JP2010256263A - 硫化物硫黄の定量方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 硫化銅鉱石や銅精鉱などの硫化物中に硫化物として存在する硫黄(硫化物硫黄)を、酸化されて硫酸塩として存在する硫黄(硫酸塩硫黄)と区別して、選択的に定量分析する方法を提供する。
【解決手段】 反応容器1に入れた銅精鉱などの硫化物に、その硫化物を形成する金属よりも卑な金属と、塩化第一スズなどの金属塩と、酸溶液とを添加し、得られたスラリーを撹拌する。金属と酸の反応で生成した水素により、硫化物中の硫化物硫黄から硫化水素を発生させ、発生した硫化水素ガスを吸収容器4、4に導き、吸収液に吸収してICP発光分光分析法により測定する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、硫化物中に含有される硫黄の分析、特に酸化された硫黄を含む硫化物中の硫化物硫黄を定量する方法に関する。
世界で製造されている銅の大部分は、原料となる硫化銅鉱石を選鉱して銅品位を濃縮した銅精鉱を得、この銅精鉱を炉で製錬して粗銅を得る乾式製錬を行った後、得られた粗銅を電解精製して銅メタルを得る方法で製造されている。最近では、銅精鉱を酸で直接浸出した後、溶媒抽出などの手段で不純物を分離し、電解採取して銅メタルを回収する銅湿式プロセスも開発されている。
また、ニッケルを製造する場合には、一般的に、酸化鉱や硫化鉱などの鉱石を製錬して硫化物のニッケルマットに変換し、このニッケルマットを酸で浸出した後、得られた浸出液から電解採取などによってニッケルメタルを回収する湿式プロセスが用いられている。
このように銅精鉱やニッケルマットなどの硫化物を原料として金属を得る方法においては、原料の硫化物中に含まれている硫黄が、各工程において、化合物や単体、固体や液体、あるいは気体など様々な形態をとる。例えば、鉱山で採掘された硫化銅鉱石や銅精鉱などの硫化銅鉱物は、処理される過程で自然あるいは人為的に酸化され、硫化物の一部が酸化物に変化する場合がある。この場合、硫化物を構成する硫黄の一部は、酸化により硫酸塩に変化して存在する。
ところが、鉱物が硫化物から酸化物に変化すると、乾式製錬の場合は反応熱や生成物の形態が変化し、更には硫黄バランスの変化が生じるなど、大きな影響を及ぼすため安定操業の点で好ましいものではない。また、ニッケルや銅の硫化物を直接酸で浸出し、浸出液から電解採取などによってメタルを回収する湿式プロセスの場合、硫化物中に硫酸塩が存在すると浸出液中に溶出して蓄積し、電解採取に用いる電極の劣化を促進させたり、電圧を上昇させたりするなどの問題が生じる。
そのため、銅やニッケルの製錬及び精製工程では、銅精鉱やニッケルマットなどの硫化物中に含まれている硫黄について、どのような形態で存在するのかを知り、また各形態の硫黄の量を調べることは重要なことである。しかしながら、硫化物中に硫化物として含有されている硫黄を選択的に定量した例はほとんど知られていなかった。
また、従来から一般的に、硫黄を化学分析する際には、最高かつ再現性の良い測定精度を得るために、酸化力のある試薬を用いたり酸化雰囲気中で処理したりするなどして、試料に含有される硫黄を全て分離する方法が採用されることが多かった。
鉱物などに含まれる硫黄の分析方法として、例えばJIS M8122の「鉱石中の硫黄定量方法」(非特許文献1)に燃焼−水酸化ナトリウム滴定法が規定されている。この方法は、分析対象の試料を空気気流中で燃焼させ、発生する硫黄の酸化物を捕集して硫酸に変換し、水酸化ナトリウム溶液で滴定する分析方法である。しかし、高温で加熱する必要があるうえ、全硫黄の定量法であるため、硫化物硫黄と硫酸塩硫黄とを区別して定量することは出来なかった。
また、鉱物などに含まれる硫黄を形態別に分析する方法も知られている。しかしながら、硫化物として存在する硫黄(硫化物硫黄)と硫酸塩として存在する硫黄(硫酸塩硫黄)とを区別して定量分析することは難しかった。
例えば、JIS M8817の「石炭類の形態別硫黄の定量方法」(非特許文献2)には、石炭中の黄鉄鉱硫黄の定量方法が記載されている。その中の還元法による黄鉄鉱硫黄の定量方法は、石炭を微粉砕して黄鉄鉱を単体粒子とし、金属クロムと金属亜鉛を加え、エタノールと塩酸を添加して混合し、発生した水素で黄鉄鉱中の硫黄を還元して硫化水素を発生させ、発生硫化水素を酢酸カドミウム溶液に吸収させ、吸収液にヨウ素を加えて過剰のヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液で逆滴定し、硫黄を定量する方法である。
また、JIS R5202の「ポルトランドセメントの化学分析方法」(非特許文献3)には、ポルトランドセメント中の硫化物硫黄の定量方法が規定されている。この方法は、ポルトランドセメントに塩酸で溶解した塩化第一スズ溶液を加え、塩酸を注入して蒸留し、発生した硫化水素を亜鉛アンミン溶液に吸収し、でんぷんを指示薬としてヨウ素酸カリウム標準液で滴定して硫黄を定量する方法である。
このように、硫化物中に存在する硫化物硫黄を選択的に定量する方法は知られていなかった。尚、硫酸塩の多くが可溶性であることを利用して、予め試料を水などで洗浄することで硫酸塩硫黄を分離して定量し、全硫黄の分析値から硫酸塩硫黄の分析値を差し引くことにより、硫化物硫黄を定量する方法も考えられる。しかし、試料の洗浄中に新たな酸化が生じやすいうえ、洗浄により試料内部の硫酸塩まで完全に分離することが困難であるなどの課題があった。
「鉱石中の硫黄定量方法」,燃焼−水酸化ナトリウム滴定法,JIS M8122,1994,p.5−8 「石炭類の形態別硫黄の定量方法」,黄鉄鉱硫黄の定量方法,JIS M8817,1984,p.4−10 「ポルトランドセメントの化学分析方法」,硫化物硫黄の定量方法,JIS R5202,1989,p.12−13
本発明は、上記した従来の事情に鑑み、銅精鉱やニッケルマットなどの硫化物について、特に酸化された硫黄を含む硫化物について、その中に硫化物として存在する硫黄(硫化物硫黄)を、酸化され硫酸塩として存在する硫黄(硫酸塩硫黄)と区別して、選択的に定量分析する方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは硫酸塩硫黄を含む硫化物中の硫化物硫黄を選択的に定量する方法を鋭意検討した結果、硫化物を金属と共に塩酸酸性溶液中に浸漬することによって、硫化物中の硫酸塩硫黄を溶液中に溶解させる一方、硫化物硫黄を選択的に硫化水素に変換させ、ガスとして分離した硫化水素を定量する方法が有効であることを見出した。
即ち、本発明が提供する硫化物中の硫化物硫黄定量方法は、酸化された硫黄を含む硫化物中に含有される硫化物硫黄を選択的に定量する方法であって、該硫化物に、該硫化物を形成する金属よりも卑な金属と、金属塩と、酸溶液とを添加して、得られたスラリーを撹拌することにより硫化物中の硫化物硫黄から硫化水素を生成させ、生成した硫化水素の量を測定することを特徴とする。
上記本発明による硫化物中の硫化物硫黄定量方法において、前記生成した硫化水素の量の測定は、該硫化水素を過酸化水素と水酸化ナトリウムの混合溶液に吸収させ、得られた溶液をICP発光分光分析法により測定することが好ましい。
また、上記本発明による硫化物中の硫化物硫黄定量方法においては、前記金属として亜鉛、アルミニウム、鉄から選ばれた少なくとも1種を用い、前記スラリー中の濃度が0.01〜20重量%の濃度となるように添加することが好ましい。
更に、上記本発明による硫化物中の硫化物硫黄定量方法において、前記金属塩として塩化第一スズ、塩化第一鉄、硫酸第一鉄から選ばれた少なくとも1種を用い、前記スラリー中の濃度が0.005〜0.5重量%となるように添加することが好ましい。
本発明によれば、硫化物中に硫化物として存在する硫化物硫黄を、酸化された硫黄である硫酸塩硫黄と区別して、選択的に定量することができる。従って、銅やニッケルの製錬工程において、硫化銅鉱石や銅精鉱、ニッケルマットやニッケルコバルト混合硫化物などに含有される硫化物硫黄を定量することによって、安定した操業を図ることができる。
また、硫化銅鉱石や銅精鉱などの製錬原料を貯留する場合などにおいても、その硫化物硫黄あるいは硫酸塩硫黄の量の経時的変化を比較することによって、硫化銅鉱石などの製錬原料である硫化物中に含まれている硫化物の酸化の進行程度を簡単に把握することが可能である。
本発明の実施例において硫化物硫黄の定量に使用した定量装置を示す概略の側面図である。
本発明において測定対象とすることができる硫化物は、特に限定されるものではなく、例えば、銅製錬に用いる黄銅鉱、輝銅鉱、斑銅鉱などの硫化銅鉱石や、これらの硫化銅鉱石を浮遊選鉱して得られる銅精鉱がある。また、ニッケルマットやニッケルコバルト混合硫化物などのニッケル製錬の硫化物中間原料も用いることができる。これらの硫化物は、一般に酸化された硫黄を含んでいる。
これらの硫化物は、反応性を向上させるために、予め粉砕等の処理を行って、30μm程度以下の粒度とすることが好ましい。また、硫化物中に元素状態として単体で存在する硫黄が1%以上含まれている場合には、硫化物に二硫化炭素などの溶媒を添加して振り混ぜることにより、元素状態の硫黄を予め溶解除去しておくことが望ましい。
本発明方法では、上記硫化物を酸溶液と混合してスラリーとし、このスラリーに硫化物を形成する金属よりも卑な金属及び金属塩を添加して撹拌する。このとき、まず硫化物を形成する金属よりも卑な金属が酸と反応して、水素を発生しながら溶解する。同時に、発生した水素が硫化物として存在する硫黄(硫化物硫黄)を還元し、その硫黄が更に水素と反応して硫化水素ガスを発生する。一方、酸化されて硫酸塩として存在する硫黄(硫酸塩硫黄)はほとんど反応せず、酸溶液中に溶解される。
実験的な確認によれば、例えば、試料として試薬のCuSやFeS等の硫化物を用いた試験では、上記反応により硫黄の95%以上が硫化水素に変換される。一方、硫酸銅や硫酸など酸化された硫黄を試料とした試験では、硫黄が硫化水素に変換される割合は1%未満である。このように、本発明方法によれば、硫化物硫黄のみを硫化水素として選択的に分離することができる。
尚、上記反応時の温度については、特に限定されないが、金属が酸に溶解する反応は発熱反応であるため、一般的に100℃未満の温度が好ましい。ただし、操作性や安全性に加え、効率よい操作のための迅速性を考慮すれば、液温が30〜70℃となる範囲を維持することが好ましい。
上記酸溶液としては、塩酸や硫酸の溶液を用いることができる。金属の溶解が進行するためには、例えば塩酸を用いる場合、溶液中の塩酸濃度を反応終了まで0.1〜6モルの範囲に維持することが好ましい。また、硫酸を用いる場合にも、塩酸の場合と同様に溶液中の硫酸濃度を0.1〜6モルの範囲に維持することが望ましい。
上記金属としては、硫化物を形成している金属よりも卑な金属を用いる。例えば、硫化銅鉱物を対象とする場合は、亜鉛、アルミニウム、鉄、マンガンなどの金属を使用することができる。コストや使いやすさを考慮すると、亜鉛が特に適している。同様に、ニッケルマットやニッケルコバルト混合硫化物を対象とする場合には、鉄を用いると硫化ニッケル(NiS)が生成する場合があるため、鉄以外の上記金属を用いることができる。尚、添加する金属の形状は限定されないが、操作の利便性や反応性を考慮すれば砂状ないし粒状が好ましい。
硫化物のスラリーに添加された金属は、硫化物の還元に充分な量の水素を供給できるように、硫化物硫黄が硫化水素として完全に分離されるまで存在し続ける必要がある。そのためには、酸溶液に硫化物、金属及び金属塩が分散したスラリー中の金属の濃度が0.01〜20重量%となる範囲を維持するように、スラリー中に金属を存在させることが望ましい。具体的な例として、分析試料が銅精鉱100mgで、3M塩酸75mlを添加する場合には、金属亜鉛の添加量は約10gが適量である。
上記金属の濃度が0.01重量%よりも少ないと、生成される水素量が不充分であるため、硫化物の分解が不均一且つ不完全に進むため好ましくない。また、20重量%を越えた状態では、水素の発生が激しすぎるため、発生した水素が硫化物を還元する前にスラリーから抜けてしまうなど有効に使われずに反応効率が低下したり、あるいは反応熱が多すぎてスラリーの温度を上昇させ、突沸を生じたりする恐れがある。
また、上記金属塩としては、塩化第一スズ、塩化第一鉄、硫酸第一鉄などの還元剤として用いられるものを好適に使用できる。例えば、銅やニッケルの硫化物を測定対象とする場合には、塩化第一スズを用いることが特に好ましい。
金属塩の濃度は、酸溶液に硫化物、金属及び金属塩が分散したスラリー全体の0.005〜0.5重量%の範囲が好ましい。金属塩の濃度が0.005重量%未満では後述する金属塩の添加効果が得られない。また、0.5重量%を超えて添加すると還元が進みすぎ、硫化物中の銅などの金属が硫化銅などとして沈殿し、鉄までが沈殿して銅と分離できなくなる。金属塩の更に好ましい濃度は0.01〜0.1重量%の範囲である。
上記金属塩の添加によって、金属と酸の反応で生成した水素による硫化水素の発生が促進され、金属を単独で添加する場合よりも迅速に硫化水素が生成するため、処理時間を大幅に短縮することができる。例えば、銅精鉱100mgを濃度3Mの塩酸75mlに溶解してスラリー化した場合、金属亜鉛10gだけの添加では銅精鉱中の硫化物硫黄が60分以内に硫化水素に変換されるのに対して、同一条件で0.01重量%の塩化第一スズを亜鉛と共に添加すると10分以内に硫化水素として分離できる。
上記した反応により発生した硫化水素の量を測定することにより、測定対象の硫化物中に含まれる硫化物硫黄を定量することができる。硫化水素の好ましい測定方法としては、発生した硫化水素を過酸化水素と水酸化ナトリウムを混合した吸収液に吸収させ、得られた溶液を既存の硫黄の定量分析方法、例えばICP発光分光分析法により測定する方法がある。吸収液としては、0.1〜3重量%の過酸化水素と3〜20重量%の水酸化ナトリウムの混合溶液を用いるのが便利であり、特に1重量%の過酸化水素と10重量%の水酸化ナトリウムの混合溶液が適している。
尚、硫化水素は反応後液中に残留することがあるため、反応後液中にガスを吹き込むことにより、残留した硫化水素分を追い出して吸収液に捕集することが好ましい。ガスの吹き込みは、反応前から連続して行ってもよい。吹き込むガスとしては、アルゴンや窒素などの不活性ガス、炭酸ガスなど、反応後液や残渣及び吸収液に影響を与えないものであればよい。
ガスの吹き込みの終点は、例えば、反応後液から吸収液までの間に硫化水素ガスの濃度センサを設けて連続的に測定し、硫化水素濃度が必要とする分析精度に影響しなくなる一定値以下、具体的には1ppm以下程度に低減した時点を終点と見なすことができる。
上記した本発明方法によれば、酸化されて硫化物中に硫酸塩として存在する硫酸塩硫黄は酸溶液に溶解するので、硫化物中の硫化物硫黄のみを硫化水素に変換させて選択的に定量することができる。また、硫化物中の金属については、例えば硫化物が硫化銅鉱石や銅精鉱の場合、含まれている銅は反応後の未溶解残渣中に濃縮され、鉄は反応後液に溶解される。
従って、例えば銅やニッケルの製錬工程において、硫化銅鉱石や銅精鉱、ニッケルマットやニッケルコバルト混合硫化物などに含有される硫化物硫黄と硫酸塩硫黄の量を知り、安定した操業を図ることができる。更には、同じ硫化物中の硫化物硫黄あるいは硫酸塩硫黄の量の経時的変化を比較することによって、硫化物の酸化の進行程度を簡単に把握することが可能である。
[実施例1]
定量装置として、図1に示すように、耐熱ガラスからなる容量250mlの反応容器1と、飛沫を除去するための空容器3と、発生した硫化水素ガスを吸収するための2段の吸収容器4、4とを直列に接続した装置を使用した。反応容器1の上部にはコック付ロート2が取り付けてある。また、2つの吸収容器4、4には、吸収液として濃度1%の過酸化水素と濃度10%水酸化ナトリウムからなる混合溶液をそれぞれ50mlづつ入れた。
図1に示す定量装置を使用して、下記表1に示す組成を有するチリ産の銅精鉱中に含まれる硫黄の定量を行った。尚、表1に示した銅精鉱中の硫黄(S)の品位は、JIS M8122の「鉱石中の硫黄定量方法」に記載されている燃焼−水酸化ナトリウム滴定法に準拠して分析することにより、全硫黄品位として得られた値である。
Figure 2010256263
上記銅精鉱0.1gを反応容器1に入れ、金属亜鉛(試薬)10gを加えた。次いで、上部のコック付きロート2より、水50ml、20%塩化第一スズ溶液5ml、濃塩酸25mlを順次添加して、反応開始時の塩酸濃度4Mのスラリーとし、反応容器1ごと20分間振り混ぜて撹拌した。
反応容器1の上部から窒素ガスを連続的に通気し、反応容器1で発生したガスと共に空容器3を通して吸収容器4、4に導いた。反応が進むに従って、銅精鉱中の亜鉛よりも貴な金属は残渣として凝集し、スラリーは無色となった。20分経過後、撹拌を止めて更に10分間窒素ガスを通気した。
その後、2つの吸収容器4、4内の溶液を合わせてメスフラスコに移し入れ、濃塩酸40mlを加えた後、標線まで水で希釈して200mlとした。この溶液を10ml分取し、濃塩酸10mlを加えて100mlに希釈した。希釈した溶液はICP発光分光分析装置を用いて測定し、別に作成した検量線系列を用いて硫黄を定量した。
その結果、得られた硫黄の定量値から、上記銅精鉱の硫化物硫黄品位として31.9%を得た。従って、本発明方法による全硫黄に対する硫化物硫黄の分離率、即ち上記銅精鉱に含まれる全硫黄中の硫化物硫黄の割合は、95.8%であることが分った。
一方、反応容器1内の未溶解残渣を回収し、無水炭酸ナトリウムと過酸化ナトリウムを2:1の割合で混合したアルカリ剤を加え、700℃で2時間かけて融解した。得たられ融解物を水に溶解し、ICP発光分光分析装置を用いて定量した結果、添加した亜鉛の未溶解残渣の部分を除いて、銅が91%、硫黄が2.8%、Siが0.5%、Znが1.9%、Feが0.9%、Alが0.5%であった。
また、反応容器1内の反応後液をICP発光分光分析装置で分析した結果、銅濃度は定量下限以下であり、銅は全て未溶解残渣に分配していることが分った。また、反応後液中の硫黄は、銅精鉱に含有された全硫黄中の1.9%に相当する量が分配していた。即ち、硫化水素にも未溶解残渣にも分配せず、反応後液に分配した硫黄を上記銅精鉱中に硫酸塩として存在した硫酸塩硫黄と見なすと、上記銅精鉱の硫黄酸化率は1.9%となる。
[実施例2]
下記表2に試料2〜5として示すように、初期塩酸濃度、反応時間、添加金属と金属塩を変えた以外は上記実施例1と同様の条件で、上記表1に示す品位の銅精鉱について硫黄の定量を行った。得られた結果を下記表2に併せて示した。また、参考のために、上記実施例1を試料1として表2に併記した。
更に比較例として、金属亜鉛を添加しないこと以外は上記実施例1と同様の条件で、上記表1に示す品位の銅精鉱について硫黄の定量を行った。得られた結果を試料6として、下記表2に併せて示した。
Figure 2010256263
上記試料1〜5の結果から、本発明方法を用いることにより、上記銅精鉱に含まれる全硫黄中の約96%以上が硫化水素として分離され、これが硫化硫黄の含有量であることが確かめられた。一方、比較例による試料6では、硫化物硫黄の分析品位は6%であり、銅精鉱中の全硫黄の18%しか硫化水素として分離できていないことが分る。
また、上記実施例2の試料4及び5で得られた未溶解残渣を上記実施例1と同様に定量し、得られた結果を上記実施例1の試料1の結果と併せて下記表3に示した。
Figure 2010256263
この結果から分るように、未溶解残渣中の銅は89%以上であり、鉄や亜鉛及び硫黄などは2〜3%以下であって、上記銅精鉱に含まれる銅の大部分が未溶解残渣中に銅メタルの形態で濃縮されていた。
1 反応容器
2 コック付きロート
3 空容器
4 吸収容器

Claims (5)

  1. 酸化された硫黄を含む硫化物中に含有される硫化物硫黄を選択的に定量する方法であって、該硫化物に、該硫化物を形成する金属よりも卑な金属と、金属塩と、酸溶液とを添加して、得られたスラリーを撹拌することにより硫化物中の硫化物硫黄から硫化水素を生成させ、生成した硫化水素の量を測定することを特徴とする硫化物中の硫化物硫黄定量方法。
  2. 前記生成した硫化水素の量の測定は、該硫化水素を過酸化水素と水酸化ナトリウムの混合溶液に吸収させ、得られた溶液をICP発光分光分析法により測定することを特徴とする、請求項1に記載の硫化物中の硫化物硫黄定量方法。
  3. 前記金属として亜鉛、アルミニウム、鉄から選ばれた少なくとも1種を用い、前記スラリー中の濃度が0.01〜20重量%の濃度となるように添加することを特徴とする、請求項1又は2に記載の硫化物中の硫化物硫黄定量方法。
  4. 前記金属塩として塩化第一スズ、塩化第一鉄、硫酸第一鉄から選ばれた少なくとも1種を用い、前記スラリー中の濃度が0.005〜0.5重量%となるように添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の硫化物中の硫化物硫黄定量方法。
  5. 前記硫化物が、硫化銅鉱石、銅精鉱、ニッケルマット、ニッケルコバルト混合硫化物のいずれかであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の硫化物中の硫化物硫黄定量方法。
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