JP2010270717A - タービン静翼の植え込み方法、及びタービンノズル - Google Patents
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Abstract
【課題】タービン静翼の植え込み作業の負担を軽減し、かつタービン運転時にタービン静翼が単独で振動するのを抑制する。
【解決手段】本発明のタービン静翼の植え込み方法は、半円筒形のステータの円筒内壁面に周方向に沿って形成されタービン静翼の基部が係合する両端開口の溝の一端から他端へ、複数のタービン静翼を周方向に順次スライドさせて植え込むものであり、ステータの温度を複数のタービン静翼の温度より相対的に高くする工程1と、ステータの溝の他端に、最初に植え込まれるタービン静翼の基部と当接する第1の規制部材を設ける工程2と、第1及び第2工程の後に、ステータの溝の一端から他端へ複数のタービン静翼を周方向に順次スライドさせて植え込む工程3と、第3工程の後に、ステータの溝の一端に、最後に埋め込まれたタービン静翼の基部と当接する第2の規制部材を設ける工程4を有する。
【選択図】図9
【解決手段】本発明のタービン静翼の植え込み方法は、半円筒形のステータの円筒内壁面に周方向に沿って形成されタービン静翼の基部が係合する両端開口の溝の一端から他端へ、複数のタービン静翼を周方向に順次スライドさせて植え込むものであり、ステータの温度を複数のタービン静翼の温度より相対的に高くする工程1と、ステータの溝の他端に、最初に植え込まれるタービン静翼の基部と当接する第1の規制部材を設ける工程2と、第1及び第2工程の後に、ステータの溝の一端から他端へ複数のタービン静翼を周方向に順次スライドさせて植え込む工程3と、第3工程の後に、ステータの溝の一端に、最後に埋め込まれたタービン静翼の基部と当接する第2の規制部材を設ける工程4を有する。
【選択図】図9
Description
本発明は、タービン静翼の植え込み方法、及びタービンノズルに係り、特に半円筒形のステータの円筒内壁面に形成された溝に、シュラウド付きタービン静翼を順次スライドして植え込む際のタービン静翼の植え込み技術に関する。
軸流タービンのノズル(静翼)は、ガスや蒸気などの流体のもつ熱エネルギを運動エネルギに変換し動翼を回転させるものであり、一対の半円筒形のステータと、各ステータの円筒内壁面に周方向に沿って形成された溝に植え込まれた複数のタービン静翼とを有して構成される。
タービン静翼は、ステータの溝と係合する基部と、基部からステータの円筒中央に向かって延在する翼部と、翼部の先端に設けられたシュラウド部とで一体形成される。ステータの溝は、ステータの周方向の両端面に開口し、タービン静翼の基部と係合するよう形成されている。複数のタービン静翼は、ステータの溝の一端から他端へ周方向に順次スライドさせて植え込まれる。各ステータにタービン静翼が植え込まれた後、各ステータの周方向の端面同士を合わせることにより円筒形に組み立てられる。
ところで、ステータに植え込まれて環状翼列をなす複数のタービン静翼は、隣接するタービン静翼間で互いにシュラウド部及び基部同士が接することにより、タービン運転時に生じる翼の振動を減衰させ、振動を小さくすることが知られている(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、タービン運転時のステータの熱伸びによりステータの径が大きくなると、ステータに引っ張られて各タービン静翼のシュラウド部の位置が円筒中心から離れる方向に移動し、これにより隣接するシュラウド部間の接触が緩むおそれがある。隣接シュラウド部間の接触が緩むと振動の減衰効果は失われ、タービン静翼が単独で振動するので、この振動による応力が大きくなると、最悪の場合、タービン静翼が破損するというおそれもある。
これに対して、タービン運転時のシュラウド部の緩みをなくすために、シュラウド部の周方向寸法を幾何学寸法(複数のタービン静翼がステータの溝に植え込まれた状態で隣接するシュラウド部が互いに接触する寸法)よりも長くとる方法が一般的に知られている。しかし、シュラウド部の周方向寸法を幾何学寸法よりも大きく確保した場合、ステータに植込みにくくなるおそれがある。例えば、環状翼列において最後に植え込む翼数本の寸法の修正加工をしたり、或いは最後に植込む翼を押し込み装置により強制的に押し込む方法なども考えられるが、植え込む手間や時間がかかり、タービン静翼に傷をつけるおそれもある。
この点、特許文献2はタービン動翼に関するものであるが、同様の問題及び解決手法が開示されている。すなわち、複数のタービン動翼が植え込まれるタービンロータのディスクの外周部の温度をタービン動翼のシュラウド部の温度より所定の温度高くした状態で、複数のタービン動翼を植え込むというものである。これによれば、タービンロータのディスクの径が熱膨張により大きくなった状態でタービン動翼が植え込まれるので、タービン動翼のシュラウド部の周方向の寸法を幾何学寸法より大きくしていても容易に植え込みが行なわれ、かつタービン運転時の隣接シュラウド部間の接触の緩みを抑制することができるとされている。
しかしながら、特許文献2に記載されている手法は、あくまでタービン動翼の植え込みに関するものであるため、タービン静翼の植え込みについては配慮されていない。
すなわち、特許文献2に記載された手法をそのままタービン静翼の植え込みに適用した場合、シュラウド部の周方向寸法を幾何学寸法より大きくし、ステータの温度をタービン静翼の温度より高くして熱膨張させた状態でタービン静翼を植え込むことになる。この場合、各ステータにタービン静翼を植え込んだ後ステータの温度が下がるとステータが収縮し、この収縮にともなって各ステータの周方向の端面からタービン静翼の基部が突出するおそれがある。上述のようにタービンの静翼の組み立ては、一対の半円筒形のステータにそれぞれ複数のタービン静翼を植え込み、その後にステータの周方向の両端面同士を合わせて円筒形にするという工程があるため、ステータの周方向の端面からタービン静翼の基部が突出しているとこの工程に手間がかかって好ましくない。
そこで本発明は、タービン静翼の植え込み作業の負担を軽減し、かつタービン運転時にタービン静翼が単独で振動するのを抑制することを課題とする。
本発明のタービン静翼の植え込み方法は、半円筒形のステータの円筒内壁面に周方向に沿って形成されタービン静翼の基部が係合する両端開口の溝の一端から他端へ、複数のタービン静翼を周方向に順次スライドさせて植え込むものである。そして、ステータの温度を複数のタービン静翼の温度より相対的に高くする第1工程と、ステータの溝の他端に、最初に植え込まれるタービン静翼の基部と当接する第1の規制部材を設ける第2工程と、第1及び第2工程の後に、ステータの溝の一端から他端へ複数のタービン静翼を周方向に順次スライドさせて植え込む第3工程と、第3工程の後に、ステータの溝の一端に、最後に埋め込まれたタービン静翼の基部と当接する第2の規制部材を設ける第4工程と、を含んで構成されることを特徴としている。
すなわち、ステータを加熱するか、タービン静翼を冷却するか、或いはこの両方を行なって、ステータの温度を複数のタービン静翼の温度より相対的に高くすることにより、ステータの径が相対的に大きくなる。ステータの径が相対的に大きくなった状態でタービン静翼を植え込むので、例えば最後に植え込むタービン静翼数本の寸法の修正加工をしたり、或いは最後に植込む翼を押し込み装置により強制的に押し込んだりしなくても、ステータの溝にタービン静翼を植え込むことが可能となる。
また、最初に植え込まれるタービン静翼を第1の規制部材により規制し、最後に植え込まれるタービン静翼を第2の規制部材により規制するので、タービン静翼植え込み後にステータの径が相対的に小さくなってステータの周方向距離が短くなっても、ステータの周方向の端面からタービン静翼の基部が押し出されて突出するのを抑制できる。言い換えれば、ステータに植え込まれた複数のタービン静翼の列の両端を第1及び第2の規制部材で挟み込んでいるので、ステータの径が相対的に小さくなると、第1及び第2の規制部材でタービン静翼列を中央に向かって押し込んで隣接するタービン静翼をより密接に接触させる。したがって、一対のステータの周方向の両端面同士を合わせて円筒形に組み立てる工程をスムーズに行なうことができ、作業負担を軽減することができる。
また、タービン静翼は、ステータの溝と係合する基部と、この基部からステータの円筒中央に向かって延在する翼部と、この翼部の先端に設けられ、ステータの溝に植え込まれた隣接するタービン静翼間で互いに接触するシュラウド部とを有して形成することができる。この場合、複数のタービン静翼のシュラウド部の周方向の寸法は、複数のタービン静翼がステータの溝に植え込まれた状態で隣接するシュラウド部が互いに接触する幾何学寸法より大きく形成することができる。
これによれば、タービン運転時のステータの熱伸びによりステータの径が大きくなって各タービン静翼のシュラウド部の位置が円筒中心から離れる方向に移動したとしても、これに対応してあらかじめシュラウド部の周方向寸法を大きくしているので、隣接するシュラウド部間の接触が緩むのを抑制することができる。その結果、隣接するシュラウド部が接触した状態で運転が行われるので、タービン静翼が単独で振動することを抑制することができ、タービン静翼の破損を抑制することができる。
また、第1及び第2の規制部材は、それぞれステータの周方向の端面に形成されステータの溝に開口する凹部に固定されるとともに、ステータの溝に突出してタービン静翼の基部と当接する板部材とすることができる。また、少なくとも最初と最後に植え込まれるタービン静翼の基部には、板部材の突出部が当接する位置に凹部を形成して、この凹部に板部材の突出部を当接させることができる。
また、本発明のタービンは、半円筒形のステータと、このステータの円筒内壁面に周方向に沿って形成されタービン静翼の基部が係合する両端開口の溝と、ステータの溝の一端から他端へ周方向に順次スライドさせて植え込まれた複数のタービン静翼とを有して構成される。そして、ステータの溝の一端と他端には、それぞれステータの溝に植え込まれた複数のタービン静翼のうち両端に位置するタービン静翼の基部と当接する第1及び第2の規制部材が設けられてなることを特徴としている。
本発明によれば、タービン静翼の植え込み作業の負担を軽減し、かつタービン運転時にタービン静翼が単独で振動するのを抑制することができる。
以下、本発明を適用してなるタービン静翼の埋め込み方法、及びタービンノズルについて説明する。なお、本実施形態のタービンは蒸気タービンを例に挙げて説明するが、本発明のタービンは蒸気タービンの他、ガスタービンにも適用可能である。
図1は本実施形態のタービンノズルのタービン軸方向に直交する断面図である。図2は本実施形態のタービンノズルを構成するステータの斜視図である。図3は本実施形態のタービンノズルを構成するタービン静翼の埋め込み方向に直交する断面図である。図4はステータ12に複数のタービン静翼14が植え込まれた状態で、タービン軸11の方向からシュラウド部24を見た概略図である。図5は図1の半円筒形のタービンノズルを2つ上下に組み合わせて円筒形のタービンノズルとした状態でのタービン軸方向に直交する断面図である。
図1に示すように、本実施形態のタービンノズル10は、タービン軸11を覆う半円筒形のステータ12と、ステータの円筒内壁面に周方向に沿って形成された溝に植え込まれた複数のタービン静翼14とを備えて構成されている。
図2に示すように、ステータ12は半円筒形に形成されており、円筒内壁面に周方向に沿って溝16が形成されている。溝16はタービン静翼14の基部が係合するよう形成されており、ステータ12の周方向の両端面(以下、適宜この両端面のことをステータ12の水平端面18という。)に開口している。
一方、図3(a)に示すように、タービン静翼14は、ステータ12の溝16と係合する基部20と、基部20から延在する翼部22と、翼部22の先端に設けられたシュラウド部24とを備えて構成される。基部20と翼部22とシュラウド部24は一体成型することができる。基部20と翼部22とシュラウド部24は図面に直交する方向に所定の厚みを有して形成されている。ステータ12の溝16には、複数のタービン静翼14が、溝16の一端から他端へ周方向に順次スライドさせて植え込まれるようになっている。
基部20は底部の幅が最も大きく中央部で幅が最も小さくなり上部で再び拡幅して形成されており、このいわゆるT字形状により溝16に係合するようになっている。これにより、ステータ12に植え込まれたらステータ12の円筒中央方向には抜けないようになっている。翼部22は図1に示すように基部20からステータ12の円筒中央に向かって延在している。図4はステータ12に複数のタービン静翼14が植え込まれた状態で、タービン軸11の方向からシュラウド部24を見た概略図である。図4に示すように、シュラウド部24は複数のタービン静翼14がステータ12に植え込まれた状態で、隣接するシュラウド部24の対向する辺24a同士が互いに接触するよう形成されている。
なお、図3(a)では、基部20がいわゆるT字形状のものを一例として挙げたがこれには限られない。例えば図3(b)のように、基部20を四角形状(四角柱)とすることもできるし、図3(b)の横面図を図3(c)に示すが、図3(c)のように凹形状(四角柱の一部に両端開口の溝を形成したもの)とすることもできる。
図5に示すように、半円筒形のステータ12に複数のタービン静翼14が植え込まれたら、この半円筒形のタービンノズル10を2つ用いて円筒形のタービンノズルを組み立てる。つまり、各タービンノズル10のステータ12の水平端面18同士を対向させて貼り合わせることで円筒形のタービンノズルが構成される。なお、タービンノズルは、タービン軸11の軸方向に沿って複数段設けられ、図示していないタービン動翼と交互に配置されるものである。
例えば図2に示すように、一本の溝が形成されたステータ12に複数のタービン静翼を植え込んで1段のタービンノズルとした場合、この1段のタービンノズルをタービン軸11の軸方向に沿って複数配置することで複数段のタービンノズルとすることができる。一方、図6はタービンノズル10のタービン軸11に平行な断面を示す図である。図6に示すように、タービン軸11の軸方向に長い半円筒形のステータ12を採用し、ステータ12の円筒内壁面に周方向に沿う複数本(図5では6本)の溝16を、タービン軸11方向に間隔をあけてそれぞれ形成して、それぞれの溝16に複数のタービン静翼14を植え込むことで、複数段のタービンノズルとすることもできる。
ところで、タービンノズル10のステータ12の溝16に整列して植え込まれた複数のタービン静翼14は、隣接するタービン静翼間で互いにシュラウド部24及び基部20同士が接することにより、タービン運転時に生じる翼の振動を減衰させ、振動を小さくすることが知られている。
しかしながら、タービン運転時のステータ12の熱伸びによりステータ12の径が大きくなると、ステータ12に引っ張られて各タービン静翼14のシュラウド部24の位置が円筒中心(タービン軸11)から離れる方向に移動し、これにより隣接するシュラウド部24間の接触が緩むおそれがある。隣接するシュラウド部24間の接触が緩むと振動の減衰効果は失われ、タービン静翼14が単独で振動するので、この振動による応力が大きくなると、最悪の場合、タービン静翼14が破損するというおそれもある。
図7はタービン運転時に隣接するシュラウド部24間の接触が緩む現象を説明する図である。図7(a)はタービン運転時の熱によりステータ12及びタービン静翼14が熱伸びしていない状態を示している。図7(b)はタービン運転時の熱に起因してステータ12が熱伸びした状態を示している。図7(c)はステータ12の熱伸びに加えてタービン静翼14も熱伸びした状態を示している。なお、説明の便宜上、図7ではステータ12を省略してタービン静翼14のみを示している。
まず、半円筒形のステータを上下に組み合わせて円筒形になったステータが熱伸びすると、タービン軸11を中心とするステータ12の径が大きくなる。タービン静翼14は基部20をステータ12の溝16に固定されているため、ステータ12の熱伸び(熱膨張)にともなって図7(b)に示すようにタービン軸11から離れる方向(図7において下方向)に移動する。ステータ12の熱伸びに起因するタービン静翼14の径方向の移動量をΔrとする。
一方、タービン運転時の熱によりタービン静翼14自体も熱伸びするので、図7(c)に示すように、タービン静翼14が径方向に伸びる。タービン静翼14の熱伸びに起因する径方向の伸び量をΔr´とする。タービン静翼14の径方向の移動量Δrのほうが径方向の伸び量Δr´よりも大きい場合、結果的にシュラウド部24の位置はタービン軸11から離れる方向に移動し、これにより隣接するシュラウド部24間の接触が緩むおそれがある。これに対して、タービン静翼14の径方向の移動量をΔrのほうが径方向の伸び量をΔr´よりも小さい場合、結果的にシュラウド部24の位置はタービン軸11に近づく方向に移動し、隣接するシュラウド部24間の接触が緩むおそれはない。
図7は前者つまり、タービン静翼14の径方向の移動量Δrのほうが径方向の伸び量Δr´よりも大きい場合(Δr−Δr´=Δr´´>0)を示している。この場合、図7(a)及び図7(c)に示すように、結果的に、シュラウド部24の位置はタービン軸11から離れる方向にΔr´´移動する。これにより、隣接するシュラウド部24間の距離は大きくなる。
このような隣接シュラウド部間の緩みを抑制するために、シュラウド部24の周方向寸法を幾何学寸法(複数のタービン静翼14がステータ12の溝16に植え込まれた状態で隣接するシュラウド部24が互いに接触する寸法)よりも長くとる方法が一般的に知られている。しかし、シュラウド部24の周方向寸法を幾何学寸法よりも大きく確保した場合、ステータ12に植込みにくくなるおそれがある。例えば、環状翼列において最後に植え込む翼数本の寸法の修正加工をしたり、或いは最後に植込む翼を押し込み装置により強制的に押し込む方法なども考えられるが、植え込む手間や時間がかかり、タービン静翼14に傷をつけるおそれもあるので好ましくない。
この点、シュラウド部24の周方向寸法を幾何学寸法より大きくするとともに、ステータ12の温度をタービン静翼14の温度より高くして熱膨張させた状態でタービン静翼14を植え込むことが考えられる。しかしこの場合、各ステータ12にタービン静翼14を植え込んだ後ステータ12の温度が下がるとステータ12が収縮し、この収縮にともなって各ステータ12の水平端面18からタービン静翼14の基部20が押し出されて突出するおそれがある。すると、一対のステータ12の水平端面18同士を対向させて貼り合わせて円筒形にするという工程において、ステータ12の水平端面18から突出した基部20同士が接触するので、この工程に手間がかかって好ましくない。
以下、タービン静翼の植え込み作業の負担を軽減し、かつタービン運転時にタービン静翼が単独で振動するのを抑制するための本実施形態の特徴部について説明する。
まず、図8は本実施形態のタービン静翼14の構成を示す図である。図8に示すように、タービン静翼14のシュラウド部24の周方向寸法は、常温時における理論的な幾何学寸法Ptに寸法増加分ΔPを加えたPとしている。
図9は、本実施形態のタービン静翼の植え込み方法の手順を示すフロー図である。まず、タービン静翼14をステータ12に植え込む前に、ステータ12の温度をタービン静翼14の温度より相対的に高くする(工程1)。この工程1は、タービン静翼14をステータ12に植え込む前のみならず、植え込みを開始した後に継続して行なってもよい。また、タービン静翼14をステータ12に植え込む前ではなく、植え込みを開始した後に行なってもよい。
図10〜図13は工程1を実施するために具体例を示す図である。図10に示すように、ステータ12の周囲に電気ヒータ等の加熱装置30を設けてステータ12を加熱することにより実現することができる。なお、加熱装置30はステータ12の温度をタービン静翼14の温度より相対的に高くできるものであれば何でもよい。例えば、図10ではステータ12の外周側から全体的に加熱を行っているが、ステータ12の内周側から、又はステータ12のタービン静翼14が植え込まれる部分を局部的に加熱してもよい。
また、図11に示すように、液体窒素などの冷却媒体が入った容器、または冷蔵庫などと同様の原理で構成された冷却装置32の中にタービン静翼14を投入してあらかじめ冷却することにより実現することができる。なお、冷却装置32はタービン静翼14の温度をステータ12の温度より相対的に低くできるものであれば何でもよい。
また、図11に示すように、タービン静翼14をあらかじめ冷却するだけではなく、図12に示すように、タービン静翼14のシュラウド部24よりタービン軸11側に冷却装置32を設けて、植え込み作業の間はタービン静翼14を冷却しつづけることもできる。
また、図13に示すように、ステータ12の周囲にヒータ等の加熱装置30を設けるとともに、タービン静翼14のシュラウド部24よりタービン軸11側に冷却装置32を設けて、ステータ12の加熱とタービン静翼14の冷却を併せて行なうこともできる。
このようにして、ステータ12の温度をタービン静翼14の温度より相対的に高くすることにより、ステータ12の径が相対的に大きくなり、タービン静翼14を植え込む溝16の距離が相対的に大きくなる。したがって、シュラウド部24の周方向寸法を常温時における理論的な幾何学寸法Ptに寸法増加分ΔPを加えたPとしていても、環状翼列において最後に植え込む翼数本の寸法の修正加工をしたり、或いは最後に植込む翼を押し込み装置により強制的に押し込んだりすることなく、容易に複数のタービン静翼14を植え込むことができる。
続いて、ステータ12の溝16の他端に、最初に植え込まれるタービン静翼14の基部20と当接する第1の規制部材を設ける(工程2)。ここで、溝16の他端とは、溝16の両端のうちタービン静翼14の植え込みを開始する側と反対側の端を意味する。図14は、ステータ12の溝16の他端に、第1の規制部材として板部材36を設ける工程を示す図である。図14は説明の便宜上タービン静翼14も図示している。図14に示すように、ステータ12の水平端面18には、溝16に開口する凹部40が形成されており、この凹部40の底面にピン穴42が形成されている。
また、板部材36にはピン挿入穴44が形成されている。板部材36のピン挿入穴44が凹部40の底面のピン穴42に合うように板部材36の位置決めをして、凹部40のピン穴42と板部材36のピン挿入穴44にピン45の胴部46を挿入する。その後、ピン45の先端48をかしめることで板部材36はステータ12に固定される。ピン45に限らず例えばネジなどで板部材36を固定してもよい。なお板部材36は固定された状態で溝16に一部が突出するよう形成されている。
一方、最初に植え込まれるタービン静翼14の基部20には、板部材36の溝16に突出部に対応する位置に凹部50が形成されており、タービン静翼14の植え込みの際にタービン静翼14の凹部50に板部材36が当接するようになっている。なお、少なくとも最初と最後に植え込まれるタービン静翼14の基部20に凹部50が形成されていればよい。また、工程1と工程2は順序が入れ換わってもよい。
続いて、工程1及び工程2の後に、ステータの溝の一端から他端へ複数のタービン静翼を周方向に順次スライドさせて植え込む(工程3)。最初に植え込まれたタービン静翼14は溝16他端で板部材36に当接して位置決めされるので、後続のタービン静翼14は順次スライドさせて先に植え込まれたタービン静翼14に当接するまで押し込めばよい。
続いて、工程3の後に、ステータ12の溝16の一端に、最後に埋め込まれたタービン静翼14の基部20と当接する第2の規制部材を設ける(工程4)。ここで、溝16の一端とは、溝16の両端のうちタービン静翼14の植え込みを開始する側の端を意味する。図15は、ステータ12の溝16の一端に、最後に埋め込まれたタービン静翼14の基部20と当接する第2の規制部材を設ける工程を示す図である。図15に示すように、複数のタービン静翼14が植え込まれたら、ステータ12の溝の他端には最後に植え込まれたタービン静翼14が位置している。ここで、工程2と同様の作業をステータ12の溝の一端(工程2とは反対側の端)に行なう。
つまり、板部材36のピン挿入穴44が凹部40の底面のピン穴42に合うように板部材36の位置決めをして、凹部40のピン穴42と板部材36のピン挿入穴44にピン45の胴部46を挿入する。その後、ピン45の先端48をかしめることで板部材36はステータ12に固定される。工程4では、板部材36をステータ12に固定するのと同時に、板部材36の溝16への突出部が最後に植え込まれたタービン静翼14の基部20の凹部50に当接するようになっている。
なお、図15において、最後に植え込まれたタービン静翼14が傾いており基部20の一部がステータ12の水平端面18から突出しているが、この突出は2つのステータ12を上下に組み合わせて円筒形とする作業には影響しない。つまり、対向するステータ12の水平端面18でも同様にタービン静翼14が傾いているため、基部20の一部は水平端面18から突出し、一部は水平端面18に対して凹状になっている。2つのステータ12を上下に組み合わせる際には、上下のステータ12の水平端面18に対する凹凸が互いに嵌り合うため、水平端面18同士の接触には影響を与えないようになっている。
以上、本実施形態によれば、工程1を行なうことによって、ステータ12の径が相対的に大きくなり、ステータ12の径が相対的に大きくなった状態でタービン静翼14を植え込むので、例えば最後に植え込むタービン静翼数本の寸法の修正加工をしたり、或いは最後に植え込むタービン静翼14を押し込み装置により強制的に押し込んだりしなくても、ステータ12の溝16にタービン静翼14を植え込むことが可能となる。
また、全てのタービン静翼14を植え込んだ後、加熱装置30による加熱或いは冷却装置32による冷却を中止して、全ての部材の温度が一様になると、ステータ12の径が相対的に小さくなるので、タービン静翼14のシュラウド部24の半径位置は小さくなる。このときシュラウド部24間の対向する辺24aに面圧が加わるが、第1及び第2の規制部材があるためタービン静翼14がステータ12の水平端面18から突出するのを防げる。また、この面圧によってタービン運転時においても隣接するタービン静翼14のシュラウド部24の接触が保持されるので、振動数の安定化が図られるとともに振動の減衰効果を保持でき、その結果振動が小さくなる。
また、第1及び第2の規制部材により、シュラウド部24の面圧でタービン静翼14に生じる周方向の位置ずれを低下又はなくすことができるとともに、シュラウド部24に作用させた面圧の低下を防ぐことができる。第1及び第2の規制部材の効果は特に上側と下側のステータ12を合わせて円筒形とする前に加熱或いは冷却を中止した場合に有効である。また、ステータ12に複数のタービン静翼14の段落が設置されている場合は、各段落のタービン静翼14の周方向位置にずれが生じていると、上側と下側のステータ12の水平端面18に位置するタービン静翼14同士を合わせて接触させる作業は困難となるため、第1及び第2の規制部材の効果は非常に有効となる。
なお、本実施形態では、ピン45を用いて板部材36をステータ12に固定する構造を示したが、タービン静翼14がステータ12から抜け落ちない状態を維持できるものであれば、その他の形状の部材を用いてもよいし、固定手段も適宜選択することができる。また、本実施形態では、タービン静翼14のシュラウド部24はひし形の形状を示したが、これには限られない。
10 タービンノズル
12 ステータ
14 タービン静翼
16 溝
18 水平端面
20 基部
22 翼部
24 シュラウド部
30 加熱装置
32 冷却装置
36 板部材
40,50 凹部
12 ステータ
14 タービン静翼
16 溝
18 水平端面
20 基部
22 翼部
24 シュラウド部
30 加熱装置
32 冷却装置
36 板部材
40,50 凹部
Claims (5)
- 半円筒形のステータの円筒内壁面に周方向に沿って形成されタービン静翼の基部が係合する両端開口の溝の一端から他端へ、複数のタービン静翼を周方向に順次スライドさせて植え込むタービン静翼の植え込み方法において、
前記ステータの温度を前記複数のタービン静翼の温度より相対的に高くする第1工程と、
前記ステータの溝の他端に、最初に植え込まれるタービン静翼の基部と当接する第1の規制部材を設ける第2工程と、
前記第1及び第2工程の後に、前記ステータの溝の一端から他端へ前記複数のタービン静翼を周方向に順次スライドさせて植え込む第3工程と、
前記第3工程の後に、前記ステータの溝の一端に、最後に埋め込まれたタービン静翼の基部と当接する第2の規制部材を設ける第4工程と、
を含んでなるタービン静翼の植え込み方法。 - 前記タービン静翼は、前記ステータの溝と係合する基部と、該基部から前記ステータの円筒中央に向かって延在する翼部と、該翼部の先端に設けられ、前記ステータの溝に植え込まれた隣接するタービン静翼間で互いに接触するシュラウド部とを有して形成され、
前記複数のタービン静翼のシュラウド部の周方向の寸法は、前記複数のタービン静翼が前記ステータの溝に植え込まれた状態で隣接するシュラウド部が互いに接触する幾何学寸法より大きく形成されてなる請求項1のタービン静翼の植え込み方法。 - 前記第1及び第2の規制部材は、それぞれ前記ステータの周方向の端面に形成され前記ステータの溝に開口する凹部に固定されるとともに、前記ステータの溝に突出して前記タービン静翼の基部と当接する板部材である請求項2のタービン静翼の植え込み方法。
- 少なくとも最初と最後に植え込まれるタービン静翼の基部には、前記板部材の突出部が当接する位置に凹部が形成されてなる請求項3のタービン静翼の植え込み方法。
- 半円筒形のステータと、該ステータの円筒内壁面に周方向に沿って形成されタービン静翼の基部が係合する両端開口の溝と、前記ステータの溝の一端から他端へ周方向に順次スライドさせて植え込まれた複数のタービン静翼とを有し、
前記ステータの溝の一端と他端には、それぞれ前記ステータの溝に植え込まれた複数のタービン静翼のうち両端に位置するタービン静翼の基部と当接する第1及び第2の規制部材が設けられてなるタービンノズル。
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JP2009124497A JP2010270717A (ja) | 2009-05-22 | 2009-05-22 | タービン静翼の植え込み方法、及びタービンノズル |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
2009
- 2009-05-22 JP JP2009124497A patent/JP2010270717A/ja active Pending
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