JP2010280792A - インクジェット記録用水系インク - Google Patents

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Abstract

【課題】有機顔料を用いた印字濃度に優れたインクジェット記録用水分散体、該水分散体を含有する水系インク、及び該水分散体の製造方法を提供する。
【解決手段】〔1〕アニオン性有機顔料粒子とカチオン性ポリマーとを含む連鎖状粒子を含有し、該連鎖状粒子の全顔料に占める割合が10個数%以上である、インクジェット記録用水分散体、〔2〕前記水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク、及び〔3〕アニオン性有機顔料粒子、カチオン性ポリマー及び水を含有する混合液を調製した後、水を除去して粘稠物又は固形物を得る工程(I)、及び得られた粘稠物又は固形物と水を混合して水分散体を得る工程(II)を含むインクジェット記録用水分散体の製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用水系インクに関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を記録部材に直接吐出し、付着させて、文字や画像を得る記録方式である。この方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、記録部材として普通紙が使用可能、被印字物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。
最近では、印刷物に耐候性や耐水性を付与し、カラー印刷を行うために、着色剤として有機顔料を用いるインクが広く用いられている。
特許文献1には、OHPシート等への顔料の定着性改善を目的として、顔料、高分子分散剤、ポリエチレンイミン、及び水溶性溶剤を含む水系顔料インクが開示されている。
特許文献2には、普通紙印刷における彩度、濃度等の改善を目的として、顔料、アニオン性分散剤、ポリエチレンイミン等のカチオン性水溶性高分子化合物及び水性媒体からなる水性顔料インクが開示されている。
特許文献3には、画像彩度等の向上を目的として、分散顔料粒子が、該粒子の粒子径よりも小さい粒子径の顔料粒子と分散剤との凝集体よりなる顔料系インクジェット用インクが開示されている。
特許文献4には、顔料、水溶性樹脂、水溶性有機溶剤、及び水を含むインクジェット用記録液が開示されており、ブラック顔料インクにおいて、カーボン粒子が数珠状に繋がったハイストラクチャータイプのものが記載されている。
特許文献5には、印字濃度の向上を目的として、着色剤、及び複数の一次粒子が連結されてなる数珠状又は細長形状の金属酸化物二次粒子を含有するインクジェット水系インクが開示されている。
特開平10−60352号公報 特開2004−123865号公報 特開2004−149633号公報 特開2006−169325号公報 特開2008−38090号公報
インクジェット記録用水系インクの着色剤として有機顔料を用いた場合、染料を用いた場合に比べて印字濃度が不十分であるという問題がある。
本発明は、有機顔料を用いた印字濃度に優れたインクジェット記録用水分散体、該水分散体を含有する水系インク、及び該水分散体の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、顔料を用いたインクジェット記録用インクで十分な印字濃度が得られ難い原因は、顔料が微細粒子であるため紙へ浸透しやすいことにあると考えて検討を行った。その結果、アニオン性有機顔料粒子とカチオン性ポリマーとをイオン的相互作用により凝集させ、連鎖状に繋いだ粒子として用いることにより、紙表面でのインクの浸透を抑制し、印字濃度を向上できることを見出した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔3〕を提供する。
〔1〕アニオン性有機顔料粒子とカチオン性ポリマーとを含む連鎖状粒子を含有し、該連鎖状粒子を構成する顔料一次粒子の全顔料一次粒子に占める割合が10個数%以上である、インクジェット記録用水分散体。
〔2〕前記〔1〕の水分散体を含有するインクジェット記録用水系インク。
〔3〕下記工程(I)及び(II)を含む前記〔1〕のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
工程(I):アニオン性有機顔料粒子、カチオン性ポリマー及び水を含有する混合液を調製した後、水を除去して粘稠物又は固形物を得る工程
工程(II):工程(I)で得られた粘稠物又は固形物と水を混合して水分散体(A)を得る工程
本発明のインクジェット記録用水分散体及びそれを含有する水系インクは、印字濃度に優れている。
調製例1で得られた有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。 実施例1で得られた連鎖状粒子のTEM写真である。 実施例1で得られた連鎖状粒子の1つを拡大したTEM写真である。 比較例1で得られた有機顔料粒子のTEM写真である。 比較例2で得られた有機顔料粒子のTEM写真である。
本発明のインクジェット記録用水分散体は、アニオン性有機顔料粒子とカチオン性ポリマーとを含む連鎖状粒子を含有し、該連鎖状粒子の全顔料に占める割合が10個数%以上であることを特徴とする。
以下、本発明に用いられる各成分について説明する。
[アニオン性有機顔料粒子]
本発明の連鎖状粒子を含有するインクジェット記録用水分散体においては、着色剤成分として、アニオン性有機顔料粒子を用いる。
アニオン性有機顔料粒子は、有機顔料に分散処理等を施すことによって、所望の粒径としたものである。
ここで、「アニオン性」とは、未中和の物質を、純水に分散又は溶解させた場合、pHが7未満となること、又は物質が純水に不溶であり、pHが明確に測定できない場合には、純水に分散させた分散体のゼータ電位が負となることをいう。
アニオン性有機顔料粒子の平均粒径は、印字濃度の観点から、40〜200nmが好ましく、50〜150nmがより好ましく、60〜100nmが更に好ましい。
アニオン性有機顔料粒子の平均粒径は、動的光散乱法で測定されるものであり、具体的には実施例の方法によって測定される。
(有機顔料)
アニオン性有機顔料粒子に用いられる有機顔料は、特に制限されない。
有機顔料は、水系インクに使用する場合には、界面活性剤、ポリマー等を用いて、インク中で安定な微粒子にすることが好ましい。特に、分散安定性、耐水性等の観点から、有機顔料をポリマーの粒子中に含有させることが好ましい。
有機顔料の具体例としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
色相は特に限定されず、赤色、黄色、青色、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンからなる群から選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。これらの中でも発色性の観点から、キナクリドン系顔料が好ましい。
また、キナクリドン固溶体顔料等の固溶体顔料も好適に用いることができる。キナクリドン固溶体顔料は、β型、γ型等の無置換キナクリドンと、2,9−ジメチルキナクリドン(C.I.ピグメント・レッド122)、又はβ型、γ型等の無置換キナクリドンと2,9−ジクロロキナクリドン、3,10−ジクロロキナクリドン、4,11−ジクロロキナクリドン等のジクロロキナクリドンからなる。キナクリドン固溶体顔料としては、無置換キナクリドン(C.I.ピグメント・バイオレット19)と2,9−ジクロロキナクリドン(C.I.ピグメント・レッド202)との組合せからなる固溶体顔料が好ましい。
本発明においては、自己分散型有機顔料を用いることもできる。自己分散型有機顔料とは、親水性官能基(カルボキシ基やスルホン酸基等のアニオン性親水基、又は第4級アンモニウム基等のカチオン性親水基)の1種以上を直接又は他の原子団を介して有機顔料の表面に結合することで、界面活性剤や樹脂を用いることなく水系媒体に分散可能である有機顔料を意味する。ここで、「他の原子団」としては、炭素数1〜12のアルカンジイル基、フェニレン基又はナフチレン基等が挙げられる。アニオン性顔料粒子に用いる場合には、親水性官能基が、カルボキシ基やスルホン酸基等のアニオン性親水基であることが好ましい。有機顔料を自己分散型有機顔料とするには、例えば、親水性官能基の必要量を、常法のより有機顔料表面に化学結合させればよい。
親水性官能基の量は特に限定されないが、自己分散型有機顔料1g当たり100〜3,000μmolが好ましく、親水性官能基がカルボキシ基の場合は、自己分散型有機顔料1g当たり200〜700μmolが好ましい。
上記の有機顔料は、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
[有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子]
アニオン性有機顔料粒子としては、特に制限はないが、自己分散型有機顔料、及び有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子が好ましく、有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子がより好ましい。
(アニオン性ポリマー)
有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子に用いられるアニオン性ポリマーとしては、水分散体及びインクの印字濃度向上の観点から、水不溶性ポリマーであることが好ましい。ここで、「水不溶性ポリマー」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10g以下であるポリマーをいい、その溶解量は好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。アニオン性ポリマーの場合、溶解量は、ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
用いられるポリマーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ビニル系ポリマー等が挙げられるが、水分散体及びインクの保存安定性の観点から、ビニル単量体(ビニル化合物、ビニリデン化合物、ビニレン化合物)の付加重合により得られるビニル系ポリマーが好ましい。
アニオン性ビニル系ポリマーとしては、(a)アニオン性モノマー(以下「(a)成分」ともいう)と、(b)マクロマー(以下「(b)成分」ともいう)及び/又は(c)疎水性モノマー(以下「(c)成分」ともいう)とを含むモノマー混合物(以下、単に「モノマー混合物」ともいう)を共重合させてなるビニル系ポリマーが好ましい。このビニル系ポリマーは、(a)成分由来の構成単位と、(b)成分由来の構成単位及び/又は(c)成分由来の構成単位を有する。なかでも(a)成分由来の構成単位、(b)成分由来の構成単位、(c)成分由来の構成単位を全て含有するものが好ましい。
〔(a)アニオン性モノマー〕
(a)アニオン性モノマーは、有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子を水分散体及びインク中で安定に分散させる観点、及びカチオン性ポリマーとのイオン的相互作用を促進させる観点から、アニオン性ポリマーのモノマー成分として用いられる。
アニオン性モノマーとしては、カルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー、リン酸モノマー等が挙げられる。
カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。
リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記アニオン性モノマーの中では、アニオン性ポリマー粒子及び得られる連鎖状粒子の水分散体及びインク中での分散安定性の観点から、カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。
〔(b)マクロマー〕
(b)マクロマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500〜100,000の化合物であり、アニオン性ポリマー粒子及び得られる連鎖状粒子の水分散体及びインク中での保存安定性の観点から、アニオン性ポリマーのモノマー成分として用いられる。片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
(b)マクロマーの数平均分子量は500〜100,000が好ましく、1,000〜10,000がより好ましい。なお、数平均分子量は、溶媒として1mmol/Lのドデシルジメチルアミンを含有するクロロホルムを用いたゲルクロマトグラフィー法により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定される。
(b)マクロマーとしては、アニオン性ポリマー粒子及び連鎖状粒子の水分散体及びインク中での分散安定性の観点から、スチレン系マクロマー、芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマー及びシリコーン系マクロマーが好ましい。
スチレン系マクロマーとしては、スチレン系モノマー単独重合体、又はスチレン系モノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。共重合体の場合、アニオン性ポリマー粒子及び連鎖状粒子の水分散体及びインク中での分散安定性の観点から、スチレン系モノマーの含有量は50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。スチレン系モノマーとしては、スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン等が挙げられる。共重合される他のモノマーとしては、芳香族基含有(メタ)アクリレート又はアクリロニトリル等が挙げられる。スチレン系マクロマーの具体例としては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
芳香族基含有(メタ)アクリレート系マクロマーとしては、芳香族基含有(メタ)アクリレートの単独重合体又はそれと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。共重合体の場合、アニオン性ポリマー粒子及び連鎖状粒子の水分散体及びインク中での分散安定性の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレート系モノマーの含有量は50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましい。
芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい炭素数7〜22のアリールアルキル基、又はヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい炭素数6〜22のアリール基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。その具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート等が挙げられ、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。共重合される他のモノマーとしては、スチレン系モノマー又はアクリロニトリル等が挙げられる。
(b)マクロマーはシリコーン系マクロマーであってもよく、シリコーン系マクロマーとしては、片末端に重合性官能基を有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
〔(c)疎水性モノマー〕
(c)疎水性モノマーは、水分散体及びインクの印字濃度の向上の観点から、アニオン性ポリマーのモノマー成分として用いられる。疎水性モノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、(イソ)プロピル(メタ)アクリレート、(イソ又はターシャリー)ブチル(メタ)アクリレート、(イソ)アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、(イソ)ドデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの基が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの基が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及び/又はメタクリレートを示す。
芳香族基含有モノマーとしては、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6〜22の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレートがより好ましく、これらを併用することも好ましい。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、2−メチルスチレン、及びジビニルベンゼンが好ましく、スチレンがより好ましい。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
〔(d)ノニオン性モノマー〕
モノマー混合物には、更に、(d)ノニオン性モノマー(以下「(d)成分」ともいう)が含有されていてもよい。
(d)成分としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(n=1〜15)・プロピレングリコール(n=1〜15))(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート2−エチルヘキシルエーテル、(イソ)プロポキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(1〜30)(メタ)アクリレート、メトキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(1〜30、その中のエチレングリコール:1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
商業的に入手しうる(d)成分の具体例としては、新中村化学工業株式会社のNKエステルM−20G、同40G、同90G、同230G、日油株式会社のブレンマーPE−90、同200、同350、PME−100、同200、同400、同1000、PP−500、同800、同1000、AP−150、同400、同550、同800、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE−600B等が挙げられる。
上記(a)〜(d)成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
ビニル系ポリマー製造時における、上記(a)〜(c)成分のモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)又はビニル系ポリマー中における(a)〜(c)成分に由来する構成単位の含有量は、次のとおりである。
(a)成分の含有量は、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子及び得られる連鎖状粒子を水分散体及びインク中で安定に分散させ、アニオン性ポリマー粒子とカチオン性ポリマーを効果的に反応させる観点から、好ましくは3〜40重量%、より好ましくは4〜30重量%、特に好ましくは5〜25重量%である。
(b)成分の含有量は、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子及び得られる連鎖状粒子の水分散体及びインク中での分散安定性の観点から、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
(c)成分の含有量は、水分散体及びインクの印字濃度向上の観点から、好ましくは5〜98重量%、より好ましくは10〜80重量%である。
また、〔(a)成分/[(b)成分+(c)成分]〕の重量比は、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子及び得られる連鎖状粒子の水分散体及びインク中での分散安定性及び水分散体及びインクの印字濃度の観点から、好ましくは0.01〜1、より好ましくは0.02〜0.67、更に好ましくは0.03〜0.50である。
(アニオン性ポリマーの製造)
前記アニオン性ポリマーは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により、モノマー混合物を共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒としては、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ジベンゾイルオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モル(各モノマーの合計モル量の1モル)あたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合の際には、さらに、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の重合連鎖移動剤を添加してもよい。
モノマー混合物の重合条件は、使用するラジカル重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、重合温度は、好ましくは30〜100℃、より好ましくは50〜80℃であり、重合時間は、好ましくは1〜20時間である。また、重合雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
本発明で用いられるアニオン性ポリマーの重量平均分子量は、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子及び得られる連鎖状粒子の水分散体及びインク中での分散安定性と、水分散体及びインクの印字濃度の観点から、5,000〜50万が好ましく、1万〜40万がより好ましく、1万〜30万がより好ましく、2万〜20万が更に好ましい。なお、ポリマーの重量平均分子量は、実施例で示す方法により測定した。
本発明で用いられる顔料を含有するアニオン性ポリマーは、(a)アニオン性モノマー由来のアニオン性基を中和剤により中和して用いることが好ましい。中和剤としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、各種アミン等の塩基が挙げられる。
アニオン性ポリマーのアニオン性基の中和度は、分散安定性の観点から、10〜300%であることが好ましく、20〜200%がより好ましく、30〜150%が更に好ましい。
アニオン性ポリマーを架橋させる場合は、架橋前のポリマーのアニオン性基の中和度は、分散安定性と架橋効率の観点から、10〜90%であることが好ましく、20〜80%がより好ましく、30〜70%が更に好ましい。
ここで中和度は、下記式によって求めることができる。
{[中和剤の重量(g)/中和剤の当量]/[ポリマーの酸価(KOHmg/g)×ポリマーの重量(g)/(56×1000)]}×100
酸価は、ポリマーの構成単位から、計算で算出することができる。又は、適当な溶剤(例えばメチルエチルケトン)にポリマーを溶解して、滴定する方法でも求めることができる。
[有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の製造]
有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体は、下記の工程(1)及び(2)を有する方法により、効率的に製造することができる。
工程(1):アニオン性ポリマー、有機溶媒、有機顔料、及び水を含有する混合物を分散処理して、有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の分散体を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた分散体から前記有機溶媒を除去して、有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体を得る工程
工程(1)
工程(1)では、まず、アニオン性ポリマーを有機溶媒に溶解させ、次に有機顔料、水、及び必要に応じて中和剤、界面活性剤等を、得られた有機溶媒溶液に加えて混合し、水中油型の分散体を得る方法が好ましい。アニオン性ポリマーの有機溶媒溶液に加える順序に制限はないが、中和剤、水、有機顔料の順に加えることが好ましい。
混合物中、有機顔料は、5〜50重量%が好ましく、10〜40重量%が更に好ましく、有機溶媒は、10〜70重量%が好ましく、10〜50重量%が更に好ましく、アニオン性ポリマーは、2〜40重量%が好ましく、3〜20重量%が更に好ましく、水は、10〜70重量%が好ましく、20〜70重量%が更に好ましい。
前記アニオン性ポリマーの量に対する有機顔料の量の重量比〔有機顔料/アニオン性ポリマー〕は、分散安定性の観点から、50/50〜90/10であることが好ましく、70/30〜85/15であることがより好ましい。
中和剤を用いて中和する場合、最終的に得られる水分散体のpHが7〜11であるように中和することが好ましい。中和剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、各種アミン等の塩基が挙げられる。また、アニオン性ポリマーを予め中和しておいてもよい。
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶媒及びジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
該有機溶媒の水100gに対する溶解量は、20℃において、好ましくは5g以上、更に好ましくは10g以上であり、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンが好ましい。
工程(1)における混合物の分散方法に特に制限はない。本分散だけで顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは予備分散させた後、さらに剪断応力を加えて本分散を行い、顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。工程(1)の分散における温度は、0〜40℃が好ましく、5〜30℃がより好ましく、分散時間は1〜30時間が好ましく、2〜25時間がより好ましい。
混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置、具体例としては、ウルトラディスパー、デスパミル(浅田鉄工株式会社、商品名)、マイルダー(株式会社荏原製作所、太平洋機工株式会社、商品名)、TKホモミクサー、TKパイプラインミクサー、TKホモジェッター、TKホモミックラインフロー、フィルミックス(以上、プライミクス株式会社、商品名)等の高速撹拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー、エクストルーダ等の混練機、高圧ホモゲナイザー(株式会社イズミフードマシナリ、商品名)に代表されるホモバルブ式の高圧ホモジナイザー、マイクロフルイダイザー(Microfluidics 社、商品名)、ナノマイザー(吉田機械興業株式会社、商品名)、アルティマイザー、スターバースト(スギノマシン株式会社、商品名)等のチャンバー式の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製、商品名)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製、商品名)、ダイノーミル(シンマルエンタープライゼス社製、商品名)等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子を小粒子径化する観点から、メディア式分散機と高圧ホモジナイザーを併用することが好ましい。
工程(2)
工程(2)では、得られた分散体から、公知の方法で有機溶媒を留去することで、有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体を得ることができる。得られた顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子を含む水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよく、架橋工程を後に行う場合は、必要により架橋後に再除去すればよい。残留有機溶媒の量は0.1重量%以下が好ましく、0.01重量%以下であることがより好ましい。
また必要に応じて、有機溶媒を留去する前に分散体を加熱撹拌処理することもできる。
得られた有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体は、有機顔料を含有する該ポリマーの固体分が水を主媒体とする中に分散しているものである。ここで、ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも有機顔料とアニオン性ポリマーにより粒子が形成されていればよい。例えば、該ポリマーに有機顔料が内包された粒子形態、該ポリマー中に有機顔料が均一に分散された粒子形態、該ポリマー粒子表面に有機顔料が露出された粒子形態等が含まれ、これらの混合物も含まれる。
[カチオン性ポリマー]
本発明のインクジェット記録用水分散体においては、印字濃度向上の観点から、前記アニオン性有機顔料粒子とカチオン性ポリマーとを含む連鎖状粒子を用いる。
ここで、カチオン性ポリマーの「カチオン性」とは、未中和のポリマーを純水に分散又は溶解させた場合、pHが7より大となること、第4級アンモニウム塩等を有するポリマーの場合はその対イオンを水酸化物イオンとして純水に分散又は溶解させた場合、pHが7より大となること、又はポリマー等が純水に不溶であり、pHが明確に測定できない場合には、純水に分散させた分散体のゼータ電位が正となることをいう。
カチオン性ポリマーとしては、第1〜第3級アミノ基、第4アンモニウム塩基、ヒドラジン等のカチオン性基を有するポリマーが好ましく、該ポリマーは、カチオン性基を有するモノマーの単独重合体やその他のモノマーとの共重合体又は縮重合体であることが好ましい。
また、カチオン性ポリマーは、有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子と効率的に相互作用を生じさせ、水分散体又はインクの印字濃度を向上させる観点から、水溶性であるものが好ましい。ここで、「水溶性ポリマー」とは、カチオン性ポリマーを105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が10gを超えるポリマーをいい、その溶解量は好ましくは20g以上、より好ましくは100g以上である。
カチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリエチレンイミン−エピクロルヒドリン反応物、ポリアミド−ポリアミン樹脂、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂、キトサン、カチオン化デンプン、ポリアミンスルフォン、ポリビニルイミダゾール、ポリアミジン、ジシアンアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン重縮合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合体、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物又はそれらの酸中和物等が挙げられる。
カチオン性ポリマーとしては、水分散体又はインクの印字濃度を向上させる観点から、アミノ基を有するポリマーであることが好ましい。
アミノ基を有するカチオン性ポリマーの好適例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン等が挙げられ、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンがより好ましく、ポリエチレンイミンが更に好ましい。
前記カチオン性ポリマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
(ポリエチレンイミン)
ポリエチレンイミンは、−(CH2CH2NH)n−で表され、エチレンイミン単位が直鎖状、分岐状又は網目状に重合した水溶性高分子化合物である。ポリエチレンイミンは、水分散体中でポリカチオンとして存在し、水分散体のpHを7〜9に調整すると、有機顔料を含有するポリマー粒子のアニオン性基と相互作用し、複数のポリマー粒子同士のイオン的相互作用による凝集を促進し、紙表面でのインクの浸透を抑制するため、印字濃度を向上させるものと考えられる。更にポリカチオンであることから、ポリマー粒子表面への吸着性が高く、水分散体又はインク中で溶解しているものが少なくなると考えられる。そのため、水分散体又はインクの分散安定性が高く、濾過性及び保存安定性にも優れると考えられる。
ポリエチレンイミンの沸点上昇法で求められる数平均分子量は、300〜100,000が好ましく、400〜70,000がより好ましく、500〜30,000が更に好ましい。数平均分子量が300以上であると印刷紙面上への顔料の定着性が向上し、印字濃度の向上効果が高くなり、100,000以下であれば、水分散体又はインクの粘度が低く、分散安定性に優れるものとなる。
ポリエチレンイミンの製法は特に制限されず、公知の重合法により製造することができる。例えば、〔1〕エチレンイミンを二酸化炭素、塩酸、臭化水素酸等を触媒として開環重合させる方法、〔2〕塩化エチレンとエチレンジアミンを重縮合させる方法、〔3〕オキサゾリドン−2を加熱する方法等が挙げられる。
ポリエチレンイミンは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
水分散体中のカチオン性ポリマー、特にポリエチレンイミンの含有量は、インクの基本物性と印字濃度向上のバランスの観点から、アニオン性有機顔料粒子に対して、好ましくは0.01〜3重量%、より好ましくは0.05〜2重量%、更に好ましくは0.1〜1重量%である。
[連鎖状粒子]
本発明に用いられる連鎖状粒子は、アニオン性有機顔料粒子とカチオン性ポリマーとを含むものであるが、アニオン性有機顔料粒子間にカチオン性ポリマーが電気的に相互作用し、アニオン性有機顔料の粒子同士がカチオン性ポリマーで連結されて構成されていると考えられる。
該連鎖状粒子を用いた水分散体及びインクの印字濃度が優れる理由は定かではないが、有機顔料粒子や塊状に凝集した粒子であれば、インク液滴が紙上に着弾した後に、紙の繊維の間にインク溶媒とともに浸透してしまい印字濃度が低くなるが、連鎖状粒子では、紙繊維間への物理的な抵抗が大きくなり、紙表面に有機顔料を残留させやすいためと考えられる。
連鎖状粒子の形状は透過型電子顕微鏡(TEM)で確認することができる。なお、有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子をTEM観察した場合、ポリマーは見えにくいため、実質的に有機顔料だけを観察することになる。
ここで、「連鎖状粒子」としては、直鎖状、屈曲状、分枝鎖状、環状等に顔料一次粒子が連なったものが挙げられる。より具体的には、本発明に用いられる連鎖状粒子は、下記式(I)で算出される二次粒子の面積占有率が40%未満のものをいう。
すなわち、TEM写真中の1つの独立した二次粒子に外接円を描き、その円の面積をA0(nm2)とする。次に、二次粒子を構成する顔料一次粒子(TEM写真で四角に見える一つひとつの粒子)の一つずつの面積を合計した総面積をA1(nm2)とする。そうすると、外接円の中の二次粒子が占める部分の比率、いわゆる面積占有率は下記式(I)で表される。
二次粒子の面積占有率(%)=(A1/A0)×100 (I)
前記の二次粒子の形状が直鎖状の場合、上記外接円の中の面積占有率は最小となり、塊状の場合、上記外接円の中の面積占有率は最大となる。
アニオン性有機顔料粒子をカチオン性ポリマーで連結した二次粒子の中には、前記の連鎖状粒子が含まれるが、連結の度合には分布があるため、通常、連鎖形状が非常に発達した連鎖状粒子から、顔料一次粒子の形状を保つものまでが含まれる。
前記連鎖状粒子を構成する顔料一次粒子の全顔料一次粒子に占める割合(個数%)は、印字濃度向上の観点から、本発明の水分散体に含まれる顔料粒子のうち、10個数%以上であり、好ましくは20個数%以上、より好ましくは30個数%以上、更に好ましくは50個数%以上である。
連鎖状粒子の割合(個数%)を測定するには、電子顕微鏡観察下、まず100個以上の二次粒子を構成する顔料一次粒子の数を計測し、これをN0(個)とする。その中で、連鎖状粒子を構成している顔料一次粒子の個数を数え、これをN1(個)とすると、連鎖状粒子の割合(個数%)は下記式(II)で表される。
連鎖状粒子の割合(個数%)=(N1/N0)×100 (II)
該連鎖状粒子の平均粒径は、印字濃度向上の観点から、好ましくは70〜400nm、より好ましくは90〜300nm、更に好ましくは120〜250nm、更に好ましくは150〜200nmである。
アニオン性有機顔料粒子の平均粒径に対する前記連鎖状粒子を含有する水分散体中の粒子の平均粒径の比(連鎖状粒子を含有する水分散体中の粒子の平均粒径/アニオン性有機顔料粒子の平均粒径)は好ましくは1.5〜5.0、より好ましくは1.5〜4.0、更に好ましくは1.5〜3.0である。
ここで、連鎖状粒子を含有する水分散体中の粒子の平均粒径は、連鎖状粒子の他の形状の二次粒子等を含む粒子全体の平均粒径となる。
前記平均粒径は、動的光散乱法で測定されるものであり、具体的には実施例の方法によって測定される。
[インクジェット記録用水分散体の製造]
本発明のインクジェット記録用水分散体の製造方法には制限はないが、下記工程(I)及び(II)を含む製造方法によって得ることが好ましい。
工程(I):アニオン性有機顔料粒子、カチオン性ポリマー及び水を含有する混合液を調製した後、水を除去して粘稠物又は固形物を得る工程
工程(II):工程(I)で得られた粘稠物又は固形物と水を混合して水分散体(A)を得る工程
本発明のインクジェット記録用水分散体は、更に下記工程(III)を含む方法によって得ることがより好ましい。
工程(III):工程(II)で得られた水分散体(A)と架橋剤を混合し、架橋処理して水分散体(B)を得る工程
(工程(I))
工程(I)では、前記製造法等で得られたアニオン性有機顔料粒子、特に有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子と、カチオン性ポリマー及び水を含有する混合液を調製した後、水を除去して粘稠物又は固形物を得る。
ここで、「粘稠物」とは、泥状、粘稠状である状態の物をいい、「固形物」とは、25℃において流動性がない塊状等の物をいう。
工程(I)において、アニオン性有機顔料粒子、カチオン性ポリマー及び水を含有する混合液を調製する方法としては、(i)アニオン性有機顔料粒子の水分散体に、カチオン性ポリマー又はカチオン性ポリマーの水溶液を添加する方法、(ii)カチオン性ポリマー又はカチオン性ポリマーの水溶液に、アニオン性有機顔料粒子の水分散体を添加する方法、(iii)アニオン性有機顔料粒子の水分散体にカチオン性ポリマーを加え、更にアニオン性有機顔料粒子の水分散体を加える方法等が挙げられ、それぞれ複数回にわけて添加することができる。これらの中では、前記(iii)の方法が好ましい。
また、本工程において用いられる、カチオン性ポリマーに対するアニオン性有機顔料粒子の重量比〔アニオン性有機顔料粒子/カチオン性ポリマー〕は、水分散体の印字濃度を高める観点から、好ましくは40〜5000、より好ましくは80〜2000、更に好ましくは100〜1000である。
水分を除去する方法としては、減圧法、加熱法等により水分を蒸発させる方法が挙げられるが、加熱法が好ましい。加熱温度としては、50〜100℃が好ましく、60〜90℃がより好ましく、70〜85℃が更に好ましい。
蒸発は粘稠物又は固形物になるまで行なうが、工程(II)における分散処理によって均一な粒径を得る観点から、粘稠物とすることが好ましい。粘稠物又は固形物の固形分濃度は、40〜90重量%が好ましく、45〜80重量%がより好ましく、50〜70重量%が更に好ましい。
(工程(II))
工程(II)では、工程(I)で得られた粘稠物又は固形物と水を混合して水分散体(A)を得る。
また、本工程で混合される水の量は、混合の効率を高め、均一な水分散体を得る観点から、工程(I)で得られた粘稠物又は固形物に対する重量比〔水/工程(I)で得られた粘稠物又は固形物〕で、好ましくは0.5〜45、より好ましくは1〜25、更に好ましくは2〜15である。
工程(II)における混合方法に特に制限はなく、粘稠物又は固形物に水を添加するのみでもよいが、均一な粒径を得るために、有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の製造工程(1)で用いた混合、分散方法や、超音波分散機、攪拌羽を備えたスリーワンモーター、マグネチックスターラー等の攪拌機を用いる方法等を採用することができる。
この工程(II)で得られる水分散体(A)は連鎖状粒子を含む水分散体である。この連鎖状粒子を含む水分散体(A)、及び該水分散体(A)を含有する水系インクは、印字濃度に優れたものである。
(工程(III))
工程(III)は、任意の工程であるが、工程(II)で得られた水分散体(A)と架橋剤を混合し、架橋処理して水分散体(B)を得る工程である。工程(III)を行うことが、水分散体及びインクの保存安定性の観点から好ましい。
ここで、架橋剤としては、アニオン性ポリマーのアニオン性基と反応する官能基を有する化合物が好ましく、該官能基を分子中に2以上、好ましくは2〜6有する化合物がより好ましい。
また、架橋剤の溶解量は、ポリマー、特に水不溶性ポリマーの表面を効率よく架橋する観点から、25℃の水100gに溶解させたときの溶解量が、好ましくは50g以下、より好ましくは40g以下、更に好ましくは30g以下である。また、その分子量は、反応のし易さ及び水分散体の保存安定性の観点から、好ましくは120〜2000、より好ましくは150〜1500、更に好ましくは150〜1000である。
(架橋剤)
架橋剤の好適例としては、次の(a)〜(c)が挙げられる。
(a)分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物:例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル。
(b)分子中に2以上のオキサゾリン基を有する化合物:例えば、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、1,3−フェニレンビスオキサゾリン、1,3−ベンゾビスオキサゾリン等のビスオキサゾリン化合物、該化合物と多塩基性カルボン酸とを反応させて得られる末端オキサゾリン基を有する化合物。
(c)分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物:例えば、有機ポリイソシアネート又はイソシアネート基末端プレポリマー。
これらの中では、(a)分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルがより好ましい。
架橋剤の使用量は、水分散体及びインクの保存安定性の観点から、〔架橋剤/アニオン性ポリマー〕の重量比で0.3/100〜50/100が好ましく、1/100〜40/100がより好ましく、2/100〜30/100が更に好ましく、5/100〜25/100が特に好ましい。
また、架橋剤の使用量は、該アニオン性ポリマー1g当たりのアニオン性基量換算で、該ポリマーのアニオン性基0.1〜20mmolと反応する量であることが好ましく、0.5〜15mmolと反応する量であることがより好ましく、1〜10mmolと反応する量であることが更に好ましい。
架橋処理して得られた架橋ポリマーは、架橋ポリマー1g当たり、塩基で中和されたアニオン性基(特に好ましくはカルボキシ基)を0.5mmol以上含有することが好ましい。かかる架橋ポリマー中の塩基で中和されたアニオン性基は、水分散体中で解離して、アニオン同士の電荷反発により、有機顔料を含有する架橋ポリマー粒子の安定性に寄与すると考えられる。
ここで、下記式から求められる架橋ポリマーの架橋率(モル%)は、好ましくは10〜80モル%、より好ましくは20〜70モル%、更に好ましくは30〜60モル%である。架橋率は、架橋剤の使用量と反応性基のモル数、ポリマーの使用量と架橋剤の反応性基と反応できるポリマーの反応性基のモル数から、下記式(III)により算出することができる。
架橋率(モル%)=[架橋剤の反応性基のモル数×100/ポリマーが有する架橋剤と反応できる反応性基のモル数] (III)
上記式(III)において、「架橋剤の反応性基のモル数」とは、使用する架橋剤の重量を反応性基の当量で除した値である。即ち、使用する架橋剤のモル数に架橋剤1分子中の反応性基の数を乗じたものである。
[インクジェット記録用水分散体]
上記の製造方法により得られる本発明の水分散体は、アニオン性有機顔料粒子、特に有機顔料を含有するアニオン性(架橋)ポリマー粒子とカチオン性ポリマーとを含む連鎖状粒子の固体分が水を主媒体とする中に分散しているものである。本発明の水分散体には、乾燥防止のために、保湿剤、有機溶媒を添加することができ、そのまま水系インクとして用いることもできる。
本発明の水分散体中の各成分の含有量は、下記のとおりである。
本発明の水分散体に用いられるアニオン性有機顔料粒子に含まれる有機顔料の含有量は、水分散体の印字濃度を高める観点から、水分散体中で、好ましくは2〜35重量%、より好ましくは3〜30重量%、更に好ましくは5〜25重量%である。
また、カチオン性ポリマーに対するアニオン性有機顔料粒子の重量比〔アニオン性有機顔料粒子/カチオン性ポリマー〕は、水分散体の印字濃度を高める観点から、好ましくは40〜5000、より好ましくは80〜2000、更に好ましくは100〜1000である。
水の含有量は、好ましくは20〜90重量%,より好ましくは30〜80重量%、更に好ましくは40〜70重量%である。
本発明の水分散体の好ましい表面張力(20℃)は、30〜70mN/m、より好ましくは35〜65mN/mである。
本発明の水分散体の20重量%(固形分)の粘度(20℃)は、好ましくは1〜12mPa・s、より好ましくは1〜9mPa・s、より好ましくは2〜6mPa・s、更に好ましくは2〜5mPa・sである。
[インクジェット記録用水系インク]
本発明のインクジェット記録用水系インクは、本発明の水分散体を含有するものであるが、水系インクに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、分散剤、界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等を添加することができる。
本発明の水系インク中の各成分の含有量は、下記のとおりである。
本発明の水系インクに用いられるアニオン性有機顔料粒子に含まれる有機顔料の含有量は、水系インクの印字濃度を高める観点から、水系インク中で、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは2〜20重量%、より好ましくは4〜15重量%、更に好ましくは5〜12重量である。
水の含有量は、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%、更に好ましくは40〜70重量%である。
本発明の水系インクの好ましい表面張力(20℃)は、23〜50mN/m、より好ましくは23〜45mN/m、更に好ましくは25〜40mN/mである。
本発明の水系インクの粘度(20℃)は、良好な吐出信頼性を維持するために、好ましくは2〜20mPa・sであり、より好ましくは2.5〜16mPa・s、更に好ましくは2.5〜12mPa・sである。
本発明の水系インクを適用するインクジェットの方式は制限されないが、ピエゾ方式のインクジェットプリンターに特に好適である。
以下の調製例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「重量部」及び「重量%」である。なお、ポリマーの重量平均分子量、平均粒径、二次粒子の面積占有率(%)、連鎖状粒子の割合(個数%)の測定は、以下の方法により行い、水系インクについて、以下の印刷方法により印刷して印字濃度を評価した。
(1)アニオン性ポリマーの重量平均分子量の測定
N,N−ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶媒として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
(2)有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の平均粒径、及び連鎖状粒子等の二次粒子を含有する水分散体の平均粒径の測定
大塚電子株式会社のレーザー粒子解析システムELS−8000(キュムラント解析)を用いて測定した。測定する粒子の濃度を、約5×10-3重量%となるよう水で希釈した分散液を用いた。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度90°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。
(3)二次粒子の面積占有率(%)、連鎖状粒子の割合(個数%)の測定
実施例で得られた水分散体にイオン交換水を加え、有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の固形分濃度を0.01%に調整し、コロジオン支持膜(応研商事株式会社製、グリッドピッチ150μm)上に展開して乾燥させた後、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製、「JEM−2100型」、加速電圧80KV使用)を用いてTEM写真を撮影した。
二次元画像解析ソフトウェアWinROOF(三谷商事株式会社製)を用いて、得られたTEM写真中の1つの独立した二次粒子に外接円を描き、その円の面積をA0(nm2)とする。次に、二次粒子を構成する一次粒子(TEM写真で四角に見える一つひとつの粒子)の一つずつの面積に近似して描画した楕円の面積を合計した総面積をA1(nm2)とする。ここで求められたA0及びA1から二次粒子の面積占有率(%)〔=(A1/A0)×100〕を求めた。
また、同じソフトウェアを用い、100〜150個の顔料一次粒子の数を計測してN0(個)とし、連鎖状粒子を構成する顔料一次粒子の数をN1(個)として、連鎖状粒子の割合(個数%)〔=(N1/N0)×100〕を求めた。
(4)印刷方法
インクを、シリコンチューブを介して、インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、型番:EM−930C、ピエゾ方式)のブラックヘッド上部のインク注入口に充填する。次いで、フォトショップ(アドビ社製、商品名)によりベタ印字の印刷パターン(横204mm×縦275mmの大きさ)を作成し、ベタのDutyを変化させて試し印字〔印字条件=用紙種類:普通紙、モード設定:ブラック、ファイン、双方向〕を行い、実際の吐出量が0.75±0.01mg/cm2となるようにDutyを調整した。吐出量は、インクが入ったスクリュー管の重量変化を測定した。調整したDutyのベタ画像を用い、市販の普通紙(商品名:XEROX4200、XEROX社製、上質普通紙)に印字を行った。
(5)印字濃度の測定
印字物を25℃湿度50%で24時間放置後、印字面の印字濃度を測定した。印字濃度の測定にはマクベス濃度計(グレタグマクベス社製、品番:RD914)を用い、測定条件は、観測光源を D65とし、観測視野を2度とし、濃度基準を DIN16536とし、マゼンタの色濃度成分の数値を読み取った。測定回数は、測定する場所を変え、双方向印字の往路において印字された部分から5点、復路において印字された部分から5点をランダムに選び、合計10点の平均値を求めた。
調製例1(有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体の調製)
(1)アニオン性ポリマーの合成
ベンジルメタクリレート58部、メタクリル酸42部、スチレン20部、スチレンマクロマー(東亞合成株式会社製、商品名:AS−6S)(固形分50%)40部、ポリエチレングリコールメタクリレート(日油株式会社、商品名:ブレンマーPP−800)30部、フェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)メタクリレート(日油株式会社、商品名:ブレンマー43PAPE−600B)30部を混合し、モノマー混合液を調製した。
反応容器内に、メチルエチルケトン18部及び重合連鎖移動剤(2−メルカプトエタノール)0.03部、前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、モノマー混合液の残りの90%と前記重合連鎖移動剤0.27部、メチルエチルケトン42部、及び重合開始剤(和光純薬工業株式会社製、商品名:V−65、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル))1.2部を入れて混合した混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了から75℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.3部をメチルエチルケトン5部に溶解した溶液を加え、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、ポリマー溶液(ポリマーの重量平均分子量:100000)を得た。
(2)有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体の調製
上記(1)で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られたポリマー45部をメチルエチルケトン300部に溶かし、その中に中和剤として5N水酸化ナトリウム水溶液10.2部と25%アンモニア水12.2部、及びイオン交換水1150部を加え、更にマゼンタ顔料(無置換キナクリドンと2,9−ジクロロキナクリドンからなる固溶体顔料、チバ・ジャパン株式会社製、商品名:クロモフタルジェットマゼンタ2BC)135部を加え、ディスパー翼を用いて7000rpm、20℃の条件下で1時間混合した後、ビーズミル型分散機(寿工業株式会社製、ウルトラ・アペックス・ミル、型式UAM-05、メディア粒子:ジルコニアビーズ、粒径:0.05mm)を用いて20℃で40分間混合分散した。得られた分散液をマイクロフルイダイザー(Microfluidics 社製、高圧ホモジナイザー、商品名、型式M-140K)を用いて、180MPaの圧力でさらに5パス分散処理した。
得られた分散液を、減圧下60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、遠心分離し、フィルター(ザルトリウス社製、ミニザルトシリンジフィルター、孔径:5μm、材質:酢酸セルロース)でろ過して粗大粒子を除き、有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体〔固形分濃度:30.0%、平均粒径75nm〕を得た。得られたTEM写真を図1に示す。
実施例1(連鎖状粒子を含有するインクジェット記録用水分散体(1)の調製)
調製例1で得られた有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体50gをビーカーに入れ、攪拌しながら、イオン交換水で10%に希釈したポリエチレンイミン(型番:SP−006、株式会社日本触媒製、数平均分子量600)0.73gを滴下した。さらに、得られた分散液に調整例1で得られた前記水分散体50gを添加して、80℃の温浴中で攪拌しながら水分を蒸発させ、固形分濃度約60%の粘稠状物を得た後、この粘稠状物を冷却して固形分を得た〔工程(I)〕。
工程(I)で得られた固形分にイオン交換水50部を加えてマグネチックスターラー(ヤマト科学株式会社製、MD−41型)を用いて分散させた後、前記フィルター(ザルトリウス社製、孔径:5μm)でろ過して粗大粒子を取り除き、固形分濃度30%に調整した水分散体を得た〔工程(II)〕。
工程(II)で得られた水分散体40gに、エポキシ系架橋剤(商品名:デナコールEX321、エポキシ当量140、ナガセケムテックス株式会社製)0.53gを加えて、90℃温浴で、撹拌しながら1時間保持して、架橋処理を行なった〔工程(III)〕。
冷却後、前記フィルター(ザルトリウス社製、孔径:5μm)でろ過して粗大粒子を取り除き、平均粒径181nmの連鎖状粒子を含有するインクジェット記録用水分散体(1)(固形分濃度:30%、上記式(1)により算出した架橋ポリマーの架橋率:51.4モル%)を得た。
得られた水分散体(1)に含有された連鎖状粒子のTEM写真を図2に示す。
また、得られた連鎖状粒子の1つを拡大したTEM写真を図3に示す。
図3において、二次粒子の面積占有率は、(A1/A0)×100=(17085nm2/46860nm2)×100=37.9%であり、この粒子は連鎖状粒子である。
実施例1において、連鎖状粒子の割合(個数%)は60%であった。
比較例1(インクジェット記録用水分散体(2)の調製)
調製例1で得られた有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体50gをビーカーに入れ、攪拌しながら、イオン交換水で10%に希釈したポリエチレンイミン(型番:SP−006、株式会社日本触媒製、数平均分子量600)0.73gを滴下した。さらに、得られた分散液に調整例1で得られた前記水分散体50gを添加して、攪拌した後、水分を蒸発させることなく、前記フィルター(ザルトリウス社製、孔径:5μm)でろ過して粗大粒子を取り除き、水分散体を得た。
得られた水分散体を実施例1における工程(III)と同様に架橋処理を行い、インクジェット記録用水分散体(2)を調製した。
得られた水分散体(2)に含有された有機顔料粒子の平均粒径は100nmであった。
得られた水分散体(2)に含有された有機顔料粒子のTEM写真を図4に示す。
比較例2(インクジェット記録用水分散体(3)の調製)
実施例1において、ポリエチレンイミンを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用水分散体(3)を調製した。
得られた水分散体(3)に含有された有機顔料粒子の平均粒径は100nmであった。
得られた水分散体(3)に含有された有機顔料粒子のTEM写真を図5に示す。
実施例2(水系インクの製造)
実施例1で得られたインクジェット記録用水分散体(1)を固形分換算で13.3部、顔料分換算で10.0部となるようにして用意した。
1,2−ヘキサンジオール(東京化成工業株式会社製)2.0部、2−ピロリドン(和光純薬株式会社製)2.0部、サーフィノール465(日信化学工業株式会社製)0.5部、オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製)0.5部、グリセリン(花王株式会社製)2.0部、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(商品名:ブチルトリグリコール、日本乳化剤株式会社製)10.0部、プロキセルXL2(アビシア株式会社製)0.3部、及びイオン交換水をマグネチックスターラーで撹拌しながら、混合し、更に室温で15分間攪拌して、混合溶液を得た。ここでイオン交換水の配合量は、混合溶液と前記のインクジェット記録用水分散体(1)を加えた全量が100部となるように調整した量である。
次に、予め用意したインクジェット記録用水分散体(1)をマグネチックスターラーで撹拌しながら、前記混合溶液を添加し、1.2μmのフィルター(酢酸セルロース膜、ザルトリウス社製)で濾過して水系インクを得た。結果を表1に示す。
比較例3(水系インクの製造)
実施例2において、実施例1で得られた連鎖状粒子を含有するインクジェット記録用水分散体(1)に代えて、比較例1で得られたインクジェット記録用水分散体(2)を用いた他は、実施例2と同様にして水系インクを製造した。結果を表1に示す。
比較例4(水系インクの製造)
実施例2において、実施例1で得られた連鎖状粒子を含有するインクジェット記録用水分散体(1)に代えて、比較例2で得られたインクジェット記録用水分散体(3)を用いた他は、実施例2と同様にして水系インクを製造した。結果を表1に示す。
比較例5(水系インクの製造)
実施例2において、実施例1で得られた連鎖状粒子を含有するインクジェット記録用水分散体(1)に代えて、調製例1で得られた有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子の水分散体を用いた他は、実施例2と同様にして水系インクを製造した。結果を表1に示す。
Figure 2010280792
表1から、実施例1の水分散体を含有する実施例2の水系インクは、比較例1又は2の水分散体を含有する比較例3又は4の水系インク、及び有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子のみを含有する比較例5の水系インクに比べて、印字濃度が優れていることが分かる。

Claims (9)

  1. アニオン性有機顔料粒子とカチオン性ポリマーとを含む連鎖状粒子を含有し、該連鎖状粒子を構成する顔料一次粒子の全顔料一次粒子に占める割合が10個数%以上である、インクジェット記録用水分散体。
  2. アニオン性有機顔料粒子が有機顔料を含有するアニオン性ポリマー粒子である、請求項1に記載のインクジェット記録用水分散体。
  3. 動的光散乱法による、アニオン性有機顔料粒子の平均粒径に対する前記連鎖状粒子を含有する水分散体中の粒子の平均粒径の比(連鎖状粒子を含有する水分散体中の粒子の平均粒径/アニオン性有機顔料粒子の平均粒径)が1.5〜5.0である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水分散体。
  4. カチオン性ポリマーがポリエチレンイミンである、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体。
  5. 有機顔料がキナクリドン系顔料である、請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の水分散体を含有する、インクジェット記録用水系インク。
  7. 下記工程(I)及び(II)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
    工程(I):アニオン性有機顔料粒子、カチオン性ポリマー及び水を含有する混合液を調製した後、水を除去して粘稠物又は固形物を得る工程
    工程(II):工程(I)で得られた粘稠物又は固形物と水を混合して水分散体(A)を得る工程
  8. 下記工程(III)を含む請求項8に記載のインクジェット記録用水分散体の製造方法。
    工程(III):工程(II)で得られた水分散体(A)と架橋剤を混合し、架橋処理して水分散体(B)を得る工程
  9. 請求項7又は8に記載の製造方法で得られたインクジェット記録用水分散体。
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