JP2010506654A - 単一の電流路デカップリングキャパシタを備えた多電極埋込型刺激装置 - Google Patents

単一の電流路デカップリングキャパシタを備えた多電極埋込型刺激装置 Download PDF

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Abstract

少なくとも1つの陰極電極と少なくとも1つの陽極電極を介した設定電流路内に1つのデカップリングキャパシタを組み入れた多電極埋込型刺激装置用の回路及び方法を開示する。デカップリングキャパシタを装置の専用陽極に配線接続できる。刺激スイッチを介して、陰極を選択的に作動させることができる。別実施形態では、装置電極の任意の電極を陽極又は陰極として選択的に作動させることができる。この実施形態では、デカップリングキャパシタは、選択可能な陽極及び陰極の刺激スイッチを介して電流路内に設置される。実施構成に関わらず、この技術により多電極装置上のすべての電極にデカップリングキャパシタを関連させる必要のない容量性デカップリングという利点が実現でき、装置本体内の空間が節約される。マイクロスティミュレータに適用した場合に特に有利であり、開示した技術を空間節約の利点と共に任意の刺激装置に使用できる。
【選択図】図8A

Description

本発明は、一般に、Bion(登録商標)装置、脊髄電気刺激(SCS)装置、又はその他の種類の神経刺激装置などの埋込型パルス発生器のような埋込型刺激装置に関する。
埋込型刺激装置とは、様々な生物学的疾患の治療のために電気刺激を生成し、神経及び組織へ送出するものであり、不整脈を治療するペースメーカ、心細動を治療する除細動器、難聴を治療する蝸牛刺激装置、盲目を治療する網膜刺激装置、協調四肢運動を引き起こす筋肉刺激装置、慢性疼痛を治療する脊髄刺激装置、運動障害及び精神障害を治療する脳皮質及び脳深部刺激装置、片頭痛を治療する後頭神経刺激装置、及び尿失禁、睡眠時無呼吸、肩亜脱臼などを治療するその他の神経刺激装置などがある。本発明は、全てのこのような用途において適用性を見出すことができるが、以下の説明は一般に、2005年1月27日に公開された米国特許出願第2005/0021108号公報、2005年3月17日に公開された米国特許出願第2005/0057905号公報、及び2004年3月25日に公開された米国特許出願第2004/0059392号公報に開示されている種類のマイクロスティミュレータ装置の範囲における本発明の使用に焦点を当てたものであり、これらの特許は全てその全体が引用により本明細書に組み入れられる。しかしながら、本発明は、脊髄電気刺激(SCS)装置などの他の埋込型刺激装置にも適用性があり、この例を米国特許第6,553,263号に見出すことができ、該特許は引用により全体が本明細書に組み入れられる。
通常、マイクロスティミュレータ装置は、所望の電気刺激電流を発生させるための電極を有する小さな概ね円筒状のハウジングを備える。この種の装置は、標的組織の近くに埋め込まれて、刺激電流が標的組織を刺激できるようにし、様々な種類の体調及び疾患のための治療を行う。この出願との関連において「マイクロスティミュレータ」とは、装置の本体又はハウジングが小型(通常、直径が約数ミリ程度、長さが数ミリから数センチ)であるとともに、通常、患者の組織に接することを意図された刺激電極を含み或いは有する埋込型刺激装置のことを意味する。しかしながら、「マイクロスティミュレータ」は、2000年7月24日に出願された米国特許出願第09/624,130号に示されるように、1つ又は複数のリード線を介して装置の本体に結合された電極を上記と併せて、或いは上記とは別に有することができる。
従来技術におけるいくつかのマイクロスティミュレータは、1つのみの陰極電極を含む。より具体的には、図1を参照すると、このような装置には、抵抗16,R(すなわちユーザの組織)内に電流を供給するための単一の陽極電極14が設けられる。通常、電流の戻り経路が単一の陰極14’によって提供され、この戻り経路は装置上の別の電極を含むことができるが、この戻り経路はまた、装置の導電性ケースの一部を含むこともできる。本明細書では、このような装置を、その2つの電極14及び14’に即して「2電極マイクロスティミュレータ」と呼ぶ。周知のように、陽極14は、プログラマブルデジタルアナログ変換器、すなわち「DAC」20内の電流発生回路を使用して電流を供給し、或いは吸い込む。陰極14’を電流発生回路に接続することも、或いは単に基準電位に結合することもできる。2電極マイクロスティミュレータの例としては、カリフォルニア州シルマーのAdvanced Bionics Corporationが作製したBion(登録商標)装置が挙げられる。
2電極マイクロスティミュレータは単純さが強みである。これらのサイズは小型であるため、患者の治療が必要な部位にマイクロスティミュレータを埋め込むことができ、上述したような本体から離れて治療電流を運ぶリード線は存在しない。しかしながら、このような2電極マイクロスティミュレータは治療上の柔軟性に乏しく、一度埋め込まれると、単一の陰極/陽極の組み合わせは、これらの直近の神経を回復させることしか行わず、患者の組織内で装置の位置が動かされない限り、通常変更を行うことはできない。
治療上の柔軟性を向上させるため、2つより多い電極を有するマイクロスティミュレータが提案されてきており、このような装置のことを本明細書では「多電極マイクロスティミュレータ」と呼び、上述の2電極マイクロスティミュレータとは区別している。この方法で電極の数を増加させた場合、一旦装置が埋め込まれても選択的に電極を作動できるようになり、装置の位置を動かす必要なしに、治療を行う機会が提供される。
例示的な多電極マイクロスティミュレータ400の図面を図2A〜図2Cに様々な図で示す。図示のように、装置400は、本体又はハウジング402を備え、これが電源(バッテリ)と、装置を機能させるのに必要な他の回路とを内蔵している。ハウジング402の外側には、(この例では)ハウジング内の電流発生回路(図示せず)に結合された8つの導電性コネクタ404が存在する。図2B及び図2Cに最もわかりやすく示すように、この特定の例では、コネクタ404をコンタクトパッド412に接触させるように、ハウジングを覆ってラミネート410が配置される。ラミネート410はプリント基板のようなものであり、患者の肉体に直接接触するように設計された電極416と最終的に接触する導線414を含む。従って、ハウジング402及びラミネート410をこのように結合した場合(図2C)、装置の本体近くに、及びこれに沿って様々な電極416を有する多電極マイクロスティミュレータが得られる。多電極マイクロスティミュレータの上記の及びその他の構造に関するさらなる詳細が、以下の参考文献すなわち、2004年1月22日に公開された米国特許第2004/0015205号公報、2005年6月1日に出願された米国特許出願第11/142,154号、及び2005年11月16日に出願された米国特許第11/280,620号に開示されており、これらの特許はその全体が本明細書に組み入れられる。また、多電極マイクロスティミュレータは、本体402上に電極を採用する必要がなく、この代わりに、或いはこれに加えて、コネクタ404に結合された1又は複数のリード線(図示せず)を有する図2Aの構造を備えることができる。
任意の埋込型刺激装置、及び特に上述の種類のマイクロスティミュレータの設計に関する問題点として、デカップリングキャパシタの使用が挙げられる。1つのこのようなデカップリングキャパシタ25(C)を図1に示す。周知のように、デカップリングキャパシタは、多くの理由で埋込型刺激装置において有用なものである。第1に、これらは刺激パルスを供給した後の電荷の回復を支援することができ、この点については当分野において周知であり、さらなる詳述は必要ではない。第2に、これらは、(DAC20の内部などの)電流発生器回路から患者の組織16(R)への電流の直接注入を防ぐことにより付加的な安全性を提供する。
埋込型刺激装置の技術におけるデカップリングキャパシタの使用例を図3A及び図3Bに示す。図3Aは、Advanced Bionics Corporationにより市販されているPrecision(登録商標)SCS装置などの脊髄電気刺激(SCS)装置30におけるデカップリングキャパシタ25の使用例を示す図である。図示のように、この埋込型刺激装置は、複数の電極32(E1〜En)を備える。最終的に、リード線延長部(図示せず)が電極に結合して、埋込型パルス発生器(IPG)が生成した信号をリード線の終端において電極アレイ(図示せず)に伝達することができる。この結果、電極アレイを所定の位置(例えば、患者の脊髄沿い)にトンネリングできる一方、IPGが一般に相対距離で埋め込まれる(例えば、患者の臀部に)。
個々の電極E1〜Enには、対応するデカップリングキャパシタ25(C1〜Cn)が関連付けられる。SCS装置30では、電極を選択的に作動させることができ、任意の作動電極を陽極又は陰極として選択することができる。実際、一度に2以上の電極を陽極として選択することができ、一度に2以上の電極を陰極として選択することもできる。
このようにして、図3Aに示すように、電極E2を陽極として機能するように選択し、一方で電極E4を陰極として機能するように選択したと仮定する。個々の電極E1〜Enは、デカップリングキャパシタC1〜Cnに配線で接続されているため、2つの電極E2及びE4を介して得られる電流路はデカップリングキャパシタC2及びC4を含む。これにより、両電極の電荷の回復が支援されるとともに余剰的な安全性がさらに提供され、すなわち2つのキャパシタC2又はC4の一方が破損したとしても、他方のキャパシタが組織R内への電流の直接注入を防ぐことになる。
デカップリングキャパシタを個々の電極に関連付けるSCS装置30のこの方法には、一般に全く問題がない。SCS装置30では、IPGが、必要な治療の部位には埋め込まれず、代わりに患者の(臀部などの)あまり重要でない部位に位置付けられるため、IPGを上述のマイクロスティミュレータの本体よりも一般に大きくすることができる。例えば、SCS装置30で使用されるIPGは、数センチの直径及び数ミリの厚みを有するディスク型であってもよい。一般に、IPG内には、比較的大型のデカップリングキャパシタC1〜Cnを収容するのに十分な空間が存在する。従って、現在市販されている多くのSCS装置30は、16の電極(ケース電極を数えると17)及び16の対応するデカップリングキャパシタ(ケースを数えると17)を有するIPGを採用している。
図3Bは、埋込型刺激装置の技術においてデカップリングキャパシタを使用する別の装置50を示す図であり、具体的には上述の2電極Bion(登録商標)マイクロスティミュレータにおけるデカップリングキャパシタを示す図である。上述したように、2電極マイクロスティミュレータ50は単一の陰極52及び陽極52’を備える。図示のように、単一のデカップリングキャパシタC25が陰極52に結合され、具体的には陰極電極52と電流発生回路20との間に結合される。これに対し、陽極は、単に接地され、或いは基準電位に結合される。デカップリングキャパシタCの使用により、前述した同じ利点、すなわち向上した安全性及び電荷の回復が得られる。(しかしながら、電流路には1つのデカップリングキャパシタしか設けられないため、図3AのSCS装置30における2つのデカップリングキャパシタによって提供されるような余剰的な安全性は存在しない)。
上述のように、2電極マイクロスティミュレータ50の本体55は非常に小型であり、このことは複数の比較的大型のデカップリングキャパシタ25を収容するために縮小した容積が本体内部に存在することを意味する。しかしながら、このような装置は、もともとは単一のデカップリングキャパシタのみの使用を必要とするものであったため、本体55内の空間は、この構成要素を収容するのに概ね十分なものであった。
しかしながら、多電極マイクロスティミュレータが企図される場合、マイクロスティミュレータの本体内の空間が限定されるという問題は非常に重要なものとなる。8つの陰極及び1つの陽極(おそらく装置のケースを含む)を有する多電極マイクロスティミュレータについて考察してみる。このような構造では、及び出願者らが理解するような従来技術の通念によれば、マイクロスティミュレータは、各々が個々の電極に配線で接続された8つのデカップリングキャパシタを有する必要があることになる。しかし上述のように、マイクロスティミュレータは非常に小型となることが意図されたものである。この矛盾により、多電極マイクロスティミュレータが有することができる電極の数が限定されるか、或いは本体寸法が増大するようになるが、これらのいずれもが望ましくない。
米国特許出願第2005/0021108号公報 米国特許出願第2005/0057905号公報 米国特許出願第2004/0059392号公報 米国特許第6,553,263号公報 米国特許出願第09/624,130号 米国特許出願第2004/0015205号公報 米国特許出願第11/142,152号 米国特許出願第11/280,620号
従って、埋込型刺激装置の技術、特にマイクロスティミュレータの技術は、複数の電極を提供しながらも、装置内部の最低限の容積しか使用しない十分な容量性デカップリングを実現するための能力があれば利点となる。このような解決方法の実施形態を本明細書において提供する。
少なくとも1つの陰極電極と少なくとも1つの陽極電極とを介して設定した電流路内に1つのデカップリングキャパシタを組み入れた多電極埋込型刺激装置のための回路及び方法を本明細書で開示する。1つの実施形態では、デカップリングキャパシタが、装置の専用の陽極に配線で接続される。陰極は、刺激スイッチを介して選択的に作動可能である。別の実施形態では、装置の電極のいずれもが陽極又は陰極として選択的に作動可能であってもよい。この実施形態では、デカップリングキャパシタが、選択可能な陽極及び陰極の刺激スイッチを介して電流路内に設置される。実施構成にかかわらず、この技術により、デカップリングキャパシタを多電極装置上のすべての電極に関連付ける必要なしに容量性デカップリングの利点が得られるようになり、これにより装置の本体内の空間が節約される。開示する技術は、マイクロスティミュレータに適用された場合に特に有利ではあるが、空間節約の利点とともに任意の埋込型刺激装置に使用することができる。
以下の図面と併せて提示する本発明の以下のより詳細な説明から、本発明の上記の及びその他の態様がさらに明らかになるであろう。
従来技術によるマイクロスティミュレータの基本的な電気部品を示す図である。 従来技術による多電極マイクロスティミュレータの様々な図である。 従来技術による多電極マイクロスティミュレータの様々な図である。 従来技術による多電極マイクロスティミュレータの様々な図である。 脊髄刺激装置(SCS)システムの刺激回路を示し、この技術に使用する形でデカップリングキャパシタを詳細に示す図である。 2電極マイクロスティミュレータの刺激回路をそれぞれ示し、この技術に使用する形でデカップリングキャパシタを詳細に示す図である。 図7〜図10の改善した容量性デカップリング技術を使用できる例示的なマイクロスティミュレータを示す図である。 図4のマイクロスティミュレータ、及びこの装置の、マイクロスティミュレータ通信システムにおける様々な外部構成要素との相互作用を示す図である。 通信ネットワークにおいて共に使用されるいくつかの図4のマイクロスティミュレータを示す図である。 多電極マイクロスティミュレータにおいて単一のデカップリングキャパシタを使用する本発明の実施形態を示す図である。 単一陽極/多陰極の多電極マイクロスティミュレータにおけるさらなる回路の詳細及び改変を示す図である。 単一陽極/多陰極の多電極マイクロスティミュレータにおけるさらなる回路の詳細及び改変を示す図である。 単一陽極/多陰極の多電極マイクロスティミュレータにおけるさらなる回路の詳細及び改変を示す図である。 単一陰極/多陽極の多電極マイクロスティミュレータにおけるさらなる回路の詳細及び改変を示す図である。 単一陰極/多陽極の多電極マイクロスティミュレータにおけるさらなる回路の詳細及び改変を示す図である。 単一陰極/多陽極の多電極マイクロスティミュレータにおけるさらなる回路の詳細及び改変を示す図である。 陽極及び/又は陰極を設定可能な実施形態において単一のデカップリングキャパシタを使用する多電極マイクロスティミュレータを示す図である。 図8Aの多電極マイクロスティミュレータの概略図を示すとともに主集積回路との関連においてデカップリングキャパシタの提供を示す図である。
以下の説明は、本発明を実施するために現在企図される最良の形態によるものである。この説明は、本発明を限定する意味で理解されるべきではなく、単に本発明の一般的な原理を説明する目的でなされるものである。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びこれらの同等物を参照して決定すべきである。
本開示の骨格となる容量性デカップリングについて説明する前に、説明を完全にするために、本発明の回路を使用できる埋込型刺激装置の回路、構造、及び機能について説明する。
前述のように、開示する埋込型刺激装置は、マイクロスティミュレータ装置、SCS装置、又は同様の電気刺激装置及び/又は電気センサを備えることができる。しかしながら、便宜上、マイクロスティミュレータとの関連において本発明の回路を本明細書で開示する。しかしながら、本発明はこのように限定されるものではないことを理解すべきである。例えば、ペースメーカ、埋込型ポンプ、除細動器、蝸牛刺激装置、網膜刺激装置、協調四肢運動を引き起こすように構成された刺激装置、脳皮質又は脳深部刺激装置、後頭神経刺激装置の一部として、或いは、尿失禁、睡眠時無呼吸、肩部亜脱臼などを治療するように構成された他の任意の刺激装置において本発明を使用することができる。さらに、非医療装置及び/又は非埋込型装置にもこの技術を同様に使用することができる。
図4は、例示的な埋込型マイクロスティミュレータ100を示す図である。図示のように、マイクロスティミュレータ100は、バッテリなどの電源145、プログラマブルメモリ146、電気回路144、及びコイル147を含むことができる。これらの構成要素は、細長い円筒形又は特定の用途に最も役立つ他の任意の形状などのカプセル202内に収容される。所望の標的組織の構造、周辺領域、埋め込み方法、電源145のサイズ及び位置及び/又は外部電極142の個数及び配列により、カプセル202の形状を決定することができる。いくつかの実施形態では、カプセル202の容積は3立方センチメートルにほぼ等しいか或いはこれよりも小さい。
例えば、図1のバッテリ12などの電源145は、マイクロスティミュレータ100内の様々な構成要素に電力を供給するために使用する電圧を出力するように構成される。本開示の背景技術の項で説明したように、電源145はまた、マイクロスティミュレータ100により隣接組織に印加される任意の刺激電流のための電力も供給する。電源145は、一次バッテリ、充電式バッテリ、キャパシタ、又はその他の適当な電源であってもよい。電源145が充電式である場合、電源145を再充電するためのシステム及び方法について以下に説明する。
コイル147は、埋め込まれたマイクロスティミュレータ100をサポートする1又はそれ以上の外部装置と通信し、或いはこの外部装置から電力を受け取るのに使用する磁場(高周波(RF)電磁場とも呼ばれる)を受け取り、及び/又はこれを放射するように構成され、この例について以下に説明する。このような通信及び/又は電力移送として、以下に限定されるわけではないが、データを外部装置から経皮的に受信すること、データを外部装置へ送信すること、及び/又は電源145の再充電に使用する電力を受け取ることを挙げることができる。
プログラマブルメモリユニット146は、以下でさらに説明する電気刺激パラメータなどの1つ又はそれ以上のデータセットの記憶に使用される。プログラマブルメモリ146は、電気刺激が特定の病状及び/又は特定の患者にとって安全かつ有効なレベルであるように、患者、臨床医、又はマイクロスティミュレータ100の他のユーザが刺激パラメータを調節できるようにする。電気刺激パラメータは独立して制御することができる。プログラマブルメモリ146は、以下に限定されるわけではないが、ランダムアクセスメモリ(RAM)、スタティックRAM(SRAM)、EEPROM、ハードドライブなどの任意の種類のメモリユニットであってもよい。
電気刺激パラメータは、以下に限定されるわけではないが、周波数、パルス幅、振幅、バーストパターン(例えば、バーストオンタイム及びバーストオフタイム)、負荷サイクル又はバーストの繰り返し間隔、刺激電流のランプオンタイム及びランプオフタイムなどを含む、標的組織に印加される刺激電流の様々なパラメータを制御する。特定の病状を最も効果的に治療するために必要な電気刺激の強度及び/又は持続時間を決定するために、様々な病状の兆候及び/又は治療に対する患者の反応を検知又は計測することができる。これらの指標には、以下に限定されるわけではないが、筋肉又は四肢の活性(例えば、筋電図検査(EMG))、脳の電気活性(例えば、EEG)、神経伝達物質レベル、ホルモンレベル、及び/又は薬物レベルが含まれる。いくつかの実施形態では、マイクロスティミュレータ100は、これらの計測に応じて刺激パラメータを閉ループ方式で変化させるように構成することができる。或いは、他の検知装置は、計測を行うとともに計測値をマイクロスティミュレータ100へ送信するように構成することができる。
特定の電気刺激は、異なる種類の病状に異なる効果を与えることができる。従って、いくつかの実施形態では、患者、臨床医、又はマイクロスティミュレータ100の他のユーザが、特定の病状に最もよく機能するように電気刺激を調整することができる。例えば、比較的直径の大きな標的神経の線維を対象とするために、標的神経に印加される刺激電流の振幅を比較的低い値を有するように調整することができる。マイクロスティミュレータ100はまた、標的神経に(約100Hz未満などの)比較的低い周波数の刺激電流を印加することにより、標的神経の興奮を高めることもできる。マイクロスティミュレータ100はまた、標的神経に(約100Hzを超えるような)比較的高い周波数の刺激電流を印加することにより、標的神経の興奮を和らげることもできる。標的神経に断続的に又は連続的に刺激電流を印加するようにマイクロスティミュレータ100をプログラムすることもできる。
マイクロスティミュレータ100は、カプセル202の外側に(図1の電極14及び14’に類似した)電極142−1及び142−2を含む。図4に示すように、電極142をカプセル202のいずれかの端部に配置し、或いはカプセルの長さに沿って設置することもできる。アレイの形で配列した2つより多い電極を存在させることもできる。電極142の1つを、標的組織又は治療部位に近接して設置する刺激電極として指定し、電極142の1つを、刺激電流を完結させるために使用される不関電極(基準ノード)として指定することができる。前述したように、マイクロスティミュレータのハウジングの1つ又はそれ以上の側面に沿って複数の電極を配置することができる。
電気回路144は、電極142を介して標的神経へ送出される電気刺激電流を生成するように構成される。いくつかの実施形態では、マイクロスティミュレータ100を単極刺激を生成するように構成することができ、例えば、刺激装置ケース202を不関電極として使用してこれを実現することができる。これとは別に、或いはこれに加えて、マイクロスティミュレータ100を双極刺激を生成するように構成することができ、例えば、電極アレイの1つの電極を陰極として使用し、別の電極を陽極として使用することによりこれを実現することができる。
電気回路144は、刺激パラメータを復号化し対応する刺激パルスを生成するように構成された1つ又はそれ以上のマイクロプロセッサ又はマイクロコントローラを含むことができる。いくつかの実施形態では、マイクロスティミュレータ100は、4つまで又はそれ以上のチャンネルを有し16個まで又はそれ以上の電極を駆動する。電気回路144は、個々の用途に最も役立つ様々な機能を実行するように構成されたキャパシタ、集積回路、抵抗器、コイルなどの追加の回路を含むことができる。
図4に示す例では、マイクロスティミュレータ100は、2つ又はそれ以上のリード線のない電極142を含む。また一方、これとは別に、電極142のいずれか又は双方を短い可撓性のリード線の終端に配置することができる。このようなリード線を使用することにより、特に、外科的により好都合な部位における装置100の大部分の外科的固定位置から、わずかな距離離れた(単複の)標的組織に電気刺激を導くことができるようになる。これにより、装置100及び(単複の)任意のリード線が横切る距離及びこれらが交わる手術面が最小化される。
マイクロスティミュレータ100の外面は、生体適合性材料からなることが好ましい。例えば、水蒸気は排除するが、データ及び/又は電力の伝送に使用する電磁場は通過させるような密封包装を行うガラス、セラミック、金属又は他の任意の材料でカプセル202を作製することができる。プラチナ、イリジウム、タンタル、チタン、窒化チタン、ニオブ又はこれらのいずれかの合金などの貴金属又は耐熱金属又は化合物で電極142を作製して、周辺組織及び装置に損傷を与える可能性のある腐食又は電気分解を避けることができる。
また、マイクロスティミュレータ100は、標的組織内への1つ又はそれ以上の薬物の注入を容易にする1つ又はそれ以上の注入液出口201を含むこともできる。或いは、注入液出口201にカテーテルを結合して、マイクロスティミュレータ100の本体から少し離れた標的組織に薬物治療を行うこともできる。マイクロスティミュレータ100が、注入液出口201を使用して薬物刺激を行うように構成された場合、マイクロスティミュレータ100はまた、1つ又はそれ以上の薬物を蓄え、投薬するように構成されたポンプ149を含むこともできる。
言うまでもなく、図4のマイクロスティミュレータ100は、標的組織に刺激を加えて特定の病状を治療するために使用できる多くの種類のマイクロスティミュレータを例示したものである。他の種類のマイクロスティミュレータ、並びにマイクロスティミュレータの製造及び動作に関する詳細を、本開示の他の箇所に参照により組み入れた様々な特許文書において見出すことができる。
図5を参照すると、患者150に埋め込まれた形でマイクロスティミュレータ100を示しており、埋め込まれたマイクロスティミュレータ100のサポートに使用することができる様々な外部構成要素をさらに示している。例えば、外部バッテリ充電システム(EBCS)151は、RFリンク152を介した電源145(図4)の再充電に使用する電力を供給することができる。当分野で周知のように、RFリンクは、患者150の組織を通じてコイル147(図4)に電圧を印加する電磁エネルギーを含み、このエネルギーが整流され、ろ過され、そして電源145の再充電に使用される。
ハンドヘルドプログラマ(HHP)155、臨床医プログラミングシステム(CPS)157、及び/又は製造及び診断システム(MDS)153などのその他の外部構成要素を使用して、1つ又はそれ以上のRFリンク154、156を介してマイクロスティミュレータ100を起動、停止、プログラム及びテストすることができる。このようにして、これらの装置153、155、157のうちの1つ又はそれ以上を使用して、特定の病状の治療に必要な刺激電気パルスを生成するようにマイクロスティミュレータ100を制御することもでき、またマイクロスティミュレータ100のプログラマブルメモリ(図4の146)に記憶した刺激パラメータ及びその他のデータを提供又は更新することもできる。さらに、外部装置153、155、157は互いに通信することができる。例えば、CPS157は、赤外線(IR)リンク158又は他の任意の適当な通信リンクを介してHHP155と通信することができる。同様に、MDS153は、IRリンク159又は他の任意の適当な通信リンクを介してHHP155と通信することができる。
また、マイクロスティミュレータ100は、双方向RFリンク152、154、及び156を介して自身の状態又は様々な他のパラメータを外部装置のいずれかに報告することができる。例えば、論理回路は、電源145が完全に充電されていることを検出すると、コイル147(図4)を使用して、この事実をRFリンクを介してEBCS151へ返信することにより充電を停止することができる。同様に、HHP155又はMDS153のいずれかから刺激パラメータが送られると、これらの装置にこれらのパラメータの受け取りの報告を返すことができ、及び/又は再確認として実際のパラメータの報告を返すことができる。
HHP155、MDS153、CPS157、及びEBCS151は、マイクロスティミュレータ100に接続して使用することができる多くの異なる外部構成要素を例示したものに過ぎない。さらに、HHP155、MDS153、CPS157、及びEBCS151が行う機能を、組み合わせ装置又は単一の外部装置によって行うことができることを認識するであろう。埋め込まれたマイクロスティミュレータ100の近くに都合よく設置するために、これらの外部装置のうちの1つ又はそれ以上を使用時にシートクッション、マットレスカバー、枕、衣服、ベルト、ストラップ、ポーチなどに埋め込むことができる。
システムの埋込型の及び外部の構成要素について理解したところで、マイクロスティミュレータ100を使用して特定の病状を治療することができる例示的な方法について簡単に示す。まず、マイクロスティミュレータ100の電極(図4の142)が標的組織に結合するように、或いはその近くに配置されるようにマイクロスティミュレータ100が埋め込まれる。マイクロスティミュレータ100は、標的組織に少なくとも1つの刺激を加えるための刺激パラメータがプログラムされる。患者が、このプログラム済みの刺激パラメータによる治療を望む場合、患者は(リモコンなどによって)マイクロスティミュレータ100に命令を送信し、この結果マイクロスティミュレータ100は所定の刺激を送出する。これとは別に、或いはこれに加えて、マイクロスティミュレータ100を、検知した特定の病状の兆候に応じて自動的に電気刺激を加えるように構成することができる。電気刺激を中断させるために、患者は(この場合もリモコンによって)マイクロスティミュレータ100をオフにすることができる。必要な場合には、上述のようにEBCS151を起動して電源145を再充電し、毎晩などのような、患者150にとって都合のよい間隔でこれを行うことができる。
いくつかの治療では、各々をデジタルアドレスにより個別に制御できる2つ以上のマイクロスティミュレータ100を使用することが望ましい場合がある。これにより、特定の病状に有効な形で、複数のチャンネル及び/又は複数のパターンの電気刺激を使用できるようになる。例えば、図6の例に示すように、患者150内に埋め込まれた第1のマイクロスティミュレータ100が第1の位置に刺激を与え、第2のマイクロスティミュレータ100’が第2の位置に刺激を与え、第3のマイクロスティミュレータ100”が第3の位置に刺激を与える。上述のように、埋め込まれた装置は独立して動作することができ、或いは他の埋め込まれた装置又は患者の体外にある他の装置と協調して動作することもできる。すなわち、埋め込まれた装置100、100’、及び100”の各々の動作をRFリンク262〜264を介して制御するように(図5の外部構成要素のいずれか、又はこれらの構成要素の組み合わせを示す)外部コントローラ250を構成することができる。いくつかの実施形態では、マイクロスティミュレータ100などの1つの埋め込まれた装置が、RFリンク265〜267を介してマイクロスティミュレータ100’及び/又はマイクロスティミュレータ100”などの別の埋め込まれた装置を制御し、或いはこれらの制御のもとで動作することができる。
協調して動作する複数のマイクロスティミュレータ100のさらなる例として、図6の第1及び第2のマイクロスティミュレータ100、100’を、様々な特定の病状の兆候を検知し、測定した情報を第3のマイクロスティミュレータ100”へ送信するように構成することができる。その後、第3のマイクロスティミュレータ100”がこの測定した情報を使用して、この刺激パラメータを調整し、修正した電気刺激を標的組織に適宜加えることができる。
或いは、外部装置250を、様々な患者の状態の兆候を検知するように構成することができる。その後、検知した兆候を、埋め込まれたマイクロスティミュレータの1つ又はそれ以上へ送信することができ、このマイクロスティミュレータは刺激パラメータを適宜調整することができる。別の例では、外部コントローラ250が、検知した兆候に基づいて、刺激パラメータに何らかの変更を行う必要があるかどうかを判断することができる。その後、外部装置250は、刺激パラメータを調整する命令をマイクロスティミュレータの1つ又はそれ以上へ適宜送信することができる。
マイクロスティミュレータの構造及び機能を掌握したところで、本開示の中心である容量性デカップリング技術の詳細な説明に焦点を移すことにする。
前述のように、多電極マイクロスティミュレータにおける問題点は、電極デカップリングキャパシタに関するものである。このようなキャパシタは比較的大きく、マイクロスティミュレータの本体内でかなりのスペースを占める。従って、マイクロスティミュレータが複数の電極を有する場合、従来の通念では複数のデカップリングキャパシタの必要性が示唆されるため、問題が提起される。
そのような従来の通念に反する本発明の実施形態を図7、及び図8Aのさらなる回路の詳細において示す。複数の電極320、322a−322nを有する多電極マイクロスティミュレータ300を示しており、この本体305及び/又は(単複の)リード線上に電極を有することができる。(説明を簡単にするために、図7〜図11に示す実施形態では、電極は本体上にあるものとして示し、リード線は使用していない。)この実施形態では、電極は、複数(「n」個)の(例えば8つの陰極などの)陰極322a−322nと、陰極のように本体或いは本体に結合されたリード線上に有することができる専用の陽極320とに分割される。
複数の陰極322a−322nを設けているにもかかわらず、この実施形態では単一のデカップリングキャパシタ302が設けられていることに留意されたい。この実施形態では、キャパシタの第1のプレート302aは専用の陽極320に配線で接続され、一方、第2のプレート302bは、電流発生回路333と連動してDAC20内の電流を設定するコンプライアンス電圧(V+)と実質上連通する。しかしながら、第2のプレート302bとコンプライアンス電圧V+との間にはスイッチが介在し、この機能について簡単に説明する。
図8Aの実施形態には、2種類のスイッチ、すなわち刺激スイッチ310及び312a−312n、及び回復スイッチ314及び316a−316nを示している。両方の種類のスイッチが、陽極320上及び陰極322a−322n上に存在することがわかる。従って、陽極経路は、刺激スイッチ310と回復スイッチ314とを備える。同様に、陰極経路の各々は、刺激スイッチ312a−312nと回復スイッチ316a−316nとを備える。
刺激パルスを与えている間、陽極の刺激スイッチ310は、陰極の刺激スイッチ312a−312nの1つのように閉じられる。どの陰極の刺激スイッチが選択されるかは、所定の患者の治療にどの陰極が最も適当と判断されるかによって決まる。例えば、陰極322bが作動したときに所定の患者が最も症状の緩和を感じるということが実験により明らかになったと仮定する。この場合、刺激が行われている間、スイッチ312bが閉じられるとともに、陽極経路内のスイッチ310も閉じられる。その他の陰極の刺激スイッチ312a及び312c−312nは開いたままである。この結果、陽極の刺激スイッチ310を経て、陽極320を経て、患者の組織(図示せず)を経て、陰極322bを経て、陰極322bに関連する陰極の刺激スイッチ312bを経て、最終的にDAC20内の電流発生回路333により指定されたように接地する電流路が得られる。ここで注目すべきは、陽極経路内に(ひいては電流路全体に)デカップリングキャパシタ302が存在することである。このようにして、開示する実施形態において、前述した容量性デカップリングの利点(電荷の回復、安全性)が保たれる。
言うまでなく、関連する刺激スイッチ312を介して陰極322のうちのいずれを選択することもできることに留意されたい。しかしながら、デカップリングキャパシタ302が陽極経路のみに設けられているため、デカップリングキャパシタを1つしか使用していないにもかかわらず、容量性デカップリング及びその利点が保たれる。これは、「n」個の異なるデカップリングキャパシタの使用を提案する当分野における従来の通念の著しい変化である。
回復スイッチ314及び316a−316nは、刺激パルスを与えた後の或る時点で作動し、デカップリングキャパシタ302及び患者の組織内に残留する任意の残りの電荷を回復するという目的を有する。従って、刺激パルスの後、回復スイッチ314及び316a−316nが閉じられる。(実際は、陰極回復スイッチ316a−316nのうちの1つのみを閉じる必要があり、これは好ましくは前に作動した陰極322a−322nに対応するスイッチである。しかしながら、回復中、スイッチ316a−316nの全てを閉じることに問題は無くかつ簡単である。)これらのスイッチを閉じることにより、デカップリングキャパシタ302のそれぞれのプレートに同じ基準電圧が加わり、この結果任意の蓄積した電荷が除去されることになる。1つの実施形態では、便宜上、使用する基準電圧はバッテリ電圧(Vbat)であるが、他の任意の基準電圧を使用することもできる。このようにして、Vbatが陽極回復スイッチ314を介してデカップリングキャパシタ302の第2のプレート302bに加えられ、同様に、陰極回復スイッチ316a−316nを介して患者の組織を経て第1のプレート302aに加えられる。
回復スイッチ314、316a−316nの使用について説明したが、特に特定の用途において電荷の回復が重大な懸念ではない場合、或いは他の手段を使用して電荷の回復を確実にする場合、本発明の全ての有用な実施形態にこのようなスイッチが必ずしも必要というわけではない。要するに、本発明の別の有用な実施形態では、回復スイッチ314、316a−316nを省略することができる。例えば、及び説明を簡単にするために図8Aには示していないが、回復スイッチ314及び316a−316nをまたいで高抵抗の「ブリーダ」抵抗器を並列に設け、キャパシタ302から極めてゆっくりと電荷を取り出せるようにすることが好都合となり得る。これにより、刺激が行われていない期間中などの全ての状態の間にキャパシタ302を最終的に放電できることが確実になる。言うまでもなく、このようなブリーダ抵抗器は、通常の動作中にスイッチ314及び316a−316nの動作を著しく短絡させないように十分に高抵抗であるべきである。図8Aの実施形態では、ブリーダトランジスタを使用する場合、陽極回復スイッチ314と、陰極回復スイッチ316a−316nのうちの少なくとも1つとをまたいで存在するようにすることができる。
刺激スイッチ310及び312a−312n、及び回復スイッチ314及び316a−316nは、トランジスタ、トランスミッションゲートなどの任意のスイッチング構造又はスイッチング回路を備えることができる。これらのスイッチに使用できる回路を示す1つの実施形態を図8Aの左側に示す。このように、刺激スイッチ310、312a−312nにトランジスタを使用するが、陽極経路のスイッチ310にはPチャンネルを使用する一方で陰極経路スイッチ312a−312nにはNチャンネルを使用しており、このことはこれらの場所に存在する相対電圧のことを考えると理にかなっている。回復スイッチ314及び316a−316nはトランスミッションゲートを備える。これらの様々なスイッチ(Rec/Rec*、Stim_Anode、Stim_Cathode_n)のための制御(ゲート)信号は、適当なマイクロコントローラ、又はマイクロスティミュレータ300内に存在する他の任意の形態のデジタルコントローラ(図示せず)により生成される。
図8Aに示すように、電流発生回路333は陰極経路内に、すなわちデカップリングキャパシタ302が設置される経路とは逆の経路内に設置される。しかしながら、図8Bに示すように、電流発生回路333を陽極経路内に、すなわちデカップリングキャパシタ302が設置された経路と同じ経路内に設置することもできる。実際に、電流発生回路333が陰極経路及び陽極経路の両方に出現するように、図8A及び図8Bを原則的に組み合わせることができる。さらに、図8Cに示すように、個々の陰極が独自の専用のプログラマブル電流発生回路333a−333nを有するように陰極経路内に示す電流発生回路333を割り振ることができる。
さらに、及び図9Aから図9Cに示すように、開示する技術を、単一陰極/多陽極のマイクロスティミュレータ300’の事例に使用することができる。これらの図は、大部分が図8Aから図8Cに一致し、当業者にとっては明らかであるため、これらについてはさらには説明しない。
上述したように、図8Aから図9Cの実施形態では、陽極又は陰極は多電極マイクロスティミュレータに対して特に専用のものである。しかしながら、別の実施形態では、多電極マイクロスティミュレータをより柔軟にすることが望ましい場合もある。例えば、多電極マイクロスティミュレータが8つの電極を有する場合、8つの電極のうちのいずれかを陽極に、及び電極のうちのいずれかを陰極に指定することが望ましい場合がある。このような設計は、多電極マイクロスティミュレータが標的神経を回復させるための最大限の柔軟性を提供して、最も患者の役に立つようになるであろう。
図10は、このような柔軟性を提供する多電極マイクロスティミュレータ350の実施形態を示す図である。図10の回路の多くは、図8Aに関連して開示した回路と同じであるため、この回路の説明はここでは繰り返さない。例えば、任意の回復スイッチ314及び316a−316n並びに単一のデカップリングキャパシタ302の使用は、装置350においても利用される。
しかしながら、いくつかの違いが明らかである。第1に、装置350の設定可能性を実現するために、電極340a−340nは、陽極又は陰極として定義又は予め指定されず、その代りに、電極340a−340nの任意の電極を陽極又は陰極のいずれかとして機能するようにプログラムすることができる。第2に、陰極刺激スイッチ312a−312nに加え、(Pチャネルトランジスタとして実現したような)陽極選択スイッチ330a−330nがデカップリングキャパシタ302の第1のプレート302aと電極との間に存在し、比較すると、図8Aの実施形態ではこの第1のプレートは配線によって接続されていたものである。ユーザは、陰極選択スイッチ312a−312n及び陽極選択スイッチ330a−330nを使用して、「n」個の電極のうちのどの電極が陽極及び陰極を構成することになるかを指定することができる。例えば、陽極選択スイッチ330bを接続することにより電極E2を陽極として選択することができ、一方、陰極選択スイッチ312aを接続することにより電極E1を陰極として選択することができる。同時に、スイッチ330a及び312bは開かれたままとなる。要するに、スイッチ312a−312n及び330a−330nは、複数の電極のうちの任意の電極を陽極又は陰極のいずれかとして機能できるようにする切換マトリクスを備える。
どの電極が、陽極又は陰極として選択されるかにかかわらず、デカップリングキャパシタ302は設定された電流路内に残存する。従って、前述した容量性デカップリングの利点は装置350の実施形態においても再度維持される。同時に、複数の電極を処理するのに1つのデカップリングキャパシタ302しか必要としないため、マイクロスティミュレータ350の本体305内部の空間が節約される。
電流回復中、デカップリングキャパシタの第1のプレート302a及び第2のプレート302bを短絡させるために、回復スイッチ314及び316a−316nだけでなく、陽極刺激スイッチ330a−330nの1つ又は全てを閉じることが必要である点に留意されたい。
言うまでもなく、図10の電極設定可能なマイクロスティミュレータ350も、図8A〜図9Cに示した様々な方法で修正することができる。例えば、図8C及び図9Cに示すように、複数の電流発生回路を利用することができる。
本明細書で開示する単一デカップリングキャパシタの技術の実施構成を示す回路図を図11に示す。図示のように、多電極マイクロスティミュレータ300は、装置の論理機能、電流発生回路及び監視回路などを含むことができる主集積回路(IC)500を含むことができる。IC500と結合して、RF通信の整流及び同調(左側)及び電極(右側)に関連する様々な例示的な別個の構成要素を示す。1つのこのような別個の構成要素には、本開示の中心である単一のデカップリングキャパシタC302が含まれる。しかしながら、他の別個の構成要素、具体的には他の別個のキャパシタも存在することができる。例えば、コンプライアンス電圧の安定化(502)及びテレメトリ(RFリンク)コイル147の同調のため(504)にキャパシタを設けることができる。
多電極マイクロスティミュレータとの関連において特に有用なものとして、埋込型刺激装置内で単一のデカップリングキャパシタ302を使用する本発明の実施形態について説明した。上述したように、このような装置は本体容積が比較的小さいため、1つのみのキャパシタの収容という要件から大きな利点がある。しかしながら、マイクロスティミュレータを備えていない埋込型刺激装置にも本開示の発明態様を使用することができる。例えば、上述した(図3A)SCS装置30では、このような装置の本体35は、個々の電極専用のデカップリングキャパシタのための空間を有することができた。しかしながら、開示した技術を使用して本体35をさらに小型化することができる。例えば、本発明の実施形態を使用して、デカップリングキャパシタC1〜Cnの個数をSCS装置30内に1つまで削減することができる。
或いは、開示した技術により、必ずしも所定の装置本体内部で単一のデカップリングキャパシタを使用する結果にならなくてもよく、代わりに、装置本体内部のデカップリングキャパシタの個数を削減するだけのためにこの技術を実行することもできることに留意されたい。ここで図8Aの8電極マイクロスティミュレータについて考察してみる。必要に応じて、開示したような回路を4つの電極に使用することができ、次にこの回路を複製して、8つの電極全てを処理するのに適した2組の回路を形成することができる。この場合、個々の組が1つのデカップリングキャパシタ302を含むことができるため、個々の組に1つずつの2つのキャパシタが存在し、本明細書に開示した技術に従って、1つのキャパシタがその組内の4つの電極を最適化するようにすることができる。この場合、装置本体は、2つのデカップリングキャパシタのみを収容することが必要とされる。この実施形態は、空間的な観点から見て、単一のデカップリングキャパシタを使用する前述の実施形態ほど最適なものではないが、8つのキャパシタの使用を採用するであろう従来の通念に比べると改善を示すものである。また、このように電極を組にグループ化した場合、2つの陰極(各組に1つ)と2つの陽極(この場合も各組に1つ)とを同時に指定する能力のようなさらなる柔軟性を提供することができる。
本発明の特定の実施形態及び用途によって本発明について本明細書で説明したが、当業者であれば、特許請求の範囲に記載する本発明の文言の及び均等の範囲から逸脱することなく、これらに多くの修正及び変形を行うことができるであろう。

Claims (22)

  1. 多電極刺激装置であって、
    前記装置のための本体と、
    前記装置の本体に結合され、1つの陽極と1つの陰極とを含み、少なくとも一部又は全てが前記1つの陽極又は前記1つの陰極として機能するように選択可能な3つ又はそれ以上の電極と、
    前記陽極と前記陰極との間の電流路内に位置する単一のデカップリングキャパシタと、
    を備えたことを特徴とする装置。
  2. 前記刺激装置はマイクロスティミュレータを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
  3. 前記電極は前記装置の本体に搭載されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
  4. 前記陽極又は前記陽極のいずれかは専用であり、選択可能ではないことを特徴とする請求項1に記載の装置。
  5. 前記デカップリングキャパシタは、前記専用の陽極又は陰極に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
  6. 刺激パルスを与えた後に前記デカップリングキャパシタのプレートを共通電位に短絡させるための回復回路をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
  7. 前記電流路を通過する電流を送り込むための電流発生回路をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
  8. 埋込型刺激装置であって、
    前記装置のための本体と、
    前記装置の本体に結合された3つ又はそれ以上の電極であって、前記電極のうちの第1の電極は陽極又は陰極であり、前記残りの電極は、前記陽極又は前記陰極の他方の電極の1つ又はそれ以上として機能するように選択可能である前記3つ又はそれ以上の電極と、
    前記第1の電極と前記残りの電極との間の電流路内に位置する単一のデカップリングキャパシタと、
    を備えたことを特徴とする装置。
  9. 前記デカップリングキャパシタの第1のプレートは、前記第1の電極に接続されていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
  10. 刺激パルスを与えた後に前記デカップリングキャパシタのプレートを共通電位に短絡させるための回復回路をさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載の装置。
  11. 前記電流路を通過する電流を送り込むための電流発生回路をさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載の装置。
  12. 前記残りの電極は、各選択可能な電極に関連するスイッチを介して選択可能であることを特徴とする請求項8に記載の装置。
  13. 前記第1の電極は、陽極又は陰極として専用のものであることを特徴とする請求項8に記載の装置。
  14. 前記第1の電極は、前記陽極又は前記陰極のいずれかとなるように選択可能であることを特徴とする請求項8に記載の装置。
  15. 前記第1の電極は陽極であり、前記残りの電極は陰極であることを特徴とする請求項8に記載の装置。
  16. 多電極刺激装置であって、
    前記装置のための本体と、
    前記本体に結合され、陽極又は陰極のいずれかである第1の電極,及び前記陽極又は前記陰極の他方の電極である少なくとも1つの第2の電極,を含む3つ又はそれ以上の電極と、
    前記第1の電極と前記少なくとも1つの第2の電極との間の電流路内に電流を送り込む、前記本体内の電流発生回路と、
    前記本体内に存在するとともに前記電流路内に位置する単一のデカップリングキャパシタと、
    前記電極の少なくとも一部又は全てを前記第1の電極又は前記少なくとも1つの第2の電極として選択できるようにするための複数のスイッチと、
    を備えたことを特徴とする装置。
  17. 前記埋込型刺激装置はマイクロスティミュレータを含むことを特徴とする請求項14に記載の装置。
  18. 前記電極は前記装置の前記本体に搭載されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
  19. 前記第1の電極は専用であり、選択可能ではないことを特徴とする請求項14に記載の装置。
  20. 前記デカップリングキャパシタは前記専用の陽極又は陰極に接続されていることを特徴とする請求項19に記載の装置。
  21. 前記スイッチは、前記複数の電極のうちの任意の電極を前記第1の電極又は前記少なくとも1つの第2の電極のいずれかとして機能できるようにする切換マトリクスを備えることを特徴とする請求項14に記載の装置。
  22. 前記複数のスイッチは前記電極と前記電流発生回路との間に存在することを特徴とする請求項14に記載の装置。
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