JP2010249405A - 内面溝付管及びその製造方法 - Google Patents

内面溝付管及びその製造方法 Download PDF

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薫 穀田
Kotaro Tsuri
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Abstract

【課題】熱交換器用の内面溝付管において、冷凍機油の濃度が高い場合でも伝熱性能が低下せず、撥油性皮膜と内面溝付管との密着性が良好な内面溝付管及びその製造方法を提供する。
【解決手段】管内面にフィンが形成されている内面溝付管において、冷凍機油の油膜を形成することを防止するための皮膜が前記管内面に形成されている二酸化炭素冷媒用内面溝付管。皮膜の厚さが1〜200μmであり、管内面の表面粗さRaが1〜50μmである。前記内面溝付管の製造方法であって、素管内面に螺旋溝を転造する転造処理と、前記内面溝付管の内面に皮膜を形成するための撥油加工剤を充填する充填処理と、前記撥油加工剤を排出する排出処理と、前記内面溝付管の内面を乾燥させる乾燥処理と、前記内面溝付管を加熱する加熱処理をこの順で行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、エアコン、給湯器、冷凍機、床暖房等の、ヒートポンプ機器において、熱交換器用の伝熱管として用いられる内面溝付管及びその製造方法に関する。
エアコンや給湯器などのヒートポンプ機器の熱交換器に用いられる伝熱管は、熱交換性能の向上を図るため、内面に溝加工を施した、例えば、銅製の内面溝付管が用いられることが多い。
熱交換器の小型化、高効率化の要求に対応するため、内面に形成された溝を深くし、溝のねじれ角(リード角)を大きくし、フィンをシャープな形状にした内面溝付管が求められている。
最近は環境問題から脱フロン、特に二酸化炭素を使用する熱サイクル装置の開発が行われている。前記熱サイクル装置は、給湯用熱交換器、膨張弁、蒸発器、圧縮機、そして元の給湯用熱交換器に戻る、というサイクルをまわすように組み合わされている。
二酸化炭素を冷媒として使用するためには、圧縮機の磨耗を防ぐために、冷凍機油が使用されている。冷凍機油が二酸化炭素冷媒に混入して熱サイクル装置を循環するようになると、熱交換器の伝熱管の内面に付着し、油膜を形成する。この油膜により伝熱管の熱伝達率の低下や圧力損失が発生し、熱交換器の性能低下を招くことがわかっている。
これに対し、冷凍機油の油膜形成を抑制した内面溝付管が開示されている(特許文献1)。また、扁平管において、油膜形成を抑制するために撥油性皮膜を内面に形成した例が開示されている(特許文献2)。
特開2008−249294号公報 特開2000−46421号公報
しかし、特許文献1には冷凍機油の通流量を0.5質量%以下とすることが好ましいとの記載がある。一般的な二酸化炭素冷媒熱サイクル装置では、冷凍機油の通流量が1質量%以上、場合によっては5質量%以上となることがあり、冷凍機油の通流量によっては所望の伝熱性能が得られない場合もあった。加えて、冷凍機油の通流量が少ないと、コンプレッサーの焼き付きの可能性が高まり、信頼性の点で懸念があった。
また、特許文献2に記載の撥油性皮膜を、内面溝付管に適用しようとしても、撥油性皮膜と内面溝付管との密着性が弱くなることが推測され、撥油性皮膜が剥離して伝熱性能の低下を招くことが心配される。
そこで本発明は、冷凍機油を用いる熱交換器用の内面溝付管において、冷凍機油の濃度が高い場合でも伝熱性能が低下せず、撥油性皮膜と内面溝付管との密着性が良好な内面溝付管及びその製造方法を提供する。
上記課題は、以下の手段により達成される。すなわち、本発明は、
(1)管内面にフィンが形成されている内面溝付管において、冷凍機油の油膜を形成することを防止するための皮膜が前記管内面に形成されている内面溝付管、
(2)前記(1)に記載の内面溝付管であって、
前記皮膜の厚さが1〜200μmであることを特徴とする内面溝付管、
(3)前記(1)または(2)に記載の内面溝付管であって、
前記内面溝付管の管内面の表面粗さRaが1〜50μmであることを特徴とする内面溝付管、
(4)前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の内面溝付管を製造する方法であって、
素管内面に螺旋溝を転造する転造処理と、
前記内面溝付管の内面に皮膜を形成するための撥油加工剤を充填する充填処理と、
前記撥油加工剤を排出する排出処理と、
前記内面溝付管の内面を乾燥させる乾燥処理と、
前記内面溝付管を加熱する加熱処理を、
この順で行うことを特徴とする内面溝付管の製造方法、
を、提供するものである。
本発明の内面溝付管及びその製造方法によれば、冷凍機油の濃度が高い場合でも伝熱性能が低下せず、撥油性皮膜と内面溝付管との密着性が良好なため、伝熱性能の優れた内面溝付管を製造することができる。
本実施形態の内面溝付管を管軸に対して直角に切断した一部を示す断面図である。 本実施形態の内面溝付管の管軸を通る面における断面図である。 内面溝付管の溝付加工装置を示す説明図である。 放熱性能測定装置の説明図である。 蒸発性能測定装置の説明図である。
本発明の一実施形態を図面と共に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
以下に、本実施形態の内面溝付管の内部を説明する。図1は、本実施形態の内面溝付管を管軸に対して直角に切断した一部を示す断面図である。内面溝付管11は、外径D、肉厚tを有する断面略円形の管である。
内面溝付管11の内部は、複数のフィン1、複数の溝2、及び皮膜3からなる。溝2は、内面溝付管11の内部に、螺旋状に複数形成されている。フィン1は、高さH、頂角αを有し、断面略三角形の突起であり、隣り合う溝2の間に螺旋状に複数形成されている。
フィン1の高さHを0.1mm以上とすると、内面溝付管11の内部の表面積を増加させ、内部を通る冷媒の乱流が促進するため、伝熱性能を向上させることができて好ましい。
皮膜3は、内面溝付管11の内面全体を覆っている。皮膜3は、フッ素樹脂からなり、撥油性を有する。これにより、冷凍機油が付着しても油膜を形成することを防止することができる。皮膜3の厚さhは1〜200μmとすると、油膜形成の防止を効果的に防止でき、圧力損失の抑制とも両立できる。好ましくは、10〜100μm、より好ましくは20〜80μmである。
前記皮膜3は、撥油性、密着性、耐熱性を有する撥油加工剤であればよい。例えばフッ素樹脂からなる撥油加工剤がある。旭硝子株式会社製の「アサヒガード」、AGCセイミケミカル株式会社の「モールドスパット」等が使用可能である。
なお、フィン1及び溝2の表面は、平滑状態に比べ、微小な凹凸があるほうが、内面溝付管11と皮膜3の密着性が良好であり、皮膜3が剥離しにくいことがわかった。好ましくは表面粗さRaが1〜50μm、より好ましくは3〜15μmであると、密着性が向上して好ましい。
図2は、本実施形態の内面溝付管の管軸を通る面における断面図である。内面溝付管11の内部は、複数のフィン1、複数の溝2が、螺旋状に複数形成されている。また、皮膜3が内面溝付管11の内面全体を覆っている。フィン1と溝2は、管軸方向に対してなすリード角βを有している。
リード角βが大きいと、内面溝付管11の内部の表面積を増加させる。また、冷媒の乱流を促進する。よって伝熱性能が向上する。加工性との両立のため、好ましくはβが0.5〜40度、より好ましくは5〜25度である。
次に、本実施形態の内面溝付管において、内面の溝付加工を行う溝付加工装置10を説明する。
図3は、内面溝付管の溝付加工装置を示す説明図である。本実施形態の内面溝付管の溝付加工装置10は、プラグ20、ダイス25、ボール26を有している。
プラグ20は、フローティングプラグ21、溝付プラグ22、取付ピン23、プラグロッド24からなる。
フローティングプラグ21は、プラグロッド24に対し、素管12の引抜き方向と反対側に配置される。溝付プラグ22は、プラグロッド24に対し、素管12の引抜き方向の側に配置される。
フローティングプラグ21は、プラグロッド24の一端に固定された取付ピン23に回転自在に軸支され、かつ抜け出しが防止されている。また、フローティングプラグ21はダイス25の内側に配置されている。これによりフローティングプラグ21とダイス25の間に素管12を挟んで縮径することができる。
なおダイス25は、プラグ20の位置を固定している。これによりプラグ20が引抜き方向に引き込まれないようになっている。
溝付プラグ22は、プラグロッド24の他端に固定された取付ピン23に回転自在に軸支され、かつ抜け出しが防止されている。また、溝付プラグ22は、ボール26の内側に配置されている。さらに、溝付プラグ22は外周面に有する螺旋溝を有している。
ボール26は自転及び公転可能となっており、加工ヘッド31とストッパ32により位置決めされている。これにより、溝付プラグ22とボール26の間に素管12を挟んで縮径することができ、前記螺旋溝により溝付加工を行うことができる。
次に、本実施形態の内面溝付管の製造方法について説明する。
まず、素管内面に螺旋溝を転造する転造処理を行う。上記溝付加工装置10に、素管12を挿通させ、所定の引張り力で図3の引張り方向に引っ張ることで、内面溝付管11を製造する。内面溝付管11の内部には、フィン1と溝2が所定の形状をもって形成される。
このとき、フィン1及び溝2の表面は、素管12の内面に対して表面粗さRaが増加する。これは、フローティングプラグ21及び溝付プラグ22の表面に有する凹凸により、前記凹凸が転写されて、表面粗さRaが増加する。よって、前記凹凸の状態を適宜変更することで、フィン1及び溝2の表面に所望の表面粗さRaを有する内面溝付管11を得ることができる。
次に、内面溝付管11の内面に皮膜3を形成するための撥油加工剤を充填する充填処理を行う。まず、内面溝付管11の内面にある油分、水分を除去し清浄な状態にする。清浄な状態にするためには、例えば、内面溝付管11を温度450℃にて2時間程度で加熱すれば良い。次いで、内面溝付管11に撥油加工剤を5分程度充填する。これにより、内面溝付管11の内面に撥油加工剤が付着する。
次いで、前記撥油加工剤を排出する排出処理を行い、前記内面溝付管の内面を乾燥させる乾燥処理を行う。さらに、内面溝付管11を加熱する加熱処理を行う。これにより、内面溝付管11の内面に皮膜3が形成され、定着する。なお、前記加熱処理は温度380℃にて20分程度で良い。
以下、本発明を実施例により説明する。
まず、リン脱酸銅(JIS H3300:C1220)からなる素管12について、図3の製造装置を用いて、所望の内部形状をした内面溝付管11を転造加工した。一部は、素管12のままとした。それら内面溝付管11あるいは素管12の内面について、JIS B 0601に準じた方法で表面粗さRaを測定した。
さらに、一部の内面溝付管11には、内面に所定の厚さhの皮膜3を施した。まず、内面溝付管11の内面に皮膜3を形成するための撥油加工剤を充填する充填処理を行った。次いで、内面溝付管11を温度450℃にて2時間の加熱処理をして油分、水分を除去した。そして内面溝付管11に撥油加工剤を所定の時間、充填し、排出した。さらに、内面溝付管11の内面を乾燥させ、温度380℃にて20分の加熱処理を行った。
これらの内面溝付管11及び素管12について、二酸化炭素冷媒を用いた熱サイクル装置によって、放熱性能と蒸発性能について評価した。なお冷凍機濃度は、冷凍機油重量を冷媒重量+冷凍機油重量で除した値を用いた。
放熱性能測定については、図4のように構成された放熱性能測定装置40を用いた。図4の性能測定部41は二重管構造となっており、外側の管に水を流し、内側の管に内面溝付管11及び素管12を配置して、放熱性能を評価した。また冷凍機油濃度は図4の冷凍機濃度測定部42にて測定した。その他の条件は、冷媒圧力10MPa、質量流速1000kg/m・K、熱流束25kW/m、冷媒温度15〜75℃、伝熱有効長さ350mmとした。性能の比較は、皮膜3を有しない素管12である比較例11の性能を100として、その他の内面溝付管11の性能との比で評価した。表1に結果を示す。
蒸発性能測定については、図5のように構成された蒸発性能測定装置50を用いて測定を行った。図5の性能測定部51は二重管構造となっており、外側の管に水を流し、内側の管に内面溝付管11及び素管12を配置して、蒸発性能を評価した。また冷凍機油濃度は図5の冷凍機濃度測定部52にて測定した。その他の条件は、冷媒飽和温度7.5℃、入口乾き度0.2、出口過熱度5.0℃、伝熱有効長さ4000mmとした。性能の比較は、皮膜3を有しない内面溝付管11において、冷凍機油濃度の低い比較例15の性能を100として、その他の内面溝付管11の性能との比で評価した。表2に結果を示す。
Figure 2010249405
Figure 2010249405
表1において、本発明例1及び本発明例3は皮膜3を有するため、管内面の形状及び冷凍機油濃度がほぼ同等である比較例12と比べて、伝熱性能が優れていた。同様に、本発明例2、本発明例4乃至6は、皮膜3を有するため、管内面の形状及び冷凍機油濃度がほぼ同等である比較例13及び比較例14と比べて、伝熱性能が優れていた。
また、表2において、本発明例7は皮膜3を有するため、管内面の形状及び冷凍機油濃度がほぼ同等である比較例15及び比較例17と比べて、伝熱性能が優れていた。同様に、本発明例8は皮膜3を有するため、管内面の形状及び冷凍機油濃度がほぼ同等である比較例16と比べて、伝熱性能が優れていた。
以上に述べたように、本発明の内面溝付管及びその製造方法によれば、冷凍機油の濃度が高い場合でも伝熱性能が低下せず、撥油性皮膜と内面溝付管との密着性が良好なため、伝熱性能の優れた内面溝付管を製造することができる。本発明は、二酸化炭素冷媒を用いた場合について記載したが、冷媒は二酸化炭素に限定されず、冷凍機油を用いる熱交換器であれば、本発明の内面溝付管及びその製造方法を用いることで効果が得られる。
1 フィン
2 溝
3 皮膜
10 溝付加工装置
11 内面溝付管
12 素管
20 プラグ
21 フローティングプラグ
22 溝付プラグ
23 取付ピン
24 プラグロッド
25 ダイス
26 ボール
31 加工ヘッド
32 ストッパ
40 放熱性能測定装置
41 性能測定部
42 冷凍機濃度測定部
50 蒸発性能測定装置
51 性能測定部
52 冷凍機濃度測定部
H フィンの高さ
h 皮膜厚さ
t 肉厚
D 外径
α フィン頂角
β リード角

Claims (4)

  1. 管内面にフィンが形成されている内面溝付管において、冷凍機油の油膜を形成することを防止するための皮膜が前記管内面に形成されている内面溝付管。
  2. 請求項1に記載の内面溝付管であって、
    前記皮膜の厚さが1〜200μmであることを特徴とする内面溝付管。
  3. 請求項1または2に記載の内面溝付管であって、
    前記内面溝付管の管内面の表面粗さRaが1〜50μmであることを特徴とする内面溝付管。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の内面溝付管を製造する方法であって、
    素管内面に螺旋溝を転造する転造処理と、
    前記内面溝付管の内面に皮膜を形成するための撥油加工剤を充填する充填処理と、
    前記撥油加工剤を排出する排出処理と、
    前記内面溝付管の内面を乾燥させる乾燥処理と、
    前記内面溝付管を加熱する加熱処理を、
    この順で行うことを特徴とする内面溝付管の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2019527812A (ja) * 2016-08-05 2019-10-03 オブシェストフォ ス オグラニチェンノイ オトゥヴェステュヴェンノステュ “レインノルツ ラブ”Obshestvo S Ogranichennoi Otvetstvennost’U Reinnolts Lab シェルアンドチューブ式凝縮器およびシェルアンドチューブ式凝縮器の熱交換チューブ(複数のバージョン)

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