発明の詳細な説明
本発明は、受容体の細胞外領域のドメイン3を介してヒトIL-13Rα1に結合し、IL-13Rα1の特定の機能的特性を阻害する単離抗体、特にヒトモノクローナル抗体に関する。本明細書において“モノクローナル抗体”に言及する場合は、そのヒト化体、脱免疫化体およびキメラ体ばかりでなく霊長類化体も含む。特定の実施形態において、本発明の抗体は、特定のアミノ酸配列を有するCDR領域などの特定の構造的特徴を含む。本発明は、単離抗体、このような抗体、免疫コンジュゲートおよびこのような抗体を含む2重特異性分子の製造方法ならびに本発明の抗体、免疫コンジュゲートまたは2重特異性分子を含む医薬組成物を提供する。本主題発明はまた、例えば喘息、COPD、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、食道好酸球増加症、ホジキンリンパ腫、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎および線維症を含む種々のIL-13に関連する障害および疾患の治療における、IL-13応答を阻害するための抗体の使用方法に関する。
hIL-13Rαの細胞外領域は、それぞれおおよそ長さ100アミノ酸のフィブロネクチンタイプIII球状ドメイン3つからなっていると予測されている(Arimaら、J. Biol. Chem. 280(26):24915-22, 2005)。アミノ末端フィブロネクチンタイプドメイン(本明細書においてはドメイン1またはD1と呼ぶ)は、サイトカイン受容体相同モジュールを有する他の2つのフィブロネクチンタイプIIIドメイン(本明細書においては、それぞれドメイン2およびドメイン3またはD2およびD3と呼ぶ)に続いている(Wells and de Vos, Ann. Rev. Biochem. 65:609-34, 1996)。これらのフィブロネクチンタイプIIIドメインのそれぞれの配列の境界を予測するために、hIL-13Rα1およびhIL-4Rαの細胞外領域の成熟配列をアラインメントした。おおよそ200残基のhIL-4Rα細胞外領域は、IL-13Rα1のD2およびD3に対応するサイトカイン受容体相同モジュールからなるが、D1に対応する上流ドメインを少しも含まない。従って、成熟hIL-4Rαの第1残基を選んで、アラインメントしたhIL-13Rα1配列上のD1とD2との境界を定義した。ついで、その結晶構造 (Hageら、Cell, 97(2):271-81, 1999)から推定される、IL-4Rαにおける2つのフィブロネクチンタイプIIIドメインの境界を用いて、アラインメントしたIL-13Rα1配列におけるD2とD3との境界を定義した。従って、hIL-13Rα1の細胞外領域のドメイン1は配列番号1のアミノ酸1-100に対応し、ドメイン2は配列番号1のアミノ酸101-200に対応し、ドメイン3は配列番号1のアミノ酸201-317に対応する。本明細書においては、ドメイン3は配列番号37としても記載されている。
本発明によれば、受容体鎖の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合し、IL-13Rα1/IL-4Rα複合体を介するIL-13のシグナル伝達を阻害する抗体が作製される。このような抗体は、IL-13媒介生物活性を阻害する。特定の実施形態において、本発明の抗体の一部は、IL-13Rα1/IL-4Rα複合体を介して、IL-13およびIL-4の両方によるシグナル伝達を阻害する。
本発明においては、用語“インターロイキン13受容体α1”および“IL-13Rα1”は同義で使用され、バリアント、アイソフォームおよび種ホモログであるヒトIL-13Rα1を含むことができる。従って、場合によっては、本発明のヒト抗体は、ヒト以外の種からのIL-13Rα1と交差反応する。別の場合では、本抗体はヒトIL-13Rα1に特異的であって、種または他のタイプの交差反応性を示さない。ヒトIL-13Rα1(hIL-13Rα1とも呼ぶ)のアミノ酸配列は、GENBANKアクセッション番号NP_001551を有し、このタンパク質の成熟体(すなわちシグナル配列を除いたもの)は、本明細書においては配列番号1で示される。カニクイザルIL-13Rα1のアミノ酸配列は、GENBANKアクセッション番号AAP78901を有し、このタンパク質の成熟体は、本明細書においては配列番号2で示される。マウスIL-13Rα1(mL-13Rα1とも呼ぶ)のアミノ酸配列は、GENBANKアクセッション番号O09030を有し、このタンパク質の成熟体は、本明細書においては配列番号3で示される。
本明細書においては、用語“抗体”は、全長抗体(別名では完全長抗体)およびその任意の抗原結合フラグメント(すなわち、“抗原結合部分”)を含む。“全長抗体”とは、ジスルフィド結合で相互に連結された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含むタンパク質のことを言う。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略称する)および重鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3からなる。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略称する)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLからなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに分割することができる。各VHおよびVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順にアミノ末端からカルボキシ末端の方向に配列された3つのCDRと4つのFRからなる。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、種々の免疫系細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を仲介することができる。
本明細書において、抗体の“抗原結合部分”という用語は、hIL-13Rα1に結合する能力を保持する抗体のフラグメントの1以上のことを言う。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体のフラグメントにより発揮されうることが明らかにされた。抗体の“抗原結合部分”という用語に含まれる結合フラグメントの例は、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域においてジスルフィド架橋で結合された2つのFabフラグメントからなる二価フラグメントであるF(ab')2フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の1つのアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHまたはVLドメイン(Holtら、Trends in Biotechnology, 21:484-489, 2003)のいずれかからなるdAbフラグメント(Wardら、Nature 341:544-546, 1989);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、特にVHのCDR3;を含む。当業者に明らかなように、hIL-13Rα1に結合する能力を保持する抗体フラグメントを種々のフレームワークに挿入することができる。例えば、抗原結合性に基づいて前もって選択された抗体のループの提示に用いることができる種々の足場(scaffold)を議論している米国特許第6,818,418号およびそれに含まれる引用文献を参照されたい。さらにまた、Fvフラグメントの2つのドメインであるVLおよびVHは異なる遺伝子によりコードされているが、組換え法を用い、VLおよびVH領域が対になって一価の分子を形成する1本のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによりこれらを連結させることができる(一本鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Birdら、Science 242:423-426, 1988 およびHustonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883, 1988 を参照のこと)。このような一本鎖抗体もまた、抗体の“抗原結合部分”という用語に含まれるものとする。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の慣用法を用いて製造することができ、最初に完全長抗体を製造せずに製造することができる。完全長抗体と同様に、関連する性質に関してフラグメントをスクリーニングすることができる。
本明細書において、“単離された抗体”は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すものとする(例えば、hIL-13Rα1に結合する単離された抗体は、IL-13Rα1以外の抗原に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、hIL-13Rα1に結合する単離された抗体は、他の抗原、例えば他の種からのIL-13Rα1分子に交差反応性を示すことができる。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まないことができる。
本明細書において、用語“モノクローナル抗体”または“mAb”は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、すなわち少量存在する場合がある天然に存在する可能な変異を除けば同一である集団を含む個々の抗体のことを言う。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して向けられている。さらにまた、一般的には種々の決定要因(エピトープ)に対して向けられている種々の抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定要因に対して向けられている。修飾語句“モノクローナル”は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示すものであって、特定の方法による抗体産生に必要であると解釈してはならない。単離された抗体でもあるモノクローナル抗体を、単離されたモノクローナル抗体と呼ぶことができる。
本明細書において、用語“ヒト抗体”は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来の可変領域を有する抗体を含むものとする。さらにまた、この抗体が定常領域を含む場合、その定常領域もまたヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来である。本発明のヒト抗体は、例えばCDR、特にCDR3において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでのランダムもしくは部位特異的突然変異誘発またはin vivoでの体細胞変異により導入される変異)を含むことができ、従って、抗体のVLおよび/またはVH領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VLおよびVH配列に由来し、関連するものの、ヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然に存在しなくてもよい配列である。しかしながら、本明細書において、用語“ヒト抗体”は、他の哺乳動物種、例えばマウス由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体、すなわちヒト化抗体を含まないものとする。
本明細書において、hIL-13Rα1の細胞外領域のドメイン3は配列番号1のアミノ酸201-317に対応し、本明細書では配列番号37として示されている。従って、受容体の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合する抗体は、本質的に上記のドメイン3アミノ酸残基からなるペプチド、例えば実施例3におけるファージに提示されたドメイン3構築物に結合する抗体である(結合は、ELISAにより測定された)。hIL-13Rα1の細胞外領域のドメイン3への結合を測定する他の方法、例えばBIACORE(登録商標)(PHARMACIA AB Corporation)分析による方法が存在することは当業者には明らかであろう。受容体の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合する抗体はまた、完全長受容体および配列番号37を含む他の受容体由来ペプチド、例えば受容体の細胞外領域のドメイン1、2および3を含む実施例1のhIL-13Rα1.ECRペプチドにも結合するであろう。
本明細書において、“ヒトIL-13Rα1に結合する”抗体は、5x10-9M以下、より好ましくは2x10-9M以下、さらにより好ましくは1x10-9M以下のKDでヒトIL-13Rα1に結合する抗体を指すものとする。“ヒトIL-13Rα1に結合する抗体”などの関連用語は同じ意味を有する。“カニクイザルIL-13Rα1と交差反応する”抗体は、5x10-9M以下、より好ましくは2x10-9M以下のKDでカニクイザルIL-13Rα1に結合する抗体を指すものとする。“マウスIL-13Rα1と交差反応しない”抗体は、1x10-7M以上のKDでマウスIL-13Rα1に結合する抗体を指すものとする。特定の実施形態において、マウスIL-13Rα1と交差反応しない抗体では、一般的な結合アッセイにおいて、本質的にこのタンパク質に対する結合が検出できない。
本明細書において、用語“Ka”は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を指すものとする。ここで、用語“KD”は、本明細書では、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すものとする。本明細書において、用語“KD”は、Kaに対するKDの比(すなわち、KD/Ka)から得られ、モル濃度(M)で表わされる解離定数を指すものとする。抗体のKD値は、当該技術分野で確立された方法を用いて測定できる。抗体のKDの好ましい測定方法は、表面プラズモン共鳴、好ましくはBIACORE(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを用いる測定方法である。
以下のサブセクションにおいて、本発明の種々の側面をさらに詳しく説明する。
抗hIL-13Rα1抗体
本発明の抗体は、抗体の特定の機能的特徴または特性で特徴づけられる。例えば、本抗体は、受容体の細胞外領域のドメイン3を介してヒトIL-13Rα1に結合する。
さらに、本発明の抗体は、1以上のヒト以外の霊長類、例えばカニクイザル由来のIL-13Rα1と交差反応することもしないこともできる。従って、一実施形態において、主題発明の抗体はカニクイザルIL-13Rα1と交差反応する。
他の実施形態において、本発明の抗体はマウスIL-13Rα1と交差反応しない。
特定の実施形態において、本発明の抗体は、高親和性で、例えば5x10-9M以下のKDで、より好ましくは2x10-9M以下で、よりさらに好ましくは1x10-9M以下でIL-13Rα1に結合する。
さらにまた、本発明の抗体は、hIL-13Rα1の1以上の機能活性を阻害することができる。例えば、一実施形態において、本抗体はNHDF細胞におけるIL-13誘発エオタキシン分泌を阻害することができる。さらに他の実施形態において、本抗体は、NHDF細胞におけるIL-13誘発STAT6リン酸化を阻害することができる。さらに他の実施形態において、本抗体は、NHDF細胞におけるIL-4誘発エオタキシン分泌を阻害することができる。さらに他の実施形態において、本抗体は、NHDF細胞におけるIL-4誘発STAT6リン酸化を阻害することができる。特定の実施形態において、本抗体は、hIL-13Rα1の上記の機能活性をすべて阻害する。
本発明の抗体は、単離されたIL-13Rα1(すなわち、IL-4Rαとの二量体受容体の一部ではないIL-13Rα1)に対するIL-13の結合を阻害することもしないこともできる。本発明の抗体の一部は、単離されたIL-13Rα1に対するIL-13の結合を阻害できないが、それにもかかわらずIL-13受容体I型複合体を介したNHDF細胞におけるIL-13誘発応答を阻害することができる。
主題発明の抗体群の1つは、単離されたhIL-13Rα1に対するhIL-13の結合を阻害するものを含む。
本発明のもう1つの抗体群は完全長抗体である。
特定の実施形態において、本発明の抗体はヒト抗体である。他の実施形態において、前記抗体はヒト化抗体、脱免疫化抗体、霊長類化抗体またはキメラ抗体である。
主題発明の抗体は、任意の抗体イソタイプ、例えばIgG、IgA、IgEおよびIgMに属することができ、そのイソタイプサブクラスのいずれか、特にIgG1およびIgG4であることができる。IgG4が一般的には好ましいが、その理由は、それが補体には結合せず、エフェクター機能を発揮しないからである。これらのまたは他の望ましい特性を有する任意の合成または他の定常領域バリアントもまた、本発明の実施形態に使用するのに好ましい。
種々の種のIL-13Rα1に対する本抗体の結合能を評価するための一般的なアッセイは当該技術分野で公知であり、例えば、ELISA、ウェスタンブロットおよびRIAを含む。適切なアッセイ例もまた実施例に記載されている。当該技術分野で公知の一般的なアッセイ、例えばBIACORE(登録商標)分析により、本抗体の結合キネティクス(例えば結合親和性)もまた評価できる。IL-13Rα1の機能的特性に対する本抗体の効果(例えば、リガンド結合、細胞におけるIL-13誘発活性の阻害)を評価するためのアッセイ例は実施例に記載されている。
従って、当業者に公知であり、本明細書に記載されている方法に従って測定される、これらのIL-13Rα1機能的特性の1以上を“阻害する”抗体は、例えば抗体の非存在下で(あるいは、関連性のない特異性の対照抗体が存在する場合に)観察される活性と比較した特定の活性の低下に関連していると理解されるであろう。好ましくは、IL-13および/またはIL-4活性を阻害する抗体は、測定パラメータの少なくとも10%、より好ましくは、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%の低下を引き起こす。
一実施形態において、本発明は、受容体の細胞外領域のドメイン3を介してIL-13Rα1に結合し、IL-13のシグナル伝達を阻害する、単離されたモノクローナル抗体を提供する。特定の実施形態において、本発明はまた、以下の機能的特性:(i)NHDF細胞におけるIL-13誘発エオタキシン分泌を阻害する;(ii)NHDF細胞におけるIL-4誘発エオタキシン分泌を阻害する;(iii)NHDF細胞におけるIL-13誘発STAT6リン酸化を阻害する;または(iv)NHDF細胞におけるIL-4誘発STAT6リン酸化を阻害する;の少なくとも1つを示す。
特定の実施形態において、hIL-13Rα1のドメイン3を含むペプチドにおける、配列番号1の位置248-252に対応する残基Val-Phe-Tyr-Val-Gln(配列番号44)と残基Ile-Leu-Glu-Val-Glu(配列番号45)との置換変異は、前記抗体と前記置換のないhIL-13Rα1ペプチドとの結合と比較して、本発明の抗体と得られた変異体hIL-13Rα1ペプチドとの結合の低下をもたらす。
他の実施形態において、hIL-13Rα1のドメイン3を含むペプチドにおける、配列番号1の位置249に対応するフェニルアラニン残基とアラニン残基;配列番号1の位置250に対応するチロシン残基とアラニン残基;または配列番号1の位置252に対応するグルタミン残基とアラニン残基;のいずれか1つの置換変異は、前記抗体と前記置換のないhIL-13Rα1ペプチドとの結合と比較して、本発明の抗体と得られた変異体hIL-13Rα1ペプチドとの結合の低下をもたらす。
モノクローナル抗体4B5、8B11および15F4
本発明の抗hIL-13Rα1抗体群は、実施例に記載されているように単離され構造解析されたヒトモノクローナル抗体4B5、8B11および15F4である。4B5、8B11および15F4の重鎖可変領域アミノ酸配列ならびに対応するCDR1、CDR2およびCDR3配列は、以下の表2にまとめられている。同様に、15F4の軽鎖可変領域アミノ酸配列および対応するCDR1、CDR2およびCDR3配列は以下の表にまとめられている。配列および構造の定義(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917, 1987)の両方を含むように拡張されるVH CDR1、すなわちVH残基26-35を除いて、CDR領域はKabatシステムを用いて線引きされる(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91:3242, 1991)。
抗体のCDR領域は、抗原認識を決定することが知られ、CDR3は特に重要である。従って、他の側面において、主題発明は、a)受容体の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合し、b)以下の機能的特性:(i)NHDF細胞におけるIL-13誘発エオタキシン分泌を阻害する;(ii)NHDF細胞におけるIL-4誘発エオタキシン分泌を阻害する;(iii)NHDF細胞におけるIL-13誘発STAT6リン酸化を阻害する;または(iv)NHDF細胞におけるIL-4誘発STAT6リン酸化を阻害する;の少なくとも1つを示す、配列番号7、11、15およびそれらの保存的配列修飾からなる群から選択されるCDR3配列を含む単離されたモノクローナル抗体を提供する。
特定の実施形態において、CDR1、CDR2およびCDR3配列が:(a)それぞれ配列番号5、6および7;(b)それぞれ配列番号9、10および11;(c)それぞれ配列番号13、14および15;あるいは(d)前記CDR配列のいずれか1つ以上において保存的配列修飾を有する、(a)、(b)または(c)に示される1組のCDR配列;である重鎖可変領域をこれらの抗体は含む。
他の実施形態において、重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3配列は、それぞれ配列番号5、6および7に記載されている配列である。
さらに他の実施形態において、重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3配列は、それぞれ配列番号9、10および11に記載されている配列である。
さらに他の実施形態において、重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3配列は、それぞれ配列番号13、14および15に記載されている配列である。
他の側面において、本発明は、(a)受容体の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合し、(b)上記の機能的特性(i)〜(iv)の少なくとも1つを示す、配列番号19およびその保存的配列修飾からなる群から選択されるCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体を提供する。
特定の実施形態において、CDR1、CDR2およびCDR3配列が、それぞれ配列番号17、18および19に記載されている配列であるか、あるいは前記CDR配列のいずれか1つ以上において保存的配列修飾を有する1組のCDR配列である軽鎖可変領域をこれらの抗体は含む。
他の実施形態において、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3配列は、それぞれ配列番号17、18および19に記載されている配列である。
他の側面において、主題発明は、(a)受容体の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合し、(b)上記の機能的特性(i)〜(iv)の少なくとも1つを示す、それぞれ配列番号15および19に記載の重鎖可変領域CDR3配列および軽鎖可変領域CDR3配列あるいは前記CDR3配列のいずれか1つ以上における保存的配列修飾を有する単離されたモノクローナル抗体を提供する。
特定の実施形態において、これらの抗体は、それぞれ配列番号13、14、15、17、18および19に記載の重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3配列ならびに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3配列あるいは前記CDR配列のいずれか1つ以上における保存的配列修飾を有する1組のCDR配列を含む。
他の実施形態において、重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3配列ならびに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、およびCDR3配列は、それぞれ配列番号13、14、15、17、18および19に記載されている配列である。
他の側面において、主題発明は、(a)受容体の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合し、(b)上記の機能的特性(i)〜(iv)の少なくとも1つを示す、配列番号4、8および12からなる群から選択される配列を含む重鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体を提供する。
他の側面において、主題発明は、(a)受容体の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合し、(b)上記の機能的特性(i)〜(iv)の少なくとも1つを示す、配列番号16からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体を提供する。
他の側面において、それぞれ配列番号12および16を含む重鎖可変領域および軽鎖可変領域をこれらの単離されたモノクローナル抗体は含む。
相同抗体
さらに他の実施形態において、主題発明の抗体は、本明細書記載の特異抗体のアミノ酸配列に対して相同のアミノ酸配列を有する重鎖および/または軽鎖可変領域を含み、前記抗体は、本発明の抗IL-13Rα1抗体の望ましい機能的特性を保持する。
例えば、本発明は、(a)受容体の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合し、(b)上記の機能的特性(i)〜(iv)の少なくとも1つを示す、配列番号4、8および12からなる群から選択される配列に対して、可変領域において少なくとも90%相同の重鎖可変領域配列を含む単離されたモノクローナル抗体を提供する。
“少なくとも90%相同の”は、少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99および100%相同の配列を含むことを意味する。
他の実施形態において、本発明は、(a)受容体の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合し、(b)上記の機能的特性(i)〜(iv)の少なくとも1つを示す、配列番号16に対して少なくとも90%の相同性を示す軽鎖可変領域配列を含む単離されたモノクローナル抗体を提供する。
特定の実施形態において、これらの単離されたモノクローナル抗体は、それぞれ配列番号12および16と少なくとも90%の相同性を示す重鎖および軽鎖可変領域を含む。
他の実施形態において、VHおよび/またはVLアミノ酸配列は、上記の配列に対して5%、96%、97%、98%または99%の相同性を示すことができる。それぞれ配列番号4、8および12のVH配列および/または配列番号16のVL配列に対して高い(すなわち90%以上)相同性を有するVHおよび/またはVL配列を有する抗体は、配列番号4、8および12ならびに/または配列番号16をコードする核酸分子の突然変異誘発(例えば、部位特異的またはランダム突然変異誘発)に続いて、本明細書記載の機能アッセイを用いて、保持された機能(すなわち、上記の(i)〜(iv)に記載の機能)に関してコードされた改変抗体を試験することにより得ることができる。
さらに他の実施形態において、本発明の抗体は、本明細書記載の特異抗体のCDR1、CDR2およびCDR3配列の組に対して相同性を示すCDR1、CDR2およびCDR3配列の組を有する重鎖および/または軽鎖可変領域を含み、前記抗体は本発明の抗hIL-13Rα1抗体の望ましい機能的特性を保持する。
例えば、主題発明は:(a)それぞれ配列番号5、6および7;(b)それぞれ配列番号:9、1011;または(c)それぞれ配列番号13、14および15;からなる群から選択される、1組のCDR1、CDR2およびCDR3配列に対して少なくとも90%の相同性を示す、1組のCDR1、CDR2およびCDR3配列を有する重鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体であって、受容体の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合し、上記の機能的特性(i)〜(iv)の少なくとも1つを示す前記抗体を提供する。
他の実施形態において、本発明は、それぞれ配列番号17、18および19からなる群から選択される1組のCDR1、CDR2およびCDR3配列に対して少なくとも90%の相同性を示す1組のCDR1、CDR2およびCDR3配列を有する軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体であって、受容体の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合し、上記の機能的特性(i)〜(iv)の少なくとも1つを示す前記抗体を提供する。
他の実施形態において、本発明は、それぞれ配列番号13、14、15、17、18および19からなる群から選択される、1組の重鎖および軽鎖可変領域CDR1、CDR2およびCDR3配列に対して少なくとも90%の相同性を示す、1組のCDR1、CDR2およびCDR3配列を有する重鎖可変領域ならびに1組のCDR1、CDR2およびCDR3配列を有する軽鎖可変領域を含む単離されたモノクローナル抗体であって、受容体の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合し、上記の機能的特性(i)〜(iv)の少なくとも1つを示す前記抗体を提供する。
本明細書において、2つのアミノ酸配列間、2組のCDR配列間または2つのヌクレオチド配列間の相同性パーセントは、2つの配列または2組のCDR配列間の一致率に等しい。2つの配列または2組のCDR配列間の一致率は、2つの配列または2組の対応するCDR配列の最適のアラインメントのために導入される必要がある、ギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れた(すなわち、関連する重鎖および/または軽鎖CDR配列を互いに比較するために)、該配列が共有する同じ位置の数の関数である(すなわち、相同性%=おなじ位置の数/位置の総数x100)。限定するものではないが、例として以下に記載されているように、数学アルゴリズムを用いて、配列の比較および配列間の一致率の測定を行うことができる。
アミノ酸配列および/またはヌクレオチド配列間の一致率は、一般に当該技術分野に公知の方法、例えばALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれた、Meyers and Miller, Comput. Appl. Biosci., 4:11-17, 1988 のアルゴリズムを用いて測定できる。加えて、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列間の一致率は、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを用い、そのデフォルトパラメータを用いて測定できる。
保存的修飾を有する抗体
本明細書において、用語“保存的配列修飾”および“保存的修飾”は同義で使用され、該アミノ酸配列を含む抗体の結合性を顕著には低下または変化させないが、このような特性を改善することができるアミノ酸改変を指すものとする。このような保存的修飾は、アミノ酸置換、付加および欠失を含み、好ましくは保存的アミノ酸置換を含む。当該技術分野で公知の標準法、例えば部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発により、本発明の抗体に修飾を導入できる。保存的アミノ酸置換は、類似した側鎖を有するアミノ酸残基でアミノ酸残基が置換されたものである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分枝側鎖を有するアミノ酸(例えばトレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。従って、本発明の抗体のCDR領域内の1以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基と置換することができ、本明細書記載の機能アッセイを用いて、保持された機能に関してこれらの改変抗体を試験することができる。
4B5、8B11または15F4と競合する抗体
他の実施形態において、本発明は、本明細書記載の抗体4B5、8B11または15F4と、hIL-13Rα1に対する結合を競合する抗hIL-13Rα1抗体を提供する。このような競合抗体は、一般的なIL-13Rα1結合アッセイにおいて、抗体4B5、8B11または15F4と交差競合する(例えば、統計的に有意に、これらの抗体の結合を競合的に阻害する)その能力に基づいて同定できる。ヒトIL-13Rα1に対する4B5、8B11または15F4の結合を阻害する試験抗体の能力により、ヒトIL-13Rα1に対する結合に関して試験抗体がその抗体と競合できることが明らかとなる。理論に拘束されるものではないが、このような抗体は、それが競合する抗体と、ヒトIL-13Rα1上の同じまたは関連した(例えば、構造的に類似したまたは空間的に近位である)エピトープと結合できる。ついで、4B5、8B11または15F4の少なくとも1つとの結合と競合する抗体を、(a)受容体の細胞外領域のドメイン3を介するhIL-13Rα1に対する結合および(b)上記の機能的特性(i)〜(iv)の少なくとも1つを有することに関して評価することができる。
特定の競合抗体は、hIL-13Rα1のドメイン3を含むペプチドにおける、配列番号1の位置248-252に対応する残基Val-Phe-Tyr-Val-Gln(配列番号44)と残基Ile-Leu-Glu-Val-Glu(配列番号45)との置換変異が、前記抗体と前記置換のないhIL-13Rα1ペプチドとの結合と比較して、前記抗体と得られた変異体hIL-13Rα1ペプチドとの結合の低下をもたらす競合抗体である。
他の競合抗体は、hIL-13Rα1のドメイン3を含むペプチドにおける、配列番号1の位置249に対応するフェニルアラニン残基とアラニン残基;配列番号1の位置250に対応するチロシン残基とアラニン残基;または配列番号1の位置252に対応するグルタミン残基とアラニン残基;のいずれか1つの置換変異が、前記抗体と前記置換のないhIL-13Rα1ペプチドとの結合と比較して、前記抗体と得られた変異体hIL-13Rα1ペプチドとの結合の低下をもたらす競合抗体である。
当該技術分野における任意の方法で競合抗体を製造することができ、ついで適切な競合アッセイでスクリーニングを行うことができる。本明細書記載のアッセイまたは当業者により容易に測定される他の方法を用いて、関連する機能活性を測定できる。
特定の実施形態において、競合抗体はヒト抗体である。他の実施形態において、競合抗体は、ヒト化抗体、霊長類化抗体またはキメラ抗体である。
他の実施形態において、競合抗体は完全長抗体である。
特定の競合抗体は、5x10-9M以下、より好ましくは2x10-9M以下、よりさらに好ましくは1x10-9M以下のKDでヒトIL-13Rα1に結合する。
設計され修飾された抗体
修飾された抗体を設計するための出発物質として、本明細書に記載のVHおよび/またはVL配列の1以上を有する抗体を用いて本発明の抗体を製造でき、この修飾された抗体は、出発抗体から改変された特性を有することができる。一方または両方の可変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)、例えば1以上のCDR領域および/または1以上のフレームワーク領域内の1以上の残基を修飾することにより抗体を設計することができる。これに加えて、あるいはこれに代えて、例えば抗体のエフェクター機能(単数または複数)を改変するために、定常領域(単数または複数)内の残基を修飾することにより抗体を設計することができる。
可変領域修飾のタイプの1つは、VHおよび/またはVLのCDR1、CDR2および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させ、それによって、対象とする抗体の1以上の特性(例えば結合親和性)を改善することである。変異(単数または複数)を導入するために部位特異的突然変異誘発またはランダム突然変異誘発を行うことができ、抗体結合または対象とする他の機能的特性への効果は、本明細書に記載され、実施例に示されるin vitroまたはin vivoアッセイで評価できる。該変異は、アミノ酸置換、付加また欠失であることができるが、好ましくは置換である。さらに、一般的にはCDR領域内の1、2、3、4または5残基が改変されるにすぎないが、好ましくはVHおよび/またはVLのCDR1、CDR2および/またはCDR3領域内の単に1つまたは2つの残基が改変される。
本発明の抗体は、例えば抗体の特性を改善するために、VHおよび/またはVL内のフレームワーク残基が修飾された抗体を含む。一般的には、このようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低下させるために行われる。例えば、アプローチの1つは、1以上のフレームワーク残基を対応する生殖系列配列に“復帰突然変異させる”ことである。より具体的には、体細胞変異を受けた抗体は、その抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含むことができる。このような残基は、抗体のフレームワーク配列と、その抗体が由来する生殖系列配列を比較することにより同定することができる。このような“復帰突然変異した”抗体もまた、本発明に含まれるものとする。
フレームワーク修飾のもう1つのタイプは、T細胞エピトープを除去し、それによって抗体の潜在的免疫原性を低下させるために、フレームワーク領域において、あるいは1以上のCDR領域においてさえも、1以上の残基を変異させることを含む。このアプローチは“脱免疫化”とも呼ばれ、Carrらにより米国特許出願第20030153043号にさらに詳細に説明されている。
フレームワークまたはCDR領域に加える修飾に加えて、あるいはこれに代えて、一般的には抗体の1以上の機能的特性、例えば血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、および/または抗原依存性細胞障害を改変するために、Fc領域内の修飾を含むように本発明の抗体を設計することができる。さらにまた、本発明の抗体は、同様に抗体の1以上の機能的特性を改変するために化学修飾することができ(例えば、1以上の化学的部分を抗体に結合させることができる)、あるいは修飾してそのグリコシル化を改変することができる。これらの実施形態のそれぞれは、以下でさらに詳細に説明される。Fc領域における残基の番号付けは、上記のKabatら(1991)のEUインデックス(EU index)の番号付けである。
一実施形態において、例えば軽鎖および重鎖のアセンブリを容易にするか、あるいは抗体の安定性を増加させるかまたは低下させるために、ヒンジ領域におけるシステイン残基数が改変(例えば増加または低下)されるように、CH1のヒンジ領域が修飾される。このアプローチは、Bodmerらによる米国特許第5,677,425号においてさらに詳細に説明されている。
他の実施形態において、抗体の生物学的半減期を減少させるために、本抗体のFcヒンジ領域が変異される。このアプローチは、Wardらによる米国特許第6,165,745号にさらに詳細に記載されている。
他の実施形態において、本抗体は修飾されて、その生物学的半減期が増加する。種々のアプローチが可能である。例えば、Wardによる米国特許第6,277,375号に記載されているように、以下の変異:Thr252Leu、Thr254Ser、Thr256Pheの1以上を導入することができる。また、Prestaらによる米国特許第5,869,046号および第6,121,022号に記載されているように、生物学的半減期を増加させるために、CH1またはCL領域内で、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから選んだサルベージ受容体結合エピトープを含むように本抗体を改変することができる。
さらに他の実施形態において、本抗体のエフェクター機能(単数または複数)を改変するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換することによりFc領域が改変される。例えば、米国特許第5,624,821号および第5,648,260号(共にWinterらによる)を参照のこと。
他の例において、本抗体が改変されたC1q結合および/または低下もしくは破壊された補体依存性細胞障害(CDC)を有するように、アミノ酸残基329、331および322から選択される1以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基で置換することができる。このアプローチは、Idusogieらにより、米国特許第6,194,551号にさらに詳細に説明されている。
他の例において、アミノ酸位置231および239の内の1以上のアミノ酸残基が修飾され、それによって補体を結合させる本抗体の能力が改変される。このアプローチは、BodmerらによりWO94/29351においてさらに詳細に説明されている。
さらに他の例において、1以上のアミノ酸を修飾することにより、Fc領域が修飾されて、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する本抗体の能力および/またはFcγ受容体に対する本抗体の親和性が増強される。例えば、PrestaらによるWO00/42072を参照のこと。さらに、FcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対するヒトIgG1の結合部位はマッピングされ、結合が改善されたバリアントが記載されている(Shieldsら、J. Biol. Chem. 276:6591-6604, 2001を参照のこと)。
本発明の特定の実施形態は、免疫グロブリン構造の一部として配列番号42を含む、本発明記載の抗体分子を提供する。図6に、配列番号42に記載のアミノ酸配列を含むIgG2m4の配列(米国特許公開第US20070148167(A1)号に記載されている)とIgG1、IgG2およびIgG4のアミノ酸配列との比較を示す。
さらに他の実施形態において、抗体のグリコシル化が改変される。例えば、非グリコシル化抗体(すなわち、グリコシル化を欠く抗体)を製造することができる。例えば、本抗体の抗原に対する親和性を高めるために、グリコシル化を改変することができる。このような炭水化物修飾は、例えば抗体配列内の1以上のグリコシル化部位を改変することにより行うことができる。例えば、可変領域フレームワークのグリコシル化部位を1以上取り除く1以上のアミノ酸置換を行い、それによってその部位でのグリコシル化を排除することができる。このようなアプローチは、Coらによる米国特許第5,714,350号および第6,350,861号においてさらに詳細に説明されている。
これに加えて、あるいはこれに代えて、改変されたタイプのグリコシル化を有する抗体、例えばフコシル残基量が低下した非フコシル化もしくは低フコシル化抗体またはGlcNac分岐構造の増加した抗体を製造することができる。このような改変されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を強化することが知られている。このような炭水化物修飾は、例えば改変されたグリコシル化装置を有する宿主細胞内で本抗体を発現させることにより達成できる。改変されたグリコシル化装置を有する細胞は当該技術分野で記載されており、本発明の組換え抗体を発現させ、それによって改変されたグリコシル化を有する抗体を産生する宿主細胞として使用することができる。
本発明により考えられる本抗体のもう1つの修飾にはPEG化がある。抗体をPEG化して、例えば、本抗体またはその抗原結合部分の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させることができる。抗体をPEG化するためには、一般的には、抗体または抗体フラグメントに1以上のPEG基が結合される条件下で、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と抗体とを反応させる。タンパク質をPEG化する方法は当該技術分野で公知であり、本発明の抗体に適用できる。例えば、NishimuraらによるEP0154316およびIshikawaらによるEP0401384を参照のこと。
抗体を修飾する方法
上記のように、本明細書に記載のVHおよびVL配列を有する抗IL-13Rα1抗体は、VHおよび/またはVL配列またはそれに結合されている定常領域(単数または複数)を修飾することにより新規抗IL-13Rα1抗体を製造するのに使用できる。従って、本発明の他の側面において、本発明の抗hIL-13Rα1抗体、例えば、4B5、8B11または15F4の構造的特徴は、本発明の抗体の機能的特性、例えば受容体の細胞外領域のドメイン3を介してヒトIL-13Rα1に結合することとhIL-13Rα1の1以上の機能的特性を阻害することを保持している、構造的に関連する抗hIL-13Rα1抗体を作製するために使用される。例えば、4B5、8B11もしくは15F4またはそれらの変異体の1以上のCDR領域は、既知のフレームワーク領域および/または他のCDRに組換えにより導入して、上記のように組換えにより操作されたさらなる本発明の抗IL-13Rα1抗体を作製することができる。他の種類の修飾は、以前のセクションに記載されているものを含む。工学的手法のための出発物質は、本明細書に記載のVHおよび/もしくはVL配列の1以上またはそれらのCDR領域の1以上である。設計された抗体を作製するためには、本明細書記載のVHおよび/もしくはVL配列の1以上またはそれらのCDR領域の1以上を有する抗体を実際に調製する(すなわち、タンパク質として発現する)必要はない。むしろ、該配列(単数または複数)に含まれる情報は、元の配列(単数または複数)由来の“第二世代”配列(単数または複数)が作製されるための出発物質として用いられ、ついで、“第二世代”配列(単数または複数)が作製され、タンパク質として発現される。改変抗体配列を作製し発現するために、一般的な分子生物学技術を用いることができる。
当該技術分野で利用可能なおよび/または本明細書記載の一般的なアッセイ、例えば本実施例に記載のアッセイを用いて、改変抗体の機能的特性を評価できる。本明細書に記載の望ましい特性を保持する抗IL-13Rα1抗体が選択される。
本発明の抗体を設計する方法の特定の実施形態において、抗IL-13Rα1抗体コード配列の全部または一部に沿ってランダムまたは選択的に変異を導入することができ、本明細書記載の結合活性および/または他の機能的特性に関して得られた修飾された抗IL-13Rα1抗体をスクリーニングすることができる。変異法は、当該技術分野で記載されている。例えば、ShortによるWO02/092780は、飽和突然変異誘発(saturation mutagenesis)、合成的連結反応アセンブリ(synthetic ligation assembly)またはそれらの組み合わせを用いる、抗体変異を作製しスクリーニングする方法を記載している。また、LazarらによるWO03/074679は、抗体の物理化学的特性を最適化するためのコンピュータスクリーニング法を用いる方法を記載している。
本発明のモノクローナル抗体の作製
本発明のモノクローナル抗体は、従来のモノクローナル抗体の方法論、例えばKohler & Milstein, Nature 256:495, 1975 の一般的な体細胞ハイブリダイゼーション技術を含む種々の技術により産生させることができる。一般的には、体細胞ハイブリダイゼーションが好ましいが、原則として、モノクローナル抗体を産生させるための他の技術、例えばBリンパ球のウイルス性または癌性形質転換を用いることができる。
ハイブリドーマを作製するために一般的に好ましい動物系はマウス系である。マウスにおけるハイブリドーマ作製は、よく確立された手順である。融合のための免疫感作した脾細胞の単離の免疫感作プロトコルおよび技術は当該技術分野で公知である。融合パートナー(例えば、マウス骨髄腫細胞)および融合手順もまた公知である。
一般的な分子生物学を用い、一般に本明細書における記載に従って作製されるマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて、本発明のキメラ抗体、ヒト化抗体または霊長類化抗体が作製される。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、対象とするマウスハイブリドーマから得ることができ、一般的な分子生物学技術を用いて非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように設計されることができる。例えば、キメラ抗体を作製するために、当該技術分野で公知の方法を用いて、マウス可変領域をヒト定常領域に結合させることができる(例えば、Cabillyらへの米国特許第4,816,567号を参照のこと)。ヒト化抗体を作製するために、当該技術分野で公知の方法を用いて、ヒトフレームワークにマウスCDR領域を挿入することができる(例えば、Winterへの米国特許第5,225,539号ならびにQueenらへの米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号および第6,180,370号を参照のこと)。同様に、霊長類化抗体を作製するために、当該技術分野で公知の方法を用いて、霊長類フレームワークにマウスCDR領域を挿入することができる(例えば、WO93/02108およびWO99/55369を参照のこと)。
また、“ベニヤ化(veneering)”のプロセスを用いてヒト化抗体を作製することができる。特有のヒトおよびマウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変領域の統計分析により、ヒトおよびマウス抗体において露出残基の正確なパターンは異なり、大部分の個別の表面位置は、少数の異なる残基に強い選択性を示すことが明らかとなった(Padlanら、Mol. Immunol. 28:489-498, 1991 およびPedersenら、J. Mol. Biol. 235:959-973, 1994 を参照のこと)。従って、そのフレームワーク領域における露出残基をヒト抗体において通例見られるものとは異なる露出残基に置換することにより、非ヒトFvの免疫原性を低下させることが可能である。タンパク質の抗原性は、表面接触性と関連しうるので、表面残基の置換により、ヒト免疫系に対してマウス可変領域を十分“不可視”にすることができる(同様に、Markら、Handbook of Experimental Pharmacology vol. 113: The pharmacology of monoclonal Antibodies, Springer-Verlag, pp105-134, 1994 および米国特許第6,797,492号を参照のこと)。抗体の表面のみが改変され、支持残基は改変されていないので、ヒト化のこの手順は“ベニヤ化”と呼ばれる。
さらにまたWO2004/006955は、非ヒト抗体の可変領域のCDR配列に対するカノニカルCDR構造タイプとヒト抗体配列、例えば生殖系列抗体遺伝子セグメントのライブラリーからの対応するCDRに対するカノニカルCDR構造タイプを比較することにより、ヒト抗体遺伝子から可変領域フレームワーク配列を選択すること基づく、抗体をヒト化する方法を記載している。非ヒトCDRに対して類似したカノニカルCDR構造タイプを有するヒト抗体可変領域は、ヒトフレームワーク配列を選択するためのヒト抗体配列のメンバーのサブセットを形成する。ヒトおよび非ヒトCDR配列間のアミノ酸類似性により、サブセットメンバーをさらに順位づけることができる。WO2004/006955の方法において、選択されたサブセットメンバーのヒトフレームワークを用いて、非ヒトCDRカウンターパートでヒトCDR配列を機能的に置き換え、それによって非ヒトおよびヒト抗体間のフレームワーク配列を比較することを必要とせずに高親和性で低免疫原性のヒト化抗体を提供するキメラ抗体を構築するためのフレームワーク配列を提供するために第1順位のヒト配列が選択される。この方法によって製造されたキメラ抗体もまた開示されている。
特定の実施形態において、本発明の抗体はヒトモノクローナル抗体である。IL-13Rα1に対して向けられるこのようなヒトモノクローナル抗体は、マウス免疫系よりはむしろヒト免疫系部分を持つトランスジェニックまたはトランスクロモソミックマウスを用いて作製できる。これらのトランスジェニックおよびトランスクロモソミックマウスは、本明細書において、それぞれHUMAB(登録商標)マウスおよびKMマウスと呼ぶマウスを含み、本明細書においては総称して“ヒトIgマウス”と呼ぶ。
HUMAB(登録商標)マウス (Medarex, Inc.)は、内因性μおよびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的変異と共に、組換えされていないヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含む(例えば、Lonbergら、Nature 368(6474):856-859, 1994 を参照のこと)。従って、このマウスにおいてはマウスIgMκの発現が低下しており、免疫感作に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子はクラススイッチおよび体細胞変異を受けて、高親和性ヒトIgGκモノクローナル抗体を生じる(Lonbergら(1994)(前記);概説:Lonberg, Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101, 1994; Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93, 1995 およびHarding and Lonberg, Ann. N.Y. Acad. Sci. 764:536-546, 1995)。HUMAB(登録商標)マウスの作製および使用ならびにこのマウスが有するゲノム修飾は、Taylorら、Nucleic Acids Research 20:6287-6295, 1992;Chenら、International Immunology 5:647-656, 1993;Tuaillonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3720-3724, 1993;Choiら、Nature Genetics 4:117-123, 1993; Chenら、EMBO J. 12:821-830, 1993; Tuaillonら、J. Immunol. 152:2912-2920, 1994;Taylorら、International Immunology 6:579-591, 1994;およびFishwildら、Nature Biotechnology 14:845-851, 1996 にさらに詳しく説明されている。さらにまた、米国特許第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,789,650号、第5,877,397号、第5,661,016号、第5,814,318号、第5,874,299号および第5,770,429号(すべてLonbergおよびKayへの);Suraniらへの米国特許第5,545,807号;WO92/03918、WO93/12227、WO94/25585、WO97/13852、WO98/24884およびWO99/45962(すべて、LonbergおよびKayへの);ならびにKormanらへのWO01/14424を参照されたい。
他の実施形態において、導入遺伝子上のヒト免疫グロブリン配列およびトランスクロモソームを有するマウス、例えばヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖トランスクロモソームを有するマウスを用いて、主題発明のヒト抗体を産生させることができる。このようなマウス(本明細書では“KMマウス”と呼ぶ)は、IshidaらへのWO02/43478において詳細に説明されている。
さらにまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する代わりのトランスジェニック動物系が当該技術分野で利用可能であり、本発明の抗IL-13Rα1抗体を産生させるのに使用できる。例えば、XENOMOUSE(登録商標)(Abgenix, Inc.)と呼ばれる代わりのトランスジェニック系を用いることができる。このようなマウスは、例えばKucherlapatiらへの米国特許第5,939,598号;第6,075,181号;第6,114,598号;第6,150,584号および第6,162,963号に記載されている。
さらに、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現する、代わりのトランスクロモソミック動物系が当該技術分野で利用可能であり、本発明の抗IL-13Rα1抗体を産生させるのに使用できる。例えば、ヒト重鎖トランスクロモソームおよびヒト軽鎖トランスクロモソームの両方を有するマウス(“TCマウス”と呼ばれる)を使用できる。このようなマウスは、Tomizukaら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722-727, 2000 に記載されている。さらにまた、ヒト重鎖および軽鎖トランスクロモソームを有するウシが当該技術分野で記載されており(Kuroiwaら、Nature Biotechnology 20:889-894, 2002)、本発明の抗IL-13Rα1抗体を産生させるのに使用できる。
ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ法を用いて、本発明のヒトモノクローナル抗体を作製することもできる。ヒト抗体を単離するためのこのようなファージディスプレイ法は当該技術分野で確立されている。例えば、Ladnerらへの米国特許第5,223,409号;第5,403,484号;および第5,571,698号;Dowerらへの米国特許第5,427,908号および第5,580,717号;McCaffertyらへの米国特許第5,969,108号および第6,172,197号;ならびにGriffithsらへの米国特許第5,885,793号;第6,521,404号;第6,544,731号;第6,555,313号;第6,582,915号および第6,593,081号を参照されたい。
免疫感作によりヒト抗体反応が生じうるようにヒト免疫細胞が再構成されたSCIDマウスを用いて、本発明のヒトモノクローナル抗体を作製することもできる。このようなマウスは、例えば、Wilsonらへの米国特許第5,476,996号および第5,698,767号に記載されている。
抗原への抗体結合の解析
例えば、一般的なELISAにより、IL-13Rα1への結合および受容体の細胞外領域のドメイン3を介する結合に関して本発明の抗体を試験することができる。同様に、IL-13Rα1に対する正の反応性を示すハイブリドーマをスクリーニングするためにELISAアッセイを使用することもできる。
選択された抗hIL-13Rα1モノクローナル抗体が抗体4B5、8B11または15F4と競合するかどうかを測定するために、標準的方法を用いて各抗体をビオチン化できる。実施例に記載されているように、IL-13Rα1をコーティングしたELISAプレートを用い、非標識モノクローナル抗体およびビオチン化モノクローナル抗体を用いる競合試験を行うことができる。ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼプローブを用いて、ビオチン化mAb結合を検出できる。hIL-13Rα1への結合に関して抗体間の競合を測定するために、BIACORE(登録商標)ベースの試験を用いることもできる。
同様に、hIL-13Rα1のドメイン3を含むペプチドにおける、配列番号1の位置248-252に対応する残基Val-Phe-Tyr-Val-Gln(配列番号44)と残基Ile-Leu-Glu-Val-Glu(配列番号45)との置換変異が、前記抗体と前記置換のないhIL-13Rα1ペプチドとの結合と比較して、抗IL-13Rα1抗体と得られた変異体hIL-13Rα1ペプチドとの結合の低下をもたらすかどうかを測定するためにELISAベースアッセイを用いることができる。配列番号1の他のセグメントの置換が抗IL-13Rα1抗体結合に影響をおよぼすかどうかを測定するために同じアプローチを用いることができる。
hIL-13Rα1のドメイン3を含むペプチドにおける、配列番号1の位置249に対応するフェニルアラニン残基とアラニン残基;配列番号1の位置250に対応するチロシン残基とアラニン残基;または配列番号1の位置252に対応するグルタミン残基とアラニン残基;のいずれか1つの置換変異が、前記抗体と前記置換のないhIL-13Rα1ペプチドとの結合と比較して、前記抗体と得られた変異体hIL-13Rα1ペプチドとの結合の低下をもたらすかどうか測定するためにELISAベースアッセイを用いることができる。
このようなアッセイに使用するのに適したhIL-13Rα1ペプチドは当業者により容易に決定され、完全長hIL-13Rα1のフラグメント、例えばファージディスプレイのために他のペプチドに融合されていることができる、受容体の細胞外領域または受容体の細胞外領域のドメイン3などを含む。
精製された抗体のイソタイプを決定するために、特定のイソタイプの抗体に特異的な試薬を用いてイソタイプELISAを行うことができる。
免疫コンジュゲート
他の側面において、本発明は、治療部分、例えばサイトトキシン、薬剤(例えば、免疫抑制剤)または放射性毒物を結合させた抗IL-13Rα1抗体またはそのフラグメントを特徴とする。本明細書においては、このような結合体を“免疫コンジュゲート”と呼ぶ。免疫コンジュゲートおよびそれを作製する方法は当該分野で公知である。
サイトトキシンのタイプ、リンカーおよび抗体に治療剤を結合させる方法に関するさらなる議論に関しては、Saitoら、Adv. Drug Deliv. Rev. 55:199-215, 2003; Trailら、Cancer Immunol. Immunother. 52:328-337, 2003; Payne, Cancer Cell 3:207-212, 2003; Allen, Nat. Rev. Cancer 2:750-763, 2002; Pastan and Kreitman, Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1089-1091, 2002; Senter and Springer, Adv. Drug Deliv. Rev. 53:247-264, 2001 も参照されたい。
2重特異性分子
他の側面において、本発明は、本発明の抗IL-13Rα1抗体を含む2重特異性分子を特徴とする。本発明の抗体を誘導体化するかまたは、他の機能的分子、例えば他のペプチドもしくはタンパク質(例えば、受容体に対する抗体またはリガンド)に結合させて、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する2重特異性分子を作製することができる。実際、本発明の抗体を誘導体化するかまたは2以上の他の機能的分子に結合させて、3以上の異なる結合部位および/または標的分子に結合する多重特異性分子を作製することは可能であり、本明細書において、このような多重特異性分子もまた用語“2重特異性分子”に含まれるものとする。
本発明の抗体をコードする核酸分子
本発明の他の側面は、本発明の抗体をコードする核酸分子に関する。核酸は、全細胞内に、細胞溶解物中に、または部分精製されたもしくは実質的に純粋な形で存在することができる。当該分野で公知のアルカリSDS法、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動などを含む標準法により、他の細胞成分または他の汚染物質、例えば、他の細胞核酸またはタンパク質から精製されたことを、核酸は“単離された”または“実質的に純粋にされた”という。Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York, 1987 を参照のこと。本発明の核酸は、例えば、DNAまたはRNAであることができ、イントロン配列を含むことも含まないこともできる。特定の実施形態において、核酸はcDNA分子である。
本発明の核酸は、一般的な分子生物学技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、本明細書にさらに詳しく説明されている、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスから作製されるハイブリドーマ)により発現される抗体に関しては、ハイブリドーマにより作製される抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、一般的なPCR増幅またはcDNAクローニング技術により得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリー(例えば、ファージディスプレイ法を用いて)から得られる抗体に関しては、抗体をコードする核酸はライブラリーから回収することができる。
本発明の特定の核酸分子は、モノクローナル抗体4B5、8B11または15F4のVHおよび/またはVL配列をコードする核酸分子である。4B5、8B11または15F4のVH配列をコードするDNA配列は、それぞれ配列番号21、25および29に示されている。15F4のVL配列をコードするDNA配列は、配列番号33に示されている。
本発明の他の核酸分子は、モノクローナル抗体4B5、8B11または15F4のVHおよびVL配列のCDRをコードする核酸分子である。
本明細書記載のヌクレオチド配列であって、本発明の抗体をコードする前記ヌクレオチド配列と少なくとも約90%同一であり、より好ましくは少なくとも約95%同一であるヌクレオチド配列を有する核酸もまた本発明に含まれる。同一性を決定するための配列比較法は当業者に公知であり、本明細書に記載のものを含む。
“少なくとも約90%同一である”とは、少なくとも約90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100%同一であることを含む。
VHおよびVLセグメントをコードするDNAフラグメントが得られたら、一般的な組換えDNA技術、例えば可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子またはscFv遺伝子に変換する技術によりこれらのDNAフラグメントをさらに操作することができる。重鎖定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であることができ、特定の実施形態においては、IgG1もしくはIgG4定常領域またはそれらの誘導体である。重鎖Fabフラグメント遺伝子に関しては、重鎖CH1定常領域のみをコードする他のDNA分子にVHをコードするDNAを作動可能に連結することができる。
本発明は、さらに、特定のハイブリダイゼーション条件下で開示された核酸(例えば、図2、3、4または5に示されるヌクレオチド配列を有する核酸)の相補鎖(単数または複数)にハイブリダイズし、受容体鎖の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合し、IL-13のシグナル伝達を阻害する抗体分子(すなわち、本発明の抗体)をコードする核酸を提供する。核酸をハイブリダイズさせる方法は当該分野で公知であり、例えば、Ausubel, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y., 6.3.1-6.3.6,1989を参照のこと。本明細書においては、中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、5X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、0.5%w/v SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)を含有する予洗液、約50%v/vホルムアミド、6X SSCのハイブリダイゼーション緩衝液を用い、ハイブリダイゼーション温度は55℃であり(あるいは、他の類似のハイブリダイゼーション溶液、例えば約50%v/vホルムアミドを含有する溶液を用い、42℃のハイブリダイゼーション温度で)、洗浄条件は60℃で0.5X SSC、0.1%w/v SDSを用いる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、例えば、45℃で6X SSCを用い、ついで68℃で0.1X SSC、0.2%SDSを用いて1回以上洗浄する。さらにまた、当業者は、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増加または低下させて、互いに少なくとも65、70、75、80、85、90、95、98または99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸が一般的に互いにハイブリダイズしたままであるようにハイブリダイゼーションおよび/または洗浄条件を操作することができる。ハイブリダイゼーション条件の選択に影響する基本的パラメータおよび適切な条件を工夫するための手引きは、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., chapters 9 and 11, 1989 およびAusubelら(eds)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., sections 2.10 and 6.3-6.4, 1995) に記載されており、例えばそのDNAの長さおよび/または塩基組成に基づいて、当業者は容易に決定することができる。
よって、他の側面において、配列番号21、25および29からなる群から選択される、配列番号33のヌクレオチド配列の相補鎖に中程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインおよび/またはヌクレオチド配列の相補鎖に中程度のストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインを含む抗hIL-13Rα1抗体を本発明は提供する。一実施形態において、前記軽鎖可変ドメインは、配列番号33のヌクレオチド配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含み、かつ/または前記重鎖可変ドメインは配列番号21、25および29からなる群から選択されるヌクレオチド配列の相補鎖にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列を含む。
本発明の特定の実施形態は、抗体の一部に、FcγR受容体またはC1qへの結合の低下をもたらすFc領域における操作を有する抗体分子をコードする核酸を含む。本発明の特定の実施形態の1つは、配列番号43に示される配列を有する単離された核酸である。
本発明のモノクローナル抗体の産生
他の側面において、本発明は、本発明の抗体をコードする核酸を含むベクターを提供する。本発明によるベクターは、限定するものではないが、使用目的に適したレベルで望ましいペプチドを発現させるのに適したプラスミドおよび他の構築物(例えば、ファージまたはファージミド)を含む。
他の側面において、本発明は、本発明の抗体をコードする核酸を含む宿主細胞(単数または複数)を提供する。一般的には、宿主細胞は本明細書記載の発現ベクターを含む。
例えば、当該分野で公知の組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション法の組み合わせを用いて、宿主細胞内で本発明の抗体を産生させることができる(例えば、Morrison Science 229:1202, 1985)。
例えば、本抗体またはその抗体フラグメントを発現するために、一般的な分子生物学技術(例えば、PCR増幅または、対象とする抗体を発現するハイブリドーマを用いるcDNAクローニング)により部分または完全長軽鎖および重鎖をコードするDNAを得ることができ、遺伝子が転写および翻訳調節配列に作動可能に連結されているように、このDNAを発現ベクターに挿入することができる。ここにおいて、用語“作動可能に連結されている”は、ベクター内の転写および翻訳調節配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するその意図された機能に役立つように抗体遺伝子がベクターに連結されていることを意味するものとする。発現ベクターおよび発現調節配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、別々のベクターに挿入することができるが、より一般的には、両方の遺伝子が同じ発現ベクターに挿入される。抗体遺伝子は、標準法(例えば、抗体遺伝子フラグメントおよびベクター上の相補的制限部位の連結反応または、制限部位が存在しない場合には平滑末端連結反応)により発現ベクターに挿入される。VHセグメントがベクター内のCHセグメント(単数または複数)に作動可能に結合され、VLセグメントがベクター内のCLセグメントに作動可能に結合されているように、望ましいイソタイプの重鎖定常および軽鎖定常領域をすでにコードする発現ベクターに本明細書記載の軽鎖および重鎖可変領域を挿入することにより、本明細書記載の軽鎖および重鎖可変領域を用いて任意の抗体イソタイプの完全長抗体遺伝子を作製することができる。これに加えて、あるいはこれに代えて、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードすることができる。シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、抗体鎖遺伝子をベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは免疫グロブリンシグナルペプチドであることもでき、異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であることもできる。
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を調節する調節配列を含む。用語“調節配列”は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を調節するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現調節因子(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むものとする。このような調節配列は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA, 1990 に記載されている。調節配列の選択を含む発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、目的とするタンパク質の発現レベルなどの要素に左右されることは当業者には明らかであろう。哺乳動物宿主細胞発現のための特定の調節配列は、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指示するウイルス領域、例えばサイトメガロウイルス(CMV)、Simianウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主後期プロモーター(AdMLP))およびポリオーマ由来のプロモーターおよび/またはエンハンサーを含む。また、非ウイルス調節配列、例えばユビキチンプロモーターまたはβグロビンプロモーターを用いることができる。
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、さらなる配列、例えば宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)および選択マーカー遺伝子を含むことができる。選択マーカー遺伝子により、ベクターが導入された宿主細胞の選択が容易になる(例えば、米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号(すべてAxelらによる))。例えば、一般的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を付与する。特定の選択マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(dhfr宿主細胞においてメトトレキサート選択/増幅に使用する)およびneo遺伝子(G418選択に使用)を含む。
軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクター(単数または複数)は、標準法により宿主細胞にトランスフェクトされる。種々の形の用語“トランスフェクション”は、原核または真核宿主細胞への外因性DNAの導入に一般的に用いられるさまざまな技術、例えばエレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、DEAEデキストラン形質転換などを含むものとする。原核または真核宿主細胞のいずれにおいても本発明の抗体を発現することは可能であるが、真核細胞および哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が一般的には好ましい。なぜなら、このような真核細胞、特に哺乳動物細胞は、原核細胞よりも、集合し、正しく折りたたまれ免疫学的に活性な抗体を分泌しやすいからである。
本発明の組換え抗体を発現させるための特定の哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980 に記載されているDHFR-CHO細胞を含み、DHFR選択マーカー、例えばKaufman and Sharp, Mol. Biol. 159:601-621, 1982 に記載されているものを用いる)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞を含む。特に、NSO骨髄腫細胞での使用のためには、他の特定の発現系は、WO87/04462、WO89/01036およびEP338,841に開示されているGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが宿主細胞に導入される場合、宿主細胞における抗体の発現または、宿主細胞を増殖させる培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間宿主細胞を培養することにより抗体が産生される。一般的なタンパク質精製方法を用いて、細胞および/または培地から抗体を回収できる。
よって、他の側面において、本発明は、本発明の抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することにより本発明の抗体を産生する方法を提供する。前記方法は、抗体を精製することをさらに含むことができる。
ドメイン3を介して結合する抗体の同定
他の側面において、本発明は、受容体の細胞外領域のドメイン3を介してhIL-13Rα1に結合することができる抗体を同定する方法を提供する。
一側面において、本方法は、hIL-13Rα1の細胞外領域のドメイン1、ドメイン2またはドメイン3のいずれかを含むペプチドへの抗体の結合を試験することを含む。ドメイン3を含むペプチドに結合するが、受容体の細胞外領域のドメイン1または2への結合をほとんど示さない抗体を選択することができる。
他の側面において、本方法は、受容体の細胞外領域に結合する抗体の、受容体のドメイン1および2への結合を試験することを含む。ドメイン1および2に結合しない抗体を、ドメイン3に結合する可能性があるとして選択することができる。
種々のドメインを含むペプチドへの結合またはその非存在は、標準法により容易に測定できる。例えば実施例3を参照のこと。
hIL-13Rα1の細胞外領域の1つまたは2つのドメインを含み、hIL-13Rα1の細胞外領域の他のドメイン(単数または複数)を欠くペプチド(すなわち、hIL-13Rα1の細胞外領域の短縮型)は、このような方法に有用である。例えば、ドメイン3を含むがドメイン1および2を欠くペプチドはこの方法に有用であることができ、ドメイン1および2を共に含むがドメイン3を欠くペプチドもまた有用であることができる。
本方法の能力、例えば精製、固定化、検出または提示を助けるために、hIL-13Rα1の細胞外領域の短縮型を他の配列に融合させることができる。関連するドメインを含むペプチドのファージへの提示もまた、これらの方法に使用する有用なアプローチである。例えば実施例3を参照のこと。
hIL-13Rα1の細胞外領域は、配列番号1のアミノ酸1-317に対応する。本発明によれば、hIL-13Rα1の細胞外領域のドメイン1は、配列番号1のアミノ酸1-100に対応し、ドメイン2は、配列番号1のアミノ酸101-200に対応し、ドメイン3は、配列番号1のアミノ酸201-317(配列番号37)に対応する。ドメインの末端に含まれる正確なアミノ酸残基に関しては少し裁量の余地があることは、当業者には明らかであろう。
よって、本発明は、(a)hIL-13Rα1の細胞外領域のドメイン1;(b)hIL-13Rα1の細胞外領域のドメイン2;(c)hIL-13Rα1の細胞外領域のドメイン3;または(d)hIL-13Rα1の細胞外領域のドメイン2および3;を含むペプチドであって、いずれの場合にもhIL-13Rα1の細胞外領域の他のドメインを含まない前記ペプチドを提供する。
特定の実施形態において、本発明は、(a)配列番号1のアミノ酸1-100;(b)配列番号1のアミノ酸101-200;(c)配列番号1のアミノ酸201-317;または(d)配列番号1のアミノ酸1-200;を含むペプチドであって、いずれの場合にもhIL-13Rα1の細胞外領域の他のドメインを含まない前記ペプチドを提供する。
他の側面において、本発明は、hIL-13Rα1の細胞外領域のこのような短縮型をコードする核酸を提供する。よって、他の側面において、本発明は、(a)hIL-13Rα1の細胞外領域のドメイン1;(b)hIL-13Rα1の細胞外領域のドメイン2;(c)hIL-13Rα1の細胞外領域のドメイン3;または(d)hIL-13Rα1の細胞外領域のドメイン2および3;を含むペプチドであって、いずれの場合にもhIL-13Rα1の細胞外領域の他のドメインを含まない前記ペプチドをコードする核酸を提供する。
特定の実施形態において、本発明は、(a)配列番号1のアミノ酸1-100;(b)配列番号1のアミノ酸101-200;(c)配列番号1のアミノ酸201-317;または(d)配列番号1のアミノ酸1-200;を含むペプチドであって、いずれの場合にもhIL-13Rα1の細胞外領域の他のドメインを含まない前記ペプチドをコードする核酸を提供する。
他の側面において、本発明は、hIL-13Rα1の細胞外領域の短縮型をコードする前記核酸を含むベクターを提供する。本発明によるベクターは、限定するものではないが、使用目的に適したレベルで望ましいペプチドを発現させるのに適したプラスミドおよび他の構築物(例えば、ファージまたはファージミド)を含む。例えば、Sambrook & Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual: 3rd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press を参照のこと。大部分のクローニング目的にはDNAベクターを使用できる。典型的なベクターは、プラスミド、修飾されたウイルス、バクテリオファージ、コスミド、酵母人工染色体および他の形のエピソームまたは組み込みDNAを含む。特定の遺伝子導入、組換えペプチドの作製または他の用途のための適切なベクターを決定することは、十分に当業者の範囲内である。特定の実施形態において、組換え遺伝子に加えて、該ベクターは、宿主細胞内での自律複製のための複製起点、適切な調節配列、例えばプロモーター、終結配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、選択マーカー、限定された数の有用な制限酵素部位、必要に応じて他の配列および高コピー数の潜在能力も含むことができる。ペプチド産生のための発現ベクターの例は当該分野で公知である。必要に応じて、当該分野で公知の技術を用いて、対象とするペプチドをコードする核酸を宿主染色体に組み込むことができる。エピソームに保持されたまたは人工染色体に組み込まれた核酸もまたプラスミド上で発現させることができる。宿主細胞に核酸を導入するために、当業者に利用可能な任意の技術を用いることができる。発現ベクターに対象とする核酸分子をサブクローニングし、このベクターを用いて宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトする方法および宿主細胞にそれぞれの発現ベクターを導入し、適切な条件下で宿主細胞を培養するステップを含む実質的に純粋なタンパク質を製造する方法は公知である。このように産生されたペプチドは、従来の方法で宿主細胞から採取することができる。対象とする細胞に核酸を導入するのに適した技術は、使用される細胞のタイプに左右される。一般的技術は、限定するものではないが、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクションおよび対象とする細胞株に適したウイルス(例えば、レトロウイルス、ワクシニア、バキュロウイルスまたはバクテリオファージ)を用いる形質導入を含む。
他の側面において、本発明は、既述の開示された受容体短縮型をコードする核酸を含む単離された細胞(単数または複数)を提供する。原核生物(例えば、大腸菌(E. coli)、BacillusおよびStreptomyces)由来の細胞株ならびに真核生物(例えば、酵母、昆虫および哺乳動物)由来の細胞株を含むが限定されない種々の異なる細胞株を、このようなペプチドの組換え産生に使用できる。本明細書に記載の核酸を含む、トランスジェニック植物を含む植物細胞およびトランスジェニック動物を含む動物細胞(ヒト以外)もまた本発明の一部として考えられる。
組成物および医薬組成物
他の側面において、本発明は、少なくとも1つのさらなる成分と共に製剤化される本発明のモノクローナル抗体の1つまたは組み合わせを含む組成物、例えば医薬組成物を提供する。このような組成物は、本発明の1つまたは組み合わせの(例えば、2以上の異なる)抗体または免疫コンジュゲートもしくは2重特異性分子を含むことができる。例えば、本発明の医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合するかまたは相補的活性を有する抗体の組み合わせ(または免疫コンジュゲートもしくは2重特異性抗体)を含むことができる。
従って、本発明記載の、本発明に使用する医薬組成物は、活性成分に加えて、医薬的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤を含むことができる。担体または他の材料の正確な性質は、投与経路によって決まり、投与経路は経口または注射であることができ、例えば静脈内であることができる。
医薬的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌薬、張度を調節するために用いる薬剤、緩衝液、キレート剤ならびに吸収遅延剤などを含む。医薬活性物質のためのこのような媒質および薬剤の使用は当該分野で公知である。任意の従来の媒質または薬剤が活性成分と適合しない場合を除いて、治療用組成物におけるそれらの使用が考えられる。補助活性成分もまた組成物に組み込むことができる。
注射用途に適した医薬形は、滅菌水溶液(水溶性の場合)および即座に使用できる滅菌注射液製剤のための滅菌粉末を含む。これは製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物および植物油を含む溶媒または希釈液であることができる。例えば界面活性剤を用いることにより、適切な流動性を保つことができる。種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チルメロサルなどにより、微生物の活動を予防することができる。多くの場合、張度を調節する薬剤、例えば糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましいと考えられる。組成物中に吸収を遅延する薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することにより、注射用組成物の持続吸収が得られる。組成物は、緩衝液およびキレート剤を含むこともできる。
適切な溶媒中に活性成分および場合により必要に応じて他の活性成分と共に活性化合物を必要な量混合し、ついで濾過滅菌または他の適切な滅菌手段により滅菌注射液が調製される。滅菌注射液の製造のための滅菌粉末の場合は、適切な調製方法は、活性成分に任意のさらに望ましい成分を加えた粉末を与える、真空乾燥および凍結乾燥技術を含む。
このような治療上有用な組成物における活性化合物の量は、適切な投与量が得られる量である。
用法・用量は、最適の望ましい反応(例えば、治療反応)が得られるように調節される。例えば、単回ボーラスを投与することができ、時間と共に数回の分割量を投与することもでき、あるいは治療状況の緊急性により、前述のように投与量を比例的に増減することもできる。投与を簡略化し、投与量を均一にするために、非経口組成物を投与単位形に製剤化することが特に都合がよい。本明細書において、投与単位形は治療を受ける被験者の単位投与量として適した物理的に分離した単位のことを言い、必要な医薬担体を加えた、望ましい治療効果を得るために算出された活性化合物の所定量を各単位は含む。本発明の投与単位形に関する仕様書は、活性化合物の独特の特性および得られる特定の治療効果に直接依存して決められる。
抗体の投与に関しては、投与量は宿主体重の約0.01〜100mg/kg、より一般的には0.05〜25mg/kgである。例えば、投与量は、0.3mg/体重(kg)、1mg/体重(kg)、3mg/体重(kg)、5mg/体重(kg)または10mg/体重(kg)であることができ、あるいは1〜10mg/kgであることができる。典型的な用法・用量は、毎週1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回または毎月1回の投与を含むことができる。
方法によっては、異なる結合特異性を有する2以上のモノクローナル抗体が同時に投与される。この場合、投与される各抗体の投与量は前記の範囲内にある。
また、抗体は持続放出製剤で投与することができ、この場合は投与頻度は少なくてすむ。投与量および投与頻度は患者における抗体の半減期に応じて変化する。投与量および投与頻度は、処置が予防的であるか治療的であるかに応じて変化しうる。予防的投与においては、長期にわたって、比較的低い頻度で、比較的低い投与量が用いられる。残りの人生にわたって処置を受け続ける患者もいる。治療的投与においては、疾患の進行が抑制または停止されるまで、好ましくは、疾患の症状の部分的または完全な改善を患者が示すまで、比較的短い間隔で比較的高用量が必要とされる場合がある。その後、患者は予防的投与を受けることができる。
特定の患者、組成物および投与方法に関して、患者に毒性を示さないで、望ましい治療反応を得るのに有効な活性成分の量を得るために、本発明の医薬組成物における活性成分の実際の投与量レベルを変えることができる。用いる本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与回数、用いられる特定の化合物の排泄率、処置期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて用いられる他の薬物、化合物および/または物質、年齢、性別、体重、状態、治療を受ける患者の一般健康状態および以前の病歴ならびに医学業界に公知の同様な要因を含む種々の薬物動態学的因子に基づいて選択される投与量レベルが決まる。
当該技術分野で公知の種々の方法の1以上を用いて、1以上の投与経路により本発明の組成物を投与できる。当業者に明らかなように、投与経路および/または投与方法は望ましい結果に基づいて変化するであろう。本発明の抗体のための特定の投与経路には、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下または他の注射投与経路、例えば注入によるものを含む。
また、本発明の抗体は、局所、表皮または粘膜投与経路などの非注射経路により、例えば、鼻腔内、経口、経膣、直腸内、舌下または局所に投与することができる。
例えばインプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化デリバリーシステムを含む徐放性製剤などのように、急速な放出に対して化合物を保護する担体を用いて活性化合物を製剤化できる。エチレン酢酸ビニル、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸などの、生分解性生体適合性ポリマーを使用できる。このような製剤の製造のための多くの方法は、特許権を与えられているか、あるいは一般に当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978 を参照のこと。
当該技術分野で公知の医療用具を用いて、治療用組成物を投与できる。例えば、特定の実施形態において、無針皮下注射器、例えば米国特許第5,399,163号;第5,383,851号;第5,312,335号;第5,064,413号;第4,941,880号;第4,790,824号;または第4,596,556号に開示された装置を用いて本発明の治療用組成物を投与できる。
本発明の使用および方法
IL-13Rα1を発現する細胞と本発明の抗体とを、前記抗体とIL-13Rα1との結合を可能にする条件下で接触させることによるIL-13Rα1媒介シグナル伝達を阻害する方法に、本発明の抗体を使用できる。本発明の特定の実施形態は、細胞がヒト細胞である方法を含む。
本発明の抗体は、ヒトまたは動物被験者における診断または治療方法に使用できる。
例えば、種々のIL-13に関連する障害および疾患を治療または予防するために、これらの分子を被験者に投与することができる。本明細書において、用語“被験者”はヒトを含み、該抗体が適切な交差反応性を有する場合、非ヒト動物を含む。非ヒト動物はヒト以外の霊長類を含むことができる。本方法は、IL-13に関連する障害または疾患を有するヒト患者を治療するのに特に適している。IL-13Rα1に対する抗体が他の薬剤と共に投与される場合、これら2つは順次または同時に投与されることができる。
よって、一側面において、本発明は、治療を必要とする被験者におけるIL-13に関連する疾患または障害を、前記被験者に本発明の抗体またはかかる抗体を含む組成物の有効量を投与することにより治療する方法を提供する。IL-13の発現または活性が正常または健常被験者と比較して上昇または低下している例を含めて、疾患または障害の徴候または症状がIL-13の発現、活性または変異により媒介される場合、このような疾患または障害は“IL-13に関連する”といわれる。IL-13に関連する疾患または障害の例は本明細書に開示されている。
本明細書において、用語“治療すること”および“治療”は治療処置を指し、予防的または予防措置を含むことができる。例えば、治療により、IL-13が関連する疾患または障害の症状の重篤度および/または頻度の抑制、IL-13が関連する疾患または障害の症状および/または基礎原因の除去または症状および/またはその基礎原因の発生の予防をもたらすことができる。従って、該治療は、“治癒”をもたらすのではなく、むしろ症状の改善をもたらすことができる。本発明の抗体または該抗体を含む組成物の有効量を被験者に投与することによる、IL-13に関連する疾患または障害を示す被験者におけるIL-13Rα1媒介シグナル伝達の阻害を治療は含む。
本明細書において、用語“有効量”は、望ましい治療または予防効果またはアウトカムをもたらす、あるいはIL-13Rα1の活性のを阻害する薬剤の十分な量を意味する。望ましくない効果、例えば副作用が望ましい治療効果とともに現れる場合がある。従って、適切な“有効量”を決定する場合に、医師は、潜在的利点と潜在リスクとの釣り合いをとる。必要とされる薬剤の正確な量は、種、年齢、被験者の体調、投与方法などの要素に応じて、被験者により変わりうる。従って、正確な“有効量”を明記することはできない。しかしながら、当業者は、被験者の寸法、被験者の症状の重篤度および選択された特定の組成物または投与経路などの要素に基づいて、どのような個々の場合においても適切な有効量を容易に決定することができる。
同様に、IL-13に関連する障害および疾患の治療のための医薬の製造に本発明の抗体を使用する方法もまた考えられる。
他の側面において、抗体とIL-13Rα1との複合体の形成を可能にする条件下で、本発明の抗体と、試料および対照試料とを接触させることにより、IL-13Rα1(例えば、ヒトIL-13Rα1)の存在を検出する方法またはIL-13Rα1の量を検出する方法を本発明は提供する。ついで、複合体の形成が検出されるが、ここで、対照試料と試料との複合体形成における差異は、試料中のIL-13Rα1の存在を示す。
本発明の組成物(例えば、抗体、免疫コンジュゲートおよび2重特異性分子)および使用説明書を含むキットもまた本発明の範囲内である。該キットは、少なくとも1つのさらなる試薬または1以上のさらなる本発明の抗体(例えば、第1の抗体とは異なる標的抗原上のエピトープに結合する相補的活性を有する抗体)をさらに含むことができる。キットは、一般的にはキットの内容物の使用目的を示すラベルを含む。用語“ラベル”は、キット上またはキットとともに供給される、あるいはキットに別なふうに伴う任意の筆記物または記録物を含む。
本発明の抗体を用いることができるIL-13に関連する障害および疾患の例は、限定するものではないが、喘息、COPD、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、食道好酸球増加症、ホジキンリンパ腫、炎症性腸疾患、乾癬、乾癬性関節炎または線維症を含む。特定の実施形態において、IL-13に関連する障害または疾患は喘息である。IL-13に関連する障害および疾患に関するさらなる情報は、本明細書に記載されている。
喘息は、下部気道の炎症により引き起こされる慢性肺疾患であり、頻発する呼吸困難を特徴とする。患者の気道は過敏であり、いつでも、症状がないときでさえ、ある程度腫れあがるかあるいは炎症を起こしている。炎症は気道狭窄を引き起こし、肺を出入りする空気流が低下し、呼吸が困難になり、喘鳴、胸部絞扼感および咳を引き起こす。喘息は、アレルゲン(例えば、室内塵ダニ、花粉、カビ)、刺激物(例えば、煙、香り、悪臭)、呼吸器感染、運動および乾燥した天候に対する過敏性により引き起こされる。これらの誘因は気道を刺激し、気道の内壁は膨れて炎症がより強くなり、ついで粘液が気道をふさぎ、呼吸が困難になり負担がかかるようになるまで気道周辺の筋肉が締め付けられ、喘息症状が現れる。
空気アレルゲンおよび他の刺激に対する調節不全Th2反応により、喘息炎症および他の病状が引き起こされる、動物モデルおよび患者からの有力な根拠が存在する(Busse ら, Am. J. Resp. Crit. Care Med. 1995 152(1):388-393)。特に、IL-13は、気道過敏性、好酸球増加症、杯細胞化生および粘液分泌過多を含む、肺における種々の細胞性反応を引き起こす主要なエフェクターサイトカインであると考えられている。
IL-13をコードする遺伝子は、染色体5q31に位置する。この領域はまた、IL-3、IL-4、IL-5、IL-9およびGM-CSFをコードする遺伝子も含み、喘息と結び付けられている。喘息およびアトピーと関連するIL-13の遺伝的変異体が、プロモーターおよびコード領域の両方において見出されている(Vercelli, Curr. Opin. Allergy Clin. Immunol. 2(5):389-393, 2002)。コード変異体であるGln130IL-13(本明細書においては、Q130IL-13と呼ぶ)に関する機能的研究データが利用可能である。第4エクソンで見られる+2044 G→A一塩基多形(SNP)は、位置130においてアルギニンとグルタミンとの置換をもたらす(Q130IL-13)。このバリアントは、日本人およびヨーロッパ人の集団における喘息、IgEレベルの上昇およびアトピー性皮膚炎と関連していることが見出されている。Q130IL-13は、野生型IL-13と比較して安定性が増していると考えられている。これはまた、IL-13Rα2デコイ受容体に対してやや低い親和性を有し、これらの所見と一致して、Q130IL-13バリアントに関してホモ接合型の患者においては、非ホモ接合型患者と比較してより高い中央値の血清IL-13レベルが観察される。これらの結果は、IL-13の局所および全身濃度にQ130IL-13が影響を与えうることを示している(Kazuhikoら、J. Allergy Clin. Immunol. 109(6):980-987, 2002)。
アトピー性および非アトピー性喘息患者の両方において、IL-13レベルの上昇が測定されている。研究の1つにおいて、正常対照患者における8pg/mlと比較して、喘息患者においては平均血清IL-13レベル50pg/mlが測定されている(Leeら、J. Asthma 38(8):665-671, 2001)。同様に、血漿、気管支肺胞洗浄液、肺生検試料および痰においても、IL-13レベルの上昇が測定されている(Berryら、J Allergy Clin. Immunol 114(5):1106-1109, 2004; Kroegelら、Eur Respir. J. 9(5):899-904, 1996; Huangら、J. Immunol. 155(5):2688-2694, 1995; Humbertら、J. Allergy Clin. Immunol. 99(5):657-665, 1997)。
アレルギー性喘息の急性および慢性のマウスモデルの両方において、病状の促進にIL-13が果たす重要なエフェクターの役割を多くの研究が明らかにしている。これらのモデルにおいて、マウスのIL-13生物活性を中和するために、高親和性IL-13受容体(IL-13Rα2)または抗IL-13ポリクローナル抗体が用いられている。アレルゲンチャレンジ時におけるIL-13の遮断により、OVAで誘発される気道過敏性、好酸球増加症および杯細胞化生が完全に阻害された。対照的に、感作後およびアレルゲンチャレンジ期にIL-4に対する抗体を投与しても、喘息症状を部分的にしか抑制しなかった。従って、外因性のIL-4およびIL-13は共に喘息様症状を引き起こすことができるが、IL-13のエフェクター活性は、IL-4のエフェクター活性よりもまさっていると思われる。これらのデータは、免疫誘導にIL-4が果たす主な役割(特に、Th2細胞の増殖および気道への動員ならびにIgE産生)を示唆しているのに対し、IL-13は、気道過敏性、粘液過剰産生および細胞炎症を含む種々のエフェクターアウトカムに主に関与していると考えられる(Wills-Karpら、Science 282:2258-2261, 1998; Grunigら、Science 282:2261-2263, 1998; Taubeら、J. Immunol. 169:6482-6489, 2002; Bleaseら、J. Immunol 166(8):5219-5224, 2001)。
補足実験において、トランスジェニックマウスにおける過剰発現または野生型マウスの気管へのIL-13タンパク質の滴下により、肺IL-13レベルが上昇している。どちらの設定においても、喘息様の特徴;コリン作動性刺激に対する非特異的気道過敏性、肺好酸球増加症、上皮細胞過形成、粘液細胞化成、上皮下線維症、気道閉塞およびシャルコー・ライデン結晶が誘導された。加えて、IL-13は、肺におけるマトリックスメタロプロテアーゼおよびカテプシンプロテアーゼの強力な刺激因子であり、肺気腫性変化および粘液化成をもたらすことが見出された。従って、IL-13は、喘息およびCOPD疾患症状のいずれにおいても重要なエフェクター分子であることができる(Zhuら、J. Clin. Invest. 103(6):779-788, 1999; Zhengら、J. Clin. Invest. 106(9):1081-1093, 2000)。
十分に検証された動物モデルにおいて、アレルギー性喘息の主要な臨床的および病理学的特徴のいくつかを生じるのにIL-13活性は必要であり十分でもあることをこれらのデータは示している。
COPDは、気腫および慢性気管支炎を含むいくつかの臨床症候群を含む一般名である。症状は喘息に類似し、COPDは同じ医薬で治療できる。COPDは、慢性かつ進行性で、多くは不可逆的な気流閉塞を特徴とする。疾患の経過に対する個体の寄与は知られていないが、喫煙はこの症例の90%を引き起こすと考えられている。症状は、咳、慢性気管支炎、息切れおよび呼吸器感染を含む。最終的に、この疾患は重篤な能力障害および死をもたらすと考えられる。少なくとも3ヵ月の大半続き、2年にわたる咳または喀痰の病歴を有し、他の説明のつかない患者は慢性気管支炎と診断される。肺気腫は、気腔の異常な恒久的拡大と肺胞壁の破壊を特徴とする。
IL-13は、COPDの発症に関与すると示唆されている。COPDを発症しているヒト喫煙者は、肺実質に多くの炎症性細胞型(好中球、マクロファージ、好酸球)を有している。IL-13は炎症誘発性Th2サイトカインである。従って、気腫の進行のモデルを作るために、Zhengら(1999)(前記)は、IL-13トランスジェニックマウスにおいて、気道上皮へのIL-13過剰発現を標的にした。これらの動物は、気道および肺において実質性炎症および気腫を発症した。これらの動物はまた、慢性気管支炎を暗示する粘液化成も発症していた。
健常対照と比較してCOPD患者において頻度が増加している、アレルギー性喘息と関連するIL-13プロモーター多形性(-1055 C→T)もまた報告されている。このことは、COPD発症リスク増加にIL-13プロモーター多形性が機能的役割を果たしていることを示唆している(Kraanら、Genes and Immunity 3:436-439, 2002)。加えて、無症候性喫煙者と比較して慢性気管支炎喫煙者においてIL-13およびIL-4陽性細胞数の増加が観察された(Miottoら、Eur. Resp. J. 22:602-608, 2003)。しかしながら、重篤な気腫患者の肺におけるIL-13発現レベルを評価する最新の研究においては、IL-13レベルと疾患の間の関連は見出されなかった(Boutte ら、Thorax 59:850-854, 2004)。
IL-13はまた、アトピー性障害、例えばアトピー性鼻炎およびアトピー性皮膚炎にも関与している。アメリカ合衆国において、アレルギー性鼻炎は最もよく見られるアトピー性疾患であり、成人の25%までが侵され、40%を超える小児が侵されると予測されている。アレルギー性鼻炎と喘息の間には密接な関連が存在する。両方の疾患は、共通の免疫病理学および病態生理学を共有する。これらは、鼻腔および気管支組織における好酸球およびTh2リンパ球が役割を果たす類似した免疫学的プロセスを有する。Th2サイトカイン、特にIL-4およびIL-5の過剰産生は、アレルギー疾患の病因に必須であると考えられる。IL-13は、いくつかの特徴およびエフェクター機能をIL-4と共有し、このことは、IL-4およびIL-13受容体の使用、細胞内シグナル伝達成分ならびに遺伝子構造における機能的重複とを合わせれば、in vivoでのヒト即時型過敏症を促進または維持するIL-13の役割に(間接的ではあるが)有力な根拠を提供する。このことは、Liら(Liら、J Immunol 161:7007, 1998)により確証されている。彼等は、季節性アレルギー性鼻炎アトピー性被験者が、抗原依存性活性化には応じるが、ポリクローナル活性化には応じない有意に強いIL-13応答を示すことを明らかにした。
アトピー性皮膚炎は、よくある、慢性で再発性の強いかゆみを起こす炎症性皮膚疾患である。アトピー性皮膚炎患者の病変皮膚は、組織学的には炎症性T細胞浸潤を特徴とし、これは急性期には、IL-4、IL-5およびIL-13の発現の優位と関連している(Simonら、J Allergy Clin Immunol 114:887, 2004; Hamidら、J Allergy Clin Immunol 98:225, 1996)。加えて、Tazawa ら、Arch Derm Res 296:459, 2004 は、(IL-4ではなく)IL-13 mRNAが、アトピー性皮膚炎患者の亜急性および慢性皮膚病変において有意に上方制御されていることを明らかにした。IL-13を発現する循環CD4+およびCD8+T細胞の頻度もまたこれらの患者において有意に増加している(Alekszaら、British J Dermatol 147; 1135, 2002)。このIL-13活性増加により、血清IgEレベルの上昇がもたらされ、それによってアトピー性皮膚炎の病因に寄与すると考えられる。さらにまた、新生児CD4+T細胞によるIL-13の産生増加は、その後、アレルギー疾患、特にアトピー性皮膚炎を発症する危険性が大きい新生児を同定する有用なマーカーである(Ohshimaら、Pediatr Res 51:195, 2002)。アトピー性皮膚炎の病因におけるIL-13の重要性のさらなる根拠は、Simonら、2004(上記)により提供された。タクロリムス軟膏(サイトカイン産生のための細胞内シグナル伝達経路を阻害する免疫抑制薬)を用いる局所治療により、IL-13を含むTh2サイトカインの局所発現の有意な低下を伴う、アトピー性皮膚病変の有意な臨床的および組織学的改善がもたらされた。さらにまた、アトピー性皮膚炎患者の皮膚における基底層直上の角化細胞にIL-13Rα1が過剰発現されているいることが示され、IL-13は、in vitroでIL-13Rα1mRNAを上方制御することができた(Wongpiyabovornら、J Dermatol Science 33:31, 2003)。
IL-13を標的とする介入により、ヒトアレルギー疾患の治療への有効なアプローチを提供できることを、これらのデータは総合的に示している。
食道における好酸球の集積は、胃食道逆流症、好酸球性食道炎、好酸球性胃腸炎および寄生虫感染を含む種々の疾患を有する患者における共通の医学上の問題である。食道好酸球増加症はアレルギー反応と関連し、空気アレルゲンによるマウスの反復チャレンジにより、アレルギー性気道炎症と食道好酸球増加症との関連が確立された。直接・間接に炎症性およびエフェクター経路を活性化する、IL-4およびIL-13を含む数々のサイトカインの分泌を介してTh2細胞は好酸球関連炎症を誘導すると考えられている。IL-13は特に重要であると思われる。なぜなら、IL-13はTh2-細胞により多量に産生され、アレルギー疾患の多数の特徴(例えば、IgE産生、粘液過剰産生、好酸球動員および生存ならびに気道過敏性)を制御しているからである。好酸球性炎症反応において、in vitro、ex vivoおよびin vivo条件下でGM-CSFおよび/またはIL-5への暴露後に機能的に活性なIL-13を好酸球は産生することができる(Schmid-Grendelmeier, J Immunology, 169:1021-1027, 2002)。野生型、STAT-6、エオタキシン-1またはIL-5欠損マウスの肺に気管内投与により送達したIL-13により、IL-13により引き起こされる肺炎は、食道好酸球増加症の発症と関連することが確立された(Mishraら、Gastroenterol; 125:1419, 2003)。総合すれば、これらのデータは、食道好酸球増加症におけるIL-13の役割の根拠を提供する。
対象とする他の重要な領域には、特定の種類の腫瘍の増殖を阻害するためのIL-13またはIL-13受容体のターゲッティングがある。1型T細胞媒介性宿主防御は、in vivoでの最適の腫瘍拒絶を媒介すると考えられており、Th2型反応への偏りは、腫瘍拒絶の遮断および/または腫瘍再発の促進に寄与しうる(Kobayashiら、J. Immunol. 160:5869, 1998)。移植可能な腫瘍細胞株を用いるいくつかの動物実験は、STAT6、IL-4およびIL-13(一部分はNKT細胞により産生される)が腫瘍拒絶を阻害することができたことを明らかにすることにより、この考えを支持している(Terabeら、Nat. Immunol. 1:515, 2000; Kachaら、J. Immunol. 165:6024-28, 2000; Ostrand-Rosenbergら、J. Immunol. 165:6015, 2000)。STAT6の非存在下での強力な抗腫瘍活性は、腫瘍特異的IFNγ産生およびCTL活性の促進によるものと考えられた。加えて、NKT細胞の減少により、IL-13産生は低下し、腫瘍再発の増加が伴うが、このことは、NKT細胞により一部産生されるIL-13は免疫監視にとって重要であることを示している(Terabeら、2000(上記))。このように、IL-13阻害剤は、腫瘍細胞への免疫反応の下方制御においてIL-13が果たす負の調節を妨げることにより、癌免疫治療剤として有効な可能性があることをこれらの所見は示唆している。
Th1型関連抗腫瘍防御を活性化することに加えて、IL-13阻害剤は、より直接的に腫瘍細胞増殖を妨げることもできる。例えば、B細胞性慢性リンパ性白血病(B-CLL)およびホジキン病において、IL-13はアポトーシスを妨げるかまたは腫瘍細胞増殖を促進する(Chaouchiら、Blood 87:1022, 1996; Kappら、J. Exp Med. 189:1939, 1999)。B-CLLは、白血病細胞においてアポトーシス欠陥を含む、Bリンパ球由来の臨床的に不均一な疾患である。IL-13は、直接の増殖因子として作用するのではなく、in vitroでの自発的アポトーシスから腫瘍細胞を守ると考えられ(Chaouchiら、1996(上記); Laiら、J. Immunol 162:78, 1999)、腫瘍細胞死を防ぐことによりB-CLLに寄与できる。
ホジキン病は、主として若年成人を襲うリンパ腫の一種であり、アメリカ合衆国において、患者は1年に約7,500名に上る。この癌は、大きな多核ホジキン/リード・スターンバーグ細胞(H/RS)の存在を特徴とする。大多数の患者において、悪性細胞集団はB細胞に由来する。いくつかのホジキン病由来細胞株のみならず、ホジキンリンパ腫患者から採取したリンパ節組織は、IL-13および/またはIL-13受容体を過剰発現している(Kappら、1999(上記); Billardら、Eur Cytokine Netw 8:19, 1997; Skinniderら、Blood 97:250, 2001; Oshimaら、Cell Immunol 211:37, 2001)。中和抗IL-13mAbまたはIL-13アンタゴニストは、用量依存的にH/RS細胞増殖を阻害することが示されている(Kappら、1999(上記);Oshimaら、2001(上記))。同様に、ホジキン病由来細胞株を移植したNOD/SCIDマウスに可溶性IL-13Rα2デコイ受容体を送達することにより、腫瘍の発症および増殖を遅らせ、生存率を伸ばした。このことは、IL-13中和が、ホジキンリンパ腫の増殖をin vitroおよびin vivoで抑制できることを示している(Trieuら、Cancer Research 64:3271, 2004)。これらをまとめれば、IL-13は、自己分泌によりH/RS細胞の増殖を刺激することをこれらの研究は示唆している(Kappら、1999(上記); Ohshimaら、Histopathology 38:368, 2001)。
従って、IL-13の中和は、腫瘍細胞増殖を抑制し、同時に抗腫瘍防御を促進することによる、ホジキン病および他のB細胞関連癌の魅力的で有効な治療を代表することができる。
炎症性腸疾患(IBD)の病因におけるIL-13の果たし得る役割が存在する。炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎、クローン病および鑑別困難大腸炎として臨床的に分類されるいくつかの疾患を含む。その主な症状発現は、腸粘膜におけるTh1およびTh2リンパ球の活性化における不均衡を有する過剰免疫反応による慢性腸炎である。このことは、クローン病(Bamiasら、Gastroenterol 128:657, 2005) および潰瘍性大腸炎(Hellerら、Immunity 17:629, 2002)の動物モデルにおいて明らかにされている。IL-13Rα2-Fc投与によるIL-13の中和は、ヒト潰瘍性大腸炎のマウスTh2モデルにおける大腸炎を抑制した(Hellerら、2002(上記))。さらにまた、このモデルにおいてIL-4の産生をIL-13産生は素早くとってかわり、IL-13産生はNKT細胞の刺激により誘発されることができる。このことは、組織損傷が、上皮細胞に対するIL-13の毒作用により引き起こされうることを示唆している。これらの所見を支持するヒトデータが存在する。潰瘍性大腸炎患者からのIL-13陽性直腸生検標本の頻度は、炎症性および非炎症性対照被験者よりも有意に高く、急性潰瘍性大腸炎において非急性潰瘍性大腸炎よりもより高い割合でIL-4およびIL-13発現が観察された(Inoueら、Am J Gastroenterol 94:2441, 1999)。加えて、Akidoらは、クローン病患者の腸管断片からの筋層における免疫活性を特徴づけ、IL-4およびIL-13が、STAT6経路を介して腸管平滑筋細胞の過収縮を媒介することを見出した。この著者らは、クローン病における腸管筋肉の過収縮に、この経路が寄与している可能性があると結論した(Akihoら、Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol 288:619, 2005)。従って、IL-13アンタゴニストは、IBDの進行を停止または抑制するためのアプローチを提供することができる。
乾癬は、角化細胞の過剰増殖および表皮角化細胞の症状に影響をおよぼし得る種々のサイトカインを産生する活性化T細胞を含む免疫学的細胞浸潤を特徴とする慢性皮膚疾患である。CDw60は、乾癬皮膚の乾癬基底および基底層直上角化細胞の表面で上方制御された炭水化物保有分子である。乾癬病変由来のT細胞から分泌されるIL-4およびIL-13は角化細胞上のCDw60の発現を顕著に上方制御したことが示されているが(Skovら、Am J Pathol 15:675, 1997)、インターフェロンガンマは、培養角化細胞上のCDw60のIL-4/lL-13媒介誘導を抑制した(Huangら、J Invest Dermatol 116:305, 2001)。従って、乾癬表皮角化細胞上のCDw60発現は、病変内の活性化T細胞により分泌されたIL-13により、少なくとも一部分誘導されると考えられる。加えて、IL-13Rα1およびIL-4Rαは、患者からの皮膚生検において、乾癬の有無により発現が異なり(Cancino-Diazら、J Invest Dermatol 119:1114, 2002; Wongpiyabovornら、2003(上記))、in vitroでの実験により、IL-13はIL-13Rα1の発現を上方制御できるが、IL-4はできないことを明らかにした(Wongpiyabovornら、2003(上記))。IL-13は種々の細胞型に効果を有するので、これらの研究は、IL-13受容体が乾癬の初期炎症過程に関与しうることを示唆している。
乾癬性関節炎は、炎症促進性および抗炎症性サイトカインの両方により媒介される滑膜炎を特徴とする。種々の関節炎におけるIL-13の役割については、ますます興味が持たれてきている。Spadaroら、Ann Rheum Dis 61:174, 2002 は、乾癬性関節炎および関節リウマチ患者の滑液におけるIL-13レベルが変形性関節症患者よりも有意に高いことを観察している。加えて、滑液のIL-13レベルは、乾癬性関節炎患者の血清におけるレベルよりも有意に高く、関節リウマチ群よりも乾癬性関節炎群においてIL-13滑液/血清比は著しく高かった。このことは、乾癬性関節炎患者の滑膜組織において局所で産生されるIL-13の果たしうる役割を示唆している。
急性移植片対宿主疾患は、幹細胞移植後の罹患率・死亡率の重大な原因であり、ドナーとレシピエント間のヒト白血球抗原(HLA)不適合の程度に直接に関連している。非血縁者で不一致のMLR(混合リンパ球反応;最初のHLAタイピング後にドナー選択を微調整するためのin vitroアッセイ)(Jordanら、J Immunol Methods 260:1, 2002)間で豊富に産生される典型的なTh2サイトカインとして、JordanらはIL-13を最初に同定した。同グループは、続いて、ドナーT細胞によるIL-13産生が、非血縁者ドナー幹細胞移植後の急性移植片対宿主疾患(aGVHD)を予測していることを明らかにした(Jordanら、Blood 2004; 103:717)。幹細胞移植後に重篤なグレードIIIのaGVHDを有する患者は、すべて大変高い移植前IL-13応答を示すドナーを有していたが、このことは、IL-13レベルとaGVHDとの著しい関連を示しており、IL-13がaGVHD関連病状の一部に直接に関与している可能性を高めた。その結果として、IL-13の特異的遮断に基づく療法は、幹細胞移植後のaGVHDの治療に有用である可能性がある。
糖尿病性腎症は、西欧諸国において末期腎臓病の主要な原因の1つである。1型糖尿病による腎症の罹患率は減少しつつあるものの、2型糖尿病は、今や、米国、日本およびヨーロッパにおいて最もよく見られる腎不全の単一原因である。さらにまた、この患者は、心血管事象による大変高い死亡率により、維持透析においては予後は大変不良である。現在では、血行動態、代謝および構造変化がからみあっていることがますます明らかとなり、この疾患の病因において役割を果たしている種々の酵素、転写因子および増殖因子が同定されている。特に、腎肥大の発症および細胞外マトリックス成分の集積にTGF-βは重要であり、腎臓におけるコラーゲン形成を媒介する中枢のサイトカインと考えられている(Cooper, Diabetologia 44:1957, 2001; Wolf, Eur J Olin Invest 34 (12):785, 2004)。実験的およびヒト糖尿病性腎症において、TGF-1生物活性は増加しており、糖尿病マウスへのTGF-β1抗体の投与により、腎機能は改善し、細胞外マトリックス集積は低下した。最近、肺線維症のトランスジェニックマウスモデルにおいて、TGF-β1の産生および活性化ならびにコラーゲン沈着を調節することにより、少なくとも一部分においてIL-13がその効果を媒介していることが示され(Leeら、J. Exp. Med. 194:809, 2001; Zhuら、1999(上記))、それによってIL-13とTGF-βとの直接的な機能的連結が確立された。その結果として、糖尿病性腎臓におけるTGF-β1活性を調節するIL-13の同様な役割を考えることができので、IL-13を標的とする介入は、糖尿病性腎症の管理に役割を有する可能性がある。
肺線維症は、能力障害と、しばしば死をもたらす、肺の不適当な有害瘢痕の状態である。この用語は、種々の病因、病状および治療への応答を有する種々の異なる状態を含む。線維症の原因が特定されている場合もある。原因には:アスベストもしくはシリコンまたは堅い金属ダストなどの吸入された線維化誘発物質;線維症を引き起こす特異体質性免疫学的反応を患者が示す吸入された有機物質(例えば農夫肺);ニトロフラントイン、アミオダロンおよびメトトレキサートなどの薬物;および全身性炎症性疾患、例えば全身性硬化症または関節リウマチとの関連が含まれる。
しかしながら、多くの場合、原因または基礎疾患は特定されていない。多くのこのような患者は、特発性肺線維症(IPF)と診断されている。これは比較的まれな疾患である。この診断は、特定された原因のないことと、特定の放射線医学的および病理学的特徴、特にCTまたは肺生検における蜂巣化との組み合わせに基づく。この疾患は、通例年配患者(>50)に見られ、生存期間中央値が2〜5年といわれる、死に至る進行性肺障害の容赦ない経過をたどることが多い。さらに、この患者は数か月または数年かかって進行する息切れという大変不愉快な経験をする。これにより、最初は身体的活動が制限されるが、数か月は続く終末期においては、患者は休息時においても息切れし、さらに酸素に依存する。
現在のところ、この疾患の満足な治療法はない。現行の治療法は、一般に、コルチコステロイドおよび免疫抑制剤、例えばアザチオプリンの形態をとる。しかしながら、コルチコステロイドは多くの患者において無効の可能性があり、その副作用により事態をさらに悪化させる恐れがある。インターフェロンガンマ(最近の大規模試験において、生存率の改善傾向を示している)およびパーフェニドンを含む、研究中の多くの潜在的治療法がある。
Th2表現型と関連するIL-13およびサイトカインは、組織修復における線維症に関与しているという根拠が存在する(Wynn, Nat. Rev. Immunol. 4:583-594, 2004; Jakubzickら、Am. J. Pathol. 164(6):1989-2001, 2004; Jakubzickら、Immunol. Res. 30(3):339-349, 2004; Jakubzickら、J. Clin. Pathol. 57:477-486, 2004)。種々の線維症にIL-13およびIL-4が関与している。住血吸虫(Schistosoma)により引き起こされる肝線維症はIL-13によるものと推定され、IL-13が強皮症の病因に関与しているという限られた根拠が存在する(Hasegawaら、J. Rheumatol. 24:328-332, 1997; Riccieriら、Clin. Rheumatol. 22:102-106, 2003)。
肺線維症に関して、in vitroでの研究により、IL-13が線維形成性症状を促進することが示されている。人為的に誘導した線維症モデルにおいて、IL-13発現レベルの上昇が観察され、線維症がIL-13の除去によって抑制できることが動物実験により示されている。
IL-13は線維化誘発症状を促進する。細胞レベルで、IL-13が線維症を促進するいくつかの機構が存在する。シグナル経路およびこれらの種々の機構の重要性は明確ではない。
IL-13が線維芽細胞に作用して、コラーゲン産生を促進し、かつその分解を阻害し、それにより線維症症状に有利であるという根拠がある。皮膚線維芽細胞はIL-13受容体を有し、IL-13への培養皮膚線維芽細胞の暴露は、コラーゲン産生のアップレギュレーションをもたらす(Orienteら、J. Pharmacol. Exp. Ther. 292:988-994, 2000)。IL-4も同様に、類似しているが、より一時的な効果を示す。ヒト肺線維芽細胞細胞株(ICIG7)はIL-4受容体II型を発現する(Jinninら、J. Biol. Chem 279:41783-41791, 2004)。この細胞のIL-13への暴露により、種々の炎症性および線維化誘発メディエーター:GM-CSF、G-CSF、VCAMβ1インテグリン(Doucetら、Int. Immunol. 10(10):1421- 1433, 1998)の分泌が促進される。
IL-13は、ECマトリックスの分解を抑制する傾向のある、皮膚線維芽細胞によるIL-1aで誘発されるマトリックスメタロプロテアーゼ1および3タンパク質産生を阻害する(Orienteら、2000(上記))。喘息気道の生検により得られたヒト線維芽細胞にIL-13はTGF-βに相乗的に作用し、メタロプロテアーゼ1(TIMP-1)の組織阻害剤発現を促進する。細胞外マトリックスの分解はマトリックスメタロプロテアーゼにより行われるが、これはTIMP-1により阻害される。従って、IL-13のこの作用は、マトリックス分解を抑制する傾向を示すと考えられる(Zhouら、Am. J. Physiol. Cell Physiol. 288:C435-C442, 2005)。
トランスジェニックマウスにおけるIL-13の過剰発現は、上皮下線維症、上皮細胞肥大、杯状細胞過形成、結晶沈着(酸性の哺乳動物キチナーゼ)、気道過敏性、間質性線維症、2型細胞肥大および界面活性剤集積(Zhuら、1999(上記))をもたらす。
異なるマウス系統は、ブレオマイシン誘発肺線維症に対して異なる感受性を示す。感受性が高いC57B1/6Jマウスは、ブレオマイシンに応答してIL-13、IL-13RαおよびIL-4(TGFβ、TNFRαおよびIL-1受容体に加えて)の急速なアップレギュレーションを示す。感受性の低いBALB/cマウスは、IL-13のアップレギュレーションを示さない。
Belperioら、Am. J. Respir. Cell Mol. Biol. 27:419-427, 2002 は、マウスブレオマイシン線維症モデルにおいて、IL-13、IL-4およびCCケモカインC10の発現および役割を研究した。IL-13およびIL-4の肺組織レベルは、共にブレオマイシンに応答して増加した。ポリクローナル抗IL-13抗体を用いる前中和により、肺ヒドロキシプロリンレベルで評価するとき、ブレオマイシンに応答した肺線維症は著しく減少した。同じモデルにおけるIL-4の発現上昇にもかかわらず、IL-4の中和は肺線維症に効果を示さなかった。
BALB/cマウスにおける、FITCによる他の急性肺線維症誘発モデルにおいて、IL-13の不存在(ノックアウトマウスにおいて)により、肺線維症から保護されたが、IL-4の不存在では保護されなかった。IL-13ノックアウトマウスにおいて、IL-4ノックアウトマウスの保護は加算されなかった(Kolodsickら、J. Immunol. 172:4068-4076, 2004)。IL-13不存在の防御効果は、全ノックアウトマウスにおける肺への細胞動員の差によるものではなく、動員されたBALB/c全細胞数は同様であり、従って最初の炎症物質は影響を受けていないと推定される。好酸球動員は、BALB/cと比較してIL-4およびIL-13ノックアウトマウスにおいて低かったが、IL-4-/-は線維症から防御されなかったので、このことで線維症の差異を説明できない。恐らくは、驚いたことに、IL-10、MCP-1、γインターフェロン、TGF-β1に関するものを含む、IL13+/+と-/-とのサイトカインレベルに差はなかった。加えて、FITC後の異なる動物の肺から同じ数の線維芽細胞が単離されたが、IL-13-/-マウスにおいて、I型コラーゲンの産生は低下した。このことは、IL-13の欠如は単に炎症反応を防ぐだけでなく、より具体的な抗線維化の役割を有していることを示している。IL-13は、TGF-β1を介してその線維化効果を発揮するのではないかと推定されている(Leeら、2001(上記))。しかしながら、このFITCモデルでは、IL-13ノックアウトマウスにおいて、TGF-β1の発現は低下しなかった。
インターロイキン-4は、IL-13と類似した効果を発揮すると予期しうる。なぜなら、どちらも同じ受容体を介して作用するからである。ブレオマイシン誘発肺線維症を有するマウスの肺においてIL-4は有意に上方制御されている(Gharaee-Kermaniら、Cytokine 2001 15:138-147)。しかしながら、IL-4を過剰発現するC57BL6/Jマウス、IL-4ノックアウトマウスおよび野生型におけるブレオマイシン誘発肺線維症の比較(Izbickiら、Am. J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol 283(5):L1110-L1116, 2002)においては、IL-4が肺線維症に関与する根拠は見出されなかった。IL-4ノックアウトにおいては線維症は減少せず、IL-4過剰発現マウスは線維症レベルの増加を示した。
種々の種類の肺線維症を有する患者において、IL-13のBALサイトカインレベルは有意に増加しているが、かなりな変動性を有する。肺線維症患者から得られた肺胞マクロファージにおいて、IL-13の発現は有意に上方制御されている。
最も強力な臨床的根拠は、ミシガン大学(University of Michigan)での研究から得られる。Jakubzickらは、肺線維症患者からの外科肺生検において、IL-13およびIL-4ならびにそれらの受容体の遺伝子発現を研究した。IL-13遺伝子発現は、健常者由来の肺または他の肺線維症よりもIPFに罹患した肺からの標本において著しく強い。IPF/UIP患者から培養した線維芽細胞は、正常な肺または他の種類の肺線維症を有する患者の生検から得られた組織および線維芽細胞と比較して、IL-13およびIL-4受容体の発現が増加している。特に、疾患活動性の中心と考えられる線維芽細胞巣は、これらの受容体に関して特に強く染色される(Jakubzickら、J. Immunol 171:2684-2693, 2003; Jakubzickら、Am. J. Pathol. 162:1475-1486, 2003; Jakubzickら、2004(上記); Jakubzickら、2004(上記); Jakubzickら、2004(上記))。
Th2サイトカインは一般に、そしてIL-13は特に線維化誘発症状を促進することの、in vitroでの強い根拠が存在する。少なくとも2つの動物モデルにおいて、IL-13の除去(遺伝子ノックアウトマウスにおいて、または抗lL-13抗体により)により、化学的に誘導された線維症を抑制できることが明らかにされた。肺線維症の促進において、IL-4よりもIL-13がより重要であることを示す根拠もある。肺線維症におけるIL-13の役割に関する臨床的根拠は、IPF患者の肺において、IL-13およびその受容体が調節異常であることを示唆している。
住血吸虫症誘発肝線維症および種々の種類の肺線維症(例えばIPF、強皮症)を含む種々の線維症を治療するための、IL-13アンタゴニストに基づく療法の重要な役割を示唆するデータがますます蓄積されている。
IL-4とIL-13が独立して阻害される実験において、いくつかのモデルにおける線維症の主要なエフェクターサイトカインとしてIL-13が同定された(Chiaramonteら、J. Clin. Invest. 104:777-785, 1999; Bleaseら、2001(上記); Kumarら、Clin. Exp. Allergy 32:1104, 2002)。住血吸虫症において、卵誘発炎症反応はIL-13遮断により抑えられなかったが、慢性感染動物において、IL-4産生は継続し、低下していないにもかかわらず、コラーゲン沈着は85%以上抑制された(Chiaramonte ら、1999(上記); Chiaramonteら、Hepatology 34:273, 2001)。
遺伝子治療
遺伝子治療アプローチにおいて、本発明の抗hIL-13Rα1抗体を被験者に投与することもできる。遺伝子治療アプローチにおいて、本発明の抗体をコードする核酸で被験者の細胞が形質転換される。ついで、該核酸を有する被験者は内生的に該抗体分子を産生する。以前に、Alvarezら、Clinical Cancer Research 6:3081-3087, 2000 は、遺伝子治療アプローチを用いて被験者に一本鎖抗ErbB2抗体を導入した。被験者に本発明の抗hIL-13Rα1抗体をコードする核酸を導入するのに、Alvarezらにより開示された方法を容易に適用できる。
任意の本発明のポリペプチドまたは抗体分子をコードする核酸を被験者に導入することがきるが、特定の実施形態において、抗体分子はヒト一本鎖抗体である。
当該技術分野で公知の任意の手段により、被験者の細胞に本核酸を導入することができる。特定の実施形態において、本核酸はウイルスベクターの一部として導入される。ベクターが由来することができる特定のウイルスの例は、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、アルファウイルス、インフルエンザウイルスおよび望ましい向細胞性を有する他の組換えウイルスを含む。
種々の会社がウイルスベクターを商業的に生産しており、決して限定するものではないが、AVIGEN, Inc.(Alameda, CA;AAVベクター)、Cell Genesys(Foster City, CA;レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、AAVベクターおよびレンチウイルスベクター)、CLONTECH(レトロウイルスベクターおよびバキュロウイルスベクター)、Genovo, Inc.(Sharon Hill, PA;アデノウイルスベクターおよびAAVベクター)、GENVEC(アデノウイルスベクター)、IntroGene(Leiden, Netherlands;アデノウイルスベクター)、Molecular Medicine(レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、AAVベクターおよびヘルペスウイルスベクター)、Norgen(アデノウイルスベクター)、Oxford BioMedica(Oxford, United Kingdom;レンチウイルスベクター)およびTransgene(Strasbourg, France;アデノウイルスベクター、ワクシニアベクター、レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクター)が含まれる。
ウイルスベクターを構築し使用する方法は当該技術分野で公知である(例えばMillerら、BioTechniques 7:980-990, 1992を参照のこと)。特定の実施形態において、ウイルスベクターは複製欠損型である。すなわち、そのウイルスベクターは自律的に複製することができず、標的細胞内では非感染性である。好ましくは、複製欠損ウイルスは最小現のウイルスである。すなわち、その複製欠損ウイルスは、ゲノムをカプシドでつつんでウイルス粒子を産生するために必要なそのゲノムの配列のみを保持する。ウイルス遺伝子を完全にまたはほぼ完全に欠く欠損ウイルスもまた使用できる。欠損ウイルスベクターの使用により、特定の局所領域における細胞への投与が可能になり、そのベクターが他の細胞に感染する恐れはない。従って、特定の組織を特異的に標的とすることができる。
弱毒化または欠損DNAウイルス配列を含むベクターの例には、限定するものではないが、欠損ヘルペスウイルスベクターが含まれる(Kannoら、Cancer Gen. Ther. 6:147-154, 1999; Kaplittら、J. Neurosci. Meth. 71:125-132, 1997 およびKaplittら、J. Neuro Onc. 19:137-147, 1994)。
アデノウイルスは、修飾されて本発明の核酸を種々の細胞型に効率的に送達できる真核DNAウイルスである。弱毒化アデノウイルスベクター、例えばStrafford-Perricaudetら、J. Clin. Invest. 90:626-630、1992 に記載されているベクターが望ましい場合がある。種々の複製欠損アデノウイルスおよび最小限のアデノウイルスベクターが記載されている(WO94/26914、WO94/28938、WO94/28152、WO94/12649、WO95/02697およびWO96/22378)。当業者に公知の任意の技術で、本発明記載の複製欠損組換えアデノウイルスを調製できる(Levreroら、Gene 101:195, 1991; EP 185573; Graham, EMBO J. 3:2917, 1984; Grahamら、J. Gen. Virol. 36:59, 1977)。
アデノ関連ウイルス(AAV)は、それが感染する細胞のゲノム中に、安定かつ部位特異的に組み込むことができる比較的小型のDNAウイルスである。アデノ関連ウイルスは、細胞増殖、形態学または分化になんら影響を与えないで広範囲の細胞に感染することができ、ヒトの病状には関与しないと思われる。AAV由来のベクターの、in vitroおよびin vivoで遺伝子転移のための使用については記載されている(Dalyら、Gene Ther. 8:1343-1346, 2001、Larsonら、Adv. Exp. Med. Bio. 489:45-57, 2001; WO 91/18088 および WO 93/09239; 米国特許第4,797,368号および第5,139,941号ならびにEP488528B1)。
他の実施形態において、例えば米国特許第5,399,346号、第4,650,764号、第4,980,289号および第5,124,263号;Mannら、Cell33:153,1983;Markowitzら、J. Virol., 62:1120, 1988; EP453242およびEP178220に記載されているように、レトロウイルスベクターに遺伝子を導入することができる。レトロウイルスは、分裂細胞に感染する組み込み型ウイルスである。
脳、網膜、筋肉、肝臓および血液を含むいくつかの組織型において、本発明の抗体分子をコードする核酸の直接送達および持続発現のための物質としてレンチウイルスベクターを用いることができる。このベクターは、これらの組織中で分裂細胞および非分裂細胞を効率的に形質導入して、抗体分子の長期発現を維持することができる。概説に関しては、Zuffereyら、J. Virol. 72:9873-80、1998 およびKafriら、Curr. Opin. Mol. Ther. 3:316-326, 2001を参照されたい。レンチウイルスパッケージング細胞株が利用可能であり、一般に当該技術分野で公知である。レンチウイルスパッケージング細胞株は、遺伝子治療のための高力価レンチウイルスベクターの産生を促進する。1例には、少なくとも3〜4日間106IU/mlを超える力価でウイルス粒子を産生することができるテトラサイクリン誘導性VSV-G偽型レンチウイルスパッケージング細胞株がある。Kafriら、J. Virol. 73:576-584, 1999 を参照のこと。in vitroおよびin vivoで非分裂細胞を効率的に形質導入するために、この誘導性細胞株により産生されるベクターを必要に応じて濃縮することができる。
シンドビスウィルスはアルファウイルス属の1員であり、1953年に始まって、その発見以来世界の様々な場所で大々的に研究されてきた。アルファウイルス、特にシンドビスウィルスに基づく遺伝子形質導入は、in vitroでよく研究されている(Strausら、Microbiol. Rev., 58:491-562, 1994; Bredenbeekら、J. Virol., 67:6439-6446, 1993; Ijimaら、Int. J. Cancr 80:110-118, 1999 およびSawaiら、Biochim. Biophyr. Res. Comm. 248:315-323, 1998 を参照のこと。発現構築物の迅速な操作、感染性粒子の高力価原液の産生、非分裂細胞の感染および高レベルの発現(Straussら、1994(上記))を含む、アルファウイルスベクターの多くの特性により、アルファウイルスベクターは、開発中の他のウイルス由来ベクター系に代わる望ましい選択肢となる。遺伝子治療のためのシンドビスウィルスの使用が記載されている(Wahlforsら、Gene. Ther. 7:472-480, 2000 およびLundstrom, J. Recep. Sig. Transduct. Res. 19(1-4):673-686, 1999。
他の実施形態において、リポフェクションにより、または他のトランスフェクション促進剤(ペプチド、ポリマーなど)を用いてベクターを細胞に導入することができる。マーカーをコードする遺伝子のin vivoおよびin vitroトランスフェクションのためのリポソームを、合成カチオン性脂質を用いて調製できる(Feignerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413-7417, 1987 およびWangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7851-7855, 1987)。核酸の転移に有用な脂質化合物および組成物は、WO95/18863およびWO96/17823ならびに米国特許第5,459,127号に記載されている。
ベクターをネイキッドDNAプラスミドとしてin vivoで導入することも可能である。当該技術分野で公知の方法、例えばエレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE-デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法、遺伝子銃の使用またはDNAベクター輸送体の使用により、遺伝子治療のためのネイキッドDNAベクターを望ましい宿主細胞に導入することができる(例えばWilsonら、J. Biol. Chem. 267:963-967, 1992; Williamsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:2726-2730, 1991を参照のこと)。受容体媒介DNA送達アプローチもまた使用することができる(Wuら、J. Biol. Chem. 263:14621-14624, 1988)。米国特許第5,580,859号および第5,589,466号は、哺乳動物における、トランスフェクション促進剤を用いない外因性DNA配列の送達を開示している。最近、電子移動と呼ばれる、比較的低電圧の、高い効率のin vivoDNA導入技術が記載された(Vilquinら、Gene Ther. 8:1097, 2001; Payenら、Exp. Hematol. 29:295-300, 2001; Mir, Bioelectrochemistry 53:1-10, 2001; WO 99/01157、WO 99/01158 および WO 99/01175)。
このような遺伝子治療アプローチに適した医薬組成物および本発明の抗hIL-13Rα1抗体をコードする核酸は本発明の範囲内である。
以下の実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、これをさらなる限定として解釈してはならない。
ヒトIL-13Rα1細胞外領域をベースとする組換えタンパク質の産生および精製
IL-3シグナル配列およびFLAG(登録商標)タグ融合を含むヒトIL-13Rα1の細胞外領域(ECR)(すなわち、配列番号1のアミノ酸番号3-317)の大部分をコードするcDNAを組み込んでいるpEFBOS-S-FLAG(登録商標)発現ベクターを、安定発現のために標準的方法を用いてCHO細胞にトランスフェクトした。ヒトIL-13Rα1(“hIL-13Rα1.ECR”と呼ぶ)(配列番号28)の細胞外領域の大部分を含むN末端FLAG(登録商標)タグ付き融合タンパク質を、CHO細胞クローンの馴化培地から精製した。精製タンパク質を濃縮し、続いてリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、0.02%v/vツイーン(登録商標)20で脱塩処理し、ついでフィルター滅菌を行った。典型的な回収率は、馴化培地1リットルあたりタンパク質0.4mgであった。必要とするまで、タンパク質を-80℃で保存した。
ヒト抗ヒトIL-13Rα1モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株の作製
トランスジェニックマウスの免疫感作。HCo7、HCo12およびHCo7xHCo12株(HUMAB(登録商標)マウス、Medarex, USA)からの雌雄のトランスジェニックマウスを実施例1のhIL-13Rα1.ECRで免疫感作した。1回目の免疫感作のために、完全フロイントアジュバント(CFA)にhIL-13Rα1.ECRを20〜50μg乳化し、腹腔内(i.p.)経路で投与した。最低2回、最高3回のその後のi.p.免疫感作のために、hIL-13Rα1.ECR 20〜50μgを不完全フロイントアジュバント(IFA)に乳化した。IFAに乳化したhIL-13Rα1.ECRを用いる2回目または3回目の免疫感作に続いて、血清試料を採取し(後眼窩叢)、ELISAによりhIL-13Rα1.ECRに対するヒト抗体をアッセイした(下記を参照のこと)。ハイブリドーマ作製のために、高応答性マウス(血清力価が一般に>1:3200)を選択した。場合によっては、この時点でハイブリドーマ作製に用いない動物に、hIL-13Rα1.ECR 20〜50μgのPBS液でさらにi.p.免疫感作を行った。これらの動物からの血清を、再度hIL-13Rα1に対するヒト抗体をアッセイした。ハイブリドーマ作製のために、ELISAによるECRおよび高応答性マウスを用いた。ハイブリドーマ作製のために選択したマウスに、脾臓細胞の融合の前に3〜4日間hIL-13Rα1.ECR 20〜50μgを用いて静脈内に追加免疫した。
抗原特異的ELISA。平底96ウェルMAXISORP(登録商標)プレート(NUNC, Invitro Technologies, #439454)を、PBSで希釈したhIL-13Rα1.ECR 2.5μg/mlを含む溶液50μlで終夜4℃でコーティングすることを含む一般的なELISAフォーマットを用いて、プレートに結合させたhIL-13Rα1.ECRに結合することができるmAbに関して、マウス血清またはハイブリドーマ培養上清液(SNF)を評価した。PBSで2回洗浄後、2%w/vスキムミルク含有PBS(ブロッキング緩衝液、200μl/ウェル)を用いて、37℃で1時間プレートをブロックし、続いて0.1%v/vツイーン(登録商標)20(洗浄用緩衝液)を含有するPBSで2回洗浄した。試験ハイブリドーマSNFまたはマウス血清50μlを各ウェルに加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄した。1%w/vスキムミルクパウダーおよび0.1%v/vツイーン(登録商標)20を含有するPBSで1:1000に希釈した抗ヒトIgG HRP標識二次試薬を用いて、結合したヒトmAbを検出した(50μl/ウェル、室温で1時間)。プレートを3回洗浄し、TMB基質で発色させ、OD450nmで読み取った。
ハイブリドーマ作製。選択された高応答性マウスを屠殺し、脾臓および関連するリンパ節を採取した。標準的方法(Antibodies: A Laboratory Manual: Harlow and Lane. Cold Spring Harbor Laboratory Press)に従って、脾臓およびリンパ節の細胞と融合パートナーであるSP2/Oとの融合に続いて、HAT(ヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジン)(GIBCO、#21060-017)によるハイブリドーマの選択を行った。簡潔に言えば、融合完了後に細胞培養培地を調製した。この培地には、5%Ultra low IgG FBS(FBS)(GIBCO-BRL、#16250-078)を含有するハイブリドーマ無血清培地(HSFM)(GIBCO-BRL、#12045-084)、2mM GLUTAMAX(登録商標)-1(GIBCO-BRL、#35050-061)、50U/50μg/mlペニシリン/ストレプトマイシン(GIBCO-BRL、#15070-063)および1x HATを用いた。すべての培地を37℃に加温した。SP2/O細胞を採取し、生存細胞計数を行った。有用な細胞は、健康であり、活発に細胞分裂しており、対数増殖期にあるものであった。この観点から、生存率には>95%を用いた。融合の前にSP2/O細胞をHSFM/5%Ultra low IgG FBSで培養し、融合前日に1:2または1:3に分割した。
融合日に動物を屠殺し、直ちに脾臓(および必要に応じてリンパ節)を摘出し、氷上で滅菌培地(ダルベッコ変法イーグル培地(GIBCO-BRL、#11995-073)すなわちDME)にいれた。
脾臓からの単一細胞浮遊液を調製し、DMEで2回洗浄(1800rpmで7分間)したが、2回目の洗浄には加温したものを用いた。続いて温DMEでSP2/O細胞を3回洗浄して(1500rpm、7分)、血清の痕跡をすべて除去した。
マウス脾臓1つあたりSP2/O細胞(108)を、2つの異なる融合体に用いた。SP2/O細胞および脾臓細胞を同じチューブにプールし、2100rpm(400g)で5分間遠心分離した。DMEをすべて除去し、合わせた細胞ペレットのみを残した。
37℃加熱ブロックに細胞を入れ、ピペットを用いてペレットを穏やかにかき混ぜながら、細胞ペレットに1分間かけて温めたPEG1mlを滴下した。ペレットをさらに1分間穏やかにかき混ぜ、ついでかき混ぜながら1分間かけて温めたDME 1mLを滴下した。かき混ぜながら、1分間かけてDMEをさらに1mL加え、続いて5分かけてDME20mlを加えた。細胞を1500rpmで5分間遠心分離し、上清を除去した。細胞を培地中でおだやかに再懸濁し、HAT培地中に0.2ml/ウェルでプレーティングした。3〜4日ごとに各ウェルからおおよそ0.1mlを取り除き、新しいHAT培地と交換した。
7〜10日目にハイブリドーマの増殖を検査し、融合後10〜14日目にスクリーニングを行った。抗体産生をスクリーニングするために、上清〜100μlをアッセイのために各ウェルから取り除いた。陽性試料を1mlまたは2mlウェルに移し、ついで6ウェルプレートに徐々に広げた。この段階ではハイブリドーマはクローンではなかった。HAT培地中で14日後、HT(GIBCO-BRL、#11067-030)(HSFM、5%Ultralow IgG FBS、10ng/ml rhIL-6(R&D Systems、#206-IL-050)およびHT)中でハイブリドーマをさらにおおよそ2週間培養し、次いでHTなしで培養した。
ハイブリドーマの培養。最初およびそれに続く確認ELISAスクリーニングで陽性を示したハイブリドーマを限界希釈法でクローニングした。単一コロニーを有する限界希釈法ウェルをELISAでスクリーニングし、増幅のための陽性ウェルを選択し、100%のウェルが陽性を示すまで、限界希釈法クローニングのさらなるラウンドを行った。
抗体精製の上清液(SNF)の調製のために、T175cm2フラスコ(FALCON、#3028)またはローラーボトル(900cm2)(コーニング、#430849)のいずれかにハイブリドーマを広げた。ハイブリドーマSNFの作製のための培地には、5%Ultralow IgG FBS、2mMグルタミンおよび50U/50μg/mlペニシリン/ストレプトマイシンを添加したHSFMを用いた。コンフルエンスに達するまでハイブリドーマを増殖させ、おおよそ5〜10日後に細胞の>90%が死んだ時点で遠心分離で培地を採取した。mAb精製の前に、STERICUP(登録商標)フィルター装置(MILLIPORE、#SCGPU11RE)(0.45μm)を用いて馴化培地をすべて濾過した。
精製mAbの調製。一般的なプロテインAアフィニティークロマトグラフィーベースの戦略を用いて、SNFからモノクローナル抗体を精製した。
ヒトIL-13Rα1のドメイン3に結合する抗ヒトIL-13Rα1モノクローナル抗体の同定
IL-13Rα1の細胞外領域はそれぞれが長さおおよそ100アミノ酸の、3つのIII型フィブロネクチン球状ドメインからなると予測されている(Arimaら、上記)。アミノ末端フィブロネクチンタイプドメイン(本明細書においてはドメイン1またはD1と呼ぶ)は、サイトカイン受容体相同モジュールを有する他の2つのフィブロネクチンタイプIIIドメイン(本明細書においては、それぞれドメイン2およびドメイン3またはD2およびD3と呼ぶ)に続いている(Wells and de Vos, 1996(上記))。これらのフィブロネクチンタイプIIIドメインのそれぞれの配列の境界を予測するために、hIL-13Rα1およびhIL-4Rαの細胞外領域の成熟配列をアラインメントした。おおよそ200残基のhIL-4Rα細胞外領域は、IL-13Rα1のD2およびD3に対応するサイトカイン受容体相同モジュールからなるが、D1に対応する上流ドメインを少しも含まない。従って、成熟hIL-4Rαの第1残基を選んで、アラインメントしたhIL-13Rα1配列上のD1とD2との境界を定義した。ついで、その結晶構造(Hageら、1999(上記))から推定される、IL-4Rαにおける2つのフィブロネクチンタイプIIIドメインの境界を用いて、アラインメントしたIL-13Rα1配列におけるD2とD3との境界を定義した。従って、hIL-13Rα1のECRのD1は配列番号1のアミノ酸1-100に対応し、D2はアミノ酸101-200に対応し、D3はアミノ酸201-317に対応する。
(i)IL-13Rα1の全細胞外領域(すなわち、D1-D3)、(ii)D2-D3、(iii)D1、(iv)D2および(v)D3をコードする構築物を作製した。いずれの場合にも、一般にLowmanら、Biochem, 30:10832-8, 1991に記載されている手順に従って、遺伝子3タンパク質(アミノ酸249-406)フラグメントのC末端を介して細胞外領域の関連するフラグメントを融合させた。ついで。これらのhIL-13Rα1の細胞外領域の異なるフラグメントをM13バクテリオファージの表面に提示させ、mAbに結合するそれらの能力をアッセイした。
96ウェルプレートに固定化したmAbへの結合に基づくELISAにより、これら5つの構築物のそれぞれを提示しているファージ調製物をアッセイした。簡潔に言えば、抗IL-13Rα1mAbを10μg/mL含有するPBS100μL/ウェルで終夜インキュベートして、96ウェルMAXISORP(登録商標)プレート(NUNC)にmAbを受動吸着させた。コーティング溶液を捨て、スキムミルクパウダー溶液(5%w/v含有PBS;ブロッキング緩衝液)で室温で1時間インキュベートしてプレートをブロックし、ついで0.1%v/vツイーン(登録商標)20を含有するPBS(洗浄用緩衝液)で洗浄した。ファージに提示されたIL-13Rα1フラグメントを含有する大腸菌上清をブロッキング緩衝液(0.25倍体積)で希釈し、mAbでコーティングされたウェルに加えた(100μL)。室温で2時間インキュベートした後、プレートを3回洗浄し、結合したファージを抗M13IgG HRP標識ポリクローナル抗体(AMERSHAM Biosciences)で標識し、TMB基質(KPL Inc.)を添加して検出した。2M硫酸水溶液を加えてTMB発色をクエンチし、450nmで吸光度を測定した。
結果。ELISA陽性結果を示す抗体プールから、D3含有ファージ調製物(すなわち、上記の(i)、(ii)および(v))への強い結合を示すmAbを選択した。WO03/080675に報告され、ECACCに寄託番号03032101として寄託されたマウス抗体1D9は、8B4として特定されている抗体を含む、トランスジェニックマウスの使用により得られたプールからのいくつかの他の抗体と同様に、D2を含有するファージ調製物にのみ結合した。D3への強い結合を示す選択されたmAbは、4B5、4E2、7D12、8B11および15F4として特定される抗体を含む。抗体を発現するハイブリドーマは、抗体と同じ名前で呼ぶか、あるいは、ATCCに寄託がなされている場合は、関連する寄託番号で呼ぶ。寄託したハイブリドーマを表3に示す。
ヒトIL-13Rα1に対する抗ヒトIL-13Rα1モノクローナル抗体の親和性の分析
BIACORE(登録商標)ベースの研究。製造業者の使用説明書に従い、指定の固定化量、例えば1000RUで、一般的なNHS/EDC化学を用いて、実施例1のヒトIL-13Rα1.ECR(40μg/ml含有20mM酢酸ナトリウム、pH4.2)をセンサーチップ(CM5, Biocensor, Sweden)に固定化した。エタノールアミン(1.0M)、pH8.0を用いてhIL-13Rα1.ECR固定化後の残留活性エステルをクエンチした。
固定化hIL-13Rα1.ECRへの試験mAb(1.4nM〜150nMの濃度範囲、2倍希釈液)の結合分析を2連で行った。生成されたセンサグラムを二価リガンド結合モデルにフィッティングさせ、同時に会合速度(ka)および解離速度(kd)を得て、結合親和性(KD、Biaevaluationソフトウェア、BIACORE(登録商標)、Sweden)を決定するために用いた。
結果。抗IL-13Rα1ヒトmAbの結合親和性の例を表4に示す。
表4
カニクイザル(Cynomolgus Macaque)およびマウスIL-13Rα1に対する抗ヒトIL-13Rα1モノクローナル抗体の結合分析
カニクイザルの脾臓および骨髄から抽出されたmRNAを用いるPCRにより、カニクイザルIL-13Rα1(cyIL-13Rα1)をコードするcDNAをクローニングした。カニクイザルとヒトのIL-13Rα1間で成熟配列は高度に保存されており、アミノ酸同一性は約97%であった(Genbankアクセッション番号AAP78901を参照のこと)。
精製カニクイザルIL-13Rα1.ECRタンパク質の産生のために、カニクイザルIL-13Rα1.ECR(Genbankアクセッション番号AAP78901のアミノ酸9-325すなわち配列番号2のアミノ酸1-317)をコードするcDNAを、本質的にhIL-13Rα1.ECRに関して上記したようなN末端FLAG(登録商標)タグ付き融合タンパク質として発現させるためのpEFBOS-S-FLAG(登録商標)ベクターにクローニングした。
マウスIL-13Rα1.ECR(Genbankアクセッション番号O09030のアミノ酸27-344すなわち配列番号3のアミノ酸1-318)もまた、本質的に前述のようなN末端FLAG(登録商標)タグ付き融合体(mIL-13Rα1.ECR)として発現させ、精製した。
hIL-13Rα1.ECRに対して作られた選択されたmAbとマウスおよびカニクイザルIL-13Rα1.ECRの潜在的交差反応性を、BIACORE(登録商標)ベースのアプローチを用いて評価した。一般的な固定化化学を用いて、3チャンネルのセンサーチップ(CM5、BIACORE(登録商標)、Sweden)に、精製マウス、ヒトおよびカニクイザルIL-13Rα1.ECRを個々に固定化した。15μl/分の流速で、同時に、受容体へのモノクローナル抗体(312.5nM〜125pMの濃度範囲)の結合を評価した。上記の実施例4に記載されているように、mAbの親和性の分析を行った。
結果。ヒトおよびカニクイザル受容体間の配列同一性の程度を考慮すれば、いくつかのmAbが有意に異なる結合を示したことは少し意外であった(表5)。例えば、mAb 8B11は、カニクイザル 受容体に対してほとんど結合を示さなかった。対照的に、他の mAb、例えばマウス mAb、1D9は、ヒトおよびカニクイザル受容体の両方に同様によく結合し、一方mAb 8B4は、カニクイザル受容体に多少選択性を示すように思われる。mAb 4B5、8B11および15F4は、マウス受容体にごくわずかしか結合を示さなかった。
IL-13およびIL-4媒介細胞性反応を阻害する抗ヒトIL-13Rα1モノクローナル抗体の能力の分析
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)エオタキシンアッセイ。NHDF細胞は、IL-13に応答してエオタキシンを産生することが明らかにされており、IL-13Rα1に対するmAbはこの反応を阻害することができる。
製造業者による使用説明書(完全培地)に従って、推奨される添加剤を加えたFGM培地(Cambrex、#CC3132)でNHDF細胞(Cambrex、#CC-2509)を培養する。週1回細胞を1:3または1:5で継代培養し、使用前にIL-13に対する反応性をモニターした。hIL-13Rα1特異的mAbのアンタゴニスト活性を評価するために、20ng/ml PMA(SIGMA、#P8139)および20μg/mlポリミキシン(SIGMA、#P4932)を含有する完全培地に細胞を再懸濁して2x106/mlとし、1x105細胞/ウェルで96ウェル平底プレート(COSTAR、#3595)にプレーティングした。抗体滴定を細胞に加え、37℃、5%CO2を含む加湿空気下で30分間インキュベートした。ついで、組換えIL-13(ヒトまたは非ヒト霊長類)を最終濃度30ng/mlでプレートに添加し、終夜37℃、5%CO2を含む加湿空気下でインキュベートした。IL-4誘発アッセイに関しては、IL-13の代わりに組換えIL-4(PHARMINGEN)を最終濃度0.5ng/mlでプレートに添加した。次いで上清を除去し、ELISAによりエオタキシン含量をアッセイした。
エオタキシンELISAプロトコル。4μg/mlマウス抗ヒトエオタキシン抗体(R&D Systems、MAB320)含有PBS(INVITROGEN、#14190-144)を用い、終夜、4℃でIMMULON(登録商標)-4プレート(DYNATECH、#3855)をコーティングした。室温で1時間プレートをブロックし(200μl/ウェル、1%BSAおよび0.05%ツイーン(登録商標)20を添加したTBS)、3回洗浄した(洗浄用緩衝液、0.05%ツイーン(登録商標)20含有TBS)。NHDF細胞からの試験SNFを加え(50μl/ウェル)、プレートを室温で2時間インキュベートし、続いて3回洗浄した。ビオチン化抗ヒトエオタキシン抗体(R&D Systems、BAF320)を200ng/ml含むブロッキング緩衝液を60ml/ウェルで添加し、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄し、ストレプトアビジン-ユーロピウム(#1244-360、Wallac)(100ng/ml)含有ユーロピウム緩衝液を加えた(100μl/ウェル)。プレートを室温で20分間インキュベートし、3回洗浄した。エンハンスメント溶液(#12244-105、Wallac)(150μl/ウェル)を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。VICTOR(PERKIN ELMER)プレートリーダーを用い、遅延蛍光により分析を行った。検量線を作成するために、組換えヒトエオタキシン(R&D Systems、#320-EO)を用いた。この分析の結果により、モノクローナル抗体8B11のEC50値は、IL-13に対しては21μg/mlであり、IL-4に対しては2.9μg/mlであることが示された。
NHDF IL-13/IL-4誘発STAT6リン酸化アッセイ。STAT6リン酸化(pSTAT6)は、IL-13/IL-4のシグナル伝達の重要な要素であり、受容体二量体化の数分以内に起こる。IL-13Rα1特異的mAbは、IL-13および/またはIL-4に応答するSTAT6リン酸化を阻害することができる。
従って、2x106NHDF細胞を含むRPMI培地(#22400-071、INVITROGEN)50μlを、96ウェルV底ポリプロピレンPCRプレート(#1442-9596、USA scientific)にプレーティングし、所望濃度の抗IL-13R mAbを25μl加え、プレートを4℃で30分間インキュベートした。組換えhIL-13(100ng/ml)またはhIL-4(PHARMINGEN)(0.5ng/ml)を25μl加え、PCR装置を用いてプレートを37℃で20分間加温した。20分後、等容量の2X溶解緩衝液(100mM HEPES、200mM NaCl、2%v/vトリトン(登録商標)X100、100mM NaF、10mM DTT、プロテアーゼインヒビター)を加え、ELISAによりpSTAT6を測定した。
STAT6 ELISAプロトコル。抗ヒトリン酸化STAT6(621995、BD Transduction Labs)を10μg/ml含むPBS(#14290-144、INVITROGEN)(50μl/ウェル)を用いて、4℃で終夜IMMULON(登録商標)-4プレート(#3855、DYNATECH)をコーティングした。室温で1時間プレートをブロックし(200μl/ウェル、1%BSAおよび0.05%ツイーン(登録商標)20を添加したTBS)、3回洗浄した(洗浄用緩衝液、0.05%ツイーン(登録商標)20含有TBS)。試験溶解物を50μl/ウェル加え、プレートを室温で2時間インキュベートし、3回洗浄した。ビオチン抗STAT6(621141、BD Transduction Labs、20:1モル比でビオチン標識されている)を2μg/ml含むブロッキング緩衝液(60μl/ウェル)を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄し、ストレプトアビジン-ユーロピウム(#1244-360、Wallac)を100ng/ml含むユーロピウム緩衝液を加え(100μl/ウェル)。プレートを室温で20分間インキュベートした。プレートを3回洗浄し、エンハンスメント溶液(#12244-105、Wallac)(150μl/ウェル)を加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。VICTOR(PERKIN ELMER)プレートリーダーを用い、遅延蛍光により分析を行った。
この分析の結果により、モノクローナル抗体8B11のEC50値は、IL-13に対しては7.9μg/mlであり、IL-4に対しては5.3μg/mlであることが示された。
hIL-13Rα1に対するmAbの競合結合
ELISAベース戦略。ELISAベースの競合分析のために、滴定非標識第二mAbの存在下でプレートに結合させたhIL-13Rα1.ECRへのビオチン化試験mAb(亜飽和濃度、標準的方法を用いてビオチン化)の結合を以下のように評価した。PBSで希釈したhIL-13Rα1.ECRを2.5μg/ml含有する溶液50μlを用いて、4℃で終夜平底96ウェルMAXISORP(登録商標)プレート(NUNC)をコーティングした。PBSで2回洗浄した後、2%w/vスキムミルク含有PBS(ブロッキング緩衝液、200μl/ウェル)を用いて、37℃で1時間プレートをブロックし、PBS(0.1%v/vツイーン(登録商標)20(洗浄用緩衝液))でさらに2回洗浄した。50μl(所定の亜飽和濃度のビオチン化試験mAbおよび滴定非標識コンペティターmAbの両方を含有する)を各ウェルに加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄した。PBS(1%w/vスキムミルク、0.1%v/vツイーン(登録商標)20)で1:1000に希釈したストレプトアビジン-HRP標識二次試薬(50μl)を用いて、室温で1時間、結合したビオチン化mAbを検出した。プレートを3回洗浄し、TMB基質で発色させ、450nmでODを測定した。
結果。ビオチン化4E2の結合は、非標識4E2ばかりでなく4B5、8B11および15F4によっても競合されたが、8B4によっては競合されなかった。mAb 8B4とマウスmAb 1D9は互いに競合した。
エピトープマッピング
詳細なエピトープマッピング:ファージに提示されたキメラヒト/マウスIL-13Rα1タンパク質へ結合するmAbの分析。異なるmAbに結合するhIL-13Rα1のエピトープをさらに限定するためにホモログスキャン突然変異誘発(Cunningham BCら、Science, 10;243(4896):1330-6 (1989))を用いた。上で述べたように、本mAbは、マウスIL-13Rα1には結合しないことがわかっていた。マウスIL-13Rα1細胞外領域(図1)のD3由来の個々の配列セグメント(5〜9アミノ酸残基長)を、ヒトIL-13Rα1細胞外領域配列にわたって系統的に置換して、一連の11キメラ受容体を作製した。すなわち、各キメラ受容体は、マウス細胞外領域配列の対応するセグメントにより置換された5〜9アミノ酸残基セグメント1つを有するヒト受容体細胞外領域配列を含む。例えば、HM1は、図1においてHM1として特定されるマウスIL-13Rα1の下線を施したセグメントでヒトIL-13Rα1細胞外領域の対応するセグメントを置換したヒトIL-13Rα1細胞外領域である。ついでキメラ受容体タンパク質パネルに対して各mAbを分析して、どの変異受容体が結合の低下を示すのかを測定した。
ヒト/マウスIL-13Rα1タンパク質パネルの作製およびELISAアッセイ。11キメラIL-13Rα1タンパク質パネルを、遺伝子3コートタンパク質融合体としてM13バクテリオファージに提示させ、抗ヒトIL-13Rα1 mAbへの結合をアッセイした。IL-13Rα1細胞外領域のD2に結合し、従ってその結合が変異に影響されない対照mAb 8B4への結合に関してもキメラ受容体タンパク質をアッセイした。
キメラIL13Rα1タンパク質を提示しているファージ調製物の固定化mAbへの結合をELISAによりアッセイした。簡潔に言えば、PBS緩衝液で希釈した2.5μg/mL mAb 100μL/ウェルで終夜インキュベートし、96ウェルMAXISORP(登録商標)プレート(NUNC)にmAbを受動吸着させた。コーティング溶液を捨て、ブロッキング緩衝液で室温で1時間インキュベートしてプレートをブロックし、ついで洗浄用緩衝液で1回洗浄した。ファージに提示されたIL-13Rα1フラグメントを含有する大腸菌上清をブロッキング緩衝液(0.25倍体積)で希釈し、mAbでコーティングされたウェルに加えた(100μL)。ついで1%w/vスキムミルクパウダー含有PBS(希釈緩衝液)で連続希釈したファージ試料をmAbでコーティングしたプレートに移した(100μL/ウェル)。室温で2時間インキュベートした後、プレートを3回洗浄し、結合したファージを抗M13IgG HRP標識ポリクローナル抗体(AMERSHAM Biosciences)で標識し、TMB基質を添加して検出した。2M硫酸水溶液を加えてTMB発色をクエンチし、450nmで吸光度を測定した。
データ分析。HM1〜HM11のそれぞれについて、所定の試験mAbへの結合の最大半量ELISAシグナル(EC50)をもたらすファージ原液の希釈度をEC50-REF(対照mAb 8B4への最大半量結合をもたらすファージ原液の希釈度)で割った。試験した各mAbについて、変異がmAbに対する受容体結合を有意に低下させる場合を除いて、EC50/EC50-REF値はキメラ受容体構築物にわたって10倍を超えては異ならなかった。有意な低下には、一般的には、変異がほとんど効果を示さず、抗体結合が本質的に野生型受容体に関して観察されるものと等しい、抗体と他のキメラ受容体との結合と比較して、抗体と特定のキメラ受容体との結合における10倍を超える低下を用いた。
結果。mAb結合親和性の有意な低下を示したキメラタンパク質を表6に示す。大部分のキメラ受容体タンパク質は試験したmAbに対して高親和性結合を保持していた。キメラ受容体HM5およびHM6に対するmAbの結合の低下が観察された。このデータにより明らかにされた一般的傾向は、ヒトIL-13Rα1残基Val248、Phe249、Tyr250、Gln252、Ala254、Glu257、Pro259の1以上は、ドメイン3に対する一部の抗体による結合にとって重要であることを示唆している。対照mAb 8B4 または マウスmAb 1D9については、結合の低下は観察されなかった。
詳細なエピトープマッピング:ファージに提示されたヒトIL-13Rα1の点突然変異体へ結合するmAbの分析。mAb結合に寄与する特定のIL-13Rα1残基を明らかにするために、ヒトIL-13Rα1細胞外領域の配列に単一アミノ酸置換を行った。ヒト受容体配列がHM5およびHM6の配列とは異なる領域において点突然変異を行った。よって、部位特異的突然変異誘発により、以下の7つのhIL-13Rα1細胞外領域点突然変異体:i)Val248Ala;ii)Phe249Ala;iii)Tyr250Ala;iv)Gln252Ala;v)Ala254Asp;vi)Glu257Ala;vii)Pro259Alaを調製した。変異IL-13Rα1ペプチドをファージに提示させ、前述のヒト-マウスキメラタンパク質と同じ手順に従って、96ウェルプレートに固定化した試験mAbへの結合をELISAによりアッセイした。対照mAb 8B4もまた評価した。ヒト-マウスキメラタンパク質と同様に、ELISAにより得られた結合データを分析した。
結果。mAb結合の有意な低下を示した点突然変異を表7に示す。
表7
マウス抗体可変領域のクローニングおよび配列決定
mAbを産生するハイブリドーマ細胞からメッセンジャーRNAを調製し、オリゴdTプライマーを用いて逆転写してcDNAを産生させた。成熟重鎖および軽鎖可変ドメインを増幅させ、クローニングのための制限酵素部位を組み込むために、アミノ末端アミノ酸配列および抗体イソタイプに基づく部分的縮重PCRプライマーを用いた。その後のクローンおよびPCR産物を配列決定して、4B5、8B11および15F4の可変領域のアミノ酸配列を明らかにした。N末端配列がプライマー配列に対応するが、生殖系列とは異なる場合、配列を生殖系列に修正した。mAb 4B5に関しては、軽鎖に関する偽遺伝子が同定されたので、さらなる配列決定が必要である。
4B5の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、それぞれ図2ならびに配列番号21および4に示す。
8B11の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、それぞれ図3ならびに配列番号25および8に示す。
15F4の重鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、それぞれ図4ならびに配列番号29および12に示す。15F4の軽鎖可変領域のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、それぞれ図5ならびに配列番号33および16に示す。
4B5 重鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖配列との比較により、この抗体重鎖がヒト生殖系列VHからのVH3-30.3セグメントを用いていることが明らかとなった。
8B11 重鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖配列との比較により、この抗体重鎖がヒト生殖系列VH3-30.3からのVHセグメントを用いていることが明らかとなった。
15F4 重鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖系列免疫グロブリン重鎖配列との比較により、これらの抗体重鎖がヒト生殖系列VH3-33からのVHセグメントを用いていることが明らかとなった。
15F4 軽鎖免疫グロブリン配列と既知のヒト生殖系列免疫グロブリン軽鎖配列との比較により、これらの抗体軽鎖がヒト生殖系列VL VKIII A27からのVLセグメントを用いていることが明らかとなった。
本明細書記載の本発明は、特記したものを除き、変形および修飾が可能であることは当業者には明らかであろう。本発明は、このような変形および修飾をすべて含むと理解されなければならない。本発明はまた、個別的または総合的に本明細書に引用または記載されたステップ、特徴、組成物および化合物をすべて含み、かつ前記ステップまたは特徴の任意の2以上のありとあらゆる組み合わせを含む。