JP2010245187A - 積層型圧電アクチュエータ素子 - Google Patents

積層型圧電アクチュエータ素子 Download PDF

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和浩 須摩
Shuichi Watanabe
修一 渡辺
Kazuo Ogawa
和男 小川
Junji Saito
淳史 齊藤
Yoshi Sukigara
宜 鋤柄
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Abstract

【課題】応答特性に優れ、従来と同等の応答速度を得るときは、従来よりも入力電流量を抑制することが可能で、一方、従来と同等の入力電流量を印加した場合には、応答速度が速くなる積層型圧電アクチュエータ素子を提供する。
【解決手段】積層型圧電アクチュエータ素子1は、上面に2つの導体層3A,5Aをそれぞれ相対向する端部に至るように設けた圧電体層2Aと、導体層4Bを端部に至らないようにその上面に設けた圧電体層2Bとを、それぞれ複数枚、交互に備える積層体13を形成する。そして、積層体13の導体層3A,5Aが露出した両端面に設けた1対の外部電極11,14を備え、導体層3A,5Aと、導体層4Bとは圧電体層2Aを挟んで重なる部分を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、積層型圧電アクチュエータ素子に関し、特に、精密工作機器における位置決め、流量制御バルブ、自動車の燃料噴射ノズルの開弁用アクチュエータ、あるいはブレーキ装置などに用いられるアクチュエータ、また、インクジェットプリンタのインク吐出ノズルのアクチュエータなどの各種用途に用いられる積層型圧電アクチュエータ素子に関する。
積層型圧電アクチュエータ素子は、より大きな圧電効果を得るために、複数の圧電体と電極とを交互に積層したものである。この積層型圧電アクチュエータ素子において、素子内の複数の電極、またはユニット間の電極を直列に接続する構成とし、交流電源を入力することにより、素子の応答速度を向上させることが行われている。
例えば、図13に示すように、内部電極層113が、交互に対向する側面に向けて突設するように、内部電極層113と圧電体層112とを、交互に複数層積層した積層体114からなる積層型圧電アクチュエータ素子111が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。この積層型圧電アクチュエータ素子111では、積層体114の対向する側面に一層ごとに内部電極層113の端面115が露出し、その端面115に、積層体114の側面に沿って配設された外部電極116が接続されている。
また、図14に示すように、内部電極層123が、交互に対向する側面に向けて突設するように、圧電体層122と、内部電極層123とを、交互に複数層積層した積層体ユニット124を、接合部125を介して複数個接合して一体化した積層型圧電アクチュエータ素子121が知られている(特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。この積層型圧電アクチュエータ素子121では、積層体ユニット124の対向する側面に一層ごと内部電極層123の端面126が露出し、その端面126に、積層型圧電アクチュエータ素子121の側面に沿って配設された外部電極127A,127Bが接続されている。
さらに、図15に示すように、圧電体層132と、内部電極層133とを、交互に複数層積層した積層体134で構成される積層型圧電アクチュエータ素子131が知られている(特許文献6参照)。この積層型圧電アクチュエータ素子131では、積層体134の両側面に内部電極層133の両端面が露出し、内部電極層133の1層ごとに、交互に端面に短絡防止のための絶縁層135が設けられ、内部電極層133の他の露出する端面136に、積層体134の側面に沿って配設された外部電極137が接続されている。
特開2005−191050号公報 特開平4−309274号公報 特開平5−175565号公報 特開2004−274030号公報 特開平4−274377号公報 特開平3−203385号公報
しかし、従来の積層型圧電アクチュエータ素子は、複数の圧電体層と、それぞれの圧電体層に電圧を印加して圧電効果を発揮させるために配置される内部電極層とが、交互に複数層積層された構成を有する。この構成では、1の圧電体層と、その圧電体層を挟む内部電極層とで構成される複数の圧電ユニットが、外部電極に並列に接続された構成となっている。ここで、圧電ユニットは、内部電極層に挟まれた圧電体の誘電率とその厚さによって決まる静電容量を有する。したがって、積層型圧電アクチュエータ素子は、電気的には、複数のコンデンサが並列接続されているものと等価である、と考えられる。そのため、従来の圧電ユニットが並列に接続された積層型圧電アクチュエータ素子では、並列に接続された圧電ユニットの個数だけ、静電容量が加算され、大きい静電容量を有することになる。
ところで、一般に、圧電アクチュエータ素子では、素子が有する静電容量に応じた電荷が、内部電極層に印加される電圧によって十分に充放電されてから圧電現象、すなわち、圧電体層の変位が生じ、電圧印加に対する圧電アクチュエータ素子としての応答が生じる。これは、図10(a)に示すように、電圧を時間t1からt3まで印加した場合、電圧の印加に対して、素子の応答は、応答遅れを生じ、立上り期間(t1→t2)、立下り期間(t3→t4)を示す。これは、図10(b)に示すように、t1からt2の期間(充電期間、立上り期間)に、素子への充電が行われる。そして、充電が完了すると、t2からt3の期間(変位期間)、電圧Pの印加によって素子が圧電変位し、電圧Pに印加に対して、素子が応答する。そして、電圧Pの印加がt3で終了すると、放電が開始され、t3からt4までの期間(放電期間、立下り期間)、放電が行われる。この電圧の印加→充電(立上り)→圧電変位(応答)→電圧の印加の終了→放電(立下り)を繰り返すことによって、圧電アクチュエータ素子が動作することになる。
したがって、素子の静電容量が大きいほど充放電時間が長くなり、すなわち、静電容量が大きくなると、圧電アクチュエータ素子の立上り時間および立下り時間が長くなるため、素子が電圧の印加に対して、変位して応答するまでの時間、および電圧の印加の終了後、放電して次の電圧の印加に対して応答するまでの時間が長くなる。そのため、圧電アクチュエータ素子の応答速度が遅くなる。このような場合、応答速度を速くするためには、入力電気量(電荷)を増加させたり、または静電容量を減少させたりすることが必要となる。
これに対して、従来の積層型圧電アクチュエータ素子では、前記のとおり、並列に接続された圧電ユニットの個数だけ、静電容量が加算され、大きい静電容量を有することになる。そのため、従来の積層型圧電アクチュエータ素子は、大きい静電容量に起因して、応答速度が遅い、という問題があった。また、積層型圧電アクチュエータ素子の変位量拡大、すなわち、積層型圧電アクチュエータ素子を構成する複数の圧電ユニットの電圧の印加による圧電体層の変位を大きくするためには、圧電体層の個数を増加させたり、印加電圧を増加させたり、あるいは圧電体層を薄層してより多数の圧電体層を積層することが必要となる。このような場合にも、従来の積層型圧電アクチュエータ素子では、静電容量が増加し、素子を充電するのに必要な電荷が多くなり、応答速度が遅くなる。
このような積層型圧電アクチュエータ素子では、前記のとおり、応答速度を早くするために入力電流を増加させることが必要となる。しかし、素子への入力電流を増加させるためには、素子の駆動に用いられる制御回路の電界効果トランジスタ(FET)の大容量化、大電流に耐えうる内部電極や外部電極の大型化、アクチュエータと接続された電流印加の為のハーネスの大容量化などを必要とする。静電容量および印加電圧を減少させると、アクチュエータの発生変位量や発生力の低下などの性能低下に繋がる。
そこで、本発明の課題は、応答特性に優れ、従来と同等の応答速度を得るのに、従来よりも入力電流を抑制することが可能で、一方、従来と同等の入力電流を印加した場合には応答速度を速くすることができる積層型圧電アクチュエータ素子を提供することにある。
前記課題を解決するために、請求項1に係る積層型圧電アクチュエータ素子は、上面に2つの第1の導体層をそれぞれ相対向する端部に至るように設けた第1の圧電体層と、第2の導体層を端部に至らないようにその上面に設けた第2の圧電体層とを、それぞれ複数枚、交互に備える積層体と、積層体の第1の導体層が露出した両端面に設けた1対の外部電極とを備え、第1の導体層と、第2の導体層とは第2の圧電体層を挟んで重なる部分を有することを特徴とする。
この積層型圧電アクチュエータ素子では、第1/第2の圧電体層を挟み第1および第2の導体層によってそれぞれ1つのコンデンサが形成される(都合2つのコンデンサが形成される)。これらのコンデンサは、2直列接続されたコンデンサとして働くので、圧電体層の厚みを増やさなくても、積層型圧電アクチュエータ素子の静電容量を小さくできる。これにより、駆動電流が小さくて済むので、積層型圧電アクチュエータ素子の反応速度を向上できる。また、駆動回路の素子などの電流容量が小さくて済むので、駆動回路のコストや部品点数、発熱量を削減できる。それに、前記した2直列接続されたコンデンサとすることで、積層型圧電アクチュエータ素子の耐電圧性を向上させることができる。また、圧電体層の厚みを小さくして、積層型圧電アクチュエータ素子の小型化を図ったり、高集積化して変位を大きくしたりすることができる。
また、請求項2に係る積層型圧電アクチュエータ素子は、請求項1に係る積層型圧電アクチュエータ素子において、第1の圧電体層の上面のうち、一対の第1の圧電体層間に、端部および第1の導体層に至らないように設けた複数の第3の導体層を備え、第2の導体層は複数に分割され、一方の第1の導体層と、第2の導体層とは第2の圧電体層を挟んで重なりを有し、第3の導体層と、第2の導体層とは、第2の圧電体層を挟んで重なる部分を有することを特徴とする。
この積層型圧電アクチュエータ素子では、第1/第2の圧電体層を挟み第1および第2の導体層によってそれぞれ1つのコンデンサが形成され、第1の圧電体層を挟み第2および第3の導体層によって複数のコンデンサが形成される(都合6つ以上のコンデンサが形成される)。これらのコンデンサは、6以上直列接続されたコンデンサとして働くので、圧電体層の厚みを増やさなくても、積層型圧電アクチュエータ素子の静電容量を請求項1に係る発明よりもさらに小さくできる。これにより、駆動電流がさらに小さくて済むので、積層型圧電アクチュエータ素子の反応速度をさらに向上できる。また、駆動回路の素子などの電流容量がさらに小さくて済むので、駆動回路のコストや部品点数、発熱量をさらに削減できる。それに、前記した6以上直列接続されたコンデンサとすることで、積層型圧電アクチュエータ素子の耐電圧性をさらに向上させることができる。また、圧電体層の厚みを小さくして、積層型圧電アクチュエータ素子のさらなる小型化を図ったり、高集積化して変位をさらに大きくしたりすることができる。
そして、請求項3に係る積層型圧電アクチュエータ素子は、請求項1に係る積層型圧電アクチュエータ素子において、第1の圧電体層の上面に端部および第1の導体層に至らないように設けた単一の第3の導体層を備え、一方の第1の導体層と、第2の導体層とは第2の圧電体層を挟んで重なりを有し、第2の導体層は2つに分割され、第3の導体層と、第2の導体層とは、第2の圧電体層を挟んで重なる部分を有することを特徴とする。
この積層型圧電アクチュエータ素子では、第1/第2の圧電体層を挟み第1および第2の導体層によってそれぞれ1つのコンデンサが形成され、第1の圧電体層を挟み第2および第3の導体層によってそれぞれ1つのコンデンサが形成される(都合4つのコンデンサが形成される)。これらのコンデンサは、4直列接続されたコンデンサとして働くので、圧電体層の厚みを増やさなくても、積層型圧電アクチュエータ素子の静電容量を請求項1に係る発明よりもさらに小さくできる。これにより、駆動電流がさらに小さくて済むので、積層型圧電アクチュエータ素子の反応速度をさらに向上できる。また、駆動回路の素子などの電流容量がさらに小さくて済むので、駆動回路のコストや部品点数、発熱量をさらに削減できる。それに、前記した2直列接続されたコンデンサとすることで、積層型圧電アクチュエータ素子の耐電圧性をさらに向上させることができる。また、圧電体層の厚みを小さくして、積層型圧電アクチュエータ素子のさらなる小型化を図ったり、高集積化して変位をさらに大きくしたりすることができる。
また、請求項4に係る積層型圧電アクチュエータ素子は、請求項1に係る積層型圧電アクチュエータ素子において、第1の圧電体層および第2の圧電体層は、圧電定数が300[pm/V]以上の圧電セラミックからなることを特徴とする。
この積層型圧電アクチュエータ素子では、このような圧電定数が300[pm/V]以上の圧電セラミックを第1および第2の圧電体層として用いているので、例えば燃料噴射弁装置において、アクチュエータ素子として十分な変位を得ることができる。
本発明によれば、応答特性に優れ、従来と同等の応答速度を得るのに、従来よりも入力電流を抑制でき、また、従来と同等の入力電流を印加した場合には、応答速度を速くできる積層型圧電アクチュエータ素子を提供できる。
本発明による第1実施形態の積層型圧電アクチュエータ素子の構造を模式的に示す縦断面図である。 本発明による第2実施形態の積層型圧電アクチュエータ素子の構造を模式的に示す縦断面図である。 比較例に係る積層型圧電アクチュエータ素子の構造を示す模式的に示す縦断面図である。 (a)は、本発明による第1実施形態の積層型圧電アクチュエータ素子の電気的構成を簡略化して示す縦断面図であり、(b)は、この積層型圧電アクチュエータ素子を示す等価回路図である。 (a)は、比較例の積層型圧電アクチュエータ素子の電気的構成を簡略化して示す縦断面図であり、(b)は、この積層型圧電アクチュエータ素子を示す等価回路図である。 (a)は、実施例の積層型圧電アクチュエータ素子の構成を示す図であり、(b)は、比較例の積層型圧電アクチュエータを示す図である。 実施例および比較例の測定条件および測定結果を示す図である。 実施例および比較例の積層型圧電アクチュエータの駆動条件を示す図である。 積層型圧電アクチュエータの駆動モデルを示すグラフである。 (a)は、入力波形を示すグラフであり、(b)は、電圧印加波形と電流波形を示すグラフである。 実効電流と立上り時間との関係を示すグラフである。 印加電圧と立上り時間との関係を示すグラフである。 従来の積層型圧電アクチュエータ素子の構成例を示す図である。 従来の積層型圧電アクチュエータ素子の構成例を示す図である。 従来の積層型圧電アクチュエータ素子の構成例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について、添付した各図を参照し、詳細に説明する。
(第1実施形態の構成)
図1は、本発明による第1実施形態の積層型圧電アクチュエータ素子1の構造を模式的に示す縦断面図である。この断面は、積層型圧電アクチュエータ素子1の積層方向に切断した面である。なお、積層方向と直角な方向を面方向ということとする。
この積層型圧電アクチュエータ素子1は、圧電体層2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2H,2Iと、導体層(3Aおよび5A),4B,(3Cおよび5C),4D,(3Eおよび5E),4F,(3Gおよび5G),4H,(3Iおよび5I),4Jと、が交互に積層された積層体13を備えている。
なお、本説明において、要素に付した符号に後置したアルファベット(A〜J)は、積層体13において、その要素が属する層を示す。要素を層によって区別しないとき、または、要素を総体として示すときは、層を示すアルファベットを省き、要素の符号の本体部分(数字部分)で、その要素を示す。
圧電体層2Aは、一端では(図示した断面の略右半分では)、導体層3Aと導体層4Bとの間に挟まれ、他端では(図示した断面の略左半分では)、導体層5Aと導体層4Bとの間に挟まれ、圧電ユニット9Aを構成している。
以下同様に、圧電体層2Bは、導体層4Bと導体層3Cとの間、および、導体層4Bと導体層5Cとの間に挟まれ、圧電ユニット9Bを構成している。
圧電体層2Cは、導体層3Cと導体層4Dとの間、および、導体層5Cと導体層4Dとの間に挟まれ、圧電ユニット9Cを構成している。
以下、圧電ユニット9D〜9Iについても、前記と同様であるので、説明を省略する。
圧電体層2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2H,2Iのそれぞれは、例えば、チタン酸バリウム、ジルコン酸鉛、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)などを焼結した圧電セラミックによって形成される。
なお、本実施形態の積層型圧電アクチュエータ素子1を燃料噴射弁装置で利用する場合は、圧電体層2(2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2H,2I)は、圧電定数が300[pm/V]以上の圧電セラミックからなることが好ましい。このような圧電セラミックを圧電体層2として用いることにより、例えば燃料噴射弁装置において、アクチュエータ素子として十分な変位を得ることができる。
導体層3A,3C,3E,3G,3Iは、積層体13から一辺が露出して外部接続用電極部を形成し、他辺が積層体13の中央部に向かうように突設されている。この外部接続用電極部は、銀ペーストなどからなる導電性材料12によって、外部電極11に接続されている。
導体層5A,5C,5E,5G,5Iは、積層体13から一辺が露出して外部接続用電極部を形成し、他辺が積層体13の中央部に向かうように突設されている。この外部接続用電極部は、銀ペーストなどからなる導電性材料12によって、外部電極14に接続されている。
導体層3A,3C,3E,3G,3Iと、導体層5A,5C,5E,5G,5Iとは、それぞれ、略同一平面上に設けられるが、相互に接触するまでは延伸せず、絶縁性などを考慮して決定される所定の間隙がおかれている。
導体層4B,4D,4F,4H,4Jは、導体層3(3A,3C,3E,3G,3I),5(5A,5C,5E,5G,5I)と互い違いに、また、略面方向に設けられる。導体層4B,4D,4F,4H,4Jは、いずれの導体層3,5と接触することなく、かつ、外部電極11,14のいずれにも接触することなく、圧電体層2(2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2H,2I)中に埋設される。つまり、積層体13において、圧電体層2の中に「浮かんだ」状態となっている。
導体層3A,3C,3E,3G,3Iと、導体層5A,5C,5E,5G,5Iとは、一辺が、それぞれ、同一面上で対向し、他辺が積層体13の側端から露出して外部接続用電極部が形成される。
この導体層3A,3C,3E,3G,3Iと、導体層5A,5C,5E,5G,5Iとの側端に形成される外部接続用電極部は、それぞれ積層体13の側面に形成された外部電極11,14に、銀ペーストなどの導電性材料12によって電気的に接続される。
本発明による第1実施形態によれば、例えば次の効果が得られる。
(1)圧電ユニット9Aにおいて、圧電体層2Aを挟み導体層3A,4Bによって1つのコンデンサが形成され、圧電体層2Aを挟み導体層5A,4Bによってもう1つのコンデンサが形成される(他の圧電ユニット9B〜9Iでも同様)。これらのコンデンサは、直列接続されたコンデンサとして働くので、圧電体層2A〜2Iの厚みを増やさなくても、積層型圧電アクチュエータ素子1の静電容量を小さくできる。
(2)これにより、駆動電流が小さくて済むので、積層型圧電アクチュエータ素子1の反応速度を向上できる。また、駆動回路の素子などの電流容量が小さくて済むので、駆動回路のコストや部品点数、発熱量を削減できる。
(3)前記した直列接続されたコンデンサとすることで、積層型圧電アクチュエータ素子1の耐電圧性を向上させることができる。
(4)圧電体層2A〜2Iの厚みを小さくして、積層型圧電アクチュエータ素子1の小型化を図ったり、高集積化して変位を大きくしたりすることができる。
(第2実施形態の構成)
図2は、本発明による第2実施形態の積層型圧電アクチュエータ素子20の構造を模式的に示す縦断面図である。この断面は、積層型圧電アクチュエータ素子20の積層方向に切断した面である。
この積層型圧電アクチュエータ素子20は、圧電体層22A,22B,22C,22D,22E,22F,22G,22H,22Iと、導体層(23A,25Aおよび26A),(24Bおよび27B),(23C,25Cおよび26C),(24Dおよび27D),(23E,25Eおよび26E),(24Fおよび27F),(23G,25Gおよび26G),(24Hおよび27H),(23I,25Iおよび26I),(24Jおよび27J)と、が交互に積層された積層体33を備えている。
そして、圧電体層22Aは、一端では(図示した断面の右方では)、導体層23Aと導体層24Bとの間に挟まれ、他端では(図示した断面の左方では)、導体層25Aと導体層27Bとの間に挟まれ、中央部では、導体層26Aと(導体層24Bおよび導体層27B)との間に挟まれ、圧電ユニット29Aを構成している。
同様に、圧電体層22Bは、導体層24Bと導体層23Cとの間、導体層27Bと導体層25Cとの間、および、(導体層24Bおよび導体層27B)と導体層26Cとの間に挟まれ、圧電ユニット29Bを構成している。
圧電体層22Cは、導体層23Cと導体層24Dとの間、導体層25Cと導体層27Dとの間、および、導体層26Cと(導体層24Dおよび導体層27D)との間に挟まれ、圧電ユニット29Cを構成している。
以下、圧電ユニット29D〜29Iについても、前記と同様であるので、説明を省略する。
圧電体層22A,22B,22C,22D,22E,22F,22G,22H,22Iのそれぞれは、例えば、チタン酸バリウム、ジルコン酸鉛、ジルコン酸チタン酸鉛などによって形成される。
導体層23A,23C,23E,23G,23Iは、積層体33から一辺が露出して外部接続用電極部を形成し、他辺が積層体33の中央部に向かうように突設されている。この外部接続用電極部は、銀ペーストなどからなる導電性材料32によって、外部電極31に接続されている。
導体層25A,25C,25E,25G,25Iは、積層体33から一辺が露出して外部接続用電極部を形成し、他辺が積層体33の中央部に向かうように突設されている。この外部接続用電極部は、銀ペーストなどからなる導電性材料32によって、外部電極34に接続されている。
導体層23Aと導体層25Aとの間、導体層23Cと導体層25Cとの間、導体層23Eと導体層25Eとの間、導体層23Gと導体層25Gとの間、導体層23Iと導体層25Iとの間には、それぞれ、いずれの電極とも接触しない導体層26A,26C,26E,26G,26Iが形成されている。
導体層23A,23C,23E,23G,23Iと、導体層25A,25C,25E,25G,25Iと、導体層26A,26C,26E,26G,26Iとは、それぞれ、略同一平面上に設けられるが、相互に接触するまでは延伸せず、絶縁性などを考慮して決定される所定の間隙がおかれている。
導体層24B,24D,24F,24H,24Jは、導体層23(23A,23C,23E,23G,23I),25(25A,25C,25E,25G,25I)と略平行に、いずれの導体層23,25と接触することなく設けられる。さらに、導体層24B,24D,24F,24H,24Jは、外部電極31,34のいずれにも接触することなく設けられる。つまり、積層体33において、圧電体層22(22A,22B,22C,22D,22E,22F,22G,22H,22I)の中に「浮かんだ」状態となっている。
同様に、導体層27B,27D,27F,27H,27Jは、導体層23(23A,23C,23E,23G,23I),25(25A,25C,25E,25G,25I)と略平行に、いずれの導体層23,25と接触することなく設けられる。さらに、導体層27B,27D,27F,27H,27Jは、外部電極31,34のいずれにも接触することなく設けられる。つまり、積層体33において、圧電体層22(22A,22B,22C,22D,22E,22F,22G,22H,22I)の中に「浮かんだ」状態となっている。
導体層23A,23C,23E,23G,23Iと、導体層25A,25C,25E,25G,25Iとは、導体層26A,26C,26E,26G,26Iと向き合う一辺と対向する他辺が、積層体33から露出して外部接続用電極部を形成している。
導体層23A,23C,23E,23G,23Iと、導体層25A,25C,25E,25G,25Iの側端に形成される外部接続用電極部は、それぞれ積層体33の側面に形成された外部電極31,34に、銀ペーストなどの導電性材料32によって接続される。
本発明による第2実施形態によれば、例えば次の効果が得られる。
(1)圧電ユニット29Aにおいて、圧電体層22Aを挟み導体層23A,24Bによってコンデンサが形成され、圧電体層22Aを挟み導体層24B,26Aによってコンデンサが形成され、圧電体層22Aを挟み導体層26A,27Bによってコンデンサが形成され、圧電体層22Aを挟み導体層27B,25Aによってコンデンサが形成され、都合4つのコンデンサが形成される(他の圧電ユニット29B〜29Iでも同様)。これらのコンデンサは、4直列接続されたコンデンサとして働くので、圧電体層22A〜22Iの厚みを増やさなくても、積層型圧電アクチュエータ素子20の静電容量をさらに小さくできる。
(2)これにより、駆動電流がさらに小さくて済むので、積層型圧電アクチュエータ素子1の反応速度をさらに向上できる。また、駆動回路の素子などの電流容量がさらに小さくて済むので、駆動回路のコストや部品点数、発熱量をさらに削減できる。
(3)前記した4直列接続されたコンデンサとすることで、積層型圧電アクチュエータ素子1の耐電圧性をさらに向上させることができる。
(4)圧電体層22A〜22Iの厚みをさらに小さくして、積層型圧電アクチュエータ素子20のさらなる小型化を図ったり、高集積化して変位をさらに大きくしたりすることができる。
(比較例の構成)
図3は、比較例に係る積層型圧電アクチュエータ素子40の構造を示す模式的に示す縦断面図である。
比較例の積層型圧電アクチュエータ素子40は、圧電体層42A,42B,42C,42D,42E,42F,42G,42H,42Iと、導体層45A,43B,45C,43D,45E,43F,45G,43H,45I,43Jと、が交互に積層された積層体53で構成されている。
そして、圧電体層42Aは、導体層45Aと導体層43Bとの間に挟まれ、圧電ユニット49Aを構成している。
同様に、圧電体層42Bは、導体層43Bと導体層45Cとの間に挟まれ、圧電ユニット49Bを構成している。
圧電体層42Cは、導体層45Cと導体層43Dとの間に挟まれ、圧電ユニット49Cを構成している。
以下、圧電ユニット49D〜49Iについても、前記と同様であるので、説明を省略する。
圧電体層42A,42B,42C,42D,42E,42F,42G,42H,42Iのそれぞれは、第1実施形態の圧電体層2(2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2H,2I)または第2実施形態の圧電体層22(22A,22B,22C,22D,22E,22F,22G,22H,22I)と同一の材質で形成される。
導体層45A,43B,45C,43D,45E,43F,45G,43H,45I,43Jとは、それぞれ、一の導体層と、圧電体層42(42A,42B,42C,42D,42E,42F,42G,42H,42I)を挟んで一の導体層と隣り合う他の導体層とが、それぞれ対向する側面に導体層43(43B,43D,43F,43H,43J),45(45A,45C,45E,45G,45I)の側端が露出して形成される外部接続用電極部を有する。すなわち、導体層45A,43B,45C,43D,45E,43F,45G,43H,45I,43Jは、積層体53の交互に対向する側面に向けて突設され、積層体53の対向する側面に一層ごとに、導体層45A,43B,45C,43D,45E,43F,45G,43H,45I,43Jの側端が露出して外部接続用電極部を形成している。
この導体層45A,43B,45C,43D,45E,43F,45G,43H,45Iの側端に形成される外部接続用電極部は、それぞれ積層体53の側面に形成された外部電極51,54に導電性材料52によって接続される。
(実施形態と比較例との比較)
図4(a)は、本発明による第1実施形態の積層型圧電アクチュエータ素子1の電気的構成を簡略化して示す縦断面図であり、図4(b)は、この積層型圧電アクチュエータ素子1を示す等価回路図である。
図5(a)は、比較例の積層型圧電アクチュエータ素子40の電気的構成を簡略化して示す縦断面図であり、図5(b)は、この積層型圧電アクチュエータ素子40を示す等価回路図である。
まず、前提として、図4(a)に示すように、導体層3および導体層5で圧電体層2を挟んで形成されるコンデンサについて、キャパシタンスをC1、電位差をV1とし、導体層4および導体層5で圧電体層2を挟んで形成されるコンデンサについて、キャパシタンスをC2、電位差をV2とする。ここで、C1=C2=Coとする。
また、図4および図5に示すように、図4(b)を流れる電流をI直、図5(b)を流れる電流をI並としたとき、I並=I直とする。
さらに、図4(b)の回路でコンデンサに印加される電圧をV直、図5(b)の回路でコンデンサに印加される電圧をV並としたとき、V直=2V並とする。これは、後記するように、同一のキャパシタンスのコンデンサを直列接続して、所定の電圧を印加したとき、それぞれのコンデンサにかかる電圧はその2分の1になる(すなわち、耐圧が2倍になったのと等価である)からである。
図4に示す第1実施形態の等価回路の静電容量C直は、次式で表すことができる。
(1/C直) = (1/C1)+(1/C2)
ここで、C1=C2=Coとすると、次式を導くことができる。
(1/C直) = (1/Co)+(1/Co)
C直 = Co/2
図5に示す比較例の等価回路の静電容量C並は、次式で表すことができる。ここで、C1=C2=Coとする
C並=Co+Co=2Co
したがって、コンデンサに蓄えられる電荷Q並は、次式で表すことができる。ここで、t並は、図5(b)の回路におけるコンデンサの充放電時間である。
Q並 = C並 × V並 = 2Co V並=I並 t並
また、図4の回路においてコンデンサに蓄えられる電荷Q直は、次式で表すことができる。
Q直 = C直 V直 = (Co/2)×2V並 = Co V並 = (Q並/2)
また、次式でも表すことができる。ここで、t直は、図4(b)の回路におけるコンデンサの充放電時間である。
Q直 = I直 t直
したがって、次式が成り立つ。
I直 t直=(I並 t並)/2
よって、I直=I並であるとき、t直=t並/2である。
したがって、コンデンサを直列に接続した、実施形態1を表す回路(図4(b))のほうが、コンデンサを並列に接続した、比較例を表す回路(図5(b)よりも、応答速度が速いことが分かる。また、電流も少なくて済むので、発熱が少なくて済む。
以下、本発明の実施形態による実施例および比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。例えば、第2実施形態においては、本願発明の第2の導体層は2つに分割されているが、それ以上に分割されていてもよいし、第3の導体層は単一であるが2つ以上に分割されていてもよい。その際は、第1の導体層と第2の導体層との重なり、あるいは第2の導体層と第3の導体層との重なりによって、直列のコンデンサを形成するようにすればよい。
実施例として、第1実施形態の実施例である図6(a)に示す構成の積層型圧電アクチュエータ素子1を用いて、圧電特性を評価した。この積層型圧電アクチュエータ素子1は、図7に示すとおり、PZTからなる圧電体層と、Ag−Pd合金からなる圧電体層を挟む導体層とを、80層積層し、外部電極11,14を設けたものである。この積層型圧電アクチュエータ素子の詳細を図7の実施形態の欄に示す。
これに対して、比較例として、図6(b)の比較例の積層型圧電アクチュエータ素子40を用いて、圧電特性を評価した。この積層型圧電アクチュエータ素子40は、図7に示すとおり、PZTからなる圧電体層と、Ag−Pd合金からなる圧電体層を挟む導体層とを、80層積層し、外部電極51,54を設けたものである。この積層型圧電アクチュエータ素子の詳細を図7の比較例の欄に示す。
図8は、実施例および比較例の積層型圧電アクチュエータの駆動条件を示す図であり、図9は、積層型圧電アクチュエータの駆動モデルを示すグラフである。
なお、積層型圧電アクチュエータ素子駆動条件は図8および図9に示すモデルにもとづき、波形を方形波とし、周波数は1Hz、Duty比は0.2%とした。Duty比はDuty比(%)=実変位での駆動時間/1サイクル時間×100(%)を表す。
このとき、図8に示す印加電圧および印加電流で積層型圧電アクチュエータ素子を駆動するとともに、静電容量(μF)、変位(μm)、応答の立上り時間(μsec)を測定した。結果を図7に示す。応答の立上り時間(μsec)は、印加電圧を0Vから250Vまたは125Vに、あるいは250Vまたは125Vから0Vに変えたときに、印加電圧が250V、125V、0Vになるまでの時間を測定することで得られる。
次に、実施例および比較例の積層型圧電アクチュエータ素子1,40について、印加電圧および印加電流を加えて、積層型圧電アクチュエータ素子の実効電流に対する立上り時間を測定した。その結果を図11に示す。
この図11に示す結果から、同一の実効電流であるとき、本発明の積層型圧電アクチュエータ素子1(実施例)は、立上り時間が比較例の積層型圧電アクチュエータ素子40に比べて短く、本発明の積層型圧電アクチュエータ素子1が、応答特性に優れ、応答速度が速いことが分かる。
次に、実施例および比較例の積層型圧電アクチュエータ素子1,40について、印加電圧および印加電流を加えて、積層型圧電アクチュエータ素子の印加電圧に対する立上り時間を測定した。その結果を図12に示す。なお、前記したとおり、実施例および比較例の積層型圧電アクチュエータ素子1,40では構成が異なることから、実施例の積層型圧電アクチュエータ素子1の印加電圧を、比較例の積層型圧電アクチュエータ素子40の印加電圧の2倍として比較した。
この図12に示す結果から、本発明の積層型圧電アクチュエータ素子1(実施例)は、立上り時間が比較例の積層型圧電アクチュエータ素子40に比べて短く、本発明の積層型圧電アクチュエータ素子1が、応答特性に優れ、応答速度が速いことが分かる。
1 積層型圧電アクチュエータ素子(第1実施形態)
2A,2C,2E,2G,2I 圧電体層(第1の圧電体層)
2B,2D,2F,2H 圧電体層(第2の圧電体層)
3A,3C,3E,3G,3I 導体層(第1の導体層)
4B,4D,4F,4H,4J 導体層(第2の導体層)
5A,5C,5E,5G,5I 導体層(第1の導体層)
9A,9B,9C,9D,9E,9F,9G,9H,9I 圧電ユニット
11 外部電極
12 導電性材料
13 積層体
14 外部電極
20 積層型圧電アクチュエータ素子(第2実施形態)
22A,22C,22E,22G,22I 圧電体層(第1の圧電体層)
22B,22D,22F,22H 圧電体層(第2の圧電体層)
23A,23C,23E,23G,23I 導体層(第1の導体層)
24B,24D,24F,24H,24J 導体層(第2の導体層)
25A,25C,25E,25G,25I 導体層(第1の導体層)
26A,26C,26E,26G,26I 導体層(第3の導体層)
27B,27D,27F,27H,27J 導体層(第2の導体層)
29A,29B,29C,29D,29E,29F,29G,29H,29I 圧電ユニット
31 外部電極
32 導電性材料
33 積層体
34 外部電極
40 積層型圧電アクチュエータ素子(比較例)
42,42A,42B,42C,42D,42E,42F,42G,42H,42I 圧電体層
43,43B,43D,43F,43H,43J 導体層
45A,45C,45E,45G,45I 導体層
49A,49B,49C,49D,49E,49F,49G,49H,49I 圧電ユニット
51 外部電極
52 導電性材料
53 積層体

Claims (4)

  1. 上面に2つの第1の導体層をそれぞれ相対向する端部に至るように設けた第1の圧電体層と、第2の導体層を端部に至らないようにその上面に設けた第2の圧電体層とを、それぞれ複数枚、交互に備える積層体と、前記積層体の前記第1の導体層が露出した両端面に設けた1対の外部電極とを備え、前記第1の導体層と、前記第2の導体層とは前記第2の圧電体層を挟んで重なる部分を有することを特徴とする積層型圧電アクチュエータ素子。
  2. 前記第1の圧電体層の上面のうち、一対の第1の圧電体層間に、前記端部および前記第1の導体層に至らないように設けた複数の第3の導体層を備え、前記第2の導体層は複数に分割され、一方の前記第1の導体層と、前記第2の導体層とは前記第2の圧電体層を挟んで重なりを有し、前記第3の導体層と、前記第2の導体層とは、前記第2の圧電体層を挟んで重なる部分を有することを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電アクチュエータ素子。
  3. 前記第1の圧電体層の上面に前記端部および前記第1の導体層に至らないように設けた単一の第3の導体層を備え、一方の前記第1の導体層と、前記第2の導体層とは前記第2の圧電体層を挟んで重なりを有し、前記第2の導体層は2つに分割され、前記第3の導体層と、前記第2の導体層とは、前記第2の圧電体層を挟んで重なる部分を有することを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電アクチュエータ素子。
  4. 前記第1の圧電体層および第2の圧電体層は、圧電定数が300[pm/V]以上の圧電セラミックからなることを特徴とする請求項1に記載の積層型圧電アクチュエータ素子。
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