JP2010261054A - Al基合金成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】より機械的特性に優れたAl基合金成形体を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るAl基合金成形体は、準結晶粒子分散構造を有し、且つAl含有量が97〜98at%であるAl基合金からなる粉末を用いてコールドスプレー法にて形成したことを特徴としている。このようにAl基合金の粉末の性状と組成を限定し、さらにコールドスプレー法による施工によって皮膜の強度が向上する。具体的には、押出し加工バルク材と比較して90%以上の強度を有するようになる。
【選択図】図4

Description

本発明は、コールドスプレー法によって形成されたAl基合金成形体に関する。
例えば、非特許文献1や特許文献1に記載されているように、コールドスプレー(Cold Spray)法によって基材の表面に皮膜を形成する方法が知られている。この方法は、皮膜材料の融点または軟化点よりも低い温度に設定した超音速で流れるガスに皮膜材料の粉末を同伴させ、粉末を高速で基材の表面に衝突させることにより、固相状態のままで粉末の粒子を塑性変形させて皮膜を形成する。このようなコールドスプレー法によれば、緻密な組織で密度の高い皮膜を基材の表面に形成することができる。当然のことながら、コールドスプレー法により作製した積層体を強度部材として使用するためには、皮膜自体の優れた機械的特性が必要となる。
しかしながら、非特許文献1や特許文献1に記載されているコールドスプレー法によって得られる皮膜は、他の皮膜形成技術(溶射、めっきなど)と比較して緻密な皮膜が形成されるものの、皮膜材料である粉末を熱間押出しにより作製したバルク材の場合と比較すると、機械的特性が乏しい。この現象は、押出し加工により作製されたバルク材では粉末同士が極めて強固に結合されているのに対して、コールドスプレー法により作製された皮膜が構造的な欠陥である微小な空隙を多く含むためであると考えられる。
そこで、より機械的特性に優れた準結晶粒子分散アルミ合金の開発が進められている。例えば、特許文献2に記載の技術がある。この特許文献2には、アルミニウムを主成分とする溶湯が過冷却されてなるアルミニウム基合金であって、前記溶湯は、準結晶を形成するQ元素と、当該準結晶の形成を補助するP元素と、前記溶湯の過冷却状態を安定化させると共に前記準結晶の晶出を遅らせるS元素とを含み、アルミニウム結晶相またはアルミニウム過飽和固溶体相中に、準結晶が分散していることを特徴とするアルミニウム基合金が開示されている。
また、特許文献3に記載の技術もある。特許文献3には、準結晶粒子分散アルミ合金粉末を固相状態で構造を維持したまま皮膜を形成する技術が開示されている。具体的には、積層装置によって基材上に、マトリクス中に準結晶粒子を分散させた準結晶粒子分散合金を前記準結晶粒子の分解温度以下の温度で積層させることにより、準結晶粒子分散合金積層材を製造することを特徴とする準結晶粒子分散合金積層材の製造方法、マトリクス中に準結晶粒子を分散させた準結晶粒子分散合金を基材上に積層してなることを特徴とする準結晶粒子分散合金積層材、および基材上にマトリクス中に準結晶粒子を分散させた準結晶粒子分散合金を積層した後、前記基材を除去してなることを特徴とする準結晶粒子分散合金バルク材が記載されている。
榊和彦著、「新しい溶射プロセス Cold Spray」、産業出版株式会社編、溶射技術、2000年8月30日、Vol.20、No.2、p.32〜41
特開2006−179856号公報 特開2006−274311号公報 特開2008−248279号公報
しかしながら、特許文献2に記載のアルミニウム基合金は、高硬度を示す一方で脆いという問題があり、特許文献3に記載の準結晶粒子分散アルミ合金バルク材等は、極めて高い硬度を有するものの、その積層体(皮膜)単体での引張強度等の機械的特性が十分に高いとはいえないという問題があった。特に、室温での引張強度が、同じ粉末を用いて製造した押出し加工バルク材と比較して低い傾向にあるという問題があった。
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、より機械的特性に優れたAl基合金成形体を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、組織観察により、皮膜単体での乏しい機械的特性(例えば、引張特性)は、粉末と粉末の界面における結合状態が押出し加工バルク材と比較して十分でないことをつきとめた。
そこで、粉末と粉末の界面における結合状態をより良好なものとするために、コールドスプレー法による皮膜形成時に粉末をより大きく変形させるべく、コールドスプレー法で基材に衝突させた際の変形能を高くするよう試みた。ここで、粉末同士の結合状態をより強固なものとするためには、粉末をより高いエネルギーで衝突させるか、粉末自体をより変形し易いものとするかのいずれかの手法が考えられる。
本発明者らは、研究をすすめた結果、粉末組成中のAl含有量を増大させて粉末の変形能を大きくすることにより前記課題を解決できることを見出した。ただし、Al含有量を増加させることで粉末の変形能は向上するが、粉末自体の強度が低下することが懸念されるため、機械的特性と粉末の変形能を両立することが必要であることも見出した。
本発明者らはさらに鋭意研究した結果、粉末のAl含有量を特定の範囲に規定することで、皮膜単体でありながら、同じ粉末を用いて得た押出し加工バルク材の強度に対して90%以上(ほぼ同等)の強度を有するようにできることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明に係るAl基合金成形体は、準結晶粒子分散構造を有し、且つAl含有量が97〜98at%(原子%)であるAl基合金からなる粉末を用いてコールドスプレー法にて形成したことを特徴としている。
つまり、本発明に係るAl基合金成形体は、施工条件等の改良により高いエネルギーで粉末を衝突させるものではなく、より変形し易い粉末を対象とすることで皮膜特性の改善を図っている。このように、Al含有量が97〜98at%であるAl基合金からなる粉末を用いると、Al基合金からなる粉末の強度が比較的弱く、変形能が高いので、コールドスプレー法が実施される温度で当該粉末が基材に衝突した際に変形し易くすることができる。そのため、皮膜中に構造的な欠陥である微小な空隙の形成量を抑制することができるようになり、機械的特性を向上させることが可能となる。
本発明に係るAl基合金成形体は、Al基合金の粉末の性状と組成を限定し、さらにコールドスプレー法による施工によって皮膜の強度が向上する。具体的には、押出し加工バルク材と比較して90%以上の強度を有するようになる。つまり、従来の皮膜単体と比較してより機械的特性に優れたAl基合金成形体を提供することができる。そのため、皮膜を肉厚に形成することで構造部材として利用することが可能となる。
引張試験片の形状を説明する図である。 (a)は、比較例1、参考例1,2の引張試験結果を示すグラフであり、(b)は、参考例1の光学顕微鏡の組織観察結果を示す写真であり、(c)は、比較例1の光学顕微鏡の組織観察結果を示す写真である。なお、(a)において横軸は温度[℃]を示し、縦軸は0.2%耐力[MPa]を示す。また、(b)および(c)中のスケールは50μmを示す。 比較例2、比較例3、実施例1、実施例2に係る引張試験片による引張試験の結果を示すグラフである。なお、横軸は試験温度[℃]を示し、縦軸は0.2%耐力[MPa]を示す。 (a)は、25℃における比較例2、比較例3、実施例1、実施例2に係る引張試験片による引張試験の結果を示すグラフであり、(b)は、25℃における比較例2、比較例3、実施例1、実施例2に係る引張試験片による引張試験の結果を示すグラフである。なお、(a)および(b)において横軸はAl含有量(at%)を示し、縦軸は0.2%耐力[MPa]を示す。
本発明の要旨は、準結晶粒子分散構造を有し、且つAl含有量が97〜98at%の粉末をコールドスプレー法にて成形することで、押出し加工バルク材と比較して90%以上の強度を発現させることを可能とした点にある。
以下に本発明に係るAl基合金成形体について説明する。
本発明に係るAl基合金成形体は、準結晶粒子分散構造を有し、且つAl含有量が97〜98at%であるAl基合金からなる粉末を用いてコールドスプレー法にて形成したことを特徴としている。
準結晶粒子分散構造とは、1984年にAl−14%Mn合金において初めて発見された構造であって、その特徴としては、正二十面体という構造に起因して、従来の結晶材料が示さない回転対称性を示すことが挙げられる。また、準結晶粒子分散構造をとるAl基合金からなる粉末は、従来の結晶材料のような周期的な構造を有していないことから極めて高い硬度を示す。例えば、Al−Li−Cu系ではビッカース硬度で520Hv、Al−Ru−Cu系では1070Hvにも達する。
コールドスプレー法は、基材の表面に準結晶粒子分散構造を有するAl基合金からなる粉末を衝突させて、準結晶粒子分散構造を有したままAl基合金の皮膜を形成する手法である。そのため、準結晶粒子分散構造を有するAl基合金からなる粉末は、これに分散させた準結晶粒子の分解温度以下の温度で基材の表面に衝突させる必要がある。準結晶粒子の分解温度を超えた温度で基材の表面に衝突させると準結晶粒子の構造が壊れてしまうため、準結晶粒子が存在することによって得ることのできる高い機械的特性を得ることができない。準結晶粒子分散構造を有するAl基合金を基材に衝突させる温度は、準結晶粒子の分解温度よりも低い温度であることが好ましく、準結晶粒子の分解温度よりも30℃以上低い温度であることがさらに好ましい。そして、本発明における準結晶粒子分散構造を有するAl基合金の基材への衝突は、前記した準結晶粒子の分解温度以下であって、準結晶粒子の固相状態を保ったまま行わせるのが最も好ましい。このようにすれば、準結晶粒子の構造を維持したまま基材の表面に確実に皮膜を形成することができる。
前記粉末は、最大粒子径が200μm以下とするのが好ましく、150μm以下とするのがより好ましい。また、その平均粒子径としては、0.1〜50μmとするのが好ましい。最大粒子径がこの範囲であれば皮膜を均質に形成できる。これに対し、粉末の粒子径が200μmを超えると皮膜の形成が困難となるおそれがある。
前記粉末の最大粒径や平均粒子径は、これを製造する際の条件、例えば、特開2006−274311号公報に記載されたAl基合金を用いた場合、単ロール液体急冷装置のロールの温度や回転速度、ロールへの溶湯の供給量などを調節することによって制御することが可能である。また、アトマイズ法、ケミカルアロイング法、メカニカルアロイング法などによっても制御することができるが、生産性を考慮すると、これらの中でもアトマイズ法によって制御すると好適である。
かかる皮膜と基材との密着性を向上させたいのであれば、前記粉末を基材に衝突させる前に、基材の表面をブラスト処理等するなどの粗面化処理を施しておくのがよい。また、これとは反対に、準結晶粒子分散構造を有するAl基合金と基材との密着性を低下させたいのであれば、準結晶粒子分散構造を有するAl基合金を基材に衝突させる前に、基材の表面を研磨するなどの平滑化処理を施しておくのがよい。
かかる皮膜は、コールドスプレー法で前記粉末を基材に衝突させる工程数の増減や時間の長短などの諸条件を変更することによってその厚さを適宜に調節することができる。皮膜の厚さは、積層材の成形体とする場合は、例えば1μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは100μm以上とすることができ、バルク材とする場合は、例えば2mmや3mmなどとすることができる。コールドスプレー法の条件は、基材の表面に準結晶粒子分散構造を有するAl基合金からなる粉末を衝突させて、準結晶粒子分散構造を有するAl基合金の皮膜を形成することのできる条件であれば特に限定されるものではないが、例えば、前記粉末と同伴させるガス種をHe、当該ガスのガス圧を3MPa、ガス温度を500℃、Al基合金からなる粉末の供給量を10g/min、コールドスプレー装置のノズル距離(SOD)を20mm、ノズル長さ(IB)を150mm、トラバース速度を100mm/s、基材をJIS H 4000に規定する合金番号5052の合金板(50mm×100mm×6mm)という条件とすることができる。
皮膜の面積も特に限定されるものではない。コールドスプレー法の条件を適切な条件とすることにより、大面積で形成することも可能であり、基材の一部のみに小面積で形成することも可能である。
形成された皮膜中の準結晶粒子の存在形態は、微細な球状粒子の状態であって、皮膜中に均一に分散していることが好ましい。具体的には、準結晶粒子の平均粒子寸法は10〜1000nmとするのが好ましい。準結晶粒子の平均粒子寸法が10nm未満の場合、皮膜の強度向上に寄与し難いことがある。一方で、準結晶粒子の平均粒子寸法が1000nmを超えた場合は、析出強化粒子としての機能が低下するおそれがある。
形成された皮膜に含まれる準結晶粒子の体積率は、20〜80%とするのが好ましい。形成された皮膜に含まれる準結晶粒子の体積率をこの範囲とすれば準結晶粒子を分散強化粒子として利用することができ、高い強度を有するようにすることができる。一方、準結晶粒子の体積率が20%未満である場合は、準結晶粒子を分散強化粒子として利用できず、準結晶粒子の体積率が80%を超えた場合は、形成された皮膜が脆化するおそれがある。準結晶粒子の体積率は、前記粉末を製造するときの条件、例えば、強度と延性のバランスを考慮して、溶質元素量や冷却速度を制御することにより制御することが可能である。
基材は、前記した皮膜を形成することができ、且つ前記粉末と親和性の高い基材を用いるのがよい。このような基材を用いると、高温環境下であっても、基材とその表面に形成されたAl基合金の皮膜とを剥離し難くすることができ、本発明に係るAl基合金成形体を構造用部材として用いた場合であっても高い機械的特性を維持することができる。
前記粉末と親和性の高い基材としては、前記粉末の主たる金属元素と同種の金属元素を主として含む基材を用いるのが好適である。したがって、本発明の場合、準結晶粒子分散構造を有するAl基合金からなる粉末を用いているので、基材も純アルミニウムやアルミニウム合金を用いるのが好ましい。しかし、熱膨張率やヤング率などの物性値が準結晶粒子分散構造を有するAl基合金と同等の金属からなる基材であれば用いることが可能である。
なお、当該基材を後に除去する成形を行ったAl基合金成形体、つまり、基材を含まないバルク材とする場合は、必ずしも準結晶粒子分散構造を有するAl基合金と親和性の高い基材を用いる必要はない。かかる基材は除去されるため、その親和性は問題とならないからである。そのため、このような場合は基材として例えば、鉄、鉄合金、純マグネシウム、マグネシウム合金、カルシウム、マンガン、スズなどを用いることができる。
前記粉末のAl含有量が97at%未満であると、コールドスプレー法によって前記粉末を基材に衝突させてもAl基合金の強度が高いため粉末の変形能が高くならず、作製された皮膜が構造的な欠陥である微小な空隙を多く含むことになるためAl基合金成形体の機械的特性が向上しない。
一方、Al基合金からなる粉末のAl含有量が98at%を超えると、純Alに近い組成を有することになってしまうため形成された皮膜の機械的特性が低くなってしまう。
よって、Al基合金のAl含有量は97〜98at%とする。
Al基合金からなる粉末に含有される他の元素としては、例えば、Fe、Cr、Ti、Coや不可避的不純物などの金属元素を合計で2〜3at%含有することができる。なお、不可避的不純物などの金属元素としては、例えば、Mn、V、Li、Pd、Ru、Mo、Nb、Cu、Au、Mg、Zr、Si、Ni、Ge、W、Ca、Sr、Baなどを挙げることができる。
Al基合金からなる粉末は、粉末粒度幅指数δ(δ=logD(90)−logD(10))が0.80以上、好ましくは0.82以上あればよい。なお、前記式において、D(90)は、Al基合金からなる粉末の90%粒子径を表し、D(10)は、Al基合金からなる粉末の10%粒子径を表す。また、ここで、90%粒子径および10%粒子径とは、Al基合金からなる粉末の集団の全体積を100%として求められた累積カーブにおいて、90%および10%となるそれぞれの粒子径(μm)をいう。つまり、横軸に粒子径(μm)、縦軸に累積%をとったグラフにおいて累積%が90%となる粒子径と、10%となる粒子径をいう。
このような粉末粒度幅指数δを有すれば、均一で緻密な組織を得ることができる。一方、粉末粒度幅指数δが0.80未満であると、Al基合金からなる粉末の粒度幅が大きくなり過ぎてしまうため、つまり、粉末の大きさに開きが出過ぎてしまうため、コールドスプレー法によって準結晶粒子分散構造を有するAl基合金からなる粉末を基材に衝突させても、作製された皮膜に構造的な欠陥である微小な空隙が多く含まれてしまい、Al基合金成形体の機械的特性が向上しない。
コールドスプレー法を行うコールドスプレー装置は、例えば、非特許文献1に記載されたような従来公知の装置を用いることで実施可能である。
さらに、当該コールドスプレー装置に例えば、特開2007−146281号公報に記載の装置のように、コールドスプレーノズル内またはノズルとコンプレッサー間の作動ガス配管内に作動ガスを加熱するための加熱手段を設ける構成とするとより好ましい。このような加熱手段を設ければ、より材料を変形し易くすることができるので、緻密な皮膜を得ることが可能である。
コールドスプレー法によって得られた本発明に係るAl基合金成形体は、同じAl基合金からなる粉末を押出し加工することによって得られたバルク材と比較してその強度比は、25〜300℃の範囲であれば皮膜単体で90%以上の強度を得ることができる。具体的には、本発明に係るAl基合金成形体は、25℃において305MPa以上、300℃において146MPa以上の引張強度を得ることができる。かかる効果については後に詳述する。
引張強度は、例えば、図1に示す試験片を作製し、後記する実施例の項目の表1に示す条件で引張試験を行うことにより測定することができる。なお、JIS Z 2201で規定されている5号試験片などを作製して引張試験を行ってもよい。
以上に説明した本発明に係るAl基合金成形体によれば、皮膜の機械的特性を向上させることができる。そのため、従来の溶射やめっき等の表面処理技術では耐摩耗性、耐熱性、耐食性を向上させるのみであったが、皮膜を構造部材として利用することが可能となる。
本発明で規定する、皮膜単体での機械的特性が同粉末の押出し加工バルク材と比較して90%以上(ほぼ同等)とすることができるので、優れた機械的特性を有する皮膜をコーティング部材として利用することが可能となる。
従来、準結晶粒子分散アルミ合金あるいはアモルファス合金等のバルク材を得るためには、急冷凝固粉末を押出し加工するまでに、HIP処理やCIP処理等の前処理が必要となっていたが、本発明のAl基合金成形体をコーティング部材として利用することにより、急冷凝固粉末を適用部位に直接適用することができるので、製品の製造工程を大幅に短縮することが可能になる。また、基材部分を排除することにより、優れた強度を有する皮膜をバルク材として取り出すことが可能となる。
本発明に係るAl基合金成形体は、例えば、基材の表面上にコーティングした状態または基材を除去した状態で輸送用機器や電子機器などの構造物用部材(例えば、パネル部材)として使用することができる。
次に、本発明に係るAl基合金成形体の実施例と比較例とを対比して具体的に説明する。
表1に示す組成を有し、且つ準結晶粒子分散構造を有するAl基合金からなる粉末を用いて、表2に示す条件でのコールドスプレーを実施し、比較例1に係る板状のAl基合金成形体を作製した。なお、かかる粉末は、表1に示す組成を有するAl基合金の溶湯をガスアトマイズ法により急冷することにより作製した。
前記粉末の分級条件として、粉末粒度が150μm以下のものを使用した。使用した粉末は、均一で緻密な組織を得るために、使用する粉末の粒度幅を小さくすることで皮膜特性を改善できることを開示した特願2008−057639(未公開)における粉末粒度幅指数δ(δ=logD(90)−logD(10))が0.98であり、この特願2008−057639(未公開)の発明で規定される粒度幅を満足しない。
なお、参考例1として比較例1と同じ粉末を用いて押出し加工したバルク材の板材を作製した。かかる参考例1のバルク材の製造条件は、比較例1と同じ粉末を用いて冷間成形し、冷間成形したアルミニウム基合金をアルミニウム製の缶(カプセル)に封入して押出し用ビレットを作製し、その後、押出し機を使用して押出し用ビレットを400℃で押し出すことによりバルク材を作製した。
得られた皮膜の機械的特性を評価するため、図1に示す引張試験片を作製して、表3に示す試験条件で引張試験を実施した。なお、引張試験片は基材上に形成した厚さ2.2mmの皮膜から切削加工により皮膜のみを切り出し、図1に示す形状に形成した。
また、参考例2として、汎用鋳造アルミニウム合金(AC2B)で作製した引張試験片を作製し、比較例1および参考例1と同様に表3に示す試験条件で引張試験を行った。
図2に示すように、比較例1の強度は特に室温近傍で低く、参考例2と比較しても強度が低い。同粉末の押出し加工バルク材と比較すると、同粉末を使用しているにも関わらず、強度が著しく低下している。これは、図2(b)に示す参考例1の組織と比較して、図2(c)に示す比較例1の組織が構造的な欠陥である微小な空隙を多く含んでおり、粉末同士の結合状態が強固でないためと考えられる。したがって、皮膜特性を改善させるためには、粉末同士の結合状態を強固にすることが必要であることは明らかである。
次に、表4に示す組成を有し、且つ準結晶粒子分散構造を有するAl基合金からなる粉末を用いて、前記した表2に示す条件と同じ条件で比較例2、比較例3、実施例1、実施例2に係る板状のAl基合金成形体を作製した。前記粉末の分級条件として、粉末粒度が32μm以下のものを使用した。使用した粉末の粉末粒度幅指数δ(δ=logD(90)−logD(10))は、比較例2が0.83、比較例3が0.82、実施例1が0.84、実施例2が0.82であり、全ての粉末が前記した特願2008−057639(未公開)の発明で規定される粒度幅を満足していない。コールドスプレーは前記した表2に示す条件で実施した。
得られた皮膜の機械的特性を評価するため、前記と同様に図1に示す引張試験片を作製して、表3に示す試験条件で引張試験を実施した。なお、引張試験片は基材上に形成した厚さ2.2mmの皮膜から切削加工により皮膜のみを切り出し、図1に示す形状に形成した。
図3に示すとおり、比較例2、比較例3は、参考例2(AC2B)と比較して、室温近傍(25℃)で強度が低く、優れた機械的特性(引張強度)を有する皮膜が得られないことを意味している。
一方、実施例1、実施例2は、皮膜単体での0.2%耐力が、室温(25℃)から300℃の全温度域において、参考例2(AC2B)と比較して高いことがわかる。これは、実施例1、実施例2では、Al含有量を増加させ、より変形能の高い粉末としていることに起因すると考えられる。Al基合金からなる粉末の変形能の高い粉末では、コールドスプレーした場合の変形能が高く、得られた皮膜の機械的特性が改善されたと考えられる。
これは、図4(a)および(b)からも明らかである。すなわち、図4(a)および(b)に示すように、25℃および300℃のいずれにおいても、実施例1、実施例2は同じ粉末で押出し加工したバルク材とほぼ同等の引張強度(当該バルク材の引張強度に対して90%以上の引張強度)を有しているのに対し、比較例2、比較例3は、同じ粉末で押出し加工したバルク材の半分程度以下の引張強度しか有していない。
以上の結果から、粉末粒度幅を限定しない場合であっても、Al基合金からなる粉末の組成を適切な範囲に設定することにより、皮膜単体の機械的特性に優れたAl基合金成形体を得ることが可能であることを確認することができた。

Claims (1)

  1. 準結晶粒子分散構造を有し、且つAl含有量が97〜98at%であるAl基合金からなる粉末を用いてコールドスプレー法にて形成したことを特徴とするAl基合金成形体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN105908047A (zh) * 2016-05-16 2016-08-31 西南石油大学 一种钛铝硅钽合金材料及其制备方法

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