JP2010508027A - レジスチンアンタゴニストおよびそれらの使用 - Google Patents

レジスチンアンタゴニストおよびそれらの使用 Download PDF

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Abstract

定めたエピトープに反応性の抗体を含め、レジスチン アンタゴニストが開示される。ヒト レジスチンに対する抗体を生じるために有用な抗原も開示される。間質性肺疾患、過形成性瘢痕、ケロイド性瘢痕および強皮症を含む異常な繊維芽細胞活性がある疾患の症状を処置または緩和するためのレジスチン アンタゴニストの利用法も開示される。変形性関節症の危険性および/または進行を診断するためのバイオマーカーとしてのレジスチンの利用法も開示される。さらに開示されるのは、変形性関節症の症状を処置または緩和するためのアンタゴニストの利用法である。
【選択図】図1

Description

発明の分野
本発明は、抗体のようなレジスチンアンタゴニストおよび変形性関節症および線維性の病状がある疾患の処置におけるそれらの使用に関する。また本発明は抗−レジスチン抗体を生成するための有用な抗原に関する。
発明の背景
レジスチンは、保存されたC−末端Cys−リッチドメインを含むFIZZ(炎症性ゾーンに見いだされる:Found in Inflammatory Zone、RELMとしても知られている)タンパク質ファミリーに属する分泌型因子である(非特許文献1)。これは元々、マウスにおいて肥満とインスリン耐性との間の関連を与える脂肪細胞に誘導されるポリペプチドとして記載された(非特許文献2)。その一方でヒトのレジスチンは有力な前炎症性因子として認識されているマクロファージ/単球由来因子である。ヒトのレジスチンは免疫起源の種々の細胞からサイトカインの放出を誘導し、接着分子の発現をアップレギュレートし、そして内皮細胞における新脈管形成を促進する(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。レジスチンの効果はNF−κb経路を介して媒介されるらしい(上記非特許文献6)。
レジスチン受容体は同定されていないので、これによりレジスチンの生物学の理解が限られる。最近、マウスのレジスチンの三次元構造が解明された(非特許文献7)。マウスのレジスチンは、ジスルフィド結合で連結された六量体構造に凝集できる非共有三量体オリゴマーを形成する。ヒトのレジスチンに関する構造的情報はない。
間質性肺疾患(ILD)は類似する臨床的、放射線医学的および生理学的特徴を持つ100を越える疾患の総称である。元になる原因は全身的病気または職業的被爆(exposure)による可能性がある。しかし幾つかのILDは元になる病因が不明であった。このような線維性肺疾患は、処置が難しく、診断には生検が必要となる。
最もよくある線維性肺疾患は、発症率が100,000あたり3から29の間のUIPである(通常の間質性肺炎)(非特許文献8)。UIPは2〜3カ月から数年にかけてじわじわと発症し、そして臨床的症状の前に放射線医学的変化が現れることが多い。UIPの特徴的な組織学的知見には、斑状の異質な肺線維症の存在があり、これは疾患が進行するにつれ肺胞の虚脱、細気管支拡張および蜂巣化(honeycombing)をもたらす。非特異的な間質肺炎(NSIP)は、UIPに類似の臨床的症状を提示する。しかし特定の組織学的知見が類似しても、この患者群には線維症が少ない傾向がある(非特許文献9)。さらにNSIP患者はコルチコステロイドにより応答性であり、そして1つの実験では、NSIP患者の予後がかなり改善された(非特許文献10)。
線維性肺疾患から得られた繊維芽細胞には、肺腫瘍切除の正常辺縁(normal margins)から単離されたサンプルのような線維症に関連しない肺疾患から得られた細胞に比べて差異があることが文献で報告された。UIP患者からの組織切片は、上昇したレベルのCXCL8(インターロイキン8すなわちIL8としても知られている)、脈管形成ケモカイン、および低下したレベルの血管新生抑制ケモカインCXCL10(10kDaのIFN誘導性タンパク質、IP10)を発現し、これによりUIP患者の肺での全体的な脈管新生における不均衡が示唆される(非特許文献11)。さらにこれら患者からの繊維芽細胞はまた、上昇したCXCL8も発現し、繊維芽細胞が脈管形成の不均衡を
引き起こす主要なエフェクター細胞であることを示唆した(上記非特許文献11)。さらに最近では、UIP患者からの繊維芽細胞が上昇したレベルのCCL7(単球走化性タンパク質3、MCP3)を発現し、そして分泌することが示された(非特許文献12)。非繊維性組織、UIPおよび強皮症が誘導する肺線維症に由来する繊維芽細胞中でのTGFβ1−誘導型の遺伝子発現を比較する実験も、細胞が単離された環境に依存して異なる表現型および繊維芽細胞の応答を示した(非特許文献13)。
現在、齧歯類では4種の、そしてヒトでは2種のFIZZファミリーのメンバーが同定された。それらの中でFIZZ1(RELMα)がマウスでの肺線維症の発症に関連付けられている。FIZZ1はマウスのアレルギー性肺のモデルにおいて洗浄液中に見いだされた(非特許文献14)。さらにFIZZ1遺伝子のアップレギュレーションがブレオマイシンが誘導する線維性マウスに由来する肺で見いだされた(非特許文献15)。FIZZ1のマウスへの静脈内注射は、肺中のCD68−陽性マクロファージの顕著な増加を示した(非特許文献16)。インビトロ実験では、FIZZ1がマイトジェン特性を有し、そして平滑筋細胞増殖の刺激、および肺の繊維芽細胞のアクチンおよびコラーゲン沈着の誘導を介して線維症を媒介できることが示された(非特許文献17)。FIZZ1の気管内点滴注入がVEGF生産に有意な上昇をもたらすことは、肺の新脈管形成におけるFIZZ1の役割を示唆している(非特許文献18)。FIZZ1のオルソログがヒトゲノム中で同定されたことはない。興味深いことに、ヒトのレジスチン(FIZZ3)はマウスFIZZ1に対して、より大きな発現パターンの類似性を示しており、ということはマウスのレジスチンとの有力な機能的類似性を示唆している。しかしヒトのレジスチンと肺線維症との間の関係は相変わらずほとんど調査されていない。
このように上の観点では、ヒトのレジスチンに関する構造的情報、および肺線維症およびそれに関連する症状を処置するために、レジスチンアンタゴニストのような治療薬の必要性が存在する。
変形性関節症(OA)は慢性かつ進行性の関節疾患であり、主に膝、腰、脊椎および手に影響を及ぼす。これは高齢者での筋骨格障害の最も多い原因であり、65歳以上の人では10〜30%の有病率である(非特許文献19)。特に高齢の集団では、OAが障害の実質的な負荷および経費の原因となり得る(非特許文献20)。集団におけるその頻度にもかかわらず、OAはそれに対する治療的選択肢がほとんど無く、十分に解明されない状態のままである(非特許文献21)。
OAの危険因子には家族歴、年齢、肥満および関節の外傷がある。OAの主要な病理学的特徴は関節軟骨の損失であり、関節軟骨は関節中に低摩擦の摩損抵抗支持面を提供し、そして応力を下の骨に分配する組織である。これはまた、骨増殖体の形成および同時に生じる滑膜および肋軟骨下の骨代謝の変化を含む関節の他の成分が関与する。これらの病理学的変化は、痛み、硬直および機能の喪失を随伴する。分子レベルで、OAは軟骨細胞外マトリックス(ECM)の破壊を生じる軟骨細胞の同化と異化との間の不均衡により特徴付けられる。したがって、軟骨の変性を遮断し、そしてECM分解を抑制する新規治療薬が有用であろう。
最近の証拠では、炎症がOAにおける疾患の進行および疼痛に影響を及ぼすこ可能性があることが示唆されている。炎症の程度の変動が、OAでの関節検査法または滑膜生検体で観察される。滑膜組織の代謝における変動が有意な比率のOA患者で存在することを示す証拠が増えてきている(非特許文献22)。加えて、滑膜炎の重篤度と関節破壊の進行との間の相関が見いだされた(非特許文献23)。血清ヒアルロナン(HA)、III型プロコラーゲンのN−プロペプチド、YKL40およびグルコシル−ガラクトシル−ピリジノリン(Glc−Gal−PYD)を含む幾つかのマーカーが滑膜炎を評価するために
使用された(非特許文献24)。C−反応性タンパク質(CRP)の全身レベルは、膝のOAおよび急速に進行する腰のOAの結果を予測するために追加の値を提供した(非特許文献25)。
レジスチンは慢性関節リウマチ(RA)患者の炎症した関節に局所的に蓄積し、しかもそのレベルは関節内白血球細胞カウントおよびIL−6レベルにより定められるような炎症の強さと相関することが示された。レジスチンを健康なマウスの関節に注射すると関節炎を誘導することができる。レジスチンの効果はNF−κb経路を介して媒介されるようである(非特許文献26)。
最近、レジスチンはOAおよびRAの両方の滑液サンプル中に存在することが分かった。RAにおける濃度はOAよりも10倍高くなると観察された。OAおよびRAの両方の患者で、陽性の相関がレジスチンレベルと赤血球沈降速度およびC−反応性タンパク質のレベルのような全身性炎症マーカーとの間で見いだされた(非特許文献27)。しかしレジスチンとOAとの間の関係はほとんど解明されないままである。このようにレジスチンがOAの生物学的マーカーとして役立つかどうかを定め、そしてレジスチンアンタゴニストをOAおよびそれに関連する症状の診断または処置に使用する必要性がある。
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発明の要約
本発明の1つの観点は、レジスチンのアンタゴニストである。1つの態様では、レジスチン アンタゴニストはレジスチンに反応性の単離された抗体であり、そしてレジスチンの生物学的活性の少なくとも1つを中和する。
本発明の別の観点は、ヒト レジスチンの残基50〜65(配列番号3)に位置するエピトープと反応性の単離された抗体である。
本発明の別の観点は、ヒト レジスチンの残基78〜93(配列番号4)に位置するエピトープと反応性の単離された抗体である。
本発明の別の観点は、ペプチドESQSVTSRGDLATSPR(配列番号5)を含んでなる単離されたポリペプチドである。
本発明の別の観点は、ペプチドSGSWDVRAETTSHSQS(配列番号6)を含んでなる単離されたポリペプチドである。
本発明の別の観点は、配列番号5のアミノ酸配列をコードする単離された核酸である。
本発明の別の観点は、配列番号6のアミノ酸配列をコードする単離された核酸である。
本発明の別の観点は、レジスチンのレベルまたは効果を下げることによる哺乳動物個体
における線維症の処置法または線維症の症状の緩和法である。
本発明の別の観点は、レジスチンをOAのような障害の新規バイオマーカーとして使用することにより、哺乳動物個体のOAの危険性または進行を決定する診断方法である。1つの態様では、この診断法は哺乳動物個体の生物学的サンプル中のレジスチンタンパク質のレベルを測定し、そして測定したレジスチンレベルを健康な集団における生物学的サンプル中のレジスチンレベルの標準と比較することによりOAの危険性または進行を決定することを含んでなる。標準に比べて上昇したレジスチンレベルは、OAの危険性が上昇する予測となる。
本発明の別の観点は、レジスチンのアンタゴニストである。1つの態様では、レジスチン アンタゴニストはレジスチンと反応性の単離された抗体であり、そしてレジスチンの生物活性の少なくとも1つを中和する。
本発明の別の観点は、レジスチンのレベルまたは効果を下げることにより哺乳動物個体のOAを処置する方法、またはOAの症状を緩和する方法である。1つの態様では、この方法は哺乳動物個体に治療に有効な量の本発明のレジスチン アンタゴニストを投与することを含んでなる。別の態様では、この方法は哺乳動物個体に治療に有効な量の本発明のレジスチン抗体を投与することを含んでなる。
UIP、NSIPおよび非線維性患者からの肺生検体中のレジスチンレベルを表す。 図2A、BおよびCは線維性肺および非線維性肺に由来する繊維芽細胞中の、および線維性肺生検体から単離した初代肺繊維芽細胞を組換えレジスチンで処理した後のプロコラーゲンIおよびα−平滑筋アクチン(αSMA)の遺伝子発現の誘導に及ぼすレジスチンの効果を表す。 図3A、Bは初代肺繊維芽細胞中の前−線維性増殖因子および増殖因子受容体の遺伝子発現に及ぼすレジスチンの効果を表す。 図4AおよびBは肺繊維芽細胞中の数種の細胞外マトリックス関連遺伝子(4A)およびIL−6遺伝子(4B)の発現レベルの誘導を表す。 図5A、BおよびCはヒト肺の初代繊維芽細胞を組換えレジスチンで処理した後、前−炎症性サイトカインIL−6(5A)、IL−8(5B)およびMCP−1(5C)の放出の増加を表す。 ヒト初代単球からレジスチンの分泌を表す。非接着または接着単球を処理しないか、または前−線維性モジュレーターで刺激し、はp−値<0.05を示す。 ヒトおよびマウスレジスチンのアミノ酸配列アライメントを表す。 ポリクローナル抗体C2815およびC2816の完全長ヒトレジスチンへの結合を表す。 図9AおよびBは、単離されたヒト初代血液単核細胞(PBMC)からのヒトレジスチンが媒介するMCP−1の放出に及ぼすポリクローナル抗体C2815およびC2816の効果を表す。 図10AおよびBは、単離されたPBMCからのマウスレジスチンが媒介するMCP−1の放出に及ぼすC2815およびC2816ポリクローナル抗体の効果を表す。 外傷後損傷またはOA診断(n=263)から異なる時点で採取したOA患者からの滑液(図11A)および血清(図11B)サンプル中のレジスチンレベルを表す。最初の部分の時間範囲では負の傾斜の直線で区分的な線形モデルが合い、そして水平線が残りのデータに合う。 ヒトPBMC(左パネル)および単球(右パネル)を組換えヒトレジスチンで48時間処理した後、レジスチンが刺激するIL−6、IL−8およびMCP−1の放出を表す。 マウスの関節軟骨(n=4)を、レジスチン処理したPBMC(上)または単球(下)からコンディショニングした培地中で培養した後、プロテオグリカンの放出における上昇を示す;はp−値<0.05を示す。 マウス関節軟骨(n=4)をヒト組換えレジスチンで3日間処理した後のプロテオグリカンの放出における上昇を示す;はp−値<0.05を示す。 マウスの関節エクスプラント(n=4)を組換えヒトレジスチンで処理した後のIL−6、MCP−1、KCおよびPGE2のレジスチンが刺激する分泌を表す;はp−値<0.05を示す。
発明の詳細な説明
限定するわけではないが特許および特許出願を含め、本明細書で引用されているすべての刊行物は、引用することにより完全に記載されているかのように本明細書の内容となる。
本発明は、ILD、強皮症、過形成性瘢痕のような線維性の病状に関連する疾患、ならびに喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような肺での重要な再造形が関連する疾患を処置するために、レジスチンアンタゴニストの新規な治療用標的として1種のサイトカインであるレジスチンの役割に関する。
本発明では、レジスチンタンパク質が線維性の肺に見いだされることが示された。抗−レジスチンモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学では、レジスチンが線維性および再造形プロセスに関与する単球/マクロファージ細胞で発現されることを示す。レジスチンの分泌は前−線維性モジュレーターにより誘導され、これはレジスチンの上昇した局所的レベルが線維性の肺に存在する可能性を示唆している。レジスチンは、肺線維症の病因の一因となる2つのプロセスである細胞外マトリックス(ECM)の蓄積および筋繊維芽細胞の分化に関連する遺伝子を誘導することにより初代肺繊維芽細胞に直接影響を及ぼす。またレジスチンは肺繊維芽細胞中で前−線維性増殖因子およびそれらの受容体の発現を誘導する。さらにレジスチンは前−炎症性サイトカインの放出を増加させることにより肺繊維芽細胞での炎症応答を刺激する。レジスチンは非線維性の繊維芽細胞よりも線維性細胞に影響を及ぼし、これはレジスチンのシグナリングが病んだ繊維芽細胞でアップレギュレートされることを示唆している。最後に本発明では、レジスチンの発現および分泌が前−線維性モジュレーターにより誘導されることが示される。合わせて考えると、これらのデータはレジスチンが繊維芽細胞の活性化および肺の炎症の一因となることにより線維症を悪化させることができることを示唆している。したがってレジスチンの阻害は異常な繊維芽細胞機能に関連する疾患の処置に有益となる。
さらに本発明は、マウスのタンパク質の結晶構造に基づいたヒトレジスチンの三次元構造のモデルを記載する。このモデルは、C1q/TNFスーパーファミリーに対する構造的類似に基づき、有力な受容体結合部位を予想するために使用される。2つのポリクローナル抗体が予想される受容体結合部位に広がるペプチドに対して生じ、そして抗体の中和活性がインビトロの機能的アッセイで確認された。データは同定されたエピトープがレジスチンの機能に重要であり、そしてレジスチンを中和する治療薬の生成に使用できることを示唆している。
本発明の一態様では、中和する抗−レジスチン抗体の生成を計画する免疫感作および/またはファージディスプレイの抗原として使用するために、エピトープペプチドがキャリアータンパク質に結合されるか、またはより大きなタンパク質スカホールドに融合される。開示される機能的エピトープは抗体のパネルをスクリーニングして中和活性を含むものを同定するために使用できる。
また本発明は、OAを処置するために、およびOA用のバイオマーカーとしてレジスチンアンタゴニストの新規治療用標的として、アディポカインの一種であるレジスチンの役割に関する。本発明では、レジスチンタンパク質が外傷後損傷OA患者の滑液および血清中に検出されることが示された。この考察は、外傷後損傷OA患者の滑液および血清サンプル中のタンパク質検出および種々のタンパク質レベルのデータ分析から生まれた。このデータの本質的成分分析で、可変体(variable)としてのレジスチンが、血清および滑液サンプルの両方でTNF−αおよびIL−6のような他の前炎症性サイトカインと調和して変化することが見いだされた。この知見はレジスチンがOAの病理学的プロセスで前炎症的な役割を果たすようであり、そしてマトリックス分子フラグメントの放出、ならびに炎症成分を含む他の様々な障害に関連することを示唆している。さらにIL−1、TNF−αおよびIL−6を含む種々のサイトカインの全身的レベルは、前炎症性サイトカインの全身的レベルと関節破壊の進行との間の関連および相関に基づき、膝のOAの結果を予測するために有用となり得ることが期待される。
さらに本発明ではレジスチンタンパク質が外傷性損傷およびOA患者の滑液および血清サンプルの対で存在することが示される。レジスチンレベルは損傷直後の患者および初期のOAでより高く、そして時間が経つと下降した。またレジスチンタンパク質は、滑膜および変性軟骨細胞のサブセットでマクロファージ様の細胞中に発現された。このように関節内レジスチンは関節に存在する細胞から生産されることができ、そして局所的なレジスチン濃度はレジスチンの循環レベルとは全く異なる可能性がある。さらに組換えレジスチンは免疫細胞で前炎症的応答を引き起こし、これは次いで軟骨の変性プロセスを誘導した。さらに軟骨エクスプラントの組換えヒトレジスチンを用いた直接的処置は、上昇したECM分解、プロスタグランジンE(2)レベルの誘導、および前炎症性サイトカイン/ケモカイン分泌の刺激を生じた。合わせると、これらのデータはレジスチンがOAで軟骨変性の一因となる関節における有力な前炎症性因子であることを示唆している。
OAの危険性または進行を評価するための診断法
本発明は、哺乳動物個体、好ましくはヒトのレジスチンレベルを評価することによりOAの危険性または進行を評価するための新規方法を提供する。本発明の1つの態様は、哺乳動物個体に由来する生物学的サンプル中のレジスチンレベルを測定することを含んでなるOAの危険性を診断する方法である。
本明細書で使用する用語「生物学的サンプル」には、ヒト患者に由来する任意のサンプル、例えば滑液のような体液を含む。生物学的サンプルの別の例には血液、血清、血漿および他の流体または組織を含む。レジスチンタンパク質の濃度測定は、タンパク質を検出するための適切なレジスチン抗体を使用することができる。そのような抗体は現在、当該
技術分野で実在し、つまり現在工業的に使用することができ、あるいは免疫学の分野で現在、通常の技術により開発することができる。例えばリンコのヒトアディポカインキット(リンコ リサーチ:LINCO Research、セントチャールズ、ミズーリ州)を使用して血清および滑液中のレジスチンレベルを測定することができる。
レジスチンの測定は、OAの新規バイオマーカーとして役立つ。本発明の方法に従い、OAの危険性または進行を決定するために、哺乳動物個体の生物学的サンプル中のレジスチンタンパク質のレベルが測定され、そして集団中のレジスチンレベルの参照標準に対して比較される。標準に対して上昇したレジスチンレベルは、OAの危険性が上昇したことを予測する。参照標準は、正常集団に由来する生物学的サンプルのレジスチンレベルを測定することにより確立される。好ましくは標準は標準化におけるいかなる誤差も回避するために、個体のレジスチンレベルの測定に使用されるものと同じアッセイ技術を使用することにより提供される。
本発明の別の態様は、1もしくは複数の他のOAバイオマーカーを測定することと組み合わせて、哺乳動物個体に由来する生物学的サンプル中のレジスチンレベルを測定することを含んでなるOAの危険性を診断する方法である。そのような追加のバイオマーカーには、限定するわけではないが炎症のマーカーである高感度C−反応性タンパク質を含む。レジスチンレベルと、既知のOAバイオマーカーがOAの危険性を示すレベルとの間の相関で、OAの危険性または進行がさらに検証される。これによりレジスチンの測定は、既知のバイオマーカーによるアッセイが提供するOAの指標を確認するために役立つことができ、すなわちOA患者集団のさらなる層化に役立ち得る。あるいはレジスチンの測定は、既知のバイオマーカーよりも正確にOAの危険性を診断するために役立つことができ、すなわちOA患者集団のさらなる層化に役立ち得る。
本発明の別の態様は、所定の期間にわたりレジスチンレベルを繰り返し測定することを含んでなるOAの進行をモニタリングする方法である。この方法はOAの特定の治療計画の成功の程度を測定するために有用となる可能性を持ち、そして治療の変更が必要な状況を示すことができる。
抗体ポリペプチドおよび組成物
本発明はレジスチンに対するアンタゴニストを提供する。1つの態様では、レジスチンアンタゴニストは、レジスチンに結合する特性を有し、そして少なくとも1つのレジスチンの生物学的活性を中和する抗体である。
用語「アンタゴニスト」は最も広い意味で使用し、そして直接的もしくは間接的に、部分的もしくは完全にレジスチンの1もしくは複数の生物学的活性と対抗、減少もしくは抑制することができる分子を含む。
用語「抗体」は最も広い意味で使用し、そしてポリクローナル抗体、マウス、ヒト、ヒト化およびキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、および抗体フラグメントを含む免疫グロブリンまたは抗体分子を含む。
一般に抗体は、特異的抗原に対する結合特異性を現すタンパク質もしくはポリペプチドである。無傷(intact)な抗体は、2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖からなるヘテロ四量体の糖タンパク質である。典型的には各軽鎖が1つの共有ジスルフィド結合により重鎖に連結され、一方、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間のジスルフィド結合の数は変動する。各重鎖および軽鎖は規則正しく間隔を空けた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は1端に可変ドメイン(V)、続いて幾つかの定常ドメインを有する。各軽鎖は1端に可変ドメイン(V)およびもう1端に定常ドメインを有し;軽鎖
の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインに並び、そして軽鎖可変ドメインは重鎖の可変ドメインに並ぶ。脊椎動物種の抗体軽鎖は、2つの明らかに異なる型、すなわちカッパ(κ)およびラムダ(λ)の1つに、それら定常ドメインのアミノ酸配列に基づき割り当てることができる。免疫グロブリンは重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に依存して5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに割り当てることができる。さらにIgAおよびIgGはアイソタイプIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4に再分類される(sub−classified)。
用語「抗体フラグメント」は、無傷な抗体の一部、一般に無傷な抗体の抗原結合または可変領域を意味する。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvフラグメント、単鎖抗体分子がある。
「CDR」は免疫グロブリン重鎖および軽鎖の超可変領域である抗体の相補性決定領域のアミノ酸配列と定められる。例えばKabat et al.,目的の免疫グロブリンのタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)、第4版、米国保健社会福祉省の国立衛生研究所(1987)を参照にされたい。免疫グロブリンの可変部分には3つの重鎖および3つの軽鎖CDRまたはCDR領域がある。すなわち本明細書で使用する「CDR」は、3つすべての重鎖CDRまたは3つすべての軽鎖CDRまたは適切な場合にはすべての重鎖およびすべての軽鎖CDRの両方を指す。
CDRは抗体が抗原もしくはエピトープへ結合するための接触残基のほとんどを提供する。本発明における目的のCDRは、供与体抗体の可変重鎖および軽鎖配列に由来し、そして自然に存在するCDRの類似体を含み、この類似体もそれらが由来する供与体抗体と同じ抗原結合特異性および/または中和能力を共有または保持する。
本明細書で使用する用語「モノクローナル抗体」(mAb)は、実質的に相同的な抗体の集団から得た抗体(または抗体フラグメント)を意味する。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、典型的な例には一つの抗原性決定基に対して向けられている。修飾語の「モノクローナル」とは、実質的に相同的な抗体の特性を示し、そして特定の方法による抗体の生産を必要としない。例えばマウスmAbはKohler et al.,Nature 256:495−497(1975)のハイブリドーマ法により作成することができる。供与体抗体(典型的にはマウス)に由来の軽鎖および重鎖可変領域を、受容体抗体(典型的にはヒトのような別の哺乳動物種)に由来する軽鎖および重鎖定常領域と一緒に含有するキメラmAbは、米国特許第4,816,567号明細書に開示されている方法により調製することができる。非ヒト供与体の免疫グロブリン(典型的にはマウス)に由来するCDRを有し、そして残る免疫グロブリンに由来する分子の部分は1もしくは複数のヒト免疫グロブリンに由来し、場合により結合親和性を保存するために改変されたフレイムワーク支持残基を有するヒト化mAbは、Queen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),86:10029−10032(1989)およびHodgson et al.,Bio/Technology,9:421(1991)に開示されている技術により得ることができる。ヒト化に有用な例示的なヒトのフレイムワーク配列は、例えば、www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi;www.ncbi.nih.gov/igblast;www.atcc.org/phage/hdb.html;www.mrc-cpe.cam.ac.uk/ALIGNMENTS.php;
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www.biodesign.com;www.cancerresearchuk.org;www.biotech.ufl.edu;www.isac-
net.org;baserv.uci.kun.nl/~jraats/links1.html;www.recab.uni-
hd.de/immuno.bme.nwu.edu;www.mrc-cpe.cam.ac.uk;
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www.nimr.mrc.ac.uk/CC/ccaewg/ccaewg.html;
www.path.cam.ac.uk/~mrc7/humanisation/TAHHP.html;
www.ibt.unam.mx/vir/structure/stat_aim.html;
www.biosci.missouri.edu/smithgp/index.html;www.jerini.de;imgt.cines.fr;およびKabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Dept.Health(1987)に開示され、それぞれ引用により全部、本明細書に編入する。
いかなる非ヒト配列も欠いている完全にヒトのmAbは、例えばLonberg et
al.,Nature 368:856−859(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14:845−851(1996)およびMendez et al.,Nature Genetics 15:146−156(1997)に引用されている技術によりヒト免疫グロブリンのトランスジェニックマウスから調製することができる。またヒトmAbは例えばKnappik et al.,J.Mol.Biol.296:57−86(2000)およびKrebs
et al.,J.Immunol.Meth.254:67−84(2001)に引用されている技術によりファージディスプレイライブラリーから調製し、そして至適化することができる。
本発明はヒトレジスチンに結合し、そしてNF−κb媒介型シグナリングをモジュレートすることができるレジスチンアンタゴニストに関する。また本発明はヒトレジスチンに結合し、そして限定するわけではないが変形性関節症、異常な繊維芽細胞の活性化、前−線維性遺伝子発現の誘導および炎症応答の刺激を含むレジスチン媒介型活性をモジュレートすることができるレジスチンアンタゴニストに関する。そのようなアンタゴニストには、レジスチンに結合し、そしてレジスチンのシグナリングをモジュレートする特性を有する抗−レジスチン抗体を含む。本発明の1つの観点は、限定するわけではないがMCP−1、IL−8およびIL−6を含む他の炎症性サイトカインのレジスチンが媒介する放出を抑制するヒトレジスチンと反応性の抗体である。これらの抗体は研究用試薬、診断試薬および治療薬として有用である。特に本発明の抗体は変形性関節症、線維症を処置し、または線維症の症状を緩和するための治療薬として有用である。
例となる抗体はIgG、IgD、IgGAまたはIgMアイソタイプの抗体であることができる。さらにそのような抗体は糖化、異性化、アグリコン化(aglycosylation)のようなプロセスにより、あるいはポリエチレングリコール部分の付加(ペギ化:pegylation)および脂質化のような自然には存在しない共有修飾により翻訳後修飾され得る。そのような修飾は、インビボまたはインビトロで生じることができる。完全にヒト、ヒト化された、および親和性が成熟した抗体分子もしくは抗体フラグメントはミメティボディ、融合タンパク質およびキメラタンパク質として本発明の範囲の中にある。
本発明の抗体は1または両方のヒトレジスチンエピトープ50ECQSVTSRGDL
ATCPR65(配列番号3)または78CGSWDVRAETTCHCQC93(配列番号4)に結合することができる。これらのレジスチンエピトープは、ヒトレジスチンに対するモノクローナル抗体を生産し、そしてスクリーニングする抗原として使用するために単離し、そして修飾することができる。例えばエピトープ配列は修飾してシステイン残基を除去してジスルフィド結合を防ぐことができる。これらの残基はセリンに置換することができる。例示的な修飾化レジスチンエピトープは、アミノ酸配列ESQSVTSRGDLATSPR(配列番号5)およびSGSWDVRAETTCHSQS(配列番号6)を有する単離されたポリペプチドを含んでなる。これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも本発明に含まれる。
本発明の抗体はヒトレジスチンに約10−7、10−8、10−9、10−10、10−11または10−12M以下のKで結合することができる。ヒトレジスチンに対する上記抗体の親和性は、任意の適切な方法を使用して実験的に決定することができる。そのような方法は、当業者に知られているBiacoreまたはKinExA装置、ELISAまたは競合的結合アッセイを利用することができる。望ましい親和性でヒトレジスチンに結合する抗体分子は、抗体親和性の成熟化および他の適切な当該技術分野で認識されている技術を含む技術により、バリアントまたはフラグメントのライブラリーから選択することができる。
本発明の別の観点は、少なくとも1つのレジスチン抗体および当該技術分野で既知の製薬学的に許容され得る担体または希釈剤を含んでなる製薬学的組成物である。担体または希釈剤は溶液、懸濁液、乳液、コロイドもしくは粉末であることができる。
本発明のレジスチン抗体は治療に有効な量で製薬学的組成物として配合される。用語「有効な量」とは、一般に効果的な治療、すなわち処置が求められた症状もしくは障害の部分的または完全な緩和に必要な抗体の量を指す。効果的な治療の定義には、上記症状もしくは障害の発症の見込みを下げることを意図する予防的処理も含まれる。
核酸、ベクターおよび細胞株
本発明の別の観点は、CDRのアミノ酸配列を有する抗体重鎖もしくは軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含んでなる、それに相補的またはそれと有意な同一性を有する単離された核酸分子である。所定の発現系での遺伝子コードまたはコドンの縮重の優先性を仮定すると、重鎖もしくは軽鎖可変領域のCDRをコードする他のポリヌクレオチドも本発明の範囲内である。
典型的には、本発明の核酸は本発明のレジスチン抗体ポリペプチドの調製に発現ベクター中で使用される。本発明の範囲にあるベクターは、CMVプロモーター駆動ベクター、例えばpcDNA3.1、pCEP4およびそれらの誘導体、バキュロウイルス発現ベクターのようなウイルスプロモーター駆動ベクター、ショウジョウバエ発現ベクターおよびヒトIg遺伝子プロモーターのような哺乳動物遺伝子プロモーターにより駆動される発現ベクターを含む真核発現に必要な要素を提供する。他の例にはT7プロモーター駆動ベクター、例えばpET41、ラクトースプロモーター駆動ベクターおよびアラビノース遺伝子プロモーター駆動ベクターのような原核発現ベクターを含む。
また本発明はレジスチン抗体を発現する細胞株に関する。宿主細胞は原核または真核細胞であることができる。例となる真核細胞は限定するわけではないがCOS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、HepG2、653、SP2/0、NS0、293、HeLa、ミエローマ、リンパ腫細胞のような哺乳動物細胞、またはそれらの誘導体である。最も好ましくは、宿主細胞はHEK293、NS0、SP2/0またはCHO細胞である。細胞株は当該技術分野で周知の安定な、または一過性のトラ
ンスフェクション法により生成され得る。
さらに本発明は、細胞株をレジスチン抗体が検出可能もしくは回収可能な量で発現される条件下で培養することを含んでなる、レジスチン抗体を発現するための方法を提供する。また本発明はレジスチン抗体が検出可能または回収可能な量で発現されるように、レジスチン抗体をコードする核酸をインビトロまたはその場での条件下で翻訳することを含んでなるレジスチン抗体の生成法を提供する。また本発明は上記方法により生産されたレジスチン抗体を包含する。
レジスチン抗体は限定するわけではないが、プロテインA精製、硫酸アンモニウムもしくはエタノール沈殿、酸抽出法、アニオンもしくはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ハイドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含む周知な方法により回収、そして精製される。高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)も精製に使用できる。
線維症の症状を処置または緩和するための治療法
レジスチン抗体はとりわけ研究用試薬および治療薬として有用である。1つの観点では、本発明は本発明のレジスチン抗体を治療の必要がある哺乳動物に提供することを含んでなる、レジスチンの生物学的活性を修飾する方法に関する。レジスチンのそのような生物学的活性の例には、繊維芽細胞の異常な活性化、筋芽細胞分化の刺激、前線維性遺伝子の誘導、前炎症性サイトカインの放出、コラーゲンI蓄積の誘導ならびに当業者に知られている他の活性を含む。特異的にレジスチン抗体は、限定するわけではないがNF−κb経路のようなレジスチン媒介型の細胞シグナリングカスケードを低下させ、または阻害することができる。
さらに本発明は治療に有効な量のレジスチン抗体の製薬学的組成物を、処置の必要がある患者に投与することを含んでなる、線維症の症状を緩和するか、または線維症を処置する方法を提供する。上記のように、そのような組成物は有効量のレジスチン抗体および製薬学的に許容され得る担体もしくは希釈剤を含んでなる。治癒的または防止的であっても、上記治療に有効な量は一般に投与手段、標的部位および投与される他の薬剤を含む種々の因子に依存する可能性がある。すなわち処置用量は安全性および効力を至適化するために滴定される必要があろう。加えて、レジスチン抗体は単独で、または線維症の処置に有用な少なくとも1つのさらなる化合物、タンパク質または組成物と組み合わせて投与することができる。
投与様式は、製薬学的に有効な量の本発明のレジスチン抗体を宿主に送達するために適する経路となり得る。例えばレジスチン抗体は皮下、気管内(intraarcheal)、筋肉内、皮内、静脈内もしくは鼻内投与のような非経口投与、または当該技術分野で既知の他の手段を介して送達することができる。
OAの症状を処置または緩和する治療法
別の観点では、本発明は本発明のレジスチン抗体を処置の必要がある哺乳動物に提供することを含んでなるレジスチンの生物学的活性を修飾する方法に関し、ここでそのようなレジスチンの生物学的活性には、軟骨の変性、前炎症性マーカー(PGE2およびサイトカイン)の放出、細胞外マトリックス生合成の破壊、ならびに当該技術分野で知られている他の活性を含む。特異的にレジスチン抗体は、限定するわけではないがNF−κb経路のようなレジスチン媒介型の細胞シグナリングカスケードを低下させ、または阻害することができる。
さらに本発明は治療に有効な量のレジスチン抗体の製薬学的組成物を、治療の必要がある患者に投与することを含んでなる、OAの症状を緩和するか、またはOAを処置する方法を提供する。上記のように、そのような組成物は有効量のレジスチン抗体および製薬学的に許容され得る担体もしくは希釈剤を含んでなる。治癒的または防止的であっても、上記治療に有効な量は一般に投与手段、標的部位および投与される他の薬剤を含む種々の因子に依存する可能性がある。すなわち処置用量は安全性および効力を至適化するために滴定される必要があろう。加えて、レジスチン抗体は単独で、またはOAの処置に有用な少なくとも1つのさらなる化合物、タンパク質または組成物と組み合わせて投与することができる。
投与様式は、製薬学的に有効な量の本発明のレジスチン抗体を宿主に送達するために適する経路となり得る。例えばレジスチン抗体は関節内、皮下、筋肉内、皮内、静脈内もしくは鼻内投与のような非経口投与、または当該技術分野で既知の他の手段を介して送達することができる。
本発明を以下の実施例を参照にしてさらに説明する。これらの実施例は本発明の観点を単に具体的に説明するだけであり、本発明を限定することを意図していない。
レジスチンは肺に存在する
UIP、NSIPおよび肺腫瘍の正常辺縁に由来する肺の生検サンプルは、完全プロテアーゼインヒビター(ロッシュ:Roche)を含有するPBS中で均一化した。レジスチンレベルはELISA(リンコ リサーチ社、セントチャールズ、ミズーリ州)により製造元の使用説明に従い測定した。総タンパク質はBCAタンパク質アッセイ(ピアス バイオテクノロジー社;Pierce Biotechnology.Inc.、ロックフォード、イリノイ州)を使用して肺の各生検サンプルで測定した。次いでレジスチンレベルを各患者サンプル中のタンパク質量に対して標準化し、そして図1に表す。レジスチンタンパク質は、すべての肺生検体に由来するホモジネート中で検出された。非線維性と線維性群との間に有意な差異は観察されなかった。
レジスチンは線維症に関連する遺伝子の発現を刺激する
肺の繊維芽細胞は、UIP患者(n=4)から採取した肺の生検体から単離した:本明細書では今後「線維性繊維芽細胞」または「UIP繊維芽細胞」と言う。また繊維芽細胞は肺腫瘍切除(n=5)中に採取した肺組織からも単離し、そしてこれらのサンプルは組織学的分析により非線維性であることを確認した。これらの非線維性組織由来の繊維芽細胞は本明細書で「非線維性繊維芽細胞」(NF)と言う。
ヒトの肺繊維芽細胞を、24ウェルプレート(コースター:Costar、コーニング:Corning、ニューヨーク州)に100,000細胞/ウェルでまき、そして8時間接着させた。次いで細胞をPBSで洗浄し、そして無血清培地(1−グルタミン、Pen/Strepを含むDMEM)中で一晩培養した。次いで細胞をTGFβ−1(1もしくは10ng/mL)またはレジスチン(1または10μg/mL)の存在または不存在下で24時間刺激した。ヒト組換えレジスチンはペプロテック社(Peprotech,Inc.)(ロキシーヒル、ニュージャージー州)から購入した。タンパク質純度はSDS−PAGEおよび質量分析を使用して確認し、そしてエンドトキシンレベルは低い(0.9EU/mg)ことが分かった。上清を取り出し、そしてレジスチンタンパク質について市販のELISAもしくはLuminexを使用して分析した。引き続きRNAはRNeasy Plus Mini−Kits(キアゲン:QIAGEN、バレンシア、カリフォルニア州)を使用して製造元の使用説明に従い単離し、そしてTaqMan(商標)
逆転写試薬(アプライドバイオシステムズ:Applied Biosystems、フォスターシティ、カリフォルニア州)を使用してcDNAに逆転写した。前線維性遺伝子発現は、製造元の使用説明に従いTaqman(商標)Universal PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズ)を使用してリアルタイムPCRにより測定し、そしてTaqman(商標)Gene Expression Assays(アプライドバイオシステムズ)で前現像(pre−developed)した。定量的な遺伝子発現は、比較するC法を使用して算出し、ここでC値は遺伝子発現が最初に検出される閾値サイクル数として決定される。目的遺伝子の遺伝子発現における倍数変化を、最初にハウスキーピング遺伝子18Sに対して標準化し、ΔC値を与える。インビトロ刺激による遺伝子発現の倍数変化は、ΔΔC=ΔCT(unstimulated)−ΔCT(stimulated)により計算され、ここで非刺激(unstimulated)サンプルはキャリブレーターとして役立つ。レジスチンの有力な前線維性活性を調査するために、プロコラーゲンI、アルファ平滑筋アクチン(αSMA)、CTGF、TGFβ1、TGFbR、PDGFR、ヒアルロナン受容体CD44、フィブリリン(fbn1)、フィブロネクチン(fn1)およびIL−6の発現レベルを、未処理およびレジスチンで処理した肺繊維芽細胞で評価した。
コラーゲン沈着の蓄積および筋繊維芽細胞の存在は、線維症の2つの重要な証明である。この実験で陽性対照として使用する既知の前線維性モジュレーターであるTGFβ1は、肺繊維芽細胞中のプロコラーゲンIおよびαSMAの両方のアップレギュレーションを誘導した(図2)。同様に、肺繊維芽細胞の組換えレジスチンでの処置はプロコラーゲンIおよびαSMA発現の誘導をもたらした(図2)。重要なのは、レジスチンが非線維性繊維芽細胞中での遺伝子発現に影響しなかったので、このレジスチン効果は線維症患者から単離された繊維芽細胞に特異的である点である。これらのデータはレジスチン受容体/シグナリングが線維性細胞中でアップレギュレート/活性化されることを示唆している。
図3Aに示すように、レジスチンは既知の前線維性モジュレーターであるCTGFおよびTGFβ1遺伝子のアップレギュレーションを誘導した。さらにレジスチンはTGFβ受容体およびPDGF受容体の遺伝子発現のアップレギュレーションも誘導した(図3B)。すでに記載した他の遺伝子のように、レジスチンは線維性繊維芽細胞中の遺伝子発現のみを増強した。 細胞外マトリックス(ECM)成分の改変ならびに異常なマトリックスの代謝回転は、種々の線維性疾患または組織再造形に関連する疾患の証明である。ヒアルロナン受容体CD44、フィブリリン(fbn1)およびフィブロネクチン(fn1)を含むECM遺伝子の幾つかに及ぼすレジスチンの効果を評価した。レジスチンは線維性繊維芽細胞中のCD44、フィブリリンおよびフィブロネクチンの発現を特異的に強化した(図4A)。レジスチンが誘導した遺伝子発現は低濃度でより顕著であった(1ug/ml)。またレジスチンは線維性および非線維性繊維芽細胞の両方でIL−6発現の増加も誘導した(図4B)。
レジスチンはサイトカイン放出の誘導を介して前炎症的環境を促進する
ヒト組換えレジスチンを用いてインビトロで刺激した肺の生検体から単離した繊維芽細胞に由来する無細胞上清を、LINCOヒトサイトカインキット(リンコ リサーチ)によりサイトカインのレベルについて分析した。レジスチンは、肺の繊維芽細胞からIL−6(図5A)、IL−8(図5B)およびMCP−1(図5C)の放出を刺激した。分析した他のサイトカインは検出レベル未満であった。これらのデータはレジスチンが肺の繊維芽細胞で炎症性応答を開始することができ、これは次に線維症の発症および進行の一因となり得ることを示唆している。このデータはレジスチンが免疫細胞からサイトカインの放出を刺激できる有力な前炎症因子であることを示唆している。
レジスチンの分泌は前線維性メディエーターによりアップレギュレートされる
新しく単離した初代血液単核細胞から精製したヒトCD14単球は、AllCells、LLC(エメリービル、カリフォルニア州)から購入した。細胞は96U底ウェルプレートにウェルあたり75,000細胞の密度で、10%のウシ胎児血清(FBS)を含有するRPMI中でまいた。細胞は0または1ng/mlのTGFβ(R&Dシステムズ:Systems、ミネアポリス、ミネソタ州)およびPDGF(R&Dシステムズ)で処理した。48時間の培養後、上清中のレジスチンレベルをELISAキットで測定した。マクロファージの分化を誘導するために、単球を10%FBSを含有するRPMI中で96ウェルの平底プレートにまき、そして接着させ、次いで細胞を上記と同様に処理した。図6のデータは、平均±S.E.M.として表し、n=3、はp−値<0.05を示す。
図6に表すように、レジスチンは初代単球および接着性単球から発現そして分泌される。TGFβ1およびPDGF処理は単球および接着性単球の両方でレジスチン生産を誘導した。レジスチンは肺の繊維芽細胞またはT−もしくはB−細胞を含む他の免疫細胞では検出されなかった(データは示さず)。これらのデータは、再造形の部位に存在するTGFβ1およびPDGFを含む増殖因子が、浸潤している単球およびマクロファージからレジスチンの生産を誘導できることを示す。
レジスチンは肺のマクロファージ細胞で発現される
肺腫瘍の正常辺縁、UIPまたはNSIP患者のいずれかに由来する肺の生検サンプル(全部でn=9;n=3の各患者コホート)は、抗−レジスチン抗体(R&Dシテムズ)で2μg/mlの濃度で染色した。肺の検体では、レジスチンタンパク質はマクロファージ、組織球(組織−拘束性マクロファージ)およびマスト細胞で検出された。高度に炎症している非−線維性の肺検体のCD68抗体を用いた同時染色では、レジスチンがCD68陽性マクロファージ細胞と共に局在していることが示された(データは示さず)。単球およびマクロファージ細胞中のヒトレジスチンの発現は、以前に報告され(Jung et al.,Cardiovasc.Res.,69:76−85(2006);Lehrke et al.,PLoS Med.,1:e45(2004))、ならびに我々の知見により確認された(図6)。UIPおよびNSIP患者からの肺検体の抗−レジスチン抗体を用いた染色では、非線維性と線維性の肺検体の間で観察されたレジスチン染色に明瞭な差異は示されなかった(データは示さず)。
ヒトレジスチンの3次元構造のモデリング
ヒト(配列番号1)およびマウス(配列番号2)のレジスチンのアミノ酸配列は、Swiss−Protからそれぞれ寄託コードQ9HD89およびQ99P87で得、そして並べた。図7はヒトとマウスレジスチンとの間の配列アライメントを表し;全体的な同一性は55%である。
マウスレジスチンの結晶構造(Patel et al.、同上)は、プロテインデータバンクから、寄託コード1RFXで利用できる。この構造に基づき、ヒトレジスチンの3Dモデルを配列アライメントに従いアミノ酸を置き換えることにより構築した。コンピュータープログラムCOOT(Emsley,Acta Crystallogr.D.Biol.Crystallogr.60:2126−32(2004))をこの目的に使用した。側鎖の確認は他の残基と近接を避けるために調整した。最もエネルギー的に好ましいロータマーを可能な場合にいつでも選択した。主鎖の配置の変化は必要なかった。生じたモデルには、分子内部で補償されない電荷、または分子表面上の過度な疎水性パッ
チのような禁止された配置の残基を含まず、立体的衝突が無く、そして好ましくない環境での残基はなかった。マウスのタンパク質に対する配列類似性が比較的高く、そして立体化学的基準に合うことを仮定すると、生じた3次元モデルは現実的な構造に良い近似を提供する。
レジスチンのポリペプチド鎖は、N−末端α−ヘリックス(残基22〜47)に折りたたまれ、球状ドメインが続き(残基48〜108)、これはゼリーロール型のβ−構造を有する。3つのタンパク質単量体が三量体を形成し、この中のα−ヘリックスがコイルドコイルを形成し、そして球状ドメインが各単量体の表面の約30%を覆う広範囲の界面を持つ小型ヘッドを形成する。レジスチンの以前の理論的モデルは、プロテインデータバンクから寄託コード1LV6で利用できる。この以前のモデルはマウスレジスチンについて今利用できる結晶構造とは一致しない。
仮定のレジスチン受容体結合部位の予測
幾つかの証拠筋では、レジスチン3量体の球状ドメインの側面が有力な受容体結合部位であることを示唆している。例えばレジスチンは3量体で活性であり(Patel et
al.,同上)、したがって3量体で溶媒に接近できる表面のみが有力な受容体結合部位と考えられる。さらにタンパク質のC1q/TNF構造スーパーファミリーの一部として、レジスチンはその受容体に、他のファミリーメンバーに共通する様式、すなわち球状ドメインの側面で結合するのかもしれない。C1q/TNFスーパーファミリーはPfamデータベースに寄託コードCL0100で登録されている。これにはアディポネクチン、TNFαおよびβ、およびCD40Lを初めとする多数のサイトカインを含む。このスーパーファミリーのメンバーは特徴的なヘリックス/ゼリーロールホールドおよびコイルドコイルホモ3量体構造を有する。結晶構造はスーパーファミリーの多くのメンバーならびにそれらに対応する受容体との複合体について利用可能である。これらの構造は、例えばAPO2L+DR5およびTNFβ+TNFR55で観察されるように、受容体結合が球状ドメインの側面で起こる(通常はドメイン境界)ことを示す。受容体が球状ドメインの上部またはヘリックスドメインに結合することは観察されなかった。
またレジスチンファミリーのタンパク質における配列の類似性はヘリックスドメインよりも球状ドメイン内で一層高く、機能的重要性を示唆している。ヒトとマウスレジスチンとの間のアミノ酸の相同性はヘリックスドメインで〜36%であるのに対し、球状ドメインでは〜66%である。同様に、ヒトとウシまたはブタレジスチンとの間の相同性は、ヘリックスドメインの〜28%に対し、球状ドメインでは〜85%である。
最後にレジスチン3量体の球状ヘッドの3倍の対称は、ヘッドの上部に結合した場合、受容体は内部に3倍の対称な認識部位を有するはずであることを意味し、これはありそうもない。これはヘッドの上部への結合の可能性を現実的に排除する。
球状ドメインの側面上にあり、そして3量体で溶媒が接近可能なヒトレジスチンのポリペプチド鎖には2つのフラグメントがあるだけである。これらには残基50〜65(配列番号3)および78〜93(配列番号4)を含む。両ペプチドは2つの型の残基、接近可能であり、故に受容体と相互作用できるもの、および埋められ、故に相互作用に関与できないものを含む。表面上に無いアミノ酸は、ペプチドのより良い生物物理学的特性を達成するために置き換えられるかもしれない。非特異的なジスルフィド架橋結合を回避するために、ペプチドに以下の置換が作成され:C51S,C63S(ペプチド1)およびC78S、C89S、C91S、C93S(ペプチド2)、以下のペプチドエピトープ配列を生じた:
ペプチド 2815:ESQSVTSRGDLATSPR (配列番号5)
ペプチド 2816:SGSWDVRAETTSHSQS (配列番号6)
合わせると、これら2種のペプチドが球状ドメインの表面の64%を網羅する。ペプチド2815の利点は2つのシステインを除くすべての残基がレジスチン中で暴露されているので、ペプチドの自由な状態でのホールディングにかかわらず、有力なエピトープ残基は抗体生成に利用できる。ペプチド2816はタンパク質中にβ−ヘアピンを形成する。β−ヘアピンの1面のみが受容体の認識に関与することができる。ここで重要な残基はR84−A85−E86である。ペプチド2816の別の利点は、この領域がより高次な哺乳動物で100%保存され、そしてマウスレジスチンに対しては75%保存されている点である。このフラグメント中での高い配列類似性を仮定すると、多くの種からレジスチンタンパク質と交差反応する抗体を生成することが可能である。
同定されたエピトープの機能的重要性の確認
ポリクローナル抗体の生成:エピトープペプチド2815および2816は、ABI433Aペプチド合成器でRINK Resin SS(アドバンスト ケミテック:Advanced ChemTech、SA5030、Lot#17046)を使用して化学的に合成した。ペプチドを樹脂から開裂し、沈殿させ、濾過し、洗浄し、そして乾燥させた。ペプチドをインビトロジェンコーポレーション(Invitrogen Corporation)(カールスバーグ、カリフォルニア州)に送り、ここでペプチドは免疫感作のためにKLHタンパク質に融合された。ペプチドあたり2匹のウサギを標準法を使用して免疫感作した(Cat.番号M0300)。ペプチドに関するELISAアッセイは抗体力価を示し、そしてウサギは最終的に4週間の免疫感作手順後に採血された。抗体は血清アルブミンに結合したペプチドを使用してアフィニティ精製された。2815および2816ペプチドに対して生じたポリクローナル抗体を、それぞれC2815およびC2816と言う。
完全長のヒトレジスチンに対する結合
ポリクローナル抗体C2815およびC2816が完全長のヒトレジスチンに結合する能力を、標準的なサンドイッチELISA形式を使用して試験した。プレートに2μg/mlのC2815またはC2816(0.2M炭酸−重炭酸バッファー、pH8.5中)を4℃で一晩被覆した。非特異的結合を排除するために、プレートは280μlの0.5%ウシ血清アルブミン(PBS中)で37℃にて2時間、ブロッキングした。種々の濃度のヒトレジスチンをプレートに加え、そして4℃で一晩インキュベーションした。検出にはユーロピウムを用いたビオチン標識抗−レジスチン抗体BAM1359(R&Dシステムズ、ミネアポリス、ミズーリ州)を加え、続いて強化溶液を加えた。蛍光シグナルをVictorプレートリーダーで読み、そしてデータをGraphPad Prismにプロットした。
図8に示す結果は、ポリクローナル抗体C2815およびC2816の完全長ヒトレジスチンへの結合のKdがそれぞれ3.9および0.8μg/mlであったことを示す。
中和活性:C2816およびC2815の中和活性は、サイトカイン放出アッセイで評価した。簡単に説明すると、2ug/mlのヒトもしくはマウスレジスチンを各抗体の濃度を上げながら室温で20分間インキュベーションした。レジスチン−抗体混合物を単離したヒト初代血液単核細胞(PBMC)に加え、そして24時間インキュベーションした。無細胞上清を集め、そしてMCP−1レベルを市販のELISAキット(R&Dシステムズ、ミネアポリス、ミネソタ州)により検出した。
図9AおよびBの結果は、ポリクローナル抗体C2815およびC2816が単離されたヒトPBMCからヒトレジスチン媒介型のMCP−1放出に及ぼす効果を表す。結果は
、抗体がMCP−1放出アッセイにおいてヒトレジスチンの活性を用量依存的に阻害できたことを示し、同定されたエピトープがレジスチン活性に重要であることを確証する。C2816(IC50 65μg/ml)は、C2515に比べて優れた中和活性を示した。しかしそれは完全長ヒトレジスチンタンパク質へのC2816のより高い親和性により部分的に説明されるものかもしれない(図8)。
図10AおよびBは、C2815およびC2816ポリクローナル抗体が、単離されたヒト初代血液単核細胞からマウスレジスチンが媒介するMCP−1の放出に及ぼす効果を示す。結果は抗体がMCP−1放出アッセイにおいてマウスレジスチンの活性を用量依存的に阻害できたことを示す。このデータはC2815およびC2816が、選択したエピトープ中の高レベルの配列保存と合致してマウスレジスチンと交差反応することを示唆する。
レジスチンは外的損傷または変形性関節症診断後の患者の滑液中に存在する
滑液および血清サンプルは外的損傷(半月、靭帯およびOC骨折損傷を含む)後、あるいは変形性関節症と診断された患者(10年の時間枠にわたり)から種々の時点で得た。サンプルは263名の患者から集めた。アディポネクチン、レジスチンおよびPAI−1を含むアディポカインがLINCOヒトアディポカインキット(リンコリサーチ、セントチャールズ、ミズーリ州)を使用して検出された。
レジスチンは滑液および血清サンプルの両方から損傷後およびOA患者で検出された。そのレベルは損傷直後およびOAの初期段階で高く、経時的に下降した。区分的な線形モデルに従い、滑液中のレジスチンレベルは損傷または診断直後の約3000pg/mLから6.3週間後に900pg/mLに変化し(約71%の減少)、そしてそのレベルで安定したままであった(図11A)。血清のレジスチンレベルは損傷または診断直後の約8550pg/mLから5.7週間後に約5200pg/mLに変化し(約39%の減少)、そしてその後はレベルで安定したままであった(図11B)。このデータはレジスチンが疾患の初期段階でOAに特異的に貢献し得ることを示唆している。
レジスチンタンパク質は軟骨組織で発現する
3名のOAおよび3名のRA患者に由来する滑膜および軟骨組織を、4mg/ml濃度の抗−レジスチン抗体(R&Dシステムズ、ミネアポリス、ミネソタ州)で染色した。レジスチンタンパク質は、OAおよびRA患者の両方に由来する滑膜中のいマクロファージ様細胞で検出された(データは示さず)。軟骨組織は1名のRA軟骨検体(ここで抗−レジスチン抗体は変性した軟骨細胞のサブセットを染色した)を除き、レジスチン染色について陰性であった(データは示さず)。このデータは、関節にある細胞がレジスチンの分泌の原因となる可能性があり、そして関節内レジスチンの蓄積が、すなわち関節内レジスチンレベルが血清レジスチン濃度から変動し得ることを示唆する。したがって関節内レジスチンレベルは、マクロファージ様の細胞数が損傷が誘導する炎症または軟骨の変性により増加する状況で増すと予想される。
レジスチンは免疫応答性細胞からサイトカインおよびケモカインの分泌を刺激する
2名の正常な健康な有志からのヒト末梢血単核細胞(PBMC)および単球を、LymphoprepTM勾配(グレイナー バイオ−ワン社:Greiner Bio−One,Inc、ロングウッド、フロリダ州)を使用して単離した。細胞は異なる濃度のヒト組換えレジスチン(ペプロテック社、ロッキーヒル、ニュージャージー州)で処理した。10%ウシ胎児血清を含有する完全DMEM培地中で2日間培養した後、コンディショニ
ングした培地を集め、そしてIL−1a,IL−1b,IL−1ra,IL−2,IL−4,IL−5,IL−6,IL−7,IL−8,IL−10,IL−12 p70,IL−12p40,IL−13,IL−15,IL−17,EGF,エオタキシン(eotaxin),フランクリン(francline),MIP−1b,IP−10,G−CSF,sCD40L,TGFα,VEGF,GM−CSF,IFN−g,IP−10,MCP−1,MIP−1a,TNF−αおよびRANTESを含むサイトカイン/ケモカインは、LINCOヒトサイトカインキット(リンコリサーチ)を使用してアッセイした。
組換えレジスチンはPBMCおよび単球から多くのサイトカインおよびケモカインの放出を誘導した。ヒトPBMCおよび単球からのIL−6、IL−8およびMCP−1の分泌を図12に示す。加えてレジスチンはIL−1a,IL−1b,GMCSF,IL−1Rα,IL−10,GCSF,TNFa,IL−12p40,MIP−1a,MIP−1b,IFNGおよびRANTESの分泌を刺激した(PBMCのみから)。このデータはレジスチンが免疫細胞からサイトカインの放出を刺激できる有力な前炎症性因子であることを示唆している。
レジスチンで処理した免疫細胞からコンディショニングした培地は、軟骨の細胞外マトリックス変性を引き起こす
ヒトPBMCまたは単球はヒト組換えレジスチンで処理し、そしてコンディショニングした培地を実施例11に記載したように集めた。3週齢のマウスから単離した大腿骨頭の関節軟骨を1:3に希釈したコンディショニング培地中で3日間培養した。培地を集め、そしてグリコサミノグリカン(GAG)をジメチルメチレンブルー(DMMB)アッセイにより測定した。DMMBアッセイは色素が硫酸化グリコサミノグリカンと錯化した時に起こる吸収最大の異染色性シフトに基づく。簡単に説明すると、培養基を色素と混合し、そして520nmでの吸収をプレートリーダーで読む。サンプルを標準曲線と比較して、GAGの濃度を決定する。
レジスチンは軟骨の変性をもたらす(drive)分子のPBMCおよび単球からの放出を引き起こす(図13)。免疫応答細胞に対するレジスチン濃度を上げることにより、軟骨から培地へ放出されるプロテオグリカンのレベルが上昇した。このプロテオグリカンの放出は、レジスチンで処理した免疫応答細胞でコンディショニングした培地の変性能の尺度である。
レジスチンはマウスの軟骨エクスプラントからのプロテオグリカンの変性を刺激する
3週齢のマウスの股関節から大腿骨頭を単離し、そしてインビトロで2日間、10%FBSを含有する完全DMEM中で培養して平衡とした。次いで大腿骨頭の関節軟骨は種々の濃度のヒト組換えレジスチンで3日間処理した。コンディショニングした培地を集め、そしてグリコサミノグリカン含量を実施例12に記載のように測定した。軟骨組織を固定し、そして組織学用に調製した。簡単に説明すると、5mmの切片を脱パラフィン化し、水和し、そして10分間、0.1%トルイジンブルーで染色した。グリコサミノグリカン(GAG)はトルイジンブルーで暗青色に染まる。したがって染色強度の低下は軟骨からプロテオグリカンを含有するGAGの損失を示し、これは次いで軟骨組織の病理学的破壊を意味するであろう。
図14に示すように、レジスチンは軟骨細胞外マトリックスからプロテオグリカンの放出を刺激した。レジスチン処理による関節の軟骨からプロテオグリカンの損失は、組織学により視覚化された(トルイジンブルー染色)(データは示さず)。培地へのプロテオグリカンの放出は、レジスチンでの処置により誘導される変性の尺度である。
レジスチンはマウス軟骨からのケモカインおよびPGE2分泌を刺激する
マウスの軟骨エクスプラントは、種々の濃度のヒト組換えレジスチンで3日間処理した。IL−1α,IL−1β,IL−2,IL−4,IL−5,IL−6,IL−7,IL−10,IL−12 p70,IL−13,IL−15,IL−17,IP−10,G−CSF,GM−CSF,IFN−γ,IP−10,MCP−1,MIP−1α,TNF−α,KCおよびRANTESを含むサイトカインは、LINCOマウスサイトカインキット(MCYTO−70K−PMX22、ルミネックス:Luminex、セントチャールズ、ミズーリ州)を使用してコンディショニング培地中で検出した。プロスタグランジンE2(PGE2)レベルは、ELISAキット(KGE004、R&Dシステムズ)によりコンディショニング培地で測定した。
レジスチンはマウスの軟骨エクスプラントからMCP−1、KCおよびIL−6の放出を刺激した(図15)。他のサイトカインおよびケモカインはレジスチン処理した軟骨からのコンディショニング培地中で検出されるレベル未満であった。またレジスチンは軟骨からPGE2の放出に用量依存的上昇を生じた。PGE2は関節炎の病因の一因となる前炎症分子である。このデータはレジスチンが軟骨での炎症応答を開始でき、これは次いで軟骨変性の一因となり得ることを示唆している。
本発明はここに完全に記載され、当業者には添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく、本発明について多くの変更および修飾が成されることは明白である。

Claims (17)

  1. ヒト レジスチンに結合し、そしてNF−κb媒介型シグナリングをモジュレートすることができるレジスチン アンタゴニスト。
  2. ヒト レジスチンに結合し、そしてMCP−1、IL−8、IL−6およびTNF−αからなる群から選択される少なくとも1つの炎症性サイトカインのレジスチン媒介型放出を阻害することができるレジスチン アンタゴニスト。
  3. ヒト レジスチンに結合し、そしてコラーゲンI、アルファ平滑筋アクチン、TGFβ1、CTGF、TGFβR、PDGFR、CD44、フィブリリン、フィブロネクチンおよびIL−6からなる群から選択される少なくとも1つの前線維性遺伝子発現のレジスチン媒介型誘導を阻害することができるレジスチン アンタゴニスト。
  4. ヒト レジスチンに結合し、そして繊維芽細胞機能をモジュレートすることができるレジスチン アンタゴニスト。
  5. アンタゴニストが抗体である請求項1、2、3または4に記載のレジスチン アンタゴニスト。
  6. ヒト レジスチンの残基50〜65(配列番号3)に位置するエピトープと反応性の単離された抗体。
  7. ヒト レジスチンの残基78〜93(配列番号4)に位置するエピトープと反応性の単離された抗体。
  8. 有効量の請求項5に記載のレジスチン アンタゴニストおよび製薬学的に許容され得る担体または希釈剤を含んでなる製薬学的組成物。
  9. 請求項8に記載の製薬学的組成物を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物におけるレジスチンの生物学的活性を修飾する方法。
  10. 間質性肺疾患、過形成性瘢痕、ケロイド性瘢痕、強皮症、肝線維症、腎線維症および心筋線維症を含む異常な繊維芽細胞活性がある疾患の症状を処置または緩和する方法であって、請求項8に記載の製薬学的組成物をその必要がある患者に投与することを含んでなる上記方法。
  11. アミノ酸配列ESQSVTSRGDLATSPR(配列番号5)を有するペプチドを含んでなる単離されたポリペプチド。
  12. アミノ酸配列SGSWDVRAETTSHSQS(配列番号6)を有するペプチドを含んでなる単離されたポリペプチド。
  13. 配列番号5のアミノ酸配列をコードする単離された核酸。
  14. 配列番号6のアミノ酸配列をコードする単離された核酸。
  15. 変形性関節症の症状を処置または緩和する方法であって、請求項8に記載の製薬学的組成物をその必要がある患者に投与することを含んでなる上記方法。
  16. 患者の変形性関節症の危険性または進行を決定する方法であって:
    a.患者の生物学的サンプル中のレジスチンタンパク質のレベルを測定し、そして
    b.測定されたレジスチンレベルを集団における生物学的サンプル中のレジスチンレベルの標準と比較する、
    ことを含んでなる上記決定法。
  17. 生物学的サンプルが滑液、血液、血清および血漿からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
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