JP2010271112A - 木材および木質材料の強度評価方法 - Google Patents

木材および木質材料の強度評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 住宅などの木造建築物に用いられている木質部材の強度を、非破壊的、簡便かつ正確に評価する方法とそのための装置を提供すること。
【解決手段】 (a)木ねじを木質部材にねじ込む工程、(b)その間にねじを回転させるのに必要なトルクおよびねじの回転角あるいは回転数を計測する工程、(c)所定の回転角度あるいは回転数ごとのトルク値を積分してねじ込み仕事量を求める工程、(d)別途求めておいたねじ込みの仕事量と強度との関係を参照して、ねじ込み仕事量から木質部材の強度を推定する。
【選択図】 図1

Description

本願発明は、住宅などの木質構造物の性能評価、改修や維持管理に際して必要となる情報のうち、構造物の強度性能、耐震性能、耐久性や劣化状態を調べる際に必要となる木質部材の強度性能を、非破壊的に簡便かつ高い信頼性で定量的に評価する手法と装置に関するものである。
住宅などにおいて使用下にある木質部材の強度を、当該の部材を取り外したり、破壊することなく計測したり推定する方法は確立していない。現状では、例えば耐震診断、改修や維持管理のために木質部材の強度や、様々な劣化による強度の低下を診断する際には、視診、触診や打診などの定性的でかつ診断者の技能や主観に依存したあいまいな評価手法に依存せざるを得ない状況にある。(例えば特許文献1〜3参照)。
例えば、特許文献1(特開昭57−197468号)は、木材に錐で穿孔した際のトルク値から木材の強度を推定するものである。
例えば、特許文献2(特開平10−267922号)は、木材にねじ込んだ木ねじに所定の引き抜き力をかけ、木ねじの引きぬけの有無で木材の強度を判定するものである。
例えば、特許文献3(特開2002−39929号)は、木質部材に予めガイド孔をあけておき、先端部の側面に木ねじ状のらせん状の突起を有する丸棒状の探測子をねじ込んだときのトルクを測定し、その変化パターンから所定の深さでの木質建材の強度を推定するものである。
特開昭57−197468号公報 特開平10−267922号公報 特開2002−39929号公報
これらの既往の技術は、木ねじや錐あるいはそれと類似の要素を強度を調べたい木質部材にねじ込むときのトルクや、ねじ込んだ要素を引き抜く時の力から木質部材の強度やその分布を推定するものであるが、以下のような問題点がある。すなわち、特許文献1では、深さ方向の強度変化を正確に評価するためには穿孔時に錐に送り方向に加える力(スラスト力)や送り量を一定にする必要があり、そのための仕組みが必要になるといった問題がある。またトルクの瞬時値が錐の穿孔深さが増し、錐と木部との接触面積が増えると、両者の摩擦が増加するために単調に増加し、これによって所定の深さにおける強度の評価が困難になる、といった問題がある。特許文献2は、材料の強度を定量的に評価することができない、木ねじの引き抜けにより木部に損傷が生じる、一定の大きさと時間変化の引き抜き力を与えるための仕掛けが必要になる、といった問題がある。
特許文献3は、ねじ込み時のモーメント(トルク)の変化パターンを種々の条件のもとで求め、一旦測定したデータをグラフ化して、これらを比較評価して内部強度を相対的に推定する方法を提案している。この方法は従来法に比べて客観的ではあるが、データ処理に極めて時間がかかることや、データのからの判定に経験を要す。また強度の絶対値を簡便に推定するものではなく、推定の方法も明らかにしていない。またねじ込みに先立ちガイド孔をあける操作が必要である上、ガイド孔の径のわずかなばらつきにより、回転モーメントが大きく影響を受け、正確な強度推定ができないといった問題がある。さらに回転モーメントが木目の影響を受けるため、原理的には木目に応じて推定強度に補正が必要となるが、部材表面の木目から正確な補正を行うことは不可能である。さらに木ねじのついた探測子を繰り返し使用することでねじ部の摩耗が生じ、正確な強度推定が不可能になる。
本願発明は、木質部材の強度を、木ねじのねじ込み時のトルクの瞬時値の回転角に関する積分値である仕事量という1つの定量値によって表示することにより簡単に、経験によらず木質部材全体の強度が評価できる。実際の作業としては、(a)木ねじを木質部材にねじ込む工程、(b)その間にねじを回転させるのに必要なトルクおよびねじの回転角あるいは回転数を計測する工程、(c)数式(1)を用いて所定の回転角度θあるいは回転数ごとのトルク値T(θ)を積分してねじ込み仕事量Wを求める工程、(d)別途求めておいたねじ込みの仕事量と強度との関係を参照して、ねじ込み仕事量から強度を推定する工程からなるプロセスで上記の従来技術の課題を解決するものである。
Figure 2010271112
上記において、トルクや回転角度(回転数)のアナログ値は、デジタル変換し、離散値として扱い、仕事量を求める積分操作を、離散データの積算値として求めたり、トルク値の細かな変動をフィルタ処理して除去することがある。
本願発明によって、住宅など木質構造物の木質部材の強度を、非破壊的に、部材を取り外すことなく、簡便かつ高い信頼性で定量的に推定することができる。また本願発明によって木質部材の強度を評価することによって木質構造物の強度性能、耐震性能、劣化度(健全度)や耐久性を客観的に評価することができ、構造物の性能評価、改修や維持管理の手法の決定に大いに役立つ。また類似の先行技術に比べて、ガイド孔をあける手間を省略できる、仕事量から直接的に強度を推定できる、ねじ込み時の回転速度の変動の影響を受けない、器具の摩耗の影響を受けないなどの利点があり、より簡便でかつ信頼性の高い強度推定が可能になる。
材質検査装置の構成 ねじ込みの仕事量を計算方法の概念図 木質部材の強度とねじ込み仕事量との関係図
木質部材に木ねじをねじ込む際に必要となるトルクやその回転角度(回転数)についての積算値である仕事量は、当該の木質部材の強度と相関する。従ってねじ込みのトルクや仕事量を評価することで木質部材の強度推定が可能になる。従来技術ではトルク値やその変化パターンから木質部材の強度を推定しているが、この方法では木ねじの回転速度変動によるトルクの変動を除去したり、木ねじと木質部材との摩擦のトルクへの影響や木目のトルクへの影響を除去する方法や装置が必要で、実用面において困難な問題があった。本願発明によって、ガイド孔をあけることなく、木ねじのねじ込み時のトルクの回転角(回転数)に関する積算値である仕事量から、それと関連する強度を直接的に推定することができる。またねじ込み中には回転速度の変動するため、トルクを時間積分しても正確な仕事量は求められないが、本願発明のように回転数を監視し、回転角(あるいは回転数)に関する積分値を求めることで正確な仕事量が得られる。また本願発明の方法は、木ねじを所定の深さまでねじ込むときに必要な力学的な仕事量で直接的に強度を評価するため、従来技術のようにねじ込み深さごとのトルク値やその変化パターンを比較検討する必要がない。さらにねじ込みの仕事量は木目の影響を受けない、木ねじは消耗品として使用できるので常に新品の木ねじで試験を行うことができ、ねじ部の摩耗の影響を考慮する必要がない、木ねじによって木質部材に孔はあくが、試験後に木ねじを抜く必要は必ずしもないため、従来法に比べてより非破壊的な条件での試験が可能になる。
[実施例1]
図1に本発明を実施するための機器構成を示す。木ねじ1を回すビット2を取り付けるようにした既知のトルクセンサ3にロータリーエンコーダ4を介して電動モータ5を力が直列に伝達するように配置している。モータ5の回転がローリーエンコーダ4、トルクセンサ3、ビット2を介して木ねじ1に伝わる。木ねじ1が被測定対象の木材に食い込んで行くときの回転角及びそのときのトルク値のデータが演算処理部6に取り込まれ、仕事量(W)=∫T(θ)dθが計算され、結果が表示器に表示されるかあるいは記憶装置(メモリ)に記憶、または記録装置に記録される。
図2にねじ込み中のトルク値の変化と、回転数を監視するロータリーエンコーダの出力の例を示す。図の実施例では、ロータリーエンコーダは木ねじが1回転するごとに単発のパルス状の電圧変化を示す。ねじ込みのトルクはねじ込み始めから終わりにかけて単調に増加している。これはねじ込み深さが増すにつれて木ねじと木材との接触面積が増え、摩擦が増えるためであるが、同時にこの増加の仕方はねじ込み部分の強度によっても異なる。ロータリーエンコーダの出力を参照し、毎回転ごとのトルク値を求め、これを1回転目から最終回転数まで積算することによって、ねじ込みの仕事量を求めることができる。ロータリーエンコーダが例えば木ねじが半回転(0.5回転)するごとにパルス状の電圧を出力する場合には、その都度のトルク値の積算値に0.5を乗じることによってねじ込みの仕事量を求めることができる。このようにロータリーエンコーダの回転数検出精度に応じて、トルクの積算値はより詳しく正確に求めることができる。
図3は、上記の方法でねじ込み仕事量を求める操作を、強度の異なる複数の木質建材で実施し、ねじ込み仕事量と強度との関係をグラフ化した例である。ねじ込み仕事量と強度は相関し、強度の高い材料ほどねじ込み仕事量は増加する。予めこの関係を求め、ねじ込み仕事量と強度と関係の回帰式を得ることによって、ねじ込み仕事量から強度を推定することが可能になる。
1・・・木ねじ
2・・・ビット
3・・・トルクセンサ
4・・・ロータリーエンコーダ
5・・・電動モータ
6・・・演算処理部
7・・・表示部
8・・・記録計(メモリ)

Claims (2)

  1. (a)木ねじを木質部材にねじ込む工程、(b)その間にねじを回転させるのに必要なトルクおよびねじの回転角あるいは回転数を計測する工程、(c)所定の回転角度あるいは回転数ごとのトルク値を積分してねじ込み仕事量を求める工程、(d)別途求めておいたねじ込みの仕事量と強度との関係を参照して、ねじ込み仕事量から強度を推定する工程からなることを特徴とする木質部材の強度を推定する方法。
  2. 請求項1において、トルクや回転角(回転数)の計測値を、デジタルデータに変換し、フィルタ処理、積算などの処理を行うことを特徴とする木質部材の強度推定方法。
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