以下、本発明にかかる実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。
図1は、実施形態における生産計画作成装置の構成を示すブロック図である。図2は、実施形態の生産計画作成装置における成分マスタテーブルの構成を示す図である。図3は、実施形態の生産計画作成装置における設備マスタテーブルの構成を示す図である。
実施形態の生産計画作成装置Sは、複数の製品をそれぞれ製造するための複数の作業についての生産計画を1個の生産設備に対して作成する装置である。このような生産計画作成装置Sは、例えば、図1に示すように、処理順序決定部1と、処理順序記憶部2と、希釈後組成計算部3と、段取り条件判断部4と、段取り回数決定部5と、段取り時間計算部6と、スケジュール作成部7と、スケジュール記憶部8と、入力部11と、出力部12と、成分マスタ記憶部21と、設備マスタ記憶部31とを備えて構成される。
入力部11は、例えば段取り替え処理を考慮した生産計画を作成する生産計画作成プログラムを起動するコマンド等の各種コマンド、および、生産計画を作成(立案)する上で必要な各種データを生産計画作成装置Sに入力する機器であり、例えば、キーボードやマウス等である。出力部12は、入力部11から入力されたコマンドやデータ、および、本生産計画作成装置Sによって作成された生産計画を提示(出力)する機器であり、例えばCRTディスプレイ、LCD、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。スケジュール(生産計画)は、例えば、ガントチャートで出力部12に表示される。このガントチャートは、時間を横軸に取るとともに生産設備を縦軸に取り、複数の製品の製造における各作業を、当該生産設備での1回の処理(作業)単位ごとに、その開始時刻から終了時刻までの時間幅に対応する長方形枠(ジョブ枠)で表したタイルを、ディスプレイ上に描画したものである。
処理順序決定部1は、段取り替え処理工程を考慮することなく、生産計画(スケジュール)の対象である複数の製品をそれぞれ製造するための複数の作業に対し、それら各作業を行う順番(処理順序)を決定するものである。この生産計画対象(スケジュール対象)の複数の製品には、組成が異なることによって品種の異なる製品が少なくとも含まれる。すなわち、生産計画対象の複数の製品は、全て互いに異なる品種であってもよく、また少なくとも2種類の品種の製品が含まれていれば同一の品種の製品が含まれていてもよい。複数の作業に対する処理順序の決定は、特に限定されず、公知の常套手段が用いられ、例えば、製品の作業を実行する順番を当該製品の納期順に決定するいわゆる納期順処理決定方法が挙げられ、あるいは例えばオペレータの人間が処理順序を指定(決定)してもよい。本実施形態では、製品は、溶解炉を用いる合金であり、段取り替え処理工程は、純金属材料(主成分純原料)を溶解炉に投入することによって残留物(前の作業で生産された品種の合金)を希釈する処理である炉洗い処理である。したがって、処理順序決定部1は、炉洗い処理を考慮することなく、生産計画の対象である複数の合金をそれぞれ製造するための複数の作業に対し、それら各作業を行う順番を決定するものである。
処理順序記憶部2は、生産計画の対象である複数の製品(本例では合金)をそれぞれ製造するための複数の作業に対する、それら各作業の処理順序を記憶するものである。処理順序記憶部2には、処理順序決定部1で決定された複数の作業に対する処理順序が記憶される。このように本実施形態では、複数の作業における処理順序が、段取り替え処理を考慮した生産計画を作成する前に処理順序記憶部2に予め記憶(格納)されることで、前記複数の作業における処理順序が生産計画作成装置Sに予め与えられる。
成分マスタ記憶部21は、生産計画を作成(立案)するに当たって必要となる基礎情報であって、品種の組成を少なくとも含む品種の諸元に関するデータである品種マスタデータを記憶する装置であり、例えば、書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROMや、ハードディスク装置等を備えて構成される。より具体的には、成分マスタ記憶部21は、複数の品種のそれぞれについて、当該品種の組成が記憶される。成分マスタ記憶部21には、例えば、図2に示すように、複数の品種のそれぞれについて、当該品種の組成(成分およびその割合)がテーブル形式で成分マスタテーブル22として記憶される。合金は、本実施形態では、基となる純金属材料(主成分純原料)に7種類の元素を添加することで生成される所定の成分組成を持つ金属であり、成分マスタテーブル22には、図2に示す例では、品種1から品種10までの10種類の品種のそれぞれについて、元素Aから元素Bまでの7種類の添加原料の組成が%(百分率)で登録されている。例えば、品種1は、元素Aが0.010%であり、元素Bが0.100%であり、元素Cが0.030%であり、元素Dが0.030%であり、元素Eが0.050%であり、元素Fが0.050%であり、そして、元素Gが0.010%である。また例えば、品種5は、元素Aが0.010%であり、元素Bが0.100%であり、元素Cが2.000%であり、元素Dが0.200%であり、元素Eが0.050%であり、元素Fが0.050%であり、そして、元素Gが0.005%である。なお、主成分純原料(基となる金属)については、成分マスタテーブル22には省略されている。
設備マスタ記憶部31は、生産計画を作成(立案)するに当たって必要となる基礎情報であって、単位処理量、単位残留量、単位処理時間および単位希釈時間を少なくとも含む生産設備の諸元に関するデータである設備マスタデータを記憶する装置であり、成分マスタ記憶部31と同様に、例えば、書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROMやハードディスク装置等を備えて構成される。単位処理量は、当該生産設備における1回の作業で処理する処理量であり、単位残留量は、当該生産設備における1回の作業の終了後に残留する量であり、本実施形態ではこの単位残留量は、当該生産設備における1回の希釈の終了後に残留する量でもあり、単位処理時間は、当該生産設備における1回の作業の処理に要する処理時間であり、そして、単位希釈時間は、当該生産設備における1回の希釈に要する希釈時間である。より具体的には、設備マスタ記憶部31は、図3に示すように、前記単位処理量の一例として溶解炉の炉容量、前記単位残留量の一例として残留量、前記単位処理時間の一例として合金材料の溶解に要する処理時間および前記単位希釈時間の一例として炉洗い処理に要する炉洗い時間がテーブル形式で記憶される。図3に示す設備マスタテーブル32の例では、炉容量は、1回当たり25トン(ton)であり、残留量は、1回当たり5トン(ton)であり、前記処理時間は、1回当たり6時間であり、そして、炉洗い時間は、1回当たり4時間である。
希釈後組成計算部3は、希釈前の残留物に対し、段取り替え処理(本例では炉洗い処理)を行うことによって希釈された希釈後の残留物(希釈後残留物)の組成を求めるものである。例えば、続く作業で製造される製品の主成分によって炉容量で残留物が希釈される。すなわち、本実施形態では、希釈量は、予め設定された一定量となる。
段取り替え条件判断部4は、複数の作業における一の作業とこれに続く他の作業との間に、この一の作業の終了後における生産設備(溶解炉)に残る残留物の組成とその他の作業で製造される製品の組成とに基づいて、他の作業で製造される製品の主成分で残留物を希釈する段取り替え処理(本例では炉洗い処理)が必要であるか否かを判断するものである。本実施形態では、上述したように、段取り替え処理における希釈量は、予め設定された一定量(本例では炉容量)であることから、1回の段取り替え処理では、一の処理工程に続く他の処理工程で適正な製品を製造することができないことがあり得る。このため、本実施形態では、段取り替え条件判断部4は、希釈後残留物を新たな残留物として、段取り替え処理(本例では炉洗い処理)が必要ではないと判断されるまで、前記段取り替え処理が必要であるか否かを判断するものである。
段取り替え回数決定部5は、希釈後組成計算部3の計算結果および段取り替え条件判断部4の判断結果に基づいて、段取り替え処理(本例では炉洗い処理)の回数を求めるものである。より具体的には、段取り替え回数決定部5は、例えば、段取り替え条件判断部4によって段取り替え処理が必要であると判断された判断回数を計数することによって、段取り替え処理(本例では炉洗い処理)の回数を求めるものである。
段取り替え時間計算部6は、設備マスタ記憶部31に記憶されている1回当たりの段取り替え処理時間(本例では単位希釈時間)および段取り替え回数決定部5で求められた段取り替え回数に基づいて、段取り替え時間を算出するものである。より具体的には、段取り替え時間計算部6は、設備マスタ記憶部31に記憶されている1回当たりの段取り替え時間(本例では単位希釈時間)に、段取り替え条件判断部4によって段取り替え処理が必要であると判断された判断回数を乗じることによって、段取り替え処理時間(本例では炉洗い時間)を求めるものである。
スケジュール作成部7は、処理順序記憶部2に記憶されている複数の作業における処理順序に対し、必要に応じて、すなわち、段取り替え条件判断部4によって段取り替え処理(本例では炉洗い処理)が必要である場合に、段取り替え条件判断部4によって判断された一の作業と他の作業との間に段取り替え処理工程を入れることによって、複数の作業についての生産計画を作成するものである。本実施形態では、段取り替え処理工程は、段取り替え条件判断部4によって段取り替え処理が必要であると判断された判断回数に応じて前記一の作業と他の作業との間に入れられる。より具体的には、本実施形態では、段取り替え処理工程は、段取り替え時間計算部6で求められた段取り替え処理時間で前記一の作業と前記他の作業との間に入れられる。すなわち、本実施形態では、スケジュール作成部7は、処理順序記憶部2に記憶されている複数の作業における処理順序に対し、必要に応じて、段取り替え時間計算部6で計算された段取り替え処理時間の段取り替え処理(本例では炉洗い処理)を挿入することによって、段取り替え処理を考慮した複数の製品における複数の作業についての生産計画(スケジュール)を作成するものである。
スケジュール記憶部8は、複数の製品における複数の作業についての生産計画(スケジュール)を記憶するものである。スケジュール記憶部8には、スケジュール作成部7で作成されたスケジュールが記憶される。より具体的には、スケジュール記憶部8は、複数の製品のそれぞれについて、製品を特定し識別するための製品識別子(製品ID)、生産設備を特定し識別するための識別子であって前記製品を生産する生産設備の生産設備識別子(設備ID)、前記製品の品種、ならびに、前記製品に対する作業の開始時刻および終了時刻に関する開始終了情報を記憶する。初期状態では、処理順序記憶部2に記憶されている初期計画のスケジュールがスケジュール記憶部8に記憶され、この初期計画のスケジュールがスケジュール作成部7で修正され、作成されると、スケジュール作成部7によって作成された修正済みのスケジュールがスケジュール記憶部8に記憶される。
このような構成の生産計画作成装置Sは、例えば、コンピュータ、より具体的にはサーバコンピュータやパーソナルコンピュータ等によって構成可能であり、これら処理順序決定部1、希釈後組成計算部3、段取り替え条件判断部4、段取り替え回数決定部5、段取り替え時間計算部6およびスケジュール作成部7は、例えばマイクロプロセッサおよびその周辺回路等を備えて構成される情報処理部に機能的に構成可能であり、またこれら処理順序記憶部2、スケジュール記憶部8、成分マスタ記憶部21および設備マスタ記憶部31は、例えば、記憶素子(メモリ)やハードディスク装置等を備えて構成される記憶装置に機能的に構成可能である。また例えば、これら成分マスタ記憶部21や設備マスタ記憶部31等は、サーバコンピュータを備えて構成されてもよい。生産計画作成装置Sが複数のサーバコンピュータによって構成される場合には、各サーバコンピュータ間は、通信網(ネットワーク)によって相互に通信可能に接続される。
なお、必要に応じて生産計画作成装置Sは、図略の外部記憶装置をさらに備えてもよい。外部記憶装置は、例えば、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc Recordable)、DVD−R(Digital Versatile DiscRecordable)およびブルーレイディスク(Blu-ray Disc)等の記録媒体との間でデータを読み込みおよび/または書き込みを行う装置であり、例えば、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、CD−Rドライブ、DVD−Rドライブおよびブルーレイディスクドライブ等である。
ここで、生産計画作成装置Sは、段取り替え処理を考慮したスケジュール(生産計画)を作成するための生産計画作成プログラムや成分マスタや設備マスタ等のマスタ情報等が格納されていない場合には、これらプログラムやマスタ情報等を記録した記録媒体から前記外部記憶装置を介して各装置にインストール(格納)されるように構成されてもよい。あるいは、生産計画作成装置Sは、作成したスケジュールのデータが前記外部記憶装置を介して記録媒体に記録されるように構成されてもよい。
次に、本実施形態の動作について説明する。図4は、実施形態における生産計画作成装置の動作を示すフローチャートである。図5は、生産計画の対象である複数の製品を生産するための複数の作業に対する、それら各作業の処理順序を説明するための図である。図6は、品種5と品種1とを1つの溶解炉で順に製造する場合における炉洗い処理の決定処理を説明するための図である。図7は、図5に示す各作業の処理順序における各作業間の炉洗い処理を説明するための図である。図8は、炉洗い処理を考慮したスケジュールを表すガントチャートである。
図4において、まず、ステップS11では、処理順序決定部1によって、段取り替え処理工程が考慮されずに、生産計画(スケジュール)の対象である複数の製品をそれぞれ製造するための複数の作業に対し、それら各作業を行う処理順序が決定され、この決定された各作業の処理順序が処理順序記憶部2に記憶される。処理順序記憶部2には、例えば、図5に示すように、処理順序の番号である処理順と、当該処理順の作業で製造される製品に対応する製品番号(製品No.)と、当該処理順の作業で製造される製品の品種とを互いに対応付けてテーブル形式で記憶される。製品No.は、前記製品IDの一例である。図5に示す例では、例えば、処理順1番目は、製品No.C1の品種5の製品を製造する作業であり、また例えば、処理順2番目は、製品No.C2の品種1の製品を製造する作業であり、また例えば、処理順3番目は、製品No.C3の品種1の製品を製造する作業である。
続いて、ステップS12では、希釈後組成計算部3によって、処理順序記憶部2に記憶されている複数の作業の中から任意に一の作業とこれに続く他の作業との組(前後の処理順序の組)が1組抽出される。この抽出方法は、任意の手法で良く、例えば、本実施形態では、処理順序の最初から順に1組が抽出される。例えば、図5に示す前記例では、処理順1番目における製品No.C1の品種5の製品を製造する作業(一の作業、前工程)と、処理順2番目における製品No.C2の品種1の製品を製造する作業(他の作業、後工程)との組が抽出される。
続いて、ステップS13では、希釈後組成計算部3によって、ステップS12で抽出された組における一の作業で製造される製品の品種(前品種)に対応する組成および他の作業で製造される製品の品種(後品種)に対応する組成(前品種と後品種の組成)が成分マスタ記憶部21から取得される。本実施形態では、成分マスタテーブル22には、規格組成が登録されており、例えば、図5に示す前記例では、一の作業で製造される製品No.C1の品種5に対応する組成および他の作業で製造される製品No.C2の品種1に対応する組成が図2に示す成分マスタテーブル22から取得される。
続いて、ステップS14では、段取り替え回数決定部5によって段取り替え処理の回数を表す変数Nが0に初期化され(N=0)、変数Nの初期化が実行される。
続いて、ステップS15では、希釈後組成計算部3によって、段取り替え処理回数N回後における残留物(希釈後残留物)の組成が求められる。
ここで、本実施形態では、1回の作業が終了すると、一度残留量だけとなるので、その残留物に対し1回の炉洗い処理が実行されるようになっており、段取り替え処理回数N=0では、このデフォルトの1回の炉洗い処理後における残留物の組成が希釈後組成計算部3によって求められる。例えば、図5に示す前記例では、一の作業で製品No.C1の品種5の製品が製造されると、デフォルトで1回の炉洗い処理が実行され、他の作業で製造される製品の主成分(主成分純原料、基となる金属原料)で残留物が希釈される。この希釈は、生産設備、すなわち、本例では溶解炉の炉容量一杯に前記主成分純原料を満たすことによって実行される。したがって、この場合では、希釈率は、残留量を炉容量で除算した値(=残留量/炉容量)となる。そして、希釈後組成計算部3によって、このデフォルトの1回の炉洗い後の残留物における組成が前記デフォルトの1回の炉洗い前における残留物の組成に希釈率を乗算することによって求められる。すなわち、k回希釈率を乗ずると、k回希釈後の各成分の組成比率が求められる。図3に示す例では、希釈率は、0.2(=5ton/25ton)である。よって、前記例では、初期の残留物の組成は、元素Aが0.00200(=0.010×0.2)%であり、元素Bが0.0200(=0.100×0.2)%であり、元素Cが0.40000(=2.000×0.2)%であり、元素Dが0.04000(=0.200×0.2)%であり、元素Eが0.01000(=0.050×0.2)%であり、元素Fが0.01000(=0.050×0.2)%であり、そして、元素Gが0.00100(=0.005×0.2)%である。図6には、「炉洗い無しの場合(%)」の欄に、この結果が纏めて示されている。なお、図2に示す例では、品種1ないし品種10の各主成分は、同一となっている。また、図3に示す設備マスタテーブル32における処理時間には、この例では、このデフォルトの1回の炉洗い処理の時間が含まれている。
続いて、ステップS16では、段取り条件判断部4によって、複数の作業における一の作業とこれに続く他の作業との間に、一の作業の終了後における生産設備に残る残留物の組成と他の作業で製造される製品の組成とに基づいて、他の作業で製造される製品の主成分で残留物を希釈する段取り替え処理が必要であるか否かが判断される。この判断は、希釈後残留物の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)のそれぞれが、これに対応する、他の作業で製造される製品の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)以下であるか否かによって行われ(後品種の規格組成を満たさない成分があるか?)、希釈後残留物の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)のそれぞれが、全て、これに対応する、他の作業で製造される製品の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)以下である場合には、段取り替え処理が必要ではないと判断され、希釈後残留物の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)のそれぞれが、全て、これに対応する、他の作業で製造される製品の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)以下ではない場合には、段取り替え処理が必要であると判断される。すなわち、希釈後残留物の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)のそれぞれの中で1つでも、これに対応する、他の作業で製造される製品の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)より大きい場合には、段取り替え処理が必要であると判断される。このように判断されるのは、不足する成分は、一の作業に続く他の作業において、その不足分だけその成分の添加原料を補えばよいからである。
この判断の結果、希釈後残留物の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)のそれぞれが、全て、これに対応する、他の作業で製造される製品の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)以下である場合(NO)には、ステップS16の処理に続いてステップS18の処理が実行される。一方、判断の結果、希釈後残留物の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)のそれぞれが、全て、これに対応する、他の作業で製造される製品の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)以下ではない場合(YES)には、ステップS16の処理に続いて、段取り替え回数決定部5によって段取り替え処理回数の変数Nが1つだけインクリメントされるステップS17の処理(N←N+1)が実行された後に、ステップS15の処理が実行される。すなわち、ステップS16の処理後に、処理がステップS17の処理を介してステップS15の処理に戻される。これによって段取り替え条件判断部4は、希釈後残留物を新たな残留物として、ステップS16で段取り替え処理(本例では炉洗い処理)が必要ではないと判断されるまで、段取り替え処理が必要であるか否かを判断することになる。
例えば、図5に示す前記例では、図6に示すように、炉洗い無しの場合(デフォルトの1回の炉洗い処理後における希釈後残留物の場合)では、元素Cの成分の組成比率が0.40000であって品種1の元素Cの成分の組成比率が0.030であり、そして、元素Dの成分の組成比率が0.04000であって品種1の元素Dの成分の組成比率が0.030であることから、段取り替え処理回数の変数N=0の場合では、希釈後残留物の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)のそれぞれが、全て、これに対応する、他の作業で製造される製品の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)以下ではない場合(YES)となって、ステップS17が実行され、ステップS15が実行される。この結果は、図6における「炉洗い1回の場合(%)」の欄に纏めて示されている。そして、この炉洗い1回の場合でも、図6に示すように、元素Cの成分の組成比率が0.08000であって品種1の元素Cの成分の組成比率が0.030であることから、段取り替え処理回数の変数N=1の場合では、希釈後残留物の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)のそれぞれが、全て、これに対応する、他の作業で製造される製品の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)以下ではない場合(YES)となって、ステップS17が実行され、ステップS15が実行される。この結果は、図6における「炉洗い2回の場合(%)」の欄に纏めて示されている。そして、この炉洗い2回の場合では、図6に示すように、希釈後残留物の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)のそれぞれが、全て、これに対応する、他の作業で製造される製品の主成分を除く各成分の組成比率(含有比率)以下である場合(NO)となって、ステップS18が実行される。
ステップS18では、段取り替え時間計算部6によって、設備マスタ記憶部31に記憶されている1回当たりの段取り替え処理時間(本例では単位希釈時間)および段取り替え回数決定部5で求められた段取り替え処理回数Nに基づいて、段取り替え時間が求められる。より具体的には、設備マスタ記憶部31に記憶されている1回当たりの段取り替え時間に、段取り替え条件判断部4によって段取り替え処理が必要であると判断された判断回数を乗じることによって、すなわち、段取り替え回数決定部5によって計数された段取り替え処理回数Nを乗じることによって、段取り替え処理時間が求められる。
例えば、図5に示す前記例では、単位希釈時間としての炉洗い時間が4時間であって段取り替え処理回数N=2であるので、段取り替え処理時間は、8時間となる。
続いて、ステップS19では、希釈後組成計算部3によって、処理順序記憶部2に記憶されている複数の作業の中から、一の作業とこれに続く他の作業との組を全て抽出したか否かが判断される。この判断の結果、全ての組の抽出が完了していない場合(NO)には、次の組に対しステップS12ないしステップS18の各処理を実行すべく、ステップS19の処理に続いて処理がステップS12の処理に戻される。一方、前記判断の結果、全ての組の抽出が完了している場合(YES)には、ステップS19の処理に続いてステップS20の処理が実行される。
ステップS20では、スケジュール作成部7によって、処理順序記憶部2に記憶されている複数の作業における処理順序に対し、段取り替え条件判断部4によって段取り替え処理(本例では炉洗い処理)が必要である場合に、段取り替え時間計算部6で計算された段取り替え処理時間の段取り替え処理工程(本例では炉洗い処理工程)を挿入することによって、段取り替え処理を考慮した複数の製品における複数の作業についての生産計画(スケジュール)が作成される。なお、各作業の処理時間は、設備マスタ記憶部31に記憶されている設備マスタテーブル32が参照され、設備マスタテーブル32における処理時間が用いられる。
例えば、図5に示す前記例では、図4に示す各処理が実行されることによって、図7に示す結果が得られる。図7から分かるように、処理順1番目における製品No.C1の品種5の製品を製造する作業と処理順2番目における製品No.C2の品種1の製品を製造する作業との間に、段取り替え処理回数(本例では炉洗い処理回数)Nが2回であって段取り替え処理時間(本例では炉洗い処理時間)が8(=4時間×2回)時間である段取り替え処理工程(本例では炉洗い処理工程)が挿入され、処理順5番目における製品No.C5の品種8の製品を製造する作業と処理順6番目における製品No.C6の品種10の製品を製造する作業との間に、段取り替え処理回数Nが1回であって段取り替え処理時間が4(=4時間×1回)時間である段取り替え処理工程が挿入され、そして、処理順7番目における製品No.C7の品種10の製品を製造する作業と処理順8番目における製品No.C8の品種3の製品を製造する作業との間に、段取り替え処理回数Nが2回であって段取り替え処理時間が8(=4時間×2回)時間である段取り替え処理工程が挿入される。
そして、このように作成された生産計画がスケジュール作成部7によってスケジュール記憶部8に記憶され、また、ガントチャートで出力部12に出力される。例えば、図5に示す前記例では、図8に示すガントチャートが出力部12に表示される。
このように本実施形態における生産計画作成装置および該方法では、複数の作業における一の作業とこれに続く他の作業との間に、一の作業の終了後における生産設備に残る残留物の組成と他の作業で製造される製品の組成とに基づいて、他の作業で製造される製品の主成分で残留物を希釈する段取り替え処理が必要であるか否かが判断され、段取り替え処理が必要であると判断された場合に、一の作業と他の作業との間に段取り替え処理工程を入れることによって、複数の作業についての生産計画が作成される。このため、本実施形態における生産計画作成装置および該方法は、段取り替えの条件を前後の品種の組合せに対して事前に記憶させておく必要がないので、品種の個数が多い場合でも、また品種が追加される場合でも、また人手によって保守する場合でも、段取り替えを考慮した生産計画の作成を比較的簡単な処理で実行することが可能となる。
また、本実施形態における生産計画作成装置および該方法では、段取り替え回数決定部5によって段取り替え処理回数Nが計数されているので、この回数Nに応じて段取り替え処理における希釈回数を求めることが可能となり、この回数Nに応じた段取り替え処理工程で生産計画を作成することが可能となる。そして、前記回数Nに応じて段取り替え処理における必要最低限の希釈回数を求めることによって、必要最低限の希釈回数による段取り替え処理工程で生産計画を作成することが可能となり、より適正な生産計画が作成される。
また、本実施形態における生産計画作成装置および該方法では、段取り替え時間計算部6によって段取り替え処理時間が求められているので、この段取り替え処理時間の段取り替え処理工程で生産計画を作成することが可能となる。
また、本実施形態における生産計画作成装置および該方法では、複数の作業における処理順序が処理順序記憶部2に予め記憶される。このため、生産計画の作成のたびに前記処理順序を生産計画作成装置Sに入力する必要がなくなり、手間を軽減することが可能となって、段取り替えを考慮した生産計画の作成をより簡単な処理で実行することが可能となる。
また、本実施形態における生産計画作成装置および該方法では、品種の組成が予め成分マスタ記憶部21に記憶され、生産設備における単位処理量、単位残留量、単位処理時間および単位希釈時間が予め設備マスタ記憶部31に記憶される。このため、これら各データを生産計画作成装置Sに予め与えるだけで、また、生産計画の作成のたびにこれら各データを生産計画作成装置Sに入力する必要がなくなり、段取り替えを考慮した生産計画の作成をより簡単な処理で実行することが可能となる。また、品種が追加される場合でも、追加品種の組成を成分マスタ記憶部21に追加登録するだけで、自動的に生産計画の作成に反映させることが可能となる。
なお、上述の実施形態では、製品を1単位ごとに生産する場合について説明したが、同時に同種の処理が行われる複数のワークのまとまりであるチャージを前記製品として扱うことによって、本実施形態における生産計画作成装置は、複数のチャージの各処理工程についての生産計画(スケジュール)を作成する装置に適用することができる。この場合、複数のチャージには、品種の異なるチャージが少なくとも含まれる。すなわち、生産計画対象の複数のチャージは、全て互いに異なる品種であってもよく、また少なくとも2種類の品種のチャージが含まれていれば同一の品種のチャージが含まれていてもよい。ここで、複数のワークに対して同時に同種の処理を行う生産設備は、バッチ設備と呼ばれる。また、この場合では、スケジュール記憶部8には、複数のチャージのそれぞれについて、チャージを特定し識別するためのチャージ識別子(チャージID)、バッチ設備を特定し識別するための識別子であって前記チャージを処理するバッチ設備のバッチ設備識別子(バッチID)、前記チャージに含まれるワーク数、前記チャージに含まれるワークの品種、ならびに、前記チャージの開始時刻および終了時刻に関する開始終了情報が記憶される。
また、上述の実施形態において、生産設備が複数である場合には、各生産設備について本実施形態の生産計画作成装置Sを用いて生産計画が作成されればよい。
また、上述の実施形態では、スケジュール記憶部8に記憶された生産計画は、ガントチャートで出力部12に表示され、オペレータ等のユーザに提示されたが、スケジュール記憶部8に記憶された生産計画の取り扱いについては、特に限定されない。例えば、処理順序決定部1によって、あるいはオペレータ等のユーザによって、処理順序記憶部2に記憶されている複数の作業の処理順序が変更され、生産計画作成装置Sに再度生産計画を作成させてもよい。これによって生産計画の改善を図ることができ、最良の生産計画を見つけることが可能となる。また例えば、いわゆるSAやGA等の組合せ最適化プログラムの計算途中で作成される処理順序を評価する機能として、生産計画作成装置Sが用いられてもよい。生産計画作成装置Sの作成した生産計画が前記評価の指標として用いられる。これによって生産計画が最適化される。
以下、本発明にかかる他の実施の形態について説明する。
図9は、他の実施形態における生産計画作成装置の構成を示すブロック図である。図10は、図9の生産計画作成装置における成分マスタテーブルの構成を示す図である。図11は、図9の生産計画作成装置における設備マスタテーブルの構成を示す図である。
本実施形態にかかる生産計画作成装置S2は、複数の製品をそれぞれ製造するための複数の作業について生産計画を1個の生産設備に対して作成する装置である。このような生産計画作成装置S2は、図9に示すように、処理順序決定部41と、処理順序記憶部42と、希釈後組成計算部43と、段取り替え条件判断部44と、段取り替え時間計算部46と、スケジュール作成部47と、スケジュール記憶部48と、前記入力部11と、前記出力部12と、成分マスタ記憶部49と、設備マスタ記憶部50とを備えて構成される。
入力部11及び出力部12は、上述した実施形態と同様の構成を有するものであるため、ここでは説明を省略する。
処理順序決定部41は、段取り替え処理工程を考慮することなく、生産計画の対象である複数の製品をそれぞれ製造するための複数の作業に対し、それら各作業を行なう順序(処理順序)を決定するものである。この処理順序決定部41は、上述の実施形態における処理順序決定部1と同様のものである。生産計画の対象となる複数の製品には、組成が異なることによって品種の異なる製品が少なくとも含まれる。すなわち、生産計画対象の複数の製品は、全て互いに異なる品種であってもよく、また少なくとも2種類の品種の製品が含まれていれば同一の品種の製品が含まれていてもよい。本実施形態では、製品は、溶解炉を用いる合金であり、段取り替え処理工程は、純金属材料(主成分純原料)を溶解炉に投入することによって残留物(前の作業で生産された品種の合金)を希釈する処理である炉洗い処理である。
処理順序記憶部42は、生産計画の対象である複数の製品(本例では合金)をそれぞれ製造するための複数の作業に対する、それら作業の処理順序を記憶するものである。処理順序記憶部42は、処理順序決定部41で決定された複数の作業に対する処理順序が記憶される。
成分マスタ記憶部49は、上述した実施形態における成分マスタ記憶部21と同様に、品種マスタデータを記憶する装置である。具体的に、成分マスタ記憶部49には、例えば、図10に示すように、複数の品種のそれぞれについて、当該品種の組成(成分およびその割合)がテーブル形式で成分マスタテーブル51として記憶されている。なお、成分マスタテーブル51では、主成分純原料(基となる金属)については省略されている。
設備マスタ記憶部50は、生産計画を作成(立案)するに当たって必要となる基礎情報であって、単位処理量、単位残留量、単位処理時間および1元素投入時間を少なくとも含む生産設備の緒元に関するデータである設備マスタデータを記憶する装置であり、例えば、書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROMやハードディスク装置等を備えて構成される。単位処理量、単位残留量、および単位処理時間は、上述した実施形態と同様である。1元素投入時間は、当該生産設備において1元素(1成分)を追加するのに要する時間である。具体的に、本実施形態では、1元素投入時間は10分である。
希釈後組成計算部43は、一の作業からこれに続く他の作業に移行する際において、一の作業の終了時に生産設備に残留する希釈前の残留物(5ton:図3)に対し、前記他の作業で生産される製品の主成分を生産設備の容量(25ton:図3)が満たされる量(20ton)だけ投入したときの、残留物の元素ごとの濃度(希釈後濃度)を求めるものである。
段取り替え条件判断部44は、複数の作業における一の作業とこれに続く他の作業との間に、他の作業で製造される製品の主成分で残留物を希釈する段取り替え処理(本例では炉洗い処理)が必要であるか否かを判断するものである。具体的に、段取り替え条件判断部44は、前記希釈後濃度を前記他の作業で生産される製品の元素(成分)ごとの濃度(目標濃度と称す)で除した希釈度が予め設定された規定希釈度を越える場合には、段取り替え処理が必要であると判断する。ここで、前記規定希釈度は、前記目標濃度に公差が設定されていない場合には「1」となる。つまり、目標濃度に公差が設定されていない場合、希釈後濃度を目標濃度で除した希釈度が「1」を超える成分は、さらなる希釈を要する成分であると判断することができる。反対に、目標濃度に公差が設定されている場合には前記規定希釈度は「1」に対して前記公差に応じた値が増減した値となる。本実施形態において、前記規定希釈度は「1」に設定されているものとして説明する。
段取り替え時間計算部46は、前記段取り替え条件判断部44により段取り替え処理が必要であると判断された場合に、この段取り替え処理に要する時間を計算するものであり、希釈時間計算部46aと、成分追加時間計算部46bとを有する。希釈時間計算部46aは、前記段取り替え条件判断部44により算出された元素ごとの希釈度のうち最も大きな希釈度(最大希釈度)を規定希釈度(本実施形態では1)とするために要する時間を計算する。例えば、最大希釈度を1.5倍することにより規定希釈度とすることができる場合、希釈時間計算部46aは、1回当たりの処理時間である6時間(図11参照)に1.5を乗じた4時間を希釈時間として算出する。成分追加時間計算部46bは、前記最大希釈度を規定希釈度にするための倍率で残留物を希釈した場合に希釈度が規定希釈度未満である成分を追加する処理に要する時間(成分追加時間)を計算する。具体的に、成分追加時間計算部46bは、まず、追加対象となる成分の数を特定し、この成分の数に1元素投入時間(図11参照)を乗じて得た値を成分追加時間として算出する。
スケジュール作成部47は、処理順序記憶部42に記憶されている複数の作業における処理順序に対し、必要に応じて、すなわち、段取り替え条件判断部44によって段取り替え処理(本例では炉洗い処理及び元素追加処理)が必要である場合に、段取り替え条件判断部44によって判断された一の作業と他の作業との間に段取り替え処理工程を入れることによって、複数の作業についての生産計画を作成するものである。具体的に、スケジュール作成部47は、処理順序記憶部42に記憶されている複数の作業における処理順序に対し、必要に応じて、段取り替え時間計算部46で計算された段取り替え処理時間の段取り替え処理(本実施形態では炉洗い処理及び元素追加処理)を挿入することによって、段取り替え処理を考慮した複数の製品における複数の作業についての生産計画(スケジュール)を作成するものである。
スケジュール記憶部48は、上述した実施形態のスケジュール記憶部8と同様、スケジュール作成部47で作成されたスケジュールが記憶される。初期状態では、処理順序記憶部42に記憶されている初期計画のスケジュールがスケジュール記憶部48に記憶され、この初期計画のスケジュールがスケジュール作成部47で修正され、作成されると、スケジュール作成部47によって作成された修正済みのスケジュールがスケジュール記憶部48に記憶される。
このような構成の生産計画作成装置Sは、上述した生産計画作成装置Sと同様に、コンピュータ等によって構成可能であり、図略の外部記憶装置をさらに備えることもできる。
次に、本実施形態の動作について説明する。図12は、本実施形態における生産計画作成装置の動作を示すフローチャートである。図13は、生産計画の対象である複数の製品を生産するための複数の作業に対する、それら各作業の処理順序を説明するための図である。図14は、一の作業とこれに続く他の作業を行なう際における元素ごとの希釈度、最大希釈度、及び追加投入する元素数を示す図である。図15は、図13に示す各作業の処理順序における各作業間の段取り替え処理を説明するための図である。図16は、段取り替え処理を考慮したスケジュールを表すガントチャートである。
図12において、まず、ステップS21では、処理順序決定部41によって、段取り替え処理工程が考慮されずに、生産計画(スケジュール)の対象である複数の製品をそれぞれ製造するための複数の作業に対し、それら各作業を行う処理順序が決定され、この決定された各作業の処理順序が処理順序記憶部42に記憶される。処理順序記憶部42は、例えば、図13に示すように、処理順序の番号である処理順と、当該処理順の作業で製造される製品に対応する製品番号(製品No.)と、当該処理順の作業で製造される製品の品種とを互いに対応付けてテーブル形式で記憶される。
続いて、ステップS22では、希釈後組成計算部43によって、処理順序記憶部42に記憶されている複数の作業の中から任意に一の作業とこれに続く他の作業との組(前後の処理の順序の組)が1組抽出される。この抽出方法は、任意の手法で良く、例えば、本実施形態では、処理順序の最初から順に1組が抽出される。例えば、図13に示す例では、処理順1番目における製品No.C1の品種5の製品を製造する作業(一の作業、前工程)と、処理順2番目における製品No.C2の品種1の製品を製造する作業(他の作業、後工程)との組が抽出される。
続いて、ステップS23では、希釈後組成計算部43によって、ステップS22で抽出された組における一の作業で製造される製品の品種(前品種)に対応する組成および他の作業で製造される製品の品種(後品種)に対応する組成が成分マスタ記憶部49から取得される。例えば、図13に示す例では、一の作業で製造される製品No.C1の品種5に対応する組成および他の作業で製造される製品No.C2の品種1に対応する組成が図10に示す成分マスタテーブル51から取得される。
続いて、ステップS24では、希釈後組成計算部43によって各元素ごとの希釈度が計算される。まず、希釈後組成計算部43は、先行する一の作業が終了して1回の炉洗い処理が終了した後における残留物(5ton)に対し、前記一の作業に続く他の作業の主成分を、炉容量(25ton)が満たされる量(20ton)だけ追加して希釈したときにおける元素ごとの濃度を計算する。例えば、図10の品種5の元素Cについて例示すると、元素Cの濃度である0.25%に対し、(残留量)/(炉容量)である5/25を乗じた値である0.05%を計算する。次に、希釈後組成計算部43は、この濃度(0.05%)を後品種である品種1の元素Cの濃度(0.03%:図10参照)にするための希釈度を計算する。具体的に、前品種5と後品種1との組については、前品種5における元素Cの濃度(0.05%)を後品種1における元素Cの濃度(0.03%)で除した希釈度(1.67)を計算する。そして、図14に示すように、この希釈度を各元素A〜Gについて計算する。
続いて、ステップS25では、ステップS24において計算された元素A〜Gの希釈度のうちの最も大きいもの(最大希釈度)が予め設定された規定希釈度(本実施形態では全ての元素について1に設定されている)を超えているか否かを判定する。つまり、ステップS25では、前品種の残留物を希釈した状態において、この残留物の希釈物に含まれる各元素の濃度が後品種に予定されている各元素の濃度を越えているか否かを判定することにより、前記残留物をさらに希釈することを要するか否かを判定する。具体的に、上述した前品種5と後品種1との組については、元素Cの希釈度1.67が最大希釈度となるため、この最大希釈度は、1よりも大きいと判定される。なお、図14に示す例では、前品種5と後品種1の組、および、前品種10と後品種5の組については、最大希釈度が1を越えているため、さらなる希釈を要することになる。そして、このステップS25において、最大希釈度が1を超えると判定されると、ステップS26が実行される一方、最大希釈度が1以下であると判定されるとステップS27が実行される。
ステップS26では、前記希釈時間計算部46aによって希釈時間が計算される。つまり、希釈時間計算部46aは、前記最大希釈度と、1回の炉洗いに必要な処理時間(図11:本実施形態では6時間)とに基づいて希釈時間を計算する。具体的に、前品種5と後品種1との組については、最大希釈度が1.67であり、現状からさらに0.67倍の希釈が必要であるため、1回の炉洗いに必要な6時間に対し0.67を乗じた約4時間が希釈時間として算出される。
続いて、ステップS27では、追加投入する元素の数が特定される。つまり、成分追加時間計算部46bは、前記最大希釈度が規定希釈度(本実施形態では1)となるように残留物を希釈した場合に、各元素A〜Gののうち希釈度が規定希釈度未満となるものの数を特定する。つまり、最大希釈度が規定希釈度となった状態において、希釈度が規定希釈度以上となっている元素については、その元素をさらに追加する必要がないためである。ここで、最大希釈度が規定希釈度に希釈された状態において、他の元素の希釈度が規定希釈度未満とならない場合について説明すると、各品種における各元素A〜Gの濃度に公差が設定されている場合、規定希釈度にも一定の範囲が設定されることになるため、最大希釈度が規定希釈度の範囲内となるように希釈された状態で、他の元素の希釈度も規定希釈度の範囲内に収まる場合があり得る。ただし、規定希釈度が1に設定されている本実施形態では、最大希釈度が規定希釈度まで希釈されると、他の元素の希釈度は必然的に規定希釈度よりも低くなる。具体的に、図14の前品種5と後品種1の組、および前品種10と後品種5の組では、最大希釈度をもつ元素以外の全ての元素(6つの元素)を追加投入することになる。
続いて、ステップS28では、前記ステップS27において特定された元素の数と、図11に示す1元素投入時間(本実施形態では10分)とに基づいて、各元素を追加するための時間(成分追加時間)を計算する。具体的に、図14の前品種5と後品種1の組については、追加投入する元素数が6であるため、元素数6に成分追加時間10分を乗じた60分が成分追加時間として算出される。
続いて、ステップS29では、希釈後組成計算部43によって、処理順序記憶部42に記憶されている複数の作業の中から、一の作業とこれに続く他の作業との組を全て抽出したか否かが判断される。この判断の結果、全ての組の抽出が完了していない場合(NO)には、次の組に対しステップS22ないしステップS28の各処理を実行すべく、ステップS29の処理に続いて処理がステップS22の処理に戻される。一方、前記判断の結果、全ての組の抽出が完了している場合(YES)には、ステップS29の処理に続いてステップS30の処理が実行される。
ステップS30では、スケジュール作成部47によって、処理順序記憶部42に記憶されている複数の作業における処理順序に対し、段取り替え条件判断部44によって段取り替え処理(本例では炉洗い処理および元素追加処理)が必要である場合に、段取り替え時間計算部46で計算された段取り替え時間の段取り替え処理工程を挿入することによって、段取り替え処理を考慮した複数の製品における複数の作業についての生産計画(スケジュール)が作成される。
例えば、図13に示す前記例では、図12に示す各処理が実行されることによって、図15に示す結果が得られる。図15から分かるように、処理順1番目における製品No.C1の品種5の製品を製造する作業と処理順2番目における製品No.C2の品種1の製品を製造する作業との間に、希釈時間が4(6時間×0.67)時間および成分追加時間が1(6×10分)時間である段取り替え処理工程が挿入される。また、処理順7番目における製品No.C7の品種10の製品を製造する作業と処理順8番目における製品No.C8の品種5の製品を製造する作業との間に、希釈時間が4.8(6時間×0.8)時間及び成分追加時間が1(6×10分)時間である段取り替え処理工程が挿入される。
そして、希釈処理工程が不要である作業間には、成分追加時間に係る段取り替え処理工程が挿入される。具体的に、処理順2番目に係る作業と処理順3番目に係る作業との間、処理順3番目に係る作業と処理順4番目に係る作業との間、処理順4番目に係る作業と処理順5番目に係る作業との間、処理順5番目に係る作業と処理順6番目に係る作業との間、処理順6番目に係る作業と処理順7番目に係る作業との間、処理順8番目に係る作業と処理順9番目に係る作業との間、及び処理順9番目に係る作業と処理順10番目に係る作業との間に、成分追加時間が1.2(7×10分)時間である段取り替え処理工程が挿入される。
そして、このように作成された生産計画がスケジュール作成部47によってスケジュール記憶部48に記憶され、また、ガントチャートで出力部12に出力される。例えば、図13に示す前記例では、図16に示すガントチャートが出力部12に表示される。
このように本実施形態における生産計画作成装置S2によれば、希釈後残留物に含まれる各成分の希釈度が予め設定された規定希釈度を超えるか否かによって段取り替え処理の要否を判断することができる。ここで、生産設備の容量に対応する量(本実施形態では20ton)の主成分を加えることにより残留物を希釈し、この希釈後残留物を基準としているのは、一の作業の終了後に他の作業に移行する際には、必ず当該他の作業で製造される製品の主成分を生産設備の容量を満たす分だけチャージすることが行われているため、このチャージ後の希釈後残留物を基準としてさらに希釈が必要であるか否かを判断する必要があるためである。そして、希釈後残留物に含まれる各成分の濃度を、他の作業で製造される製品に含まれる成分の濃度(目標となる濃度)で除した希釈度が予め設定された規定希釈度を超えるときに段取り替え処理が必要であると判断することができる。
前記実施形態のように、段取り替え時間計算部46を備えた構成によれば、段取り替え処理時間を求めることが可能となり、この段取り替え処理時間の段取り替え処理工程を反映した生産計画を作成することができる。
前記実施形態のように、段取り替え時間計算部46が希釈時間計算部46aを備えた構成によれば、最大希釈度を規定希釈度とするための希釈時間を計算することにより、全ての成分の希釈度を規定希釈度以下とするための時間を特定することができる。なぜなら、各成分の希釈度のうち最も大きな希釈度を規定希釈度に希釈すれば、必然的に他の成分の希釈度も規定希釈度以下に希釈されることになるためである。
前記構成のように、前記段取り替え時間計算部46が成分追加時間計算部46bを備えた構成によれば、一の作業からこれに続く他の作業に移行する際に要する成分の追加処理に要する成分追加時間も加味した段取り替え処理時間を計算することができるため、より正確な生産計画を作成することができる。
なお、上述した図9〜図16に示す生産計画作成装置S2では、最大希釈度をもつ元素を規定希釈度まで希釈するための希釈時間だけでなく、元素の追加に要する時間である成分追加時間も考慮して段取り替え時間を算出しているが、成分追加時間については必須ではなく少なくとも希釈時間を段取り替え時間として算出すればよい。
一方、上述した図1〜図15に示す生産計画作成装置Sでは、炉洗い時間のみを段取り替え時間として算出しているが、この生産計画作成装置Sにおいても成分追加時間を加味した段取り替え時間を算出することができる。
具体的に、生産計画作成装置Sでは、図6に示すように、残留物に含まれる全ての元素濃度が、後品種の規格である元素濃度を下回るための炉洗い回数Nを特定することとしているため、この炉洗い回数Nの実行後においては全ての元素濃度が後品種の元素濃度を下回り、これら全ての元素を追加することを要することになる。したがって、段取り替え時間計算部6(図1参照)により、全ての元素数(元素A〜Gの7つ)に1元素を追加するための時間(例えば、10分)を乗じた時間(70分)を成分追加時間として算出させることができる。ただし、この場合には、図1に示す設備マスタ記憶部31に対し、図3に示す設備マスタテーブル32内のデータとして、図11に示す1元素投入時間(10分)を追加することを要する。
また、前記生産計画作成装置Sにおいても、図6に示す後品種の規格である各元素A〜Gの濃度に公差が設定されている場合がある。この場合には、N回後の炉洗いが行われた後に、2以上の元素が前記公差範囲内に収まることもあり得るため、炉洗いをN回行った後の各元素A〜Gの濃度が後品種の規格である各元素A〜Gの濃度未満であるか否かを判定し、前記濃度未満である元素のみを追加することとし、この追加作業に要する時間を成分追加時間として算出することもできる。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。