JP6069806B2 - がんの検査方法及び検査用キット - Google Patents

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本発明は、MT1−MMPのプロセシングによるEphA2タンパク質断片を検出するがんの検査方法等に関する。
悪性腫瘍は、特に先進国において死亡率の上位を占める疾患の一つであり、患者とその家族にも大きな打撃を与える。腫瘍細胞の増殖と転移を促進するシグナル経路と重要なタンパク質の同定は、分子標的治療を開発するために有望なアプローチである。
受容体型チロシンキナーゼ(RTK)遺伝子と関連するシグナル伝達タンパク質はがん細胞で変異していることが多く、またそのような変異が見られない場合もその産物の異常な活性化が見られることも多い。したがって、RTK仲介性シグナル経路は、治療標的の有力な候補の豊富な供給源である。
エリスロポエチン産生肝細胞受容体A2(EphA2)は、正常上皮細胞に広く発現する受容体型チロシンキナーゼである。Eph受容体型キナーゼには、サブファミリーのメンバーとして10種類のEphAと6種類のEphBが存在する。EphA2は、EphAの1つである。
Eph受容体のリガンドは、エフリンAとエフリンBのサブグループに分類される。5つのエフリンAのメンバーは、C末端にグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)を有し、細胞膜に固定されているが、エフリンBのメンバーは可溶型である。したがって、EphAとエフリンAは、それぞれを発現する細胞同士の接触によって結合し、EphAとエフリンAの相互作用が、それぞれの細胞におけるシグナル伝達を惹起する。5つのエフリンAのメンバーのうち、A1、A3、A4及びA5はEphA2に結合する。エフリンA1はエフリンファミリーのなかでも、広範な組織に存在する代表的なEphA2のリガンドとして研究されている。
エフリンA1がEphA2に結合すると、EphA2の細胞質尾部のチロシン残基の自己リン酸化が誘導される。その結果引き起こされる下流シグナルは、ErbB受容体などの成長因子受容体仲介性シグナルを阻害する。ErbB受容体刺激はH−ras/Erk1/2及びPI3−k/Aktの活性化を引き起こして細胞増殖を促進するところ、EphA2の自己リン酸化が生じると、Ras活性化を下方制御するp120Ras−GAPがリクルートされ、増殖促進シグナルが抑制される。すなわち、EphA2は、リガンド依存的に、上皮細胞の表現型の維持と増殖促進シグナルの抑制において重要な役割を果たす。
一方で、EphA2は、乳癌、肝臓癌、前立腺癌、神経膠腫、黒色腫、卵巣腺癌、及び食道癌などの様々な悪性がんで高発現していることが報告されており、悪性度の高さと予後の悪さにも関連しているため、抗がん剤の分子標的として有望であると考えられてきた。
EphA2は、腫瘍細胞においては、腫瘍の発生を促進する癌遺伝子産物のようにふるまう。培養細胞及びマウスでのEphA2の強制発現は、がん細胞の増殖、運動性、血管新生、浸潤、及び転移を促進した。例えば、ヒト乳房上皮細胞株MCF−10AにおいてEphA2のみを発現させると、マウスにおいて腫瘍を発生した。EphA2の高レベルの発現は、HER2陽性乳癌患者においてトラスツズマブ耐性を生じさせた。これらの知見は、EphA2の発がん促進性の機能を裏付けるものである。
最近、EphA2による発がん促進性シグナルは、リガンド非依存的な活性化によって引き起こされることが報告された。EphA2リガンドがないと、Akt活性はEphA2によって阻害されず、ErbB受容体刺激がPI3K/Aktを活性化し、その結果EphA2の細胞質セリン残基をリン酸化する。GDP−GTP交換因子Ephexin4がリン酸化されたセリン残基にリクルートされ、RhoGをGTP結合体にして活性化し、続いてこれがELMO2、Dock4、及びRac1をリクルートする。こうして、EphA2のリガンド非依存的な活性化と、ErbB受容体刺激とが協調して、細胞の運動性や浸潤に必要なアクチン再構成を引き起こす。実際、EphA2によるRhoGの活性化が、invadopodiaと呼ばれる膜の突起形成を誘導することによって乳がん細胞の浸潤を促進することが報告されている。リガンド非依存性EphA2活性化は、乳がん細胞のアノイキス耐性に関与することも示唆されている(EphA2に関する文献として非特許文献1−5を参照)。
このようにEphA2ががんを悪性化させる機序も解明されつつあり、EphA2は抗がん剤の分子標的としてさらに有望視されるようになった。
しかしながら、EphA2は上述のとおり上皮組織の安定化とがんの悪性化という相反する機能を持つことから、EphA2を治療に確実に応用するためには、EphA2のがん細胞に対する双方向の機能がどのように切り替えられるのか、その分子機序を明らかにする必要があった。現に、がん細胞においてもEphA2リガンドは発現していることが多く、腫瘍組織においてEphA2どのようにリガンド非依存的に活性化されるのかは不明であった。
ところで、膜結合型1マトリックスメタロプロテイナーゼ(MT1−MMP)も悪性腫瘍において高発現していることが知られている。MT1−MMPは、ECMタンパク質に対するタンパク質分解作用を通じてがん細胞の浸潤と成長を促進する。MT1−MMPは、インテグリン、CD44、トランスグルタミナーゼ、kiss−1など様々な細胞表面タンパク質と相互作用し、このうちのいくつかはMT1−MMPによって切断される。
Nat Rev Cancer. 2010 Mar;10(3):165-80. Semin Cell Dev Biol. 2012 Feb;23(1):109-15. Expert Opin Ther Targets. 2011 Jan;15(1):31-51. Cancer Metastasis Rev. 2003: 22(2-3):129-43. J Cell Sci. 2009 Sep 1;122:3015-24.
本発明は、EphA2ががん細胞においてリガンド非依存的に活性化される分子機序を解明し、EphA2をがん治療のためのより有用な標的とするとともに、その機序を用いたがんの検査方法等を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、EphA2のリガンド結合ドメインが、MT1−MMPによって切断されることを見出した。
そして、MT1−MMPをノックダウンした細胞では、EphA2のリガンド依存的な自己リン酸化が亢進すること;リガンド存在下において、EGFで誘導したErk1/2、Akt活性は、MT1−MMPノックダウンにより有意に抑制されること;同様の結果はEphA2を発現する各種がん細胞でも見られるが、EphA2を発現していないがん細胞では見られないこと;MT1−MMPをノックダウンした細胞は、リガンド依存的に増殖が抑制されること;MT1−MMPをノックダウンした細胞では、リガンド存在下で、EGFで誘導したRhoG活性や細胞運動が有意に抑制されることを確認した。
さらに、MT1−MMPによるプロセシングに耐性を有するEphA2変異体を発現する細胞をマウスに移植したところ、野生型MT1−MMPを発現する細胞に比較して、肺への転移が有意に抑制されることを確認した。
また、卵巣癌の凍結癌組織切片を用いた実験により、生体内の癌組織においてもEphA2はMT1−MMPによるプロセシングを受けていることが示唆されること、及びEphA2のMT1−MMPによるプロセシングががんの悪性化と強く相関することを確認した。さらに、正常な卵巣組織と卵巣癌組織について、EphA2のN末端側を認識する抗体とC末端側を認識する抗体を用いて免疫染色を行ったところ、癌組織はN末端側を認識する抗体で染色されなかったことから、癌組織においてはEphA2が切断されている一方、正常組織ではEphA2はインタクトなままであることを確認した。そして、この現象が、胃癌や大腸癌でも同様に生じていることを確認した。
また、MT1MMPで切断されないEphA2の変異体を癌細胞(A431細胞)で発現させたところ、当該癌細胞の表現型が正常な上皮細胞様に変化することを確認するとともに、A431細胞で正常EphA2を発現させ、内在性MT1−MMPで切り出される断片を抗体で検出できることを確認し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
〔1〕がんの検査方法であって、被検者由来の試料中における分子量30kDa〜80kDaのEphA2タンパク質の断片の量を測定する工程を含む、方法;
〔2〕前記EphA2タンパク質の断片が、EphA2タンパク質のN末端を含む断片である、上記〔1〕に記載の方法;
〔3〕前記EphA2タンパク質の断片が、以下の(i)〜(iii)の少なくとも1つのペプチドである、上記〔1〕に記載の方法:
(i)配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(ii)配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、置換又は欠失したアミノ酸配列からなるペプチド;及び
(iii)配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列と、80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるペプチド;
〔4〕前記がんが、EphA2を発現しているがんである、上記〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の方法;
〔5〕前記試料は、血液、リンパ液、尿、及び糞便から選択される少なくとも1つである、上記〔1〕から〔4〕のいずれか1項に記載の方法;
〔6〕抗がん剤の効果又は副作用を予測するために行われる、上記〔1〕から〔5〕のいずれか1項に記載の方法;
〔7〕前記EphA2タンパク質の断片の量の測定が、EphA2の断片を認識する抗体によって行われる、上記〔1〕から〔6〕のいずれか1項に記載の方法;
〔8〕前記EphA2の断片を認識する抗体のエピトープが、EphA2タンパク質上のシステインリッチドメインにある、上記〔7〕に記載の方法;
〔9〕がんの検査用キットであって、分子量30kDa〜80kDaのEphA2タンパク質の断片を検出可能な抗体を含む、キット;
〔10〕前記断片が、EphA2タンパク質のN末端を含む断片である、上記〔7〕に記載のキット;
〔11〕前記抗体のエピトープが、EphA2タンパク質上のシステインリッチドメインにある、上記〔9〕又は〔10〕に記載のキット;
〔12〕前記抗体が、以下の(i)〜(iii)の少なくとも1つのペプチドに対する抗体である、上記〔9〕又は〔10〕に記載のキット:
(i)配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(ii)配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、置換又は欠失したアミノ酸配列からなるペプチド;及び
(iii)配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列と、80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるペプチド;
〔13〕抗がん剤の効果又は副作用を予測するために用いられる、上記〔9〕又は〔12〕に記載の検査用キット;
〔14〕EphA2を発現する細胞を、MT1−MMPがEphA2をプロセシングする条件で培養する工程と、
前記細胞の培地に被検化合物を加えて、MT1−MMPの存在下でインキュベートする工程と、
EphA2のプロセシングの有無を測定する工程と、
を含む抗がん剤のスクリーニング方法;
〔15〕前記EphA2のプロセシングの有無を検出する工程で、被検化合物が存在しない場合と比較して、プロセシングが低下する被検化合物を抗がん剤候補として選択する、上記〔14〕に記載のスクリーニング方法;
〔16〕以下のいずれかの配列からなる二本鎖RNAもしくはその前駆体、またはこれらをコードする核酸を含む、抗がん剤:
siRNA #1
S: ggauggacacggagaauuutt (配列番号:6)
AS: aaauucuccguguccaucctt (配列番号:7)
siRNA #2
S: gcgaugaagucuucacuuatt (配列番号:8)
AS: uaagugaagacuucaucgctt (配列番号:9)、及び
siRNA #3
S: ggguagagacccugagacatt (配列番号:10)
AS: ugucucagggucucuaccctt (配列番号:11);及び
〔17〕MT1−MMPの発現又は機能を阻害することを含む、がんの治療方法、
に関する。
本発明に係るがんの検査方法及び検査用キットによれば、MT1−MMPによって切断されたEphA2断片を検出するという簡便な方法で、がんの発生、悪性化、予後等を判定することができる。
また、本発明に係るスクリーニング方法によれば、EphA2のリガンド非依存的な活性のみ抑制する分子標的薬候補を選択することが可能である。
図1Aは、MT1-MMPとC末端をMyc標識したEphA2とをヒト線維芽肉腫HT1080細胞へ導入し、Myc抗体によるウエスタンブロットで切断されたEphA2の切り株を検出した結果である。MT1-MMPを強制発現したHT1080細胞では、全長型EphA2(大矢印)に加え、分子量65、60kDaのEphA2プロセシング断片(小矢印)が検出された。MT1-MMPの阻害剤であるTIMP-2、BB94で細胞を処理すると、MT1-MMPの活性が阻害されるのに伴い、これらのプロセシング断片の産生も抑制された。 図1Bは、各種膜型MMPでEphA2のプロセシングが起こるか否かをウエスタンブロットで検証した結果である。C末端をMyc標識したEphA2とMT1〜6-MMPをHT1080細胞にそれぞれ強制発現したところ、MT1-MMPを導入した細胞のみでEphA2のプロセシング断片(小矢印)が検出された。このことから、MT1-MMPがEphA2のプロセシングの主要な膜型MMPであることが示唆された。*は非特異的なバンドを示す。 図1Cは、MT1-MMPによるプロセシング断片A、B(切り株側)のN末端アミノ酸解析の結果である。C末端をMyc標識したEphA2と野生型MT1-MMPをHT1080細胞に共発現させ、その細胞から全長型EphA2および断片A、BをMyc抗体による免疫沈降で精製した後、精製したEphA2と断片A、BをMyc抗体によるウエスタンブロットで検出した。BB94で処理した細胞からは全長型EphA2のみが精製された。断片A、BのN末端をペプチドシーケンサーで解析したところ、断片AはVSINQ、断片BはNQTEPPであった。この結果から、細胞膜上で2ヶ所の異なるプロセシングが起こっている可能性が示唆された。 図1Dは、MT1-MMPによるEphA2の切断部位を同定するため、図1Cで見出した切断部位を含むペプチド鎖を合成し、MT1-MMPのリコンビナントタンパク質によるin vitro消化を行った結果を示す。in vitro消化では、MT1-MMPはEphA2ペプチドのS426とF427の間と431Sと432Vの間の2カ所の部位(矢印)を切断した。図1Cと図1Dの結果から、MT1-MMPは細胞膜上で431位のSと432位のVの間を切断し、その切断と連動して未知のプロテアーゼが434位のIと435位のNの間を切断していることが示唆された。 図1Eは、EphA2におけるMT1-MMPの切断部位を示す概略図である。切断部位は、フィブロネクチン部位であり、このプロセシングによってリガンド結合部位が遊離することがわかる。 図2は、MT1-MMP発現をsiRNAでノックダウンしたA431細胞を用いて、EphA2のプロセシングと、Ephrin-A1によるEphA2のリン酸化の状態を、IP-ウエスタンで調べた結果である。図2Aは、siRNA処理でMT1-MMP発現が消失した細胞のライゼートをEphA2のC末端に対する抗体で免疫沈降し、沈降物を同抗体と抗チロシンリン酸化抗体でウエスタンブロットした結果を示す(A、EphA2、p-EphA2)。図2Bから2Dは、図2Aの結果から、EphA2、E-カドヘリン、リン酸化EphA2の相対発現量を求めた結果である。MT1-MMPをノックダウンすると、65kDaと60kDaのEphA2のプロセシング断片は消失した(A)。一方、MT1-MMPの発現の有無でE-カドヘリンのプロセシングには変化がなかった(A、C)。図2Eは、細胞表層でのEphA2のプロセシングを検出するために、A431細胞の細胞表層をビオチン化してアビジンビーズによるpull downで膜タンパク質分画を精製し、精製した膜タンパク質中のEphA2量をEphA2抗体によるウエスタンブロットで測定した結果を示す。図2F及びGは、図2Eの結果から、EphA2及びE-カドヘリンの相対発現量を求めた結果である。MT1-MMPノックダウンで全長のEphA2量が増加し、TIMP-2処理を行っても同様の結果となった(E、F)。一方、細胞表層のE-カドヘリン発現量についてはMT1-MMPの発現の有無で変化は見られなかった(E、G)。 図3A〜Fは、MT1-MMPの発現をsiRNAでノックダウンしたA431細胞をEGF処理し、EphA2がEphrin-A1依存的にEGF受容体下流シグナル(PI3K、MAPK)に及ぼす影響を調べた結果である。図3Aは、EphA2およびp-EphA2の検出をEphA2のC末端を認識する抗体によるIP-ウエスタンで検出し、p-Erk1/2、Erk1/2、p-Akt、Aktをそれぞれの特異抗体を用いたウエスタンブロットで検出した結果を示す。それぞれのリン酸化の割合はImage Jによるデンシトメトリーで定量した。Ephrin-A1存在下において、MT1-MMP発現の有無はEGF受容体の活性化には影響を与えなかった(A、B)。MT1-MMPノックダウンはEphA2自身のリン酸化を亢進した(A、C)。また、Ephrin-A1の存在下において、EGFで誘導したErk1/2、Akt活性は、MT1-MMPノックダウンで有意に抑制された(A、D、E)。同様の結果はヒト乳癌BT549細胞、頭頸部癌SCC61細胞においても見られた(F、図8)が、EphA2を発現していな卵巣癌IGROV-1細胞や乳癌BT-20細胞、さらに、k-rasの変異のあるMDA-MB-231細胞においては見られなかった(F)。 図3G〜Iは、EphA2のプロセシングがEphA2/Ephrin-A1依存的な細胞増殖抑制に及ぼす影響を、2次元、3次元(コラーゲンゲル内)と足場非依存的な培養で調べた結果である。2次元、3次元の細胞増殖能は血球計算盤で生細胞数を計測し(G、H)、スフェロイド増殖能はスフェロイドの容積を計算して比較した(I)。2次元培養皿の条件下において、MT1-MMPの有無による、Ephrin-A1/EphA2依存的な細胞増殖抑制への影響はみられなかった(G、H)。しかし、コラーゲンゲル内の3次元培養および足場非依存的なスフェロイド形成においては、MT1-MMPノックダウンした細胞の増殖は、Ephrin-A1依存的に有意に抑制された(I)。4回の異なる実験を行い、統計処理はT-testを行った。 図4は、MT1-MMPの発現をsiRNAでノックダウンしたA431細胞を用いて、Ephrin-A1依存的EphA2がEGF受容体下流のsmall GTPaseであるRhoGシグナルに及ぼす影響を調べた結果である。RhoG活性の検出にはRhoGのエフェクターであるELMO2/GST融合タンパク質をグルタチオンビーズに結合したものをベイトとした。RhoG活性の定量はImage Jによるデンシトメトリーで行った。EGF未処理の細胞ではRhoG活性は検出されなかった(A)。一方、EGF刺激を行った場合、MT1-MMPノックダウンした細胞では、Ephrin-A1処理によりRhoG活性が有意に低下した(A、B)。同様の結果はSCC61細胞においても見られた(C)。EGF刺激した細胞の運動能をトランスウエルチャンバーで調べたところ、MT1-MMPノックダウン細胞では、Ephrin-A1処理により細胞運動が有意に抑制された(D、E)。このことから、MT1-MMPによるEphA2のプロセシングは、small GTPase活性を亢進する役割を担うことが示唆された。5回および3回の異なる実験を行い、統計処理はT-testを行った。 図5は、MT1-MMPによるEphA2のプロセシングが癌細胞の転移能を亢進する可能性を調べるために、プロセシング耐性のEphA2変異体を発現する細胞を用いて行った実験の結果である。ベクターのみ、野生型EphA2、プロセシング耐性EphA2変異体を導入したA431細胞を樹立した(A、B)。SP:シグナルペプチド、EBD:Ephrin-binding domain、TM: transmembrane、F: FLAGを示す。野生型EphA2、又はプロセシング耐性EphA2変異体を導入した細胞のEphA2のプロセシングの状態をウエスタンブロットで検出したところ、切断部位を欠損した変異体は、MT1-MMPによるプロセシングに耐性を示した(C)。EphA2変異体のEphrin-A1によるリン酸化をEphA2抗体による免疫沈降で確認した(D)。 EphA2変異体がA431細胞の肺への転移能に与える影響を調べるために、実験マウス肺転移モデルを作製して検証した(n=5)。各細胞(5x106/100μl)はマウス尾静脈へ投与し、1ヶ月後にマウスを解剖して肺に形成された転移結節の観察を行った。プロセシング耐性EphA2変異型を導入した細胞を投与したマウスでは、肺における転移結節の形成が低下した(E、F)。また、HE染色の結果から、プロセシング耐性EphA2変異型を導入した細胞を投与したマウスでは、肺での癌細胞の増殖も有意に抑制されたことが示された(G)。統計処理はT-testを行った。 図6は、卵巣癌でのEphA2のプロセシングの検討の結果を示す。図6Aは、凍結癌組織切片よりRIPA緩衝液を用いて組織抽出液を作製し、それぞれの組織タンパク質量をCBB法で測定した後、各組織に発現するEphA2とMT1-MMPを、それぞれEphA2のC末端に対する抗体とMT1-MMPモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロットで解析した結果を示す。陽性対照として、A431細胞にMT1-MMP(±MMI)を導入した細胞から抽出したライゼートに含まれるEphA2断片、MT1-MMPを用いた。卵巣癌組織では全長型EphA2(intact)は低レベルでしか検出されず、分子量60kDaの断片(EphA2 fragment)が主要なものであった(A、下段のパネル)。これら組織中のMT1-MMPの発現量をMT1-MMPモノクローナル抗体で検出した(A、上段のパネル)。*は1次抗体なしでも見られることから非特異的なバンドであると考えられた(B)。これらの結果から、生体内の癌組織においても、EphA2はMT1-MMPによるプロセシングを受け、プロセシングによる60kDaの断片を生じることが示唆された。 図6C及びDは、卵巣癌組織のEphA2とMT1-MMPを蛍光顕微鏡による免疫染色法で検出した結果を示す。EphA2はC末端(C)、N末端(D)をそれぞれ認識する抗体を用いて、MT1-MMP抗体との共染色を行った。MT1-MMPの陽性染色部位はEphA2のC末端抗体の陽性部位と共局在する(C)。一方、EphA2のN末端抗体の陽性染色部位はMT1-MMPのそれと共局在しない(D)。このことから、癌組織で強発現している多くのEphA2はN末端が切断された切り株である可能性が示唆された。 図6E及びFは、MT1-MMPの発現部位でのEphA2のリン酸化の動態をEphA2の細胞内ドメインのリン酸化を認識する2種の抗体を用いて検討した結果を示す。卵巣癌組織において、MT1-MMPの発現はEphA2のリガンド非依存的な897位のセリン残基のリン酸化の発現と共局在した(E)。一方、MT1-MMPの発現とリガンド依存的な594位のチロシン残基のリン酸化とは異なる局在を示した(F)。 図7は、MT1-MMPノックダウンによるEphA2/Ephrin-A1シグナルのへ影響を、ヒト頭頸部癌細胞SCC61で調べた結果を示す。EGF刺激したSCC61細胞のEGFR、EphA2、Erk1/2、Aktのリン酸化をIP、WBで調べた。Erk1/2、Aktのリン酸化率については、Image Jによるデンシトメトリーで定量した。3回の異なる実験を行い、統計処理はT-testを行った。 図8は、図6と同様の解析を頭頸部癌組織について行った結果を示す。MT1-MMPの発現量が卵巣癌に比べ低いため、EphA2のプロセシングの割合は非常に低かった(C下段のパネル)。頭頸部癌組織を免疫染色法で調べると、EphA2が腫瘍部および非腫瘍部で発現しているのに対して、MT1-MMPは腫瘍部内での部分的な発現分布を示した(A、B)。この結果は、頭頸部癌でもMT1-MMPを発現する腫瘍細胞内では卵巣癌組織同様のEphA2のプロセシングが起こっている可能性を示唆する。 図9は、頭頸部癌組織について行った結果を示す。MT1-MMPの発現部位でのEphA2のリン酸化の動態を、EphA2の細胞内ドメインのリン酸化を認識する2種の抗体を用いて検討した結果を示す。頭頸部癌組織においても、MT1-MMPの発現はEphA2のリガンド非依存的な897位のセリン残基のリン酸化の発現と共局在した(A)。一方、MT1-MMPの発現とリガンド依存的な594位のチロシン残基のリン酸化とは異なる局在を示した(B)。 図10は、MT1-MMPがEphA2をリガンド非感受性に変換するモデルの概略図である。正常細胞では、EphA2はリガンド依存的に機能し、細胞増殖や生存などのシグナルを抑制的に制御する。一方、細胞が癌化するに伴ってMT1-MMPの発現が亢進し、EphA2のリガンド結合ドメインを遊離させることで、EphA2をリガンド非感受性なRTKへ変換する。このことで、リガンド非依存的にEphA2が作用し、それぞれのシグナル経路を惹起することで細胞増殖、生存、運動を促進する方向に制御し、癌細胞の悪性形質の獲得に寄与する。 図11は、正常な卵巣組織(A)と、卵巣癌組織(B)を、EphA2のN末端側を認識する抗体と、C末端側を認識する抗体で免疫染色した結果を示す。核はDAPIで染色した。バーは50μmを示す。EphA2のC末端側を認識する抗体による免疫染色では、正常卵巣組織と卵巣癌組織で同様の結果が得られたが、卵巣癌組織は、N末端側を認識する抗体によって染色されなかった。 図12は、胃癌組織(A)と、大腸癌組織(B)を、EphA2のリガンド非依存的な897位のセリンのリン酸化を検出する抗体と、MT1-MMPを検出する抗体で免疫染色した結果を示す。核はDAPIで染色した。バーは50μmを示す。897位のセリンがリン酸化されたEphA2とMT1-MMPの発現の局在は、胃癌組織及び大腸癌組織においても一致した。 図13は、MT1-MMPの切断に耐性を有するEphA2変異体を、A431細胞で発現させた結果を示す。Mockは、EphA2を発現させていない細胞、EphA2-CFは、正常EphA2を発現させた細胞、ucEphA2-CF-1及びucEphA2-CF-2は、MT1-MMPの切断に耐性を有するEphA2変異体を発現させた細胞を示す。A431細胞は、悪性癌細胞特有の紡錘状の表現型を有するが(Mock、及びEphA2-CF)、MT1-MMPの切断に耐性を有する変異体を発現する細胞は、正常な上皮細胞の表現型に変化した。 図14は、EphA2をA431細胞で発現させ、内在性のMT1-MMPで切り出される断片をウエスタンブロッティングで検出した結果を示す。
[がんの検査方法]
本発明に係るがんの検査方法は、被検者由来の試料中における分子量30kDa〜80kDaのEphA2タンパク質の断片の量を測定する工程を含む。
がん組織においては、MT1−MMPなどのプロテアーゼの発現が亢進し、EphA2がプロセシングを受ける。したがって、かかるプロセシング断片を被検者由来の試料から検出することにより、がんの検査を行うことができる。
本発明に係るがんの検査方法で測定するEphA2タンパク質の断片は、分子量30kDa〜80kDaの断片であれば、どのような断片であってもよい。
本発明に係るがんの検査方法の一態様として、分子量30kDa〜80kDaである、EphA2タンパク質のN末端を含む断片の量を測定してもよい。
また、本発明に係るがんの検査方法の一態様として、以下の(i)〜(iii)の少なくとも1つの断片の量を測定してもよい。
(i)配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(ii)配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、置換又は欠失したアミノ酸配列からなるペプチド、及び
(iii)配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列と、80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるペプチド。
配列番号:1で表されるペプチドは、配列番号:5で表されるEphA2タンパク質のS431とV432の間で切断されて生じるN末端側の断片であり、配列番号:2は、このときC末端側に生じる断片である。
配列番号:3で表されるペプチドは、I434とN435の間で切断されて生じるN末端側の断片であり、配列番号:4は、このときC末端側に生じる断片である。
配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドは、EphA2がMT1−MMPによるプロセシングを受けた結果生じる断片である。本発明者らは、図10に示すように、細胞の癌化に伴ってMT1−MMPの発現が亢進し、EphA2のリガンド結合ドメインを遊離させることでEphA2をリガンド非感受性のRTKへ変換する結果、リガンド非依存的なEphA2の作用によってそれぞれのシグナル経路が活性化され、増殖、生存、運動を促進する方向に細胞を制御して癌細胞の悪性形質の獲得に寄与することを見出した。
したがって、被検者由来の試料中における配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの量を測定することにより、細胞の癌化の程度を判定することが可能である。
なお、配列番号:2及び4で表される断片は、膜貫通領域(TM)含む断片であり、本明細書においてはこれらを「切り株」と呼ぶことがある。
本発明に係るがんの検査方法では、配列番号:1〜4で表される断片のいずれを測定してもよく、2以上の断片を測定してもよい。遊離断片である配列番号1又は2で表される断片の検出が容易である。
本発明に係るがんの検査方法は、(i)配列番号:1〜4で表されるアミノ配列からなるペプチドに加え、(ii)配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、置換又は欠失したアミノ酸配列からなるペプチドや、(iii)配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列と、80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるペプチドの量を測定してもよい。また、これらのペプチドの中からいくつかを組み合わせて測定してもよい。
(ii)配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、置換又は欠失したアミノ酸配列からなるペプチドや、(iii)配列番号:1〜4で表されるアミノ酸配列と、80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるペプチドは、例えば、EphA2が、MT1−MMPのプロセシングに耐性を有しない変異を含む場合にプロセシング断片として生じ得るものである。
本明細書において、「1又は数個のアミノ酸が付加、置換又は欠失したアミノ酸配列」という場合、付加、置換又は欠失されるアミノ酸の個数は特に限定されないが、例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個等とすることができる。また付加、置換又は欠失される位置は、ペプチドの末端であっても中間であってもよく、1ヶ所であっても2ヶ所以上であってもよい。
本明細書において、「80%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列」という場合、配列同一性は、80%以上である限り何%であってもよいが、例えば、80%、85%、90%、95%、98%等であってもよい。
以下、(i)〜(iii)を含む、被検者由来の試料中における分子量30kDa〜80kDaのEphA2タンパク質の断片であるペプチドを纏めて、「本発明のペプチド」という場合もある。
本明細書において「タンパク質の断片の量を測定する」工程には、断片を具体的に定量することだけでなく、断片の有無を検出することや、複数の時点で採取した試料中の断片量を測定して比較し、経時的な変化を調べることも含まれる。
本発明に係る検査方法における断片の量の測定は、試料中の断片を検出できるあらゆる方法を用いて行うことができ、例えば、イムノアッセイ(凝集法、比濁法を含む)、ウエスタンブロッティング法、表面プラズモン共鳴(SPR)法等が挙げられるが、これらに限定されない。
例えば、EphA2の断片に対する抗体を用いたイムノアッセイは、簡便で好ましい。
本明細書において「EphA2の断片に対する抗体」は、上述したEphA2の断片を特異的に認識する抗体であれば、どのような抗体であってもよく、例えば以下の抗体が挙げられる。
(1)EphA2タンパク質の分子量30kDa〜80kDaの断片を特異的に認識する抗体
(2)EphA2タンパク質の分子量30kDa〜80kDaの断片であって、EphA2のN末端を含む断片を特異的に認識する抗体
(3)上記(i)〜(iii)のいずれかに該当するペプチドを特異的に認識する抗体
(4)配列番号:5に示されるEphA2のアミノ酸配列のシステインリッチドメイン(Cysteine rich domain;CRD、180位〜340位付近)にエピトープを有する抗体
上記(1)〜(3)の抗体は、当業者が公知の方法に従って作製することができる。例えば、(1)〜(3)のそれぞれで特定されたEphA2の断片を用いて非ヒト動物を免疫し、常法に従って作製してもよい。また、EphA2全長を用いて非ヒト動物を免疫し、得られた抗体の中から、(1)〜(3)のそれぞれで特定された断片に結合するものを、常法に従ってスクリーニングしてもよい。
上記(4)の抗体も、当業者が公知の方法に従って作製することができる。例えば、エピトープ配列を含むペプチドで、非ヒト動物を免疫して作製してもよいし、エピトープ配列を含むペプチドを固相担体に固定し、ファージディスプレイ法等で作製した抗体ライブラリや抗体フラグメントライブラリから、当該エピトープに結合するものを選択すればよい。システインリッチドメインは、例えば配列番号:5に示されるアミノ酸配列の180位〜340位、又は201位〜314位とすることができる。
イムノアッセイは、検出可能に標識した本発明のEphA2の断片に対する抗体、又は、検出可能に標識した本発明のEphA2の断片に対する抗体に対する抗体(二次抗体)を用いる。抗体の標識法により、エンザイムイムノアッセイ(EIA、ELISA、又はELISOPT)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)、化学発光イムノアッセイ(CLIA)等に分類され、これらのいずれも本発明の方法に用いることができる。
ELISA法では、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等の酵素、RIA法では、125I、131I、35S、3H等の放射性物質、FPIA法では、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ダンシルクロリド、フィコエリトリン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、近赤外蛍光材料等の蛍光物質、CLIA法では、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、エクオリン等の発光物質で標識した抗体が用いられる。その他、金コロイド、量子ドットなどのナノ粒子で標識した抗体を検出することもできる。
また、イムノアッセイでは、本発明のEphA2の断片に対する抗体をビオチンで標識し、酵素等で標識したアビジン又はストレプトアビジンを結合させて検出することもできる。
イムノアッセイの中でも、酵素標識を用いるELISA法は、簡便且つ迅速に標的ペプチドを測定することができて好ましい。
ELISA法には競合法とサンドイッチ法がある。競合法では、マイクロプレート等の固相担体に本発明のEphA2の断片に対する抗体を固定し、試料を添加して、抗原抗体反応を生じさせる。いったん洗浄した後、酵素基質と反応、発色させ、吸光度を測定する。試料中の本発明のEphA2の断片量が多ければ発色は弱くなり、少なければ発色が強くなるので、検量線を用いてEphA2の断片量を求めることができる。
サンドイッチ法では、固相担体に本発明のEphA2の断片に対する抗体を固定し、試料を添加し、反応させた後、さらに酵素で標識した別のエピトープを認識する本発明のEphA2の断片に対する抗体を添加して反応させる。洗浄後、酵素基質と反応、発色させ、吸光度を測定することにより、本発明のEphA2の断片量を求めることができる。サンドイッチ法では、固相担体に固定した抗体と試料を反応させた後、非標識抗体(一次抗体)を添加し、この非標識抗体に対する抗体(二次抗体)を酵素標識してさらに添加してもよい。
酵素基質は、酵素がペルオキシダーゼの場合、3,3'−diaminobenzidine(DAB)、3,3'5,5'−tetramethylbenzidine(TMB)、o−phenylenediamine(OPD)等を用いることができ、アルカリホスファターゼの場合、p−nitropheny phosphate(NPP)等を用いることができる。
本明細書において「固相担体」は、抗体を固定できる担体であれば特に限定されず、ガラス製、金属性、樹脂製等のマイクロタイタープレート、基板、ビーズ、ニトロセルロースメンブレン、ナイロンメンブレン、PVDFメンブレン等が挙げられ、標的物質は、これらの固相担体に公知の方法に従って固定することができる。
本発明のEphA2の断片に対する抗体は、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体のいずれも公知の方法に従って作製することができる。モノクローナル抗体は、例えば、本発明のペプチドのいずれかで免疫した非ヒト哺乳動物から抗体産生細胞を単離し、これを骨髄腫細胞等と融合させてハイブリドーマを作製し、このハイブリドーマが産生した抗体を精製することによって得ることができる。また、ポリクローナル抗体は、本発明のペプチドで免疫した動物の血清から得ることができる。
本発明のEphA2の断片に対する抗体は、既存の抗体を用いてもよい。
本発明に係る検査方法に用いられる被検者由来の試料としては、例えば血液、リンパ液、尿などの体液、糞便、細胞や組織のライゼートが挙げられ、これらをペプチド量の測定方法に適した方法で処理してから使用することができる。
配列番号:1又は3で表される遊離断片は、血液、血液、リンパ液、尿などの体液、糞便等から検出しやすい。配列番号:2又は4で表される切り株方断片は、細胞や組織のライゼートを、可溶性の高い界面活性剤(例えばRIPA)を含む緩衝液で処理してから、検出することができる。
本明細書において「がん」はその最も広い意味で用いられる。がんとしては、例えば、脳腫瘍、頭頚部癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肛門癌、直腸癌、肝癌、肝細胞癌、腎臓癌、腎細胞癌、肺癌、非小細胞肺癌、骨肉種、胆嚢癌、膵臓癌、乳癌、子宮体癌、子宮頚癌、前立腺癌、精巣腫瘍、膀胱癌、皮膚癌が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明に係る検査方法は、特に、EphA2を発現している癌に有用である。癌細胞がEphA2を発現しているか否かは当業者が簡単に確認することができるが、例えば、乳癌、肝臓癌、前立腺癌、神経膠腫、黒色腫、卵巣腺癌、食道癌、尿路癌(膀胱癌、腎盂癌)、膵臓癌、肺癌、胃癌、大腸癌などが挙げられる。
本明細書において、「検査方法」とは、診断に必要な情報を得るために、被検者から採取した試料を調べることを意味し、本発明の検査方法は、例えば検査会社等で実施され得る。
本明細書において、「がんの検査方法」とは、がん及びそれによって引き起こされるあらゆる現象を調べることを意味し、例えば、罹患の有無、進行度、悪性度、進行の停止や遅延、転移の有無、治療効果の有無の判定に必要な情報を得るために、被検者から採取した試料を調べることを意味する。
本明細書において、「がんの検査方法」は、抗がん剤の効果や副作用を予測する、いわゆるコンパニオン診断に用いてもよい。「抗がん剤」は特に限定されないが、例えばEphA2やMT1−MMP、リガンド非依存的に活性化されるEphA2の下流シグナルを標的とした抗がん剤が挙げられる。EphA2の断片の量が健常者、又は他のがん患者に比較して有意に多い場合、これらを標的とする抗がん剤が有効であることが予測される。
[がんの検査用キット]
本発明に係るがんの検査用キットは、上述した検査方法を使用してがんの検査を行うためのキットであり、本発明の「EphA2の断片に対する抗体」を含む。
本発明の検査用キットは、本発明のEphA2の断片に対する抗体と本発明のEphA2の断片との抗原抗体反応を利用するイムノアッセイによって、本発明のペプチド量を測定するために必要な試薬及び装置を含む。
検査用キットの一態様は、サンドイッチ法によって本発明のEphA2の断片量を測定するためのものであり、マイクロタイタープレート;捕捉用の本発明のEphA2の断片に対する抗体;アルカリホスファターゼ又はペルオキシダーゼで標識した本発明のEphA2の断片に対する抗体;及び、アルカリホスファターゼ基質(NPP等)又はペルオキシダーゼの基質(DAB、TMB、OPD等)、を含む。捕獲抗体と標識抗体は、異なるエピトープを認識する。
このようなキットでは、まず、マイクロタイタープレートに捕獲抗体を固定し、ここに試料を適宜処理して添加した後インキュベートした後、試料を除去して洗浄する。次に、標識した抗体を添加した後インキュベートし、基質を加えて発色させる。マイクロタイタープレートリーダー等を用いて発色を測定することにより、本発明のEphA2の断片量を求めることができる。
検査用キットの別の態様は、二次抗体を使用してサンドイッチ法により本発明のEphA2の断片の量を測定するためのものであり、マイクロタイタープレート;捕捉用の本発明のEphA2の断片に対する抗体;一次抗体として、本発明のEphA2の断片に対する抗体;二次抗体として、アルカリホスファターゼ又はペルオキシダーゼで標識した、本発明のEphA2の断片に対する抗体に対する抗体;及び、アルカリホスファターゼ(NPP等)又はペルオキシダーゼの基質(DAB、TMB、OPD等)、を含む。
捕獲抗体と一次抗体は、異なるエピトープを認識する。
このようなキットでは、まず、マイクロタイタープレートに捕獲抗体を固定し、ここに試料を適宜処理して添加した後インキュベートし、試料を除去して洗浄する。続いて、一次抗体を添加してインキュベート及び洗浄を行い、さらに酵素標識した二次抗体を添加してインキュベートを行った後、基質を加えて発色させる。マイクロタイタープレートリーダー等を用いて発色を測定することにより、本発明のEphA2の断片の量を求めることができる。二次抗体を用いることにより、反応が増幅され検出感度を高めることができる。
本発明に係る検査用キットは、さらに、必要な緩衝液、酵素反応停止液、マイクロプレートリーダー等を含むものであってもよい。
標識抗体は、酵素標識した抗体に限定されず、放射性物質(25I、131I、35S、3H等)、蛍光物質(フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ダンシルクロリド、フィコエリトリン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート、近赤外蛍光材料等)、発光物質(ルシフェラーゼ、ルシフェリン、エクオリン等)、ナノ粒子(金コロイド、量子ドット)等で標識した抗体であってもよい。また標識抗体としてビオチン化抗体を用い、キットに標識したアビジン又はストレプトアビジンを加えることもできる。
キットには、本発明のEphA2の断片に対する抗体が複数種類含まれていてもよい。
[抗がん剤のスクリーニング方法]
本発明に係る抗がん剤のスクリーニング方法は、
EphA2を発現する細胞を、MT1-MMPがEphA2をプロセシングする条件で培養する工程と、
前記細胞の培地に被検化合物を加えて、MT1-MMPの存在下でインキュベートする工程と、
EphA2のプロセシングの有無を測定する工程と、
を含むことを特徴とする。
EphA2を発現する細胞は、既存の培養癌細胞を用いてもよいし、適当な細胞を選択し、これらのタンパク質を強制発現させて用意することもできる。強制発現の方法は、例えば本発明の実施例で用いられる方法とすることができるが、当業者であれば公知の方法又はそれに準ずる方法で適宜行うことができる。
「MT1-MMPの存在下でインキュベートする工程」は、EphA2を発現する細胞で、MT1-MMPを共発現させてもよいし、別々の細胞で発現させて共培養してもよい。また、MT1-MMPを別途調製して、培地に加えてもよい。MT1-MMPがEphA2をプロセシングする条件も、例えば本発明の実施例で用いられた培養条件とすることができるがこれに限定されず、当業者が適宜選択することができる。
被検化合物は特に限定されず、あらゆる物質とすることができるが、例えば、低分子化合物、高分子化合物、核酸、ペプチド、タンパク質、糖、脂質等が用いられる。当業者は、それぞれの被検化合物にあわせて添加する濃度やインキュベートの条件を決定することができる。
EphA2のプロセシングの有無を測定する工程は、例えば、上述した本発明のペプチドの量を測定する方法を用いて行うことができる。当該工程では、被検化合物が存在しない場合と比較して、プロセシングが低下する被検化合物を抗がん剤候補として選択することができる。
[がんの診断方法]
本発明はまた、がんの診断の方法も提供する。がんの診断方法は、本発明の検査方法によって得られた結果を用いて医師等が、罹患の有無、進行度、悪性度、進行の停止や遅延、転移の有無、治療効果の有無を判定することを意味する。
[抗がん剤]
本発明に係る抗がん剤は、以下の配列からなるsiRNA、若しくはその前駆体、またはこれらをコードする核酸を含む。
siRNA #1
S: ggauggacacggagaauuutt (配列番号:6)
AS: aaauucuccguguccaucctt (配列番号:7)
siRNA #2
S: gcgaugaagucuucacuuatt (配列番号:8)
AS: uaagugaagacuucaucgctt (配列番号:9)
siRNA #3
S: ggguagagacccugagacatt (配列番号:10)
AS: ugucucagggucucuaccctt (配列番号:11)
siRNAは、通常19〜30塩基程度、例えば21塩基〜25塩基程度の二本鎖RNAであり、一般に、その一方が標的mRNAの一部と相補的な塩基配列を有し、他方がこれに相補的な配列を有するが、標的mRNAには完全に相補的でなくてもよい。
siRNAを用いる発現阻害法、すなわちRNAi法は、二本鎖核酸によって誘導される配列特異的な遺伝子発現抑制機構である。siRNAも標的特異性が高く、生体内にもともと存在する遺伝子発現抑制メカニズムを利用する方法なので安全性が高い。
siRNAの典型的な構造は、21塩基対の二本鎖RNAであり、各RNA鎖の3'部分が2塩基のオーバーハングとなっている。siRNAはヘアピン型RNA(shRNA)や、より長い二本鎖RNAからDicerによって切り出されて産生される。Dicerに切断される前のshRNAや長い二本鎖RNAは、siRNAの前駆体として、本発明に係る抗がん剤に用いることができる。
siRNAは、標的mRNAの塩基配列に基づき、公知の方法に従って設計することができる。また、siRNAは、標的mRNAに対するRNAi効果を有する限り、二本鎖RNAであっても良いし、DNA−RNAキメラ型二本鎖核酸であってもよく、人工核酸や各種の修飾が施された核酸であってもよい。
また、本発明に係る抗がん剤は、細胞内でsiRNA又はその前駆体に転写される核酸も包含する。
本明細書において引用されるすべての特許文献及び非特許文献の開示は、全体として本明細書に参照により組み込まれる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。当業者は、本発明の意義を逸脱することなく様々な態様に本発明を変更することができ、かかる変更も本発明の範囲に含まれる。
1.トランスフェクタントの作製(図1)
HT1080にplenti-c-myc-EphA2ベクターを用いたViraPowerTM レンチウイルス発現システムでc-myc-EphA2を安定的に発現するHT1080細胞を作製し、MT1-6-MMPsの発現ベクター(pSG-MT1-6-MMPs)をその細胞に一過性に導入した。EphA2およびMT1-MMPの検出は、抗Mycポリクローナル抗体、抗MT1-MMPモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロットで行った。それぞれのMT-MMPsの発現ベクターはFuGene6(Rhoche)を用いて導入した。c-myc-EphA2と野生型MT1-MMPの発現の確認は、それぞれの細胞(10cm)をRIPAで可溶化し、抗C-myc抗体によるEphA2およびその切り株の免疫沈降(IP)を行った。また、MT1-MMPのプロテアーゼ活性を抑制するため、MMP阻害剤であるBB94、あるいはTIMP-2を培養液中に添加した。
図1Aに示されるとおり、MT1-MMPを強制発現したHT1080細胞では、全長型EphA2(大矢印)に加え、分子量65、60kDaのEphA2プロセシング断片(小矢印)が検出された。MT1-MMPの阻害剤であるTIMP-2、BB94で細胞を処理すると、MT1-MMPの活性が阻害されるのに伴い、これらのプロセシング断片の産生も抑制された。
図1Bに示されるとおり、C末端をMyc標識したEphA2とMT1〜6-MMPをHT1080細胞にそれぞれ強制発現したところ、MT1-MMPを導入した細胞のみでEphA2のプロセシング断片(小矢印)が検出された。このことから、MT1-MMPがEphA2のプロセシングの主要な膜型MMPであることが示唆された。
精製された65,60kDaのプロセシング断片の同定は、それぞれの精製蛋白質(50 pmole)をABIペプチドシークセンサー(Procise 494 HT)によるエドマン分解法で解析し、N末端から5残基を決定した(アプロサイエンスへ委託)。結果を図1Cに示す。65kDaの断片AのN末端配列はVSINQ、60kDaの断片BのN末端配列はNQTEPPであった。
そこで、MT1-MMPによるEphA2の切断部位を同定するため、図1Cで見出した切断部位を含むペプチド鎖を合成し、MT1-MMPのリコンビナントタンパク質によるin vitro消化を行った。結果を図1Dに示す。in vitro消化では、MT1-MMPはEphA2ペプチドのS426とF427の間と431Sと432Vの間の2カ所の部位(矢印)を切断した。図1Cと図1Dの結果から、MT1-MMPは細胞膜上で431位のSと432位のVの間を切断し、その切断と連動して未知のプロテアーゼが434位のIと435位のNの間を切断していることが示唆された。
図1Eは、EphA2におけるMT1-MMPの切断部位を示す概略図である。切断部位は、フィブロネクチン部位であり、このプロセシングによってリガンド結合部位が遊離することがわかる。
2.MT1-MMPノックダウン(図2)
MT1-MMPのノックダウンはMT1-MMPに対して2種類の特異的なトリオミックスsiRNA(3種の異なるsiRNA、B-bridge社)を用いてMT1-MMP発現をノックダウンした。
siRNA #1
S: ggauggacacggagaauuutt (配列番号:6)
AS: aaauucuccguguccaucctt (配列番号:7)
siRNA #2
S: gcgaugaagucuucacuuatt (配列番号:8)
AS: uaagugaagacuucaucgctt (配列番号:9)
siRNA #3
S: ggguagagacccugagacatt (配列番号:10)
AS: ugucucagggucucuaccctt (配列番号:11)
2−1.EphA2およびその切り株の検出(図2A〜D)
A431細胞をRIPAで可溶化し、そのライゼート中のEphA2及びその切り株を抗EphA2抗体(C末端の細胞内ドメインを認識、Santa Cruz)でIPし、IPされた分画を同EphA2抗体および抗チロシンリン酸化抗体(4G10、Millipore)を用いてウエスタンブロットした(A、EphA2、p-EphA2)。一方、陰性コントロールとして、E-カドヘリンの発現は抗E-カドヘリンモノクローナル抗体(Merck)を用いたウエスタンブロットで調べた。
結果を図2Aに示す。図2B〜Dは、図2Aの結果から、EphA2、E-カドヘリン、リン酸化EphA2の相対発現量を求めた結果である。MT1-MMPをノックダウンすると、65kDaと60kDaのEphA2のプロセシング断片は消失した(A)。一方、MT1-MMPの発現の有無でE-カドヘリンのプロセシングには変化がなかった(A、C)。
2−2.細胞表層のEphA2およびその切り株の検出(図2E〜G)
細胞表層のEphA2のプロセシングを調べるため、A431細胞の膜蛋白をLC-ビオチン(Pierce)で標識し、アビジンビーズ(Immobilized Streptavidin, Pierce)によるpull downで膜蛋白質を精製した。精製した膜蛋白質中のEphA2量を抗EphA2抗体によるウエスタンブロットで比較した。それぞれの蛋白質の比較はImage-Jによるデンシトグラフで行った。
結果を図2Eに示す。図2F及びGは、図2Eの結果から、EphA2及びE-カドヘリンの相対発現量を求めた結果である。MT1-MMPノックダウンで全長のEphA2量が増加し、TIMP-2処理を行っても同様の結果となった(E、F)。一方、細胞表層のE-カドヘリン発現量についてはMT1-MMPの発現の有無で変化は見られなかった(E、G)。
3−1.EphA2、Erk、Aktのリン酸化の検出(図3A〜F)
それぞれの細胞は脱リン酸化酵素阻害剤(オルトバナジン(V)酸ナトリウム、フッ化ナトリウム)を添加したRIPAで可溶化した後、EphA2およびp-EphA2の検出はEphA2のC末端を認識する抗体によるIPを行い、それぞれ抗EphA2抗体、抗チロシンリン酸化抗体(4G10)によるウエスタン(IP-ウエスタン)で検出した。また、p-Erk1/2、Erk1/2、p-Akt、Aktはそれぞれの特異抗体を用いてウエスタンブロットで検出した。リン酸化の割合はウエスタンブロットで得られたバンドをImage Jによるデンシトメトリーで定量化した。
抗体は、以下のものを用いた:抗p-Erk1/2モノクローナル抗体(Santa Cruz)、抗Erk1/2ポリクローナル抗体(Santa Cruz)、抗p-Akt(Ser473)モノクローナル抗体(Cell Signaling)、抗Akt(Ser473)モノクローナル抗体(Cell Signaling)。
結果を図3A〜Fに示す。また、同様の実験を、ヒト頭頸部癌SCC61細胞で行った結果を図7に示す。
Ephrin-A1存在下において、MT1-MMP発現の有無はEGF受容体の活性化には影響を与えなかった(A、B)。MT1-MMPノックダウンはEphA2自身のリン酸化を亢進した(A、C)。また、Ephrin-A1の存在下において、EGFで誘導したErk1/2、Akt活性は、MT1-MMPノックダウンで有意に抑制された(A、D、E)。同様の結果はヒト乳癌BT549細胞、頭頸部癌SCC61細胞においても見られた(F、図7)が、EphA2を発現していな卵巣癌IGROV-1細胞や乳癌BT-20細胞、さらに、k-rasの変異のあるMDA-MB-231細胞においては見られなかった(F)。
3−2.細胞増殖アッセイ(2次元、3次元培養、スフェロイド形成)(図3G〜I)
(2次元培養)
野生型、MT1-MMPノックダウンA431細胞を培養ディッシュ(2次元培養)にそれぞれ播種し(8 x 103個/2ml/6 well plate)、DMEM/1%FCSの培養液で4日間の培養を行った。細胞数は血球計算盤を用いて計測した。
(3次元培養)
酢酸で抽出したコラーゲンIゲル(3mg/ml、新田ゼラチン)と中和緩衝液(50mM NaOH、260mM NaHCO3, 200mM HEPES)、それぞれの細胞を混合し、2.5 x 104/250 μl/48 well plateに細胞を播種した。コラーゲンゲルが重合した後、400μl/wellのDMEM/1%FCSの培養液で7日間の培養を行った。培養後、0.1%コラゲナーゼでコラーゲンゲルを溶解し、細胞はトリプシンで単一細胞にした後、コールターカウンターで細胞数を測定した。
(スフェロイド形成)
それぞれの細胞をトリプシンで剥離し、細胞数を血球計算盤で計測した。それぞれの細胞蛋白質の低吸着プレート(PrimeSurface(登録商標)、住友ベークライト)に播種し(100 cells/100μl/96 well plate)、DMEM/1%FCSの培養液で7日間の培養を行った。スフェロイド形成した細胞数はその容積(1/2 x 長径 x 短径2)を測定して計測した。
結果を図3G〜Iに示す。2次元培養皿の条件下において、MT1-MMPの有無による、Ephrin-A1/EphA2依存的な細胞増殖抑制への影響はみられなかった(G、H)。しかし、コラーゲンゲル内の3次元培養および足場非依存的なスフェロイド形成においては、MT1-MMPノックダウンした細胞の増殖は、Ephrin-A1依存的に有意に抑制された(I)。
4.RhoG活性の測定(図4)
MT1-MMPの発現をsiRNAでノックダウンしたA431細胞を用いて、Ephrin-A1依存的EphA2がEGF受容体下流のRhoGシグナルに及ぼす影響を調べた。
RhoGのエフェクターであるELMO2とGSTの融合蛋白質をグルタチオンビーズに固相化し、RIPAで可溶化した細胞懸濁液中のRhoG活性をELMO2/GSTビーズをベイトとしたpull-downで検出した。共沈したRhoGは抗RhoGポリクローナル抗体(Santa Cruz)で検出し、RhoG活性の定量はImage Jによるデンシトメトリーで行った。ELMO2の発現ベクターは東京大学医科学研究所細菌感染分野の笹川千尋教授より恵与して頂いた。
結果を図4に示す。EGF未処理の細胞ではRhoG活性は検出されなかった(A)。一方、EGF刺激を行った場合、MT1-MMPノックダウンした細胞では、Ephrin-A1処理によりRhoG活性が有意に低下した(A、B)。同様の結果はSCC61細胞においても見られた(C)。EGF刺激した細胞の運動能をトランスウエルチャンバーで調べたところ、MT1-MMPノックダウン細胞では、Ephrin-A1処理により細胞運動が有意に抑制された(D、E)。このことから、MT1-MMPによるEphA2のプロセシングは、small GTPase活性を亢進する役割を担うことが示唆された。
5−1.MT1-MMPプロセシングに耐性な変異体の作製(図5A〜D)
MOCK、野生型、MT1-MMPでプロセシングを受ける部位を欠失したC末端にFLAG標識したEphA2の発現ベクターを構築し、ViraPowerTM レンチウイルス発現システムを用いてA431細胞に発現遺伝子を導入した(図5A、B)。それぞれの発現蛋白質の確認は、RIPAで可溶化した細胞懸濁液中のEphA2の発現を抗FLAG抗体(M2)、抗EphA2ポリクローナル抗体(Santa Cruz)を用いたウエスタンブロットで検出した。MT1-MMPの発現は抗MT1-MMPモノクローナル抗体(1D8)を用いたウエスタンブロットで検出した。
野生型EphA2、又はプロセシング耐性EphA2変異体を導入した細胞のEphA2のプロセシングの状態をウエスタンブロットで検出したところ、切断部位を欠損した変異体は、MT1-MMPによるプロセシングに耐性を示した(C)。EphA2変異体のEphrin-A1によるリン酸化をEphA2抗体による免疫沈降で確認した(D)。
5−2.実験肺転移実験(図5E〜G)
それぞれの細胞(5x106/100μl)はヌードマウス(BALB/c-nu)の尾静脈へ投与し、1ヶ月後にマウスを屠殺の後、解剖して肺へ形成した癌細胞の転移結節の観察を行った。また、微小な転移巣は、肺組織をHE染色して顕微鏡下で観察した。5匹のマウスを用いて実験を行い、統計処理はT-testを行った。
プロセシング耐性EphA2変異型を導入した細胞を投与したマウスでは、肺における転移結節の形成が低下した(E、F)。また、HE染色の結果から、プロセシング耐性EphA2変異型を導入した細胞を投与したマウスでは、肺での癌細胞の増殖も有意に抑制されたことが示された(G)。
6−1.癌組織でのEphA2断片の検出(図6A、B)
凍結癌組織よりクリオスタットにて薄層切片(5μl)よりRIPA緩衝液(100μl/slide)を用いて組織抽出液を作製した。それぞれの組織抽出した蛋白質量はCBB法で測定し、各組織に発現するEphA2、その断片、MT1-MMPをそれぞれC末端のEphA2を認識抗体(Santa Cruz)、MT1-MMPモノクローナル抗体(1D8)を用いたウエスタンブロットで解析した。対照としてβアクチンを同時に検出した。
卵巣癌組織では全長型EphA2(intact)は低レベルでしか検出されず、分子量60kDaの断片(EphA2 fragment)が主要なものであった(A、下段のパネル)。これら組織中のMT1-MMPの発現量をMT1-MMPモノクローナル抗体で検出した(A、上段のパネル)。*は1次抗体なしでも見られることから非特異的なバンドであると考えられた(B)。これらの結果から、生体内の癌組織においても、EphA2はMT1-MMPによるプロセシングを受け、プロセシングによる60kDaの断片を生じることが示唆された。
また、同様の実験を、ヒト頭頸部癌組織を用いて行った結果を図8に示す。MT1-MMPの発現量が卵巣癌に比べ低いため、EphA2のプロセシングの割合は非常に低かった(C下段のパネル)。頭頸部癌組織を免疫染色法で調べると、EphA2が腫瘍部および非腫瘍部で発現しているのに対して、MT1-MMPは腫瘍部内での部分的な発現分布を示した(A、B)。この結果は、頭頸部癌でもMT1-MMPを発現する腫瘍細胞内では卵巣癌組織同様のEphA2のプロセシングが起こっている可能性を示唆する。
6−2.N、C末端EphA2およびMT1-MMPの免疫組織科学的解析(図6C〜F、8)
卵巣癌組織のEphA2とMT1-MMPの局在を蛍光免疫組織科学的手法で解析した。まず、凍結組織切片(4μm)を4%フォルマリン/PBS緩衝液に室温で10分処理をした。PBSで5分、3回の洗浄を行った後、0.2%ヤギ血清/0.05% Triton-X100/PBSでブロッキングを行った(室温1時間)。その後、1次抗体(抗MT1-MMPポリクローナル抗体(ウサギ IgG, Merck)/抗EphA2 N-terminalドメイン(マウス IgG, R&D)、あるいはMT1-MMPポリクローナル抗体/ 抗EphA2 C-terminalドメイン(Santa Cruz)を4℃、オーバーナイト処理した。
反応後、PBSで5分、3回の洗浄を行った後、抗マウスIgG-Alexa 568(Invitrogen)及び抗ウサギIgG-Alexa-488(Invitrogen)(各1μg/ml)で、室温で1時間処理した。DAPIを含む封入剤(Vector Lab)で処理した後、蛍光顕微鏡で観察をした。また、リン酸化EphA2の局在は、抗EphA2リン酸化tyr-594 ポリクローナル抗体(biorbyt limited)、抗EphA2リン酸化ser-897ポリクローナル抗体(Cell Application Inc)と抗MT1-MMPモノクローナル抗体を用いて、同様の方法で検出した。
MT1-MMPの陽性染色部位はEphA2のC末端抗体の陽性部位と共局在する(C)。一方、EphA2のN末端抗体の陽性染色部位はMT1-MMPのそれと共局在しない(D)。このことから、癌組織で強発現している多くのEphA2はN末端が切断された切り株である可能性が示唆された。卵巣癌組織において、MT1-MMPの発現はEphA2のリガンド非依存的な897位のセリン残基のリン酸化の発現と共局在した(E)。一方、MT1-MMPの発現とリガンド依存的な594位のチロシン残基のリン酸化とは異なる局在を示した(F)。
また、同様の実験を、ヒト頭頸部癌組織を用いて行った結果を図9に示す。MT1-MMPの発現部位でのEphA2のリン酸化の動態を、EphA2の細胞内ドメインのリン酸化を認識する2種の抗体を用いて検討した結果を示す。頭頸部癌組織においても、MT1-MMPの発現はEphA2のリガンド非依存的な897位のセリン残基のリン酸化の発現と共局在した(A)。一方、MT1-MMPの発現とリガンド依存的な594位のチロシン残基のリン酸化とは異なる局在を示した(B)。
6−3.正常卵巣組織と卵巣癌組織におけるEphA2のN末端及びC末端の免疫染色(図11)
6−2.と同様の方法で、正常卵巣組織と卵巣癌組織を、抗EphA2 N-terminalドメイン(マウス IgG, R&D)又は抗EphA2 C-terminalドメイン(Santa Cruz)で染色した。正常卵巣組織の結果を図11Aに、卵巣癌組織の結果を図11Bに示す。図11に示されるとおり、正常癌組織では、EphA2のN末端とC末端がいずれも検出され、EphA2がインタクトな状態であることが確認された。一方、卵巣癌組織では、N末端が染色されず、EphA2がプロセシングを受けてN末端を失っていることが確認された。
6−4.胃癌組織と大腸癌組織におけるEphA2のリン酸化の確認(図12)
6−2.と同様の方法で、胃癌組織と大腸癌組織におけるEphA2のリン酸化を調べた。MT1-MMPは、抗MT1-MMPマウスモノクローナル抗体を結合させた後、Alexa Fluor(登録商標)-568を結合させた二次抗体で染色した。また、EphA2 p-Ser897とEphA2 p-Tyr594は、それぞれ抗EphA2 p-Ser897又は抗EphA2 p-Tyr594ウサギポリクローナル抗体を結合させた後、Alexa Fluor(登録商標)-488を結合させた二次抗体で染色した。
胃癌組織の結果を図12Aに、大腸癌組織の結果を図12Bに示す。いずれも、胃癌組織、大腸癌組織のいずれも、MT1-MMPとEphA2 p-Ser897の発現の局在は一致したが、MT1-MMPとEphA2 p-Tyr594の発現の局在は一致しなかった(データ示さず)。
このことから、MT1-MMPによるEphA2のプロセシングは、種々の癌で同様に生じていることが強く示唆された。
6−5.MT1-MMPプロセシング耐性のEphA2による癌細胞の表現型への影響(図13)
5−1.と同様の方法で、A431細胞でMT1-MMPプロセシング耐性のEphA2を発現させ、10%FCSを含むDMEM培地に播種し、24時間培養後に細胞の形態を顕微鏡(200倍)で観察した。
結果を図13に示す。A431細胞は、悪性の癌細胞特有の紡錘状の形状を有する(Mock及び正常EphA2発現細胞の結果を参照)が、MT1-MMPプロセシング耐性のEphA2を発現させた細胞は、丸い形状となり(ucEphA2-CF-1及びucEphA2-CF-2)、正常な上皮細胞様の形態に変化した。このことは、癌細胞においても、MT1-MMPによるプロセシングを受けなければリガンド依存的な抗腫瘍性のシグナルが活性化されることを強く示唆する。
6−6.A431細胞におけるEphA2の断片の産生の確認(図14)
1.と同様の方法で、A431細胞でEphA2を発現させ、内在性のMT1-MMPで切断される断片をウエスタンブロッティングにより検出した。用いた抗体は、EphA2タンパク質のシステインリッチドメインにエピトープを有する。2つのバンドが見られるのは、EphA2が、本発明者らが確認した部位に加えて別の部位でも切断されるためと考えられた。
配列番号:1〜4は、本発明に係る検査方法に用いられるEphA2断片のアミノ酸配列を示す。
配列番号:5は、EphA2の全長のアミノ酸配列を示す。
配列番号:6及び7は、siRNA#1の配列を示す。
配列番号:8及び9は、siRNA#2の配列を示す。
配列番号:10及び11は、siRNA#3の配列を示す。

Claims (2)

  1. EphA2を発現する細胞を、MT1−MMPがEphA2をプロセシングする条件で培養する工程と、
    前記細胞の培地に被検化合物を加えて、MT1−MMPの存在下でインキュベートする工程と、
    EphA2のプロセシングの有無を測定する工程と、
    を含む抗がん剤のスクリーニング方法。
  2. 前記EphA2のプロセシングの有無を検出する工程で、被検化合物が存在しない場合と比較して、プロセシングが低下する被検化合物を抗がん剤候補として選択する、請求項1に記載のスクリーニング方法。
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