JP2010534194A - 神経系障害の新規な処置法 - Google Patents

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Abstract

アルツハイマー病およびアミロイド−β病態/アミロイドーシスなどの神経系障害の処置ならびに診断における新規な薬物および方法を提供する。より詳しくは、Aβペプチド関連脳障害の処置のためのエリスロポエチンおよびその類縁体の使用を記載する。さらに、アルツハイマー病およびアルツハイマー病の進行のそれぞれのバイオマーカーとしてのクラウジン−5およびそのバリアントの使用を提供する。

Description

本発明は、神経系障害およびその処置のための方法の技術分野に関する。より詳しくは、本発明は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)および特にアミロイドβ(Aβ)ペプチドのアミロイド形成性プロセッシングと関連している障害の処置に関する。さらに、本発明は、アルツハイマー病のバイオマーカーならびにアルツハイマー病の進行のバイオマーカーとしてのクラウジン−5(Claudin−5)およびそのバリアントの使用に関する。
重篤なさまざまな神経変性疾患に対し、有効な治療剤または治癒法は存在しない。例えば、最も一般的な神経変性疾患であり、認知症の最も多い原因であるアルツハイマー病では、進行性の記憶力減退および側頭連合野および頭頂連合野の変性により、言語障害および協調低下ならびに、場合によっては、情動障害がもたらされる。アルツハイマー病は、一般的に、長年にわたって進行し、患者は徐々に動けなくなり、衰弱し、肺炎に易罹患性となる。アミロイドカスケード仮説によると、アミロイドβペプチド(Aβ)の蓄積は、ADにおいて中心的な役割を果たしている(HardyおよびSelkoe,2002)。AD脳内には、2つの型のAβ病態:灰白質内のAβ沈着物である老人斑、および脳および髄膜の血管内のAβ沈着物である脳のアミロイド血管症(CAA)が存在している。Aβの異常蓄積は、神経細線維のもつれの形成、シナプスおよびニューロンの減少を引き起こし、脳機能の破壊をもたらすと考えられている。したがって、Aβ関連介入は、現在、AD治療剤の開発の中心となっている。
本発明は、神経系障害、特に、アルツハイマー病またはアミロイドβ(Aβ)病態およびアミロイドーシスとの関連疾患と関連している障害の処置、改善および予防のそれぞれにおけるエリスロポエチン(EPO)およびエリスロポエチン様薬剤の使用に関する。特に、本発明は、EPOの全身性投与により、老人斑およびCAAのAD様アミロイド病態を有し、若年齢で行動欠陥が現れたトランスジェニックマウスにおいて、初期のAβ病態および微小血管の不完全性が改善され得るという驚くべき知見を利用するものである。したがって、本発明は、APPのアミロイド形成性プロセッシングおよび脳内のAβの存在のそれぞれ、ならびにクラウジン−5の細胞膜分離およびそのタンパク質レベルの低下を特徴とする微小血管の不完全性によって示されるアルツハイマー病の処置用の治療有効成分として、EPOを含む医薬を初めて提供するものである。これに関連して、本発明はまた、試料中のクラウジン−5またはそのバリアント、好ましくは約16kDaの種のレベルを測定することを含み、ここで、健常対象由来の試料の参照値と比べたときのクラウジン−5レベルの減少および/または前記そのバリアントのレベルの増加は、前記個体がアルツハイマー病に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、アルツハイマー病の存在および状態のそれぞれを評価するための方法に関するものである。
本発明の他の実施形態は、以下の説明から自明となろう。
図1は、rHuEPOによってAβ病態が改善されることを示す図である。チオフラビン−S染色により、tg ctrの皮質において小さなAβ斑が示された(A)。皮質のチオフラビン−S斑の数は、EpoL(B)およびEpoH(C)において有意に少なかった。スケールバーは100μmである。(D)tg ctrと比較すると、平均斑数は、EpoLおよびEpoHにおいて40%超少なかった(*P<0.05、**P<0.01、LSD)。 図2は、rHuEPOが、Aβ沈着物に応答して星状細胞活性をモジュレートすることを示す図である。矢状面の脳切片における6E10(赤色)および抗GFAP抗体(緑色)での二重免疫蛍光染色により、tg ctrの皮質において、強い星状細胞増加関連Aβ斑が示された(AおよびD)。EpoL(BとE)およびEpoH(CとF)はともに、有意に少ない数のAβ斑を有し、星状細胞増加は弱かった。実質内のAβ斑関連星状細胞増加は、tg ctr と比べEpoL(H)およびEpoH(I)において著しく低かった(G)。スケールバーは100μm。 図3は、rHuEPOによりCAAが改善されることを示す図である。8ヶ月齢の時点で、arcAβマウスには、既に軟髄膜の血管および実質の血管の両方において、顕著なCAAが発生していた(AおよびB)。tg ctr(●)では、皮質のチオフラビン−S斑の負過量が、チオフラビン−S陽性血管が見られたことと正に相関していた(r=0.725、P<0.05)が、EpoL(□)(P=0.253)およびEpoH(△)ではどちらもそうではなかった(P=0.647、スピアマンのρ相関係数検定)(C)。正常な状態では、星状細胞は脳血管と密接に結合している。tg ctrでは、血管に重度にAβを負荷すると、星状細胞が血管壁から剥離した(D)。対照的に、EpoLおよびEpoHでは、依然として星状細胞エンドフィートが、Aβ負荷血管壁を覆っていた(EおよびF)。スケールバーは100μm。 図4は、rHuEPOによって脳内および血清中のAβが減少することを示す図である。Aβ40およびAβ42に特異的なELISAを使用した。(A)RIPA画分における脳内Aβ40は、4ヶ月齢のarcAβマウス(tg若年齢、n=3)と比べ、tg ctr(n=9)においてほんのわずか増加していたが、SDS画分およびFA画分のAβ40は、それぞれ、4倍および40倍増加していた。rHuEPOにより、EpoL(n=11)およびEpoH(n=12)において、SDS画分およびFA画分中の脳内Aβ40レベルが40%より大きく低下した。(B)また、rHuEPOにより、RIPA画分およびFA画分中の脳内Aβ42レベルも40%より大きく低下した。(C)ピアソン相関解析は、皮質のチオフラビン−S斑の負過量と脳内Aβレベルとの強い関係を示し(Aβ40のSDSおよびFA画分およびAβ42のRIPA画分とFA画分;P<0.001)、そのうち、SDS画分(r=0.791)における皮質の斑の負過量と脳内Aβ40関係が、(□)EpoH、(+)EpoLおよび(△)tg ctrについて最も強いことを示す。(D)rHuEPOにより、処置マウスの血清中のAβ40レベルが有意に低減された。tg ctrと比較すると、P#<0.01(両側スチューデントt−検定による)、およびP*=0.055、**<0.05、***<0.01(LSDによる)。 図5は、rHuEPOにより、APPの非アミロイド形成性プロセッシングが促進されることを示す図である。C末端APPに対する抗体をウエスタンブロッティングに使用した(AおよびB)。これは、完全長APP(FL−APP)ならびにβ−切断のC末端断片(β−CTF)およびα−切断のC末端断片(α−CTF)を認識するものである。野生型では、α−切断のみが検出可能であったが、β−切断は、arcAβマウス(tg ctrおよびEpoH)において顕著であった。β−CTFのレベルは、EpoHよりもtg ctrにおいて明らかに高かった。デンシトメトリー測定に基づいたFL−APPに対するβ−CTFの比は、tg ctr(n=7)、と比べ、EpoHにおいて34%有意に低減された(p*<0.01、スチューデントt−検定)。 これらの結果は、rHuEpoに供された、Swedish型変異を含むヒトAPP695を過剰発現するSweAPP293細胞で確認される。SweAPP細胞におけるα−CTFおよびβ−CTFレベルは、ウエスタンブロットにおいてほぼ等しかった(C)。種々の濃度のrHuEPOにより、α−CTF/β−CTFは著しく増大し、1UI/mlのときα−CTF/β−CTFが2.6のピークに達した。しかしながら、確立されたγ−切断インヒビターであるDAPTでは、rHuEPOによるα−CTF/β−CTFの増大は阻止されなかった(D)。また、α−切断の細胞外断片であるsAPPαもrHuEPO処置細胞の馴化培地中で増加していた(E)。したがって、arcAβマウスおよびSweAPP293細胞において、rHuEPOによりAPPの非アミロイド形成性プロセッシングが誘導された。 図6は、rHuEPOにより微小血管内皮細胞に対するAβ毒性が抑制されることを示す図である。単離した脳の微小血管の免疫蛍光染色により、野生型ではクラウジン−5の均一な分布が示された(A)が、tg ctrのAβ負荷血管では、クラウジン−5のまばらな分布または完全な消失が示された(B)。クラウジン−5分布の破壊は、rHuEPO処置マウスではあまり重症ではなかった(C)。赤色はクラウジン−5、緑色は6E10、青色はDAPIのものである。対照的に、微小血管内皮細胞において、Aβ沈着はCD31発現に影響を及ぼさなかった(D、赤色は6E10、緑色はCD31および青色はDAPI)。野生型において血管壁に沿ったクラウジン−5の均一な分布に示されるように、星状細胞は健常脳の微小血管を完全に覆っていた(E、赤色はクラウジン−5および緑色はGFAP)。tg ctrでは、星状細胞との密着の減少とともに、微小血管内のクラウジン−5染色が低かった(F、赤色はクラウジン−5および緑色はGFAP)。スケールバーは20μm。 図7は、rHuEPOにより、内皮細胞においてAβによって誘導される膜クラウジン−5の減少が抑制されることを示す図である。内皮細胞株bEnd5は、マウス脳の微小血管から確立されたものである。(A)2週間培養後、細胞膜において多量のクラウジン−5が発現され(赤色)、これはCD31と共局在していた(緑色、青色はDAPI)。しかしながら、10μMの新鮮調製Aβ42中で24時間培養後、bEnd5細胞では細胞膜のクラウジン−5が完全に消失していた。CD31は依然として細胞膜において発現されていたが、クラウジン−5は細胞質内に蓄積されていた。1UI/mlのrHuEPOを10μMのAβ42とともに添加すると、クラウジン−5の細胞膜発現が保持された。しかしながら、1UI/mlのrHuEPO単独では、クラウジン−5の細胞膜分布もCD31の細胞膜分布も変化しなかった。スケールバーは20μm。(B)ウエスタンブロットでは、対照、10μMのAβ42、1UI/mlのrHuEPO、および両処理細胞の組合せ間で、クラウジン−5レベルの差は示されていない。しかしながら、10μMのAβ42処理細胞では小さなC末端断片が見られ、増加していた。1UI/mlのrHuEPO処理単独では、このようなC末端断片に対する効果はなかったが、Aβによって誘導されたC末端小断片の量は有意に少なかった。 図8は、ウエスタンブロットにより、認知症患者および健常対照由来の側頭葉皮質内のクラウジン−5のレベルが示されていることを示す図である。認知症の臨床診断のみを有する対象(被検体)に+を表示し、臨床的に認知症でない対象に−を表示した。神経細線維のもつれの重症度は、Braak and Braak Stage(B&B病期)によって示した。また、各対象のアポリポタンパク質E遺伝子型も表示した。
特に記載のない限り、本明細書で用いる用語の定義は、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology、Oxford University Press,1997(2000年改定および2003年再版、ISBN 0 19 850673 2)に示された定義である。
「薬剤」、「試薬」、または「化合物」は、該用語を本明細書で用いる場合、一般的に、細胞、組織、体液、または検査対象の任意の生物学的系もしくは任意のアッセイ系の状況におけるものに対してプラスまたはマイナスの生物学的効果を有する任意の物質、化学物質、組成物または抽出物を示す。これは、標的のアゴニスト、アンタゴニスト、部分アゴニストまたはインバースアゴニストであり得る。かかる薬剤、試薬または化合物は、核酸、天然もしくは合成ペプチドもしくはタンパク質複合体、または融合タンパク質であり得る。また、抗体、有機または無機系の分子または組成物、小分子、薬物および上記の前記薬剤のいずれかの任意の組合せであり得る。これらは、試験目的、診断目的または治療目的に使用され得る。
別の記載がない限り、用語「化合物」、「物質」および「(化学物質の)組成物」は、本明細書において互換的に使用され、限定されないが、治療用薬剤(または潜在的治療用薬剤)、食品添加物および栄養補助食品が挙げられる。また、動物用治療剤または潜在的動物用治療剤であってもよい。
「有機小分子」は、該用語を本明細書で用いる場合、3キロダルトン未満、好ましくは1.5キロダルトン未満の分子量を有する有機化合物[または無機化合物(例えば、金属)と複合体形成された有機化合物]を示す。さらに、用語「合成有機分子」は、合成有機分子が人工的に作製されたもの、および天然にみられないものである以外は、特に記載のない限り、用語「有機小分子」と互換的に使用することがあり得る。
用語「処置」、「処置すること」などは、本明細書において、一般的に、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味するために用いる。該効果は、疾患またはその症状を完全に、もしくは一部妨げる点では予防的であり得る、および/または疾患および/または疾患に起因する有害効果を一部もしくは完全に治癒させる点では治療的であり得る。用語「処置」は、本明細書で用いる場合、哺乳動物、特にヒトの疾患の任意の処置を包含し、(a)疾患に対して素因を有しているかもしれないが未だ該疾患を有すると診断されていない対象において、該疾患が生じるのを妨げること;(b)疾患を抑制すること、すなわち、その発症を停止させること;または(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の後退を引き起こすことが挙げられる。
さらに、用語「対象(被検体)」は、本明細書で用いる場合、アルツハイマー病などの神経系障害の治療、例えば、改善、処置および/または予防を必要とする動物に関する。最も好ましくは、前記対象はヒトである。
一般的な手法
本発明の実施に有用な一般的な手法のさらなる詳細については、実施担当者は、標準的な教科書ならびに細胞生物学および組織培養の概説を参照するとよい。本実施例で挙げた参考文献も参照のこと。分子細胞生化学における一般的な方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版(Sambrookら、Harbor Laboratory Press 2001);Short Protocols in Molecular Biology、第4版(Ausubelら編、John Wiley & Sons 1999);Protein Methods(Bollagら、John Wiley & Sons 1996);Non−viral Vectors for Gene Therapy(Wagnerら編、Academic Press 1999);Viral Vectors(Kaplitt & Loewy編、Academic Press 1995);Immunology Methods Manual(Lefkovits編、Academic Press 1997);およびCell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle & Griffiths、John Wiley & Sons 1998)などの標準的な教科書をみるとよい。本開示において言及した遺伝子操作のための試薬、クローニングベクターおよびキットは、BioRad、Stratagene、Invitrogen、Sigma−AldrichおよびClonTechなどの市販供給元から入手可能である。
発明の詳細な説明
本発明は、エリスロポエチン(EPO)によって、アルツハイマー病トランスジェニックモデルマウスにおいて脳実質および血管のアミロイド病態が改善され得、脳内および血清中のAβレベルが低減され得、行動異常が逆転され得という驚くべき知見に関し、これは、EPOが、急性および慢性の神経系障害およびアミロイド形成性疾患、例えば限定されないが、アルツハイマー病、ダウン症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、緑内障、HIV関連認知症、多発性硬化症、パーキンソン病、神経因性疼痛、封入体筋炎、および特に、散発性および家族性形態の脳のアミロイド血管症(CAA)などの予防および処置に有用であり得ることを示す。
エリスロポエチン(EPO)は、貧血の処置のための臨床的使用の他に、虚血および炎症性疾患によって引き起こされる脳の損傷を改善する。しかしながら、アルツハイマー病(AD)におけるEPOの役割は未知である。本明細書の本実施例に開示するように、EPOは、全身性投与した場合、APPトランスジェニックマウスにおいてAD様病態を予防または逆転させ得る。特に、EPOがアルツハイマー病(AD)において保護的役割を有するかどうかを調べるため、ADマウスモデルとして、若年齢でAβ斑および脳のアミロイド血管症(CAA)が現れた3ヶ月齢のarcAβマウスを、18UIまたは1.8UI(それぞれ、60または600UI/kgに相当)の組換えヒトEPO(rHuEPO)で、腹腔内注射により5ヶ月間毎週処置した。
本実施例に示すように、脳内Aβ斑の負過量は、rHuEPO処置arcAβマウスにおいて40%超有意に少なかった。また、これらのマウスが有するAβ斑と関連しているCAAおよび星状細胞増加の重症度は低かった。整合して、ELISAでは、RIPA不溶性画分の脳内Aβレベルならびに血清中のAβ40レベルの有意な低減が示された。さらに、完全長APPに対するβ−切断のC末端断片の比は、rHuEPO処置マウスにおいて有意に低減され、rHuEPOによるAPPプロセッシングの非アミロイド形成性経路へのシフトを示唆する。CAAに加え、arcAβマウスはまた、脳内の微小血管内皮細胞に、クラウジン−5の傍細胞分布の崩壊およびタンパク質レベルの低下を特徴とする接着結合障害を有した。rHuEPOは、一部、正常なクラウジン−5分布を保持していた。さらに、rHuEPOによるクラウジン−5に対するAβ毒性の抑制が、マウス脳の微小血管から採取した内皮細胞株において確認された。総合すると、本試験は、rHuEPOが脳内Aβレベルを低下させ、微小血管の損傷の抑制したことを実証する。これは、rHuEPOのADの処置剤としての潜在的を示唆する。
さらに調べると、rHuEPO処置により、APPトランスジェニックマウスモデルにおいて行動欠陥が改善され得る。また、本明細書において実施例6に開示するように、該処置によって赤血球生成の増大はもたらされず、EPO処置関連有害事象は観察されなかった。総合すると、本試験は、Aβ関連病態および行動異常の改善に対するrHuEPOの有益な役割を示唆する。
このような知見に基づき、本発明は、エリスロポエチン(EPO)経路を誘導することにより、対象の神経系障害を処置、改善および予防する方法を提供する。したがって、本発明は、神経系障害および/またはアミロイドーシス、特に、アルツハイマー病またはアミロイドβ(Aβ)病態および/またはアミロイドーシスと関連している障害の処置、改善または予防のためのエリスロポエチン(EPO)ならびにその活性断片および類縁体に関する。
エリスロポエチン(EPO)は、低酸素に応答して主に成体哺乳動物の腎臓で産生されるI型サイトカインである。組換えヒトEPO(rHuEPO)は、貧血患者の生活の質を改善するために広く使用されている。広範囲の非赤血球系細胞、例えば、星状細胞、ニューロンおよび脳の毛細血管内皮細胞は、豊富な量の機能性のEPO受容体(EpoR)を発現する(Yamajiら、1996)。種々の脳の損傷に応答して星状細胞により産生されるEPOは、罹患ニューロンの生存に非常に重要である(Chongら、2005;Nadamら、2007)。数多くの研究により、EPOは、神経保護的であるとともに、神経発生、シナプスの可塑性および新血管形成の促進に有効であることが示されている(Buemiら、2002;BrinesおよびCerami、2005;Luら、2005;Carmichael、2006;Tsaiら、2006)。また、系統的rHuEPOは血液脳関門(BBB)を通過することができ(Brinesら、2000)、脳卒中患者に充分耐容性である(Ehrenreichら、2002)。したがって、rHuEPOは、中枢神経系(CNS)の疾患のための潜在的薬物であり得る。しかしながら、アルツハイマー病(AD)におけるrHuEPOの役割は、これまで実証されていなかった。
もちろん、大成功している生物薬剤の1つであることに鑑み、EPOは、あらゆる種類の疾患または障害(例えば、アルツハイマー病に伴う神経系障害は最も顕著な一例である)のほぼ任意の処置における使用について特許請求されている。例えば、国際特許出願公開公報WO2007/060213(その開示内容は、本発明の教示に従って有用であり得ることが考えられ得る本明細書に記載のEPOポリペプチドに関する本出願書類の記載を補足する目的で、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
神経系障害の処置について考慮されるとしても、EPOが、アルツハイマー病またはAβ病態などの神経系障害または神経変性障害の原因となっている機構のいずれかに関与しているか、または改善できることは示されておらず、まして、実際にそのような障害の本質的な処置に有用であることは証明されていなかった。しかしながら、神経変性障害はかなり複雑であり、択一的および/または累積的な原因およびリスクファクターの結果であるため、提案されている神経系の薬物のどれが、好ましくはどのようにして病理学的経路を標的化するかを知ることは、非常に重要である。これは、特にアルツハイマー病およびアミロイド形成性障害の場合に該当する。
アルツハイマー病の状況において、これまで、EPOは日本特許出願JP5092928において、特に、頭蓋内中隔野内への直接注入によってアルツハイマー型記憶障害を処置するため、ニューロンの細胞内カルシウムレベルを上昇させ、コリンアセチルトランスフェラーゼ活性を増強することが示唆されていた。明らかに、これは、本発明の実施形態ではなく、添付の特許請求の範囲に含まれるとみなされるかもしれないJP5092928に開示された実施形態はいずれも、本発明では特許請求しない。
また、EPOは、ほぼ常に、特許出願書類に挙げられる細胞増殖因子およびサイトカインのいわゆる洗い出しリストのうちで、医薬組成物に製剤化された場合の提案される治療上活性な薬剤に補足的なものである。例えば、国際特許出願公開公報WO2005/028511およびWO2006/039470を参照のこと。添付の特許請求の範囲に含まれるかどうかが考慮される場合、これらの具体的な「併用調製物」は、本発明では特許請求しない。したがって、添付の実施例から明らかなように、EPOは、好ましくは、アルツハイマー病およびAβ病態のそれぞれのための処置のための単独の治療用薬剤であり得る。
本発明によれば、アミロイドカスケード、すなわち、アミロイドβペプチド(Aβ)の蓄積がADにおいて中心的な役割を果たしており(HardyおよびSelkoe、2002)、結果として、シナプスおよびニューロンの減少、神経細線維のもつれの形成および脳の機能不全が引き起こされると考えられる。AD脳内には、2つの型のAβ病態:灰白質内のAβ沈着物である老人斑、ならびに脳および髄膜の血管内のAβ沈着物である脳のアミロイド血管症(CAA)が存在している。ADの老人斑およびCAAのアミロイド病態を模倣するトランスジェニックマウスを使用し(Knobloch、2006)、本発明により、全身性投与されたrHuEPOによって、脳内Aβレベルが低減され得、Aβに関連する脳の微小血管の損傷が改善され得ることを初めて示すことができた。
したがって、本発明は、アルツハイマー病ならびにAβ病態および脳の微小血管の損傷を伴う他の神経系障害のそれぞれの処置における治療的介入ための医薬組成物におけるEPOを初めて提供するものである。
本発明の医薬組成物は、当該技術分野でよく知られた方法に従って製剤化され得る。例えば、University of Sciences in PhiladelphiaによるRemington:The Science and Practice of Pharmacy(2000)、ISBN 0−683−306472を参照のこと。好適な医薬用担体の例は当該技術分野でよく知られており、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、エマルジョン(油/水エマルジョンなど)、種々の型の湿潤剤、滅菌溶液などが挙げられる。かかる担体を含む組成物は、よく知られた従来の方法によって製剤化され得る。このような医薬組成物は対象に、適当な用量で投与され得る。適当な組成物の投与は、種々の様式、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、経表面または皮内投与によって行なわれ得る。経鼻スプレー製剤などのエアロゾル製剤には、活性剤の精製された水溶液または他の溶液が、保存剤および等張剤とともに含まれる。かかる製剤は、好ましくは、鼻粘膜に適合性のpHおよび等張性状態に調整される。経直腸または経膣投与のための製剤は、適当な担体を用いた坐剤として提示され得る。
投薬レジメンは、担当医師および臨床因子によって決定される。医学分野でよく知られているように、任意の一患者に対する投薬量は、多くの要素、例えば、患者の体格、体表面積、年齢、投与する具体的な化合物、性別、投与の期間と経路、一般健康状態、および同時に投与されている他の薬物に依存する。典型的な用量は、例えば、0.001〜1000mgの範囲(この範囲における発現または発現阻害では核酸の用量)であり得る。しかしながら、特に上述の要素を考慮し、この例示的な範囲より下または上の用量も想定される。一般的に、該医薬組成物の通常投与としてのレジメンは、1μg〜10mg単位/日の範囲であるのがよい。また、該レジメンが連続注入である場合、それぞれ1μg〜10mg単位/キログラム体重/分の範囲であるのがよい。進行は、定期的評価によってモニタリングされ得る。非経口投与のための調製物としては、滅菌された水性または非水性の液剤、懸濁剤、および乳剤が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油など)、および注射用有機エステル(オレイン酸エチルなど)である。水性担体としては、水、アルコール性溶液/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液、例えば、生理食塩水および緩衝媒体が挙げられる。非経口用ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油が挙げられる。静脈内用ビヒクルとしては、流動性の栄養補給物、電解質補給物(リンゲルデキストロース系のものなど)などが挙げられる。また、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガスなどの保存料および他の添加剤を存在させてもよい。さらに、本発明の医薬組成物は、該医薬組成物の意図される用途に応じて、ドーパミン薬または精神薬理作用薬などのさらなる薬剤を含むものであってもよい。さらに、該医薬組成物はまた、例えば、本発明の医薬組成物が受動免疫のための抗Aβ抗体を含む場合、ワクチンとして製剤化されたものであり得る。
また、他の薬剤の共投与または逐次投与が望ましいことがあり得る。治療上有効な用量または量は、症状または病状を改善するのに充分な活性成分の量をいう。かかる化合物の治療有効性および毒性は、標準的な製薬手順によって細胞培養物または実験動物において、例えば、ED50(集団の50%で治療上有効な用量)およびLD50(集団の50%に対して致死性の用量)で判定され得る。治療効果と毒性効果の用量比は治療指数であり、これは、LD50/ED50比で表示され得る。
本発明による医薬組成物は、神経系障害および/またはアミロイドーシス、例えば限定されないが、アルツハイマー病、脳のアミロイド血管症(CAA)、ダウン症候群、軽度の認知障害、オランダ型およびアイスランド型アミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血、レヴィー小体型認知症、血管性認知症、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症、第17染色体に連鎖し、パーキンソニズムを伴う前頭側頭型変性、前頭側頭型認知症、失語症、ベル麻痺、クロイツフェルト・ヤコブ病、癲癇、脳炎、ハンチントン病、神経筋障害、神経腫瘍、神経免疫疾患、神経耳科疾患、小児神経疾患、恐怖症睡眠障害、トゥレット症候群、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、封入体筋炎、多発性硬化症、HIV関連認知症、HIV関連神経障害、神経因性疼痛、片頭痛、緑内障、薬物中毒、薬物禁断症状、薬物依存性、鬱病、不安症、パーキンソン病、他の運動障害または一般的な中枢神経系(CNS)の疾患の処置のために使用され得る。
重要なことに、本発明により得られたデータは、Aβ病態発生におけるrHuEPOの直接的な関与を示唆する。本データは、持続的rHuEPO処置により、ADマウスにおいて、Aβ病態の初期段階で脳内Aβ斑の負過量および血清Aβレベルが低減されたことを示す。APPプロセッシングにおけるrHuEPOの直接的な関与を除外するものではなく、理論に拘束されることを望まないが、EPOが全身性投与され、内皮細胞内のEpoRはEPOに対してニューロンおよび星状細胞より10倍高い親和性を有するため(BrinesおよびCerami、2005)、本発明によれば、EPOがAβクリアランスに直接関与しており、脳内でのEPOの主な標的は毛細血管内皮細胞であったと考えられる。rHuEPOで刺激されると、内皮細胞は、増殖し、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2(MMP−2)およびMMP−9を産生し、分泌する(Ribattiら、1999;Wangら、2006a)。MMP−2およびMMP−9は、Aβ分解酵素であることが示唆されている(Roherら、1994;Backstromら、1996)。実際、MMP−9の酵素活性はADにおいて低いことが示されている(Backstromら、1996;Thirumangalakudiら、2006)。この概念は、MMP−9により、インビボでAβ原線維が分解され得たとともに、Aβ斑が縮小され得たことを示す最近の研究によって裏付けられている(Yanら、2006)。本発明により、rHuEPO処置マウスが有するCAAの重症度は低いことを示すことができた。したがって、毛細血管内皮細胞におけるMMP−9およびMMP−2の産生および活性の向上が、血管内のβ−アミロイド沈着物のレベルの低下に寄与し得ると推測することは妥当である。
星状細胞および小膠細胞は、rHuEPOの考えられ得る別の標的である。例えば、星状細胞は、EPOとEpoRの両方を発現し、脳の毛細血管と密接に関連している(Brinesら、2004)。正常な生理学的条件下では、脳の微小血管は、BBBの維持に重要な役割を果たしている星状細胞によって完全に覆われている(Willisら、2004b)。他方において、活性化された星状細胞によって分泌される炎症促進性サイトカイン(IL−6および単球走化性タンパク質1など)は、BBBの破壊を引き起こすことがあり得る。本発明により、Aβ負荷血管からの星状細胞の解離が、arcAβマウスにおいて観察された。これは、星状細胞エンドフィートに対する直接的なAβ毒性、またはAβによって誘導されたBBBの漏損のいずれかによって引き起こされたことであり得る。本実施例において行ない、記載した実験は、Aβ蓄積によって引き起こされたBBBの漏損は、少なくとも一部は、クラウジン−5の移動によるものであることを示唆する。これは、本明細書において、rHuEPOによってクラウジン−5に対するAβ毒性が妨げらることが示され得たように、rHuEPOがある役割を果たしているかもしれない場合である。結果として、星状細胞と微小血管間との密接な接触がrHuEPOによって保持された。さらに、rHuEPOは、星状細胞の増殖を促進し、Aβによって誘導される炎症促進性サイトカインの分泌を抑制することが知られている(Villaら、2003)。総合すると、本発明の知見は、Aβによる損傷時の正常な微小血管機能の維持におけるrHuEPOの有益な役割を強く裏付ける。
したがって、本発明により、EPOは、微小血管、星状細胞およびニューロンからなる神経血管単位のモジュレーターとしての機能を果たし得ることが提案されるが、この理論に拘束されないものとする。したがって、適正に適用された場合、EPOは、ADならびに他の神経系障害またはアミロイドーシスの潜在的治療アプローチとなり得る。
以下の実施例に示す結果と総合すると、EPOは、必ずしも外来的に供給される(例えば、該実施例に従って行なわれる全身投与によって)ものである必要はなく、記載の神経血管単位と関連している標的細胞、特に、内皮細胞および/または星状細胞あるいは他の細胞内で発現されるものであってもよいことが想定される。したがって、本発明による治療的使用の2つの択一的な実施形態において、EPOまたはその活性断片もしくは類縁体は、外来的に適用されるか、または標的細胞内で発現されるように設計されたものであり、好ましくは、前記標的細胞は脳内の毛細血管内皮細胞または星状細胞である。
エリスロポエチン、ならびにその活性断片および類縁体の多くの形態が、本発明の方法において有用であり得る。一実施形態において、前記EPOまたはその活性断片は、ヒトEPOまたはその活性断片である。別の実施形態において、限定されないが、ペプチド、ペプチド模倣物、小分子または核酸EPO類縁体であり得るEPO類縁体が使用され得る。さらなる実施形態において、本発明は、EPO受容体に対して天然ヒトEPOよりも少なくとも10倍高い親和性を有するEPOまたはその活性断片もしくは類縁体を用いて実施される。別の実施形態において、本発明は、オリゴマー(例えば、二量体)であるEPOまたはその活性断片もしくは類縁体を用いて実施される。
またさらなる実施形態において、本発明は、天然ヒトEPOの半減期より長い半減期を有するEPOまたはその活性断片もしくは類縁体を用いて実施される。さらなる実施形態において、本発明は、天然ヒトEPOと比べて過剰グリコシル化されたEPOまたはその活性断片もしくは類縁体を用いて実施される。またさらなる実施形態において、本発明はダルベポエチンを用いて実施される。本発明の任意の実施形態において、例えば、EPOまたはその活性断片もしくは類縁体の半減期を延ばすため、さらに可溶性EPO受容体を含めてもよい。
本明細書で用いる場合、用語「エリスロポエチン」は「EPO」と同義であり、実質的に、天然に存在するヒトEPOまたはそのホモログのアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。本発明において有用なEPOとしては、ヒトおよび他の霊長類のEPO、哺乳動物のEPO(ウシ、ブタ、マウスおよびラットのホモログなど)ならびに他の脊椎動物のホモログ(ゼブラフィッシュのホモログなど)が挙げられる。したがって、用語EPOは、成熟ヒトEPO配列の種ホモログ、選択的スプライシングフォーム、アイソタイプおよびグリコシル化バリアントならびに前駆体を包含する。
別の記載がない限り、用語「ヒト組換えEPO」および「rHuEPO」のそれぞれ、ならびに「EPO」は、その本発明による治療的使用の記載に関して本明細書において互換的に使用することがあり得る。
EPOおよびEpoRに関する一般的な情報は、UniProtKB/Swiss−Protなどの公共のデータベースから検索することができる。例えば、EPOのアミノ酸配列については、プライマリーアクセッション番号P01588およびセカンダリーアクセッション番号Q2M2L6、Q549U2、Q9UDZ0、Q9UEZ5およびQ9UHA0ならびにそこに挙げられた参考文献を参照のこと。ヒトEPO遺伝子のクローニングおよび組換え発現は、欧州特許出願EP0148605A2に記載されている。
エリスロポエチン(EPO)(エポエチンと同義)は、赤血球分化の調節および循環赤血球量の生理学的レベルの維持に関与している主要なホルモンである。最初に、EPOは、貧血の処置における使用について報告された。医薬等級のEPO調製物は、例えば、Epogen(Amgen)、Epogin(Chugai)、Epomax(Elanex)、Eprex(Janssen−Cilag)、NeoRecormonまたはRecormon(Roche)、およびProcrit(Ortho Biotech)の名称で市販されている。これらの製剤は、EPOのグリコシル化パターンの差異によって識別される。Epogen、Epogin、EprexおよびProcritは、一般的にエポエチンアルファとして知られており、NeoRecormonおよびRecormonはエポエチンベータとして、Epomaxはエポエチンオメガとして知られている。
また、エリスロポエチン受容体(EPO−R、EpoR)も当業者によく知られている。例えば、EPO−Rのアミノ酸配列については、プライマリーアクセッション番号P19235ならびにセカンダリーアクセッション番号Q15443およびQ2M205ならびにそこに挙げられた参考文献を参照のこと。EPO−Rは、EPOに対する受容体であり、EPO誘導性の赤芽球の増殖と分化を媒介する。EPOで刺激されると、EPO−Rは二量体化し、JAK2/STAT5シグナル伝達カスケードを惹起する。一部の細胞型では、EPO−Rはまた、STAT1とSTAT3を活性化することがあり得、LYNチロシンキナーゼを活性化することもあり得る。
また、本発明に従って使用され得るEPO類縁体は、先行技術においても報告されている。例えば、Longら、Exp.Hematol.34(2006)、697−704には、操作されたEPOシステイン類縁体へのマレイミド−PEGの標的化結合による、インビトロ生理活性が保持された均一なモノペグ化EPO類縁体の設計が記載されている。EPO融合類縁体(ヒト血清アルブミン(EPOa−hSA)融合タンパク質およびヒトIgG(EPO−IgG)融合タンパク質など)ならびにその作製方法は、国際特許出願公開公報WO99/66054およびWO2005/079232のそれぞれにに記載されている。
また、過剰グリコシル化EPO類縁体およびその作製方法は、例えば、国際特許出願公開公報WO00/24893に記載されている。
さらに、アゴニストとして作用し、EPO受容体の二量体化を行ない、したがってシグナル伝達開始を行なうEPO類縁体が報告されている。例えば、国際特許出願公開公報WO96/40772を参照のこと。エリスロポエチン受容体アゴニスト、バッファーおよび糖を含み、該バッファーおよび糖がエリスロポエチン受容体アゴニストを凝集に対して安定化させる粒子製剤が、国際特許出願公開公報WO2006/017773に開示されている。これに記載されたEpoRアゴニストは、単独、またはこれに記載の製剤のいずれかで、本発明により使用され得る。
さらに、EPOから直接誘導されたものでないEPOのEPO類縁体が報告されている。例えば、二量体EPO受容体に結合せず、赤血球生成活性のないEPO類縁体(例えば、カルバミル化EPO(CEPO))が入手可能である。例えば、Fiordalisoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA102(2005)、2046−2051およびそこに挙げられた参考文献を参照のこと。また、EPO受容体は、F−gp55(Friend脾フォーカス形成ウイルス糖タンパク質)の結合により活性化され、細胞増殖のシグナル伝達を行ない得る。例えば、Barberら、Mol.Cell.Biol.14(1994)、2257−2265を参照のこと。したがって、EPO断片および類縁体はそれぞれ、通常、EpoRに対して天然EPOと実質的に同じ活性を有する。
種々の種類のEPOおよびEpoR、活性断片およびその類縁体ならびに本発明の解釈上の用語「EPO」に含まれる核酸に基づいたEPOの適用の概要の詳細は、国際特許出願公開公報WO03/103608の第23頁、第14行目〜第34頁、第26行目(その開示内容は、引用により本明細書に組み込まれる)に示されている。
しかしながら、特許請求の範囲および本明細書において、特定の神経系の病状、医学的使用、処置レジメン、用量および/または標的細胞から既に明らかでない場合、明確にする目的で、すべてではないがほとんどの実施形態において、本発明は、国際特許出願公開公報WO03/103608(その開示は、本明細書において、特許請求の範囲に記載の発明の範囲から除外されることを明示する)に開示および教示されているような、刺激性障害の時点に近い時点またはその後にニューロン細胞内でインスリン様成長因子(IGF)シグナル伝達経路を誘導し、それにより、ニューロン細胞内に相乗的急性神経保護効果をもたらすことによる急性神経保護を提供する方法を包含しないことを理解されたい。
したがって、本発明によれば、用語「EPO」は、任意の種類のEPO、活性断片およびその類縁体のそれぞれ、特に、上記および本明細書の実施例に記載のようなEPOについて初めて見い出された本質的に影響を受けていない生物学的活性、すなわち、
(a)皮質のAβ斑の負過量の低減;
(b)可溶性および不溶性脳内Aβレベルの低下;
(c)血清Aβレベルの低下;
(d)脳のアミロイド血管症(CAA)の改善;
(e)Aβ斑関連星状細胞増加の低減;
(f)アミロイド形成性APPプロセッシングの抑制;
(g)完全長クラウジン−5の正常な分布の実質的な維持または回復、および
(h)異常行動の改善
の1つ以上を保持しているものを包含する。
このようなEPOの新規な生物学的活性は、例えば、arcAβマウス(Knoblochら、“Intracellular Abeta and cognitive deficits precede beta−amyloid deposition in transgenic arcAbeta mice”[出版前に電子公開]Neurobiol Aging 2006 Jul 28;S1558−1497)において、本実施例に記載のようにして本発明により試験され得る。他方において、本発明による有用なEPO類縁体は、本明細書に開示したような神経系障害の治療に必要とされないEPOの効果(例えば、血栓形成の効果)がないものであってもよい。
上記および本実施例の論考に説明したように、本発明の基礎となる理論の1つは、
EPOのAβ低減効果が、EPOによってモジュレートされる星状細胞と毛細血管内皮細胞の相乗的活性化によるものであるということである。したがって、本発明によるEPO類縁体はまた、星状細胞および/または毛細血管内皮細胞のモジュレーター、特に、アクチベーター/アゴニストであり得る。星状細胞および毛細血管内皮細胞のアクチベーターおよびアゴニストは、当該技術分野で知られており、さらに、常套的な方法によって同定され得る。例えば、米国特許第5,728,534号およびSelmajら、J.Immunol.144(1990)、129−135(その開示内容は、引用により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
本発明による重要な知見は、arcAβマウスにおいて、rHuEPOにより脳内Aβレベルが有意に低減されたことであり、これは、脳内の斑負過量とCAAの低減によってなされたものである。理論によって拘束されることを望むが、Aβの低減は、rHuEPOによって誘導されたAPPの非アミロイド形成性プロセッシングによるものと考えられる。arcAβマウスは、脳内のSwedish型とArctic型の両方の変異の場合で、ヒトAPPを発現する。これにより、脳内でのBACE1の高い活性のため、APPは主に、α−切断ではなくβ−切断を受けることになる。この状況下において、β−CTFが少なくなることは、APPのアミロイド形成性プロセッシングのための基質が少なくなり、最終的にAβ生成物が少なくなることを意味する。実際、β−CTFの有意な減少が、rHuEPO処置マウスにおいて低減された。本実施例では、細胞培養実験で、swAPP293細胞をrHuEPO処置すると、β−CTFに対するα−CTFの比および培養培地中の分泌sAPPαのレベルが大きく増大することが示された。これは、rHuEPOがβ−切断よりもα−切断に有利であることをさらに示唆する。APPのβ−切断の線に従うと、rHuEPOが、その抗低酸素機能によってAPPプロセッシングに影響を及ぼすと推測することは妥当である。低灌流はADの一般的な特徴であり、これは、脳への酸素とエネルギーの供給が不充分となる原因である(Iadecola、2004)。低酸素は、低酸素誘導因子(HIF−1)(例えば、BACE1(これは、APPトランスジェニックマウスにおいてアミロイド形成に役割を果たしている))によって、多くの遺伝子の発現を調節する(Sunら、2006)。したがって、理論に拘束されないが、本発明によれば、Aβ蓄積によって引き起こされた脳の血管構造の損傷が低灌流と低酸素をもたらし、これがさらに、BACE1生成とアミロイド形成を誘導するという悪循環が存在すると考えられる。EPOは、虚血によって損傷された脳の局所血流を改善し(Liら、2007)、新血管形成を促進し(Jaquetら、2002)、それにより、酸素とエネルギーの供給の障害が改善される。低酸素状態を改善することにより、rHuEPOが低酸素誘導性BACE1に対して負の調節を行なう可能性があり、それによりAβ生成が低減される可能性がある。また、rHuEPO処置マウスにおける血清Aβレベルの低下によっても、Aβ生成の調節におけるrHuEPOの役割が間接的に示唆された。
したがって、特定の一実施形態において、本発明は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のアミロイド形成性プロセッシングを抑制するため、したがって関連障害の処置のためのEPOに関する。
本明細書の実施例に開示するように、EPOまたはその活性断片もしくは類縁体は、例えば、腹腔内注射によって簡便に全身投与され得る。しかしながら、上記のものなどの他の投与経路も使用され得る。脳の損傷に対する報告した有益な効果にもかかわらず、rHuEPOの有害効果の可能性は無視されるべきでない。
過剰な赤血球生成は、学習障害を引き起こし(Rifkindら、1999)、寿命を短くする(Ogunsholaら、2006)。rHuEPOに応答した赤血球の生成は、用量および投与頻度に依存性であることがわかっている。マウスにおいて、5000UI/kgのrHuEPOを毎週ip注射すると、ヘマトクリットは有意に上昇しなかったが、125UI/kgのrHuEPOを週3回で5週間にわたってip注射すると、ヘマトクリットの中程度の上昇がわずかに得られた(Egrieら、2003)。したがって、このような有害効果を回避するためには、適正な投与が非常に重要である。本発明により、600UI/kgまたは60UI/kgのrHuEPOを毎週受けたarcAβマウスは、野生型対照と類似したヘマトクリットを有するが、生理食塩水処置arcAβマウスよりもわずかに高いヘモグロビンレベルを有することがわかった。したがって、マウスにおいて、rHuEPOは、過剰な赤血球生成を誘導することなく、Aβ病態および微小血管の不完全性を改善することを示すことができた。マウスからヒトへの相対拡大縮小法では、多くの場合、10倍単位で拡大縮小されるため、ヒトにおける有効用量は、マウスで決定された有効用量よりも少ないであろうと推測することは妥当である。
したがって、例えば、アルツハイマー病の処置におけるEPOまたはその活性断片もしくは類縁体の治療的使用の具体的な利点の1つは、処置対象のヘモグロビンレベルおよびヘマトクリットが有意に上昇しないか、または対象に対する治療効果と比べて少なくとも許容範囲の程度にすぎない治療有効用量で投与され得ることである。したがって、本発明は、好ましくは、最大1000U/kgの用量のEPOまたはその活性断片もしくは類縁体を投与することにより実施され得る。特定の実施形態において、本発明は、最大750U/kg、500U/kg、250U/kg、100U/kg、90U/kg、80U/kg、70U/kg、60U/kg、50U/kg、40U/kg、30U/kg、20U/kg、10U/kg、5U/kg、2.5U/kgまたは1U/kgの用量のEPOまたはその活性断片もしくは類縁体を投与することにより実施される。上記および本実施例において説明するように、単回投薬単位および投与レジメンのそれぞれとは無関係に、EPOまたはその活性断片もしくは類縁体は、以前に観察され、かつ最大1000UI/kgと計算された用量よりも少ない治療用量で、または特に、EPOまたはその活性断片もしくは類縁体を含む医薬組成物が毎週投与される場合(これは、本発明による好ましい投与レジメンの1例である)は、マウスからヒトへの換算係数を考慮して、最大100UI/kg、好ましくは最大60UI/kg、最も好ましくは最大10UI/kgの治療用量で投与され得る。したがって、本発明の一実施形態において、EPOまたはその活性断片もしくは類縁体を含む医薬組成物は、上記のように最大1000UI/kg、好ましくは最大500UI/kg、より好ましくは最大100UI/kg、最も好ましくは最大50UI/kgまたはそれ以下の用量で、週1回基準で、単回処置または連続処置のいずれかで投与されるように設計されたものである。
上記において説明し、本実施例で実証するように、対象のAβ病態を抑制または低減させる本発明の方法は、一部において、EPOは、他の疾患の処置に関して以前に観察された用量より少ない用量で、この目的に治療上活性であることが予測され得る知見というに基づく。したがって、本発明は、対象に、上記に規定のEPOまたはその活性断片もしくは類縁体を、好ましくは最大1000UI/kg(すなわち、これより少なくてもよい)の用量で投与し、それにより、神経系障害またはアミロイドーシスの重症度を抑制または低減させることを含む、対象の神経系障害の処置、改善または予防のための方法に関する。しかしながら、上記のように、副作用(例えば、赤血球新生)が無視され得る状態で治療効果を得るために必要な場合、または医学的に正当であり得る場合は、より高用量、すなわち、1250、1500、2000UI/kgまたはさらにそれ以上の用量も、適用されることがあり得る。
さらに、本発明の基礎となっている非拘束的理論の1つによれば、アルツハイマー病の処置におけるEPOの有用な治療効果は、特に、EPOが脳実質および血管のアミロイドーシスならびに脳内および血清中のAβレベルを低減できる能力に関連して、星状細胞および/または毛細血管内皮細胞の活性化によるものである。したがって、一実施形態において、EPOの治療的使用は、星状細胞および毛細血管内皮細胞のそれぞれ、または両方をEPOまたはその活性断片もしくは類縁体と接触させ、それにより、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)特に、MMP−2および/またはMMP−9の産生および活性のそれぞれを誘導または向上させることを含む。
特定の一態様において、本発明は、対象に、EPOまたはその活性断片もしくは類縁体を上記規定の治療有効量で投与し、それにより、脳内Aβ斑の負過量または脳内および血清中のAβレベルのそれぞれを抑制または低減させることにより、対象の神経系障害またはアミロイドーシスを改善または処置する方法を提供する。特定の好ましい実施形態において、EPOまたはその活性断片もしくは類縁体の治療的使用は、脳のアミロイド血管症(CAA)の処置をもたらすAβの血管内沈着の選択的低減を特徴とする。
アルツハイマー病およびアミロイドーシスのそれぞれを処置するための本発明の治療アプローチは、APPプロセッシングおよびAβの直接的な標的化に依存しないため、Aβ関連介入(先行技術において報告されているものなど)に一般的に使用されている薬物に加えて、または該薬物と組合せてEPOおよびEPO様薬剤が使用される場合、好都合な相乗的でさえある効果が期待され得る。好ましくは、追加の薬物は、抗Aβ抗体またはそれと等価な結合分子である。抗Aβ抗体および他のAβ結合分子は、先行技術においてよく知られている。好ましいヒト抗Aβ抗体およびそれと等価な結合分子は、本出願人の同時係属中の国際特許出願、出願番号PCT/EP2008/000053「疾患特異的結合分子および標的を提供する方法(“Method of providing disease−specific binding molecule and targets”)、2008年1月7日出願(代理人整理番号:NE30A06/P−WO)(その開示内容は、引用により本明細書に組み込まれる)に開示されている。もちろん、神経系障害、特に、アルツハイマー病の処置に有用であると考えられる他の薬物もEPOおよびEPO様分子と組み合せて使用され得る(例えば、Klafkiら、Brain 129(2006)、2840−2855(2006年10月3日電子公開);Melinkova、Therapies for Alzheimer’s disease,Nat.Rev.Drug Discov.6(2007)、341−342;Pipeline and Commercial Insight:Alzheimer’s Disease Beta Treatments on the Horizon;A Datamonitor Report、出版:11月5日;製品コード:DMHC212に記載のもの)。
したがって、一実施形態において、本発明は、本明細書において上記のEPOまたはEPO様分子と、Aβ特異的薬物、好ましくは抗Aβ抗体とを含む併用薬物調製物に関する。当然、該併用薬物調製物は、特に、上記において記載の障害、特に、アルツハイマー病およびアミロイドーシスの処置に有用である。
さらなる実施形態において、本発明の治療的使用および方法は、本明細書において上記のEPOまたはEPO様分子を含む医薬組成物を、Aβ特異的薬物、好ましくは抗Aβ抗体または同等の結合分子を含む医薬組成物と併せて投与することを含む。2種類以上の医薬組成物の投与は、任意の様式で同時または逐次であり得る。
本実施例において実証するように、rHuEPOによって、脳の微小血管の完全性が改善された。微小血管構造の損傷は、BBBの破壊を引き起こす。内皮細胞間に形成される接着結合により、傍細胞透過性が低く、電気抵抗が高いというBBBの性質が規定される。接着結合は、3種類の主要なタンパク質群、オクルディン、結合性接着分子−1およびクラウジンファミリーで構成されており、そのうちクラウジン−5は、主として脳の微小血管内において発現される。クラウジン−5は、炎症性変化(Gurneyら、2006)および低酸素(Kotoら、2007)によって負に調節される。プロテインキナーゼAによるクラウジン−5のリン酸化は、血液脳関門の機能に非常に重要であると考えられている(Somaら、2004)。マウスでは、血管構造は、Aβ斑と密接に関連しているだけでなく(Kumar−Singhら、2005)、Aβによる損傷を特に受けやすい(Parkら、2004)。Aβ42原線維は、脳の内皮細胞において原形質膜から細胞質へのクラウジン−5の移動を誘導する(MarcoおよびSkaper、2006)。本発明により、さらに、10μMの新鮮調製Aβ42が、bEnd5細胞において細胞膜から細胞質へのクラウジン−5の移動を既に誘導していたことが実証された。また、Aβ42処理細胞におけるウエスタンブロットにおいて、6〜16kDaのサイズを有する4種類のC末端断片が観察された(図7B)。相当な量のC末端断片が見られたことにより、クラウジン−5の異常に高い代謝回転、およびAβ42によって誘導された接着結合の不安定化が示された。実際、フルオレセインナトリウム塩(376Da)のBBB透過性は、検出可能な微小出血のないarcAβマウスにおいて劇的に増大した。本データならびに他のデータ(Willisら、2004a)は、微小血管構造の損傷およびBBBの漏損の早期マーカーとしてのクラウジン−5を示唆する。ADにおける脳の微小血管構造の損傷は非常によく見られ、AD患者の80〜90%はCAAを有する。したがって、ADにおけるクラウジン−5の重要な役割を期待することは妥当であり、血管構造の病変が該疾患の強力な因子であるという仮説を強く裏付ける。
より重要なことには、本発明により、rHuEPOが、インビトロおよびインビボの両方で、クラウジン−5に対するAβ毒性を改善し、したがってヒト脳の微小血管内皮細胞において保護的効果を有すると思われることを実証することができた。したがって、クラウジン−5の正常な分布がrHuEPOによって一部回復された。rHuEPOによるクラウジン−5に対するAβ毒性の抑制は、マウス脳の微小血管内皮細胞株において、さらに確認された。理論に拘束されることを意図しないが、本発明の知見により、EPOが、クラウジン媒介性細胞接着の破壊による微小血管の不完全性を改善するために使用され得ると予測することは妥当である。したがって、本発明はまた、クラウジン媒介性細胞接着の状態、特に、神経系障害と関連している病状の処置、改善または予防のための、エリスロポエチン(EPO)またはその活性断片もしくは類縁体を含む医薬組成物に関する。したがって、本発明はまた、EPOを投与することを含む、接着結合形成活性または上皮もしくは内皮のバリア機能活性の増大を、それを必要とする対象において行なうための方法を包含する。一部の実施形態において、EPOは、血液脳関門透過性を増大させるために使用され得、したがって、脳内で効果を発揮させることが意図される他の薬物とともに投与され得る。
なおさらなる態様において、本発明は、体液試料中のクラウジン−5またはそのバリアントのレベルを測定することを含み、ここで、健常対象由来の試料の参照値と比べたときのクラウジン−5レベルの減少および/またはその約16kDaのバリアントのレベルの増加は、前記個体がアルツハイマー病に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、インビトロでアルツハイマー病を評価するための方法に関する。本実施例において実証し、図8にも示されるように、AD認知症患者では、完全長形態のクラウジン−5が存在しなかったが、少量の16kDaのバンドが主要形態として検出された。認知症患者と健常対照での完全長クラウジン−5のレベルおよび低分子量形態の出現の違いは、クラウジン−5およびその16kDaのバリアントが、アルツハイマー病における脳血管構造の損傷の主要なマーカーであることを示す。
したがって、本発明は、さらに、体液試料中のクラウジン−5またはそのバリアントのレベルを測定することを含み、ここで、クラウジン−5または前記そのバリアントのレベルの以前の測定値と比較して、クラウジン−5レベルの減少および/またはその約16kDaのバリアントのレベルの増加は、アルツハイマー病の進行を示す、アルツハイマー病の進行をモニタリングするためのインビトロ方法に関する。体液は脳脊髄液または血液であり得る。
体液試料中の1種類以上のタンパク質またはそのコードする核酸のレベルを測定するための一般的な手段および方法は、当業者によく知られている。例えば、本明細書および本実施例に挙げた一般的な教科書およびマニュアルを参照のこと。例えば、国際特許出願公開公報WO2007/140971には、体液試料中のミエリン関連糖タンパク質前駆体(MAG)、コンタクチン関連タンパク質1前駆体、ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質前駆体1(MOG)などのレベルを測定することを含み、ここで、前記タンパク質の1種類のレベルの変化は、前記個体がアルツハイマー病に罹患していることを示す、アルツハイマー病をインビトロで評価するための方法が記載されている。このような方法は、クラウジン−5またはそのバリアントのレベルを測定するために、本発明に従って適用および適合され得、その目的のため、国際特許出願公開公報WO2007/140971の開示内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
また、本発明は、クラウジン−5またはそのバリアントを測定するための手段または薬剤、例えば、上記の方法における使用のための抗体または核酸プローブなど(付随の本実施例も参照のこと)を備えたキットに関する。キットは、さらに、個体がアルツハイマー病に罹患するリスクの判定に関するいずれかの測定値の結果を解釈するためのユーザーズマニュアルを備えていてもよい。
したがって、本発明は、実質的に、先に本明細書において特に以下の実施例に関して前述した医薬組成物、方法、使用およびキットに関する。
これらおよび他の実施形態は、本発明の説明および実施例に開示および包含される。本発明に従って使用される、材料、方法、使用および化合物のいずれかに関するさらなる文献は、公共の図書館およびデータベースから、例えば、電子デバイスを用いて検索され得る。例えば、米国立衛生研究所の米国立バイオテクノロジー情報センターおよび/または米国立医学図書館が提供している公共のデータベース「Medline」が利用され得る。さらなるデータベースおよびウェブアドレス(欧州分子生物学研究所(EMBL)の一部門である欧州バイオインフォマティクス研究所(EBI)のものなど)は、当業者にわかり、インターネット検索エンジンを用いて入手することもできる。バイオテクノロジーにおける特許情報、ならびに遡り検索およびカレント・アウェアネスに有用な特許情報の関連情報源の調査の総覧は、Berks、TIBTECH12(1994)、352−364に示されている。
上記の開示は、本発明を一般的に記載したものである。本明細書の本文中で、いくつかの文献を挙げている。充分な書誌的記載は、特許請求の範囲の直前の本明細書の最後を見るとよい。引用したすべての参考文献(本明細書中に挙げた参考文献、発行済特許、公開特許出願および製造業者の仕様書、使用説明書などを含む)の内容は、引用により明示的に本明細書に組み込まれる。しかしながら、引用した文献はいずれも、実際は本発明の先行技術であると是認するものではない。以下の具体的な実施例を参照することによって、より完全な理解を得ることができよう。この実施例は、本明細書において例示の目的のためだけに提供し、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
本発明の実施には、特に記載のない限り、当該技術分野の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の常法が使用される。
分子遺伝学および遺伝子操作における方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manualの現行版(Sambrookら、(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press);DNA Cloning、第I巻および第II巻(Glover編、1985);Oligonucleotide Synthesis(Gait編、1984);Nucleic Acid Hybridization(HamesおよびHiggins編、1984);Transcription And Translation(HamesおよびHiggins編、1984);Culture Of Animal Cells(Freshney and Alan,Liss,Inc.,1987);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(MillerおよびCalos編);Current Protocols in Molecular Biology and Short Protocols in Molecular Biology、第3版(Ausubelら編);ならびにRecombinant DNA Methodology(Wu編、Academic Press)。Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(MillerおよびCalos編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymology、第154巻および第155巻(Wuら編);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press、1986);Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(MayerおよびWalker編、Academic Press、London、1987);Handbook Of Experimental Immunology、第I〜IV巻(WeirおよびBlackwell編、1986)に一般的に記載されている。この開示において言及した遺伝子操作のための試薬、クローニングベクターおよびキットは、市販の供給元(BioRad、Stratagene、Invitrogen、およびClontechなど)から入手可能である。細胞培養および培地の回収における一般的な手法は、Large Scale Mammalian Cell Culture(Huら、Curr.Opin.Biotechnol.8(1997)、148);Serum−free Media(Kitano、Biotechnology 17(1991)、73);Large Scale Mammalian Cell Culture(Curr.Opin.Biotechnol.2(1991)、375);およびSuspension Culture of Mammalian Cells(Birchら、Bioprocess Technol.19(1990)、251);Extracting information from cDNA arrays、Herzelら、CHAOS 11(2001)、98−107に概説されている。
補足的方法
トランスジェニックマウス
マウスPrpプロモーターの制御下でSwedish型(K670N−M671L)およびArctic型(E693G)変異を有するヒトAPP695を発現するarcAβマウスを、C57BL/6とDBA/2の混合型背景において交配した。遺伝子型を、尾部のゲノムDNAのPCRによって判定した。マウスを22℃で12時間の明/暗サイクルで維持した。飼料ペレットおよび水は随意に摂取させた。この動物試験は当該地域の動物試験委員会によって承認されたものである。
EPO処置
3ヶ月齢のarcAβマウスに、rHuEPO(Eprex、Janssen−Cilag AG、Baar、Swizterland)を、1.8UI/マウス(EpoL、n=11)もしくは18UI/マウス(EpoH、n=12)の用量で、または生理食塩水(tg ctr、n=10)を毎週腹腔内(ip)注射した。また、野生型マウスの群も生理食塩水で処置した(wt、n=13)。すべての群は年齢が適合しており、性別のバランスもとれていた。処置を終了した1週間後にマウスを屠殺した。
Y字形迷路行動試験
処置の3ヶ月後、マウスを、Y字形迷路行動パラダイム(Wolferら、2004;Knoblochら、2006)において試験した。試験前の2週間、動物を、逆12時間明/暗サイクルに置いた。試験期間中、検査担当者は処置に対して盲検的とした。マウスの一般健康状態は、ミニ神経系検査によって評価した(Knoblochら、2006)。
組織の調製
マウスを、深度麻酔下で(1.25%ケタミンおよび0.25%キシラジン、10μl/g体重)、10mlの50mM TrisCl(pH7.4)および6mM EGTAを経心的に灌流した。血液を採取し、室温で40分間凝固させた。次いで、血清を採取し、2,000g、4℃で10分間の遠心分離後、−80℃で保存した。脳を取り出し、左半球をドライアイス上でスナップ凍結させ、右半球は、4%パラホルムアルデヒド含有PBS(pH7.4)中、4℃で24時間浸漬固定した。次いで、固定した脳をパラフィン中に包埋した。ミクロトームで5μm厚の矢状面の連続切片を作製した。
Aβ斑の定量
小さなAβ斑が、標準的なチオフラビン−S染色によって測定され、LAT0mm〜LAT−1mmの脳領域を均一に含む5つの連続切片において計数した。
ヘマトクリットの測定
午前10時〜11時に採取した尾部血液の赤血球ヘマトクリットを、遠心分離後にマイクロキャピラリーを用いて測定し、充填赤血球量に対する容積割合で定量した。尾部血液のヘモグロビンは、キュベットヘモグロビンキット(HemoCue AB,Baumann Medical AG,Zurich,Switzerland)を用いて測定した。
組織化学的検査
ペルオキシダーゼ/DAB染色のための二次抗体はVector Laboratories(Burlingame,CA,USA)製、免疫蛍光染色のための二次抗体はJackson(Milan Analytic,Fribourg,Switzerland)製のものであった。マウスモノクローナル抗体6E10(Signet,Dedham,USA)1:400;CD31に対するラットモノクローナル抗体(BD Biosciences,Basel,Switzerland)1:100;GFAPに対するウサギポリクローナル抗体(Sigma,Buchs,Switzerland)1:400およびクラウジン−5(Invitrogen,Basel)1:100を、免疫組織化学検査に使用した。第二鉄は、Perls染色により、標準的なプロトコルに従って検出した。
免疫組織化学的染検査
免疫組織化学的染色に使用した一次抗体および希釈液は、マウスモノクローナル抗体6E10(Signet,Dedham,USA)1:400;C末端アミロイド前駆体タンパク質(APP)に対するウサギポリクローナル抗体1:500、および抗GFAP 1:400(Sigma,Buchs,Switzerland)であった。ペルオキシダーゼ/DAB染色に使用した二次抗体は、Vector Laboratories(Burlingame,CA,USA)製のものであり、免疫蛍光染色に使用した二次抗体は、Jackson(Milan Analytic,Fribourg,Switzerland)製のものであった。
タンパク質抽出物およびウエスタンブロッティング
各左半球を、ガラス製テフロン(登録商標)加工ホモジナイザーを使用し、15容量のRIPAバッファー(0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、0.1%のSDS、150mMのNaCl、50mMのTrisCl(pH8.0)、5mMのEDTA、1mMのNa3VO4、1mMのNaF、1×プロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma)および1mMのAEBSF)中でホモジナイズした。100,000gで4℃にて40分間の遠心分離後、上清みをRIPA画分として回収した。ペレットを0.7mlのRIPAバッファー中に懸濁させ、100,000gで4℃にて30分間の遠心分離後に再度回収した。次いで、ペレットを、0.5mlのRIPA、2mMのEDTAおよび2%のSDS中に懸濁させた。100,000gで8℃にて40分間の遠心分離後、上清みをSDS画分として回収した。次いで、ペレットを75μlの70%ギ酸に再溶解させた。この懸濁剤を1.5mlの1M Trisで中和させ(pH11)、20,000g、4℃で30分間遠心分離した。次いで、上清みをFA画分として回収した。各画分の抽出物を10〜20%トリシンSDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜上にブロットさせ、PBS中で5分間煮沸した。一次抗体には、6E10(1:300)、CD31(1:50)、クラウジン−5に対するウサギポリクローナル抗体(1:100)、C末端APP(Sigma,Basel,Switzerland,1:2,000)およびPKAα cat(Santa Cruz,Basel,Switzerland,1:100)、β−アクチンに対するマウスモノクローナル抗体(Abcam,Cambridge,UK,1:3,000)およびGAPDH(Biodesign,Fribourg,Switzerland,1:3000)を含めた。標的タンパク質を、ペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体およびECL反応(Amersham Biosciences,Otelfingen,Switzerland)によって可視化した。
ELISA
hAmyloid β40 ELISAキット(The Genetics Company,Zurich,Switzerland)をAβ40のレベルの定量に、およびINNOTEST(登録商標)(Innogenetics,Heiden,Germany)をAβ42のレベルの定量に使用した。脳抽出物および血清は、以前の滴定試験に従って希釈した。
微小血管の取り出し
脳の微小血管は、確立された方法(Banks、1999)に基づいて(わずかに修正した)単離した。簡単には、小脳を除いた脳から、氷冷HBSS中で目に見える血管と髄膜を除き、次いで、1%のデキストランを含有する5mlの氷冷DMEM:F−12(GIBCO、32500−035,Basel,Switzerland)中で、外科用メスを用いてほぼ1mmに細分した。次いで、細かく切断した組織を氷冷DMEM−F−12中で、7ml容Dounceホモジナイザー(大型旋回内筒で30回の後、小型旋回内筒で25回)にてホモジナイズした。得られたホモジネートを、200g、4℃で5分間遠心分離した。ペレットを15mlの20%デキストラン−DMEM−F12中に再懸濁させ、4,500g、4℃で15分間遠心分離した。ペレットを、1%デキストランDMEM−F−12中に再懸濁させ、40μmメッシュ膜に通した。この膜を25mlのHBSSで洗浄した後、1000g、4℃で5分間遠心分離することにより、微小血管を回収した。次いで、微小血管を4%PFA中に室温で10分間固定し、使用まで4℃で、0.05%のNaNを含有するPBS(pH7.4)中に保存した。
細胞の培養と処理
マウス内皮細胞株であるbEnd3細胞およびbEnd5細胞は、ポリオーマウイルス中型T−抗原を用いてマウス脳の微小血管から確立され、不死化させた脳内皮細胞株であり、欧州動物細胞培養収集機関(ECACC)または米国組織培養収集機関(ATCC)などの商業用細胞バンクから入手できる。Williamsら、Cell 57(1989)、1053±1063も参照のこと。これらの細胞をペトリ皿において、10%FCS(熱不活化したもの)、4mMのL−グルタミン、1×MEM非必須アミノ酸、1mMのピルビン酸ナトリウム、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンおよび50μMのβメルカプトエタノールを含有するDMEM(4.5g/Lのグルコース)中、5×10/cmの密度で37℃および5%COにて2週間(週2回の培地交換を伴う)培養した。次いで、ペトリ皿上の細胞を、10μMの新鮮調製合成Aβ42(Bachem,Basel,Switzerland)または1UI/mlのrHuEPOまたは両方で、PBS中にて24時間処理した。対照培養物は等容量のPBSで処理した。次いで、細胞をPBSで2回洗浄し、ドライアイス上で即座に凍結させた。次いで、細胞を氷上200μlのRIPA中で剥がし取った。細胞懸濁液を回収し、30秒間超音波処理した後、14,000rpm、4℃で30分間の遠心分離に供した。上清みを回収し、使用まで、アリコートに分けて−80℃で保存した。免疫細胞化学試験のため、細胞を多チャンバ培養スライドにて培養した。
SweAPP293細胞、すなわち、Swedish型の二重変異を有するβアミロイド前駆体タンパク質を発現するHEK293細胞(例えば、Swedish型の変異型APP695安定HEK細胞株である20E2細胞株(Qingら、FASEB J.18(2004)、1571−1573)を参照のこと)を、10%のFCS、100単位/mlのペニシリン、100ug/mlのストレプトマイシンを含有するDMEM中(6cmペトリ皿にて)、2.5×10/cmの密度で37℃および5%COにて培養した。8時間後、培養培地を種々の濃度(0、0.0001、0.01、0.1、1および10UI/ml)のrHuEPOにて、または1μMのDAPT(γ−セクレターゼインヒビターIX、Calbiochem)とともにリフレッシュさせた。馴化培地を24時間後および46時間後に回収した後、4℃、2500rpmで10分間遠心分離した。細胞をまずドライアイス中で凍結させ、次いで200μlのRIPAバッファー中で剥がし取った。次いで、この細胞懸濁液を30秒間の超音波処理に供した。4℃、14,000rpmで30分間の遠心分離後、全細胞タンパク質抽出物を回収した。馴化培地および細胞タンパク質抽出物を、使用まで−80℃で保存した。
ヒトの脳試料調製物
AD患者および健常対照の凍結させた側頭葉皮質(死後3.5時間以内)を、RIPAバッファー中でホモジナイズした。4℃、22000×gで40分間の遠心分離後に上清みを回収し、タンパク質含量をBioRad DC−アッセイによって定量した。上清みおよびペレットは、使用まで−80℃で保存した。
統計
データは、SPSSバージョン11.5によって解析した。一元配置ANOVAを用いて処置群間の差を評価した後、LSD多重比較を行ない、有意レベルを0.05とした。2つの群間の差の評価には、スチューデントのt−検定を使用し、有意レベルを0.05とした。2つの変量間の相関は、ピアソンまたはスピアマンのρ相関によって試験し、ピアソンにおいてP<0.01およびスピアマンのρ検定においてP<0.05の場合、有意であるとみなした。
実施例1:rHuEPOは、脳内のAβ斑の数およびAβ斑関連星状細胞増加を低減させる。
8ヶ月齢の時点で、arcAβマウスには、既に脳実質および軟髄膜および実質の血管内に顕著なAβ沈着物が発生しており、これらは、6E10免疫蛍光染色によって示された。6E10陽性Aβ沈着物のほとんどは、チオフラビン−S染色によって老人斑として確認された(図1A、BおよびC)。チオフラビン−S斑は、主に皮質内に見られた(5.0±1.09/切片)が、海馬内にも稀に見られた。斑の数は、EpoLおよびEpoHにおいて40%より多く減少した(それぞれ、2.6±0.6/切片および2.0±0.3/切片;P<0.05および0.01、LSD、図1D)。脳実質内のAβ蓄積に応答した星状細胞増加は、既に8ヶ月齢のtg ctrにおいて顕著であった(図2D)。対照的に、Aβ斑関連星状細胞増加は、GFAP陽性細胞の数および各6E10陽性Aβ斑周囲の蛍光強度によって測定されたように、EpoL(図2E)およびEpoH(図2F)において著しく低かった。(図2A、BおよびC)。これは、EpoL(図2H)およびEpoH(図21)において、類似した大きさの斑の周囲で星状細胞増加の顕著な低減が検出されたため、斑の大きさの縮小によるものではないと思われた。したがって、arcAβマウスの脳内で、持続的rHuEPO処置により、Aβ斑の数および関連する星状細胞増加が低減された。
実施例2:rHuEPOは、CAAを低減させ、星状細胞と血管間の密着を維持する
また、チオフラビン−S染色により、8ヶ月齢のarcAβマウスの軟髄膜および皮質の両方において有意なCAAが示された(図3AおよびB)。チオフラビン−S染色血管が見られたことは、皮質内のチオフラビン−S斑の数と正に相関していた(P<0.05、r=0.725、スピアマンのρ相関係数、図3C)。しかしながら、チオフラビン−S染色血管は、EpoLおよびEpoHではあまり顕著でなかった(それぞれ、11匹のうち5匹および12匹のうち7匹)。興味深いことに、EpoLおよびEpoHマウスにおいて、チオフラビン−S斑の数と、チオフラビン−S血管が見られたこととの間に関連性はかった(それぞれ、P=0.253および0.647、図3C)。しかしながら、第二鉄のPerls染色では、4つの群すべての脳内において微小出血は全く検出されなかった(未公表データ)。これは、微小出血が、arcAβマウスにおいてCAAの発生よりも後に起こったことを示す。また、高度にGFAP反応性であるにもかかわらず、星状細胞は、ほとんどがAβ負荷血管から剥離した(図3D)。対照的に、GFAP陽性星状細胞は、EpoL(図3E)およびEpoH(図3F)の両方において、Aβ負荷血管と密着したままであった。したがって、持続的rHuEPO処置により、arcAβマウスにおいて、血管からの星状細胞の分離が抑制され、CAAが低減された。
実施例3:rHuEPOは、脳内および血清中のAβレベルを低下させる
RIPA画分、SDS画分およびFA画分において、ELISAによって脳内Aβを定量した。脳内に検出可能なAβ斑がなかった4ヶ月齢のarcAβマウスと比較すると、8ヶ月齢のtg ctrマウスでは、RIPA画分におけるAβ40の増加はほんのわずかであった(P=0.210)が、SDS画分では4倍増加およびFA画分では40倍増加であった(P<0.01、図4A)。持続的rHuEPO処置により、RIPA画分において、低減されたAβ40レベルはほんのわずかであった(P=0.211、図4A)が、可溶性の低い画分では40%より大きく、劇的に低減された。Aβ40の低減は、EpoLのSDS画分ならびにEpoHのFA画分において有意であった(P<0.05、図4A)。rHuEPO処置マウスにおける脳内Aβ42のレベルは同程度低減され、この低減は、EpoHのRIPA画分とFA画分において有意であった(P<0.05、図4B)。さらなる解析により、すべてのRIPA不溶性画分において、チオフラビン−S斑の数が脳内Aβレベルと正に関連しており(P<0.001、ピアソン相関)、この関連は、SDS画分におけるAβ40レベルの場合に最も強い(r=0.791、P<0.001、図4C)ことが示された。また、EpoLおよびEpoHにおいて、血清Aβ40でも40%より大きな減少が見られた(P<0.01、図4D)。したがって、持続的rHuEPO処置により、arcAβマウスにおいて、RIPA不溶性画分における脳内Aβレベルおよび血清Aβ40が有意に低減された。
実施例4:rHuEPOは、APPの非アミロイド形成性プロセッシングを活性化する
β−セクレターゼBACE1によるAPPのβ−切断は、APPのアミロイド形成性プロセッシング、したがってアミロイド形成の第1段階である。したがって、β−切断のC末端断片β−CTFのレベルは、マウスにおけるAβ生成の程度を間接的に反映する。tg ctrマウスにおけるβ−CTFのレベルは、ウエスタンブロットによって示されるように、明らかにEpoHマウスよりも高かった(図5)。これがAPP合成の差によるものである可能性を排除するため、β−CTFのデンシトメトリー測定を、同じウエスタンブロット上で、個々の各マウスの完全長APP(FL−APP)のものに標準化した。FL−APPに対するβ−CTFの比は、tg ctr(n=7)と比べ、rHuEPO処置マウス(EpoH)において34%有意に低減された(スチューデント検定、p<0.01)。この結果は、rHuEpoに供された、Swedish型変異を含むヒトAPP695を過剰発現するSweAPP293細胞で確認することができた。SweAPP細胞におけるα−CTFとβ−CTFのレベルは、ウエスタンブロットにおいてほぼ等しかった(C)。種々の濃度のrHuEPOにより、α−CTF/β−CTFは著しく増大し、1UI/mlのときα−CTF/β−CTFが2.6のピークに達した。しかしながら、確立されたγ−切断インヒビターであるDAPTでは、rHuEPOによるα−CTF/β−CTFの増大は阻止されなかった(D)。また、α−切断の細胞外断片であるsAPPαもrHuEPO処置細胞の馴化培地中で増加していた(E)。したがって、rHuEPOは、arcAβマウスおよびSweAPP293細胞において、APPの非アミロイド形成性プロセッシングに有利に作用した。
実施例5:rHuEPOは、微小血管内皮細胞に対するAβ毒性を抑制する
CAA以外に、arcAβマウスは、脳の微小血管の完全性の重症な損傷も有していた。クラウジン−5は、脳の微小血管における接着結合の主要な成分である。ウエスタンブロットにより、arcAβマウスにおいて脳内クラウジン−5の低減傾向が示され、この低減は、両方のrHuEPO処置群で一部回復した。クラウジン−5は脳の微小血管内に豊富に存在するため、脳の微小血管を、さらに、野生型、tg ctrマウスおよびrHuEPO処置マウスから採取した。野生型では、微小血管は、2つの隣接する核の間隔が約40μmの内皮細胞で構成されていた。クラウジン−5は血管壁に沿って均一に分布していたが、Aβは存在しなかった(図6A)。しかしながら、arcAβマウスから単離されたAβ負荷微小血管の血管壁では、隣接する内皮細胞の核間の間隔は大きい場合が多く(図6D)、場合によっては、内皮細胞の減損が明らかであった(図6B)。しかしながら、別の内皮マーカーである血小板内皮細胞接着分子−1(PECAM−1/CD31)の分布は、Aβ負荷微小血管においてさえも影響はなかった(図6D)。野生型では、微小血管は星状細胞によって完全に覆われていた(図6E)が、tg ctrでは覆われていない場合が多く、クラウジン−5の分布も不均一であった(図6F)。興味深いことに、rHuEPOにより、Aβ負荷微小血管においてクラウジン−5の正常な分布が一部回復された(図6C)。
クラウジン−5に対するAβの毒性効果を、マウス脳の微小血管から確立された内皮細胞株であるbEnd5細胞においてさらに試験した。クラウジン−5は、主に、bEnd5細胞の細胞膜において発現された(図7A)。この細胞を、10μMの新鮮調製Aβ42中で24時間培養すると、クラウジン−5は、細胞膜から分離し、細胞質内に蓄積された。1UI/mlのrHuEPOを10μMのAβ42とともに添加すると、膜結合クラウジン−5は保持されたが、依然として細胞質内にもクラウジン−5が存在した。しかしながら、1UI/mlのrHuEPO単独では、クラウジン−5の正常な分布パターンは変化しなかった。Aβ42によって細胞膜からクラウジン−5が完全に消失したにもかかわらず、クラウジン−5のタンパク質レベルの有意な低減はみられなかった(図7B)。さらに、Aβ42により、クラウジン−5のC末端断片のレベルの有意な増加が誘導された(該断片は、対照およびrHuEPO処置細胞ではほとんど検出不可能であった)が、1UI/mlのrHuEPOを添加すると、これらのC末端断片は著しく減少した(図7B)。総合すると、これらのデータは、クラウジン−5がインビボとインビトロの両方でAβに対して感受性であることを示唆した。rHuEPOにより、マウスとbEnd5細胞の両方においてクラウジン−5に対するAβ毒性が抑制された。
実施例6:持続的rHuEPO処置は、arcAβマウスにおいて一般生理条件に影響を及ぼさない
arcAβマウスにおいて毎週のrHuEPO処置が赤血球生成の増大と関連しているかどうかを評価するため、ヘモグロビンとヘマトクリットのレベルを、4つの群すべてにおいて測定した。両パラメータとも、EpoL処置群およびEpoH処置群において変化がなかった(それぞれ、p=0.387およびp=0.465)。一般生理条件をミニ神経系検査によってモニタリングした。この検査は、パラメータとして、皮膜外観、体重、体温、分泌徴候、体位ならびに基本的な反射(まばたき、瞳孔反射、屈曲反射および立直り反射など)を測定するものである。握力として示す筋力はバネ秤で測定した。tg ctrマウスとrHuEPO処置マウスとの間に有意差は観察されず、正常であり、生理食塩水処置野生型同腹子と同等のようであった。したがって、600UIまたは60UI/kgのrHuEPOの毎週のip注射ではヘマトクリットは有意に増大せず、明白な有害効果も生じなかった。
実施例7:クラウジン−5は、アルツハイマー病における脳血管構造の損傷のマーカーである
ウエスタンブロットは、認知症患者および健常対照由来の側頭葉皮質内のクラウジン−5のレベルを示す。認知症の臨床診断のみを有する対象(被検体)に+を表示し、臨床的に認知症でない対象に−を表示した。神経細線維のもつれの重症度は、Braak and Braak Stage(B&B病期)によって示した。また、各対象のアポリポタンパク質E遺伝子型も表示した。すべての認知症患者で、完全長形態のクラウジン−5は存在しなかったが、16kDaの小さなバンドが主要形態として検出された。図8参照。認知症患者と健常対照での完全長クラウジン−5のレベルおよび低分子量形態の出現の違いは、クラウジン−5が、アルツハイマー病における脳血管構造の損傷の顕著なマーカーであることを強く示唆する。
本発明は、ADモデルマウスにおけるrHuEPOの有益な役割を実証する最初の開示であるが、rHuEPOは、齧歯類において、低酸素性虚血(Kumralら、2004)、グルタミン酸興奮毒性(Miuら、2004)および外傷性脳損傷(Luら、2005)によって引き起こされる重症な脳の損傷および記憶障害の予防に好成績で使用されていた。arcAβマウスは、2つの主な病態生理学的特徴:
(1)脳実質内および血管内の両方におけるAβ蓄積;
(2)脳の微小血管の完全性の障害
を有する。
このマウスモデルの使用により、rHuEPOが脳内Aβレベルを低下させ、脳の微小血管の完全性を改善することを示すことができた。要約すると、ADマウスにおいて、全身性rHuEPO処置により脳内Aβレベルが低下し、脳の微小血管の完全性が改善されたことを初めて開示しており、したがって、ADの処置に対する新規なアプローチが切り開かれる。また、ADの新規なバイオマーカーであるクラウジン−5およびその16kDaのバリアントフォームを同定することができた。
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Claims (30)

  1. 対象における神経系障害またはアミロイドーシスの処置、改善または予防のための、エリスロポエチン(EPO)またはその生物学的に活性な断片もしくは類縁体を含む医薬組成物。
  2. 前記障害が脳内の微小血管内皮の損傷を伴う、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 微小血管内皮の損傷が、クラウジン−5の細胞膜分離および/またはクラウジン−5のタンパク質レベルの低下を特徴とする、請求項2に記載の医薬組成物。
  4. 前記障害がアミロイドーシスと関連している、請求項1または3いずれか1項に記載の医薬組成物。
  5. 前記障害がアミロイドβ(Aβ)病態と関連している、請求項1〜4いずれか1項に記載の医薬組成物。
  6. 前記障害が、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のアミロイド形成性プロセッシングに起因している、請求項1〜5いずれか1項に記載の医薬組成物。
  7. 前記神経系障害がアルツハイマー病である、請求項1〜6いずれか1項に記載の医薬組成物。
  8. EPOまたはその活性断片もしくは類縁体が外来的に適用されるか、または標的細胞内で発現されるように設計された、請求項1〜7いずれか1項に記載の医薬組成物。
  9. 前記標的細胞が脳内の毛細血管内皮細胞である、請求項8に記載の医薬組成物。
  10. 前記EPOがヒトEPOまたはその生物学的に活性な断片である、請求項1〜9いずれか1項に記載の医薬組成物。
  11. 前記EPOまたはその活性断片もしくは類縁体が、天然ヒトEPOと比べて過剰グリコシル化されている、請求項1〜10いずれか1項に記載の医薬組成物。
  12. 前記EPOまたはその活性断片もしくは類縁体がダルベポエチンである、請求項1〜11いずれか1項に記載の医薬組成物。
  13. 全身投与されるように設計された、請求項1〜12いずれか1項に記載の医薬組成物。
  14. 対象のヘモグロビンレベルを有意に上昇させることなく治療有効量で投与されるように設計された、請求項1〜13いずれか1項に記載の医薬組成物。
  15. 対象のヘマトクリットを有意に上昇させることなく治療有効量で投与されるように設計された、請求項1〜14いずれか1項に記載の医薬組成物。
  16. 約1UI/kg〜1000UI/kg未満の用量で投与されるように設計された、請求項1〜15いずれか1項に記載の医薬組成物。
  17. 最大100UI/kgの用量で投与されるように設計された、請求項1〜16いずれか1項に記載の医薬組成物。
  18. 毎週投与されるように設計された、請求項1〜17いずれか1項に記載の医薬組成物。
  19. 抗Aβ抗体またはそれと等価なAβ結合分子をさらに含むか、或いは該抗Aβ抗体またはそれと等価なAβ結合分子を含む医薬組成物と併せて投与されるように設計された、請求項1〜18いずれか1項に記載の医薬組成物。
  20. アルツハイマー治療における同時、別々または逐次使用のための抗Aβ抗体またはそれと等価なAβ結合分子或いはその併用調製物を含む、請求項1〜19いずれか1項に記載の医薬組成物。
  21. 対象に、請求項1〜12いずれか1項に記載のEPOまたはその活性断片もしくは類縁体を最大1000UI/kgまたはそれ以下の用量で投与し、それにより、神経系障害の重症度を抑制または低減させることを含む、前記対象の神経系障害の処置、改善または予防のための方法。
  22. クラウジン−5の細胞膜分離および/またはクラウジン−5のタンパク質レベルの低下を特徴とする対象の脳内の損傷微小血管内皮の処置、改善または予防のための方法であって、前記対象に、請求項1〜12いずれか1項に記載のEPOまたはその活性断片もしくは類縁体を投与し、それにより、該損傷の重症度を抑制または低減させることを含む方法。
  23. 体液試料中のクラウジン−5またはそのバリアント、好ましくは約16kDaの種のレベルを測定することを含み、ここで、健常対象由来の試料の参照値と比べたときのクラウジン−5レベルの減少および/または前記バリアントのレベルの増加は、個体がアルツハイマー病に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、アルツハイマー病をインビトロで評価するための方法。
  24. 体液試料中のクラウジン−5またはそのバリアント、好ましくは約16kDaの種のレベルを測定することを含み、ここで、クラウジン−5または前記バリアントのレベルの以前の測定値と比較して、クラウジン−5レベルの減少および/または前記バリアントのレベルの増加は、アルツハイマー病の進行を示す、アルツハイマー病の進行をモニタリングするためのインビトロ方法。
  25. 体液が脳脊髄液または血液である、請求項24または25に記載の方法。
  26. アルツハイマー病のバイオマーカーとしてのクラウジン−5またはそのバリアントの使用。
  27. アルツハイマー病の進行のバイオマーカーとしてのクラウジン−5またはそのバリアントの使用。
  28. クラウジン−5またはそのバリアントを測定するための手段または薬剤を含む、請求項24〜26いずれか1項に記載の方法における使用のためのキット。
  29. さらに、個体がアルツハイマー病に罹患するリスクの判定に関するいずれかの測定値の結果を解釈するためのユーザーズマニュアルを含む、請求項29に記載のキット。
  30. 本明細書において特に前述の実施例に関して実質的に記載した医薬組成物、方法、使用およびキット。
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