JP2010517528A - 推定サイトカイニン受容体およびその使用方法 - Google Patents

推定サイトカイニン受容体およびその使用方法 Download PDF

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Abstract

植物における少なくとも1つの形質の発現を調整する方法を提供し、該方法は、植物による少なくとも1つのポリペプチドの発現を調整するステップを含み、
該ポリペプチドは、
i)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸1からアミノ酸7、アミノ酸9からアミノ酸230、アミノ酸1からアミノ酸58、アミノ酸77からアミノ酸485、アミノ酸59からアミノ酸76、アミノ酸150からアミノ酸191、アミノ酸231からアミノ酸405、およびアミノ酸406からアミノ酸438のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択されるかまたはその相同体において同等位置にあり、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含む、ポリペプチド、
iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有し、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含む、ポリペプチド、および
iv)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列から成る、ポリペプチド
から成る群から選択され、
ポリペプチドの発現の調整は、植物における少なくとも1つの形質の発現を調整する。

Description

本発明は、草高、植物バイオマス、頂芽の発達、分枝、稔性、開花、葉面積、老化、種子発芽、種子収量、種子重量、茎の発達、穀粒収量、分げつ数、花分裂組織の発達、および根の発達等の植物における形質の発現の調整に関する。本発明はまた、植物における形質の発現の調整のための方法および材料に関する。
背景
従来の植物育種技術は、農作物の改良をもたらすことが知られている。選抜育種および交配等のこれらの技術は、種々の性質の子孫を生成するために、異なる遺伝的背景を有する植物に由来する遺伝子の交配を伴う。子孫は、望ましい形質を発現する植物を得るように選抜され、有害形質は、複数回の戻し交配または自殖によって除去され、望ましい性質を有する子孫を最終的に産生する。従来の育種方法は、種々の作物の性質を改善または改良するのに有用であることが分かっているが、これらの方法は、何百または何千もの遺伝子の交配を伴い、その中で、わずかな遺伝子のみが性質または形質の改良のために選抜される。さらに、これらの方法は、望ましい形質を得るために、子孫の大きい母集団から多数の系統を選抜し、数世代にわたってそれを戻し交配するため、何年もの交配を要する。従来の育種方法を使用して、他の形質に影響を及ぼすことなく1つの形質に対して選抜を行うことが通常困難であるため、一部の望ましくない形質も植物中に現れる可能性がある。
従来の植物選抜における別の欠点は、育種が性的適合性を有する植物に限定され、したがって、従来の育種方法は通常、特定の種の遺伝資源の遺伝的多様性の欠如によって制限されることである。さらに、従来の育種方法は、耐病性の増加等の多くのポリジーン形質を改良することに対して、どちらかと言えば効果がないことが分かっている。
近年、作物収量は大幅に向上したが、世界的需要を満たすために、主要食用作物の大幅な改良を実現する必要性が依然として存在する。作物における単一の導入遺伝子の発現に関する最近の植物バイオテクノロジーの進歩は、除草剤抵抗性、害虫抵抗性、およびウイルス抵抗性等の新しい植物形質の商業的導入の成功をもたらしてきた。しかしながら、重要な価値を有する単一の遺伝子形質のリストは比較的小さく、したがって、作物における単一の導入遺伝子の発現は、作物改良に対して実用的ではない。
近年、植物形態における効果を特徴付けるように、植物におけるDNA配列を化学的に修飾することが知られている種々の植物種におけるある遺伝子を単離する試みが行われてきた。既知の一方法は、DNAのメチル化を調節することが知られている鍵酵素である、S−アデノシル−L−ホモシステインヒドロラーゼ(SAHH)遺伝子の単離を伴う。植物においてある形態学的変化は認められたが、どの表現型形質も、異なる植物における作物収量の改善において有意な利点を有することを示さなかった。SAHH遺伝子と下流分子との間の相互作用の複雑性によって、DNAメチル化および遺伝子発現が関与する機構は、十分に解明されておらず、したがって、作物改良のための既存の方法は限られている。
したがって、上記の欠点の1つ以上を克服するか、または少なくとも改善する新しい方法を提供する必要がある。作物改良ならびに別の商業的および科学的用途に有用な形質を有する植物を産生するための新しい方法を提供する必要がある。
概要
本発明者らは、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達経路に関与する、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを同定した。サイトカイニンは、特異的な生化学的および生理学的作用を提供するために、応答性植物細胞において作用する植物ホルモン(phytohormone)(または植物ホルモン(plant hormone))である。植物ホルモンは、最初に、植物成長および発達に重要な細胞性応答を刺激するために、ホルモンシグナルの伝達を開始する特異的受容体によって認識される。ホルモン受容体が、顕花植物からヒトに至る多くの真核生物において十分に研究されている一方で、植物ホルモン受容体の詳細な理解は不十分であった。植物ホルモン結合タンパク質は、そのような受容体の候補を提供するのではないかと見られている。
本発明者らは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの発現が減少した場合、単子葉植物種および双子葉植物種の両方における植物バイオマスおよび作物収量の著しい増加を確認してきた。対照的に、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの発現の増加は、一部の植物において早咲きをもたらした。したがって、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの発現は、作物改良ならびに別の商業的および科学的用途に重要な望ましい形質を得るために操作することができる。
したがって、本発明の第1の態様によると、植物における少なくとも1つの形質の発現を調整する方法が提供され、方法は、植物による少なくとも1つのポリペプチドの発現を調整するステップを含み、
ポリペプチドは、
i)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸1からアミノ酸7、アミノ酸9からアミノ酸230、アミノ酸1からアミノ酸58、アミノ酸77からアミノ酸485、アミノ酸59からアミノ酸76、アミノ酸150からアミノ酸191、アミノ酸231からアミノ酸405、およびアミノ酸406からアミノ酸438のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択されるかまたはその相同体において同等位置にあり、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含む、ポリペプチド、
iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有し、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含む、ポリペプチド、および
iv)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列から成る、ポリペプチド、
から成る群から選択され、
ポリペプチドの発現の調整は、植物における少なくとも1つの形質の発現を調整する。
一実施形態において、植物によるポリペプチドの発現は、ポリペプチドの発現を調整する少なくとも1つのポリヌクレオチドを植物の1つ以上の細胞に導入することによって調整される。
別の実施形態において、上記に定義された方法が提供され、ポリペプチドの発現を調整するステップは、ポリペプチドの発現を減少させるステップを含む。植物によるポリペプチドの発現を減少させるステップは、ポリペプチドの発現を減少させるポリヌクレオチドを、植物の1つ以上の細胞に導入するステップを含み得る。一実施形態において、ポリヌクレオチドは、
i)SEQ ID NO:15に示される核酸配列を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
ii)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から選択される、少なくとも15個の連続した核酸残基
を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列に相補的なポリヌクレオチドからの、少なくとも15個の連続した核酸残基
を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
iv)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から成るポリヌクレオチドに相補的な核酸配列から選択される、少なくとも9個の連続した核酸残基
を含む核酸配列を含む、RNA干渉ポリヌクレオチド、および
v)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から成る、アンチセンスポリヌクレオチド、
から成る群から選択される。
一実施形態において、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有し、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができるアミノ酸配列を、ポリペプチドが含む。別の実施形態において、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列相同性を有し、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができるアミノ酸配列を、ポリペプチドが含む。さらに別の実施形態において、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列相同性を有し、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができるアミノ酸配列を、ポリペプチドが含む。さらに別の実施形態において、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列相同性を有し、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができるアミノ酸配列を、ポリペプチドが含む。
一実施形態において、上記に定義された方法が提供され、ポリペプチドの発現を調整するステップは、ポリペプチドの発現を増加させるステップを含む。植物によるポリペプチドの発現を増加させるステップは、ポリペプチドの発現を増加させるポリヌクレオチドを、植物の1つ以上の細胞に導入するステップを含み得る。一実施形態において、ポリヌクレオチドは、
i)SEQ ID NO:1のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド、
ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸1からアミノ酸7、アミノ酸9からアミノ酸230、アミノ酸1からアミノ酸58、アミノ酸77からアミノ酸485、アミノ酸59からアミノ酸76、アミノ酸150からアミノ酸191、アミノ酸231からアミノ酸405、およびアミノ酸406からアミノ酸438のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択されるかまたはその相同体において同等位置にあり、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、および
iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有し、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、
から成る群から選択される。
ある実施形態において、ii)においてポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある実施形態において、ii)においてポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、細胞外サイトカイニン結合ドメインを含む。
一実施形態において、植物における少なくとも1つの形質は、草高、植物バイオマス、頂芽の発達、分枝、稔性、開花、葉面積、老化、種子発芽、種子収量、種子重量、茎の発達、穀粒収量、分げつ数、花分裂組織の発達、および根の発達のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択される。
一実施形態において、上記に定義されるポリペプチドの発現の減少は、ポリペプチドの発現が調整されていない同一種類の植物と比較した場合の、植物における分枝の増加、種子収量の増加、植物バイオマスの増加、穀粒収量の増加、分げつ数の増加、葉面積の増加、種子発芽の遅延、頂芽優勢の減少、および遅咲き、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、植物における形質の発現の変化をもたらす。
別の実施形態において、ポリペプチドの発現の増加は、ポリペプチドの発現が調整されていない同一種類の植物と比較した場合の植物の早咲き、矮性、葉数の減少、早期老化、早期種子発芽、ロゼット葉形成の遅延および減少、実生根の成長の増加、またはこれらの組み合わせのうちのいずれか1つ以上から成る群から選択される、少なくとも1つの形質を調整する。
植物バイオマスの増加は、葉菜の収量および品質の向上に有用である可能性がある。分枝およびバイオマス蓄積の増加はまた、まぐさおよび種々の穀物の産生にも有用である可能性がある。植物バイオマスの増加は、生物燃料源として使用することができる、豊富なセルロース系エタノール(バイオエタノール等)をもたらす可能性がある。
植物バイオマスの増加はまた、植物肥料のより効率的な施肥を促進すると期待されている。したがって、植物バイオマスの増加は、藻の異常発生等の種々の環境問題を引き起こし得る、肥料の流出等の環境問題を防止する可能性がある。
さらに、ポリペプチドの発現の増加は、サトウキビ等の植物の早咲きをもたらす可能性がある。これは、植物育種家が従来の植物育種を実施するのに役立ち得るため、市販品種に有用である可能性がある。同様に、ポリペプチドの発現の増加の結果としての矮性表現型はまた、観賞植物の生成に望ましい可能性がある。
第2の態様において、
i)SEQ ID NO:15に示される核酸配列を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
ii)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から選択される、少なくとも15個の連続した核酸残基
を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列に相補的なポリヌクレオチドからの、少なくとも15個の連続した核酸残基
を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
iv)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から選択される、少なくとも9個の連続した核酸残基
を含む、RNA干渉ポリヌクレオチド、および
v)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から成る、アンチセンスポリヌクレオチドであって、
植物における少なくとも1つの形質を調整するポリペプチドの発現を減少させることができる、ポリヌクレオチド、または
vi)i)からv)のうちのいずれか1つに相補的なポリヌクレオチド、または
vii)i)からv)のうちのいずれか1つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、ポリヌクレオチド、
から成る群から選択される、
単離されたポリヌクレオチドが提供される。
第3の態様によると、
i)SEQ ID NO:1のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド、
ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸1からアミノ酸7、アミノ酸9からアミノ酸230、アミノ酸1からアミノ酸58、アミノ酸77からアミノ酸485、アミノ酸59からアミノ酸76、アミノ酸150からアミノ酸191、アミノ酸231からアミノ酸405、およびアミノ酸406からアミノ酸438のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択されるかまたはその相同体において同等位置にあり、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、
iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有し、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、および
iv)SEQ ID NO:1のポリペプチドをコードする核酸配列から成る、ポリヌクレオチドであって、
植物における少なくとも1つの形質を調整するポリペプチドの発現を増加させることができる、ポリヌクレオチド、または
v)i)またはiv)のうちのいずれか1つに相補的なポリヌクレオチド、または
vi)i)またはiv)のうちのいずれか1つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、ポリヌクレオチド、
から成る群から選択される、
単離されたポリヌクレオチドが提供される。
第4の態様によると、第2または第3の態様に従ったポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。
第5の態様によると、第2または第3の態様に従ったポリヌクレオチド、または第4の態様に従ったベクターで形質転換した宿主細胞が提供される。
第6の態様によると、第5の態様に従った宿主細胞を含む植物が提供される。
第7の態様によると、
a)ポリペプチドの発現を調整するポリヌクレオチドを提供するステップであって、ポリペプチドは、
i)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸1からアミノ酸7、アミノ酸9からアミノ酸230、アミノ酸1からアミノ酸58、アミノ酸77からアミノ酸485、アミノ酸59からアミノ酸76、アミノ酸150からアミノ酸191、アミノ酸231からアミノ酸405、およびアミノ酸406からアミノ酸438のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択されるかまたはその相同体において同等位置にあり、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含む、ポリペプチド、
iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有し、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含むポリペプチド、および
iv)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列から成る、ポリペプチド
から成る群から選択される、ステップと、
b)ステップ(a)のポリヌクレオチドで植物、植物部位、または植物細胞を形質転換するステップと、
c)形質転換した植物、植物部位、または植物細胞を成長させて、遺伝子導入植物を産生するステップと、
を含む、遺伝子導入植物を産生する方法が提供される。
一実施形態において、第7の態様のステップ(a)におけるポリヌクレオチドは、
i)SEQ ID NO:15に示される核酸配列を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
ii)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から選択される、少なくとも15個の連続した核酸残基
を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列に相補的なポリヌクレオチドからの、少なくとも15個の連続した核酸残基
を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、および
iv)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から選択される、少なくとも9個の連続した核酸残基
を含む核酸配列を含む、RNA干渉ポリヌクレオチド、および
v)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から成る、アンチセンスポリヌクレオチドであって、
植物における少なくとも1つの形質を調整するポリペプチドの発現を調整することができる、ポリヌクレオチド、または
vi)i)からv)のうちのいずれか1つに相補的なポリヌクレオチド、または
vii)i)からv)のうちのいずれか1つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、ポリヌクレオチド、
から成る群から選択される、
単離されたポリヌクレオチドを含む。
別の実施形態において、第7の態様のステップ(a)におけるポリヌクレオチドは、
i)SEQ ID NO:1のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド、
ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸1からアミノ酸7、アミノ酸9からアミノ酸230、アミノ酸1からアミノ酸58、アミノ酸77からアミノ酸485、アミノ酸59からアミノ酸76、アミノ酸150からアミノ酸191、アミノ酸231からアミノ酸405、およびアミノ酸406からアミノ酸438のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択されるかまたはその相同体において同等位置にあり、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、
iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有し、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、および
iv)SEQ ID NO:1のポリペプチドをコードする核酸配列から成る、ポリヌクレオチドであって、
植物における少なくとも1つの形質を調整するポリペプチドの発現を増加させることができる、ポリヌクレオチド、または
v)i)またはiv)のうちのいずれか1つに相補的なポリヌクレオチド、または
vi)i)またはiv)のうちのいずれか1つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、ポリヌクレオチド、
から成る群から選択される、
単離されたポリヌクレオチドを含む。
第7の態様に従った方法の一実施形態において、ステップ(c)における成長は、形質転換した植物、植物部位、または植物細胞の成長を可能にし得る条件下で、形質転換した植物、植物部位、または植物細胞を培養することによる。ある実施形態において、植物部位は、根、茎、葉、花芽、花、シュート、種子、および枝のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択される。
一実施形態において、植物は単子葉植物である、第6の態様に従った植物が提供される。別の実施形態において、植物は双子葉植物である、第6の態様に従った植物が提供される。
ある実施形態において、植物は、オートムギ、オオムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、イネ、ソルガム、キビ、アマランス、アシ、スウィートグラス、トウ、竹、まぐさ、ダイアモンドグラス、および芝草のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択される。
第8の態様によると、第7の態様に従った方法によって産生される場合の遺伝子導入植物が提供され、植物は、オートムギ、オオムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、イネ、ソルガム、キビ、アマランス、アシ、スウィートグラス、トウ、竹、まぐさ、ダイアモンドグラス、および芝草のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択される。
一実施形態において、遺伝子導入植物は、稔性植物を産生することができる。
第9の態様によると、上記に定義される植物の部位または種子が提供される。部位は、根、茎、葉、花芽、花、シュート、種子、および枝のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択され得る。
第10の態様によると、上記に定義される植物、または上記に定義される部位もしくは種子から再生された、植物またはその繁殖性材料が提供される。
第11の態様によると、植物バイオマス生産のための、上記に定義されるポリヌクレオチドで形質転換した植物の使用法が提供される。ある実施形態において、植物は、オートムギ、オオムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、イネ、ソルガム、キビ、アマランス、アシ、スウィートグラス、トウ、竹、まぐさ、ダイアモンドグラス、および芝草のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択される。
第12の態様によると、植物バイオマス生産は、生物燃料生産のためである、第11の態様に従った使用法が提供される。
第13の態様によると、
i)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸1からアミノ酸7、アミノ酸9からアミノ酸230、アミノ酸1からアミノ酸58、アミノ酸77からアミノ酸485、アミノ酸59からアミノ酸76、アミノ酸150からアミノ酸191、アミノ酸231からアミノ酸405、およびアミノ酸406からアミノ酸438のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択されるか、またはその相同体において同等位置にあり、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含む、ポリペプチド、
iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有し、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含む、ポリペプチド、および
iv)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列から成る、ポリペプチド、
から成る群から選択される単離されたポリペプチドが提供され、ポリペプチドの発現の調整は、植物における少なくとも1つの形質の発現を調整する。
定義
本明細書で使用される以下の用語は、以下に示される意味を有するものとする。
本明細書で使用される「連続した」という用語は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドのそれぞれに存在する、連続的または途切れのない一連のアミノ酸残基または核酸残基を意味する。例えば、「連続したアミノ酸残基」は、少なくとも約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約12、約15、約20、約25、約30、約40、約50、約75、約100、約150、約200、約250、約300、約350、もしくは約400、約450、または約485個等のアミノ酸の連続したアミノ酸配列を含むと理解される。同様に、「連続した核酸残基」は、少なくとも約12、約15、約18、約21、約24、約27、約30、約36、約45、約60、約75、約90、約120、約150、約225、約300、約450、約600、約750、約900、約1050、約1200、約1350、約1450、約1550、約1650、または約1775個等のヌクレオチドの連続した核酸配列を含むと理解される。
「サイトカイニンシグナル伝達」という用語は、細胞膜を通じて細胞外シグナルを伝播して細胞内シグナルとさせる分子を意味する。次いで、このシグナルは、細胞性応答を刺激することができる。サイトカイニンシグナル伝達プロセスに関与するポリペプチド分子は、典型的には、受容体および非受容体タンパク質キナーゼ、受容体および非受容体タンパク質ホスファターゼ、ならびに転写因子である。サイトカイニンシグナル伝達活性は、植物において発現されるサイトカイニンレベルを測定することによって、またはサイトカイニンとサイトカイニンシグナル伝達プロセスに関与するポリペプチド分子との間の結合活性を測定することによって測定することができる。
核酸に関連して使用される場合の「ハイブリダイゼーション」という用語は、2つの一本鎖ポリヌクレオチドが、非共有結合して安定した二本鎖ポリヌクレオチドを形成するプロセスを意味する。「ハイブリダイゼーション」という用語はまた、三本鎖ハイブリダイゼーションを意味する場合もある。得られる二本鎖または三本鎖ポリヌクレオチドは、「ハイブリッド」である。安定したハイブリッドを形成するポリヌクレオチド集団の比率は、本明細書では「ハイブリダイゼーション度」と呼ばれる。ハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーション強度(すなわち、核酸間の会合の強度)は、以下にさらに詳細に考察されるような、核酸間の相補性の度合い、関与する条件のストリンジェンシー、形成されたハイブリッドの熱融点(T)、および核酸内のG:C比等の因子によって決定される。
本明細書で使用される「プライマー」という用語は、プライマー伸長生成物の合成が開始される条件下で、すなわち4つのヌクレオチド三リン酸およびポリメラーゼが適切なバッファ(典型的には、pHバッファおよび補助因子を含む)中に存在し、かつ適当な温度において、核酸テンプレートにアニールした場合にDNA合成の開始点として作用することができる、ヌクレオチドのポリマーを意味する。本発明の増幅ステップにおいて使用されるプライマーは、標的配列に完全に相補的または実質的に相補的であり得る。
「形質」および「表現型」という用語は、同じ意味で使用され、任意の性質、特に1つの植物を別の植物と区別する性質を包含する。例示的な形質には、草高、植物バイオマス、頂芽の発達の程度、分枝の程度、植物、種子または花粉の稔性、開花数または開花開始時、葉面積、老化開始時、種子発芽開始時、種子収量、全種子重量または個々の種子重量、茎の発達の程度、穀粒収量、分げつ数、花分裂組織の発達の程度、および根の発達の程度のうちのいずれか1つ以上が含まれる。
組織または植物に関連して使用される場合の「トランスジェニック」という用語は、それぞれ、導入遺伝子を包含する1つ以上の細胞を含む組織または植物か、またはそのゲノムが、導入遺伝子の導入によって変化した組織または植物を意味する。トランスジェニック細胞、組織、および植物は、本明細書に記載される方法等のヒトの介入による、核酸を含む「導入遺伝子」(DNAまたはRNA)の標的細胞への導入、または導入遺伝子の標的細胞の染色体への組み込みを含むいくつかの方法によって産生され得る。
「実質的に」という用語は、「完全に」という意味を除外しておらず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを全く含まなくてもよい。必要な場合は、「実質的に」という用語は、本発明の定義から省略され得る。
別途特定しない限り、「含んでいる(comprising)」および「含む(comprise)」、ならびにその文法上の変化形は、「オープン」または「包括的」語義を表し、それらが、記載された要素を含むだけではなく、さらなる記載されていない要素の包含も可能にするよう意図される。
本明細書で使用される、製剤の成分の濃度との関連における「約」という用語は、典型的には、記載された値の+/−5%、より典型的には、記載された値の+/−4%、より典型的には、記載された値の+/−3%、より典型的には、記載された値の+/−2%、さらに典型的には、記載された値の+/−1%、さらに典型的には、記載された値の+/−0.5%を意味する。
本開示全体にわたって、ある実施形態は、範囲の形式で開示される場合がある。範囲の形式での記載は、便宜および簡潔さを目的としているに過ぎず、開示された範囲の範囲に対する固定的な制限と解釈されるべきではないことは、理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、全ての可能な部分範囲、およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1〜6までの範囲の記載は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6等の部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数字、例えば、1、2、3、4、5、および6を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の広さにかかわらず適用される。
ポリペプチド中のアミノ酸残基またはポリヌクレオチド中の核酸残基を説明する範囲との関連で、範囲の記載は、範囲の最初および最後の数値を含むことは理解されるべきである。これに関連してさらに、範囲の記載は、範囲内に入る個々のアミノ酸または核酸残基を包含するよう意図されていない。例えば、範囲の記載、例えば、「アミノ酸1からアミノ酸7」は、1位、2位、3位、4位、5位、6位、および7位におけるアミノ酸に及び、それらを含むが、その範囲内にあるいずれか1つ以上の個々のアミノ酸、例えば、アミノ酸1のみ、アミノ酸2のみ、アミノ酸1および2等を意味しないアミノ酸配列を指すとみなされるべきである。
添付図面は、開示された実施形態を図示し、開示された実施形態の原理を説明する上で役立つ。しかしながら、図面は、本発明の制限の定義としてではなく、説明目的のみに設計されていることは理解されるべきである。
等温滴定熱量計、HOG1局在化、および発現解析の結果を示す図である。A)サイトカイニン結合アッセイは、ITCを用いて実行した。上部のパネルは、2μMの精製されたTAP−HOG1を含むサンプル細胞への0.1μMのゼアチンの注入から得られたベースラインドリフトに補正された生の熱データを示す。下部のパネルは、HOG1に添加されるゼアチンのモル比に対して熱ピーク面積プロットすることによって作成された結合等温線を示す。差し込み図は、遺伝子導入植物からの精製されたTAP−HOG1タンパク質(60kDa)を示す。B)ゼアチンに対するのと同様に実行した、尿素由来の合成サイトカイニン、チジアズロンを用いたアッセイ。C)HOG1−サイトカイニン結合は、2:1の化学量論で吸熱性を有する。KD値は、試験された3つのサイトカイニン、すなわち、ゼアチン、ベンジルアデニン(BA)、および2−イソペンテニルアデニン(2iP)に対して、16.9nMから20.6nMに及んだ。アデニンおよびNAD+に対するKD値はそれぞれ、2.1μMおよび39.5μMであり、HOG1のサイトカイニン特異性を示した。D)GFP−HOG1融合タンパク質を発現するトランスジェニック系統は、融合タンパク質がその機能を保持することを示す35S:HOG1系統と同一の表現型を示した。E)GFP−HOG1融合タンパク質は、原形質膜に局在した。生きた実生根細胞の画像化は、505から530nmバンドパスフィルタセットと組み合わせた488nmアルゴンレーザーを有する共焦点レーザー顕微鏡(Zeiss CLSM 510)を使用して実行した。差し込み図は、単一細胞において、タンパク質が原形質膜に局在することを示す。F)HOG1の発現の定量リアルタイムPCR分析は、遺伝子が、検査された全植物部位において構成的に発現されることを示した。 定量リアルタイムPCRによる、シロイヌナズナの過剰発現およびアンチセンス抑制系統におけるHOG1の発現解析を示す図である。A)8つの独立した過剰発現系統は、野生型と比較して、HOG1転写レベルにおいて3から20倍の増加を示した。B)およびC)リアルタイムPCR分析のために使用された過剰発現系統の表現型は、転写レベルが変化するにもかかわらず同型であった。D)HOG1アンチセンス抑制系統は、野生型と比較して、転写物の発現量において2から10倍の減少を示した。E)およびF)発現解析に使用された8つのアンチセンス系統の開花時期表現型は、HOG1転写物の抑制レベルと直接関係していた。G)、H)、I)、およびJ)OE系統6および2つのWT植物の3つの個々の苗は、4週間にわたって1日おきにゼアチン(0.01μM)を噴霧され、外から与えられたサイトカイニンが、WTと同一齢までOE系統における開花を遅延させることができるかどうかを見た。G)ゼアチンを噴霧されたOE植物は、対照OE系統(ゼアチンなし)と比較して抽薹の遅延を示したが、I)対照OE系統は、4ロゼット葉期において抽薹する。H)ゼアチンを噴霧されたOE植物は、WT植物とほぼ同一齢の6から7葉期に到達して初めて抽薹を示し、外から与えられたサイトカイニンによるOE系統の救出を示す。J)OE系統の対照固体(ゼアチン噴霧なし)は、完全に開花し、この期におけるそれらの最大限度まで成長した。 HOG1過剰発現(OE)、アンチセンス抑制(AS)、および野生型(WT)植物の表現型を示す図である。A)HOG1 OE系統は、WTがまだ開花を開始していない時に、4枚のロゼット葉のみを成長させた時に開花を示す。B)HOG1のAS系統は、WTが、花序を十分に成長させた時に遅咲き(抽薹時における14葉期)を示した。C)OE、WT、およびAS系統の成熟時の表現型の比較。WTと比較して、発芽後30日目に、OE系統の全体的な成長遅延およびAS系統の大量分枝表現型が見られた。D)WTおよびOE系統と比較した、AS系統におけるロゼット葉の大きさの増加。E)長角果の大きさは、WTのものと比較してAS系統において増加したが、OE系統においては有意に減少した(スケールバー=1cm)。F)オーキシンインドール酪酸(0.2μg/ml)の存在下での、種々の濃度の外因性サイトカイニン(ゼアチン)へのカルスの反応。AS系統からのカルスは、3週間の培養後に、強いサイトカイニン非感受性表現型、すなわち、細胞増殖の弱刺激および不定芽誘導の不足を示した。OE系統からのカルスは、WTのものと同様に反応し、すなわち、両方は、通常のカルス成長および不定芽誘導を示し、HOG1が、サイトカイニンの正の調節因子であることを示した。G)OE、WT、およびAS系統のおけるサイトカイニンレベルの定量化。内在性サイトカイニンは、イソペンテニルアデノシンおよびゼアチンリボシド検出キット(Sigma)を使用して、モノクローナル抗体iPAおよびZRを用いた免疫測定法によって定量化した。所与の値は、3つの独立した抽出からの3つの複製の平均±標準偏差を表す。測定されたサイトカイニンは、イソペンテニルアデニン(iP)、イソペンテニルアデノシン(iPA)、ゼアチン(Z)、およびゼアチンリボシド(ZR)である。H)種々の系統からの、また精製されたTAP−HOG1タンパク質による、アデノシル ホモシステインヒドロラーゼ(SAHH)活性の分光光度アッセイ。WT、OE、およびAS系統からの粗タンパク質抽出物においては、活性の有意差は認められなかったが、精製されたTAP−HOG1タンパク質は、測定可能なSAHH活性を欠いている。 選択されたサイトカイニン応答性遺伝子およびHOG1−AHP1の相互作用の定量リアルタイムPCR分析を示す図である。苗は、3つ独立したアンチセンス抑制(AS1、AS8、AS21)および過剰発現(OE1,OE12、OE18)系統から、いくつかの時間間隔(5分、15分、30分、および1時間)で、0μM、0.01μM、0.1μM、1μM、または5μMのベンジルアデニン(BA)でのパルス処理前後に、RNA抽出のために採取した。BAの添加は、KNAT1およびSTM転写物の用量依存的な増加をもたらした。AS系統が、KNAT1およびSTM(メリステム機能に関与するホメオボックス遺伝子)の上方制御を示した一方で、OE系統は、外因性BAの非存在下で、これらの2つの遺伝子の下方制御を示した。1時間後に5μMのBAによって、KNAT1およびSTMの発現は2倍未満の変化を示し、WTのものと比較して有意差ではない。B)ARR4およびARR6(サイトカイニンによって誘導されるA型応答調節因子)もまた、発現量において同様の傾向を示す。C)TAP−HOG1複合体の精製。35SrTAP−HOG1植物(レーン1)からの、またProtAおよびCBPタグに対する親和性カラムを使用した精製後に抽出された全タンパク質は、N末端配列決定によってAHP1であると確認された約24kDaバンド(アスタリスク)(レーン2)の同定をもたらした。ProtAタグに対する抗体でプローブされた全タンパク質のウエスタンブロットは、TAP−HOG1に対応する71kDaバンドの存在を示した。D)組み換えAHP1精製のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法。AHP1は、大腸菌における6Hisおよびチオレドキシンタグで発現した。レーン1は、全細胞溶解物を有し、タグを有する精製されたAHP1は、レーン2にある。E)TAP−HOG1およびAHP1の相互作用は、ITCを用いて実行した。E)の上部のパネルは、2μMの精製されたTAP−HOG1を含むサンプル細胞への0.1μMの精製されたAHP1の注入から得られたベースラインドリフトに補正された生の熱データを示す。下部のパネルは、HOG1に添加されるAHP1のモル比に対して熱ピーク面積をプロットすることによって作成された結合等温線を示す。TAP−HOG1およびAHP1の結合は、23.8nMのKD値で吸熱性を有する。 HOG1を介するサイトカイニンシグナル伝達経路の略図である。サイトカイニンシグナルは、原形質膜においてHOG1によって感受される。HOG1二量体は、AHP1を通じてシグナル伝達カスケードを開始し、B型ARR(例えば、ARR1、ARR2)およびA型ARR(例えば、ARR4、ARR5)と相互作用し得る。 相同体を有するHOG1の多重配列アラインメントを示す図である。HOG1(SEQ ID NO:1)の推定アミノ酸配列は、ペチュニア(SEQ ID NO:13)、タバコ(SEQ ID NO:3)、オリザサティバ(SEQ ID NO:5)、トリチカムエスチバム(SEQ ID NO:7)、およびヒト(SEQ ID NO:26)からのSAHH配列と整列させた。SAHHの2つの保存特性は、ボールド体である。SAHHの第2の特性において、ジヌクレオチド結合ドメインを表す3個の保存グリシン残基は、下線が引かれている。7(HOG1の1〜7位)アミノ酸のN末端伸張および41アミノ酸(HOG1の150〜191位)の付加的伸張、ならびにヘリックス膜貫通領域(HOG1の59〜76位)は、イタリック体である。 HOG1の野生型(WT)、過剰発現(OE)、およびアンチセンス抑制(AS)系統へのサイトカイニンの外からの添加の効果を示す図である。OE系統6およびAS系統12の3つの個々の苗に、4週間にわたって1日おきにゼアチンまたはキネチン(0.01μM)を噴霧した。2つのWT植物を、比較のために同様に処理した。A)およびC)ゼアチンおよびキネチンを噴霧されたOE系統6の3つの個体は、成長の4葉期において対照OE系統と比較して、いかなる抽薹も示さなかった。E)4葉期において、対照OE系統は抽薹した。B)およびD)ゼアチンおよびキネチンを噴霧されたOE系統6の3つの個体はそれぞれ6〜7葉期に到達して初めて抽薹を示す。これは、外から与えられたサイトカイニンによるOE系統の部分的な救出を示す。F)OE系統6の対照個体は、この期において成熟している。G)、H)、I)、J)、およびK)サイトカイニン噴霧を受けたAS系統は、対照AS系統と比較して表現型においていかなる有意差も示さなかった。これは、過剰発現HOG1が、内在性サイトカイニン含有量(表1に示されるような)減少、したがって、表現型の減少をもたらすことを示す(パネルA、B、E、およびFは、パネルG、H、I、およびJとして主要な図2中にあり、これらは、比較を簡単にするためのみにここに含まれることに留意されたい)。 トランスジェニックシロイヌナズナ植物体を示す図である。(a)HOG1の過剰発現(OE)を有するシロイヌナズナの苗は、抽薹の促進を示したが、HOG1のアンチセンス抑制(AS)は、約3週目において、野生型(WT)対照と比較して遅咲きをもたらした。(b)野生型(WT)と比較した、OE(0E8、OE12)およびAS(AS8、AS21)の2つの独立したトランスジェニック系統それぞれの成熟した植物を、発芽後30日目に写真撮影した。AS系統の花序は大量に分枝し、バイオマスは、OEおよびWT植物と比較して有意に高かった。(c)葉面積、(d)AS系統の長角果の長さおよび種子(パネルfに挿入)は、OEおよびWTのものよりも有意に高かった。(e)(d)中の植物におけるHOG1転写物の発現量のリアルタイム定量PCR分析。(f)1長角果当たりの葉面積、種子重量、種子数、およびサイトカイニンイソペンテニルアデニンの内因性濃度の定量化は、値がそれぞれ、ASでもっとも高く、次にWTおよびOE系統が続いたことを示した。 修飾されたOsCBPレベルをもたらす過剰発現(OE)またはアンチセンス抑制(AS)におけるシロイヌナズナHOG1cDNAを有するトランスジェニックイネ(オリザサティバジャポニカ種日本晴)植物を示す図である。(a)発芽の約4週間後の分げつ開始時のOEおよびAS系統の苗。(b)発芽後約90日目のOEおよびAS系統の成熟した植物。AS系統は、大量分げつおよびバイオマスの増加を示すが、OE植物は、WTと比較して矮性のままであった。(c)OE、WT、AS、および共抑制(CS)の抜根された成熟した植物は、ASおよびCS植物が、1植物当たり同等に高い分げつ数を有したことを示した。(d)CS植物は、地上節からの分枝を示し、1植物当たりの円錐花序数の全体的増加をもたらした。(e)OE系統の円錐花序は、別の系統のものと比較して有意に小さかった。(f)WTにおけるOsCBP転写物の発現量、OE系統(S−2L、S−9T)における導入されたシロイヌナズナのHOG1転写レベル、CS(CS−4T、CS−I)およびAS(AS−1S−2、AS−4S−2)系統における内在性OsCBP転写レベルの減少のリアルタイム定量PCR分析。(g)1植物当たりの分げつ数、円錐花序、葉面積、生重量、および全種子数の定量化は、測定されたパラメータが、WTと比較してASおよびCS系統において有意に高かったことを示し、シロイヌナズナからの観察と一致している。 (a)HOG1(SEQ ID NO:1)、PETCBP(SEQ ID NO:13)、およびOsCBP(SEQ ID NO:5)の多重アラインメントを示す。PETCBP(SEQ ID NO:13)およびOsCBP(SEQ ID NO:5)は、88%の相同性を示した。HOG1(SEQ ID NO:1)およびOsCBP(SEQ ID NO:5)は、PETCBP(SEQ ID NO:13)およびHOG1(SEQ ID NO:1)に対する88%の相同性と比較して、90%の相同性を示した。(b)OsCBPゲノムblastは、染色体11(Os11g0455500)上にその存在を示し、イネゲノムにおける単一コピーであることを示す(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)。 ITCを用いて実行したサイトカイニン結合アッセイの結果を示す図である。上部のパネルは、2μMの精製されたTAP−HOG1を含むサンプル細胞への0.1μMのベンジルアデニンの注入から得られたベースラインドリフトに補正された生の熱データを示す。下部のパネルは、HOG1に添加されるベンジルアデニンのモル比に対して熱ピーク面積をプロットすることによって作成された結合等温線を示す。 シロイヌナズナHOG1の過剰発現(OE)、またはシロイヌナズナHOG1によって誘導されたOsCBPのアンチセンス抑制(AS)を有する、トランスジェニックイネ(オリザサティバジャポニカ種日本晴)植物の表現型を示す図である。(a)共抑制効果を有するOE系統(パネルの右側、左側には対照)は、1植物当たりの分げつ数の増加を示す。(b)成熟時のAS、野生型(WT)、および共抑制(CS)系統。ASおよびCS系統は、ハイブリッド親系統(WT)と比較して、1植物当たりより多くの分げつ数(分枝)を示す。(c)WTおよびAS系統の種子の大きさに有意差はない。種子の大きさの多少の減少が、WTと比較してOEにおいて認められた。(d)および(e)T1世代におけるOEおよびAS系統のサザンブロット。(d)第1レーンは、マーカーである。レーン2から11は、独立したOE系統である。レーン2(OE系統S1)、レーン5(OE系統4)、およびレーン8(OE系統7)は、単一挿入を示す。レーン4(OE系統3)、レーン7(OE系統6)、レーン9(OE系統9)、レーン10(OE系統10)、およびレーン11(OE系統11)が、二重挿入を示すのに対し、レーン3(OE系統2)およびレーン6(OE系統5)は、それぞれ3つの挿入を示す。(e)レーン2(系統AS1)、レーン3(系統AS2)、レーン4(系統AS3)、およびレーン6(系統AS5)は、単一挿入を示す。レーン5(系統AS4)は、二重挿入を示す。各レーンに対して、葉から抽出されたゲノムDNA(6μg)は、EcoRI酵素で消化され使用された。使用されたプローブは、DIG標識されたハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子であった。ブロットは、シグナルが視覚化される前に高ストリンジェンシーで洗浄した。
実施形態の詳細な開示
以下、植物における形質の発現を調整するための新しい方法の例示的な限定されない実施形態、および新しい方法において使用するための、また新しい方法によって生産される材料が開示される。
本発明は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドが、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達経路に関与するという確認された事実に基づく。
サイトカイニンは、種々の方法において植物成長および発達を調節する植物ホルモンのクラスである。それらは、植物における細胞分裂、細胞増殖および分化、ならびに他の増殖調節機能の促進において活性を有する。サイトカイニンは、細胞分裂および増大から花および実の形成まで、植物発達のすべての期において重要な役割を果たすと考えられている。例えば、サイトカイニンは、花芽の伸長および葉の生長を促進し、老衰、アミノ酸の蓄積、および気孔の開口を抑制することができる。
サイトカイニンの基本構造は、6‐アミノプリンを含み、そのアミノ基は、通常5個の炭素原子を有する置換基で修飾される。高等植物における自然発生的活性サイトカイニンは、主に、生合成前駆体に由来するゼアチンおよびイソペンテニルアデニンである。サイトカイニンレベルの上昇は、トウモロコシ穀粒および別の穀物を発達させる、胚乳における最大有糸分裂活性と一致することが示すように、高等植物における種子の発達に関連する。
サイトカイニン生合成およびシグナル伝達の基本的分子機構は、最近になってようやく明らかになった。サイトカイニン受容体ファミリーの3つのメンバー、センサーヒスチジンキナーゼが同定され、それらは、リン酸リレー機構を伴うバクテリアの2成分シグナル伝達経路と同様の機能を有する。これらの3つのサイトカイニン受容体、AHK2、AHK3、およびCRE1/AHK4は、高度の配列相同性を示すが、それぞれは、特徴的な性質を有し、通常のサイトカイニン認識および植物成長に必要である。これらの3つの受容体に対して突然変異分析が行われてきたが、3つの受容体のうちのいずれか1つにおける突然変異は、植物表現型の有意な変化をもたらさなかった。対照的に、3つの受容体のすべてにおける突然変異(すなわち、三重変異体)は、矮性および不稔植物をもたらした。これらの表現型は、以下に記載されるような本発明のアンチセンス変異体において見られなかった。
シロイヌナズナサイトカイニンシグナル伝達経路において、ヒスチジンタンパク質キナーゼ(AHK)は、サイトカイニン受容体としての機能を果たし、ヒスチジンリン酸転移タンパク質(AHP)を介して、AHKから核応答調節因子(ARR)にシグナルを伝達する。AHPは、サイトカイニン依存的に細胞質から核に移動し、核内のARRにシグナルを送信し、それにより植物細胞内の植物成長および発達に関与する遺伝子の転写を活性化または抑制することができる。
高親和性でサイトカイニンに結合する、シロイヌナズナ植物から精製された単離ポリペプチド、HOG1(SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む)が本明細書に開示される。さらに、本発明者らは、SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドの発現の調整が、ヒスチジンキナーゼドメインがないにもかかわらず、単子葉植物および双子葉植物の両方におけるサイトカイニンシグナル伝達経路を調整し、植物における異なる形質の発現をもたらすことを確認した。一部の実施形態において、開示されるポリペプチドは、SAHH活性も有しない。
ある実施形態において、開示されたポリペプチドは、膜貫通ドメインを含む。
したがって、本発明は、植物による少なくとも1つのポリペプチドの発現を調整するステップを含む、植物における少なくとも1つの形質の発現を調整する方法を提供し、ポリペプチドは、
i)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸1からアミノ酸7、アミノ酸9からアミノ酸230、アミノ酸1からアミノ酸58、アミノ酸77からアミノ酸485、アミノ酸59からアミノ酸76、アミノ酸150からアミノ酸191、アミノ酸231からアミノ酸405、およびアミノ酸406からアミノ酸438のいずれか1つ以上から成る群から選択されるか、またはその相同体において同等位置にあり、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含む、ポリペプチド、
iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有し、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
を含む、ポリペプチド、および
iv)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列から成る、ポリペプチド、
から成る群から選択され、ポリペプチドの発現の調整は、植物における少なくとも1つの形質の発現を調整する。
いかなるサイトカイニンのシグナル伝達経路も、本発明の方法を使用して調整することができる。200個以上の天然および合成サイトカイニンが、現在までに既知である(http: //www. plant− hormones, info/cytokinins. htm、Arteca, Plant Growth Substances: Principles and Applications, New York: Chapman & Hall(1996)、Salisbury and Ross, Plant Physiology pp. 357−407, 531−548(1992))。例示的な自然発生のサイトカイニンには、ゼアチン、キネチン、イソペンテニルアデニン、および6−ベンジルアミノプリンが含まれる一方で、ジフェニル尿素等のフェニル尿素は、合成サイトカイニンの例示的なクラスを表す。数多くの方法で生成することができる抱合型サイトカイニンも既知であり、本発明の範囲内に含まれる。例えば、グルコシドは、ゼアチンの側鎖側のヒドロキシル基へのグルコースの炭素1の付着によって形成することができるか、または炭素1は、アデニン環の7位または9位のいずれかにおいて、C−N結合のN原子に付着することができる。
開示された方法は、さらに、1つ以上の形質の調整が望ましい任意の植物に適用することができる。本明細書で使用される「植物」という用語は、全植物、植物の原種および子孫、ならびに種子、シュート、茎、葉、根(塊茎を含む)、花、ならびに組織および器官を含む植物部位も包含し、上述のそれぞれは、本発明のポリヌクレオチドまたはポリペプチドを含む。「植物」という用語はまた、植物細胞、浮遊培養物、カルス組織、胚、分裂組織部位、配偶体、胞子体、花粉、および小胞子を包含し、ここでも同様に、上述のそれぞれは、当該ポリヌクレオチドを含む。
本発明の方法に特に有用な植物には、食用作物、草、飼い葉もしくは飼料用マメ科植物、観賞植物、木、または低木等のすべての単子葉植物および双子葉植物、ならびに他にもあるが、カエデ類、マタタビ類、カモジグサ類、アリウム類、アマランサス類、パイナップル、バンレイシ類、アピウム類、シロイヌナズナ、ラッカセイ類、パンノキ類、アスパラガスオフィシナリス、カラスムギ、ゴレンシ、トウガン、バーソレシアエクセルサ、テンサイ、ブラシカ類、カダバファリノーサ、カメリアシネンシス、ダンドク、トウガラシ類、パパイヤ、オオバナカリッサ、ベニバナ、ヒッコリー類、クリ類、菊、エンダイブ、ニッケイ類、シトルルスラナタス、シトラス類、ヤシ類、コーヒーノキ類、コラノキ類、サトイモ、ハシバミ類、サンザシ類、キュウリ類、カボチャ類、チョウセンアザミ類、ニンジン、ヌスビトハギ類、リュウガン、ディオスコレア類、カキノキ類、ヒエ類、シコクビエ、ビワ、タチバナアデク、ソバ類、ブナ類、イチジク、キンカン類、フラガリア類、イチョウ、ダイズ類、ワタ、ヒマワリ類、ハイビスカス類、オオムギ類、サツマイモ、クルミ類、レタス、レンリソウ類、ウキクサ類、ヒラマメ、アマ、レイシ、ホソムギ、ハス類、トカドヘチマ、ルピナス類、マクロティロマ類、アセロラ、リンゴ類、マメイリンゴ、マンゴー、マニホット類、サポジラ、アルファルファ、シナガワハギ類、ハッカ類、ツルレイシ類、クロミグワ、バショウ類、タバコ類、オリーブ類、オプンティア類、ツノウマゴヤシ類、オリザ類、キビ、クダモノトケイソウ、アメリカボウフウ、ワニナシ類、オランダゼリ、ペチュニア、インゲンマメ類、ナツメヤシ類、ホオズキ類、マツ類、ピスタチオ、エンドウ類、イチゴツナギ類、ハコヤナギ類、プロソピス類、サクラ類、バンジロウ類、ザクロ、セイヨウナシ、コナラ類、ラディッシュ、ショクヨウダイオウ、スグリ類、キイチゴ類、サトウキビ類、ニワトコ類、ライムギ、ゴマ類、ナス類、モロコシホウレンソウ類、シジギウム類、タマリンド、カカオ、シャジクソウ類、ライコムギ、コムギ類、スノキ類、ソラマメ類、ササゲ類、ブドウ類、トウモロコシ、アメリカマコモ、ナツメ類を含むリストから選択される、エタノール用のセルロース系バイオマス(生物燃料)に使用される植物を含む。
一実施形態において、植物は、イネ、コムギ、トウモロコシ、大豆、キビ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、またはソルガム等の穀実作物である。別の実施形態において、植物は、アシ、スウィートグラス、トウ、竹、まぐさ、ダイアモンドグラス、および芝草等の草である。さらに別の実施形態において、植物は、カイラン、チョウセンアザミ、アスパラガス、ブロッコリー、芽キャベツ、キャベツ、キャノーラ、ニンジン、カリフラワー、セロリ、コラードグリーン、アマ、ケール、およびレンティル等の野菜、または商業的もしくは化学的価値を有する他の植物(シロイヌナズナ、ペチュニア、菊等)である。
以下の実施例1および2に考察されるように、開示される方法は、単子葉植物および双子葉植物の両方において示されている。したがって、SEQ ID NO:1のポリペプチドの配列が、植物種間で高度に保存されるため、開示される方法は、単子葉植物および双子葉植物の両方において適用可能であると期待される。例えば、開示される方法は、以下の実施例2に記載されるようなイネ(オリザサティバ)において示されているので、イネ(SEQ ID NO:5)と95%のアミノ酸配列相同性を有するコムギ(トリチカムエスチバム)(SEQ ID NO:7)等の、別の単子葉植物に適用可能であると期待されるであろう。同様に、以下の実施例1に記載されるようなシロイヌナズナにおいて示されているので、シロイヌナズナ(SEQ ID NO:1)と88%のアミノ酸配列相同性を有するペチュニア(SEQ ID NO:13)、シロイヌナズナ(SEQ ID NO:1)と92%のアミノ酸配列相同性を有する菊(SEQ ID NO:9)等の、別の双子葉植物に適用可能であると期待されるであろう。
本明細書で使用される「発現」という用語は、植物における形質、遺伝子、またはコードされたポリペプチドを含む遺伝子産物の発現を意味し得る。
開示された方法によって調整され得る植物形質には、草高、植物バイオマス、頂芽の発達、分枝、稔性、開花、葉面積、老化、種子発芽、種子収量、種子重量、茎の発達、穀粒収量、分げつ数、花分裂組織の発達、および根の発達が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態によると、植物における形質の発現は、ポリペプチドの発現が調整されていない同一種類の植物と比較した場合の、分枝の増加、種子収量の増加、植物バイオマスの増加、穀粒収量の増加、分げつ数の増加、葉面積の増加、種子発芽の遅延、頂芽優勢の減少、遅咲き、またはこれらの組み合わせを示すように調整され得る。別の実施形態において、植物における形質の発現は、ポリペプチドの発現が調整されていない同一種類の植物と比較した場合の、早咲き、矮性、葉数の減少、早期老化、早期種子発芽、ロゼット葉形成の遅延および減少、実生根の成長の増加、またはこれらの組み合わせを示すように調整され得る。
特に、種子収量および植物バイオマスは、SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドの発現が、ポリペプチドの発現が減少していない同一種類の植物のものと比較して減少している植物に対して、約2から約5倍と著しく増加した。植物の種類、SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドの発現の調整、および調整の程度に応じて、種子収量および植物バイオマスはそれぞれ、約2倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、または約5倍増加すると期待され得る。
同様に、穀粒収量および分げつ数は、SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドの発現が、ポリペプチドの発現が減少していない同一種類の植物のものと比較して減少している植物に対して、約2から約4倍増加した。植物の種類、SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドの発現の調整、および調整の程度に応じて、穀粒収量および分げつ数は、約2倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、または約4倍増加すると期待され得る。
特定の実施形態において、葉面積もまた、SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドの発現が、ポリペプチドの発現が減少していない同一種類の植物のものと比較して減少している植物に対して、約2から約6倍と著しく増加した。植物の種類、SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドの発現の調整、および調整の程度に応じて、葉面積は、約2倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約5.5倍、または約6倍増加すると期待され得る。
SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドの発現が増加している植物に対して、開花は、ポリペプチドの発現が増加していない同一種類の植物と比較して、約5から約15日促進された。上記に考察されるように、開花期の調整は、植物の種類、SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドの発現の調整、および調整の程度によるが、典型的には、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、または約15日促進されるであろう。
ある実施形態において、植物の稔性は調整されず、形質転換した植物は、稔性植物を生産することができる。
形質の発現は、当技術分野で既知の種々の方法を使用して決定され得る。例えば、葉面積は、以下の方程式のそれぞれを使用して、全葉面積を葉面積比(LAR)、葉面積指数(LAI)、または比葉面積(SLA)として測定することによって決定され得る。
LAR(m−1またはmkg−1)=(全葉面積)/(全乾燥重量)
LAI=(作物の全葉面積)
(それが立っている全土地面積)
SLA(m−1)=(葉面積)/(葉乾燥質量)
代替として、葉面積は、コンピュータを使用した画像分析を使用して測定され得る。
種子収量もまた、いくつかの方法で、例えば、千粒重の増加または減少として、充実種子数の増加または減少として、全種子重量として、種子の大きさとして、または収穫指数として測定され得る。
草高の差は、直接測定および改変されていない対照植物の高さとの比較によって測定することができる。
植物バイオマスは、収穫したての植物の重量測定(新鮮重もしくは湿重量)、または一定乾燥重量によって決定することができる。乾燥重量は、一定重量(乾燥重量)が記録されるまで、2日間から7日間、約80℃に設定された乾燥炉で当該植物または植物部位(例えば、葉、種子)を乾燥させた後に決定することができる。同様に、1植物または1栽培単位面積当たり(例えば、1平方メートル当たり、1エーカー当たり、または1ヘクタール当たり)の種子または粒重および全種子または穀粒収量も決定することができる。
頂芽の発達および分枝、ならびに稔性、開花、および老化の変化は、改変された植物(例えば、本開示に記載されるように遺伝子操作された)を、同一成長期にある改変されていない植物の外観と比較することによって、推定することができる。
1植物当たりの分げつ数(または枝数)は、すべての分げつが成長するまで、成長した植物の代表サンプルを数えることによって決定することができる(例えば、イネ栽培品種において、分げつが最大数に達するまで約2ヵ月かかり得る)。これらは、改変されていない植物の1植物当たりの分げつ数と比較することができる。
花分裂組織の発達および根の発達は、巨視的レベル(例えば、比較できる発達期における肉眼観察による)、および、細胞配列の差異等に対して、顕微鏡法(例えば、光学または電子顕微鏡法による)の両方で検査することができる。
遺伝子の発現は、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)転写レベルの生成を測定することによって決定され得る。ポリペプチド遺伝子産物の発現は、例えば、ポリペプチドと結合する抗体を使用した免疫測定法によって決定され得る。
「調整する」という用語は、植物における形質、遺伝子、または、コードされたポリペプチドを含む遺伝子産物の発現の変化を意味する。典型的には、変化は、形質、遺伝子、またはポリペプチドの発現が調整されていない同一種類の植物と比較される。例えば、形質の発現に関連して使用される「調整する」という用語は、ポリペプチドの発現が調整されていない同一種類の植物と比較した場合の、ポリペプチドの発現が開示される方法を使用して調整された植物における、草高の増加または減少、植物バイオマスの増加または減少、頂芽の発達の増加または減少、分枝の増加または減少、稔性の増加または減少、開花の増加または減少、葉面積の増加または減少、老化の促進または遅延、種子発芽の促進または遅延、種子数の増加または減少、種子収量の増加または減少、種子重量の増加または減少、茎の発達の促進または遅延、茎の発達の増加または減少、穀粒収量の増加または減少、分げつ数の増加または減少、花分裂組織の発達の増加または減少、花分裂組織の発達の促進または遅延、根の発達の増加または減少、根の発達の促進または遅延等を意味し得る。一実施形態において、調整された形質は、ポリペプチドの発現が調整されていない同一種類の植物と比較した場合の、ポリペプチドの発現が開示される方法を使用して調整された植物における、分枝の増加、種子収量の増加、植物バイオマスの増加、穀粒収量の増加、分げつ数の増加、葉面積の増加、種子発芽の遅延、頂芽優勢の減少、遅咲き、またはこれらの組み合わせであり得る。他の実施形態において、調整された形質は、ポリペプチドの発現が調整されていない同一種類の植物と比較した場合の、ポリペプチドの発現が開示される方法を使用して調整された植物における、早咲き、矮性、葉数の減少、早期老化、早期種子発芽、ロゼット葉形成の遅延および減少、実生根の成長の増加、またはこれらの組み合わせであり得る。
「発達」という用語は、細胞増殖および分化によって、植物または植物部位が成長し成熟するプロセスを意味する。
遺伝子または遺伝子産物の発現に関連して使用される「調整する」という用語は、典型的には、発現レベルの増加または減少を意味する。一部の実施形態において、遺伝子または遺伝子産物の発現レベルの減少は、遺伝子または遺伝子産物の発現の完全阻害を含む。ある実施形態において、遺伝子または遺伝子産物の発現レベルの減少は、遺伝子または遺伝子産物の発現の完全阻害ではない。
一部の実施形態において、HOG1ポリペプチド(SEQ ID NO:1)の発現レベルが、野生型と比較して約3から約20倍増加する場合、サイトカイニンレベルは、約20から約85パーセント、約30から約75パーセント、約40から約65パーセント、または約50から約55パーセント減少する。このサイトカイニンレベルの減少は、約4から種子発芽の約5日の促進、成長遅延、ならびに新しいロゼット葉の形成および展開の遅延等の形質の発現の調整をもたらす可能性がある。他の実施形態において、HOG1ポリペプチド(SEQ ID NO:1)の発現レベルが、野生型と比較して約2から約10倍減少する場合、サイトカイニンレベルは、約20から約85パーセント、約30から約75パーセント、約40から約65パーセント、または約50から約55パーセント増加する。このサイトカイニンレベルの増加は、種子発芽の約5日の遅延等の形質の発現の調整をもたらす可能性がある。以下の実施例から分かるように、形質の発現は、サイトカイニンの発現レベルに関連する。遺伝子または遺伝子産物の発現レベルを増加または減少させるための方法もまた、以下にさらに考察される。
代替として、「調整する」という用語は、植物における遺伝子またはコードされたポリペプチドを含む遺伝子産物の生物学的特性または機能特性の変化を意味する場合がある。例えば、調整は、コードされたポリペプチドの結合親和性の変化を引き起こす可能性がある。ある実施形態において、調整は、遺伝子の核酸配列、またはコードされたポリペプチドのアミノ酸配列の変化を引き起こさない。
典型的に、植物における1つ以上の形質の発現は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの発現を調整することによって調整される。「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書においては同じ意味で使用され、ペプチド結合もしくは修飾されたペプチド結合によって連鎖した、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸残基のポリマー(ジペプチドまたはそれより大きい)、またはその変異体および合成類似体を意味する。したがって、これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する自然発生的アミノ酸の化学的類似体等の合成非自然発生的アミノ酸である、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸ポリマー、および自然発生的アミノ酸ポリマーを含む。本発明のポリペプチドは、自然に精製された生成物、化学合成法による生成物、ならびに、例えば、細菌、酵母、高等植物、昆虫、および哺乳類細胞を含む、原核生物または真核生物宿主からの組み換え技術によって生成される生成物を含むが、これらに限定されない。本発明のポリペプチドは、炭水化物基等の非ペプチド成分を含み得る。炭水化物および他の非ペプチド置換基は、ポリペプチドが生成される細胞によってポリペプチドに付加され得、細胞の種類によって異なる。組み換え技術によって生成されるポリペプチドについて、大部分の修飾の性質および程度は、特定の宿主細胞の翻訳後修飾能力、および当該ポリペプチドのアミノ酸配列に存在する修飾シグナルによって決定される。例えば、グリコシル化パターンは、異なる種類の宿主細胞間で異なる。ポリペプチドは、それらのアミノ酸骨格構造の観点から本明細書に定義され、炭水化物基等の置換基は概して明記されないが、それでもなお存在する場合がある。さらに、本発明のポリペプチドはまた、場合によっては、宿主によるプロセスの結果として最初の修飾されたメチオニン残基を含み得る。タンパク質は、単量体または多量体タンパク質、例えば、二量体(ホモ二量体もしくはヘテロ二量体)または三量体として存在し得る。
典型的には、本発明において発現が調整されるポリペプチドは、その変異体または断片をその範囲内に含み、変異体または断片は、SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドと機能的に同一である生物活性を有する。ある実施形態において、生物活性は、サイトカイニン結合および受容体活性である。受容体活性は、受容体とのサイトカイニンの結合の際、1つ以上の細胞性応答を開始することができる細胞内シグナルになる、細胞膜を通じた細胞外シグナルの伝播を伴う。サイトカイニン結合および受容体活性を同定するための方法は、当技術分野で公知であり、以下の実施例1および2に記載される。
断片は、ポリペプチドのいずれかの末端、または一次アミノ酸配列の内部伸長からの1つまたは複数のアミノ酸欠失を包含し得る。断片は、好ましくは、親配列からの、また特定の配列に応じて、少なくともn個の連続するアミノ酸を含み、nは、好ましくは、7以上である(例えば、7、8、9、10、12、15、17、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、またはそれ以上)。
一実施形態において、nは、7である。
一実施形態において、nは、18である。
一実施形態において、nは、33である。
一実施形態において、nは、42である。
一実施形態において、nは、58である。
一実施形態において、nは、175である。
一実施形態において、nは、222である。
一実施形態において、nは、409である。
そのような断片は、「フリースタンディング」、すなわち、別のアミノ酸もしくはポリペプチドの一部ではなく、またはそれらに融合せず、あるいはそれらは、それらが一部または領域を形成するより大きなポリペプチドに含まれ得る。より大きなポリペプチドに含まれている場合、本発明の断片は、最も好ましくは、単一の連続した領域を形成する。加えて、いくつかの断片は、単一のより大きなポリペプチドに含まれ得る。
本発明はまた、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの機能的等価物を含む。本発明のポリペプチド断片および機能的等価物は、親ポリペプチドの生物活性、すなわち、サイトカイニン結合および受容体活性を保持する。サイトカイニン結合および受容体活性を同定するための方法は、当技術分野で公知であり、以下の実施例1および2に記載される。
機能的に同等の本発明のポリペプチドは、SEQ ID NO:1に記載のポリペプチドに相同なポリペプチドを含む。2つのポリペプチドは、そのポリペプチドのうちの1つの配列が、もう1つのポリペプチドの配列と十分に高度な相同性を有する場合、「相同」であると言える。ポリペプチド配列に適用されるような「相同性パーセント」、「相同性%」、「タンパク質相同性」、「配列相同性」等の語句は、標準化されたアルゴリズムを使用して整列された少なくとも2つのポリペプチド配列間の同一残基の一致の割合(%)を意味する。そのようなアルゴリズムは、標準化され再現性のある方法で、2つの配列間の整列を最適化するために比較されている配列にギャップを挿入することによって、2つの配列のより有意義な比較を実現することができる。
相同性パーセントは、当技術分野で既知の、または本明細書に記載される、1つ以上のコンピュータアルゴリズムまたはプログラムを使用して決定され得る。相同性の程度は、当業者によって容易に計算することができる(例えば、Computational Molecular Biology, Lesk, A.M., ed., Oxford University Press, New York, 1988、Biocomputing. Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York, 1993、Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A.M., and Griffin, H. G., eds. , Humana Press, New Jersey, 1994、Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987、およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991を参照のこと)。
タンパク質配列相同性を測定する方法は、当技術分野で公知であり、この関連において、配列相同性がアミノ酸相同性(硬相同性と呼ばれる場合もある)に基づいて計算されることは、当業者には理解されるであろう。例えば、UWGCG Packageは、配列相同性を計算するために使用することができるBESTFITプログラムを提供する(例えば、そのデフォルト設定で使用される)(Devereux et al.(1984) Nucleic Acids Research 12, p387−395)。PILEUPおよびBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)アルゴリズムは、例えば、Altschul S. F.(1993) J Mol Evol 36:290−300、およびAltschul, S, F et al.(1990) J Mol. Biol 215:403に記載されるように、配列相同性を計算するか、または配列を並べるために使用することができる(典型的には、それらのデフォルト設定で)。
BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information (NCBI)、Bethesda、MD、およびインターネット上の例えば、「www.ncbi.nlm.nih.gov/」を含む、いくつかの情報源から入手可能である。このアルゴリズムは、最初に、データベース配列中の同一の長さのワードと整列するときに、ある正の値の閾値スコアTと一致するか、あるいはそれを満たすクエリ配列中の長さWの短いワードを同定することによって、高スコア配列ペア(HSP)を同定することを伴う。Tは、隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al、上記参考)。これらの最初の近隣ワードヒットは、それらを含有するHSPを見出すための検索を開始するためのシードとしての役割を果たす。ワードヒットは、累積整列スコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に伸長する。
したがって、本明細書に言及されるような配列相同性は、例えば、NCBI(National Center for Biotechnology Information、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって指定されるデフォルトパラメータ[Blosum 62 matrix; gap open penalty=11 and gap extension penalty=l]を使用した、BLASTバージョン2.1.3(またはその別のバージョン)を使用して決定することができる。
ある実施形態において、上記のアルゴリズム/プログラムのデフォルト設定が使用される。
典型的には、基準ポリペプチドの活性が保持されるという条件で、2つのポリペプチド間の50%よりも大きい相同性が、機能的同等性を示すとみなされる。より好ましいポリペプチドは、SEQ ID NO:1によって表されるアミノ酸と、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%よりも大きい全体の配列相同性である、相同性の程度を有する。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTを使用して、本発明のシロイヌナズナのHOG1ポリペプチド(SEQ ID NO:1)が、概して、イネ(すなわち、OsCBP)(SEQ ID NO:5)、コムギ(SEQ ID NO:7)、菊(SEQ ID NO:9)、およびペチュニア(すなわち、PETCBP)(SEQ ID NO:13)におけるその相同体と約80から95%のアミノ酸配列相同性を共有することが示された。より具体的には、シロイヌナズナのHOG1ポリペプチド(SEQ ID NO:1)は、イネ(SEQ ID NO:5)におけるその相同体と約90%のアミノ酸配列相同性、コムギ(SEQ ID NO:7)におけるその相同体と約91%のアミノ酸配列相同性、菊(SEQ ID NO:9)におけるその相同体と約92%のアミノ酸配列相同性、ペチュニア(SEQ ID NO:13)におけるその相同体と約88%のアミノ酸配列相同性、カイラン(SEQ ID NO:11)におけるその相同体と約99%のアミノ酸配列相同性、ジャガイモ(SEQ ID NO:29)におけるその相同体と約90%のアミノ酸配列相同性、およびトマトにおけるその相同体と約89%のアミノ酸配列相同性を共有する。
本発明に従った機能的に同等のポリペプチドは、1つ以上の位置において、保存または非保存のいずれかのアミノ酸の挿入、欠失、または置換があったポリペプチドを含むよう意図され、ただし、そのような変化は、親ポリペプチドのサイトカイニン結合および受容体活性を保持するタンパク質をもたらすことを条件とする。これらの種類の変化のそれぞれは、所与の配列において1回以上、単独で、または別の変化と組み合わせて起こる可能性がある。そのような変異体は、例えば、タンパク質工学および部位特異的突然変異誘発の方法を使用して生成され得る。
融合タンパク質はまた、HOG1タンパク質、およびその相同体、またはその変異体もしくは断片の性質を向上させるために操作され得る。例えば、付加的アミノ酸、特に荷電アミノ酸の領域は、HOG1タンパク質、およびその相同体、またはその変異体もしくは断片のN末端に付加され、宿主細胞からの精製の間の安定性を向上させ得る。代替として、ペプチド部分は、ポリペプチドに付加され精製を促進し得る。そのような領域は、ポリペプチドの最終調製の前に除去することができる。ポリペプチドの取り扱いを容易にするためのペプチド部分の付加は、当業者には公知の通常の技術である。
本発明のポリペプチドは、植物からの精製および組み換え方法等による、種々の方法によって調製され得る。本発明のポリペプチド、特に短ペプチド断片はまた、従来の液相または固相合成技術等による、化学合成によって生成され得る(例えば、Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed., 1984 The Pierce Chemical Co., Rockford, 111に記載される方法を参照のこと)。代替として、ペプチドは、endoLys−C、endoArg−C、endoGlu−C、およびブドウ球菌V8プロテアーゼ等のプロテイナーゼによる本発明のポリペプチドの消化によって生成することができる。
本発明のポリペプチドの精製は、サイズ排除クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、および逆相高速液体クロマトグラフィ等の技術のうちのいずれか1つ、またはそれらの組み合わせによって達成される。本発明のポリペプチド、またはその変異体もしくは断片の体外検出は、ELISA(酵素免疫測定法)、ウエスタンブロット法、免疫沈降、免疫蛍光法、薄層クロマトグラフィ、逆相高速液体クロマトグラフィ、酸加水分解後のアミノ酸分析、および高速原子衝撃(FAB)質量分析を含む、種々の技術を使用して達成され得る。そのような技術は、当業者によって一般的に使用される。
当技術分野で既知の方法を使用して、本発明のポリペプチド(SEQ ID NO:1)は、SAHHの2つの保存特性を含むことが示された。第2のSAHH特性において、ジヌクレオチド結合ドメインを表す3個の保存グリシン残基が同定された。サイトカイニンは、ヌクレオチド誘導体であるため、これらの残基は、サイトカイニン結合ドメインを形成する可能性があることが予測される。推定膜貫通ドメインもまた、SEQ ID NO:1のアミノ酸1位から7位(N末端において)、150位から191位、および59位から76位において同定された。
別の推定サイトカイニン結合ドメインは、アミノ酸9位から230位(N末端において)、77位から485位、および406位から438位(C末端において)において同定された。推定NAD結合ドメインは、アミノ酸231位から405位において同定された。N末端細胞内ドメインは、アミノ酸1位〜58位において同定された。
ある実施形態において、植物におけるポリペプチドの発現は、ポリペプチドの発現を調整するポリヌクレオチドを、植物の1つ以上の細胞に導入することによって調整される。本発明のポリヌクレオチドは、mRNA等のRNA、または例えば、クローニングによって得られ得るか、もしくは合成的に生成され得る、cDNAおよびゲノムDNAを含むDNAの形であり得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、センス鎖としても知られるコード鎖であり得、またはそれは、以下にさらに考察されるようなアンチセンス鎖とも呼ばれる非コード鎖であり得る。
開示される方法での使用に好適なポリヌクレオチドは、プリンおよびピリミジン塩基、または別の天然、化学または生化学修飾、非天然、または誘導体化ヌクレオチド塩基を含む、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、またはペプチド核酸(PNA)のいずれかのヌクレオチドを含み得る。ポリヌクレオチドの骨格は、典型的には、RNAまたはDNAに見られるような糖類およびリン酸基、または修飾もしくは置換された糖類もしくはリン酸基を含み得る。ポリヌクレオチドはまた、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体等の修飾されたヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって割り込まれ得る。したがって、ヌクレオシド、ヌクレオチド、デオキシヌクレオシド、およびデオキシヌクレオチドという用語は、概して、ポリヌクレオチド配列に組み込まれる場合に、溶液中の自然発生的ポリヌクレオチド配列によるハイブリダイゼーションを可能にするように、自然発生的ヌクレオシドまたはヌクレオチドと共通したいくつかの構造的特性を有する類似体を含む。典型的には、これらの類似体は、塩基、リボース、またはリン酸ジエステル部分を置換および/または修飾することによって、自然発生的ヌクレオシドおよびヌクレオチドから得られる。変化は、必要に応じて、ハイブリッド形成を安定化もしくは不安定化させるために、または相補的なポリヌクレオチド配列によるハイブリダイゼーションの特異性を高めるために、目的に合わせて行われ得る。
本発明のポリヌクレオチドはまた、ポリヌクレオチド配列の変異体および断片をその範囲内に含み、該変異体または断片は、本発明のポリヌクレオチド、特に、SEQ ID NO:2に示されるポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド(またはその断片)と機能的に同一である生物活性を有するポリペプチドをコードし、該変異体は、必要以上の試験および実験を行うことなく、分子生物学における標準的技術を使用して、見出し、および単離することができる。
2つのポリヌクレオチド配列間の相同性の度合いは、例えば、GAPクリエーションペナルティ5およびGAPウィドスペナルティ0.3のデフォルト設定を使用した、GCGプログラムパッケージで提供されるGAP(Program Manual for the Wisconsin Package, Version 8, August 1996, genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711)(Needleman, S. B. and Wunsch, CD.,(1970), Journal of Molecular Biology, 48, 443−453)等の当技術分野で既知のコンピュータプログラムを用いて決定され得る。ポリヌクレオチド分子の相同体は、異なる種において実質的に同一の機能および同様の特性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子であって、コードされたポリペプチドは、少なくとも領域内において、少なくとも50%のアミノ酸相同性、およびコードされたアミノ酸配列全体にわたって、少なくとも約30%のアミノ酸相同性、少なくとも約40%のアミノ酸相同性、少なくとも約50%のアミノ酸相同性、少なくとも約60%のアミノ酸相同性、少なくとも約70%のアミノ酸相同性、少なくとも約80%のアミノ酸相同性、少なくとも約90%のアミノ酸相同性、または少なくとも約95%の相同性を共有し得る。HOG1ポリペプチド(SEQ ID NO:1)のイネ(SEQ ID NO:5)、コムギ(SEQ ID NO:7)、菊(SEQ ID NO:9)、およびペチュニア(SEQ ID NO:13)におけるその相同体との配列相同性の例示的なレベルは、上で説明されている。対応するポリヌクレオチド相同体は、遺伝子コードの縮退、ならびに異なる植物属および種間の好ましいコドン使用頻度の差によって、50%よりも有意に小さい相同性を共有し得る。例えば、CLUSTAL W(1.83)を使用して、本発明のHOG1ポリペプチド(SEQ ID NO:1)をコードするポリヌクレオチドは、イネ(SEQ ID NO:6)におけるその相同体と82%の配列相同性、コムギ(SEQ ID NO:8)におけるその相同体と83%の配列相同性、菊(SEQ ID NO:10)におけるその相同体と82%の配列相同性、ペチュニア(SEQ ID NO:14)におけるその相同体と78%の配列相同性、カイラン(SEQ ID NO:12)におけるその相同体と98%の配列相同性、トマト(SEQ ID NO:28)におけるその相同体と79%の配列相同性、ジャガイモ(SEQ ID NO:30)におけるその相同体と80%の配列相同性、およびタバコ(品種Xanthi)(SEQ ID NO:4)のSAHH1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと78%の配列相同性を有することが示された。
ポリヌクレオチド分子はまた、低ストリンジェンシー、より好ましくは、中ストリンジェンシー、およびさらに好ましくは、高低ストリンジェンシーの条件下で、本発明のポリヌクレオチド分子、特に、SEQ ID NO:4、6、8、10、12、14、および15に示されるポリヌクレオチド配列にハイブリダイズすることができる変異体をその範囲内に含み得る。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、2×SSCにおいて、50℃で実行されるハイブリダイゼーションに対応し得る。
所与のポリヌクレオチド分子が、特定のポリヌクレオチドにハイブリダイズするかどうかを決定するための好適な実験条件は、10分間の5×SSCにおける、検査されるポリヌクレオチドの関連サンプルを含むフィルタの予浸、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5% SDS、および100μg/mlの変性超音波処理サケ精子DNAの溶液中のフィルタのプレハイブリダイゼーション、続いて、Sambrookら(1989; Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd edition, Cold Spring Harbour, New York)に記載されるようなハイブリダイゼーション方法に従った、約45℃で12時間の、10ng/mlの濃度の32P−dCTP標識プローブを含む同一溶液中のハイブリダイゼーションを伴い得る。
次いで、フィルタを、少なくとも55℃(低ストリンジェンシー)、少なくとも60℃(中ストリンジェンシー)、少なくとも65℃(中/高ストリンジェンシー)、少なくとも70℃(高ストリンジェンシー)、または少なくとも75℃(超高ストリンジェンシー)で、2×SSC、0.5% SDS中で30分間、2回洗浄する。ハイブリダイゼーションは、X線フィルムへのフィルタの曝露によって検出されてもよい。
さらに、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを変更するために用いられ得る、当業者に公知の多数の条件および要因が存在する。例えば、特定のポリヌクレオチドにハイブリダイズされるポリヌクレオチドの長さおよび性質(DNA、RNA、塩基組成物)、ホルムアミド、硫酸デキストラン、ポリエチレングリコール等の有無等の塩および別の成分の濃度、ならびにハイブリダイゼーションおよび/または洗浄ステップの温度の変更である。
さらに、2つの所与のポリヌクレオチド配列が、ある特定の条件下でハイブリダイズするかどうかを理論的に予測することも可能である。したがって、上記の経験的方法の代替として、変異ポリヌクレオチド配列が、第2もしくは第3の態様に従って示されるポリヌクレオチド分子、またはより具体的にはSEQ ID NO:2もしくは15のポリヌクレオチドにハイブリダイズするかどうかに関する決定は、既知の配列を有する2つの異種ポリヌクレオチド配列が、塩濃度および温度等の特定の条件下でハイブリダイズするT(融解温度)の理論計算に基づき得る。
異種ポリヌクレオチド配列に対する融解温度(Tm(ヘテロ))の決定において、最初に、相同ポリヌクレオチド配列に対する融解温度(Tm(ホモ))を決定する必要がある。2つの完全に相補的なポリヌクレオチド鎖(ホモ二本鎖形成)間の融解温度(Tm(ホモ))は、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, 1995に概説されるように、以下の式に従って決定され得る。
m(ホモ)=81.5℃+16.6(log M)+0.41(%GC)−0.61(%ホルム)−500/L
M=一価カチオンのモル濃度を示す
%GC=配列における塩基の総数のグアニン(G)およびシトシン(c)の%
%ホルム=ハイブリダイゼーションバッファにおけるホルムアミドの%
L=ポリヌクレオチド配列の長さ
上記の式によって決定されるTは、2つの完全に相補的なポリヌクレオチド配列間のホモ二本鎖形成のT(Tm(ホモ))である。2つの異種ポリヌクレオチド配列のTにそのT値を適応させるために、2つの異種配列間のヌクレオチド配列の1%の差は、Tの1℃の減少に等しいと仮定される。したがって、ヘテロ二本鎖形成に対する(Tm(ヘテロ))は、当該類似配列と上記のヌクレオチドプローブとの間の相同性の%差を(Tm(ホモ))から引くことによって得られる。
典型的には、SEQ ID NO:2または15に示されるポリヌクレオチド分子はまた、そのオリゴヌクレオチド断片であるポリヌクレオチド分子をその範囲内に含む。典型的には、オリゴヌクレオチド断片は、約15から約1775個のヌクレオチドの長さである。より典型的には、オリゴヌクレオチド断片は、約15から約1200個のヌクレオチドの長さである。さらに典型的には、オリゴヌクレオチド断片は、約15から約700個のヌクレオチドの長さである。さらに典型的には、オリゴヌクレオチド断片は、約15から約200個のヌクレオチドの長さである。より典型的には、オリゴヌクレオチド断片は、約15から約75個のヌクレオチドの長さである。
典型的には、オリゴヌクレオチド断片は、約15から約1775個のヌクレオチドの長さである。より典型的には、オリゴヌクレオチド断片は、約100から約1775個のヌクレオチドの長さである。さらに典型的には、オリゴヌクレオチド断片は、約500から約1775個のヌクレオチドの長さである。さらに典型的には、オリゴヌクレオチド断片は、約1000から約1775個のヌクレオチドの長さである。より典型的には、オリゴヌクレオチド断片は、約1200から約1775個のヌクレオチドの長さである。
「相補的」という用語は、例えば、二本鎖DNA分子の2つの鎖間等のヌクレオチドもしくは核酸間、またはオリゴヌクレオチドプライマーと配列もしくは増幅される一本鎖核酸上のプライマー結合部位との間のハイブリダイゼーションまたは塩基対合を意味する。相補的なヌクレオチドは、概して、AおよびT(またはAおよびU)、またはCおよびGである。2つの一本鎖RNAまたはDNA分子は、最適に整列および比較され、適切なヌクレオチド挿入または欠失を有する一方の鎖のヌクレオチドが、もう一方の鎖のヌクレオチドの少なくとも約80%、通常は、少なくとも90%から95%、より好ましくは、もう一方の鎖のヌクレオチドの少なくとも約98%から100%と対合する場合に、「相補的」であると言われる。代替として、RNAまたはDNA鎖が、選択的ハイブリダイゼーション条件下でその相補体にハイブリダイズする場合に、相補性が存在する。典型的には、選択的ハイブリダイゼーションは、一続きの少なくとも14から25個のヌクレオチドにわたって少なくとも約65%の相補性、好ましくは、少なくとも約75%、およびより好ましくは、少なくとも約90%の相補性が存在する場合に起こる。
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチド分子は、「単離される」。本明細書で使用される「単離される」という用語は、その自然の状態において通常伴う成分が実質的または本質的に存在しない物質を意味する。例えば、本明細書で使用される「単離されたポリヌクレオチド」は、自然発生的状態で隣接する配列から精製されたポリヌクレオチドを意味する。「単離された」物質は、自然界またはその自然発生的状態において見られる物質よりも高い濃度における調製において存在するか、あるいは物質は、物質が自然界において関連しない別の材料を含む調製において存在する。
ある実施形態において、本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチド分子は、外因性分子である。ポリヌクレオチドまたはポリペプチド分子に関連して使用される場合の「外因性」という用語は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが導入される標的細胞種とは別の種から単離される、および/または派生することを意味する。
一実施形態において、SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドの発現を減少させるポリヌクレオチドが、当該植物に導入される。ポリヌクレオチドは、抑制ポリヌクレオチド、例えば、アンチセンスポリヌクレオチド(アンチセンスRNA等)、RNA干渉構成物(siRNA等)、および触媒アンチセンス核酸構成物(リボザイム等)であり得る。ポリヌクレオチドは、当業者に既知の方法を使用して、例えば、化学合成、組み換えDNA方法、またはアンチセンスRNAの場合は、プロモーターに連鎖される際の生体内または生体外転写によって調製され得る。
ある実施形態において、ポリヌクレオチドは、アンチセンスポリヌクレオチドである。「アンチセンスポリヌクレオチド」は、その部分配列を含む、本発明のコード配列のうちのいずれか1つまたはすべてに相補的であり、したがって、それらによってハイブリダイズすることができるポリヌクレオチド配列である。
全長アンチセンス分子を、この目的で使用することができる。代替として、HOG1にコードされたRNAの特異的領域に標的化した二本鎖オリゴヌクレオチド、センスおよび/またはアンチセンスオリゴヌクレオチド、またはその組み合わせが利用され得る。所定の遺伝子の発現量を減少させるためのオリゴヌクレオチド分子の使用は、当技術分野で既知である(例えば、Hamilton, A.J. and Baulcombe, D. C.(1999), ”A species of small antisense RNA in posttranscriptional gene silencing in plants”, Science 286:950−952、Waterhouse P.M. et al(1998), ”Virus resistance and gene silencing in plants can be induced by simultaneous expression of sense and antisense RNA”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:13959−13964、および国際特許公報WO99/53050、WO99/49029、WO99/32619を参照のこと)。オリゴヌクレオチド分子は、転写によって、全長または部分配列であり得る二本鎖および/またはアンチセンスRNA配列を生成するDNA構成物で植物細胞を形質転換することによって、原位置で提供され得る。ジーンサイレンシング効果は、大量の二本鎖RNAが生成されるように、センスおよび/またはアンチセンス配列の両方(全長または部分であり得る)を過剰生成することによって高めることができる。
上で考察されるように、アンチセンス構成物の配列は、HOG1遺伝子の種々の領域から得ることができる。例えば、アンチセンス配列は、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列に相補的なポリヌクレオチドからの、少なくとも15、少なくとも20、または少なくとも25個の連続した核酸残基を含み得る。アンチセンス配列は、約20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、または850個の連続した核酸残基を含み得る。望ましい数の残基を含むいかなる連続した配列も使用され得る。連続した配列は、当技術分野で既知の任意の方法およびアルゴリズムを使用して設計することができる。一例として、15個の連続した核酸残基を含むアンチセンスポリヌクレオチドが望ましい場合、第1のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列の301位で始まり、ポリヌクレオチド配列の315位で終わる15個の連続した核酸残基を含み得、第2のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列の302位で始まり、ポリヌクレオチド配列の316位で終わる15個の連続した核酸残基を含み得、第3のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列の303位で始まり、ポリヌクレオチド配列の317位で終わる15個の連続した核酸残基を含み得、第4のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列の304位で始まり、ポリヌクレオチド配列の318位で終わる15個の連続した核酸残基を含み得る。15個の連続した核酸残基を含むさらなるポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド鎖に沿った一続きの15個の連続した核酸残基を順次同定することによって得ることができる。別の長さの連続した配列が、同様の戦略を使用して調製され得ることは、当業者には明らかであろう。
一実施形態において、SEQ ID NO:2のポリヌクレオチド配列の271位で始まり、286位で終わる15個の連続した核酸残基を含む第1のアンチセンスポリヌクレオチドは、以下の核酸配列を有する。
Figure 2010517528
上記に概説される戦略を使用して、SEQ ID NO:2のポリヌクレオチド配列の272位で始まり、287位で終わる15個の連続した核酸残基を含む第2のアンチセンスポリヌクレオチドは、以下の核酸配列を有する。
Figure 2010517528
第3および第4のアンチセンスポリヌクレオチドは、以下の核酸配列のそれぞれを有する。
Figure 2010517528
15個の連続した核酸残基を含むさらなるアンチセンスポリヌクレオチドは、上記に説明されるように得ることができる。
ある実施形態において、アンチセンスポリヌクレオチドは、15個の連続した核酸残基を含む。特定の実施形態において、アンチセンスポリヌクレオチドは、少なくとも100個の連続した核酸残基を含む。
アンチセンス構成物は、プロモーター等のヌクレオチド配列の調節領域、またはコード(エクソン)もしくは非コード(イントロン)配列を標的化し結合するように設計され得る。一実施形態において、SEQ ID NO:2において標的化されるアンチセンスポリヌクレオチドが使用され、SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドの発現の減少をもたらす。一実施形態において、SEQ ID NO:15に示されるアンチセンスポリヌクレオチド(2つのSAHH特性ドメインに及ぶ、SEQ ID NO:2の850bp断片)が使用される。当該HOG1遺伝子の領域(SEQ ID NO:2)に、それらの長さにわたって少なくとも実質的に相補的である本発明のアンチセンス構成物を、生成することができる。アンチセンス構成物のその相補的な細胞配列への結合は、転写、RNA処理、輸送、翻訳、および/またはmRNA安定性を阻害する可能性がある。好適なアンチセンスポリヌクレオチドは、当業者に公知の方法によって調製することができる。典型的には、アンチセンスポリヌクレオチドは、自動合成器で合成される。好適なアンチセンスポリヌクレオチドは、細胞へのそれらの送達、一度細胞内に入った後のそれらの安定性、および/または適切な標的へのそれらの結合を向上させるために設計される修飾を含み得る。例えば、アンチセンスポリヌクレオチドは、1つ以上のホスホロチオエート結合の付加、または1つ以上のモルホリン環の骨格への含有によって修飾され得る。
代替として、RNAi構成物は、当技術分野で既知の方法に従って、SEQ ID NO:1を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を減少させるために使用され得る(例えば、Fire et al.(1998) Nature 391: 806−811、Hammond, et al .(2001) Nature Rev, Genet. 2: 110−1119、Hammond et al.(2000) Nature 404: 293−296、Bernstein et al.(2001) Nature 409: 363−366、Elbashir et al(2001) Nature 411: 494−498、WO99/49029、およびWO01/70949を参照のこと。それらの開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる)。RNAiは、低分子干渉RNA分子(siRNA)による特異的mRNAの破壊による、選択的転写後のジーンサイレンシングの手段を意味する。siRNAは、典型的には、二本鎖RNAの開裂によって生成され、1つの鎖は、不活性化されるメッセージと同一である。1つの鎖が、mRNA転写物の特異的領域と同一であり、直接導入される二本鎖RNA分子が合成され得る。代替として、一度細胞内に現れると二本鎖RNAに変換される、対応する二本鎖DNAを用いることができる。RNAiでの使用のための、および転写後のジーンサイレンシングを実現させるための、好適なsiRNA分子の合成のための方法は、当業者には既知である。当業者である読者は、SEQ ID NO:2を含むポリヌクレオチドの発現を減少させることができる好適なsiRNA構成物の範囲が、必要以上の実験を行うことなく、当業者に既知の通常の手技を使用して、当該遺伝子の配列の知識に基づいて、同定および生成することができることを十分に理解するであろう。
当業者はまた、標的配列とsiRNA配列との間に、必ずしも100%のヌクレオチド配列の一致がある必要はないことを十分に理解するであろう。不一致の許容範囲は、主に、配列内の不一致の位置によって決まる。場合によっては、2または3個のヌクレオチドの不一致は、許容できる可能性があるが、別の場合においては、たった1つのヌクレオチドの不一致も、siRNAの効果を打ち消すに十分である。特定のsiRNA分子の適合性は、必要以上の実験を行うことなく、当業者に既知の通常の手技を使用して決定され得る。例えば、SEQ ID NO:2に示される核酸配列から成るポリヌクレオチドに相補的な核酸配列から選択される少なくとも9個の連続した核酸残基を含む核酸配列を含むRNA干渉ポリヌクレオチドを使用することができる。一部の実施形態において、約9、10、11、または12個の連続した核酸残基を含む核酸配列を含むRNA干渉ポリヌクレオチドを使用することができる。望ましい数の残基を含むいかなる連続した配列も使用され得る。連続した配列は、当技術分野で既知の任意の方法およびアルゴリズムを使用して設計することができる。一例として、9個の連続した核酸残基を含むRNA干渉ポリヌクレオチドが望ましい場合、第1のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列の61位で始まり、ポリヌクレオチド配列の69位で終わる9個の連続した核酸残基を含み得、第2のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列の62位で始まり、ポリヌクレオチド配列の70位で終わる9個の連続した核酸残基を含み得、第3のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列の63位で始まり、ポリヌクレオチド配列の71位で終わる9個の連続した核酸残基を含み得、第4のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド配列の64位で始まり、ポリヌクレオチド配列の72位で終わる9個の連続した核酸残基を含み得る。9個の連続した核酸残基を含むさらなるポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチド鎖に沿った一続きの9個の連続した核酸残基を順次同定することによって得ることができる。別の長さの連続した配列が、同様の戦略を使用して調製され得ることは、当業者には明らかであろう。
一実施形態において、SEQ ID NO:2のポリヌクレオチド配列の42位で始まり、50位で終わる9個の連続した核酸残基を含む第1のRNA干渉ポリヌクレオチドは、以下の配列を有する。
Figure 2010517528
上記に概説される戦略を使用して、SEQ ID NO:2のポリヌクレオチド配列の43位で始まり、51位で終わる9個の連続した核酸残基を含む第2のRNA干渉ポリヌクレオチドは、以下の配列を有する。
Figure 2010517528
第3および第4のRNA干渉ポリヌクレオチドは、以下の配列のそれぞれを有する。
Figure 2010517528
9個の連続した核酸残基を含むさらなるRNA干渉ポリヌクレオチドは、上に説明されるように得ることができる。siRNAの設計および使用に関するさらなる情報は、www.mpibpc.gwdg.de/abteilungen/10−0/105/sirna.htmlで利用可能な、「The siRNA User Guide」で見ることができる。
SEQ ID NO:1を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現を減少させるさらなる手段は、RNA転写物を開裂することによって、野生型タンパク質の生成を防止することができる、リボザイム等の触媒アンチセンス核酸構成物を導入することによって実現され得る。リボザイムは、リボザイム触媒部位に隣接する標的に対する配列相補性の2つの領域によって、特定の配列に標的化され、その配列とアニールする。結合後に、リボザイムは、部位特異的に標的を開裂する。当該配列を特異的に認識および開裂するリボザイムの設計および試験は、当業者に公知の技術によって実現することができる(例えば、Lieber and Strauss,(1995) Mol. Cell. Biol. 15:540−551。その開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる。)。
ある実施形態において、SEQ ID NO:1を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現の減少は、共抑制の結果である。共抑制は、導入遺伝子に導入によって引き起こされる、内在性遺伝子の阻害を意味する。典型的には、共抑制は、内在性遺伝子と同一である、または内在性遺伝子とヌクレオチド配列相同性を共有する遺伝子構成物の1つ以上のコピーで形質転換した遺伝子導入植物に認められる。これらの形質転換した植物のいくつかにおいて、抑制は、例えば、アンチセンスRNAの偶発的生成の結果として、または導入された導入遺伝子と内在性相同体との間の異常染色体相互作用によって、導入された導入遺伝子および内在性相同体の両方に対して生じ得る(Hooper, The petunia paradox: added copies of genes have puzzling effects in plnats, J. NIH Res.3:49−54,(1991)。したがって、導入された導入遺伝子の発現レベルの増加をもたらす代わりに、共抑制は、SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドの発現レベルの減少をもたらす。
以下の実施例2、図9c、11a、11b、11d、および11g、ならびに表8に記載されるように、過剰発現構成物で形質転換したトランスジェニックイネ植物の中には、共抑制の結果としてアンチセンス構成物で形質転換した植物に見られた形質を示したものもあった。例えば、これらの共抑制植物は、主要な分げつの地上節からの分枝(1植物当たりの円錐花序数の有意な全体的増加をもたらす)、およびWTと比較して、平均種子数および植物バイオマスの2から3倍を超える増加を示した。
SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドの発現を減少させるために、1つまたは複数のヌクレオチド挿入、欠失、または置換を含む突然変異を導入するポリヌクレオチドもまた考慮される。1つまたは複数のヌクレオチド挿入、欠失、または置換は、導入された標的ヌクレオチド配列との標的突然変異部位の組み換えによって導入され得る。そのような導入されたヌクレオチド配列は、例えば、望ましい突然変異挿入点において連続しているか、またはその両側に位置する標的配列と相同のヌクレオチド配列によって両側に隣接するゲノムに導入されるヌクレオチド配列を含み得る。標的配列と相同のヌクレオチド配列は、標的配列と同質であることによって、相同組み換えの頻度を高くすることができる。
標的配列と完全に同質でない相同ヌクレオチド配列も使用することができる。相同ヌクレオチド配列と標的配列との間の不一致は、相同組み換えの頻度に悪影響を及ぼす可能性があるが、同質性は厳格には必要とされず、実質的な相同性が十分であり得る。本発明の目的で、相同配列と標的配列との間の相同性レベルは、少なくとも約90%の相同性、少なくとも約95%の相同性、少なくとも約99%の相同性、または100%の相同性であり得る。
突然変異は、化学的もしくは物理的突然変異誘発技術によって、またはトランスポゾンもしくはT−DNA等の挿入突然変異手段を使用して導入されてもよく、外因性核酸は、例えば、化学的に補助された細胞透過(例えば、カルシウム、リチウム、PEGを使用して)、エレクトロポレーション、微量注入、リポソーム媒介トランスフェクション、微粒子衝撃(バイオリスティクス)、アグロバクテリウム媒介形質転換、ウイルス感染、原形質融合、または当技術分野で既知のような別の任意の適切な手段を用いた、組み換え手段によって導入することができる。
SEQ ID NO:1に示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現の減少または増加は、植物が安定的または一過的に形質転換したかどうかに応じて、安定的または一過的であり得る(例えば、特定の発達期、または1または2世代における組織においてのみ)。「安定的に形質転換した」は、1つ以上の導入遺伝子の細胞のゲノムへの導入および組み込みを意味する。細胞の安定的な形質転換は、当技術分野で既知の技術によって、例えば、導入遺伝子のうちの1つ以上と結合することができる核酸配列を有する細胞のゲノムDNAのサザンブロットハイブリダイゼーションによって、または導入遺伝子配列を増幅するための細胞のゲノムDNAのポリメラーゼ連鎖反応によって検出することができる。
対照的に、「一過的に形質転換した」という用語は、導入遺伝子が形質転換細胞のゲノムに組み込まれない、1つ以上の導入遺伝子の細胞への導入を意味する。一過的な形質転換は、酵素免疫測定法(ELISA)を使用して、導入遺伝子のうちの1つ以上によってコードされたポリペプチドの存在を検出することによって、または導入遺伝子によってコードされたタンパク質(例えば、βグルクロニダーゼ)の活性を検出することによって検出することができる。したがって、安定的な形質転換体からのゲノムDNAが1つ以上の導入遺伝子を含む一方で、一過的な形質転換体からのゲノムDNAが導入遺伝子を含まない点で、安定的な形質転換体は、一過的な形質転換体と区別される。
本発明のポリヌクレオチドは、裸のDNAプラスミドの形で、またはベクターにおいて投与され得る。裸のDNAプラスミドは、当技術分野で既知の方法、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、微量注入、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、遺伝子銃の使用、またはDNAベクター輸送体の使用によって宿主細胞に導入することができる。
一部の好適な実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、ベクターにおいて投与され得る。ベクターは、外来配列の挿入および真核細胞への導入に適したプラスミドベクター、ウイルスベクター、または別の任意の好適な媒体(コスミド等)であり得る。ある実施形態において、ベクターは、本発明の抑制ポリヌクレオチド分子のDNA配列のRNAへの転写を指示することができる発現ベクターである。ウイルス発現ベクターは、例えば、エプスタインバーウイルス、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス由来ベクターを含む。一実施形態において、ベクターは、エピソームである。好適なエピソームベクターの使用は、染色体外で高コピー数で標的細胞内に抑制核酸分子を維持し、それによって、染色体組み込みの潜在的効果を除去する手段を提供する。
ベクターはまた、転写/翻訳制御シグナル等の発現制御因子、複製起点、ポリアデニル化シグナル、内部リボソーム侵入部位、プロモーター、エンハンサー等を含む核酸を含み得、制御因子は、遺伝子産物をコードする核酸に作用可能に関連する。例えば、コーディング領域のプロモーターへの作用可能な連鎖は、コーディング領域を特異的に認識、結合、および転写するRNAポリメラーゼによる、プロモーターからのコーディング領域の転写を可能にする。ある実施形態において、コーディング領域は、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターまたはゴマノハグサモザイクウイルス35Sプロモーター等の強力な構成的プロモーター下に配置される。本発明での使用に関して考慮される他の構成的プロモーターは、T−DNAマンノピン合成酵素、ノパリン合成酵素(NOS)、およびオクトピン合成酵素(OCS)プロモーターを含むが、これらに限定されない。
代替として、ストレス誘導性プロモーター(例えば、強光、乾燥、塩、または温度誘導性プロモーター)等の誘導性プロモーターを使用することができる。例示的な誘導性プロモーターは、光合成組織における発現のためのリブロース二リン酸カルボキシラーゼ(RuBisCo)小サブユニット遺伝子プロモーターまたはクロロフィルa/b結合タンパク質(CAB)遺伝子プロモーター、種子における発現のための種々の種子貯蔵タンパク質遺伝子プロモーター、および形質転換した植物の根系における発現のための根特異的グルタミン合成酵素遺伝子プロモーターを含む。
ベクターは、バイナリーベクターであり得る。例えば、上記のような構成的または誘導性プロモーターの制御下にある選択されたコーディング領域を含む、アグロバクテリウムバイナリーベクター系が使用され、カナマイシン耐性等の核の薬剤耐性マーカーに連鎖し得る。他の有用な選択可能なマーカー系は、抗生物質抵抗性(例えば、ハイグロマイシンもしくはビアラホスに対する抵抗性)または除草剤抵抗性(例えば、スルホニル尿素、ホスフィノスリシン、もしくはグリホサートに対する抵抗性)を与える別の遺伝子を含むが、これらに限定されない。一般的に使用されるバイナリーベクターは、pBIN19、pPVP、およびpGreenを含む。
一部の実施形態において、余分な、潜在的に不適切な別の翻訳開始(initiation)(すなわち、開始(start))コドン、または転写もしくは翻訳レベルで発現を妨害するか、もしくは減少させ得る別の配列を除去するために、クローンの5’非翻訳部分に除去、付加、または変更を行うことも有効であり得る。代替として、コンセンサスリボソーム結合部位(例えば、Kozak, J Biol. Chem. , 266:19867−19870(1991)を参照のこと)は、発現を高めるために開始コドンのすぐ5’側に挿入することができる。そのような修飾の好ましさ(または必要性)は、経験的に決定され得、これらおよび別の共通ベクター要素の選択は伝統的である。多くのそのような配列はまた、市販のベクターから得ることができる(例えば、Sambrook, J. et al., Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)、Sambrook, J. and Russell, D.W. (2001), ” Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press、およびそこに挙げられる参考文献、ならびにAusubel et al. (eds) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (2000)を参照のこと)。
本発明のベクターは、微量注入、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム媒介送達、ウイルス性感染症、原形質融合、および粒子媒介取り込みを含むが、これらに限定されない、DNAを細胞に導入するための当技術分野で既知である任意の好適な方法を使用して、標的細胞に導入することができる。任意に、本発明のポリヌクレオチドは、標的細胞にリコンビナーゼ、例えば、recAと同時投与され、それによって、相同組み換え率を高める。標的細胞は、必要であれば、好適なリコンビナーゼ標的配列をすでに含んでいるか、または含むために形質転換されている場合がある。例えば、リコンビナーゼタンパク質は、米国特許第6,255,113号に記載されるように、標的DNAにロードすることができる。ローディングプロセスを高めるために、本発明のポリヌクレオチドは、1つ以上の組み換えの核形成配列を含むか、またはリコンビナーゼでポリヌクレオチドをプレインキュベートすることによって、リコンビナーゼタンパク質で被覆し得、それによって、リコンビナーゼは、ポリヌクレオチドに非共有結合する(例えば、A. Vergunst et al(1998), Nucleic Acids Res. 26:2729、およびA. Vergunst and P. Hooykaas(1998), Plant Molec. Biol. 38:393 406、国際特許公報WO99/25821、WO99/25840、WO99/25855、およびWO99/25854、ならびに米国特許第5,780,296号、第6,255,113号、および6,686,515を参照のこと)。
本発明のポリヌクレオチドのうちの1つによる遺伝子導入植物は、”Methods for Plant Molecular Biology” (Weissbach & Weissbach, eds . , 1988)、Clough, S.J. and Bent, A. F. (1998) ”Floral dip: a simplified method for Agrobacterium−mediated transformation of Arabidopsis thaliana” Plant J. 16, 735−743、”Methods in Plant Molecular Biology” (Schuler & Zielinski, eds., 1989)、”Plant Molecular Biology Manual” (Gelvin, Schilperoort, Verma, eds., 1993)、および”Methods in Plant Molecular Biology−A Laboratory Manual” (Maliga, Klessig, Cashmore, Gruissem & Varner, eds., 1994)等の公表されている幅広い文献にも記載されるような、アグロバクテリウム媒介形質転換、プロトプラストのカチオンもしくはポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーション、微粒子衝撃、形質転換DNAで被覆されたマイクロビーズもしくは微粒子を有する溶液中の細胞懸濁液の振とう、直接DNA取り込み、リポソーム媒介DNA取り込み等を含むが、これらに限定されない、当業者に既知の標準的な植物形質転換方法を使用して生成することができる。Sambrook, J. et al., Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)、Sambrook, J. and Russell, D.W. (2001), ” Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press、およびそこに挙げられる参考文献、ならびにAusubel et al. (eds) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (2000)も参照されたく、これらの参考文献は、相互参照によって本明細書に組み込まれる。
形質転換の好ましい方法は、形質転換される植物に依存し得る。アグロバクテリウムベクターは、双子葉植物種を形質転換するために使用される場合が多い。単子葉植物種の形質転換に対しては、形質転換DNAで被覆された粒子による微粒子銃照射および形質転換DNAで被覆されたケイ素繊維が、核転換に有用である場合が多い。しかしながら、コムギを含む単子葉植物種のアグロバクテリウム媒介形質転換が現在既知である(例えば、国際特許公報WO97/48814を参照のこと。Hiei, Y. et al (1994), Plant J. 6(2):271−282、および国際特許公報WO92/06205も参照のこと)。
いかなる植物細胞をも、遺伝子操作された植物、植物細胞、植物組織、種子等を生成するために、本発明の方法および材料を使用して形質転換することができる。形質転換した植物細胞は、当技術分野で既知のような従来の方法に従って植物へと成長することができる(例えば、McCormick, S. et al(1986), Plant Cell Reports 5:81−84)を参照のこと)。得られる植物は、自家受粉する、同一の形質転換した系統または異なる系統で受粉する、または交配することができ、得られる植物は、SEQ ID NO:1に関連する望ましい形質、または同定されたその相同体を有する。この表現型性質が安定的に維持されることを確実にするために、2世代以上が成長する場合がある。代替として、栄養繁殖作物において、成熟変異体/遺伝子導入植物は、同一植物を生成するために切断または組織培養技術によって繁殖することができる。変異体/遺伝子導入植物の選抜が実行され得、商業的用途のために、新しい品種が得られ栄養繁殖し得る。
本発明の方法によって得られる植物から得られる、根、茎、葉、花芽、花、シュート、種子、塊茎、実、および枝を含むが、これらに限定されない、植物部位もまた提供される。
本発明の方法によって形質転換した植物または植物部位は、形質の発現に基づいて視覚的に同定され得る。より好ましくは、形質転換した植物または植物部位は、特異的オリゴヌクレオチドプローブおよび/または標的遺伝子の増幅を使用した分子分析を使用して同定される。分析される、対象の植物または植物部位からDNAまたはRNAは、相互参照によって本明細書に組み込まれる、Sambrook, J. et al., Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)、Sambrook, J. and Russell, D.W. (2001), ”Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press、およびそこに挙げられる参考文献、ならびにAusubel et al. (eds) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (2000)を含む(必ずしもこれらに限定されない)幅広い既知の文献に記載されるような、当業者に既知の数多くの好適な方法によって抽出され得る。Lukowitz, W., Gillmor, CS. and Scheble, W−R. (2000) ”Positional Cloning in Arabidopsis: Why It Feels Good to Have a Genome Initiative Working for You” Plant Physiology 123, 795−805、およびそこに挙げられる参考文献に記載される方法も参照されたい。
抽出されたDNAまたはRNAは、当技術分野で既知のような任意の好適な方法によって、導入遺伝子の有無に関して分析することができ、どの方法/戦略が用いられるかは、望ましい特異性、ならびに好適な配列および/または酵素の利用可能性によって決まることができる。例えば、抽出されたRNAは、TRIzol方法を使用して分析され、定量PCRを実行する前にRNaseフリーのDNaseIで抽出されたRNAを処理することができる。
HOG1の一部を増幅するための好適なプライマー対は、
Figure 2010517528
を含む。HOG1遺伝子またはその相同体を分析するための他の好適なプライマーまたはプライマー対は、SEQ ID NO:1に基づいて設計され得る。
PCR増幅反応での使用のための方法および試薬は、当業者に公知である。好適なプロトコルおよび試薬は、個々の状況に大きく左右される。手引きは、例えば、相互参照によって本明細書に組み込まれる、Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory (1989), Sambrook, J. and Russell, D.W. (2001), ”Molecular Cloning: A Laboratory Manual”, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press、およびそこに挙げられる参考文献、ならびにAusubel et al. (eds) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (2000)等の種々の情報源から得ることができる。当業者はまた、PCR反応の種々のパラメータが、望ましい生成物を増幅する能力に影響を及ぼすことなく、変更され得ることを容易に理解するであろう。例えば、用いられるMg2+濃度および温度は変更され得る。同様に、テンプレートとして使用されるゲノムDNAの量もまた、利用可能なDNAの量に応じて変更され得る。
別の分析方法は、大きさに基づくDNA断片の分離のための、当業者によって一般的に使用される技術である、アガロースまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動法等の電気泳動法を含む。ゲル中のアガロースまたはポリアクリルアミドの濃度は、主に、ゲルの分解能力を決定し、したがって、アガロースまたはポリアクリルアミドは、識別されるDNA断片の大きさによって決まる。
導入遺伝子またはその相同体の存在の検出および/または決定は、任意の適切なソフトウェアを使用したコンピュータ解析によって支援することができる。決定されたヌクレオチド配列の比較のための好適なソフトウェアパッケージは、当技術分野で公知であり、容易に入手可能である。
略語
2iP−2−イソペンテニルアデニン
AHK−シロイヌナズナヒスチジンキナーゼ
AHP−シロイヌナズナヒスチジンリン酸転移タンパク質
AMM−アスパラギン最少培地
ARR−シロイヌナズナ応答調節因子
AS−アンチセンス抑制
A−アデノシン
BA−ベンジルアデニン
BLAST−Basic Local Alignment Search Tool
CAB−クロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子
CaMV−カリフラワーモザイクウイルス
CRE−サイトカイニン応答
cDNA−相補的なデオキシリボ核酸
DNA−デオキシリボ核酸
ELISA−酵素免疫測定法
ETR1、ERS2、ETR2、およびEIN4−エチレン受容体
FAB−高速原子衝撃
G−グアニン
GFP−緑色蛍光タンパク質
HOG1−相同性依存型ジーンサイレンシング1
HSP−高スコア配列ペア
ITC−等温滴定熱量計
KD−解離定数
KNAT1−シロイヌナズナの結び目(Knotted)相同体1
LAI−葉面積指数
LAR−葉面積比
naRNA−メッセンジャーRNA
NCBI−National Center for Biotechnology Information
NOS−ノパリン合成酵素
OCS−オクトピン合成酵素
OE−過剰発現
OsCBP−オリザサティバサイトカイニン結合タンパク質
PCR−ポリメラーゼ連鎖反応
PNA−ペプチド核酸
PETCBP−ペチュニアサイトカイニン結合タンパク質
RNA−リボ核酸
RNAi−RNA干渉
RuBisCo−リブロース二リン酸カルボキシラーゼ
SAH−S−アデノシルホモシステイン
SAM−S−アデノシルメチオニン
siRNA−低分子干渉RNA
SSC−1−2x塩化ナトリウムおよびクエン酸ナトリウム
SAHH−S−アデノシル−L−ホモシステインヒドロラーゼ
SLA−比葉面積
STM−シュートメリステムレス転写因子
T−チミン
TDNA−転移DNA
Tm−熱融点
U−ウラシル
WT−野生型
ZR−ゼアチンリボシド
最良の形態
最良の形態を含む限定されない実施例、および比較例が、具体的な実施例を参照することによってより詳細にさらに記載されるが、いかようにも本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
シロイヌナズナ相同性依存型ジーンサイレンシング1(HOG1)は、推定サイトカイニン受容体である
材料および方法
植物材料および成長条件
シロイヌナズナのコロンビア生態型をこの研究に使用した。16時間の光条件/8時間の暗条件において、22℃で植物を生育した。実生アッセイのために、種子を表面殺菌し、2日間4℃で暗所において積層し、次に白色光(75μE.m.s−1)に曝露した。3%のスクロースおよび0.9%の寒天を含むMurashige−Skoog(MS)培地上で、22℃で苗を生育した。発芽実験に対して、スクロースのないMS培地上で、特定のバッチの種子を播種した。
シロイヌナズナのプラスミド構成および遺伝子形質転換
全長シロイヌナズナHOG1cDNA(SEQ ID NO:2)を5’および3’RACE戦略によって増幅した。cDNAの5’−および3’−cDNA(5’/3’−RACE)端配列を同定するために、SMARTTM RACE cDNA Amplification Kit(Clontech Laboratories)を使用した。これらのPCR生成物を配列決定した。シロイヌナズナHOG1に対する全長cDNA配列(SEQ ID NO:2)を得るために、部分配列およびRACE PCR生成物を整列させた。
pGreen0229バイナリーベクター(Yu et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:7827−7832, 2004)をすべての導入遺伝子構成物に使用した。アンチセンス抑制のために、2つのSAHH特性に及ぶHOG1の850bp断片を使用した(SEQ ID NO:15)。過剰発現構成物およびGFP−HOG1構成物に対して、HOG1cDNAの完全なオープンリーディングフレームを使用した。
2つのタグ間にTEV開裂部位を有するProt Aおよびカルモジュリン結合ペプチドタグで、TAPタグが付いたHOG1を調製した(Forler et al. Nature 21:89−92, 2003)。アグロバクテリウムツメファシエンス媒介の減圧湿潤方法(Hiei et al.、上記を参照のこと)によって、構成物をシロイヌナズナに導入した。
リアルタイムPCR分析
TRIzol方法(Invitrogen)を用いて、苗から全RNAを抽出した。One−Step RT kit(Qiagen)をメーカーの使用説明書に従って使用して実行した各定量PCR反応のために、RNaseフリーのDNaseIで処理した全RNA(0.5μg)を使用した。SYBRグリーンを使用して定量リアルタイムPCRを実行した。メーカーのプロトコルに従って、倍率変化の計算のためにチューブリン2のCt値に対してCt値を正規化した。
等温滴定熱量計(ITC)
ITC(MCSITC, Microcal, Northampton, USA)によって、HOG1とサイトカイニンとの間の相互作用のサイトカイニン結合親和性および熱力学分析を検査した。3つの自然発生的サイトカイニン(ゼアチン、ベンジルアデニン、およびイソペンテニルアデニン)、ならびにチジアズロン(尿素由来の合成サイトカイニン)を使用した。加えて、アデノシンおよびNADを対照分子として使用し、サイトカイニンへのHOG1の結合特異性を検証した。MICROCAL ORIGINバージョン2.9により、1つの結合部位に対して最適な非線形最小二乗法を使用して、データを分析した。近似曲線から結合化学量論(n)および会合定数(KA)を計算した。続いて、KDを1/KAとして計算した。2μMの精製されたTAP−HOG1を含むサンプル細胞への0.1μMの精製されたAHP1の注入から得られたベースラインドリフトに対して、生の熱データを補正した。HOG1に添加されるAHP1のモル比に対して熱ピーク面積をプロットすることによって、結合等温線を作成した。
GFP−HOG1融合タンパク質の細胞内局在化
個々の35S:GFP−HOG1融合構成物を発現する遺伝子導入植物をそれらの表現型に従って選抜した。5日齢の苗からの根を根切りし、半強度のMS培地に取り付け、直後に、505から530nmバンドパスフィルタセットと組み合わせた488nmアルゴンレーザーを有する共焦点レーザー顕微鏡(Zeiss CLSM 510)を使用した。
カルスのサイトカイニン反応アッセイ
実生根の断片をカルス誘導培地(0.5μg/mlの2,4−ジクロロフェノキシ酢酸および0.05μg/mlのキネチンを添加したMS培地)上で4日間インキュベートした。得られたカルスを、Inoueらの方法(Nature 409:1060−1063, 2001)に従って、10日間隔で新鮮培地に継代培養しながら、シュート誘導培地(0.2μg/mlのインドール酪酸および種々の濃度のゼアチンを添加したMS培地)上で30日間インキュベートした。
サイトカイニン含有量およびSAHH酵素アッセイ
サイトカイニンを100%のメタノールで全植物から抽出し、Yangら(FEBS 555:291−296, 2003)に記載されるように、イソペンテニルアデノシンおよびゼアチンリボシド検出キット(Sigma)を使用して定量化した。Rochaら(Plant Cell 17:404−417, 2005)に記載されるように、抽薹植物の粗タンパク質抽出物に対してSAHH分光光度アッセイを実行した。
サイトカイニン一次応答遺伝子の発現
サイトカイニン誘導性遺伝子発現の定量リアルタイムPCR(qRT−PCR)分析のために、3%の(w/v)スクロースを含むMS培地上で種子を発芽させ、6日間生育した。5分、15分、30分、または1時間、0μM、0.01μM、0.1μM、1μM、または5μM[0.1%のジメチルスルホキシド(DMSO)中で可溶化し、MS培地で希釈した]を添加した同一のMS+スクロース液体培地(寒天を含まない)において苗をインキュベートすることによって、サイトカイニン処理を実行した。対応する期間、DMSO(0.1%、処理のためにサイトカイニンを溶解するために使用される濃度)で対照苗をインキュベートし、発現解析に使用した。RNA調製前に、WT、OE、およびAS苗を混合し、RNAlater溶液(Qiagen, Valencia, CA)中に保存した。Rneasy Plant Mini Kit(Qiagen)を使用して全RNAを抽出した。SYBRグリーンRT−PCR試薬(Applied Biosystems)を使用し、二本鎖cDNAを合成した。BAおよびDMSOの存在下、また非存在下で、WT、OE、およびAS苗の生物学的複製のそれぞれに存在する転写物の数を、3つの独立した複製から決定した。メーカーの使用説明書に従って(ABI Prism 7700 Sequence Detection System, User Bulletin #2)、転写物の誘導率を計算した。
TAP−HOG1およびAHP1の相互作用研究
すでにForlerら(上記を参照のこと)に記載されるように、ProtAおよびCBPタグを使用して、TAP−HOG1タンパク質複合体を精製した。ProtAプルダウンのために、IgG Sepharose beads(Amersham Biosciences #17−0969−01)を使用し、CBPプルダウンのために、カルモジュリン親和性樹脂(Stratagene #214303−52)を使用した。ウエスタンブロット分析のために、標準的なプロトコルを使用して、精製されたタンパク質をSDS−PAGEに供し、PVDF膜にブロットした。さらに、プルダウンしたHOG1複合体をSDS−PAGE電気泳動に供し、得られた顕著なバンドを同定するためにN末端配列決定を行った。AHP1は、主要な推定相互作用タンパク質バンドであるため、AHP1に対するcDNAをシロイヌナズナからクローニングし、組み換えAHP1を6Hisタグおよびチオレドキシンタグで大腸菌BL21において発現した(発現ベクターPET32EK/LICにおいて、Novagen)。HISタグ親和性カラム(BioRad)を使用して、タグを有する組み換えAHP1を精製した。上記に概説されるように、ITC(MCS−ITC, Microcal, Northampton, USA)を使用して、タンパク質相互作用(HOG1−AHP1)研究を実行した。
結果および考察
本発明者らは、植物発達のサイトカイニンシグナル伝達および調節へのHOG1の関与を分析するために、アンチセンス抑制および過剰発現戦略を使用した。
HOG1(SEQ ID NO:2)のcDNAクローンは、植物および動物のいくつかの種からのS−アデノシル−L−ホモシステインヒドロラーゼ(SAHH)との有意な配列相同性を示した。いくつかの植物種からの単離された相同体との比較は、HOG1が、多様な植物種に保存されていることを示した(図6)。特に、ペチュニア(SEQ ID NO:14)における相同対は、HOG1と78%の配列相同性を共有し、タバコ(SEQ ID NO:4)における相同対は、HOG1と78%の配列相同性を共有し、オリザサティバ(SEQ ID NO:6)における相同対は、HOG1と82%の配列相同性を共有し、トリチカムエスチバム(SEQ ID NO:4)における相同対は、HOG1と83%の配列相同性を共有した。
HOG1のサイトカイニン結合親和性を検査するために、トランスジェニックシロイヌナズナ(35S:TAP−HOG1を有する)からTAP−HOG1タンパク質を精製し、タンパク質−タンパク質相互作用研究にも使用した。遺伝子導入植物が、HOG1過剰発現系統のものと同一の表現型を示したため、タグが付いたタンパク質は機能していることを示した。タンパク質A(Prot−A)およびCBP(カルモジュリン結合ペプチド)タグを使用して、タンパク質を精製した。精製後に、タンパク質は、TAPタグのCBP部分を保持し、60kDaの大きさをもたらした一方で(図1A差し込み図)、TAPタグのCBP部分を有しないHOG1のみは、56kDaであるはずである。
(a)HOG1は、高親和性でサイトカイニンと結合する
サイトカイニン分子は、精製されたTAP−HOG1および種々のサイトカイニンの等温滴定熱量計(ITC)によって示されるように、効率的に精製されたタンパク質と結合する。リガンド受容体結合反応速度を研究するために使用したITCという生物物理学的技術は、結合親和性(KA)を含む相互作用の重要な熱力学パラメータ、したがって、解離定数(KD)および結合化学量論(n)を得る。
サイトカイニン分子(ゼアチン、ベンジルアデニン、およびイソペンテニルアデニン)、ならびにチジアズロン(サイトカイニン活性を有する合成尿素由来分子)を結合研究のために使用した。アデニンおよびNADを対照として使用し、HOG1の結合特異性を決定した。
ITCによって決定される結合化学量は、2つのHOG1単量体が、1つのサイトカイニン分子を結合させるが(2:1の化学量)(図1A〜1C)、チジアズロンを結合させないことを示した(図1Bおよび1C)。これは、サイトカイニンを結合させるHOG1の特異性を示す。
図1Cから分かるように、解離定数(KD)は、試験された異なるサイトカイニンに対して、16.9から20.6nMに及んだ。さらに、アデニンに対するKDは、2.1μMであり、サイトカイニン分子に対してよりもアデニンに対して、有意に低いHOG1の親和性を示唆する。これは、いくつかの組織培養において比較的高濃度で使用される場合に、アデニンが弱いサイトカイニン応答のみを引き出すという事実と一致している。
NADは、SAHHの既知の補因子でるため、ITCによるHOG1およびNAD複合体のKD値を測定し、39.5μMであることが分かり(図1C)、HOG1が、サイトカイニン受容体であり、機能的なSAHH酵素である可能性が低いことをさらに示唆する。
(b)HOG1は、原形質膜上に局在している
Columbia University(www.cubic.bioc.columbia.edu)からのPHDhtmウェブ資源を使用して、HOG1タンパク質に対するドメイン検索を実施した。検索は、HOG1タンパク質が、典型的な受容体様構造を有することを示した。HOG1タンパク質は、予測膜貫通ヘリックス(SEQ ID NO:1の残基59から76から18個のアミノ酸に及ぶ)を有し、予測サイトカイニン結合ドメイン(SEQ ID NO:1の残基77から485から409個のアミノ酸に及ぶ)が膜の外側に存在する。タンパク質はまた、下流シグナル伝達中間体との相互作用に対して、細胞質内に推定部位を有し、N末端において58個のアミノ酸(SEQ ID NO:1の残基1から58)を含む。
HOG1タンパク質の細胞内局在化を物理的に決定するために、緑色蛍光タンパク質(GFP)−HOG1融合を発現するトランスジェニックシロイヌナズナ植物を生成した。単離された7つの独立したGFP系統のうち、2つを分析のために選抜した。GFP−HOG1融合タンパク質を発現するT3世代遺伝子導入植物は、HOG1過剰発現系統と同一の表現型を示し(図1D)、融合タンパク質がその機能を保持したことを示す。
選抜された系統からの、半強度のMS培地に取り付けた、根切りしたばかりの根の共焦点レーザー顕微鏡法は、GFP−HOG1が原形質膜上に位置することを示し(図1E)、HOG1がサイトカイニンに対する膜受容体であることを示唆する。対照として、シロイヌナズナに関する以前の報告を使用したが、35S:GFPは、細胞質および核において極めて均一に発現されることが示されている(Zhang Plant Cell 17:1306−1316, 2005)。配列分析に基づいて、ヘリックス膜貫通領域(18個のアミノ酸に及ぶ)は、HOG1および別の植物相同体において存在するが、ヒトおよびラットSAHHにおいては存在せず(図6)、その両方は、細胞質タンパク質である(Shu et al . Proc. Natl. Acad. Sci. USA 103:19788−19793)。さらに、活性SAHH酵素は、酵素が、種々の細胞コンパートメントにおいて起こるメチル化反応と密接に関連しているため、原形質膜結合性のままでいるよりもむしろ、可溶性タンパク質になることが予測される。したがって、GFP−HOG1を用いた本実験の結果は、HOG1タンパク質が膜受容体であることを示唆する。
(c)HOG1過剰発現およびアンチセンス抑制植物は、反対の表現型を示す
定量リアルタイムPCR分析は、HOG1が、葉および花序茎において比較的高いレベルで、シロイヌナズナにおいて構成的に発現されることを示した(図1F)。これは、HOG1が、植物発達の調節において基本的な役割を果たす可能性があることを示唆する。
植物成長および発達へのHOG1発現量の調整の効果を検査するために、種々のHOG1過剰発現およびアンチセンス抑制系統を生成した。種々のHOG1過剰発現系統が、野生型と比較して、HOG1転写レベルにおいて3から20倍の増加を示した一方で(図2A)、アンチセンス系統は、2から10倍の抑制を示した(図2B)。
導入遺伝子発現は、植物発達のすべての期に影響を及ぼし、いくつかの独立したトランスジェニック系統において一貫した表現型を示した(図2C、2D、2E、および2F)。28個の独立したトランスジェニック過剰発現系統および21個のアンチセンス抑制系統に対して表現型を記録し、変化が、導入された遺伝子産物によって引き起こされたというさらなる裏付けを提供した。種子発芽は、野生型と比較して、過剰発現系統において4から5日早く、野生型と比較して、アンチセンス抑制系統においてほぼ5日遅く発生した(表1)。それにもかかわらず、過剰発現系統の発芽直後に、有意な成長遅延が認められた。新しいロゼット葉の形成および展開もまた、過剰発現系統における全栄養成長にわたって遅延および制限された。
(表1)種子発芽、開花の開始、および老化
Figure 2010517528
5つの独立した系統を各観察に使用した。各系統に対して、データは、3つの独立した複製からの平均である。アンチセンス系統は、発芽の遅延、抽薹の遅延、および老化の遅延を示した。
アンチセンス抑制系統は、種子発芽の遅延にもかかわらず、シュートの生長の遅滞は示さなかった。開花の早期開始は、抽薹時に少なくとも8および14枚の葉をそれぞれ有する野生型シロイヌナズナおよびアンチセンス系統(図3B、表1)と比較して、4ロゼット葉期において抽薹を有する過剰発現遺伝子導入植物において認められた(図3A、表1)。
開花の開始後に、過剰発現系統は、葉バイオマスのそれ以上の増加は示さず、これらの系統に対して、老化が始まった30日の成長後でさえ、腋生花序の枝は形成されなかった(図3C)。対照的に、アンチセンス系統は、腋生花序の枝の大量成長を示し、老化は、その期間中にこれらの系統において明白ではなかった(図3C)。アンチセンス系統はまた、最大の葉面積(1葉当たり2.94+0.15cm)を有した。葉面積は、過剰発現系統(0.38+0.06cm)および野生型植物(1.00±0.06cm)において有意に低かった(図3D、表2および3)。植物の全高、長角果の大きさ、ならびに結果として、1長角果当たりの種子数および種子重量は、過剰発現系統において有意に減少したが(表2および3)、アンチセンス抑制系統における長角果の長さは、野生型のものよりも有意に高かった(図3E)。トランスジェニック系統において、葉面積と1長角果当たりの種子重量との間、ならびに葉面積と1長角果当たりの種子数との間に正相関があった(表3)
(表2)葉面積、1長角果当たりの種子重量および種子数
Figure 2010517528
データは、3つの独立した複製からの平均±標準偏差を表す。5つの独立した系統をそれぞれの場合に使用した。アンチセンス系統は、野生型と比較して、葉バイオマスにおいて3倍の増加および種子収量において2倍の増加を有した。
(表3)バイオマスおよび種子収量に寄与するパラメータのピアソンの相関係数(r)
Figure 2010517528
葉面積(cm)×1長角果当たりの種子重量(mg)(a)、葉面積(cm)×1長角果当たりの種子数(b)、および1長角果当たりの種子重量(mg)×1長角果当たりの種子数(c)で相関係数を検証した。相関分析後に、スチューデントのt検定を実行した。t検定値を括弧内に示す。「r」値は、すべての試験における正相関を示す。これに基づいて、HOG1のアンチセンス抑制は、葉バイオマスおよび種子収量に寄与する主要パラメータの増加をもたらすことが予測される。
過剰発現系統は、野生型植物と比較して早く成熟し、過剰発現系統は、野生型植物よりもほぼ1週間早く成熟したが(図3A)、アンチセンス抑制系統は、野生型よりもほぼ2週間遅れて成熟した。さらに、老化は、野生型シロイヌナズナと比較して、HOG1のアンチセンス抑制系統において、2週間遅延した(図3C、表1)。
HOG1のサイトカイニン受容体としての役割を研究するために、トランスジェニックHOG1植物のカルス培養を、CRE1の研究(Inoue et al.、上記を参照のこと)と同様に、外因性サイトカイニンに対するそれらの感受性に対して検査した。全植物における茎頂分裂組織とは異なり、カルス培養は、培養液中に提供される外因性サイトカイニンに応答する可能性を有し、無傷植物にあるようなホルモンの長距離輸送に依存しない。HOG1過剰発現系統および野生型からのカルス培養は、通常の細胞増殖および不定芽誘導を示した(図3F)。対照的に、アンチセンスHOG1系統からのカルスは、添加されたゼアチンのすべての濃度において、強いサイトカイニン非感受性表現型、すなわち、細胞増殖の欠如および不定芽誘導の不足を示した(図3F)。これらのデータは、HOG1が、サイトカイニン応答の正の調節因子として機能することを示す。
(d)遺伝子導入植物の対照的な表現型は、内在性サイトカイニンレベルと相関性を有する
AHK型サイトカイニン受容体の三重機能喪失変異体は、このHOG1のアンチセンス抑制で認められるものと反対の表現型をもたらした(Higuchi et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:8821−8826, 2004)。この相反する表現型は、過剰発現系統におけるHOG1タンパク質によるサイトカイニンの移行の潜在的な障害によって説明され得る。
野生型、過剰発現、およびアンチセンス抑制系統の3つ独立した系統のそれぞれに対して、内在性サイトカイニン含有量を決定した。測定した異なるサイトカイニンの濃度は、野生型と比較して過剰発現系統において有意に減少した(図3G)。イソペンテニルアデニンは、シロイヌナズナの主要サイトカイニンであり、その濃度は、野生型のものと比較して過剰発現系統において約60%減少した(図3G)。特に、サイトカイニンが根から茎頂分裂組織に移行しなければならないという理由から、過剰発現系統におけるタンパク質のより高い利用可能性は、原形質膜にわたってサイトカイニンの輸送の障害となり得る。これは、観察されるように、明らかな機能喪失表現型、すなわち、植物高の減少および植物バイオマスの不足をもたらす(図3A)。
対照的に、アンチセンス系統において、イソペンテニルアデニンの濃度は、野生型と比較して60%を超えて増加し、過剰発現系統に対して4倍以上の増加に相当する(図3G)。これは、大量分枝およびバイオマスの有意な増加の反対の表現型をもたらした。
これを実験的に試験するために、トランスジェニック系統の表現型へのサイトカイニンの外からの添加の効果を研究した。幼苗期から1日おきに0.01μMのゼアチンまたは0.01μMのキネチン噴霧を受けた過剰発現系統は、4葉期において抽薹した未処理の過剰発現系統と比較して、6から7葉期において抽薹を示した(図2G、2H、2I、2J、および図7)。野生型シロイヌナズナは、約8葉期において抽薹し、過剰発現系統が、サイトカイニンの外からの添加によって「部分的に救出された」ことを示した。
さらに、アンチセンス抑制系統は、サイトカイニンの外からの添加に反応した有意な変化は示さず(図7)、サイトカイニンの移行の障害が、われわれの研究において認められた相反する表現型に関与する可能性が高いという見解を裏付けた。
(e)精製されたHOG1は、SAHH酵素活性を欠いている
hog1点変異体が、野生型のものと比較して、粗タンパク質抽出物においてわずかに低いSAHH活性を有したという以前の報告(Rocha et al. Plant Cell 17:404−417, 2005)にもかかわらず、野生型(2.92±0.15nmol/min/mgのタンパク質)、アンチセンス(2.84±0.21nmol/min/mgのタンパク質)、および過剰発現系統(3.02±0.19nmol/min/mgのタンパク質)からの粗タンパク質抽出物におけるSAHH活性に有意差はなかった。さらに重要なことに、本データは、精製されたTAP−HOG1タンパク質が、SAHH酵素活性を欠いていることを示した(図3H)。これらの結果は、このHOG1タンパク質が、サイトカイニン受容体であり得ることを示唆する。
さらに、点変異体(hog1−1)の粗タンパク質抽出物において測定されたSAHH活性のわずかな差は、別の何らかの遺伝子座によって左右され得ることが、Rocha et al(上記を参照のこと)において強調された。加えて、SAHH活性の減少は、SAHレベルの増加およびSAM:SAHの比の減少をもたらすはずである。しかしながら、hog1−1ホモ接合体が、SAHレベルにおける有意な増加を示し、SAM:SAHの比の変化が比較的小さかったことが示された。これらの変異体に示されるゲノムワイドな低メチル化もまた、SAM:SAHの比が未処理の材料と比較して300倍減少した場合のみ発生した、(S)−9−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アデニンによって誘導された浮遊培養物におけるタバコゲノムの低メチル化とは対照的であった。これらの結果は、植物におけるSAHHと配列相同性を有するサイトカイニン結合タンパク質が、活性AHH酵素である代わりに、サイトカイニン受容体であり得ることを示唆した。
(f)HOG1は、サイトカイニン一次応答遺伝子の発現に影響を及ぼす
組織培養反応は、HOG1がサイトカイニン応答の正の調節因子であるという見解を裏付けているが、6週間にわたる試験管内増殖を伴い、その間に、別のプロセスが表現型に寄与した可能性もある。したがって、比較的短い期間において、サイトカイニンによって直接誘導されることが既知である、選択された遺伝子の発現も検査した(図4A、4B、および表4)。これらの遺伝子は、KNAT1およびSTM(メリステム機能に関与するホメオボックス遺伝子、外因性サイトカイニンの添加後5分以内に誘導された)、ならびにARR4、ARR5、およびARR6(サイトカイニンによって誘導されたA型応答調節因子)を含んだ。サイトカイニン(ベンジルアデニン、BA、0μM、0.01μM、0.1μM、1μM、または5μMにおいて)でのパルス処理前後に、野生型、HOG1過剰発現、およびHOG1アンチセンス抑制系統の苗からのRNAを使用して、定量リアルタイムPCR分析を実行した。いくつかの時間間隔(5分、15分、30分、および1時間)にわたって採取した組織に対してRNA抽出を実行した。BAの添加は、KNAT1およびSTM転写物の用量依存的な増加をもたらし、系統におけるHOG1の発現レベルおよび内在性サイトカイニン濃度に比例していた(図4A、4B、表4)。HOG1アンチセンス抑制系統におけるBA処理を行わない場合も、KNAT1およびSTMの転写レベルは、6から8倍有意に上方制御されたが、未処理の過剰発現系統は、未処理の野生型と比較して、これらの転写物の4から7倍の減少を示した(図4A)。しかしながら、5μMのBAの添加後1時間以内に、過剰発現系統(例えば、OE1およびOE12)は、未処理の野生型植物のものと比較して、KNAT1およびSTM転写物のレベルにおいて有意差を示さなかった(図4A、表4)。これは、この系統が内在性サイトカイニンレベルの減少を有するという知見と一致している。
(表4)選択されたサイトカイニン応答性遺伝子の定量リアルタイムPCR分析
Figure 2010517528
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サイトカイニン(ベンジルアデニン、BA、0μM、0.01μM、0.1μM、1μM、または5μMにおいて)でのパルス処理前後の、野生型、HOG1過剰発現、およびアンチセンス抑制系統の苗からのRNA。3つの独立したアンチセンス抑制(AS1、AS8、AS21)および過剰発現(OE1、OE12、OE18)系統から、いくつかの時間間隔(5分、15分、30分、および1時間)にわたって採取した組織に対して、RNA抽出を実行した。分析した遺伝子は、KNAT1、STM(メリステム機能に関与するホメオボックス遺伝子)、ARR4、ARR5、およびARR6(サイトカイニンによって誘導されたA型応答調節因子)を含んだ。BAの添加は、KNAT1およびSTM転写物の用量依存的な増加をもたらした(倍率変化値の隣の矢印は、上方制御↑または下方制御↓を示す)。ARR1、ARR2(B型応答調節因子)、AHK2、AHK3、AHK4(ヒスチジンキナーゼサイトカイニン受容体)も分析した。しかしながら、これらの遺伝子が発現において2倍未満の変化を示したため、データはこの表に示していない。
検査された遺伝子の発現レベルは、約4倍高い内因性濃度のサイトカイニンを有ルスアンチセンス系統において、3から6倍高かった。したがって、HOG1発現は、これらの植物においてサイトカイニン応答と相関することが示された。これは、STMおよびKNAT1の両方の発現が、過剰発現する細菌ipt遺伝子によって引き起こされたサイトカイニン生合成の増加を有するシロイヌナズナ植物において有意に増加したという以前の報告と同様である(Rupp et al. Plant J 18:557−563, 1999)。これらの知見は、植物発達中のサイトカイニン応答へのHOG1の直接関与を示す。
加えて、HOG1トランスジェニック系統の表現型が、サイトカイニンシグナル伝達に関連していたかどうかを決定するために、サイトカイニンによって誘導された前初期遺伝子の最もよく知られているクラス、すなわち、A型ARR遺伝子のARR4、ARR5、およびARR6を研究した(図4B)。本データは、これらの遺伝子が、単一のサイトカイニンパルス処理後数分間のうちに上方制御されたことを示し、シロイヌナズナにおける以前の知見と一致している(Brandstatter and Kieber Plant Cell 10:1009− 1020, 1998、D’Agostino at el Plant Physiol 124:1706−1717, 2000、Taniguchi et al. FEBS Lett. 429:259−262, 1998、To et al. Plant Cell 16:658−671, 2004)。
内在性サイトカイニンレベルの有意な減少を有するHOG1過剰発現系統(例えば、OE12)(図3G)が、研究された3つのA型ARR遺伝子の発現量において、3から9倍の減少を示したことが分かった。これは、BA処理によって大幅に克服することができ、一次サイトカイニンシグナル伝達経路を通じたフラックスの減少と一致している。同様に、より高い内在性サイトカイニンレベルを有するアンチセンスHOG1系統(例えば、AS8)は、相応してより高いARR発現レベル(4から9倍の増加)を有した(図4Bおよび表4)。これらのデータは、A型ARR遺伝子が新規サイトカイニン受容体HOG1の下流にあることを示す。同様に、ARR6は、CRE1の過剰発現系統において、外因性サイトカイニンに応答して誘導されることがすでに示されており、ARR6がサイトカイニン受容体であることを確認した(Hwang and Sheen Nature 413:383−389, 2001)。
さらに、A型ARRの知見が特異的応答であることを確実にするために、これらのトランスジェニック系統における2つのB型ARR(ARR1およびARR2)の転写レベルを研究した。ARR1およびARR2は、この実験条件下でBA処理の有意な影響を受けず(表4)、過去の結果と一致している(Imamura et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:2691−2696/ 1998; Kiba et al. Plant Cell Physiol. 40:767−771, 1999; Hutchison et al.Plant Cell 18:3073−3087, 2006)。
AHK型サイトカイニン受容体、すなわち、AHK2、AHK3、およびCRE1/AHK4の関与を除外するために、異なるトランスジェニック系統におけるそれらの転写レベルを決定した。野生型のものと比較して、HOG1過剰発現およびアンチセンス抑制系統において有意差は見られず(データは図示せず)、HOG1が、これらの3つの既知のサイトカイニン受容体とは無関係に作用することを示す。
(g)TAP−HOG1は、AHP1と相互作用する
HOG1タンパク質によって形成されるシグナル伝達複合体を決定し、サイトカイニン受容体としてのその役割をさらに裏付けるために、HOG1と相互作用するタンパク質を単離および同定した。
N末端TAPタグ(TAP−HOG1)でHOG1を発現する6つの独立したトランスジェニックシロイヌナズナ系統を生成した。これらの植物は、HOG1過剰発現系統と同一の表現型を有し、融合タンパク質が植物において機能していることを示した。3週齢のTAP−HOG1遺伝子導入植物からの全タンパク質抽出物に対して、プルダウンアッセイを実行した。これらの植物におけるTAP−HOG1融合タンパク質の存在を検出するために、PAP抗体を使用して免疫ブロット分析を実行した際に、71kDaのタンパク質バンドを検出した(図4C)。HOG1の予測分子量は56kDaであり、タグは15kDaであり、したがって、71kDaの融合タンパク質バンドとなる。Forlerらの方法(上記を参照のこと)を使用して、タグおよびIgGビーズを使用して、TAP−HOG1とのタンパク質複合体を全タンパク質抽出物から溶出させた。タンパク質複合体をSDS−PAGEに供し、顕著なタンパク質バンドのN末端配列決定は、それがAHP1であったことを明らかにした。続いて、シロイヌナズナからのPCRによって、AHP1に対するcDNAをクローニングし、組み換えAHP1を大腸菌において発現した(図4D)。AHP1は、精製されたTAP−HOG1タンパク質と直接相互作用することが、ITCを使用して示された(図4E)。ITCにおいて2つの精製されたタンパク質によって形成された複合体に対する解離定数KD値は、23.8nMであった。
シロイヌナズナヒスチジンリン酸転移タンパク質(AHP1、AHP2、AHP3、AHP4、およびAHP5)は、膜受容体と核応答調節因子との間で細胞質の核シャトルとして機能するため、サイトカイニンシグナル伝達の重要な中間体である。HOG1がAHP1と相互作用し、サイトカイニンシグナル伝達の重要な中間体であるという実証は、HOG1タンパク質の受容体機能をさらに確認した。
本データは、HOG1が、以前に記載されたAHKファミリー受容体に加えて、新規サイトカイニン受容体であることを示す。カイラン、菊、アマランサス、およびイネから、いくつかの相同体を単離した。これは、HOG1が多様な植物種中に存在し、植物発達の調節において重要であることを示す。上記のサイトカイニンシグナル伝達経路は、バクテリアの2成分反応系と類似したリン酸リレー経路である。これは、サイトカイニンが、植物発達の調節においていくつかの役割を果たし、2つ以上の種類のサイトカイニン受容体の存在が、そのような多面的機能を高めることができたという事実と一致している。そのような現象は、2つ以上の受容体(例えば、ETR1、ERS2、ETR2、およびEIN4)が関与する、エチレンシグナル伝達においても認められている。さらに、すべての植物部位におけるHOG1の構成的発現は、植物発達におけるタンパク質の重要な役割を示唆する。
別の受容体がサイトカイニンに対して存在し得るという可能性は、ヒスチジンキナーゼサイトカイニン受容体の三重変異体(crel−12ahk3−3ahk2−2(Col))が、極度の矮性および不稔の表現型を有してはいるが、植物を生成したという知見に基づいて強調された。3つのAHK型サイトカイニン受容体における機能喪失変異体は、このHOG1遺伝子のアンチセンス抑制で認められるものと比較して、反対の表現型をもたらした。本研究において認められた相反する表現型は、シュートにおける内在性サイトカイニンレベルの変化の結果であると考えられる。HOG1タンパク質によるサイトカイニン分子の高親和性結合は、低KD値によって示された。本研究に使用された強プロモーター(カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター)の2つのコピーによって、遺伝子が有意に発現された場合、タンパク質の得られた増加および異所性発現は、利用可能な遊離サイトカイニンの有意な減少をもたらした(図3G)。これは、原形質膜にわたってサイトカイニンの輸送の障害として機能するタンパク質による可能性がある。これは、茎頂が根端(サイトカイニン生合成の主要部位)からサイトカイニンを受容する必要があるので、重要である。これは、明らかな機能喪失表現型、すなわち、植物高の減少および植物バイオマスの不足をもたらした。
対照的に、アンチセンス植物において、茎頂分裂組織の利用可能な遊離サイトカイニン分子における有意な増加があり、大量分枝およびバイオマスの有意な増加の反対の表現型をもたらす(図3G)。
植物におけるTAPタグタンパク質精製の適用は、タバコにおける抵抗性タンパク質Cf9およびシロイヌナズナにおけるCTR1タンパク質を含む、いくつかのタンパク質複合体の特性化を可能にした。本研究は、シロイヌナズナヒスチジンリン酸転移(AHP1)をHOG1と相互作用するタンパク質として同定し、AHP1がHOG1に対する下流シグナル伝達中間体であることを示す。組み換えAHP1が発現され、精製されたTAP−HOG1タンパク質と直接相互作用することが示された。ITCにおいて2つの純タンパク質によって形成された複合体に対する解離定数値は、23.8nMであり、HOG1の受容体機能に対する重要な裏付けを提供する。
(h)サイトカイニンシグナル伝達経路に対する新しい受容体としてのHOG1
サイトカイニン応答を媒介するための新しいサイトカイニン受容体HOG1の役割をよりよく理解するために、サイトカイニンによって誘導された一次応答遺伝子、すなわち、A型ARR遺伝子(すなわち、ARR4、ARR5、およびARR6)を分析した。ARRの発現量の変化は、図4Bおよび表4に見られ、HOG1アンチセンスおよび過剰発現系統における測定されたサイトカイニン含有量に加えて、内在性サイトカイニンへの応答が、HOG1の影響を受けることを示唆する。これは、HOG1タンパク質を新しい受容体として、およびARRをAHP1に沿ったHOG1サイトカイニンシグナル伝達経路の下流シグナル伝達カスケードメンバーとして確認する。
したがって、本データは、すでに記載された2成分系に加えて、シロイヌナズナにおけるHOG1を介したサイトカイニンシグナル伝達経路を提供する(図5)。以前に報告されたヒスチジンキナーゼ受容体の遺伝子修飾は、HOG1のアンチセンス抑制とは異なり、栄養成長および生殖成長に影響を与えることが示されなかったことに留意することが重要である。本データは、この受容体が、バイオマスおよび穀粒収量の増加のための作物の生物工学的な改良に対する主要な標的としての機能を果たすことを示す。
推定サイトカイニン受容体に対する遺伝子のアンチセンス抑制によるイネにおけるバイオマスおよび穀粒収量の増加
材料および方法
植物材料
イネ、オリザサティバジャポニカ種に対して、栽培品種日本晴を使用した。これは、日本由来の市販品種である。別のイネ栽培品種(インディカ種)に対しても同様の研究が実行され得る。野生型シロイヌナズナ種子をLEHLE種子から得た(1102 South Industrial Blvd., Suite D, Round Rock TX 78681 USA)。
細菌株
この研究においてDNAクローニングのために使用した細菌株は、大腸菌DH5αであり、別段の指示がない限り37℃で液体LB培地(Sambrook et al., 1989)中で増殖させた。使用したアグロバクテリウムツメファシエンス株は、GV3101(Koncz and Schell, 1986)であった。
遺伝子をクローニングするための縮重プライマーを有するPCR
RNA抽出後に、AMV(ニワトリ骨髄芽球症ウイルス)逆転写酵素(AMV−RT, Promega)を使用して、逆転写(RT)を実行した。cDNA生成物を、縮重プライマー
Figure 2010517528
を使用したPCRに使用し、シロイヌナズナおよびイネから部分断片を単離した。PCR断片をクローニングおよび配列決定した。
5’−および3’−cDNA末端の迅速増幅
SMARTTM RACE cDNA Amplification Kit(Clontech Laboratories)を使用して、cDNAの5’−および3’−cDNA(5’/3’−RACE)端配列を同定した。これらのPCR生成物を配列決定した。部分配列およびRACE PCR生成物を合わせて整列し、シロイヌナズナ(HOG1)およびイネ(OsCBP)に対する全長cDNA配列を得た。
アグロバクテリウム媒介植物形質転換に使用された遺伝子構成物は、アンチセンス遺伝子抑制(35S:asHOG1)構成物であった。使用されたプロモーターは、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターであった。
イネのアグロバクテリウム媒介植物形質転換
Hieiらの方法(植物 Journal UK Vol. 6, pages 271−282, 1994)を使用した。
1.イネのカルス誘導
成熟したイネ種子を70%のエタノールで1.5分間表面殺菌した。120rpmで45分間の振とう器上の100mlの滅菌フラスコ中で、1滴のTween−20と共に漂白剤(20%)を添加した。これに続いて、処理した種子を滅菌蒸留水で十分に洗い流した。
深さ9cmの滅菌プラスチックシャーレ中の2.0mg/lの2,4−D(カルス誘導培地)を含む30mlの固化NBO培地の表面に、殺菌した種子を配置した。プレートをテープで覆い、組織培養室にある箱の中に配置し、イネ種子を暗所において25℃で発芽させた。
10日後に、胚盤から得られるカルスを取り除き、新鮮カルス誘導培地上で継代培養した。元気に成長する淡黄色の胚発生カルスが得られるまで4週間おきに継代培養を実行した。
2.イネカルスとのアグロバクテリウムの共培養
アンチセンス構成物を含むバイナリープラスミド(pCAMBIA1301, R. Jefferson, CAMBIA, Australiaに基づく)をA.ツメファシエンス株AGL1に導入した。A.ツメファシエンスを、48〜73時間28℃で、10mg/lのリファンピシン、50mg/lのカナマイシン、および50mg/lのハイグロマイシンを含む固化YEP培地上に保存して増殖させた。1mlのバクテリア培養物を、28℃で、250mlのフラスコ内の同一の選択的抗生物質を含有する100mlのAB培地に添加した。0.8〜1.0のOD595の濃度に到達するまでバクテリアを増殖した。室温で10分間4,000rpmで遠心分離することによって、バクテリアを採取した。次に、上清を除去し、AMM培地において同体積の沈殿物を再懸濁することによって、バクテリアを一度洗浄し、室温で10分間4,000rpmで再び遠心分離した。上清を廃棄した。
0.4のOD595の濃度まで、バクテリアをAMM培地で希釈した(1ml当たり約109の細胞)。9cm滅菌プラスチックシャーレ中のアグロバクテリウム接種のために、約20〜25mlの希釈したバクテリアを使用した。直径約5mmの大きさの元気に成長する淡黄色の胚発生カルスを選択し、細菌懸濁液中に入れ、滅菌層流フード内で時々振とうしながら30分間浸漬した。乾燥滅菌ティッシュペーパーのパッド上にカルスを配置することによって、カルスからの余分な細菌懸濁液を除去した。接種されたカルスを9cm滅菌プラスチックシャーレ中の2N6−AS培地上に移し(洗い流すことなく)、暗所において25℃で2〜3日インキュベートした。
3.形質転換体の選択および再生
100mlの滅菌フラスコ内の共培養したカルスを採取し、50〜75mlの滅菌蒸留水を使用して軽く振とうしながら、少なくとも10回洗浄した。余分な表面の水分を除去するために、滅菌ティッシュペーパーのパッド上でカルスを乾燥させた。カルス片を500mg/lのセフォタキシムおよび200mg/lのアンピシリンを含む100mlの滅菌蒸留水に移し、25℃において120rpmで2時間振とうした。水分を除去し、カルス片を滅菌ペーパーのパッド上でブロット乾燥した。形質転換細胞の選抜のために、カルス片を、9cm滅菌シャーレ中の2mg/lの2.4−D、250mg/lのセフォタキシム、200mg/lのアンピシリン、および50mg/lのハイグロマイシン(選択的培地)を含むNBO培地上に移した。密閉した皿を暗所において25℃でインキュベートした。
4週間の選抜後に、共培養したカルスから推定ハイグロマイシン抵抗性マイクロカルスを抽出し、抵抗性の確認および組織増殖のために同一の新鮮選択的培地に移し、3週間培養した。
元気に成長するハイグロマイシン抵抗性カルスを1.0mg/lの6−BA、2.0mg/lのNAA、5.0mg/lのABA、および50mg/lのハイグロマイシンを含むNBO培地(再生前培地)に移し、暗所において25℃で3週間培養した。再生前培地からの白色のコンパクトハイグロマイシン抵抗性胚発生カルスを、2.0mg/lの6−BA、1.0mg/lのIAA、1.0mg/lのNAA、1.0mg/lのKT、および50mg/lのハイグロマイシンンを含むNBO培地(再生培地)に移し、14時間の明条件(約2000ルクス)、8時間の暗条件において、25℃で培養した。
3週間後、シュート誘導および根伸長のために、再生されたハイグロマイシン抵抗性植物体を、Phytacon容器中の50mg/lのハイグロマイシンを含む100mlの1/2MS培地(植物体成長培地)に移した。植物体が容器の上部に到達するまで、培養条件を継続した。十分に発達したハイグロマイシン抵抗性植物体を培養容器から取り出し、すぐにプラスチックトレイ内の水道水に入れ、付着した培地を除去した。植物体を、1/2MS培地(溶液)を含有する54ウェル(直径約5cm)プラスチックトレイに移した。植物体の各所与のクラスタ(推定トランスジェニック系統)を別々のウェルに入れた。植物体を、14時間の明条件(約400ルクス)および8時間の暗条件において、20℃で90%の湿度の成長チャンバにおいて、7〜10日養成した。
植物を鉢内の土に植え替え、3世代にわたって非遺伝子導入植物として温室で生育し、ホモ接合遺伝子導入植物を得た。
補足的方法
植物材料および成長条件
シロイヌナズナに対して、コロンビア生態型を使用し、植物を成長チャンバにおいて、22℃で、16時間の明条件および8時間の暗条件において生育した。イネ遺伝子形質転換実験のために、オリザサティバジャポニカ種日本晴を使用した。
シロイヌナズナのプラスミド構成および遺伝子形質転換
5’および3’RACE戦略によって、全長HOG1cDNAを増幅した。すべての導入遺伝子構成物に対して、pGreen0229バイナリーベクター(Yu et al.、上記を参照のこと)を使用した。アンチセンス抑制のために、2つのSAHH特性に及ぶHOG1の850bp断片を使用した(SEQ ID NO:15)。過剰発現構成物のために、HOG1cDNAの完全なオープンリーディングフレームを使用した(SEQ ID NO:2)。TAPタグが付いたHOG1は、2つのタグ間にTEV開裂部位を有するProt Aおよびカルモジュリン結合ペプチドタグを含んだ。アグロバクテリウムツメファシエンス媒介性花浸漬方法(Clough, S. and Bent, A. 植物 Journal 16(6): 735−743(1998))によって、構成物をシロイヌナズナに導入した。
リアルタイム定量PCR分析
TRIzol方法(Invitrogen)を用いて、シロイヌナズナ苗またはイネ葉から全RNAを抽出した。One−Step RT kit(Qiagen)を使用して実行した各定量PCR反応のために、メーカーの使用説明書に従ってRNaseフリーのDNaseIで処理した全RNA(0.5μg)を使用した。SYBRグリーン(Applied Biosystems Inc.)を使用して定量リアルタイムPCRを実行した。メーカーのプロトコルに従って、倍率変化の計算のためにチューブリン2のCt値に対してCt値を正規化した。
等温滴定熱量計(ITC)
ITC(MCSITC, Microcal, Northampton, USA)によって、HOG1とサイトカイニンとの間の相互作用のサイトカイニン結合親和性および熱力学分析を検査した。公開されたプロトコル(Forler et al.、上記を参照のこと)を使用して、35S::TAP−HOG1構成物を有するトランスジェニックシロイヌナズナ植物から、TAP−HOG1融合タンパク質を生成した。25回の注入(各注入は、37℃、3秒間隔で2μl)を含む各ITCアッセイに対して、0.01μMのベンジルアデニン(自然発生的サイトカイニン)および0.1μMの精製されたTAP−HOG1タンパク質を使用した。1つの結合部位に対して、MICROCAL ORIGINバージョン2.9によって、最適な非線形最小二乗法を使用して、データを分析した。近似曲線から結合化学量論(n)および会合定数(KA)を計算した。続いて、KDを1/KAとして計算した。
サイトカイニン含有量
サイトカイニンを100%のメタノールで全植物から抽出し、Yangら(上記を参照のこと)に記載されるように、イソペンテニルアデノシン検出キット(Sigma)を使用して定量化した。
イネカルス誘導
カルス生成のために、表面殺菌し皮を剥いたイネ種子を2mg/lの2,4−Dを添加したNBO培地(カルス誘導培地)上に配置し、次いで、暗所において30日間25℃でインキュベートすることによって、それらを誘発した。30日後、もろい胚カルスを得るまで、新生のカルスのさらなる継代培養を行った。
イネカルスとのアグロバクテリウムの共培養
GIBCO−BRL Cell−Poratorを使用したエレクトロポレーションによって、全長HOG1を含有するバイナリープラスミドpCAMBIA1300(過剰発現およびアンチセンス抑制のそれぞれに対するセンスまたはアンチセンス配向)を、アグロバクテリウムツメファシエンスAGL1に導入した。制限消化によって形質転換したプラスミドを確認した。10mg/lのカルベニシリン、50mg/lのカナマイシン、および50mg/lのハイグロマイシンを含むYEP培地で、プラスミド構成物を有するアグロバクテリウムを培養し、48時間、25℃でインキュベートした。1mlのこの小規模培養物を、同一の選択抗生物質を含む100mlのAB液体培地に接種し、培養物が0.8から0.9のOD595に到達するまで、25℃でインキュベートした。培養物を10分間4000rpmで遠心分離した。バクテリア沈殿物を0.4のOD595の濃度までAMM培地で懸濁した。20から25mlのこの細菌懸濁液を深さ9cmのシャーレに入れ、元気に成長する淡黄色のもろい胚発生カルス(約5mmの大きさ)を、時々振とうしながら30分間浸漬した。カルスを乾燥ティッシュペーパーの滅菌パッド上に置くことによって、それらから余分な細菌懸濁液を除去した。続いて、接種されたカルスを深さ9cmの滅菌シャーレ中の2N6−AS培地上で培養し、2から3日間、暗所において25℃でインキュベートした。
イネ形質転換体の選抜および再生
共培養したカルスを、50〜75mlの滅菌水を使用して軽く振とうしながら、少なくとも10回洗浄し、滅菌ティッシュペーパー上に置いて乾燥させた。選抜のために、カルス片を、不稔シャーレ中の2mg/lの2,4−D、250mg/lのセフォタキシム、および50mg/lのハイグロマイシンを含むNBO培地に移した。4週間の選抜後に、ハイグロマイシン抵抗性マイクロカルスを推定トランスジェニックカルスとして選抜し、共培養したカルスから取り除き、さらなる増殖のために新鮮選択培地に移し、3週間培養した。元気に成長するハイグロマイシン抵抗性カルスを、1mg/lのBA、2mg/lのNAA、5mg/lのABA、および50mg/lのハイグロマイシンを含むNBO培地(再生前培地)に移し、3週間、暗所において25℃で培養した。再生前培地からの白色のコンパクトハイグロマイシン抵抗性カルスを、2mg/lのBA、1mg/lのIAA、1mg/lのNAA、1mg/lのキネチン、および50mg/lのハイグロマイシンを含むNBO培地(再生培地)に移し、14時間の明条件(25μMol/m/s)の光周期において、25℃で培養した。3週間後、シュートの生長および根伸長のために、付着したカルスを含む再生されたハイグロマイシン抵抗性植物体を、Phytacon容器中の50mg/lのハイグロマイシンを含む100mlの1/2MS培地(植物体培地)に移した。植物体が容器の上部に到達するまで、植物体を培養した。植物体の各クラスターを、1/2MS溶液を含有する54ウェルのプラスチックトレイの単一ウェルに移した。植物体を、14時間の明条件(25μMol/m/s)の光周期において、20℃で90%の相対湿度の成長チャンバにおいて、7〜10日適応させた。後に、植物を鉢内の土に移した。
カルスから得られたトランスジェニックイネ植物をT0世代に指定し、個々の植物から得られた種子をハイグロマイシンの存在下で発芽させ、生き残った植物をT1世代にとした。T1植物からの種子を再びハイグロマイシン選択に供し、本研究におけるT2世代とした。
結果および考察
定量リアルタイムPCR分析は、実施例1(c)に記載されるように、HOG1が、葉および花序茎において比較的高いレベルを有し、シロイヌナズナにおいて構成的に発現されることを示し、HOG1が、植物発達の調節において基本的な役割を果たし得ることを示唆した。精製されたHOG1は、実施例1(a)に記載されるように、サイトカイニン分子(ゼアチン、ベンジルアデニン、およびイソペンテニルアデニン)への高親和性結合を示した。
ベンジルアデニンに対する解離定数(KD)は、20.6nMであり(図11)、HOG1タンパク質との高親和性結合を示唆した。
野生型と比較して、種々のHOG1シロイヌナズナOE系統が、HOG1転写レベルにおいて5から8倍の増加を示した一方で(図8e)、シロイヌナズナAS系統は、6から10倍の抑制を示した(図8e)。導入遺伝子発現は、植物発達に有意な影響を及ぼし、いくつかの独立したトランスジェニック系統において一貫した表現型を示した。28個の独立したOEトランスジェニック系統および21個のAS系統から表現型を記録し、変化が、導入された遺伝子産物によって引き起こされたことを示した。野生型(WT)と比較して、種子発芽は、OE系統において4から5日早く、AS系統においてほぼ5日遅く発生した(表5)。しかしながら、OE系統の発芽直後に、有意な成長遅延が顕著であった一方で、AS系統は、種子発芽の遅延にもかかわらず、シュートの生長の遅滞を示さなかった。
新しいロゼット葉の形成および展開は、OE系統における全栄養成長にわたって遅延および制限された。開花の早期開始は、抽薹時に少なくとも8および14枚の葉をそれぞれ有するWTおよびAS系統(図8bおよび表5)と比較して、4ロゼット葉期において抽薹を有するOE植物において認められた(図8aおよび表5)。
(表5)種子発芽、開花の開始、および老化
Figure 2010517528
5つの独立した系統を各観察に使用した。各系統に対して、データは、3つの独立した複製からの平均を表す。アンチセンス系統は、発芽の遅延、抽薹の遅延、および老化の遅延を示した。
開花の開始後に、OE系統は、葉バイオマスのそれ以上の増加は示さず、これらの系統に対して、老化が始まった30日の成長後でさえ、腋生花序の枝は形成されなかった(図8b)。しかしながら、AS系統は、花序茎の大量分枝(図8b)および老化の遅延を示した。AS系統は、最大の葉面積(1葉当たり2.9±0.1cm)を有し、それは、OE系統(0.4±0.1cm)およびWT(1.0±0.1cm)において有意に低かった(図8cおよび表7)。全植物バイオマス、長角果の大きさ、ならびに結果として、1長角果当たりの種子数および種子重量(図8c、8d、8f、および表6)は、OE系統において大幅に減少したが、それらは、WTと比較してAS系統において有意に高かった((図8c、8d、8f))。OE系統は、WTよりも約10日早く老化したが、AS系統は、WTよりも2週間遅く老化した(図8a、8b、および表6)。
(表6)葉面積、1長角果当たりの種子重量および種子数
Figure 2010517528
データは、3つの独立した複製からの平均±標準偏差を表す。5つの独立した系統をいずれの場合にも使用した。アンチセンス系統は、野生型と比較して、葉バイオマスにおいて3倍の増加および種子収量において2倍の増加を示した。
植物におけるサイトカイニンレベルの分枝と老化との間の確立された関連性のため、WT、OE、およびAS系統の3つの独立した系統のそれぞれに対して、内在性サイトカイニン含有量を決定した。イソペンテニルアデニンは、主要サイトカイニンであり、その濃度は、WTと比較してOE系統において約60%減少した(図8f)。これは、図8bおよび8aに見られる、OE系統における植物高およびバイオマスの減少の主な理由であり得る。対照的に、AS系統において、イソペンテニルアデニンの濃度は、WTと比較して60%を超える増加、またはOE系統に対して4倍の増加であった(図8f)。これは、反対の表現型、すなわち、大量分枝およびバイオマスの有意な増加をもたらした。
このシロイヌナズナ研究からの結果は、作物種におけるHOG1またはそのオーソログの遺伝子操作が、収量を増加させるための手段を提供することができることを示唆する。いくつかの別の種におけるHOG1オーソログのスクリーニングを実施した。イネ、カイラン、菊、およびアマランサスからcDNAを成功裏に同定および取得した。逆転写PCRによって、OsCBPの全長cDNA(オリザサティバサイトカイニン結合タンパク質、Os11g0455500)をイネ(オリザサティバジャポニカ種日本晴)から単離した。OsCBPの得られたアミノ酸配列(SEQ ID NO:5)は、HOG1(SEQ ID NO:1)と90%の配列相同性を示し、イネにおいて遺伝子の1つのコピーのみが存在すると考えられる(図10)。HOG1(SEQ ID NO:1)とOsCBP(SEQ ID NO:5)との間の高い配列相同性の理由から、HOG1cDNAを使用してトランスジェニックイネ系統を生成し、収量を増加させる形質をイネにおいて実現することができるか試験した。アグロバクテリウム媒介形質転換によって、いくつかの独立したイネ系統を得て、T1世代において、定量リアルタイムPCRおよびゲノムサザンブロットによって、トランスジェニックであることを確認した(図9、12d、および12e)。T2世代におけるOE系統およびAS系統の表現型は、導入遺伝子によって一貫して分離していた(分離系統は、ハイグロマイシン選択に生き残らなかった)。選択培地におけるT3種子の発芽は、選抜された系統のいくつかが、導入遺伝子に対してホモ接合性であったことを示した(データは図示せず)。
OEおよびAS系統、ならびにハイブリッド親(WT)系統において、OsCBPの発現解析を実行した。過剰発現系統は、WTにおける内在性OsCBP発現量と比較して、HOG1の発現量においてほぼ5倍の増加を示した(図9f)。加えて、OsCBPの発現は、OE系統のいくつかにおいて6倍減少し(図9f)、これらが共抑制系統であることを確認した。遺伝子の共抑制の減少は、植物においてよく知られている。したがって、観察された表現型は、導入された遺伝子の機能によるものであって、形質転換のいかなる非特異的効果によるものではない。遺伝子導入植物の表現型は、シロイヌナズナからの結果と一致している。
OE系統において、WTと比較して1植物当たりの分げつ数における有意な変化はなかったが(表8)、OE系統の多くは、高さおよび全バイオマスの増加において有意に減少した(図9a、9b、9c、および表8)。イネのOE系統は、WTと比較して7〜10日の早咲きを示した。対照的に、AS系統は、内在性OsCBPの発現量において最大で6倍の減少を示し、ハイブリッド親系統と比較して、1植物当たりの分げつ数において有意な増加を示した(図9b、9c、および12b)。WTは、1植物当たり7から9個の分げつを有したが、AS系統は、1植物当たり18から28個の分げつを示した(表8)。共抑制系統の表現型は、AS系統のものと同一であった(図9c、9e、12a、12b、および表8)。加えて、共抑制およびAS系統は、主な分げつの地上節からの分枝を示し(図12d)、1植物当たりの円錐花序数において有意な全体的増加をもたらした(表8)。平均種子数および植物バイオマスは、WTと比較して、ASおよび共抑制系統において2倍から3倍を超えて増加した(表8)。WT植物と比較して、ASおよび共抑制系統の表現型において他の大きな変化はなかった。1植物当たりの穀粒収量の最大増加は、温室栽培条件下でWTのものよりも2倍を超えて高かった(1.5倍から2.7倍に及ぶ)。概して、イネに対する温室栽培条件からの収量データは、理想的な圃場条件からのものよりも低かった。したがって、ここに記載される戦略が使用された場合に、圃場条件下で収量の有意な増加をもたらし得ることは明らかである。
(表7)バイオマスおよび種子収量に寄与するパラメータのピアソンの相関係数(r)
Figure 2010517528
葉面積(cm)×1長角果当たりの種子重量(mg)(a)、葉面積(cm)×1長角果当たりの種子数(b)、および1長角果当たりの種子重量(mg)×1長角果当たりの種子数(c)で相関係数を検証した。相関分析後に、スチューデントのt検定を実行した。t検定値を括弧内に示す。「r」値は、すべての試験における正相関を示す。これに基づいて、HOG1のアンチセンス抑制は、葉バイオマスおよび種子収量に寄与する主要パラメータの増加をもたらすことが予測され得る。
(表8)内在性OsCBP遺伝子の発現の操作をもたらすセンス(過剰発現および共抑制)またはアンチセンス配向(イネユビキチンプロモーターによって駆動される)において、全長シロイヌナズナHOG1cDNAを有するT2世代トランスジェニックイネ植物の収量パラメータの定量化
Figure 2010517528
Figure 2010517528
1植物当たりの分げつ数に基づいて、各トランスジェニック系統内で、植物を「高」、「中」、および「低」としてグループ分けした。1植物当たりの分げつ、円錐花、および種子の総数は、平均±標準偏差として表した。各植物において完全充実穀粒のみを数えた。葉面積値は、1枚の葉の面積を表す。各植物の第2の分げつの完全に展開した第2の葉を指示パラメータとして測定した。生重量決定は、抜根された全植物に対してであり、選抜された植物のみを異なる系統に対して測定した。
シロイヌナズナおよびイネからの本結果は、HOG1のオーソログが、種々の作物の改良のために使用され得ることを示唆する。1植物当たりの分げつ数は、主要穀物の収量を決定する大きな要因である。したがって、この方法を使用すると、イネ、コムギ、トウモロコシ、およびオオムギ等の主要穀物の収量を増加させる可能性がある。
バイオマスの増加もまた、セルロース系エタノールの生成、および葉菜、ならびに家畜用農作物のために使用される植物の非常に望ましい特徴である。加えて、観賞種における過剰発現HOG1またはそのオーソログは、矮化および早咲きをもたらすのに役立ち得る。
適用
本発明者らは、SEQ ID NO:2の単離されたポリヌクレオチドを使用して、植物における形質を調整する可能性を有する方法を示した。本明細書に開示された方法は、単位耕作面積当たりの農業生産性および穀粒収量を高めることができる.本明細書に開示された方法は、まぐさにおけるバイオマス生産を高め、葉菜および観葉植物における分枝を増加させるのに有用である。本明細書に開示された単離されたポリヌクレオチドは、単子葉植物および双子葉植物の両方に投与して、作物改良および別の商業的および科学的用途に有用な、調整された形質を有する植物を生成することができる。
特に、持続可能な燃料源への関心が高まっているため、バイオマスの生産は成長産業である。理論によって束縛されることなく、本明細書に開示された方法によって生産された豊富なバイオマスは、木ガス、バイオメタノール、またはバイオエタノール燃料等の生物燃料に変換され得ると考えられる。例えば、アルコールは、既知の加水分解、発酵、および蒸留方法によってセルロース系材料から生成することができる。したがって、バイオマス燃料の使用は、温室効果ガス排出を減少させ、化石燃料の代替物を提供する手段として一部からみなされる、再生可能なエネルギー源として見られている。
本発明の種々の別の修正および適応が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、上述の開示を読むことによって当業者には明らかとなり、すべてのそのような修正および適応が、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを目的とすることは明らかである。

Claims (36)

  1. 植物における少なくとも1つの形質の発現を調整する方法であって、
    該植物による少なくとも1つのポリペプチドの発現を調整するステップを含み、
    該ポリペプチドが、
    i)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
    ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸1からアミノ酸7、アミノ酸9からアミノ酸230、アミノ酸1からアミノ酸58、アミノ酸77からアミノ酸485、アミノ酸59からアミノ酸76、アミノ酸150からアミノ酸191、アミノ酸231からアミノ酸405、およびアミノ酸406からアミノ酸438のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択されるかまたはその相同体において同等位置にあり、該植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含む、ポリペプチド、
    iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有し、該植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含む、ポリペプチド、および
    iv)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列から成る、ポリペプチド、
    から成る群から選択され、
    該ポリペプチドの発現の該調整が、該植物における少なくとも1つの形質の発現を調整する、
    方法。
  2. 前記植物による少なくとも1つのポリペプチドの発現を調整する前記ステップが、該ポリペプチドの発現を調整するポリヌクレオチドを該植物の1つ以上の細胞に導入するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ポリペプチドの発現を調整する前記ステップが、該ポリペプチドの発現を減少させるステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記植物による前記ポリペプチドの発現を減少させる前記ステップが、該ポリペプチドの発現を減少させるポリヌクレオチドを該植物の1つ以上の細胞に導入するステップを含む、請求項3に記載の方法。
  5. 前記ポリヌクレオチドが、
    i)SEQ ID NO:15に示される核酸配列を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
    ii)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から選択される少なくとも15個の連続した核酸残基を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
    iii)SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列に相補的なポリヌクレオチドからの、少なくとも15個の連続した核酸残基
    を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
    iv)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から成るポリヌクレオチドに相補的な核酸配列から選択される、少なくとも9個の連続した核酸残基
    を含む核酸配列を含む、RNA干渉ポリヌクレオチド、および
    v)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から成る、アンチセンスポリヌクレオチド、
    から成る群から選択される、請求項4に記載の方法。
  6. 前記ポリペプチドが、
    SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の配列相同性を有し、前記植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記ポリペプチドが、
    SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列相同性を有し、前記植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含む、請求項1から6のうちのいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記ポリペプチドが、
    SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列相同性を有し、前記植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含む、請求項1から6のうちのいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記ポリペプチドが、
    SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列相同性を有し、前記植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含む、請求項1から6のうちのいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記ポリペプチドの発現を調整する前記ステップが、該ポリペプチドの発現を増加させるステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
  11. 前記植物による前記ポリペプチドの発現を増加させる前記ステップが、該ポリペプチドの発現を増加させるポリヌクレオチドを該植物の1つ以上の細胞に導入するステップを含む、請求項10に記載の方法。
  12. 前記ポリヌクレオチドが、
    i)SEQ ID NO:1のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド、
    ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸1からアミノ酸7 、アミノ酸9からアミノ酸230、アミノ酸1からアミノ酸58、アミノ酸77からアミノ酸485、アミノ酸59からアミノ酸76、アミノ酸150からアミノ酸191、アミノ酸231からアミノ酸405、およびアミノ酸406からアミノ酸438のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択されるかまたはその相同体において同等位置にあり、前記植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、および
    iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有し、該植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド
    から成る群から選択される、請求項11に記載の方法。
  13. 植物における前記の少なくとも1つの形質が、草高、植物バイオマス、頂芽の発達、分枝、稔性、開花、葉面積、老化、種子発芽、種子収量、種子重量、茎の発達、穀粒収量、分げつ数、花分裂組織の発達、および根の発達のうちのいずれか1つから成る群から選択される、請求項1から12のうちのいずれか1項に記載の方法。
  14. 少なくとも1つの形質の前記調整が、前記ポリペプチドの発現が調整されていない同一種類の植物と比較した場合の、前記植物の分枝の増加、種子収量の増加、植物バイオマスの増加、穀粒収量の増加、分げつ数の増加、葉面積の増加、種子発芽の遅延、頂芽優勢の減少、遅咲き、またはこれらの組み合わせのうちのいずれか1つから成る群から選択される、請求項3に記載の方法。
  15. 少なくとも1つの形質の前記調整が、前記ポリペプチドの発現が調整されていない同一種類の植物と比較した場合の、前記植物の早咲き、矮性、葉数の減少、早期老化、早期種子発芽、ロゼット葉形成の遅延および減少、実生根の成長の増加、またはこれらの組み合わせのうちのいずれか1つから成る群から選択される、請求項10に記載の方法。
  16. 単離されたポリヌクレオチドであって、
    i)SEQ ID NO:15に示される核酸配列を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
    ii)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から選択される、少なくとも15個の連続した核酸残基
    を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
    iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列に相補的なポリヌクレオチドからの、少なくとも15個の連続した核酸残基
    を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
    iv)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から選択される、少なくとも9個の連続した核酸残基
    を含む核酸配列を含む、RNA干渉ポリヌクレオチド、および
    v)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から成る、アンチセンスポリヌクレオチドであって、
    植物における少なくとも1つの形質を調整するポリペプチドの発現を減少させることができる、ポリヌクレオチド、または
    vi)i)からv)のうちのいずれか1つに相補的なポリヌクレオチド、または
    vii)i)からv)のうちのいずれか1つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、ポリヌクレオチド、
    から成る群から選択される、
    単離されたポリヌクレオチド。
  17. 単離されたポリヌクレオチドであって、
    i)SEQ ID NO:1のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド、
    ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸1からアミノ酸7、アミノ酸9からアミノ酸230、アミノ酸1からアミノ酸58、アミノ酸77からアミノ酸485、アミノ酸59からアミノ酸76、アミノ酸150からアミノ酸191、アミノ酸231からアミノ酸405、およびアミノ酸406からアミノ酸438のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択されるかまたはその相同体において同等位置にあり、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、
    iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有し、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、および
    iv)SEQ ID NO:1のポリペプチドをコードする核酸配列から成る、ポリヌクレオチドであって、
    植物における少なくとも1つの形質を調整するポリペプチドの発現を増加させることができる、ポリヌクレオチド、または
    v)i)からiv)のうちのいずれか1つに相補的なポリヌクレオチド、または
    vi)i)からiv)のうちのいずれか1つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、ポリヌクレオチド、
    から成る群から選択される、
    単離されたポリヌクレオチド。
  18. 請求項16または17のうちのいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
  19. 請求項18に記載のベクターで形質転換した宿主細胞。
  20. 請求項19に記載の宿主細胞を含む、植物。
  21. 遺伝子導入植物を産生する方法であって、
    (a)ポリペプチドの発現を調整するポリヌクレオチドを提供するステップであって、該ポリペプチドが、
    i)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
    ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸1からアミノ酸7、アミノ酸9からアミノ酸230、アミノ酸1からアミノ酸58、アミノ酸77からアミノ酸485、アミノ酸59からアミノ酸76、アミノ酸150からアミノ酸191、アミノ酸231からアミノ酸405、およびアミノ酸406からアミノ酸438のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択されるかまたはその相同体において同等位置にあり、該植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含む、ポリペプチド、
    iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有し、該植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含む、ポリペプチド、および
    iv)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列から成る、ポリペプチド
    から成る群から選択される、ステップと、
    (b)ステップ(a)の該ポリヌクレオチドで植物、植物部位、または植物細胞を形質転換するステップと、
    (c)形質転換した該植物、該植物部位、または該植物細胞を成長させて、該遺伝子導入植物を産生するステップと
    を含む、方法。
  22. ステップ(a)における前記ポリヌクレオチドが、
    i)SEQ ID NO:15に示される核酸配列を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
    ii)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から選択される、少なくとも15個の連続した核酸残基
    を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、および
    iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列に相補的なポリヌクレオチドからの、少なくとも15個の連続した核酸残基
    を含む、アンチセンスポリヌクレオチド、
    iv)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から選択される、少なくとも9個の連続した核酸残基
    を含む核酸配列を含む、RNA干渉ポリヌクレオチド、および
    v)SEQ ID NO:15に示される核酸配列から成る、アンチセンスポリヌクレオチドであって、
    植物における少なくとも1つの形質を調整するポリペプチドの発現を調整することができる、ポリヌクレオチド、または、
    vi)i)からv)のうちのいずれか1つに相補的なポリヌクレオチド、または
    vii)i)からv)のうちのいずれか1つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、ポリヌクレオチド、
    から成る群から選択される、単離されたポリヌクレオチド
    を含む、請求項21に記載の方法。
  23. ステップ(a)における前記ポリヌクレオチドが、
    i)SEQ ID NO:1のポリペプチドをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド、
    ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸1からアミノ酸7、アミノ酸9からアミノ酸230、アミノ酸1からアミノ酸58、アミノ酸77からアミノ酸485、アミノ酸59からアミノ酸76、アミノ酸150からアミノ酸191、アミノ酸231からアミノ酸405、およびアミノ酸406からアミノ酸438のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択されるかまたはその相同体において同等位置にあり、前記植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、
    iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有し、該植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、
    iv)SEQ ID NO:1のポリペプチドをコードする核酸配列から成る、ポリヌクレオチドであって、
    植物における少なくとも1つの形質を調整するポリペプチドの発現を増加させることができる、ポリヌクレオチド、または、
    v)i)からiv)のうちのいずれか1つに相補的なポリヌクレオチド、または
    vi)i)からiv)のうちのいずれか1つにストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、ポリヌクレオチド、
    から成る群から選択される、単離されたポリヌクレオチド
    を含む、請求項21に記載の方法。
  24. ステップ(c)における前記成長が、前記の形質転換した植物、植物部位、または植物細胞の成長を可能にする条件下で、形質転換した該植物、該植物部位、または該植物細胞を培養することによる、請求項21〜23のうちのいずれか1項に記載の方法。
  25. 前記植物部位が、根、茎、葉、花芽、花、シュート、種子、および枝から成る群から選択される、請求項21〜24のうちのいずれか1項に記載の方法。
  26. 単子葉植物または双子葉植物である、請求項20に記載の植物。
  27. オートムギ、オオムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、イネ、ソルガム、キビ、アマランス、アシ、スウィートグラス、トウ、竹、まぐさ、ダイアモンドグラス、および芝草から成る群から選択される、請求項20または26に記載の植物。
  28. 植物が、オートムギ、オオムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、イネ、ソルガム、キビ、アマランス、アシ、スウィートグラス、トウ、竹、まぐさ、ダイアモンドグラス、および芝草から成る群から選択される、請求項21〜25のうちのいずれか1項に記載の方法によって産生される遺伝子導入植物。
  29. 植物が、稔性植物を産生することができる、請求項21〜25のうちのいずれか1項に記載の方法によって産生される遺伝子導入植物。
  30. 請求項26〜29のうちのいずれか1項に記載の植物の部位または種子。
  31. 根、茎、葉、花芽、花、シュート、種子、塊茎、実、および枝から成る群から選択される、請求項30に記載の部位。
  32. 請求項26〜29のうちのいずれか1項に記載の植物、または請求項30もしくは31に記載の部位または種子から再生された、植物またはその繁殖材料。
  33. 植物バイオマス生産のための、請求項16または17に記載のポリヌクレオチドで形質転換した植物の使用法。
  34. 前記植物が、オートムギ、オオムギ、コムギ、ライムギ、トウモロコシ、イネ、ソルガム、キビ、アマランス、アシ、スウィートグラス、トウ、竹、まぐさ、ダイアモンドグラス、および芝草から成る群から選択される、請求項33に記載の使用法。
  35. 前記植物バイオマス生産が、生物燃料生産のためである、請求項33または34に記載の使用法。
  36. 単離されたポリペプチドであって、
    i)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む、ポリペプチド、
    ii)SEQ ID NO:1のアミノ酸1からアミノ酸7、アミノ酸9からアミノ酸230、アミノ酸1からアミノ酸58、アミノ酸77からアミノ酸485、アミノ酸59からアミノ酸76、アミノ酸150からアミノ酸191、アミノ酸231からアミノ酸405、およびアミノ酸406からアミノ酸438のうちのいずれか1つ以上から成る群から選択されるかまたはその相同体において同等位置にあり、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含む、ポリペプチド、
    iii)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも70%の配列相同性を有し、植物におけるサイトカイニンシグナル伝達を調整することができる、アミノ酸配列
    を含む、ポリペプチド、および、
    iv)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列から成る、ポリペプチド、
    から成る群から選択される、単離されたポリペプチドであって、
    該ポリペプチドの発現の該調整が、該植物における少なくとも1つの形質の発現を調整する、単離されたポリペプチド。
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