JP2010244860A - 有機el素子およびその製造方法 - Google Patents

有機el素子およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2010244860A
JP2010244860A JP2009092582A JP2009092582A JP2010244860A JP 2010244860 A JP2010244860 A JP 2010244860A JP 2009092582 A JP2009092582 A JP 2009092582A JP 2009092582 A JP2009092582 A JP 2009092582A JP 2010244860 A JP2010244860 A JP 2010244860A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
organic
layer
film
lower electrode
manufacturing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2009092582A
Other languages
English (en)
Inventor
Shinji Sano
真二 佐野
Makoto Uchiumi
誠 内海
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fuji Electric Co Ltd
Original Assignee
Fuji Electric Holdings Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Electric Holdings Ltd filed Critical Fuji Electric Holdings Ltd
Priority to JP2009092582A priority Critical patent/JP2010244860A/ja
Publication of JP2010244860A publication Critical patent/JP2010244860A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】初期の駆動電圧を低下させ、連続駆動時の駆動電圧の上昇を抑制することができる有機EL素子およびその製造方法の提供。
【解決手段】支持基板31上に下部電極21、有機EL層22、上部電極23、封止膜24をこの順に形成して積層する有機EL素子の製造方法において、表面側に酸化物透明導電膜を有する前記下部電極21を形成した後、該下部電極21表面に、放電電力が1.0×10-2W/cm2乃至3.0×10-1W/cm2の範囲の希ガス中でプラズマ処理を施す表面処理工程を加える有機EL素子の製造方法とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ディスプレイ用途において有用な有機EL素子およびその製造方法に関する。より詳細には、透明導電膜表面の酸素量を抑制し、有機EL層の酸化を防止することによって、長期間にわたって優れた発光効率を示す有機EL素子およびその製造方法に関する。
近年、ディスプレイ用途において、自発光型の有機EL素子の研究が盛んに行われている。有機EL素子では、高い発光輝度および発光効率を実現することが期待されている。なぜなら、低電圧で高い電流密度を可能とする有機EL素子を実現できるからである。特に、マルチカラー表示、特にフルカラー表示が可能な高精細な多色発光有機EL素子の実用化が、ディスプレイの技術分野において、望まれている。
有機EL素子をカラーディスプレイとして実用化する上での重要な課題は、高い精細度を実現することに加えて、色再現性を含め長期的な安定性、信頼性を確保することである。しかしながら、従来の多色発光有機EL素子には、一定期間の駆動により発光特性(電流−輝度特性)が著しく低下するという欠点を有している。
この発光特性の低下原因の代表的なものは、駆動電圧の上昇である。これは、有機EL素子中の酸素または水分により、駆動時および保存中に有機EL素子を構成する層の形成材料の酸化または凝集が進行することによって発生すると考えられている。また、駆動時だけでなく、保存中にも進行する。特に、そのような駆動電圧の上昇の原因である構成層の形成材料の酸化をもたらす酸素および水分の供給源として、有機EL素子の周囲の外部環境雰囲気中の酸素または水分、構成層中に吸着物として存在する酸素または水分、あるいは構成層の一つである酸化物透明導電膜に含まれる酸素または水分などが考えられる。
前述した各酸素および水分の供給源が、それぞれ、できるかぎり、供給源として機能しないようにするために、従来、下記特許文献1の記載によれば、有機EL素子の正孔注入用または電子注入用に設けられる前記酸化物透明導電膜に対して、表面処理として酸素雰囲気において紫外線照射を施す方法が好ましいとされている。この紫外線照射方法は、具体的には酸化物透明導電膜の一種であるITO膜表面に存在するカルボニル化合物(C=O結合を含む有機化合物)を除去するために、ITO膜に対して加熱状態において紫外線照射処理し、発生するオゾンの酸化力により前記カルボニル化合物を低減するという内容の方法である。この方法以外にも、Arおよび酸素の混合雰囲気においてプラズマ処理する方法が記述されている。また、表面にITO膜を有する下部電極をAr+酸素プラズマで洗浄すると、X線光電子分光分析(XPS)によれば、得られた表面状態が、酸素原子1sのピークが特定の状態になることも記されている(特許文献1)。また、発光層の酸化を防止するために、発光層上に積層される複数の有機層のうち、発光層側の層を酸素濃度の低い層とすることも記載されている(特許文献3)。さらに成膜時にスパッタガスの酸素濃度を調整することは、成膜ガス自体を変更することであるため、膜質に与える影響が大きくなり、膜質が劣化するという問題の提起もある(特許文献2)。
特開2004−139746号公報(請求項、0129段落) 特開平7−142168号公報(0011段落) 特開2006−40583号公報(請求項2、0010段落)
しかしながら、前記特許文献1に記載の紫外線照射による表面処理の問題点として、紫外線照度や照度分布の経時変化によって、処理バッチ毎に駆動電圧のバラツキや、パネル面内での駆動電圧のバラツキが生じやすい点を挙げることができる。また、前記特許文献1に開示の方法はいずれも酸素を含む雰囲気で表面処理を実施するため、酸化物透明導電膜表面の酸化を誘発し、発光特性の低下要因である酸素を増加させてしまうという問題もある。
すなわち、前述した従来の酸化物透明導電膜の表面処理では、表面の汚染有機物および酸化した汚染有機物を除去することを主目的としている。従って、紫外線照射や酸素プラズマ処理は、汚染有機物の結合箇所の破壊や、アッシングの効果による汚染有機物の表面からの除去と言う点に関しては非常に有効である。しかしながら、前記紫外線照射や酸素プラズマ処理は、同時に酸化物透明導電膜表面の酸素結合の形成、すなわち、酸化を促進することにもなるため、遊離しやすい酸素が素子内部に拡散し、駆動電圧の上昇を発生させる可能性が高まるという問題のあることが分かった。
本発明は、以上説明した点に鑑みてなされたものであり、酸化物透明導電膜の形成時およびその後の紫外線照射やプラズマ処理などの表面処理の際に、過剰な酸化を抑制して、初期の駆動電圧を低下させ、連続駆動時の駆動電圧の上昇を抑制することができる有機EL素子およびその製造方法の提供を目的とする。
本発明の目的は、支持基板上に下部電極、有機EL層、上部電極、封止膜をこの順に形成して積層する有機EL素子の製造方法において、表面側に酸化物透明導電膜を有する前記下部電極を形成した後、該下部電極表面に、放電電力が1.0×10-2W/cm2乃至3.0×10-1W/cm2の範囲の希ガス中でプラズマ処理を施す表面処理工程を加える有機EL素子の製造方法とすることにより、達成される。
本発明は、前記希ガス中でのプラズマ処理を、希ガスと還元性ガスの混合ガス中でのプラズマ処理とすることもできる
本発明は、前記放電電力を3.0×10-2W/cm2乃至2.0×10-1W/cm2の範囲とすることがより好ましい。
本発明は、前記プラズマ処理の時間を5秒乃至300秒とすることが望ましい。
本発明は、前記プラズマ処理を施すためのプラズマ処理容器内圧力が100Pa乃至0.01Paの範囲であることがより望ましい。
本発明は、前記いずれかの有機EL素子の製造方法において、前記酸化物透明導電膜をIn、Zn、Oの元素を含有する化合物とすることができる。
本発明は、前記いずれかの有機EL素子の製造方法において、前記下部電極を陰極とすることが好ましい。
本発明は、前記いずれかの有機EL素子の製造方法により得られる有機EL素子とすることができる。
前記本発明によれば、酸化物透明導電膜の形成時およびその後の紫外線照射やプラズマ処理などの表面処理の際に、過剰な酸化を抑制して、初期の駆動電圧を低下させ、連続駆動時の駆動電圧の上昇を抑制することができる有機EL素子およびその製造方法の提供することができる。
本発明の有機EL素子の模式的要部断面図である。 本発明の有機EL素子の製造方法にかかるプラズマ処理装置の概略断面図である。 本発明の有機EL素子の製造方法にかかるプラズマ処理後の有機EL素子表面のX線光電子分光分析(XPS)の結果を示すスペクトル図である。 本発明の有機EL素子の製造方法により得られるトップエミッション型有機EL素子の模式的断面図である。
以下、本発明にかかる有機EL素子およびその製造方法の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。
図4に本発明の有機EL素子の製造方法により得られるトップエミッション型有機EL素子の模式的断面図を示す。図4のトップエミッション型有機EL素子100は、支持基板31と、該支持基板31の上に、下部電極21、有機EL層22、上部電極23および封止膜(保護層)24がこの順に積層された有機EL素子基板20とを含む。下部電極21は光反射性の高い金属電極(図示せず)とこの金属電極上に積層される酸化物透明導電膜(図示せず)を備える。この下部電極21を構成する酸化物透明導電膜は、有機EL層22に接する側の層は接しない他の層に比べ、酸素含有量が小さくなっている。酸化物透明導電膜は積層でも単層でもよい。酸素含有量は、図3に示すX線光電子分光法(XPS(X-ray photoelectron spectroscopy)、またはESCA)を用いて得られるスペクトル図から、O(酸素原子)1sのピーク面積と、In(インジウム原子)3dのピーク面積を算出し比較を行うことにより評価することができる。
前述のように酸化物透明導電膜から酸素含有量を低減する具体的な方法としては、酸化物透明導電膜をスパッタ成膜する際に、スパッタガス中の酸素分圧を低減させる方法、または酸化物透明導電膜の成膜後に、Ar、Kr、Xe等の希ガス雰囲気中で表面をプラズマ処理する方法、または酸化物透明導電膜の成膜後に、Ar、Kr、Xe等の希ガスに水素などの還元性ガスを混合した雰囲気中で表面をプラズマ処理する方法などを用いることができる。本発明では、スパッタ成膜時に表面側のスパッタ膜の酸素含有量を少なくした積層透明導電膜を形成する場合でも、酸化物透明導電膜の成膜後にプラズマ処理を施して表面の酸素含有量をさらに低減する方法を含むように、少なくとも酸化物透明導電膜の成膜後に希ガス中で低電力のプラズマ処理を施す方法とする。
たとえば、酸化物透明導電膜としてIZO膜を形成する場合、通常(従来)はおよそ0.05から1.0Paの酸素分圧においてスパッタ成膜を実施するが、酸素分圧を0Paにすると、前記成膜中の酸素含有量を10から20%低減させることができる。また、IZO膜の成膜後にIZO膜表面を希ガス雰囲気でプラズマ処理を行うと、膜内部に比べ数%の膜の表面側の酸素を低減することができる。プラズマ処理における雰囲気圧力は、1から10Paの範囲が望ましい。また、電源として13.56MHzのRF電源や、27.12MHzの高周波電源、パルス型出力が可能なDC電源を用いることができる。その際の印加電力は、1.0×10-2W/cm2から3.0×10-1W/cm2の範囲の低電力が望ましい。この電力密度範囲では、酸化物透明導電膜表面から酸素元素を低減させることができるからである。これよりも大きな高電力(5.0×10-1W/cm2〜1.0W/cm2)では下記表1に示すように酸素を低減させる効果が小さいだけでなく、透明導電膜表面の粗さが大きくなる危険性が高まる。前記低電力を印加する場合は、スパッタ率の高い軽元素である酸素原子が先に離脱するので、重い元素であるInの組成比が高くなるが、前記高電力ではIn、Zn、Oの元素集団でまとまって表面から離脱することによる結果であると考えられる。
本発明にかかる有機EL素子に用いられる支持基板31は、この支持基板31上に形成される有機EL層を含む他の構成層を形成する際の種々の形成条件(たとえば、使用される溶媒、温度など)に化学的、物理的に耐えることができる材料を用いて形成することが望ましい。さらに、前記支持基板31は、低膨潤性、低膨張率などの物性を有し、寸法安定性の高い材料を用いることが望ましい。そのような支持基板31として好ましい材料は、ガラスなどの無機系透明材料またはポリオレフィン、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリイミド樹脂などの有機系透明樹脂が挙げられる。前述の有機樹脂を用いる場合、支持基板31は、剛直性であっても可撓性であってもよい。あるいはまた、特に図4に示すトップエミッション型有機EL素子の場合、支持基板31を、シリコン、セラミックなどの不透明材料を用いて形成してもよい。
支持基板31は、その表面上に、複数のスイッチング素子(TFTなど)および金属膜配線などがさらに形成されることもある。この支持基板31表面にTFTおよび金属膜配線が設けられる構成は、複数の独立した発光部を有するアクティブマトリクス駆動型有機EL素子を作製する場合に有効である。
支持基板31と有機EL層22との間に挟まれる下部電極21と、有機EL層22を挟んで前記下部電極21とは反対側に積層される上部電極23は、前記有機EL層22へのキャリア注入と、図示しない外部駆動回路への接続という両機能を有する。下部電極21および上部電極23は、それぞれ、陽極(正孔注入電極)または陰極(電子注入電極)のいずれであってもよい。下部電極21および上部電極23のいずれか一方が陽極であるとき、他方は陰極となる。図4に示すトップエミッション型有機EL素子構造においては、下部電極21は、光反射性表面を有することが望ましいので、光反射性表面を有する金属膜と透明導電膜の積層膜を用い、上部電極23は光の出射側となるので透明電極(酸化物透明導電膜)にする必要がある。
下部電極21として用いられる金属膜は、高光反射性表面を有する金属(アルミニウム、銀、モリブデン、タングステン、ニッケル、クロムなど)またはそれらの合金、あるいはアモルファス合金(NiP、NiB、CrP、もしくはCrBなど)を用いて形成することができる。それらの金属の中でも可視光に対して80%以上の反射率を得ることができるという観点から、銀合金が特に好ましい材料である。そのような銀合金そしては、銀と、第10族のニッケルまたは白金、第1族のルビジウム、および第14族の鉛からなる群から選択される少なくとも1種の金属との合金、あるいは、銀と、第2族のマグネシウムおよびカルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属との合金などがある。
下部電極21および上部電極23として用いられる酸化物透明導電膜は、SnO2、In23、In−Sn酸化物、In−Zn酸化物、ZnO、またはZn−Al酸化物などの導電性金属酸化物を用いて形成することが好ましい。上部電極23は、有機EL層22からの発光を外部に取り出すための経路となることから、波長400〜800nmの範囲内で50%以上、好ましくは85%以上の透過率を有することが望ましい。
下部電極21および上部電極23は、抵抗加熱方式または電子ビーム加熱方式の蒸着法、またはスパッタ法を用いて形成することができ、特にスパッタ法を用いることが望ましい。蒸着法の場合、1.0×10-4Pa以下の圧力において、0.1〜10nm/秒の成膜速度で成膜を行うことが好ましい。一方、DCマグネトロンスパッタ法などのスパッタ法の場合、スパッタガスとしてArなどの希ガスを用い、0.1〜2.0Pa程度の圧力において成膜を行うことが好ましい。上部電極23をスパッタ法で形成する場合、被成膜基板の表面となる有機EL層22の劣化を防止するため、ターゲット近傍に形成されるプラズマを有機EL層22に直接照射しないことが望まれる。
有機EL層22は、下部電極21と上部電極23との間に位置し、それぞれの電極と接触している。有機EL層22は、少なくとも発光層を含み、必要に応じて正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層および/または電子注入層を含む。たとえば、有機EL層22は、下記のようにいろいろな、陽極と陰極の間の層構成を有することができる。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(5)陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(6)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(7)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
なお、上記(1)〜(7)の各構成において、陽極および陰極は、それぞれ下部電極21または上部電極23のいずれかである。
発光層は、公知の材料を用いて形成することができる。青色から青緑色の発光を得るための材料は、たとえば、ベンゾチアゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物もしくはベンゾオキサゾール系化合物のような蛍光増白剤、4,4’−ビス(ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)のようなスチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、縮合芳香環化合物;環集合化合物;およびポルフィリン系化合物などがある。
あるいはまた、ホスト化合物にドーパントを添加することによって、種々の波長域の光を発する発光層を形成することもできる。この場合、ホスト化合物としては、ジスチリルアリーレン系化合物、N,N’−ジトリル−N,N’−ジフェニルビフェニルアミン(TPD)、トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルムニウム錯体(Alq3)などを使用することができる。ドーパントとしては、ペリレン(青紫色)、クマリン6(青色)、キナクリドン系化合物(青緑色〜緑色)、ルブレン(黄色)、4−ジシアノメチレン−2−(p−ジメチルアミノスチリル)−6−メチル−4H−ピラン(DCM、赤色)、白金オクタエチルポルフィリン錯体(PtOEP、赤色)などを使用することができる。
正孔輸送層は、トリアリールアミン部分構造、カルバゾール部分構造、またはオキサジアゾール部分構造を有する材料を用いて形成することができる。正孔輸送層の好ましい材料は、N,N’−ジトリル−N,N’−ジフェニルビフェニルアミン(TPD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、トリス[4−(3−メチルフェニルフェニルアミノ)フェニル]ベンゼン類MTDAPB(o−,m−,p−)、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミンm−MTDATAなどが挙げられる。
正孔注入層は、銅フタロシアニン錯体(CuPc)などを含むフタロシアニン(Pc)類、インダンスレン系化合物などの材料を用いて形成することができる。
電子輸送層は、前記Alq3のようなアルミニウム錯体、PBDもしくはTPOBのようなオキサジアゾール誘導体、TAZのようなトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、フェニルキノキサリン類、BMB−2Tのようなチオフェン誘導体などの材料を用いて形成することができる(前記PBD:2−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、前記TPOB:1,3,5−トリス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)ベンゼン、前記TAZ:3−(ビフェニル−yl)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール、前記BMB−2T:5,5’−ビス(ジメシチルボリル)−2,2’−ビチオフェンを表す。)。
電子注入層は、前記Alq3のようなアルミニウムのキノリノール錯体にアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、アルカリ金属ハロゲン化物、Cs2CO3などのアルカリ金属炭酸塩などをドープした材料を用いて形成することができる
以上のような各構成層に加えて、任意選択的に、有機EL層22と陰極として用いる下部電極21または上部電極23のいずれかとの間に、キャリア注入効率をさらに高めるためのバッファ層を任意選択的に形成することもできる(図示せず)。バッファ層は、アルカリ金属、アルカリ土類金属もしくはそれらの合金、または希土類金属、あるいはそれら金属のフッ化物などの電子注入性材料を用いて形成することができる。
さらに、有機EL層22の上表面に、上部電極23の形成時のダメージを緩和するために、MgAgなどからなるダメージ緩和層(図示せず)を形成することも好ましい。
有機EL層22を構成する各層は、所望される特性を実現するのに十分な膜厚を有することが重要である。本発明においては、発光層、正孔輸送層、電子輸送層および電子注入層が2〜50nmの膜厚を有し、正孔注入層が2〜200nmの膜厚を有することが望ましい。また、任意選択的なバッファ層は、駆動電圧低減および透明性向上の観点から、10nm以下の膜厚を有することが好ましい。
有機EL層22の各構成層、バッファ層およびダメージ緩和層は、蒸着(抵抗加熱蒸着または電子ビーム加熱蒸着)などの当該技術において知られている任意の手段を用いて作製することができる。
封止膜(保護層)24は、外部環境の雰囲気または水分を含有する惧れのある層から上部下部電極および/または有機EL層22への水分の侵入を防止するための層である。封止膜(保護層)24は、単層または複数の無機膜または有機膜で形成することができる。また、封止膜(保護層)24を構成する膜は、膜剥離を防止するために、小さい応力を有することが望ましい。
封止膜(保護層)24をトップエミッション型有機EL素子に用いる場合、有機EL層からの光の外部への放出経路上に位置するため、高い可視光透過率を有することが望ましい。具体的には、波長400〜800nmの範囲内で膜の消衰係数が0.001よりも小さいことが望ましい。
封止基板30は、たとえば、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、またはポリイミド樹脂のような有機系樹脂を用いて形成することができる。有機系樹脂を用いる場合、封止基板30は剛直性であっても可撓性であってもよい。
図4に示す色変換層40は、有機EL層22からの発光の色相を調整するための層である。本発明における色変換層40とは、カラー層(またはカラーフィルタ層)a(図示せず)または色変換層b(図示せず)そのもの、およびカラー層aと色変換層bとの積層体(図示せず)などの層の総称である。色変換層40は、図4に示すように封止基板30の内側に設けてもよいし、封止基板30の外側に設ける構造(図示せず)も考えられる。
カラー層aは、特定の波長域の光を透過させる層である。カラー層aは、有機EL層22または色変換層bからの光の色純度を向上させる機能を有する。カラー層aは、市販のフラットパネルディスプレイ用カラー材料(たとえば、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製のカラーモザイクなど)を用いて形成することができる。カラー層aの形成には、スピンコート、ロールコート、キャスト、ディップコートなどの塗布法を用いることができる。また、塗布法によって形成した膜を、フォトリソグラフ法などによってパターニングして、所望のパターンを有するカラー層aを形成してもよい。
色変換層bは、特定の波長域の光を吸収して波長分布変換を行い、異なる波長域の光を放出する層である。色変換層bは、少なくとも蛍光色素を含み、必要に応じてマトリクス樹脂を含んでもよい。蛍光色素は、有機EL層22からの光を吸収し、所望の波長域(たとえば、赤色領域、緑色領域または青色領域)の光を放射する。
青色から青緑色領域の光を吸収して、赤色領域の蛍光を放射する蛍光色素は、たとえば、ローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、ローダミン110、スルホローダミン、ベーシックバイオレット11、ベーシックレッド2などのローダミン系色素;シアニン系色素;1−エチル−2−〔4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル〕−ピリジニウム−パークロレート(ピリジン1)などのピリジン系色素;およびオキサジン系色素を含む。あるいはまた、前述のような蛍光性を有する各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)を用いてもよい。
青色から青緑色領域の光を吸収して、緑色領域の蛍光を放射する蛍光色素は、たとえば、3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2’−ベンゾイミダゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)、3−(2’−N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)などのクマリン系色素;ソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素;および、ベーシックイエロー51などのクマリン色素系染料などを含む。あるいはまた、前述のような蛍光性を有する各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)を用いてもよい。
色変換層bのマトリクス樹脂としては、アクリル樹脂、種々のシリコーンポリマー、またはそれらに代替可能な任意の材料を用いることができる。たとえば、マトリクス樹脂として、ストレート型シリコーンポリマー、変性樹脂型シリコーンポリマーを用いることができる。
色変換層bは、スピンコート、ロールコート、キャスト、ディップコートなどの塗布法、あるいは蒸着法を用いて形成することができる。複数種の蛍光色素を用いて色変換層bを形成する場合には、所定の比率の複数種の蛍光色素、およびマトリクス樹脂を混合して予備混合物を形成し、当該予備混合物を用いて蒸着を行うこともできる。あるいはまた、共蒸着法を用いて、色変換層bを形成してもよい。共蒸着法は、複数種の蛍光色素のそれぞれをマトリクス樹脂と混合することによって複数種の蒸着用混合物を形成し、それら蒸着用混合物を別個の加熱部位に配置し、そして、蒸着用混合物を別個に加熱することによって実施される。特に、複数種の蛍光色素の特性(蒸着速度および/または蒸気圧など)が大きく異なる場合には、共蒸着法を用いることが有利である。
色変換層bを含む色変換層40を用いる場合、色変換層bの特性劣化を防止するために、色変換層40全体を覆うようにパッシベーション層(図示せず)を形成してもよい。パッシベーション層は、絶縁性酸化物(SiO2、TiO2、ZrO2、AlOxなど)、絶縁性窒化物〈AlNx、SiNxなど〉を用いて形成することができる。パッシベーション層は、プラズマCVD法のような方法を用いて形成することも好ましい。色変換層40の劣化防止の観点から、パッシベーション層形成の際には、色変換層bを最上層とする被成膜基板の温度を100℃以下とすることが望ましい。
図4に示す接着層50は、支持基板31と封止基板30とを貼り合せるために用いられる層である。接着層50は、たとえば、熱硬化型接着材、UV硬化型接着剤、UV熱併用硬化型接着剤などを用いることができる。そのような接着剤としては、エポキシ樹脂系接着剤などが好ましい。ここで、前述の接着剤は、支持基板31と封止基板30との距離を所要値に固定するためのスペーサ粒子を含んでもよい。そのようなスペーサ粒子としては、ガラスビーズなどが好ましい。支持基板31または封止基板30のいずれかの周辺表面の所定の位置に接着剤を塗布し、支持基板31および封止基板30を貼り合せ、接着剤を硬化させることによって接着層50を形成する。接着層の屈折率の範囲は1.5よりも大きく1.8よりも小さいことが望ましい。
図4では、単一の発光部を備える有機EL素子100の例を示した。しかしながら、本発明にかかる有機EL素子基板20は、独立して制御される複数の発光部を備えてもよい。たとえば、下部電極および上部電極の両方を複数のストライプ状電極からなる電極群とし、下部電極を構成するストライプ状電極の延在方向と上部電極を構成するストライプ状電極の延在方向とを交差させて、いわゆるパッシブマトリクス駆動の有機EL素子基板を形成してもよい。ここで、任意の画像および/または文字を表示するディスプレイ用途においては、下部電極を構成するストライプ状電極の延在方向と上部電極を構成するストライプ状電極の延在方向とを直交させることが好ましい。あるいはまた、下部電極を複数の部分電極に分割し、複数の部分電極のそれぞれを支持基板31上に形成されたスイッチング素子と1対1に接続し、上部電極を一体型の共通電極として、いわゆるアクティブマトリクス駆動の有機EL素子基板を形成してもよい。
なお、パッシブマトリクス駆動型デバイスおよびアクティブマトリクス駆動型デバイスのいずれの場合においても、下部電極を構成する複数の部分電極の間に絶縁膜を設けることが望ましい。絶縁膜は、絶縁性酸化物(SiOx、TiO2、ZrO2、AlOxなど)、絶縁性窒化物〈AlNx、SiNxなど〉、または高分子材料などを用いて形成することができる。
さらに、独立して制御される複数の発光部を有する構成において、複数種の色変換層を用いて、多色表示が可能な有機EL素子100を形成することができる。たとえば、赤色、緑色および青色の色変換層を用いて、赤色、緑色および青色の副画素を構成し、3色の副画素を1組とする画素をマトリクス状に配列することによってフルカラーディスプレイが可能な有機EL素子100を形成することができる。
実施例1では、画素数2×2、画素幅0.3mm×0.3mmのトップエミッション型赤色発光有機EL素子を作製する。
支持基板31としてフュージョンガラス(コーニング製1737ガラス、50×50×1.1mm)を準備した。スパッタ法を用いて、支持基板31上に膜厚100nmのAg膜を堆積する。得られたAg膜をフォトリソグラフ法によってパターニングして、幅0.3mmの2つのストライプ状金属電極を形成した。
前記Ag膜パターンを形成した支持基板31上にスパッタ法において膜厚100nmのIZO膜を堆積する。スパッタガスに98%Arと2%O2の混合ガスを用い、圧力0.5Paにおいて、DCで2W/cm2の電力を印加した。このIZO膜をフォトリソグラフ法によってパターニングし、Ag膜パターン上に幅0.305mmのIZO膜を積層した下部電極パターンを形成する。
この下部電極21を設けた支持基板31をプラズマ処理室に導入し、Arガス雰囲気で3Pa,RF電力10W(ステージ形状120mm×120mm)において30秒間処理した。
このIZO膜をX線光電子分光分析(XPS)で深さ方向に分析した結果を表2に示す。
表2では、IZO膜が深さ5nmまでは酸素含有量(40.3at%)の低い層が形成されていることが示されている。さらに深い層(10nm)では表面側の前記深さ5nmまでの層より酸素含有量(42.9at%)が高いことが示されている。
次に、この支持基板31を抵抗加熱蒸着室に移動した。マスクを使用した蒸着法によって、下部電極21の上に膜厚1.5nmのLiからなるバッファ層を形成する。引き続いて、蒸着法を用いて、それぞれ図示しない電子輸送層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層の4層からなる有機EL層22を形成する。電子輸送層は膜厚20nmのAlq3であり、発光層は膜厚30nmのDPVBiであり、正孔輸送層は膜厚10nmのα−NPDであり、正孔注入層は膜厚100nmのCuPcである。これらの有機EL層22の成膜の際には、装置の真空槽の内圧を1×10-4Paとし、0.1nm/秒の成膜速度で各層を形成した。引き続いて、前記有機EL層22の上に蒸着法を用いて、膜厚5nmのMgAg膜を形成して、ダメージ緩和層(図示せず)を形成した。
次に、ダメージ緩和層を形成した積層体を、真空を破ることなしに対向スパッタ装置に移動させた。メタルマスクを用いるスパッタ法によって、膜厚100nmのIZOを堆積して、透明な上部電極23を形成した。上部電極23は、下部電極21のストライプ状電極と直交する方向に延び、0.3mmの幅を有する2つのストライプ状電極から構成される。
次に、上部電極23を形成した積層体をプラズマCVD装置に移動させ、封止膜(保護膜)24となるSiN膜を形成した。モノシラン100sccm、アンモニア80sccmおよび窒素2000sccmの混合ガスを原料として用い、周波数27.12MHzおよび電力密度0.5W/cm2の高周波電力を印加して、膜厚を2000nmとした。このとき、成膜時の装置内圧力を100Paとし、被成膜基板を担持するステージの温度を50℃とした。以上の工程により、支持基板31上に下部電極21/有機EL層22/上部電極23/封止膜(保護層)24を積層させた有機EL素子基板20が形成される。得られた有機EL素子基板20を、内部環境を酸素濃度5ppm以下および水分濃度5ppm以下に調整されている貼り合せ装置(図示せず)内に移動させた。
別途、封止基板30としてフュージョンガラス(コーニング製1737ガラス、50×50×1.1mm)を準備する。透明封止基板30上に、赤色カラー材料(カラーモザイクCR7001(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ製))を塗布し、パターニングを行って、有機EL素子基板20の画素に相当する位置に、0.5mm×0.5mmの寸法を有する4つの部分からなる赤色カラー層を形成した。赤色カラー層は、1.5μmの膜厚を有した。
次いで、赤色カラー層を形成した封止基板30を抵抗加熱蒸着装置に設置した。蒸着法を用いて、赤色カラー層上に、クマリン6およびDCM−2を含む、300nmの膜厚を有する赤色変換層を堆積した。クマリン6およびDCM−2のそれぞれを別個の坩堝内で加熱して、クマリン6の蒸着速度を0.3nm/秒とし、DCM−2の蒸着速度を0.005nm/秒とした。赤色変換層中のクマリン6:DCM−2のモル比は49:1であった。以上の工程によって、赤色変換カラー層を有する封止基板30を形成した。得られた封止基板30を前記貼り合せ装置内に移動させた。
次いで、貼り合せ装置内で、封止基板30の赤色変換カラー層を形成した表面の外周部にエポキシ系UV硬化型接着剤を、赤色変換カラー層上に熱硬化型接着剤を滴下した。赤色変換カラー層および有機EL層22側が対向し、かつ赤色変換カラー層の位置が有機EL素子基板20内の各画素に対応するように、有機EL層22を形成した支持基板31および赤色カラー層を形成した封止基板30を仮接着させた。引き続いて、貼り合せ装置内を約10MPaまで減圧して、支持基板31と封止基板30とを貼り合せた。貼り合せ終了後、貼り合せ装置内の圧力を大気圧まで上昇させた。
次に、マスクを用いて封止基板外周部のUV硬化型接着剤のみに紫外線を照射して、接着剤を仮硬化させた。続いて、貼り合せ体を、加熱炉内で1時間にわたって80℃に加熱して接着剤を硬化させ、接着層を形成して有機EL素子100を得た。加熱終了後、加熱炉内で30分間をかけて有機EL素子100を自然冷却させて、加熱炉から取り出した。
実施例2は、前記実施例1に記載の製造方法から、下部電極の酸化物透明導電膜の成膜方法を変更した製造方法である。酸化物透明導電膜の第一層として膜厚80nmのIZO膜をスパッタ法で堆積させた。スパッタガスに98%Arと2%O2の混合ガスを用い、圧力0.5PaにおいてDCで2W/cm2の電力を印加した。酸化物透明導電膜の第二層として膜厚20nmのIZO膜をスパッタ法で堆積させて積層の酸化物透明導電膜を形成した。前記第二層の成膜時にはスパッタガスに酸素を導入せず、100%Arガスを用い、圧力0.5PaにおいてDCで2W/cm2の電力を印加する成膜条件とした。引き続く100%Arプラズマによる表面処理は実施例1と同様に行った。このプラズマによる表面処理後のIZO膜をX線光電子分光分析(XPS)で深さ方向に分析した結果を表3に示す。
表3から、実施例2に記載の方法で成膜したIZO膜は、最表面の酸素含有量が深さ10nmのIZO膜の酸素含有量より、実施例1と比べてもさらに著しく低くなっていることが分かる。この結果は酸化膜透明導電膜の第二層の表面が成膜時に既に酸素含有量が少なくなっているためと考えられる。
(比較例1)
比較例1は、実施例1に記載の製造方法から、下部電極の形成方法および表面処理方法を変更した方法である。
Ag膜パターンを形成した支持基板31上にスパッタ法において膜厚100nmのIZO膜を堆積する。スパッタガスに98%Arと2%O2の混合ガスを用い、圧力0.5Paにおいて、DCで2W/cm2の電力を印加した。このIZO膜をフォトリソグラフ法によってパターニングし、Ag膜パターン上に幅0.305nmのIZO膜を積層させた下部電極パターンを形成した。
この支持基板31を紫外線照射処理装置に導入し、大気雰囲気において300秒間処理した。このIZO膜をX線光電子分光分析(XPS)で深さ方向に分析した結果を表4に示す。
表4から、比較例1に記載の製造方法で作成したIZO膜は酸素含有量が表面においても、内部と同程度以上に高いことが分かる。
前記実施例1および比較例1で得られた有機EL素子を、60℃、90%RHの環境に配置し、電流密度0.1A/cm2の電流を流して、1000時間にわたって連続駆動し、その際の駆動電圧および発光輝度を測定した。発光輝度を電流値で除算して、発光効率を求めた。前記実施例1の有機EL素子の発光効率を1として、前記実施例1および比較例1の有機EL素子の初期発光効率および400時間連続駆動後の発光効率を求めた。結果を表5に示す。
表5から分かるように、比較例1の有機EL素子は、初期において、実施例1、2のデバイスに劣る発光効率を示した。これは、比較例1のIZO膜の表面処理方法と電子注入層との間の注入障壁が大きいためと推測される。さらに、比較例1の有機EL素子は400時間の連続駆動後の発光効率が著しく低下した。この結果は実施例1、2に比較し、IZO膜表面層の酸素含有量が多いために、この酸素が素子特性に悪影響を及ぼしているためと考えられる。
実施例3について、図2を参照しながら詳細に説明する。真空装置に、下部電極としてAg膜パターン上にIZO膜を積層した支持基板31を投入した後、真空引きをし、真空状態となった後に、前記支持基板31を真空装置内のプラズマ処理を行なう容器6に搬送する。図2でガス導入ライン13より、プラズマ処理用ガスを導入し可変バルブ14によりガス流量を適度な値に調節する。容器6と真空ポンプ12との間の配管10に設置された可変バルブ11により真空度の調節をし、真空槽7を適度な圧力に保つ。プラズマ発生用対向電極9の間にプラズマ処理する支持基板31を設置し、対向電極9に所定の電力を加えることによってプラズマを発生させ、プラズマ処理を行った。プラズマ処理時の導入ガスは、いわゆる希ガスを用いる。もしくは、前記導入する希ガスの中に、プラズマ処理する下部電極21表面の還元を促進する目的として、さらにH2ガスを1〜2vol%混和させた混合ガスを用いることもできる。希ガスとは第18属元素のことを指す。本発明では特にAr、Kr、Xe、およびこれらの混合物を使用することとする。酸素を含有させずに希ガスまたは希ガスを主ガスとする前記混合ガスを用いることにより、下部電極21表面を酸化させることなく、下部電極21上の酸素含有化合物を効果的に除去することが可能となる。プラズマ処理時の導入ガス流量は、1〜100sccmが好ましい。さらには10〜50sccmが好ましい。プラズマ処理時のプラズマ処理容器6内の圧力は、100〜0.01Paが好ましい。さらには、10〜0.05Paが好ましいプラズマ処理時の放電電力は、1.0×10-2W/cm2〜3.0×10-1W/cm2が好ましい。さらには2.0×10-2W/cm2〜3.0×10-1W/cm2が好ましい。さらには3.0×10-2W/cm2〜2.0×10-1W/cm2が好ましい。放電電力が1.0×10-2W/cm2に満たない場合は、プラズマ粒子のエネルギーが不足し、処理効果が充分に発揮できない。また、放電電力が3.0×10-1W/cm2を越えるとプラズマ粒子のエネルギーが過剰となるため、下部電極21の表面粗さが増大し、上部下部電極間の短絡につながる。プラズマ処理の時間は5〜300秒が好ましい。さらには、10〜100秒が好ましい。支持基板31としては、ガラス、樹脂、金属など任意のものを用いることができる。下部電極21としては、Ag、Alなどの金属や金属合金とITO、IZOなどの金属酸化物、これらの複合物との積層体を用いることができる。
(下部電極の形成)
図1に示す厚さ0.7mm、大きさ50mm角のガラス基板31の2枚にDCスパッタ法によってAgを100nmの膜厚に成膜し、その上にIZO膜を100nmの膜厚に形成し下部電極21とした。
(下部電極の表面処理)
図2に示すように、前述のように下部電極21が形成された前記支持基板31(2枚)を真空装置内のプラズマ処理容器6に投入する。可変バルブ14を調節してArガスを20sccm導入し、プラズマ処理容器6と真空ポンプ12とをつなぐ配管10に設けられた可変バルブ11の開度を調整することによって、プラズマ処理容器6内を3Paの圧力とする。放電電力6.0×10-2W/cm2条件にて30秒間表面処理を行なう。1枚の支持基板31の下部電極21上に有機EL層22を成膜する。もう1枚の基板は有機EL層22を形成せず、X線光電子分光分析(XPS)により、下部電極21表面に存在する有機物元素の分析を行った。
(有機EL層の形成)
前記下部電極21上に有機EL層22を真空蒸着法にて形成する。真空槽内は1×10-4Paまで減圧する。トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体(Alq3)とLiとをモル比1:1にて共蒸着し、膜厚20nmの電子輸送層とする。次に、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を積層し、膜厚30nmの発光層とした。次いで、N,N‘−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)―4,4‘−ジアミン(TPD)を積層し、20nmの正孔輸送層とする。最後に、厚さ10nmのMg/Ag(10:1の重量比率)層を堆積させ、バッファ層とした。
(上部電極の形成から有機EL素子基板の作製まで)
前記有機EL層22上に対向スパッタ法にて上部電極23としてIZO膜を形成し、さらにCVD法にて封止膜24としてSiO2を成膜し、有機EL素子基板20を作製した。
(X線光電子分光分析(XPS)による元素分析)
X線光電子分光装置を用いることにより下部電極21表面に存在する元素の分析を行った。得られたXPSスペクトルのうち、C−C結合を由来とする結合エネルギー284eVのピーク面積をP1、C−O−C結合を由来とする結合エネルギー286eVのピーク面積をP2、COOH結合を由来とする289eVのピーク面積をP3、Inを由来とする結合エネルギー444eVのピーク面積をP4、In23を由来とする結合エネルギー530eVのピーク面積をP5と定義し、カーブフィッティング法によりP1、P2、P3、P4、P5を求め、(P2/P1)、(P3/P1)、(P5/P4)を算出した。
(電気特性の取得)
作製した有機EL素子基板20について、電流密度10mA/cm2にて電流を流す際の駆動電圧を計測した。また、電流密度40mA/cm2にて電流を1000時間流し続けた後の駆動電圧を計測した。
(比較例2)
比較例2では、前記実施例3の(下部電極の表面処理)の項目の変更を行った。すなわち、支持基板31を真空装置内のプラズマ処理容器6に投入する。Arガスを20sccm導入し、プラズマ処理容器6と真空ポンプ12とをつなぐ配管10に設けられたバルブ11の開度を調整することによって、3Paの圧力とした。放電電力8.0×10-3W/cm2条件にて30秒間表面処理を行なう。他の項目は実施例3と同様にして有機EL素子基板20を作製した。
(比較例3)
比較例3では、前記実施例3の(下部電極の表面処理)の項目の変更を行った。すなわち、支持基板31を真空装置内のプラズマ処理容器6に投入する。Arガスを20sccm導入し、プラズマ処理容器6と真空ポンプ12とをつなぐ配管10に設けられたバルブ11の開度を調整することによって、3Paの圧力とした。放電電力3.0×10-1W/cm2条件にて30秒間表面処理を行なう。他の項目は実施例3と同様にして有機EL素子基板20を作製した。
(比較例4)
比較例4では、前記実施例3の(下部電極の表面処理)の項目の変更を行った。支持基板31を真空装置内のプラズマ処理容器6に投入する。Arガスを18sccm、O2ガスを2sccm導入し、プラズマ処理容器6と真空ポンプ12とをつなぐ配管10に設けられたバルブ11の開度を調整することによって、3Paの圧力とする。放電電力6.0×10−2W/cm2条件にて30秒間表面処理を行なう。他の項目は実施例3と同様にして有機EL素子基板20を作製した。
(比較例5)
比較例5では、前記実施例3の(下部電極の表面処理)の項目の変更を行った。下部電極21が形成されている支持基板31を紫外線照射/オゾン洗浄装置に設置し、室温にて10分間紫外線照射とオゾン処理を行なう。その後、有機EL層22の成膜のため、直ちに真空装置内に投入した。他の項目は実施例3と同様にして有機EL素子基板20を作製した。前述した実施例3〜比較例5までの結果を表6に示す。
表6の実施例3の各値により明らかなように、実施例3に記載の条件で表面処理を行った場合、従来の紫外線照射/オゾン処理を用いた比較例5に比べると、従来処理では減少させるのが困難であった(P2/P1)の値、および(P3/P1)の値が実施例3では著しく小さくなっていることが分かる。それに関連して、従来処理と比較し、駆動初期における駆動電圧値が低下すること、そして1000時間駆動後の電圧上昇が抑えられることが確認できる。
比較例2のように表面処理が充分でなく、(P2/P1)の値、および(P3/P1)が実施例3の低減レベルに到達しない場合には、駆動初期における駆動電圧値の低下が小さく、1000時間駆動後の電圧上昇が生じる結果となった。比較例3に示すように、放電電力を非常に大きく設定した際にも、(P2/P1)の値、および(P3/P1)の値は実施例3のレベルと同様に低減するが、プラズマ粒子の下部電極21表面への衝突エネルギーが大きくなることから下部電極21表面が荒れることによって、上部電極23との短絡が生じるようになってしまった。発光素子として正常に機能しなくなってしまうことから、この条件は採用できないことが明らかである。また、比較例4に示すように、処理ガスとしてArガスと共にO2ガスを導入すると、下部電極21表面が酸化されるため(P5/P4)の値が処理前より上昇する。その結果、O2ガスを導入しない実施例3と比較し、初期駆動電圧が上昇し、連続駆動後の電圧上昇が増大する結果となる。比較例5では、下部電極21表面の酸素成分の減少はほとんど見られない。さらに、P5/P4が大きくなってIn23の成分比の増加を示していることから、駆動初期における駆動電圧値が増加し、1000時間駆動後の電圧上昇が著しいことが分かる。これらのことから、比較例4と同様に比較例5についても、本発明による効果は得られない。
20 有機EL素子基板
21 下部電極
22 有機EL層
23 上部電極
24 封止膜、保護層
30 封止基板
31 支持基板
40 色変換層
50 接着層
100 有機EL素子

Claims (8)

  1. 支持基板上に下部電極、有機EL層、上部電極、封止膜をこの順に形成して積層する有機EL素子の製造方法において、表面側に酸化物透明導電膜を有する前記下部電極を形成した後、該下部電極表面に、放電電力が1.0×10-2W/cm2乃至3.0×10-1W/cm2の範囲の希ガス中でプラズマ処理を施す表面処理工程を加えることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
  2. 支持基板上に下部電極、有機EL層、上部電極、封止膜をこの順に形成して積層する有機EL素子の製造方法において、表面側に酸化物透明導電膜を有する前記下部電極を形成した後、該下部電極表面に、希ガスと還元性ガスの混合ガス中で放電電力が1.0×10-2W/cm2乃至3.0×10-1W/cm2の範囲でプラズマ処理を施す表面処理工程を加えることを特徴とする有機EL素子の製造方法。
  3. 前記放電電力を3.0×10-2W/cm2乃至2.0×10-1W/cm2の範囲とすることを特徴とする請求項1または2に記載の有機EL素子の製造方法。
  4. 前記プラズマ処理の時間を5秒乃至300秒とすることを特徴とする請求項3記載の有機EL素子の製造方法。
  5. 前記プラズマ処理を施すためのプラズマ処理容器内圧力が100Pa乃至0.01Paの範囲であることを特徴とする請求項4記載の有機EL素子の製造方法。
  6. 前記酸化物透明導電膜がIn、Zn、Oの元素を含有する化合物であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  7. 前記下部電極が陰極であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法により得られることを特徴とする有機EL素子。
JP2009092582A 2009-04-07 2009-04-07 有機el素子およびその製造方法 Pending JP2010244860A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009092582A JP2010244860A (ja) 2009-04-07 2009-04-07 有機el素子およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009092582A JP2010244860A (ja) 2009-04-07 2009-04-07 有機el素子およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2010244860A true JP2010244860A (ja) 2010-10-28

Family

ID=43097655

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009092582A Pending JP2010244860A (ja) 2009-04-07 2009-04-07 有機el素子およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2010244860A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015097857A1 (ja) * 2013-12-27 2015-07-02 パイオニアOledライティングデバイス株式会社 発光装置

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10261484A (ja) * 1997-03-19 1998-09-29 Minolta Co Ltd 有機エレクトロルミネセンス素子およびその製造方法
JP2002015868A (ja) * 2000-04-26 2002-01-18 Canon Inc 有機発光素子の製造方法
JP2002237215A (ja) * 2001-02-08 2002-08-23 Canon Inc 表面改質透明導電性膜、その表面処理方法およびそれを用いた電荷注入型発光素子
JP2005243411A (ja) * 2004-02-26 2005-09-08 Dainippon Printing Co Ltd 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP2007513217A (ja) * 2004-08-23 2007-05-24 エルジー・ケム・リミテッド 新規の発光物質及びこれを用いた有機発光素子

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10261484A (ja) * 1997-03-19 1998-09-29 Minolta Co Ltd 有機エレクトロルミネセンス素子およびその製造方法
JP2002015868A (ja) * 2000-04-26 2002-01-18 Canon Inc 有機発光素子の製造方法
JP2002237215A (ja) * 2001-02-08 2002-08-23 Canon Inc 表面改質透明導電性膜、その表面処理方法およびそれを用いた電荷注入型発光素子
JP2005243411A (ja) * 2004-02-26 2005-09-08 Dainippon Printing Co Ltd 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP2007513217A (ja) * 2004-08-23 2007-05-24 エルジー・ケム・リミテッド 新規の発光物質及びこれを用いた有機発光素子

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015097857A1 (ja) * 2013-12-27 2015-07-02 パイオニアOledライティングデバイス株式会社 発光装置
JPWO2015097857A1 (ja) * 2013-12-27 2017-03-23 パイオニアOledライティングデバイス株式会社 発光装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5172961B2 (ja) 有機elデバイスおよびその製造方法
JP5378354B2 (ja) 有機elデバイスおよびその製造方法
JP4544937B2 (ja) 有機機能素子、有機el素子、有機半導体素子、有機tft素子およびそれらの製造方法
JPH11307259A (ja) 有機el素子
JPH11260562A (ja) 有機elカラーディスプレイ
JP2004327414A (ja) 有機el素子およびその製造方法
WO2010010622A1 (ja) 有機elデバイスおよびその製造方法
JP2006004721A (ja) トップエミッション型有機el素子
JP2003203771A (ja) 有機発光素子、表示装置及び照明装置
JP2004047381A (ja) フレキシブル有機エレクトロ・ルミネッセンス素子、その製造方法及び情報表示装置及び照明装置
WO2011039830A1 (ja) 有機elデバイス
JP2008140621A (ja) 有機elディスプレイおよびその製造方法
JP2004039468A (ja) 有機elカラーディスプレイ
WO2000072637A1 (fr) Affichage couleur electroluminescent organique
JP2006216924A (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法
WO2009099009A1 (ja) 有機elディスプレイおよびその製造方法
JP2010244860A (ja) 有機el素子およびその製造方法
JP2008021575A (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子および該素子の製造方法
JP2006066553A (ja) 有機el素子およびその製造方法
JP6319301B2 (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法
JP2004227943A (ja) 有機el発光素子およびその製造方法
JP4423589B2 (ja) スパッタ装置、スパッタ方法、有機el発光素子の製造装置および有機el発光素子の製造方法
JP4893816B2 (ja) 光学基板、発光素子、表示装置およびそれらの製造方法
JP2008218143A (ja) 有機エレクトロルミネッセンス素子
JP2006128139A (ja) 半導体薄膜、半導体薄膜の積層体、半導体薄膜の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20120316

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20120402

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20121107

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130312

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130423

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20140107