JP2010243215A - 超臨界流体クロマトグラフィー装置及びその密度調整方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明にかかる超臨界流体クロマトグラフィー装置は、移動相を流通する入口及び出口を有し、充填剤が充填された1つ以上のカラムからなる成分分離手段と、前記成分分離手段の入口と出口との間に負の温度勾配を与える温度調節手段と、
を備え、前記温度調節手段によって前記成分分離手段内における超臨界流体及び試料の密度が調整されることを特徴とする。
【選択図】 図3
Description
特に、超臨界二酸化炭素を用いた場合では、流体の粘性が低いため流速を上げて短時間で分析することが可能であり、有機溶媒使用量が少ないなどの特徴がある。このため、環境負荷の小さい分析手法として使用されている。
この点において、移動相に液化炭酸と少量の有機溶媒を用いるSFCにおいては、カラムにかかる圧力はUHPLCに比べて低くなる。また、超臨界流体の状態では拡散係数が液体よりも高く、粘度も低くなるため、UHPLCに比べて線流速を早くすることができ、これにより高分離を維持したまま、更なる高速分析が可能になる。
特に、微粒子充填カラムを用いたSFCにおいて、従来のようにカラム全体で温調した条件では、カラムの入口と出口に密度変化が生じ、期待したカラム性能を得ることができなかった。つまり、カラム内における移動相の圧力変化に伴って移動相の密度も変化し、その結果溶出力が連続的に変化してしまう。例えば、カラム内の圧力が「出口側よりも入口側で高い」状態では、密度も「出口側よりも入口側で高い」状態となり、したがって溶出力も「出口側よりも入口側で高い」状態となる。この溶出力の変化が、カラム内での成分の移動及び分離に悪影響を及ぼしていると考えられた。
本発明は上記の問題に鑑みなされたものであり、カラムにおける移動相の密度が調整され、試料成分の溶出力に著しく優れた超臨界流体クロマトグラフィー装置及びその方法を提供することを目的とする。
を備え、前記温度調節手段によって前記成分分離手段内における超臨界流体及び試料の密度が調整されることを特徴とする。
また、前記装置において、前記温度調節手段が、前記成分分離手段の入口に接続し、該手段へ超臨界流体及び試料を導入する流路に設置されたヒートコイルと、前記ヒートコイルを含む流路を加熱するオーブンと、を含むことが好適である。
また、前記装置において、さらに、前記成分分離手段の出口側に設置されたヒーターユニットを含むことが好適である。
また、前記装置において、前記成分分離手段が2つ以上のカラムから構成され、且つ、前記温度調節手段が、各カラムを加熱するオーブンを含むものであることが好適である。
また、前記方法において、前記成分分離手段の入口と出口との間の負の温度勾配による温度差が、5〜50℃であることが好適である。
本発明にかかる超臨界流体クロマトグラフィー装置は、成分分離手段内に負の温度勾配が生じるように温度調節手段が設置された構成を有する。
本願において成分分離手段とは、超臨界流体クロマトグラフィーにおける移動相が流通する入口及び出口を両端に有しているカラムを示す。前記カラムとしては、キャピラリーカラム及び充填カラムといったクロマトグラフィー用カラムの使用が好ましく、そのカラム長さや内径は測定試料や測定条件によって適宜設定することが可能である。前記カラムは、クロマトグラフィー測定に用いられる充填剤を管内に充填し、成分分離手段として一般のクロマトグラフィー用カラムと同様に接続して本発明にかかる装置に設置することができる。超臨界流体クロマトグラフィー装置に設置された前記成分分離手段は、入口から導入される移動相を出口に向けて流通し、使用する充填剤の特性にしたがって、移動相に溶解した試料を成分ごとに分離する。
成分分離手段は、単独のカラム、または2本以上のカラムが連結された構成体のいずれの形態としてもよい。例えば、成分分離手段としてクロマトグラフィー用カラムを用いる場合、図1〜図3に示すように1本のカラムを成分分離手段としてもよく、図4のように2本のカラムを適当な流路等を用いて接続させたものを、全体として成分分離手段としてもよい。
入口と出口は、例えば、成分分離手段が単独のカラムである場合は、そのカラムの入口と出口が成分分離手段の入口及び出口を示す。つまり、この場合、同一カラム内において、出口側よりも入口側が高くなるような温度勾配をつけるということになる。
一方、成分分離手段が2本以上カラムを連結した構成体である場合は、測定時に移動相が初めに流入するカラムの入口が成分分離手段の入口となり、移動相が最後に流出するカラムの出口が成分分離手段の出口となる。このような構成では、同一のカラム内に温度勾配を与えることは勿論、カラム単位で温度を変えることで手段全体に勾配を設けることも可能となる。例えば、入口側のカラム全体の温度を60℃とし、出口側のカラム全体を40℃とした場合、それぞれのカラム内温度は一定であるが、カラム構成体からなる成分分離手段としては、出口側よりも入口側が高い温度勾配が与えられていることになる。
前記温度調節手段は、成分分離手段のカラム構成や、要求される温度勾配パターンによってヒーターの種類や設置個所等を適宜調整することができる。なお、温度調節手段の設置は、上記したカラムの温調が適切に行なわれるよう、使用する温度調整手段の構造及び特性に応じて行えばよい。
以下に、このようにして得た本発明にかかる超臨界流体クロマトグラフィー装置の構成例をいくつか挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
カラム導入前の移動相の加熱によってカラムの温調を行なう構成システムを図1に示す。
図1において、液化二酸化炭素ボンベ1から、流路を通じて液化二酸化炭素送液ポンプ2へ送出された液化二酸化炭素は、該ポンプ及び全自動背圧調整弁10により臨界圧力以上に加圧され、超臨界流体の状態となる。同時に、補助溶媒(モディファイア)である有機溶媒3もまた、モディファイア溶媒送液ポンプ4へ送出され、加圧されたのち先の超臨界流体と合流及び混合される。これらの移動相は、プレヒートコイル5において臨界温度以上の温度で加熱されたのち、インジェクタ6から導入された試料を溶解し、充填剤を詰めたカラム8に導入される。この工程は、オーブン7内で行なわれ、移動相はカラム8に導入される直前まで臨界温度以上の温度で加熱される。
このように、移動相は十分に加熱されてカラム8に導入されるため、該カラムの入口側は加熱された移動相に応じた温度となる。そして、その後移動相の温度はカラム8内を流通する間に徐々に降下し、移動相は導入(入口)の際よりも低温で流出(出口)することとなる。よって、結果的にカラム8の入口側と出口側には、流通する移動相の温度変化に応じた負の温度勾配が生じる。
移動相に溶解し、カラム8において分離された各試料成分は、カラム溶出後、検出器9に送られて検出される。検出器9としては、フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR),紫外可視分光光度計(UV)などの光学的検出器、MS、CAD、ELSDなどのイオン化検出器などが適用可能であるが、特に、光学的検出器においてはセルが高耐圧仕様であって、高速化した測定に対応し得る機器を用いることが好適である。また、測定中の構成システム内の圧力は、全自動背圧調整弁10によって移動相の臨界圧力以上に維持される。
つまり、本構成においては、カラム8が成分分離手段、プレヒートコイル5及びオーブン7が温度調節手段に相当する。
カラム導入前の移動相の加熱と、カラムの直接的な加熱とによってカラムの温調を行なう構成システムを図2に示す。
図2において、移動相(二酸化炭素及び補助溶媒)及び試料をカラムへ導入し、分離後に各成分を検出器9において検出するに至る構成及びプロセスは前述の構成例1と同様である。
ただし、図2に示す本構成では、カラム8がオーブン7に収納されおり、試料の分離は加熱下にて行われる。さらに、カラム8の入口側にはヒーターユニット11が設置されており、該カラムの入口側はオーブン内よりも高い温度で加熱された状態にある。
すなわち、プレヒートコイル5によって臨界温度以上に加熱された移動相は、試料導入後、(カラム8の入口をヒーターユニット11で加熱することによって)加熱されてからカラムへ流入する。その後、前記移動相の温度は、カラム8内を流通する間にオーブン7の温度まで徐々に降下し、出口から流出する際には入口で加熱された温度よりも低温となる。よって、カラム8の入口側と出口側には、出口側よりも入口側が高い負の温度勾配が生じることになる。
つまり、本構成においては、カラム8が成分分離手段、プレヒートコイル5、オーブン7及びヒーターユニット11が温度調節手段に相当する。
カラム導入前の移動相の加熱と、カラムの直接的な加熱とによってカラムの温調を行なう別の構成システムを図3に示す。
図3において、移動相(二酸化炭素及び補助溶媒)及び試料をカラムへ導入し、分離後に各成分を検出器9において検出するに至る構成及びプロセスは前述の構成例1と同様である。
ただし、図3に示す本構成では、カラム8の入口側及び出口側にそれぞれヒーターユニット11−1及び11−2が設置され、それぞれ移動相の臨界温度以上であって、入口側が出口側よりも高温となるように設定されている。
すなわち、プレヒートコイル5によって臨界温度以上に加熱された移動相は、試料導入後、(カラム8の入口をヒーターユニット11−1で加熱することによって)加熱されてからカラムへ流入する。その後、移動相はさらに出口のヒーターユニット11−2によって前記ユニット11−1よりも低温で加熱ないし冷却されてカラムより流出する。よって、カラム8の入口側と出口側には、出口側よりも入口側が高い負の温度勾配が生じることとなる。
つまり、本構成においては、カラム8が成分分離手段、プレヒートコイル5、ヒーターユニット11−1及び11−2が温度調節手段に相当する。
複数のカラムをそれぞれ異なる温度で加熱することによって、成分分離手段全体に温度勾配を付与する構成システムを図4に示す。
図4において、移動相(二酸化炭素及び補助溶媒)及び試料をカラムへ導入し、分離後に各成分を検出器9において検出するに至る構成及びプロセスは前述の構成例1と同様である。
ただし、図4に示す本構成においては、第一のカラム8−1の下流に第二のカラム8−2が接続され、各カラムはそれぞれオーブン7−1及び7−2に収納される。また、前記オーブン7−1内には、第一のカラム8−1とともに、該カラム上流に位置するプレヒートコイル5及びインジェクタ6を含む構成が収納することができる。
前記オーブン7−1及び7−2の温度設定は、下流に設置された第二のカラムを収納するオーブン7−2よりも、上流の第一のカラムを収納するオーブン7−1の方を高温とする。
すなわち、本構成は、前述の構成例1〜3のように1つのカラム内に温度勾配を作るというより、複数のカラムを一つの構成体とみなし、該構成体内に温度勾配を設けるものである。つまり、例えば、図4においてオーブン7−1の設定温度を60℃、オーブン7−2の設定温度を40℃とすると、各カラム内に温度勾配は生じないが、カラム8−1及び8−2からなる構成体としては、移動相の出口側よりも入口側が高くなった温度勾配を有することになる。勿論、構成体として温度勾配が達成される限り、任意の温度調節手段を用いて各カラム内に温度勾配を設けることも可能である。
なお、図4において、オーブン7−1及び7−2が同じ温度設定である場合であっても、プレヒートコイル5の設定温度をオーブンの温度より高く設定することによって、前記構成体に温度勾配を与えることが可能である。このような場合、カラム7−1入口には、プレヒートコイル5に加熱されてオーブン設定温度よりも高温の移動相が流入するが、この移動相温度はカラム7−2出口に至る間にオーブン設定温度まで徐々に降下する。したがって、カラム8−1及び8−2の構成体には、全体として出口側よりも入口側の方が高い温度勾配が生じることとなる。
つまり、本構成においては、カラム8−1及び8−2が成分分離手段、プレヒートコイル5、オーブン7−1及び7−2が温度調節手段に相当する。
このような超臨界流体クロマトグラフィーにおける移動相の溶解能力は、超臨界流体の特性上、移動相の密度に依存する。そのため、超臨界流体クロマトグラフィーでは、移動相の密度に影響を与える温度と圧力の制御が成分の溶出力を左右する重要な条件となる。つまり、温度と圧力の制御により密度を最適条件に調整することが、良好な分離・測定を可能にすると考えられる。
従来、超臨界流体クロマトグラフィーは、成分分離手段(カラム)をオーブン内に収納し、該手段全体を一定温度に加熱した条件下で行われてきた。このように一定温度に維持されたカラムで分離を行うと、カラムに詰められた充填剤粒子の径やカラムの長さなどによって流路抵抗が生じ、カラム内における移動相の圧力(カラム圧力)は出口側よりも入口側で高くなる傾向がある。さらに超臨界流体の場合、液体や気体と異なり、移動相の圧力変化に応じて大きな密度勾配が引き起こされるため、移動相の溶出能力は不安定なものとなる。これに対し、本発明にかかる装置及び方法は、上記構成例1〜4に示すように、前記カラム圧力の変化に応じた温度勾配を設けることによって、密度の変化を防ぎ、安定且つ精度の高い測定を可能とする。
特に、本発明においては、充填剤が充填された1つ以上のカラムからなる成分分離手段の入口と出口との間の温度差を、5〜50℃とすることが好適である。前記温度差で入口から出口に負の温度勾配を設けることにより、成分分離手段における移動相の密度を十分に調整することができる。
以下、実施例によって本発明にかかる装置及び方法の測定効果を示す。
<試験方法>
図3に示す装置において、液化二酸化炭素ボンベ1から送られた二酸化炭素を、送液ポンプ2において加圧送出し、有機溶媒3として用いたメタノールを、モディファイア溶媒送液ポンプ4において加圧送出した。装置内の圧力は、全自動背圧調製弁10によって、二酸化炭素の臨界圧力を超える20MPaに制御した。
ポンプより送出された二酸化炭素とメタノールからなる移動相(二酸化炭素/メタノール(体積比)=1/0.1)を、プレヒートコイル5において二酸化炭素の臨界温度を超える温度で加熱し、その後、インジェクタ6よりサンプルを注入して前記移動相へ溶解させた。サンプルは、トルエン、m−ニトロアニリン、カフェインの混合物を用いた。
続いて、前記サンプルを溶解した移動相をカラム8(粒径1.8μmシリカゲルカラム:2.1mmI.D.×50mmL)に導入し、該カラムから溶出した各成分を、検出器9(UV検出器)において検出した。
カラム8に設置されたヒーターユニットは、カラム入口側(ヒーターユニット11−1)を60℃、出口側(ヒーターユニット11−2)を40℃に設定し、入口側−出口側の温度差が約20℃となるように温度勾配を設けた。また、カラム到達前に十分温調されるよう、プレヒートコイル5の設定温度は80℃とした。また、装置内の温度が必要以上に低下しないよう、プレヒートコイル5からカラムの入口までの配管を断熱し保温した。
また、本実施例のピーク2及びピーク3について、Van Deemterの式による理論段高H(μm)及び線流速u(mm/sec)をプロットした。得られたH−u曲線をそれぞれ図7及び図8(温度勾配あり)に示す。
二酸化炭素/メタノールのポンプ流量を2.0/0.2mL/minとした比較例1で得られたクロマトグラムを図5に、0.6/0.06mL/minとした比較例2で得られたクロマトグラムを図6に示す。実施例と同様、図中のピーク番号は、ピーク1がトルエン、ピーク2がm−ニトロアニリン、ピーク3がカフェインを示す。
また、本比較例のピーク2及びピーク3についてプロットしたH−u曲線を、それぞれ図7及び8(温度勾配なし)に示す。
また、図5及び6に示す結果から、カラムに温度勾配を与えることによりクロマトグラムのピーク形状が改善されることも明らかである。
2 液化二酸化炭素送液ポンプ
3 有機溶媒
4 モディファイア溶媒送液ポンプ
5 プレヒートコイル
6 インジェクタ
7 オーブン
8 カラム
9 検出器
10 全自動背圧調整弁
11 ヒーターユニット
Claims (7)
- 移動相を流通する入口及び出口を有し、充填剤が充填された1つ以上のカラムからなる成分分離手段と、
前記成分分離手段の入口と出口との間に負の温度勾配を与える温度調節手段と、
を備え、
前記温度調節手段によって前記成分分離手段内における移動相の密度が調整されることを特徴とする超臨界流体クロマトグラフィー装置。 - 前記温度調節手段が、
前記成分分離手段の入口に接続し、該手段へ移動相を導入する流路に設置されたヒートコイルと、
前記ヒートコイルを含む流路を加熱するオーブンと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の超臨界流体クロマトグラフィー装置。 - 前記温度調節手段が、
前記成分分離手段の入口側に設置されたヒーターユニットを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の超臨界流体クロマトグラフィー装置。 - さらに、前記成分分離手段の出口側に設置されたヒーターユニットを含むことを特徴とする請求項3に記載の超臨界流体クロマトグラフィー装置。
- 前記成分分離手段が2つ以上のカラムから構成され、且つ、
前記温度調節手段が、
各カラムを加熱するオーブンを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の超臨界流体クロマトグラフィー装置。 - 充填剤が充填された管からなる成分分離手段の入口から出口へ向けて移動相を流通させる工程を含む超臨界流体クロマトグラフィーにおいて、
前記工程中に前記成分分離手段の入口と出口との間に負の温度勾配を与えることにより、
前記成分分離手段内における移動相の密度を調整することを特徴とする超臨界流体クロマトグラフィーにおける密度調整方法。 - 前記成分分離手段の入口と出口との間の負の温度勾配による温度差が、5〜50℃であることを特徴とする請求項6に記載の超臨界流体クロマトグラフィーにおける密度調整方法。
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