JP2010242242A - シュープレス用ベルト - Google Patents

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Abstract

【課題】使用中の寸法変化が少なく、安定した回転状態を維持すると共に、被覆層のクラック発生を低減することができるシュープレス用ベルトを提供する。
【解決手段】本発明の製紙用フェルト(A)は、第1層経糸(111)、第2層経糸(112)、第3層経糸(113)及び第4層経糸(114)と、緯糸(12)とから構成される基布層(1)と、その表面に形成された被覆層(2)と、を有し、第3層経糸(113)がマルチフィラメントであり、緯糸(12)の一部は、第3層経糸(113)を織り込んで経糸3本分以上の間隔の織込部を形成している追加緯糸(121)であり、上記被覆層は、上記基布層のフェルト側表面に形成されたフェルト側被覆層と、上記基布層のシュー側表面に形成されたシュー側被覆層とからなり、被覆層(2)は、フェルト側被覆層(21)と、シュー側被覆層(22)とからなるシュープレス用ベルトである。
【選択図】図1

Description

本発明は、使用中の寸法変化が少なく、安定した回転状態を維持すると共に、被覆層のクラック発生を低減することができるシュープレス用ベルトに関する。
従来より製紙工程においては、ワイヤーパートで脱水された湿紙を受け取ってプレスパートへ運び、プレスロールの間を通してさらに水を絞り、同時に湿紙の表面を平滑にしてドライパートに送るために各種製紙用ベルトが利用されている。特に近年、抄紙工程のプレスパートにおいて、湿紙の脱水効率を高めるために、高速で走行するフェルトに載置された湿紙の一方の面をプレスロールで押さえ、他方の面をエンドレスのシュープレス用ベルトを介して加圧シューで加圧して湿紙の脱水を行なう、いわゆるシュープレスが普及している。そして、このようなシュープレスにおいて使用される製紙用ベルトは、通常、織布により構成される基布を樹脂でコーティングした構成である。また、特に高速で抄紙する場合、紙切れを防止し、安定して湿紙を搬送するためのシートトランスファー用としても、同様の製紙用ベルトを使用することが検討されている。
このような各製紙工程において使用される製紙用ベルトとして、下記特許文献1に記載されているようなシュープレス用ベルトが既に知られている。特許文献1記載のシュープレス用ベルトは、特定構造の基布層の一方面に樹脂の被覆層を形成し、その樹脂で基布層の肉厚内を満たし、且つ反対面の被覆層を形成している。
特開平11−124788号公報
しかし、近年、製紙効率向上の観点から、シュープレス等の製紙工程の更なる高速化が進められているところ、繰り返し圧縮により、製紙用ベルトを構成する基布が扁平化するために糸の屈曲の程度が低下し、その結果、製紙用ベルトに寸法変化が生じる。このような寸法変化が生じると、製紙用ベルトの回転状態の安定性に欠けると共に、被覆層を構成する樹脂にクラックが発生し、製紙用ベルトの寿命が低下する恐れがある。
特許文献1記載のシュープレス用ベルトは、特定構造の基布層の一方面に樹脂の被覆層を形成し、その樹脂で基布層の肉厚内を満たし、且つ反対面の被覆層を形成していることから、被覆層の境界が基布層内にない。そのため、被覆層として異なる樹脂を使用した場合、その境界での樹脂の剥離が生じ易く、異なる樹脂を使用できないという問題がある。
本発明は、上記問題点を解決するものであり、使用中の寸法変化が少なく、安定した回転状態を維持すると共に、被覆層のクラック発生を低減することができるシュープレス用ベルトを提供することを目的とする。
本発明のシュープレス用ベルトは、上下n層(n=4以上の整数)に配置された第1層経糸〜第n層経糸からなる経糸と、該経糸を織り成す緯糸とから構成されるn層以上の織布である基布層と、該基布層の少なくとも表面に形成された被覆層と、を有するシュープレス用ベルトであって、第2層経糸〜第(n−1)層経糸のうちの少なくともいずれかはマルチフィラメントであり、上記緯糸の一部は、上記第2層経糸〜第(n−1)層経糸のいずれかを織り込んで織込部を形成している追加緯糸であり、上記織込部の間隔は経糸3本分以上であり、上記被覆層は、上記基布層のフェルト側表面に形成されたフェルト側被覆層と、上記基布層のシュー側表面に形成されたシュー側被覆層とからなるシュープレス用ベルトである。
本発明のシュープレス用ベルトは、上記構成を有することにより、使用中の寸法変化が少なく、安定した回転状態を維持すると共に、被覆層のクラック発生を低減することができる。
本実施例のシュープレス用ベルト(A)の緯糸方向断面模式図である。 本発明のシュープレス用ベルトの一例を示す緯糸方向断面模式図である。 本発明のシュープレス用ベルトの一例を示す緯糸方向断面模式図である。 本発明のシュープレス用ベルトの一例を示す緯糸方向断面模式図である。
本発明のシュープレス用ベルトの一例を図1〜図4に示す。本発明のシュープレス用ベルト(A)は、基布層(1)と、該基布層(1)の少なくとも表面に形成された被覆層(2)と、からなる。
上記基布層は、上下n層(n=4以上の整数)に配置された第1層経糸〜第n層経糸からなる経糸と、該経糸を織り成す緯糸とから構成されるn層以上の織布である。該nは通常4又は5である。図1〜図4に示すシュープレス用ベルト(A)の基布層(1)は、上下4層に配置された第1層経糸(111)、第2層経糸(112)、第3層経(113)及び第4層経糸(114)と、これら経糸を織り成す緯糸(12)とから構成される4層織布である。尚、本発明において、上記nの順番は、フェルト側を基準として数える。即ち、図1〜図4に示すシュープレス用ベルト(A)では、最もフェルト側(図1〜図4の上側)に位置する経糸が第1層経糸(111)であり、最もシュー側(図1〜図4の下側)に位置する経糸が第4層経糸(114)である。
本発明のシュープレス用ベルトは、多層構造とすることにより、縦方向の強度が高くなり、その結果、経方向の寸法変化への伸びが抑えられる。また、経糸の本数が増えることによって、プレスの際に圧縮力が加わっても、上記基布層が潰れにくくなり、これにより、上記基布層を構成する糸の動きが抑えられて緯方向の寸法変化も抑えることができる。そして、寸法変化、特に緯方向での寸法変化を抑えることにより、回転状態を安定化させ、表面摩耗を均一にすることができる結果、高速で使用しても、従来のシュープレス用ベルトよりも長期にわたって使用することができる。また、上記基布層の糸密度を高め、これにより樹脂と糸とのからみを高めることができる結果、上記被覆層を構成する樹脂と上記基布層との剥離が抑えられ、シュープレス用ベルトの寿命延長を図ることができる。
また、本発明のシュープレス用ベルトは、上記被覆層は、上記基布層のフェルト側表面に形成されたフェルト側被覆層と、上記基布層のシュー側表面に形成されたシュー側被覆層とからなる。即ち、本発明のシュープレス用ベルトは、特許文献1記載のシュープレス用ベルトと異なり、被覆層の境界が基布層内にあり、この境界部にマルチフィラメントが配置されている。この構成により、本発明のシュープレス用ベルトでは、被覆層を構成する樹脂と糸とが絡み付き、両者を結合させることができる。その結果、樹脂剥離、特に境界での樹脂剥離の発生を防止できるため、本発明のシュープレス用ベルトでは、必要に応じてフェルト側被覆層とシュー側被覆層とで異なる樹脂を使用できる。
更に、本発明のシュープレス用ベルトでは、寸法を安定させる役割を担うストレート糸を、樹脂部の境界で織り込むことにより、フェルト側被覆層及びシュー側被覆層を構成する樹脂と絡み付いて結合させることができる。その結果、該ストレート糸は樹脂剥離を防止する役割を担うようになる。
本発明では、上記第2層経糸〜第(n−1)層経糸のうちの少なくともいずれかはマルチフィラメント(複数本のモノフィラメントで構成された糸)である。即ち、上記第2層経糸〜第(n−1)層経糸のうち、マルチフィラメントは1本でもよく、2本以上でもよい。図1〜図4に示すシュープレス用ベルト(A)では、第3層経糸(113)がマルチフィラメントである。勿論、図1〜図4に示すシュープレス用ベルト(A)において、第3層経糸(113)に替えて、あるいは第3層経糸(113)と共に、第2層経糸(112)をマルチフィラメントとすることができる。上記第2層経糸〜第(n−1)層経糸としてマルチフィラメントを用いると、上記基布層の強度を向上させると共に、上記被覆層を構成する樹脂を塗布又は浸漬する時に樹脂止めとしての役割を果たし、異なる樹脂で構成される上記フェルト側被覆層及び上記シュー側被覆層からなる上記被覆層を容易に形成することができるので好ましい。
上記マルチフィラメントを構成するモノフィラメントの線径及び本数についても特に限定はないが、通常、上記マルチフィラメントを構成するモノフィラメントの線径は10〜50μm、好ましくは10〜40μmであり、上記マルチフィラメントを構成するモノフィラメントの本数は通常700本以下、好ましくは200〜700本、更に好ましくは200〜500本である。また、上記マルチフィラメントを構成する各モノフィラメントの材質は、全て同じ材質でもよいが、異なる2種以上の材質であってもよい。
上記経糸の種類は、上記第2層経糸〜第(n−1)層経糸のうちの少なくともいずれかはマルチフィラメントである限り特に限定はない。上記経糸の種類は、用途によって適宜選択することができる。例えば、上記経糸として、モノフィラメントの他、マルチフィラメント、スパンヤーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、あるいはこれらを撚り合わせる等して組み合わせた撚糸が使用できる。また、糸の断面形状も円形だけでなく四角形状や星型等の矩形状の糸や楕円形状、中空等の糸が使用できる。例えば、本発明では、第1層経糸及び/又は第n層経糸として、マルチフィラメントを使用してもよい。
上記経糸の材質については特に限定はない。上記経糸は、全て同じ材質でもよいが、異なる2種以上の材質でもよい。このように2種以上の材質の糸を用いることにより、様々な特性を有するシュープレス用ベルトが得られるので好ましい。上記経糸の材質としては、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアミド(6ナイロン、66ナイロン、610ナイロン、612ナイロン等の各種ナイロン等)、ビニロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、綿、ウール、金属等が使用できる。また、共重合体やこれらの材質に目的に応じて種々の物質をブレンド又は含有させた糸を使用することもできる。
上記経糸のうちの少なくとも1つとして、ポリプロピレン、ポリエステルモノフィラメント(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)又はポリエーテルエーテルケトンモノフィラメントを使用することができる。これらの糸は寸法安定性に優れていることから、これらの糸を使用することにより、回転中の寸法変化を抑制し、回転状態をより安定化することができるので好ましい。また、ポリエーテルエーテルケトンモノフィラメントは高強度、高モジュラスであることから、より回転中の寸法変化を抑制できるので好ましい。
更に、第1層経糸及び/又は第n層経糸のうちの少なくとも1つとして、ポリアミドモノフィラメントを用いることができる。ポリアミドモノフィラメントは屈曲疲労やせん断に対して強い性質を有することから、かかる糸を用いることにより、樹脂クラック発生時に見られる糸の切断を防止し、強度を維持して安定した回転状態を維持できるので好ましい。尚、上記ポリプロピレン、ポリエステルモノフィラメント(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)及びポリエーテルエーテルケトンモノフィラメントは、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
上記経糸の線径についても特に限定はなく、要求性能に応じて種々のものを用いることができる。上記経糸の線径としては、通常0.15〜0.45mm、好ましくは0.20〜0.45mm、更に好ましくは0.25〜0.40mmとすることができる。また、マルチフィラメントを用いる場合、該マルチフィラメントを構成するモノフィラメントの線径としては通常、10〜50μm、好ましくは10〜40μmであり、上記マルチフィラメントを構成する糸の本数は通常700本以下、好ましくは200〜700本、更に好ましくは200〜500本である。
上記経糸の配置パターンについては特に限定はなく、必要に応じて種々の配置パターンとすることができる。例えば、図1に示すシュープレス用ベルト(A)において、第2層経糸(112)〜第4層経糸(114)は、それぞれフェルト側に隣接して位置する経糸の垂直方向からずれた方向に配置することができる。かかる配置パターンとすることにより、本発明のシュープレス用ベルトの厚さを薄くすることができるので好ましい。
本発明において上記緯糸は、上記経糸を織り込んでいる(但し、後述する無織込追加緯糸は除く。)。上記緯糸の織り込みパターンは、上記経糸を織り込むことができる限り特に限定はない。上記緯糸の材質及び線径についても特に限定はなく、例えば、上記緯糸の材質としては、上記経糸の説明中で列挙した各種材質を用いることができる。また、上記緯糸の線径としては、通常0.15〜0.50mm、好ましくは0.20〜0.45mm、更に好ましくは0.25〜0.40mmとすることができる。
本発明のシュープレス用ベルトにおいて、上記緯糸の一部は、上記第2層経糸〜第(n−1)層経糸のいずれかを織り込んで織込部を形成している追加緯糸である。図1に示すシュープレス用ベルト(A)では、追加緯糸(121)が第3層経糸(113)の一部を織り込んで織込部を形成している。ここで、「追加緯糸」とは、緯糸のうち、経糸と殆ど織り込まれることなく緯糸方向にストレートに配置された糸である。経糸と殆ど織り込まれていない点で、通常の上記緯糸とは異なる。本発明では、追加緯糸(121)を有することにより、幅方向の伸びが少なく、その結果、寸法安定性を高めることができるので好ましい。
上記追加緯糸は、上記第2層経糸〜第(n−1)層経糸のいずれを織り込んでいてもよい。上記のように、上記第2層経糸〜第(n−1)層経糸のいずれかはマルチフィラメントであり、上記追加緯糸は、該マルチフィラメントを織り込んで織込部を形成している。例えば、図1及び図3に示すシュープレス用ベルト(A)では、追加緯糸(121)が、マルチフィラメントである第3層経糸(113)の一部を織り込んで織込部を形成している。また、図4に示すシュープレス用ベルト(A)では、第1の追加緯糸(121a)は、第2層経糸(112)を織り込み、第2の追加緯糸(121b)は、第3層経糸(112)を織り込んでいる。
上記追加緯糸は1本のみでもよく、2本以上でもよい。例えば、図1に示すシュープレス用ベルト(A)では、追加緯糸(121)は1本であり、図2及び図4に示すシュープレス用ベルト(A)では、追加緯糸(121)は2本である。
上記追加緯糸の配置パターンには特に限定はない。上記追加緯糸は、上記マルチフィラメントよりフェルト側に配置してもよく、シュー側に配置してもよい。また、上記追加緯糸が2本以上ある場合、いずれの上記追加緯糸も、上記マルチフィラメントよりフェルト側又はシュー側に配置してもよく、あるいはフェルト側及びシュー側の両方に配置してもよい。
上記追加緯糸が2本以上ある場合、配置パターン及び織り込みパターンの組み合わせには特に限定はない。例えば、上記追加緯糸の一部は、上記マルチフィラメントのフェルト側に配置されると共に上記マルチフィラメントを織り込んで上記織込部を形成し、該追加緯糸の残部は、上記マルチフィラメントのシュー側に配置されると共に上記マルチフィラメントを織り込んで上記織込部を形成してもよい。その例を図2に示す。図2に示すシュープレス用ベルト(A)は、追加緯糸(121)のうちの1本が、マルチフィラメントである第3層経糸(113)のフェルト側に配置されると共に第3層経糸(113)を織り込んで上記織込部を形成し、追加緯糸(121)の他の1本は、第3層経糸(113)のシュー側に配置されると共に第3層経糸(113)を織り込んで上記織込部を形成している。かかる構成とすることにより、上記フェルト側被覆層及び上記シュー側被覆層の剥離を抑制できるので好ましい。
また、上記追加緯糸が2本以上ある場合、該追加緯糸の一部は、上記マルチフィラメントのシュー側に配置されると共に上記マルチフィラメントを織り込んで上記織込部を形成しており、該追加緯糸の残部は、上記マルチフィラメントのフェルト側に配置されると共に上記マルチフィラメントよりもフェルト側に配置されている上記経糸を織り込んで上記織込部を形成してもよい。その例を図4に示す。図4に示すシュープレス用ベルト(A)は、第2の追加緯糸(121b)は、マルチフィラメントである第3層経糸(113)のシュー側に配置されると共に第3層経糸(113)を織り込んで上記織込部を形成しており、第1の追加緯糸(121a)は、第3層経糸(113)のフェルト側に配置されると共に、第3層経糸(113)よりもフェルト側に配置されている第2層経糸(112)を織り込んで上記織込部を形成してもよい。
上記織込部の間隔は、経糸3〜8本分、好ましくは3〜5本分である。図1〜図4に示すシュープレス用ベルト(A)では、上記織込部の間隔は第3層経糸(113)の3本分である。上記織込部間隔が2本分以下であると、寸法安定性が低下するので好ましくない。尚、上記織込部の間隔が8本分以下であると、寸法安定性を高めると共に、被服層を構成する樹脂の剥離を抑制できるので好ましい。
また、本発明では、上記緯糸として、全く経糸を織り込むことなく、緯糸方向にストレートに配置されている無織込追加緯糸を1本以上含んでいてもよい。図3に示すシュープレス用ベルト(A)では、追加緯糸(121)よりもフェルト側に無織込追加緯糸(122)を有する。上記無織込追加緯糸を含むことにより、寸法安定性を高めることできるので好ましい。上記無織込追加緯糸は、上記マルチフィラメントよりもフェルト側に配置されていてもよく(図3参照)、シュー側に配置されていてもよい。
上記被覆層は、上記基布層の少なくとも表面に形成されている。上記被覆層は樹脂であり、通常、該樹脂が上記基布層の表面だけでなく、内部にまで浸透することにより、層構造である上記被覆層を形成している。また、上記被覆層は、上記基布層のフェルト側表面に形成されたフェルト側被覆層と、上記基布層のシュー側表面に形成されたシュー側被覆層とからなる。上記のように、本発明のシュープレス用ベルトは、上記第2層経糸〜第(n−1)層経糸のうちの少なくともいずれかはマルチフィラメントである。そして通常、該マルチフィラメントが樹脂止めとして機能し、該マルチフィラメントよりもフェルト側が上記フェルト側被覆層であり、シュー側が上記シュー側被覆層である。
図1〜図4に示すシュープレス用ベルト(A)では、マルチフィラメントである第3層経糸(113)よりフェルト側がフェルト側被覆層(21)であり、シュー側がシュー側被覆層(22)である。勿論、本発明において、上記フェルト側被覆層と上記シュー側被覆層との境が必ずしもマルチフィラメントの部分である必要はない。
上記被覆層の形成方法には特に限定はない。上記被覆層は通常、上記基布層に液状の樹脂を含浸させるか、あるいは上記基布層の表面に液状の樹脂を塗布し、次いで乾燥することにより形成することができる。より具体的には、例えば、上記被覆層は、上記基布層のフェルト側表面に液状の樹脂を含浸させるか、あるいは液状の樹脂を塗布し、次いで乾燥することにより上記フェルト側被覆層を形成し、その後、上記基布層のシュー側表面に液状の樹脂を含浸させるか、あるいは液状の樹脂を塗布し、次いで乾燥し、上記シュー側被覆層を形成することにより得ることができる。勿論、上記方法とは逆に、上記シュー側被覆層を形成した後に上記フェルト側被覆層を形成してもよい。
上記被覆層を構成する樹脂の種類は特に限定はなく、必要に応じて様々な種類の樹脂を使用することができる。上記樹脂として通常はウレタン樹脂が用いられるが、その他に、摩耗や屈曲疲労に強く、クラックの入りにくい樹脂であれば、上記樹脂として用いることができる。ウレタン樹脂は弾性に優れていることから、高圧が加わるシュープレス用ベルトにおいて、上記樹脂としてウレタン樹脂を用いるのが好ましい。
上記フェルト側被覆層を構成する樹脂及び上記シュー側被覆層を構成する樹脂はそれぞれ異なる樹脂である。ここで、「異なる樹脂」とは、種類が異なる樹脂という意味と、種類は同じであるが、性状(例えば、硬度等)の異なる樹脂の両者を含む。例えば、上記シュー側被覆層として、上記フェルト側被覆層よりも硬度が低い樹脂を用いるように、両面で異なる硬度の樹脂とすることができる。この場合、上記フェルト側被覆層及び上記シュー側被覆層を構成する樹脂は同じ種類の樹脂でもよく、異なる種類の樹脂でもよい。例えば、上記フェルト側被覆層及び上記シュー側被覆層として、共にウレタン樹脂を用い、且つ上記シュー側被覆層は、上記フェルト側被覆層よりも硬度が低い構成とすることができる。このような構成とすることにより、シュー側においてクラックが入りにくくして、オイル漏れ等を防ぐことができる。また、上下で樹脂の硬さを異ならせることにより、フェルト面側の樹脂にクラックが入ったとしても、シュー側の樹脂までクラックが進行することを抑制することができる結果、寿命延長を図ることができるので好ましい。
上記フェルト側被覆層を構成する樹脂の硬度は通常85°以上、好ましくは85°〜99°、更に好ましくは88°〜98°、より好ましくは90°〜95°である。上記シュー側被覆層を構成する樹脂の硬度は通常90°以下、好ましくは70°〜90°、更に好ましくは80°〜88°である。また、上記フェルト側被覆層を構成する樹脂の硬度と、上記シュー側被覆層を構成する樹脂の硬度との差は通常3°以上、好ましくは5°以上である。尚、上記樹脂の硬度は、いずれもJISショアA硬度である。
図1〜図4に示すシュープレス用ベルトは、本発明の一例である。従って、本発明は、図1〜図4に示す例に何ら限定されない。本発明のシュープレス用ベルトは、これらの図に記載された例から更に目的及び用途等に応じて種々変更した形態とすることができる。例えば、本発明のシュープレス用ベルトにおいて、搾水効率を高めるために、上記フェルト側被覆層に搾水用の溝を設けることができる。
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例に何ら制約されない。
(1)基布層
本実施例のシュープレス用ベルトの緯糸方向断面模式図を図1に示す。本実施例のシュープレス用ベルト(A)は、第1層経糸(111)、第2層経糸(112)、第3層経糸(113)及び第4層経糸(114)を緯糸(12)で織り込んだ、メッシュ数が縦68×横48(本/インチ)の緯糸1重経糸4重の織布である。
第1層経糸(111)は、線径が27μmのビニロンモノフィラメント250本で構成されるビニロンマルチフィラメント撚糸(1500デニール)である。第2層経糸(112)は、線径が0.35mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)モノフィラメントである。第4層経糸(114)は、線径が0.35mmのナイロンモノフィラメントである。第3層経糸(113)は、線径が30μmのPETモノフィラメント400本で構成されるPETマルチフィラメント(3000デニール)である。緯糸(12)は、線径が0.40mmのPETモノフィラメントである。
緯糸(12)の多くは、第1層経糸(111)、第2層経糸(112)、第3層経糸(113)及び第4層経糸(114)を織り込んでいる。しかし、そのうちの一部は、追加緯糸(121)である。追加緯糸(121)は、一部で第3層経糸(113)を織り込んで織込部を形成している。本実施例のシュープレス用ベルト(A)において、織込部の間隔は、第3層経糸(113)3本分である。よって、追加緯糸(121)は、殆ど経糸を織り込むことなく緯糸方向にストレートに配置されている。
被覆層(2)は、基布層(1)のフェルト側表面に形成されたフェルト側被覆層(21)と、基布層(1)のシュー側表面に形成されたシュー側被覆層(22)とからなる。第3層経糸(113)として使用されているPETマルチフィラメントは、樹脂止めとしての作用を有しており、これよりフェルト側はフェルト側被覆層(21)となり、これよりシュー側はシュー側被覆層(22)となる。
フェルト側被覆層(21)及びシュー側被覆層(22)を構成する各樹脂は、いずれも共にウレタン樹脂であるが、両者の樹脂硬度は異なっている。即ち、フェルト側被覆層(21)の樹脂硬度は93°であり、シュー側被覆層(22)の樹脂硬度は85°である。よって、実施例1のシュープレス用ベルト(A)は、フェルト側の方が硬度が高い構成となっている。尚、上記樹脂の硬度は、いずれもJISショアA硬度である。
本実施例のシュープレス用ベルトは、次の方法により製造した。最初に、シュー側被覆層(22)を構成するウレタン樹脂を基布層(1)のシュー側表面に塗布し、乾燥硬化後、基布層(1)を裏返して、フェルト側被覆層(21)を構成するウレタン樹脂を基布層(1)のフェルト側表面に塗布し、乾燥硬化させることによって、フェルト側被覆層(21)及びシュー側被覆層(22)からなる被覆層(2)を形成して、本実施例のシュープレス用ベルトを製造した。
A;シュープレス用ベルト、1;基布層、111;第1層経糸、112;第2層経糸、113;第3層経糸、114;第4層経糸、12;緯糸、121;追加緯糸、121a;第1の追加緯糸、121b;第2の追加緯糸、122;無織込追加緯糸、2;被覆層、21;フェルト側被覆層、22;シュー側被覆層。

Claims (5)

  1. 上下n層(n=4以上の整数)に配置された第1層経糸〜第n層経糸からなる経糸と、該経糸を織り成す緯糸とから構成されるn層以上の織布である基布層と、該基布層の少なくとも表面に形成された被覆層と、を有するシュープレス用ベルトであって、
    第2層経糸〜第(n−1)層経糸のうちの少なくともいずれかはマルチフィラメントであり、
    上記緯糸の一部は、上記第2層経糸〜第(n−1)層経糸のいずれかを織り込んで織込部を形成している追加緯糸であり、
    上記織込部の間隔は経糸3本分以上であり、
    上記被覆層は、上記基布層のフェルト側表面に形成されたフェルト側被覆層と、上記基布層のシュー側表面に形成されたシュー側被覆層とからなるシュープレス用ベルト。
  2. 上記追加緯糸は、上記マルチフィラメントを織り込んで織込部を形成している請求項1記載のシュープレス用ベルト。
  3. 上記追加緯糸は2本以上であり、
    該追加緯糸の一部は、上記マルチフィラメントのフェルト側に配置されると共に上記マルチフィラメントを織り込んで上記織込部を形成し、
    該追加緯糸の残部は、上記マルチフィラメントのシュー側に配置されると共に上記マルチフィラメントを織り込んで上記織込部を形成している請求項1又は2記載のシュープレス用ベルト。
  4. 上記追加緯糸は2本以上であり、
    該追加緯糸の一部は、上記マルチフィラメントのシュー側に配置されると共に上記マルチフィラメントを織り込んで上記織込部を形成しており、
    該追加緯糸の残部は、上記マルチフィラメントのフェルト側に配置されると共に上記マルチフィラメントよりもフェルト側に配置されている上記経糸を織り込んで上記織込部を形成している請求項1又は2記載のシュープレス用ベルト。
  5. n=4又は5であり、第3層経糸又は第4層経糸がマルチフィラメントである請求項1乃至4のいずれかに記載のシュープレス用ベルト。
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