JP2010286774A - 液晶パネル、その製造方法、マイクロレンズ基板、液晶パネル用対向基板 - Google Patents

液晶パネル、その製造方法、マイクロレンズ基板、液晶パネル用対向基板 Download PDF

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Abstract

【課題】マイクロレンズ基板としての特性である、高透過率、高屈折率、高耐熱性、耐薬品性、耐光性、耐クラック性に優れるとともに、効率よく製造することができるマイクロレンズ基板、液晶パネル用対向基板、液晶パネル、および液晶パネル用対向基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】液晶滴下工法によって製造される液晶パネルであって、レンズ形状の複数の凹部が形成された凹部基板と前記凹部に樹脂組成物が充填されてなる凸レンズ基板とを有するマイクロレンズ基板を備え、前記樹脂組成物は、下記式(1)および(2)で示される化合物が縮重合されてなることを特徴とする液晶パネル。
ArSi(OH) …(1)
RSi(OR’) …(2)
【選択図】図4

Description

本発明は、液晶パネル、その製造方法、マイクロレンズ基板、液晶パネル用対向基板に関する。
液晶パネルは、各画素を制御する薄膜トランジスタ(TFT)および画素電極を有する液晶駆動基板(TFT基板)と、ブラックマトリクスや共通電極等が設けられた液晶パネル用対向基板とが、液晶層を介して接合された構成となっている。
このような構成の液晶パネルでは、ブラックマトリクスにより光の透過率が低下することを防止するために、各画素に対応する位置に多数の微小なマイクロレンズが設けられたマイクロレンズ基板に、ブラックマトリクスや共通電極等が設けられている。
このようなマイクロレンズ基板として、例えば、複数のマイクロレンズ形成用凹部を有する凹部付き基板に、未硬化の光硬化性樹脂を供給し、平滑な透明基板(カバーガラス)を接合し、押圧・密着させた後、光硬化性樹脂を硬化させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
液晶パネルは、サイズが小さくなると、これに比例して画素サイズが微細化するため、マイクロレンズの配列ピッチも小さくなる。これに伴い、カバーガラスを薄くする必要が生じる。従来、カバーガラスは研磨や研削により薄型に加工することができたが、薄くなるほど加工に限界があり、設計上必要な均一性および平坦性を確保することが困難になる。なお、カバーガラスの平面精度や平坦性が悪化すると、液晶表示素子に組み込む際に機械的なストレスが生じるおそれがある。また、液晶パネルの高精細化に伴い、例えば、カバーガラスを30μm以下に薄くしようとすると、マイクロレンズを構成する光学樹脂の硬化収縮もしくは熱膨張率の差によるストレスでカバーガラスのうねりや反りが起こるおそれがある。
したがって、カバーガラスを使用しないマイクロレンズ基板が提案されている(例えば、特許文献2および3参照)。
特許文献2では、屈折率の異なる2種類の樹脂を用い、1種類の材料でマイクロレンズ面を形成し、もう1種類の材料でマイクロレンズを埋めて平坦面を得ている。また、特許文献3では、レンズ形状の凹状曲面を埋め込む状態で無機材料膜を形成し、この無機材料膜の表面を平坦化した構成が提案されている。
特開2001−92365号公報 特開2004−12941号公報 特開2004−258052号公報
一般的に、樹脂の界面では後工程における熱プロセスでの界面剥離や光劣化による表示不良が発生するという問題があり、特許文献2でも同様の問題が発生する。
また、特許文献3では、無機材料膜をスパッタ法やCVD法で形成するが、レンズ深さが5〜30μmである場合、このレンズを埋める成膜時間のみで30〜100分以上かかってしまうため、特にレンズが深い場合は量産に不向きである。
そこで、マイクロレンズ基板としての特性である、高透過率、高屈折率、高耐熱性、耐薬品性、耐光性、耐クラック性、および密着性を有するとともに、成膜時の平坦精度が高いマイクロレンズ基板が求められている。
本発明の目的は、マイクロレンズ基板としての特性である、高透過率、高屈折率、高耐熱性、耐薬品性、耐光性、耐クラック性および密着性に優れるとともに、効率よく製造することができる液晶パネル、その製造方法、マイクロレンズ基板、液晶パネル用対向基板を提供することである。
本発明の液晶パネルは、液晶滴下工法によって製造される液晶パネルであって、レンズ形状の複数の凹部が形成された凹部基板と前記凹部に樹脂組成物が充填されてなる凸レンズ基板とを有するマイクロレンズ基板を備え、前記樹脂組成物は、下記式(1)および(2)で示される化合物が縮重合されてなることを特徴とする。
ArSi(OH) …(1)
式(1)中、Arは、炭素数6〜20で、少なくとも1つの芳香族基を有する基である。
RSi(OR’) …(2)
式(2)中、Rは、炭素数2〜15で、少なくとも1つのエポキシ基および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合のうち少なくともいずれか一方を有する有機基である。R’は、メチル基またはエチル基である。
液晶滴下工法は、ODF(One Drop Filling)工法とも呼ばれ、2枚の基板を貼り合わせる前に基板上に液晶を滴下するため、大幅な設備と時間の短縮を実現することができる。
この発明は、マイクロレンズ基板を備えた液晶パネルであり、凹部基板に形成されたレンズ形状の複数の凹部に樹脂組成物が充填されて凸レンズ基板を形成している。これにより複数のマイクロレンズが形成される。本発明では、凸レンズ基板を形成する樹脂組成物として、上記式(1)および(2)に示す化合物が縮重合されたものが使用されている。
上記式(1)において、特に、Arが置換または無置換の芳香族基、例えば、フェニル基、トリル基、スチリル基、ナフチル基であることが好ましい。
このような樹脂組成物を用いることにより、マイクロレンズ基板としての特性である、高透過率、高屈折率、高耐熱性、耐薬品性、耐光性、耐クラック性、および密着性を十分に発揮することができる。
また、このような樹脂組成物は光反応により硬化させることができるため、取り扱いが容易で、製造に要する時間を短縮することができる。また、1液での安定性が良く、2液混合タイプの多いシリコーン系や従来の有機-無機ハイブリッド系と比較して、扱いやすく、寿命が長い。
さらに、このような樹脂組成物で形成された凸レンズ基板は平坦精度に優れているため、液晶パネルに組み込む際に機械的なストレス等も発生せず、高品質な製品を提供することができる。このように、カバーガラスを用いずとも、樹脂組成物1層で凸レンズ基板を形成するだけでマイクロレンズ基板として十分な特性を発揮できる。また、樹脂組成物1層を形成するだけの単純構造であるため製造が容易であり、製造工程における手間や製造コストを削減することができる。
そして、このような樹脂組成物は溶剤に可溶であるため成形精度を確保しやすいため、ODF工法で液晶パネルを製造した場合の歩留まりが高く、製造コストを大幅に低減することができる。
また、このような樹脂組成物は、ディスペンサー等で凹部基板の表面に塗布した後、押圧部材等で押圧するだけで樹脂層を簡単に形成することができる。
本発明の液晶パネルにおいて、上記式(1)中、Arはフェニル基であることが好ましい。
また、本発明の液晶パネルにおいて、上記式(2)中、Rはスチリル基を有する有機基であることが好ましい。
このような樹脂組成物を用いることにより、マイクロレンズ基板としての特性である、高透過率、高屈折率、高耐熱性、耐薬品性、耐光性、耐クラック性、および密着性をより発揮することができる。
本発明の液晶パネルにおいて、前記樹脂組成物は、下記式(3)で示される化合物がさらに縮重合されることが好ましい。
Si(OR’) …(3)
式(3)中、R’基はメチル基またはエチル基である。R基は、CF−(CF)n−C−、RHN−(CH−、C−NHR、C−NFR、HN−C−NH−CH−C−C−、置換または無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換または無置換のフェニル基、トリル基、ナフチル基である。nは0から7の整数、RはH、CHまたはCである。
この発明では、上記式(1)および(2)に示す化合物のほかに、上記式(3)に示す化合物を縮重合させても、前述と同様の作用効果を奏することができる。
また、このような樹脂組成物を用いた液晶パネルでは、より優れた画質で画像を表示させることができる。
本発明の液晶パネルの製造方法は、第1の基板と第2の基板のうち少なくともいずれか一方に液晶を滴下する液晶滴下工程と、真空雰囲気内において前記第1基板と前記第2基板とをシール材を介して互いに貼り合わせる貼合工程と、大気解放後に所定の大きさの液晶パネルに切断する切断工程と、を備え、前記第1の基板および前記第2の基板のうちいずれか一方は、レンズ形状の複数の凹部が形成された凹部基板と下記式(1)および(2)で示される化合物を縮重合してなる樹脂組成物からなる凸レンズ基板とを有するマイクロレンズ基板を有することを特徴とする。
ArSi(OH) …(1)
式(1)中、Arは、炭素数6〜20で、少なくとも1つの芳香族基を有する基である。
RSi(OR’) …(2)
式(2)中、Rは、炭素数2〜15で、少なくとも1つのエポキシ基および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合のうち少なくともいずれか一方を有する有機基である。R’は、メチル基またはエチル基である。
本発明は、上記式(1)および(2)に示す化合物を縮重合させた樹脂組成物をマイクロレンズ基板に用い、このマイクロレンズ基板を有する液晶パネルを液晶滴下(ODF)工法により製造する。
このような樹脂組成物を凸レンズ基板に用いると、マイクロレンズとしての機能を十分に発揮することができる。また、このような樹脂組成物を用いたODF工法では、歩留まりが高く、製造コストを大幅に削減することができる。
したがって、十分なレンズ機能を備えた製品を提供できるとともに、設備コストおよび時間コストにおいて有利なODF工法で、さらなる製造コストの削減を図ることができる。
本発明のマイクロレンズ基板は、レンズ形状の複数の凹部が形成された凹部基板と、前記凹部に下記式(1)および(2)で示される化合物が縮重合されてなる樹脂組成物が充填されてなる凸レンズ基板と、を備えることを特徴とする。
ArSi(OH) …(1)
式(1)中、Arは、炭素数6〜20で、少なくとも1つの芳香族基を有する基である。
RSi(OR’) …(2)
式(2)中、Rは、炭素数2〜15で、少なくとも1つのエポキシ基および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合のうち少なくともいずれか一方を有する有機基である。R’は、メチル基またはエチル基である。
本発明の液晶パネル用対向基板は、前述のマイクロレンズ基板を備えたことを特徴とする。
これらの発明によれば、マイクロレンズ基板の凸レンズ基板に上記式(1)および(2)に示す化合物を縮重合して得られる樹脂組成物を用いるので、マイクロレンズとしての特性(高透過率、高屈折率、高耐熱性、耐薬品性、耐光性、耐クラック性および密着性)を十分に発揮させることができる。また、これらの発明を用いてODF工法により液晶パネルを製造すれば、歩留まりに優れ、製造コストを大幅に削減することができる。
本発明の実施形態にかかるマイクロレンズ基板を備えた液晶パネル用対向基板を示す模式的な断面図。 前記実施形態におけるマイクロレンズ基板の製造方法を示す説明図。 前記実施形態におけるマイクロレンズ基板および液晶パネル用対向基板の製造方法を示す説明図。 前記実施形態におけるマイクロレンズ基板を備えた液晶パネルを示す断面図。 前記実施形態における液晶パネルの製造工程を示すフローチャート。 前記実施形態の液晶パネルの製造工程におけるシールが形成された片側基板の平面図。 前記実施形態の液晶パネルの製造工程におけるセル・ギャップ均一化の後の基板に垂直な断面におけるパネル断面図。 前記実施形態の液晶パネルの製造工程における切断後の基板に垂直な断面におけるパネル断面図。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明はこの実施形態によって何等限定されるものではない。
(1.マイクロレンズ基板および液晶パネル用対向基板の構成)
図1には、液晶パネル用対向基板100が示されている。この液晶パネル用対向基板100は、マイクロレンズ基板10と、ブラックマトリクス20と、透明導電膜30と、を備えている。
マイクロレンズ基板10は、凹部基板11と、凸レンズ基板12と、無機層13と、が積層されてなる。
凹部基板11は、その表面に湾曲凹状の複数の凹部111が形成されている。
凹部111は、平面視したときの直径が1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。凹部111の直径が上記範囲内であれば、マイクロレンズ基板10を備えた液晶パネルにより投影される画像の解像度を十分に優れたものとすることができる。また、後述のように、凸レンズ基板12のマイクロレンズ121を、凹部基板11の凹部111において隙間なく形成することができ、凹部基板11と凸レンズ基板12との密着性を優れたものとすることができる。
また、凹部111の平均曲率半径は、2.5μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上25μm以下であることがより好ましい。平均曲率半径を上記範囲内とすることにより、優れた光学特性を発揮することができる。
また、凹部111の深さは、1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。凹部111の深さが上記範囲内であることにより、マイクロレンズ基板10の光学特性を特に優れたものとすることができる。また、凹部基板11と凸レンズ基板12との密着性を優れたものとすることができる。
凹部基板11は石英ガラスで構成され、この石英ガラスにおける波長550nmの光の屈折率は1.46である。なお、凹部基板11の屈折率は1.40以上1.55以下であることが好ましく、より好ましくは1.46以上1.50以下である。屈折率が1.40以上1.55以下であることにより、優れた光学特性を発揮することができる。
なお、凹部基板11として使用される材料は石英ガラスに限られず、上記屈折率を満たすガラス材料で構成されればよい。このようなガラス材料として、例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。石英ガラスは、機械的強度および耐熱性が高く、また、線膨張係数が非常に低いため、熱による形状の変化が少ない。また、短波長領域の透過率も高く光エネルギーによる劣化もほとんどないため、凹部基板11として好適である。
凸レンズ基板12は、凹部基板11の凹部111が形成された側の面に積層され、凹部111内に充填され、凹部111に対応する形状の凸レンズとしての複数のマイクロレンズ121を有している。なお、凹部基板11と凸レンズ基板12とは密着している。
マイクロレンズ121は、凹部基板11の凹部111と凸部と凹部との関係である以外は、同様の形状となっている。すなわち、マイクロレンズ121は、平面視したときの直径が5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、マイクロレンズ121の平均曲率半径は、2.5μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上25μm以下であることがより好ましい。さらに、マイクロレンズ121の高さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。マイクロレンズ121をこのような範囲で形成することにより、前述の凹部111の形成により得られる効果と同様の効果を奏することができる。
また、凸レンズ基板12は、凹部基板11との屈折率差があるほど、マイクロレンズの界面での光の動きが大きくなり、レンズの設計の自由度が上がる。したがって、凹部基板11を構成する石英ガラスについて波長550nmの光の屈折率と、凸レンズ基板12の構成材料について波長550nmの光の屈折率との差の絶対値は、0.01以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましい。これにより、マイクロレンズ121の光学特性を優れたものにすることができる。
このような凸レンズ基板12を構成する材料としては、例えば、特許文献US6,984,483号、US6,984,747号、US7,348,393号に記載されている化合物等を用いることができる。具体的には、下記式(1)に示す化合物と下記式(2)に示す化合物との縮合により得られる縮合物が用いられる。
ArSi(OH) …(1)
式(1)中、Arは、炭素数6〜20で、少なくとも1つの芳香族基を有する基である。特に、Arが置換または無置換の芳香族基、例えば、フェニル基、トリル基、スチリル基、ナフチル基であることが好ましい。
式(1)で表される化合物として、例えば、以下に示すものが挙げられる。
Figure 2010286774
RSi(OR’) …(2)
式(2)中、Rは、炭素数2〜15で、少なくとも1つのエポキシ基および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合のうち少なくともいずれか一方を有する有機基である。R’は、メチル基またはエチル基である。
式(2)で表される化合物として、例えば、以下に示すものが挙げられる。
Figure 2010286774
Figure 2010286774
式(1)および式(2)に示す化合物は、市販のものを使用してもよいし、例えば、「"Chemie und Technologie der Silicone" (Walter Noll, Verlag Chemie, Weinheim/Bergstra[beta]e, 1986)」に記載されている方法で製造してもよい。
上記式(1)および(2)で示される化合物をモル比率1:1で混合してゾルゲル法により重縮合物を得る。ゾルゲル法は、20℃以上100℃以下、好ましくは50℃以上100℃以下の温度範囲で実施される。また、混合させる成分のうち、最も低い沸点を有する成分の沸点で実施してもよい。縮重合後は、加熱や減圧などの一般的な方法により液化される。
なお、ゾルゲル法における縮重合を促進するために、ルイス塩基やブレンステッド塩基が用いられてもよい。例えば、N−メチルイミダゾールやベンジルジメチルアミンなどのアミン化合物、トリエチルアミン、アンモニウムフルオライド、アルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。
また、上記式(2)に示す化合物を、90モル%以下の範囲で下記式(3)に示す化合物で代用してもよい。この場合の配合比は、モル比率で(1):(2):(3)=1:(1−X):Xとなる。ここで、0<X≦0.9以下である。
Si(OR’) …(3)
式(3)中、R’基はメチル基またはエチル基である。R基は、CF−(CF)n−C−、RHN−(CH−、C−NHR、C−NFR、HN−C−NH−CH−C−C−、置換または無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換または無置換のフェニル基、トリル基、ナフチル基である。nは0から7の整数、RはH、CHまたはCである。
式(3)で表される化合物として、例えば、以下に示すものが挙げられる。
Figure 2010286774
無機層13は、凸レンズ基板12の表面に積層され、凸レンズ基板12を構成する材料からの脱ガスや、イオン成分の溶出を防止する。無機層13の屈折率は、1.45以上2.0以下であることが好ましい。これにより、優れた光学特性を発揮することができる。
このような無機層13を構成する材料としては、例えば、透明な二酸化ケイ素(SiO)が挙げられる。これ以外にも、TEOS(テトラエトキシシラン)、SiH(モノシラン)、SiN、AlN、TiN、BN等の窒化物系無機化合物は、バリア性に優れ、樹脂との密着性が高く、ブラックマトリクス20を構成する金属膜との密着性も高いため、無機層13として好適である。
また、無機層13の厚みは、0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。無機層13の厚みが0.1μm未満であると、凸レンズ基板12を形成する樹脂組成物と無機層13を構成する材料とに線膨張差が生じ、クラックが発生するおそれがある。一方、無機層13の厚みが5μmを超えると、マイクロレンズ基板としての光学特性に影響を及ぼす可能性がある。
なお、このマイクロレンズ基板10を液晶パネルに用いた場合には、液晶パネルの液晶層中の成分が凸レンズ基板12中に移行することを防止する。
ブラックマトリクス20は、遮光機能を有する層であり、上述のマイクロレンズ121の位置に対応するように設けられる。具体的には、マイクロレンズ121の光軸Qが開口部21を通るようにブラックマトリクス20が配置される。すなわち、図4に示すように、液晶パネル用対向基板100では、ブラックマトリクス20に対向する面から入射した入射光Lは、マイクロレンズ121で集光され、開口部21を通過する。
このようなブラックマトリクス20は、例えば、Cr、Al、Al合金、Ni、Zn、Ti、TiN等の金属膜、カーボンやチタン等を分散した樹脂層などで構成される。これらの材料で構成されたブラックマトリクス20は、マイクロレンズ基板10との密着性に優れる。なお、ブラックマトリクス20は、これらの材料の中でも特に、Cr膜またはAl合金膜で構成されていることが好ましい。ブラックマトリクス20としてCr膜を使用すると、遮光性を向上させることができる。
また、ブラックマトリクス20の厚みは、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。ブラックマトリクス20の厚みが上記範囲内であることにより、液晶パネル用対向基板100の平坦性を十分に高いものとすることができるとともに、遮光性に優れる。
透明導電膜30は、透明性を有する電極であり、ブラックマトリクス20を覆うように積層される。透明導電膜30としては、酸化インジウムスズ(ITO)が用いられ、その屈折率は2.0である。なお、透明導電膜30に用いられる材料はITOに限られず、例えば、酸化インジウム(IO)、酸化スズ(SnO)等を用いてもよい。
また、透明導電膜30の厚みは、特に限定されないが、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.5μm以下であることがより好ましい。透明導電膜30の厚みを上記範囲内とすることにより、電極として好適に機能する。
(2.マイクロレンズ基板および液晶パネル用対向基板の製造方法)
[2−1.凹部基板11の製造]
まず、マイクロレンズ基板10を構成する凹部基板11の製造方法の一例を説明する。なお、凹部基板11の製造方法はこれに限定されるものではない。
厚さが均一である平板状の石英ガラスからなるガラス基板を用意し、このガラス基板の表面にマスク形成用膜を形成する。マスク形成用膜は、後述の初期孔を形成することができるとともに、エッチングに対する耐性を有するものが好ましく、例えば、Cr、Au、Ni、Ti、Pt等の金属やこれらから選択される2種以上を含む合金、前記金属の酸化物(金属酸化物)、シリコン、樹脂等が挙げられる。また、マスク形成用膜を、Cr/Auや酸化Cr/Crのように異なる材料からなる複数の層の積層構造としてもよい。
マスク形成用膜の形成方法は特に限定されないが、例えば、蒸着法やスパッタリング法、CVD法等により、好適に形成することができる。
次に、レーザー光の照射により、マスク形成用膜にエッチングするための初期孔を形成する。これにより、所定の開口パターンを有するマスクが得られる。レーザー光の照射により初期孔を形成すると、形成される初期孔の大きさや、隣接する初期孔同士の間隔等を容易かつ精確に制御することができる。これにより、マスクの全面に亘って偏りなく初期孔が形成される。
次に、このマスクを用いてガラス基板にエッチングを施し、ガラス基板上に多数の凹部111を形成する。エッチングの方法は、特に限定されず、ウェットエッチング、ドライエッチング等が用いられる。
そして、マスクを除去するために、例えば、エッチングを行う。
以上により、複数の凹部111を有する凹部基板11が得られる
[2−2.マイクロレンズ基板10の製造]
得られた凹部基板11に凸レンズ基板12を積層する前に、凹部基板11に対して前処理を施す。この前処理により、凹部基板11と凸レンズ基板12を構成する樹脂材料との密着性を向上させることができる。
例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシランおよび3−メタクリロキシプロピルメチルトリエトキシシランのうち少なくともいずれか一方を、エタノールと水と酢酸との混合液に対して0.5%に希釈した溶液を、スピンコート法により凹部基板11に塗布する。塗布後、エタノールで洗浄し、スピン乾燥させる。
なお、溶液に使用する材料としては、上記のものに限られず、凹部基板11を構成する分子中の反応基に応じたシランカップリング剤を選定すればよい。また、塗布方法はスピンコート法に限られず、ディッピング法、気相成膜法等を用いてもよい。
前処理終了後、凹部基板11に凸レンズ基板12を積層する。
まず、図2(A)に示すように、凹部基板11の凹部111が形成された側の面に、凸レンズ基板12形成用の樹脂組成物122を、ディスペンサーを用いて滴下する。樹脂組成物122は流動性を有し、室温(20℃)での粘度は、特に限定されないが、10mPa・s以上10000mPa・s以下であることが好ましい。樹脂組成物122の粘度が上記範囲内の値であると、厚みの比較的大きい凸レンズ基板12であっても容易かつ確実に形成することができ、光学特性、信頼性に優れたマイクロレンズ基板10を容易かつ確実に製造することができる。また、凹部基板11と凸レンズ基板12との間に、気泡等が侵入することを効果的に防止することができ、凹部基板11と凸レンズ基板12との密着性を特に優れたものとすることができる。
また、樹脂組成物122の滴下量は、凹部基板11のサイズおよび凸レンズ基板12の厚みに応じて適宜調整すればよい。
樹脂組成物122を凹部基板11に塗布した後、バーコーターやスクリーン印刷を用いて、凹部基板11上の樹脂組成物122を伸ばしてもよい。また、このとき、樹脂組成物122の外周部にはギャップ剤を塗布する。ギャップ剤は、樹脂やシリカ製の球状のものであり、樹脂組成物122を押圧部材80で成形する際に、樹脂組成物122と押圧部材80との間隙(ギャップ)を保つために塗布されるものである。
次に、凹部基板11上の樹脂組成物122に対して脱気処理を施す(脱気工程)。脱気処理の方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物122が滴下(塗布)された凹部基板11を減圧雰囲気下に置く方法等が挙げられる。この場合、樹脂組成物122が滴下(塗布)された凹部基板11の置かれる雰囲気の圧力は、1000Pa以下であることが好ましく、50Pa以下であることがより好ましい。これによれば、凹部基板11の表面と樹脂組成物122との間に、雰囲気(空気)が残存するのを効果的に防止することができる。また、凸レンズ基板12中に気泡等が残存するのをより確実に防止することができる。
次に、図2(B)に示すように、凹部基板11上の樹脂組成物122を、石英からなる平板状の押圧部材80で押圧しながら、紫外線照射を行う。
押圧部材80は、樹脂組成物122を押圧する側の面が平坦な部材である。また、押圧部材80は、樹脂組成物122を押圧する側の面に、離型処理が施されたものであってもよい。離型処理としては、例えば、メタキシレンヘキサフォロライドを主成分としたフッ素系化合物溶液を用いた被膜の形成、ヘキサメチルジシラザン([(CHSi]NH)等のシリル化剤による表面処理、フッ素系ガスによる表面処理等が挙げられる。これによれば、後述する工程において、押圧部材80を効率よく凸レンズ基板12の表面から取り除くことができる。
紫外線照射は、高圧水銀ランプを用いて行われ、波長365nm、紫外線照射量1000mJ/cmとすることにより樹脂組成物122を硬化させることができる。照射量1000mJ/cmとするには、100mWの高圧水銀ランプで10秒間照射すればよい。
なお、紫外線照射を行う際、凹部基板11と同じ形状のマスクを用いることにより、マスクされている部分の硬化を抑制してもよい。紫外線照射後、硬化が不十分な部分を溶剤(エタノール、アセトン、MIBK、PGMEA、MEK等)で洗浄することにより、所望の形状に成形することができる。
そして、押圧部材80を剥離し、200℃の乾燥炉でアニール処理を1時間行う。このようにして、図2(C)に示すように、凹部基板11上に凸レンズ基板12が形成される。
次に、図3(A)に示すように、凸レンズ基板12上にSiOからなる無機層13を形成する。
具体的には、スパッタリング法、CVD法、蒸着法等の気相成膜法等により形成することができる。気相成膜法によれば、緻密かつ密着性の高い無機層13を形成することができる。スパッタリング法によれば、無機層13の厚みムラ、ばらつきを非常に小さくでき、また、密着力を非常に高くすることができる。さらに、組成調整、応力調整を容易に行うことができる。
以上より、凹部基板11と凸レンズ基板12と無機層13とで構成されるマイクロレンズ基板10が得られる。
[2−3.液晶パネル用対向基板100の製造]
次に、マイクロレンズ基板10を用いた液晶パネル用対向基板100の製造方法について説明する。
図3(B)に示すように、マイクロレンズ基板10の無機層13上に、開口部21を有するブラックマトリクス20を形成する。このとき、ブラックマトリクス20は、凹部111の位置に対応するように配置される。具体的には、凹部111の中心を通る光軸が開口部21を通るような開口パターンを形成する。
まず、無機層13上にスパッタリング等の気相成膜法によりブラックマトリクス20となる薄膜を成膜する。次に、かかるブラックマトリクス20となる薄膜上にレジスト膜を形成する。次に、ブラックマトリクス20の開口部21がマイクロレンズ121に対応する位置に来るように、レジスト膜を露光して、かかるレジスト膜に開口部21のパターンを形成する。次に、ウェットエッチングを行い、薄膜のうちの開口部21となる部分のみを除去する。次に、レジスト膜を除去する。なお、ウェットエッチングを行う際の剥離液としては、例えば、ブラックマトリクス20となる薄膜がAl合金等で構成されているときは、リン酸系エッチング液を用いることができる。
なお、開口部21が形成されたブラックマトリクス20は、塩素系ガス等を用いたドライエッチングによっても好適に形成することができる。
次に、無機層13上に、ブラックマトリクス20を覆うように共通電極である透明導電膜30を形成する(図3(C)参照)。この透明導電膜30は、例えば、スパッタリング等の気相成膜法により形成することができる。
以上より、図1に示す液晶パネル用対向基板100を得ることができる。
(3.液晶パネル)
[3−1.液晶パネルの構成]
次に、マイクロレンズ基板10を含む液晶パネル用対向基板100を用いた液晶パネルを、図4に基づいて説明する。
図4に示すように、液晶パネル(TFT液晶パネル)200は、TFT基板(液晶駆動基板)40と、TFT基板40に接合された液晶パネル用対向基板100と、TFT基板40と液晶パネル用対向基板100との空隙に封入された液晶よりなる液晶層50とを有している。
TFT基板40は、液晶層50の液晶を駆動するための基板であり、ガラス基板41と、ガラス基板41上に設けられた多数の画素電極42と、画素電極42の近傍に設けられ、各画素電極42に対応する多数の薄膜トランジスタ(TFT)43とを有している。
この液晶パネル200では、液晶パネル用対向基板100の透明導電膜(共通電極)30と、TFT基板40の画素電極42とが対向するように、TFT基板40と液晶パネル用対向基板100とが、一定距離離間して接合されている。
ガラス基板41は、石英ガラスで構成されていることが好ましい。これにより、反り、たわみ等の生じにくい、安定性に優れたものとすることができる。
画素電極42は、透明導電膜(共通電極)30との間で充放電を行うことにより、液晶層50の液晶を駆動する。この画素電極42は、例えば、前述した透明導電膜30と同様の材料で構成されている。
薄膜トランジスタ43は、近傍の対応する画素電極42に接続されている。また、薄膜トランジスタ43は、図示しない制御回路に接続され、画素電極42へ供給する電流を制御する。これにより、画素電極42の充放電が制御される。なお、TFT基板40には、例えば、その内表面側(液晶層50の対向する面側)に、配向膜が設けられている。
液晶層50は液晶分子を含有しており、画素電極42の充放電に対応して、かかる液晶分子、すなわち液晶の配向が変化する。
この液晶パネル200では、通常、1個の凹部111と、凹部111の光軸Qに対応したブラックマトリクス20の1個の開口部21と、1個の画素電極42と、かかる画素電極42に接続された1個の薄膜トランジスタ43とが、1画素に対応している。
凹部基板11側から入射した入射光Lは、凹部基板11の凹部111を通過する際に集光されつつ、凸レンズ基板12、無機層13、ブラックマトリクス20の開口部21、透明導電膜30、液晶層50、画素電極42、ガラス基板41を透過する。このとき、凹部基板11の入射側には通常偏光板が配置されており、入射光Lが液晶層50を透過する際に、入射光Lは直線偏光となっている。その際、この入射光Lの偏光方向は、液晶層50の液晶分子の配向状態に対応して制御される。したがって、液晶パネル200を透過した入射光Lを、偏光板(図示せず)に透過させることにより、出射光の輝度を制御することができる。
なお、偏光板は、例えば、ベース基板と、かかるベース基板に積層された偏光基材とで構成され、かかる偏光基材は、例えば、偏光素子(ヨウ素錯体、二色性染料等)を添加した樹脂よりなる。
[3−2.液晶パネルの製造]
液晶パネル200を、液晶滴下(ODF、One Drop Filling)工法により製造する方法を図5〜図8に基づいて説明する。本実施形態では、TFT基板40および液晶パネル用対向基板100で、液晶パネル200が形成される領域を液晶パネル形成領域と称する。
ODF工法による製造工程は、図5に示すように、ラビング工程(S1)、シール形成工程(S2)、液晶滴下・貼り合わせ工程(S3)、第2シール材硬化工程(仮接着工程:S4)、セル・ギャップ均一化工程(S5)、第1シール材硬化工程(本接着工程:S6)、液晶パネル切断工程(S7)を備えている。
[ラビング工程(S1)]
まず、TFT基板40と液晶パネル用対向基板100とに配向処理(例えば、ポリイミドからなる配向膜の被覆処理)を施し、配向するための溝をつくるラビング工程(S1)が実施される。TFT基板40および液晶パネル用対向基板100は大判のガラス基板で構成されている。
〔シール形成工程(S2)〕
ラビング工程(S1)の後、シール形成工程(S2)を実施し、図6に示すように、液晶パネルを構成するTFT基板40上に第1シール材61及び第2シール材62を描画または印刷する。なお、液晶パネル用対向基板100上に第1シール材61および第2シール材62を描画または印刷することにしてもよい。また、第1シール材61をTFT基板40に描画または印刷し、第2シール材62を液晶パネル用対向基板100上に描画または印刷しても良い。シール材を描画して形成する場合は、ディスペンサーやインクジェット装置を使用することができる。また、シール材を印刷して形成する場合は、スクリーン印刷で印刷することができる。
図6に示すように、TFT基板40には、第1シール材61及び第2シール材62が枠状に印刷される。第1シール材61は、液晶パネル形成領域の周縁部に沿って枠状に描画または印刷される。第2シール材62は、第1シール材61の周縁部に沿って枠状に描画または印刷される。第1シール材61には、例えば、エポキシ系の熱硬化性樹脂を用いることができ、第2シール材62には、例えば、アクリル系の紫外線硬化性樹脂を用いることができる。
〔液晶滴下・貼り合わせ工程(S3)〕
シール形成工程(S2)の後、液晶滴下・貼り合わせ工程(S3)が施される。ODF工法では、両基板を貼り合わせる前に下基板に液晶を滴下する液晶滴下・貼り合わせ工程を採用する。以下にその一例につき説明する。
液晶滴下・貼り合わせ工程で使用される組立装置(不図示)は、上下動可能な上定盤と水平移動可能な下定盤とを備える加圧機構と、上定盤と下定盤との間に挟まれる液晶パネルを取り囲む雰囲気を真空に排気することができる真空排気機構とを組み合わせて構成される。下定盤は上定盤より面積が大きく、上定盤と重ねた場合に下定盤の周縁部が上定盤からはみ出す態様となっている。真空排気機構には、上面と周壁とを有する上蓋部が設けられている。かかる上蓋部はその内部に上定盤を内装し、上下動可能であって、降下することによりその周壁の端面を下定盤の周縁部に押圧、密着させ、大判パネル母材1を密閉することができる。また、上蓋部の周壁には真空排気するための管路が設けられている。上定盤は上蓋部とともに上下動することも可能であるが、独立に上下動可能であって、大判パネル母材1への加圧量を微調整することができる。
液晶滴下・貼り合わせ工程では、まず、上基板となる液晶パネル用対向基板100をこの組立装置の上定盤に吸着する。次に、図6に示す下基板となるTFT基板40を組立装置の下定盤に吸着する。次に、下定盤に固定されたTFT基板40上の第1シール材61に囲まれる領域に液晶63を滴下する。液晶滴下終了後、下定盤を上定盤の下までスライドさせ位置合わせし、上定盤を降下させてTFT基板40と液晶パネル用対向基板100を重合させるとともに、上蓋部を降下させ、上蓋部の周壁の端面を下定盤の周縁部に押圧、密着させて大判パネル母材1を形成する。次に、上定盤と下定盤との間に挟まれる大判パネル母材1を取り囲む雰囲気を真空に排気する。その後、上定盤の押圧力を高め、大判パネル母材1を圧縮し、TFT基板40と液晶パネル用対向基板100との間の間隙を所望の値に微調整する。以上により、TFT基板40と液晶パネル用対向基板100とが貼り合わされる。その後、加圧機構による加圧を解除し、下定盤をスライドさせ、除電後、大判パネル母材1を取り出し、シール硬化工程へ送り出す。なお、液晶滴下は、真空雰囲気中で行うことにしてもよい。
〔第2シール材硬化工程(仮接着工程:S4)〕
液晶滴下・貼り合わせ工程(S3)の後、第2シール材硬化工程(S4)を実施する。第2シール材62に紫外線を照射することによりこれを硬化させる。第2シール材62の硬化は、上述の液晶滴下・貼り合わせ工程(S3)において大判パネル母材1を取り囲む雰囲気を大気圧に解放した直後に行う。第2シール材62の硬化までは、液晶滴下・貼り合わせ工程で使用される組立装置から大判パネル母材1を取り出し、これを紫外線照射装置へ搬送し、さらに紫外線を照射するという手順により実行する。なお、液晶滴下貼り合わせ工程で使用される組立装置に紫外線照射装置を組み込み、液晶表示パネルを貼り合わせた後、大気圧解放前に、真空雰囲気内で第2シール材62に紫外線を照射することにしてもよい。これにより、第2シール材62内側(真空領域64)の真空度をさらに高レベルに確保することができる。
〔セル・ギャップ均一化工程(S5)〕
貼り合わされた両基板間の間隙(セル・ギャップ)の均一化は、大判パネル母材1内部の圧力と大気圧との差圧に起因して、基板表面が大気に押圧されることにより進行する。すなわち、TFT基板40および液晶パネル用対向基板100が大気に押圧されて変形・変動するとともに、液晶パネル内の液晶63や、スペーサが用いられている場合はスペーサが両基板に狭圧されて変形することによって、次第に、セル・ギャップが均一化されていく(図7参照)。ここで、本実施形態では、各液晶パネル200の周囲の真空領域64の面積を略均一にしているので、大気開放した後に各液晶パネル200毎に加わる大気圧を略均一とすることが可能となり、また、大判パネル母材1全体に大気圧が平均的に加圧されることになり、中央部と外周部とで大気圧の加圧状態を同一とすることができる。これにより、大判パネル母材1の中央部と外周部の液晶パネル200のセル・ギャップを均一化でき、各液晶パネル200のセル・ギャップを均一化することが可能となり、各液晶パネル間でのセル・ギャップのバラツキを防止することができる。
また、このセル・ギャップ均一化工程においては、第1シール材61が未硬化であるので、第1シール材61も両基板に狭圧されて両基板の変形・変動にしたがって、十分に変形し、第1シール材近傍の領域においても、表示部中央とほぼ同程度に、セル・ギャップが均一化されていき、個々の液晶パネル200内のセル・ギャップを均一化することができる。なお、セル・ギャップが均一化されていく過程で、第1シール材61内の液晶層と大気との差圧が減少した後においても、第1シール材61と第2シール材62の間の真空領域64が、大気圧との差圧を維持するので、セル・ギャップ均一化を高レベルに進行させることができる。このセル・ギャップ均一化工程は、大判パネル母材1が大気圧下に放置された後、大気と大判パネル母材1との力が平衡するまで行われることとなる。
〔第1シール材硬化工程(本接着工程:S6)〕
第2シール材62の硬化後、大判パネル母材1を焼成し、第1シール材61を硬化させる。第1シール材61は、セル・ギャップ均一化工程中は未硬化のままで、セル・ギャップ均一化が図られた直後に硬化を完了するのが望ましい。
〔液晶パネル切断工程(S7)〕
第1シール材硬化工程(S6)の後、液晶パネル切断工程(S7)が実施される。第1シール材61の外周に所定間隔で沿うような切断ラインにより大判パネル母材1を切断し単一の液晶パネル200毎に分離する。これにより図8に示すような単一の液晶パネル200が切り出され、6枚の液晶パネル200が製造される。切断ラインは、第1シール材61の外側に付設される駆動回路等の必要なモジュールを内包するように設定される。
(4.本実施形態の作用効果)
以上、説明した本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
上記実施形態では、一般式(1)および(2)で表される化合物を縮重合させた樹脂組成物122を、マイクロレンズ基板10の凸レンズ基板12の形成材料として用いた。このようなマイクロレンズ基板10は、高透過率、高屈折率、耐熱性、耐薬品性、耐光性、耐クラック性に優れているため、このマイクロレンズ基板10を用いて製造される液晶パネル用対向基板100および液晶パネル200も同様に、高透過率、高屈折率、耐熱性、耐薬品性、耐光性、耐クラック性に優れる。
また、一般式(1)および(2)で表される化合物を混合させた樹脂組成物122は、紫外線照射により硬化させることができるため、短時間で硬化させることができ、取り扱いが容易で効率性に優れている。
さらに、一般式(1)および(2)で表される化合物を混合させた樹脂組成物122は、安定性が高いため耐久性に優れ、製品とした場合の寿命が長い。
そして、上記実施形態では、ODF工法により液晶パネル200を製造する。ODF工法によれば、従来のチップ組立方式に比べて液晶の使用量が少ないので材料コストを低減することができるとともに、液晶の封止を行う必要がないため、製造にかかる経費(時間、材料)を削減することができる。すなわち、生産性および効率性に優れている。
さらに、上記実施形態では、一般式(1)および(2)で表される化合物を混合させた樹脂組成物122を用いてマイクロレンズ基板10(液晶パネル用対抗基板100)を作成し、さらにODF工法で液晶パネルを製造する。これによれば、歩留まりを向上させることができ、製造コストの低減を図ることができる。
(5.変形例)
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、液晶パネル200の液晶駆動基板としてTFT基板40を用いたが、液晶駆動基板にTFT基板以外の他の液晶駆動基板、例えば、TFD基板、STN基板などを用いてもよい。
さらに、上記実施形態で得られた液晶パネル200には、必要に応じて、液晶パネル200の入射側や出射側に偏光板を貼り付けてもよい。
次に、本発明の実施例について説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
まず、厚さ2mmの石英ガラス基板(屈折率:1.46)に対し、スパッタリング法により厚さ0.03μmのクロム(Cr)膜を形成した。
次に、このCr膜に対し、ステッパー(縮小投影型露光装置)を用いてレジストを塗布し、所定のパターンを有するマスクを形成した。そして、マスクが形成された石英ガラス基板にウェットエッチングを施し、石英ガラス基板上に多数の凹部を形成した(凹部基板製造工程)。
次に、凹部基板に対して、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルトリエトキシシランを、エタノール、水、酢酸の混合液に対しそれぞれ0.5%程度に希釈した溶液をスピンコートし、その後、エタノールで洗浄し、スピン乾燥させた(前処理工程)。
以下の表1に示す実施例1〜3の化合物に、重合開始剤として「Irgacure369」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)を混合させて樹脂組成物を得た。
ここで用いた化合物Aは前述の式(11)で示されるジフェニルシランジオール(DPD)であり、化合物Bは前述の式(21)で示される3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランであり、化合物Cは前述の式(31)で示されるフェニルトリメトキシシランであり、化合物Dは前述の式(22)で示されるスチリルメチルジエトキシシランである。なお、「Irgacure369」の化学式を以下に示す。
Figure 2010286774
また、以下の表1に示す比較例1では、例えば特開2008−202008号公報に示すエポキシ−シリカ樹脂、比較例2ではアクリル−シリカ樹脂、比較例3では、例えば特開平9−208805号公報に示すエポキシ樹脂を樹脂組成物として用いた。
次に、凹部基板をホットプレートに載せ、凹部基板上に各樹脂組成物を塗布した。塗布方法は以下の通りである。
[実施例1]
室温(20℃以上25℃以下)で、ディスペンサーにより所定量の樹脂組成物を凹部基板の中心に塗布した。
[実施例2]
ホットプレートを60℃に温め、ディスペンサーにより所定量の樹脂組成物を凹部基板の中心に塗布した。60℃に加温することにより、加温前には数Pa・sだった粘度が、10−1Pa・s程度にまで低粘度化した。
[実施例3]
ホットプレートを60℃以上80℃以下に温め、ディスペンサーにより所定量の樹脂組成物を凹部基板の中心に塗布した。60℃以上80℃以下に加温することにより、加温前には数十Pa・sだった粘度が、10−1Pa・s程度にまで低粘度化した。
[比較例1〜3]
室温(20℃以上25℃以下)で、ディスペンサーにより所定量の樹脂組成物を凹部基板の中心に塗布した。
樹脂組成物の塗布後、必要に応じて、バーコーターやスクリーン印刷を用いて、凹部基板上の樹脂組成物を伸ばし、樹脂組成物の外周部にギャップ剤を描画した。
次に、ホットプレートに凹部基板を載せた状態で、真空引きを行う。このときの真空度は1000Pa以下であることが好ましい。真空度が1000Paを超えると、気泡が発生するおそれがある。
真空引き終了後、石英ガラス製の押圧部材を平行に押し付け、樹脂組成物の厚みが25μmとなるように整えた。
次に、厚みを整えた樹脂組成物に対して、硬化処理を行った。硬化方法は以下の通りである。
[実施例1〜3]
100mWの高圧水銀ランプ(波長365nm)を、凹部基板上の樹脂組成物に対して10秒間照射することにより、紫外線照射量1000mJとして樹脂組成物を硬化させた。紫外線照射する際は、凹部基板サイズのマスクにより、凹部基板からはみ出している樹脂組成物の硬化を抑制し、エタノールで洗浄してはみ出した樹脂組成物を除去した。
硬化後、押圧部材を凹部基板から剥離し、200℃の乾燥炉で1時間アニール処理を行った。
[比較例1、2]
樹脂組成物を塗布した凹部基板を100℃の乾燥炉に1時間入れ、樹脂組成物を硬化させた。凹部基板からはみ出した樹脂組成物は、まず硬化前に拭き取り、硬化後に硫酸洗浄を行って除去したが、凹部基板の端面における拭き取り残りと、凹部基板への硫酸の浸み込みにより数nmの凹凸が発生した。
硬化後、押圧部材を凹部基板から剥離した。
[比較例3]
100mWの高圧水銀ランプ(波長365nm)を、凹部基板上の樹脂組成物に対して10秒間照射することにより、紫外線照射量1000mJとして樹脂組成物を硬化させた。エポキシ樹脂は溶剤に不溶のため、凹部基板からはみ出した樹脂組成物は、硬化後の硫酸洗浄により除去したが、凹部基板への硫酸の浸み込みにより数nmの凹凸が発生した。
硬化後、押圧部材を凹部基板から剥離し、150℃の乾燥炉で30分間アニール処理を行った。
以上のようにして、凹部基板上に凸レンズ基板を形成した。
次に、凸レンズ基板の表面に、SiOからなる無機層を形成した。無機層の形成方法は以下の通りである。
[実施例1〜3]
Si源にモノシラン(SiH)を用い、200℃のCVD法により、SiOからなる無機層を2μmの厚みに形成した。膜形成時間は、10分であった。
[比較例1、2]
Si源にモノシラン(SiH)を用い、200℃のCVD法により、SiOからなる無機層を2μmの厚みに形成した。膜形成時間は、10分であった。
[比較例3]
Si源にTEOS(テトラエトキシシラン、Si(OC)を用い、75℃のCVD法により、SiOからなる無機層を5μmの厚みに形成した。膜形成時間は、60分であった。
以上の工程により、凹部基板、凸レンズ基板および無機層からなるマイクロレンズ基板を製造した。
次に、スパッタリングにより、厚さ0.05μmのCr膜および厚さ0.1μmのTiN膜を無機層上に成膜し、レジスト塗布後、ステッパーを用いて所定のパターンを形成し、ドライエッチングによりブラックマトリクスを成形した。
次に、200℃のスパッタリングにより、凹部基板のブラックマトリクスおよび無機層上に厚さ0.14μmのITO膜を成膜した。
以上の工程により、液晶パネル用対向基板を製造した。各実施例および各比較例の液晶パネル用対向基板を表1に示す。
Figure 2010286774
表1に示されるように、実施例1から実施例3の液晶パネル用対向基板は、基板端精度が高く、平坦性に優れている。
次に、各実施例および各比較例で製造した液晶パネル用対向基板を用いて液晶パネルを製造した。液晶パネルの製造は、前述の実施形態に記載したODF工法のほか、参考例としてチップ工法による製造も行った。
チップ工法は、まず、得られた液晶パネル用対向基板100を、ダイシングにより所定のチップサイズに切断する。
次に、TFT基板40にシール材を描画または印刷し、チップサイズの液晶パネル用対向基板100を貼り合わせる。シール材を描画する方法としては、ディスペンサーやインクジェット装置を用いることができる。また、シール材を印刷する方法としては、スクリーン印刷を利用することができる。
次に、シール材で囲まれる液晶パネル用対向基板100とTFT基板40との間隙内に液晶を注入し封止する。
次に、スクライブブレイクにより所定のパネルサイズに分割し、液晶パネル200を得ることができる。
各組立方式により得られた液晶パネルについて、歩留まり、初期の明るさとムラ、および耐光性試験後の明るさとムラの評価を行った。評価結果を表2に示す。
なお、耐光性試験は、ランプ(Philips社製、製品名「Top 241 J7」)の光を液晶パネルに5000時間照射することにより行った。
各評価の指標は以下の通りである。
[歩留まりの評価]
A:歩留まり80%以上
B:歩留まり70%以上80%未満
C:歩留まり70%未満
[明るさの評価]
得られた液晶パネルを評価機に組み込み投影し、照度を測定した。
A:照度 1200ルーメン以上
B:照度 1000ルーメン以上1200ルーメン未満
C:照度 1000ルーメン未満
[ムラの評価]
得られた液晶パネルを投影した画像を目視で観察し、以下のように評価した。
A:画像にムラがない。
B:画像にスジムラおよび濃度ムラが見られるが、実用上問題ない程度である。
C:画像にスジムラおよび濃度ムラがある。
Figure 2010286774
表2に示されるように、実施例1〜3では、耐光性試験の前後で、明るさおよびムラに変化がなく、耐久性に優れた液晶パネルを得ることができた。また、ODF工法で液晶パネルを作成した場合の歩留まりが良好であり、生産性および効率性が高い。
一方、比較例1、2では、耐光性試験の前後で、明るさおよびムラに変化はなかったものの、ODF工法で作成した場合の歩留まりが低い。また、比較例3では、耐光性試験後の明るさおよびムラの評価が低下し、ODF工法で作成した場合の歩留まりも低かった。
10…マイクロレンズ基板、11…凹部基板、111…凹部、12…凸レンズ基板、121…マイクロレンズ、122…樹脂組成物、13…無機層、20…ブラックマトリクス、30…透明導電膜、40…TFT基板、50…液晶層、80…押圧部材、100…液晶パネル用対向基板、200…液晶パネル

Claims (7)

  1. 液晶滴下工法によって製造される液晶パネルであって、
    レンズ形状の複数の凹部が形成された凹部基板と前記凹部に樹脂組成物が充填されてなる凸レンズ基板とを有するマイクロレンズ基板を備え、
    前記樹脂組成物は、下記式(1)および(2)で示される化合物が縮重合されてなることを特徴とする液晶パネル。
    ArSi(OH) …(1)
    (式(1)中、Arは、炭素数6〜20で、少なくとも1つの芳香族基を有する基である。)
    RSi(OR’) …(2)
    (式(2)中、Rは、炭素数2〜15で、少なくとも1つのエポキシ基および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合のうち少なくともいずれか一方を有する有機基である。R’は、メチル基またはエチル基である。)
  2. 請求項1に記載の液晶パネルにおいて、
    上記式(1)中、Arはフェニル基であることを特徴とする液晶パネル。
  3. 請求項1または請求項2に記載の液晶パネルにおいて、
    上記式(2)中、Rはスチリル基を有する有機基であることを特徴とする液晶パネル。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の液晶パネルにおいて、
    前記樹脂組成物は、下記式(3)で示される化合物がさらに縮重合されることを特徴とする液晶パネル。
    Si(OR’) …(3)
    (式(3)中、R’基はメチル基またはエチル基である。R基は、CF−(CF)n−C−、RHN−(CH−、C−NHR、C−NFR、HN−C−NH−CH−C−C−、置換または無置換の炭素数1〜8のアルキル基、置換または無置換のフェニル基、トリル基、ナフチル基である。nは0から7の整数、RはH、CHまたはCである。)
  5. 第1の基板と第2の基板のうち少なくともいずれか一方に液晶を滴下する液晶滴下工程と、
    真空雰囲気内において前記第1基板と前記第2基板とをシール材を介して互いに貼り合わせる貼合工程と、
    大気解放後に所定の大きさの液晶パネルに切断する切断工程と、を備え、
    前記第1の基板および前記第2の基板のうちいずれか一方は、レンズ形状の複数の凹部が形成された凹部基板と下記式(1)および(2)で示される化合物を縮重合してなる樹脂組成物からなる凸レンズ基板とを有するマイクロレンズ基板を有することを特徴とする液晶パネルの製造方法。
    ArSi(OH) …(1)
    (式(1)中、Arは、炭素数6〜20で、少なくとも1つの芳香族基を有する基である。)
    RSi(OR’) …(2)
    (式(2)中、Rは、炭素数2〜15で、少なくとも1つのエポキシ基および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合のうち少なくともいずれか一方を有する有機基である。R’は、メチル基またはエチル基である。)
  6. レンズ形状の複数の凹部が形成された凹部基板と、
    前記凹部に下記式(1)および(2)で示される化合物が縮重合されてなる樹脂組成物が充填されてなる凸レンズ基板と、を備えることを特徴とするマイクロレンズ基板。
    ArSi(OH) …(1)
    (式(1)中、Arは、炭素数6〜20で、少なくとも1つの芳香族基を有する基である。)
    RSi(OR’) …(2)
    (式(2)中、Rは、炭素数2〜15で、少なくとも1つのエポキシ基および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合のうち少なくともいずれか一方を有する有機基である。R’は、メチル基またはエチル基である。)
  7. 請求項6に記載のマイクロレンズ基板を備えたことを特徴とする液晶パネル用対向基板。
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JP2020141140A (ja) * 2013-08-06 2020-09-03 株式会社半導体エネルギー研究所 剥離方法

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