JP2010519901A - ピロリ菌に対する新規免疫グロブリン - Google Patents

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Abstract

本発明は、ピロリ菌(Helicobacter pylori、H.pylori)によって引き起こされる感染の予防、治療及び診断のための物質及び方法に関する。より詳細には、本発明は、新規の特異的な可変抗体領域、その誘導体及び完全ヒト免疫グロブリンAbba3に関する。Abba3は、ピロリ菌によって発現されるBabA抗原に特異的な活性を示し、BabAとフコシル化されたABO/ルイスb血液型抗原(Leb)の結合に関して競合する。本発明はさらに、前記免疫グロブリンの産生、それらの単離、及び例えば疾患を引き起こすピロリ菌の検出における使用の方法に関する。本発明は、免疫感作療法、すなわち、ピロリ菌株によって引き起こされる病的感染を治療及び予防するための受動ワクチン接種にも関する。

Description

本発明は、ピロリ菌(Helicobacter pylori、H.pylori)によって引き起こされる感染の予防、治療及び診断のための物質及び方法に関する。より詳細には、本発明は、ピロリ菌によって発現されるBabA抗原に特異的な活性を示す新規の特異的な可変抗体領域、その誘導体及び完全ヒト免疫グロブリンAbba3、並びに前記免疫グロブリンの産生、それらの単離、及び例えば疾患を引き起こすピロリ菌の検出における使用の方法に関する。本発明は、免疫感作療法、すなわち、ピロリ菌株によって引き起こされる病的感染を治療及び予防するための受動ワクチン接種にも関する。
ピロリ菌は、消化性潰瘍及び胃癌に進行しうる慢性胃炎を引き起こすヒト胃粘膜コロニーを形成するグラム陰性細菌である(6)。ピロリ菌は、胃粘膜への密接な接着性を与えるアドヘシンをその表面に発現し、それによって、これらの栄養要求性生物が宿主組織から栄養物を獲得するのを可能にする。BabAアドヘシンは、外膜タンパク質のパラロガスファミリーのメンバーであり(2)、上皮細胞表面に発現されるフコシル化されたABO/ルイスb血液型抗原に結合する(7、22)。
高い割合の臨床分離株がBabAを発現することが示されているので、BabAは潜在的なワクチン候補である(22、26、33)。胃腸管では免疫活性が低いため、ピロリ菌に対する能動ワクチン接種は困難である。他の問題のひとつは、ピロリ菌の組換え率が高いことである。反対に、受動免疫感作は、Abba3抗体が抗原に結合して、ピロリ菌が粘膜に接着するのを困難にするため、より有利である。
最近の研究は、BabAの発現と、消化性潰瘍及び胃癌の発症との間における有意な関連性も実証している(16、36)。現在、高度にABO/ルイスbフコシル化された糖化合物の送達による受動免疫療法の実現可能性が調査されている(18、43)。別法では、ピロリ菌に対するIgGの経口投与によって(11、25)、又はストレプトコッカス(Streptococcus)変異体に対する一本鎖可変断片(scFv)を発現するラクトバシラス(Lactobacillus)の投与によって(30)示されている通り、粘膜への接着性を妨害する抗体誘導体を経口投与するか、in situでGRAS(一般に安全と認められる)微生物によって産生させることができよう。scFvは、柔軟なペプチドリンカーによって連結された免疫グロブリンの可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)から成る遺伝子操作された抗体である。
胃の中の細菌は、それらに宿主特異的な環境条件が立ちはだかっているだけではなく、疾患進行中における粘膜のグリコシル化パターンの変化にも直面している。慢性かつ持続的な感染を確立する、ピロリ菌の驚くべき能力は、その異常に高い組換え率に起因する可能性が高い(15)。
緊密な接着性と非接着性とを切り換えるピロリ菌の能力は、炎症組織から漏出する栄養物へのアクセスをこの細菌に与えるのみでなく、この細菌を炎症性の宿主反応に暴露するものでもある(37)。
BabAは、CTリッチリーダー配列におけるフレームシフトベースの変動、遺伝子水平伝播、並びにbabB及びbabCとの遺伝子転換によって、結合の柔軟性に寄与する(4、5、40)。babB及びbabCは、N末端領域及びC末端領域がBabAに密接に関連しているが、異なった遺伝子座に位置している外膜タンパク質(OMP)である。BabAは主としてbabA遺伝子座で見出されるが、babB遺伝子座に位置しているBabBとの遺伝子転換は、より弱いBabBプロモーターの制御下にある完全長BabAか、BabBとBabAとを区別する独自領域の上流に組換え部位を有するキメラBabA/BabB遺伝子の形成をもたらす(12)。組換えによって、babA遺伝子座におけるBabBの存在がもたらされ、その後、感染したマカク及び患者におけるルイスb結合が減失することもある(12、20、40)。第3の遺伝子座であるBabCは、以前には株26695で記載されていたのみであったが、最近では、他の株でもBabAとの組換え交換に関与していることが示されている(12、20)。
Backstromら(5)は、ルイスbへのそれらの結合能を失った臨床ピロリ菌単離株のなかで、わずかな割合の微生物集団がBabB/BabAキメラを保持しており、ルイスbコーティングされた磁性ビーズをin vitroで用いたパニングによって、ルイスb結合を再構成できたことを示している。これにより、炎症性の宿主反応の際に、細菌がグリコシル化パターンの変化に応答することが可能となる。遺伝子転換は、モザイクパターンのBabAの形成をもたらすが、CBD(糖結合ドメイン)の変異は機能の減失をもたらし、それによって、感染の急性期におけるピロリ菌の生存の減失をもたらす。感染の急性期では、血液型抗原が上皮細胞で依然として高レベルで発現されている。
アカゲザルの実験的感染の終わりに、分析された株のbabA遺伝子座にbabBが独占的に存在していたことによって、抗原性の変動が宿主免疫応答を回避するのに用いられているという仮説がもたらされた(40)。患者血清中のピロリ菌抗原の抗原性は、2つの報告で試験されているが、タンパク質は2D分離の前に尿素で変性されたので、高次構造に依存した膜タンパク質を検出する可能性はかなり限定されていた(19、27)。
ポリクローナル抗BabA血清は、封入体から単離された組換えBabAを用いたウサギの免疫感作によって産生され(44)、大部分の株のBabAを認識することが示されている。これまでに、2種のBabA特異的モノクローナルscFvが記載されており、それらは、アミノ酸128から310までのBabA−J99ドメインをカバーするBabA−GST融合タンパク質を用いた、齧歯類の免疫感作によって産生されたものである(21)。分析された株の約半分しか、ウエスタンブロット分析によって陽性とならなかったが、これはおそらく、モノクローナル抗体のエピトープが、ポリクローナル血清と比較して、より限定されていたためである。加えて、BabAにおける、いかなる特定された機能的高次構造も有しない一部分のみを含有している組換えタンパク質で、記載のscFvのファージ選択が行われた。
粘膜部位を通して伝染する感染症を予防する新規のアプローチは、乳酸桿菌又は他のGRAS微生物による抗体断片のin situ送達から成る(30)。
BabAアドヘシンは、以前に同定されており、ピロリ菌(SE9602287−6)の細菌表面に局在していることが示されている。血液型結合活性はpH依存性であることが示された。また、本発明者らは、ルイスb受容体への結合親和性が高い平衡定数を示すという証拠を提示する。
ピロリ菌によって誘発される感染の免疫学的治療及び予防に、集中的な研究が向けられている。欧州特許第0484148号(Ando及びNakamura)は、哺乳動物の上部消化管疾患を治療及び/又は予防する方法であって、抗ピロリ菌ポリクローナル免疫グロブリン及び薬学的に許容される担体を含む、有効量の医薬組成物を、それを必要とする患者に経口投与するステップを含む方法を記載している。この記載は、抗生物質の投与と併用した前記治療の組合せについて詳述している。前述のポリクローナル抗体を産生する方法として、欧州特許第0484148号は、哺乳動物の血清及び乳からの抗ピロリ菌免疫グロブリンの単離及び精製について記載している。欧州特許第0484148号によれば、ピロリ菌自体は、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ又はウマの胃の中に見出されなかったが、これらの動物種は、それらがヒトで見出されるピロリ菌株と交差反応する免疫グロブリンを有するので、ピロリ菌のものに類似した抗原決定基を備えたコロニー形成微生物を有すると考えられた。欧州特許第0484148号によれば、大型哺乳動物(例えば妊娠中の雌ウシ)をピロリ菌の全細胞で免疫感作し、その後、乳又は初乳から免疫グロブリンを抽出することが好ましい。これらの免疫感作実験では、免疫グロブリンの産生を誘発するのに、NCTC株11362及び臨床分離株ピロリ菌153番が使用された。その一方、NCTC株11637は分析目的に使用された。免疫感作によって、日用量0.01〜0.1g/日の免疫グロブリン組成物が治療の成功に十分であるような規模の抗ピロリ菌力価が乳中に産生されると主張されている。しかし、主張されている0.01〜0.1g/日という間隔は、Ando及びNakamuraが提示した実験によって支持されておらず、そのような低用量で効果があるとは、これまでに臨床試験で証明されていない。実施例5及び7で実際に用いられた用量は、1g/日の桁、すなわち、示された間隔の上限の10倍である。さらに、同様な用量は他の胃腸病原体に対して有効ではないので、Ando及びNakamuraによって製造されたもののような、未特定の免疫グロブリン混合物が、主張されている用量で効果的である可能性は極めて低い。開示されている免疫グロブリンが不十分であることを、上記の記載で詳細に論じられている、抗生物質の同時投与が示している。
欧州特許第0469359号(Cordle及びSchaller)も、同様に、ホルマリン殺菌されたピロリ細菌(ATCC株26695)を用いた哺乳動物、好ましくは妊娠中の雌ウシの免疫感作について記載している。抗ピロリ菌ポリクローナル抗体を乳から単離及び精製し、最後に免疫グロブリン約0.5gの量で、毎日3回、子ブタにエサとして与えた。結果は、試験後にグラム陰性細菌に関して陽性であった生検材料の数を測定することによって評価した。グラム陰性細菌は、非免疫性の栄養物をエサとして与えられた子ブタの78%で見出されたが、いわゆる特異的抗ピロリ菌抗体を含有する栄養物をエサとして与えられた子ブタでは35%でのみ(原文通り)見出された。
本明細書の発明と同じ発明者らによる特許出願である米国特許出願公開第20040234529号は、BabAタンパク質を開示するものである。前記アドヘシン及び/又はDNAは、ピロリ菌によって誘発された感染、例えば胃炎及び酸消化性疾患に対して行われる診断並びに治療及び/又は予防に有用であり、すなわち能動ワクチン接種に有用である。彼らは、ピロリ菌によって引き起こされる消化管疾患を治療及び/又は予防するための免疫グロブリン組成物であって、ピロリ菌アドへシンに結合するルイスb抗原に対する特異的な活性を示す受動ワクチン接種用の免疫グロブリン組成物も開示している。本明細書の発明とは異なり、上記抗体は、特異的な選択されたヒト抗体ではなく、動物抗体である。さらに、米国特許出願公開第20040234529号の出願者は糞便試料での検出に言及していない。
BabAの中心部は最も不均一であり、かつ受容体結合の特異性を決定するが(4、22)、いまだにマッピングされていない糖結合ドメイン(CBD)は、機能減失なしに高率の変異を導入することができない。それにもかかわらず、南米大陸で支配的な血液型抗原であるO−ルイスbに選択的に結合する、南米の先住民から単離されたピロリ菌株(「スペシャリスト(Specialists)」株と呼ばれる)のBabAの適応は、進化の過程における微調整を示した。反対に、A/Bルイスb血液型抗原が、より均等に宿主集団で現れる大陸から単離された株は、A/Bルイスb(O−ルイスbが含まれる)に対して、より普遍的な結合能を示し、それゆえ「ジェネラリスト(Generalist)」結合体と命名された(4)。BabA配列のアラインメントを行ったが、ジェネラリスト対スペシャリストに対応するいかなる特異的なbabAドメインもマッピングできなかった。したがって、本発明者らは、受容体結合部位への特異性を有する抗体の開発を目標とし、ファージディスプレイ技法を用いて、その血清がルイスbへの競合的なBabA結合特性を表した患者から抗体を濃縮した。
様々なペプチドに対する、末梢血リンパ球由来のヒトscFvライブラリーをどのようにして産生するかは、当技術分野で既に知られている。ピロリ菌の変性された直鎖状の非天然ペプチドをどのようにして選択するかも知られている。しかし、以前のいかなる文献も、天然の変性されていない三次元のBabAポリペプチドの選択する選択法は記載していない。
ここに、本発明者らは、ピロリ菌感染患者の末梢血リンパ球から得られたヒトscFvライブラリーを提示する。同定及び選択されたBabA特異的ヒト単一鎖のひとつをヒトIgG1抗体に変換し、Abba3と命名した。Abba3 scFvは、可変結合領域を指し、これには、その誘導体が含まれる。驚いたことに、この抗体は、ピロリ菌臨床分離株の大部分に結合し、A−ルイスb又はB−ルイスb血液型糖抗原、すなわち、世界中に最も一般的に分布している「ジェネラリスト」タイプのBabAが優先的に認識する糖抗原に類似した結合特性を示した。Abba3抗体は、BabAに結合することによってピロリ菌を中和し、この細菌が粘膜に接着するのを困難にする。その結果、細菌/抗体複合体は、胃腸系から自然に消失する。胃管に存在する免疫活性は低いので、抗体検出は、抗原検出ほど有用ではない。したがって、糞便試料中のピロリ菌を検出するための、Abba3抗体を用いた検出キットが好ましい。Abba3は完全ヒトIgG1抗体であるので、それは、補体によって誘導された細菌溶解の活性化に効果的であり、したがって免疫系を活性化するのにも効果的であるという利点を有する。
したがって、本発明の目的は、受動ワクチン接種に使用するための、ピロリ菌のBabAに特異的に結合する能力について選択された抗体であるAbba3を提供することである。糞便試料中のピロリ菌抗原を検出するためのAbba3の使用も、本発明の目的である。さらに、本発明の目的は、ピロリ菌のBabAに特異的に結合する能力について、本明細書の発明に記載の方法を用いて選択された任意の抗体を提供することである。他の目的及び利点は、以下の開示及び添付されている特許請求の範囲によって、より完全に明らかとなるであろう。
病原体であるピロリ菌がヒト胃粘膜に接着するには、ピロリ菌外膜(HOP)タンパク質ファミリーに属するアドヘシンが必要である。最も詳細に特徴付けられている相互作用は、BabAアドヘシンと、糖化合物として胃腸(GI)の管壁に沿って発現されるフコシル化された血液型ABO/Leb抗原との間の相互作用である。ここで、本発明者らは、BabAタンパク質への特異性を有するヒトscFv抗体断片、とりわけルイスb抗原(Leb)との結合に関して競合するscFvクローンの同定及び選択について記述する。BabAによって媒介されたLebと細菌の結合と競合的な結合活性をその血清が示したピロリ菌感染患者を選択し、末梢血リンパ球(PBL)から単離されたRNAを用いて、ファージディスプレイscFvライブラリーを構築した。精製されたピロリ菌由来の天然BabAアドヘシンを用いてライブラリーをプロービングし、クローン(Abba3)を同定した。このクローンを完全ヒトIgG1抗体に完成させ、昆虫細胞で発現させた。Lebとの競合的結合及び高次構造依存的なBabA免疫エピトープとの結合は、天然の受容体、すなわちABH/Leb抗原に類似した結合部位を示す。Abba3抗体は、Aspholm−Hurtigら、2004年によって記載されたジェネラリスト(ABO/Leb抗原)結合特性を有するピロリ菌株に優先的に結合した。これは、ジェネラリストタイプのBabAとスペシャリストタイプのBabAとの間の構造上及び高次構造上の相違を示唆している。
BabAに結合することによってピロリ菌を中和して、この細菌が粘膜にコロニー形成することを困難にし、その結果、Abba3/BabA複合体が胃腸管から自然に消滅するAbba3抗体を本発明者らは同定した。Abba3は、非免疫原性であるという利点を有する完全ヒト抗体であり、かつIgG1アイソタイプは、免疫エフェクター機能の活性化に効果的である。Abba3 scFvは、可変結合領域を指し、これには、その誘導体が含まれる。さらに、糞便試料中のピロリ菌を検出するための、Abba3抗体及び誘導体を用いた検出キットを開示する。
BabA結合に関してELISAで分析された、個々のファージミド保持クローンによって発現されたscFv−pIII融合タンパク質を示す図である。検出は、抗pIII mAbで行った。括弧内の名前は、配列決定の後にクローンに与えられた。陰性対照である、同じファージミドベクター内にクローニングされた無関係な抗phOx scFvも、同じく検出された。 単離されたBabA−結合体の予測VHアミノ酸配列(a)及びVLアミノ酸配列(b)と、それらに最も近縁なヒト生殖系列V遺伝子との配列比較を示す図である。(a)VH鎖がそれらの生殖系列遺伝子と比較して多数の変異を有することは、親和性成熟を示している。クローン5及び6のVH配列は、FR2領域における1アミノ酸置換のみで、Abba3配列と異なっている。ダッシュは配列同一性を示し、点は配列中のギャップを指す(クローンC4のVH:IgHV3−483、IgHD−1901、IgHJ402;クローンC5のVH:IgHV1−1801、IgHD3−1002、IgHJ402)。Abba3−VLは、生殖系列遺伝子IgKV1−3901及びJセグメントIgKJ101から生じた。クローン6及びクローンC5は、同じ生殖系列及びJ−セグメント(IgKJ401)から発しているので、同じ前駆体から生じた可能性が最も高い。クローン5のVLは、IgKJ101との組換えによって、生殖系列遺伝子IgKV2−30−1から生じた。 scFv−Abba3がピロリ菌株17875/Lebには結合するが、BabA遺伝子がノックアウトされている対応株babA1A2変異株には結合しないことを示す図である。IMAC精製されたscFv−Abba3をPBS中に連続希釈し、対応株でコーティングされたELISAウェル上でインキュベートした。結合は、抗mycタグmAb(9E10)及びHRP結合抗マウスAbを用いて検出した。 ScFv−Abba3は、ピロリ菌株17875/Leb溶解物由来のBabAを認識するが(レーン1)、BabAの二重ノックアウト株babA1A2の溶解物とでは可視的なバンドがない(レーン2)ことを示す図である。株17875/Leb溶解物由来のBabAは、強度な変性条件下でさえ認識される。(レーン3〜6)。対照的に、株17875/Lebから精製されたBabAは、このタンパク質が穏やかに処理された場合にのみ認識され(レーン7)、メルカプトエタノールの添加及び熱処置の後では、エピトープが破壊されている(レーン8)。これは、細菌溶解物中の安定化タンパク質の存在を示唆する。レーン1:非還元のピロリ菌溶解物(5μlの株17875/Leb、OD1.0);レーン2:非還元の株babA1A2(5μl、OD1.0);レーン3〜レーン6:強度に還元されたピロリ菌17875/Leb溶解物(それぞれ12μl、5μl、1μl、0.2μl、OD1.0;2.5%メルカプトエタノール、3%SDS、及び96℃で15分間加熱);レーン7:非還元の、株17875/Leb由来の精製BabA(500ng);レーン8:還元された、株17875/Leb由来の精製BabA(500ng)。 IgG−Abba3及びscFv誘導体がピロリ菌上での結合に関してBabA受容体Lebと競合することを示す図である。ピロリ菌株17875/Lebを、様々な量の競合物質の存在下で、一定量の放射標識HSA−ルイスb結合体と共にインキュベートした。相対的親和性は、ピロリ菌株17875/Lebへの放射標識ルイスbの結合を50%に低減するのに必要な競合物質の量で表した(本文を参照)。抗体Abba3(47pM)の相対的親和性は、scFv Abba3(247pM)より5倍高いことが明らかになった。E1−HCVエンベロープタンパク質への特異性を有する対照抗体、及びハプテン2−フェニルオキサゾロンへの特異性を有するscFvは、Leb結合に関して競合しなかった。 Abba3−Abによるピロリ菌株17875/LebのBabA染色を示す電子顕微鏡写真を示す図である。細菌をヒト抗体と共にインキュベートし、結合画分をプロテインA標識された金で検出した。ピロリ菌株17875/Lebとの抗体Abba3−Abのインキュベーション(A、B);ピロリ菌株DMとの抗体Abba3のインキュベーション(C);ピロリ菌株17875/Lebとの無関係な抗体(抗E1 HCVエンベロープ)のインキュベーション(D)。 ELISAによる、様々なピロリ菌臨床分離株と結合する、Abba3−抗体の能力(A)を示す図である。(A)機能的BabA−発現があるかどうか、臨床ピロリ菌単離株をELISAで試験した。コーティングされた株をビオチン−Leb結合体でプロービングし、APストレプトアビジンで検出した。(B)同じコーティング条件を用いて、AP結合抗ヒト抗体で検出することによって、Abba3−IgG1結合を試験した。Abba3−IgGは、合計で、分析された株の79%(52株のうちの41株)に結合した。スペシャリスト株は↑で印をつけている。 イムノブロットで、様々なピロリ菌臨床分離株からのBabAを認識する、Abba3−抗体の能力を示す図である。プレートからピロリ菌コロニーを擦り取り、PBSで2回洗浄し、0.6のODに標準化する。SDSで可溶化した培養抽出物を37℃でインキュベートし、SDS−PAGEで分離して、ニトロセルロース膜に転写する。検出は、Abba3−IgG(6μg/ml)及びそれに続くHRP結合抗ヒトIgGを用いて行った。2つの代表的なブロットを示す。 図1のELISA及びウエスタンブロット結合データをグラフ表示する図である。ジェネラリストのルイスb結合特性を有するほとんどすべての株がAbba3抗体によって認識されたが(31株のうちの30株)、スペシャリストのルイスb結合特性を有する株の約半分(21株のうちの11株)のみが結合した。フィッシャーの正確確率検定は、p<0.0002という信頼値の統計的有意性を示す。 ELISAとイムノブロットによるAbba3抗体の結合分析を要約する表である。様々な株に対するELISA結合とイムノブロット結合との間で異なった一貫性を認めることができる。列5は、Aspholm−Hurtigら(4)による、Leb結合とA−Leb結合との間の比率を示す。2.5より大きい値を、スペシャリスト結合体として分類し、太字で表示した。(4)及びこの公開によって決定された株から得られたBabA遺伝子配列の受入番号を列6に示す。
BabAに関して血清陽性なドナーの選択
ピロリ菌に感染した36人のスウェーデン人患者から得られた血清を、125I標識されたアルブミンに多価結合したLeb(Leb結合体)がピロリ菌株17875/Leb細菌に結合するのを阻害するそれらの能力に関して試験した。ほとんどすべての患者は、低い阻害力価を示した(平均で1:50)。しかし、6種の血清は、高力価のLeb阻害を示し(1:355から1:8361)、これらを、2株のスウェーデン株(Sw7、Sw44)、1株のペルー株(P436)1株のアラスカ株(A714)1株のスペイン株(S863)1株の中国株(Ch1)及び1株の参考株J99(3)を用いた、Leb結合の阻害に関してさらに試験した。これらの血清のうち3種は、これらの株の大部分に対して高い阻害力価を示した(データは示されていない)。
V遺伝子レパートリー及びscFv−ライブラリーの産生
阻害陽性血清を有する3人の患者からのPBLからRNAを単離し、対応するcDNAを生成し、抗体V領域をコードする遺伝子の増幅に使用した。優勢なクローンの優先的増幅による偏りを避けるために、各患者からのVH領域及びVL領域をファミリー特異的プライマーで別々に増幅した。各患者からのVlカッパ領域をプールし、ファージミドベクターpSEX81にクローニングし(8)、その結果、それぞれ約7×10の独立なクローンを含有する3つのカッパVLサブライブラリーを得た。20の個別なクローンの配列決定は、完全な多様性を示した。各患者の増幅されたVH領域を、対応するVLカッパサブライブラリーにクローニングし、その結果、それぞれ約7×10の個別なクローンを有する3つの別々なscFvライブラリーを得た。ライブラリーの品質管理のために、pIIIドメインに対するmAb(41)を用いて、scFv−pIII融合タンパク質の完全長発現をウエスタンブロットで分析した。15の個別なクローンのうち6クローンがscFv−pIII融合タンパク質を発現していたので、ライブラリーの実際のサイズは、それぞれ3×106の機能的クローンを含むものと推定された。
特異的な結合体についてのパニング
ヘルパーファージと共に過剰感染させることによって、3通りのライブラリープールに由来するファージ粒子を産生し、BabAコーティングされたイムノチューブ(immunotube)で3ラウンドのパニングにかけた。BabA特異的な結合体の増加をモニターするために、これらのファージをBSAコーティングされたイムノチューブでの選択にもかけた。BSAでブロックされたのみのイムノチューブから溶出されたファージに対する、BabAコーティングされたイムノチューブから溶出されたファージの比率によって測定される濃縮係数は、パニングの第2ラウンドでは55であり、パニングの第3ラウンドでは2381であることが示された。パニングの第3ラウンドの後に得られた単一のクローンをscFv−gIII融合タンパク質として発現させ、BabAに結合するものを得るために、ELISAによってスクリーニングした。分析された24クローンのうち、14クローンは、BabAに特異的に結合することが明らかになった。図1は、ファージミドで発現された単一クローンのスクリーニングELISAアッセイを示す。
配列分析は、ひとつのクローンの優勢な(6倍)出現、及び同様なV領域の組合せを示し、それゆえ、これをAbba3(抗babA)と命名した(図2)。IMGTデータベースに対するAbba3−VH領域のスクリーニングによって、それが、DセグメントIgHD2−1501及びJセグメントIgHJ403との生殖系列遺伝子IgHV3−483の組換えによって生成されたことが判明した。他の代表的な結合体のVH−領域は、それらが異なった生殖系列遺伝子から生じたか、又は異なったDセグメント若しくはJセグメントと組換えが起こったものなので、異なったB細胞前駆体から生じたものであった(図2の説明を参照)。Abba3 VL鎖は、JセグメントIgKJ101とのVL生殖系列遺伝子IgGKV1D−3901の組換えによって生じた。同様に、他の結合体のVL領域は、異なったVLセグメント及びJセグメントから組換えが起こったものなので、異なったB細胞前駆体から生じたものであった。
固定された株17875/Lebでも、パニングの第2ラウンドから得られたファージをパニングし、BabAリガンド、すなわち通常のトリエチルアミン緩衝液の代わりにLebを用いてアフィニティー溶出し、その結果、Abba3クローンの排他的な選択を得た(データは示されていない)。
Abba3の結合特異性
優勢なscFv Abba3を原核細胞発現ベクターにサブクローニングし、c−mycに対するモノクローナル抗体での検出及びIMAC精製を可能にした(13、14)。scFv−Abba3が細菌表面のBabAを認識できるかどうか試験するために、固定されたピロリ菌を用いたELISA結合アッセイを行った。Abba3−scFvの連続希釈は、ピロリ菌株17875/Lebには結合するが、対応する陰性対照株DM、すなわち機能的BabA遺伝子(BabA2)だけでなく、転写されないBabA遺伝子(BabA1)もノックアウトされている株(22)には結合しないことを示した(図3)。イムノブロット分析は、Abba3−scFvが、細菌溶解物中の予測された分子量のバンドと、株17875/Lebから精製されたタンパク質とを認識したので、Abba3−scFvの特異性をさらに立証した(図4)。興味深いことに、記載されているルイスb結合特性(22)と同様に、精製されたBabAタンパク質が穏和な条件下で処理されていた場合にのみ特異的認識が起こり、還元剤での処理及び96℃への加熱は、Abba3のエピトープを破壊した(図4、レーン8)。これは、強度の還元及び変性条件でさえ、ウエスタンブロットにおけるscFvの結合を消滅させなかった、ピロリ菌17875/Leb溶解物からのBabAの認識と対照的である。これはおそらく、BabAと、精製後のタンパク質調製物には存在しない他の安定化タンパク質との間の複合体形成に起因する可能性がある。BabAのC末端領域には複数のN−グリコシル化部位(N−X−S/T)が位置しているので、細菌溶解物中の二重バンドの出現は、異なったグリコシル化パターンに起因する可能性がある。
安定性、結合活性及びより優れた取り扱いの容易さを得るために、他に記載されている発現ベクターを用いて、scFvを完全ヒトIgGに変換した(24)。Abba3抗体を昆虫細胞内で産生させたところ、ELISAプレート上でコーティングされた細菌への無制限な結合を示し、これは複数の融解サイクルを経ても減失しなかった(データは示されていない)。ルイスbとの競合的結合があるかどうか試験するために、Abba3−scFv及びAbba3−抗体を連続希釈し、一定量の放射標識ルイスbの存在下でピロリ菌株17875/Lebと共にインキュベートした。ルイスb結合をその最大値の半分に低減するのに十分な、scFv及びIgG抗体の濃度は、それぞれ0.25μM及び47pMであると測定された。無関係のscFv(ハプテン2−フェニルオキサゾロンに対して産生されたもの)(31)又は組換え産生された無関係なアイソタイプ一致ヒトモノクローナル抗体(HCVエンベロープタンパク質E1に対して産生されたもの(23))を用いた場合には、ルイスb結合の阻害は観察されなかった(図5)。ピロリ菌株17875/Leb上でのAbba3−抗体のインキュベーションは、電子顕微鏡検査における細菌外膜上のBabAの染色を示すことができたが、対応するBabAノックアウト株DMとのインキュベーションは示さなかった。追加の陰性対照であるアイソタイプ一致ヒト抗体は、BabAを発現するピロリ菌株17875/Lebでいかなる染色も示さなかった(図6)。
ピロリ菌単離株に対する反応性
世界中の臨床ピロリ菌株の間での、BabAにおけるAbba3免疫エピトープの優勢について試験するために、本発明者らは、代表的な株を用いた完全なシリーズのELISA及びイムノブロット試験を行った。Abba3分析には、機能的なBabAタンパク質を発現するこれらのピロリ菌株のみを考慮した。それゆえ、本発明者らは、株が血液型抗原に結合する能力に関して、ELISA結合アッセイでそれらを試験した(図7a)。同じELISA条件を用いて、同じ株をAbba3結合に関して試験した(図7b)。イムノブロット分析は、「穏やかなプロトコール」に従って、すなわち、SDS−PAGE分離の前に、還元条件を用いず、かつ低温によって処理されたピロリ菌全細胞抽出物を使用することによって行った(22)(図8)。表1は、使用された臨床分離株の結合特性、すなわち、Lebリガンド及びAbba3−抗体への結合能を要約する。加えて、対応するbabA遺伝子の受入番号を示す。Abba3抗体は、上記シリーズのABO/Leb抗原に結合するピロリ菌株((4)によってジェネラリスト(Generalist)と定義されている)からのBabAを最も良く認識するが、Abba3抗体は、スペシャリスト(specialist)株(スペシャリスト)からのBabAを、より低い効率で認識することが判明した(図9)。Abba3−Abは、ジェネラリスト株の大部分(31株のうち30株)に結合したが(日本株J507は例外であった)、21株のスペシャリスト株のうちの11株のみが、Abba3−Abによって認識された(Sw60、Sw103、P302、P304、P308、P326、P330、P445、P449、P454、P455)。
Abba3抗体が、スペシャリストと比較して、ジェネラリストに優先的に結合するのは、それぞれA−ルイス及びB−ルイス血液型糖抗原の、より嵩高なGal及びGalNAc末端基を反映する、抗体のパラトープに起因する可能性がある。(Henningら、2004年)に記載された抗体と比較して、Abba3抗体の結合がより優勢であるのは、受容体の競合的な結合特性、及びその結果であるより保存されたエピトープ認識に起因する可能性がある。高親和性抗体の選択の成功は、特定の抗体結合特性を有する適した患者血清の徹底的なスクリーニングに基づくと本発明者らは考える。
さらに、固定された抗原がその受容体への結合を保持する条件下でファージ選択を行った。この条件は、固定されたBabAの、ビオチン化ルイスbとの結合をイムノチューブ内で試験することによって確かめられる(データは示されていない)。ピロリ菌感染患者由来の免疫レパートリーの利用及び救出のためにファージディスプレイを適用することは、特定の特徴を有するモノクローナル抗体を選択するのに奏功することが立証された。ドナーはすべてスウェーデン人であったので、ジェネラリスト株に感染していた可能性が高く、抗体可変領域はファージディスプレイライブラリーの構築用に再編されているが、機能の再構築の尤度は明らかに十分であった。
免疫活性は胃腸管では限定的なので、受動免疫感作が好ましい。Abba3抗体はBabAに結合して、ピロリ菌が胃粘膜に結合するのを防止する。
抗体が動物由来である場合、アレルギー反応により、受動免疫感作に関連した合併症がときどき起こる。Abba3抗体はヒト抗体であるので、副作用の危険性は低減している。
胃腸管の免疫活性は限定的であるため、抗体の検出によってピロリ菌感染を診断する可能性が制限されている。この理由で、検出は、糞便試料中で行うことが好ましい。
粘膜部位を通して伝染する感染症を予防する新規のアプローチは、乳酸桿菌又は他のGRAS微生物による抗体断片のin situ送達から成る(30)。したがって、Abba3及びBabAに対する特異性を有するその断片を使用して、粘膜上でのピロリ菌のコロニー形成を予防することができる。
さらに、ますます増加している証拠によって、冠動脈疾患の発病機序におけるピロリ菌の関与が示唆されている(29)。非ヒト抗体と比較して、Abba3抗体は、免疫原性反応を誘発しない完全にヒト由来のものであり、IgG1型は、補体によって誘導される細菌溶解の活性化に効果的であり、したがって、免疫系のエフェクター機能を活性化するのに効果的であるという利点を有する。
(実施例1)
BabA−抗体に関して陽性なドナーの選択
ピロリ菌に感染した36人のスウェーデン人患者から得た血清を、ピロリ菌株CCUG17875に結合した放射標識ルイスb−HSA(17875/Leb)の結合を阻害するそれらの能力に関して試験した。ペレットの回収をより容易にするために、0.1のODを有する細菌株17875/Lebを、Lebへの結合能を失っている細菌株17874で1:60に希釈した。ブロッキング緩衝液(PBS、0.05%トゥイーン20、1%BSA)中に血清の連続希釈を行い、放射標識ルイスb−HSA結合体(0.01ng/μl)50μlを最終容積500μlに添加した。細菌500μlを添加した後、チューブをRT(室温)で17時間、穏やかに混合した。試料を遠心処理し(13000g、13分間)、その後、ペレット及び上清の放射能を測定し、相互に相関させて、結合体及び遊離結合体を表すものとした。試験した血清の相対力価は、いかなる血清も存在しない状態での結合体の結合によって測定した結合を最大値の半分に低減するのに十分な濃度であった。最も高い力価を有する6種の血清を、7株のピロリ菌臨床分離株(Sw7、Sw44、P436、A714、S863、Ch1(本明細書に記載)及びJ99(3))への放射標識ルイスb抗原結合の阻害に関してさらに試験した。
(実施例2)
ヒト可変領域のcDNA合成及びPCR増幅
10mlの患者血液の末梢血単核細胞(PBMC)をフィコール勾配で単離し、標準プロトコール(Qiagen社、ドイツヒルデン(Hilden)所在)を用いて全RNAを抽出した。第1鎖cDNAは、オリゴ−d(T)プライマー(Amersham Biosciences社、英国バッキンガム(Buckingham)所在)を用いて合成し、cDNA 1μl、200μM dNTP、10×反応緩衝液5μl、ポリメラーゼ(BD−Advantage2、BD Biosciences Clontech社、米国カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto)所在)1U、及び適切なファミリーベースのセンスプライマー及びアンチセンスプライマー(500nM)を含有する反応液50μl中で、36サイクル(94℃での変性15秒、65℃でのアニーリング30秒、72℃で30秒)を用いて、ヒト可変免疫グロブリン遺伝子をPCR増幅した。センスプライマー及びアンチセンスプライマーは他に記載されている(31、42)。可変カッパ軽鎖の増幅用には、センスプライマーが、MluIクローニング部位を導入するために、TACAGGATCCACGCGTA(配列番号1)という配列によって5’末端で伸長しており、アンチセンスプライマーが、NotI部位を導入するために、TGACAAGCTTGCGGCCGCG(配列番号2)という配列によって伸長している。可変重鎖増幅用には、センスプライマーがGAATAGGCCATGGCG(NcoI)(配列番号3)という配列によって伸長し、アンチセンスプライマーがCAGTCAAGCTT(HindIII部位)(配列番号4)という配列によって伸長している。アンチセンスプライマーは、それぞれ、CH1及び定常カッパ領域の5’末端とアニールする。すべての増幅は、ファミリー特異的なセンスプライマーそれぞれに関して独立に行った。PCR産物をプールし、ゲル抽出し(Qiagen社)、可変軽鎖用にはMluI/NotI(New England Biolabs社)で消化し、可変重鎖のクローニング用にはNcoI/HindIIIで消化した。消化の後、断片を再度ゲル精製し、−20℃で保存した。
(実施例3)
scFvライブラリーの構築
ファージミドベクターpSEX81−phOx(8)を、CIP存在下でMluI/NotIで消化し、0.7%アガロースゲル中で分離し、抽出した(Qiagen社、ドイツ所在)。消化されたベクター100ngを、精製された可変軽鎖10ngと、1Uのリガーゼ(Roche社)を用いて、最終容積40μl中、16℃で終夜、連結した。プラスミドDNAをエタノールで沈殿させ、大腸菌(E.coli)株XL1−blue(Stratagene社)にエレクトロポレーションで導入し、細菌を1mlのSOC培地(0.1Mグルコースを含有するLB)中で1h培養して回復させた。その後、細菌をSOBGATプレート(0.1Mグルコース、100μg/mlアンピシリン、12.5μg/mlテトラサイクリン)上にプレーティングし、37℃で終夜インキュベートした。クローンを擦り取り、ベクターDNAを陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(Macherey & Nagel社、ドイツ所在)で単離した。可変重鎖のクローニングには、HindIII/NcoI(New England Biolabs社)でベクターDNAを消化し、適切に消化されたVH鎖を連結し、XL−1 blueを形質転換させて、上述の通り培養した。独立したクローンを擦り取り、25%グリセリン中で80℃に保存し、最終scFv−ライブラリーとした。
(実施例4)
ファージディスプレイ選択
ファージに結合した抗体は、本質的にはSchierら、1996年による記載の通りにライブラリーから回収した(39)。パニングは、精製されたBabA(スウェーデンウメオ(Umea)大学口腔生物学科)5μgで終夜、コーティングされたMaxisorb(登録商標)イムノチューブ(Immunotube)(Nunc社、ドイツヴィースバーデン(Wiebaden)所在)中で、4℃で行い、2%MPBS(2%(w/v)低脂肪乾燥スキムミルクを含有するPBS)でブロッキングした。BSAでコーティングされたチューブを陰性対照として用いた。選択には、4%の乳(w/v)を含有する等容積のPBSを添加して、ファージ(1012コロニー形成単位)をブロッキングし、チューブに添加し、定常的な回転の下、室温(RT)で2hインキュベートした。その後、この溶液を廃棄し、パニングの第1ラウンドにおいて、PBSでチューブを10回洗浄した。パニングのラウンドを進行させながら、PBS/0.1%トゥイーン20で10回ボルテックスすることによって、洗浄のストリンジェンシーを増大させた。結合したファージは、5分間、穏やかに撹拌しながらトリエチルアミン(0.1M)1mlを添加し、Tris−HCl、pH7.4(1M)0.5mlで中和して溶出した。中和された混合物を用いて、2YT(12.5μg/mlテトラサイクリン)中、37℃で培養された20mlの指数期の大腸菌XL1−blueを感染させた。振盪させずに37℃で15分間インキュベートした後、細菌を45分間振盪させ、SOBGAT−プレート(上記参照)上にプレーティングし、37℃で終夜インキュベートした。記述した通りに細菌を採取し、0.4のODで、10mlのLB培地(アンピシリン100μg/ml、0.1Mグルコース)に接種することによって、以降のパニングラウンド用のファージ産生を行った。本質的にはKochら、2000年(28)の記載通りに、ヘルパーファージゲノム又はファージミドゲノムを含有する溶出ファージの力価を、それぞれLBカナマイシン(70μg/ml)プレート又はLBアンピシリン(100μg/ml)プレート上でのcfuの力価測定によって決定した。選択手順中における特異的な結合体の濃縮は、BabAコーティングされたイムノチューブから溶出されたファージの数を、BSAコーティングされたイムノチューブから溶出されたファージの数で割ることによって決定した。
(実施例5)
scFv−gIII融合タンパク質を用いたELISAスクリーニング
BabA特異的なscFvは、ファージミドベクター中にコードされているpIII−タンパク質の発現を利用することによって、改変されてはいるが本質的にMersmannら、1998年(32)による記載の通りにスクリーニングした。簡潔には、対数成長期にある細菌におけるscFv−gIII融合タンパク質の産生を、IPTG(100μM)によって30℃で16h誘導した。細菌を遠心処理し、ペレットを氷上のスフェロプラスト溶液(50mM Tris−HCl pH8.0、20%ショ糖、1mM EDTA)中で20分間インキュベートし、その後、4℃で、20000gで45分間遠心処理した。周辺質抽出物に相当する上清を等容積の4%MPBSで希釈し、ELISAアッセイで使用した。コーティング緩衝液(Na2CO3−NaHCO3、pH9.6)中、4℃において、ELISAウェル(Nunc社製マイクロタイタープレート、ドイツ所在)を200ngのBabAでコーティングした。2%MPBSでブロッキングした後、周辺質抽出物を添加し、RTで4hインキュベートした。pIIIに特異的なマウスモノクローナル抗体(41);MobiTec社、ドイツ所在)と共にRTで1hインキュベートし、その後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ウサギ抗マウス抗体(Dako社、デンマーク所在)と共にRTで1hインキュベートすることによって、抗原に結合したscFv−pIII融合タンパク質を検出した。発色は、TMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、Merck社、ドイツ所在)で、基質緩衝液(100mM酢酸ナトリウム/クエン酸、pH4.9/H2O2、0.004%)中で行った。陰性結合対照として、2−フェニルオキサゾロン(抗phOx)(31)scFvを、同一のファージミドベクターで発現させ、phOx結合BSAコーティングされたELISAを用いてこのscFvの発現を分析した。
(実施例6)
原核細胞発現ベクターpOPE101へのサブクローニング
ファージミドベクターpSEX81由来のscFv発現カセット全体を、NcoI部位及びNotI部位で、原核細胞発現ベクターpOPE101(Genbank番号Y14585)にサブクローニングした(このクローンは、pOPE101−Abba3と命名され、ブダペスト条約の下、DSMZ−ドイツ微生物菌株保存機構(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH、ドイツブラウンシュバイク(Braunschweig)所在)に受託され、受託番号DSM19101及び受託日2007年2月28日を付与された)。C末端mycタグ及び(His)6タグによって、それぞれ、検出及びIMAC精製が可能となる。細胞膜周辺腔からの精製は、Breitlingら、2001年(9)による記載の通りに行った。
(実施例7)
イムノブロット
scFv−ライブラリーの品質管理には、IPTGで誘導された単一コロニー細菌から得られた周辺質抽出物10μlを12%SDS NuPage(登録商標)ビストリスゲル(Invitrogen社、米国カリフォルニア州所在)で分離した。分離されたタンパク質を、2%MPBS(2%低脂肪乾燥スキムミルクを含有するPBS)でブロッキングされたImmobilon(商標)PVDF膜(Millipore社、米国マサチューセッツ州ベッドフォード(Bredford)所在)に転写し、抗gIII mAb(MobiTec社、ドイツゲッティンゲン(Gottingen)所在)と、それに続く、AP結合ウサギ抗マウス(Fab)2Ab(Sigma−Aldrich社、ドイツ)及び基質とを用いて可視化した。機能的結合分析には、BabA又は再懸濁されてOD0.6にPBSで調整された変動的な量のピロリ細菌を、1容積のSDS−試料緩衝液(62mM Tris−HCl、pH6.8、25%グリセロール、2%SDS、ブロモフェノールブルー)中に可溶化し、37℃で10分間加熱するか(Ilverら、1998年に従った)、1容積のメルカプトエタノール(5%)(又は追加の3%SDS)を含有するSDS−試料緩衝液中に再懸濁し、96℃で加熱した。試料をSDS−PAGEにかけ、分離されたタンパク質をHybond(商標)−ECLニトロセルロース膜(Amersham Biosciences社)に転写した。この膜を2%M−PBSでブロッキングし、IMAC精製されたscFv−Abba3(PBS中に希釈されている)又はAbba3−Ab(T−PBS 0.05%中に6μg/ml)を添加して、4℃で終夜置いた。結合したscFvの検出は、ビオチン化されたマウス抗myc mAb 9E10と共に膜をインキュベートし、その後、ストレプトアビジン−HRP結合体と共にインキュベートすることによって行った。結合したAbba3−抗体は、T−PBS 0.05%中に1:3000に希釈されたHRP結合抗ヒトIgG Ab(Dako社、デンマーク所在)と共にインキュベートすることによって検出した。各抗体インキュベーションステップの後に、T−PBS 0.05%で膜を4回洗浄した。可視化は、製造業者のプロトコールに従って、ECL plusウエスタンブロッティング検出システムキット(Amersham Biosciences社)で行った。
(実施例8)
完全ヒト抗体の産生
可変領域は、ヒトIgG1重鎖及びヒトカッパ鎖の定常領域をそれぞれ保持する昆虫細胞発現ベクターであるpMThIgG1−V(24)にクローニングした。PCR増幅は、VL鎖用のプライマーである
Figure 2010519901

と、VH鎖用である
Figure 2010519901

とを用いて行った。PCR増幅は、鋳型として100ngのファージミドベクター、それぞれ25pmolのVL及びVHプライマー対、2μM MgCl、0.2mM dNTP、並びに10UのTaqポリメラーゼ(Promega社)を用いて行った。94℃で2分間の初期変性ステップの後に、以下の通り、すなわち94℃で15秒間、62℃で30秒、72℃で30秒を32サイクル行い、最終の1伸長ステップを72℃で5分間行った。PCR産物をQiagen社製PCR精製キット(ドイツヒルデン所在)で精製し、適切な制限酵素で消化した後、クローニングした。抗体を安定して分泌するS2細胞系(Invitrogen社、米国所在)を、以前の記載の通りに確立し、プロテインGカラム(Amersham Pharmacia社、スウェーデンウプサラ(Uppsala)所在)を用いて、培地中の抗体を精製及び濃縮した。精製された抗体の純度及び機能性は、それぞれクマシー染色及びELISAによって分析した。
(実施例9)
抗体断片を発現する乳酸菌の産生
Abba3抗体の可変領域(VH及びVL)に由来するscFvコード遺伝子は、センスプライマーとして、
5’ClaI−ABBA3(TTTGCATCGATCAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTG)(配列番号9)というプライマーと、アンチセンスプライマーとして、
Figure 2010519901

とを用いて、それぞれベクターpLP502−1及びpLP502−2にクローニングするために、PCRによって増幅した。このシャトルベクターは、大腸菌(Escherichia coli)及びラクトバシラス両方の複製開始点と、それらのクローニング部位の上流にラクトバシラス特異的な調節配列及びプロモーターとを含有しているので、大腸菌におけるクローニング及び増殖と、ラクトバシラスにおける発現とを可能にする。ベクターpLP502−1では、ラクトバシラス膜タンパク質遺伝子であるprtpへの融合体として、scFv発現カセットがクローニングされており、これが細胞表面でのscFvカセットの発現を媒介している。ベクターpLP502−2は、scFv配列後の終止シグナルの存在により、細菌細胞外へのscFvの分泌を可能にしている。ScFv発現は、同時発現されるmyc−タグに対するモノクローナル抗体とAP結合抗マウス検出用抗体とを用いて、イムノブロッティングによって、又はカセイ菌(Lactobacillus casei)(ATCC293)形質転換株の可溶性ELISAアッセイによって分析した。
(実施例10)
改変乳酸菌を用いた経口ワクチンの産生及び使用
実施例9の修正乳酸菌株を、当業界で知られている通りに培養、採取、及び凍結乾燥し、その後、1グラムあたりの少なくとも10〜10CFUの範囲の量で、標準的な硬ゼラチンカプセル内に充填する。そのようなカプセルを、ピロリ菌に感染していることが判っている患者群に1週間与える。この期間の後に、標準法又は本明細書に記載の方法を用いて、ピロリ菌感染に関して患者を再分析し、数人の患者で感染が消失又は軽減していることを示す。
(実施例11)
ピロリ菌株上でのELISA結合
ピロリ菌の臨床分離株に結合する能力に関して、抗体−Abba3を試験した。株は、10%ウシ血液及び1%Iso Vitox(Svenska LABFAB社、スウェーデンユスネ(Ljusne)所在)を補足したブルセラ寒天培地上で、10%CO2及び5%O2の下に37℃で40〜45時間培養した。細菌を擦り取り、PBS中に懸濁し、4000gで遠心処理し、ペレットをPBS中に再懸濁することによって、2回洗浄した。光学濃度を0.6のOD600nmに調整し、100μlを用いて96ウェルMaxisorb(登録商標)ELISAプレート(Nunc社、デンマーク所在)の個々のウェルをコーティングした。4℃で終夜インキュベートした後、2%M−PBSでプレートをブロッキングし、T−PBS(PBS、0.05%トゥイーン20)中に希釈された抗体を添加して、4℃で終夜置いた。抗体の検出は、AP結合抗ヒトIgG(Dako社、デンマーク所在)をRTで1時間インキュベートし、その後、1mg/mlで4−ニトロフェニルリン酸(Sigma−Aldrich社、ドイツ所在)を添加することによって行った。40分間の発色の後、吸光度を405nmで測定した。ルイスb結合アッセイには、ピロリ菌コーティングされたELISAプレートのウェルに、ビオチン化されたHSAルイスb複合糖質(Isosep.社、スウェーデントゥリンゲ(Tullinge)所在)を添加した(0.115μg/ml、4℃で終夜)。結合した複合糖質は、AP結合ストレプトアビジンの1:2000希釈液と共にRTで45分間インキュベートすることによって検出した。ウェルをT−PBS 0.05%で4回洗浄し、その後、1mg/mlの4−ニトロフェニルリン酸(Sigma−Aldrich社、ドイツ所在)を添加した10分後に、405nmの色の吸光を測定した。
(実施例12)
BabAのヌクレオチド配列分析
株を上述の通りに培養し、コロニーをプレートから擦り取り、洗浄し、PBS中にOD1の光学濃度に再懸濁した。この懸濁液のうち1mlを用いて、製造業者の指示に従って(Qiagen社、ドイツ所在)ゲノムDNAを単離した。鋳型である4μlの細菌ゲノムDNA、及び順方向プライマーbabA2−271(4)(5’−ATCCAAAAAGGAGAAAAAACATGAAA−3’)(配列番号12)/babA2−リーダー(5’−GCTTTTAGTTTCCACTTTGAG−3’)(配列番号13)のいずれかひとつと、逆方向プライマーJ11R(5’−TGTGTGCCACTAGTGCCAGC−3’)(配列番号14)又はA26R(5’−TTGCTCCACATAGGCGCA−3’)(配列番号15)のひとつとの組合せを使用し、第1ヌクレオチドからヌクレオチド約1200までをカバーするBabA断片をPCRによって増幅した。PCR断片をT−ベクター中に連結し、T7プロモーター特異的プライマー及びSP6プロモーター特異的プライマーで配列決定した。
(実施例13)
配列決定及びDNA分析
ヌクレオチド配列は、BigDye(登録商標)ターミネーターサイクル配列決定キット(Applied Biosystems社、米国カリフォルニア州フォスターシティ所在)を用いてSangerのジデオキシ鎖終止法で決定するか、又はMWG−Biotech AG社、ドイツエーバースベルク(Ebersberg)所在のサービスを用いて決定した。ヒトV−D−JセグメントのIgG生殖系列配列は、ウェブサイトhttp://imgt.cines.frを用いて決定した。構築及び配列分析は、ベクターNTI10プログラム(Invitrogen社、米国カリフォルニア州所在)を用いて行った。
(実施例14)
事前免疫電子顕微鏡(p−iEM)
ピロリ菌株17875/Leb及びDM(BabA2及びBabAの二重ノックアウト)を上述の通り培養し、プレートから擦り取り、再懸濁し、PBS中に1のOD600nmに調整した。2%ウシ血清アルブミン(BSA画分V)を含む0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液(caco)中に、各株のアリコートを15分間再懸濁した。その後、細菌を遠心処理し、0.1M caco+0.1%BSA中に(1+1)に希釈された1次ヒト抗体Abba3又は同じアイソタイプの無関係なヒト抗C型肝炎ウイルス抗体(HCV)と共に再懸濁し、60分間インキュベートした。インキュベーションの後、0.1M caco+0.1%BSA中で細菌を2回洗浄し、10nm金粒子(Amersham社、英国所在)に結合したプロテインAを含有する同一の緩衝液中に再懸濁し、45分間インキュベートした。インキュベーションは、グルタルアルデヒドを最終濃度1%まで添加することによって終了させた。この試料を4℃で終夜固定した。その後、細菌を遠心処理してペレットにし、他(17)に記載されている通り、従来の電子顕微鏡用に包埋し、Tecnai(商標)10透過電子顕微鏡(Fei社、オランダ所在)で80kVで検査し、Megaview IIIカメラ(AnalySiS社、ドイツミュンスター所在)によってデジタル画像を収集した。
(実施例15)
直接免疫電子顕微鏡法(d−iEM)
包埋の前に、ペレットの少量のアリコートを取り、蒸留水中に再懸濁した。少量の液滴(3μl)をホルムバールコーティングされたグリッド上に置き、5分間付着させた。過剰な水を濾紙で除去し、グリッドを5分間空気乾燥させ、Tecnai(商標)10電子顕微鏡で100kVで検査し、画像を写真フィルムに記録した。
(実施例16)
ピロリ菌又はBabAを検出するためのin vitro診断使用のためのイムノアッセイ
in vitro診断使用には、糞便試料中の病原因子のひとつとして、ピロリ菌又はBabAを定量測定するための酵素イムノアッセイとしてAbba3を使用することができる。この試験では、サンドイッチ型の方法で、特異的抗体によってピロリ菌を捕捉する。すなわち、ポリクローナル抗ヘリコバクター(Helicobacter)血清をマイクロウェルプレートのウェルに固定し、ブロッキング及びPBSでの洗浄ステップの後に、当技術分野で知られている通り、検査する糞便試料の懸濁液及び対照をインキュベーション用に常温でピペッティングする。結合した細菌の検出は、酵素(例えばペルオキシダーゼ)に結合したAbba3抗体を室温でマイクロウェルプレートに添加し、その後、さらなる洗浄ステップを行い、基質を添加して発色させることによって行う。消衰は、試料中に存在しているピロリ菌の濃度に比例する。
(実施例17)
試験キットの生産
イムノアッセイ技法を用いたキットは、抗原と対応する抗体、例えばAbba3との間の特異的な結合作用に依存しており、標本中の病原体、この場合は糞便試料中のピロリ菌の存在(又は不在)を判定するための信頼できる方法であることが立証されている。
イムノクロマトグラフィー検査(ICT)装置として知られているクラスの装置は、抗体に結合した標識と組み合わせたイムノアッセイ技法を使用するもので、現在、特定の分析物の存在又は不在を判定するための、迅速かつ信頼できる現地試験に一般的に用いられている。この標識は、次に特定の限定された領域内に共に集められる抗体/抗原分子に結合した場合、ヒトの裸眼によって、又は使用される標識のタイプに応じた走査装置によって容易に検出できるようになる。一般的には、この標識は、ラテックス、金若しくは炭素の粒子、放射性粒子、磁性粒子であるか、特定の確定された領域にそれが固定又は誘引されることを可能にする他の物理的若しくは化学的特性を有するものでありうる。サンドイッチ技法を用いたICT装置は、使用するのがとりわけ容易である。この技法を用いる場合、アッセイする特定の抗原に結合する標識抗体を、特定の抗原を含有していると思われる試料と混合する。試料中に抗原が存在している場合には、標識抗体が抗原と結合して、標識−抗体−抗原複合体を形成させる。試験ゾーンに不動に固定され、かつ上記特異的抗原にも結合する2次抗体が、試験ゾーンで、この標識−抗体−抗原複合体に結合する。陽性の結果は、試験ゾーンに標識が蓄積することによって可視化される。そのような装置は、標準的製品であり、容易に利用可能であり、経済的であり、かつ未熟練作業員によっても使用できる。
(実施例18)
AbbaVH及びAbbaVLの配列
本明細書には、AbbaVH(配列番号16)及びAbbaVL(配列番号17)のヌクレオチド配列、並びにAbbaVH(配列番号18)及びAbbaVL(配列番号19)のアミノ酸配列を示す配列表が添付されている。
(参考文献)
Figure 2010519901

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Claims (6)

  1. BabAタンパク質への特異性を有するヒトscFv抗体断片、とりわけルイスb抗原(Leb)との結合に関して競合するscFvクローンを同定及び選択する方法であって、
    a)BabAによって媒介されたルイスb抗原と細菌の結合と競合する結合活性をその血清が示すピロリ菌(H.pylori)感染患者を選択するステップと、
    b)阻害陽性血清を有する患者の末梢血リンパ球から単離されたRNAを単離して、抗体V領域をコードする遺伝子の増幅用に対応するcDNAを生成することによりファージディスプレイscFvライブラリーを構築するステップと、
    c)ピロリ菌由来の精製された天然BabAアドヘシンで前記ライブラリーをプロービングするステップと、
    d)ピロリ菌のBabAに特異的に結合するクローンを同定するステップと、
    e)前記クローンを完成させて、BabAとの結合によってピロリ菌を中和する完全ヒトIgG1抗体を形成するステップと
    を含む方法。
  2. 粘膜部位を通して伝染するヒト感染症を予防する方法であって、
    a)ピロリ菌によって発現されたBabA抗原に特異的な活性を示す抗体断片又はその誘導体を発現する微生物を用意するステップと、
    b)経口投与を介して前記微生物を胃領域に送達して、粘膜上でのピロリ菌のコロニー形成を予防するステップと
    を含む方法。
  3. ピロリ菌によって発現されたBabA抗原に特異的な活性を示す精製及び単離された特異的な可変抗体結合領域又はその誘導体であって、前記誘導体が完全ヒト免疫グロブリンである可変抗体結合領域又はその誘導体。
  4. アミノ酸配列(配列番号18)を有するAbba3重鎖可変領域と、アミノ酸配列(配列番号19)を有する軽鎖可変領域とを含む、請求項3に記載の、ピロリ菌によって発現されたBabA抗原に特異的な活性を示す精製及び単離された特異的な可変抗体結合領域又はその誘導体。
  5. DSM19101として寄託されている精製及び単離された抗体Abba3。
  6. 糞便試料中のピロリ菌を検出するための検出キットであって、Abba3を含む抗体と結合した標識と組み合わせたイムノアッセイ技法を含むキット。
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