JP2010247611A - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】低コスト化や軽量化を図りながら、かつ高速耐久性を維持ないし向上しつつ、操縦安定性を向上させた空気入りラジアルタイヤを提供する。
【解決手段】ポリオレフィンケトンフィラメントを束ねてなる公称繊度が1000〜3000dtexのヤーンを、長さ10cm当たりの撚り数をT、公称繊度をDとして、T(D/1.30)1/2で定義される撚り係数Kが1000〜2000になるように撚って形成され、かつ強度が8.0cN/dtex以上である片撚り構造のポリオレフィンケトン繊維コードを用いて構成された少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカス5を備える。
【選択図】図1
【解決手段】ポリオレフィンケトンフィラメントを束ねてなる公称繊度が1000〜3000dtexのヤーンを、長さ10cm当たりの撚り数をT、公称繊度をDとして、T(D/1.30)1/2で定義される撚り係数Kが1000〜2000になるように撚って形成され、かつ強度が8.0cN/dtex以上である片撚り構造のポリオレフィンケトン繊維コードを用いて構成された少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカス5を備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、空気入りラジアルタイヤに関し、特にポリオレフィンケトン繊維コードをカーカスに用いた空気入りラジアルタイヤに関するものである。
従来の空気入りラジアルタイヤ、特に乗用車用の小型タイヤのカーカスには、レーヨンやポリエステルのコードが使用されている(例えば、下記特許文献1参照)。
しかしながら、レーヨンは、寸法安定性に優れているものの強度が低いため軽量化が難しく、また、原料がパルプであることから生産量が縮小傾向にある。これに対し、ポリエステルは、高速紡糸など紡糸技術の向上に伴う高強度化及びレーヨンに比べて安価なことから、現在ではカーカス用補強材の主流となっている。しかし、ポリエステルはレーヨンに比べてモジュラスが低く、また寸法安定性が劣るため、操縦安定性の低下やユニフォミティー、プライジョイントの凹凸をサイドウォールに生じやすいなどの問題点がある。
一方、ポリオレフィンケトン繊維は、レーヨンやポリエステルに比べて、高強度、高モジュラスである上に、良好な耐熱性や寸法安定性を有することから、各種の産業用資材用途として使用することが期待されている。このような特性に着目し、カーカスプライに使用することも提案されている(下記特許文献2参照)。
ところで、従来、カーカスプライを構成する有機繊維コードとしては、下撚りを施した有機繊維の素線の束(所謂ストランド)の複数本を、更に上撚りによって撚り合わせた双撚り構造のコードが主として使用されており、特許文献2においても双撚り構造のポリオレフィンケトン繊維コードが用いられている。しかしながら、双撚り構造では、下撚りと上撚りとの撚り方向が互いに逆のため、形態保持性は良好であるものの、撚り工程が多く、製造コストが高くなる。また、コード直径が太くなるなど、コード重量の増加を招き、プライ厚さを増大させるなど、タイヤ重量の増加の原因ともなっている。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、低コスト化や軽量化を図りながら、かつ高速耐久性を維持ないし向上しつつ、操縦安定性を向上させた空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
本発明者は、カーカスプライを構成するポリオレフィンケトン繊維コードを片撚り構造とした上で、その撚り係数、公称繊度、強度を所定範囲に設定することにより、上記課題が解決できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る空気入りラジアルタイヤは、ポリオレフィンケトンフィラメントを束ねてなる公称繊度が1000〜3000dtexのヤーンを、長さ10cm当たりの撚り数をT、公称繊度をDとして、T(D/1.30)1/2で定義される撚り係数Kが1000〜2000になるように撚って形成され、かつ強度が8.0cN/dtex以上である片撚り構造のポリオレフィンケトン繊維コードを用いて構成された少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスを備えたものである。
本発明によれば、特定の公称繊度、撚り係数及び強度を持つ片撚り構造のポリオレフィンケトン繊維コードをカーカルプライに用いたことにより、低コスト化や軽量化を図りながら、また高速安定性を維持ないし向上しつつ、操縦安定性を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るものとして乗用車用空気入りラジアルタイヤの1例を示すタイヤ(1)の半断面図である。このタイヤ(1)は、トレッド部(2)と、左右一対のビード部(3)と、トレッド部(2)とビード部(3)との間に介在する左右一対のサイドウォール部(4)とよりなり、トレッド部(2)の径方向内側に配されたカーカス(5)が、そこから両側のサイドウォール部(4)を経てビード部(3)でビードコア(6)の内側から外側に巻き上げられることにより係止されている。また、トレッド部(2)におけるカーカス(5)の径方向外側にスチールコードよりなる2層のベルト(7)が配されている。
カーカス(5)は、多数の有機繊維コードをタイヤ周方向に対して実質上直角に配列し、被覆ゴムで被覆してなるカーカスプライからなるものであり、本実施形態では1枚のカーカスプライでカーカス(5)が構成されている。そして、上記有機繊維コードとして、ポリオレフィンケトン繊維コード(以下、POKコードということがある。)が用いられている。
該POKコードとして、本実施形態のものでは、多数のポリオレフィンケトンフィラメントを束ねてなる公称繊度(表示繊度とも称される。)が1000〜3000dtexのヤーンを、撚り係数Kが1000〜2000になるように撚って形成され、かつ強度が8.0cN/dtex以上である片撚り構造のPOKコードが用いられている。
公称繊度が1000dtexよりも細いコードを用いた場合、カーカスプライを必要な強度にするためには、コードの打ち込み本数を、セパレーションなどの故障が発生しやすくなるまで多くする必要がある。公称繊度が3000dtexよりも太いコードを用いた場合、軽量化が達成できない。公称繊度は、より好ましくは1000〜1700dtexである。
撚り係数Kが1000未満では、コードの耐疲労性が悪く、タイヤとしての高速耐久性に劣る。撚り係数Kが2000を超えると、ゴムとの複合体となったときの剛性が小さくなって、タイヤとしての操縦安定性が低下する。撚り係数Kは、好ましくは1300〜1700である。ここで、撚り係数Kは、コードの長さ10cm当たりの撚り数をT(回/10cm)、上記公称繊度をD(dtex)として、T(D/1.30)1/2で定義される値である。
強度が8.0cN/dtex未満では、カーカスプライを必要な強度にするためのコードの打ち込み本数が多くなり、カットエンド部の接着破壊が起こりやすくなって高速耐久性が悪化する。強度の上限は、特に限定するものではないが、通常は15cN/dtex以下である。コードの強度は、JIS L1017(化学繊維タイヤコード試験方法)に準拠した引張試験を行って、コード切断時の荷重(N)であるコード強力を求めることにより、強度(cN/dtex)=コード強力/公称繊度によって算出される。
片撚り構造のPOKコードを用いるのは、双撚り構造では下撚りと上撚りとの撚り方向が互いに逆のため、撚り工程が多く、製造コストが高くなり、また、コード直径が太くなることでコード重量の増加を招き、またカーカスプライの厚みが増大することにより、タイヤ重量の増加につながるためである。
上記POKコードは、コード直径が0.25〜0.39mmであることが好ましい。このようにコード直径の小さいコードを用いることにより、タイヤの軽量化効果を高めることができる。コード直径は、JIS L1017に準拠し、4本1組の試料をとり、たるまないように引きそろえて平行に並べ、ダイヤルゲージで5箇所について測定し、その平均値を小数点以下2けたまでミリメートルで表す。
上記POKコードを構成するポリオレフィンケトンフィラメントは、オレフィン部分がオレフィン系モノマー由来の単位からなり、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。前記オレフィン系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、スチレン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ビニルアセテート、ウンデセン酸、ウンデセノール、6−クロロヘキセン、N−ビニルピロリドンなどが挙げられる。これらの中でも、力学特性、耐熱性などの点で、ポリメチレンケトン、ポリエチレンケトン、ポリプロピレンケトンなどが好ましい。
該ポリオレフィンケトンフィラメントの製造方法としては、特に制限はなく、溶融紡糸法、溶液紡糸法などによりポリオレフィンケトンを繊維化する方法が挙げられる。溶融紡糸法による場合、例えば、特開平1−124617号公報に記載の方法に従って、溶融紡糸し延伸することにより、ポリオレフィンケトンの繊維を製造することができる。溶液紡糸法による場合、例えば、特開平2−112413号公報に記載の方法に従って、ポリオレフィンケトンを、例えばヘキサフルオロイソプロパノール、m−クレゾール等に、0.25〜20重量%の濃度で溶解させ、紡糸ノズルより押し出して繊維化し、次いでトルエン、エタノール、イソプロパノール、n−ヘキサン、イソオクタン、アセトン、メチルエチルケトン等の非溶剤浴、好ましくはアセトン溶中で溶剤を除去した後、洗浄して紡糸原糸を得て、さらに延伸することにより、ポリオレフィンケトンの繊維を製造することができる。
このようにして得られたポリオレフィンケトン繊維は、所定の撚り数で合撚されてPOKコードとされた後、所定の打ち込み本数でスダレ状に製織される。得られたスダレ織物は、例えばRFL(レゾルシン−ホルマリン−ラテックス)接着液などの公知の処理液でディッピング処理された後、乾燥されることでカーカス材に供される。すなわち、カーカス用ゴム組成物からなる被覆ゴムにより、乾燥後のPOKコードの両側を被覆してトッピング反に加工し、タイヤカーカスとして使用して未加硫タイヤ(グリーンタイヤ)を作製し、次いで、未加硫タイヤを金型にセットして加硫することにより、製品タイヤとする。
カーカスプライにおける上記POKコードのエンド数(打ち込み本数)としては、コード強力等に応じて適宜に設定することができ、特に限定されないが、20〜60本/25mmであることが好ましく、より好ましくは30〜60本/25mmである。
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
図1に示す断面形状を持つタイヤサイズ195/65R15のラジアルタイヤを試作した。カーカスの構成は、実施例及び比較例の各タイヤについて、下記表1,2に示す通りであり、カーカス以外の構成は、全ての共通の構成とした。なお、ベルトは、2+1×0.27HTのスチールコードを打ち込み本数17本/25mmとしたものを2枚(コード角度は、+21°/−21°)とした。
表中の「PET」はポリエステル繊維、「POK」はポリエチレンケトン繊維である。また、コード強力は、JIS L1017に準じて繊維コードを常温で引っ張り試験することにより測定される値であり、2%伸長時のモジュラスは、前記引っ張り試験したときにおける2%伸長時の荷重をよみとることにより得られる値である。また、カーカスプライ厚さは、被覆ゴムによってコードを被覆してなるカーカスプライとしての厚みである。また、タイヤ1本当たりのプライ重量は、上記被覆ゴム重量を含むカーカスプライ全体としての重量を、従来例を100とした指数で表示したものであり、指数が小さいほど軽量であることを意味する。タイヤ重量は、タイヤ全体としての重量であり、実重量(kg)とともに、従来例の重量を100とした指数も併記した。
得られた各タイヤについて、高速耐久性と実車操縦安定性を評価した。評価方法は以下の通りである。
・高速耐久性:FMVSS109(UTQG)に準拠して、表面が平滑な鋼製のドラム試験機(ドラム直径=1700mm)を用い、タイヤ内圧220kPaで、JATMA規定の最大荷重の88%の荷重を負荷して評価を行った。評価手順は、80km/hで60分間慣らし走行した後放冷し、再度空気圧を調整した後、本走行を実施した。本走行は120km/hから開始し、30分毎に8km/hずつ段階的に速度を上昇させ、故障が発生するまで走行させた。故障が発生するまでの走行距離を、従来例を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、高速耐久性に優れることを意味する。
・実車操縦安定性:内圧200kPaで組み込んだ各タイヤを排気量2000ccの試験車両に装着し、訓練された3名のテストドライバーにてテストコースを走行し、フィーリング評価した。採点は10段階評価(詳細には、各段階を3段階(例えば、6−、6、6+)に細分化した30段階での評価)とし、従来例のタイヤを6点とした相対比較にて行い、3人の平均点を従来例のタイヤを100として指数表示した。指数が大きいほど、操縦安定性に優れることを意味する。なお、タイヤ高速耐久性試験にて著しく結果の悪かったものは、実車テストは行わなかった(表中「−」で示した)。
表1に示すように、実施例1〜4であると、カーカスプライに双撚り構造のポリエステル繊維コード(1670dtex/2コード)を用いた従来例に比べて、高速耐久性を維持ないし向上しながら、操縦安定性が向上しており、かつ、軽量化効果も大きかった。
これに対し、表2に示すように、比較例1では、POKコードを用いているものの、公称繊度が規定外の840dtexのヤーンの片撚り構造であったため、カーカスプライとしての強力を確保するためにコードの打ち込み本数が多くなり、そのため、カットエンド部の接着破壊が起こりやすく、高速耐久性が低下していた。
比較例2では、POKコードを用いているものの、公称繊度が規定外の3340dtexのヤーンの片撚り構造であったため、従来例に比べて、高速耐久性と操縦安定性は向上したが、軽量化が達成できなかった。
比較例3では、コードの撚り数が低く、撚り係数Kが968と低すぎたため、疲労性が低下し、そのため従来例に比べて高速耐久性が低下していた。逆に、比較例4では、従来例に比べて高速耐久性は向上したが、コードの撚り数が多く、撚り係数Kが2007と高すぎたため、剛性が低下し、そのため操縦安定性が低下していた。
比較例5では、POKコードを用いているものの、1670dtex/2コードの双撚り構造であったため、従来例に比べて高速耐久性と操縦安定性は向上したが、軽量化が達成できなかった。また、撚り工程が多く製造コストの高いものであった。
比較例6では、ポリエステル繊維の1670dtex/1コードの片撚り構造であるため、カーカスプライとしての強力を確保するためにコードの打ち込み本数が多くなり、そのため、カットエンド部の接着破壊が起こりやすく、高速耐久性が低下していた。
本発明は、乗用車用タイヤを始めとする各種の空気入りラジアルタイヤに好適に用いることができる。
1…空気入りラジアルタイヤ、2…トレッド部、3…ビード部、4…サイドウォール部、5…カーカス、6…ビードコア、7…ベルト、
Claims (2)
- ポリオレフィンケトンフィラメントを束ねてなる公称繊度が1000〜3000dtexのヤーンを、長さ10cm当たりの撚り数をT、公称繊度をDとして、T(D/1.30)1/2で定義される撚り係数Kが1000〜2000になるように撚って形成され、かつ強度が8.0cN/dtex以上である片撚り構造のポリオレフィンケトン繊維コードを用いて構成された少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスを備えた空気入りラジアルタイヤ。
- 前記ポリオレフィンケトン繊維コードのコード直径が0.25〜0.39mmであることを特徴とする請求項1記載の空気入りラジアルタイヤ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2009098034A JP2010247611A (ja) | 2009-04-14 | 2009-04-14 | 空気入りラジアルタイヤ |
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Cited By (1)
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JP2012158156A (ja) * | 2011-02-02 | 2012-08-23 | Sumitomo Rubber Ind Ltd | 空気入りタイヤの製造方法 |
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2009
- 2009-04-14 JP JP2009098034A patent/JP2010247611A/ja not_active Withdrawn
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