(第1の実施形態)
以下、本発明を発進装置の一種であるトルクコンバータに具体化した第1の実施形態を図1〜図3を参照しながら説明する。なお、以下における本明細書中の説明において、「前後方向」をいう場合には図中における矢印に示す前後方向を示すものとする。
図1に示すように、トルクコンバータ10は、駆動源としてのエンジンの出力軸11に接続されたフロントカバー12と、フロントカバー12の外周側端部に溶接により固着されたポンプカバー13とによりコンバータハウジング14を構成している。コンバータハウジング14の内部には、クラッチ機構としてのロックアップクラッチ15、ダンパ機構としてのダンパ装置16、及び摩擦接触機構17が収容されると共に、作動油としてのATF(オートマチック・トランスミッション・フルード)が充填されている。
フロントカバー12は、前側が閉塞し且つ後側が開口した有底略円筒状をなすと共に、その底壁の略中心部にエンジンの出力軸11が連結されることにより、エンジンの出力軸11の回転駆動に基づき回転するようになっている。ポンプカバー13は、フロントカバー12の後側の開口を閉塞可能な略円環状をなしていると共に、その中心部には、図示を省略した変速機構のオイルポンプの駆動軸に連結される円筒状の支持カバー18が固定されている。すなわち、オイルポンプには、エンジンの出力軸11の回転がフロントカバー12、ポンプカバー13、及び支持カバー18を介して伝達されるようになっている。
また、図1に示すように、コンバータハウジング14内において、ポンプカバー13の前面側(フロントカバー12に相対する面側)には、羽根車形状をなすポンプインペラ19がポンプカバー13及びフロントカバー12と一体回転するように固着されている。また、コンバータハウジング14内には、ポンプインペラ19と前後方向で対向する態様で羽根車形状をなすタービンランナ20が、その内周側をピン21によりタービンハブ22の鍔部22aに連結されることにより、該タービンハブ22に対してスプライン嵌合された変速機構の入力軸24と一体回転するように配置されている。
さらに、コンバータハウジング14内において、ポンプインペラ19とタービンランナ20との間には、ステータ25が配設されており、その内部には一方向の回転を阻止するように機能するワンウェイクラッチ26が設けられている。そして、ステータ25は、ポンプインペラ19とタービンランナ20との間の速度差に基づき、ワンウェイクラッチ26によってコンバータハウジング14内のATFの流動方向を調整している。
ロックアップクラッチ15は、コンバータハウジング14内におけるフロントカバー12とタービンランナ20との間に配置され、クラッチ作動することによりエンジンの出力軸11と変速機構の入力軸24とを直結可能とするように構成されている。ロックアップクラッチ15は、金属板を加工することにより形成された円環状のロックアップクラッチピストンであるクラッチ板27を有している。そして、このクラッチ板27は、その内周側端部27aがタービンハブ22の軸部22bの外周面上に回転自在に支持されている。また、クラッチ板27の外周側前面には、上記フロントカバー12の後面に対向するように摩擦部材28が固着されており、必要に応じてフロントカバー12に対して摩擦力を作用させて接触することが可能となっている。また、クラッチ板27は、シールリングc1のシール機能により、クラッチ板27の前側(フロントカバー12側)の油圧と後側(ポンプカバー13側)の油圧との油圧差に従って軸方向に移動自在となっている。
具体的には、クラッチ板27から見て前側の空間2aに対して、変速機構の入力軸24の中心を軸線方向(前後方向)に延びるように形成された油路a1を介してATFが供給された場合、クラッチ板27から見て前側の空間2aの方がクラッチ板27から見て後側の空間2bよりも油圧が高くなる。そのため、クラッチ板27は後側に押圧されることにより、摩擦部材28とフロントカバー12とを解離状態にする。つまり、ロックアップクラッチ15は非係合状態になる。
一方、クラッチ板27から見て後側の空間2bに対して、ポンプインペラ19とタービンランナ20との間の空間域a2を介してATFが供給された場合、前側の空間2aと後側の空間2bとの間に差圧を生じる。そして、その差圧に従って徐々にクラッチ板27が前側に押圧されることにより、摩擦部材28がフロントカバー12に対して回転差を持って摺接する滑り係合状態(スリップ係合状態ともいう。)になる。
また、クラッチ板27から見て後側の空間2bに対してポンプインペラ19とタービンランナ20との間の空間域a2を介してATFが更に供給された場合、前側の空間2aと後側の空間2bとの差圧はより大きくなる。そして、この差圧に従ってクラッチ板27が前側により強く押圧されることで、摩擦部材28がフロントカバー12に対して一体回転するように摺接する完全係合状態になる。
ダンパ装置16は、エンジン側に連結される円環状のドライブプレート29と、変速機構側に連結される円板状のドリブンプレート30と、両プレート29,30間でドライブプレート29の回転力をドリブンプレート30に伝達するダンパスプリング31とを備えている。ドライブプレート29は、その外周側端部に係止爪(図示略)を形成しており、その係止爪がクラッチ板27の外周側端部に形成された係止孔(図示略)に係止することにより、クラッチ板27に対して軸方向に移動自在であると共に、回転方向に固定されている。
ドリブンプレート30は、ドライブプレート29を軸方向の両側から挟持するように支持する一対のプレート部材30a,30bにより構成されている。この一対のプレート部材30a,30bは、互いに軸方向に重合した状態で図示しないピンによって締結されると共に、軸方向後側のプレート部材30bの内周側端部がタービンハブ22の鍔部22aに対してタービンランナ20と共にピン21により連結されている。
ダンパスプリング31は、一対のプレート部材30a,30bの間に形成された長穴形状の収容空間に収容されており、その伸縮方向となる長手方向の一端がドライブプレート29に当接すると共に、その伸縮方向となる長手方向の他端がドリブンプレート30に当接するように配置されている。そのため、クラッチ板27が摩擦部材28を介してフロントカバー12に対して接触した係合状態(滑り係合状態及び完全係合状態)となった場合、エンジンの出力軸11からの回転駆動は、ダンパ装置16内のドライブプレート29、ダンパスプリング31、及びドリブンプレート30を介して変速機構の入力軸24に伝達される。
次に、本発明の要部となる摩擦接触機構17について詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、摩擦接触機構17は、横断面視略扇形状の金属体からなる複数(本実施形態では6つ)の中間部材32により構成されている。これらの中間部材32は、クラッチ板27の内周側端部27aに対して径方向外側から相対回動不能に嵌挿された略円環状の第1回転部材としてのギア部材33の外周面と、第2回転部材としてのタービンハブ22の鍔部22aの外周縁から前方に向けて略水平に延設された筒部22cの内周面との間の略円環状のスペース内に周方向へ等間隔に配置されている。
また、各中間部材32の内周縁には径方向外側に向けて陥入した凹部34がそれぞれ形成されており、これらの凹部34が、ギア部材33の外周面上に周方向に沿って等間隔に形成された複数(本実施形態では6つ)の凸部35に対して個別に嵌合されることにより、ギア部材33とタービンハブ22の筒部22cとの間の空間内で周方向に位置決めされている。そして、本実施形態では、ギア部材33の凸部35及びタービンハブ22の筒部22cが摩擦接触機構17を径方向に挟持して支持する支持部として機能する。
なお、各中間部材32は、タービンハブ22の筒部22cに対して周方向に相対移動可能に配置されており、その外周面がタービンハブ22の筒部22cに対して周方向に摩擦摺動する摩擦面として機能する。また、各中間部材32は、凹部34の内壁面が、変速機構の入力軸24の回転軸線S1を中心とする円弧状の底面34aと、該底面34aから周方向両側に連なるように径方向と交差する方向に傾斜した側面34bとにより構成されている。
そして、各中間部材32は、その外周面がタービンハブ22の筒部22cを径方向に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触した状態では、凹部34の底面34aがギア部材33の凸部35に対して径方向に若干の隙間を介して離間すると共に、凹部34の側面34bがギア部材33の凸部35に対して周方向に微小隙間を介して離間した構成となっている。
そこで次に、以上のように構成されたトルクコンバータ10の作用につき、特にロックアップクラッチ15が滑り係合状態及び完全係合状態となる場合の摩擦接触機構17の作用に着目して以下説明する。
さて、ロックアップクラッチ15の滑り係合状態時には、クラッチ板27が不安定な摩擦摺動態様で回転するため、該クラッチ板27の振動及び該クラッチ板27に連結されたダンパ装置16の振動に起因したジャダー振動が発生し易く、このジャダー振動が変速機構の入力軸24に伝達されると、ドライブフィーリングが悪化する。そのため、こうしたジャダー振動が発生した場合は、該ジャダー振動が変速機構の入力軸24側に伝達されることを抑制することが望ましい。
この点、本実施形態では、ロックアップクラッチ15の滑り係合状態時に、ジャダー振動が変速機構の入力軸24側へ伝達されることを摩擦接触機構17が次のようにして抑制する。
すなわち、ロックアップクラッチ15の滑り係合状態時には、クラッチ板27から生じるジャダー振動に起因して、ダンパ装置16内のダンパスプリング31の固有振動数に近接した振動数のトルク変動がクラッチ板27を介してダンパ装置16に伝達される。この場合、そのトルク変動は、ダンパ装置16の共振作用によって大きく増幅されるため、ダンパ装置16の入力側(ドライブプレート29側)に連結されたクラッチ板27と、ダンパ装置16の出力側(ドリブンプレート30側)に連結されたタービンハブ22とが大きく相対回転する。すると、ギア部材33は、クラッチ板27に対して一体回転するように連結されるようになるため、クラッチ板27と共にタービンハブ22に対して大きく相対回転する。
ここで、図2に示すように、摩擦接触機構17を構成する各中間部材32は、エンジンの出力軸11からのトルクが伝達されて回転している状態では、その回転に応じた遠心力が慣性として径方向外側に向けて作用する。そのため、中間部材32は、タービンハブ22の筒部22cの内周面に対して径方向外側への押圧力を付与しつつ摩擦力を作用させて接触する。この点で、本実施形態のタービンハブ22は、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動に基づいて回転する回転部材のうち、中間部材32が径方向外側に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触する他方の回転部材として機能する。そして、中間部材32は、このタービンハブ22の筒部22cとの間の周方向に作用する摩擦力によって、タービンハブ22に連れ回るように一体回転するため、タービンハブ22と共にギア部材33に対して大きく相対回転する。
すると、図3(a)に示すように、ギア部材33は、その凸部35が中間部材32の凹部34との間に形成された微小隙間の角度範囲を上回るように、中間部材32に対して周方向(本実施形態では右周り方向)に大きく相対回転することにより、中間部材32の凹部34の側面34bに対して周方向に係合する。この点で、本実施形態のギア部材33は、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動に基づいて回転する回転部材のうち、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動状態が滑り係合状態に変遷した際に、中間部材32が周方向に係合する一方の回転部材として機能する。
また、この場合、ギア部材33の凸部35は、中間部材32に対して、径方向と交差する方向に傾斜した凹部34の側面34bを介して係合するようになっている。この点で、本実施形態の中間部材32では、凹部34の側面34bが、ギア部材33の凸部35に対して周方向に係合する係合面として機能する。そして、中間部材32の凹部34には、ギア部材33の凸部35からの応力F1が、該側面34bと直交する方向(即ち、周方向と交差する方向)に作用するため、中間部材32には、図3(a)にて点線で示すように、ギア部材33からの応力F1が、周方向成分F2及び径方向成分F3を共に含む態様で作用する。そして、中間部材32は、ギア部材33から作用する応力F1の径方向成分F3に従って、その外周面がタービンハブ22の筒部22cを径方向外側に押圧すると同時に、ギア部材33から作用する応力F1の周方向成分F2に従って、その外周面がタービンハブ22の筒部22cに対して周方向に摩擦摺動する。そのため、中間部材32では、タービンハブ22の筒部22cとの間で発生するヒステリシスが増大することにより、ジャダー振動が変速機構側に伝達されることが抑制される。
さらに、本実施形態の摩擦接触機構17では、エンジンの出力軸11から出力されるトルクが増大することに伴って、中間部材32とタービンハブ22との相対回転が大きくなった場合、ギア部材33の凸部35が、中間部材32の凹部34に対して作用させる応力F1の大きさが増大する。そのため、中間部材32は、その応力F1の増大分だけ、タービンハブ22の筒部22cを径方向に押圧する押圧力が増大する。したがって、クラッチ板27の回転速度が増加することに伴って、クラッチ板27から生じるジャダー振動の大きさが増大する場合であっても、その増大分に応じて、中間部材32がタービンハブ22の筒部22cを径方向外側に押圧する押圧力を増大させて、タービンハブ22との間で発生させるヒステリシスの大きさを増大させることにより、ジャダー振動を好適に減衰させることができる。
一方、ロックアップクラッチ15の完全係合状態時には、エンジンの出力軸11と変速機構の入力軸24とが直結状態となるため、エンジン内の燃料の爆発振動に基づくトルク変動が発生した場合、そうしたトルク変動が変速機構側にダイレクトに伝達されてドライブフィーリングを悪化させることがある。
この点、本実施形態では、ロックアップクラッチ15の完全係合状態時に、エンジンの爆発振動に基づくトルク変動が変速機構の入力軸24へ伝達されることを摩擦接触機構17が次のようにして抑制する。
すなわち、ロックアップクラッチ15の完全係合状態時には、エンジンの爆発振動に起因して、ダンパ装置16内のダンパスプリング31の固有振動数から大きく外れた振動数のトルク変動がクラッチ板27を介してダンパ装置16に伝達される。この場合、そのトルク変動は、ダンパ装置の減衰作用によって減衰されるため、ダンパ装置16の入力側(ドライブプレート29側)に連結されたクラッチ板27と、ダンパ装置16の出力側(ドリブンプレート30側)に連結されたタービンハブ22との回転差が低減される。すると、ギア部材33は、クラッチ板27に対して一体回転するように連結されているため、クラッチ板27と共にタービンハブ22に対して小さく相対回転する。
ここで、摩擦接触機構17を構成する各中間部材32は、その回転に応じて慣性として径方向外側に作用する遠心力に従って、タービンハブ22の筒部22cを径方向外側に押圧力を伴った摩擦力を作用させて接触する。そのため、中間部材32は、タービンハブ22の筒部22cとの間の摩擦面を介して周方向に作用する摩擦力によって、タービンハブ22に対して連れ回るように一体回転する。その結果、中間部材32は、タービンハブ22と共にギア部材33に対して小さく相対回転する。
すると、図3(b)に示すように、ギア部材33は、その凸部35が中間部材32の凹部34との間に形成された微小隙間の角度範囲内に収まるように、中間部材32に対して周方向に小さく相対回転する。そのため、ギア部材33の凸部35は、中間部材32の凹部34の内壁面に対して接触することはなく、クラッチ板27とタービンハブ22との間の回転差を吸収するように、中間部材32の凹部34の内壁面との間に形成された微小隙間内を周方向へ僅かに移動する。その結果、中間部材32は、その外周面がタービンハブ22の筒部22cを径方向外側に押圧した状態において、タービンハブ22の筒部22cに対して周方向に摩擦摺動するための応力がギア部材33から作用することはない。したがって、中間部材32は、依然として、タービンハブ22の筒部22cとの間の摩擦面を介して周方向に作用する摩擦力によって、タービンハブ22に対して連れ回るように一体回転するため、タービンハブ22との間でヒステリシスを発生させることはなく、エンジンの爆発振動が変速機構側へ増幅されて伝達されることを抑制することが出来る。
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、クラッチ板27とタービンハブ22との間に生じる捩り振動が、エンジンの爆発振動に起因する場合のように捩り角度が小さい捩り振動の場合には、ギア部材33の凸部35は、中間部材32の凹部34との間に所定の角度範囲で設定された微小隙間内を周方向に僅かに移動する。そのため、ギア部材33の凸部35は、中間部材32の凹部34の内壁面に接触することなく、クラッチ板27とタービンハブ22との間に生じる回転差を吸収するように、中間部材32の凹部34に対して周方向に相対回転する。その結果、中間部材32は、タービンハブ22を径方向に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触した状態で一体回転するようになっている。したがって、中間部材32は、捩り角度の小さな捩り振動に対して、タービンハブ22との間の摩擦面が摩擦摺動することはなく、タービンハブ22との間で発生させるヒステリシスが抑制されるため、エンジンからの爆発振動が変速機構側に伝達されることが低減される。
一方、クラッチ板27とタービンハブ22との間に生じる捩り振動が、ジャダー振動に起因する場合のように捩り角度が大きい捩り振動の場合には、ギア部材33の凸部35は、中間部材32の凹部34の内壁面に対して周方向に係合する。そのため、中間部材32は、ギア部材33と一体回転するため、クラッチ板27とタービンハブ22との間に生じる回転差によって、タービンハブ22を径方向に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触した状態で相対回転するようになっている。したがって、中間部材32は、捩り角度の大きな捩り振動に対して、タービンハブ22との間の摩擦面が周方向に摩擦摺動することにより、タービンハブ22との間で発生させるヒステリシスが増大するため、ジャダー振動が高効率に減衰される。
また、摩擦接触機構17を構成する各中間部材32は、タービンハブ22を径方向に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触する構成であるため、タービンハブ22を軸方向に押し付けて摩擦力を作用させる構成とした場合とは異なり、該摩擦接触機構17を軸方向に移動させるためのスペースを確保することが不要となる。したがって、上記構成の摩擦接触機構17を設ける場合であっても、軸方向の長大化を抑制して装置の小型化要請に応えることができる。
(2)本実施形態では、クラッチ板27とタービンハブ22との間に捩り振動が生じることにより、ギア部材33の凸部35が中間部材32の凹部34の側面34bに対して周方向に係合した場合、中間部材32の凹部34には、ギア部材33の凸部35からの応力F1が、径方向と交差する方向に傾斜した凹部34の側面34bを介して該側面34bと直交する方向(即ち、周方向と交差する方向)に作用する。すなわち、中間部材32には、ギア部材33からの応力F1が、径方向成分F3を含む態様で作用する。そのため、エンジンから出力されるトルクが増大することに伴って、クラッチ板27とタービンハブ22との間に生じる捩り振動の捩り角度が増大した場合には、ギア部材33の凸部35から中間部材32の凹部34に対して径方向に作用する応力F1の大きさが増大する。その結果、中間部材32は、タービンハブ22を径方向に押圧する押圧力が増大した状態で、タービンハブ22に対して周方向に摺動することにより、タービンハブ22との間で発生させるヒステリシスの大きさが増大する。したがって、クラッチ板27の回転速度が増加することに伴って、クラッチ板27から生じるジャダー振動の大きさが増大する場合であっても、その増大分に応じて、中間部材32がタービンハブ22を径方向に押圧する押圧力を増大させて、タービンハブ22との間で発生させるヒステリシスの大きさを増大させることにより、ジャダー振動を好適に減衰することができる。
(3)本実施形態では、ギア部材33及びタービンハブ22が摩擦接触機構17を径方向両側から挟持して支持する支持部材として兼用されるため、摩擦接触機構17の配置に伴って部品点数が増加することが抑制され、装置の小型化要請に寄与することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図4〜図8に基づき説明する。なお、第2の実施形態は、クラッチ板とタービンハブとの間で径方向に挟持されるように配置された摩擦接触機構の構成が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
図4及び図5に示すように、本実施形態の摩擦接触機構17は、クラッチ板27の内周側端部27aに対して径方向外側から押圧力を伴った摩擦力を作用させるように圧入された略円環状の弾性体からなる押圧部材としてのOリング37と、該Oリング37を介してクラッチ板27に対して一体回転するように径方向外側から嵌挿された略円環状の支持部材としてのギア部材38とから構成されている。そして、本実施形態のクラッチ板27は、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動に基づいて回転する回転部材のうち、Oリング37が常には径方向内側に挟圧して周方向に摩擦力を作用させて接触する他方の回転部材として機能する。
図5及び図6(a)に示すように、ギア部材38は、その内周面から径方向外側に陥入した略円環状の凹溝39を有しており、該凹溝39内には、Oリング37がギア部材38に対して相対回動不能に固定されている。また、ギア部材38には、その外周面から径方向外側に突出した複数(本実施形態では8つ)の凸部40が周方向に沿って等間隔に形成されている。
図5及び図6(b)に示すように、タービンハブ22は、その筒部22cの内周面に、径方向外側に陥入した複数(本実施形態では8つ)の凹部41が周方向に沿って等間隔に形成されている。そして、タービンハブ22は、これらの凹部41がギア部材38の各凸部40によって個別に嵌合されることにより、ギア部材38に対して周方向に位置決めされている。なお、タービンハブ22は、ギア部材38がクラッチ板27に対して嵌挿された状態では、各凹部41の底面41aが該凹部41に各々対応するギア部材38の凸部40に対して径方向に若干の隙間を介して離間すると共に、各凹部41の側面41bが該凹部41に各々対応するギア部材38の凸部40に対して周方向に微小隙間を介して離間した構成となっている。また、本実施形態では、クラッチ板27の内周側端部27a及びタービンハブ22の筒部22cが摩擦接触機構17を径方向に挟持して支持する支持部として機能する。
ここで、本実施形態のトルクコンバータ10では、ロックアップクラッチ15の滑り係合状態時には、ジャダー振動に起因して、エンジンの出力軸11に連結されたクラッチ板27と、変速機構の入力軸24に連結されたタービンハブ22とが大きく相対回転することにより、これらの部材の間に大きな捩り角度の捩り振動が生じる。この場合、Oリング37は、その内周面がクラッチ板27の内周側端部27aを径方向内側に挟圧して周方向に摩擦力を作用させて接触しているため、クラッチ板27との間の摩擦面を介して周方向に作用する摩擦力によって、クラッチ板27に対して連れ回るように一体回転する。また、ギア部材38は、Oリング37を相対回動不能に固定しているため、Oリング37と共にクラッチ板27と一体回転する。その結果、ギア部材38は、クラッチ板27と共にタービンハブ22に対して大きく相対回転する。
すると、図7(a)に示すように、ギア部材38の凸部40は、タービンハブ22の凹部41との間に形成された微小隙間の角度範囲θ1を上回るように、タービンハブ22に対して周方向(本実施形態では右回り方向)に大きく相対回転することにより、タービンハブ22の凹部41の側面41bによって周方向に係止される。この点で、本実施形態のタービンハブ22は、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動に基づいて回転する回転部材のうち、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動状態が滑り係合状態に変遷した際に、ギア部材38が周方向に係合する一方の回転部材として機能する。
そして、ギア部材38は、タービンハブ22に対する相対回転が規制されるため、該ギア部材38によって相対回動不能に固定されたOリング37が、ギア部材38と共にタービンハブ22に対して一体回転する。その結果、Oリング37は、タービンハブ22とクラッチ板27との間で生じる捩り振動に従って、タービンハブ22と共にクラッチ板27に対して相対回動するようになる。したがって、Oリング37は、その内周面がタービンハブ22の軸部22bを径方向内側に挟圧した状態で周方向に摩擦摺動することにより、タービンハブ22との間で発生するヒステリシスが増大するため、ジャダー振動が変速機構側に伝達されることが抑制される。
一方、ロックアップクラッチ15の完全係合状態時には、エンジンの爆発振動に基づくトルク変動に起因して、エンジンの出力軸11に連結されたクラッチ板27と、変速機構の入力軸24に連結されたタービンハブ22とが小さく相対回転することにより、これらの部材の間に小さな捩り角度の捩り振動が生じる。この場合、Oリング37は、その内周面がクラッチ板27の内周側端部27aを径方向内側に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触しているため、クラッチ板27との間の摩擦面を介して周方向に作用する摩擦力によって、クラッチ板27に対して連れ回るように一体回転する。また、ギア部材38は、Oリング37を相対回動不能に固定しているため、Oリング37と共にクラッチ板27と一体回転する。その結果、ギア部材38は、クラッチ板27と共にタービンハブ22に対して小さく相対回転する。
すると、図7(b)に示すように、ギア部材38の凸部40は、タービンハブ22の凹部41との間に形成された微小隙間の角度範囲θ1に収まるように、タービンハブ22に対して周方向に小さく相対回転する。そのため、ギア部材38の凸部40は、タービンハブ22の凹部41の内壁面に対して接触することはなく、クラッチ板27とタービンハブ22との間の回転差を吸収するように、凹部41の内壁面との間に形成された微小隙間内を周方向に僅かに移動する。その結果、Oリング37は、その内周面がタービンハブ22の軸部22bを径方向内側に挟圧した状態で、タービンハブ22の軸部22bとの間の摩擦面を介して周方向に作用する摩擦力によってタービンハブ22に対して連れ回るように一体回転する。したがって、Oリング37は、タービンハブ22との間でヒステリシスを発生させることはほとんどなく、エンジンの爆発振動が変速機構側に伝達されることが抑制される。
すなわち、摩擦接触機構17は、図8に示すように、クラッチ板27とタービンハブ22との間で生じる捩り振動の捩り角度が、ギア部材38の凸部40とタービンハブ22の凹部41との間に形成される微小隙間の角度範囲θ1の範囲内にある場合には、タービンハブ22との間でヒステリシスを発生させることがないため、相対的に小さなヒステリシストルク(第1ヒス)が得られる。一方、摩擦接触機構17は、クラッチ板27とタービンハブ22との間に生じる捩り振動が、角度範囲θ1の範囲外にある場合には、タービンハブ22との間でヒステリシスを発生させるため、相対的に大きなヒステリシストルク(第2ヒス)が得られる。したがって、本実施形態の摩擦接触機構17によれば、クラッチ板27とタービンハブ22との間に生じる捩り振動の捩り角度の大きさに応じて、タービンハブ22との間で発生させるヒステリシスの大きさを段階的に切り替えることができる。
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)に加えて以下に示す効果を得ることができる。
(4)本実施形態では、Oリング37が、クラッチ板27を径方向に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触する摩擦材としての機能と、該摩擦材を径方向に付勢する付勢部材としての機能を兼備した構成となっているため、部品点数を削減することができ、結果として、装置全体の小型化要請に応えることができる。
(5)本実施形態では、クラッチ板27及びタービンハブ22が摩擦接触機構17を径方向両側から挟持して支持する支持部材として兼用されるため、摩擦接触機構17の配置に伴って部品点数が増加することが抑制され、装置の小型化要請に寄与することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を図9及び図10に基づき説明する。なお、第3の実施形態は、摩擦接触機構がタービンハブの筒部を径方向に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触する点が第2の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第2の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第2の実施形態と同一又は相当する構成については同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
図9及び図10に示すように、本実施形態の摩擦接触機構17は、タービンハブ22の筒部22cを径方向内側から押圧して周方向に摩擦力を作用させるように圧入された略円環状の弾性体からなるOリング37と、該Oリング37を介してタービンハブ22の筒部22cに対して一体回転するように径方向内側から嵌挿された略円環状の樹脂体からなるギア部材38とから構成されている。そして、本実施形態のタービンハブ22は、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動に基づいて回転する回転部材のうち、Oリング37が常には径方向外側に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触する他方の回転部材として機能する。
ギア部材38は、その内周面から径方向外側に陥入した複数(本実施形態では8つ)の凹部43が、周方向に沿って等間隔に形成されている。また、クラッチ板27は、その内周側端部27aに、径方向外側に突出した複数(本実施形態では8つ)の凸部44が周方向に沿って等間隔に形成されている。そして、クラッチ板27は、これらの凸部44がギア部材38の各凹部43によって個別に嵌合することにより、ギア部材38に対して周方向に位置決めされている。
ここで、本実施形態のトルクコンバータ10において、ロックアップクラッチ15の滑り係合状態時に、ジャダー振動に起因して、エンジンの出力軸11に連結されたクラッチ板27と、変速機構の入力軸24に連結されたタービンハブ22とが大きく相対回転したとする。この場合、Oリング37は、その外周面がタービンハブ22の筒部22cを径方向外側に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触しているため、タービンハブ22との間の摩擦面を介して周方向に作用する摩擦力によって、タービンハブ22に対して連れ回るように一体回転する。また、ギア部材38は、Oリング37を相対回動不能に固定しているため、Oリング37と共にタービンハブ22と一体回転する。その結果、ギア部材38は、タービンハブ22と共にクラッチ板27に対して大きく相対回転する。
すると、ギア部材38の凹部43は、クラッチ板27の凸部44との間に形成された微小隙間の角度範囲を上回るように、クラッチ板27に対して周方向に大きく相対回転することにより、クラッチ板27の凸部44によって周方向に係止される。この点で、本実施形態のクラッチ板27は、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動に基づいて回転する回転部材のうち、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動状態が滑り係合状態に変遷した際に、ギア部材38が周方向に係合する一方の回転部材として機能する。
そして、ギア部材38は、クラッチ板27に対する相対回転が規制されるため、該ギア部材38によって相対回動不能に固定されたOリング37が、ギア部材38と共にクラッチ板27に対して一体回転する。その結果、Oリング37は、タービンハブ22とクラッチ板27との間で生じる捩り振動に従って、クラッチ板27と共にタービンハブ22に対して相対回動するようになる。したがって、Oリング37は、その外周面がタービンハブ22の筒部22cを径方向外側に押圧した状態で、タービンハブ22の筒部22cに対して周方向に摩擦摺動することにより、タービンハブ22との間で発生するヒステリシスが増大するため、ジャダー振動が変速機構側に伝達されることが抑制される。
一方、ロックアップクラッチ15の完全係合状態時に、エンジンの爆発振動に基づくトルク変動に起因して、エンジンの出力軸11に連結されたクラッチ板27と、変速機構の入力軸24に連結されたタービンハブ22とが小さく相対回転したとする。この場合、Oリング37は、その外周面がタービンハブ22の筒部22cを径方向外側に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触しているため、タービンハブ22の筒部22cとの間の摩擦面を介して周方向に作用する摩擦力によって、タービンハブ22に対して連れ回るように一体回転する。また、ギア部材38は、Oリング37を相対回動不能に固定しているため、Oリング37と共にタービンハブ22と一体回転する。その結果、ギア部材38は、タービンハブ22と共にクラッチ板27に対して小さく相対回転する。
すると、ギア部材38の凹部43は、クラッチ板27の凸部44との間に形成された微小隙間の角度範囲に収まるように、クラッチ板27に対して周方向に相対回転する。そのため、ギア部材38の凹部43の内壁面は、クラッチ板27の凸部44に対して接触することはなく、クラッチ板27とタービンハブ22との間の回転差を吸収するように、クラッチ板27の凸部44との間に形成された微小隙間内を周方向に僅かに移動する。その結果、Oリング37は、その外周面がタービンハブ22の筒部22cを径方向外側に押圧した状態で、タービンハブ22の筒部22cとの間の摩擦面を介して周方向に作用する摩擦力によってタービンハブ22に対して連れ回るように一体回転する。したがって、Oリング37は、タービンハブ22の筒部22cとの間でヒステリシスを発生させることはほとんどなく、エンジンの爆発振動が変速機構側に伝達されることが抑制される。
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態及び第2の実施形態の効果(1)、(4)、(5)と同様の効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態を図11及び図12に基づき説明する。なお、第4の実施形態は、摩擦接触機構がロックアップクラッチとタービンハブとの間で径方向に挟持される態様が第2の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第2の実施形態では、第2の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第2の実施形態と同一又は相当する構成については同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
図11に示すように、本実施形態のトルクコンバータ10では、タービンハブ22の軸部22bが径方向に段差状をなすように構成されている。そして、タービンハブ22の軸部22bは、ポンプカバー13側に位置する第1領域22eが、フロントカバー12側に位置する第2領域22fよりも、変速機構の入力軸24の回転軸線S1を中心とする径方向の寸法が大きくなるように構成されている。また、タービンハブ22は、軸部22bの第1領域22eの外周面上にクラッチ板27の内周側端部27aを回転自在に支持すると共に、クラッチ板27の内周側端部27aの内周面と軸部22bの第2領域22fの外周面との間で摩擦接触機構17を径方向に挟持している。すなわち、本実施形態では、クラッチ板27の内周側端部27a及びタービンハブ22の軸部22bの第2領域22fが、摩擦接触機構17を径方向に挟持して支持する支持部としてそれぞれ機能する。
図11及び図12に示すように、本実施形態の摩擦接触機構17は、タービンハブ22の軸部22bの第2領域22fに対して径方向外側から押圧力を伴った摩擦力を作用させて圧入された略円環状の弾性体からなるOリング37と、該Oリング37を介してタービンハブ22の軸部22bの第2領域22fに対して一体回転するように径方向外側から嵌挿された略円環状の樹脂体からなるギア部材38とから構成されている。そして、本実施形態のタービンハブ22は、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動に基づいて回転する回転部材のうち、Oリング37が常には径方向内側に押圧して周方向に摩擦力を作用させるように接触する他方の回転部材として機能する。
ギア部材38は、その外周面から径方向外側に突出した複数(本実施形態では8つ)の凸部45が周方向に沿って等間隔に形成されている。また、クラッチ板27は、その内周側端部27aの内周面に、径方向外側に陥入した複数(本実施形態では8つ)の凹部46が周方向に沿って等間隔に形成されている。そして、クラッチ板27は、これらの凹部46がギア部材38の各凸部45によって個別に嵌合されることにより、ギア部材38に対して周方向に位置決めされている。
ここで、本実施形態の摩擦接触機構17では、クラッチ板27とタービンハブ22との間で生じる捩り振動の捩り角度が所定の閾値に達した時点で、ギア部材38の凸部45がクラッチ板27の凹部46の内壁面によって相対回動が規制されるように周方向に係止される。この点で、本実施形態のクラッチ板27は、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動に基づいて回転する回転部材のうち、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動状態が変遷した際に、ギア部材38が周方向に適宜係合する一方の回転部材として機能する。そして、Oリング37は、タービンハブ22の軸部22bの第2領域22fを径方向内側に押圧力を伴った摩擦力を作用させた状態で必要に応じて摩擦摺動することにより、タービンハブ22の軸部22bとの間で発生させるヒステリシスの大きさを段階的に切り替えることができる。
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態及び第2の実施形態の効果(1)、(4)、(5)と同様の効果を得ることができる。
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態を図13及び図14に基づき説明する。なお、第5の実施形態は、摩擦接触機構がクラッチ板の内周側端部を径方向に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触する点が第4の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第4の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第4の実施形態と同一又は相当する構成については同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
図13及び図14に示すように、本実施形態の摩擦接触機構17は、クラッチ板27の内周側端部27aに対して径方向内側から押圧力を伴った摩擦力を作用させるように圧入された略円環状の弾性体からなるOリング37と、該Oリング37を介してクラッチ板27の内周側端部27aに対して一体回転するように径方向内側から嵌挿された略円環状の樹脂体からなるギア部材38とから構成されている。そして、本実施形態のクラッチ板27は、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動に基づいて回転する回転部材のうち、Oリング37が常には径方向外側に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触する他方の回転部材として機能する。
ギア部材38は、その内周面から径方向外側に陥入した複数(本実施形態では8つ)の凹部47が周方向に沿って等間隔に形成されている。また、タービンハブ22は、その軸部22bの第2領域22fの外周面に、径方向外側に突出した複数(本実施形態では8つ)の凸部48が周方向に沿って等間隔に形成されている。そして、タービンハブ22は、これらの凸部48がギア部材38の各凹部47に対して個別に嵌合することにより、ギア部材38に対して周方向に位置決めされている。
ここで、本実施形態の摩擦接触機構17では、クラッチ板27とタービンハブ22との間で生じる捩り振動の捩り角度が所定の閾値に達した時点で、ギア部材38の凹部47の内壁面がタービンハブ22の凸部48によって相対回動が規制されるように周方向に係止される。この点で、本実施形態のタービンハブ22は、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動に基づいて回転する回転部材のうち、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動状態が変遷した際に、ギア部材38が周方向に適宜係合する一方の回転部材として機能する。そして、Oリング37が、クラッチ板27の内周側端部27aを径方向外側に押圧した状態で必要に応じて周方向に摩擦摺動することにより、クラッチ板27との間で発生させるヒステリシスの大きさを段階的に切り替えることができる。
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態及び第2の実施形態の効果(1)、(4)、(5)と同様の効果を得ることができる。
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態を図15〜図17に基づき説明する。なお、第6の実施形態は、摩擦接触機構が、エンジンの出力軸から出力されるトルクの動力伝達経路上にて、クラッチ板とタービンハブとの間に並行して複数配置されている点が上記各実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、上記各実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、上記各実施形態と同一又は相当する構成については同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
図15に示すように、本実施形態のトルクコンバータ10は、タービンハブ22の筒部22cとクラッチ板27の内周側端部27aとの間で径方向に挟持されるように配置された第1摩擦接触機構17aと、タービンハブ22の軸部22bの第2領域22fとクラッチ板27の内周側端部27aとの間で径方向に挟持されるように配置された第2摩擦接触機構17bとを備えている。
図15及び図16(a)に示すように、第1摩擦接触機構17aは、クラッチ板27の内周側端部27aに対して径方向外側から押圧力を伴って摩擦力を作用させるように圧入された略円環状の弾性体からなるOリング37aと、該Oリング37aを介してクラッチ板27に対して一体回転するように径方向外側から嵌挿された略円環状の樹脂体からなるギア部材38aとから構成されている。そして、本実施形態のクラッチ板27は、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動に基づいて回転する回転部材のうち、Oリング37aが常には径方向内側に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触する他方の回転部材として機能する。
ギア部材38aは、その外周面から径方向外側に突出した複数(本実施形態では8つ)の凸部49が周方向に沿って等間隔に形成されている。また、タービンハブ22は、その筒部22cの内周面に、径方向外側に陥入した複数(本実施形態では8つ)の凹部50が周方向に沿って等間隔に形成されている。そして、タービンハブ22は、これらの凹部50がギア部材38aの各凸部49によって個別に嵌合されることにより、ギア部材38aに対して周方向に位置決めされている。なお、タービンハブ22の筒部22cに形成された凹部50は、ギア部材38aの凸部49との間に角度範囲θ2の微小隙間を介して周方向に離間した構成となっている。
図15及び図16(b)に示すように、第2摩擦接触機構17bは、タービンハブ22の軸部22bの第2領域22fに対して径方向外側から挟圧するように圧入された略円環状の弾性体からなるOリング37bと、該Oリング37bを介してタービンハブ22の軸部22bの第2領域22fに対して一体回転するように径方向外側から嵌挿された略円環状の樹脂体からなるギア部材38bとから構成されている。そして、本実施形態のタービンハブ22は、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動に基づいて回転する回転部材のうち、Oリング37bが常には径方向内側に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触する他方の回転部材として機能する。
ギア部材38bは、その外周面から径方向外側に突出した複数(本実施形態では8つ)の凸部51が周方向に沿って等間隔に形成されている。また、クラッチ板27は、その内周側端部27aの内周面に、径方向外側に陥入した複数(本実施形態では8つ)の凹部52が周方向に沿って等間隔に形成されている。そして、クラッチ板27は、これらの凹部52がギア部材38bの各凸部51によって個別に嵌合されることにより、ギア部材38bに対して周方向に位置決めされている。なお、クラッチ板27の凹部52は、ギア部材38bの凸部51との間に、上記の角度範囲θ2よりも小さな角度範囲θ3の微小隙間を介して周方向に離間した構成となっている。
ここで、本実施形態のトルクコンバータ10において、ロックアップクラッチ15の完全係合状態時に、エンジンの爆発振動に基づくトルク変動に起因して、エンジンの出力軸11に連結されたクラッチ板27と、変速機構の入力軸24に連結されたタービンハブ22とが小さく相対回転したとする。
この場合、第2摩擦接触機構17bは、ギア部材38bの凸部51がクラッチ板27の凹部52との間に形成された微小隙間の角度範囲θ3に収まるように、クラッチ板27に対して周方向に小さく相対回転する。そのため、ギア部材38bの凸部51は、クラッチ板27の凹部52の内壁面に対して接触することはなく、クラッチ板27とギア部材38bとの間の回転差を吸収するように、クラッチ板27の凹部52との間に形成された微小隙間内を周方向に僅かに移動する。その結果、ギア部材38bに対して相対回動不能に固定されたOリング37bは、その内周面がタービンハブ22の軸部22bの第2領域22fを径方向内側に挟圧した状態で、タービンハブ22の軸部22bの第2領域22fとの間の摩擦面を介して周方向に作用する摩擦力によってタービンハブ22に対して連れ回るように一体回転する。したがって、第2摩擦接触機構17bは、タービンハブ22の軸部22bの第2領域22fとの間でヒステリシスを発生させることはほとんどない。
なお、この時点では、第1摩擦接触機構17aでも同様に、ギア部材38aの凸部49がタービンハブ22の凹部50との間に形成された微小隙間の角度範囲θ2に収まるように、タービンハブ22に対して周方向に相対回転する。そのため、第1摩擦接触機構17aがクラッチ板27との間でヒステリシスを発生させることはほとんどない。したがって、本実施形態のトルクコンバータ10では、エンジンの爆発振動がこれらの摩擦接触機構17a,17bを介して変速機構側に伝達されることが抑制される。
一方、ロックアップクラッチ15の滑り係合状態時に、ジャダー振動に起因して、エンジンの出力軸11に連結されたクラッチ板27と、変速機構の入力軸24に連結されたタービンハブ22とが大きく相対回転したとする。
この場合、第2摩擦接触機構17bは、ギア部材38bの凸部51がクラッチ板27の凹部52との間に形成された微小隙間の角度範囲θ3を上回るように、クラッチ板27に対して周方向に大きく相対回転する。そのため、ギア部材38bは、その凸部51がクラッチ板27の凹部52の内壁面によって周方向に係止されることにより、クラッチ板27に対する相対回転が規制される。この点で、本実施形態のクラッチ板27は、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動に基づいて回転する回転部材のうち、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動状態が変遷した際に、ギア部材38bが周方向に係合する一方の回転部材として機能する。
そして、ギア部材38bによって相対回動不能に固定されたOリング37bは、タービンハブ22とクラッチ板27との間で生じる捩り振動に従って、クラッチ板27と共にタービンハブ22に対して相対回転するようになる。したがって、第2摩擦接触機構17bは、Oリング37bの外周面がタービンハブ22の軸部22bの第2領域22fを径方向内側に挟圧した状態で周方向に摩擦摺動することにより、タービンハブ22との間で発生するヒステリシスが増大するため、ジャダー振動が変速機構側に伝達されることが抑制される。
なお、この時点では、第1摩擦接触機構17aは、依然として、ギア部材38aの凸部49がタービンハブ22の凹部50との間に形成された微小隙間の角度範囲θ2に収まるように、タービンハブ22に対して周方向に相対回転する。そのため、第1摩擦接触機構17aがクラッチ板27との間でヒステリシスを発生させることはほとんどない。
さらに、ロックアップクラッチ15の滑り係合状態時に、エンジンの出力軸11から出力されるトルクが増大することに伴って、エンジンの出力軸11に連結されたクラッチ板27と、変速機構の入力軸24に連結されたタービンハブ22とが更に大きく相対回転したとする。
この場合、第1摩擦接触機構17aは、ギア部材38aの凸部49がタービンハブ22の凹部50との間に形成された微小隙間の角度範囲θ3を上回るように、タービンハブ22に対して周方向に大きく相対回転する。そのため、ギア部材38aは、その凸部49がタービンハブ22の凹部50の内壁面によって周方向に係止されることにより、タービンハブ22に対する相対回転が規制される。この点で、本実施形態のタービンハブ22は、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動に基づいて回転する回転部材のうち、ロックアップクラッチ15のクラッチ作動状態が変遷した際に、ギア部材38aが周方向に係合する一方の回転部材として機能する。
そして、ギア部材38aによって相対回動不能に固定されたOリング37aは、タービンハブ22とクラッチ板27との間で生じる捩り振動に従って、タービンハブ22と共にクラッチ板27に対して周方向に相対回転するようになる。したがって、第1摩擦接触機構17aは、Oリング37aの内周面がクラッチ板27の内周側端部27aを径方向内側に挟圧した状態で周方向に摩擦摺動することにより、クラッチ板27との間で発生するヒステリシスが増大する。
すなわち、本実施形態のトルクコンバータ10では、図17に示すように、クラッチ板27とタービンハブ22との間で生じる捩り振動の捩り角度が、ギア部材38bの凸部51とタービンハブ22の凹部52との間に形成される微小隙間の角度範囲θ3の範囲内にある場合には、両摩擦接触機構17a,17bがヒステリシスを発生することはほとんどないため、相対的に小さなヒステリシストルク(第1ヒス)が得られる。一方、クラッチ板27とタービンハブ22との間で生じる捩り振動の捩り角度が、角度範囲θ3の範囲外となった場合には、第2摩擦接触機構17bが、タービンハブ22との間でヒステリシスを発生させるため、相対的に大きなヒステリシストルク(第2ヒス)が得られる。また、クラッチ板27とタービンハブ22との間で生じる捩り振動の捩り角度が更に増大して、ギア部材38aの凸部49とタービンハブ22の凹部50との間に形成される微小隙間の角度範囲θ2の範囲外になった場合には、第1摩擦接触機構17aでも同様に、クラッチ板27との間でヒステリシスを発生させるため、より大きなヒステリシストルク(第3ヒス)が得られる。
したがって、本実施形態のトルクコンバータ10によれば、クラッチ板27とタービンハブ22との間に生じる捩り振動の捩り角度の大きさに応じて、第1摩擦接触機構17aがクラッチ板27との間で発生させるヒステリシスと、第2摩擦接触機構17bがタービンハブ22との間で発生させるヒステリシスとの総和を多段階に切り替えることができる。そのため、クラッチ板27の回転速度が増大することに伴って、クラッチ板27から生じるジャダー振動の大きさが増大する場合であっても、その増大に応じて、各摩擦接触機構17a,17bで発生させるヒステリシスの大きさを段階的に増大させることにより、ジャダー振動を好適に減衰させることができる。
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態及び第2の実施形態の効果(1)、(4)、(5)に加えて以下に示す効果を得ることができる。
(6)本実施形態では、クラッチ板27とタービンハブ22との間に並行して配置された複数の摩擦接触機構17a,17bのうち、第2摩擦接触機構17bが、ギア部材38bの凸部51をクラッチ板27の凹部52の内壁面に対して周方向に係合させた時点で、タービンハブ22との間の摩擦面でヒステリシスを発生させる。一方、この時点では、第1摩擦接触機構17aは、ギア部材38aの凸部49がタービンハブ22の凹部50との間の微小隙間内を周方向に僅かに移動しているため、クラッチ板27との間の摩擦面でヒステリシスを発生させることはない。また、第1摩擦接触機構17aが、ギア部材38aの凸部49をタービンハブ22の凹部50の内壁面に対して周方向に係合させた場合には、第1摩擦接触機構17aでも同様に、クラッチ板27との間の摩擦面でヒステリシスを発生させる。すなわち、両摩擦接触機構17a,17bは、クラッチ板27及びタービンハブ22との間で発生させるヒステリシスの大きさを、クラッチ板27とタービンハブ22との間で生じる捩り振動の捩り角度に応じて多段階に変更することができる。
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態を図18及び図19に基づき説明する。なお、第7の実施形態は、摩擦接触機構が、エンジンの出力軸から出力されるトルクが増大するに従って、タービンハブに対して摩擦力を作用させて接触する領域の大きさが次第に大きくなるように構成されている点が第3の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第3の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第3の実施形態と同一又は相当する構成については同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
図18及び図19(a)に示すように、本実施形態の摩擦接触機構17では、Oリング37には、複数(本実施形態では3つ)の略円環状の凸条53a,53b,53cが、該Oリング37の外周面上を周方向に沿って延びるように前後方向に並列して形成されている。また、これらの凸条53a〜53cのうち、前後方向での中央に位置する凸条53aは、前後方向に隣接する他の凸条53b,53cに対して、Oリング37の外周面上から径方向外側に突出する寸法が相対的に大きくなるように構成されている。なお、Oリング37は、タービンハブ22の筒部22cに対して径方向内側から押圧して周方向に摩擦力を作用させるように圧入された状態では、複数の凸条53a〜53cのうち、前後方向での中央に位置する凸条53aがタービンハブ22の筒部22cに対して密着すると共に、該凸条53aに対して前後方向に隣接する他の凸条53b,53cがタービンハブ22の筒部22cに対して径方向に若干の隙間を介して離間した構成となっている。
ここで、本実施形態のトルクコンバータ10において、ロックアップクラッチ15の滑り係合状態時に、エンジンの出力軸11から出力されるトルクが増大することに伴って、クラッチ板27の回転速度が増加したとする。
この場合、摩擦接触機構17は、ギア部材38の凹部43がクラッチ板27の凸部44によって周方向に係止されるため、クラッチ板27に対する相対回転が規制される。また、Oリング37は、ギア部材38に対して相対回動不能に固定されているため、該ギア部材38と共にクラッチ板27に対して一体回転する。そのため、エンジンの出力軸11から出力されるトルクが増大することに伴って、クラッチ板27の回転速度が増加すると、Oリング37はクラッチ板27と共により高速に回転するようになる。その結果、Oリング37は、その回転速度の増大分だけ、慣性として径方向外側に作用する遠心力が増大するため、その遠心力に従って、外周面上の凸条53aがタービンハブ22の筒部22cを径方向外側により強く押圧して摩擦力を作用させて接触する。
すると、図19(b)に示すように、Oリング37の凸条53aには、タービンハブ22の筒部22cとの間で径方向に押し潰されるように径方向外側に向けての押圧力が作用することにより径方向に収縮した状態となる。また同時に、Oリング37は、その一部がギア部材38に対して径方向に離間するように径方向外側に歪み変形することにより、凸条53aに対して前後方向に隣接して配置された他の凸条53b,53cの先端部がタービンハブ22の筒部22cに対して接触するようになる。
その結果、Oリング37は、タービンハブ22の筒部22cに対して径方向に摩擦力を作用させて接触する領域の大きさが増大するため、その増大分だけ、タービンハブ22の筒部22cとの間で発生させるヒステリシスの大きさが増大する。したがって、クラッチ板27の回転速度が増大することに伴って、クラッチ板27から生じるジャダー振動の大きさが増大する場合であっても、その増大分に応じて、タービンハブ22の筒部22cに対して径方向に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触する領域の大きさを増大させて、タービンハブ22との間で発生させるヒステリシスの大きさを増大させることにより、ジャダー振動を好適に減衰させることができる。
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態及び第2の実施形態の効果(1)、(4)、(5)に加えて以下に示す効果を得ることができる。
(7)本実施形態では、クラッチ板27の回転速度が増加することに伴って、クラッチ板27から生じるジャダー振動の大きさが増大する場合であっても、その増大分に応じて、摩擦接触機構17が、タービンハブ22に対して径方向に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触する領域の大きさを増大させて、タービンハブ22との間で発生させるヒステリシスの大きさを増大させることにより、ジャダー振動を好適に減衰することができる。
なお、上記実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記第2〜第7の実施形態において、例えば、図20及び図21に示すように、摩擦接触機構17は、ギア部材38とOリング37とを弾性体によって一体成形する構成としてもよい。この場合、一体成形した部材が、クラッチ板27及びタービンハブ22のうち一方に対して周方向に係合する係合部材としての機能と、クラッチ板27及びタービンハブ22のうち他方を径方向に押圧して周方向に摩擦力を作用させて接触する弾性摩擦材としての機能を兼備することになるため、部品点数を更に削減することができ、結果として、装置全体の更なる小型化要請に応えることができる。
・上記各実施形態において、クラッチ板27とダンパ装置16のドリブンプレート30との間で径方向に挟持するように摩擦接触機構17を設けてもよい。すなわち、摩擦接触機構17は、ダンパ装置16のドライブプレート29又は該ドライブプレート29に対して一体回転可能に連結された回転部材と、ダンパ装置16のドリブンプレート30又は該ドリブンプレート30に対して一体回転可能に連結された回転部材との間で径方向に挟持される構成であれば、任意の組み合わせの回転部材によって径方向に挟持される構成としてもよい。
・上記第1の実施形態において、各中間部材32の内周縁に径方向内側に突出した凸部を形成し、該凸部がギア部材33の外周面上に形成された凹部に対して嵌合する構成としてもよい。
・上記第6の実施形態において、第1摩擦接触機構17aを構成するギア部材38aの凸部49とタービンハブ22の凹部50との間に形成される微小隙間の角度範囲θ2が、第2摩擦接触機構17bを構成するギア部材38bの凸部51とクラッチ板27の凹部52との間に形成される微小隙間の角度範囲θ3に対して同一となるように構成してもよい。この場合、トルクコンバータ10は、クラッチ板27とタービンハブ22との間で生じる捩り振動の捩り角度がこれらの角度範囲に到達した時点で、第1摩擦接触機構17aがクラッチ板27との間でヒステリシスを発生させると同時に、第2摩擦接触機構17bがタービンハブ22との間でヒステリシスを発生させる。そのため、この構成によれば、クラッチ板27の回転速度が増加することに伴って、クラッチ板27とタービンハブ22との間で生じる捩り振動の捩り角度が所定の閾値に到達した時点で、各摩擦接触機構17a,17bで発生させるヒステリシスの大きさを急激に増大させる構成を簡便に実現することができる。
・上記第2〜第7の実施形態において、タービンハブ22又はクラッチ板27に対して径方向に押圧して周方向に摩擦力を作用させる押圧部材はOリング37に限定されず、例えば角リングやWパッキン等を用いてもよい。すなわち、タービンハブ22又はクラッチ板27に対して径方向に押圧して周方向に摩擦力を作用させることができる構成であれば任意の部材を採用することができる。
・上記各実施形態において、発進装置は、クラッチ機構に供給される作動油圧に基づき係合状態が切り替わるロックアップクラッチ15を備えたトルクコンバータ10に限定されない。例えば、クラッチ機構として多板式の発進クラッチを備えた発進装置等にも適用できる。