JP2010508925A - Noを放出可能な医療機器 - Google Patents
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Abstract
本発明は、血管内での使用に適し、少なくとも一部がポリマー混合物を含むコーティングシステムでコーティングされた基材を含む医療機器であって、前記ポリマー混合物は、少なくとも1つの反応性窒素化学種(RNS)の付加物であって生理的条件下で前記反応性窒素化学種を放出することができる前記付加物と、親水性ポリマー又は親水性ポリマーブレンドと、を含み、反応性窒素化学種付加物と親水性ポリマー又はポリマーブレンドとは、均質相を形成していることを特徴とする。好ましい実施形態では、医療機器は、ポリウレタン(PU)に埋め込まれた線状ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレート(L-PEI-NONO)でコーティングされる。
Description
本発明は、血管内の医療機器からの酸化窒素および/またはニトロキシルなどの反応性窒素化学種(RNS)の放出を制御するためのコーティングシステムに関する。
酸化窒素などの反応性窒素化学種は、血管拡張剤、神経伝達物質、炎症性メディエータ、血小板活性化の阻害剤、内皮接着および白血球付着の調節剤、並びにマクロファージおよび好中球の調節剤として機能するなど、多くの生物学的機能にとって強力なメディエータと見なされる。
しかしながら、酸化窒素および他の反応性窒素化学種は、生理的条件下では非常に不安定であり、赤血球内のオキシヘモグロビン(oxyhemoglobin)によって迅速に不活性化される。
ニトログリセリンなどの反応性窒素化学種用付加物は、例えば狭心症の治療において、広く全身的に用いられてきた。しかしながら、全身性の適用は、広範囲にわたる付加物の稀釈と、治療効果の位置から遠い位置における潜在的に有害な副作用とに帰着する。
それゆえ、体内の、特に血管系内の必要とされる位置に酸化窒素を直接適用することを可能にする局所投与方法の開発に非常な努力が費やされ、そこでは、RNSは、血管手術中の血栓または血管けいれんを防止及び/又は減少し、又は冠動脈血管形成術およびステント植込みの後に発生する再狭窄を防止することができる。
EP 0 752 866は、N2O2官能基を放出する酸化窒素が結合されたポリマーを、再狭窄および関連する病気の治療に用いることを開示している。酸化窒素で処置されたポリエチレンイミンが、血管弛緩(vaso-relaxation)を誘発するのに有効であることが分かった。
WO2005/037339は、血管形成術で使用される拡張可能なバルーンに言及しており、再狭窄の治療で用いられた拡張可能なステントは、例えば酸化窒素(NO)などの薬剤でコーティングされてもよいこと、及び医療機器が所定位置になったら、酸化窒素を放出するマトリクスが動脈れん縮を弛緩又は防いでもよいことを開示している。
WO2005/039664は、ガイドワイヤ、塞栓装置、あるいはマイクロカテーテルのためのガイドシャフトなどの医療機器に言及しており、それは、ポリマー化した線状ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレートのエレクトロスピニングナノ繊維(electrospun nanofibers)によって形成された外側表面層を含む。医療機器が所定位置になったら、酸化窒素を放出するマトリクスが動脈れん縮を弛緩又は防いでもよいことを開示している。
使用前には安定した形態でRNSを蓄え、血液などの生理的媒体と接触すると酸化窒素を放出することのできる多数の反応性窒素化学種(RNS)付加物が開発されている。かかる付加物は血管内の医療機器をコーティングするために用いられてきた。
RNSの放出を調節して、一定の期間にわたって最適な治療用量を提供するために、RNS付加物からのRNSの放出を制御する更なる技術が開発されている。
WO95/24908は、再狭窄の危険のある位置で酸化窒素を局所的に放出することができるNONOエートポリマー(線状ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートを含む)を開示しており、表面近くN2O2 -基は迅速な放出が可能であるものの、深く埋め込まれたものは立体的に保護され、蓄えられた酸化窒素を放出するのにより多くの時間とエネルギーとを必要とする、というポリマーのNONOエートの使用における問題に言及している。
US 6,885,366は、線状ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートのエレクトロスピニングを利用して医療機器にナノ繊維をコーティングして、露出された実効表面積を増加することを可能にしており、それにより、酸化窒素の高い初期放出速度を提供する。
WO01/56646は、体中に挿入するための医療機器用のコーティングシステムに言及しており、コーティングシステムは、酸化窒素などの生理活性物質の徐放を提供する生物適合性化合物からなる内部の第1層と、同じ生理活性物質からなる第2の外部コーティングとを含み、その結果として、酸化窒素の迅速な放出を提供できる外側層と、酸化窒素のより長期的な放出を提供する内側層とを提供する。
US 2003/0045865は、患者への医療品の投与に際して、活性剤化合物が酸化窒素付加物と相互作用して、酸化窒素を放出するシステムに言及している。
US 5,994,444は、酸に不安定な酸化窒素前駆体(無機の亜硝酸塩を含むポリマー)と、ポリマーのpHを低減して、使用の際に酸化窒素の放出を容易にする還元剤との使用に言及している。
しかしながら、利用可能な制御された放出技術では、治療上有効な量の酸化窒素の制御された放出を可能にして、体内への医療機器の挿入行為---つまり、外科的処置を含めて---に関連した副作用を防ぐことはできない。これは、ナノ繊維の技術を除外すると、制御された放出技術のいずれも、酸化窒素付加物層中への生理液の浸透に関する主要問題に取り組んでいないからである---それらは、単に、生理液が付加物層に浸透したら酸化窒素の放出を容易にするに過ぎない。
ナノ繊維技術は、ポリマー層中への生理液の非常に迅速な浸透を可能にする。しかしながら、放出速度はナノ繊維の厚さの因子であり、従って、非常に高い初期放出に帰着するだろうが、医学的な介入手順の終盤には酸化窒素の放出が不十分になるだろう。
<発明の目的>
本発明は、ポリマーコーティングシステムを提供することにより、医療機器上の酸化窒素付加物コーティングへの生理液の浸透に関する問題に取り組むものであり、付加物は、構造的ポリマー(structural polymer)および親水性ポリマーの両方を含むポリマー構造体の形態で与えられており、それによって、ポリマーコーティングシステム中の構造的ポリマーと親水性ポリマーと付加物との割合に依存して、生理液が付加物に対して直接的に、制御された状態でアクセスすることを可能にしている。本発明は、一般的に、RNS付加物の他にも特に酸化窒素およびHNOを含むコーティングシステムに関連するものとして、ニトロキシル(HNO)などの他の反応性窒素化学種は、治療の機能の点からも関連している。
本発明は、ポリマーコーティングシステムを提供することにより、医療機器上の酸化窒素付加物コーティングへの生理液の浸透に関する問題に取り組むものであり、付加物は、構造的ポリマー(structural polymer)および親水性ポリマーの両方を含むポリマー構造体の形態で与えられており、それによって、ポリマーコーティングシステム中の構造的ポリマーと親水性ポリマーと付加物との割合に依存して、生理液が付加物に対して直接的に、制御された状態でアクセスすることを可能にしている。本発明は、一般的に、RNS付加物の他にも特に酸化窒素およびHNOを含むコーティングシステムに関連するものとして、ニトロキシル(HNO)などの他の反応性窒素化学種は、治療の機能の点からも関連している。
本発明は、血管内での使用に適し、少なくとも一部がポリマー混合物を含むコーティングシステムでコーティングされた基材を含む医療機器を提供するものであり、前記ポリマー混合物は、a)少なくとも1つの反応性窒素化学種(RNS)付加物であって、前記付加物は生理的条件下で前記反応性窒素化学種を放出することができる付加物と、b)親水性ポリマーまたは親水性ポリマーブレンドと、を含み、反応性窒素化学種付加物と親水性ポリマー又はポリマーブレンドとは、均質相を形成している。
本発明は、血管内での使用に適しているコーティングされた医療機器の製造方法を提供するものであり、前記方法は、a) 血管手術での使用に適している医療機器を選択する工程であって、前記医療機器は基材を含んでいる選択工程と、b) ポリマー混合物を含むコーティングシステムを医療機器の外表面に塗布する工程であって、前記ポリマー混合物は、少なくとも1つの反応性窒素化学種付加物と、親水性のポリマー又はポリマーブレンドとを含み、反応性窒素付加物と支持ポリマー又はポリマーブレンドとは、均質相を形成している塗布工程と、を含む。
本発明は、血管内での使用に適し、少なくとも一部がポリマー混合物を含むコーティングシステムでコーティングされた基材を含む医療機器を提供するものであり、前記ポリマー混合物は、i)少なくとも1つのRNS付加物であって、生理的条件下でRNSを放出することができる付加物と、ii)親水性支持ポリマー又はポリマーブレンドと、を含み、RNS付加物と支持ポリマー又はポリマーブレンドとは、均質相を形成している。
本発明は、血管内での使用に適しているコーティングされた医療機器の製造方法をさらに提供するものであり、前記方法は、 (a) 血管手術での使用に適している医療機器を選択する工程であって、前記医療機器は基材を含んでいる選択工程と、(b)ポリマー混合物を含むコーティングシステムを医療機器の外表面に塗布する工程であって、前記ポリマー混合物は、生理的条件下でRNSを放出することのできる少なくとも1つのRNS付加物と、親水性の支持ポリマー又はポリマーブレンドとを含み、RNS付加物と支持ポリマー又はポリマーブレンドとは均質相を形成している、塗布工程と、を含む。
本発明はまた、血管けいれん又は血管収縮(vasospasm or vasoconstriction)、脳血管けいれんの防止(prevention of cerebral vasospasm)、平滑筋の弛緩(relaxation of smooth muscle)、血管拡張(vasodilatation)、血栓(thrombosis)、血小板堆積物又は凝集の減少(decreased platelet deposition or aggregation)、再狭窄の軽減(alleviation of restenosis)、血圧の上昇(increased blood pressure)、酸素フリーラジカル再かん流傷害(oxygen free radical reperfusion injury)、心疾患の治療(treatment of cardiovascular disease)、前記医療機器の使用に関連した悪影響の防止(preventing the adverse effects associated with the use of said medical device)、異常細胞増殖の防止(preventing abnormal cell proliferation)から選ばれた1つ以上の状態を防止するために、血管内使用に用いられる医療機器の製造に適した本発明にかかるコーティングシステムの使用を提供する。
本発明は、さらに、医療機器の表面からの酸化窒素などの反応性窒素化学種の放出速度を制御するために、医療機器に塗布するための本発明にかかるコーティングシステムの使用を提供する。
ある実施態様では、コーティングシステムは、内側層から生理的媒体への酸化窒素などの反応性窒素化学種の放出、および/または生理的条件下における生理的媒体から内側層中への水の拡散、および/または前記ポリマー混合物から生理的媒体への小分子の副生成物の漏れ、も制御してもよい。
<発明の陳述>
(関連ケース)
PCT/DK2006/000714は、酸化窒素付加物からの酸化窒素放出を計測するための方法およびシステムを提供しており、参照して本明細書に組み込む。その方法は、従来達成できなかったNOの正確な計測を得るために、考慮すべき又はさらに除去されるべき亜硝酸塩のレベルを可能にする。
(関連ケース)
PCT/DK2006/000714は、酸化窒素付加物からの酸化窒素放出を計測するための方法およびシステムを提供しており、参照して本明細書に組み込む。その方法は、従来達成できなかったNOの正確な計測を得るために、考慮すべき又はさらに除去されるべき亜硝酸塩のレベルを可能にする。
本発明の実施態様は、欧州出願番号EP06023203および米国仮出願番号60/864,879、欧州出願番号EP06023223および米国仮出願番号60/864,886、欧州出願番号EP06023222および米国仮出願番号60/864,893、欧州出願番号EP06075159および米国仮出願番号60/761,359、ならびPCT/DK2007/000030の出願に開示された発明と共に用いられてもよく、それらは引用して本明細書に組み込む。
<医療機器(Medical Device)>
ある実施態様では、医療機器は血管内用の医療機器あるいは神経血管用の医療機器である。
ある実施態様では、医療機器は血管内用の医療機器あるいは神経血管用の医療機器である。
ある実施態様では、医療機器は、外科的処置が終わった後に患者に体内に残されない一時的な医療機器、例えば、挿入シース(introducer sheath)またはアセンブリおよびそれらの構成要素、冠動脈ガイドカテーテル(coronary guiding catheter)または神経カテーテル(neuro catheter)などのカテーテル、ガイドワイヤ、注射針/トロッカー(trocar)、血管形成術用バルーン(angioplasty balloon)、冠動脈ワイヤ(coronary wire)などの医療機器である。
医療機器は、末梢用ワイヤ(peripheral wires)、ガイドカテーテル、末梢用バルーン(peripheral balloon)などの末梢用医療機器(peripheral medical devices);ステント送達システム(stent delivery system)、末梢用ワイヤ、末梢用ガイドカテーテル(peripheral guiding catheter)、ステント送達システム;挿入シース、拡張器、ガイドワイヤ、注射針などの医療機器であってもよい。
医療機器は、神経ガイドカテーテル(neuro guiding catheter)、神経マイクロカテーテル(neuro microcatheter)、神経マイクロワイヤ(neuro microwire)、神経ステント送達システム(neurostent delivery system)、ニューロンバルーン(neuron balloon)などの神経用医療機器(neuro medical devices);冠動脈ワイヤ(coronary wires)、冠動脈ガイドカテーテル(coronary guiding catheter)、PTCA血管形成術用バルーン(angioplasty balloon)などの冠動脈用医療機器(coronary medical devices);ステント送達システム、冠動脈ワイヤ、冠動脈ガイドカテーテル、PTA血管形成術用バルーン;挿入シース、拡張器(dilator)、ガイドワイヤ、注射針/トロッカー、挿入シースアセンブリからなる群から選ばれてもよい。
例えば、医療機器は、ステント、ステントグラフト(stent graft)、バルーン、カテーテル、ガイドカテーテル、ガイドワイヤ、ワイヤまたはコイルなどの塞栓デバイス(embolization device)などの断続的または永久の血管内インプラントを含んでいてもよい。
バルーンの場合には、機器は、例えばPTA(経皮経管的血管形成術(percutaneous translumenal angioplasty))用バルーン、PTCA(経皮経管的冠血管形成術(percutaneous translumenal coronar angioplasty))用バルーンあるいはPTNA(経皮経管的神経血管形成術(percutaneous translumenal neurovascular angioplasty))用バルーンなどの拡張可能なコーティングされた血管形成術用バルーンを含んでいる。
ある実施態様では、医療機器は、ステントなどのインプラントである。
ある実施態様では、医療機器は、乳房インプラントあるいは陰茎インプラントなどのプロテーゼである。
ある実施態様では、医療機器は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(テフロン(商標))、またはフッ素処理されたポリエチレン(FEP)からは作られない。医療機器の基材の製造において別の基板を選択することには、2つの利点がある。第1に、放射線に基づく殺菌技術の常用が可能になり、第2に、医療機器のコーティングが容易になる。
従って、好ましくは、挿入シース(管材料)などの医療機器は、γ線あるいは電子線などの放射線に基づく技術を用いて殺菌できる材料から製造される。ナイロンは適した基材である。他の適した材料が、例えば、ポリウレタン、芳香族ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレンおよびポリスルホンから成る群から選ばれてもよい。
医療機器は、高密度ポリエチレンの基材から作られてもよい。
<挿入シース(Introducer Sheath)>
RNS(酸化窒素など)を溶出する本発明の医療機器は、挿入シース、又は挿入シースアセンブリ(部品キット)を含んでいてもよい。部品キットは、少なくとも2つの重要な部材を含んでおり、それは、拡張器を含む挿入シースと、少なくともシースの遠位部分に塗布されたRNSを溶出するコーティングとである。この機器の第一の作用様式は、従来の挿入シースのそれと同一であり、介入装置および/または診断装置を血管内に導入する際に使用されるものである。RNS溶出の付随的な作用は、挿入シースを通して介入装置および/または診断装置を導入する間に、血管のけいれんおよび閉塞を防ぐことである。本発明の挿入シースの使用が、凝血の形成、血栓および関連する障害の可能性も減少させるであろうことが予想される。
RNS(酸化窒素など)を溶出する本発明の医療機器は、挿入シース、又は挿入シースアセンブリ(部品キット)を含んでいてもよい。部品キットは、少なくとも2つの重要な部材を含んでおり、それは、拡張器を含む挿入シースと、少なくともシースの遠位部分に塗布されたRNSを溶出するコーティングとである。この機器の第一の作用様式は、従来の挿入シースのそれと同一であり、介入装置および/または診断装置を血管内に導入する際に使用されるものである。RNS溶出の付随的な作用は、挿入シースを通して介入装置および/または診断装置を導入する間に、血管のけいれんおよび閉塞を防ぐことである。本発明の挿入シースの使用が、凝血の形成、血栓および関連する障害の可能性も減少させるであろうことが予想される。
好ましい機器は、シースの少なくとも遠位側10cmに塗布されたRNS溶出コーティングによって覆われた挿入シースである。
ある実施態様では、挿入シースの近位側1cmはコーティングされない。
装置は介入装置/診断装置の橈骨血管内への導入のために、ぎざぎざ(indented)を付けられている。また、この機器の第一の作用様式は、従来の挿入シースのそれと同一である。
医療機器の付随的な作用は、例えば、手術中に血管けいれんまたは血栓の危険を減少させるなどの臨床的安全性を高めるRNS溶出である。
本願明細書に用いられる「挿入シース(introducer sheath)」の用語は、例えば、血管系または神経血管系などの人体に医療機器を導入するために用いられる機器であって、典型的には可撓性材料で作られた中空管を含み、それを通して他の医療機器を血管系または神経血管系に導入する。挿入シースは、しばしば潤滑表面で覆われるか、又はテフロン(商標)などの円滑な材料から作られる。挿入シースの長さの大部分が血管系の血管の管腔内にある間、挿入シースの近位端は体外にある。挿入シースは、典型的には、長さ約10〜約30cm、直径5または6フレンチである。フレンチ(French)は、挿入シースの内径と、カテーテルのように挿入シースに挿入される次の医療機器の外径と、に対応する単位である。1フレンチはl/3ミリメートルである。挿入シースの壁厚は変更してもよく、挿入シースの構造の強健さを保持しつつ、できるだけ薄い壁を持っていることが望ましい。
典型的には、挿入シースの挿入は、動脈壁内への中空針(トロッカー)の使用(静脈穿刺)により、人体の切開を形成する第1の行為を含んでいる。次に、針を介して、先端が柔軟なガイドワイヤを挿入し、針を除去する。そして、ガイドワイヤ上を通して、内側に拡張器を含む挿入シースを挿入する。拡張器を除去し、ワイヤ上を通して医療機器(典型的にはカテーテルを含んでいる)を挿入し、ワイヤを除去する。
好ましくは、挿入シースの近位端の外表面は、前述のRNS付加物でコーティングしない。これは、挿入シースとのきつい接続を確実にして、挿入部位から周囲の組織及び体外への生理的媒体の漏れを防ぐため、及び、挿入シース除去後に、挿入部位での凝血による迅速な治療も容易にするための両方の理由により、局所的な血管けいれんが望ましい場合、そこが、血管中(挿入部位)への損傷の部位と瞬間的よりは長く接触する領域である、という理由による。
従って、好ましくは、挿入シースの近位端のコーティングしていない外表面の領域は、近位側がコーティングされた同等のシースと比較すると、血管系または神経血管系への挿入点(entry point)からの出血を十分に縮小する。
典型的に、挿入シースの長さは10〜30cmである。
典型的には、挿入シースは、4〜12フレンチの内径を持っている。患者(または彼らの動脈)のサイズ、及び挿入シースで差し込まれる医療機器のサイズによっては、他のサイズが適しているかもしれない。例えば、直径は4〜7フレンチ、例えば5〜6フレンチは、橈骨動脈用として使用されてもよい。4フレンチの挿入シースは、小さな子どもに使用するのに適しているだろう。8〜9フレンチのものは、大腿動脈を介して入れられる大きい装置用として使用され、さらには12〜14フレンチまでのものは、大動脈ステントなどの装置用であろう。しかしながら、典型的には、通常の心臓手術では5〜6フレンチのもので十分である。
好ましい実施態様において、挿入シースはトランスラディアル用の挿入シースである。トランスラディアル用挿入シースは、橈骨動脈経由の挿入に関連した血管けいれんを回避するのに特に有用である。
<部品キット(Kit of Parts)>
挿入シースは、典型的には、部品キットとして製造され、それは挿入シースに加えて拡張器を含む。
挿入シースは、典型的には、部品キットとして製造され、それは挿入シースに加えて拡張器を含む。
本願明細書で用いられる「拡張器(dilator)」の用語は、挿入シースに挿入される機器であり、それは血管系の中に挿入する際に挿入シースの構造の強健さを保証し、挿入シースに挿入されるべき医療機器の挿入に先立って除去される。拡張器は、挿入シースと密に適合することが可能な外径を有しているが、その除去を妨げることはない。拡張器は内径も持っており、そこを通して患者にガイドワイヤを挿入できる。拡張器も可撓性材料から作られており、そして、挿入シースに完全に挿入されたときには、それらは典型的には挿入シースの遠位端を越えて延在し、典型的には、血管中への挿入シース/拡張器の挿入を容易にするテーパエンドを含んでいる。拡張器は、放射線を通さない材料の遠位領域を含んでもよく、それは、X線像を用いるときに、挿入シースアセンブリの端部に設置して利用されて、正確な挿入を保証する。
本願明細書に用いられる「挿入シース用ガイドワイヤ(guide wire for an introducer sheath)」の用語は、血管中への挿入シースの挿入をガイドするのに用いられるガイドワイヤについて記述する具体的な用語である。好ましくは、ガイドワイヤの寸法範囲は、直径が約0.018〜約0.038"(約0.4572〜約0.9652mm)、長さが約35〜約80cmである。カテーテル用ガイドワイヤと異なり、挿入シース用ガイドワイヤは介在位置に到着せず、確かに、ある実施態様では、ガイドワイヤが挿入シース又は拡張器の遠位端を越えて延在する必要はない。
本願明細書に用いられる「挿入シースアセンブリ(An introducer sheath assembly)」の用語は、挿入シースと、例えばセルジンガー法において血管系への挿入シースの挿入中に用いられる少なくとも1つの他の医療機器と、を含む部品キットを指している。挿入シースアセンブリは、体内に挿入されない近位端に、カテーテルなどの更なる医療機器の導入を容易にするためのバルブを含んでもよい。挿入シースは、治療薬などの流体投与の注入を可能にするためのバルブを含んでもよい。バルブハウジング上の縫合リングは、シースの確実な固定を提供してもよい。
生理的条件下で酸化窒素を放出することができる化合物でのコーティングに適している挿入シースアセンブリは、US5,409,463に開示されている。この発明の方法を用いるコーティングに適した挿入シースは、ペンシルバニア州モールヴァンのThomas Medical Products社から入手可能であり、そして、例えばコーティングシステムを用いたスプレーコーティングによって、および/または、例えばエレクトロスピニングによるナノ繊維のコーティングによって準備されるだろう(US6,382,526、US6,520,425)。
本発明によれば、ある実施態様では、部品キットは拡張器を含んでおり、この拡張器は、例えば本発明の挿入シース、あるいは酸化窒素付加物でコーティングされない挿入シースなどの挿入シースに差し込むことができる。好ましくは、拡張器は、例えば本発明の挿入シース用ガイドワイヤなどの挿入シース用ガイドワイヤの上に差し込むことができでもよい。
好ましくは、拡張器が挿入シースに完全に挿入されたときには、それは挿入シースの遠位端を越えて延在し、そして挿入シースの遠位端を越えて延在する拡張器の領域は、生理的条件下でRNS(酸化窒素など)を放出可能な化合物でコーティングされたテーパエンドを含んでいる。
ある実施態様では、完全に挿入されたときに挿入シースの遠位端を越えない拡張器の領域は、生理的条件下で酸化窒素などのRNSを放出可能な化合物でコーティングされていない。
部品キットは、本願明細書で言及されたRNS付加物および/またはコーティングシステムのような、生理的条件下でRNS(酸化窒素など)を放出可能なRNS付加物によって任意でコーティングされた挿入シース用ガイドワイヤも含んでもよい。
最初の挿入に用いられるトロッカー針も、RNS付加物(酸化窒素付加物など)でコーティングされてもよい。トロッカーは中空であり、血管の管腔にガイドワイヤを挿通させることができる。トロッカーの遠位部が、本願明細書で言及されたRNS付加物(酸化窒素付加物など)および/またはコーティングシステムでコーティングされることが有益であると考えられる一方、ある実施態様では、トロッカーの近位端、すなわち患者に挿入された後に傷口と接触する部分は、本願明細書で言及された酸化窒素付加物および/またはコーティングシステムなどのRNS付加物ではコーティングされない。
<製造方法>
本発明による医療機器は、RNS付加物を含む基材から作られても、またはその基材を含んでもよいと予想される。
本発明による医療機器は、RNS付加物を含む基材から作られても、またはその基材を含んでもよいと予想される。
しかしながら、好ましい実施態様では、医療機器はあらかじめ製造され、それに次いでRNS付加物でコーティングされる。
所望の臨床的影響に帰着する特定の目標放出(最適な目標放出は、約0.5 nmol/min/cm2〜約40 nmol/min/cm2)を保証するために、RNS供与体(付加物)ポリマーマトリックスに組み入れられてもよい。
好ましい実施態様において、コーティングは3層から構成される。
(i)任意のプライマー層であり、機器へのコーティングの固着を保証し最適化する。
(ii)RNS(例えば酸化窒素)を供与する層(第1ドメイン)であり、例えば、本明細書(アンダーコーティングシステムを参照)で言及したポリウレタンあるいは他のポリマーと、またL-PEI-NONO(LPN) (例えば、医療機器上への噴霧塗布用のピリジンまたはpHを調整されたメタノール(例えば、NaOHなどの適当なアルカリの追加によって調製されている)などのアルカリ有機溶媒の中で適切に溶解されてもよい)との混合物であってもよい。酸化窒素(例えばLPN)供与層の処方は、酸化窒素(例えばLPN)が処理中に安定していることを保証するために、pHを調整された溶媒(例えばメタノールなどのアルコールなどのアルカリ有機溶媒、あるいはピリジン)を含んでいるかもしれない。好ましくは、アルカリ薬剤が保持されて、第1ドメインのpHが7以上に維持されることを保証するのがよい。(iii)任意のトップコート(外側層/コート)であり、コーティング純度、適切な吸水速度、およびRNS(例えばNO)の適切な拡散速度を保証する(およびLPEI-NONOの全身性放出(systemic release)を防ぐ)役目をする。
(i)任意のプライマー層であり、機器へのコーティングの固着を保証し最適化する。
(ii)RNS(例えば酸化窒素)を供与する層(第1ドメイン)であり、例えば、本明細書(アンダーコーティングシステムを参照)で言及したポリウレタンあるいは他のポリマーと、またL-PEI-NONO(LPN) (例えば、医療機器上への噴霧塗布用のピリジンまたはpHを調整されたメタノール(例えば、NaOHなどの適当なアルカリの追加によって調製されている)などのアルカリ有機溶媒の中で適切に溶解されてもよい)との混合物であってもよい。酸化窒素(例えばLPN)供与層の処方は、酸化窒素(例えばLPN)が処理中に安定していることを保証するために、pHを調整された溶媒(例えばメタノールなどのアルコールなどのアルカリ有機溶媒、あるいはピリジン)を含んでいるかもしれない。好ましくは、アルカリ薬剤が保持されて、第1ドメインのpHが7以上に維持されることを保証するのがよい。(iii)任意のトップコート(外側層/コート)であり、コーティング純度、適切な吸水速度、およびRNS(例えばNO)の適切な拡散速度を保証する(およびLPEI-NONOの全身性放出(systemic release)を防ぐ)役目をする。
本願明細書に用いられる「均質の」の用語は、それら全体を通して構造および/または組成物が同一な単一相系を指している。
コート(i)および(iii)は任意であるが、あるほうが好ましい。典型的には、本発明にかかるコーティングした医療機器を調製する方法は、プライマー層を塗布する任意の第1工程(i)と、酸化窒素付加物層を塗布する第2工程(ii)と、保護膜を塗布する任意の第3工程(iii)とから成る。本願明細書で言及されたように、さらなるコーティングは、RNS付加物層の塗布の前、最中、又はその後のいずれで塗布されてもよい。
トップコートが塗布される場合、RNS(NOなど)の放出は、典型的には1'オーダー(l'order)の放出から著しくはずれている。これはトップコートバリア特性によるものであり、それは、ひとりでに一定の放出を導くコーティングを通して、吸水およびRNS(NOなど)の拡散を制限する。
RNS(酸化窒素など)付加物コーティングの塗布に先立って、本願明細書に記述されたようなプライマー層を塗布してもよい。プライマー層は、例えば、浸せき法(dipping)、スプレー法(spaying)、押出し法(extrusion)などの適切な手段によって塗布されてもよい。
機器の製造中に、層は、例えば浸せきコーティング(dip-coating)、スプレー法、塗装法(painting)、印刷法(printing)、蒸着法(vapor deposition)、押出し法、あるいはそれらの組み合わせによって形成される。ある実施態様では、層は、エレクトロスピニングでは形成されない。スプレーコーティングは、医療機器にドメインと層とを塗布する非常に便利な方法であることが分かった。
内側層(inner layer(s))は、外側層の塗布に先立って、例えば研磨(sanding)によってテクスチャ加工(textured)されてもよく、それにより、外側層の改善された結合を提供するテクスチャ加工した又は粗面化された内側層の外表面が得られる。
RNS付加物はコーティングシステムとして塗布される。
コーティングシステムは、医療機器の外表面(あるいは、例えば第2ドメインまたは第3ドメインなどの追加層のような、プライマー層または次の層)に塗布されたポリマー混合物を含んでもよく、そのポリマー混合物は、少なくとも1つのRNS付加物(酸化窒素付加物など)と、親水性のポリマー又はポリマーブレンドとを含み、RNS付加物とポリマー又はポリマーブレンドとは、均質相を形成している。
ある実施態様では、親水性ポリマー又はポリマーブレンドは、親水性の支持ポリマー又はポリマーブレンドである。
親水性ポリマー又はポリマーブレンドは、典型的には、RNS付加物への水およびイオンの輸送と外部の(生理学的な)環境へのRNSの輸送とを可能にするポリマーマトリクス内での支持を提供する、と考えられる。従って、親水性のポリマー又はポリマーブレンドは、本明細書では、親水性の支持ポリマー又はポリマーブレンドと呼ばれてもよい。
本願明細書に用いられる「均質の」の用語は、それら全体を通して構造および/または組成物が同一な単一相系を指している。
その後、コーティングシステム層の上に追加層を塗布さしてもよい。例えば、生理的媒体への挿入において、コーティング層システムのpHに影響を与えうる材料層が塗布されてもよい(ヨーロッパ出願EP06075159およびPCT/DK2007/000030を参照のこと。これらは参照して本明細書に組み込む)。pHを変更層は、pH変性剤(pH modifying agent)を含んでいてもよく、それは、広い実施態様において、H+およびOH-を含む原子、分子あるいはイオンを含んでおり、H+イオンとOH-イオンとの局所的なバランスを変えることによりpHに影響を与えることができる。pHの変化は、酸または塩基の進入によるH+イオンあるいはOH-イオンの直接的な増大あるいは減少によって生じてもよく、あるいはpHの変化を与える化学反応を誘発する分子またはイオンの進入によって生じてもよい。NO付加物からのNO放出は、典型的にはpHに敏感であり、NOの放出は酸性条件で有利に働き、一方、HNO放出はアルカリ条件で有利に働く。従って、濡れたとき(例えば生理的媒体中)にH+イオンとOH-イオンの局所的なバランスを変えることができる追加層の利用は、RNS付加物からのRNSの放出速度の制御を可能にする。追加の材料層は、例えばアスコルビン酸、ポリアクリル酸、シュウ酸、酢酸および乳酸から選ばれた酸などの酸を含んでもよい。酸は塗布用のポリウレタンポリマーに混ぜられてもよい。
好ましい実施態様では、本願明細書に記述されるような外部コーティングも塗布される。外部コーティングは、コーティングシステム層に直接塗布されてもよく、あるいはコーティングシステム層に塗布された1つ以上の追加層に塗布されてもよい。
治療薬の早期放出を回避すべき場合には、供与体化合物を含むコーティングは、好ましくは、放出に不利な条件下(例えば低温、低圧、低い含水率あるいは低湿度の条件下)で塗布される。特に、治療薬の早期放出は、治療薬の放出を抑制するpH条件下--- pH7以上のアルカリ条件下が適している---での供与体化合物(つまり治療薬)の析出によって達成される。HNOがRNSの場合、酸性条件下(pH7以下)が好ましいだろう。HNOとNOの両方ともが望ましいRNSである場合、中性のpHは、RNS付加物にとって有用である。
このように、本発明の第5の態様に係る製造方法は、好ましくは、最大40%、例えば最大30%、例えば最大25%、例えば最大20%、例えば最大15%または10%の相対湿度で行われる。同様に、発明の第2の態様の製品において、パッケージ中の相対湿度は、最大40%、例えば最大30%、例えば最大25%、例えば最大20%、例えば最大15%または10%に維持されるだろう。同様に、治療薬の早期放出を防ぐために、医療機器は、かかる放出を抑制するpH(最小でpH7、例えば最小で8、9、10、11、12若しくは14で、または代わりに、最大でpH6、例えば最大で5、4、3、2あるいは1)で製造され、そして蓄えられてもよい。湿度とpHとの組合せ、及び任意の他のパラメーターとの組合せを適用して、治療薬の早期放出をさらに抑制してもよい。
その後、医療機器はパッケージされ、殺菌される。
パッケージ材料の内部に吸水材(water absorber)を含んで、パッケージング内の低い水分環境(low water environment)を保証することは非常に有利である---これは、密封製品の貯蔵寿命を延長するだけでなく、殺菌中にトップコートを保護する。好適には、0.01%程度に低いパッケージング内の気体状水分レベルを得ることができる(www.mgc- a.com)。
RNS付加物からのRNS (NOなど)の放出は湿気に敏感なので、相対湿度が約40%を越えない(例えば約30%を越えない、約20%あるいは約10%を越えない)拘禁環境(confined environment)の中でパッケージングが行なわれるのが望ましい。ある実施態様では、相対湿度は約1%以下、あるいは実質的に水分フリー(つまり水分が0.1%未満)である。好ましくは、医療機器または部品キットは、例えばN2雰囲気で密封したアルミニウムの小袋のように、密封した小袋でパッケージされる。ある実施態様では、O2(g)は約0.1%以下であり、実質的にはO2(g)フリー(つまりO2が0.1%未満)である。パッケージングは、好ましくは湿気、酸素および光がパッケージに入るのを防ぐべきである。
ある実施態様では、殺菌は電子線及びγ線などの放射線殺菌(radiation sterilisation)を用いて行なわれる。
ある実施態様では、製造方法は、医療機器の全ての外表面をコーティングすることを含んでいる。しかしながら、本願明細書に記述されるように、ある実施態様では、医療機器の一部のみをコーティングすることが有利である。
本願明細書に用いられる「約(about)」の用語は、提供された特定値も明示的に示されていると考えられ、例えば約0.01〜約1の範囲は、明示的に0.01〜1の範囲を開示している。
<反応性窒素化学種(Reactive Nitrogen Species)(RNS)>
反応性窒素化学種の用語は、窒素原子を含むフリーラジカルを指している。典型的には、反応性窒素化学種は、250以下の分子量を有しており、例えば100以下、例えば50以下、例えば40以下、例えば35以下の分子量を有している。好ましくは、反応性窒素化学種は、標準大気圧下、20℃で気体である。特に好ましい反応性窒素化学種は、酸化窒素(NO)、及びニトロキシ(HNO)である。
反応性窒素化学種の用語は、窒素原子を含むフリーラジカルを指している。典型的には、反応性窒素化学種は、250以下の分子量を有しており、例えば100以下、例えば50以下、例えば40以下、例えば35以下の分子量を有している。好ましくは、反応性窒素化学種は、標準大気圧下、20℃で気体である。特に好ましい反応性窒素化学種は、酸化窒素(NO)、及びニトロキシ(HNO)である。
ある実施態様では、RNSは酸化窒素(NO)である。従って、RNS付加物はNO付加物であってもよい。
本願明細書において、RNSは治療薬と呼ばれてもよい。
ある実施態様では、RNSは(HNO)である。従って、RNS付加物はHNO付加物であってもよい。HNOも非常に有効な血管拡張剤であり、よって血管内の医療機器に使用されるのに適したRNSである、と考えられる。
HNOは、次の反応に従って二量化するというHNOの特性を用いて、N2Oから間接的に検出することができる。
そして、N2Oは、例えばガスクロマトグラフィーによって検出することができる。
ある実施態様では、RNSは、酸化窒素(NO)および(HNO)の両方を含む---従って、RNS付加物は、生理的条件下でHNOおよびNOの両方を放出することができてもよい。
RNSは、RNS付加物の形で医療機器に塗布される。
生理液/生理媒体における放出反応速度(release kinetics)を評価する目的のために、発明者らは、37℃の温度でpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水を用いた。
<反応性窒素化学種付加物(Reactive Nitrogen Species Adduct)(RNS付加物)>
RNSは、濡らされたとき又は酵素(enzymes)若しくは他の化学薬品にさらされたときの化学反応の結果にRNSを発する物質(一般的に、これらはRNS付加物と呼ばれる)として、典型的に間接投与される。
RNSは、濡らされたとき又は酵素(enzymes)若しくは他の化学薬品にさらされたときの化学反応の結果にRNSを発する物質(一般的に、これらはRNS付加物と呼ばれる)として、典型的に間接投与される。
RNS付加物は、ポリマーのモノマーであってもよく、また、例えば、ニトロシル基(nitrosyl)、亜硝酸塩(nitrite)、硝酸塩(nitrate)、ニトロソ(nitroso)、ニトロソチオ(nitrosothio)、ニトロ(nitro)、金属-NO錯体、ニトロソアミン(nitrosamine)、ニトロシミン(nitrosimine)、ジアゼチンジオキシド(diazetine dioxide)、フロキサン(furoxan)、ベンゾフロキサン(benzofuroxan)あるいはNONOエート(NONOate)(N2O2 -)基を含む化合物から選ばれてもよい。
ある実施態様では、RNS付加物は、ニトログリセリン、ニトロプルシドナトリウム(sodium nitroprusside)、S-ニトロソプロテイン(S-nitroso-proteins)、S-ニトロソチオール(S-nitrosothiols)、長炭素鎖の脂肪親和性S-ニトロソチオール(long carbon-chain lipophilic S-nitrosothiols)、ニトロソカルボニル(nitrosocarbonyls)、S-ニトロソ-ジチオール(S-nitroso-dithiols)、鉄ニトロシル化合物(iron-nitrosyl compounds)、チオ硝酸塩(thionitrates)、チオ亜硝酸塩(thionitrites)、シドノンイミン(sydnonimines)、フロキサン(furoxans)、有機硝酸塩(organic nitrates)およびニトロソエート化アミノ酸(nitrosated amino acids)、ニトロソ-アセチルシステイン(nitroso-acetylcysteine)、S-ニトロソ-カプトプリル(S-nitroso-captopril)、S-ニトロソ-ホモシステイン(S-nitroso-homocysteine)、S-ニトロソ-システイン(S-nitroso-cysteine)、S-ニトロソ-グルタチオン(S-nitroso-glutathione)およびS-ニトロソペニシラミン(S-nitrosopenicillamine)、S-ニトロソチオール(S-nitrosothiols)、S-ニトロシレート化シクロデキシリン(S-nitrosylated cyclodexrins)などのS-ニトロシレート化多糖類(S-nitrosylated polysaccharides)、ヒドロキシルアミン(hydroxylamines)、シアナミド(cyanamid)、アシルオキシニトロソ化合物(acyloxy nitroso compounds)、N-ヒドロキシスルフェンアミド(N-hydroxysulfenamides)、第1あるいは第2アミンのNONOエートポリマー(NONOate polymers)から調製されたジアゼニウムジオレート(NONOエート)(diazeniumdiolates(NONOate))から成る群から選ばれてもよい。
RNS付加物の好ましい群はジアゼニウムジオレートである。ジアゼニウムジオレートは、第1アミン基(典型的には生理的媒体中でHNOを放出する)および第2アミン群(典型的には生理的媒体中でNOを放出する)を含んでもよい。ポリアルキレンイミンジアゼニウムジオレートは、例えばHNOとNOの両方に適している付加物として、第1アミングループおよび第2アミングループの両方を含む。他のHNO/NO供与体はUS2005/0009789およびUS2004/0038947に開示されており、参照して本明細書に組み込む。pHの調節により、RNS付加物からのNO放出とHNO放出とのバランスが制御されてもよく、典型的には、pHが高いとHNOの放出が増大し、pHが低いとNOの放出が高くなる、と認識される。
本願明細書のRNS付加物を参照すると、その用語は、NO付加物、HNO付加物およびHNO/NO付加物を指していると理解されるべきである。
生理的条件下でRNSを放出できる化合物(RNS付加物)は、好ましくは、RNS求核複合体(RNS-nucleophile complexe) (例えばNO求核複合体など)を含んでいる。RNS付加物はモノマーまたはポリマーであってもよい。
モノマー分子であるRNS付加物は、生理的媒体に可溶であっても不溶であってもよい。適したモノマーRNS付加物は、例えば、US4,954,526に開示されている。
生理的媒体中でRNSを放出できる多数のポリマーが、当該技術分野で知られている。例えば、US5,405,919およびUS6,875,840に開示されたポリマーを用いてもよい。
NO付加物などのRNS付加物は、線状ポリマー、分岐ポリマーおよび/またはクロスリンクポリマー(cross linked polymer)などのポリマーの形状が望ましく、それには、RNS求核複合体などのRNS放出官能基(RNS releasing functional group)が結合されている。
ある実施態様では、酸化窒素付加物などのRNS付加物は、ニトログリセリン、ニトロプルシドナトリウム、S-ニトロソプロテイン、S-ニトロソチオール、長炭素鎖の脂肪親和性S-ニトロソチオール、ニトロソカルボニル、鉄ニトロシル化合物、チオ硝酸塩、チオ亜硝酸塩、シドノンイミン、フロキサン、有機硝酸塩およびニトロソエート化アミノ酸、ニトロソ-アセチルシステイン、S-ニトロソ-カプトプリル、S-ニトロソ-ホモシステイン、S-ニトロソ-システイン、S-ニトロソ-グルタチオンおよびS-ニトロソペニシラミン、S-ニトロシレート化シクロデキシリンなどのS-ニトロシレート化多糖類、ヒドロキシルアミン、シアナミド、アシルオキシニトロソ化合物、N-ヒドロキシスルフェンアミド、第1あるいは第2アミンから調製されたジアゼニウムジオレート(NONOエート)から成る群から選ばれる。
いくつかのRNS付加物/NO付加物は、水誘導性(water inducible)であり、またプロトン誘導性(proton inducible)と呼ばれる(つまり、それらはイオン水からプロトンを受け取り、その結果、酸化窒素(例えばNONOエート)などのRNSを放出する)ことが確認される。かかる水誘導性のRNS付加物が用いられることが望ましい。
しかしながら、NO付加物などの他のRNS付加物が使用されてもよいことも予想される。例えば、NOの酵素放出(enzymatic release)も、酸化窒素付加物層への適切な酵素の組み込みによって利用されてもよく、その後、酵素は水と接触したときに活性化され、その結果、酸化窒素を放出する。
ある実施態様では、RNS付加物は、ポリスチレン(polystyrene)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluorethylene)、ポリビニリデンジフルオライド(polyvinylidene difluoride)、ポリ塩化ビニル(polyvinylchloride)などのポリオレフィン(polyolefins)、ポリエチレンイミン(polyethylenimine)、ポリエーテル(polyethers)、ポリエステル(polyesters)などの誘導体ポリオレフィン(derivatized polyolefins)、ナイロン(nylon)などのポリアミド(polyamides)、ポリウレタン(polyurethanes)、ペプチド(peptides)、蛋白質(proteins)、オリゴヌクレオチド(oligonucleotides)、抗体(antibodies)および核酸(nucleic acids)などの生体高分子(biopolymers)、星形デンドリマー(starburst dendrimers)から成る群から選択したポリマーのNONOエートなどのNONOエートであってもよい。
ポリイミン(polyimines)とは、共有結合しているジアゼニウムジオレート部分を有するポリマーのさまざまなグループを表している。ポリイミンは、ポリ(エチレンイミン)などのポリ(アルキレンイミン)(poly(alkylenimines))を含んでいる。例えば、ポリマーは、US6,737,447に開示されているような線状ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレート(L-PEI-NONO)であってもよく、参照して本明細書に組み込む。PEIのアミン基の5-80%、例えば10-50%、例えば33%が、ジアゼニウムジオレート部分を持つように、線状のポリ(エチレンイミン)(PEI)上への酸化窒素供与体の積込み量(loading)を変更することができる。適用された条件に依存して、(L)-PEI-NONOは、酸化窒素などのRNSの放出可能な量のうち、様々な一部の量を遊離させることができる。
ジアゼニウムジオレート部分を備えたポリイミン(特に、線状ポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレート)を、エレクトロスピニング処理用のポリマーとして用いてもよく、それは、そのポリマーは典型的には適当な親水性があり、ジアゼニウムジオレート部分の積込み量(および、その結果としてNO分子などの潜在的なRNSの積込み量)を、広範囲にわたって変更することができるからである(上記のPEI-NONOについての例を参照)。
ある実施態様では、RNS付加物(NO付加物など)は、PEI-NONOなどのポリ(アルキレンイミン)ジアゼニウムジオレートである。PEI-NONOは分岐ポリマー(これも使用できる)として、又は線状ポリマーPEI-NONOとして存在するが、線状の形態が特に好ましい。
最も好ましいRNS付加物ポリマーは、線状のポリエチレンイミンジアゼニウムジオレート(LPEI-NONO)などのポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートである。US6,855,366は、LPEI-NONOの調製方法を提供する。PEIのアミン基の5-80%、例えば10-50%、例えば約20-約40%、例えば約30%が、ジアゼニウムジオレート部分を持つように、線状のポリ(エチレンイミン)(PEI)上へのRNS供与体(例えば酸化窒素など)の積込み量を変更することができる。適用された条件に依存して、L-PEI-NONOは、酸化窒素などのRNSの放出可能な量のうち、様々な一部の量を遊離させることができる。
合成後、保存中、医療機器の製造中および/または医療機器の保存中に、(L)-PEI-NONOなどのRNS付加物(例えばNO付加物)は、(L)PEI-NONOの製剤(formulation)および処理中ならびに当該(アルカリ)(L)PEI-NONO製剤の医療機器への塗布中に、アルカリ環境中で維持されるのが望ましい。
ある実施態様では、本発明は、線状ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートなどのポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートのアルカリ安定化製剤と、医療機器であって、例えば当該アルカリ安定化製剤でコーティングされており、本願明細書に記述されるような少なくとも第1ドメインを含む医療機器などを提供する。
発明者らは、ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートのための溶媒としてメタノールなどの非水溶媒を使用しているにもかかわらず、ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートの製剤中、保存中、および処理中に、ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートからのNOの放出が早期に発生する場合があり、その結果、最適とはいいがたい酸化窒素供与能力に帰着することを発見した。酸化窒素付加物の製剤および処理が、(例えば、医療機器のスプレーコーティング中などで)酸素の存在下で行われた場合、亜硝酸塩の形成は、自発的な酸化窒素の放出による不可避の影響である。
ある実施態様では、NO付加物ポリマーなどのRNS付加物ポリマーの分子量(MW)は、RNS付加物がLPEI-NONOである場合などには、RNS付加物の調製に使用した出発物質のサイズに依存し、そしていくつかのケースでは、ポリマーの分岐度(degree of branching)に依存する。典型的には、大きなポリマーサイズは生体内の可溶性(vivo solubility)を減少する点では望ましいが、その一方、大きなポリマーは、可溶性にして医療機器にコーティングする能力を阻害するかもしれない。LPEI-NONOの場合には、分岐状前駆体の使用により分岐点で分子構造が分裂して、最終的なNOポリマー付加物中に存在するポリマー分子の平均分子量が減少する、という結果になる。よって、MWは、LPEI-NONOが線状かどうか規定するのに用いられる。
好ましい実施態様では、LPEI-NONOポリマーなどのRNS付加物は、約5kDa〜約200kDa、例えば約10kDa〜約100kDa、より好ましくは約30kDa〜約70kDa、例えば約55kDaの平均分子量と、好ましくは約1〜3の範囲の多分散性、特に好ましくは約2の多分散性とを有している。
平均分子量は、ポリマー主鎖である線状ポリエチレンイミン(L-PEI)のサイズ排除クロマトグラフィー(size exclusion chromatography:SEC)によって決定されるが、このとき、既知の分子量を有する様々なポリエチレングリコール(PEG)を標準資料として共に用いる。NO積込ポリマー(L-PEI-NONO)中におけるNOの総量は、元素分析(EA)によって決定することができる。従って、RNS(NOなど)積込ポリマー(L-PEI-NONO)の平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)および元素分析(EA)の結果に基づいて計算することができる。
好ましい実施態様では、RNS(NOなど)付加物(コーティング(つまり、NOを溶出するコーティング)を形成するもの)が、NONOペンダント基(pendant NONO groups)を伴う線状ポリエチレンイミン(L-PEI)に基づいている。
各NONO基は、L-PEIポリマー鎖のN原子うちの1つに共有結合で接合されており、それによりN*-N+(O-)=N-O-基を形成している。ここで、N*はL-PEI主鎖の原子のうちの1つである。この官能基は、L-PEI主鎖中の隣接した-NH2 +-アミン基を備えた両性イオン錯体の形態で安定する。
線状ポリエチレンイミン(L-PEI-NONO)に積み込まれたRNS(NOなど)は、イオン水あるいは血液などのプロトンを供与(H+)する環境にさらされたときに、RNS(NOなど)を放出する。本願明細書に記述されたように、PEI-NONOによって放出されたRNS(NOなど)は、NOおよび/またはHNOであってもよい。
コーティングを安定させるために、機器は、N2雰囲気で密封されたアルミニウム小袋内に保存される。それにより製品は、保存中に湿気、光および酸素から保護される。
ポリマーマトリクス中にL-PEI-NONOを組み込むことは、酸化窒素などのRNSの制御された放出を可能にする。血管系に導入されたときは、酸化窒素などのRNSは拡散によって血管壁に運ばれる。
血管壁(つまり目標場所)に運ばれるRNSの投与量は、放出速度および動脈壁と接する時間によって決定される。目標(つまり平滑筋細胞(SMC))に運ばれた投与量は、さらに、血管壁の厚さ、潜在的なプラーク、血液/ヘモグロビンの存在、酸素の存在および拡散定数(D)に依存する。
ポリマーNONOエート、例えばジアゼニウムジオレート基を含んでいるポリマーNONOエートは、ニトロソアミンなどの望ましくない小さな分子の副生物を生成することが認識されている (US6,875,840を参照のこと)。本発明は、ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートなどのポリマーNONOエートを親水性の(支持)ポリマー中又はポリマーブレンド中に組み込むことにより、生理的条件下において酸化窒素などのRNSの制御された放出を可能にしつつ、望ましくない小さな分子の副生物の潜在的な発生を克服する。
線状ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートからのNO放出の注意深い分析を通じて、発明者らは、医療機器の除去の後に、医療機器が露出されていたイオン溶液からのNO放出を検出した。このことは、従来の教示に反して、線状ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートがイオンの水溶液に可溶であるという発見へと導き、そのようにして、LPEI-NONOでコーティングされた医療機器の使用の際に、体内へのLPEI-NONOの測定可能な全身性放出がおこる。(図12を参照)。
LPEI-NONOの生理液中への可溶性は、それを用いて血管内用医療機器などの医療機器をコーティングすることについて従来認識していなかった問題、すなわち、医療機器から血流中へのLPEI-NONOの放出が、LPEI-NONOの全身性放出および治療位置から離れた位置での酸化窒素の望ましくない放出に帰着するであろう、という問題を与える。
血流中へのLPEI-NONOの放出は望ましくないとも考えられるが、それは、そのことが体内への異物の放出に帰着するからである。
発明者らは、血液などの体液中への挿入の際にLPEI-NONOの放出をごく低濃度にまで効率的に減少する外部コート層を、LPEI-NONO層の外側に利用することよって、全身性放出というこの問題を克服した。さらに、水およびRNSの流れへの影響によって、外部コートは、医療機器をコーティングしているポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートからの酸化窒素など、RNSの放出反応速度に対する有益な制御効果を有することができる。
例えば、ある態様では、体内への医療機器の挿入の際にNOなどのRNSの放出が比較的低い場合には、制御可能な初期段階がある。このことは、RNSの血栓形成阻害効果(anti-thrombosis effect)による刺入創からの著しい出血、という問題をもたらし得るRNSの早期放出を防ぐ。外側層の特性と、いくつかの点とにおいて、本明細書で述べた第1、第2および第3ドメイン、特に当該ドメインで用いられる親水性の支持ポリマー/ポリマーブレンドの性質は、この初期段階の性質の決定(つまり、制御)において重要である。
<RNS放出機構>
RNS付加物の例として、ジアゼニウムジオレートは、第1アミン(HNO供与体)あるいは第2(NO供与体)アミンのいずれに接合しているかに依存して、NO供与体および/またはHNO供与体の両方で機能することができる。NONO'エートからのNO放出はpH依存であり、また一次反応式(first order kinetics)に従う。従って、NO放出のための唯一の要求は、水性環境と十分な量のプロトン原子である(Duttonら、2004年)。H+との全反応により、2つのNOと、酸化窒素供与体上の第2アミン基が得られる。NOの化学に比べると、HNOの化学についての知識の蓄積は著しく少ない。しかしながら、HNOの放出は、例えば、pHに依存した放出機構(以下に図示されるように発生すると予想される)によって、第1のアミンに連結されたジアゼニウムジオレートから起こることが知られている(例えばMirandaら、2005年)。
RNS付加物の例として、ジアゼニウムジオレートは、第1アミン(HNO供与体)あるいは第2(NO供与体)アミンのいずれに接合しているかに依存して、NO供与体および/またはHNO供与体の両方で機能することができる。NONO'エートからのNO放出はpH依存であり、また一次反応式(first order kinetics)に従う。従って、NO放出のための唯一の要求は、水性環境と十分な量のプロトン原子である(Duttonら、2004年)。H+との全反応により、2つのNOと、酸化窒素供与体上の第2アミン基が得られる。NOの化学に比べると、HNOの化学についての知識の蓄積は著しく少ない。しかしながら、HNOの放出は、例えば、pHに依存した放出機構(以下に図示されるように発生すると予想される)によって、第1のアミンに連結されたジアゼニウムジオレートから起こることが知られている(例えばMirandaら、2005年)。
しかしながら、単純な放出システムにより、材料の貯蓄及び取扱い方法について高い要求が求められる。通常の大気中水分への露出により、RNS(NOなど)の放出が始まってしまう。典型的には、NOは、(含水及び多湿の状態で)O2と反応してNO2 -(亜硝酸塩)を形成し(Kharitonovら、1994年)、それがpHの減少とNOのさらなる放出とに寄与するだろう。
共有結合のNONO基を有している線状ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレート(LPEI) (L-PEI-NONO)のポリマー主鎖は、生体適合性ポリマーなどの他のポリマーと一緒に、混合され固定されてもよい。これにより、LPEI-NONOコーティング製品から放出されるNOをもたらす(小分子の副生成物はない)。
材料の不適切な取扱いは、NOに対して特異的ではない分析法(例えば一般に用いられているGriess方法)において(放出の計測中に)誤ってNOとして解釈されうる亜硝酸塩を、大量に形成するかもしれない。第1アミンのNONO'エート(例えばアンジェリ塩(Angeli's salt))の場合には、HNOの放出が観察された(Mirandaら、2005年)が、これは、NOとHNOの化学では直角をなしていると図示される第2アミンのNONO'エートでは立証されていない。
ニトロプルシドナトリウム、モルシドミン(molsidomine)および硝酸エステルなどの他のNO供与体は、NOを放出するためにはレドックス活性化(redox activation)を必要とし、また、最近紹介されたS-ニトロソチオール系の薬剤は、溶血の分裂と副生成物としての反応性チイル(thiyls)の形成とによって、または微量の遷移金属(濃度依存)による触媒の破壊と処理中でのジスルフィドの形成とによって、NOを放出することができる(Singhら、1996年)。それらは、亜硝酸塩および硝酸塩などの副生成物も大量に製造しがちであり、また、小分子の供与体は、ポリマー供与体より一般に有毒である。
ある実施態様では、ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートなどのRNS付加物の医療機器表面への塗布密度(つまり濃度)は、約0.05〜約l00mg/cm2、例えば約0.1〜約10mg/cm2、好ましくは約0.2〜約3mg/cm2である。
ある実施態様では、ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートなどのRNS付加物の医療機器の表面上への塗布密度は、約0.05〜約200μmol NO/cm2、例えば約0.1〜約20μmol NO/cm2、好ましくは約0.5〜約3μmol NO/cm2である。
従って、ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートからの酸化窒素の早期放出を制御する時の重要な態様は、ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートのpH(局所環境---例えば、第1ドメイン)は7を越えて増加すること、例えばpH8〜13に増加することである。
ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートのアルカリ製剤は、典型的には、ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートを、エタノールおよびメタノールなどのなどのアルコール、テトラヒドロフラン(tetrahydrofurane)、ピリジンなどのアルカリ化された有機溶媒に溶解して作られる。
アルカリ化溶媒は、典型的には、(L)PEI-NONOポリマーを追加する前に、適当なアルカリ化合物(塩基)を溶解して調製されている。OH-の追加は、約1mM〜約100mM OH-、例えば10mM〜約75mM OH-、例えば約20mM〜約50mM OH-とすべきである。溶媒のpHは追加するアルカリの量の調節により調整される。
PEI-NONOは好ましいが、ある実施態様では、他のポリアルキレンイミンジアゼニウムジオレートが用いられてもよいことが認識されるだろう、
NaOH、KOH、Ca(OH)2およびLiOHなどの無機アルカリ、リチウムジイソプロピルアミド(lithium diisopropylamide)およびメチルアミン(methylamine)などの有機アルカリなどの、多数の好適なアルカリ薬剤を用いることができる。アルカリは、メトキシド(methoxide)またはエトキシド(ethoxide)などのアルコキシド(alkoxide)であってもよい。アルカリは、ホスフェート(phosphate)、エタノールアミン(ethanolamine)、ADA、炭酸塩(carbonate)、ACES、PIPES、MOPSO、イミダゾール(imidazole)、ビス-トリスプロパン(BIS-TRIS propane)、BES、MOPS、HEPES、TES、MOBS、DIPSO、TAPSO、トリエタノールアミン(triethanolamine)(TEA)、ピロリン酸塩(pyrophosphate)、HEPPSO、POPSO、トリシン(tricine)、ヒドラジン(hydrazine)、グリシルグリシン(glycylglycine)、トリジマ(Trizma)(トリス)、EPPS、HEPPS、BICINE、HEPBS、TAPS、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(2-amino-2-methyl-1,3-propanediol)(AMPD)、TABS、AMPSO、タウリン(taurine)(AES)、ホウ酸塩(borate)、CHES、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(2-amino-2-methyl-1-propanol))(AMP)、グリシン(glycine)、水酸化アンモニウム(ammonium hydroxide)、CAPSO、メチルアミン、ピペラジン(piperazine)、CAPS、CABSおよびピピジン(pipidine)有機または無機アルカリ緩衝液であってもよい。
メタノールに溶解したNaOHなどのアルカリメタノール(典型的には、濃度は0.1〜10μg/ml、例えば1〜2μg/ml、例えば約1.67μg/ml)が、最も好ましい。
<コーティングシステム(あるいは供与体層)>
発明にかかる医療機器は、酸化窒素付加物などのRNS付加物を、ポリマー混合物を含むコーティングシステムの形状で含んでおり、前記ポリマー混合物は、前記RNS付加物と親水性ポリマー又はポリマーブレンドとを含み、前記RNS付加物とポリマー又はポリマーブレンドとは、均質相を形成している。
発明にかかる医療機器は、酸化窒素付加物などのRNS付加物を、ポリマー混合物を含むコーティングシステムの形状で含んでおり、前記ポリマー混合物は、前記RNS付加物と親水性ポリマー又はポリマーブレンドとを含み、前記RNS付加物とポリマー又はポリマーブレンドとは、均質相を形成している。
ある実施態様では、親水性ポリマー又はポリマーブレンドは親水性の支持ポリマー又はポリマーブレンドである。
従って、RNS付加物は、本発明にかかる医療機器による医療機器の外表面の少なくとも一部に塗布されたコーティングの形状である。
ある実施態様では、コーティングシステムは、乳酸またはビタミンCなどの酸性薬剤を含んでいない。
コーティングシステムは、好ましくは、立体的に妨害されたフェノール系酸化防止剤(例えば、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tertブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオナート、商品名Irganox 1076、Ciba specialty chemicals社)などの酸化防止剤を、例えば約0.01〜1%、例えば約0.1%〜0.5%含む。かかる酸化防止剤の使用は、放射線殺菌中の安定性を増加させて、医療機器の貯蔵寿命を改善する。
「親水性の」の用語は、油または他の疎水性溶媒に対してよりも、水に対して高い可溶性を有する物質を指している。親水性分子は水素結合を形成することができるので、水だけでなく、他の極性溶媒にも可溶である。
かかるポリマー混合物の使用により、内側層から生理的媒体中へのRNS付加物(酸化窒素付加物など)の放出を制御できることが発見された。RNSを放出する付加物と追加のポリマーブレンドとの間の比率を調節することによって、RNS放出付加物の実施態様を改善して、RNS放出付加物から周辺環境への放出を最小限にできるだろう。RNS(例えばNO)付加物の放出が望ましくない全身性の影響の低レベル化につながる場合、これは、血管内用医療機器、例えば一時的な血管内用医療機器(つまり、インプラントではない)などに特に関連し、そのため、より厳格な規制の承認審査方式が必要になるだろう。ポリマーマトリクスの使用により、小さな分子の副生成物の、ポリマー混合物から生理的媒体中への漏れを防ぐことができることも予想される。
ポリマー混合物の使用は、内側層から生理的媒体中にRNS(酸化窒素など)を放出する速度およびタイミングの制御において、重要な決定要素である。これは、ポリマー又はポリマーブレンドを調節することにより制御されて、親水性の特徴に対する支持レベルのバランスをとっており、それにより、RNSを放出する生理的条件下で生理的媒体から内側層中への制御された水の拡散を提供できる所望の構造を作っている。
上述のように、RNS放出付加物にとって重要なパラメーターは、良好な安定性、RNS放出の速い活性化、生理的に適切な濃度内での連続的な放出、および、外部環境中におけるRNS放出ポリマーの無放出又は最小の放出を保証することである。
良好な安定性を保証するために、ポリマー混合物、ポリマーブレンド、コーティングシステムおよび/または単一のポリマーは、ポリマーコーティングの表面に加えられた約4〜100ニュートンcm-2の牽引力、例えば約8〜50ニュートンcm-2、好ましくは10〜20ニュートンcm-2の牽引力に耐えなくてはならない。
RNS(例えばNO)放出の迅速な活性化を保証するために、ポリマー混合物は、良好な水コンダクタンス性能(water conductance performance)を示すべきである。ある実施態様では、このパラメーターは、ポリマーと適切なRNS付加物とでコーティングされたRNS付加物からのRNSの放出速度を決定することにより、測定することができる。これは、高い水コンダクタンスおよび高い水コンダクタンス/膨張比を備えたポリマーを、RNS放出ポリマー層に供給することにより達成されてもよい。ポリマー混合物、ポリマーブレンド、コーティングシステムおよび/または親水性ポリマーは、RNS放出の最大増加率のときに測定した場合に、RNS放出を毎分約0.01〜約50nmol cm-2 min-1、例えば毎分約0.25〜約20nmol cm-2 min-1、好ましくは毎分0.5〜約10nmol cm-2 min-1だけ増大させるのに十分な迅速さで、RNS付加物層内への水の輸送を可能にするべきである(図6参照)。これは、30%のLPEI-NONO、70%の親水性ポリマー(あるいはポリマー混合物又はポリマーブレンド)を、ナイロンなどの不活性基材上で調製し、そして、pH7.4、37℃のリン酸緩衝生理食塩水中に挿入したときのRNS(例えばNO)の放出速度を長い時間をかけて測定することにより、決定されてもよい。好適には、RNS(例えばNO)放出を決定するのに使用されたRNS(例えばNO)付加物は、実施例1において調製されたようなLPEI-NONOであってもよい。
ある実施態様では、親水性ポリマー又はポリマーブレンドは、均質なポリマーブレンドとして使用される場合、生理的条件下で挿入したとき、例えばpH7.4、37℃のリン酸緩衝生理食塩水中に挿入したときに、約0.01〜約80(nmol/分/cm2)/分の傾斜を有するRNS放出の最大増加率を、十分な迅速さで得られるように、水(プロトン)の輸送を提供する。
ある実施態様では、コーティングシステム中におけるRNS(例えばNO)付加物に対するポリマー混合物の比は、重量/重量で測定したときに約5/95〜約95/5、例えば40/60〜90/10、好ましくは約50/50〜約80/20、例えば約70/30である。
ある実施態様では、RNS(例えばNO)付加物がコーティングシステム自体として使用するのに適するように、RNS(例えばNO)供与体自体が、親水性または支持ポリマー又はポリマーブレンドを形成してもよい。かかる実施態様では、コーティングシステムは、RNS(例えばNO)付加物を最大で100%含んでもよい。
ある好ましい実施態様では、ポリマーブレンドは、支持ポリマーと親水性ポリマーとの混合物を含む。
親水性ポリマーは、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリエチレンイミン、ポリエーテル、ポリエステルなどの誘導体ポリオレフィン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、及びシリコーンから成る群から選ばれてもよい。
より詳細には、それらは芳香族ポリウレタン(aromatic polyurethane)、エチレンアクリレートポリオレフィン(ethylene acrylate polyolefins)、親水性の脂肪族ポリウレタン(hydrophilic aliphatic polyurethanes)あるいはシリコーンから成る群から選ばれてもよく、いずれも、吸水度に対する水コンダクタンスの比が高い。これらのポリマーは、テコフィリック(tecophilic)、エステン(estane)、EMAC、およびEBACのポリオレフィン系、または高蒸気伝導シリコーン(high water vapour conducting silicones)から選ぶことができる。
支持ポリマーは、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリエチレンイミン、ポリエーテル、ポリエステルなどの誘導体ポリオレフィン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタンから成る群から選ばれてもよく、良好な接着性と構造安定性を備え、上述の安定性基準(stability criteria)を満たしている。しかしながら、脂肪族ポリエーテルベースのポリウレタン、例えばテコフレックス(Tecoflex)SG 85Aが好適であろう。
ある実施態様では、コーティングシステムで用いられる親水性ポリマーに対する支持ポリマーの比は、使用されるポリマーの特徴に依存して、重量比で約95/5〜約35/65にすることができる。あるシステムでは、芳香族ポリウレタンと共に脂肪族ポリエーテルベースのポリウレタンを用いると、比は、重量比で約90/10〜約50/50まで変更できる。
ある実施態様では、コーティングシステムで用いられる親水性ポリマーに対する支持ポリマーの比は、重量比で約70/30である。
親水性ポリマーに対する支持ポリマーの比は、コーティングシステムに存在しているRNS(例えばNO)付加物を除いた比である。
ある実施態様では、RNS(例えばNO)付加物は、それ自体が親水性および/または支持ポリマーのいずれか一方であるかもしれないと予想される。しかしながら、好ましい実施態様では、RNS(例えばNO)付加物が支持および/または親水性の特徴を含んでいたとしても、コーティングシステムで言及した支持ポリマーまたは親水性ポリマーではない。親水性および/または支持ポリマーの酸化窒素付加物の調製に適している方法は、US5,405,919、あるいはRNS(例えばNO)ポリマーの合成に言及した他の引用文献に開示されており、本明細書で参照される。
ある実施態様では、コーティングシステムの厚さは、乾燥状態において、約1〜約100μm、例えば2〜約20μm、例えば5〜約20μmである。
ある態様において、RNS(例えばNO)付加物を含むコーティングまたはコーティングシステムは、スプレーコーティング、塗装法、浸せき法のいずれか1つ以上によって、医療機器の外表面に塗布される。
<第1ドメイン(The First Domain)>
RNS(例えばNO)付加物は、本願明細書で言及したコーティングシステムの形態で、第1ドメインを形成してもよい。好適には、第1ドメインは個別のドメインであり、第2ドメイン(存在する場合)とは均質相を形成しない(例えば、図7参照)。好ましい実施態様では、第1ドメインは、ほぼ均一な厚さの均一層の形態であってもよい(図7A-E)。しかしながら、第1ドメインが、他の多くの形態であってもよいことは、当業者にとって明白だろう(例えば図7F〜I参照)。
RNS(例えばNO)付加物は、本願明細書で言及したコーティングシステムの形態で、第1ドメインを形成してもよい。好適には、第1ドメインは個別のドメインであり、第2ドメイン(存在する場合)とは均質相を形成しない(例えば、図7参照)。好ましい実施態様では、第1ドメインは、ほぼ均一な厚さの均一層の形態であってもよい(図7A-E)。しかしながら、第1ドメインが、他の多くの形態であってもよいことは、当業者にとって明白だろう(例えば図7F〜I参照)。
第1ドメインは、1つ以上のアルカリ(塩基)薬剤あるいは塩基性側基と結合した親水性ポリマー又はポリマーブレンドを含んでもよい。第1ドメインでの使用に適した親水性ポリマー又はポリマーブレンドは、EP出願番号06023223および米国仮出願番号60/864,886、並びにPCT/DK2007/00030に記載されている。
ある実施態様では、第1ドメインは、ナノ粒子などの個別の粒子状物質を形成してもよく、それは第2ドメインなどの別のドメインに埋め込まれる。代わりに、第2ドメインは、別のドメイン(例えば、外側層および/または第1ドメイン)に埋め込まれている個別の粒子状物質を形成してもよい(例えば図7F〜Iを参照)。
しかしながら、第1ドメインは均質層を形成するのが好ましい。
第1ドメインあるいはコーティングシステムは、エレクトロスピニング繊維またはナノ繊維などのLPEI-NONO繊維の形態をとること、又はそれらを含むことはない。
第1ドメインあるいはコーティングシステムは均質相を形成する。
第1ドメインあるいはコーティングシステムは不均一(heterogeneous)ではない。
第1ドメインあるいはコーティングシステムのpHは、本技術分野で既知の多数の方法で制御されてもよい。(L)PEI-NONOは、医療機器への塗布のために、典型的には非水溶媒中に溶解されている。
典型的には、RNSがNOのときは、第1ドメインあるいはコーティングシステムはアルカリドメインであり、すなわち、例えば水などの適当な溶媒と接触させたときに、局所領域のpHはpH7以上、例えば約pH7.5以上、例えば約pH8以上、例えば約pH9以上、例えば約pH10以上、例えば約pH11以上、例えば約pH12以上、例えば約pH13以上、例えば約pH14、または例えばpH7以上〜約pH14である。好ましい実施態様では、第1ドメインのpHは、約pH9〜約pH12、より好ましくは約pH8〜約pH11、例えば約pH9〜約pH10である。発明者らは、高いpH(例えば12以上)での親水性の支持ポリマー/ポリマーブレンドなどのポリマー系について、高いpHは、ポリマーの物理的性質を変更し得ることに注目しており、それは、あるケースでは、例えば高いpHがコーティングシステムの安定性に影響するなど有害であるかもしれない。
従って、RNSがNOのときは、第1ドメインは、典型的には、有機または無機のアルカリ化合物を含む。好適な無機アルカリ化合物は、例えばNaOH、KOH、Ca(OH)2およびLiOHを含んでいる。好適なアルカリ有機化合物は、例えばリチウムジイソプロピルアミド、メチルアミンあるいはメトキシドを含んでいる。アルカリ化合物は、アルカリ緩衝液、例えば、ホスフェート、エタノールアミン、ADA、炭酸塩、ACES、PIPES 、MOPSO、イミダゾール、ビス-トリスプロパン、BES、MOPS、HEPES、TES、MOBS、DIPSO、TAPSO、トリエタノールアミン(TEA)、ピロリン酸塩、HEPPSO、POPSO、トリシン、ヒドラジン、グリシルグリシン、トリジマ(トリス)、EPPS、HEPPS、BICINE、HEPBS、TAPS、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPD)、TABS、AMPSO、タウリン(AES)、ホウ酸塩、CHES、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、グリシン、水酸化アンモニウム、CAPSO、メチルアミン、CAPS、CABS、およびピピジンから成る群から選ばれた緩衝液であってもよい。
アルカリ化合物は、アルカリ側基などの無機または有機の塩基を含んでいるポリマーなどのアルカリポリマーであってもよい。
アルカリポリマーを含むアルカリの化合物は、pKb6以下であるのが好ましく、pKb5以下であるのがより好ましい。
アルカリ化合物またはアルカリ基は、第1アミン、第2アミンおよび第3アミンから成る群から選ばれてもよい。
アルカリ化合物またはアルカリ基は、リチウムジイソプロピルアミド、メチルアミンおよびクロロキン(chloroquine)から成る群から選ばれてもよい。
(L)PEI-NONOに加えて、第1ドメインは、典型的には、ポリウレタンなどの別のポリマー、あるいは本願明細書に言及されるような親水性ポリマー又はポリマーブレンドを含む(以下のコーティングシステムを参照)。
ある実施態様では、第1ドメインは、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリエチレンイミン、ポリエーテル、ポリエステルなどの誘導体ポリオレフィン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、シリコーンから成る群から選ばれたポリマーを含んでもよい。
ある実施態様では、第1ドメインは、芳香族ポリウレタン、エチレンアクリレートポリオレフィン、親水性の脂肪族ポリウレタンあるいはシリコーンから成る群から選ばれてもよく、いずれも、吸水度に対する水コンダクタンスの比が高い。これらのポリマーは、テコフィリック、エステン、EMAC、およびEBACのポリオレフィン系、または高蒸気伝導シリコーンから選ぶことができる。
ある実施態様では、第1ドメインは、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリエチレンイミン、ポリエーテル、ポリエステルなどの誘導体ポリオレフィン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタンから成る群から選ばれたポリマーを含んでもよく、良好な接着性と構造安定性を備え、上述の安定性基準を満たしている。しかしながら、脂肪族ポリエーテルベースのポリウレタン、例えばテコフレックスSG 85Aが好適であろう。
PCT/DK2007/000030は、異なったドメイン(別のドメインを含む)のさらなる例を提供する。
<第2ドメイン(The Second Domain)>
第2ドメインは、第1ドメインと均質相を形成しない個別のドメインである(例えば、図7参照)。好ましい実施態様では、第2ドメインは、ほぼ均一な厚さの均一層の形態であってもよい---例えば、図7AおよびBを参照。しかしながら、第2ドメインが、他の多くの形態であってもよいことは、当業者にとって明白だろう。
第2ドメインは、第1ドメインと均質相を形成しない個別のドメインである(例えば、図7参照)。好ましい実施態様では、第2ドメインは、ほぼ均一な厚さの均一層の形態であってもよい---例えば、図7AおよびBを参照。しかしながら、第2ドメインが、他の多くの形態であってもよいことは、当業者にとって明白だろう。
第2ドメインは、1つ以上の酸性薬剤あるいは酸性側基と結合した親水性の支持ポリマー又はポリマーブレンドを含んでもよい。第2ドメインでの使用に適した親水性の支持ポリマー又はポリマーブレンドは、EP出願番号06023223および米国仮出願番号60/864,886に記載されている。
第2ドメインは、ナノ粒子などの個別の粒子状物質を形成してもよく、それは第1ドメインなどの別のドメインに埋め込まれる。代わりに、第2ドメインは、別のドメイン(例えば、外側層および/または第1ドメイン)に埋め込まれている個別の粒子状物質を形成してもよい(例えば図7を参照)。
ある実施態様では、第2ドメインは(L)PEI-NONOも含んでもよい。しかしながら、ある好ましい実施態様では、第2ドメインは(L)PEI-NONOを含まない。
ある実施態様では、第2層は、エレクトロスピニング繊維またはナノ繊維などのLPEI-NONO繊維の形態をとること、又はそれらを含むことはない。
第2ドメインが均質相を形成するのが望ましい。
第1ドメインのpHは、本技術分野で既知の多数の方法で制御されてもよい。例えば、第2ドメインは、第1ドメインからの治療薬の放出に影響を与えるH+放出薬剤(H+-releasing agents)として、例えば、アスコルビン酸(ascorbic acid)、ポリアクリル酸(polyacrylic acid)、乳酸(lactic acid)、酢酸(acetic acid)および/またはシュウ酸(oxylic acid)を含んでもよい。第2ドメインは、酸性ポリマーまたは酸性側基を含むポリマーを含んでもよく、それらは水と接触するとプロトンを放出することができる。
さらに、第2ドメインで用いることのできる酸性薬剤または側基は、乳酸もしくはビタミンC、および/またはアスコルビン酸、ポリアクリル酸、シュウ酸、酢酸および乳酸から成る群から選ばれた酸性薬剤を含んでいる。
酸性薬剤は、pKa6以下を有していてもよく、pKa5以下の有機酸であるのがより好ましい。
ある実施態様では、酸性薬剤は、塩酸、硫酸、硝酸あるいは臭化水素酸(hydrobromic acid)などの無機酸である。
酸性薬剤は、酸性緩衝液、例えばマレイン酸エステル(maleate)、ホスフェート(phosphate)、グリシン(glycine)、クエン酸塩(citrate)、グリシルグリシン(glycylglycine)、リンゴ酸塩(malate)、ギ酸塩(formate)、スクシナート(succinate)、酢酸塩(acetate)、プロピオナート(propionate)、ピリジン(pyridine)、ピペラジン(piperazine)、カコジル酸塩(cacodylate)、MES、ヒスチジン(histidine)、ビストリス(bis-tris)、エタノールアミン(ethanolamine)、ADAおよび炭酸塩(carbonate)から成る群から選ばれた緩衝液であってもよい。
ある実施態様では、酸性化合物は、側基として無機または有機の酸を含んでいるポリマーであってもよい。好ましい実施態様では、酸性ポリマーなどの酸性化合物は、カルボン酸基を含む。
従って、酸性化合物は、果実酸(fruit acid)、または等価物(例えばヒドロキシ酸(hydroxy acid))、あるいはそれらの酸性誘導体かもしれない。
従って、第2ドメインが、第1ドメインの内部または外部のいずれかにあってもよいと考えられる。
第2ドメインは、少なくとも医療機器の一部が濡れたときにH+イオンとOH-イオンとの間の局所的なバランスを変えることにより、第1ドメインのpHに影響を与えることが可能である。すなわち、第2ドメインは、少なくとも医療機器の一部が濡れたときに第1ドメインのpHを減少することができる。従って、第1ドメインからの酸化窒素の放出速度は、少なくとも1つの第1ドメインのpHと、ある実施態様では第2ドメインのpHとに依存する。
典型的には、RNSがNOのときは、第2ドメインは酸性のドメインであり、すなわち、例えば水などの適当な溶媒と接触させたときに、局所領域のpHはpH7以下、例えば約pH6.5以下、例えば約pH6以下、例えば約pH5以下、例えば約pH4以下、例えば約pH3以下、例えば約pH2以下、例えば約pH1、または例えばpH7以下〜約pH1である。第2ドメインのpHは、例えば約pH2〜約pH6、または約pH3〜pH5であってもよい。
発明者らは、非常に低い酸性度(例えばpH2以下)では、酸性度は、第2コーティングで用いられるポリマーの物理的性質に影響し得ることに注目しており、それは、コーティングの安定性に悪影響を与えるかもしれない。
<第1ドメインと第2ドメイン>
本発明のある実施態様では、医療機器は、少なくとも第1ドメインおよび第2ドメインの両方で部分的にコーティングされる。
本発明のある実施態様では、医療機器は、少なくとも第1ドメインおよび第2ドメインの両方で部分的にコーティングされる。
ある実施態様では、第1ドメインは、機器の第1コーティング層を含み、それは、医療機器の基材あるいはプライマー層のいずれかに、塗布されるかあるいは近接している。従って、第2ドメインは、第1コーティングに塗布されるかあるいは近接している機器の第2コーティング層を含んでもよい。
好適には、第1ドメインからのRNS(例えばNO)の放出速度は、第1ドメインおよび/または第2ドメインの少なくとも一方のpHに依存する。
第1ドメインおよび第2ドメインは、いかなる形態あるいは形状を有してもよいが、第1ドメインがある1つのコーティング層を形成し、第2ドメインがもう1つのコーティング層を形成するような層構造体が好まれる。例えば、医療機器は、最初の表面コーティングとして、第2ドメインを形成している1つの材料でコーティングされ、次いで、別のコーティング層として、最初の表面コーティングの上に、第1ドメインを形成するもう1つの材料でコーティングされてもよい。いくつかの用途では、供与体化合物を含んでいる層(つまり第1ドメイン)は、pH変更層(pH modifying layer)(つまり第2ドメイン)より先に塗布されるのが好ましいが、他の用途では、pH変更層(つまり第2ドメイン)は、供与体層(つまり第1ドメイン)より先に塗布されるのが好ましい。2つの層は、例えば2つの独立した層の押出し成形によって、あるいは第1ドメインと第2ドメインの両方を含む層のコーティングによって、同時に塗布されてもよく、例えば、第1ドメインおよび/または第2ドメインが粒子の形態の場合、一方のドメインが「マトリックス」を形成し、他方のドメインが、例えば「マトリックス」ドメイン内のナノ粒子などの個別の(つまり不均な)粒子を形成してもよく、あるいは第1ドメインと第2ドメインの両方が、本願明細書で言及されている親水性の支持ポリマー又はポリマーブレンドなどの適切なマトリックス組成物内における個別の粒子の形態であってもよいことが予想される。
ある実施態様において、少なくとも第1ドメインおよび第2ドメインがある場合、第1ドメインが1つ以上の治療薬を放出することができ、放出速度は、例えばドメインのpHに依存する。第2ドメインは、少なくとも医療機器の一部が濡れたときに、H+イオンを放出することによって第1ドメインのpHに影響を与えることが可能であるので、医療機器の一部が濡れたときに、第1ドメインのpHが減少し、その結果、治療薬の放出が起こり又は高められる。
従って、ある好ましい実施態様では、本発明は、医療機器の一部の湿度か含水率(例えば、第2ドメインの含水率)に依存した治療薬(典型的には、酸化窒素あるいはHNO)の制御放出を提供する。医療機器の主たる用途では、第2ドメインは、人体または動物の血管系への挿入の際に血液によって濡れる。RNS(例えばNO)の放出のタイミングは、第1ドメインおよび第2ドメインの配置により、また外部コーティングなどの追加層の追加により、さらに影響を受けるだろう。
好ましい実施態様では、第2ドメインは、第1ドメインより先に、つまり、第1ドメインの内部に塗布される。プロトンは第2ドメインから外部環境に拡散するので、それらが第1ドメインを通過しなくてはならず、それによって、最大のRNS(例えばNO)放出が保証される。
本願明細書では、第1ドメインは生物活性ドメイン(bioactive domain)とも呼ばれ、第2ドメインはpH活性ドメイン(pH active domain)とも呼ばれる。しかしながら、第1ドメインもpH活性であるが、ただし第2ドメインとは反対であり、第1ドメインのpH(あるいは湿潤時の潜在的なpH)はアルカリで、一方、第2ドメインのpH(あるいは湿潤時の潜在的なpH)は酸性である、と認識されるべきである。
<第3ドメイン(The Third Domain)>
医療機器は第3ドメインを含んでもよい。
医療機器は第3ドメインを含んでもよい。
第3ドメインは、第1ドメインと第2ドメインとの間に位置する追加のドメインであってもよい。
ある実施態様では、医療機器は第1ドメインおよび第3ドメインを含んでもよい。
第3ドメインは中性層であってもよく、体液から(任意で、第2ドメインを経由して)第1ドメインへの水(およびプロトン)の流入速度を制御する。ある実施態様では、第3ドメインは緩衝液を含んでいてもよく、それにより、第1ドメインへのプロトンの流入を制限して、その結果として「長くて低い」RNS(例えばNO)の放出反応速度を提供してもよい。
第1ドメインと第2ドメインとの間にほぼ中性のpH(7)の第3ドメインを用いることによって、(L)PEI-NONO(NO放出)の早期分解を回避または減少させることができ、さらにもっと、これは特に、医療機器の調製に含まれる加工ステップ(製造)中に関連している。
ある実施態様では、例えばEP出願EP06023223および米国仮出願US60/864/886に開示されているように、第3ドメインは、本願明細書に言及されているような親水性の支持ポリマー又はポリマーブレンドを含むか又はそれらから成っている。
ある実施態様では、第3ドメインは、親水性ポリマーを含むか又はそれから成っている。
ある実施態様では、第3ドメインは、吸湿性ポリマーを含むか又はそれから成っている。
第3ドメインは、緩衝液、例えば水と接触したときにだいたいpH7の緩衝液を含んでもよい。そのような第3ドメインは、プロトンクエンチャー(proton quencher)として機能することにより、プロトンが第2ドメインから第1ドメインへ拡散する速度を制御することができる。これは、治療上の放出が必要または最適な時よりも前に、医療機器が水または水蒸気と接触した場合に有用である。同様に、第3ドメインは、-OHクエンチャーとして機能して、酸性層の望ましくないアルカリ化を防ぐことができる。
第3ドメインの厚さは、例えば約0.1μm〜約10μm、例えば1μm〜5μmであってもよい。
ある実施態様では、第3ドメインは緩衝液を含まない。ある実施態様では、第3ドメインのpHは約7である。
ある実施態様では、外部コーティングと第3層と組成は同一であってもよいと認識される。
<内部プライマー層(Inner Priming Layer)>
プライマーは、典型的には、加工していない表面(raw surfaces)を密閉し、続く仕上げコーティング(finish coats)を保持するために調剤された第1コーティングである。
プライマーは、典型的には、加工していない表面(raw surfaces)を密閉し、続く仕上げコーティング(finish coats)を保持するために調剤された第1コーティングである。
好ましい実施態様では、医療機器の基材(つまり、外表面および/または生理的媒体と接触する表面)は、医療機器の基層と前記コーティングシステムまたは酸化窒素付加物との間にある内部プライマー層により、または第1もしくは第2ドメインによりコーティングされる。
ある実施態様では、内部プライマー層は、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリエチレンイミン、ポリエーテル、ポリエステルなどの誘導体ポリオレフィン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタンから成る群から選ばれてもよい。
ある実施態様では、内部プライマー層は、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリエチレンイミン、ポリエーテル、ポリエステルなどの誘導体ポリオレフィン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタンであってもよい。
好適には、内部プライマー層は、良好な接着性と構造安定性を備え、上述の安定性基準を有しており、ポリマーコーティングの表面に加えられた約4〜100ニュートンcm-2の牽引力、例えば約8〜50ニュートンcm-2、好ましくは10〜20ニュートンcm-2の牽引力に耐える。
好ましいプライマーポリマーは、脂肪族ポリエーテルベースのポリウレタン、例えばテコフレックスSG 85Aである。
ある実施態様では、プライマー層の厚さは、0.2〜5μmである。プライマー層は、その役割がコーティングおよび/またはNO付加物の医療機器への固定することであることから、表面を覆う厚さが均一である必要はない。従って、それは、十分なアンカーポイントを提供して、追加コーティングを塗布するための頑丈なプラットフォームを提供することを要求される。好ましくは、プライマー層は、コーティングすべき基材の全体にわたって事実上完全な被覆率を持っており、これにより、次の層に最大の構造的完全性(structural integrity)を保証する。
<追加層(Further layers)>
殺菌された医療機器の製造方法に関して上述したように、追加層(複数可)が、RNS(例えばNO)付加物、例えばコーティングシステムまたは繊維層の上に塗布されてもよい。そのような追加層は、本願明細書に開示されているような外部コーティング(外側層)と同様に第2ドメインおよび第3ドメインも含んでいる。
殺菌された医療機器の製造方法に関して上述したように、追加層(複数可)が、RNS(例えばNO)付加物、例えばコーティングシステムまたは繊維層の上に塗布されてもよい。そのような追加層は、本願明細書に開示されているような外部コーティング(外側層)と同様に第2ドメインおよび第3ドメインも含んでいる。
ある実施態様では、第1ドメイン、第2ドメイン、第3ドメインの少なくとも1つはポリウレタンを含んでおり、例えば第1ドメインと第2ドメインの両方、又は例えば第1ドメインと第3ドメインの両方が含んでいる。
従って、ある実施態様では、発明による医療機器は、例えば本願明細書に記述されるような生理的条件下で、RNS(例えばNO)を放出できるRNS(例えばNO)付加物(第1ドメイン)と、例えば生理的媒体の中への挿入時に、RNS(例えばNO)付加物(第1ドメイン)のpHに影響を与えることができる材料(例えばRNS(例えばNO)付加物のコーティングシステム又は繊維)からなる少なくとも1つの追加層(第2ドメイン)と、を含んでいる(ヨーロッパ出願番号06075159およびPCT/DK2007/000030を参照。これらを参照して本明細書に組み込む)。
ある実施態様では、追加層(以下に言及される外側層を含む)は十分に柔軟であり、追加層の完全性を危険にさらすことなく、医療機器が移動および屈曲できるようにするのが好ましい。好適には、使用時には、追加層は含水性で且つ水で膨潤する。従って、使用前に、等張液中に挿入シース機器を所定どおりに潜らせると、追加層が十分な量の水を吸収することができ、十分な可撓性を保証し、挿入時の摩擦を低減する。いくつかのポリマー(例えば外部コーティングに用いられたテコフィリックポリマー)は、水性溶媒に挿入されたときに、体積の約60%まで膨潤するだろう。膨潤ポリマーの追加コーティングを用いるさらに利点は、膨潤が、追加層のピンホール欠陥あるいは不完全さをマスクすることであり、そのため、使用時にコーティングシステムの完全性を保証する。
ある実施態様において、追加層(複数可)は、RNS(例えばNO)付加物の外側に塗布される(つまり、使用時にRNS(例えばNO)付加物と生理的媒体との間に位置する)のが好ましいが、一方、追加層は、医療機器の基材とRNS(例えばNO)付加物との間にある層として塗布されてもよいと認識される。コーティングシステムなどのRNS(例えばNO)付加物コーティングは、コーティング成分(pHを調節し、従って生理的媒体と接触したときに酸化窒素付加物からのNO放出を調節する)で調剤されてもよいことも予想される。
ある実施態様では、本願明細書に記述されるような外部コーティングも塗布される。外部コーティングは、コーティングシステム層に直接塗布しても、またはコーティングシステム層に塗布された1つ以上の追加層に塗布してもよい。
<外側層(The Outer Layer)>
ある実施態様では、医療機器は、RNS(例えばNO)付加物の外側に位置する外側層を含み、また、もし追加のコーティング層と関連しているなら、外側層は、次の1つ以上を制御するポリマーを含む:i) RNS(例えばNO)放出付加物と生理的媒体の間の拡散バリアの形成によって、またはあるいは拡散する分子に対する拡散抵抗を適用することによって、拡散プロセスを著しく遅くされた、内側層から生理的媒体中へのRNS(例えばNO)付加物の放出、ii) RNS(例えばNO)分子に対する低コンダクタンスを与えることによる、内側層から生理的媒体へのRNS(例えばNO)の放出、iii) 所定の適用における必要性に依存して、最上層(top layer)を通る水流を促進するか又は制限することによる、生理的条件下における生理的媒体から内側層への水の拡散、および/または、iv) ポリマー混合物から生理的媒体への小さな分子の副生成物の漏れ。RNS(例えばNO)の制御可能な放出を保証するために、外側層は、活性化および/または酸化窒素放出の連続的な放出を、RNS(例えばNO)コーティング層自体からのRNS(例えばNO)放出の活性化と比較して約1〜20倍、例えば約1.5〜10倍、好ましくは2〜5倍制限できるべきである。
ある実施態様では、医療機器は、RNS(例えばNO)付加物の外側に位置する外側層を含み、また、もし追加のコーティング層と関連しているなら、外側層は、次の1つ以上を制御するポリマーを含む:i) RNS(例えばNO)放出付加物と生理的媒体の間の拡散バリアの形成によって、またはあるいは拡散する分子に対する拡散抵抗を適用することによって、拡散プロセスを著しく遅くされた、内側層から生理的媒体中へのRNS(例えばNO)付加物の放出、ii) RNS(例えばNO)分子に対する低コンダクタンスを与えることによる、内側層から生理的媒体へのRNS(例えばNO)の放出、iii) 所定の適用における必要性に依存して、最上層(top layer)を通る水流を促進するか又は制限することによる、生理的条件下における生理的媒体から内側層への水の拡散、および/または、iv) ポリマー混合物から生理的媒体への小さな分子の副生成物の漏れ。RNS(例えばNO)の制御可能な放出を保証するために、外側層は、活性化および/または酸化窒素放出の連続的な放出を、RNS(例えばNO)コーティング層自体からのRNS(例えばNO)放出の活性化と比較して約1〜20倍、例えば約1.5〜10倍、好ましくは2〜5倍制限できるべきである。
好適な外側コーティングおよび外側コーティングで被われた医療機器の製造方法、ならびに医療機器およびその使用については、ヨーロッパ出願番号06023222および米国仮出願60/864,893に開示されている。
外側層はまた、構造安定性を提供してもよく、医療機器の製造中、保存中、調製中および使用中に、RNS(例えばNO)付加物および/またはコーティングシステムが適所に残ることを保証する。
上述されるように、外側コートは、水性溶媒中に挿入したときに膨潤する能力を持ったポリマーから成っているか又はそれを含んでもよい。膨潤するポリマーを用いる利点は、膨潤が、追加層のピンホール欠陥あるいは不完全さをマスクすることであり、そのため、使用時にコーティングシステムの完全性を保証する。
膨潤する能力は、単純な実験によって決定されてもよく、例えば粒状で体積既知のポリマーが、過剰量の純水に加えられて吸水の平衡に達せられる。その後、膨潤した粒子が水性溶媒から除去され、過剰な水が除去され、そして体積変化が評価される。典型的には、外側コーティングで使用するのに適しているポリマーは、少なくとも体積の1%膨潤する能力、例えば少なくとも5%、例えば少なくとも10%、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、少なくとも60%膨潤する能力を持っている。かかるポリマーは含水性ポリマーと呼ばれる。しかしながら、含水性ポリマーの使用は、医療機器の機能、および患者からの医療機器の除去を妨げないように、注意深く用いられるべきである、と認識されるだろう。
先行技術における開示が、LPEI-NONOの不溶性を指している(例えばUS6,855,366を参照)が、その一方、これまで水性溶媒に不溶であると考えられていたにも拘わらず、発明者らは、驚くべきことに、(線状の)ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートが生理的媒体中に可溶であることを見いだした。可溶性は生理的媒体中のイオンの存在によるものであり、それらは、ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートが不溶性と述べられた純水中には存在しない。コーティングシステムおよび/または外側層の使用は、コーティングされた医療機器からのLPEI-NONOの不適切な放出を減少または防止する。
ある実施態様では、外側層は、含水性ポリマーなどの親水性ポリマーを含む。
外側のコーティングの中で用いることのできるポリマーは、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリエチレンイミン、ポリエーテル、ポリエステルなどの誘導体ポリオレフィン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、シリコーン、またはセルロースから成る群から選ばれてもよい。より詳細には、それらは、芳香族ポリウレタン、エチレンアクリレートポリオレフィン、親水性の脂肪族ポリウレタンであってもよい。
EMACおよびEBACのポリオレフィン系、または高蒸気伝導シリコーンなどの高蒸気伝導性ポリマー(High water vapour conducting polymers)を用いてもよい。水蒸気伝導性ポリマー(water vapour conducting polymers)は、ASTM法E96Bを用いて、50%RH、23°Fで同定することができ、好ましくは、水蒸気伝導性ポリマーは、適度な通気性の約350g/m2/24時間のMVT〜高い通気性の約760g/m2/24時間のHMVTの範囲におよぶ。ある実施態様では、かかるポリマーは、本願明細書に開示されたポリマーブレンド/コーティングシステムで使用される親水性ポリマーとしても有用であるだろう。
ある好ましい実施態様では、外側層ポリマーは、生理的媒体への挿入時に、含水性ゲルを形成する。
外側のコーティングは、血管への医療機器の挿入および引き抜きを容易にする能力のために選ばれるのが好ましい。この点で、いくつかの適用において、含水性ポリマーまたは親水性ポリマーが好まれるが、それは、生理的媒体などの水生環境中に挿入されたときに、それらが滑りやすい表面を形成するからである。従って、使用前に、医療機器を適切な水溶液と接触されること、例えば使用前に、等張水(isotonic water)と短時間(例えば1〜3分)接触させるのが好ましいだろう。
ある好ましい実施態様では、外側層ポリマーは、親水性ポリウレタンを含む。
かかるポリマーの使用により、内側層から生理的媒体へのRNS(例えばNO)付加物の放出を制御できることが発見された。RNS(例えばNO)付加物の放出が望ましくない全身性の影響の低レベル化につながる場合、これは、血管内用医療機器、例えば一時的な血管内用医療機器(つまり、インプラントではない)などに特に関連し、そのため、より厳格な規制の承認審査方式が必要になるだろう。
従って、本願明細書に開示されるようなコーティングシステム(第1ドメインとき)と外側層(任意で第2ドメインおよび/または第3ドメイン)が用いられるのが好ましいが、これは、それら両方が、生理的媒体中でのRNS(例えばNO)付加物の望ましくない放出を制御することができるからである。
外側層も、RNS(例えばNO)付加物(例えば本願明細書に開示されるようなコーティングシステム)から生理的媒体にRNS(例えばNO)の放出する速度およびタイミングを制御するために用いることができる。この点で、外側層は、部分的にのみ、あるいは不揃いに塗布され、それによりRNS(例えばNO)付加物の一部が生理的媒体と迅速に接触することを可能にして、RNS(例えばNO)の初期放出を与える一方、外側コーティングを有する付加物が、より長い期間にわたりより徐放性を提供してもよい。
ある実施態様では、外側のコートは、第1ドメインおよび/または第2ドメインの早期の水和を防ぐことにより、RNS(例えばNO)の早期放出に対してさらなる保護を提供する。これは、例えば、部分的にのみ透水性かまたは水蒸気のみ透過する外側コーティングの利用により、例えば、疎水性ポリマーで作られた外側コーティングの利用により達成されてもよい---これらの外側コーティングは、例えばステントなどのインプラントの場合に、放出を遅らせるのに、特に有用である。好適な疎水性ポリマーが本技術分野で知られており、例えば、シリコーン(例えば、水蒸気は透過するが水は透過しなかもしれない)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、ポリアクリレートまたは制限された水コンダクタンスを有する他のポリマー、あるいはそれらの混合物など、様々なポリマーを含んでいる。
ある実施態様では、外側層(コーティング)は酸性薬剤を含まない。かかる外側層は、本願明細書で言及されたようなpHを調整する薬剤を含む追加層(つまりpH変更層)が塗布される場合には、医療機器のコーティングに用いられてもよい。
外側層のpHは、ほぼ生理的なpH、例えば約pH7〜約pH8、例えば約pH 7.4であるのが好適である。外側層は、pHを維持する緩衝液(リン酸緩衝液など)を含んでもよい。ほぼ生理的なpHであるpHに維持することによって、外側層は、医療機器と接触する細胞を、第1ドメインおよび/または第2ドメインのpHから保護することができる。
<酸化窒素放出(Nitric Oxide Release)>
血管内における支配的なプロセスの1つは、ヘモグロビンによる酸化窒素の捕捉(scavenging)である。60-100%の酸素飽和環境(oxygen saturated environment)では、ほとんどの酸化窒素は、オキシヘモグロビン(oxyhaemoglobin)と結合してメトヘモグロビン(methaemoglobin)を形成し、続いて硝酸塩を形成する。低い酸素飽和環境では、酸化窒素は、デオキシヘオグロビン(deoxyhaemoglobin)と結合してニトロシルヘモグロビン(nitrosylhaemoglobin)を形成し、それは酸素の存在下で、それは窒素酸化物およびメトヘモグロビンを形成する。体循環に入った酸化窒素の最終生成物は、メトヘモグロビンと、それに続く硝酸塩である。その後、硝酸塩は血清に運ばれて、硝酸塩の大部分は腎臓を通って尿へ排泄される。
血管内における支配的なプロセスの1つは、ヘモグロビンによる酸化窒素の捕捉(scavenging)である。60-100%の酸素飽和環境(oxygen saturated environment)では、ほとんどの酸化窒素は、オキシヘモグロビン(oxyhaemoglobin)と結合してメトヘモグロビン(methaemoglobin)を形成し、続いて硝酸塩を形成する。低い酸素飽和環境では、酸化窒素は、デオキシヘオグロビン(deoxyhaemoglobin)と結合してニトロシルヘモグロビン(nitrosylhaemoglobin)を形成し、それは酸素の存在下で、それは窒素酸化物およびメトヘモグロビンを形成する。体循環に入った酸化窒素の最終生成物は、メトヘモグロビンと、それに続く硝酸塩である。その後、硝酸塩は血清に運ばれて、硝酸塩の大部分は腎臓を通って尿へ排泄される。
血液中における酸化窒素の典型的な半減期はミリ秒である。酸化窒素の半減期は、組織中では血液中より数百倍長い。ヘモグロビン−酸化窒素の生物学的半減期は、約15分である。
<酸化窒素活性の生理学濃度範囲(Physiological concentration range of nitric oxide activity)>
平滑筋細胞において弛緩を起こさせる濃度は、文献の研究成果に基づいて、200nM以上であるが、1mMよりはずっと低いと予想される。下限(200nM)は、可溶のグアニル酸シクラーゼ(guanylyl cyclase)(これは、セカンドメッセンジャー(second messenge)の環状GMPを生成する酵素として働き、結果として平滑筋を弛緩する)を活性化するのに必要な濃度によって決定される。上限(1mM)は、著しい酸化ストレスおよび変異(mutations)を引き起こす濃度によって決定される。
平滑筋細胞において弛緩を起こさせる濃度は、文献の研究成果に基づいて、200nM以上であるが、1mMよりはずっと低いと予想される。下限(200nM)は、可溶のグアニル酸シクラーゼ(guanylyl cyclase)(これは、セカンドメッセンジャー(second messenge)の環状GMPを生成する酵素として働き、結果として平滑筋を弛緩する)を活性化するのに必要な濃度によって決定される。上限(1mM)は、著しい酸化ストレスおよび変異(mutations)を引き起こす濃度によって決定される。
比較として、文献で述べられている組織中での酸化窒素濃度の生理学なレベルは、100〜500nMである。健康な内皮細胞での生理学的濃度は、約100μMである。
<投与量-酸化窒素放出(Dose-nitric oxide release)>
Vaughnら、Am J Physiol. 1998 Jun;274(6 Pt 2)によれば、報告されているうちで、自然な内皮からの最高の放出速度の1つが、0.32nmol/分/cm2である。従って、所望の生物学的反応(biological response)を得るために、より高い値が必要とされた。例えば、血管壁との短い接触と、血管の中膜に達する前に酸化窒素が通過する必要がある組織の厚さとを考えると、所望の放出速度を高くして、最適な血管弛緩応答を得るのが好ましいはずである。
Vaughnら、Am J Physiol. 1998 Jun;274(6 Pt 2)によれば、報告されているうちで、自然な内皮からの最高の放出速度の1つが、0.32nmol/分/cm2である。従って、所望の生物学的反応(biological response)を得るために、より高い値が必要とされた。例えば、血管壁との短い接触と、血管の中膜に達する前に酸化窒素が通過する必要がある組織の厚さとを考えると、所望の放出速度を高くして、最適な血管弛緩応答を得るのが好ましいはずである。
適切な放出速度の決定をサポートするために、ネズミの動脈だけでなく、ヒトについての体外の研究(ex-vivo studies)が行なわれた。研究の目的は、酸化窒素を溶出するポリマーでコーティングされた試験管から放出された酸化窒素の影響を研究することだった。酸化窒素を溶出するポリマーが、動脈の強力な弛緩を引き起こすことが示された。適用された放出速度は、0.5〜3nmol/分/cm2であった。試験は血液だけでなく、PBS中でも行なわれた。
文献の研究成果によれば、可溶のグアニル酸シクラーゼを活性化するのに必要な濃度(200nM)と、著しい酸化ストレスおよび変異を引き起こす濃度レベル(1mM)とでは、約5000倍の差がある。
臨床前の研究と文献の研究成果によれば、有効な機器放出速度は、広い範囲を持っている。毒性の危険を最小限にするために、上限は、40nmol/分/cm2に設定されるのが好ましい。下限は、0.5nmol/分/cm2に設定されるのが好ましい。0.5nmol/分/cm2より低い放出速度も、恐らくは弛緩を引き起こすが、それほど有効ではないだろう。
好適には、本発明にかかる医療機器からのNO放出の(最大)速度は、約0.1nmol/分/cm2以上、例えば0.25 nmol/分/cm2以上、好ましくは約0.32nmol/分/cm2以上、例えば0.5nmol/分/cm2以上、例えば1nmol/分/cm2以上である。
好適には、本発明にかかる医療機器からのNO放出の最大速度は、最大で約40nmol/分/cm2、又は最大で約60 nmol/分/cm2、又は最大で約80 nmol/分/cm2である。
ある実施態様では、本発明にかかる医療機器からの(最大)放出速度は、約0.5〜約3nmol/分/cm2である。
トップコート(外側層/コーティング)が塗布される場合、酸化窒素の放出はl'オーダーの放出から著しくはずれている。これはトップコートバリア特性によるものであり、時間とともに一定の放出に導くコーティングを通して、吸水およびRNSの拡散を制限する。
好ましくは、医療機器の外側表面からの酸化窒素のピーク放出および/または等張液中に挿入して5分後の放出(例えば、約0.5〜約40nmol/分/cm2)は、化学発光(chemoluminescence)NO検出器に接続された動的ヘッドスペースチャンバ(dynamic headspace chamber)を用いることにより測定された。記載された酸化窒素放出コーティングシステムで被覆された対象物は、Tween 20を0.00004%含むpbs緩衝液(pH7.4)を入れたヘッドスペースチャンバ中に配置され、37℃に保持された。溶液は、酸素フリー状態を保証するために250mLのN2ガスで連続的にフラッシングされる。コーティングから酸素フリー環境に放出された酸化窒素は、溶液から取り除かれ、NOガスによって化学発光NO検出器に運ばれる。この例は、酸化窒素の放出速度を決定するのに用いられるNO分析(NO assay)を提供する。
ある実施態様では、ピーク放出速度は、機器を湿らせるか又は挿入してから最初の15分に得られ、例えば、機器を湿らせるか又は挿入してから最初の10分、例えば最初の5分、例えば最初の3分に得られる。
潜在的な酸化窒素付加物が、本願明細書に用いられるような「生理的条件下」で酸化窒素を放出できるかを決定するために、上述されるような分析を用いてもよい。
好ましくは、医療機器の外表面からの酸化窒素の放出は、生理的媒体中における少なくとも30分の半減期を持っており、例えば少なくとも60分、例えば少なくとも90分あるいは少なくとも2時間、例えば少なくとも4時間、少なくとも6時間あるいは少なくとも12時間の半減期を持っている。
ある実施態様では、NO放出の最大速度点より後に得られたNO放出の最大の減少率は、約-0.015nmol/分/cm2/分以下で、例えば-0.03nmol/分/cm2/分以下、例えば約-0.06nmol/分/cm2/分以下である。
<追加の治療薬(Further Therapeutic Agents)>
医療機器は、1つ以上の追加の治療薬を放出することができてもよい。これらの追加の治療薬は、第1ドメイン、第2ドメインおよび/または第3ドメインに、あるいは外側コーティングに提供されてもよい。代わりに、治療装置は、追加の治療薬を届けるための他の手段を提供してもよい。ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートからのNO又はHNOの放出と同様に、追加の治療薬の放出もpH依存であってもよく、たとえば、第1ドメインの酸性化が治療薬の放出をもたらしてもよく、または、第2ドメインもしくは第3ドメインのアルカリ化あるいはアルカリ性の第1ドメインからなる外側層が、追加の治療薬の放出を誘発してもよい。
医療機器は、1つ以上の追加の治療薬を放出することができてもよい。これらの追加の治療薬は、第1ドメイン、第2ドメインおよび/または第3ドメインに、あるいは外側コーティングに提供されてもよい。代わりに、治療装置は、追加の治療薬を届けるための他の手段を提供してもよい。ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートからのNO又はHNOの放出と同様に、追加の治療薬の放出もpH依存であってもよく、たとえば、第1ドメインの酸性化が治療薬の放出をもたらしてもよく、または、第2ドメインもしくは第3ドメインのアルカリ化あるいはアルカリ性の第1ドメインからなる外側層が、追加の治療薬の放出を誘発してもよい。
ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートに加えて(ある実施態様では、それに代えて)、医療機器は、ヒトの成長因子(human growth factor)、ヘパリン(heparin)などの抗凝血剤(anti coagulant)、抗生物質(antibiotic)などの抗生物質薬剤(antibiotic agent)、化学療法薬剤(chemotherapeutical agent)、酸化窒素(NO)あるいは酸化窒素供与体などのさらなる平滑筋細胞増殖還元剤(smooth muscle cell proliferation reducing agents)、および/またはNOまたはNO供与体などの血管拡張剤(vasodilation agents)など、1つ以上の追加の治療薬でコーティングされてもよい。アスコルビン酸(ビタミンC)は、酸化防止剤(antioxidant)として、または酸化窒素(つまり第2ドメイン内の)を放出するための触媒として提供されてもよい。ある実施態様では、追加の治療薬の放出速度が本質的にはpHには依存しない場合、治療薬は、pHに依存した放出速度または治療薬をカプセルに入れるキャリア材料のpHに依存した分解速度で特徴付けられる担体化合物(carrier compound)に接合されてもよく、又は担体化合物のカプセルに入れられてもよい。
追加の治療薬は、ヒドロゲル(例えばヒドロゲル)中に固定化されてもよい。あるヒドロゲルは、酸性条件下で膨潤する。血液中で膨潤し、純水中では膨潤しないヒドロゲルを製造する可能な方法の1つは、治療薬をグルコースオキシダーゼ(glucoseoxidase)(GOD)と共に共析出することである。グルコースが血液からヒドロゲルに拡散すると、GODは、グルコースをグルコン酸(cluconic acid)および過酸化水素へ変換するだろう。
追加の治療薬は、例えば、ヘパリンまたは別のトロンビン阻害物質(thrombin inhibitor)、ヒルジン(hirudin)、ヒルログ(hirulog)、アルガトロバン(argatroban)、D-フェニルアラニル-L-ポリ-L-アルギニルクロロメチルケトンまたは別の抗血栓薬剤(antithrombogenic agent)、あるいはそれらの混合物; ストレプトキナーゼ(streptokinase)、ウロキナーゼ(urokinase)、組織プラスミノーゲン活性化因子(a tissue plasminogen activator)、または別の血栓溶解剤(thrombolytic agent)、あるいはそれらの混合物;パクリタキセル(paclitaxel); エストロゲン(estrogen)またはエストロゲン誘導体(estrogen derivatives); 線維素溶解薬(a fibrinolytic agent); 血管けいれん阻害剤(a vasospasm inhibitor); カルシウム拮抗薬(a calcium channel blocker)、硝酸塩、亜硝酸塩、酸化窒素、アスコルビン酸などの酸化窒素プロモーター(nitric oxide promoter)、または別の血管拡張薬; 抗菌物質(an antimicrobial agent)または抗生物質; アスピリン(aspirin)、チクロピジン(ticlopdine) または別の抗血小板剤(antiplatelet agent); コルヒチン(colchicine)または別の抗有糸分裂剤(antimitotic)もしくは別の微小管阻害剤(microtubule inhibitor);サイトカラシン(cytochalasin) または別のアクチン阻害剤(actin inhibito); リモデリング阻害剤(a remodelling inhibitor); GPIIb/IIIa、GPIb-IXまたは別の阻害剤もしくは表面糖タンパク質レセプター; デオキシリボ核酸(deoxyribonucleic acid)、アンチセンスヌクレオチド(an antisense nucleotide)あるいは分子遺伝子介入(molecular genetic intervention)のための別の薬剤; メトトレキサート(methotrexate)または別の代謝拮抗物質(antimetabolite)もしくは抗増殖剤(antiproliferative agent); 抗癌化学療法剤(anti-cancer chemotherapeutic agent); デキサメタゾン(dexamethasone)、デキサメタゾンリン酸ナトリウム(dexamethasone sodium phosphate)、酢酸デキサメタゾン(dexamethasone acetate) または別のデキサメタゾン誘導体(dexamethasone derivative)、あるいは別の抗炎症ステロイド剤(anti-inflammatory steroid); ドーパミン(dopamine)、メシル酸ブロモクリプチン(bromocriptine mesylate)、メシル酸ペルゴリド(pergolide mesylate) または別のドーパミン作動薬(dopamine agonist); 60Co(5.3年の半減期を有している)、192Ir(73.8日の半減期)、32P(14.3日の半減期)、111In(68時間)、90Y(64時間)、99mTc(6時間)または別の放射線治療薬(radiotherapeutic); ヨウ素含有化合物(iodine-containing)、バリウム含有化合物(barium-containing compounds)、金、タンタル、プラチナ、タングステンまたは放射線不透過性物質として機能する別の重金属; ペプチド(a peptide)、蛋白質(a protein)、酵素(an enzyme)、細胞外マトリックス成分 (anextracellular matrix component)、細胞成分(a cellular component) または別の生物学的作用物質(biologic agent); カプトプリル(captopril)、エナラプリル(enalapril) または別のアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤; アスコルビン酸、アルファトコフェロール(alphatocopherol)、スーパーオキシドジスムターゼ(superoxide dismutase)、ディファオキサミン(deferoxyamine)、21−アミノステロイド(ラサロイド)(21-aminosteroid(lasaroid)) または別のフリーラジカル捕捉剤(free radical scavenger)、鉄のキレートもしくは抗酸化物質; アンジオペプチン(angiopeptin); 14C-, 3H-, 131I-, 32P or 36S-放射性同位体で識別された形態または前述のいずれかの放射性同位体で識別された別の形態のうちの少なくとも1つを含んでもよい。これらのいずれかの混合物も予想される。
ある実施態様では、上にリストされた1つ以上の治療薬は、(L)PEI-NONOが存在しない状態で用いられても、あるいは(L)PEI-NONOに追加して用いられてもよい、と認識される。それらは、本願明細書に言及されているような第1ドメイン、第2ドメイン、第3ドメインまたは外側コーティングおよび/または追加層の中に存在してもよい。
<処理方法(Method of Treatment)>
本発明にかかる医療機器/部品キットは、血管内又は神経血管の手術を行なう際に用いることができる。
本発明にかかる医療機器/部品キットは、血管内又は神経血管の手術を行なう際に用いることができる。
ある実施態様では、医療機器の挿入位置は、大腿動脈、橈骨動脈、頚動脈、上腕動脈、補助の動脈から成る群から選ばれてもよい。
ある実施態様では、医療機器の挿入位置は、橈骨動脈、上腕動脈および補助の動脈から成る群から選ばれる。
ある態様において、本発明は、血管内または神経血管の手術を行なう方法を提供し、その方法は、対象(患者)の血管または神経血管系に本発明にかかる医療機器を導入することを含む。
ある態様において、本発明は、対象の血管または神経血管への医療機器の導入に関連した血管けいれんを防止または減少する方法を提供し、その方法は、対象(患者)の血管または神経血管系に本発明にかかる医療機器を導入することを含む。
ある態様において、本発明は、対象の血管系への医療機器の導入に関連した血管けいれんを防止または減少するための医療機器の製造における、本発明にかかるコーティングシステムの使用を提供する。
<さらなる実施態様>
以下の実施態様は、本願明細書に言及されたような本発明の他の特徴と組み合わされてもよい。
以下の実施態様は、本願明細書に言及されたような本発明の他の特徴と組み合わされてもよい。
1.血管内での使用に適し、少なくとも一部がポリマー混合物を含むコーティングシステムでコーティングされた基材を含む医療機器であって、前記ポリマー混合物は、i)少なくとも1つのNO付加物であって、生理的条件下で酸化窒素を放出することができる、例えば水誘導性のNO付加物などの前記付加物と、ii)親水性の支持ポリマー又はポリマーブレンドと、を含み、酸化窒素付加物と支持ポリマー又はポリマーブレンドとは、均質相を形成していることを特徴とする医療機器。
2.少なくとも1つの酸化窒素付加物は、ニトログリセリン、ニトロプルシドナトリウム、S-ニトロソチオール、S-ニトロソプロテイン、長炭素鎖の脂肪親和性S-ニトロソチオール、S-ニトロソ-ジチオール、鉄ニトロシル化合物、チオ硝酸塩、チオ亜硝酸塩、シドノンイミン、フロキサン、有機硝酸塩およびニトロソエート化アミノ酸、ニトロソ-アセチルシステイン、S-ニトロソ-カプトプリル、S-ニトロソ-ホモシステイン、S-ニトロソ-システイン、S-ニトロソ-グルタチオンおよびS-ニトロソペニシラミン、S-ニトロソチオール、S-ニトロシレート化シクロデキシリンなどのS-ニトロシレート化多糖類、NONOエート化合物(すなわち、陰イオンのNONOエート官能基(N2O2 -)を含む化合物)、NONOエートポリマーから成る群から選ばれることを特徴とする実施態様1に記載の医療機器。
3.少なくとも1つの酸化窒素付加物は、NONOエートポリマーであることを特徴とする実施態様2に記載の医療機器。
4.NONOエートポリマーの主鎖が、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリエチレンイミン、ポリエーテル、ポリエステルなどの誘導体ポリオレフィン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ペプチド、蛋白質、オリゴヌクレオチド、抗体および核酸などの生体高分子、星形デンドリマーから成る群から選ばれることを特徴とする実施態様3に記載の医療機器。
5.NONOエート官能基(N2O2 -)を含む前記ポリマーは、線状ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレート(LPEI-NONO)などのポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートであることを特徴とする実施態様4に記載の医療機器。
6.酸化窒素付加物は、約5kDa〜約200kDa、例えば約20kDa〜約100kDa、例えば約50kDa〜約60kDa、例えば約55kDaの分子量を有していることを特徴とする実施態様2〜5のいずれか1つに記載の医療機器。
7.コーティングシステム中に含まれる前記酸化窒素付加物の混合物は、約5%〜約80%、例えば10%〜50%、好ましくは約20%〜約50%、例えば約30%である。
8.前記ポリマーブレンドが支持ポリマーと親水性ポリマーとの混合物を含むことを特徴とする実施態様1〜7のいずれか1つに記載の医療機器。
9.親水性ポリマー又はポリマーブレンドは、均質なポリマーブレンドとして使用される場合、pH7.4、温度37℃のリン酸緩衝生理食塩水中に挿入して、酸化窒素の放出が最大増加率になったとき、化学発光NO検出器に接続された動的ヘッドスペースチャンバを用いて測定された放出速度で約0.5〜約80nmol/分/cm2を提供することを特徴とする実施態様8に記載の医療機器。
10.支持ポリマー及び/又はポリマーブレンド及び/又はコーティングシステムは、ポリマーコーティングの表面に加えられた約4〜100ニュートンcm-2の牽引力、例えば約8〜50ニュートンcm-2、好ましくは10〜20ニュートンcm-2の牽引力に耐えることを特徴とする実施態様9に記載の医療機器。
11.コーティングシステムで用いられる親水性ポリマーに対する支持ポリマーの比は、重量比で約95/5〜約35/65であることを特徴とする実施態様8〜10のいずれか1つに記載の医療機器。
12.コーティングシステムの厚さは、乾燥状態において、約1〜約100μm、例えば5〜約20μmであることを特徴とする実施態様1〜11のいずれか1つに記載の医療機器。
13.コーティングシステムの塗布に先立って、基材は内部プライマー層によりコーティングされることを特徴とする実施態様1〜12のいずれか1つに記載の医療機器。
14.内部プライマー層はポリウレタンプライマーであることを特徴とする実施態様13に記載の医療機器。
15. 前記プライマー層の厚さは、約0.2〜約5μmであることを特徴とする実施態様13又は14に記載の医療機器。
16.コーティングシステムの内側又は外側のいずれかにある少なくとも1つの追加層を含み、
前記追加層は、医療機器の少なくとも一部が濡れたときにH+イオンとOH-イオンとの間の局所的なバランスを変えることにより、コーティングシステムのpHに影響を与えることができることを特徴とする実施態様1〜15のいずれか1つに記載の医療機器。
前記追加層は、医療機器の少なくとも一部が濡れたときにH+イオンとOH-イオンとの間の局所的なバランスを変えることにより、コーティングシステムのpHに影響を与えることができることを特徴とする実施態様1〜15のいずれか1つに記載の医療機器。
17.酸化窒素付加物の外側に位置する外側層を含み、前記外側層は、i) 内側層から生理的媒体中へのポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートの放出、ii) 内側層から生理的媒体へのポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートの放出、iii) 生理的条件下における生理的媒体から内側層への水の拡散、および、iv) ポリマー混合物から生理的媒体への小さな分子の副生成物の漏れ、のうちの1つ以上を制御するポリマーを含むことを特徴とする実施態様1〜16のいずれか1つに記載の医療機器。
18.前記外側層は親水性ポリマーを含むことを特徴とする実施態様17に記載の医療機器。
19.前記親水性ポリマーは生理的媒体中への挿入時に含水性ゲルを形成することを特徴とする実施態様17又は18に記載の医療機器。
20.前記外側層は親水性ポリウレタンを含むことを特徴とする実施態様17〜19のいずれか1つに記載の医療機器。
21.前記外側層の厚さは、乾燥状態において、約0.3〜約5μmであることを特徴とする実施態様17〜19のいずれか1つに記載の医療機器。
22.医療機器の外側表面からの酸化窒素の放出は、化学発光NO検出器に接続された動的ヘッドスペースチャンバを用いて測定したときに、約0.5〜約80 nmol/分/cm2であることを特徴とする実施態様1〜21のいずれか1つに記載の医療機器。
23.医療機器の外側表面からの酸化窒素の放出は、化学発光NO検出器に接続された動的ヘッドスペースチャンバを用いて測定したときに、生理的媒体中における少なくとも30分、例えば少なくとも60分、例えば少なくとも90分の半減期を持っていることを特徴とする実施態様1〜22のいずれか1つに記載の医療機器。
24.医療機器の外側表面からの酸化窒素の放出は、生理的媒体中において6時間以下、例えば4時間以下、例えば3時間以下の半減期を持っていることを特徴とする実施態様1〜23のいずれか1つに記載の医療機器。
25.医療機器が、神経ガイドカテーテル、神経マイクロカテーテル、神経マイクロワイヤ、神経ステント送達システム、ニューロンバルーンなどの神経用医療機器、冠動脈ワイヤ、冠動脈ガイドカテーテル、PTCA血管形成術用バルーンなどの冠動脈用医療機器、ステント送達システム、冠動脈ワイヤ、冠動脈ガイドカテーテル、PTA血管形成術用バルーン、及びステント送達システム、挿入シース、拡張器、ガイドワイヤ、及び注射針からなる群から選ばれることを特徴とする実施態様1〜24のいずれか1つに記載の医療機器。
26.基材が、ステンレス鋼、チタン、金、プラチナなどの金属、PVC、PA、PS、エポキシ樹脂、シリコーンゴム、天然ゴム、ポリウレタン、PE、PP、ポリエステル、ナイロン、PET、PMMA、ポリスルホン、ポリホスファゼン、熱可塑性エラストマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのプラスチックから成る群から選ばれた1つ以上の化合物から成るか又は含むことを特徴とする実施態様1〜25のいずれか1つに記載の医療機器。
27.医療機器の表面上におけるポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートのような酸化窒素付加物の濃度は、約0.05〜約l00mg/cm2、例えば約0.1〜約10mg/cm2、好ましくは約0.2〜約5mg/cm2であることを特徴とする実施態様1〜26のいずれか1つに記載の医療機器。
28.支持ポリマー及び/又はポリマーブレンド及び/又はコーティングシステムは、ポリマーコーティングの表面に加えられた約4〜100ニュートンcm-2の牽引力、例えば約8〜50ニュートンcm-2、好ましくは10〜20ニュートンcm-2の牽引力に耐えることを特徴とする実施態様1〜27のいずれか1つに記載の医療機器。
29.血管内での使用に適しているコーティングされた医療機器の製造方法であって、
a.血管手術での使用に適している医療機器を選択する工程であって、
前記医療機器は基材を含んでいる選択工程と、
b.ポリマー混合物を含むコーティングシステムを医療機器の外部基材層に塗布する工程であって、
前記ポリマー混合物は、生理的条件下で酸化窒素を放出可能な少なくとも1つの酸化窒素付加物と、親水性の支持ポリマー又はポリマーブレンドとを含み、
酸化窒素付加物と支持ポリマー又はポリマーブレンドとは均質相を形成している、塗布工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
a.血管手術での使用に適している医療機器を選択する工程であって、
前記医療機器は基材を含んでいる選択工程と、
b.ポリマー混合物を含むコーティングシステムを医療機器の外部基材層に塗布する工程であって、
前記ポリマー混合物は、生理的条件下で酸化窒素を放出可能な少なくとも1つの酸化窒素付加物と、親水性の支持ポリマー又はポリマーブレンドとを含み、
酸化窒素付加物と支持ポリマー又はポリマーブレンドとは均質相を形成している、塗布工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。
30.コーティングシステムは、スプレーコーティング、浸漬法、塗装法又は押出し法によって塗布されていることを特徴とする実施態様29に記載の方法。
31.コーティングシステムの塗布に先立って、前記基材は、実施態様13〜15のいずれか1つに記載されたプライマーなどのプライマー層によって少なくとも一部をコーティングされることを特徴とする実施態様29又は30に記載の方法。
32.コーティングシステムなどのコーティングシステム層の内部に(前に)又は外部に(後に)塗布される少なくとも1つの追加層の塗布工程を含み、前記追加層は、少なくとも医療機器の一部が濡れたときにH+イオンとOH-イオンとの間の局所的なバランスを変えることにより、反応性窒素付加物又はコーティングシステムのpHに影響を与えることができることを特徴とする実施態様29〜31のいずれか1つに記載の方法。
33.コーティングシステム及びいずれかの追加層の塗布の後に、コーティングシステムの表面の少なくとも一部は、実施態様17〜20のいずれか1つに記載された外側層でコーティングされることを特徴とする実施態様29〜32のいずれか1つに記載の方法。
34.血管内の手術を行う方法であって、患者の血管系に、実施態様1〜28のいずれか1つに記載されている医療機器、又は実施態様29〜33のいずれか1つに記載された方法で準備された医療機器を挿入することを含むことを特徴とする方法。
35.血管内での使用に適した医療機器を製造するための、実施態様1〜34のいずれか1つで規定されたコーティングシステムの使用であって、当該使用が、血管けいれん又は血管収縮、脳血管けいれんの防止、平滑筋の弛緩、血管拡張、血栓、血小板堆積物又は凝集の減少、再狭窄の軽減、血圧の上昇、酸素フリーラジカル再かん流傷害、心疾患の治療、前記医療機器の使用に関連した悪影響の防止、異常細胞増殖の防止から選ばれた1つ以上の状態を防止するためであることを特徴とする、コーティングシステムの使用。
36.医療機器が生体内に差し込まれたときに、酸化窒素付加物を含む医療機器の表面からの酸化窒素の放出速度を制御するコーティングシステムの使用であって、前記コーティングシステムはポリマー混合物を含み、前記ポリマー混合物は、i)少なくとも1つの酸化窒素付加物と、ii)親水性の支持ポリマー又はポリマーブレンドと、を含み、酸化窒素付加物と支持ポリマー又はポリマーブレンドとが不均質相を形成していることを特徴とする、コーティングシステムの使用。
実施例1:酸化窒素供与体(L-PEI-NONO'エート)の製造
この実施例において、医療機器に塗布された酸化窒素溶出コーティングは、NONOペンダント基を含む線状ポリエチレンイミン(L-PEI)に基づいている。各NONO基は、L-PEIポリマー鎖のN原子うちの1つに共有結合で接合されており、それによりN*-N+(O-)=N-O-基を形成している。ここで、N*はL-PEI主鎖の原子のうちの1つである。この官能基は、L-PEI主鎖中の隣接した-NH2 +-アミン基を備えた両性イオン錯体の形態で安定する。
この実施例において、医療機器に塗布された酸化窒素溶出コーティングは、NONOペンダント基を含む線状ポリエチレンイミン(L-PEI)に基づいている。各NONO基は、L-PEIポリマー鎖のN原子うちの1つに共有結合で接合されており、それによりN*-N+(O-)=N-O-基を形成している。ここで、N*はL-PEI主鎖の原子のうちの1つである。この官能基は、L-PEI主鎖中の隣接した-NH2 +-アミン基を備えた両性イオン錯体の形態で安定する。
L-PEI-NONO'エートの製造は次の基礎的なステップに分割されてもよい。
1. L-PEIの合成(ポリ(2-エチル-オキサゾリン)から合成される)(Warakomski and Thill, J. Polymer Science 1990;28:3551-63 for methodologyを参照)。
2. L-PEI粉末の調製。
3. L-PEI粉末への酸化窒素の積み込み(loading)。LPEIがアセトニトリル中に懸濁された場合、積込みは、酸化窒素圧力下の反応室で起こった。酸化窒素は、L-PEIのチッ素原子と共有結合を形成し、その結果、L-PEI-NONO'エートを形成する。この反応は、反応が平衡に達して、これ以上のNOが消費されなくなるまで続けられた(バッチサイズに依存して、4〜6日)。次にL-PEI-NONO'エートから溶媒が奪われ、そして微細粉末に粉砕された。
1. L-PEIの合成(ポリ(2-エチル-オキサゾリン)から合成される)(Warakomski and Thill, J. Polymer Science 1990;28:3551-63 for methodologyを参照)。
2. L-PEI粉末の調製。
3. L-PEI粉末への酸化窒素の積み込み(loading)。LPEIがアセトニトリル中に懸濁された場合、積込みは、酸化窒素圧力下の反応室で起こった。酸化窒素は、L-PEIのチッ素原子と共有結合を形成し、その結果、L-PEI-NONO'エートを形成する。この反応は、反応が平衡に達して、これ以上のNOが消費されなくなるまで続けられた(バッチサイズに依存して、4〜6日)。次にL-PEI-NONO'エートから溶媒が奪われ、そして微細粉末に粉砕された。
全体的な化学反応は図1に図示される。
酸化窒素(NO)は無色無臭で脂肪親和性のガスであり、20:1の空気水分配係数と、1気圧、25℃で1.7x10-3Mの最大溶解度を有しており、膜(membranes)を通って容易に拡散可能である。NOは不対電子を持っており、そのためフリーラジカルで特徴付けられ、そのためO2などの不対電子を有する他の化学種および他のラジカル種と反応が可能である。さらに、NOは、ヘモグロビンなどのヘム蛋白質と結紮する(ligate)高容量を所有する。
NO溶出挿入シースの製造に用いられるNOは、少なくとも99%V/VのNOを含んでいる。NOの不純物としては、次のガスを含んでいる:二酸化炭素、窒素、二酸化窒素、一酸化二窒素および水。
酸化窒素はLinde Gas社から購入された。純度は99重量%より高い。不純物は、特定されていないNOX(N2O、N2O3、N2O4、NO2、N2O5)<0.5重量%と、窒素(N2)<0.5重量%であることが明示されている。
ポリ(2-エチル-オキサゾリン)を硫酸中で24時間沸騰させた。硫酸溶液中で沸騰させることは、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)の加水分解を所要の>90%のレベルに達するために必要だった。形成された生成物であるポリエチレンイミンの単離手順において、形成されたプロピオン酸は蒸留され、硫酸は水酸化ナトリウムで中和され、次いで、水中で数回再結晶して塩の不純物(つまり、硫酸ナトリウムおよびプロピオン酸の残余物)を除去した。
ポリ(2-エチル-オキサゾリン)からのLPEIの製造は、エチレンイミンモノマーが残る危険性を排除する。
L-PEI-NONO'エートの平均分子量は、25〜3OkDa、例えば約28kDaであり、その分布は比較的狭いことがわかった。
実施例2:挿入シース
コーティングされる挿入シースは、米国のThomas Medical Products社から大量に購入された。(経皮的)挿入シースは、介入装置/診断装置の血管内導入に用いられる(図2を参照)。
コーティングされる挿入シースは、米国のThomas Medical Products社から大量に購入された。(経皮的)挿入シースは、介入装置/診断装置の血管内導入に用いられる(図2を参照)。
実施例3:ピリジン中の100%テコフレックス(プライマー層)
溶液:ピリジン中の2%(w/w)固体テコフレックス(合計80g)
1. 2gのテコフレックス SG85Aを、75℃で4時間乾燥した。
2. 乾燥後、容器を密閉して室温に放置した。
3. 1.6gの乾燥テコフレックス SG85Aを、78.4gのピリジンと混合して、75℃で一晩インキュベートした。Riedel-de Haen社から入手した「乾燥した」ピリジン、34945を用いた。
4.溶液は、使用前には均質だった。
溶液:ピリジン中の2%(w/w)固体テコフレックス(合計80g)
1. 2gのテコフレックス SG85Aを、75℃で4時間乾燥した。
2. 乾燥後、容器を密閉して室温に放置した。
3. 1.6gの乾燥テコフレックス SG85Aを、78.4gのピリジンと混合して、75℃で一晩インキュベートした。Riedel-de Haen社から入手した「乾燥した」ピリジン、34945を用いた。
4.溶液は、使用前には均質だった。
実施例4:テコフレックス/エステン 70/30から、70/30の量のLPN製剤へ
1. 2gのテコフレックス SG85Aおよび 1gのエステン 58237を、75℃で4時間乾燥した。
2. 乾燥後、容器を密閉して室温に放置した。
3. 混合物Aの調製: 0.48gの乾燥テコフレックス SG85A、0.12gの乾燥エステン 58237、および29.4gの乾燥ピリジンを混合した。その混合物を密封し、75℃で一晩インキュベートした。インキュベート中に、容器を数回、勢いよく振った。
4. pH調整メタノールを調製するために、50mgのNaOHを30mlの無水メタノールに加えた。
5. 混合物Bの調製: 0.3gのLPNおよび14.7g(18.6ml)のpH調整メタノールを、バイアル中で混合した。その混合物を簡単に振った。容器を密閉して光から保護し、そして撹拌しながら室温で1時間インキュベートした。その混合物を、0.45μmのフィルターでろ過して、新しいバイアル中入れた。
6. 混合物Cの調製:混合物Aおよび混合物Bを、7:3(例えば7ml+3ml)の比で混合して新しいバイアルに入れ、耐光容器に密閉した。
7. 混合物Cは、ダウンストリーム処理(down stream processing.)に用いられた。混合物Cの最終調製から、ダウンストリーム処理の終了までの最大時間は9時間だった。ダウンストリーム加工の直前に溶液を振った。
1. 2gのテコフレックス SG85Aおよび 1gのエステン 58237を、75℃で4時間乾燥した。
2. 乾燥後、容器を密閉して室温に放置した。
3. 混合物Aの調製: 0.48gの乾燥テコフレックス SG85A、0.12gの乾燥エステン 58237、および29.4gの乾燥ピリジンを混合した。その混合物を密封し、75℃で一晩インキュベートした。インキュベート中に、容器を数回、勢いよく振った。
4. pH調整メタノールを調製するために、50mgのNaOHを30mlの無水メタノールに加えた。
5. 混合物Bの調製: 0.3gのLPNおよび14.7g(18.6ml)のpH調整メタノールを、バイアル中で混合した。その混合物を簡単に振った。容器を密閉して光から保護し、そして撹拌しながら室温で1時間インキュベートした。その混合物を、0.45μmのフィルターでろ過して、新しいバイアル中入れた。
6. 混合物Cの調製:混合物Aおよび混合物Bを、7:3(例えば7ml+3ml)の比で混合して新しいバイアルに入れ、耐光容器に密閉した。
7. 混合物Cは、ダウンストリーム処理(down stream processing.)に用いられた。混合物Cの最終調製から、ダウンストリーム処理の終了までの最大時間は9時間だった。ダウンストリーム加工の直前に溶液を振った。
実施例5:ピリジン中の100%テコフィリック SP-93A-100
溶液:ピリジン中の2%(w/w)固体テコフィリック(合計80g)
1. テコフィリックSP-93A-100を、75℃で4時間乾燥した。
2. 乾燥後、テコフィリック SP-93A-100を密閉して室温で貯蔵した。
3. 1.6gのテコフィリックと78.4gのピリジンを混合し、75℃で一晩インキュベートした。インキュベート中に、容器を数回、勢いよく振った。
4. 溶液は、ダウンストリーム適用前には均質だった。
溶液:ピリジン中の2%(w/w)固体テコフィリック(合計80g)
1. テコフィリックSP-93A-100を、75℃で4時間乾燥した。
2. 乾燥後、テコフィリック SP-93A-100を密閉して室温で貯蔵した。
3. 1.6gのテコフィリックと78.4gのピリジンを混合し、75℃で一晩インキュベートした。インキュベート中に、容器を数回、勢いよく振った。
4. 溶液は、ダウンストリーム適用前には均質だった。
実施例6:コーティング
コーティングは3ステップのスプレーコーティング処理で塗布された。第1ステップでは、シース上に、USPクラスVIで試験済みのプライマーを塗布する。シース上へのスプレーコーティングのために、プライマーをピリジン中に溶解した。
コーティングは3ステップのスプレーコーティング処理で塗布された。第1ステップでは、シース上に、USPクラスVIで試験済みのプライマーを塗布する。シース上へのスプレーコーティングのために、プライマーをピリジン中に溶解した。
第2ステップでは、メタノールおよびピリジンに溶解したポリウレタンとL-PEI-NONOの混合物を挿入シースの上にスプレーする。
第3ステップでは、トップコートを塗布する。
3種類の異なるスプレーコーティング用混合物は、以下に詳細に記述される。
スプレーコーティングは、小さな流量で低い空気圧用に設計された、従来のエアスプレー装置で行なわれる。スプレーコーティング処理は、スプレー処理により滑らかで均一な層が実現されること、及び層の厚さに偏りを生じないことを保証するために、モニターされコントロールされる。
スプレーコーティングのセットアップにおいて、最も危険な変化の原因(critical source of variation)は、スプレープルーム(the spray plume)の変化である。
変化は、粒径変化と、スプレープルーム形状の変化(例えば、スプレーコーティング処理中に、スプレープルームを回転するシースの中心に集中させることができなくなるような変化)を含むことができる。スプレーコーティング処理における変化は、典型的には、スプレーノズルオリフィス上で完全に乾いて空気流を変更するスプレー流体に起因する。この問題に対処する1つの方法は、スプレーノズルのデザインを最適化し、その結果として、スプレー残留物の形成を回避することである。さらに、スプレー混合物の製剤も最適化して、スプレーノズル上におけるスプレー溶液の乾燥を防ぐ。
スプレー処理は、進歩したレーザー技術および高速カメラを用いて、検討され最適化されてもよい。装置は、スプレープルームの角度および配向の測定と、変化の分析が可能である。更に、装置は、ドロップサイズの分析と、空気流およびデバイス面までの距離など異なるパラメーターによる影響の分析を可能にする。このスプレーコーティング分析装置の機能の主要部分は図3を図示する。
記述された技術は、経口および点鼻薬のスプレー用のスプレープルーム形状を有効にするのに必要な方法に類似している。
所要の臨床的影響が得られる特定の目標放出(目標放出は、0.5 nmol/min/cm2〜40 nmol/min/cm2である)を保証するために、酸化窒素供与体はポリマーのマトリックスに組み入れられた(図4)。コーティングは以下の3層から成る。
・プライマー
機器に対するコーティングの固着性を保証し最適化する。
・酸化窒素供与層(Nitric oxide donating layer)
酸化窒素供与層は、ピリジンおよびメタノールに溶解されたポリウレタンとL-PEI-NONO(LPN)との混合物であり、医療機器上にある。酸化窒素供与層の処方は、pH調整された溶媒(メタノール)を含んでおり、処理中にLPNが安定することを保証する。
・トップコート
ポリマーのトップコートは、コーティング純度、LPNポリマーのバリア可溶化、適切な吸水速度および適切なNO拡散速度を保証する役目をする。トップコートが塗布される場合、酸化窒素の放出は、1'オーダー放出から著しくはずれている。これはトップコートバリア特性によるものであり、それは、コーティングを通して、吸水および酸化窒素の拡散を制限する。
・プライマー
機器に対するコーティングの固着性を保証し最適化する。
・酸化窒素供与層(Nitric oxide donating layer)
酸化窒素供与層は、ピリジンおよびメタノールに溶解されたポリウレタンとL-PEI-NONO(LPN)との混合物であり、医療機器上にある。酸化窒素供与層の処方は、pH調整された溶媒(メタノール)を含んでおり、処理中にLPNが安定することを保証する。
・トップコート
ポリマーのトップコートは、コーティング純度、LPNポリマーのバリア可溶化、適切な吸水速度および適切なNO拡散速度を保証する役目をする。トップコートが塗布される場合、酸化窒素の放出は、1'オーダー放出から著しくはずれている。これはトップコートバリア特性によるものであり、それは、コーティングを通して、吸水および酸化窒素の拡散を制限する。
実施例7:層の厚さ
共焦点蛍光顕微鏡法を用いた場合、LPN層には比較的強い自己蛍光(青/緑)がある。他の層は、この方法によって検出することができないが、それは恐らく、他の層が自己蛍光を有していない若しくは非常に弱い自己蛍光を有していること、およびトップ層およびプライマー層が薄すぎる(0.6-0.7未満μm)ことによる。この方法によって、LPNを44サイクル(標準のスプレーコーティングのパラメーター)塗布した場合に、乾燥時のLPN層の厚さが4〜5μmになることが決定された。LPNを22サイクルしか機器に塗布しない場合には、比例すると仮定すれば、LPNコーティングの厚さは2μmになる。
共焦点蛍光顕微鏡法を用いた場合、LPN層には比較的強い自己蛍光(青/緑)がある。他の層は、この方法によって検出することができないが、それは恐らく、他の層が自己蛍光を有していない若しくは非常に弱い自己蛍光を有していること、およびトップ層およびプライマー層が薄すぎる(0.6-0.7未満μm)ことによる。この方法によって、LPNを44サイクル(標準のスプレーコーティングのパラメーター)塗布した場合に、乾燥時のLPN層の厚さが4〜5μmになることが決定された。LPNを22サイクルしか機器に塗布しない場合には、比例すると仮定すれば、LPNコーティングの厚さは2μmになる。
22サイクルを用いた場合には、コーティングの総厚さは3μmになると考えられる。しかしながら、40μm以下のコーティングが適切であってもよく、コーティング数(例えばスプレーするサイクル)を増加させることにより達成できる。
等張液に溶け込む場合には、コーティングは吸水の結果として膨潤する。発明者らは、膨潤によってコーティングの厚さがおよそ0.03mm(30μm)増加することを実験的に決定した。
実施例8:酸化窒素の計測
酸化窒素の計測は、化学発光NO分析器(シーバー(Sievers)NO分析器 NOA 280i-2)を用いて行われた。NO分析器は、試料の射出後に検出器を通るNO(g)の総量を検出する。検出は次の反応に基づいている。
酸化窒素の計測は、化学発光NO分析器(シーバー(Sievers)NO分析器 NOA 280i-2)を用いて行われた。NO分析器は、試料の射出後に検出器を通るNO(g)の総量を検出する。検出は次の反応に基づいている。
発光(hv)は、光電子増倍管で検出され、NOの量に直接関連づけられる。
この原理では、NO溶出試料を、Tween 20を0.0004%加えたPBS緩衝液(pH 7.4)(試料を覆っている)を含む酸洗浄瓶(acid wash bottle)(ヘッドスペースチャンバと名付ける)の中に配置し、放出されたNOガスをNO分析器に運ぶN2ガスで連続的にフラッシングする。N2の連続的な流れにより、酸素の存在は結果として回避され、そして亜硝酸塩(NO2 -)の形態も回避される。この方法は、すべてのNOが、そしてNOのみが測定されることを保証する。
実施例9:パッキング及び滅菌(PACKING & STERILIZATION)
その後、製品をアルミニウム小袋で包んで密閉し、電子線照射器による滅菌に適している。
その後、製品をアルミニウム小袋で包んで密閉し、電子線照射器による滅菌に適している。
コーティングされた医療機器は、例えばデンマークのEspergadeにあるSterigenics社などの認定下請け会社(certified sub-contractor)よる電子ビーム滅菌によって滅菌されてもよい。
バリデーションおよび所定どおりの滅菌は、EN 552(医療機器の滅菌---放射線による滅菌バリデーションおよび所定どおりのコントロール)およびISO 11137(ヘルスケア製品の滅菌---放射線滅菌)の要求に沿って行われ、製品は、EN 556(医療機器の滅菌)(SAL 10-6)に沿って滅菌される。
実施例10:
本発明にかかる医療機器からの酸化窒素(NO)の放出は、図8〜図10を参照しながら、以下の実施例に示される。様々なコーティングを有するコーティングされたバルーンを、pH=7.4で体温(つまり37℃)に維持されたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含んでいるヘッドスペースチャンバに浸漬した。ヘッドスペースチャンバは、放出されたNOを酸化窒素分析装置に運ぶN2ガスで、連続的にフラッシングされた。酸化窒素分析装置は、次のような酸化窒素とオゾンとの間の気相の化学発光反応に基づいて酸化窒素を測定するために、いわゆる高感度検出器を含んでいた。
本発明にかかる医療機器からの酸化窒素(NO)の放出は、図8〜図10を参照しながら、以下の実施例に示される。様々なコーティングを有するコーティングされたバルーンを、pH=7.4で体温(つまり37℃)に維持されたリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含んでいるヘッドスペースチャンバに浸漬した。ヘッドスペースチャンバは、放出されたNOを酸化窒素分析装置に運ぶN2ガスで、連続的にフラッシングされた。酸化窒素分析装置は、次のような酸化窒素とオゾンとの間の気相の化学発光反応に基づいて酸化窒素を測定するために、いわゆる高感度検出器を含んでいた。
電子的に励起された二酸化窒素からの発光は、スペクトルの赤〜近赤外領域にあるので、熱電気的に冷却された赤感性(red-sensitive)の光電子増倍管によって検出することができた。用いた分析装置は、米国コロラド州ボールダーのシーバー社(登録商標)によって提供された酸化窒素分析器NOA(商標) 280iであった。
図8〜図10では、NO出力信号の不規則な不連続性が、NOの流れの不連続性から分析装置まで届けられている。
実施例10a(図8):US6,737,447に開示されている線状のポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレート(LPEI-NONO)でコーティングされ、ポリウレタンに埋め込まれ、そして純粋なポリウレタンのトップコートを備えたバルーンは、ヘッドスペースチャンバに浸漬された。酸化窒素放出は、ヘッドスペースチャンバ内で膨張させたバルーンの浸漬により実質的に直ちに開始し、およそ50分でおよそ1.5nmol/min/cm2のレベルまで漸近的に増加した。LPEI-NONO中へのNOの高積込み(high load)により、NOの放出は、残りの計測時間(およそ140分)の間、本質的に一定に維持された。
実施例10b(図9):US6,737,447に開示されている線状のポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレート(LPEI-NONO)でコーティングされ、ポリウレタンに埋め込まれ、90%ポリアクリル酸、10%ポリウレタンのコーティングで支持されたバルーンは、ヘッドスペースチャンバに浸漬された。酸化窒素放出は、ヘッドスペースチャンバ内で膨張させたバルーンの浸漬により実質的に直ちに開始し、酸化窒素分析装置の最大測定しきい値(10nmol/min/cm2)を越えるレベルに達した。およそ82分後に計測を中断するまで、およそ1.2nmol/min/cm2のレベルまで漸近的な減少が観察された。
実施例10c(図10):US6,737,447に開示されている線状のポリ(エチレンイミン)ジアゼニウムジオレート(LPEI-NONO)でコーティングされ、ポリウレタンに埋め込まれ、そして80%ポリアクリル酸、20%ポリウレタンのコーティングで支持され、さらにポリウレタンのトップコートを含むバルーンは、ヘッドスペースチャンバに浸漬された。酸化窒素放出は、ヘッドスペースチャンバ内で膨張させたバルーンの浸漬により実質的に直ちに開始し、酸化窒素分析装置の最大測定しきい値(10nmol/min/cm2)を越えるレベルに達した。およそ105分後に計測を中断するまで、およそ0.4nmol/min/cm2のレベルまで漸近的な減少が観察された。
実施例11:
動物実験は医薬品安全性試験実施基準(Good Laboratory Practices)に従って行なわれた。コントロールの機器は、非コーティングの挿入シース(酸化窒素を含まない、テルモ社、ラジオフォーカス(Radiofocus)(登録商標)イントロデューサII)だった。この実験では、合計22匹の動物を、急性実験のグループ(acute group)と7日間の追跡実験のグループ(follow-up group)の2つのグループに割り当てた。合計20匹の動物(各グループの10匹)が、この実験に首尾よく含まれていた。この豚の動物実験の目的は、前の実施例に沿って調製された挿入シースの安全性、性能および効果を評価することだった。
動物実験は医薬品安全性試験実施基準(Good Laboratory Practices)に従って行なわれた。コントロールの機器は、非コーティングの挿入シース(酸化窒素を含まない、テルモ社、ラジオフォーカス(Radiofocus)(登録商標)イントロデューサII)だった。この実験では、合計22匹の動物を、急性実験のグループ(acute group)と7日間の追跡実験のグループ(follow-up group)の2つのグループに割り当てた。合計20匹の動物(各グループの10匹)が、この実験に首尾よく含まれていた。この豚の動物実験の目的は、前の実施例に沿って調製された挿入シースの安全性、性能および効果を評価することだった。
実験の第1の評価項目(endpoint)は、安全性についての組織学的分析(safety histological analysis)であり、それは、急性実験の動物および7日間の追跡実験の動物の両方の大腿動脈で行なわれ、シースが配置された周囲の潜在的なネガティブな細胞変化および管腔直径の変化を決定した。
効果は、血管造影分析により、NO溶出シースを配置して使用する間の血管けいれんに関連する血管の管腔直径の変化を、コントロールのシースと比較して評価された。
<動物の準備>
22匹の飼育豚(domestic pigs)(体重30-35kgで、実験中は脂質またはコレステロールを補給せずに標準的な自然な食事を与えた)が、実験に含まれていた。実験が2回の週末にまたがって行われたので、実用的な理由から、動物は無作為に2つのグループ(急性実験と1週間の追跡実験)に分けることはしなかった。従って、1週間の追跡実験の動物は、すべて最初の週末中に含まれていた。
22匹の飼育豚(domestic pigs)(体重30-35kgで、実験中は脂質またはコレステロールを補給せずに標準的な自然な食事を与えた)が、実験に含まれていた。実験が2回の週末にまたがって行われたので、実用的な理由から、動物は無作為に2つのグループ(急性実験と1週間の追跡実験)に分けることはしなかった。従って、1週間の追跡実験の動物は、すべて最初の週末中に含まれていた。
実験の1日前に、負荷量250mgのアスピリンと300mgのクロビドグレル(Clopidogrel)を経口投与した。
豚を一晩断食させて、12mg/kgの塩酸ケタミン(ketamin-hydrochlorid)+1mg/kgのキシラジン(xylazin)および0.04mg/kgのアトロピン(atropin)で鎮静させた。前投薬の後に、マスクを用いて、イソフルレン(isofluran)と酸素により麻酔を深くかけた。咽頭反射が除去されたら豚は気管内挿管され、そして麻酔は1.5-2.5体積%のイソフルレン、1.6-1.8体積%の酸素および0.5体積%のN2Oで維持された。麻酔中に、次のパラメーター---パルス/分(puls/min)、呼吸/分、SpO2およびECG---が測定された。
<手術(Procedure)>
右または左の大腿動脈へのアクセスは、滅菌状態で動脈に直接穿刺して行われ、6Fの挿入シース(実験機器およびコントロールの機器の一方)を、動脈に差し込んだ。同じアクセス手順を用いて、(挿入された最初のシースに依存して)実験機器またはコントロールの機器の他方を、反対側の動脈に差し込んだ。心拍数、動脈血圧および体温がモニターされた。実験機器とコントロールの機器は、パッケージングと外観とが明らかに異なるので、手術は医師にとってブラインドではなかった。
右または左の大腿動脈へのアクセスは、滅菌状態で動脈に直接穿刺して行われ、6Fの挿入シース(実験機器およびコントロールの機器の一方)を、動脈に差し込んだ。同じアクセス手順を用いて、(挿入された最初のシースに依存して)実験機器またはコントロールの機器の他方を、反対側の動脈に差し込んだ。心拍数、動脈血圧および体温がモニターされた。実験機器とコントロールの機器は、パッケージングと外観とが明らかに異なるので、手術は医師にとってブラインドではなかった。
ヘパリンナトリウムを60 IU/kg投与した後、6Fガイドカテーテルは、上行大動脈へ進められた。更に、手術中は、ヘパリン(400 I.U./時)を遅い持続注入として与えた。冠動脈の血管造影法は標準的な造影剤を用いて行なわれ、続いて偽のステント手術(動物を予期しない冠動脈イベント(coronary event)にさらさないように、低圧および短時間の動脈のバルーン膨脹)が行われた。No.6の豚での冠動脈の合併症(それは動物の死を引き起こした)の後、偽のステント手術は修正され、バルーンはガイドカテーテル内で拡大された。
偽のステント手術の後に、ガイドカテーテルは外された。大腿動脈の血管造影が繰り返された。
少なくとも合計1時間の挿入時間に到達するために、シースは留置された。大腿動脈の血管造影が繰り返された。
シース長さのおよそ50%が動脈から引き抜かれ、そしてシースが前に位置していた場所の血管径を記録するために、血管造影の手技が繰り返された。
続いて、シースは完全に引き抜かれた。
生き残った動物には、アンギオシール(Angio-Seal)(登録商標)(St. Jude Medical社)封止機器で穿刺位置を閉じる試みがなされた。7日間の追跡実験の動物は、麻酔から回復させることができ、鎮痛用のメタミゾール(metamizol)を受けた。急性実験の動物は、飽和塩化カリウム10mlで安楽死させられた。
<追跡実験(Follow-up examinations)>
7日後に、頚動脈アクセスを通って、大腿動脈のコントロールの血管造影が行なわれた。外科的に準備された右または左の頚動脈の中に6Fのシースを挿入した後、ガイドワイヤ(0.035")は下行大動脈に操縦された。6Fの診断用右冠動脈カテーテルは、大動脈-腸骨分岐部(aorto-iliaca bifurcation)に押し進められた。左側および右側の総腸骨動脈(arteria iliaca communis)および総大腿動脈(arteria femoralis communis)の血管造影が行なわれた。その後、右または左の総大腿動脈は、選択的にカニューレを挿入され、そして浅大腿動脈(arteria femoralis superficialis)の選択的な血管造影も行なわれた。その後、動物は飽和塩化カリウム10mlで安楽死させられた。
7日後に、頚動脈アクセスを通って、大腿動脈のコントロールの血管造影が行なわれた。外科的に準備された右または左の頚動脈の中に6Fのシースを挿入した後、ガイドワイヤ(0.035")は下行大動脈に操縦された。6Fの診断用右冠動脈カテーテルは、大動脈-腸骨分岐部(aorto-iliaca bifurcation)に押し進められた。左側および右側の総腸骨動脈(arteria iliaca communis)および総大腿動脈(arteria femoralis communis)の血管造影が行なわれた。その後、右または左の総大腿動脈は、選択的にカニューレを挿入され、そして浅大腿動脈(arteria femoralis superficialis)の選択的な血管造影も行なわれた。その後、動物は飽和塩化カリウム10mlで安楽死させられた。
ベースラインおよび追跡の手技の全ては、およそ60〜90分続いた。動物へのストレス及び血管造影の手技は、ヒトの冠動脈インターベンション(coronary intervention)に匹敵した。
<大腿部血管造影の評価>
家畜の手術(pen-procedure)および追跡の定量的血管造影のパラメーター(quantitative angiographic parameters)は、コンピューターを使った定量的冠動脈の血管造影法によるエッジ検出アルゴリズム(ACOMPC、ドイツのジーメンス社)によって測定された。最小の管腔、基準直径(reference diameters)および潜在的な管腔の径狭窄率(percent diameter of potential lumen narrowing)が評価された。計測は、手術中の少なくとも4回---シースの配置前(ベースライン)、偽のステント手術の後、シースをその長さの50%だけ引き戻した後、そして1時間後(最終)に---行われた。
家畜の手術(pen-procedure)および追跡の定量的血管造影のパラメーター(quantitative angiographic parameters)は、コンピューターを使った定量的冠動脈の血管造影法によるエッジ検出アルゴリズム(ACOMPC、ドイツのジーメンス社)によって測定された。最小の管腔、基準直径(reference diameters)および潜在的な管腔の径狭窄率(percent diameter of potential lumen narrowing)が評価された。計測は、手術中の少なくとも4回---シースの配置前(ベースライン)、偽のステント手術の後、シースをその長さの50%だけ引き戻した後、そして1時間後(最終)に---行われた。
<大腿動脈の組織病理学(histopathology)および組織形態学(histomorphometry)>
血管病理学において経験を積んだベテランのオブザーバーが、グループについての知識なしに、全てのスライドを分析した。
血管病理学において経験を積んだベテランのオブザーバーが、グループについての知識なしに、全てのスライドを分析した。
血管内へのシースの配置によって引き起こされた血管内の外傷の発生が記録された。シースの配置に関係する動脈の外観的変化が観察された場合、病理学的調査の肉眼的所見(gross findings)が報告された。外植された血管(explanted vessels)は、外径拡大、管腔狭窄、陰影欠損および内側薄化(medial thinning)は、もし存在するなら、評価された。
大腿動脈を次のセクションに区分した。
1. 穿刺位置より遠位方向へ5mm以内の参照セグメント。
2. シースが配置された位置の1センチメートルごとのセクション。
3. シースを配置した遠位端の位置より近位方向へ5mm以内の参照セグメント。
各動脈セグメントのセクションは、ヘマトキシリン-エオシン(hematoxylin-eosin)およびVerhoeff-van Gieson-エラスチンで染色されて、場所と損傷範囲の両方を決定された。
1. 穿刺位置より遠位方向へ5mm以内の参照セグメント。
2. シースが配置された位置の1センチメートルごとのセクション。
3. シースを配置した遠位端の位置より近位方向へ5mm以内の参照セグメント。
各動脈セグメントのセクションは、ヘマトキシリン-エオシン(hematoxylin-eosin)およびVerhoeff-van Gieson-エラスチンで染色されて、場所と損傷範囲の両方を決定された。
定量分析は、
・管腔面積(血管管腔の面積、mm2)
・脈管内膜面積または新生内膜面積(脈管内膜(intimal)または新生内膜(neointimal)の組織の面積、mm2)
・内弾性板面積(内弾性板(internal elastic lamina)の面積、mm2)
・中膜面積(中膜(media)の面積、mm2)
・外弾性板面積(外弾性板(external elastic lamina)の面積、mm2)
・外膜面積(外膜(adventitia)の面積、mm2)
を含んでいた。
・管腔面積(血管管腔の面積、mm2)
・脈管内膜面積または新生内膜面積(脈管内膜(intimal)または新生内膜(neointimal)の組織の面積、mm2)
・内弾性板面積(内弾性板(internal elastic lamina)の面積、mm2)
・中膜面積(中膜(media)の面積、mm2)
・外弾性板面積(外弾性板(external elastic lamina)の面積、mm2)
・外膜面積(外膜(adventitia)の面積、mm2)
を含んでいた。
各動脈セグメントについて、炎症の記述(細胞タイプと場所)、出血および壊死、ならびに血管壁および管腔血栓が記述された。
<結果>
安全性と性能
安全性と性能
<安全性>
1. 追跡期間の体重増加(7日目の体重−0日目の体重): 7日目が32.5±1.0、0日目が32.0±1.2 kgであった。生存しなかったグループの動物は、体重34±1.2 kgだった。発熱、体重減少あるいは一般的な症状は観察されなかった。
2. 追跡期間までの及びその時の総合的な健康状態(発熱などの症状の発現): 両方の大腿動脈を封止した2時間後に1匹の不測死(MIS-6)があり、それは冠動脈に関連していた(冠動脈手術後のST上昇)。シース関連のイベントは発生しなかった。
3. アンギオシール(商標)は、すべてのケースには機能しなかった。1週間の追跡用の血管を閉じる必要があった場合には、動脈の外科的縫合を行わなければならなかった(3つのコントロールシースと2つのNOシース
4. ECGの変化(NOによる心筋への影響を除外するために、ECGは手術前、手術中および手術後ならびに追跡期間に記録された)。シースに関連するECGの変化は観察されなかった。
5. 追跡期間中の不測死: MIS-6は、冠動脈の手術の結果として死亡した。検死が行なわれて、死亡がシースの配置と関連していなかったことが確認された。
6. ベースラインの臨床血液パラメーターは豚の正常範囲内にあった。血管造影の後にPTは不変だったが、分画されていないヘパリンの適用により、aPTTは両方のグループで増加し、グループ間の差はなかった。
7. 動物の検死は、(MIS-6以外の)動物がすべて健康であることを明らかにし、また、NO関連の変化は記録されなかった。
1. 追跡期間の体重増加(7日目の体重−0日目の体重): 7日目が32.5±1.0、0日目が32.0±1.2 kgであった。生存しなかったグループの動物は、体重34±1.2 kgだった。発熱、体重減少あるいは一般的な症状は観察されなかった。
2. 追跡期間までの及びその時の総合的な健康状態(発熱などの症状の発現): 両方の大腿動脈を封止した2時間後に1匹の不測死(MIS-6)があり、それは冠動脈に関連していた(冠動脈手術後のST上昇)。シース関連のイベントは発生しなかった。
3. アンギオシール(商標)は、すべてのケースには機能しなかった。1週間の追跡用の血管を閉じる必要があった場合には、動脈の外科的縫合を行わなければならなかった(3つのコントロールシースと2つのNOシース
4. ECGの変化(NOによる心筋への影響を除外するために、ECGは手術前、手術中および手術後ならびに追跡期間に記録された)。シースに関連するECGの変化は観察されなかった。
5. 追跡期間中の不測死: MIS-6は、冠動脈の手術の結果として死亡した。検死が行なわれて、死亡がシースの配置と関連していなかったことが確認された。
6. ベースラインの臨床血液パラメーターは豚の正常範囲内にあった。血管造影の後にPTは不変だったが、分画されていないヘパリンの適用により、aPTTは両方のグループで増加し、グループ間の差はなかった。
7. 動物の検死は、(MIS-6以外の)動物がすべて健康であることを明らかにし、また、NO関連の変化は記録されなかった。
<視覚的な血管造影の分析>
定義:
開口、けいれんなし: 動脈管腔の障害(compromisation)のない動脈の開口
開口、軽いけいれん: シース配置より遠位の軽い狭窄を伴った動脈の開口
開口、中程度のけいれん: およそ50%の管腔狭窄を伴った動脈の開口
開口、重篤なけいれん: 遠位部でTIMIフロー1を伴った動脈の開口
閉塞: 穿孔位置から遠位で動脈が完全に閉塞
定義:
開口、けいれんなし: 動脈管腔の障害(compromisation)のない動脈の開口
開口、軽いけいれん: シース配置より遠位の軽い狭窄を伴った動脈の開口
開口、中程度のけいれん: およそ50%の管腔狭窄を伴った動脈の開口
開口、重篤なけいれん: 遠位部でTIMIフロー1を伴った動脈の開口
閉塞: 穿孔位置から遠位で動脈が完全に閉塞
<定量的な血管造影分析>
包括的な結果の概要を下記の表にまとめた。
包括的な結果の概要を下記の表にまとめた。
結果を、平均値(means)と標準偏差(standard deviations:SD)でまとめた。グループ間の差異は、統計的有意性を同定するために、両側t検定を用いてテストされた。報告書の全体にわたって、同じタイプの統計が用いられた。
<組織学的結果>
組織病理学的結果(Histopatholoqical results)
以下のスコアシステムを用いた。
0 = 異常なし(no abnormality)
1 = 軽度(mild)
2 = 中程度(moderate)
3 = 重篤な変化(severe changes)(例えば炎症、壊死、出血)
組織病理学的結果(Histopatholoqical results)
以下のスコアシステムを用いた。
0 = 異常なし(no abnormality)
1 = 軽度(mild)
2 = 中程度(moderate)
3 = 重篤な変化(severe changes)(例えば炎症、壊死、出血)
病理学的な変化は、ほとんどの場合、外膜で観察された。まれに、変化が内膜または中膜でも観察されたときは、コメントされた。
血栓形成(thrombotisation)については、0 = 血栓形成なしとしてスコアされ、そうでなければ、生体内の血栓形成の場合には、管腔に関してある割合の血栓が生じていた(その割合の程度は、血栓で占められた管腔であった)。
組織学的試料に付した連続番号:シースと接触した動脈(穿孔位置)から最も遠位の部分に番号「1」を付けた。最も近位の部分(前に配置されたシースの先端)に番号「11」を付けた。「R」は右側を意味し、「L」は左側を意味している。遠位基準(distal reference)または近位基準(proximal reference)とは、先に配置されていたシースから、遠位(穿刺位置の遠位)または近位(先に配置されていたシースの先端の近位)から1cm以内の動脈のセグメントを、それぞれ表している。
結果の概要を、表5にリストする。
急性実験においては、シース間に相違は観察されなかった。1週間後では、NOシースの使用により、炎症および血栓形成が少なくなる傾向が観察された。血管壁の壊死は観察されなかった。組織病理学的変化は外膜に焦点を合わせられており、それは機械的な損傷(動脈の穿刺)と部分的に関連するかもしれない。巨大細胞との異物反応は、血管封止位置で記録された。
シースが動脈に設置されている間、最小の初期内膜増殖(incipient intimal proliferation)は、最初の1時間に開始する。急性実験では、初期の新生内膜増殖は、NO-シースのグループで少なかった。従って、狭窄面積のパーセントはNO-シースのグループで少なかった。新生内膜の量および狭窄面積パーセントが、臨床的に無視できることに注意されたい。
1週間後には、恐らく動脈の穿刺位置の封止によって、両方のシースのグループで小さな新生内膜増殖が観察できる。細胞増殖は、NOシースのグループで少なく(恐らく管腔の血栓形成が少ないことによる)、その結果、著しく大きい管腔面積と、少ない狭窄面積のパーセントに帰着する。
コントロールシースのグループにおいて、新生内膜の量および少し多めの狭窄面積%は、許容でき且つ臨床的に関連のない範囲で残っている。
<結論>
・安全性についての組織学的分析:合格
・手術中の血圧変化:合格
・発熱の発現:合格
・ECG変化:合格
・不測死:合格(製品に無関係な1つのイベント)
・体重増加:合格
・血管造影分析により、NO溶出シースを配置して使用する間の血管けいれんに関連する血管の管腔直径の、コントロールのシースと比較した変化:合格(手術中及び手術の終了時に、顕著な変化(少ない血管狭窄)が観察された)
・安全性についての組織学的分析:合格
・手術中の血圧変化:合格
・発熱の発現:合格
・ECG変化:合格
・不測死:合格(製品に無関係な1つのイベント)
・体重増加:合格
・血管造影分析により、NO溶出シースを配置して使用する間の血管けいれんに関連する血管の管腔直径の、コントロールのシースと比較した変化:合格(手術中及び手術の終了時に、顕著な変化(少ない血管狭窄)が観察された)
NO溶出シースの挿入は、カテーテル挿入中における急性の血管けいれんを防ぐのに安全かつ有効的であることが分かった。NO溶出シースの挿入は、血管壁および管腔における血栓形成が少なくなる傾向があり、局所的な血管壁の損傷によって始まる細胞増殖が著しく少ない、という結果に帰着した。さらに、従来のシースと比較すると、NO溶出シースの機械的性質は、同様に優れている。NO溶出シースの使用は、シースからの局所的なNO放出に関係する全身性の反応を引き起こさず、また、体循環および心臓の機能に影響を及ぼさなかった。
<詳細>
1. NO溶出シース配置は安全だった;シースあるいはNO溶出に関連する合併症は観察されなかった。
2. 性能パラメーターは優れていた。
3. ベースラインの血管サイズは2つのグループで同様であった。
4. シースの配置後、NOシースのグループでは、遠位部において血管径が大きくなる傾向が観察された。
5. 冠動脈手術後の血管造影により、NOシースを配置した後は、コントロールシースと比較して、%DSで表現された血管狭窄が著しく少なく、そして遠位の血管径が広くなることを明らかにした。
6. シースを50%引き抜いた後(けいれんを誘発); NOシースの配置は、シースの配置位置から近位及び遠位の両側で、血管サイズを著しく高くした。
7. 最終の血管造影から、シースの配置位置、並びに基準位置から近位および遠位において、血管径が著しく大きいことがわかった。
8. 1週間目のFUPでは、NOシースの配置後、血管位置の近位で高くなる傾向が観察された。
9. 組織病理学的変化は、外膜に焦点を合わせられており、それは機械的な損傷(動脈の穿刺)と部分的に関連するかもしれない。
10. 急性実験においては、シース間に組織学的な相違は観察されなかった。
11. 1週間後では、NOシースの使用により、炎症および血栓形成が少なくなる傾向が観察された。
12. 急性実験と1週間の生存実験のいずれでも、血管壁の壊死は観察されなかった。
13. 巨大細胞との異物反応は、挿入されたシースのタイプとは無関係に、血管封止位置で記録された。
14. 組織形態計測により、最小の初期内膜増殖は、シース配置から1時間以内に開始することが明らかになった。急性実験では、初期の新生内膜増殖は、NO-シースのグループで少なかった。従って、狭窄面積のパーセントはNO-シースのグループで少なかった。新生内膜の量および狭窄面積パーセントが、臨床的に無視できることに注意されたい。
15. 1週間後には、恐らく動脈の穿刺位置の封止によって、両方のシースのグループで小さな新生内膜増殖が観察できる。細胞増殖は、NOシースのグループでより少なかった。
16. NO-シースのグループでは、少ない細胞増殖と、少々すくない管腔の血栓形成とによって、著しく大きい管腔面積と、少ない狭窄面積のパーセントとが測定された。
17. コントロールシースのグループにおいて、新生内膜の量および少し多めの狭窄面積%は、許容でき且つ臨床的に関連のない範囲で残っている。
18. 中膜の厚さに関するグループ間の差異は、急性のグループ、1週間のグループのいずれでも観察されなかった。
1. NO溶出シース配置は安全だった;シースあるいはNO溶出に関連する合併症は観察されなかった。
2. 性能パラメーターは優れていた。
3. ベースラインの血管サイズは2つのグループで同様であった。
4. シースの配置後、NOシースのグループでは、遠位部において血管径が大きくなる傾向が観察された。
5. 冠動脈手術後の血管造影により、NOシースを配置した後は、コントロールシースと比較して、%DSで表現された血管狭窄が著しく少なく、そして遠位の血管径が広くなることを明らかにした。
6. シースを50%引き抜いた後(けいれんを誘発); NOシースの配置は、シースの配置位置から近位及び遠位の両側で、血管サイズを著しく高くした。
7. 最終の血管造影から、シースの配置位置、並びに基準位置から近位および遠位において、血管径が著しく大きいことがわかった。
8. 1週間目のFUPでは、NOシースの配置後、血管位置の近位で高くなる傾向が観察された。
9. 組織病理学的変化は、外膜に焦点を合わせられており、それは機械的な損傷(動脈の穿刺)と部分的に関連するかもしれない。
10. 急性実験においては、シース間に組織学的な相違は観察されなかった。
11. 1週間後では、NOシースの使用により、炎症および血栓形成が少なくなる傾向が観察された。
12. 急性実験と1週間の生存実験のいずれでも、血管壁の壊死は観察されなかった。
13. 巨大細胞との異物反応は、挿入されたシースのタイプとは無関係に、血管封止位置で記録された。
14. 組織形態計測により、最小の初期内膜増殖は、シース配置から1時間以内に開始することが明らかになった。急性実験では、初期の新生内膜増殖は、NO-シースのグループで少なかった。従って、狭窄面積のパーセントはNO-シースのグループで少なかった。新生内膜の量および狭窄面積パーセントが、臨床的に無視できることに注意されたい。
15. 1週間後には、恐らく動脈の穿刺位置の封止によって、両方のシースのグループで小さな新生内膜増殖が観察できる。細胞増殖は、NOシースのグループでより少なかった。
16. NO-シースのグループでは、少ない細胞増殖と、少々すくない管腔の血栓形成とによって、著しく大きい管腔面積と、少ない狭窄面積のパーセントとが測定された。
17. コントロールシースのグループにおいて、新生内膜の量および少し多めの狭窄面積%は、許容でき且つ臨床的に関連のない範囲で残っている。
18. 中膜の厚さに関するグループ間の差異は、急性のグループ、1週間のグループのいずれでも観察されなかった。
<参考文献>
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「亜硝酸塩(硝酸塩ではない)の水溶液中における酸化窒素の酸化:L-アルギニンから酵素で形成された酸化窒素との比較(Oxidation of nitric oxide in aqueous solution to nitrite but not nitrate: Comparison with enzymatically formed nitric oxide from L-arginine)」
Pharmacology, Vol. 90, pp. 8103-8107, 1999年9月
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「ジアゼニウムジオレートの化学 2、水溶液中における酸化窒素の解離の動力学とメカニズム(Chemistry of the Diazeniumdiolates. 2. Kinetics and Mechanism of Dissociation to Nitric Oxide in Aqueous Solution.)」、
J. Am. Chem. Soc. 2001年, 123, 5473-5481
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[4] Dennis K.Taylor、Ian Bytheway、Derek H、R. Barton、Craig A. Bayse、およびMichael B. Hall、
「生物システム中でのNOの発生に関して。N202の分類に関する理論的な研究。(Toward the Generation of NO in Biological Systems. Theoretical Studies of the N 2 0 2 Grouping.)」
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[5] Andrew S.Dutton、Jon M.FukutoおよびK.N.Houk、
「ジアルキルアミノジアゼニウムジオレートの分解によるNO形成のメカニズム: 密度汎関数理論およびCBS-QB3予測(The Mechanism of NO Formation from the Decomposition of Dialkylamino Diazeniumdiolates: Density Functional Theory and CBS-QB3 Predictions)」
Inorganic Chemistry, Vol. 43, No. 3, 2004年
[6] Katrina M. Miranda、Herbert T. NagasawaおよびJohn P Toscano、
「HNOの供与体(Donors of HNO)」
Current topics in Medicinal Chemistry 2005年, 5, 649-664
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[6] Katrina M. Miranda、Herbert T. NagasawaおよびJohn P Toscano、
「HNOの供与体(Donors of HNO)」
Current topics in Medicinal Chemistry 2005年, 5, 649-664
Claims (44)
- 血管内での使用に適し、少なくとも一部がポリマー混合物を含むコーティングシステムでコーティングされた基材を含む医療機器であって、
前記ポリマー混合物は、
a)少なくとも1つの反応性窒素化学種(RNS)の付加物であって、生理的条件下で前記反応性窒素化学種を放出することができる前記付加物と、
b)親水性ポリマー又は親水性ポリマーブレンドと、を含み、
前記反応性窒素化学種付加物と前記親水性ポリマー又はポリマーブレンドとは、均質相を形成していることを特徴とする医療機器。 - 前記親水性ポリマー又はポリマーブレンドは、親水性の支持ポリマー又はポリマーブレンドであることを特徴とする請求項1に記載の医療機器。
- 前記反応性窒素化学種付加物は、プロトン誘導性であることを特徴とする請求項1又は2に記載の医療機器。
- 少なくとも1つの前記反応性窒素化学種は、酸化窒素(NO)及びニトロキシル(HNO)から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の医療機器。
- 少なくとも1つの前記反応性窒素化学種付加物は、少なくとも1つの酸化窒素付加物であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の医療機器。
- 少なくとも1つの前記反応性窒素化学種付加物は、ニトログリセリン、ニトロプルシドナトリウム、S-ニトロソプロテイン、S-ニトロソチオール、長炭素鎖の脂肪親和性S-ニトロソチオール、ニトロソカルボニル、鉄ニトロシル化合物、チオ硝酸塩、チオ亜硝酸塩、シドノンイミン、フロキサン、有機硝酸塩およびニトロソエート化アミノ酸、ニトロソ-アセチルシステイン、S-ニトロソ-カプトプリル、S-ニトロソ-ホモシステイン、S-ニトロソ-システイン、S-ニトロソ-グルタチオンおよびS-ニトロソペニシラミン、S-ニトロシレート化シクロデキシリンなどのS-ニトロシレート化多糖類、ヒドロキシルアミン、シアナミド、アシルオキシニトロソ化合物、N-ヒドロキシスルフェンアミド、第1あるいは第2アミンから調製されたジアゼニウムジオレート(NONOエート)から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の医療機器。
- 少なくとも1つの前記RNS付加物は、NONOエートポリマーであることを特徴とする請求項6に記載の医療機器。
- 前記NONOエートポリマーの主鎖が、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオライド、ポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン、ポリアルキレンイミン、ポリエチレンイミン、ポリエーテル、ポリエステルなどの誘導体ポリオレフィン、ナイロンなどのポリアミド、ポリウレタン、ペプチド、蛋白質、オリゴヌクレオチド、抗体および核酸などの生体高分子、星形デンドリマーから成る群から選ばれることを特徴とする請求項7に記載の医療機器。
- NONOエート官能基(N2O2 -)を含む前記ポリマーは、線状ポリエチレンイミンジアゼニウムジオレート(LPEI-NONO)などのポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートであることを特徴とする請求項8に記載の医療機器。
- 前記RNS付加物は、約5kDa〜約200kDa、例えば約20kDa〜約100kDa、例えば約50kDa〜約60kDa、例えば約55kDaの分子量を有していることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記コーティングシステム中に含まれる前記RNS付加物の混合物は、重量%で約5%〜約80%、例えば10%〜50%、好ましくは約20%〜約50%、例えば約30%であることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記ポリマーブレンドは、支持ポリマーと親水性ポリマーとの混合物を含むことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記親水性ポリマー又はポリマーブレンドは、均質なポリマーブレンドとして使用される場合、pH7.4、温度37℃のリン酸緩衝生理食塩水中に挿入したときに、約0.01〜約80(nmol/分/cm2)/分の傾斜を有するRNS放出の最大増加率を提供することを特徴とする請求項12に記載の医療機器。
- 前記支持ポリマー及び/又はポリマーブレンド及び/又は前記コーティングシステムは、ポリマーコーティングの表面に加えられた約4〜100ニュートンcm-2の牽引力、例えば約8〜50ニュートンcm-2、好ましくは10〜20ニュートンcm-2の牽引力に耐えることを特徴とする請求項12又は13に記載の医療機器。
- 前記コーティングシステムで用いられる親水性ポリマーに対する支持ポリマーの比は、重量比で約95/5〜約35/65であることを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記コーティングシステムの厚さは、乾燥状態において、約1〜約100μm、例えば2〜約20μmであることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記コーティングシステムの塗布に先立って、基材は内部プライマー層によりコーティングされることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記内部プライマー層はポリウレタンプライマーであることを特徴とする請求項17に記載の医療機器。
- 前記プライマー層の厚さは、約0.2〜約5μmであることを特徴とする請求項17又は18に記載の医療機器。
- 前記コーティングシステムの内側又は外側のいずれかにある少なくとも1つの追加層を含み、
前記追加層は、前記医療機器の少なくとも一部が濡れたときにH+イオンとOH-イオンとの間の局所的なバランスを変えることにより、前記コーティングシステムのpHに影響を与えることができることを特徴とする請求項1乃至19のいずれか1項に記載の医療機器。 - 酸化窒素付加物の外側に位置する外側層を含むことを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記外側層は、内側層から生理的媒体中への前記反応性窒素化学種付加物の放出を制御又は防止することを特徴とする請求項21に記載の医療機器。
- 前記反応性窒素化学種付加物はポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートであることを特徴とする請求項22に記載の医療機器。
- 前記外側層は、前記コーティングシステム(内側層)から生理的媒体中への前記反応性窒素化学種の放出、及び/又は生理的条件下における前記生理的媒体から前記内側層中への水の拡散、及び/又は前記ポリマー混合物から前記生理的媒体への小分子の副生成物の漏れ、を制御することを特徴とする請求項21乃至23のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記外側層は親水性ポリマーを含むことを特徴とする請求項21乃至24のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記親水性ポリマーは生理的媒体中への挿入時に含水性ゲルを形成することを特徴とする請求項25に記載の医療機器。
- 前記外側層は親水性ポリウレタンを含むことを特徴とする請求項21乃至26のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記外側層の厚さは、乾燥状態において、約0.3〜約5μmであることを特徴とする請求項21乃至27のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記医療機器の外側表面からの、酸化窒素及び/又はニトロキシルなどの前記反応性窒素化学種の放出は、約0.5〜約80 nmol/分/cm2であることを特徴とする請求項1乃至28のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記医療機器の外側表面からの、酸化窒素及び/又はニトロキシルなどの前記反応性窒素化学種の放出は、生理的媒体中における少なくとも30分、例えば少なくとも1時間の半減期を持っていることを特徴とする請求項1乃至29のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記医療機器の外側表面からの、酸化窒素などの反応性酸素化学種の放出は、生理的媒体中において6時間以下、例えば4時間以下、例えば3時間以下の半減期を持っていることを特徴とする請求項1乃至30のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記医療機器が、神経ガイドカテーテル、神経マイクロカテーテル、神経マイクロワイヤ、神経ステント送達システム、ニューロンバルーンなどの神経用医療機器、冠動脈ワイヤ、冠動脈ガイドカテーテル、PTCA血管形成術用バルーンなどの冠動脈用医療機器、ステント送達システム、冠動脈ワイヤ、冠動脈ガイドカテーテル、PTA血管形成術用バルーン、及びステント送達システム、挿入シース、拡張器、ガイドワイヤ、及び注射針、末梢用ワイヤ、ガイドカテーテル、末梢用バルーンなどの末梢用医療機器、ステント送達システム、末梢用ワイヤ、末梢用ガイドカテーテル、及びステント送達システム、挿入シース、拡張器、ガイドワイヤ、及び注射針からなる群から選ばれることを特徴とする請求項1乃至31のいずれか1項に記載の医療機器。
- 基材が、ステンレス鋼、チタン、金、プラチナなどの金属、PVC、PA、PS、エポキシ樹脂、シリコーンゴム、天然ゴム、ポリウレタン、PE、PP、ポリエステル、ナイロン、ポリエステル、PET、PMMA、ポリスルホン、ポリホスファゼン、熱可塑性エラストマー、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのプラスチックから成る群から選ばれた1つ以上の化合物から成るか又は含むことを特徴とする請求項1乃至32のいずれか1項に記載の医療機器。
- 前記医療機器の表面上における、例えばポリエチレンイミンジアゼニウムジオレートのような酸化窒素付加物及び/又はニトロキシル付加物などの前記反応性窒素化学種付加物の濃度は、約0.05〜約l00mg/cm2、例えば約0.1〜約10mg/cm2、好ましくは約0.2〜約0.5mg/cm2であることを特徴とする請求項1乃至33のいずれか1項に記載の医療機器。
- 親水性ポリマー及び/又はポリマーブレンド及び/又は前記コーティングシステムは、ポリマーコーティングの表面に加えられた約4〜100ニュートンcm-2の牽引力、例えば約8〜50ニュートンcm-2、好ましくは10〜20ニュートンcm-2の牽引力に耐えることを特徴とする請求項1乃至34のいずれか1項に記載の医療機器。
- 血管内での使用に適しているコーティングされた医療機器の製造方法であって、
a.血管手術での使用に適している医療機器を選択する工程であって、
前記医療機器は基材を含んでいる選択工程と、
b.ポリマー混合物を含むコーティングシステムを医療機器の外部基材層に塗布する工程であって、
前記ポリマー混合物は、請求項1乃至35のいずれか1項に記載の少なくとも1つの反応性窒素化学種付加物と、請求項1乃至35のいずれか1項に記載の親水性ポリマー又はポリマーブレンドとを含み、
反応性窒素付加物と支持ポリマー又はポリマーブレンドとは均質相を形成している、塗布工程と、
を含むことを特徴とする製造方法。 - 前記コーティングシステムは、スプレーコーティング、浸漬法、塗装法又は押出し法によって塗布されていることを特徴とする請求項36に記載の方法。
- 前記コーティングシステムの塗布に先立って、前記基材は、請求項17乃至19のいずれか1項に記載されたプライマーなどのプライマー層によって少なくとも一部をコーティングされることを特徴とする請求項36又は37に記載の方法。
- 前記コーティングシステムなどのコーティングシステム層の内部に(前に)又は外部に(後に)塗布される少なくとも1つの追加層の塗布工程を含み、
前記追加層は、少なくとも前記医療機器の一部が濡れたときにH+イオンとOH-イオンとの間の局所的なバランスを変えることにより、反応性窒素付加物又はコーティングシステムのpHに影響を与えることができることを特徴とする請求項36乃至38のいずれか1項に記載の方法。 - 前記コーティングシステム及びいずれかの追加層の塗布の後に、前記コーティングシステムの表面の少なくとも一部は、請求項21乃至28のいずれか1項に記載された外側層でコーティングされることを特徴とする請求項36乃至39のいずれか1項に記載の方法。
- 血管内又は神経血管の手術を行う方法であって、
患者の血管系又は神経血管系に、請求項1乃至35のいずれか1項に記載されている医療機器、又は請求項36乃至40のいずれか1項に記載された方法で準備された医療機器を挿入することを含むことを特徴とする方法。 - 血管内での使用に適した医療機器を製造するための、請求項1乃至35のいずれか1項で規定されたコーティングシステムの使用であって、
当該使用が、血管けいれん又は血管収縮、脳血管けいれんの防止、平滑筋の弛緩、血管拡張、血栓、血小板堆積物又は凝集の減少、再狭窄の軽減、血圧の上昇、酸素フリーラジカル再かん流傷害、心疾患の治療、前記医療機器の使用に関連した悪影響の防止、異常細胞増殖の防止から選ばれた1つ以上の状態を防止するためであることを特徴とする、コーティングシステムの使用。 - 血管内又は神経血管の手術用の医療機器をコーティングするための、請求項1乃至42に記載されたコーティングシステムの使用。
- 血管内又は神経血管の手術用の医療機器を製造するためのコーティングシステムの使用であって、
当該使用が、前記医療機器の使用に関連した血管けいれんを制御するためであることを特徴とする請求項1乃至43に記載されたコーティングシステムの使用。
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