JP2010281719A - 変態塑性係数試験装置および変態塑性係数同定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】材料を加熱した後に急速冷却する熱処理を想定し、急速冷却時の試験片の変形量を逐次測定可能とし、その変形量から変態塑性係数を同定することができる変態塑性係数試験装置を提供する。
【解決手段】加熱炉2と、上記加熱炉内に配置された試験片14と、上記加熱炉内に冷却用ガスを供給し、その加熱炉で加熱された上記試験片を急冷する冷却用ガス供給手段3,4,5と、上記試験片の温度を測定する温度測定手段と、冷却進行中の上記試験片に荷重を付与する荷重付与手段11a,11b,15と、冷却進行中の上記試験片の変形量を逐次測定する変形量測定手段19とを備えてなることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】加熱炉2と、上記加熱炉内に配置された試験片14と、上記加熱炉内に冷却用ガスを供給し、その加熱炉で加熱された上記試験片を急冷する冷却用ガス供給手段3,4,5と、上記試験片の温度を測定する温度測定手段と、冷却進行中の上記試験片に荷重を付与する荷重付与手段11a,11b,15と、冷却進行中の上記試験片の変形量を逐次測定する変形量測定手段19とを備えてなることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、相変態を伴う冷却または加熱過程における材料の変態塑性ひずみを測定し、物性値である変態塑性係数を同定するための試験装置に関するものであり、さらに詳しくは、熱変化に伴う材料のひずみ挙動と、その原因となる相変態の情報をリアルタイムで取得することによって材料の「変態塑性係数」を同定するための変態塑性係数試験装置および変態塑性係数同定方法に関するものである。
冷却または加熱を伴う製品の変形予測、応力予測技術は、製品管理、製造工程管理上重要な課題であり、冷却または加熱を伴う材料の強度特性については従来から引張試験、圧縮試験等によって測定されてきた。
しかしながら、相変態温度域の強度特性に関しては、変態に伴って生じる膨張または圧縮のひずみと、変態進行時に外荷重を受けることによって生じる変態塑性ひずみとを分離することが困難であった。
一方、上記した従来の測定方法における欠点を解消し、簡便な方法でしかも相変態時の膨張または圧縮のひずみを無視し得る変態塑性ひずみ推定方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の変態塑性ひずみの推定方法では、試験片を高周波加熱や抵抗加熱によって加熱し、加熱後の試験片の温度を非接触温度計によって測定し、測定した温度データを解析するようになっている。
しかしながら、加熱後の試験片を均一且つ急速に冷却することは極めて困難であり、冷却速度が50℃/秒を超える(製品例では歯車等を熱処理によって製造するような場合)ような、急速冷却時のたわみを正確に測定し、変態塑性ひずみを測定するための具体的な装置は示されていない。
特に、特許文献1に例示されている高周波加熱による温度制御では、材料を850℃(一般的な鋼の熱処理の加熱温度)以上に保持し、その後、急速に冷却するような場合、試験片内の温度偏差を小さくして、精度の高いひずみ測定を行うことが難しい。
一方、加圧式ガス冷却炉は一般的に知られているものの、この種の冷却炉は熱処理用に用いることを目的としているため、炉内の試験片の変位を測定し、且つその測定データから変態塑性係数を同定するようには構成されていない。
本発明は以上のような従来の変態塑性ひずみの測定方法における課題を考慮してなされたものであり、材料を加熱した後に急速冷却する熱処理を想定し、急速冷却時の試験片の変形量を逐次測定可能とし、その変形量から変態塑性係数を同定することができる変態塑性係数試験装置および変態塑性係数同定方法を提供するものである。
上記課題を解決する本発明は、試験片を材料のキューリー点以上に加熱できる加熱炉を有し、任意のタイミングでその試験片に曲げ(3点曲げまたは4点曲げ)または、短軸の一定荷重を負荷させることができ、且つその状態で50℃/秒以上の速度で冷却することができ、冷却中に試験片の変形量を逐次測定することができる変態塑性係数試験装置であり、その変形量から変態塑性係数を同定することができる変態塑性係数同定方法である。
本発明において、急冷とは、空冷また送風により強制冷却する冷却よりも速い速度での冷却、具体的には、冷却用ガスを使用した強制冷却を意味しており、その冷却用ガスとしてはアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスを使用することができる。
本発明において、試験片を材料のキューリー点以上に加熱する目的は、組織をオーステナイトにするためである。すなわち、本発明は、オーステナイトがフェライト(またはフェライト+パーライト)、ベイナイト、マルテンサイトなどの組織に相変化(相変態)する際の変態塑性係数を求めるものであり、本発明の試験対象は主に鉄鋼材料であり、その鉄鋼材料がオーステナイト組織になる(溶体化処理)温度は、キューリー点(磁性変態温度)より高いためである。
本発明において、短軸の一定荷重とは、試験片をたわませるようにその一点に一定荷重を集中させることを意味している。
(a)本発明の変態塑性係数試験装置は、
加熱炉と、
上記加熱炉内に配置された試験片と、
上記加熱炉内に冷却用ガスを供給し、その加熱炉で加熱された上記試験片を急冷する冷却用ガス供給手段と、
上記試験片の温度を測定する温度測定手段と、
冷却進行中の上記試験片に荷重を付与する荷重付与手段と、
冷却進行中の上記試験片の変形量を逐次測定する変形量測定手段とを備えてなることを要旨とする。
加熱炉と、
上記加熱炉内に配置された試験片と、
上記加熱炉内に冷却用ガスを供給し、その加熱炉で加熱された上記試験片を急冷する冷却用ガス供給手段と、
上記試験片の温度を測定する温度測定手段と、
冷却進行中の上記試験片に荷重を付与する荷重付与手段と、
冷却進行中の上記試験片の変形量を逐次測定する変形量測定手段とを備えてなることを要旨とする。
本発明の変態塑性係数試験装置において、
上記試験片は二点で支持されるとともに、上記荷重付与手段として開閉動作する可動プレートを有し、この可動プレートは、開動作した際に、上記試験片の中央から錘を垂下させて上記試験片に負荷を与え、閉動作時にはその錘を支えて上記試験片を無負荷にするように構成することができる。
上記試験片は二点で支持されるとともに、上記荷重付与手段として開閉動作する可動プレートを有し、この可動プレートは、開動作した際に、上記試験片の中央から錘を垂下させて上記試験片に負荷を与え、閉動作時にはその錘を支えて上記試験片を無負荷にするように構成することができる。
本発明の変態塑性係数試験装置において、
上記冷却用ガス供給手段として、不活性ガスを貯溜する冷却用ガスタンクと、その冷却用ガスタンク内の不活性ガスを上記加熱炉内に導入する冷却ダクトとを有することができる。
上記冷却用ガス供給手段として、不活性ガスを貯溜する冷却用ガスタンクと、その冷却用ガスタンク内の不活性ガスを上記加熱炉内に導入する冷却ダクトとを有することができる。
上記構成を有する変態塑性係数試験装置によって測定された、急冷進行中の上記試験片の変形量および上記試験片の温度に基づいて変態塑性係数を計算する演算装置を、上記変態塑性係数試験装置に付加することができる。
(b)本発明の変態塑性係数同定方法は、
試験片を加熱炉に配置して加熱し、
加熱後の上記試験片を冷却用ガスを用いて急冷し、
急冷進行中の上記試験片に荷重を付与し、
急冷進行中の上記試験片の変形量を逐次測定し、測定された上記試験片の変形量および上記試験片の温度に基づいて変態塑性係数を同定することを要旨とする。
試験片を加熱炉に配置して加熱し、
加熱後の上記試験片を冷却用ガスを用いて急冷し、
急冷進行中の上記試験片に荷重を付与し、
急冷進行中の上記試験片の変形量を逐次測定し、測定された上記試験片の変形量および上記試験片の温度に基づいて変態塑性係数を同定することを要旨とする。
本発明の変態塑性係数同定方法において、
上記試験片の全歪εを下記式(1)によって定義し、
上記試験片の全歪εを下記式(1)によって定義し、
各ひずみεe,εp,εc,εTを一般的な構造解析により求め、
変態塑性ひずみεtrを下記式(2)によって定義し、
変態塑性ひずみεtrを下記式(2)によって定義し、
上記試験片急冷時に測定される全歪(たわみ量)εからεtrを計算し、
計算で求められたεtrを上記式(2)に代入するとともに、ξ、σを既知数、変態塑性係数Kを未知数として変態塑性係数Kを同定することができる。
計算で求められたεtrを上記式(2)に代入するとともに、ξ、σを既知数、変態塑性係数Kを未知数として変態塑性係数Kを同定することができる。
本発明によれば、冷却速度の速い相変態を伴う材料の変態塑性係数を正確に定めることができるため、その定められた変態塑性係数に基づいて変態塑性ひずみを計算すれば、材料の強度評価および応力、変形予測の精度を向上させることができる。
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に係る変態塑性係数試験装置1の構成を示す正面図である。
同図において、変態塑性係数試験装置1は図示しないカーボンヒータを備えた加熱炉2を有し、この加熱炉2は天板2aと底板2bを有する容器から構成されている。
上記天板2aには冷却ダクト3が接続されており、この冷却ダクト3の一方端は上記加熱炉内2内に向けて開口するガス冷却口3aに連通し、他方端はバルブ4を介し、冷却用ガスを貯溜する冷却用ガスタンク5に接続されている。
なお、上記冷却ダクト3、バルブ4および冷却用ガスタンクは冷却用ガス供給手段として機能する。
なお、上記冷却用ガスとしては、アルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等を選択することができる。また、冷却用ガスは冷却用ガスタンク5内で加圧され最大で3気圧差となるように圧力が設定されている。それにより、バルブ4を開けば、瞬時に加熱炉2内に冷却用ガスを導入することができるようになっている。
加熱炉2の上方には水平方向に突出する状態で一軸方向試験用ジグ6が設けられている。
材料に引張力が加わった場合と圧縮力が加わった場合とでは、同じ材料でも変態塑性係数が異なる場合もある。
曲げ試験片には引張りと圧縮の両方の力が作用するため、引張り、圧縮それぞれに対する変態塑性係数を分離することができない。そこで、引張力または圧縮力だけを付与することができる試験機構も備えていることが望ましい。
一軸方向試験用ジグ6は、上記した引張力または圧縮力だけを付与する試験機構として設けられており、一軸方向試験用ジグ6を併用すれば、引張りまたは圧縮の変態塑性係数を同定することができる。なお、上記一軸方向試験による変態塑性係数の同定方法については、従来から知られている。
上記一軸方向試験用ジグ6は、測定精度を高めるために、温度変化の影響を受けにくい線膨張率の低い金属材料、例えば、Ni基合金などが用いられている。また、一軸方向試験用ジグ6内に冷却水を循環させることで一軸方向試験用ジグ6を所定の温度に維持することもできる。
加熱炉2の高さ方向略中間位置には、補助冷却手段として水冷ノズル7aおよび7bが対向した状態で水平方向に配置されており、冷却水を下方に噴射するようになっている。なお、冷却ノズル7aにはバルブ8(水冷ノズル7a側のみ図示)が設けられている。
加熱炉2内の下方には支持台9aおよび9bが間隔を空けて配設されており、支持台9a上に支点10aが設けられ、支持台9b上に支点10bが設けられている。
上記各支点10a,10bはそれぞれ円柱状からなり、上記一軸方向試験用ジグ6と同様に線膨張率の低い金属材料、例えば、Ni基合金などで構成されている。
上記支持台9aおよび支持台9bの対向する各縁部には水平軸まわりに回動可能な一対の可動プレート11aおよび11bが設けられており、これらの可動プレート11aおよび11bは通常、互いに水平方向に連絡して各支持台9a,9bの上面と面一になっているが、動作時には矢印A方向に開くようになっている。
また、加熱炉2の側壁には試験片(後述する)の温度を測定するための熱電対のための熱電対用ポート12が一対以上設けられており、これらのポート12から取り出された試験片温度データはデータ収集装置13に順次、蓄積されるようになっている。
図2は、上記加熱炉1内に試験片を配置した状態を示している。
両支点10aおよび10bに跨がって筒状の試験片14が配置され、この試験片14の長手方向中央から錘15が垂下されている。
また、試験片14には図示しない熱電対が取り付けられており、その熱電対によって測定された試験片温度データは、上記熱電対用ポート12を介してデータ収集装置13に与えられるようになっている。
なお上記熱電対、熱電対用ポート12およびデータ収集装置13は、温度測定手段として機能する。
試験片冷却時に生じる「変態塑性ひずみ」を測定する場合、加熱時には試験片14に荷重が付与されないようにする必要がある。そこで、錘15は、図3に示すように設置されている。すなわち、閉じられた一対の可動プレート11aおよび11b上に支えられている。
一方、冷却開始時または冷却を開始してから所定の温度になった時に、図4に示すように一対の可動プレート11aおよび11bが開くようになっており、それにより、試験片14には錘15による荷重が付与されるようになっている。
なお、上記可動プレート11a、11bおよび上記錘15は、荷重付与手段として機能する。
なお、上記可動プレート11aおよび11bに代えて、図5に示すように横方向にスライドするシャッター16を使用することもできる。このシャッター16を矢印C方向にスライドさせれば錘15を支えて試験片14を無負荷状態にすることができ、これとは逆に矢印D方向にスライドさせれば、試験片14から錘15を垂下させ、試験片14に荷重を付与(負荷状態)させることができる。
図2に戻って説明する。
試験片冷却時または加熱時に、その試験片14に生じる変形を測定できるように、覗き窓17および18が設けられており、覗き窓17の近傍には変位測定装置19が配置され、覗き窓18の近傍には変位測定装置20(試験片を除く図2(b)のB−B矢視断面図参照)が配置されている。
なお、上記変位測定装置19および20は、試験片14の変形量を測定する変形量測定手段として機能する。
また、上記変位測定装置19および20は、具体的には、試験片14の変形量を逐次、測定できるものであればよく、例えば、レーザー変位計や撮像装置(定点座標処理機能付き)を使用することができる。
上記変位測定装置19および20によって測定された変位データ(変形量)は、データ収集装置13に順次蓄積され、熱電対によって測定された温度データとともに、たわみ変化曲線に換算されるようになっている。
冷却進行中および加熱途中において相変態を生じる場合、たわみ変化曲線上にたわみの急激な変化が現れることから、相変態の発生温度、終了温度を的確に検出することができる。
また、測定している試験片14のたわみは、相変態に伴う膨張または収縮ひずみの影響を無視できるため、積載荷重の異なるたわみ変化曲線を比較することにより、変態塑性ひずみ量を算出することが可能になる。
そこで、データ収集装置13に、後述する演算装置21を接続すれば測定データから変態塑性係数Kを同定することが可能になる。なお、上記演算装置21には各種データや指令を入力するための入力装置22が接続されているものとする。
上記演算装置21には、予め測定した対象材料のCCT(Continuous Cooling Transformation)線図またはTTT(Time-Temperature-Transformation)線図がデータとして与えられており、例えば、下記式(3)を用い、測定温度Tと経過時間tから組織の体積分率ξを求めることができる。
上記ξIJは、例えば、マルテンサイト拡散型変態の場合、mageeの式(下記式(4))が用いられることが多い。なお、応力との相関も考慮する必要があるがその影響が小さい場合は無視できるため、式(4)および後述する変態塑性ひずみεtrを求める式(5)では応力の項を省略している。
Msは変態開始温度、Aは係数を示しており、これらMsおよびAは、上記CCT線図またはTTT線図を用いて決定する。
変態塑性ひずみεtrは、組織Jの体積分率とその変化率、応力の関数であることから、例えば、式(2)を用いて定義する。
このとき、変態塑性ひずみεtrを決めるための係数Kが変態塑性係数であり、材料によって一意に決まるとされている。なお、係数nも実験的に求める必要があるが、低応力ではn=1とみなすことができる。
そして、変態塑性ひずみを考慮した運動方程式、式(1)を、解析装置に組み込んだ有限要素法または差分法プログラムを用いて解くことでεtrを求めることができ、その求められたεtrを上記式(2)に代入することにより、ξ、σを既知数、変態塑性係数Kを未知数として変態塑性係数Kを同定することができる。
ここで、εは全歪、εe,εp,εc,εT,εtrは、それぞれ、弾性歪、塑性歪、クリープ歪、熱歪、変態塑性歪である。なお、式(1)中のドット記号は時間微分を示している。
次に、本発明の変態塑性係数測定方法について、以下に示す実施例に基づいてさらに詳しく説明する。
試験片14としてJIS SCr420鋼(表1に示す成分表参照)を使用した。
試験片14の形状は、外径φ5mm、内径φ4mm、長さ110mmの円管とした。
試験片14にK熱電対をスポット溶接し、試験片14の一方端部から20mmの位置の表面温度を測定した。なお、測定点の温度が試験片中央の温度とほぼ一致することを別途、確認している。
支点10aおよび10bの距離を88mmにセットし、それらの支点10aおよび10bに試験片14を架設した。また、支点10aおよび10bとして外径10mmの硝子管を使用した。
加熱炉2内の試験片14を860℃まで加熱(保持10分)し、全断面オーステナイトとした後、冷却ダクト3のバルブ4を開き、アルゴンガスを3気圧で加熱炉2内に噴射した。
そのときの冷却曲線を図6に示す。同グラフにおいて、横軸は経過時間(秒)を示し、縦軸は試験片温度(℃)を示している。
試験片14の温度は、冷却開始から10秒経過した時点で約400℃まで降下し、20秒経過した時点で約100℃まで降下し、40秒以上経過した時点で約12℃まで降下し、以後、その温度で安定する。
一方、試験片14の設置と同時に、支点10aおよび10bの中間位置に対応する試験片14の部位にフック状の治具を用いて1.3kgの錘15を取り付けている。
この錘15は閉じられた可動プレート11aおよび11b上に載置され、試験片加熱中にはその試験片14に対して荷重を与えないようになっている。
次いで、冷却開始直前に、可動プレート11a,11bを開き、錘15を試験片14から垂下させた(荷重を負荷させた)。
試験片14中央のたわみ変形を、変位測定装置としての反射型レーザ変位計で測定し、たわみを動的に測定した。なお、上記反射型レーザ変位計に代えて透過型レーザ変位計を用いることもできる。
図7は、冷却進行中におけるたわみUの時間変化を示したグラフである。
図6から得られる、経過時間tにおける試験片温度(℃)および図7から得られる、経過時間tにおける試験片たわみ量に加え、CCT線図またはTTT線図から得られる、時間tでのマルテンサイト組織分率ξおよびその変化率が自動的に演算装置21に入力され、この演算装置21は、予めプログラムされた有限要素法による変位解析を実行することにより、経過時間tにおける変態塑性ひずみおよび変態塑性係数Kを求める。なお、上記有限要素法に代えて差分法を使用することもできる。
次に、上記演算装置21による計算手順を以下に説明する。
応力仕事や潜熱による発熱がある場合の熱伝導解析では、温度Tの場を下記式(6)の熱伝導方程式によって求める。
ここで、ρ、c、kはそれぞれ密度、比熱、熱伝導率であり、これらは試験片14の形状、材質で決まる既知数であるから、予め、入力装置22を介して演算装置21に入力されている。なお、潜熱を考慮した右辺、第二項においてLIJおよびξIJは、組織IからJへの変態における潜熱および組織Jの体積分率を示している。
体積分率ξIJは、上述したように温度Tと時間tで決まるものであり、CCT線図や、TTT線図を用いて定式化しておく。
式(3)を用いてξIJを計算する。
式(4)を用いてξIJを計算する。
式(4)におけるMsおよびAは上記CCT線図またはTTT線図を用いて決定する。
演算装置21は、与えられた条件、および試験片14の冷却進行中において熱電対によって測定された試験片14の温度に基づき、有限要素法に基づいて温度T、体積分率ξを求め、これらの値に基づいて変形予測を行う。
式(1)の運動方程式を解いて右辺の各ひずみを求める。
上記εe、εp、εc、εTについては、一般的な構造解析で用いられているため、詳細な説明を省略するが、例えば下記式(7)に示す応力計算式や、
下記式(8)に示すように、引張試験結果で得られる応力ひずみ関係式、
αTは温度Tにおける線膨張係数、ΔTは温度増分(変態膨張、変態収縮を含む)
によって求めることができる。
によって求めることができる。
これらのひずみに対し変態塑性ひずみεtrを加味する。
上記変態塑性ひずみεtrは、変態の進行(体積分率の変化率(1−ξ)、組織の体積分率ξドット)、応力σの関数であり、上記した式(2)を用いて計算する。
このとき、変態塑性ひずみεtrを決めるための係数Kが変態塑性係数であり、上記変態塑性係数Kを定め、その変態塑性係数Kに基づいて変態塑性ひずみεtrを計算する。
なお、本発明は、従来、冷却速度の速い相変態を伴う材料において明確にされていなかった変態塑性係数Kの値を正確に定めることを特徴とするものであるから、その変態塑性係数Kを利用して変態塑性ひずみεtrを求める計算式としては、式(2)に限らず、下記に示す定義式(9)を使うこともできる。
次いで、上記変態塑性係数Kを用いて計算された経過時刻tにおける変位量(わたみ変形量)Xと、上記変態塑性係数試験装置を用いて実測した変位量(たわみ変形量)X′とを比較し、
X−X′<許容誤差p
であるかどうかを判断する。
X−X′<許容誤差p
であるかどうかを判断する。
なお、上記変位量は、変態塑性ひずみに対応している。
判断の結果、noであれば、K+ΔKを、仮定した変態塑性係数Kとして再度、演算装置21に与え、変位量Xを計算する。
その結果が許容誤差pを下回れば、次に経過時間t=t+Δtとして、変形が進行する試験片14について変態塑性係数Kを経時的に計算していく。
なお、変態塑性係数Kの値は基本的に材料によって一つに定まるものであるが、計算によって複数求められる場合にはそれらの平均をとってもよい。
このようにして演算装置21によって求められた変態塑性係数Kを用いれば、経過時間t毎の変態塑性ひずみεtrを計算により求めることができる。
したがって、本発明によれば、変態塑性ひずみ測定装置によって正確に求められた変態塑性係数Kに基づいて変態塑性ひずみを計算により求めることができるため、材料の強度評価や変形の予測を精度良く行なうことが可能になる。
1 変態塑性係数試験装置
2 加熱炉
2a 天板
2b 底板
3 冷却ダクト(冷却用ガス供給手段)
4 バルブ(冷却用ガス供給手段)
5 冷却用ガスタンク(冷却用ガス供給手段)
6 一軸方向試験用ジグ
7a,7b 水冷ノズル
8 バルブ
9a,9b 支持台
10a,10b 支点
11a,11b 可動プレート(荷重付与手段)
12 熱電対用ポート
13 データ収集装置
14 試験片
15 錘(荷重付与手段)
16 シャッター(荷重付与手段)
17,18 覗き窓
19,20 変位測定装置(変形量測定手段)
21 演算装置
22 入力装置
2 加熱炉
2a 天板
2b 底板
3 冷却ダクト(冷却用ガス供給手段)
4 バルブ(冷却用ガス供給手段)
5 冷却用ガスタンク(冷却用ガス供給手段)
6 一軸方向試験用ジグ
7a,7b 水冷ノズル
8 バルブ
9a,9b 支持台
10a,10b 支点
11a,11b 可動プレート(荷重付与手段)
12 熱電対用ポート
13 データ収集装置
14 試験片
15 錘(荷重付与手段)
16 シャッター(荷重付与手段)
17,18 覗き窓
19,20 変位測定装置(変形量測定手段)
21 演算装置
22 入力装置
Claims (6)
- 加熱炉と、
上記加熱炉内に配置された試験片と、
上記加熱炉内に冷却用ガスを供給し、その加熱炉で加熱された上記試験片を急冷する冷却用ガス供給手段と、
上記試験片の温度を測定する温度測定手段と、
冷却進行中の上記試験片に荷重を付与する荷重付与手段と、
冷却進行中の上記試験片の変形量を逐次測定する変形量測定手段とを備えてなることを特徴とする変態塑性係数試験装置。 - 上記試験片は二点で支持されるとともに、上記荷重付与手段として開閉動作する可動プレートを有し、この可動プレートは、開動作した際に、上記試験片の中央から錘を垂下させて上記試験片に負荷を与え、閉動作時にはその錘を支えて上記試験片を無負荷にするように構成されている請求項1記載の変態塑性係数試験装置。
- 上記冷却用ガス供給手段として、不活性ガスを貯溜する冷却用ガスタンクと、その冷却用ガスタンク内の不活性ガスを上記加熱炉内に導入する冷却ダクトとを有する請求項1記載の変態塑性係数試験装置。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の変態塑性係数試験装置によって測定された、急冷進行中の上記試験片の変形量および上記試験片の温度に基づいて変態塑性係数を計算する演算装置が上記変態塑性係数試験装置に付加されていることを特徴とする変態塑性係数試験装置。
- 試験片を加熱炉に配置して加熱し、
加熱後の上記試験片を冷却用ガスを用いて急冷し、
急冷進行中の上記試験片に荷重を付与し、
急冷進行中の上記試験片の変形量を逐次測定し、測定された上記試験片の変形量および上記試験片の温度に基づいて変態塑性係数を同定することを特徴とする変態塑性係数同定方法。 - 上記試験片の全歪εを下記式(1)によって定義し、
各ひずみεe,εp,εc,εTを一般的な構造解析により求め、
変態塑性ひずみεtrを下記式(2)によって定義し、
上記試験片急冷時に測定される全歪εからεtrを計算し、
計算で求められたεtrを上記式(2)に代入するとともに、ξ、σを既知数、変態塑性係数Kを未知数として変態塑性係数Kを同定する請求項5記載の変態塑性係数同定方法。
Priority Applications (1)
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- 2009-06-05 JP JP2009136008A patent/JP2010281719A/ja active Pending
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