JP2010244860A - 有機el素子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持基板31上に下部電極21、有機EL層22、上部電極23、封止膜24をこの順に形成して積層する有機EL素子の製造方法において、表面側に酸化物透明導電膜を有する前記下部電極21を形成した後、該下部電極21表面に、放電電力が1.0×10-2W/cm2乃至3.0×10-1W/cm2の範囲の希ガス中でプラズマ処理を施す表面処理工程を加える有機EL素子の製造方法とする。
【選択図】 図1
Description
有機EL素子をカラーディスプレイとして実用化する上での重要な課題は、高い精細度を実現することに加えて、色再現性を含め長期的な安定性、信頼性を確保することである。しかしながら、従来の多色発光有機EL素子には、一定期間の駆動により発光特性(電流−輝度特性)が著しく低下するという欠点を有している。
この発光特性の低下原因の代表的なものは、駆動電圧の上昇である。これは、有機EL素子中の酸素または水分により、駆動時および保存中に有機EL素子を構成する層の形成材料の酸化または凝集が進行することによって発生すると考えられている。また、駆動時だけでなく、保存中にも進行する。特に、そのような駆動電圧の上昇の原因である構成層の形成材料の酸化をもたらす酸素および水分の供給源として、有機EL素子の周囲の外部環境雰囲気中の酸素または水分、構成層中に吸着物として存在する酸素または水分、あるいは構成層の一つである酸化物透明導電膜に含まれる酸素または水分などが考えられる。
すなわち、前述した従来の酸化物透明導電膜の表面処理では、表面の汚染有機物および酸化した汚染有機物を除去することを主目的としている。従って、紫外線照射や酸素プラズマ処理は、汚染有機物の結合箇所の破壊や、アッシングの効果による汚染有機物の表面からの除去と言う点に関しては非常に有効である。しかしながら、前記紫外線照射や酸素プラズマ処理は、同時に酸化物透明導電膜表面の酸素結合の形成、すなわち、酸化を促進することにもなるため、遊離しやすい酸素が素子内部に拡散し、駆動電圧の上昇を発生させる可能性が高まるという問題のあることが分かった。
本発明は、前記希ガス中でのプラズマ処理を、希ガスと還元性ガスの混合ガス中でのプラズマ処理とすることもできる
本発明は、前記放電電力を3.0×10-2W/cm2乃至2.0×10-1W/cm2の範囲とすることがより好ましい。
本発明は、前記プラズマ処理の時間を5秒乃至300秒とすることが望ましい。
本発明は、前記いずれかの有機EL素子の製造方法において、前記酸化物透明導電膜をIn、Zn、Oの元素を含有する化合物とすることができる。
本発明は、前記いずれかの有機EL素子の製造方法において、前記下部電極を陰極とすることが好ましい。
本発明は、前記いずれかの有機EL素子の製造方法により得られる有機EL素子とすることができる。
図4に本発明の有機EL素子の製造方法により得られるトップエミッション型有機EL素子の模式的断面図を示す。図4のトップエミッション型有機EL素子100は、支持基板31と、該支持基板31の上に、下部電極21、有機EL層22、上部電極23および封止膜(保護層)24がこの順に積層された有機EL素子基板20とを含む。下部電極21は光反射性の高い金属電極(図示せず)とこの金属電極上に積層される酸化物透明導電膜(図示せず)を備える。この下部電極21を構成する酸化物透明導電膜は、有機EL層22に接する側の層は接しない他の層に比べ、酸素含有量が小さくなっている。酸化物透明導電膜は積層でも単層でもよい。酸素含有量は、図3に示すX線光電子分光法(XPS(X-ray photoelectron spectroscopy)、またはESCA)を用いて得られるスペクトル図から、O(酸素原子)1sのピーク面積と、In(インジウム原子)3dのピーク面積を算出し比較を行うことにより評価することができる。
たとえば、酸化物透明導電膜としてIZO膜を形成する場合、通常(従来)はおよそ0.05から1.0Paの酸素分圧においてスパッタ成膜を実施するが、酸素分圧を0Paにすると、前記成膜中の酸素含有量を10から20%低減させることができる。また、IZO膜の成膜後にIZO膜表面を希ガス雰囲気でプラズマ処理を行うと、膜内部に比べ数%の膜の表面側の酸素を低減することができる。プラズマ処理における雰囲気圧力は、1から10Paの範囲が望ましい。また、電源として13.56MHzのRF電源や、27.12MHzの高周波電源、パルス型出力が可能なDC電源を用いることができる。その際の印加電力は、1.0×10-2W/cm2から3.0×10-1W/cm2の範囲の低電力が望ましい。この電力密度範囲では、酸化物透明導電膜表面から酸素元素を低減させることができるからである。これよりも大きな高電力(5.0×10-1W/cm2〜1.0W/cm2)では下記表1に示すように酸素を低減させる効果が小さいだけでなく、透明導電膜表面の粗さが大きくなる危険性が高まる。前記低電力を印加する場合は、スパッタ率の高い軽元素である酸素原子が先に離脱するので、重い元素であるInの組成比が高くなるが、前記高電力ではIn、Zn、Oの元素集団でまとまって表面から離脱することによる結果であると考えられる。
支持基板31と有機EL層22との間に挟まれる下部電極21と、有機EL層22を挟んで前記下部電極21とは反対側に積層される上部電極23は、前記有機EL層22へのキャリア注入と、図示しない外部駆動回路への接続という両機能を有する。下部電極21および上部電極23は、それぞれ、陽極(正孔注入電極)または陰極(電子注入電極)のいずれであってもよい。下部電極21および上部電極23のいずれか一方が陽極であるとき、他方は陰極となる。図4に示すトップエミッション型有機EL素子構造においては、下部電極21は、光反射性表面を有することが望ましいので、光反射性表面を有する金属膜と透明導電膜の積層膜を用い、上部電極23は光の出射側となるので透明電極(酸化物透明導電膜)にする必要がある。
下部電極21および上部電極23として用いられる酸化物透明導電膜は、SnO2、In2O3、In−Sn酸化物、In−Zn酸化物、ZnO、またはZn−Al酸化物などの導電性金属酸化物を用いて形成することが好ましい。上部電極23は、有機EL層22からの発光を外部に取り出すための経路となることから、波長400〜800nmの範囲内で50%以上、好ましくは85%以上の透過率を有することが望ましい。
有機EL層22は、下部電極21と上部電極23との間に位置し、それぞれの電極と接触している。有機EL層22は、少なくとも発光層を含み、必要に応じて正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層および/または電子注入層を含む。たとえば、有機EL層22は、下記のようにいろいろな、陽極と陰極の間の層構成を有することができる。
(2)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
なお、上記(1)〜(7)の各構成において、陽極および陰極は、それぞれ下部電極21または上部電極23のいずれかである。
発光層は、公知の材料を用いて形成することができる。青色から青緑色の発光を得るための材料は、たとえば、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物もしくはベンゾオキサゾール系化合物のような蛍光増白剤、4,4’−ビス(ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)のようなスチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、縮合芳香環化合物;環集合化合物;およびポルフィリン系化合物などがある。
正孔輸送層は、トリアリールアミン部分構造、カルバゾール部分構造、またはオキサジアゾール部分構造を有する材料を用いて形成することができる。正孔輸送層の好ましい材料は、N,N’−ジトリル−N,N’−ジフェニルビフェニルアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、トリス[4−(3−メチルフェニルフェニルアミノ)フェニル]ベンゼン類MTDAPB(o−,m−,p−)、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミンm−MTDATAなどが挙げられる。
電子輸送層は、前記Alq3のようなアルミニウム錯体、PBDもしくはTPOBのようなオキサジアゾール誘導体、TAZのようなトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルキノキサリン類、BMB−2Tのようなチオフェン誘導体などの材料を用いて形成することができる(前記PBD:2−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、前記TPOB:1,3,5−トリス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)ベンゼン、前記TAZ:3−(ビフェニル−yl)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール、前記BMB−2T:5,5’−ビス(ジメシチルボリル)−2,2’−ビチオフェンを表す。)。
以上のような各構成層に加えて、任意選択的に、有機EL層22と陰極として用いる下部電極21または上部電極23のいずれかとの間に、キャリア注入効率をさらに高めるためのバッファ層を任意選択的に形成することもできる(図示せず)。バッファ層は、アルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはそれらの合金、または希土類金属、あるいはそれら金属のフッ化物などの電子注入性材料を用いて形成することができる。
さらに、有機EL層22の上表面に、上部電極23の形成時のダメージを緩和するために、MgAgなどからなるダメージ緩和層(図示せず)を形成することも好ましい。
有機EL層22の各構成層、バッファ層およびダメージ緩和層は、蒸着(抵抗加熱蒸着または電子ビーム加熱蒸着)などの当該技術において知られている任意の手段を用いて作製することができる。
封止膜(保護層)24は、外部環境の雰囲気または水分を含有する惧れのある層から上部下部電極および/または有機EL層22への水分の侵入を防止するための層である。封止膜(保護層)24は、単層または複数の無機膜または有機膜で形成することができる。また、封止膜(保護層)24を構成する膜は、膜剥離を防止するために、小さい応力を有することが望ましい。
封止基板30は、たとえば、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、またはポリイミド樹脂のような有機系樹脂を用いて形成することができる。有機系樹脂を用いる場合、封止基板30は剛直性であっても可撓性であってもよい。
図4に示す色変換層40は、有機EL層22からの発光の色相を調整するための層である。本発明における色変換層40とは、カラー層(またはカラーフィルタ層)a(図示せず)または色変換層b(図示せず)そのもの、およびカラー層aと色変換層bとの積層体(図示せず)などの層の総称である。色変換層40は、図4に示すように封止基板30の内側に設けてもよいし、封止基板30の外側に設ける構造(図示せず)も考えられる。
色変換層bは、特定の波長域の光を吸収して波長分布変換を行い、異なる波長域の光を放出する層である。色変換層bは、少なくとも蛍光色素を含み、必要に応じてマトリクス樹脂を含んでもよい。蛍光色素は、有機EL層22からの光を吸収し、所望の波長域(たとえば、赤色領域、緑色領域または青色領域)の光を放射する。
青色から青緑色領域の光を吸収して、緑色領域の蛍光を放射する蛍光色素は、たとえば、3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2’−ベンゾイミダゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)、3−(2’−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)などのクマリン系色素;ソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素;および、ベーシックイエロー51などのクマリン色素系染料などを含む。あるいはまた、前述のような蛍光性を有する各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)を用いてもよい。
色変換層bは、スピンコート、ロールコート、キャスト、ディップコートなどの塗布法、あるいは蒸着法を用いて形成することができる。複数種の蛍光色素を用いて色変換層bを形成する場合には、所定の比率の複数種の蛍光色素、およびマトリクス樹脂を混合して予備混合物を形成し、当該予備混合物を用いて蒸着を行うこともできる。あるいはまた、共蒸着法を用いて、色変換層bを形成してもよい。共蒸着法は、複数種の蛍光色素のそれぞれをマトリクス樹脂と混合することによって複数種の蒸着用混合物を形成し、それら蒸着用混合物を別個の加熱部位に配置し、そして、蒸着用混合物を別個に加熱することによって実施される。特に、複数種の蛍光色素の特性(蒸着速度および/または蒸気圧など)が大きく異なる場合には、共蒸着法を用いることが有利である。
図4に示す接着層50は、支持基板31と封止基板30とを貼り合せるために用いられる層である。接着層50は、たとえば、熱硬化型接着材、UV硬化型接着剤、UV熱併用硬化型接着剤などを用いることができる。そのような接着剤としては、エポキシ樹脂系接着剤などが好ましい。ここで、前述の接着剤は、支持基板31と封止基板30との距離を所要値に固定するためのスペーサ粒子を含んでもよい。そのようなスペーサ粒子としては、ガラスビーズなどが好ましい。支持基板31または封止基板30のいずれかの周辺表面の所定の位置に接着剤を塗布し、支持基板31および封止基板30を貼り合せ、接着剤を硬化させることによって接着層50を形成する。接着層の屈折率の範囲は1.5よりも大きく1.8よりも小さいことが望ましい。
さらに、独立して制御される複数の発光部を有する構成において、複数種の色変換層を用いて、多色表示が可能な有機EL素子100を形成することができる。たとえば、赤色、緑色および青色の色変換層を用いて、赤色、緑色および青色の副画素を構成し、3色の副画素を1組とする画素をマトリクス状に配列することによってフルカラーディスプレイが可能な有機EL素子100を形成することができる。
支持基板31としてフュージョンガラス(コーニング製1737ガラス、50×50×1.1mm)を準備した。スパッタ法を用いて、支持基板31上に膜厚100nmのAg膜を堆積する。得られたAg膜をフォトリソグラフ法によってパターニングして、幅0.3mmの2つのストライプ状金属電極を形成した。
前記Ag膜パターンを形成した支持基板31上にスパッタ法において膜厚100nmのIZO膜を堆積する。スパッタガスに98%Arと2%O2の混合ガスを用い、圧力0.5Paにおいて、DCで2W/cm2の電力を印加した。このIZO膜をフォトリソグラフ法によってパターニングし、Ag膜パターン上に幅0.305mmのIZO膜を積層した下部電極パターンを形成する。
このIZO膜をX線光電子分光分析(XPS)で深さ方向に分析した結果を表2に示す。
次に、この支持基板31を抵抗加熱蒸着室に移動した。マスクを使用した蒸着法によって、下部電極21の上に膜厚1.5nmのLiからなるバッファ層を形成する。引き続いて、蒸着法を用いて、それぞれ図示しない電子輸送層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層の4層からなる有機EL層22を形成する。電子輸送層は膜厚20nmのAlq3であり、発光層は膜厚30nmのDPVBiであり、正孔輸送層は膜厚10nmのα−NPDであり、正孔注入層は膜厚100nmのCuPcである。これらの有機EL層22の成膜の際には、装置の真空槽の内圧を1×10-4Paとし、0.1nm/秒の成膜速度で各層を形成した。引き続いて、前記有機EL層22の上に蒸着法を用いて、膜厚5nmのMgAg膜を形成して、ダメージ緩和層(図示せず)を形成した。
次に、上部電極23を形成した積層体をプラズマCVD装置に移動させ、封止膜(保護膜)24となるSiN膜を形成した。モノシラン100sccm、アンモニア80sccmおよび窒素2000sccmの混合ガスを原料として用い、周波数27.12MHzおよび電力密度0.5W/cm2の高周波電力を印加して、膜厚を2000nmとした。このとき、成膜時の装置内圧力を100Paとし、被成膜基板を担持するステージの温度を50℃とした。以上の工程により、支持基板31上に下部電極21/有機EL層22/上部電極23/封止膜(保護層)24を積層させた有機EL素子基板20が形成される。得られた有機EL素子基板20を、内部環境を酸素濃度5ppm以下および水分濃度5ppm以下に調整されている貼り合せ装置(図示せず)内に移動させた。
次いで、赤色カラー層を形成した封止基板30を抵抗加熱蒸着装置に設置した。蒸着法を用いて、赤色カラー層上に、クマリン6およびDCM−2を含む、300nmの膜厚を有する赤色変換層を堆積した。クマリン6およびDCM−2のそれぞれを別個の坩堝内で加熱して、クマリン6の蒸着速度を0.3nm/秒とし、DCM−2の蒸着速度を0.005nm/秒とした。赤色変換層中のクマリン6:DCM−2のモル比は49:1であった。以上の工程によって、赤色変換カラー層を有する封止基板30を形成した。得られた封止基板30を前記貼り合せ装置内に移動させた。
次に、マスクを用いて封止基板外周部のUV硬化型接着剤のみに紫外線を照射して、接着剤を仮硬化させた。続いて、貼り合せ体を、加熱炉内で1時間にわたって80℃に加熱して接着剤を硬化させ、接着層を形成して有機EL素子100を得た。加熱終了後、加熱炉内で30分間をかけて有機EL素子100を自然冷却させて、加熱炉から取り出した。
(比較例1)
比較例1は、実施例1に記載の製造方法から、下部電極の形成方法および表面処理方法を変更した方法である。
Ag膜パターンを形成した支持基板31上にスパッタ法において膜厚100nmのIZO膜を堆積する。スパッタガスに98%Arと2%O2の混合ガスを用い、圧力0.5Paにおいて、DCで2W/cm2の電力を印加した。このIZO膜をフォトリソグラフ法によってパターニングし、Ag膜パターン上に幅0.305nmのIZO膜を積層させた下部電極パターンを形成した。
前記実施例1および比較例1で得られた有機EL素子を、60℃、90%RHの環境に配置し、電流密度0.1A/cm2の電流を流して、1000時間にわたって連続駆動し、その際の駆動電圧および発光輝度を測定した。発光輝度を電流値で除算して、発光効率を求めた。前記実施例1の有機EL素子の発光効率を1として、前記実施例1および比較例1の有機EL素子の初期発光効率および400時間連続駆動後の発光効率を求めた。結果を表5に示す。
図1に示す厚さ0.7mm、大きさ50mm角のガラス基板31の2枚にDCスパッタ法によってAgを100nmの膜厚に成膜し、その上にIZO膜を100nmの膜厚に形成し下部電極21とした。
(下部電極の表面処理)
図2に示すように、前述のように下部電極21が形成された前記支持基板31(2枚)を真空装置内のプラズマ処理容器6に投入する。可変バルブ14を調節してArガスを20sccm導入し、プラズマ処理容器6と真空ポンプ12とをつなぐ配管10に設けられた可変バルブ11の開度を調整することによって、プラズマ処理容器6内を3Paの圧力とする。放電電力6.0×10-2W/cm2条件にて30秒間表面処理を行なう。1枚の支持基板31の下部電極21上に有機EL層22を成膜する。もう1枚の基板は有機EL層22を形成せず、X線光電子分光分析(XPS)により、下部電極21表面に存在する有機物元素の分析を行った。
前記下部電極21上に有機EL層22を真空蒸着法にて形成する。真空槽内は1×10-4Paまで減圧する。トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体(Alq3)とLiとをモル比1:1にて共蒸着し、膜厚20nmの電子輸送層とする。次に、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を積層し、膜厚30nmの発光層とした。次いで、N,N‘−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)―4,4‘−ジアミン(TPD)を積層し、20nmの正孔輸送層とする。最後に、厚さ10nmのMg/Ag(10:1の重量比率)層を堆積させ、バッファ層とした。
(上部電極の形成から有機EL素子基板の作製まで)
前記有機EL層22上に対向スパッタ法にて上部電極23としてIZO膜を形成し、さらにCVD法にて封止膜24としてSiO2を成膜し、有機EL素子基板20を作製した。
X線光電子分光装置を用いることにより下部電極21表面に存在する元素の分析を行った。得られたXPSスペクトルのうち、C−C結合を由来とする結合エネルギー284eVのピーク面積をP1、C−O−C結合を由来とする結合エネルギー286eVのピーク面積をP2、COOH結合を由来とする289eVのピーク面積をP3、Inを由来とする結合エネルギー444eVのピーク面積をP4、In2O3を由来とする結合エネルギー530eVのピーク面積をP5と定義し、カーブフィッティング法によりP1、P2、P3、P4、P5を求め、(P2/P1)、(P3/P1)、(P5/P4)を算出した。
(電気特性の取得)
作製した有機EL素子基板20について、電流密度10mA/cm2にて電流を流す際の駆動電圧を計測した。また、電流密度40mA/cm2にて電流を1000時間流し続けた後の駆動電圧を計測した。
比較例2では、前記実施例3の(下部電極の表面処理)の項目の変更を行った。すなわち、支持基板31を真空装置内のプラズマ処理容器6に投入する。Arガスを20sccm導入し、プラズマ処理容器6と真空ポンプ12とをつなぐ配管10に設けられたバルブ11の開度を調整することによって、3Paの圧力とした。放電電力8.0×10-3W/cm2条件にて30秒間表面処理を行なう。他の項目は実施例3と同様にして有機EL素子基板20を作製した。
(比較例3)
比較例3では、前記実施例3の(下部電極の表面処理)の項目の変更を行った。すなわち、支持基板31を真空装置内のプラズマ処理容器6に投入する。Arガスを20sccm導入し、プラズマ処理容器6と真空ポンプ12とをつなぐ配管10に設けられたバルブ11の開度を調整することによって、3Paの圧力とした。放電電力3.0×10-1W/cm2条件にて30秒間表面処理を行なう。他の項目は実施例3と同様にして有機EL素子基板20を作製した。
比較例4では、前記実施例3の(下部電極の表面処理)の項目の変更を行った。支持基板31を真空装置内のプラズマ処理容器6に投入する。Arガスを18sccm、O2ガスを2sccm導入し、プラズマ処理容器6と真空ポンプ12とをつなぐ配管10に設けられたバルブ11の開度を調整することによって、3Paの圧力とする。放電電力6.0×10−2W/cm2条件にて30秒間表面処理を行なう。他の項目は実施例3と同様にして有機EL素子基板20を作製した。
(比較例5)
比較例5では、前記実施例3の(下部電極の表面処理)の項目の変更を行った。下部電極21が形成されている支持基板31を紫外線照射/オゾン洗浄装置に設置し、室温にて10分間紫外線照射とオゾン処理を行なう。その後、有機EL層22の成膜のため、直ちに真空装置内に投入した。他の項目は実施例3と同様にして有機EL素子基板20を作製した。前述した実施例3〜比較例5までの結果を表6に示す。
比較例2のように表面処理が充分でなく、(P2/P1)の値、および(P3/P1)が実施例3の低減レベルに到達しない場合には、駆動初期における駆動電圧値の低下が小さく、1000時間駆動後の電圧上昇が生じる結果となった。比較例3に示すように、放電電力を非常に大きく設定した際にも、(P2/P1)の値、および(P3/P1)の値は実施例3のレベルと同様に低減するが、プラズマ粒子の下部電極21表面への衝突エネルギーが大きくなることから下部電極21表面が荒れることによって、上部電極23との短絡が生じるようになってしまった。発光素子として正常に機能しなくなってしまうことから、この条件は採用できないことが明らかである。また、比較例4に示すように、処理ガスとしてArガスと共にO2ガスを導入すると、下部電極21表面が酸化されるため(P5/P4)の値が処理前より上昇する。その結果、O2ガスを導入しない実施例3と比較し、初期駆動電圧が上昇し、連続駆動後の電圧上昇が増大する結果となる。比較例5では、下部電極21表面の酸素成分の減少はほとんど見られない。さらに、P5/P4が大きくなってIn2O3の成分比の増加を示していることから、駆動初期における駆動電圧値が増加し、1000時間駆動後の電圧上昇が著しいことが分かる。これらのことから、比較例4と同様に比較例5についても、本発明による効果は得られない。
21 下部電極
22 有機EL層
23 上部電極
24 封止膜、保護層
30 封止基板
31 支持基板
40 色変換層
50 接着層
100 有機EL素子
Claims (8)
- 支持基板上に下部電極、有機EL層、上部電極、封止膜をこの順に形成して積層する有機EL素子の製造方法において、表面側に酸化物透明導電膜を有する前記下部電極を形成した後、該下部電極表面に、放電電力が1.0×10-2W/cm2乃至3.0×10-1W/cm2の範囲の希ガス中でプラズマ処理を施す表面処理工程を加えることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
- 支持基板上に下部電極、有機EL層、上部電極、封止膜をこの順に形成して積層する有機EL素子の製造方法において、表面側に酸化物透明導電膜を有する前記下部電極を形成した後、該下部電極表面に、希ガスと還元性ガスの混合ガス中で放電電力が1.0×10-2W/cm2乃至3.0×10-1W/cm2の範囲でプラズマ処理を施す表面処理工程を加えることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
- 前記放電電力を3.0×10-2W/cm2乃至2.0×10-1W/cm2の範囲とすることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL素子の製造方法。
- 前記プラズマ処理の時間を5秒乃至300秒とすることを特徴とする請求項3記載の有機EL素子の製造方法。
- 前記プラズマ処理を施すためのプラズマ処理容器内圧力が100Pa乃至0.01Paの範囲であることを特徴とする請求項4記載の有機EL素子の製造方法。
- 前記酸化物透明導電膜がIn、Zn、Oの元素を含有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
- 前記下部電極が陰極であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
- 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法により得られることを特徴とする有機EL素子。
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