JP2010286481A - 光反応性化合物を有する磁気ビーズへの化合物の固定法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、化合物を光反応性化合物が表面に結合している磁気ビーズと接触させた後、磁気ビーズを化合物と共に支持体上に伸展し、該磁気ビーズに光を照射し、光反応性化合物と化合物との間に共有結合を形成させることにより、化合物が結合した磁気ビーズを作製する方法である。
【選択図】なし
Description
例えば、細胞の抽出物の中から、特定のタンパク質を取得する場合、磁気ビーズの表面に目的のタンパク質と特異的に結合するリガンドを固定する。リガンドが固定された磁気ビーズを抽出物の中に添加し、リガンドを介して磁気ビーズに目的タンパク質を結合させたのち、磁力等を利用して磁気ビーズを回収すれば、目的タンパク質を取得することができる。このように、磁気ビーズの特徴をうまく利用すれば、多様な物質が混在する混合物中から目的の物質を効率的に取得することが可能となる。
しかし、アミノ基をほとんど有しない化合物(例えば、脂質などの低分子化合物)の場合、アミノ基を介した磁気ビーズへの結合が困難であるため、他の方法を利用する必要があった。例えば、その方法として、キャリアータンパク質を介する方法、ビオチン化によるビオチン−アビジン結合を利用する方法、疎水性官能基を持つ磁気ビーズを用いる方法、抗原に人工的にアミノ基を導入する方法(非特許文献1)、あるいは、光反応性架橋試薬を使用する方法(特許文献1)などが試みられていた。
しかし、抗原にキャリアータンパク質を結合させる方法、抗原をビオチン化する方法などを使用すると、抗原分子の立体構造に影響が出たり、ビオチン化部位に対して、又はキャリアータンパク質に対して選択的に抗体が得られてしまうという問題が生じていた。また、疎水性官能基を持つ磁気ビーズを用いる方法を生細胞によって構成される抗体ライブラリー(例えば、ADLib法によって調製される抗体ライブラリー、特許文献2、非特許文献2を参照のこと)からの抗体選択に使用すると、抗原がビーズから遊離し易いため、遊離した抗原がライブラリーを構成する細胞に致死的な影響を及ぼしていた。さらに、抗原に人工的にアミノ基を導入して磁気ビーズと直接結合する方法は、複雑な工程を含む化学合成を必要とするため、多くの時間と莫大な費用が必要となっていた。
このような状況において、従来法では磁気ビーズに固定し難い抗原に対する抗体を、磁気ビーズを利用して、抗体ライブラリーから選択するためには、抗原となる化合物と磁気ビーズを安定的かつ効率的に固定するためのより改善された方法を確立する必要があった。
従来は、光反応性化合物が結合した磁気ビーズと化合物との混合物に対して、エッペンドルフチューブや試験管中で光照射することが多かったが、このような方法では、化合物の磁気ビーズへの固定率が低く、実用的な方法ではなかった。そこで、本発明者らは、上記方法では照射光が磁気ビーズに吸収されてしまうために化合物の固定効率が著しく低くなるのではないかとの仮説を定立し、この点を改善すべく試行錯誤を繰り返した結果、本発明を完成させた。本発明によれば、後述の実施例において示されるように、従来の方法と比較して顕著に高い化合物の固定率を実現することができる。
(1)本発明の第1の態様は、「光反応性化合物が表面に結合している磁気ビーズに化合物を接触させ、該磁気ビーズを該化合物と共に支持体上に伸展し、該磁気ビーズに光を照射し、該光反応性化合物と該化合物との間に共有結合を形成させ、化合物が結合した磁気ビーズを作製する方法」である。
(2)本発明の第2の態様は、「磁気ビーズに光を照射する前に該磁気ビーズを乾燥させることを特徴とする上記(1)に記載の方法」である。
(3)本発明の第3の態様は、「伸展した磁気ビーズの密度が1×108個/cm2以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の方法」である。
(4)本発明の第4の態様は、「前記化合物がアミノ基を有しないか、ほとんど有しない化合物であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の方法」である。
(5)本発明の第5の態様は、「前記化合物が脂質であることを特徴とする上記(4)に記載の方法」である。
(6)本発明の第6の態様は、「上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の方法で作製された磁気ビーズ」である。
(7)本発明の第7の態様は、「磁気ビーズ及び使用説明書を含み請求項(1)乃至(5)のいずれかに記載の方法に使用されるキット」である。
(8)本発明の第8の態様は、「さらに、光反応化合物及び/又は化合物を含む上記(7)に記載のキット」である。
(9)本発明の第9の態様は、「上記(6)に記載の磁気ビーズを用いて抗体ライブラリーから前記化合物と結合する抗体を選択する方法」である。
本発明の対象となる「化合物」は、特に限定はしないが、例えば、炭素、水素、酸素、窒素、硫黄などを含む有機化合物、より具体的には、タンパク質、ペプチド、糖質、脂質、核酸などの生体分子や、低分子有機化合物など、好ましくは、分子量が比較的小さい低分子化合物である。また、本発明の対象となる化合物には、アミノ基を有しないか、ほとんど有しない化合物も含まれる。アミノ基をほとんど有しない化合物とは、特に限定はしないが、例えば、1分子あたりアミノ基の数が0〜5個、0〜3個、好ましくは、0〜1個の化合物のことである。
磁気ビーズに結合させる化合物の調製に使用される溶媒は、結合させる化合物の種類によって適宜選択することができ、例えば、水、エタノール、メタノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン、クロロホルムなどが使用可能である。磁気ビーズに結合させるために使用する化合物の量は、結合させる化合物の種類によって異なるが、磁気ビーズ表面に存在する光反応性化合物1分子に対し、例えば、化合物を約1〜10分子程度、好ましくは、約1〜5分子程度、より好ましくは、約1分子程度であり、磁気ビーズ表面に存在する光反応性化合物の分子数より、化合物の分子数をやや多めに使用することが好ましい。あるいは、磁気ビーズと化合物の混合比は、当業者であれば、予備的な実験を行うことで容易に決定することが可能である。
ここで「支持体」としては、特に限定はしないが、表面が平らで、UV(紫外線)などの光照射や種々の化合物又は溶媒によって変質しない材質で、好ましくは、透明性のある材質であり、光反応性化合物と化合物との結合に影響を与えず、磁気ビーズ、光反応性化合物及び化合物を吸着等しない材質のものであれば利用可能である。好ましい支持体として、例えば、ガラス、陶器、セラミック、プラスチックなどを挙げることができる。支持体の形状又は面積(磁気ビーズ等を伸展する部分の面積)は、特に限定はされず、本発明を実施するスケール(化合物、あるいは、化合物を結合させる磁気ビーズの使用量に依存する)によって適宜選択することができる。例えば、少量で行う場合には、スライドガラスや、ガラスシャーレ(例えば、直径3cm程度)などが使用可能である。
本発明において使用する抗体ライブラリーは、一群の(複数種類の)抗体を含むものであればいかなるライブラリーも使用することが可能で、いわゆる免疫グロブリンの分子形態を有する分子集団の他、細胞表面上に抗体を提示する細胞集団であっても、コートタンパク質に抗体を提示するウイルスであってもよく、本発明の実施に適したライブラリーを選択することは当業者であれば容易に行うことが出来る。そのようなライブラリーとしては、例えば、抗体を産生するB細胞集団(例えば、ニワトリ由来B細胞の株化培養細胞であるDT40細胞集団、例えば、ADLib法によって作製されたもの(ADLib法の詳細については、例えば、特許文献2及び非特許文献2を参照のこと))などを挙げることができる。
なお、本発明の抗体には、免疫グロブリンの形態を有するもの以外にも、例えば、単一鎖抗体、免疫グロブリンの断片(例えば、Fv、F(ab’)2、Fabなど)など、特定の分子と特異的に結合し、当業者が抗体として認識するあらやる分子が含まれる。
本発明の磁気ビーズを用いて抗体ライブラリーから所望の抗体を選択する方法は、用いる抗体ライブラリーによって異なり、選択条件について、当業者であれば容易に設定することができる。
さらに、本発明のキットには使用説明書が添付され、当該使用説明書には、本発明の磁気ビーズを作製する方法が詳細に記載されている。キットに添付される使用説明書は、紙その他の材質上に印刷されたものの他、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、Zipディスク、ビデオテープ、オーディオテープなどの電気的又は電磁的に読み取り可能な媒体であってもよい。さらに、使用説明書は、当該キットの製造者又は分配者によって指定され又は電子メール等で通知されるウェブサイトに掲載されていてもよく、必ずしも、キット中に実際に添付されていなくてもよい。
1.実験方法
1−1.細胞培養
ニワトリB細胞由来のDT40細胞は、CO2インキュベーターにて、5%CO2、39.5℃で培養した。培地は、イスコフ改変ダルベッコ培地(Invitrogen社)を用い、10% FBS、1% ニワトリ血清、100単位/mL ペニシリン、100μg/mL ストレプトマイシン、55μM 2−メルカプトエタノールを加えて使用した。また、トリコスタチンA(和光純薬)は、メタノールに5mg/mLに溶解したものをストックとし、2.5ng/mLとなるように培地に希釈した。
ヒトTリンパ球性白血病細胞由来Jurkat細胞(理研バイオリソースセンター)は培地RPMI1640(Invitrogen/GIBCO)にて培養した。培地には10%ウシ胎仔血清(JRH Bioscience)、1mM ピルビン酸ナトリウム(Invitrogen/GIBCO)、100unit/mL ペニシリン及び100μg/mL ストレプトマイシン(Invitrogen/GIBCO)を添加した。
ヒト単球性白血病由来THP−1細胞(ATCC)は、培地RPMI1640(Invitrogen/GIBCO)にて培養した。培地には、10% ウシ胎仔血清(JRH Bioscience)、1mM ピルビン酸ナトリウム(Invitrogen/GIBCO)、100unit/mL ペニシリン及び100μg/mL ストレプトマイシン(Invitrogen/GIBCO)を添加した。
磁気ビーズ(Dynal社、M450−Epoxy)懸濁液(磁気ビーズ密度=4.0×108/mL)を1.5mLチューブ内に200μL分取し、磁気スタンド上にて2分程度静置して磁気ビーズを集積した後、上清を除去した。緩衝液A(0.1M NaHCO3−ジオキサン(1:1))を200μL添加してボルテックスミキサーで懸濁し、上記同様に磁気スタンドに静置した後、上清を除去した。この洗浄操作を合計で3回繰り返し、最終的に沈殿状態として回収した。N−(17−アミノ−3,6,9,12,15−ペンタオキサヘプタデカシル)−4−(3−トリフルオロメチル−3H−ジアジリン−イル)−ベンズアミドを、200μLの緩衝液Aに溶解し、上述の沈殿状態の磁気ビーズと混合し、懸濁した。
混合物を遮光し、37℃下、振盪機により(毎分150rpm)終夜反応させた。その後、200μLの緩衝液Aで3回洗い、最終的にブロッキング液(1M エタノールアミン、0.1M Tris−HCl、pH8.0)200μLを加えて懸濁した。この懸濁液を遮光し、37℃下、振盪機により(毎分150rpm)2時間反応させた。200μLのエタノールで3回、200μLの純水で2回、200μLのメタノールで2回洗った。その後、磁気ビーズを200μLのメタノールに懸濁した。
上記で作製した光反応性架橋基(光反応性化合物)を有する磁気ビーズ(図1)の懸濁液を、100μL程度(50μL〜150μLでも可)、直径3cm(7.07平方cm)のガラス製のシャーレ上に薄く伸展させた(1平方cm当たり、7μL〜21μL、好ましくは14μL程度)。
任意の低分子有機化合物を200μLのエタノールもしくはメタノールに溶解し、これを上記の磁気ビーズ懸濁液を伸展したシャーレ上に、滴下しつつ徐々に添加した。その後、シャーレ内に拡散した反応液を再度ピペットにて回収し、シャーレ中央部分から同心円状に滴下しつつ再度シャーレ上に伸展した(最終的な反応液量は、21μL〜63μL、好ましくは、42μL程度となる)。
セレクション緩衝液(1%BSAを含むリン酸緩衝液PBS:150mMNaCl,10mMリン酸緩衝液、pH7.4)1mLに、上述の抗原化合物を結合させた5μLの磁気ビーズ懸濁液を添加して混合し、磁気スタンドにて2分間静置の後、上清を除去した。これを3回繰り返し、最終的にセレクション緩衝液1mLに懸濁し、氷冷した。
その後は、ADLib法の標準手法(例えば、特許文献2又は非特許文献2を参照のこと)に従って抗体産生細胞のスクリーニングを実施した。具体的には、ADLibの細胞ライブラリー100mLを50mLチューブ2本に回収し、190×g、10分、4℃で遠心し、上清を除去した。次に、セレクション緩衝液10mLで細胞を懸濁し、15mLチューブに移した。190×g、10分、4℃で遠心し、上清を除去したセレクション緩衝液1mLで細胞を懸濁し、1.5mLチューブに移した。これを1,100×g、5分、4℃で遠心して上清を除去した。この細胞沈殿物に前述の氷冷しておいた抗原付き磁気ビーズ懸濁液1mLを添加して懸濁する。この懸濁液をローテーターを用い、30分間4℃で反応させた後、ピペッティングで懸濁してから磁気スタンドにチューブを立て、氷上で5分間静置させた。上清を除去し、セレクション緩衝液1mLで懸濁し、再度、磁気スタンドに立て、氷上で3分間静置させた。この操作を5回繰り返した。その後、最終的にセレクション緩衝液0.5mLで懸濁した。コーニング社製リザーバーに37℃で温めておいた培地30mLを添加し、その培地中に、この0.5mLの懸濁液を全量投入し、ピペッティングで良く混合した。その後、96穴プレートの各ウェルにこの細胞懸濁液を300μL/wellずつ播種した。この際、7wellにバックグラウンド用コントロールとして培地のみを300μLずつ添加しておいた。その後、39.5℃で1週間、CO2インキュベーターで培養した。
目的抗原と対照抗原をそれぞれエタノールで0.5μg/mL以下になるように希釈し、100μLずつ96穴イムノプレートに入れ、37℃のハイブリオーブンで乾燥させ、イムノプレートを作製した。乾燥後、200μLのセレクション緩衝液を入れ、室温で30分間以上反応させた。その後、200μLのPBSで3回洗浄した。洗浄後、PBSをよく除き、培養上清を100μLずつターゲット抗原(目的抗原)wellとコントロール抗原(対照抗原)wellに入れ、室温で1時間反応させた。その後、PBSを除去し、さらに200μLのPBSで5回洗浄した。次に、二次抗体(anti Chicken IgM−HRP)をセレクション緩衝液で10,000倍に希釈した溶液を各wellに100μLずつ添加し、室温で45分間反応させた。その後、反応液を除去し、200μLのPBSで5回洗浄し、残余の溶液をできる限り吸引除去した。最後に3,3’,5,5’−tetramethylbenzidine(TMB)溶液(DakoCytomation社)100μLを5秒ごとに各レーンに添加し、室温で4分反応させた。その後、20倍希釈硫酸(1N)100μLを、5秒ごとに各レーンに入れ、450nmの吸光度を測定した。なお、洗浄や反応に用いるPBS、セレクション緩衝液にはTweenなどの界面活性剤を入れてはならない。
1) ヒトTリンパ球性白血病細胞由来Jurkat細胞の培養細胞(1×106/mL)を回収し、1000回転で10分間遠心した。
2) 上清除去後、PBS(137mM NaCl,3mM KCl,9mM NaHPO4,1.5mM KH2PO4,pH 7.4)で洗浄した。
3) Binding buffer(50mM Tris−HCl,150mM NaCl,protease inhibitor cocktail,pH 7.5)300μLに細胞を懸濁した。
4) 超音波処理により細胞を破砕し、顕微鏡で破砕を確認した。
5) 細胞破砕液を15000回転で30分間、4℃にて遠心し、上清を回収した。
6) 上清の細胞抽出液のタンパク質濃度を測定し、Lysis buffer(137mM NaCl,3mM KCl,9mM NaHPO4,1.5mM KH2PO4,protease inhibitor cocktail,pH 7.4)により、最終タンパク質濃度が5mg/mLとなるように希釈した。
7) 次に、前述の方法にて作製したラパマイシン結合ビーズ)懸濁液10−100μLと混合し、4℃で30分〜20時間インキュベートした。
8) その後、マグネットスタンドで磁気ビーズを集積し、上清を取り除いた。
9) 磁気ビーズを、Wash buffer(Lysis buffer,0.3% Triton X−100)1mlで5回洗浄した。
10)最終的に、PBS15μL、2倍濃度SDS−PAGEサンプルバッファー(125mM Tris−HCl,10% 2−mercaptoethanol,4% SDS,10% sucrose,pH6.8)15μLを添加し、95℃下で10分間熱処理を行った。
11)マグネットスタンド上で磁気ビーズを集め、上澄み10μLを15%アクリルアミドゲルにてSDS−PAGEを行ってタンパク質の分離を行い、抗FKBP1抗体(Abcam社、1000倍希釈)を用いてWestern blottingを実施した。
1)THP−1細胞を24wellプレートに、1wellにつき6×105個播いた。
2)リポ脂質(LPS0111,LPSRe,LipidA;いずれも、本発明の方法により磁気ビーズ修飾したものと未修飾のもの)を添加し、37℃で4時間インキュベートした。
3)細胞培養液を1.5mLチューブに回収し、遠心操作(3,500回転,4℃,5分間)を行い、上清を回収した。この上清中に含まれるTNFαを測定した。測定はR&D SystemsのQuantikine Human TNF−α/TNFSF1Aのプロトコルに従った。
4)あらかじめAssay Diluent RD1Fを50μL添加したアッセイプレートに、方法3)で回収した上清を200μL添加し、室温で2時間インキュベートした。
5)上清をデカンテーションし、400μLのWash bufferで、4回洗浄した。
6)200μLのTNF−α Conjugateを添加し、室温で1時間インキュベートした。
7)TNF−α Conjugateをデカンテーションし、400μLのWash bufferで4回洗浄した。
8)200μLのSubstrate bufferを添加し、室温遮光にて20分間インキュベートした。
9)50μLのStop solutionを添加し、450nmの吸収スペクトルを測定した。
2−1.疎水性タンパク質(サイクロスポリンA)に関する実施例
サイクロスポリンA、0.5μgを用いて、上記の実験を行った。その結果、ELISA後のO.D.450値が0.6以上のクローンを2種類取得できた(図2)。
2−2.脂質に関する実施例
スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)、ガラクトシルセラミドなどの糖脂質、及びスフィンゴシン1−リン酸(S1P)などのスフィンゴ脂質を、各50ngを用いて上記実験を行った。その結果、O.D.450値が0.5以上の目的脂質抗体を産出する細胞クローンを、複数種取得することができた(図3〜5)。
2−3.ラパマイシン結合ビーズに関する実施例
磁気ビーズ(100μL:4×107)に種々の量のラパマイシン(0,0.1,1,10mg)を結合させ、Jurkat細胞の抽出物(タンパク質量;1.25mg、濃度;5mg/mL)中で、4℃、120分インキュベートした。インキュベート後、ラパマイシン結合磁気ビーズとの共沈産物に対し、マウス抗ヒトFKBP12抗体(Abcam社)を用いてウェスタンブロット解析を行った。その結果、ラパマイシン結合ビーズと共に沈殿に回収されたFKBP12の量は、結合させたラパマイシンの量依存的に増大していることが明らかとなった(図7)。一方、mock処理(ラパマイシン量が0mgの場合)により回収されたFKBP12の量は検出されなかった。
以上の結果から、本発明の方法により、ラパマイシンを磁気ビーズ上に確実かつ効率的に結合させることができることが明らかとなった。
2−4.LPS(Lipopolysaccharide)−磁気ビーズの生理活性の検討
本発明の方法により、磁気ビーズに結合させたリポ脂質(LPS)が、炎症シグナルを誘導する生理活性を保持しているかどうか、THP−1細胞を用いて確認した。炎症シグナルの誘導活性は、細胞からのTNF−αの分泌を測定することにより調べた(図8)。
図8に示す結果から、LPS011については、遊離のものに比べて磁気ビーズに固定したものは、約1/10程度の活性を保持していることが分かる。また、LipidAとLPSReについてはTHP−1細胞での応答性がそれほど高くないが、それでも磁気ビーズ結合体は遊離型の1/10−1/20程度の活性を持つことが確認できた。なお、磁気ビーズ結合LPS群の濃度(ng/mL)は、あくまでも結合時の条件から推定される値であり、実際には図8中に示す値よりも低いと推定される。
以上の結果から、磁気ビーズに固定したLPSなどの低分子化合物が生理活性を保持する場合、生体内などにおいて磁力により、任意の特定部位に低分子化合物を結合した磁気ビーズを集積させ、がんなどの治療に用いることが可能となる。
次に、〔実験例〕で抗原として使用した化合物(CsA)を、従来行われるようにマイクロ試験管中でUV照射を行って磁気ビーズに結合させ、化合物(CsA)に対する抗体の選択を試みたのでその結果を以下に示す。
1.実験方法
通常の方法で光親和型リンカーを導入したDynaBeadsと、サイクロスポリンA(CsA)のメタノール溶液をマイクロ試験管に入れて混合し、乾燥後にUVを照射し、CsAをビーズに固定化した(CsAビーズ)。CsAビーズをメタノールで回収し、通常の方法で洗浄を行った。CsAがビーズに固定化されていることを確認するために、CsAビーズと、化合物を混合しないでUV照射して作製したコントロールビーズを用いて、タンパク質競合結合実験を行った。CsAビーズの結合の特異性を確認するため、得られたCsAビーズ及びコントロールビーズに、各々、磁気ビーズ抗CsA抗体にBSAを1:10の割合で混合した溶液を添加して反応を行い、各ビーズを磁力により回収し、数回の洗浄を行った。その後、ビーズに結合したタンパク質をSDS−PAGEにて電気泳動を行った。
図6に、SDS−PAGEの銀染色の結果を示す。図6から分かるように、コントロールビーズのみならず、CsAビーズにも抗CsA抗体は全く結合していなかった(図6、レーン1とレーン3を参照)。
Claims (9)
- 光反応性化合物が表面に結合している磁気ビーズに化合物を接触させ、該磁気ビーズを該化合物と共に支持体上に伸展し、該磁気ビーズに光を照射し、該光反応性化合物と該化合物との間に共有結合を形成させ、化合物が結合した磁気ビーズを作製する方法。
- 磁気ビーズに光を照射する前に該磁気ビーズを乾燥させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 伸展した磁気ビーズの密度が1×108個/cm2以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
- 前記化合物がアミノ基を有しないか、ほとんど有しない化合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
- 前記化合物が脂質であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の方法で作製された磁気ビーズ。
- 磁気ビーズ及び使用説明書を含み請求項1乃至5のいずれかに記載の方法に使用されるキット。
- さらに、光反応化合物及び/又は化合物を含む請求項7に記載のキット。
- 請求項6に記載の磁気ビーズを用いて抗体ライブラリーから前記化合物と結合する抗体を選択する方法。
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