JP2010528057A - ピリドキサール5’−リン酸による遅発性ジスキネジーの治療 - Google Patents

ピリドキサール5’−リン酸による遅発性ジスキネジーの治療 Download PDF

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Abstract

本発明は、ピリドキサール 5’−リン酸の投与を介する遅発性ジスキネジーの治療に関する。治療は、1日当たり100mg〜4000mg、例えば1日当たり100mg〜750mg、又は1日当たり約250mgの経口投与であり得る。また、遅発性ジスキネジーの治療のための薬物の調製のためのピリドキサール 5’−リン酸の使用と、遅発性ジスキネジーの治療のためのピリドキサール 5’−リン酸を含むキットと、遅発性ジスキネジーの治療のための複合薬剤とが提供される。

Description

本発明は、ピリドキサール 5’−リン酸の投与を介する遅発性ジスキネジーの治療に関する。
[関連出願の相互参照]
本願は、2007年5月28日付けで出願されたカナダ特許出願公開第2,590,603号明細書に係る出願に基づく優先権と、該出願の利益とを主張し、該出願は参照により本明細書に援用される。
遅発性ジスキネジー(TD)は、主に顔面の筋肉の、一連の制御不能な動きの繰り返しにより特徴づけることができる。TDの発症は、抗精神病薬の使用と直接相関する。TDへのかかりやすさと関連する幾つかの因子は、老齢と、女性と、主要な欠損障害の存在と、抗精神病剤への曝露と、抗コリン剤/抗パーキンソン剤の使用と、錐体外路症候群の症歴とである。統合失調症の患者は通常、治療として神経遮断薬の投与を受けるが、それがTDを引き起こすことが非常に多い。TDの発症率は、神経遮断薬療法を受けた個体では、20%を超える(非特許文献1)。
TDの根本的な原因は明らかでないといわれているが、研究者らの中には、様々な神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、γ−アミノ酪酸(GABA)及びノルエピネフリンを含む)の合成におけるビタミンB6の役割がTDの8升に対して重要であり得ることを理論化する者がいる(非特許文献2)。
動物での研究は、ビタミンB6レベルが増大するにつれて、脳の5−HT(セロトニン)のレベルが増大したことを示している。ビタミンB6の欠乏症が、脳中の5−HTの濃度の低減を引き起こし得ることも知られている(非特許文献2)。ビタミンB6の補給は、十分な神経伝達物質の合成を促進し得るし、TDの発症率を低減し得る。
統合失調症薬の使用により誘発したTD患者において行われた二重盲検プラセボ対照クロスオーバー研究は、1日当たり100mg〜400mgのビタミンB6の投与が、錐体外路症候群評価尺度の下位尺度、より具体的にはパーキンソニズム及びジスキネジー運動尺度におけるスコアの改善をもたらすことを明らかにした(非特許文献3)。この研究による結論は、TDの治療のためには1日当たり300mg以上の用量でのピリドキシンの投与が必要とされるということであった。
血漿中のP5Pレベルが完全な正の相関での直線関係を示さないので、ピリドキシンの作用機序は明らかでない。ドーパミンの生成をもたらすドーパの脱炭酸と、他の神経伝達物質(γ−アミノ酪酸、セロトニン及びメラトニン)の形成とにおけるP5Pの役割は、TDの症状に関与し得ると考えられる(非特許文献3)。
ピリドキシンは消化管から吸収され、肝臓へ輸送され、酸化されてピリドキサールを形成する。ピリドキサールは、その後ピリドキサールキナーゼによりリン酸化され、ピリドキサール 5'-リン酸(P5P)を形成する(非特許文献4)。上述の障害の状態を治療するためのピリドキシンの投与は、治癒を改善することを示しているが、その効果は用量に基づき限定的であり得る。
ピリドキシンは、高用量で毒性を引き起こすことが知られており、血漿中のP5Pレベルを制限し、したがって全米科学アカデミーはピリドキシンに関する許容上限摂取量(健康な人において健康への悪影響のリスクを引き起こす可能性が低い)として100mgを推奨している(全米科学アカデミー、1998)。安全性に関して、ビタミンB6と関連する主要な毒性は、神経毒性である。ピリドキシンの投与は、血漿中の高ピリドキシンレベルを引き起こし、末梢神経障害等の毒性効果を引き起こし得る(非特許文献5)。大用量のピリドキシンレベルの経口投与後に発症する感覚性神経障害は、ピリドキシン自体の高い血中濃度に起因している。高濃度のピリドキシンは、血漿中のP5P(活性型)レベルの減少をもたらすP5Pとアポ酵素との結合の阻害を引き起こし(非特許文献6)、したがってその直接投与によりP5Pレベルの増大が実現される。
TDのピリドキシンでの治療は、ピリドキシンの毒性(すなわち、高用量のピリドキシンの投与は、毒性及び副作用を引き起こし得る)により制限されている。
典型的には、ほとんどの薬剤で、薬剤の用量を増大させることは望ましく、その薬剤をより有効にする。この用量の増大は、典型的には用量と共に増大する副作用及び毒性により、軽減される。
ピリドキサール 5’−リン酸(3−ヒドロキシ−2−メチル−5−[(ホスホノオキシ)メチル]−4−ピリジン−カルボキシアルデヒド、すなわち「P5P」)は、ピリドキシンの天然の代謝生成物であり、リン酸化反応及び酸化反応により哺乳動物の細胞において形成される。最近の評価は、P5Pが細胞中へのアデノシン三リン酸(ATP)誘発性カルシウムイオン流入を阻害することを実証した。結果は、この作用が、P2プリン受容体として知られるプリン作動性受容体の阻害に起因することを示唆する。
P5Pは、多数の方法で、例えば、ピリドキサールに対するATPの作用により、水溶液中でのピリドキサールに対するオキシ塩化リンの作用により、並びに濃リン酸でのピリドキサミンのリン酸化、及びその後の酸化により、化学的に合成することができる。
Bhoopathi and Soares-Weiser, 2006 Miodownik et al., 2000 Lerner et al., 2001 Vermaak et al., 1988 Schaumburg et al, 1983 Bassler, 1988
比較的高い濃度で与えることができ、副作用又は毒性は最小となる、TDのための治療を有することが望ましい。神経遮断薬と共に投与することができ、該神経遮断薬のTD効果を軽減する、化合物を有することも望ましい。
本発明の1つの実施の形態によれば、ピリドキサール 5’−リン酸の投与を含む、遅発性ジスキネジーを治療する方法が提供される。
1つの態様によれば、遅発性ジスキネジーは、統合失調症薬、例えば神経遮断薬の使用の結果である。
さらなる1つの態様によれば、投与は、1日当たり100mg〜4000mg、例えば1日当たり100mg〜750mg、又は1日当たり約250mgの経口投与である。
さらなる1つの態様によれば、投与は、統合失調症剤、例えば神経遮断薬と組み合わせて提供される。
本発明のさらなる1つの実施の形態によれば、遅発性ジスキネジーの治療のための薬物の調製におけるP5Pの使用が提供される。
さらなる1つの態様によれば、薬物は、100mg〜4000mgのピリドキサール 5’−リン酸、例えば250mg〜750mgのピリドキサール 5’−リン酸、又は約250mgのピリドキサール 5’−リン酸を含む。
さらなる1つの態様によれば、薬物は、統合失調症剤、例えば神経遮断薬も含む。
本発明のさらなる1つの実施の形態によれば、遅発性ジスキネジーの治療のための、ピリドキサール 5’−リン酸の使用が提供される。
さらなる1つの態様によれば、遅発性ジスキネジーは、統合失調症薬、例えば神経遮断薬での治療の結果である。
さらなる1つの態様によれば、治療は、1日当たり100mg〜4000mg、例えば1日当たり100mg〜750mg、又は1日当たり約250mgのピリドキサール 5’−リン酸の投与を含む。
さらなる1つの態様によれば、使用は、統合失調症を治療する神経遮断薬の使用をさらに含む。
本発明のさらなる1つの実施の形態によれば、キットであって、(a)ピリドキサール 5’−リン酸を含む経口投与のための医薬製剤と、(b)該調製物の投与のための取扱説明書とを含み、該取扱説明書が、調製物を遅発性ジスキネジーの治療のために患者に毎日投与すべきことを指定する、キットが提供される。
さらなる1つの態様によれば、取扱説明書は、調製物を1日当たり100mg〜4000mg、例えば1日当たり250mg〜750mg、又は1日当たり約250mgの用量範囲で投与すべきことを指定する。
本発明のさらなる1つの実施の形態によれば、ピリドキサール 5’−リン酸及び統合失調症剤を含む医薬複合物が提供される。
さらなる1つの態様によれば、統合失調症剤は神経遮断薬である。
本発明のさらなる1つの実施の形態によれば、統合失調症剤、例えば神経遮断薬の遅発性ジスキネジー効果を軽減するための、ピリドキサール 5’−リン酸の使用が提供される。
本発明者らは、驚くべきことに、ピリドキサール 5’−リン酸が、これまでにビタミンB6のために望ましくないことが知られている濃度を包含する比較的高い濃度で、安全且つ副作用が少ないことを見出した。
本発明者らは、したがってP5PがビタミンB6より耐容性(tolerable)が高く、毒性(高用量のビタミンB6で観察されるような)を引き起こす必要用量がさらに高いことを見出した。高用量のP5Pは、治療を改善するものと認められる。
低用量、又はビタミンB6の用量と等価の用量であっても、P5Pは、遅発性ジスキネジーの治療において、ビタミンB6よりも有効であることが見出された。
実施例1
ピリドキサール 5’−リン酸の腸溶性コーティング錠剤の安全性及び耐容性
絶食条件下にある健常者において、250mg、750mg、1000mg及び4000mgの単回投与による、腸溶性コーティング錠剤での、ピリドキサール 5’−リン酸の安全性及び耐容性を評価するための第1相単一施設単回投与非盲検漸増用量研究を行った。
計32人の成人健常者が、本研究用のインフォームド・コンセント用紙に署名し、臨床研究室に拘束された。これらの被験者のうち24人(各々の用量レベルにおいて、被験者6人(男性3人及び女性3人))が、投与され、本研究に参加した。これらの参加した被験者全員が、研究を完了した。被験者は、薬剤投与の少なくとも12時間前から、投与24.0時間後の採血の後まで、SFBC Anapharmの臨床研究施設に拘束された。
本研究に参加した被験者は、一般社会人であった。被験者をスクリーニングする手順は、インフォームド・コンセント、採用/除外のチェック、人口統計、医療歴、薬歴、健康診断、身長、体重、ボディ・マス・インデックス、併用薬チェック、生命徴候(バイタルサイン)測定(血圧、脈拍数、呼吸数及び口内温度)、12誘導心電図(ECG)、尿中薬物スクリーニング、尿妊娠検査(女性被験者)、血液学的検査、生化学的検査、尿検査、並びにHIV検査及び肝炎検査を含むものとした。参加した被験者全員が、採用基準及び除外基準に対して評価され、研究のために適格であると判断された。
全コホート(cohort)は、漸増する様式で順番に投与された。後のコホートは、前のコホートの臨床パートの完了後で、且つ研究依頼者及び有資格研究者による安全性データの見直し後にのみ投与された。
被験者は、1×250mg(コホート1)、3×250mg(コホート2、総用量750mg)、4×250mg(コホート3、総用量1000mg)、又は16×250mg(コホート4、総用量4000mg)の腸溶性コーティング錠剤として、研究対象の薬を単回経口投与された。
管理下での少なくとも10時間の一晩の絶食の後、被験者は、300mLの水と共に、1個、3個、4個又は16個の(250mgのP5Pを含有する)腸溶性コーティング錠剤(総用量は250mg、750mg、1000mg又は4000mg)として、薬を単回経口投与された。被験者は、プロトコルに記載されたように投与され、その後少なくとも4時間絶食した。コホート2〜コホート4の被験者は、先の用量レベルの臨床パートが完了し、研究責任者及び研究依頼者により安全性データが見直され、次の用量レベルに進むか否かの判断がなされるまで投与を受けなかった。
臨床検査(血液学的検査、生化学的検査及び尿検査)を、スクリーニング時と、研究後の手順の時と、投与の前とに、各被験者について行った。
本研究のためにバイオアベイラビリティを決定するための薬物動態パラメーターは、時間0から最後の0でない濃度の時間までの濃度時間曲線下面積(AUC0-t)と、最大実測濃度(Cmax)と、Cmaxを実測した時間(Tmax)と、排出半減期(t1/2に等しい)とであった。
P5Pは、未知の酵素活性に起因する可能性が最も高い、投与した用量と被験者において実現される血漿中のP5P濃度の変動との間の正比例の関係(表1)により、250mgを投与したときに、最適な効果をもたらした。
Figure 2010528057
全ての患者が最高用量の形態に進み、顕著な副作用、又は毒性の徴候を示した患者は一人もいなかった。したがって、P5Pは、4000mgまでの用量において、患者における耐容性が良好であることが見出された。
実施例2
P5Pでの遅発性ジスキネジーの治療
二重盲検プラセボ対照クロスオーバー研究を、神経遮断薬の使用により誘発したTD患者において行う。患者を、5つの群に分割する:対照群、ビタミンB6治療群(400mg)、低用量のP5P群(100mg)、中間用量のP5P群(250mg)、及び高用量のP5P群(750mg)。全ての用量を経口投与する。治療は毎日行う。
P5Pで治療した全ての群は、対照群又はビタミンB6治療群のいずれかと比較して、錐体外路症候群評価尺度の下位尺度、より具体的にはパーキンソニズム及びジスキネジー運動尺度においてスコアが改善した。中間用量又は高用量のP5Pで治療した群は、低用量群と比較して、有意なスコアの改善を示す。中間用量及び高用量のP5Pで治療した群は、互いに有意なスコアの差異を示さない。

Claims (31)

  1. ピリドキサール 5’−リン酸の投与を含む、遅発性ジスキネジーを治療する方法。
  2. 前記遅発性ジスキネジーが統合失調症薬の使用の結果である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記統合失調症薬が神経遮断薬である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記投与が1日当たり100mg〜4000mgの経口投与である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記投与が1日当たり100mg〜750mgの投与である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記投与が1日当たり約250mgの投与である、請求項4に記載の方法。
  7. 前記投与が統合失調症剤と組み合わせて提供される、請求項4に記載の方法。
  8. 前記統合失調症剤が神経遮断薬である、請求項7に記載の方法。
  9. 遅発性ジスキネジーの治療のための薬物の調製におけるピリドキサール 5’−リン酸の使用。
  10. 前記遅発性ジスキネジーが統合失調症薬の使用の結果である、請求項9に記載の使用。
  11. 前記統合失調症薬が神経遮断薬である、請求項10に記載の使用。
  12. 前記薬物が100mg〜4000mgのピリドキサール 5’−リン酸を含む、請求項9に記載の使用。
  13. 前記薬物が250mg〜750mgのピリドキサール 5’−リン酸を含む、請求項9に記載の使用。
  14. 前記薬物が約250mgのピリドキサール 5’−リン酸を含む、請求項12に記載の使用。
  15. 前記薬物が統合失調症剤も含む、請求項9に記載の使用。
  16. 前記統合失調症剤が神経遮断薬である、請求項15に記載の使用。
  17. 遅発性ジスキネジーの治療のための、ピリドキサール 5’−リン酸の使用。
  18. 前記遅発性ジスキネジーが統合失調症薬での治療の結果である、請求項17に記載の使用。
  19. 前記統合失調症薬が神経遮断薬である、請求項18に記載の使用。
  20. 前記治療が、1日当たり100mg〜4000mgのピリドキサール 5’−リン酸の投与を含む、請求項17に記載の使用。
  21. 前記治療が、1日当たり100mg〜750mgのピリドキサール 5’−リン酸の投与を含む、請求項20に記載の使用。
  22. 前記治療が、1日当たり約250mgのピリドキサール 5’−リン酸の投与を含む、請求項20に記載の使用。
  23. 統合失調症を治療する神経遮断薬の使用をさらに含む、請求項17に記載の使用。
  24. キットであって、
    (a)ピリドキサール 5’−リン酸を含む経口投与のための医薬製剤と、
    (b)該調製物の投与のための取扱説明書と、
    を含み、該取扱説明書が、該調製物を遅発性ジスキネジーの治療のために患者に毎日投与すべきことを指定する、キット。
  25. 前記取扱説明書が、前記調製物を1日当たり100mg〜4000mgの用量範囲で投与すべきことをさらに指定する、請求項24に記載のキット。
  26. 前記取扱説明書が、前記調製物を1日当たり250mg〜750mgの用量範囲で投与すべきことをさらに指定する、請求項24に記載のキット。
  27. 前記取扱説明書が、前記調製物を1日当たり約250mgの用量範囲で投与すべきことをさらに指定する、請求項24に記載のキット。
  28. ピリドキサール 5’−リン酸及び統合失調症剤を含む医薬複合物。
  29. 前記統合失調症剤が神経遮断薬である、請求項28に記載の医薬複合物。
  30. 統合失調症剤の遅発性ジスキネジー効果を軽減するための、ピリドキサール 5’−リン酸の使用。
  31. 前記統合失調症剤が神経遮断薬である、請求項30に記載の使用。
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