JP2010241783A - 抗atbf1抗体及びその用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】感度及び特異性に優れた抗ATBF1抗体を提供すること及びその用途を提供することを課題とする。
【解決手段】全長ヒトATBF1(ATモチーフ結合因子1)を認識するモノクローナル抗体が提供される。当該抗体を用いて被検癌細胞の悪性度を判定する。
【選択図】なし
【解決手段】全長ヒトATBF1(ATモチーフ結合因子1)を認識するモノクローナル抗体が提供される。当該抗体を用いて被検癌細胞の悪性度を判定する。
【選択図】なし
Description
本発明は抗ATBF1(ATモチーフ結合因子1)抗体及びその用途に関する。詳しくは、感度及び特異性に優れた抗ATBF1抗体及びその用途(癌の悪性度判定用試薬及びキット、並びに癌の悪性度判定法など)に関する。
悪性腫瘍全般を指す癌は、それが形成される組織、患者の遺伝的素因、環境要因などによって様々な病態を呈する。癌の治療では一般に、化学療法や放射線療法或いは外科的手術などの中から有効性の最も高いと考えられる療法が優先的に選択される。癌の治療方針の決定にあたっては癌細胞の悪性度を正確に把握することが極めて重要である。癌の悪性度は一般に癌細胞の増殖能と化学療法または放射線療法の効果により決定される。悪性度が低い癌とは増殖能が低く外科的切除が容易であるか、化学療法又は放射線療法が有効であり予後が良好となる。悪性度が高い癌は増殖能が高く、外科的切除が困難か、化学療法や放射線療法が無効であり予後が不良となる。悪性度が特に高い癌の場合には迅速、的確な外科的摘出が望まれるし、的確な補助治療(放射線療法又は化学療法)が必須となる。もし悪性度の判定を誤れば、期待される治療効果が得られず、病態の悪化や、重篤な副作用の発生、或いは再発が引き起こされる。実際、癌の特性、とくに悪性度を判定する有効な手段がないために誤った治療方針の下で治療が実施され、有効な治療効果が得られないまま不幸な結果に至った症例報告も多い。
従来、病態や腫瘍マーカー、病理組織検査などによって癌の悪性度を判定(鑑別)することが試みられてきた。本出願人は先の特許出願(特許文献1)において、ほぼすべての悪性腫瘍に共通して採用できる決定的な判定手法は確立されていないこと、及び従来の判定手法では、同程度の悪性度と判定される二つの病態であってもそれらの予後が全く異なることも多く経験されるために、それらの鑑別が望まれていることに鑑み、ATBF1を利用して癌の悪性度を判定する方法を提案した。尚、本発明に関連する報告を以下に列挙する。
Miura et al. Cloning and characterization of an ATBF1 isoform that expresses in a neuronal differentiation-dependent manner. J. Biol. Chem. (1995) 270: 26840-26848
Kataoka et al. Alpha-fetoprotein producing gastric cancer lacks transcription factor ATBF1. Oncogene (2001) 20: 869-873
Ishii et al. ATBF1-A protein, but not ATBF1-B, is preferentialyexpressed in developing rat brain. J. Compartive Neurology (2003) 465: 57-71
Kataoka et al., ING1 represses transcription by direct DNA binding and through effects on p53. Cancer Res. (2003) 15:5785-92.
野口ら. 脳転移をきたしたAFP産生胃癌の長期生存の一例. 日消外会誌 (2003) 36 (12):1659-1664
Miura et al. Susceptibility to killer T cells of gastric cancer cells enhanced by mitomycin-C induction of ATBF1 and activation of p21 (Waf1-/Cip1) promoter. Microbiol. Immunol (2004) 48: 137-145
Iida et al. Alteration of the AT motif binding factor-1 expression in alpha-fetoprotein producing gastric cancer: is it an event for differentiation and proliferation of the tumors? Oncology Report (2004) 11: 3-7
Kaspar et al. Myb-interacting protein, ATBF1, represses transcriptional activity of Myb oncoprotein. J. Biol. Chem. (1999) 274: 14422-1442
Sun X et al. Frequent somatic mutations of the transcription factor ATBF1 in human prostate cancer. Nat Genet. (2005) Mar 6; [Epub ahead of print]
先の特許出願で報告した判定法では抗ATBF1ポリクローナル抗体を使用していた。従って、ロットにより抗体の性能が変動し、判定結果の再現性に影響を及ぼすおそれがある。また一方で、当該判定法において良好な結果を得ようとすれば、病理組織染色を実施する際、抗原を賦活化(例えばクエン酸緩衝液中で110℃の高圧釜処理)する必要があった。この抗原賦活化は煩雑であり、しかも厳密な条件管理をしないと評価結果にばらつきを生む。本発明は以上の課題に鑑み、感度及び特異性に優れた抗ATBF1抗体を提供すること及びその用途を提供することを課題とする。
ATBF1分子のアミノ酸構造は進化上、極めて良く保存されている。そのために免疫する動物個体によって抗体の産生能力に著しいばらつきが生じ、再現性よく抗ATBF1抗体をポリクローナル抗体として作製することは困難である。そこで、抗ATBF1抗体をモノクローナル抗体として作製することを試みることにした。モノクローナル抗体を作製する際には、一般に、コンピュータによる構造解析を行って一つの理想的な抗原決定配列を選択する。しかし、コンピュータ解析はあくまでも1分子の理論的予測領域を決定するものである。実際のタンパク質は1分子だけで独立して存在するわけではなく、他のタンパク質と相互作用する複合体として組織中に存在するために、反応性の高い抗原決定領域を見出すまでに多数の試行錯誤が必要である。本発明者らは、組織染色性とウエスタンブロットに用いた際に全長ATBF1抗体を検出できることを有用性ないし実用性の指標とし、ATBF1の配列から様々な抗原領域を設定してヒトATBF1を高感度で認識するモノクローナル抗体の取得を試みた。マウスとラットの2系列でモノクローナル化を進めた結果、いくつかのハイブリドーマクローンが得られたものの、それらが産生する抗体は組織染色性や検出能力を欠くものばかりであった。検討を重ねた結果、数多くのクローンの中でラット由来の1クローンのみが所望の性能を備えた抗体を産生することが判明した。このように、試行錯誤の末、目的とするモノクローナル抗体の取得に成功した。当該モノクローナル抗体の性能を調べたところ、感度及び特異性に極めて優れることが示された。また、当該抗体を使用した場合には、病理組織染色の際に抗原賦活化反応を省略したとしても、満足できる判定結果が得られた。本発明は以上の成果に基づくものであり、次の通りである。
[1]全長ヒトATBF1(ATモチーフ結合因子1)を認識するモノクローナル抗体。
[2]ラット由来の抗体である、[1]に記載のモノクローナル抗体。
[3]抗原ペプチドCPSETAADOEELAKDQEGGA(配列番号1)を認識する抗体である、[1]に記載のモノクローナル抗体。
[4]受託番号:NITE P-743で特定されるハイブリドーマが産生する抗体である、[1]に記載のモノクローナル抗体。
[5][1]〜[5]のいずれかに記載のモノクローナル抗体からなる、被検癌細胞の悪性度判定用試薬。
[6][5]に記載の試薬を含む、被検癌細胞の悪性度判定用キット。
[7]生体から分離された被検癌細胞内のATBF1量を、[1]〜[5]のいずれかに記載のモノクローナル抗体若しくは[6]に記載の試薬によって、又は[7]に記載のキットを用いて検出するステップを含んでなる、被検癌細胞の悪性度判定法。
[8]被検癌細胞内のATBF1量を検出し、ATBF1検出量に基づいて被検癌細胞の悪性度を判定する、[7]に記載の被検癌細胞の悪性度判定法。
[9]被検癌細胞の核内のATBF1量を検出し、ATBF1検出量に基づいて被検癌細胞の悪性度を判定する、[7]に記載の被検癌細胞の悪性度判定法。
[10]被検癌細胞の細胞質内のATBF1量を検出し、被検細胞の細胞質中に存在するATBF1量の有無に基づいて被検癌細胞の悪性度を判定する、[7]に記載の被検癌細胞の悪性度判定法。
[11]a)被検癌細胞内のATBF1量を検出するステップと、
b)被検癌細胞の核内のATBF1量を検出するステップと、
c)被検癌細胞の細胞質内のATBF1量を検出するステップと、
d)ステップb)で得られた核内ATBF1量と、ステップc)で得られた細胞質内ATBF1量とを比較し、ATBF1の局在状態に基づいて被検細胞の悪性度を判定するステップと、
を含む、[7]に記載の被検癌細胞の悪性度判定法。
[1]全長ヒトATBF1(ATモチーフ結合因子1)を認識するモノクローナル抗体。
[2]ラット由来の抗体である、[1]に記載のモノクローナル抗体。
[3]抗原ペプチドCPSETAADOEELAKDQEGGA(配列番号1)を認識する抗体である、[1]に記載のモノクローナル抗体。
[4]受託番号:NITE P-743で特定されるハイブリドーマが産生する抗体である、[1]に記載のモノクローナル抗体。
[5][1]〜[5]のいずれかに記載のモノクローナル抗体からなる、被検癌細胞の悪性度判定用試薬。
[6][5]に記載の試薬を含む、被検癌細胞の悪性度判定用キット。
[7]生体から分離された被検癌細胞内のATBF1量を、[1]〜[5]のいずれかに記載のモノクローナル抗体若しくは[6]に記載の試薬によって、又は[7]に記載のキットを用いて検出するステップを含んでなる、被検癌細胞の悪性度判定法。
[8]被検癌細胞内のATBF1量を検出し、ATBF1検出量に基づいて被検癌細胞の悪性度を判定する、[7]に記載の被検癌細胞の悪性度判定法。
[9]被検癌細胞の核内のATBF1量を検出し、ATBF1検出量に基づいて被検癌細胞の悪性度を判定する、[7]に記載の被検癌細胞の悪性度判定法。
[10]被検癌細胞の細胞質内のATBF1量を検出し、被検細胞の細胞質中に存在するATBF1量の有無に基づいて被検癌細胞の悪性度を判定する、[7]に記載の被検癌細胞の悪性度判定法。
[11]a)被検癌細胞内のATBF1量を検出するステップと、
b)被検癌細胞の核内のATBF1量を検出するステップと、
c)被検癌細胞の細胞質内のATBF1量を検出するステップと、
d)ステップb)で得られた核内ATBF1量と、ステップc)で得られた細胞質内ATBF1量とを比較し、ATBF1の局在状態に基づいて被検細胞の悪性度を判定するステップと、
を含む、[7]に記載の被検癌細胞の悪性度判定法。
(用語)
本発明において「被検癌細胞」とは、本発明の方法において悪性度を判定する対象の細胞である。被検癌細胞は生体より分離される。即ち、生体より分離された状態の被検癌細胞に対して本発明が適用される。「生体より分離された」とは、被検癌細胞が存在する生体組織の一部を摘出することによって、被検癌細胞がその由来の生体と完全に隔離されている状態をいう。被検癌細胞は通常、生体で存在していた状態、即ち周囲の細胞と結合した状態で調製され、本発明の方法に使用される。尚、被検癌細胞を周囲の細胞から分離(単離)した後に本発明の方法に使用してもよい。
本発明において「被検癌細胞」とは、本発明の方法において悪性度を判定する対象の細胞である。被検癌細胞は生体より分離される。即ち、生体より分離された状態の被検癌細胞に対して本発明が適用される。「生体より分離された」とは、被検癌細胞が存在する生体組織の一部を摘出することによって、被検癌細胞がその由来の生体と完全に隔離されている状態をいう。被検癌細胞は通常、生体で存在していた状態、即ち周囲の細胞と結合した状態で調製され、本発明の方法に使用される。尚、被検癌細胞を周囲の細胞から分離(単離)した後に本発明の方法に使用してもよい。
本発明における被検癌細胞には、他の診断法によって癌であると判断される細胞、癌である蓋然性が高いと判断される細胞、及び癌である可能性を有する細胞が含まれる。好ましくは、他の診断法によって癌であると判断される細胞、又は癌である蓋然性が高いと判断される細胞が用いられる。ここでの他の診断法としては例えば、X線造影検査、内視鏡検査、超音波検査、CT検査、MRI検査、PET検査、腫瘍マーカーを用いた診断法などが該当する。通常は、これらの一つ以上によって癌が疑われる組織から被検癌細胞が採取される。
本発明において「癌」は広義に解釈することとし、癌腫及び肉腫を含む。また、本発明において用語「癌」は「腫瘍」と互換的に使用される。また、病理学的に診断が確定される前の段階、すなわち腫瘍としての良性、悪性のどちらかが確定される前には、良性腫瘍、良性悪性境界病変、悪性腫瘍を総括的に含む場合もあり得る。
「ATBF1」とは、AT motif binding factor 1(ATモチーフ結合因子1)をいう。ATBF1は、AFP(アルファフェトプロテイン)調節因子のATリッチドメインに結合し、AFP遺伝子の発現を下方調節する転写因子であることが知られている(非特許文献1を参照)。ATBF1については、異なったプロモーターの使用及び選択的スプライシングにより形成される、分子量の異なった2つのアイソフォームであるATBF1-A(404kDa、アミノ酸配列を配列番号3に示す。また、ATBF1-Aをコードする塩基配列(GenBank accession number:L32832を参照)を配列番号4に示す。)とATBF1-B(306kDa、アミノ酸配列を配列番号5に示す。また、ATBF1-Bをコードする塩基配列(GenBank accession number:L32833を参照)を配列番号6に示す。)の存在が知られている(非特許文献1を参照)。ATBF1-Aはタンパク質N末端側がATBF1-Bよりも920アミノ酸長い構造を有している。本明細書では用語「ATBF1」をこれら2つのアイソフォームを包括する表現として使用する。従って、特に言及しない限り、「ATBF1量」とは各アイソフォームの存在量の総和を意味する。本発明の方法では原則として当該総和を検出対象とする。但し、いずれかのアイソフォームの量のみを検出対象にすることを妨げるものではない。尚、単に「ATBF1」と記載した場合、その他の意味であることが明らかであるときを除いて、それはATBF1タンパク質を意味する。
「被検癌細胞内のATBF1量」とは、被検癌細胞の核内および細胞質におけるATBF1の存在量の総計をいう。本明細書において、「被検癌細胞内のATBF1量」のことを「被検癌細胞の細胞全体のATBF1量」ともいう。一方「被検癌細胞の核内のATBF1量」とは、被検癌細胞の核内におけるATBF1の存在量をいう。同様に、「被検癌細胞の細胞質内のATBF1量」とは、被検癌細胞の細胞質内におけるATBF1の存在量をいう。
「ATBF1量を検出する」とは、ATBF1の存在量を絶対量として又は相対量として把握することをいう。ここでの相対量の基準は例えば、悪性度に応じて用意した標準試料のATBF1量とすることができる。或いは核内のATBF1量が検出対象のときに、細胞質内のATBF1量を基準とし、同様に細胞質内のATBF1量が検出対象のときに核内のATBF1量を基準とすることもできる。尚、「ATBF1量を検出する」は、ATBF1が存在するか否かを調べることも含む。通常は、ATBF1の存否及び、存在する場合にはその量が調べられることになる。厳密にATBF1量を定量することは必須でなく、例えば、悪性度の指標となる対照のATBF1量と比較することによって、被検癌細胞の悪性度を判定することが可能な程度にATBF1量を測定できればよい。
(抗ATBF1モノクローナル抗体及びその調製法)
本発明の第1の局面は、ATBF1を認識するモノクローナル抗体(抗ATBF1モノクローナル抗体)に関する。本発明の抗ATBF1モノクローナル抗体(以下、「本発明の抗体」と略称する)は全長ヒトATBF1を認識する。即ち、全長ヒトATBF1に対して特異的結合性を示す。本発明の抗体の調製法は特に限定されない。免疫学的手法、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法などを利用して調製することができる。
本発明の第1の局面は、ATBF1を認識するモノクローナル抗体(抗ATBF1モノクローナル抗体)に関する。本発明の抗ATBF1モノクローナル抗体(以下、「本発明の抗体」と略称する)は全長ヒトATBF1を認識する。即ち、全長ヒトATBF1に対して特異的結合性を示す。本発明の抗体の調製法は特に限定されない。免疫学的手法、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法などを利用して調製することができる。
免疫学的手法によるモノクローナル抗体の調製は次の手順で行うことができる。抗原(例えばATBF1又はその一部)を調製し、これを用いて動物(マウスやラットなど)に免疫を施す。抗原として、以下の配列からなるペプチドを用いることが好ましい。
CPSETAADPEELAKDQEGGA(配列番号1)
CPSETAADPEELAKDQEGGA(配列番号1)
化学合成した抗原、組換え抗原、又は生体試料から精製した抗原を用いることが可能である。低分子量のために有効な免疫惹起作用を期待できない場合には、キャリアタンパク質を結合させた抗原を用いることが好ましい。キャリアタンパク質としてはKLM(Keyhole Light Hemocyanin)、BSA(Bovine Serum Albumin)、OVA(Ovalbumin)などが使用される。キャリアタンパク質の結合にはカルボジイミド法、グルタルアルデヒド法、ジアゾ縮合法、MBS(マレイミドベンゾイルオキシコハク酸イミド)法などを使用できる。一方、ATBF1(又はその一部)を、GST、βガラクトシダーゼ、マルトース結合タンパク、又はヒスチジン(His)タグ等との融合タンパク質として発現させた抗原を用いることもできる。このような融合タンパク質は、汎用的な方法により簡便に精製することができる。
必要に応じて免疫を繰り返し、十分に抗体価が上昇した時点で採血し、遠心処理などによって血清を得る。十分に抗体価が上昇した時点で免疫動物から抗体産生細胞を摘出する。次に、得られた抗体産生細胞と骨髄腫細胞とを融合してハイブリドーマを得る。続いて、このハイブリドーマをモノクローナル化した後、ATBF1に対して高い特異性を有する抗体を産生するクローンを選択する。選択されたクローンの培養液を精製することによって目的の抗体が得られる。一方、ハイブリドーマを所望数以上に増殖させた後、これを動物(例えばマウス)の腹腔内に移植し、腹水内で増殖させて腹水を精製することにより目的の抗体を取得することもできる。上記培養液の精製又は腹水の精製には、プロテインG、プロテインA等を用いたアフィニティークロマトグラフィーが好適に用いられる。また、抗原を固相化したアフィニティークロマトグラフィーを用いることもできる。更には、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、硫安分画、及び遠心分離等の方法を用いることもできる。これらの方法は単独ないし任意に組み合わされて用いられる。
全長ヒトATBF1への特異的結合性を保持することを条件として、得られた抗体に種々の改変を施すことができる。このような改変抗体も本発明の一つである。
低分子化合物、タンパク質、標識物質などを融合又は結合させた融合抗体又は標識化抗体を構成することができる。このような修飾抗体も本発明の一つである。標識物質としては例えば、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、オレゴングリーン等の蛍光色素、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ等の酵素、ルミノール、アクリジン色素等の化学又は生物発光化合物、32P、131I、 125I等の放射性同位体、及びビオチンを挙げることができる。
本発明者らは、上記抗原ペプチド(配列番号1)を用いた免疫学的手法によって、全長ヒトATBF1を感度よく且つ高い特異性をもって検出できるモノクローナル抗体(本明細書中でR87と呼称する)を取得することに成功した。当該モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは以下の通り所定の寄託機関に寄託されており、容易に入手可能である。
寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)
寄託日:2009年5月8日
受領番号:NITE P-743
寄託機関:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)
寄託日:2009年5月8日
受領番号:NITE P-743
(癌細胞の悪性度判定用試薬及びキット)
本発明の第2の局面は本発明の抗体の用途に関する。先の特許出願(国際公開第2006/011587号パンフレット)で報告した通り、抗ATBF1抗体は癌細胞の悪性度判定に極めて有用である。当該知見に基づき、この局面では、本発明の抗体からなる、被検癌細胞の悪性度判定用試薬が提供される。また当該試薬を構成要素とした、被検癌細胞の悪性度判定用キットが提供される。
本発明の第2の局面は本発明の抗体の用途に関する。先の特許出願(国際公開第2006/011587号パンフレット)で報告した通り、抗ATBF1抗体は癌細胞の悪性度判定に極めて有用である。当該知見に基づき、この局面では、本発明の抗体からなる、被検癌細胞の悪性度判定用試薬が提供される。また当該試薬を構成要素とした、被検癌細胞の悪性度判定用キットが提供される。
好ましい一態様では、上掲のハイブリドーマが産生する抗体又はその修飾体(例えば標識化抗体)を本発明の試薬とする。Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、dsFv抗体などの抗体断片を用いて本発明の試薬を構成してもよい。
本発明のキットは、主要構成成分として本発明の試薬を含む。本発明のキットを用いることによって、後述の判定法(即ち、被検癌細胞の悪性度判定法)をより簡便に且つより短時間で実施することが可能となる。抗ATBF1抗体の結合量を直接検出する方法用のキットの場合には、標識化された抗ATBF1抗体からなる試薬が用いられる。一方、間接的検出方法用のキットの場合には、未標識の抗ATBF1抗体からなる試薬が用いられる。この場合には、標識物質で標識化された二次抗体(標識二次抗体)をキットに含めてもよい。二次抗体と標識物質を結合させたポリマーを利用した検出法用のキットとする場合には、当該ポリマーをキットに含めてもよい。
一方、キットにヒトATBF1(抗原)を更に含めることにしてもよい。ここでのヒトATBF1は全長であっても断片であってもよい。好ましくは全長ヒトATBF1を用いる。尚、抗原の由来、調製法は特に限定されない。例えば、組み換えDNA技術によって調製した組換え抗原を用いることができる。抗原は、典型的には、キットを使用して得られた染色性が抗ATBF1抗体とATBF1との特異的結合に基づくものであることを確認するために使用される。具体的にはまず、抗原で抗ATBF1抗体を処理する。処理後の抗ATBF1抗体を用いて免疫染色を行う。得られた染色像と、未処理の抗ATBF1抗体を使用して得られた染色像とを比較する。後者の染色像の方に強い染色性が認められれば、その染色性は抗ATBF1抗体とATBF1との特異的結合に基づくものであることを確認できる。
一方で、タグやキャリアタンパク質(以下、タグ等という)との融合タンパク質を抗原として作製した抗ATBF1抗体をキットに使用する場合には、用いたタグ等をキットに更に含めることにしてもよい。キットを構成する抗ATBF1抗体中に、その作製過程で使用したタグ等に反応性を有する抗体が混在しているおそれのある場合に当該タグ等が必要となる。以下のように当該タグ等を利用すれば、キットを使用して得られた染色性が抗ATBF1抗体とATBF1抗体との特異的結合に基づくものであることを確認することができる。まず、このタグ等で抗ATBF1抗体を処理する。処理後の抗ATBF1抗体を用いて検体の免疫染色を行う。得られた染色像と、未処理の抗ATBF1抗体を使用して得られた染色像とを比較する。両者の間で染色性に相違がなければ、後者の染色像における染色性は抗ATBF1抗体とATBF1との特異的結合に基づくものであることを確認できる。
本発明のキットに、抗原抗体反応や染色等、免疫染色を実施する上で必要な一以上の試薬(例えば、組織固定・包埋用のホルマリンやパラフィン、非特異的結合を阻害するためのBSA、DAB等の発色試薬、核染色用のヘマトキシリン溶液など)や器具などを更に含めてもよい。また通常は、本発明のキットには取り扱い説明書が添付される。
(被検癌細胞の悪性度判定法)
本発明の更なる局面は、被検癌細胞の悪性度を判定する方法(悪性度判定法)に関する。本発明において「悪性度判定法」とは、被検癌細胞の悪性度を判定する方法をいう。癌の悪性度は一般に細胞異型、細胞、組織構築の異形性、増殖性、浸潤性、転移性などを基準に分類(判定)される。一般に悪性度が低い癌では細胞の増殖速度が遅く、浸潤転移を来し難いため外科的切除が容易である場合と、化学療法や放射線療法が有効であるが故に腫瘍を容易に縮小させ得る場合が考えられ、これらが組み合わさって予後が良好となる。これに対して悪性度が高い癌では細胞の増殖速度が早く、浸潤転移を来し易いため外科的切除が困難となりやすい場合と、化学療法や放射線療法が無効であるが故に腫瘍を縮小させるのが困難な場合が考えられ、これらが組み合わさって予後が不良となる。悪性度が特に高い癌の場合には迅速、的確な外科的摘出が望まれるし、的確な補助治療(放射線療法又は化学療法)を含む集学的治療が必須となる。本発明では、癌の増殖速度に起因する浸潤、転移の容易さ、すなわち癌の増殖能の予測、および化学療法又は放射線療法による有効な治療効果が得られるか否かの予測をもって、悪性度判定の基準とすることができる。従って、増殖能が低く(細胞周期停止を来し易く)、化学療法又は放射線療法が有効と予測される(DNAダメージによりアポトーシスが導入され易い)癌の場合に悪性度が低いということができ、逆に増殖能が高く(細胞周期停止を来し難く)、化学療法又は放射線療法が無効と予測される(DNAダメージによってもアポトーシスが導入され難い)癌の場合に悪性度が高いということができる。ここで、増殖能、化学療法又は放射線療法の有効さという2つの因子を考慮すべき理由および注意点に関して、肺の小細胞癌(燕麦細胞癌)を例にあげて説明することにする。一般的に肺の小細胞癌は高度悪性とされ、予後が悪い事で有名な癌である。しかし希ながら症例によっては、早期に化学療法を施行する事により完全治癒が可能な場合もある。本発明者らの検索では、肺の小細胞癌は核にも細胞質にも強いATBF1の発現を認めた(国際公開第2006/011587号パンフレットを参照)。細胞質の染色性の強さから高い増殖能を予測すれば、早急に浸潤、転移して進展するため外科治療が不可能な場合が多い事を意味し、それは高度悪性と判断する事になる。しかし一方で、核の強い染色性よりDNAダメージによりアポトーシスを導入しやすい事を予測すると、化学療法に反応し易く、時に癌細胞を完全に死滅させ得る可能性から、低悪性度の癌と判断する事にもなる。従って悪性度を決める際には、癌の増殖能、化学療法又は放射線療法の有効さの2つの因子を常に考慮する必要があるのが現実であり、また実際的、実用的である。さらに悪性度を考える時の注意点でもある。但し、以上の2つの因子のいずれかを指標として癌の悪性度を評価することもできる。
本発明の更なる局面は、被検癌細胞の悪性度を判定する方法(悪性度判定法)に関する。本発明において「悪性度判定法」とは、被検癌細胞の悪性度を判定する方法をいう。癌の悪性度は一般に細胞異型、細胞、組織構築の異形性、増殖性、浸潤性、転移性などを基準に分類(判定)される。一般に悪性度が低い癌では細胞の増殖速度が遅く、浸潤転移を来し難いため外科的切除が容易である場合と、化学療法や放射線療法が有効であるが故に腫瘍を容易に縮小させ得る場合が考えられ、これらが組み合わさって予後が良好となる。これに対して悪性度が高い癌では細胞の増殖速度が早く、浸潤転移を来し易いため外科的切除が困難となりやすい場合と、化学療法や放射線療法が無効であるが故に腫瘍を縮小させるのが困難な場合が考えられ、これらが組み合わさって予後が不良となる。悪性度が特に高い癌の場合には迅速、的確な外科的摘出が望まれるし、的確な補助治療(放射線療法又は化学療法)を含む集学的治療が必須となる。本発明では、癌の増殖速度に起因する浸潤、転移の容易さ、すなわち癌の増殖能の予測、および化学療法又は放射線療法による有効な治療効果が得られるか否かの予測をもって、悪性度判定の基準とすることができる。従って、増殖能が低く(細胞周期停止を来し易く)、化学療法又は放射線療法が有効と予測される(DNAダメージによりアポトーシスが導入され易い)癌の場合に悪性度が低いということができ、逆に増殖能が高く(細胞周期停止を来し難く)、化学療法又は放射線療法が無効と予測される(DNAダメージによってもアポトーシスが導入され難い)癌の場合に悪性度が高いということができる。ここで、増殖能、化学療法又は放射線療法の有効さという2つの因子を考慮すべき理由および注意点に関して、肺の小細胞癌(燕麦細胞癌)を例にあげて説明することにする。一般的に肺の小細胞癌は高度悪性とされ、予後が悪い事で有名な癌である。しかし希ながら症例によっては、早期に化学療法を施行する事により完全治癒が可能な場合もある。本発明者らの検索では、肺の小細胞癌は核にも細胞質にも強いATBF1の発現を認めた(国際公開第2006/011587号パンフレットを参照)。細胞質の染色性の強さから高い増殖能を予測すれば、早急に浸潤、転移して進展するため外科治療が不可能な場合が多い事を意味し、それは高度悪性と判断する事になる。しかし一方で、核の強い染色性よりDNAダメージによりアポトーシスを導入しやすい事を予測すると、化学療法に反応し易く、時に癌細胞を完全に死滅させ得る可能性から、低悪性度の癌と判断する事にもなる。従って悪性度を決める際には、癌の増殖能、化学療法又は放射線療法の有効さの2つの因子を常に考慮する必要があるのが現実であり、また実際的、実用的である。さらに悪性度を考える時の注意点でもある。但し、以上の2つの因子のいずれかを指標として癌の悪性度を評価することもできる。
本発明では、a)被検癌細胞内のATBF1量を検出するステップが実施される。その結果得られたATBF1検出量に基づいて被検癌細胞の悪性度を判定する。先の特許出願(国際公開第2006/011587号パンフレット)で報告した通り、例えば、細胞全体(核及び細胞質の両方)においてATBF1量が少ない症例の悪性度は非常に高いものであるのに対し、ATBF1の発現量が多い場合、予後が良好で、各種療法に反応しやすい事が多かった。従って、細胞全体のATBF1量がまず悪性度の判定指標として有効である。本発明において被検細胞の悪性度を判定する際に、まず第1に被検癌細胞の核内及び細胞質内を含む細胞全体のATBF1量を考慮することが好ましい。
本発明の一形態では、b)被検癌細胞の核内のATBF1量を検出するステップが実施される。その結果得られたATBF1検出量に基づいて被検癌細胞の悪性度を判定する。具体的には例えば、核内に多量のATBF1が検出された場合に、増殖能が低く、化学療法又は放射線療法に感受性が高いと予測され、一般的には被検癌細胞の悪性度は低いと判定できる。しかし前述の肺小細胞癌のごとく、核にも細胞質にも同時にATBF1発現を示す場合は、増殖能、化学療法又は放射線療法の感受性を個別に判断しつつ、総合的に悪性度を決定することが望まれる。
本発明の一形態では、c)被検癌細胞の細胞質内のATBF1量を検出するステップが実施される。この形態では、被検細胞の細胞質中に存在するATBF1量の有無に基づいて被検癌細胞の悪性度が判定される。具体的には例えば、細胞質内に多量のATBF1が検出された場合に、被検癌細胞の増殖能が維持されていると判定することができる。また細胞質内にATBF1が検出されない場合又は検出量が少ない場合にも、核でのATBF1発現が無いという条件下では、被検癌細胞の増殖能は維持されていると判定できる。ここでも最終的には核での発現状態を考慮した総合判定が好ましい。
本発明の好適な一形態では、a)被検癌細胞内のATBF1量を検出するステップ、b)被検癌細胞の核内のATBF1量を検出するステップ、さらにc)被検癌細胞の細胞質内のATBF1量を検出するステップを実施した後、d)ステップbで得られた核内ATBF1量と、ステップcで得られた細胞質内ATBF1量とを比較するステップを実施する。この形態ではATBF1量が、被検細胞の核内と細胞質内との間で比較される。そして主にATBF1の局在状態に基づいて被検細胞の悪性度が判定される。このように核内と細胞質内のATBF1量を比較するようにすれば、より正確に悪性度を評価できる。先の特許出願(国際公開第2006/011587号パンフレット)で報告した通り、増殖能が低い、あるいは化学療法又は放射線療法の感受性が高いとされ、悪性度が低いと予測、判断できる癌細胞ではATBF1が核に局在する傾向がある事が判明した。一方、ATBF1が細胞質に限局している場合(即ち、相対的に核内のATBF1量が少ない場合)には、組織学的に癌の上皮下浸潤など進展性が強くなるとともに、化学療法又は放射線療法の感受性が低くなる傾向を示し、より悪性度が高くなることが判った。さらに高度悪性とされる種類の癌の検索や、一般の癌でもその転移巣での検索などを通して、ATBF1が核にも細胞質にも欠落するようになると、より悪性度の高くなる傾向が明確となった。
本発明の方法では、典型的には、悪性度が順に高くなる複数の区分のいずれに被検癌細胞が分類されるかを判定する。ここでの区分の数は特に限定されない。例えば3区分(具体的には例えば悪性度1(低い):ATBF1が核に局在する傾向、悪性度2(中程度):ATBF1が細胞質に局在する傾向、悪性度3(高い):ATBF1が核細胞質ともに欠落する傾向とする。あるいは悪性度4区分(具体的には例えば悪性度1(低い:ATBF1が核に高度に局在する傾向、悪性度2(中程度):ATBF1が核に軽度から中等度局在する傾向、悪性度3(高い):ATBF1が細胞質に限局し、核での発現が少ない傾向、悪性度4(非常に高い):ATBF1が核にも細胞質にも欠落する傾向とする)などを設けることが可能である。なお前述した化学療法前の肺小細胞癌のごとく核・細胞質ともに高度のATBF1発現を示し、増殖能も高度だが化学療法の感受性も高い癌を上記悪性度1〜3、あるいは1〜4のどの範疇に属する悪性度と捉えるかについては一律には判断が難しいと予想される。このような場合には、増殖能、化学療法又は放射線療法の感受性という悪性度の指標2つを個別に考慮するとよい。
本発明が対象とする癌の種類は特に限定されない。例えば、膀胱癌、胃癌、皮膚腫瘍、舌癌などを含む各種の腫瘍の悪性度を判定することに本発明を適用することができる。尚、先の特許出願(国際公開第2006/011587号パンフレット)で報告した通り、本発明者らの検討によって様々な種類の癌において、その悪性度と細胞内ATBF1発現量との間に関連性が存在することが明らかとなった。また、癌の悪性度と癌細胞の核内及び細胞質内のATBF1量(ATBF1の核・細胞質局在)との間にも関連性が認められた。
被検癌細胞は、被疑癌組織から採取することができる。具体的には、被疑癌組織の一部をバイオプシー(生検)で採取し、被検癌細胞を含む試料としてそれを本発明の方法に供することができる。
本発明においてATBF1量の検出は、これに限定されるものではないが、好ましくは免疫組織化学的染色法を利用して行う。免疫組織化学的染色法によれば、迅速に且つ感度よくATBF1量等を検出できる。また、操作も簡便である。従って、ATBF1量等の検出に伴う被検者(患者)への負担も小さくなる。免疫組織化学的染色法では通常、まず被検癌細胞に対して、検出対象に特的な抗体(例えば抗ATBF1抗体)を接触させる。その後、細胞全体、核、及び/又は細胞質に対する当該抗体の結合量を測定する。そして測定結果から、被検癌細胞の細胞全体、核内、及び/又は細胞質内の検出対象の存在量を算出する。具体的には、以下に示す免疫組織化学的染色法に従って本発明の方法を実施することができる。
生体組織の免疫組織化学的染色は一般に以下の手順(1)〜(9)で実施される。尚、生体組織の免疫組織化学的染色法については様々な文献及び成書を参照することができる(例えば、「酵素抗体法、改訂第3版」、渡辺慶一、中根一穂編集、学際企画)。
(1)固定・パラフィン包埋
外科的に生体より採取した組織をホルマリンやパラフォルムアルデヒド、無水エチルアルコール等によって固定する。その後パラフィン包埋する。一般にアルコールで脱水した後キシレンで処理し、最後にパラフィンで包埋する。パラフィンで包埋された標本を所望の厚さ(例えば3〜5μm厚)に薄切し、スライドガラス上に伸展させる。尚、パラフィン包埋標本に代えてアルコール固定標本、乾燥封入した標本、凍結標本などを用いる場合もある。
(2)脱パラフィン
一般にキシレン、アルコール、及び精製水で順に処理する。
(3)前処理(抗原賦活)
必要に応じて抗原賦活のために酵素処理、加熱処理及び/又は加圧処理等を行う。本発明者らが取得に成功したR87の場合、この抗原賦活処理を省略し、操作の簡便化を図ることが可能である。但し、R87を使用した場合においても、感度の向上などを目的として抗原賦活処理を行うことを妨げない。
(4)内因性ペルオキシダーゼ除去
染色の際の標識物質としてペルオキシダーゼを使用する場合、過酸化水素水で処理して内因性ペルオキシダーゼ活性を除去しておく。
(5)非特異的反応阻害
切片をウシ血清アルブミン溶液(例えば1%溶液)で数分から数十分程度処理して非特異的反応を阻害する。尚、ウシ血清アルブミンを含有させた抗体溶液を使用して次の一次抗体反応を行うこととし、この工程を省略してもよい。
(5)一次抗体反応
適当な濃度に希釈した抗体をスライドガラス上の切片に滴下し、その後数十分〜数時間反応させる。反応終了後、リン酸緩衝液など適当な緩衝液で洗浄する。
(6)標識試薬の添加
標識物質としてペルオキシダーゼが頻用される。ペルオキシダーゼを結合させた2次抗体をスライドガラス上の切片に滴下し、その後数十分〜数時間反応させる。反応終了後、リン酸緩衝液など適当な緩衝液で洗浄する。
(7)発色反応
トリス緩衝液にDAB(3,3'-diaminobenzidine)を溶解する。続いて過酸化水素水を添加する。このようにして調製した発色用溶液を数分間(例えば5分間)切片に浸透させ、発色させる。発色後、切片を水道水で十分に洗浄し、DABを除去する。
(8)核染色
マイヤーのヘマトキシリンを数秒〜数十秒反応させて核染色を行う。流水で洗浄し色出しする(通常、数分間)。
(9)脱水、透徹、封入
アルコールで脱水した後、キシレンで透徹処理し、最後に合成樹脂やグリセリン、ゴムシロップなどで封入する。
以下、実施例(実験例を含む)を用いて本発明をより詳細に説明する。
(1)固定・パラフィン包埋
外科的に生体より採取した組織をホルマリンやパラフォルムアルデヒド、無水エチルアルコール等によって固定する。その後パラフィン包埋する。一般にアルコールで脱水した後キシレンで処理し、最後にパラフィンで包埋する。パラフィンで包埋された標本を所望の厚さ(例えば3〜5μm厚)に薄切し、スライドガラス上に伸展させる。尚、パラフィン包埋標本に代えてアルコール固定標本、乾燥封入した標本、凍結標本などを用いる場合もある。
(2)脱パラフィン
一般にキシレン、アルコール、及び精製水で順に処理する。
(3)前処理(抗原賦活)
必要に応じて抗原賦活のために酵素処理、加熱処理及び/又は加圧処理等を行う。本発明者らが取得に成功したR87の場合、この抗原賦活処理を省略し、操作の簡便化を図ることが可能である。但し、R87を使用した場合においても、感度の向上などを目的として抗原賦活処理を行うことを妨げない。
(4)内因性ペルオキシダーゼ除去
染色の際の標識物質としてペルオキシダーゼを使用する場合、過酸化水素水で処理して内因性ペルオキシダーゼ活性を除去しておく。
(5)非特異的反応阻害
切片をウシ血清アルブミン溶液(例えば1%溶液)で数分から数十分程度処理して非特異的反応を阻害する。尚、ウシ血清アルブミンを含有させた抗体溶液を使用して次の一次抗体反応を行うこととし、この工程を省略してもよい。
(5)一次抗体反応
適当な濃度に希釈した抗体をスライドガラス上の切片に滴下し、その後数十分〜数時間反応させる。反応終了後、リン酸緩衝液など適当な緩衝液で洗浄する。
(6)標識試薬の添加
標識物質としてペルオキシダーゼが頻用される。ペルオキシダーゼを結合させた2次抗体をスライドガラス上の切片に滴下し、その後数十分〜数時間反応させる。反応終了後、リン酸緩衝液など適当な緩衝液で洗浄する。
(7)発色反応
トリス緩衝液にDAB(3,3'-diaminobenzidine)を溶解する。続いて過酸化水素水を添加する。このようにして調製した発色用溶液を数分間(例えば5分間)切片に浸透させ、発色させる。発色後、切片を水道水で十分に洗浄し、DABを除去する。
(8)核染色
マイヤーのヘマトキシリンを数秒〜数十秒反応させて核染色を行う。流水で洗浄し色出しする(通常、数分間)。
(9)脱水、透徹、封入
アルコールで脱水した後、キシレンで透徹処理し、最後に合成樹脂やグリセリン、ゴムシロップなどで封入する。
以下、実施例(実験例を含む)を用いて本発明をより詳細に説明する。
1.全長ヒトATBF1を認識するモノクローナル抗体の作製
(A)方法
ATBF1の配列から抗原性を予測し、2種類の抗原を設定した(図1)。これらの抗原と、既存の抗ATBF1ポリクローナル抗体を調製する際に使用した抗原を用い、免疫学的手法によってヒトATBF1を認識するモノクローナル抗体の調製を試みた。抗原性の予測によって見出された抗原(CPSETAADPEELAKDQEGGA:配列番号1)を免疫原とした場合のプロトコールを以下に示す。他の抗原を使用した場合のプロトコールもこれに準ずるが、抗原に応じてマウス又はラットを免疫動物とした。
(A)方法
ATBF1の配列から抗原性を予測し、2種類の抗原を設定した(図1)。これらの抗原と、既存の抗ATBF1ポリクローナル抗体を調製する際に使用した抗原を用い、免疫学的手法によってヒトATBF1を認識するモノクローナル抗体の調製を試みた。抗原性の予測によって見出された抗原(CPSETAADPEELAKDQEGGA:配列番号1)を免疫原とした場合のプロトコールを以下に示す。他の抗原を使用した場合のプロトコールもこれに準ずるが、抗原に応じてマウス又はラットを免疫動物とした。
(1)抗原調製
固相法ペプチド合成装置(Applied Biosystems / Pioneer)により「ATBF1の領域1159-1177に相当するアミノ酸配列CPSETAADPEELAKDQEGGA(配列番号1)を合成した。TFA法により樹脂から切り離してエーテル沈殿による粗ペプチドを回収した。回収した粗ペプチド画分をHPLCで精製し、MALDI TOF-Mass(Applied Biosystems / Voyager)による分子量確認後に分取し、凍結乾燥した。MBS法により、合成したペプチドのN末システインを介してキャリアー蛋白KLHを結合し、免疫原とした。
固相法ペプチド合成装置(Applied Biosystems / Pioneer)により「ATBF1の領域1159-1177に相当するアミノ酸配列CPSETAADPEELAKDQEGGA(配列番号1)を合成した。TFA法により樹脂から切り離してエーテル沈殿による粗ペプチドを回収した。回収した粗ペプチド画分をHPLCで精製し、MALDI TOF-Mass(Applied Biosystems / Voyager)による分子量確認後に分取し、凍結乾燥した。MBS法により、合成したペプチドのN末システインを介してキャリアー蛋白KLHを結合し、免疫原とした。
(2)免疫
Wister、4週齢、雌ラットを免疫動物とした。免疫原(合成ペプチド)を10% DMSO-PBSで1mg/mLに調整した。foot pad法により免疫した。まず、免疫原100μLとアジュバント100μL(complete adjuvant (FREUND) 三菱化学ヤトロン RM606-1)を混合してエマルジョンを形成し、ラット(4匹)の足の裏に各50μLずつ免疫した。3日おきに2回目、3回目(最終免疫)の免疫を行い、最終免疫の3日後に細胞融合を行った。
Wister、4週齢、雌ラットを免疫動物とした。免疫原(合成ペプチド)を10% DMSO-PBSで1mg/mLに調整した。foot pad法により免疫した。まず、免疫原100μLとアジュバント100μL(complete adjuvant (FREUND) 三菱化学ヤトロン RM606-1)を混合してエマルジョンを形成し、ラット(4匹)の足の裏に各50μLずつ免疫した。3日おきに2回目、3回目(最終免疫)の免疫を行い、最終免疫の3日後に細胞融合を行った。
(3)細胞融合
以下の試薬を使用した。
PEG4000(MERCK, Cat No 1097270100)
HAT培地:HAT supplement(×50)(GIBCO, Cat No 21060-017)
RPMI1640(SIGMA, Cat No R8758)
以下の試薬を使用した。
PEG4000(MERCK, Cat No 1097270100)
HAT培地:HAT supplement(×50)(GIBCO, Cat No 21060-017)
RPMI1640(SIGMA, Cat No R8758)
以下の手順(a)〜(e)に従い、ハイブリドーマを調製した。
(a)リンパ節由来細胞の抽出
免疫したラットの両足から肥大したリンパ節を取り出し、リンパ節に切込みを入れて、ピンセット等で細胞をたたき出し、遠心して回収した。
(b)ミエローマ細胞(P3U1)の回収
培養フラスコで増殖させたミエローマ細胞(培地:10%FBS-RPMI)を回収した。
(c)細胞融合
回収したリンパ節由来細胞とミエローマを2:1〜10:1の割合になるように混和し、遠心した。ペレットに50% PEG(RPMIで等量希釈)を加え、細胞融合を行った。
(d)洗浄後、15% FBS-HAT培地(初期の不安定なハイブリドーマをレスキューするためBM-condimed:roche, Cat.No 663573等のsupplementを添加)320mlでサスペンドし、96穴プレート24枚に播種した(2回目は12枚)。
(d)3日後に培地交換し、コロニーの形成を確認した後(1〜2週間後)、1次スクリーニングを行った。
(a)リンパ節由来細胞の抽出
免疫したラットの両足から肥大したリンパ節を取り出し、リンパ節に切込みを入れて、ピンセット等で細胞をたたき出し、遠心して回収した。
(b)ミエローマ細胞(P3U1)の回収
培養フラスコで増殖させたミエローマ細胞(培地:10%FBS-RPMI)を回収した。
(c)細胞融合
回収したリンパ節由来細胞とミエローマを2:1〜10:1の割合になるように混和し、遠心した。ペレットに50% PEG(RPMIで等量希釈)を加え、細胞融合を行った。
(d)洗浄後、15% FBS-HAT培地(初期の不安定なハイブリドーマをレスキューするためBM-condimed:roche, Cat.No 663573等のsupplementを添加)320mlでサスペンドし、96穴プレート24枚に播種した(2回目は12枚)。
(d)3日後に培地交換し、コロニーの形成を確認した後(1〜2週間後)、1次スクリーニングを行った。
(4)1次スクリーニング(ELISA)
(4−1)抗原感作
免疫原をPBSで1μg/mLに希釈後、感作用プレート(NUNC, Cat No 468667)に50μL/wellで分注し、室温で3時間又は4℃で終夜静置した。感作後、抗原溶液を除去し、Blocking Buffer(MBL製)を100μL/wellで分注し、室温で3時間又は4℃で終夜静置した。
(4−1)抗原感作
免疫原をPBSで1μg/mLに希釈後、感作用プレート(NUNC, Cat No 468667)に50μL/wellで分注し、室温で3時間又は4℃で終夜静置した。感作後、抗原溶液を除去し、Blocking Buffer(MBL製)を100μL/wellで分注し、室温で3時間又は4℃で終夜静置した。
(4−2)ELISA
サンプリングした各培養上清を50μL/wellで加え、室温で60分間反応させた。0.05% Tween 20含有のPBSで3回洗浄後、POD標識抗ラットIgG抗体を青Buffer(MBL製希釈液)で2,000倍希釈したものを50μL/wellで加え、室温で60分間反応させた。3回洗浄後、発色液(MBL製)を100μL/wellで加え5分間発色させた。1.5 mol/Lリン酸を100μL/wellで加え、反応を停止した。反応停止後、測定波長450nm、参照波長620nmで吸光度を測定した。
サンプリングした各培養上清を50μL/wellで加え、室温で60分間反応させた。0.05% Tween 20含有のPBSで3回洗浄後、POD標識抗ラットIgG抗体を青Buffer(MBL製希釈液)で2,000倍希釈したものを50μL/wellで加え、室温で60分間反応させた。3回洗浄後、発色液(MBL製)を100μL/wellで加え5分間発色させた。1.5 mol/Lリン酸を100μL/wellで加え、反応を停止した。反応停止後、測定波長450nm、参照波長620nmで吸光度を測定した。
<判定基準>
免疫原に対する吸光度が0.2以上のクローンを陽性とした。なお、擬似陽性等のアーティファクトを除くため、継代培養しながら複数回の活性確認を行い、最終の測定結果に基づき判定した。
免疫原に対する吸光度が0.2以上のクローンを陽性とした。なお、擬似陽性等のアーティファクトを除くため、継代培養しながら複数回の活性確認を行い、最終の測定結果に基づき判定した。
(5)2次スクリーニング(ウエスタンブロット)
HEK293T細胞へHA-ATBF1を強制発現させた細胞およびコントロール細胞をもちいてLysate作製しW.Bを行った。ウサギ抗AT-6ポリクローナル抗体と同じ位置にバンドが検出されたR87を陽性と判断した。
HEK293T細胞へHA-ATBF1を強制発現させた細胞およびコントロール細胞をもちいてLysate作製しW.Bを行った。ウサギ抗AT-6ポリクローナル抗体と同じ位置にバンドが検出されたR87を陽性と判断した。
(B)結果
図2に示す通り、数種のモノクローナル抗体が得られた。マウスに由来する4種類のモノクローナル抗体は抗原ペプチドには反応性を示すものの、ウエスタンブロットに使用した際に全長ヒトATBF1を認識できなかった。また、組織染色性にも問題があった。結局のところ、ラット由来の1クローン(表中のNT690-1、ラットモノクローナル抗体)のみが実用性を備えたものであった。当該クローンのことをR87と呼称する。
図2に示す通り、数種のモノクローナル抗体が得られた。マウスに由来する4種類のモノクローナル抗体は抗原ペプチドには反応性を示すものの、ウエスタンブロットに使用した際に全長ヒトATBF1を認識できなかった。また、組織染色性にも問題があった。結局のところ、ラット由来の1クローン(表中のNT690-1、ラットモノクローナル抗体)のみが実用性を備えたものであった。当該クローンのことをR87と呼称する。
取得した各モノクローナル抗体の認識する部位を、既存の抗体の認識する部位とともに図3に示した。R87はエクソン5〜6に相当するATBF1蛋白中央部位よりややN末端側の部位を認識する。尚、既存の抗体の調製法を以下に説明する。詳しくは、国際公開第2006/011587号パンフレットを参照
2.既存の抗ATBF1抗体の作製
(1)D1-120抗体
マウスATBF1(Ido et al., (1996). Gene, 168, 227-231)の41アミノ酸残基(2114〜2154:LQTLPAQLPPQLGPVEPLPADLAQLYQHQLNPTLLQQQNKR:配列番号7)をグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)に融合した組み換えペプチドを抗原として使用する。尚、上記の41アミノ酸残基は、ヒトATBF1のアミノ酸残基(2170〜2147)と完全に一致する。
(1)D1-120抗体
マウスATBF1(Ido et al., (1996). Gene, 168, 227-231)の41アミノ酸残基(2114〜2154:LQTLPAQLPPQLGPVEPLPADLAQLYQHQLNPTLLQQQNKR:配列番号7)をグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)に融合した組み換えペプチドを抗原として使用する。尚、上記の41アミノ酸残基は、ヒトATBF1のアミノ酸残基(2170〜2147)と完全に一致する。
具体的には、以下の手順で当該抗原を調製する。尚、抗原調製、抗体作製の詳細は既報(J. Compartive Neurology (2003) 465: 57-71:非特許文献3)に記載される。
まず、上記のごとく標的アミノ酸部分をマウスcDNAより切り出し、GST融合タンパク質作製用のベクターpGEX-K に組換え(サブクローニング)を行う。大腸菌 AD202に遺伝子導入を行い、AD202に発現させたタンパク質をSepharose-glutathione beaded agarose (Sigma社)を使用して常法で精製を行う(例えば、「はじめての組換えタンパク質精製ハンドブック」1999年発行、アマシャム ファルマシア バイオテク株式会社、を参照)。以上のようにして調製した抗原(ATBF1-GST融合タンパク質)を用いて、以下の(a)〜(d)の手順で抗ATBF1抗体(D1-120)を取得する。
(a)PBS(pH7.5)に融解した抗原(1 mg/ml)をTiter Max Gold (CytRx社)と等量混合して、免疫用エマルジョンを作製する。
(b)2mlのエマルジョンをウサギ背部に皮下注射して免疫(0,14,28,49,70日目の5度にわたり)を行う。
(c)91日間経過した時点で、屠殺採血して血清を分離する。
(d)免疫に使用した抗原による抗原カラムを作製し、血清から抗原抗体カラム精製後に抗ATBF1抗体を取得する(例えば、「はじめての抗体精製ハンドブック」2000年発行、アマシャム ファルマシア バイオテク株式会社、を参照)。
まず、上記のごとく標的アミノ酸部分をマウスcDNAより切り出し、GST融合タンパク質作製用のベクターpGEX-K に組換え(サブクローニング)を行う。大腸菌 AD202に遺伝子導入を行い、AD202に発現させたタンパク質をSepharose-glutathione beaded agarose (Sigma社)を使用して常法で精製を行う(例えば、「はじめての組換えタンパク質精製ハンドブック」1999年発行、アマシャム ファルマシア バイオテク株式会社、を参照)。以上のようにして調製した抗原(ATBF1-GST融合タンパク質)を用いて、以下の(a)〜(d)の手順で抗ATBF1抗体(D1-120)を取得する。
(a)PBS(pH7.5)に融解した抗原(1 mg/ml)をTiter Max Gold (CytRx社)と等量混合して、免疫用エマルジョンを作製する。
(b)2mlのエマルジョンをウサギ背部に皮下注射して免疫(0,14,28,49,70日目の5度にわたり)を行う。
(c)91日間経過した時点で、屠殺採血して血清を分離する。
(d)免疫に使用した抗原による抗原カラムを作製し、血清から抗原抗体カラム精製後に抗ATBF1抗体を取得する(例えば、「はじめての抗体精製ハンドブック」2000年発行、アマシャム ファルマシア バイオテク株式会社、を参照)。
(2)NT440抗体、1-12抗体、AT-6抗体
まず、以下の手順で各抗原を調製する。
(a)抗体NT440の場合(ポリクローナル抗体)
ヒトATBF1-A(非特許文献1を参照)の3種類のアミノ酸残基(4〜15:CDSPVVSGKDNG:配列番号8)、(429〜445: CKSSEGKDSGAAEGEKQE:配列番号9)、(500〜516:CPSELDEELEDRPHEEPG:配列番号10)の合成ペプチドを混合してペプチド抗原として使用する。尚、配列番号9及び10の合成ペプチドのN末端の下線を付したCは合成ペプチドの安定性を確保するために本来のヒトのアミノ酸配列に追加してある。
まず、以下の手順で各抗原を調製する。
(a)抗体NT440の場合(ポリクローナル抗体)
ヒトATBF1-A(非特許文献1を参照)の3種類のアミノ酸残基(4〜15:CDSPVVSGKDNG:配列番号8)、(429〜445: CKSSEGKDSGAAEGEKQE:配列番号9)、(500〜516:CPSELDEELEDRPHEEPG:配列番号10)の合成ペプチドを混合してペプチド抗原として使用する。尚、配列番号9及び10の合成ペプチドのN末端の下線を付したCは合成ペプチドの安定性を確保するために本来のヒトのアミノ酸配列に追加してある。
(b)抗体1-12の場合(モノクローナル抗体)
ヒトATBF1-Aのアミノ酸残基(143〜155:CIVESLS 148 QLTQGGG:配列番号11)の合成ペプチドを使用、N末端にC(下線付き)を付加するとともに、148番のセリン(下線付き、右肩に148と付記)をリン酸化したペプチドを抗原として使用する。従って、この抗体はATBF1-Aの148番のセリンがリン酸化されている場合のみを認識するように設計してある。
ヒトATBF1-Aのアミノ酸残基(143〜155:CIVESLS 148 QLTQGGG:配列番号11)の合成ペプチドを使用、N末端にC(下線付き)を付加するとともに、148番のセリン(下線付き、右肩に148と付記)をリン酸化したペプチドを抗原として使用する。従って、この抗体はATBF1-Aの148番のセリンがリン酸化されている場合のみを認識するように設計してある。
(c)抗体AT-6の場合(ポリクローナル抗体)
ヒトATBF1-A, B共通のアミノ酸残基(3405〜3549:PGAPSPDKDPAKESPKPEEQKNTPREVSPLLPKLPEEPEAESKSADSLYDPFIVPKVQYKLVCRKCQAGFSDEEAARSHLKSLCFFGQSVVNLQEMVLHVPTGGGGGGSGGGGGGGGGGGGGGSYHCLACESALCGEEALSQHLE:配列番号12)をグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)に融合した組み換えペプチドを抗原として使用する。
ヒトATBF1-A, B共通のアミノ酸残基(3405〜3549:PGAPSPDKDPAKESPKPEEQKNTPREVSPLLPKLPEEPEAESKSADSLYDPFIVPKVQYKLVCRKCQAGFSDEEAARSHLKSLCFFGQSVVNLQEMVLHVPTGGGGGGSGGGGGGGGGGGGGGSYHCLACESALCGEEALSQHLE:配列番号12)をグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)に融合した組み換えペプチドを抗原として使用する。
調製した各抗原を用いて抗体(ポリクローナル又はモノクローナル)を作製し、精製する(例えば、「酵素抗体法、改訂第3版」、渡辺慶一、中根一穂編集、学際企画)。
3.抗ATBF1モノクローナル抗体の性能評価1(特異的結合性の検討)
(1)ATBF1強制発現系を用いた評価(AT-6ポリクローナル抗体との比較)
ヒト由来HEK293T細胞のATBF1 cDNA強制発現系を用い、R87クローンの反応性を調べた。比較のためにAT-6(ラビットポリクローナル抗体)を使用した。ATBF1 cDNAの強制発現の際には、インフルエンザウイルスのHA蛋白に対する抗体でも反応性を確認出来るようにHAタグをN末端側に付加した(HA-ATBF1)。対照としてHAタグのみを強制発現できるベクターを使用した。当該ベクターを用いると、ATBF1部分は発現されず、HAタグのみが発現される。
(1)ATBF1強制発現系を用いた評価(AT-6ポリクローナル抗体との比較)
ヒト由来HEK293T細胞のATBF1 cDNA強制発現系を用い、R87クローンの反応性を調べた。比較のためにAT-6(ラビットポリクローナル抗体)を使用した。ATBF1 cDNAの強制発現の際には、インフルエンザウイルスのHA蛋白に対する抗体でも反応性を確認出来るようにHAタグをN末端側に付加した(HA-ATBF1)。対照としてHAタグのみを強制発現できるベクターを使用した。当該ベクターを用いると、ATBF1部分は発現されず、HAタグのみが発現される。
図4に示す通り、R87クローンはAT-6と同一バンドを検出できる。検出出来た蛋白のサイズは404 kDaであり、ATBF1全長の理論的なサイズと一致した。さらにHAタグのみの強制発現では同様のサイズのバンドが染色されないこともあわせて観察し、R87クローンとAT-6の両者が検出できるサイズがATBF1に特異的であることを確認した。
(2)種特異性の検定
ヒト由来NB1細胞(Human neuroblastoma cells:神経芽細胞腫由来細胞株)とマウス由来P19細胞(Mouse embryonal carcinoma cells:胚性癌細胞株)を用いてR87クローンの特異性を検定した。ヒトATBF1蛋白及びマウスATBF1蛋白の両者を認識可能なAT-6と、ヒトATBF1特異的配列を認識可能なR87クローンを使用した。
ヒト由来NB1細胞(Human neuroblastoma cells:神経芽細胞腫由来細胞株)とマウス由来P19細胞(Mouse embryonal carcinoma cells:胚性癌細胞株)を用いてR87クローンの特異性を検定した。ヒトATBF1蛋白及びマウスATBF1蛋白の両者を認識可能なAT-6と、ヒトATBF1特異的配列を認識可能なR87クローンを使用した。
図5に示す通り、R87はヒト由来の神経芽細胞腫由来細胞株のNB1の404 kDaの蛋白部分に反応性を示す一方、マウス由来の胚性癌細胞株P19細胞の404 kDaの蛋白部分に反応を示さなかった。これに対してAT-6はヒト及びマウス由来細胞株両方に対して404 kDaのATBF1部分に反応性を示した。この結果、R87はヒト由来のATBF1蛋白のみを特異的に認識する事が確認出来た。さらにNB1の未分化状態と分化状態の差異を明確とは言えないまでも示すことが出来た。またR87のロット(R87-1, R87-2)の違いは検出感度に影響を与えなかった。
(3)胚性癌細胞を用いた評価
ヒト由来胚性癌細胞株NT2/D1細胞を陽性検定細胞としてR87の性能を評価した。まず、未分化状態と、RA処理をして分化させた状態、7日、14日、21日を比較する実験を行った。ウエスタンブロットの検出ではR87とAT-6を比較した。
ヒト由来胚性癌細胞株NT2/D1細胞を陽性検定細胞としてR87の性能を評価した。まず、未分化状態と、RA処理をして分化させた状態、7日、14日、21日を比較する実験を行った。ウエスタンブロットの検出ではR87とAT-6を比較した。
R87が、AT-6と同様に、全長ATBF1(404 kDa)を検出できることが確認された(図6)。NT2/D1細胞では未分化状態でATBF1発現は低値であり、分化とともに発現量が増加すると想定されている。R87が、AT-6同様、このATBF1発現量の差を検出できることが明らかになった。
(4)ATBF1強制発現系を用いた評価
HEK293T細胞強制発現系を用いてR87の性能を評価した。まず、R87を使用して、HA-ATBF1ベクターを強制発現させた細胞を用いてウエスタンブロット検出を行い、HAタグを強制発現させた対照と比較検討した。
HEK293T細胞強制発現系を用いてR87の性能を評価した。まず、R87を使用して、HA-ATBF1ベクターを強制発現させた細胞を用いてウエスタンブロット検出を行い、HAタグを強制発現させた対照と比較検討した。
R87は感度よく且つ非常に高い特異性で全長ヒトATBF1(404 kDa)を検出した(図7左)。R87の感度及び特異性は、既存のポリクローナル抗体をモノクローナル化した抗体(D1-120抗ATBF1マウスモノクローナル抗体、AT-6抗ATBF1マウスモノクローナル抗体)のそれと全く遜色ないか、或いは比較する抗体によってはそれを凌駕するものであった(図8左、図9左)。
(5)分化誘導実験による評価
NT2/D1細胞に分化誘導処理を施した際のATBF1の細胞質から核を移動する挙動をR87が検出できるか検討した。RA処理をする前の未分化な状態と、RA処理後の分化した状態の細胞を使用し、免疫組織学的にR87の染色を行い比較検討した。
NT2/D1細胞に分化誘導処理を施した際のATBF1の細胞質から核を移動する挙動をR87が検出できるか検討した。RA処理をする前の未分化な状態と、RA処理後の分化した状態の細胞を使用し、免疫組織学的にR87の染色を行い比較検討した。
分化誘導後、核内に蛍光シグナルの増強が認められる(図7右)。このように、分化誘導によるATBF1の局在をR87によって検出することができた。R87による検出感度は、D1-120(図8右)又はAT-6(図9右)の検出感度と同等あるいはそれ以上であった。
4.抗ATBF1モノクローナル抗体の性能評価2(病理組織染色性の検討)
(1)抗原賦活化処理条件の検討
特異性及び感度ともに優れることが判明したR87を組織染色に使用する際の抗原賦活化処理の条件を検討した。抗原賦活化処理として、オートクレーブ(121℃)による処理、電子レンジ(98℃)による処理、圧力釜(108℃)による処理を比較した。また、抗原賦活化を省略した場合の染色性も調べた。
(1)抗原賦活化処理条件の検討
特異性及び感度ともに優れることが判明したR87を組織染色に使用する際の抗原賦活化処理の条件を検討した。抗原賦活化処理として、オートクレーブ(121℃)による処理、電子レンジ(98℃)による処理、圧力釜(108℃)による処理を比較した。また、抗原賦活化を省略した場合の染色性も調べた。
R87を使用した場合には、抗原賦活化処理をしなくとも、核における染色強度の差によって癌細胞の悪性度を判定可能であることが示された(図10右)。これはD1-120が核の染色性の強度の差を出すために圧力釜(108℃)処理が必須であるのと比較すると優れた特性といえる(図10左)。必要であれば、オートクレーブ(121℃)による処理(図11)、あるいは圧力釜(108℃)による処理(図12)をすることにより細胞質の染色性を減弱させる事が可能である。しかし電子レンジ(98℃)による処理をした場合(図13)は核の染色性がやや減弱し、細胞質の染色性は減弱しない傾向にあるので、前処置としてはあまり奨められないと考えている。
以上の通り、核の染色性が際だつ条件を選択して、核でのR87の染色性の有無を比較するだけで患者の長期予後(現在までに41例の患者に関して検索)を判断することが可能であると思われた。すなわち膀胱癌ではR87の核の染色性が認められない場合に癌細胞の悪性度が高いと判定する事が可能であることが示唆される。
(3)非特異的染色性の検討
R87による組織染色性が非特異的染色によるものでないことを確認するため以下の検定を行った。まず、試料として膀胱癌細胞(pTa, G1症例)を用いた。R87クローンを産生するハイブリドーマの上清から分離したIgG画分(2.72 mg/ml)を検定に供した。実験手順は次の通りとした。R87 IgG画分4μLに196μLのPBSを添加した(R87 50倍液)。試料AとしてR87 50倍液25μLに1次抗体希釈液975μLを添加した。一方、試料BとしてR87 50倍液25μLに1次抗体希釈液925μLとR87抗原原液(R87抗原ペプチド 1mg/ml)50μLを添加した。また、試料CとしてR87 50倍液25μLに1次抗体希釈液875μLにR87抗原原液(R87抗原ペプチド 1mg/ml)100μLを添加した。各試料を1時間、室温でインキュベートした。インキュベート後の各試料を用い、抗原賦活処理なし、オートクレーブによる抗原賦活処理後に染色、圧力釜による抗原賦活処理後に染色、電子レンジによる抗原賦活処理後に染色の4種類の条件で免疫染色した。
R87による組織染色性が非特異的染色によるものでないことを確認するため以下の検定を行った。まず、試料として膀胱癌細胞(pTa, G1症例)を用いた。R87クローンを産生するハイブリドーマの上清から分離したIgG画分(2.72 mg/ml)を検定に供した。実験手順は次の通りとした。R87 IgG画分4μLに196μLのPBSを添加した(R87 50倍液)。試料AとしてR87 50倍液25μLに1次抗体希釈液975μLを添加した。一方、試料BとしてR87 50倍液25μLに1次抗体希釈液925μLとR87抗原原液(R87抗原ペプチド 1mg/ml)50μLを添加した。また、試料CとしてR87 50倍液25μLに1次抗体希釈液875μLにR87抗原原液(R87抗原ペプチド 1mg/ml)100μLを添加した。各試料を1時間、室温でインキュベートした。インキュベート後の各試料を用い、抗原賦活処理なし、オートクレーブによる抗原賦活処理後に染色、圧力釜による抗原賦活処理後に染色、電子レンジによる抗原賦活処理後に染色の4種類の条件で免疫染色した。
抗原賦活の条件の如何に拘わらず、中和済み抗体(試料B、C)を使用すると、正常上皮、腫瘍の上皮、間質の浸潤細胞、毛細血管のいずれの染色性も完全に消失した(図14)。このように、R87による染色性がATBF1に対する特異的結合性によることが実験的に示された。
(3)皮膚腫瘍の悪性度判定
癌細胞の悪性度を判定する試薬としてのR87の実用性を検証した。一般的に皮膚の癌腫とされる腫瘍の中で基底細胞癌の発生頻度は高い。重層扁平上皮の基底細胞の増殖によって形成されるが、転移は稀で以前は基底細胞腫と呼ばれていた癌腫の一つある。その基底細胞癌ではR87は核に強い染色性を有していた。一方、扁平上皮癌も重層扁平上皮の基底細胞に由来する悪性腫瘍であり、転移性を有するいわゆる悪性度の高い癌腫である。その扁平上皮癌ではR87の核での染色性は認められず、細胞質のみに染色性を認めた。この免疫組織学的染色には抗原賦活処理のための熱処理を行っていない(図15)。もともと由来するのは基底細胞であるが、病理学的にはこれらは容易に鑑別できる腫瘍であり、判断に苦慮することはあり得ないが、R87の癌腫の悪性度判断能力の一端を示す所見と考えている。
癌細胞の悪性度を判定する試薬としてのR87の実用性を検証した。一般的に皮膚の癌腫とされる腫瘍の中で基底細胞癌の発生頻度は高い。重層扁平上皮の基底細胞の増殖によって形成されるが、転移は稀で以前は基底細胞腫と呼ばれていた癌腫の一つある。その基底細胞癌ではR87は核に強い染色性を有していた。一方、扁平上皮癌も重層扁平上皮の基底細胞に由来する悪性腫瘍であり、転移性を有するいわゆる悪性度の高い癌腫である。その扁平上皮癌ではR87の核での染色性は認められず、細胞質のみに染色性を認めた。この免疫組織学的染色には抗原賦活処理のための熱処理を行っていない(図15)。もともと由来するのは基底細胞であるが、病理学的にはこれらは容易に鑑別できる腫瘍であり、判断に苦慮することはあり得ないが、R87の癌腫の悪性度判断能力の一端を示す所見と考えている。
(4)胃癌の悪性度判定
胃癌細胞株モデル(SNU16)を用いてR87の実用性を更に検討した。まず、TGF-βの刺激の無い状態で培養すると癌細胞はフローサイトメトリーの検索では増殖性を維持しており、R87の免疫染色性は細胞質に限局していた。TGF-β刺激後、癌細胞は細胞周期停止を起こしたことが判る。それに従いR87の免疫染色性は核主体に変化した。この免疫組織学的染色にも抗原賦活処理のための熱処理を行っていない(図16)。この実験の結果は、病理学的に外観のみでは悪性度の判断が不可能な癌腫に関して、R87の染色性が悪性度の判断基準となり得ることを示唆している。
胃癌細胞株モデル(SNU16)を用いてR87の実用性を更に検討した。まず、TGF-βの刺激の無い状態で培養すると癌細胞はフローサイトメトリーの検索では増殖性を維持しており、R87の免疫染色性は細胞質に限局していた。TGF-β刺激後、癌細胞は細胞周期停止を起こしたことが判る。それに従いR87の免疫染色性は核主体に変化した。この免疫組織学的染色にも抗原賦活処理のための熱処理を行っていない(図16)。この実験の結果は、病理学的に外観のみでは悪性度の判断が不可能な癌腫に関して、R87の染色性が悪性度の判断基準となり得ることを示唆している。
(5)舌癌の悪性度判定
舌癌は前癌状態が長く続き、その後、上皮内癌、浸潤性の扁平上皮癌に移行することが知られている。数例の舌癌を免疫組織学的に検索しR87の実用性を更に検討した。この免疫組織学的染色には抗原賦活処理のための圧力釜処理を行った(結果を図示せず)。前癌状態ではR87の核の染色性はそれほど強くない。しかし、明らかに上皮内癌と判断される状態になると核の染色強度は増加する。さらに、上皮下に浸潤傾向がある浸潤性の扁平上皮癌に移行すると核の染色性は失われる傾向が出現し、変わって細胞質の染色性が増強する事が明らかになった。この実験の結果も、舌の扁平上皮病変に関してR87の染色性が悪性度の判断基準となり得ることを示唆している。
舌癌は前癌状態が長く続き、その後、上皮内癌、浸潤性の扁平上皮癌に移行することが知られている。数例の舌癌を免疫組織学的に検索しR87の実用性を更に検討した。この免疫組織学的染色には抗原賦活処理のための圧力釜処理を行った(結果を図示せず)。前癌状態ではR87の核の染色性はそれほど強くない。しかし、明らかに上皮内癌と判断される状態になると核の染色強度は増加する。さらに、上皮下に浸潤傾向がある浸潤性の扁平上皮癌に移行すると核の染色性は失われる傾向が出現し、変わって細胞質の染色性が増強する事が明らかになった。この実験の結果も、舌の扁平上皮病変に関してR87の染色性が悪性度の判断基準となり得ることを示唆している。
以上の通り、癌細胞の悪性度を判定するための試薬としてR87が極めて有用であることが示された。
本発明の抗体(抗ATBF1モノクローナル抗体)は感度及び特異性に優れ、従来の抗体(抗ATBF1ポリクローナル抗体)を凌駕する。本発明の抗体を用いて癌の悪性度を判定すれば、精度の高い判定結果が得られる。また、本発明の抗体を使用した場合には、病理組織染色をする際の抗原賦活化反応を省略することも可能となり、操作の簡便化はもとより、判定結果の再現性向上が図られる。
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
配列番号1:人工配列の説明:合成抗原ペプチド
配列番号2:人工配列の説明:合成抗原ペプチド
配列番号2:人工配列の説明:合成抗原ペプチド
Claims (11)
- 全長ヒトATBF1(ATモチーフ結合因子1)を認識するモノクローナル抗体。
- ラット由来の抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
- 抗原ペプチドCPSETAADOEELAKDQEGGA(配列番号1)を認識する抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
- 受託番号:NITE P-743で特定されるハイブリドーマが産生する抗体である、請求項1に記載のモノクローナル抗体。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のモノクローナル抗体からなる、被検癌細胞の悪性度判定用試薬。
- 請求項5に記載の試薬を含む、被検癌細胞の悪性度判定用キット。
- 生体から分離された被検癌細胞内のATBF1量を、請求項1〜5のいずれかに記載のモノクローナル抗体若しくは請求項6に記載の試薬によって、又は請求項7に記載のキットを用いて検出するステップを含んでなる、被検癌細胞の悪性度判定法。
- 被検癌細胞内のATBF1量を検出し、ATBF1検出量に基づいて被検癌細胞の悪性度を判定する、請求項7に記載の被検癌細胞の悪性度判定法。
- 被検癌細胞の核内のATBF1量を検出し、ATBF1検出量に基づいて被検癌細胞の悪性度を判定する、請求項7に記載の被検癌細胞の悪性度判定法。
- 被検癌細胞の細胞質内のATBF1量を検出し、被検細胞の細胞質中に存在するATBF1量の有無に基づいて被検癌細胞の悪性度を判定する、請求項7に記載の被検癌細胞の悪性度判定法。
- a)被検癌細胞内のATBF1量を検出するステップと、
b)被検癌細胞の核内のATBF1量を検出するステップと、
c)被検癌細胞の細胞質内のATBF1量を検出するステップと、
d)ステップb)で得られた核内ATBF1量と、ステップc)で得られた細胞質内ATBF1量とを比較し、ATBF1の局在状態に基づいて被検細胞の悪性度を判定するステップと、
を含む、請求項7に記載の被検癌細胞の悪性度判定法。
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Effective date: 20120423 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711 |
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