。レーン1は861塩基対のターゲットDNAの増幅産物の泳動結果であり、レーン2は242塩基対のターゲットDNAの増幅産物の泳動結果であり、レーン3は149塩基対(GAP4mer)のターゲットDNAの増幅産物の泳動結果であり、レーン4は149塩基対(GAP19mer)のターゲットDNAの増幅産物の泳動結果であり、レーン5は1525塩基対のターゲットDNAの増幅産物の泳動結果である。 実施例1〜5において得られた増幅産物の制限酵素TspRIによる分解産物の電気泳動結果を示す図である。レーン0は、実施例1(360 bpのターゲットDNAの増幅産物)のTspRI分解産物の泳動結果であり、レーン1は実施例2(861 bpのターゲットDNAの増幅産物)のTspRI分解産物の泳動結果であり、レーン2は実施例2(242 bpのターゲットDNAの増幅産物)のTspRI分解産物の泳動結果であり、レーン3は実施例3(149 bpのターゲットDNAの増幅産物)のTspRI分解産物の泳動結果であり、レーン4は実施例5(1525 bpのターゲットDNAの増幅産物)のTspRI分解産物の泳動結果である。
本発明は、ターゲットDNAの増幅方法及びその利用に関する。本明細書の開示のターゲットDNAの増幅方法の概要の一例を図1に示す。本明細書の開示によれば、ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片を環化アダプターを利用して環状化して、少なくとも一つの一本鎖環状DNA鎖である第1のDNA鎖を含む二本鎖環状DNAを調製し、第1のDNA鎖中のターゲットDNAに関連付けられる第1の塩基配列に相補的な塩基配列を有する第1のプライマーを用いて増幅工程を実施してその相補鎖を増幅することができる。さらに、その相補鎖中の一部に相補的な塩基配列を有する第2のプライマーを用いる増幅工程の実施により、第1のDNA鎖を増幅することができる。すなわち、第1のDNA鎖中にターゲットDNAに関連付けられる第1の塩基配列がある場合に限り、第1のDNA鎖及びその相補鎖の増幅が効率的に反復して行われる。
このように、本明細書の開示の増幅方法によれば、環状の第1のDNA鎖にターゲットDNAに関連付けられる第1の塩基配列がある場合においてのみ、ターゲットDNAの増幅が増強されることになる。このため、バックグラウンドをよく抑制して高効率にターゲットDNAを増幅できる。
さらに、本明細書の開示によれば、第1のDNA鎖の相補鎖中のターゲットDNAに関連つけられる第2の塩基配列に相補的な塩基配列を有する第2のプライマーを用いることで、さらに高い特異性でターゲットDNAを増幅することができる。例えば、第2の塩基配列としては、ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片に特異的にハイブリダイズして環化する環化アダプター中の塩基配列を選択することができる。
以下、本明細書の開示のターゲットDNAの増幅方法及びその利用の各種実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。図1は、本明細書の開示のターゲットDNAの増幅方法の概要の一例及び当該増幅方法におけるターゲットDNA、二本鎖DNA断片、環化アダプター、二本鎖環状DNA、プライマー及び増幅形態等を示す図である。
(ターゲットDNAの増幅方法)
本明細書の開示のターゲットDNAの増幅方法は、ターゲットDNAを増幅する方法である。すなわち、ターゲットDNAの複製物を生産する方法である。ここで複製物とは、ターゲットDNAの塩基配列と同一配列のDNAを含むものをいい、ターゲットDNAは複製物の一部であってもよい。本明細書の開示の増幅方法によれば、複製物を、通常、ターゲットDNAを含む二本鎖DNAとして取得することができる。
(ターゲットDNA)
本明細書の開示の増幅方法が増幅対象とするターゲットDNAは、実質的な増幅対象となる二本鎖DNA断片の全体を意図するものでなく、その一部であってもよい。また、その全体であってもよい。ターゲットDNAは、二本鎖DNAであってもよいし、一本鎖DNAであってもよい。ターゲットDNAの由来も特に問わない。また、その長さも特に限定しないが、制限酵素による頻度や増幅効率等を考慮すると、3000bp以下程度とすることができる。また、ターゲットの長さの下限も特に限定しないが、ターゲットDNAに特異的な増幅を考慮すると、その長さの下限は、プライマーがハイブリダイズしてDNAポリメラーゼによるDNA伸長反応が進行する長さであることが好ましく、制限酵素による切断を考慮すると、ターゲットDNAは30bp程度以上であればよく、200bp以上であってもよい。
(二本鎖DNA断片の調製工程)
本工程は、両末端にオーバーハングを有し、ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片を調製する工程とすることができる。この工程によれば、ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片を調製することにより、後段の工程でターゲットDNAを二本鎖環状DNAの一部に含めることができる。この結果、ターゲットDNAの実質的な増幅をターゲットDNA特異的な配列に基づいて実現及び増強できることになる。
(二本鎖DNA断片)
本明細書の開示の増幅方法における二本鎖DNA断片は、ターゲットDNAを含んで両末端にオーバーハングを有することができる。ターゲットDNAの領域は特に限定しない。二本鎖DNA断片の一部であっても全体であってもよい。したがって、ターゲットDNAの領域が両末端又は一方の末端のオーバーハングの全体又はその一部に及んでいてもよい。
オーバーハングは、好ましくは5塩基以上である。5塩基以上であると、環化の効率及び二本鎖DNA断片の環化時において二本鎖DNA断片と環化アダプターとの特異性の高いハイブリダイズを確保しやすくなる。オーバーハングは、通常、制限酵素による切断によって形成されるが、この場合オーバーハングには、1又は2以上の任意塩基部位を含んでいることが好ましい。ターゲットDNAを含んだ二本鎖DNAのオーバーハングが当該断片に特異的な塩基が許容されるため、当該断片に特異的なオーバーハングを得ることができる。また、オーバーハングには、制限酵素の認識配列を含んでいてもよい。
二本鎖DNA断片の長さは、制限酵素の認識部位の頻度や増幅効率等を考慮すると、100bp以上5000bp以下程度であることが好ましい。100bp以上であれば、ギャップを長くすることで、環状化することが可能であるからである。また、例えば、大腸菌DNA(4640 kb)の制限酵素TspRIによる切断断片の塩基長は、100 bp以下が約2%、100-3000 bpが96%以上、3000−5000 bpが約1.5%、5000 bp以上がほとんどなし、というように、100bpから5000bpにほとんどの断片が集中する傾向があるからである。より好ましくは、200bp以上3000bp以下程度である。
(二本鎖DNA断片の調製方法)
二本鎖DNA断片は、例えば、ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片を、粘着性末端を生じる1種又は2種以上の制限酵素で処理することによって得ることができる。制限酵素処理によって得られる粘着性末端が、二本鎖DNA断片のオーバーハングに相当する。制限酵素は1種のみを用いてよいし、2種以上を用いてもよい。ターゲットDNAを含んで適当な長さの二本鎖DNA断片となるような制限酵素又はその組み合わせが選択される。さらには、特異性の高いオーバーハングが生成されるかどうか等も考慮して選択される。
制限酵素としては、二本鎖DNA断片において好ましいオーバーハングを生成するものであることが好ましい。こうした制限酵素としては、例えば、5塩基以上のオーバーハングを生成する制限酵素が挙げられる。具体的には、Hga I (5塩基のオーバーハング)、Bae I (5塩基のオーバーハング)、Hin4 I (5塩基のオーバーハング)、Alo I (5塩基のオーバーハング)、Bsp24 I (5塩基のオーバーハング)、Hae IV (5塩基と6塩基のオーバーハング)、Cje I (6塩基のオーバーハング)、CjeP I (6塩基のオーバーハング)及びTspRI (9塩基のオーバーハング)が挙げられる。なかでも、6塩基以上のオーバーハングを生成する制限酵素が好ましく、より好ましくは9塩基のオーバーハングを生成する制限酵素である。
制限酵素が生成するオーバーハングは、1又は2以上の任意塩基部位を含むことが好ましい。既に説明したように、任意塩基部位を含むことで、ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片を高い特異性で環化できるようになる。2以上の任意の塩基は連続していてもよく1又は2以上の特定の塩基を介して配列していてもよい。任意の塩基は好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上である。例えば、Hga Iの場合は、5塩基のオーバーハングはNNNNNであり、二本鎖DNA断片に形成されるオーバーハングは当該二本鎖DNA断片に特異的な5つの連続した塩基からなる配列を有することになる。こうした特異的なオーバーハングに相補的な環化アダプターを用いることでターゲットDNAの増幅の特異性が向上する。
制限酵素の認識部位を構成する塩基数は特に限定しないが、ターゲットDNAの長さ等を考慮して決定できる。認識部位を構成する塩基数が多い場合には、認識部位の存在頻度が低くなり長い二本鎖DNA断片が形成され、当該塩基数が少ない場合には、認識部位の存在頻度が高くなり短い二本鎖DNA断片が形成されるようになる。例えば、認識部位の構成塩基数が4塩基以上6塩基以下程度(典型的には5塩基)であると、増幅効率等の関係から好ましい長さの二本鎖DNA断片を得ることができる。例えば、TspRIの場合、CACTG又はCAGTGの配列があれば、切断ができる。TspRIの切断サイトは、平均的には、400−500塩基程度に一箇所であると考えられる。制限酵素の認識部位は、オーバーハング中にあってもよいし、オーバーハング以外にあってもよい。
(二本鎖環状DNAの調製工程)
二本鎖環状DNAの調製工程は、ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片を環化アダプターを利用した環状化を経て、少なくも一つの一本鎖環状DNAを含む二本鎖環状DNAを調製する工程とすることができる。二本鎖環状DNAは、少なくとも一つの一本鎖環状DNA鎖である第1のDNA鎖を含んでいる。一本鎖環状DNA鎖とは、完全な環状のDNA鎖を意味している。後段の増幅工程では、この第1のDNA鎖を鋳型にこの相補鎖を増幅することで、ターゲットDNAを特異的かつ高効率に増幅できる。二本鎖環状DNAの他方のDNA鎖は、一本鎖環状DNAである第1のDNA鎖と相補的であり、かつ一つのギャップ(不連続部位)を有する一本鎖DNA鎖である第2のDNA鎖であることが好ましい。こうしたギャップを備えることで、二本鎖環状DNAの形態を採っていても、高温で変性して一本鎖DNA鎖にしなくとも増幅工程を実施できる。
二本鎖環状DNAが第2のDNA鎖を有するとき、ギャップは、後述する環化アダプターの末端と第2のDNA鎖の末端との間に位置されることが好ましい。ギャップは、後段の増幅工程で第1のDNA鎖の相補鎖の複製開始部位ともなり、環化アダプターの近傍であれば、ギャップを形成しやすく環状化した二本鎖DNA断片を特異的に増幅しやすいからである。ギャップは、環化アダプターの5’末端と第2のDNA鎖の3’末端との間に位置であってもよいし、環化アダプターの3’末端と第2のDNA鎖の5’末端との間に位置であってもよい。
ギャップの大きさ(塩基数)は、特に限定しないで、0塩基(ニック)であってもよいし、1塩基以上であってもよい。DNAの二重螺旋は10.5塩基前後で一ピッチであるので、100bp以上200bp以下の比較的短い断片の場合、ギャップの塩基数10.5の整数倍(105、115、126など)でなければ、連結する際にStressが生じ、連結の効率が悪くなる傾向があるが、300 bp以上であれば、その制限がなくなり、どの長さのDNA断片でも効率良く環状化できる(Du Q, Vologodskaia M, Kuhn H, Frank-Kamenetskii M, and Vologodskii A. "Gapped DNA and cyclization of short DNA fragments" Biophys. J. 88, 4137-4145 (2005).)。
(環化アダプター)
二本鎖環状DNAを調製するには、環化アダプターを用いることができる。図1に示すように、環化アダプターの一例は、全体として二本鎖のステムと、これらのステムから反対方向にそれぞれ延びるオーバーハングを有している。すなわち、環化アダプターは、二本鎖DNAであって、ステムと、該ステムの一方のDNA鎖から一方に延び前記二本鎖DNA断片の一方のオーバーハングに相補的な塩基配列を有する第1の相補的オーバーハングと、前記ステムの他方のDNA鎖から他方に延び前記二本鎖DNA断片の他方のオーバーハングに相補的な塩基配列を有する第2の相補的オーバーハングとを備えることができる。環化アダプターと二本鎖DNA断片と環化アダプターとをそれぞれ相補的なオーバーハングでハイブリダイズさせ、DNAリガーゼで連結することにより、二本鎖環状DNA(閉環状DNA)を得ることができる。
環化アダプターを用いてギャップを有しない完全な環状の第1のDNA鎖とギャップを有する第2のDNA鎖とを有する二本鎖環状DNAを得るには、調製した二本鎖閉環状DNAをニッカーゼで処理することにより一方のDNA鎖にニックを形成させて、第1のDNA鎖と0塩基のギャップを有する第2のDNA鎖を有する開環状DNAとすることができる。例えば、予め、ニッカーゼの認識配列を導入した環化アダプターを用いて環状化しておき、連結後にニッカーゼで処理する方法が挙げられる。また、ターゲットDNA中にニッカーゼの認識配列がある場合には、それを利用して0塩基ギャップ(ニック)を形成してもよい。ニッカーゼとしては、例えば、N.Alw I(認識配列:5’-GGATCNNNNN*N-3’/3’-CCTAGNNNNN-5、 *はCutする位置を示す。以下同じ。)、N.BstNB I(5’-GGATCNNNNN*N-3’/3’-CCTAGNNNNN-5’)、N.BbvC IA(5’-GC*TGAGG-3’/3’-CGACTCC-5’)及びN.BbvC IB(5’-GC*TCAGC-3’/3’-GGAGTCG-5’)が挙げられる。さらには、リガーゼで連結されないように、特定の5’末端を脱リン酸化した環化アダプターを準備して環化を行ってもよい。
二本鎖環状DNAの調製工程は、T4 DNAリガーゼ等のDNAリガーゼを用いて10℃以上37℃以下程度の室温で行うことが好ましい。なお、ニッカーゼを用いてニックを形成する場合には、予めDNAリガーゼを失活しておくことが好ましい。
また、ギャップを有しない完全な環状の第1のDNA鎖と1塩基以上のギャップを有する第2のDNA鎖とを有する二本鎖環状DNAを得るには、ギャップを形成可能に構築した環化アダプターを用いることができる。その場合、環化アダプターは、二本鎖ステムを形成する第1のステムと当該第1のステムの一方の末端に1塩基以上の長さのギャップを形成するための追加の塩基配列と二重鎖DNA断片の一方のオーバーハングと相補的でかつ同じ長さの塩基配列とを有する第1の相補的オーバーハングとを有する第1のアダプター鎖と、前記ステムを形成する第2のステムと当該第2のステムの一方の末端に二本鎖DNA断片の他方のオーバーハングと相補的でかつ同じ長さの塩基配列を有する第2の相補的オーバーハングとを備えることができる。この環化アダプターにおいて第1のアダプター鎖は第1のDNA鎖に組み込まれ、第2のアダプター鎖は第2のDNA鎖に組み込まれるようにそれぞれ相補的オーバーハングが形成されている。
かかる環化アダプターにおける追加の塩基配列は、ギャップの塩基数の長さに対応しており、例えば、ギャップが1塩基〜4塩基の場合、1塩基〜4塩基の長さとなる。図1に示すように、このようなDNA領域を、第1のアダプター鎖のオーバーハングの末端の反対側、すなわち、ステム寄りに備えることができる。この結果、第2のアダプター鎖の第2のステムの露出された末端(図1では5’末端)と二重鎖DNA断片のオーバーハングの末端(図1では3’末端)との間にギャップが形成されることになる。増幅工程では、ギャップに露出される第2のDNA鎖の3’末端からDNA鎖の伸長が開始されるのが好ましい。
環化アダプターは、さらに第2のアダプター鎖の第2の相補的オーバーハングの末端から適数個の塩基を除去されていてもよい。こうすることで、環化時に、二本鎖DNA断片の第2のDNA鎖と環化アダプターの第2のアダプター鎖の相補的オーバーハングとがDNAリガーゼによって連結されなくなる。この結果、追加のギャップが二本鎖環状DNAの第2のDNA鎖に形成されることになる。このギャップがあることで、二本鎖DNA断片を調製するのに用いた制限酵素の認識部位の再形成を回避して、当該制限酵素による切断を回避することができる。すなわち、二本鎖DNA断片の準備工程で用いた制限酵素の除去操作を省くことができる。この追加のギャップの大きさは、1塩基以上で、二本鎖DNA断片と環化アダプターのアニールを妨げない範囲で設定できる。
既に説明したように、制限酵素の認識部位及び/又は切断部位の塩基配列に任意塩基を含むなどの理由により、二重鎖DNA断片のオーバーハングが高い特異性を有する場合には、環化アダプターによる環状化自体がターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片に特異性の高いものとなり、後段の増幅工程における特異的なターゲットDNAの増幅に寄与することになる。
環化アダプターの相補的オーバーハング以外の領域、例えば、ステムは、後段の増幅工程で使用する第2のプライマーをハイブリダイズさせるターゲットDNAに関連付けられる配列を含んでいてもよい。こうすることで、第2のプライマーは、ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片に特異的な、すなわち、ターゲットDNAに関連付けられる第2の塩基配列に相補的な塩基配列を有することができるといえる。この結果、後段の増幅工程で、生じうる意図しない増幅産物(二本鎖DNA断片のセルフライゲーション産物や意図しない環化アダプターとのライゲーション産物)とのハイブリダイズが抑制されるとともに、より高い特異性でターゲットDNAを増幅できるようになる。
また、環化アダプターのステム等には、必要に応じ機能的な塩基配列のDNA領域を有していてもよい。例えば、増幅工程後に実施する可能性のあるシークエンシング、転写反応、形質転換、細胞内増幅などに利用可能な塩基配列のDNA領域が挙げられる。例えば、シークエンシング用プライマー配列を使用すれば、後段の増幅工程で増幅した産物を直接シークエンスできる。
(ターゲットDNAの増幅工程)
ターゲットDNAの増幅工程は、第1のDNA鎖中のターゲットDNAに関連付けられる第1の塩基配列と相補的な塩基配列を有する第1のプライマーと、前記第1のDNA鎖の相補鎖の一部に相補的な塩基配列を有する第2のプライマーと、を用いて前記第1のDNA鎖及びその相補鎖を増幅する工程とすることができる。この増幅工程によれば、第1のDNA鎖中にターゲットDNAに関連付けられる第1の塩基配列があるときには、第1のプライマーによって第1のDNA鎖の相補鎖が増幅される。さらに、第1のDNA鎖の相補鎖中の一部の塩基配列に相補的な塩基配列を有する第1のプライマーによって、第1のDNA鎖が増幅される。すなわち、第1のDNA鎖にターゲットDNAに関連付けられる第1の塩基配列があれば、第1のDNA鎖とその相補鎖との増幅が増強される。
(プライマー)
第1のプライマーは、第1のDNA鎖中のターゲットDNAに関連付けられる第1の塩基配列に相補的な塩基配列を有している。第1のプライマーは、第1のDNA鎖をターゲットDNAに特異的にその相補鎖を増幅するためのプライマーである。こうした第1のプライマーを用いることで、ターゲットDNAに関連付けられる第1のDNA鎖の相補鎖を特異的に増幅できる、第1の塩基配列としては、例えば、ターゲットDNAに見出される特異的な塩基配列に相補的な配列とすることができる。こうした特異的な配列及び第1の塩基配列は、適切なプログラムを用いることで適宜決定することができる。第1のプライマーの長さは特に限定しないが、好ましくは8塩基以上20塩基程度である。
第2のプライマーは、第1のDNA鎖の相補鎖(第2のDNA鎖である場合もある)の一部に相補的な塩基配列を有している。第2のプライマーは、第1のDNA鎖を増幅するためのプライマーである。こうした第2のプライマーを用いることで、第1のDNA鎖の相補鎖が増幅されたときには、それに応じて第1のDNA鎖が増幅されることになる。
こうした第1のプライマーと第2のプライマーとによって、ターゲットDNAが特異的に増幅されることになる。
第2のプライマーは、第1のDNA鎖の相補鎖中のターゲットDNAに関連付けられる第2の塩基配列に相補的な塩基配列を有していてもよい。こうした第2のプライマーを用いることで、さらに一層高い特異性でターゲットDNAを増幅できるようになる。こうした第2の塩基配列としては、前記相補鎖中に見出すことのできる、ターゲットDNA特異的な配列であってもよいが、例えば、相補鎖中の環化アダプターに由来する配列することもできる。既に説明したように、制限酵素の選択等により、二本鎖DNA断片のオーバーハングには、ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片に特異的な配列とすることができる。こうした場合、このようなオーバーハングに特異的にハイブリダイズして環化する環化アダプター中の塩基配列を第2の塩基配列として選択することで、第1の塩基配列に基づく特異性に加え、特異的な環化を引き起こす第2の塩基配列に基づく特異性を付加して一層特異的にターゲットDNAを増幅することができるようになる。これらの結果、バックグラウンドを効果的に低減できる。さらに、環化アダプター中に第2の塩基配列を設定することで、増幅工程で生じた意図しない増幅産物(二本鎖DNA断片のセルフライゲーション産物や意図しない環化アダプターとのライゲーション産物)に基づく第1のDNA鎖の増幅が回避される。また、環化アダプター中の塩基配列を第2の塩基配列とすることで、第1の塩基配列以外にターゲットに有効に関連付けられる高い特異性の塩基配列が見出せない場合であっても、第2の塩基配列を容易にかつ高い自由度で設定することができる。こうした第2の塩基配列は、例えば、環化アダプターのステムの一部又は全部とすることができる。例えば、ギャップに露出される第2のDNA鎖の5'末端側(第2のアダプター鎖の5’末端側)の塩基配列とすることができる。第2のプライマーの長さは特に限定しないが、好ましくは8塩基以上20塩基程度である。
これらのプライマーの3’末端は、Phi29 DNA polymerase等の鎖置換型DNAポリメラーゼの3’‐エキソヌクレアーゼ活性で分解しないように、リン酸ジエステルをリン酸チオエステルに修飾することができる。
増幅工程は、二本鎖環状DNA中の第1のDNA鎖に対して実施されればよく、各種態様で開始し、進行させることができる。第1の方法は、二本鎖環状DNAを変性させて第1のDNA鎖を単環状のDNA鎖として取得した上で、この単環状の第1のDNA鎖に対して増幅工程を実施する方法がある。この方法では、第1のDNA鎖中の第1の塩基配列に対して第1のプライマーがハイブリダイズすることで、第1のDNA鎖の相補鎖の増幅が開始される。その後、増幅された相補鎖に対して第2のプライマーがハイブリダイズして第1のDNA鎖の増幅が開始される。こうして、第1のDNA鎖と第2のDNA鎖が繰り返し増幅される。
また、第2の方法は、開環状二本鎖環状DNAに対して、直接増幅工程を実施する態様である。すなわち、鎖置換型DNAポリメラーゼを用いることで、ギャップを有する第2のDNA鎖の3’末端から第2のDNA鎖の伸長・増幅が開始される。この方法によれば、二本鎖DNAをアニールさせる必要がないため、一定温度で増幅反応を実施できる。第2のDNA鎖の伸長反応に伴い、鎖置換型DNAポリメラーゼによって第2のDNA鎖の5’末端と第1のDNA鎖との対合が解かれていき、さらに第2のDNA鎖の伸長が進行することになる。こうして増幅された第2のDNA鎖に対して、第2のプライマーがハイブリダイズし、第1のDNA鎖が伸長し増幅される。そして、新生された第1のDNA鎖に対して第1のプライマーがハイブリダイズして第2のDNA鎖が増幅される。こうして、第1のDNA鎖と第2のDNA鎖が繰り返し増幅される。
なお、閉環状二本鎖DNAの場合でも、第1のDNA鎖以外の鎖のDNA鎖にニックを形成するなどすることで事後的に第2のDNA鎖を形成して、開環状二本鎖DNAを取得して、第2の方法による増幅工程を実施できる。
増幅工程は、好ましくは、上記第1の方法及び第2の方法においては、鎖置換型DNAポリメラーゼを用いて行う。こうすることで、第2のDNA鎖が鋳型となる第1のDNA鎖に対合している状態であっても、第1のDNA鎖の相補鎖を増幅できる。すなわち、20℃〜50℃程度の常温の一定温度で反応させることができる。このような鎖置換型DNAポリメラーゼとしては、Phi29DNAポリメラーゼ、Klenow Fragment DNA Polymerase I、Klenow Fragment 3¢(R)5¢ exo-M-MuLV Reverse Transcriptase、Vent (exo-) DNA polymerase等が挙げられる。
増幅工程は、ローリングサークル型増幅工程とすることができる。すなわち、第1のDNA鎖又は第2のDNA鎖がタンデムに連結した多量体(コンカテマー)が形成されるような条件で実施することが好ましい。例えば、鎖置換型DNAポリメラーゼを用い、第1のDNA鎖の相補鎖(第2のDNA鎖)をタンデムに連続的に備える一本鎖の多量体が増幅産物として生成するようにすることができる。こうすることで、タンデムに配列された各相補鎖に第2のプローブがハイブリダイズし、各相補鎖につき第1のDNA鎖が増幅されることになる。さらにこの第1のDNA鎖に第1のプライマーが特異的にハイブリダイズしてさらにその相補鎖が増幅される。このような超分岐ローリングサークル型増幅工程の結果、第1のDNA鎖とその相補鎖(第2のDNA鎖)の連続的かつ指数関数的な増幅が可能となり、第1のDNA鎖と第2のDNA鎖との二重鎖のコンカテマーを効率的に形成することができる。
以上説明した本明細書の開示の増幅方法によれば、増幅工程における環状の第1のDNA鎖中のターゲットDNAに関連付けられる第1の塩基配列を利用してその相補鎖を増幅することで、ターゲットDNA増幅の特異性が確保されている。さらに、鋳型を環状の第1のDNA鎖とすることで連続的にその相補鎖の増幅が可能となっており、特異性と増幅性とが確保された方法となっている。
また、本明細書の開示の増幅方法においては、ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片を環状化して、これを増幅する。これにより、ターゲットにハイブリダイズして環状化させたプローブを増幅するよりも、より直接的により特異的にターゲットDNAを増幅することができる。
また、本明細書の開示の増幅方法によれば、第2のDNA鎖中のターゲットDNAに関連付けられる第2の塩基配列を利用することで、一層特異的にターゲットDNAを増幅することができるようになる。特に、本増幅方法においては、二本鎖DNA断片のオーバーハングに特異的な環化アダプターを用いることで二本鎖環状DNAを選択的に形成することができる。そして、第2の塩基配列を、第2のDNA鎖の環化アダプター中の配列に設定することができる。
このように、本明細書の開示の増幅方法は、ターゲットDNAに関連付けられる第1の塩基配列に基づく選択性によってターゲットDNAの特異的な増幅が確保されるのに加え、環状化の際のオーバーハング中のターゲットDNAに関連付けられた第2の塩基配列等によってもターゲットDNAの特異的な増幅が確保されうる。この結果、バックグラウンドの増幅を効果的に抑制することができる。特に、増幅工程をローリングサイクル型増幅、好ましくは超分岐ローリングサイクル型増幅で実施することで少量のターゲットDNAを高度に増幅することができる。
また、本明細書の開示の増幅方法において、開環状二本鎖DNAを調製し、鎖置換型DNAポリメラーゼを利用して増幅工程を実施することで、変性のための加熱を要せずしかも、常温範囲の一定温度で増幅工程を実施することができる。本明細書の開示の増幅方法によれば、特異的増幅をかかる温度条件で実施することがバックグラウンドの低減にも寄与しているほか、エネルギーコストや装置コストの低減並びに再現性の向上に寄与していると考えられる。
さらに、本明細書の開示の増幅方法によれば、二本鎖環状DNAの調製工程後の反応液をそのまま精製することなく増幅工程に用いることができる。増幅工程を、環状化した二本鎖DNA断片中の第1の塩基配列に基づいて高い特異性でかつ高い増幅性で実施できるからである。増幅工程を、第2のDNA鎖中の第2の塩基配列に基づいて実施することでさらに高い特異性と増幅性を確保できる。このようにして、高い特異性と増幅性とで増幅工程を実施できる結果、増幅工程後の反応液をそのまま精製することなく検出工程に供することもできる。
(ターゲットDNAの検出方法)
本明細書の開示のターゲットDNAの検出方法は、上記二本鎖DNA断片調製工程と、上記二本鎖環状DNA調製工程と、上記増幅工程と、に加えて、上記増幅工程での増幅産物の検出工程と、を備えることができる。本明細書の開示の検出方法によれば、ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片の高度に特異的な増幅産物を検出することで、高い特異性及び高い感度でターゲットDNAを検出することができる。
本明細書の開示の検出方法の検出工程における、増幅産物の検出方法は特に限定されない。一般的なDNAの検出方法である、電気泳動、増幅産物のプローブ(通常のプローブ他、モレキュラービーコン型プローブを含む)による検出等が挙げられる。プローブは例えば、アレイ等のように固相に結合されていてもよい。また、プローブは、蛍光等のシグナル物質によるシグナル化を伴うものであってもよい。また、こうした検出工程は、増幅工程後の増幅産物のみに対して行うことに限定するものではなく、増幅工程中の増幅産物に対してリアルタイムに実施することもできる。さらに、一端を化学修飾(例えば、5’末端にアミノ基を導入する。)等した環化アダプターを、固相上に固定しておき、二本鎖DNA断片を供給して環化してもよいし、また、環化後の二本鎖環状DNAを固相に固定化して、増幅工程を実施することで、そのまま固相上で蛍光標識したプローブ等を用いて検出工程を行うことができる。
(ターゲットDNAの増幅・検出キット)
本明細書の開示のターゲットDNAの増幅・検出キットは、両末端に5塩基以上のオーバーハングを有する二本鎖DNA断片を形成可能な制限酵素と、二本鎖DNAであって、ステムと、該ステムの一方のDNA鎖から一方に延び前記二本鎖DNA断片の一方のオーバーハングに相補的な塩基配列を有する第1の相補的オーバーハングと、前記ステムの他方のDNA鎖から他方に延び前記二本鎖DNA断片の他方のオーバーハングに相補的な塩基配列を有する第2の相補的オーバーハングとを備える、環化アダプターと、を含む、キットが提供される。このキットによれば、ターゲットDNAを含む可能性のある試料DNAを制限酵素で処理して二本鎖DNA断片を調製し、さらにこの二本鎖DNA断片と環化アダプターとを環状化することができる。ターゲットDNAを含む二本鎖環状DNAは、一本鎖環状DNA鎖である第1のDNA鎖と、前記第1のDNA鎖と相補的であって、一つのギャップ(不連続部位)を有する一本鎖DNA鎖である第2のDNA鎖とを有する開環状DNAである。この二本鎖環状DNAは、RCA法及びHRCA法などによる増幅方法によって高い特異性でターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片を増幅できる。
本明細書の開示のキットにおいては、二本鎖DNA断片と環化アダプターとをライゲーションするためのT4DNAリガーゼなどのDNAリガーゼを含んでいてもよい。さらに、ライゲーションにより生成した二本鎖環状DNAをRCA法により増幅するための第1のプライマー及び第2のプライマーを含んでいてもよい。第1のプライマーは、二本鎖環状DNAの第1のDNA鎖における環化アダプターに由来する塩基配列に相補的な塩基配列を有するプライマーである。また、第2のプライマーは、第1のプライマーによって増幅される前記第1のDNA鎖の相補鎖中のターゲットDNAの一部の塩基配列と相補的な塩基配列を有するプライマーである。こうしたプライマーは、好ましくは8塩基以上20塩基程度である。さらにまた、本明細書の開示のキットは、RCA法等にもちいるのに好ましいDNAポリメラーゼ、典型的には鎖置換型DNAポリメラーゼを含んでいてもよい。
(二本鎖環状DNAの調製方法等)
本明細書の開示によれば、上記の各種実施形態に基づいて、前記二本鎖DNA断片調製工程と、前記二本鎖環状DNAの調製工程と、前記増幅工程と、を備える、ターゲットDNAの増幅産物の生産方法も提供される。また、同様に、本明細書の開示によれば、前記二本鎖DNA断片調製工程と、前記二本鎖環状DNAの調製工程と、を備える二本鎖環状DNAの生産方法も提供される。この方法によれば、ターゲットDNAを含み、RCA法等に供するのに好適な二本鎖環状DNAを提供することができる。
以下、本発明を、具体例をあげて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(360bpのターゲットDNA(GAP4mer)の特異的な増幅)
図2に、本実施例における工程の概略を示す。以下、適宜図面を参照しながら説明する。
1.ターゲットDNA(増幅対象DNA)の調製
本実施例では、Plasmid pQBI T7-GFP (5115bp)の位置1882-2241にある360塩基対の配列を増幅対象、すなわち、ターゲットDNAとした。ターゲットDNAは、このプラスミドを制限酵素TspRIで切断して、約360塩基対で両末端に9塩基分のオーバーハングを持つ二本鎖DNA断片を得た。図2にこの二本鎖DNA断片の構造を示す。なお、制限酵素TspRIによる切断は、反応媒体(50mM NaOAc、20mM Tris-OAc、10mM Mg(OAc)2、pH7.9(25℃))中、65℃で2時間行った。
2.ライゲーションによる二本鎖環状DNAの調製
2−1.アダプターの調製
アダプターは、図2に示すように、9塩基のオーバーハングと13塩基のオーバーハングとを持つ二本鎖DNAとした。二本鎖DNAであるアダプターを形成するアダプターS1、アダプターScの配列(配列番号1、2)は以下のとおりであった。アダプターのステムは配列解析用のユニバーサルプライマー配列(M13/pUC sequencing primer (-20))を持っている。長さ30塩基対のアダプター(配列番号1)の5’末端にリン酸化している。アダプターを構成するDNAはそれぞれ化学合成により取得した。
アダプターS1: 5’-CAGGAAACAGCTATGACTATTCGCAGTGGG-3’(配列番号1)
アダプターSc: 5’-GTCATAGCTGTTTCCTGGTCAGTGGG-3’(配列番号2)
2−2.二本鎖環状DNAの調製
1.で調製したターゲットDNAを含む溶液の一部とアダプターとを、反応媒体(10 mM MgCl2、50 mM Tris-HCl、1 mM ATP、 10 mM Dithiothreitol、 pH 7.5(25℃))中で、DNA T4 リガーゼを用いて25℃で2時間反応させることで、4塩基のギャップを持つ二本鎖環状DNAを取得した。得られた二本鎖環状DNAの概要を図2に示す。
3.Phi29 DNA ポリメラーゼによるHRCA(Hyper-branched Rolling Circling Amplification)の実施
3−1.HRCA用プライマーの調製
HRCAに用いる2種類のプライマーL、プライマーRの配列(配列番号3、4)は以下のとおりであった。プライマーLは、アダプターScの一部に相補的な配列を有している。また、プライマーRは、ターゲットDNA中の特定配列に相補的な配列を有している。これらのプライマーは化学合成により取得した。プライマーLの3’末端にPhi29 DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性で分解しないように修飾してある。
プライマーL: 5’-CAGGAAACAGCTATGAC-3’(配列番号3)
プライマーR: 5’-CATGCAAATGCTGAATG -3’(配列番号4)
3−2.HRCAの実施
2.で取得した二本鎖環状DNAを含む溶液の一部を、反応媒体(50 mM Tris-HCl, pH7.5(25℃),10mM MgCl2, 10mM (NH4)2SO4, 4mM Dithiothreitol)中、Phi29 DNA ポリメラーゼ及びプライマーL,Rを用いて30℃で16時間反応させ、HRCAを実施した。二本鎖環状DNAのギャップの3’末端からPhi29 DNA ポリメラーゼによるギャップを有するDNA鎖の伸長が開始され、ギャップ鎖の増幅の進行に伴い、プライマーLがギャップ鎖にハイブリダイズし、ギャップを有しない非ギャップ鎖の伸張が開始され、その後、非ギャップ鎖にプライマーRがハイブリダイズし、さらにギャップ鎖の増幅が開始されることになる。
なお、以上の2−2.及び3−2.のステップでは、直前の反応液の一部を精製することなくそのまま用いたが、精製することを排除するものではない。例えば、1−2.のステップを実施後に、TspRIを失活すれば感度の向上は可能である。
以上のように、DNAの切断、アダプターとの連結、HRCAによる増幅を行い、増幅したDNAを電気泳動により分析した。結果を、図3に示す。
その結果、図3(a)に示すように、増幅時(HRCA)濃度が0.05 pM (1μl中30000分子)という非常に低いターゲットDNA濃度においても、広い範囲の長さにわたって増幅産物を確認できた。なお、本実施例では、DNA検出方法としてエチジウムブロマイド染色で行ったが、さらに高感度のDNA検出法を使用すれば、更に低い濃度でのターゲットDNAでも増幅できる。さらに、増幅産物を再び制限酵素TspRIにより切断すると、増幅前のターゲットDNAである360 bpの断片が得られたので、ターゲットDNAのみが増幅されたことを確認できた(図5レーン0参照)。
さらに、図3(b)に示すように、プラスミドに替えてターゲットDNAを含まないヒトゲノムDNA(制限酵素TspRI の切断部位は存在する。)を80ng(プラスミド量(16ng)の5倍)を加える場合は、全くDNAの増幅が確認されなかったので、本増幅方法が配列特異的であることがわかった。また、ヒトゲノムDNA(1μg/ml)とプラスミドとが同時に存在する場合でもDNAの増幅が確認されたので、本増幅方法が高い実用性を有することがわかった。
(860 bpと242 bpのターゲットDNA(GAP4mer)の特異的な同時増幅)
本実施例では、実施例1で用いたPlasmid pQBI T7-GFP (5115 bp) の位置1021−1881にある861塩基対及び位置2888-3129にある242塩基対をそれぞれ増幅対象、すなわち、ターゲットDNA(2種類)とし、実施例1と同様にして、二本鎖DNAを調製した。この配列に対し、アダプターとプライマーを設計し、増幅を行った。また、861塩基対のターゲットDNAに対しては、以下の配列のアダプターとプライマーとをそれぞれ準備した(配列番号5〜8)。長さ30塩基対のアダプター(配列番号5)の5’末端にリン酸化している。すべてのプライマーの3’末端の二つのリン酸ジエステルはエキソヌクレアーゼ活性で分解しないように修飾してある。
アダプター:
5’-CAGGAAACAGCTATGACTATTCCCACTGAC-3’(配列番号5)
5’-GTCATAGCTGTTTCCTGTCCAGTGAA-3’(配列番号6)
プライマー:
5’-CAGGAAACAGCTATGAC-3’(配列番号7)
5’-AAGTGGAAGCGGCGATG-3’(配列番号8)
242塩基対のターゲットDNAについては、以下の配列のアダプターとプライマーとをそれぞれ準備した(配列番号9〜12)。長さ30塩基対のアダプター(配列番号9)の5’末端にリン酸化している。すべてのPrimerの3’末端の二つのリン酸ジエステルはエキソヌクレアーゼ活性で分解しないように修飾してある。
アダプター:
5’-CAGGAAACAGCTATGACTATTGTCAGTGAG-3’(配列番号9)
5’-GTCATAGCTGTTTCCTGGTCACTGGT-3’(配列番号10)
プライマー:
5’-CAGGAAACAGCTATGAC-3’(配列番号11)
5’-CACAGATGCGTAAGGAG -3’(配列番号12)
これら2種類のターゲットDNAにつき、実施例1と同様にして二本鎖環状DNAを調製し、Phi29 DNA ポリメラーゼによるHRCAを実施した。結果を図4に示す。図4のレーン1は861塩基対のターゲットDNAの電気泳動結果を示し、レーン2は242塩基対のターゲットDNAの電気泳動結果を示す。
図4に示すように、レーン1及び2において、いずれもターゲットDNAの増幅産物が観察されることから、これら2種類のターゲットDNAが高効率に増幅されたことがわかった。また、図5のレーン1、2に示すように、増幅産物を再び制限酵素TspRIにより切断すると、増幅前のターゲットDNAである860 bpと242 bp の断片が得られたので、ターゲットDNAのみが増幅されたことを確認できた。
(149 bp(Gap 4 mer)のターゲットDNAの特異的な増幅)
本実施例では、実施例1で用いたPlasmid pQBI T7-GFP (5115 bp) の位置3920-4068にある149塩基対をそれぞれ増幅対象、すなわち、ターゲットDNAとし、実施例1と同様にして、二本鎖DNAを調製した。この配列に対し、アダプターとプライマーを以下の通り設計し(配列番号13〜16)、増幅を行った。長さ30塩基対のアダプター(配列番号13)の5’末端にリン酸化している。すべてのプライマーの3’末端の二つのリン酸ジエステルはエキソヌクレアーゼ活性で分解しないように修飾してある。
アダプター:
5’- CAGGAAACAGCTATGACTATTCTCACTGAT-3’(配列番号13)
5’-GTCATAGCTGTTTCCTGCTCAGTGGA-3(配列番号14)
プライマー:
5’-CAGGAAACAGCTATGAC-3’(配列番号15)
5’-CTGACAGTTACCAATGC-3’(配列番号16)
このターゲットDNAにつき、実施例1と同様にして二本鎖環状DNAを調製し、Phi29 DNA ポリメラーゼによるHRCAを実施した。結果を図4に併せて示す。図4のレーン3は149塩基対のターゲットDNAの電気泳動結果を示す。図4から明らかなように、レーン3で、ターゲットDNAの増幅産物が観察されることから、このターゲットDNAが高効率に増幅されたことがわかった。また、図5のレーン3に示すように、増幅産物を再び制限酵素TspRIにより切断すると、増幅前のターゲットDNAである149 bp の断片が得られたので、ターゲットDNAのみが増幅されたことを確認できた。
(149 bp(Gap 20mer)のターゲットDNAの特異的な増幅)
本実施例では、実施例1で用いたPlasmid pQBI T7-GFP (5115 bp) の位置3920-4068にある149塩基対をそれぞれ増幅対象、すなわち、ターゲットDNAとし、実施例1と同様にして、二本鎖DNAを調製した。この配列に対し、アダプターとプライマーを以下の通り設計し(配列番号17〜20)、増幅を行った。長さ46塩基対のアダプター(配列番号17)の5’末端にリン酸化している。すべてのプライマーの3’末端の二つのリン酸ジエステルはエキソヌクレアーゼ活性で分解しないように修飾してある。
アダプター:
5’-CAGGAAACAGCTATGACTATTCTTTTTTTTTTTTTTTCTCACTGAT-3’(配列番号17)
5’-GTCATAGCTGTTTCCTGCTCAGTGGA-3(配列番号18)
プライマー:
5’-CAGGAAACAGCTATGAC-3’(配列番号19)
5’-CTGACAGTTACCAATGC-3’(配列番号20)
このターゲットDNAにつき、実施例1と同様にして二本鎖環状DNAを調製し、Phi29 DNA ポリメラーゼによるHRCAを実施した。結果を図4に併せて示す。図4のレーン4は149塩基対のターゲットDNA(Gap 19mer)の電気泳動結果を示す。図4から明らかなように、レーン4で、ターゲットDNAの増幅産物が観察されることから、このターゲットDNAが高効率に増幅されたことがわかった。本実施例で明らかなように、150塩基対程度のターゲットDNAにつきギャップ19塩基程度であっても、高効率な増幅が可能であることがわかった。
(1525 bp(Gap 4 mer)のターゲットDNAの特異的な増幅)
本実施例では、実施例1で用いたPlasmid pQBI T7-GFP (5115 bp) の位置4548-957にある1525塩基対をそれぞれ増幅対象、すなわち、ターゲットDNAとし、実施例1と同様にして、二本鎖DNAを調製した。この配列に対し、アダプターとプライマーを以下の通り設計し(配列番号21〜24)、増幅を行った。長さ30塩基対のアダプター(配列番号21)の5’末端にリン酸化している。すべてのプライマーの3’末端の二つのリン酸ジエステルはエキソヌクレアーゼ活性で分解しないように修飾してある。
アダプター:
5’-CAGGAAACAGCTATGACTATTGTCAGTGGA-3’(配列番号21)
5’-GTCATAGCTGTTTCCTGAGCACTGCA-3’(配列番号22)
プライマー:
5’-CAGGAAACAGCTATGAC-3’(配列番号23)
5’-TGTGGCGGGTCTTGAAG-3’(配列番号24)
このターゲットDNAにつき、実施例1と同様にして二本鎖環状DNAを調製し、Phi29 DNA ポリメラーゼによるHRCAを実施した。結果を図4に併せて示す。図4のレーン5は149塩基対のターゲットDNA(Gap 19mer)の電気泳動結果を示す。図4から明らかなように、レーン5で、ターゲットDNAの増幅産物が観察されることから、このターゲットDNAが高効率に増幅されたことがわかった。また、図5のレーン4に示すように、増幅産物を再び制限酵素TspRIにより切断すると、増幅前のターゲットDNAである1525 bp の断片が得られたので、ターゲットDNAのみが増幅されたことを確認できた。

Claims (14)

  1. ターゲットDNAを増幅する方法であって、
    両末端にオーバーハングを有し、前記ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片を調製する工程と、
    前記二本鎖DNA断片を二本鎖DNAからなり前記オーバーハングにそれぞれ相補的な塩基配列を有する相補的オーバーハングを有する環化アダプターによる環状化を経て少なくも一つの一本鎖環状DNA鎖である第1のDNA鎖を含む二本鎖環状DNAを調製する工程と、
    前記第1のDNA鎖中のターゲットDNAに関連付けられる第1の塩基配列と相補的な塩基配列を有する第1のプライマーと、前記第1のDNA鎖の相補鎖の一部に相補的な塩基配列を有する第2のプライマーと、を用いて前記第1のDNA鎖及びその相補鎖を増幅する工程と、
    を備える、方法。
  2. 前記増幅工程は、前記第1のDNA鎖の相補鎖中のターゲットDNAに関連付けられる第2の塩基配列に相補的な塩基配列を有する前記第2のプライマーを用いる工程である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第2のプライマーは、前記第1のDNA鎖の相補鎖中の前記環化アダプターに由来する塩基配列の少なくとも一部に相補的な塩基配列を有するプライマーである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  4. 前記二本鎖環状DNA調製工程は、前記第1のDNA鎖と相補的であり、かつ一つのギャップを有する一本鎖DNA鎖である第2のDNA鎖とを有する前記二本鎖環状DNAを調製する工程であり、
    前記増幅工程は、前記第2のDNA鎖の前記ギャップにおいて露出された3’末端から前記第2のDNA鎖の増幅を開始するステップを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記ギャップは0塩基以上のギャップである、請求項4に記載の方法。
  6. 前記環化アダプターは、ステム(二本鎖)を形成する第1のステムと当該第1のステムの一方の末端に1塩基以上の長さのギャップを形成するための追加の塩基配列と二重鎖DNA断片の一方のオーバーハングと相補的でかつ同じ長さの塩基配列とを有する第1の相補的オーバーハングとを有する第1のアダプター鎖と、前記ステムを形成する第2のステムと当該第2のステムの一方の末端に二本鎖DNA断片の他方のオーバーハングと相補的でかつ同じ長さの塩基配列を有する第2の相補的オーバーハングとを有する第2のアダプター鎖と、を備える、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 前記増幅工程は、鎖置換型DNAポリメラーゼを用いて実施する工程である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 前記増幅工程は、前記二本鎖環状DNAを変性することなく実施する工程である、請求項2〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記増幅工程は、超分岐ローリングサークル増幅工程である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 前記オーバーハングは前記ターゲットDNAを含む前記二本鎖DNA断片に特異的な配列を有し、前記環化アダプターの前記相補的オーバーハングは前記オーバーハングに相補的な塩基配列を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 前記二本鎖DNA断片調製工程は、前記ターゲットDNAを含む試料を5塩基以上のオーバーハングを有する断片が生成可能な制限酵素で処理する工程である、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 前記二本鎖DNA断片調製工程は、200bp以上3000bp以下の前記二本鎖DNA断片を調製する工程である、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. ターゲットDNAを検出する方法であって、
    両末端にオーバーハングを有し、前記ターゲットDNAを含む二本鎖DNA断片を調製する工程と、
    前記二本鎖DNA断片を二本鎖DNAからなり前記オーバーハングにそれぞれ相補的な塩基配列を有する相補的オーバーハングを有する環化アダプターによる環状化を経て少なくも一つの一本鎖環状DNA鎖である第1のDNA鎖を含む二本鎖環状DNAを調製する工程と、
    前記第1のDNA鎖中のターゲットDNAに関連付けられる第1の塩基配列と相補的な塩基配列を有する第1のプライマーと、前記第1のDNA鎖の相補鎖の一部に相補的な塩基配列を有する第2のプライマーと、を用いて前記第1のDNA鎖及びその相補鎖を増幅する工程と、
    前記増幅工程での増幅産物を検出する工程と、
    を備える、方法。
  14. ターゲットDNAを増幅又は検出するキットであって、
    両末端に5塩基以上のオーバーハングを有する二本鎖DNA断片を生成可能な制限酵素と、
    二本鎖DNAであって、ステムと、該ステムの一方のDNA鎖から一方に延び前記二本鎖DNA断片の一方のオーバーハングに相補的な塩基配列を有する第1の相補的オーバーハングと、前記ステムの他方のDNA鎖から他方に延び前記二本鎖DNA断片の他方のオーバーハングに相補的な塩基配列を有する第2の相補的オーバーハングと、を備える環化アダプターと、を含む、キット。
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CN112534063A (zh) * 2018-05-22 2021-03-19 安序源有限公司 用于核酸测序的方法、系统和组合物

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