JP2010276505A - 新規癌転移抑制剤の探索法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Stabilin2(Stab2)遺伝子を欠損させた非ヒトノックアウト動物であって、血中ヒアルロン酸濃度が上昇しかつ癌転移抑制作用を有する非ヒトノックアウト動物、およびその製造方法を提供することを課題とする。またStabilin2を標的とした血中ヒアルロン酸上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質のスクリーニング方法を提供することを課題とする。
【解決手段】Stabilin2欠損マウスにおいて、肝臓非実質細胞がヒアルロン酸を取り込めず、血清中ヒアルロン酸レベルが劇的に上昇することを見出した。また黒色腫および肺癌の肺転移がStabilin2欠損マウスにおいて著しく減少することを見出した。さらに、Stabilin2+マウスにおける抗Stabilin2抗体の投与によって、血清中ヒアルロン酸レベルが上昇し、肺転移が抑制されることを見出した。これらの結果は、Stabilin2がヒアルロン酸に対する主要なクリアランス受容体であること、および転移が血清中ヒアルロン酸レベルと逆相関することを示しており、Stabilin2が腫瘍転移の介入に向けた治療法を開発するための新規の標的であることを示唆している。
【選択図】なし

Description

本発明は、Stabilin2(Stab2)遺伝子を欠損させた非ヒトノックアウト動物であって、血中ヒアルロン酸濃度が上昇しかつ癌転移抑制作用を有する非ヒトノックアウト動物、およびその製造方法に関する。また本発明は、該非ヒトノックアウト動物から単離した細胞およびその用途に関する。さらに本発明は、Stabilin2遺伝子又は当該遺伝子によりコードされる蛋白質を標的とした血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質のスクリーニング方法に関する。
ヒアルロン酸(HA)は、D-グルクロン酸およびN-アセチル-D-グルコサミンから成る細胞外マトリックスのグリコサミノグリカンである。用いられる実験系に依り、正または負のいずれかで腫瘍形成と関係を有することが知られている。例えば、良性または正常組織と比較して悪性腫瘍では、ヒアルロン酸レベルが高いという報告がある(非特許文献1)。また、4-メチルウンベリフェロン(4-methylubelliferon; 4-MU)によるヒアルロン酸合成酵素(HAS)の阻害により、異種移植モデルにおいて黒色腫の転移が減少するという報告がある(非特許文献2)。さらに、インビトロにおける腫瘍細胞の増殖がヒアルロン酸によって増強または抑制されているという報告がある(非特許文献3)。
しかしながら、ヒアルロン酸は循環血液から迅速に除去されるので、循環血中ヒアルロン酸レベルとインビボでの腫瘍形成との間に何らかの相関関係があるかどうかは不明のままである。ヒアルロン酸は、CD44、Lyve-1、TLRおよびStabilin2(Stab2)を含むさまざまな細胞表面受容体と相互作用する。CD44は免疫細胞の大部分においてさまざまなレベルで発現され、内皮細胞上に提示されたヒアルロン酸を介してそのローリングおよび血管外遊出に関与する(非特許文献4)。Lyve-1はCD44に構造的に関連し、リンパ管において特異的に発現される(非特許文献5)。TLR2およびTLR4はヒアルロン酸または、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸結合タンパク質の複合体を結合する(非特許文献6、7)。しかしながら、CD44、Lyve-1またはTLRの欠損マウスのどれも、インビボにおいて循環血中ヒアルロン酸レベルに影響を与えることが明らかにされていない。Stabilin1(Stab1)およびStabilin2(Stab2)は、リンクドメインを持った構造的に関連するスカベンジャ受容体であり、肝類洞内皮細胞(HSEC)において発現されるとはいえ、Stabilin2のみがヒアルロン酸を結合し、ヒアルロン酸に対する主要なスカベンジャ受容体と考えられている(非特許文献8)。
癌の転移抑制は、癌治療における主要な標的である。これまで癌転移に関する様々な研究が行われており、例えばマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)を標的とした治療薬の開発が試みられてきた。しかしながら、癌転移の制圧には至っていない。一方、ヒアルロン酸が癌の増殖や転移に関与する可能性が古くから指摘されている。しかしながら上述のように、ヒアルロン酸を生体に投与しても速やかに除去されるため、未だヒアルロン酸と癌転移との関連をin vivoで直接証明する結果は得られていない。
Toole BP. Hyaluronan: from extracellular glue to pericellular cue. Nature review Cancer, 4: 528-539, 2004. Yoshihara S, Kon A, Kudo D, Nakazawa H, Kakizaki I, Sasaki M, Endo M, and Takagaki K. A hyaluronan synthase suppressor, 4-methylumbelliferone, inhibits liver metastasis of melanoma cells. FEBS letters 579: 2722-2726, 2005. Toole, B. P. Hyaluronan promotes the malignant phenotype. Glycobiology 12: 37R-42R, 2002. DeGrendele HC, Estess P, and Siegelman MH. Requirement for CD44 in activated T cell extravasation into an inflammatory site. Science (New York, NY) 278: 672-675, 1997. Banerji S, Ni J, Wang SX, Clasper S, Su J, Tammi R, Jones M, and Jackson DG. LYVE-1, a new homologue of the CD44 glycoprotein, is a lymph-specific receptor for hyaluronan. The Journal of cell biology 144: 789-801, 1999. Jiang D, Liang J, Fan J, Yu S, Chen S, Luo Y, Prestwich GD, Mascarenhas MM, Garg HG, Quinn DA, Homer RJ, Goldstein DR, Bucala R, Lee PJ, Medzhitov R, and Noble PW. Regulation of lung injury and repair by Toll-like receptors and hyaluronan. Nature medicine 11: 1173-1179, 2005. Kim S, Takahashi H, Lin WW, Descargues P, Grivennikov S, Kim Y, Luo JL, and Karin M. Carcinoma-produced factors activate myeloid cells through TLR2 to stimulate metastasis. Nature 457: 102-106, 2009. Hansen B, Longati P, Elvevold K, Nedredal GI, Schledzewski K, Olsen R, Falkowski M, Kzhyshkowska J, Carlsson F, Johansson S, Smedsrod B, Goerdt S, Johansson S, and McCourt P. Stabilin-1 and stabilin-2 are both directed into the early endocytic pathway in hepatic sinusoidal endothelium via interactions with clathrin/AP-2, independent of ligand binding. Experimental cell research 303: 160-173, 2005.
本発明は上述の課題を鑑みてなされたものである。本発明は、Stabilin2(Stab2)遺伝子を欠損させた非ヒトノックアウト動物であって、血中ヒアルロン酸濃度が上昇しかつ癌転移抑制作用を有する非ヒトノックアウト動物、およびその製造方法を提供することを目的とする。また、該非ヒトノックアウト動物から単離した細胞およびその用途を提供することを目的とする。また、Stabilin2遺伝子又は当該遺伝子によりコードされる蛋白質を標的とした血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、Stabilin2遺伝子の機能を失わせたノックアウト(KO)マウス(Stabilin2欠損マウス)を作製し、その機能解析を試みた。その結果本発明者らは、Stabilin2欠損マウスは、高い血中ヒアルロン酸濃度を有することを見出した。また、該Stabilin2欠損マウスは正常に成育することを見出した。
さらに本発明者らは、Stabilin2欠損マウスの尾静脈にB16F10細胞を移植し、Stabilin2遺伝子の機能欠損と腫瘍形成の関係について調べた。その結果、Stabilin2欠損マウスでは肺における腫瘍形成が著しく抑制されることがわかった。さらに、Stabilin2+マウスに抗Stabilin2抗体を投与することにより、血清中ヒアルロン酸レベルが上昇し、肺転移が抑制されることがわかった。
これらの結果は、Stabilin2がヒアルロン酸に対する主要なクリアランス受容体であること、および転移が血清中ヒアルロン酸レベルと逆相関することを示しており、Stabilin2が、腫瘍転移の介入に向けた治療法を開発するための新規の標的であることを示唆している。
本発明はこのような知見に基づくものであり、以下の発明に関する。
〔1〕被検物質からStabilin2の発現抑制もしくは機能阻害作用を有する物質を選択することを特徴とする、血中ヒアルロン酸濃度上昇剤のスクリーニング方法、
〔2〕被検物質からStabilin2の発現抑制もしくは機能阻害作用を有する物質を選択することを特徴とする、癌転移抑制剤のスクリーニング方法、
〔3〕抗Stabilin2抗体を有効成分として含有する血中ヒアルロン酸濃度上昇剤、
〔4〕抗Stabilin2抗体を有効成分として含有する癌転移抑制剤、
〔5〕Stabilin2に対するアンチセンス核酸を有効成分として含有する血中ヒアルロン酸濃度上昇剤、
〔6〕Stabilin2に対するアンチセンス核酸を有効成分として含有する癌転移抑制剤、
〔7〕Stabilin2遺伝子の全部又は一部の機能を喪失させた非ヒトノックアウト動物であって、血中ヒアルロン酸濃度が上昇し、かつ癌転移抑制作用を有する非ヒトノックアウト動物、
〔8〕Stabilin2遺伝子の全部又は一部の機能の喪失が、Stabilin2遺伝子の破壊又は変異によるものである、〔7〕記載の非ヒトノックアウト動物、
〔9〕動物が、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ウシ、サル、チンパンジー、およびゼブラフィッシュからなる群から選択されるいずれかのものである、〔8〕記載の非ヒトノックアウト動物、
〔10〕〔7〕〜〔9〕のいずれかに記載の非ヒトノックアウト動物から単離された細胞、
〔11〕肝、リンパ節、脾臓、又は骨髄由来の類洞内皮細胞である、〔10〕に記載の細胞、
〔12〕Stabilin2遺伝子の全部又は一部の機能を喪失させる工程を含む非ヒトノックアウト動物の作製方法であって、血中ヒアルロン酸濃度が上昇し、かつ癌転移抑制作用を有する非ヒトノックアウト動物の作製方法、
〔13〕Stabilin2遺伝子の全部又は一部の機能の喪失が、Stabilin2遺伝子の破壊又は変異によるものである〔12〕記載の方法、
〔14〕動物が、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ウシ、サル、チンパンジー、およびゼブラフィッシュからなる群から選択されるいずれかのものである、〔13〕記載の方法、
〔15〕以下の(a)〜(c)の工程を含む、血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質のスクリーニング方法;
(a)Stabilin2を発現しうる細胞に、被検物質を接触させる工程、
(b)Stabilin2の転写産物の発現レベルを測定する工程、および
(c)被検物質を接触させていない場合と比較して、上記転写産物の発現レベルを減少させた物質を選択する工程、
〔16〕以下の(a)〜(c)の工程を含む、血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質のスクリーニング方法;
(a)ヒアルロン酸の存在下、Stabilin2遺伝子を発現しうる細胞に、被検物質を接触させる工程、
(b)細胞中のヒアルロン酸濃度を測定する工程、および
(c)被検物質を接触させていない場合と比較して、細胞中のヒアルロン酸濃度を減少させた物質を選択する工程、
〔17〕以下の(a)〜(d)の工程を含む、血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質のスクリーニング方法;
(a)Stabilin2のプロモーター領域の下流にレポーター遺伝子が機能的に結合したDNAを有する細胞または細胞抽出液を提供する工程、
(b)該細胞または該細胞抽出液に被検物質を接触させる工程、
(c)該細胞または該細胞抽出液における該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程、および
(d)被検物質を投与していない場合と比較して、該レポーター遺伝子の発現レベルを減少させる物質を選択する工程。
本発明により、血中ヒアルロン酸濃度が上昇しかつ癌転移抑制作用を有する非ヒトノックアウト動物が提供された。ヒアルロン酸と癌細胞の増殖の関連性に関する報告は多数あり、ヒアルロン酸が癌細胞の増殖を促進する結果と逆に抑制する結果という、相反する結果が報告されている。これまで、血中ヒアルロン酸レベルが増加するという実験系が存在しなかったため、血中ヒアルロン酸濃度と癌の増殖・転移の関係を研究することが出来なかった。本発明の非ヒトノックアウト動物は、血中ヒアルロン酸濃度と癌の増殖・転移の関連性の解明に有用である。
また本発明により、Stabilin2遺伝子又は当該遺伝子によりコードされる蛋白質を標的とする、血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質のスクリーニング方法が提供された。本発明の方法は、Matrix metalloproteinase阻害剤など既存の癌転移阻害剤とは異なる原理による癌の転移阻害剤の開発に有用である。
Stabilin2ノックアウト(KO)マウスの作出方法を示す図及び写真である。Aは、マウスStabilin2遺伝子へのLacZおよびネオマイシン耐性遺伝子のターゲティングを示す図である。Bは、LacZ-Neo遺伝子は転写開始部位の18ヌクレオチド下流、ATG翻訳開始部位の60ヌクレオチド上流の位置で挿入されることを示す図である。Cは、野生型、ヘテロ接合性およびホモ接合性マウス由来ゲノムDNAのサザンブロット結果を示す写真である。遺伝子型は各レーンの上部に示されている; +/+、野生型; +/-、ヘテロ接合性; -/-、ホモ接合性変異体。Dは、抗Stabilin2モノクローナル抗体(mAb)による肝臓非実質細胞(NPC)のフローサイトメトリー解析結果を示す図である。Stabilin2 KOマウス由来の肝類洞内皮細胞(HSEC)がStabilin2の表面発現を欠いていることを示す。 Stabilin2 KOマウスの正常な発達ならびにStabilin2 KOマウスにおけるLDLおよびヘパリンの血清中レベルを示すグラフ及び写真である。Aは、雄性ホモ接合性(-/-)マウスおよび同腹仔野生型(+/+)マウスの成長は区別できないことを示すグラフである。Bは、7週齢の代表的な雄性野生型(+/+)同腹仔およびホモ接合性(-/-)同腹仔の写真である。Cは、血清中ヘパリンレベル(平均+/-標準偏差、n=3)を示すグラフである。Dは、血清中低密度リポタンパク質(LDL)レベル(平均+/-標準偏差、n=3)を示すグラフである。Eは、肝臓NPCにおけるDiI-Ac-LDL蛍光の取り込み(上パネル)およびhoechst染色(下パネル)を示す写真である。Fは、DiI蛍光強度(平均+/-標準偏差、n=4)を示すグラフである。 Stabilin2 KOマウスにおける正常な肝類洞構造、血清中ヒアルロン酸レベルの上昇および肝臓非実質細胞のヒアルロン酸取り込み能の抑止を示すグラフ及び写真である。Aは、肝臓および皮膚のH&E染色切片を示す写真である。Bは、肝臓切片に対する抗PECAM-1 (CD31)抗体および抗Stabilin2抗体による免疫組織化学の写真である。Cは、血清中ヒアルロン酸レベル(平均+/-標準偏差、n=3)を示すグラフである。Dは、野生型マウスおよびStabilin2 KOマウスの肝臓非実質細胞の顕微鏡写真である。上パネルはFITC-HA蛍光を示す。下パネルはHoechst染色を示す。Eは、FITC蛍光強度(平均+/-標準偏差、n=4)を示すグラフである。 ヒアルロン酸受容体およびヒアルロン酸合成酵素のmRNA発現レベルがStabilin2 -/-マウスにおいて変わらないことを示すグラフである。A及びBでは、リアルタイムRT-PCRを用いることにより、7週齢の時点での肝臓全体におけるヒアルロン酸受容体の発現レベルを評価した。発現レベルをβ-アクチンmRNAによって規準化した(平均+/-標準偏差、n=3)。Aは、Lyve-1発現レベルを示すグラフである。Bは、CD44発現レベルを示すグラフである。Cは、7週齢の時点での脾臓(Sp)および脳(Br)におけるヒアルロン酸合成酵素(HAS1、HAS2およびHAS3)の発現レベル(平均+/-標準偏差、n=3)を示すグラフである。 Stabilin2 KOマウスにおけるB16F10黒色腫細胞の肺転移の低減を示すグラフ及び写真である。Aは、B16F10黒色腫細胞の皮下注射によって形成された腫瘍の重量(平均+/-標準偏差、n=8)を示すグラフである。Bは、黒色腫細胞の静脈注射によって肺に形成された転移小結節を示す写真である。Cは、肺に形成された小結節の数を示すグラフである。Stabilin2ノックアウトは小結節数の統計的に有意な低下を引き起こした(平均+/-標準偏差、n=10)。 増殖シグナルに及ぼすヒアルロン酸の影響を示す写真である。ヒアルロン酸の添加から30分後にウエスタンブロット解析のためB16F10細胞を収集した。負荷した総タンパク質の量をCBB染色によって確認した。(A) Aktシグナル。(B) ERKシグナル。 Stabilin2 KOマウスでは、野生型と比較して肺癌細胞LLCの転移を示す肺結節の形成が有意に減少することを示すグラフである(P=0.0443, Student's t-test)。 抗Stabilin2抗体が黒色腫の転移を阻害することを示すグラフ及び写真である。Aは、抗Stabilin2抗体がインビトロにおいて肝臓NPCへのFITC-HAの取り込みを阻害することを示すグラフである。Bは、抗Stabilin2抗体の腹腔内投与により血清中ヒアルロン酸レベルが増大することを示すグラフである。C及びDはそれぞれ、抗Stabilin2抗体の投与により肺転移が低減する(平均+/-標準偏差、n=10)ことを示す写真及びグラフである。矢頭は小結節を示す。Eは、ヒアルロン酸でコーティングした培養皿への黒色腫細胞の接着は、Stabilin2 KOマウス血清中のものと同様の濃度(32.9 μg/ml)のヒアルロン酸によって完全に阻害されるが、野生型(+/+)血清の濃度(0.55 μg/ml、点で描いた領域)では阻害されないことを示すグラフである。 インビトロでのB16F10黒色腫細胞の増殖に及ぼすヒアルロン酸および血清の影響を示すグラフである。Aは、黒色腫細胞の増殖はヒアルロン酸の添加によって影響を受けない(平均+/-標準偏差、n=3)ことを示すグラフである。Bは、黒色腫細胞の増殖は野生型(+/+)またはノックアウト(-/-)由来血清の添加によって影響を受けないことを示すグラフである。細胞増殖をWST-1アッセイ法によって評価した(平均+/-標準偏差、n=3)。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.Stabilin2(Stab2)遺伝子
Stabilin2(Stab2)遺伝子及び当該遺伝子によりコードされる蛋白質は公知である。例えばヒトStabilin2遺伝子はaccession number NM_017564(配列番号:1)、当該遺伝子によりコードされる蛋白質はaccession number NP_060034(配列番号:2)として知られている。またマウスStabilin2遺伝子はaccession number NM_138673.2(配列番号:3)、当該遺伝子によりコードされる蛋白質はaccession number NP_619614.1(配列番号:4)として知られている。当業者であれば、これらのaccession numberの情報をもとに、ヒト及びマウス由来のStabilin2遺伝子の塩基配列、及び当該遺伝子によりコードされる蛋白質のアミノ酸配列を容易に取得することが出来る。
Stabilin2遺伝子は、ヒト、マウス、ラット等のゲノムライブラリーから得ることができる。例えば、細菌人工染色体(BAC)ライブラリーから、ハイブリダイゼーション法により目的クローンを得ることができる。また、PCR法により得ることも可能である。
2.非ヒトノックアウト動物
本発明は、1)Stabilin2遺伝子の全部又は一部の機能を喪失させた非ヒトノックアウト動物であって、血中ヒアルロン酸濃度が上昇しかつ癌転移抑制作用を有する非ヒトノックアウト動物、および、2)Stabilin2遺伝子の全部又は一部の機能を喪失させることを特徴とする、血中ヒアルロン酸濃度が上昇しかつ癌転移抑制作用を有する非ヒトノックアウト動物の作製方法を提供する。
本発明の非ヒトノックアウト動物は、野生型と比較して血中ヒアルロン酸濃度が20倍以上、好ましくは30倍以上、より好ましくは40倍以上、さらにこの好ましくは50倍以上(例えば55倍以上、60倍以上、65倍以上、70倍以上、75倍以上、80倍以上、85倍以上、90倍以上が挙げられるがこれらに限定されない)、上昇していることを特徴とする。非ヒトノックアウト動物の血中ヒアルロン酸濃度の測定は、実施例に記載の市販のヒアルロン酸アッセイキットを使用するほか、エルピアエース(R)HA(富士レビオ社)を使用することにより行うことが出来る。当該キットに関する情報は例えば独立行政法人医薬品医療機器総合機構の「医薬品医療機器情報提供ホームページ」(http://www.info.pmda.go.jp)から入手することが出来る。
また本発明の非ヒトノックアウト動物は、癌転移抑制作用を有する。ヒアルロン酸は癌細胞の増殖や転移に関与することが知られているが、本発明の非ヒトノックアウトマウスには、癌細胞の増殖阻害作用、転移抑制作用が認められる。本発明の非ヒトノックアウトマウスには、例えば肺や肝臓、脾臓、腎臓などへの癌転移抑制作用を有する非ヒトノックアウトマウスが含まれる(Rosandra N. et. al., Nature 438 7069 820-827 (2005), VEGFR1-positive haematopoietic bone marrow progenitors initiate the pre-metastatic niche; Fidler IJ et. al., J. Natl. Cancer Inst. 57 1199-1202 (1976), Organ selectivity for implantation survival and growth of B16 melanoma variant tumor lines.)。また脳、骨、泌尿器などへの癌転移抑制作用を有する非ヒトノックアウトマウスも本発明の非ヒトノックアウトマウスに含まれる。
Stabilin2遺伝子の全部又は一部の機能の喪失は、Stabilin2遺伝子の破壊又は変異によるものを例示することができる。
本発明において、Stabilin2の全部又は一部の機能を喪失させたノックアウト動物を作製するためには、遺伝子ターゲティング法を採用することができる。
Stabilin2遺伝子のターゲティングベクターは、Stabilin2遺伝子を破壊することにより当該遺伝子の全部又は一部の機能を喪失させるためのものである。ここで、「機能を喪失させる」とは、遺伝子の機能を完全に失わせること、あるいは遺伝子の機能が野生型と比較して低下している状態にすることの両者を含む意味である。
機能を喪失させるためには、単純に遺伝子を破壊又は欠損させたり、あるいは、遺伝子に変異を導入して翻訳の段階で読み枠がずれるように操作する等の改変を施せばよい。
本発明の「ノックアウト動物」は、以下の通り作製することができる。
まず、Stabilin2遺伝子の塩基配列の一部または全てを改変したものを、分化全能性を有する細胞に導入し、改変Stabilin2遺伝子が導入された分化全能性を有する細胞を選択する。次に、選択された遺伝子改変(欠損、破壊、変異等)が施された分化全能性を有する細胞を受精卵に導入してキメラ個体を作製し、得られたキメラ個体を交配することにより相同染色体上の一方又は双方のStabilin2遺伝子をノックアウトした個体を作出する。
本発明に用いられる動物の種類は、特に限定されるものではない。たとえば、ヒトを除くマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ウシ、サル、チンパンジーおよびゼブラフィッシュなどが挙げられる。本発明では取り扱いが容易で繁殖しやすいマウスが好ましい。
本明細書において、Stabilin2遺伝子の機能を失わせるために、Stabilin2遺伝子の塩基配列の一部または全部を改変することができる。「改変」とは、Stabilin2遺伝子のDNAの一部に、欠損、置換または付加を生じさせる変異を加えることをいう。これらの変異としては、例えば、遺伝子工学的手法による塩基配列の一部又は全部の削除(欠失)、あるいは他遺伝子又は塩基配列の挿入または置換があげられる。例えば、コドンの読み取り枠をずらすか、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより、Stabilin2欠損遺伝子を作製することができる。これにより、Stabilin2遺伝子の発現産物であるStabilin2タンパク質の機能が発現しなくなる。
本発明のノックアウトマウスは、公知の遺伝子組換え法(遺伝子ターゲティング法)により作製することができる。遺伝子ターゲティング法は、当分野においてはよく知られた技術であり、本分野の種々の実験書に開示されている。
ターゲティングベクターを設計するにあたり、Stabilin2遺伝子の構造に変化をもたらす部位は、Stabilin2遺伝子の機能が欠損する限り、特に限定されるものではない。一例としては、ヒアルロン酸の結合に関与することが示唆されているリンクドメイン(Politz, O. Gratchev, A. McCourt, P. A. Schledzewski, K. Guillot, P. Johansson, S. Svineng, G. Franke, P. Kannicht, C. Kzhyshkowska, J. Longati, P. Velten, F. W. Johansson, S. Goerdt, S. Stabilin-1 and -2 constitute a novel family of fasciclin-like hyaluronan receptor homologues. Biochem J 362: 155-164, 2002)を含む領域を欠失させることが挙げられるがこれに限定されない。
また、ベクターを導入した組換え体は、ターゲティングベクターにより導入した薬剤耐性遺伝子を用いたスクリーニングと、サザンブロット法やPCR法を用いたスクリーニングとを併用して選抜することが好ましい。薬剤選択のマーカー遺伝子として、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子等を使用することができる。また、ネガティブ選択用遺伝子には、HSVチミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリア毒素A遺伝子等を使用することができる。
上記の方法により作製したターゲティングベクターを使用して、相同組換えを行う。本明細書において、「相同組換え」とは、改変されたStabilin2遺伝子を、ゲノム中のStabilin2遺伝子のDNA領域に、人工的に組換えさせることをいう。
目的とする相同組換え体を得るためには、多数の組換え体をスクリーニングする必要がある。しかし、受精卵では多数のスクリーニングを行うことが技術的に困難である。そこで、受精卵と同様に多分化能を有し、かつin vitroで培養することができる細胞を使用することが好ましい。分化全能性を有する細胞としては、マウス(Nature 292:154-156, 1981)、ラット(Iannaccone, P.M. et al, Dev. Biol. 163(1): 288-292, 1994)、サル(Thomson, J.A. et al, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92(17):7844-7848, 1995)、ウサギ(Schoonjans, L. et al, Mol. Reprod. Dev. 45(4):439-443, 1996)についてはembryonic stem(ES)細胞等が確立している。また、ブタについてはembryonic germ (EG)細胞が確立している(Shim H. et al, Biol. Reprod 57(5):1089-1095, 1997)。また誘導性全能性細胞(iPS細胞)(Takahashi K and Yamanaka S, Cell. 2006 Aug 25;126(4):663-76, Takahashi K et.al. Cell. 2007 Nov 30;131(5):861-72)を使用することも出来る。
従って本発明においては、これらの動物種を対象に作製することが好ましいが、特にノックアウト動物の作製に関して技術が整っているマウスが最適である。マウスES細胞としては、現在マウス由来のES細胞株がいくつか確立されており、例えばTT-2細胞株、AB-1細胞株、J1細胞株、R1細胞株等を使用することができる。これらのどのES細胞株を用いるかは、実験の目的又は方法により適宜選択することができる。
ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより、効率よく多数の初期胚を取得することができる。
このようにして得られたES細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる再生能を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO線維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でleukemia inhibitory factor(LIF)(1〜10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などが採用される。このような継代は、通常1〜3日毎に行なうとともに、細胞の形態的観察を行うことが好ましい。
ES細胞への遺伝子導入は、リン酸カルシウム共沈殿法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、レトロウイルス感染法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法などの方法を採用することができるが、簡便に多数の細胞を処理できる点でエレクトロポレーション法が好ましい。
得られた組換えES細胞につき、相同組換えが起こっているかどうかのスクリーニングを行う。即ち、まずネオマイシン等を導入した薬剤耐性因子によりスクリーニングを行う。薬剤耐性遺伝子としては、例えばネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子、ジフテリア毒素A遺伝子などが挙げられ、レポーター遺伝子としては、例えばβ-ガラクトシダーゼ遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子などが挙げられる。
さらに、得られた組換えES細胞について、Stabilin2遺伝子上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンブロット解析、あるいは、ターゲティングベクター上のDNA配列と、ターゲティングベクターに使用したマウス由来のStabilin2遺伝子以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法を行うことにより、相同組換えが起こっているかを確実にスクリーニングすることが出来る。
これらのアッセイにより、染色体上に存在する野生型Stabilin2遺伝子と導入したStabilin2遺伝子断片の間で正しく相同遺伝子組換えが起こり、染色体上のStabilin2遺伝子に変異が移った細胞を選択することができる。
導入遺伝子の組込みが確認されたES細胞を同種の非ヒト哺乳動物由来の胚内に戻すことにより、宿主胚の細胞塊に組み込まれたキメラ胚が形成される。ES細胞を胚盤胞等の胚に導入する方法としては、マイクロインジェクション法や凝集法が知られているが、いずれの方法を用いることも可能であり、当業者が適宜改変することができる。
マウスの場合には、ホルモン剤(例えば、follicle stimulating hormone(FSH)様作用を有するpregnant mare's serum gonadotropin (PMSG)およびluteinizing hormone (LH)作用を有するhuman chorionic gonadotrophin (hCG)を使用)により過排卵処理を施した雌マウスを、雄マウスと交配させる。その後、胚盤胞を用いる場合には受精から3.5日目に、8細胞期胚を用いる場合には2.5日目に、それぞれ子宮から初期発生胚を回収する。このようにして回収した胚に対して、ターゲティングベクターを用いて相同組換えを行ったES細胞をin vitroにおいて注入し、キメラ胚を作製する。あるいはマウス2日胚(8細胞期胚)の透明帯を取り除き、ES細胞と一緒に培養して凝集塊を作らせる。その凝集塊を一日培養すると胚盤胞になる。これらを仮親に移植して発生および生育させることにより、キメラマウスが得られる。仮親とするための偽妊娠雌マウスは、正常性周期の雌マウスを、精管結紮などにより去勢した雄マウスと交配することにより得ることができる。作出した偽妊娠マウスに対して、上記の方法により作製したキメラ胚を子宮内移植し、妊娠・出産させることによりキメラマウスを作製することができる。キメラ胚の着床、妊娠がより確実に起こるようにするため、受精卵を採取する雌マウスと仮親となる偽妊娠マウスとを、同一の性周期にある雌マウス群から作出することが望ましい。
そして、仮親から産まれた仔のうちキメラマウスを選ぶ。ES細胞移植胚に由来するマウス個体が得られた場合、このキメラマウスを野生型のマウスと交配し、そして次世代個体にES細胞由来の形質が表れるか否かを確認する。次世代個体にES細胞由来の形質が表れた場合に、ES細胞がキメラマウス生殖系列へ導入された可能性があるとみなすことができる。ES細胞が生殖系列へ導入されたことを確認するには、様々な形質を指標として用いることができるが、確認の容易さを考慮して、好ましくは被毛色を指標とすることが望ましい。マウスにおいては野ネズミ色(アグーチ色)、黒色、黄土色、チョコレート色および白色などの被毛色が知られている。また、体の一部(例えば尾部先端)から染色体DNAを抽出し、サザンブロット解析やPCR法を行うことにより、選抜を行うこともまた可能である。キメラの寄与率が高いマウスは、ES細胞がキメラマウス生殖系列へ導入された可能性が高い。上記のようにして、キメラマウスを選抜した後に、該キメラマウスを野生型の雌と交配し、F1を得て変異マウス系統を樹立する。
上記のようにして得られるキメラ動物は、相同染色体の一方にのみ遺伝子欠損を有するヘテロ接合体として得られる。相同染色体上の双方のStabilin2遺伝子が欠損したホモ接合体であるノックアウト動物を得るには、F1動物のうち相同染色体の一方にのみ遺伝子欠損を有するヘテロ接合体同士を交雑すればよい。
ノックアウト動物が得られたことの確認は、組織から染色体DNAを抽出し、サザンブロット解析あるいはPCR法で行う。また解剖を行った際の諸組織、臓器の異常を観察することもできる。さらに、組織からRNAを抽出し、ノザンブロット解析により遺伝子の発現パターンを解析することもできる。さらに、必要に応じて血液を採取し、血液検査や血清生化学的検査を実施することも可能である。
ここで、ホモ接合体であるノックアウト動物を作製すると、胎性致死に至るなど、成体まで成長せずにモデル動物として適切でない場合がある。その場合は、必要な時期にノックアウトさせることが好ましい。また生体内でのある特定の組織における遺伝子の機能を調べるには組織特異的に遺伝子をノックアウトすることが好ましい。このように特定の時期・特定の細胞系列だけをノックアウトさせた動物、および体細胞の限定された領域のみでノックアウトさせた動物を、コンディショナルノックアウト動物という(バイオマニュアルシリーズ8,ジーンターゲティング : ES細胞を用いた変異マウスの作製,相沢慎一著,羊土社,1995)。
コンディショナルノックアウト動物を作製するための手法として、例えば遺伝子ターゲティング法のためにバクテリオファージP1由来の組換えシステムであるCre-loxPシステム(R.Kuhn. et al., Science 269: 1427-1429, 1995)を使用することができる。Creは組換え酵素であり、loxPと呼ばれる34塩基の配列を認識して、この部位で組換えを起こさせることが可能となる。従って、ターゲティングしたい遺伝子をloxP配列とloxP配列との間にはさみ、Creリコンビナーゼ遺伝子を特異的プロモーター下流に組み込むことにより、部位特異的および時期特異的にCreが産生されてloxPで挟んだ遺伝子を切り取る(すなわち、特定の部位、時期において目的遺伝子の機能を喪失させる)ことができる。本発明において、Cre-loxPのシステムを用いてターゲティングベクターを設計するにあたり、Stabilin2遺伝子の構造に変化をもたらす部位は、Stabilin2遺伝子の機能が欠損する限り、特に限定されるものではない。但し、Stabilin2遺伝子のリンクドメインがヒアルロン酸の取り込み能に関与している可能性をを考慮すると、このドメインを欠損させることが好ましい。
3.非ヒトノックアウト動物から単離された細胞
本発明は、本発明のノックアウト動物から単離された細胞もまた提供する。本発明のノックアウト動物から単離された細胞は、後述のように、癌転移抑制剤の候補物質のスクリーニングに用いることができる。
該細胞としては、肝臓、リンパ節、脾臓、及び骨髄の類洞内皮細胞、並びに眼、心臓、脳、及び腎臓由来の細胞が例示できるが、これらに限定されない。
これら細胞は、当業者に周知の方法によって、該ノックアウト動物から単離することが可能である。
4.血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質のスクリーニング
本発明は、Stabilin2の発現抑制もしくは機能阻害作用を有する物質を選択することを特徴とする血中ヒアルロン酸濃度上昇剤もしくは癌転移抑制剤の候補物質スクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法によって、血中ヒアルロン酸濃度上昇剤もしくは癌転移抑制剤の候補物質を効率的に取得することができる。
Stabilin2の機能としては、ヒアルロン酸の細胞内への取込みや、ヘパリン、低密度リポタンパク質(LDL)、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、Pro-collagen propeptides, advanced glycation end-products (AGE)の結合と取り込み(Glycobiology 18, 638-648, 2008.)などが挙げられるがこれらに限定されない。
また本発明は、以下の(a)から(c)の工程を含む、血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質のスクリーニング方法を提供する。
(a)Stabilin2を発現しうる細胞に、被検物質を接触させる工程
(b)Stabilin2の転写産物の発現レベルを測定する工程、および
(c)被検物質を接触させていない場合と比較して、上記転写産物の発現レベルを減少させた物質を選択する工程
本発明のスクリーニング方法の第一の態様は、Stabilin2遺伝子の転写産物の発現量を減少させる物質のスクリーニングに関するものである。第一の態様においては、まず、Stabilin2を発現しうる細胞に被検物質を接触させる。本発明のスクリーニング方法に用いる被検物質としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら物質は新規の物質であってもよいし、公知の物質であってもよい。これら物質は塩を形成していてもよく、被検物質の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
Stabilin2を発現しうる細胞としては、内在性のStabilin2を発現しうる細胞、または外来性のStabilin2を発現しうる細胞、Stabilin2を発現しうる細胞抽出液が挙げられる。
上記内在性のStabilin2を発現しうる細胞としては、本発明の非ヒトノックアウト動物から単離される細胞のほか培養細胞などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、上記外来性のStabilin2を発現する細胞は、例えば、Stabilin2をコードするDNAを含むベクターを細胞に導入することで作製できる。ベクターの細胞への導入は、当業者に一般的な方法によって実施することができる。また、上記外来性のStabilin2を発現する細胞は、例えば、Stabilin2をコードするDNAを、相同組み換えを利用した遺伝子導入法により、染色体へ挿入することで作製することができる。あるいは、公知の一過性発現用ベクターを用いてStabilin2を発現する細胞を作製することが出来る。このような外来性のStabilin2が導入される細胞が由来する生物種としては、特に限定されず、外来タンパク質を細胞内に発現させる技術が確立されている生物種であればよい。
また、Stabilin2が発現しうる細胞抽出液は、例えば、試験管内転写翻訳系に含まれる細胞抽出液に、Stabilin2をコードするDNAを含むベクターを添加したものを挙げることができる。該試験管内転写翻訳系としては、特に制限はなく、市販の試験管内転写翻訳キットなどを使用することが可能である。
また、本発明において「接触」は以下のように行うことが出来る。例えば、Stabilin2が細胞内に発現した状態または細胞抽出液内に発現した状態であれば、それぞれ、細胞の培養液または該細胞抽出液に被検物質を添加することにより行うことができる。被検物質がタンパク質の場合には、例えば、該タンパク質をコードするDNAを含むベクターを、Stabilin2を発現しうる細胞へ導入する、または該ベクターをStabilin2を発現しうる細胞抽出液に添加することで行うことも可能である。また、例えば、酵母または動物細胞等を用いた2ハイブリッド法を利用することも可能である。
第一の態様においては、次いで、被検物質を投与していない場合と比較して、Stabilin2の発現レベルを減少させる物質を選択する。
Stabilin2の発現レベルの測定は、当業者に公知の方法によって行うことができる。例えば、Stabilin2タンパク質をコードするmRNAを定法に従って抽出し、このmRNAを鋳型としたノーザンハイブリダイゼーション法、またはRT-PCR法を実施することによってStabilin2遺伝子の転写レベルの測定を行うことができる。なお本発明においては、Stabilin2の発現レベルの発現レベルの測定に代えて、Stabilin2の翻訳レベルを測定してもよい。翻訳レベルを測定する方法としては、例えばDNAアレイ技術を用いた方法を挙げることが出来る。また、Stabilin2タンパク質を含む画分を定法に従って回収し、Stabilin2タンパク質の発現をSDS-PAGE等の電気泳動法で検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うこともできる。また、Stabilin2タンパク質に対する抗体を用いて、ウェスタンブロッティング法を実施し、Stabilin2タンパク質の発現を検出することにより、遺伝子の翻訳レベルの測定を行うことも可能である。
Stabilin2タンパク質の検出に用いる抗体としては、検出可能な抗体であれば、特に制限はないが、例えばモノクローナル抗体、またはポリクローナル抗体の両方を利用することができる。該抗体は、後述のように、当業者に公知の方法により調製することが可能である。
また、Stabilin2を細胞表面または細胞内に発現させてフローサイトメトリーや免疫染色による測定を行うことも可能である。さらに、ヒアルロン酸、ヘパリン(Harris EN, Weigel JA, and Weigel PH. The human hyaluronan receptor for endocytosis (HARE/Stab2) is a systemic clearance receptor for heparin. The Journal of biological chemistry 2008.)、LDL(Adachi H, and Tsujimoto M. FEEL-1, a novel scavenger receptor with in vitro bacteria-binding and angiogenesis-modulating activities. The Journal of biological chemistry 277: 34264-34270, 2002.)、Ac-LDL(Adachi H, and Tsujimoto M. FEEL-1, a novel scavenger receptor with in vitro bacteria-binding and angiogenesis-modulating activities. The Journal of biological chemistry 277: 34264-34270, 2002.)、コンドロイチン硫酸(Harris, E. N. Kyosseva, S. V. Weigel, J. A. Weigel, P. H. Expression, processing, and glycosaminoglycan binding activity of the recombinant human 315-kDa hyaluronic acid receptor for endocytosis (HARE). J Biol Chem 282: 2785-2797, 2007)などStabilin2に結合する物質を放射性同位元素や蛍光物質等で標識して、その結合によっても測定することができる。
第一の態様においては、Stabilin2の発現レベルが被検物質を接触させないときに比べ減少する場合に、被検物質を、血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質として選択する。このように選択された被検物質は、血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質となり得る。
また本発明は、以下(a)から(c)の工程を含む血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質のスクリーニング方法を提供する。
(a)ヒアルロン酸の存在下、Stabilin2遺伝子を発現しうる細胞に、被検物質を接触させる工程
(b)細胞中のヒアルロン酸濃度を測定する工程、および
(c)被検物質を接触させていない場合と比較して、細胞中のヒアルロン酸濃度を減少させた物質を選択する工程
本発明のスクリーニング方法の第二の態様は、細胞中のヒアルロン酸濃度を減少させる物質のスクリーニングに関するものである。第二の態様においてはまず、ヒアルロン酸の存在下、Stabilin2を発現しうる細胞に被検物質を接触させる。本発明のスクリーニング方法に用いる被検物質、Stabilin2を発現しうる細胞は上述のものを例示することが出来る。また「接触」も上述のとおり行うことが出来る。
第二の態様においては、次いで、細胞中のヒアルロン酸濃度を測定する。細胞中のヒアルロン酸濃度の測定は、例えばFITCによってラベルしたヒアルロン酸の蛍光強度測定により行うことが出来る(Smedsrod, B. Pertoft, H. Eriksson, S. Fraser, J. R. Laurent, T. C. Studies in vitro on the uptake and degradation of sodium hyaluronate in rat liver endothelial cells. Biochem J 223: 617-626, 1984)がこれに限定されない。
第二の態様においては、被検物質を投与していない場合と比較して、細胞中のヒアルロン酸濃度を減少させる物質を選択する。このように選択された物質は、血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質となり得る。
また本発明は、以下(a)から(d)の工程を含む血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質のスクリーニング方法に関する。
(a)Stabilin2のプロモーター領域の下流にレポーター遺伝子が機能的に結合したDNAを有する細胞または細胞抽出液を提供する工程
(b)該細胞または該細胞抽出液に被検物質を接触させる工程
(c)該細胞または該細胞抽出液における該レポーター遺伝子の発現レベルを測定する工程、および
(d)被検物質を投与していない場合と比較して、該レポーター遺伝子の発現レベルを減少させる物質を選択する工程
本発明におけるスクリーニング方法の第三の態様は、Stabilin2遺伝子の発現レベルを減少させる物質のスクリーニングに関するものである。第三の態様としては、まず、Stabilin2遺伝子のプロモーター領域の下流にレポーター遺伝子が機能的に結合したDNAを有する細胞または細胞抽出液を提供する。ここで、「機能的に結合した」とは、Stabilin2遺伝子のプロモーター領域に転写因子が結合することにより、レポーター遺伝子の発現が誘導されるように、Stabilin2遺伝子のプロモーター領域とレポーター遺伝子とが結合していることをいう。従って、レポーター遺伝子が他の遺伝子と結合しており、他の遺伝子産物との融合タンパク質を形成する場合であっても、Stabilin2遺伝子のプロモーター領域に転写因子が結合することによって、該融合タンパク質の発現が誘導されるものであれば、上記「機能的に結合した」の意に含まれる。
上記レポーター遺伝子としては、その発現が検出可能なものであれば特に制限されず、例えば、当業者において一般的に使用されるCAT遺伝子、lacZ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、β-グルクロニダーゼ遺伝子(GUS)およびGFP遺伝子等を挙げることができる。また、上記レポーター遺伝子には、Stabilin2遺伝子も含まれる。
第三の態様においては、次いで、上記細胞または上記細胞抽出液に被検物質を接触させる。次いで、該細胞または該細胞抽出液における上記レポーター遺伝子の発現レベルを測定する。レポーター遺伝子の発現レベルは、使用するレポーター遺伝子の種類に応じて、当業者に公知の方法により測定することができる。例えば、レポーター遺伝子がCAT遺伝子である場合には、該遺伝子産物によるクロラムフェニコールのアセチル化を検出することによって、レポーター遺伝子の発現レベルを測定することができる。レポーター遺伝子がlacZ遺伝子である場合には、該遺伝子発現産物の触媒作用による色素化合物の発色を検出することにより、また、ルシフェラーゼ遺伝子である場合には、該遺伝子発現産物の触媒作用による蛍光化合物の蛍光を検出することにより、また、β-グルクロニダーゼ遺伝子(GUS)である場合には、該遺伝子発現産物の触媒作用によるGlucuron(ICN社)の発光や5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-グルクロニド(X-Gluc)の発色を検出することにより、さらに、GFP遺伝子である場合には、GFPタンパク質による蛍光を検出することにより、レポーター遺伝子の発現レベルを測定することができる。
また、Stabilin2遺伝子をレポーターとする場合、該遺伝子の発現レベルの測定は当業者に公知の方法によって行うことができる。例えばStabilin2遺伝子の発現レベルを測定する場合、ノーザンハイブリダイゼーション法、RT-PCR法等を使用することが出来る。またStabilin2遺伝子の翻訳レベルの測定を行う場合には、DNAアレイ技術、SDS-PAGE等の電気泳動法、抗Stabilin2抗体を用いたウェスタンブロッティング法、免疫染色、フローサイトメトリー等を使用することが出来る。
第三の態様においては、次いで、被検物質を投与していない場合と比較して、該レポーター遺伝子の発現レベルを上昇させる物質を選択する。このように選択された物質は、血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の候補物質となり得る。
5.血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤
本発明は、抗Stabilin2抗体を有効成分として含有する血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤を提供する。本発明における癌転移としては、肺や肝臓、脾臓、腎臓などへの転移が挙げられるがこれらに限定されない。
抗Stabilin2抗体は、Stabilin2タンパク質あるいはその断片を免疫原として、公知の方法により得ることができる(Harlow, E. et al., Antibodies; A Laboratory manual. Cold Spring Harbor, New York, 1988、Kohler, G. et al., Nature 256: 495-7, 1975)。免疫には、Stabilin2タンパク質またはその断片を適当なアジュバントとともに免疫動物に免疫する。Stabilin2タンパク質の断片は、担体蛋白質と結合させて免疫原とすることも可能である。免疫原を得るための担体蛋白質には、スカシガイヘモシアニン(KLH)、あるいはウシ血清アルブミン(BSA)等を用いることができる。
免疫動物には、ウサギ、マウス、ラット、ヤギ、ニワトリあるいはヒツジなどが一般に利用される。アジュバントとしては、フロイントのコンプリートアジュバント(FCA)等が一般に用いられる(Freund, J., Adv. Tubercl. Res., 1:130-148, 1956)。適当な間隔で免疫を追加し、抗体価の上昇を確認したところで採血し抗血清を得ることができる。更にその抗体画分を精製すれば、精製抗体(ポリクローナル抗体)とすることもできる。またDNA免疫法やin vitro immunizationなどによって抗体を取得することも出来る。
あるいはまた、抗体産生細胞を採取して細胞融合法などによりクローニングすれば、モノクローナル抗体を得ることもできる。モノクローナル抗体はイムノアッセイにおいて高い感度と特異性を達成するための重要なツールである。また、別の方法として、Stabilin2蛋白質をコードするDNAをランダムに切断し、それをファージベクターに挿入してドメインペプチドを提示したファージライブラリーを作成することによってもStabilin2タンパク質等を認識する抗体を得ることが出来る。これらのライブラリーを、Stabilin2を認識する抗体でイムノスクリーニングすれば、免疫学的に活性を持つドメインを決定することが出来る。
抗体産生細胞としては、免疫動物に由来するものを利用することもできる。更に、こうして得られた免疫動物に由来するモノクローナル抗体産生細胞の抗体遺伝子をもとに、キメラ抗体やヒト化抗体の構築が可能である。抗体をヒトに投与する場合、動物の抗体は異物として排除されるため望ましくない。そこで抗原性の強い抗体の定常領域をヒトの抗体で置換したキメラ抗体や、あるいは定常領域のみならず可変領域のフレームワークまでヒトの遺伝子で置換したヒト化抗体が必要になる。
すなわち本発明では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(chimeric)抗体、ヒト化(humanized)抗体などを使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウスやラット、ニワトリ由来の抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体であり、マウスやラット、ニワトリ由来の抗体の可変領域をコードするDNAをヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得ることができる。
キメラ抗体は、抗体可変領域をコードするDNAをヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 125023、国際特許出願公開番号WO 92-19759参照)。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。
具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAをヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP 239400 、国際特許出願公開番号WO 96/02576参照)。
CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-856)。
キメラ抗体、ヒト化抗体には、ヒト抗体定常領域が使用される。ヒト抗体定常領域としては、Cγが挙げられ、例えば、Cγ1、Cγ2、Cγ3又はCγ4を使用することができる。また、抗体又はその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体定常領域を修飾してもよい。
キメラ抗体及びヒト化抗体はヒト体内における抗原性が低下しているため、本発明に使用される抗体として有用である。
また、ヒト抗体の取得方法も知られている。例えば、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原または所望の抗原を発現する細胞で感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、抗原への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878参照)。また、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物を所望の抗原で免疫することで所望のヒト抗体を取得することができる(国際特許出願公開番号WO 93/12227, WO 92/03918,WO 94/02602, WO 94/25585,WO 96/34096, WO 96/33735参照)。さらに、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することができる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。これらの方法は周知であり、WO 92/01047, WO 92/20791, WO 93/06213, WO 93/11236, WO 93/19172, WO 95/01438, WO 95/15388を参考にすることができる。
構築した抗体遺伝子は、公知の方法により発現させることができる。哺乳類細胞を用いた場合、常用される有用なプロモーター、発現される抗体遺伝子、その3'側下流にポリAシグナルを機能的に結合させたDNAあるいはそれを含むベクターにより発現させることができる。例えばプロモーター/エンハンサーとしては、ヒトサイトメガロウィルス前期プロモーター/エンハンサー(human cytomegalovirus immediate early promoter/enhancer)を挙げることができる。
また、その他に本発明で使用される抗体発現に使用できるプロモーター/エンハンサーとして、レトロウィルス、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、シミアンウィルス40(SV40)等のウィルスプロモーター/エンハンサーやヒトエロンゲーションファクター1α(HEF1α)などの哺乳類細胞由来のプロモーター/エンハンサーを用いればよい。
例えば、SV40プロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mulliganらの方法(Mulligan, R. C. et al., Nature (1979) 277, 108-114) 、また、HEF1αプロモーター/エンハンサーを使用する場合、Mizushimaらの方法(Mizushima, S. and Nagata, S. Nucleic Acids Res. (1990) 18, 5322 )に従えば容易に実施することができる。
大腸菌の場合、常用される有用なプロモーター、抗体分泌のためのシグナル配列、発現させる抗体遺伝子を機能的に結合させて発現させることができる。例えばプロモーターとしては、lacZプロモーター、araBプロモーターを挙げることができる。lacZプロモーターを使用する場合、Wardらの方法(Ward, E. S. et al., Nature (1989) 341, 544-546;Ward, E. S. et al. FASEB J. (1992) 6, 2422-2427 )、araBプロモーターを使用する場合、Betterらの方法(Better, M. et al. Science (1988) 240, 1041-1043 )に従えばよい。
抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379-4383)を使用すればよい。ペリプラズムに産生された抗体を分離した後、抗体の構造を適切にリフォールド(refold)して使用する(例えば、WO96/30394を参照)。
複製起源としては、SV40、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることができ、さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のため、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
本発明で使用される抗体の製造のために、任意の産生系を使用することができる。抗体製造のための産生系は、in vitroおよびin vivoの産生系がある。in vitroの産生系としては、真核細胞を使用する産生系や原核細胞を使用する産生系が挙げられる。
真核細胞を使用する場合、動物細胞、植物細胞、又は真菌細胞を用いる産生系がある。動物細胞としては、(1)哺乳類細胞、例えば、CHO、COS、ミエローマ、BHK(baby hamster kidney)、HeLa、Veroなど、(2)両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3)昆虫細胞、例えば、sf9、sf21、Tn5などが知られている。植物細胞としては、ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えばアスペルギルス属(Aspergillus)属、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)などが知られている。
原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E.coli)、枯草菌が知られている。
これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。培養は、公知の方法に従い行う。例えば、培養液として、DMEM、MEM、RPMI1640、IMDMを使用することができ、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。また、抗体遺伝子を導入した細胞を動物の腹腔等へ移すことにより、in vivoにて抗体を産生してもよい。
一方、in vivoの産生系としては、動物を使用する産生系や植物を使用する産生系が挙げられる。動物を使用する場合、哺乳類動物、昆虫を用いる産生系などがある。
哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシなどを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993)。また、昆虫としては、カイコを用いることができる。植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。
これらの動物又は植物に抗体遺伝子を導入し、動物又は植物の体内で抗体を産生させ、回収する。例えば、抗体遺伝子をヤギβカゼインのような乳汁中に固有に産生される蛋白質をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギ又はその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得る。トランスジェニックヤギから産生される所望の抗体を含む乳汁量を増加させるために、適宜ホルモンをトランスジェニックヤギに使用してもよい。(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology (1994) 12, 699-702 )。
また、カイコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させ、このカイコの体液より所望の抗体を得る(Maeda, S. et al., Nature (1985) 315, 592-594)。さらに、タバコを用いる場合、目的の抗体遺伝子を植物発現用ベクター、例えばpMON530に挿入し、このベクターをAgrobacterium tumefaciensのようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばNicotiana tabacumに感染させ、本タバコの葉より所望の抗体を得る(Julian, K.-C. Ma et al., Eur. J. Immunol.(1994)24, 131-138)。
上述のようにin vitro又はin vivoの産生系にて抗体を産生する場合、抗体重鎖(H鎖)又は軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで、宿主を形質転換させてもよい(国際特許出願公開番号WO 94-11523参照)。
本発明の抗体には、本発明の抗体のアミノ酸配列に1又は複数個のアミノ酸残基が付加された抗体も含まれる。また、これら抗体と他のペプチド又はタンパク質とが融合した融合タンパク質も含まれる。融合タンパク質を作製する方法は、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドと他のペプチド又はポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよく、当業者に公知の手法を用いることができる。本発明の抗体との融合に付される他のペプチド又はポリペプチドとしては、例えば、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204-1210 )、6個のHis(ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc-mycの断片、VSV-GPの断片、p18HIVの断片、T7-tag、HSV-tag、E-tag、SV40T抗原の断片、lck tag、α-tubulinの断片、B-tag、Protein C の断片、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合タンパク質)等の公知のペプチドを使用することができる。市販されているこれらペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドと融合させ、これにより調製された融合ポリヌクレオチドを発現させることにより、融合ポリペプチドを調製することができる。
本発明で使用される抗体は、それを産生する細胞や宿主あるいは精製方法により、アミノ酸配列、分子量、等電点又は糖鎖の有無や形態などが異なり得る。しかしながら、得られた抗体が、本発明の抗体と同等の機能を有している限り、本発明の抗体として使用することができる。例えば、本発明の抗体を原核細胞、例えば大腸菌で発現させた場合、本来の抗体のアミノ酸配列のN末端にメチオニン残基が付加される。本発明で使用される抗体はこのような抗体も包含する。
また本発明は、Stabilin2遺伝子に対するアンチセンス核酸を有効成分として含有する血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤を提供する。Stabilin2遺伝子の塩基配列の全部又は一部に対応するアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて、Stabilin2遺伝子の発現レベルを低下させることができる。Stabilin2遺伝子に対応するアンチセンス核酸は、癌転移の抑制または予防において有用である。具体的には、Stabilin2遺伝子に対するアンチセンス核酸はStabilin2遺伝子によってコードされるmRNAの全部又は一部に結合し、それによって遺伝子の転写もしくは翻訳を阻害する。本発明におけるアンチセンス核酸は、そのアンチセンス核酸が標的配列に特異的にハイブリダイズすることができる限り、標的配列に完全に相補的であるヌクレオチドに限定されない。本発明のアンチセンス核酸には、Stabilin2遺伝子の塩基配列に完全に相補的である配列に対して1つまたは複数のヌクレオチドのミスマッチを有するもの含まれる。例えば、本発明のアンチセンス核酸には、Stabilin2遺伝子の塩基配列の少なくとも15個の連続的ヌクレオチドから最長で完全長配列までの範囲に渡って、少なくとも70%またはそれ以上、好ましくは80%またはそれ以上、より好ましくは90%またはそれ以上、さらにより好ましくは95%またはそれ以上の相同性(配列同一性とも呼ばれる)を有するポリヌクレオチドが含まれる。配列の相同性は、当技術分野において公知のアルゴリズムを使用して決定することができる。さらに、アンチセンス核酸の誘導体または修飾産物もまた本発明においてアンチセンス核酸として使用され得る。このような修飾産物の例には、メチルホスホナート型またはエチルホスホナート型などの低級アルキルホスホナート修飾、ホスホロチオアート修飾、およびホスホロアミダート修飾が含まれる。
本発明の血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤は、ヒトやヒト以外の動物(例えば実験動物、畜産動物、愛玩動物等)の癌転移を抑制するための薬剤、又は癌転移の予防剤として利用することができる。
本発明の血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤は、抗Stabilin2抗体とStabilin2遺伝子に対するアンチセンス核酸の両方を有効成分として含んでもよい。
また本発明は、本発明のスクリーニング方法によって得られる物質を有効成分として含有する血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤も提供する。
なお本発明の「血中ヒアルロン酸濃度上昇剤」は、「血中のヒアルロン酸濃度を上昇させるための薬剤」と表現することも出来る。
抗Stabilin2抗体は、例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、例えば、滅菌水や生理食塩水、安定剤、賦形剤、防腐剤、界面活性剤、キレート剤(EDTA等)、結合剤等などと適宜組み合わせて製剤化して投与することが考えられる。
本発明の血中ヒアルロン酸濃度上昇剤または癌転移抑制剤の形態(剤形)としては、注射剤形、凍結乾燥剤形、溶液剤形などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
患者への投与は経口、非経口投与のいずれでも可能であるが、好ましくは非経口投与であり、例えば、注射投与が可能である。注射投与の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、皮内注射などにより全身または局部的に投与することができる。
投与量は、患者の体重や年齢、投与方法、症状などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。一般的な投与量は、薬剤の有効血中濃度や代謝時間により異なるが、1日の維持量として約0.1mg/kg〜約1.0g/kg、好ましくは約0.1mg/kg〜約10mg/kg、より好ましくは約0.1mg/kg〜約1.0mg/kgであると考えられる。投与は1回から数回に分けて行うことができる。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.方法
1−1.ターゲティングベクターの構築およびノックアウトマウス系の作出
マウスStabilin2遺伝子を含有するRP23-390G20 BACクローンを、Invitrogen (Carisbad, CA)から購入した。βガラクトシダーゼ(LacZ)断片をプラスミドPCH110から得た。pGK-Neor断片をpL451から得た。Stabilin2遺伝子由来の250 bpの2本の相同アームをpBluescript SK(+)プラスミド中LacZ-pGK-Neorカセットの両側に挿入した。組換え法によってLacZ-pGK-NeorカセットをStabilin2遺伝子のATG開始コドンに導入した(Copeland NG, Jenkins NA, and Court DL. Recombineering: a powerful new tool for mouse functional genomics. Nat Rev Genet 2: 769-779, 2001.)。標的BACのサイズを191 kbから18.3 kbに減らし、ギャップ修復法によってpL253ベクターにサブクローニングした。G418およびデオキシ-2-フルオロ-o3-D-アラビノフラノシル-S-ヨードウラシル(deoxy-2-fluoro-o3-D-avabinofuranosyl-S-iodouracil; FIAU)を用いたポジティブ及びネガティブ選択の後、サザンブロット解析によって標的TT2 ESクローンを選択した。次いでCD-1マウス由来の単一の8細胞胚と凝集させた(Yoshizawa T, Handa Y, Uematsu Y, Takeda S, Sekine K, Yoshihara Y, Kawakami T, Arioka K, Sato H, Uchiyama Y, Masushige S, Fukamizu A, Matsumoto T, and Kato S. Mice lacking the vitamin D receptor exhibit impaired bone formation, uterine hypoplasia and growth retardation after weaning. Nature genetics 16: 391-396, 1997.)。もともとは、遺伝的背景がC57BL/6およびCBA雑種のStabilin2ノックアウトマウスを、背景C57BL/6に少なくとも6世代にわたって戻し交配した。
1−2.抗体、フローサイトメトリーおよび免疫染色
使用する一次抗体を非抱合型とし、ビオチン標識ラット抗マウスStabilin2モノクローナル抗体(#34-2)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)抱合抗マウスCD45モノクローナル抗体および抗マウスCD31 (PECAM)モノクローナル抗体(BD biosciences Pharmingen, San Diego, CA)を本発明者らの研究室において作出した(Nonaka H, Tanaka M, Suzuki K, and Miyajima A. Development of murine hepatic sinusoidal endothelial cells characterized by the expression of hyaluronan receptors. Dev Dyn 236: 2258-2267, 2007.)。使用する二次抗体をAlexa Fluor (登録商標) 555ヤギ抗ラットIgG、およびアロフィコシアニン(APC)抱合ストレプトアビジン(Invitrogen, Carisbad, CA)とした。フローサイトメトリーを既報のように行った(Nonaka H, Tanaka M, Suzuki K, and Miyajima A. Development of murine hepatic sinusoidal endothelial cells characterized by the expression of hyaluronan receptors. Dev Dyn 236: 2258-2267, 2007.)。免疫染色のため、肝臓を10 μmの切片に切り分け、APSでコーティングしたスライドガラス(Matsunami glass Ind. Ltd. Osaka, Japan) に載せた。それらをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中4%のパラホルムアルデヒド(PFA)により10分間固定した。切片をPBS中0.2%のトライトンX-100で処理し、PBS中2%のスキムミルクとともにインキュベートし、一次抗体とともにインキュベートし、引き続き二次抗体とのインキュベーションを行った。Axioskop2 plus顕微鏡(Zeiss)をAquaCosmosソフトウェア(Hamamatsu Photonics)により用いて画像を取り込んだ。
1−3.血清中ヒアルロン酸レベルの測定
血清中ヒアルロン酸レベルを製造元の使用説明書にしたがいヒアルロン酸測定キット(Seikagaku Corporation, Tokyo, Japan)で測定した。
1−4.細胞調製および細胞培養
成体肝臓を門脈により0.05% IV型コラゲナーゼ(Sigma-Aldrich. St. Louis, MO)で局所(in situ)灌流した。低速遠心分離(Seglan 1976参照)、その後30% Percoll (GE Healthcare)/Lympholyte-M (Cedarlane Laboratories Ltd., ON, Canada)密度分離により、NPCを肝細胞から分離した。NPCを、2%ウシ胎仔血清および内皮増殖サプリメント(EGM-2 SingleQuots, Cambrex)を補充したEGM-2培地(Cambrex Corporation, East Rutherford, NJ)中で培養し、フィブロネクチンでコーティングされた培養皿に蒔いた。1日のインキュベーション後、細胞を、終濃度5 mg/mlのFITC標識ヒアルロン酸ナトリウム(PG research, Tokyo, Japan)とともに3時間インキュベートした。必要に応じてラットIgGまたはラット抗マウスStabilin2モノクローナル抗体(5 μg/ml)を添加した。細胞をPBSで洗浄し、次いでFITC蛍光強度をAquaCosmosソフトウェア(Hamamatsu Photonics)により取り込み、ImageJソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/ij/index.html)で定量化した。細胞の数に相当する、Hoechstで染色された核の数をカウントし、細胞あたりの蛍光強度を計算した。B16F10細胞は10%ウシ胎仔血清(FBS)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で培養した。
1−5.定量的リアルタイムRT-PCR
各サンプル由来の総RNA 1 μgをHigh Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Applied Biosystems, CA)により一本鎖cDNAに逆転写した。全ての遺伝子に対するプライマーセットをHokkaido System Science (Hokkaido, Japan)から購入した。製造元の使用説明書にしたがいLightCycler (登録商標) ST300でSYBRプレミックスEx Taq (Takara Bio Inc. Tokyo, Japan)を用いリアルタイムPCRを行った。連続的に希釈した産物を同じPCRプロトコルを用い増幅することによって作成した標準曲線に、実験サンプルを適合させた。RNA回収率および逆転写効率のバラツキを補正するため、既報(Naiki T, Saijou E, Miyaoka Y, Sekine K, and Miyajima A. TRB2, a mouse Tribbles ortholog, suppresses adipocyte differentiation by inhibiting AKT and C/EBPbeta. The Journal of biological chemistry 282: 24075-24082, 2007.)のように各cDNA調製においてβ-アクチンcDNAを増幅し定量化した。
1−6.転移アッセイ法
B16F10細胞をPBS 0.2 ml中に細胞5×105個の密度で懸濁し、これをC57BL6/jマウスの外側尾静脈に注射した。注射後14日の時点で、肺を切除し、表面の小結節を解剖顕微鏡下でカウントした。抗体処理による実験の場合、抗Stabilin2または非特異的ラットIgG (Beckman coulter)を腹腔内注射(3 mg/kg)によって3日ごとにBALB/cAJcl-nu/nuマウスに投与した。最初の注射から2日後、B16F10細胞5×104個を尾静脈注射によって移植した。14日後、肺表面の小結節をカウントした。
またルイス肺癌細胞、Lewis lung carcinoma (LLC) 8x105 cellsを0.2 mlのPBSに懸濁し、マウスの尾静脈に注射した。注射18日後、肺を取り、表面の結節を計数した。
1−7.細胞接着アッセイ法
ヒアルロン酸でコーティングしたプレートへのB16F-10黒色腫細胞の接着を、少し変更を加えながら既述(Nobumoto A, Nagahara K, Oomizu S, Katoh S, Nishi N, Takeshita K, Niki T, Tominaga A, Yamauchi A, and Hirashima M. Galectin-9 suppresses tumor metastasis by blocking adhesion to endothelium and extracellular matrices. Glycobiology 18: 735-744, 2008.)のように行った。手短に言えば、96ウェルプレートを4℃で一晩100 μg/ml ヒアルロン酸によりコーティングした。次に、プレートを室温で60分間1% BSA/DMEMによりブロッキングした。ヒアルロン酸でコーティングしたプレートに0.02% BSA/無血清DMEM中のヒアルロン酸(0〜40 μg/ml)の存在下、B16F10細胞(細胞4×104個)を添加した。37℃で60分間のインキュベーションの後、プレートを加温PBSにより2回洗浄して非接着細胞を除去し、接着細胞を37℃で120分間WST-1とともにインキュベートした。450 nmの吸光度をプレートリーダーで測定することにより、接着細胞の数を定量化した。
1−8.ウエスタンブロット解析
細胞を冷PBSで洗浄し、その後、緩衝液(50 mM Tris-HCl、2 mM EDTA、100 mM NaCl、50 mM NaF、30 mMピロリン酸ナトリウム、1 mMオルトバナジウム酸ナトリウム、1 mM PMSFおよび10 μg/mlロイペプチン、0.075 U/mlアプロチニン、1 mM DTTならびに1%トライトン-X100)中で溶解した。抽出物を4℃で30分間15,000 rpmにて遠心分離した。Bio-Radプロテインアッセイ(Bio-Rad)によってタンパク質濃度を測定した。タンパク質をSDS-PAGEによって分離し、ナイロン膜に転写した。ブロッキング手順の後に、タンパク質を抗Akt抗体(Cell Signaling)、抗ホスホ-Akt抗体(T308, S437, Cell Signaling)、抗ERK1/2抗体(Cell Signaling)および抗ホスホ-ERK1/2抗体(Cell Signaling)で免疫ブロットし、高感度化学発光(Perkin Elmer)によって検出した。
1−9.統計解析
データをスチューデントのt検定によって解析した。エラーバーは標準偏差を示す。
2.結果及び考察
2−1.in vivoにおけるStabilin2の生理的役割
in vivoにおけるStabilin2の生理的役割を検討するため、本発明者らは、ATG開始コドンを含む第1エクソンおよび第1イントロンの大部分を、LacZおよびネオマイシン耐性遺伝子と置き換えることによってStabilin2ノックアウト(KO)マウス系を作出した(図1A、B)。肝内皮細胞を用いたフローサイトメトリーにより、KOマウスにおいてStabilin2の発現のないことが確認された(図1D)。Stabilin2欠損マウスはメンデル比にしたがって生まれ(データ不掲載)、正常に成長し、明らかな異常を示さなかった(図2A、B)。血液学的および組織学的解析では、KOマウスにおける顕著な変化は示されなかった(図3A、データ不掲載)。抗CD31抗体による肝臓切片の染色では、肝洞様毛細血管の正常な発達が示された(図3B)。さらに、膵臓、肝臓および腎臓の機能に関する従来の診断マーカーにおいて顕著な差異は認められなかった(データ不掲載)。これらの結果は、マウスの正常な発達および生存能にとってStabilin2が必要でないことを示している。
2−2.Stabilin2 KOマウスにおけるヒアルロン酸、低密度リポタンパク質およびヘパリンの血清中レベルの評価
Stabilin2は、ヒアルロン酸、低密度リポタンパク質(LDL)およびヘパリンを含むさまざまな物質を結合し、かつ循環血液から除去するスカベンジャ受容体として知られている(Zhou B, Weigel JA, Fauss L, and Weigel PH. Identification of the hyaluronan receptor for endocytosis (HARE). The Journal of biological chemistry 275: 37733-37741, 2000.,Adachi H, and Tsujimoto M. FEEL-1, a novel scavenger receptor with in vitro bacteria-binding and angiogenesis-modulating activities. The Journal of biological chemistry 277: 34264-34270, 2002., Harris EN, Weigel JA, and Weigel PH. The human hyaluronan receptor for endocytosis (HARE/Stab2) is a systemic clearance receptor for heparin. The Journal of biological chemistry 2008.)。そこで本発明者らは、Stabilin2 KOマウスにおけるこれらの物質の血清中レベルを評価した。LDLおよびヘパリンの血清中レベルはStabilin2 KOマウスにおいて変わらなかったが(図2C、D)、血清中ヒアルロン酸レベルは対照マウスと比べて59倍も劇的に増加した(図3C。n=3(野生型では0.40、0.66、0.60μg/ml。Stabilin2 KOマウスでは27.1、34.0、37.6μg/ml。))。血清中ヒアルロン酸の分子量は不均一であることが知られているが、ゲルろ過によって特定の画分がKOの血清中に増すことはなかった(データ不掲載)。90%を超える循環血中ヒアルロン酸がHSECによって排除されており(Fraser JR, Alcorn D, Laurent TC, Robinson AD, and Ryan GB. Uptake of circulating hyaluronic acid by the rat liver. Cellular localization in situ. Cell and tissue research 242: 505-510, 1985.)、Stabilin2がHSECにおいて特異的に発現される。このことから本発明者らは、Stabilin2 KOマウスにおける高い血清中ヒアルロン酸レベルがHSECにおけるヒアルロン酸エンドサイトーシス作用能の欠如によるものであったかどうかを検討した。肝NPCを野生型マウスおよびStabilin2 KOマウスから調製し、そのエンドサイトーシス作用活性をFITC標識ヒアルロン酸の取り込みによって定量的に評価した(図3Dおよび1E)。Stabilin2 KO NPCへのヒアルロン酸の取り込みは、野生型対照のおよそ8%に減少した。対照的に、DiI標識アセチル化LDL (Ac-LDL)の取り込みは、変異細胞において不変であった(図2E、F)。本発明者らは他のヒアルロン酸受容体(CD44およびLyve-1)、ならびにヒアルロン酸レベルに潜在的に影響を与えるヒアルロン酸合成酵素(HAS1、HAS2およびHAS3)の発現についても調べた。しかしStabilin2 KOマウスにおいて、それらの発現に顕著な変化は認められなかった(図4)。これらの結果は、Stabilin2がヒアルロン酸に対する主要なクリアランス受容体であり、Stabilin2の欠如が血清中ヒアルロン酸レベルを劇的に上昇させるというインビボでの明らかな証拠となる。
2−3.Stabilin2の欠損と腫瘍形成の関係
Stabilin2 KOマウスにおける血清中ヒアルロン酸レベルの上昇から、本発明者らは、Stabilin2の欠損が腫瘍形成に何らかの影響を及ぼすか否か調べた。B16F10細胞は皮下接種によって局所的に腫瘍を形成することが知られているが、静脈注射によって肺の中に小結節を形成する。本発明者らは最初に、背景C57/BL6のStabilin2+/+または-/-の同腹仔の皮下にB16F10細胞を接種した。21日後、腫瘍が両種のマウスにおいて形成され、それらの間で腫瘍サイズの顕著な差異は認められなかった(図5A)。また、高レベルの循環血中ヒアルロン酸がインビボでの腫瘍増殖に顕著な影響を与えないことが示された。これと一貫して、インビトロにおいて黒色腫細胞にヒアルロン酸を加えても、その増殖(図9)およびErk/Aktの活性化に影響を及ぼさなかった(図6)。これらの結果は、ヒアルロン酸が黒色腫の増殖に影響を与えないことを示している。本発明者らは次いで、Stabilin2 +/+および-/-マウスの同腹仔の静脈内にB16F10細胞を接種した。14日後、多数の黒色の小結節がStabilin2 +/+マウスの肺表面に形成された。しかしながら、興味深いことに、小結節の形成はStabilin2 -/-マウスにおいて著しく低下した(図5B、C)。
またルイス肺癌細胞 (LLC)をマウスの尾静脈に注射した場合、野生型と比較してStabilin2 KOマウスではLLCの転移を示す肺結節の形成が有意に(P=0.0443, Student's t-test)減少した(図7。野生型マウスの肺結節数は114、132、83、80(n=4)。Stabilin2 KOマウスの肺結節数は72、44、60(N=3))。
これらの結果は、循環血中ヒアルロン酸レベルの上昇が黒色腫細胞の増殖に影響を与えるのではなく、その転移の阻止にかかわっていることを明示している。
2−4.抗Stabilin2抗体による癌転移の抑制
次に本発明者らは、転移が抗Stabilin2抗体によって阻止されうるかどうかを調べた。本発明者らは、Stabilin2に対する一つのモノクローナル抗体(mAb) #34-2がインビトロにおいて肝NPCへのFITC標識ヒアルロン酸の取り込みを阻害することを認めた(図8A)。抗Stabilin2モノクローナル抗体がインビボにおいて血清中ヒアルロン酸レベルに何らかの影響を及ぼすかどうかを試験するため、この阻害抗体を3日ごとにヌードマウスの腹腔内に注射し、血清中ヒアルロン酸レベルをモニターした。最初のモノクローナル抗体注射後3日以内に、血清中ヒアルロン酸レベルは、モノクローナル抗体を注射したマウスの全てで増加した。しかしコントロールIgGを注射したものでは増加しなかった(図8B。抗Stabilin2モノクローナル抗体を注射した場合、26.8、26.8、31.0、27.6、28.4μg/ml(N=5)。コントロールIgGを注射した場合、2.35、2.85、3.50、2.49、2.51μg/ml(N=5))。この結果は、抗Stabilin2モノクローナル抗体がインビボにおいてヒアルロン酸のクリアランスを効果的に阻害することを明確に示している。抗Stabilin2モノクローナル抗体が腫瘍転移を阻止するかどうかを試験するため、マウスに抗Stabilin2モノクローナル抗体またはコントロールIgGのいずれかを投与し、2日後にB16F10細胞を接種した。図8CおよびDに示すように、抗Stabilin2モノクローナル抗体は黒色腫の転移を著しく抑制した。総合すると、これらの結果は、抗Stabilin2モノクローナル抗体が循環血中ヒアルロン酸レベルを、HSECでのそのクリアランスを遮断することによって上昇させ、血清中ヒアルロン酸レベルが腫瘍転移と逆相関することを示している。
CD44は主要なヒアルロン酸受容体であり、内皮細胞上のヒアルロン酸に結合することによって免疫細胞のローリングおよび血管外遊出に関係づけられている。B16F10黒色腫はその細胞表面にCD44を発現しており(Zawadzki V, Perschl A, Rosel M, Hekele A, and Zoller M. Blockade of metastasis formation by CD44-receptor globulin. International journal of cancer 75: 919-924, 1998.)、抗CD44抗体またはCD44-Fc融合タンパク質によるCD44の阻害は腫瘍細胞の増殖および転移を遮断する(Bartolazzi A, Peach R, Aruffo A, and Stamenkovic I. Interaction between CD44 and hyaluronate is directly implicated in the regulation of tumor development. The Journal of experimental medicine 180: 53-66, 1994., Guo Y, Ma J, Wang J, Che X, Narula J, Bigby M, Wu M, and Sy MS. Inhibition of human melanoma growth and metastasis in vivo by anti-CD44 monoclonal antibody. Cancer research 54: 1561-1565, 1994.)ことが明らかにされている。このことから、循環血液中の過剰なヒアルロン酸は、肺組織上に提示されたヒアルロン酸と黒色腫細胞表面上のCD44の相互作用を阻害し、標的組織への黒色腫の付着を阻止しうると考えられる。この可能性を検討するため本発明者らは、ヒアルロン酸が、プレート上に提示されたヒアルロン酸への黒色腫の結合に何らかの影響を及ぼすかどうかを試験した。黒色腫細胞はヒアルロン酸でコーティングしたプレートに付着し、この付着はStabilin2 KOマウスにおいて上昇していたヒアルロン酸レベルに匹敵する濃度のヒアルロン酸の添加によって阻害された。しかし正常な血清中レベルのヒアルロン酸では阻害することができなかった(図8E)。これらの結果は、Stabilin2欠損マウスにおける転移の抑制が、少なくとも一つには、標的部位への黒色腫の付着の阻害による可能性があることを示唆している。
本発明では、Stabilin2がヒアルロン酸に対する主要なクリアランス受容体であることを示すインビボおよびインビトロでのいくつかの証拠が提供された。Lyve-1は、HSECにおいて高度に発現されるヒアルロン酸結合タンパク質であるが、Lyve-1の欠損マウスは血清中ヒアルロン酸レベルの変化を示さなかった(Gale NW, Prevo R, Espinosa J, Ferguson DJ, Dominguez MG, Yancopoulos GD, Thurston G, and Jackson DG. Normal lymphatic development and function in mice deficient for the lymphatic hyaluronan receptor LYVE-1. Molecular and cellular biology 27: 595-604, 2007.)ことから、ヒアルロン酸を除去するStabilin2の機能をLyve-1が補うわけではないことが示唆された。対照的に、他のStabilin2リガンド、つまりLDLおよびヘパリンの血清中レベルは、Stabilin2欠損マウスにおいて増加しておらず、Stabilin2 KOの肝臓NPCへのその取り込みは正常であったことから、Lyve-1およびStab1のような、その他いくつかのスカベンジャ受容体がこれらの分子のクリアランスに関与していることが示唆された。
本発明において最も驚くべき重要な所見は、Stabilin2欠損マウスでの黒色腫およびがん腫の転移が著しく低下したこと、及び、循環血中において高レベルのヒアルロン酸が腫瘍転移を阻止することが示唆されたことである。この可能性は、抗Stabilin2抗体の投与がStabilin2+マウスにおいてヒアルロン酸レベルを増大し、転移を抑制したという所見によってさらに支持された。このように本発明は、Stabilin2がインビボにおいてヒアルロン酸に対する正真正銘の主要なクリアランス受容体であり、循環血液中の高レベルのヒアルロン酸によって腫瘍転移が阻止されることを実証する。増大したヒアルロン酸レベルによる転移抑制の正確な機序は不明であるが、図8E中の結果によって示唆されるように、腫瘍細胞上のCD44とそのニッチとの間の相互作用は高濃度のヒアルロン酸によって乱される可能性がある。Stabilin2 KOマウスは生存可能であり、明白な欠陥を示さないことから、通常の生活にとってStabilin2が必要でなく、同様に循環血中ヒアルロン酸レベルの上昇が通常の生活に悪影響を及ぼさないことも示唆される。最も重要なことは、腫瘍転移はStabilin2 KOマウスおよび抗Stabilin2抗体で処理したStabilin2+マウスにおいて著しく低下することである。このように、Stabilin2は、転移を抑制する薬物を開発するのに理想的な標的となり得る。

Claims (3)

  1. 被検物質からStabilin2の発現抑制もしくは機能阻害作用を有する物質を選択することを特徴とする、血中ヒアルロン酸濃度上昇剤及び/又は癌転移抑制剤の候補物質のスクリーニング方法。
  2. 抗Stabilin2抗体を有効成分として含有する血中ヒアルロン酸濃度上昇剤。
  3. 抗Stabilin2抗体を有効成分として含有する癌転移抑制剤。
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