以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図10を参照して、本発明の第1実施形態による試薬調製装置4の構成について説明する。なお、第1実施形態では、血液検査を行うための血液分析装置1の一部として、本発明の第1実施形態による試薬調製装置4を使用する場合について説明する。
血液分析装置1は、図1に示すように、血液の測定を行う機能を有する測定部2と、測定部2から出力された測定データを分析して分析結果を得るデータ処理部3と、検体の処理に用いられる試薬を調製する試薬調製装置4とにより構成されている。測定部2は、フローサイトメトリー法により、血液中の赤血球、白血球、網状赤血球および血小板の測定を行うように構成されている。また、測定部2は、試薬調製装置4によって調製され、供給される試薬を用いて血液を希釈し、赤血球、白血球、網状赤血球および血小板の測定を行うように構成されている。さらに、測定部2は、試薬調製装置4によって調製され、供給される上記試薬を洗浄液として用い、後述する試料調製部21に含まれるサンプリングバルブ21bおよび反応チャンバ21c(図3参照)等や、検出部22に含まれるシースフローセル22c(図4参照)等を洗浄するように構成されている。なお、フローサイトメトリー法とは、測定試料を含む試料流を形成するとともに、その試料流にレーザ光を照射することによって、測定試料中の粒子(血球)が発する前方散乱光、側方散乱光および側方蛍光を検出する粒子(血球)の測定方法である。
測定部2は、図2に示すように、測定試料調製部21と、測定試料の測定を行う検出部22と、検出部22の出力に対するアナログ処理部23と、表示・操作部24と、測定部2を制御するためのマイクロコンピュータ部25とを備えている。
測定試料調製部21は、白血球測定用試料と、網状赤血球測定用試料と、血小板測定用試料等を調製するために設けられている。測定試料調製部21は、図3に示すように、血液が吸引されるサンプリングバルブ21bと、反応チャンバ21cとを含んでいる。採血管21aは、分析対象の血液を収容している。
サンプリングバルブ21bは、吸引ピペット(図示せず)により吸引された採血管21aの血液を所定の量だけ定量する機能を有する。また、サンプリングバルブ21bは、吸引された血液に所定の試薬を混合することが可能に構成されている。つまり、サンプリングバルブ21bは、所定量の血液に試薬調製装置4から供給される所定量の試薬が混合された希釈試料を生成可能に構成されている。
反応チャンバ21cは、サンプリングバルブ21bから供給される希釈試料に所定の染色液をさらに混合して所定の時間反応させるように構成されている。これにより、測定試料調製部21は、白血球が染色されるとともに赤血球が溶血された、白血球測定用試料を調製する機能を有する。また、測定試料調製部21は、網状赤血球が染色された網状赤血球測定用試料を調製するとともに、血小板が染色された血小板測定用試料を調製する機能を有する。
また、測定試料調製部21は、白血球分類測定(以下、「DIFF測定」という)モード時に、白血球測定用試料をシース液とともに測定試料調製部21から後述するシースフローセル22c(図4参照)に供給するように構成されている。また、測定試料調製部21は、網状赤血球測定(以下、「RET測定」という)モード時に、網状赤血球測定用試料をシース液とともに測定試料調製部21からシースフローセル22cに供給するように構成されている。また、測定試料調製部21は、血小板測定(以下、「PLT測定」という)モード時に、血小板測定用試料をシース液とともに測定試料調製部21からシースフローセル22cに供給するように構成されている。
検出部22は、図4に示すように、レーザ光を出射する発光部22aと、照射レンズユニット22bと、レーザ光が照射されるシースフローセル22cと、発光部22aから出射されるレーザ光が進む方向の延長線上に配置されている集光レンズ22d、ピンホール22eおよびPD(フォトダイオード)22fと、発光部22aから出射されるレーザ光が進む方向と交差する方向に配置されている集光レンズ22g、ダイクロイックミラー22h、光学フィルタ22i、ピンホール22jおよびAPD(アバランシェフォトダイオード)22kと、ダイクロイックミラー22hの側方に配置されているPD22lとを含んでいる。
発光部22aは、シースフローセル22cの内部を通過する測定試料を含む試料流に対して光を出射するために設けられている。また、照射レンズユニット22bは、発光部22aから出射された光を平行光にするために設けられている。また、PD22fは、シースフローセル22cから出射された前方散乱光を受光するために設けられている。なお、シースフローセル22cから出射された前方散乱光により、測定試料中の粒子(血球)の大きさに関する情報を得ることが可能である。
ダイクロイックミラー22hは、シースフローセル22cから出射された側方散乱光および側方蛍光を分離するために設けられている。具体的には、ダイクロイックミラー22hは、シースフローセル22cから出射された側方散乱光をPD22lに入射させるとともに、シースフローセル22cから出射された側方蛍光をAPD22kに入射させるために設けられている。また、PD22lは、側方散乱光を受光するために設けられている。なお、シースフローセル22cから出射された側方散乱光により、測定試料中の粒子(血球)の核の大きさなどの内部情報を得ることが可能である。また、APD22kは、側方蛍光を受光するために設けられている。なお、シースフローセル22cから出射された側方蛍光により、測定試料中の粒子(血球)の染色度合いに関する情報を得ることが可能である。また、PD22f、22lおよびAPD22kは、それぞれ、受光した光信号を電気信号に変換する機能を有する。
アナログ処理部23は、図4に示すように、アンプ23a、23bおよび23cを含んでいる。また、アンプ23a、23bおよび23cは、それぞれ、PD22f、22lおよびAPD22kから出力された電気信号を増幅および波形処理するために設けられている。
マイクロコンピュータ部25は、図2に示すように、制御用プロセッサおよび制御用プロセッサを動作させるためのメモリを有する制御部251と、アナログ処理部23から出力された信号をデジタル信号に変換するA/D変換部252と、A/D変換部252から出力されたデジタル信号に所定の処理を行うための演算部253とを含んでいる。
制御部251は、バス254aおよびインターフェース255aを介して測定試料調製部21および検出部22を制御する機能を有する。また、制御部251は、バス254aおよびインターフェース255bを介して表示・操作部24と接続されるとともに、バス254bおよびインターフェース255cを介してデータ処理部3と接続されている。また、演算部253は、インターフェース255dおよびバス254aを介して制御部251に演算結果を出力する機能を有する。また、制御部251は、演算結果(測定データ)をデータ処理部3に送信する機能を有する。
データ処理部3は、図1に示すように、パーソナルコンピュータ(PC)などからなり、測定部2の測定データを分析するとともに、その分析結果を表示する機能を有する。また、データ処理部3は、図5に示すように、制御部31と、表示部32と、入力デバイス33とを含んでいる。
制御部31は、測定モード情報を含む測定開始信号およびシャットダウン信号を測定部2に送信する機能を有する。また、制御部31は、図5に示すように、CPU31aと、ROM31bと、RAM31cと、ハードディスク31dと、読出装置31eと、入出力インターフェース31fと、画像出力インターフェース31gと、通信インターフェース31iとから構成されている。CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インターフェース31f、画像出力インターフェース31gおよび通信インターフェース31iは、バス31hによって接続されている。
CPU31aは、ROM31bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM31cにロードされたコンピュータプログラムを実行するために設けられている。ROM31bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU31aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータなどが記録されている。
RAM31cは、SRAMまたはDRAMなどによって構成されている。RAM31cは、ROM31bおよびハードディスク31dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU31aの作業領域として利用される。
ハードディスク31dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU31aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。後述するアプリケーションプログラム34aも、このハードディスク31dにインストールされている。
読出装置31eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体34に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体34には、コンピュータに所定の機能を実現させるためのアプリケーションプログラム34aが格納されている。そして、データ処理部3としてのコンピュータは、その可搬型記録媒体34からアプリケーションプログラム34aを読み出し、そのアプリケーションプログラム34aをハードディスク31dにインストールするように構成されている。
なお、上記アプリケーションプログラム34aは、可搬型記録媒体34によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってデータ処理部3と通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。たとえば、上記アプリケーションプログラム34aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにデータ処理部3がアクセスして、そのアプリケーションプログラム34aをダウンロードし、これをハードディスク31dにインストールすることも可能である。
また、ハードディスク31dには、たとえば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインターフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、第1実施形態に係るアプリケーションプログラム34aは上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
入出力インターフェース31fは、たとえば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインターフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインターフェース、およびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインターフェースなどから構成されている。入出力インターフェース31fには、キーボードおよびマウスからなる入力デバイス33が接続されており、ユーザがその入力デバイス33を使用することにより、データ処理部3にデータを入力することが可能である。また、ユーザは、入力デバイス33を用いて、測定モードの選択、測定部2および試薬調製装置4の起動およびシャットダウンを行うことが可能である。たとえば、ユーザが入力デバイス33を用いて起動またはシャットダウンを指示すると、起動信号またはシャットダウン信号が通信インターフェース31iを介して試薬調製装置4に送信される。
画像出力インターフェース31gは、LCDまたはCRTなどで構成された表示部32に接続されており、CPU31aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部32に出力するようになっている。表示部32は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
ここで、第1実施形態では、試薬調製装置4は、測定部2の測定試料調製部21で用いられる試薬を調製するために設けられている。具体的には、試薬調製装置4は、水道水から作製されるRO水を用いて高濃度試薬を所望の濃度に希釈することにより、血液分析に用いられる試薬を調製するように構成されている。ここで、RO水とは、純水の一種であり、RO(Reverse Osmosis)膜(逆浸透膜)を透過することによって、不純物を取り除かれた水である。また、純水とは、RO水の他に、精製水、脱イオン水、および蒸留水などを含み、不純物を取り除く処理が実施された水であるが、その純度は特に限定されない。
試薬調製装置4は、図6に示すように、高濃度試薬チャンバ41と、RO水チャンバ42と、2つの希釈チャンバ43および44と、2つのダイアフラムポンプ45aおよび45bと、攪拌チャンバ46と、供給チャンバ47と、RO水作製部48と、試薬調製装置4の各部の動作を制御する制御部49とを含んでいる。さらに、試薬調製装置4は、筐体外に設置された空圧部6(図1参照)を含み、空圧部6から供給される陰圧および陽圧を用いて、装置内における各液体の移送を行うように構成されている。空圧部6は、試薬調製装置4に対して陰圧を供給するための陰圧源61、および、陽圧を供給するための陽圧源62を有している。また、試薬調製装置4には、タッチパネル式の表示部4a(図1参照)が設けられている。試薬調製装置4の制御部49のCPU49aは、タッチパネル式の表示部4aを介して、ユーザから、試薬調製装置4の起動、シャットダウンおよび各種設定などの指示を受け付けるように構成されている。
高濃度試薬チャンバ41は、高濃度試薬タンク5から高濃度試薬が供給されるように構成されている。高濃度試薬チャンバ41には、チャンバ内に所定量の高濃度試薬が収容されていることを検知するためのフロートスイッチ100が設けられている。フロートスイッチ100は、高濃度試薬チャンバ41内の液量(液面)に応じてフロート部が上下動するように構成されている。フロートスイッチ100のフロート部が下限に到達すると、高濃度試薬タンク5から高濃度試薬チャンバ41に高濃度試薬が供給されるように、制御部49により各部が制御されるように構成されている。また、フロートスイッチ100のフロート部が上限に到達すると、高濃度試薬タンク5から高濃度試薬チャンバ41への高濃度試薬の供給が停止されるように、制御部49により各部が制御されるように構成されている。また、フロートスイッチ100は、高濃度試薬チャンバ41の上端部近傍に配置されており、高濃度試薬チャンバ41に約300mLの高濃度試薬が貯留されたときに、フロート部が上限に到達するように構成されている。これにより、高濃度試薬チャンバ41には、常時、約300mL貯留されるように高濃度試薬が供給される。
また、高濃度試薬チャンバ41は、電磁バルブ200を介して高濃度試薬タンク5に接続され、電磁バルブ201を介して空圧部6の陰圧源61に接続されている。また、高濃度試薬チャンバ41は、電磁バルブ202の開閉により、大気に開放され、または、閉塞されるように構成されている。また、高濃度試薬チャンバ41は、流路300により、ダイアフラムポンプ45a(45b)から希釈チャンバ43(44)に液体を移送するための流路301に接続されている。また、流路300上には、電磁バルブ203が設けられており、電磁バルブ203は、流路301の近傍に配置されている。
RO水チャンバ42は、高濃度試薬を希釈するためのRO水がRO水作製部48から供給されるように構成されている。RO水チャンバ42には、チャンバ内に収容されるRO水が上限量に達したこと、および、下限量に達したことをそれぞれ検知するためのフロートスイッチ101および102が設けられている。フロートスイッチ101(102)は、RO水チャンバ42内の液量(液面)に応じてフロート部が上下動するように構成されている。フロートスイッチ101のフロート部がRO水チャンバ42の上限量に対応する位置に到達すると、RO水作製部48からRO水チャンバ42へのRO水の供給が停止されるように、制御部49により各部が制御されるように構成されている。また、フロートスイッチ102のフロート部がRO水チャンバ42の下限量に対応する位置に到達すると、RO水作製部48からRO水チャンバ42にRO水が供給されるように、制御部49により各部が制御されるように構成されている。また、フロートスイッチ101は、RO水チャンバ42の上端部近傍に配置されており、RO水チャンバ42に約600mLのRO水が貯留されたときに、フロート部がRO水チャンバ42の上限量に対応する位置に到達するように構成されている。また、フロートスイッチ102は、RO水チャンバ42に貯留されているRO水が約300mLまで減少したときに、フロート部がRO水チャンバ42の下限量に対応する位置に到達するように構成されている。これにより、試薬調製装置4が動作している間、RO水チャンバ42には、約300mL以上約600mL以下のRO水が貯留されることとなる。
また、RO水チャンバ42は、チャンバ内のRO水を廃棄可能に構成されている。具体的には、RO水チャンバ42は、電磁バルブ204を介して陽圧源62に接続されているとともに、電磁バルブ205を介して廃棄流路に接続されており、電磁バルブ204および205の両方を開放することによって、陽圧力で内部のRO水が廃棄流路に押し出されるように構成されている。また、RO水チャンバ42は、電磁バルブ206の開閉により、大気に開放され、または、閉塞されるように構成されている。また、RO水チャンバ42は、電磁バルブ207を介してRO水作製部48の後述するRO水貯留タンク48aに接続されている。また、RO水チャンバ42は、電磁バルブ208を介して、流路302によりダイアフラムポンプ45aおよび45bに接続されている。
希釈チャンバ43および44は、それぞれ、RO水により高濃度試薬を希釈するために設けられている。また、希釈チャンバ43(44)は、後述するように、ダイアフラムポンプ45aおよび45bによって送り込まれる約300mLの液体(高濃度試薬およびRO水の混合液)を収容可能に構成されている。希釈チャンバ43(44)には、チャンバ内に収容された液体(高濃度試薬およびRO水の混合液)の残量が所定量に到達したことを検知するためのフロートスイッチ103(104)が設けられている。フロートスイッチ103(104)は、希釈チャンバ43(44)内の液量(液面)に応じてフロート部が上下動するように構成されている。希釈チャンバ43(44)は、常時大気開放された状態となるように構成されている。また、希釈チャンバ43(44)は、電磁バルブ209(210)を介して、流路303(304)により流路301に接続されている。流路303(304)は、流路301と同様に、約4mmの内径を有している。なお、電磁バルブ210を閉じた状態で、電磁バルブ209を開放することによって、流路301を介して移送される液体(RO水および高濃度試薬)を希釈チャンバ43に移送することが可能である。一方、電磁バルブ209を閉じた状態で、電磁バルブ210を開放すれば、流路301を介して移送される液体(RO水および高濃度試薬)を希釈チャンバ43に移送することが可能である。すなわち、電磁バルブ209および210は、それぞれ、流路303および304の流路切替部として機能するように構成されている。
また、希釈チャンバ43(44)は、電磁バルブ211(212)を介して、攪拌チャンバ46に接続されている。また、希釈チャンバ43(44)と電磁バルブ211(212)との間には、気泡センサ400(401)が設けられている。気泡センサ400(401)は、透過型センサであり、流路を通る気泡を検知するように構成されている。これにより、フロートスイッチ103(104)のフロート部が下限に到達し、かつ、気泡センサ400(401)で気泡が検知されることによって、制御部49により、希釈チャンバ43(44)内の液体(高濃度試薬およびRO水の混合液)が全て排出されたことを確認することが可能となる。そして、希釈チャンバ43(44)が空になる(チャンバ内の液体が全て排出される)と、空になった希釈チャンバ43(44)に高濃度試薬およびRO水が供給されるように、制御部49により各部が制御されるように構成されている。
ダイアフラムポンプ45aおよび45bは、互いに同様の構成を有しており、同時に同じ動作を行うように構成されている。ダイアフラムポンプ45a(45b)は、1回の定量動作で高濃度試薬およびRO水をそれぞれ約6.0mL(一定量)分定量する機能を有している。また、ダイアフラムポンプ45a(45b)は、電磁バルブ213(215)を介して陰圧源61に接続されているとともに、電磁バルブ214(216)を介して陽圧源62に接続されている。なお、高濃度試薬チャンバ41、RO水チャンバ42、ダイアフラムポンプ45aおよび45b、空圧部6、流路300〜304、電磁バルブ200〜210および213〜216により、試薬調製装置4の液体定量部50(図6参照)が構成されている。
攪拌チャンバ46は、図6に示すように、約300mLの液体を収容可能に構成されており、希釈チャンバ43(44)から移送される液体(高濃度試薬およびRO水の混合液)を攪拌するために設けられている。具体的には、攪拌チャンバ46は、屈曲されたパイプ461を有し、希釈チャンバ43(44)から移送される液体(高濃度試薬およびRO水の混合液)がパイプ461を通過することによって、攪拌チャンバ46の内壁面に沿って攪拌チャンバ46内に流入されるように構成されている。これにより、希釈チャンバ43(44)から移送される液体(高濃度試薬およびRO水の混合液)が攪拌チャンバ46の内壁面に沿って流動されるので、対流が発生し、容易に、高濃度試薬とRO水とが攪拌される。なお、高濃度試薬とRO水とは、希釈チャンバ43(44)内、および、希釈チャンバ43(44)から攪拌チャンバ46への流路内においても、ある程度攪拌されているが、攪拌チャンバ46を上記のように構成することによって、より確実に攪拌することが可能である。
また、第1実施形態では、図6に示すように、撹拌チャンバ46には、後述する電気伝導度計の校正を行う際に用いる標準液体収容容器500から標準液体(標準試薬)を導入するための導入経路462が設けられている。導入経路462の先端部には栓462aが設けられている。標準液体を導入する際には、使用者により、導入経路462の先端部に設けられた栓462aが外され、標準液体収容容器500が導入経路462に接続される。なお、標準液体収容容器500の標準液体(標準試薬)は、試薬調製装置4によって調製される試薬が含有する成分と同じ成分を同じ濃度で含む液体である。
攪拌チャンバ46には、チャンバ内に収容された液体(高濃度試薬およびRO水の混合液)の残量が所定量に到達したことを検知するためのフロートスイッチ105が設けられている。フロートスイッチ105は、攪拌チャンバ46内の液量(液面)に応じてフロート部が上下動するように構成されている。フロートスイッチ105のフロート部が下限に到達してチャンバ内が空になると、希釈チャンバ43および44のいずれか一方から攪拌チャンバ46に約300mLの混合液が供給されるように、制御部49により各部が制御されるように構成されている。そして、希釈チャンバ43および44の一方から供給されて攪拌された混合液が攪拌チャンバ46から排出されると、次は、希釈チャンバ43および44の他方から攪拌チャンバ46に約300mLの混合液が供給される。また、攪拌チャンバ46は、電磁バルブ217を介して陰圧源61に接続されているとともに、電磁バルブ218を介して陽圧源62に接続されている。
供給チャンバ47は、測定部2に供給するための所定量の試薬を貯留しておくために設けられている。供給チャンバ47には、チャンバ内に収容される試薬の残量が約300mLに到達したことを検知するためのフロートスイッチ106が設けられている。また、供給チャンバ47には、供給チャンバ47内に収容される試薬の残量が略ゼロとなったことを検知するためのフロートスイッチ107が設けられている。フロートスイッチ106(107)は、供給チャンバ47内の液量(液面)に応じてフロート部が上下動するように構成されている。フロートスイッチ106のフロート部は、供給チャンバ47の高さ方向の上端部近傍から中間位置にかけて移動可能に構成されている。フロートスイッチ106のフロート部が供給チャンバ47の高さ方向の中間位置(フロートスイッチ106のフロート部の移動可能範囲における下限位置)まで到達すると、攪拌チャンバ46から供給チャンバ47に約300mLの所望濃度の試薬が供給されるように、制御部49により各部が制御されるように構成されている。これにより、供給チャンバ47には、常時、約300mL以上約600mL以下の所望濃度の試薬が貯留されることとなる。このように供給チャンバ47に所定量の試薬を貯留しておくことによって、供給指示に応じて測定部2に迅速に試薬を移送することが可能である。
また、フロートスイッチ107のフロート部は、供給チャンバ47の底部近傍で移動可能に構成されている。フロートスイッチ107により、チャンバ内に収容される試薬の残量が略ゼロとなったことを検知した場合には、測定部2への試薬の供給は停止される。これにより、何らかの理由で試薬が供給チャンバ47に移送されなかったとしても、極力測定部2への試薬の供給を継続させながら、測定部2に供給する試薬に気泡が混入することを防止することが可能である。
また、供給チャンバ47は、電磁バルブ219を介して攪拌チャンバ46に接続されている。また、供給チャンバ47は、電磁バルブ220を開放することにより、メンテナンス時などにチャンバ内の試薬を廃棄可能に構成されている。また、供給チャンバ47は、常時大気開放された状態となるように構成されている。また、供給チャンバ47は、フィルタ471を介して測定部2に接続されている。フィルタ471は、測定部2に供給される試薬に不純物が混入するのを防止するために設けられている。
ここで、第1実施形態では、図6に示すように、攪拌チャンバ46と供給チャンバ47との間には、試薬の電気伝導度を測定するための電気伝導度取得部402が設けられている。試薬の濃度と電気伝導度とは所定の関係を有するので、試薬の電気伝導度を測定することにより、試薬の濃度を判定することが可能である。また、電気伝導度取得部402と電磁バルブ219との間には、電磁バルブ221を介して廃棄流路が接続されている。電気伝導度に基づいて、試薬の濃度が所望の濃度ではない場合には、その試薬は廃棄流路を介して廃棄される。以下に、図7および図8を参照して、電気伝導度取得部402の詳細な構造について説明する。
図7および図8に示すように、電気伝導度取得部402は、撹拌チャンバ46および供給チャンバ47に接続された筒体403を有しており、筒体403内に3つの電極404、405および406と、試薬の温度を計測するためのサーミスタ407とが配置されている。電極404は、交流電源408に接続されているとともに、電極405および406はそれぞれ接地されている。電極405と電極406とは、所定の間隔Dを隔てて配置されている。第1実施形態では、交流電源408により電圧を印加することにより、試薬を介して電極404および405間と、電極404および406間とに電流を流すとともに、電極404および405間と、電極404および406間とにおける試薬の抵抗を測定している。サーミスタ407は、筒体403の内部に突出するように設けられており、筒体403内を流れる試薬に接触するように構成されている。サーミスタ407が試薬と接触することにより、サーミスタ407の温度が試薬と略同一となるので、サーミスタ407の抵抗値は、試薬の温度を反映した抵抗値となる。
また、図9および図10に示すように、電気伝導度取得部402は、センサ回路402aを介して制御部49と電気的に接続されている。これにより、電気伝導度取得部402とセンサ回路402aと制御部49とによって、試薬の電気伝導度を計測する電気伝導度計および試薬の温度を計測する温度計が構成されている。
図9の等価回路図に示すように、交流電源408は、既知の値を有するリファレンス抵抗409に接続されている。リファレンス抵抗409は電極404に接続されている。また、リファレンス抵抗409および電極404は、整流回路410、平滑化回路411およびA/D変換回路412を介して制御部49に接続されている。電極404は、電極404および405間の試薬の抵抗(抵抗413)を介して電極405と接続されているとともに、電極404および406間の試薬の抵抗(抵抗414)を介して電極406と接続されている。電極404から整流回路410を介して平滑化回路411に入力された後平滑化回路411から出力される電圧は、試薬の抵抗に印加される電圧を反映した電圧となる。この電圧がA/D変換回路412によりA/D変換された後に測定電圧Voutとして制御部49に入力されるように構成されている。
また、交流電源408は、整流回路415、平滑化回路416およびA/D変換回路417を介して制御部49に接続されている。平滑化回路416の出力電圧は、試薬の電気伝導度を算出する際の基準となる電圧となり、この電圧もA/D変換回路417によりA/D変換された後に基準電圧Vinとして制御部49に入力される。基準電圧Vinに対する測定電圧Voutの比に基づいて、試薬の電気伝導度を制御部49により取得することが可能である。
また、電気伝導度取得部402のサーミスタ407は、既知の抵抗値を有する抵抗418を介して直流電源Vdd417に接続されている。また、抵抗418およびサーミスタ407は、A/D変換回路419を介して制御部49に接続されている。A/D変換回路419の出力電圧に基づいて、サーミスタ407の温度(試薬の温度)を測定することが可能である。
また、交流電源408は、A/D変換・タイミング生成回路420に直接接続されている。この交流電源408に直接接続されたA/D変換・タイミング生成回路420によるアナログデータからデジタルデータへの変換のタイミングに基づいて、A/D変換回路412、417および419の変換のタイミングが決定されている。また、制御部49では、A/D変換されたデータはCPU49aに入力される。CPU49aは、A/D変換回路412および417からの入力データに基づいて、試薬の電気伝導度を算出するとともに、A/D変換回路419からのデータに基づいて、試薬の温度を算出する。この試薬の電気伝導度および温度の算出については、後に詳細に説明する。
図6に示すように、RO水作製部48は、高濃度試薬を希釈するための希釈用液体としてのRO水を、水道水を用いて作製することが可能なように構成されている。また、RO水作製部48は、RO水貯留タンク48aと、RO膜48bと、水道水に含まれる不純物を取り除くことによって、RO膜48bを保護するためのフィルタ48cとを含んでいる。さらに、RO水作製部48は、水分子がRO膜48bを透過するようにフィルタ48cを通過した水に高圧をかける高圧ポンプ48dと、水道水の供給を制御する電磁バルブ222とを含んでいる。
RO水貯留タンク48aは、RO膜48bを透過したRO水を貯留するために設けられている。RO水貯留タンク48aには、所定量のRO水が貯留されていることを検知するためのフロートスイッチ108が設けられている。さらに、RO水貯留タンク48aには、RO水貯留タンク48a内のRO水の電気伝導度を測定するための導電率センサ421が設けられている。導電率センサ421は、RO水の温度を測定するための温度センサ421aを含んでいる。なお、RO水がRO水作製部48からRO水貯留タンク48aに供給される速度、すなわち、RO水作製部48によるRO水の作製速度は、約20L/時間以上約50L/時間以下である。
図10に示すように、制御部49は、CPU49aと、ROM49bと、RAM49cと、データ処理部3に接続される通信インターフェース49dと、各回路を介して、試薬調製装置4内の各部に接続されるI/O(Input/Output)部49eとを含んでいる。
CPU49aは、ROM49bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM49cにロードされたコンピュータプログラムを実行するために設けられている。また、CPU49aは、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、RAM49cを作業領域として利用するように構成されている。また、制御部49には、各種設定情報を記憶するメモリ(49b)が設けられている。このメモリ49bには、所定温度における標準液体の電気伝導度の値(既知の値)、後述する計測データに基づいて算出した試薬の電気伝導度を補正する補正値(P又はP1)などが記憶されている。なお、所定温度における標準液体の電気伝導度の値は、予めメモリ49bに記憶されていてもよいし、使用者により入力可能であってもよい。入力は、データ処理部3の入力部33によって受け付けてもよいし、試薬調製装置4に入力デバイスを設け、当該入力デバイスによって受け付けてもよい。
次に、試薬の電気伝導度の目標値を求める一般式を以下の式(1)に示す。
Z0={X+(A−1)Y}/A・・・・・(1)
上記式(1)において、Z0は、高濃度試薬とRO水とが混合攪拌された試薬の25℃における電気伝導度の目標値(ms/cm)、Xは、高濃度試薬の25℃における電気伝導度(ms/cm)、Yは、RO水の25℃における電気伝導度(ms/cm)、Aは、希釈倍率(既知)(第1実施形態では25倍)をそれぞれ表す。なお、Xは、高濃度試薬固有の値であり、予め実験などにより得られた既知の値である。
また、温度センサ421aにより得られるRO水の温度、および、サーミスタ407により得られる試薬の温度を考慮するための補正式を以下の式(2)に示す。
Z=[{X+(A−1)Y}/A]×{1+α1(T2−25)}
=[[X+(A−1)Y1/{1+α0(T1−25)}]/A]×{1+α1(T2−25)}・・・・・(2)
上記式(2)において、Zは、高濃度試薬とRO水とが混合攪拌された試薬のT2(℃)における電気伝導度の目標値(ms/cm)、Y1は、RO水のT1(℃)における電気伝導度(ms/cm)、T1は、RO水の温度(℃)、T2は、高濃度試薬とRO水とが混合攪拌された試薬の温度(℃)、α0は、RO水の電気伝導度の25(℃)に対する温度係数、α1は、高濃度試薬とRO水とが混合攪拌された試薬の電気伝導度の25(℃)に対する温度係数をそれぞれ表す。なお、温度係数α0およびα1は、液体の種類や濃度によって異なるが、JIS(日本工業規格)では、簡易的に0.02が用いられる。
第1実施形態では、CPU49aは、上記した式(2)により目標値Zを算出するように構成されている。したがって、CPU49aは、所望する希釈倍率A(既知)、RO水の電気伝導度の検出値Y1、RO水の温度の測定値T1、混合攪拌された試薬の温度の測定値T2および高濃度試薬の電気伝導度X(既知)に基づいて、目標値を決定する。試薬調製装置4では、この目標値となるように試薬が調製される。また、CPU49aは、実際に調製した試薬の電気伝導度と、この目標値とを比較することにより、調製した試薬が所望の濃度を有しているか否かを判定することが可能である。
次に、図8および図9を参照して、CPU49aにおいて行われる、調製した試薬の電気伝導度の算出原理について説明する。
既知のリファレンス抵抗409の抵抗値をRref、試薬の抵抗値(抵抗413および414の合成抵抗)をR、基準電圧をVin、測定電圧をVoutとすると、図9の等価回路において、以下の式(3)および(4)が成り立つ。
Vout=(Vin×R)/(Rref+R)・・・・・(3)
1/R=(Vin−Vout)/(Rref×Vout)・・・・・(4)
また、試薬の温度がθ(℃)の場合の試薬の電気伝導度をκ(θ)とすると、電気伝導度κ(θ)は、図8の電極間距離Dおよび電極面積Sを用いて、以下の式(5)のように定義される。
κ(θ)=(1/R)×(D/S)・・・・・(5)
式(5)における(電極間距離D/電極面積S)の値は、電気伝導度取得部402の固有の係数である。
したがって、式(4)および式(5)から、電気伝導度κ(θ)は、以下の式(6)のように表される。
κ(θ)=(Vin−Vout)/(Rref×Vout)×(D/S)・・・・・(6)
基準電圧Vin、測定電圧Voutの値は測定により取得され、Rrefの値は既知であるので、(電極間距離D/電極面積S)の値が得られれば、試薬の温度がθ(℃)の場合の試薬の電気伝導度κ(θ)を得ることが可能である。(電極間距離D/電極面積S)の値は、電気伝導度κ(θ)が既知の標準液体を用いた測定を予め行うことにより、上記式(6)を用いて逆算して得ることが可能である。
また、第1実施形態では、CPU49aにより取得された試薬の温度θに基づいて、試薬の温度がθ(℃)の場合の電気伝導度κ(θ)を試薬の温度が25℃の場合の電気伝導度κ(25)に補正することが可能である。
具体的には、試薬の電気伝導度の25(℃)に対する温度補正係数をf(θ、25)とすると、以下の式(7)が成り立つ。
κ(25)=κ(θ)×f(θ、25)・・・・・(7)
温度補正係数f(θ、25)は、試薬の電気伝導度の温度変化率を0.02(2%)とすると、以下の式(8)のように表される。
f(θ、25)=1+0.02×(θ−25)・・・・・(8)
上記式(7)および式(8)に基づいて、試薬の温度が25℃の場合の電気伝導度κ(25)を得ることが可能である。
次に、試薬の温度θの算出原理について説明する。
サーミスタ407の抵抗rは、温度の変化に伴って、定数AおよびBを用いて以下の式(9)のように変化する。
r=Aexp(−Bθ)・・・・・(9)
また、直流電源Vdd417の電圧値をV0、既知の抵抗418の抵抗値をr0、A/D変換回路419の分解能をX、A/D変換回路419の最大出力電圧をV1、A/D変換回路419の出力値をYとすると、以下の式(10)が成り立つ。
Y×V1/X=(r0×V0)/(r0+r)・・・・・(10)
したがって、上記式(9)および式(10)により、温度θは、以下の式(11)のように表される。
θ=−1/B×Ln[r0/A/{(V0×X)/(V1×Y)−1}] ・・・・・(11)
ここで、第1実施形態では、電気伝導度取得部402および制御部49などからなる電気伝導度計の校正を行うことが可能である。すなわち、電極404〜406の経年による劣化や腐食などによりA/D変換回路412の出力値が変化するので、上記した電気伝導度κ(θ)は、試薬の真の電気伝導度と異なる値を示している場合がある。このため、制御部49では、算出した電気伝導度κ(θ)に所定の補正値を乗ずることによって、電気伝導度取得部402からのデータを用いてCPU49aにより算出された電気伝導度が真の値を示すように補正している。したがって、最終的に電気伝導度としてCPU49aにより算出される値κ1(θ)は、補正値をPとすると以下の式(12)のように表される。
κ1(θ)=κ(θ)×P・・・・・(12)
そして、κ1(θ)の値が真の電気伝導度となるように、定期的に補正値Pの値を変更することにより校正が行われる。なお、この値Pは、デフォルト値は1(100%)である。すなわち、デフォルトでは、κ(θ)の値をそのまま最終的な電気伝導度として用いる。
具体的には、電気伝導度が既知(真の値が既知)の液体(標準液体)について電気伝導度計によって電気伝導度κ(θ)の算出を行うことにより、算出した電気伝導度κ(θ)が真の値となるように補正値Pを変更する。すなわち、標準液体について電気伝導度κ(θ)を算出した場合において、標準液体の電気伝導度は、既知(たとえば、試薬の温度が25度の場合には、13.25(mS/cm))であるので、校正後の補正値をP1とした場合に、κ(25)×P1=13.25を満たすようにP1を決定する。したがって、以下の式(13)が成り立つ。なお、既知の値である標準液体の電気伝導度は、予め制御部49のメモリ49bに記憶されている。
P1=13.25/κ(25)・・・・・(13)
また、第1実施形態では、校正後の補正値P1が所定の範囲内(第1実施形態では、たとえば、0.8(80%)≦P1≦1.2(120%))である場合に、校正が正常に行われたとして、この補正値P1を有効にするように構成されている。補正値P1が有効になった場合には、電気伝導度κ1(θ)の値は、以下の式(14)により取得される。
κ1(θ)=κ(θ)×P1・・・・・(14)
また、校正後の補正値P1が所定の範囲外(第1実施形態では、たとえば、P1<0.8(80%)、P1>1.2(120%))である場合に、補正値が異常であるとして、この補正値P1への変更を行わないとともに、校正が失敗した旨(補正値の変更を行わなかった旨)を使用者に通知するように構成されている。具体的には、試薬調製装置4の表示部4aに、その旨が表示される。この校正処理については、後に詳細に説明する。
通信インターフェース49dは、ユーザが試薬調製装置4内で発生したエラーを確認することができるように、エラー情報をデータ処理部3に伝達可能に構成されている。エラー情報としては、高濃度試薬タンク5の交換を促すための情報、RO水が供給されなくなったことを知らせる情報、陰圧源61および陽圧源62の異常を知らせる情報などがある。これらのエラー情報に基づいて、データ処理部3の表示部32にエラー通知が表示される。
I/O部49eは、図10に示すように、各センサ回路を介して、フロートスイッチ100〜108、気泡センサ400、401、電気伝導度取得部402、導電率センサ421および温度センサ421aから信号が入力されるように構成されている。また、I/O部49eは、各駆動回路を介して、電磁バルブ200〜222、高圧ポンプ48dおよび空圧部6の駆動を制御するために、各駆動回路に信号を出力するように構成されている。
次に、図6、図11および図12を参照して、本発明の第1実施形態による試薬調製装置4の試薬調製処理動作について説明する。
試薬調製処理動作は、ユーザがデータ処理装置3から装置起動を指示したとき、すなわち、試薬調製装置4がデータ処理装置3から起動信号を受信したときに開始される。試薬調製処理動作が開始されると、まず、図11のステップS11において、CPU49aにより、ROM49bに記憶されているコンピュータプログラムの初期化が行われる。次に、ステップS12において、CPU49aにより、前回の動作終了時において試薬調製装置4が正常にシャットダウンされたか否かが判断される。具体的には、後述するように、正常にシャットダウンされた場合にONに設定されるフラグに基づいて判断される。正常にシャットダウンされていた場合には、ステップS16に進み、正常にシャットダウンされていない場合には、ステップS13に進む。
ステップS13では、高濃度試薬チャンバ41および供給チャンバ47以外のチャンバ42、43、44および46内の液体を全て廃棄する。具体的には、CPU49aにより、電磁バルブ206、207および208を閉じた状態で、電磁バルブ204および205を開放させて、RO水チャンバ42内のRO水を廃棄する。なお、RO水チャンバ42から廃棄されたRO水を再びRO水作製部48に移送して、廃棄されたRO水から新たなRO水を作製してもよい。また、CPU49aにより、電磁バルブ211、212、217および219を閉じた状態で、電磁バルブ218および221を開放させて、陽圧力で攪拌チャンバ46内の混合液を廃棄流路に押し出す。さらに、CPU49aにより、電磁バルブ212、218、219および221を閉じた状態で、電磁バルブ211および217を開放させて、陰圧力で希釈チャンバ43内の混合液を攪拌チャンバ46に移送し、その後、上記の動作により攪拌チャンバ46から混合液を廃棄する。また、希釈チャンバ44の混合液についても、CPU49aにより、電磁バルブ211、218、219および221を閉じた状態で、電磁バルブ212および217を開放させることによって、陰圧力で攪拌チャンバ46に移送する。
このように、ステップS13において、高濃度試薬チャンバ41および供給チャンバ47以外のチャンバ42、43、44および46内の液体を全て廃棄することによって、長時間滞留された可能性のあるRO水を試薬調製に使用してしまうこと、および、希釈倍率が不明な試薬を調製してしまうことを防止することが可能である。
その後、ステップS14において、流路、RO水チャンバ42、希釈チャンバ43(44)および攪拌チャンバ46の洗浄を行う。具体的には、RO水作製部48で新たに作製されたRO水がRO水チャンバ42に供給された後、CPU49aにより、電磁バルブ206、208および213(215)を開放させることによって、ダイアフラムポンプ45a(45b)に陰圧力で約12.0mL(各ダイアフラムポンプにそれぞれ約6.0mL)のRO水が流入される。次に、電磁バルブ208および213(215)を閉じた状態で、電磁バルブ214(216)および209を開放させることによって、ダイアフラムポンプ45a(45b)内の約12.0mL(各ダイアフラムポンプそれぞれに約6.0mL)のRO水を陽圧力で希釈チャンバ43に移送する。そして、上記の動作を25回繰り返すことによって、希釈チャンバ43に新たに作製された約300mLのRO水が供給される。
その後、CPU49aにより、電磁バルブ211および217を開放させることによって、希釈チャンバ43から攪拌チャンバ46に約300mLのRO水を移送する。そして、CPU49aにより、電磁バルブ217および219を閉じた状態で、電磁バルブ218および221を開放させることによって、攪拌チャンバ46内のRO水を廃棄する。
また、希釈チャンバ43から攪拌チャンバ46にRO水が移送されている間に、希釈チャンバ44には、希釈チャンバ43に移送するのと同様の動作によって、新たに作製された約300mLのRO水が供給される。希釈チャンバ44から攪拌チャンバ46へのRO水の移送も、希釈チャンバ43から攪拌チャンバ46への移送と同様の動作によって行われる。このように、上記の一連の動作によって、流路、RO水チャンバ42、希釈チャンバ43(44)および攪拌チャンバ46それぞれの内部が新たに作製されたRO水により洗浄される。なお、上記ステップS13の前に、RO水チャンバ42には、後述するステップS16のRO水作製処理と同様の動作によって、既に所定量のRO水が貯留されている。
次に、ステップS15において、所望濃度の試薬を調製する動作と同様の動作によって、攪拌チャンバ46に試薬を調製し、調製した試薬を全て廃棄する。具体的には、後述するステップS21およびS22の動作によって所望濃度の試薬を攪拌チャンバ46に供給した後、CPU49aにより、電磁バルブ217および219を閉じた状態で、電磁バルブ218および221を開放させることによって攪拌チャンバ46内の試薬を廃棄する。これにより、たとえ流路、希釈チャンバ43(44)および攪拌チャンバ46に所望濃度を超える濃度の試薬が残留していたとしても、上記したRO水による洗浄に加えて、所望濃度の試薬によっても洗浄されるので、試薬が所望濃度以外の濃度に調製されてしまうのを抑制することが可能となる。
そして、ステップS16において、RO水作製部48でRO水作製処理を行う。すなわち、CPU49aにより、図6に示す電磁バルブ222が開放され、水道水がフィルタ48cを通過する。次に、CPU49aにより、高圧ポンプ48dが駆動され、フィルタ48cを通過した水が高圧によりRO膜48bを透過する。そして、フロートスイッチ108の検知結果に基づいて、所定量のRO水がRO水貯留タンク48aに収容されているか否かが判断される。RO水が所定量に満たない場合には、継続してRO水をRO水貯留タンク48aに供給する。一方、RO水が所定量に達した場合には、電磁バルブ222が閉じられるとともに、高圧ポンプ48dの駆動が停止されて、動作が終了される。
図11のステップS16のRO水作製処理動作が終了した後、ステップS17において、RO水チャンバ42にRO水を供給する。そして、ステップS18において、CPU49aにより、フロートスイッチ100の検知結果に基づいて、高濃度試薬チャンバ41に所定量の高濃度試薬が収容されているか否かが判断される。所定量の高濃度試薬が貯留されていない場合には、ステップS19において、高濃度試薬タンク5から高濃度試薬チャンバ41に高濃度試薬が補充される。具体的には、CPU49aにより、電磁バルブ202および203を閉じた状態で、電磁バルブ200および201を開放させることによって、高濃度試薬を陰圧力で高濃度試薬チャンバ41に供給する。
所定量の高濃度試薬が高濃度試薬チャンバ41に収容されている場合には、ステップS20において、CPU49aにより、供給チャンバ47に所定量の試薬が貯留されているか否かが判断される。すなわち、供給チャンバ47に約300mL以上約600mL以下の試薬が貯留されているか否かが判断される。所定量の試薬が貯留されている場合には、ステップS27に移行される。一方、所定量の試薬が貯留されていない場合には、ステップS21において、高濃度試薬およびRO水の供給処理が行われる。
すなわち、ダイアフラムポンプ45aおよび45bにより、約288mLのRO水と、約12mLの高濃度試薬とが定量されながら希釈チャンバ43に供給されることにより、約300mLのRO水と高濃度試薬との混合液が希釈チャンバ43に供給される。なお、電磁バルブ209および210の駆動の切替により、希釈チャンバ44に混合液を供給することも可能である。
図11のステップS21による高濃度試薬およびRO水の供給処理が行われた後、ステップS22において、CPU49aにより、電磁バルブ211(212)および217が開放させて、陰圧力で希釈チャンバ43(44)内の試薬を攪拌チャンバ46に移送する。この際、移送される試薬は、攪拌チャンバ46内に設けられたパイプ461により、攪拌チャンバ46の内壁に沿うように流されることによって、攪拌チャンバ46内で攪拌される。
次に、ステップS23において、電磁バルブ211(212)および217が閉じられた後、電磁バルブ218および219が開放されて、試薬が攪拌チャンバ46から供給チャンバ47に移送される。この際、ステップS24において、電気伝導度取得部402および制御部49などからなる電気伝導度計により、上記式(14)に基づいて電気伝導度κ1(θ)が測定されるとともに、電気伝導度取得部402および制御部49などからなる温度計により試薬の温度θが測定される。そして、κ1(θ)は、温度θに基づいて補正される。この電気伝導度κ1(θ)は、電気伝導度計の校正が適宜行われることにより、試薬の真の電気伝導度を示す。そして、ステップS25において、CPU49aにより、温度補正された電気伝導度κ1(θ)が所定範囲内にあるか否かが判断される。具体的には、上記式(2)により算出される、希釈倍率25倍における電気伝導度の目標値Zに対して、測定された電気伝導度κ1(θ)が所定範囲内にあるか否かが判断される。電気伝導度κ1(θ)が所定範囲内にない場合には、ステップS26において、電磁バルブ219が閉じられるとともに、電磁バルブ221が開放されて、電気伝導度κ1(θ)が所定範囲内にない試薬が廃棄流路を介して廃棄される。これにより、精度よく希釈された試薬のみを供給チャンバ47に貯留させることが可能となる。
ステップS27において、CPU49aにより、データ処理部3を介して伝達される測定部2からの試薬供給指示があるか否かが判断され、指示がない場合には、ステップS29に進む。試薬供給指示がある場合には、ステップS28において、測定部2から供給される陰圧力により供給チャンバ47内の試薬がフィルタ471を介して測定部2に移送される。そして、ステップS29において、CPU49aにより、ユーザからのシャットダウン指示の有無が判断され、指示がない場合にはステップS16に移行される。
シャットダウン指示がある場合には、ステップS30において、調製途中の試薬が最終的に供給チャンバ47に移送されるまで、上記の動作が継続される。具体的には、供給チャンバ47内に所定量(約300mL以上約600mL以下)の試薬がない場合には、上記ステップS21〜ステップS26の動作により試薬調製が継続されているので、調製途中で動作を停止すると、所望濃度とは異なる濃度に希釈された試薬が流路、希釈チャンバ43(44)および攪拌チャンバ46に残留することとなる。このため、ステップS30において調製動作を継続させることによって、所望濃度とは異なる濃度に希釈された試薬が流路、希釈チャンバ43(44)および攪拌チャンバ46に残留することを防止することが可能である。
そして、ステップS31において、シャットダウンを実行する。この際、RO水チャンバ42からRO水を排出する。これにより、試薬調製装置4が次回起動されるまでRO水がRO水チャンバ42に滞留してしまうのを防止することが可能である。その後、ステップS32において、シャットダウンが正常に行われたことを示すフラグをONに設定し、試薬調製処理動作を終了する。
次に、図13〜図24を参照して、本発明の第1実施形態による試薬調製装置4の電気伝導度計の校正処理について説明する。
校正処理は、使用者がメニュー画面800の表示指示を実行することにより開始される。校正処理が開始されると、まず、ステップS41において、CPU49aは、表示部4aにメニュー画面800(図15参照)を表示させる。
ここで、電気伝導度計の校正を行う際には、使用者は、試薬調製装置4のタッチパネル式の表示部4aにより試薬調製装置4に電気伝導度計の校正の指示を行う。具体的には、表示部4aに表示されるメニュー画面800(図15参照)において、「伝導度校正」を選択する。また、ステップS42において、CPU49aは、メニュー画面800の「伝導度校正」が選択されたか否かを判断する。「伝導度校正」が選択されない場合には、校正処理は終了する。「伝導度校正」が選択された場合には、CPU49aは、ステップS43において、図16に示すように、校正指示画面801を表示部4aに表示する。
ここで、使用者は、電気伝導度計の校正を行う場合には、校正指示画面801のOKボタン801aを押し、電気伝導度計の校正を行わない場合には、校正指示画面801のキャンセルボタン801bを押す。また、ステップS44において、CPU49aは、校正指示があったか否かを判断する。すなわち、CPU49aは、キャンセルボタン801bが押された場合には校正指示が行われなかったと判断するとともに、メニュー画面800を表示部4aに表示させる。OKボタン801aが押された場合には、校正指示があったと判断するとともに、第1校正処理を開始する。第1校正処理が開始されると、CPU49aは、ステップS45において、実行中画面802(図17参照)を表示部4aに表示させる。
第1校正処理としては、CPU49aは、ステップS46において、撹拌チャンバ46内に試薬が収容されているか否かを判断する。撹拌チャンバ46内に試薬が収容されていない場合には、ステップS48に進む。撹拌チャンバ46内に試薬が収容されている場合には、ステップS47において、撹拌チャンバ46内の試薬を全て廃棄する。具体的には、CPU49aは、電磁バルブ211、212、217および219を閉じた状態で、電磁バルブ218および221を開放させて、陽圧力で攪拌チャンバ46内の混合液を廃棄流路に押し出す。
撹拌チャンバ46内の試薬の廃棄が終了した後に、ステップS48において、CPU49aは、第2校正処理指示画面805(図18参照)を表示部4aに表示させる。
ここで、使用者は、第2校正処理を行う場合には、導入経路462の先端部の栓462aを外し、標準液体が入った標準液体収容容器500を導入経路462に接続した後に第2校正処理指示画面805のOKボタン803aを押す。校正を行わない場合には、使用者は、第2校正処理指示画面805のキャンセルボタン803bを押す。また、ステップS49において、CPU49aは、校正指示があったか否かを判断する。すなわち、CPU49aは、キャンセルボタン803bが押された場合には校正指示が行われなかったと判断するとともに、ステップS41に戻り、メニュー画面800を表示部4aに表示させる。OKボタン803aが押された場合には、第2校正処理の実行指示があったと判断するとともに、第2校正処理を開始する。第2校正処理が開始されると、CPU49aは、ステップS50において、実行中画面804(図19参照)を表示部4aに表示させる。
第2校正処理としては、CPU49aは、ステップS51において、標準液体収容容器500内の試薬(標準液体)を撹拌チャンバ46内に導入する。具体的には、CPU49aは、電磁バルブ211、212、218、219および221を閉じた状態で、電磁バルブ217を開放させて、陰圧力で標準液体収容容器500内の標準試薬(標準液体)を撹拌チャンバ46内に吸引する。
撹拌チャンバ46内への標準液体の導入が終了した後に、ステップS52において、CPU49aは、第3校正処理指示画面805(図20参照)を表示部4aに表示させる。
ここで、使用者は、第3校正処理を行う場合には、導入経路462から標準液体収容容器500を外すとともに、導入経路462の先端部の栓462aを閉めた後に第3校正処理指示画面805のOKボタン805aを押す。校正を行わない場合には、使用者は、第3校正処理指示画面805のキャンセルボタン805bを押す。また、ステップS53において、CPU49aは、第3校正処理の実行指示があったか否かを判断する。すなわち、CPU49aは、キャンセルボタン805bが押された場合には校正指示が行われなかったと判断するとともに、ステップS41に戻り、メニュー画面800を表示部4aに表示させる。OKボタン805aが押された場合には、第3校正処理の実行指示があったと判断するとともに、第3校正処理を開始する。第3校正処理が開始されると、CPU49aは、ステップS54において、実行中画面806(図21参照)を表示部4aに表示させる。
第3校正処理としては、CPU49aは、ステップS55において、標準液体の電気伝導度を取得する。具体的には、CPU49aは、電磁バルブ211、212、217および219を閉じた状態で、電磁バルブ218および221を開放させて、陽圧力で攪拌チャンバ46内の標準液体を廃棄流路に押し出す。これにより、標準液体が電気伝導度取得部402を流れる。そして、標準液体が電気伝導度取得部402を流れている間に、CPU49aは、A/D変換回路412、417および419の出力により基準電圧Vin、測定電圧Voutおよび試薬の温度θを取得する。
より詳細には、電気伝導度取得部402内の洗浄のために所定の時間だけ標準液体を流した後に、CPU49aは、基準電圧Vinおよび測定電圧Voutをそれぞれ10回測定する。そして、基準電圧Vinは、10回の測定データの平均を電気伝導度の算出に用いる。また、測定電圧Voutは、10回の測定データのうち、最も小さい値のデータを電気伝導度の算出に用いる。測定電圧Voutについて最も小さい値のデータを算出に用いるのは、以下の理由によるものである。すなわち、測定中の標準液体中には気泡が混入している場合があり、その場合には試薬の抵抗R(抵抗413および抵抗414の値)は大きくなり、その分、測定される測定電圧Voutの値も大きくなる。最も小さい値を示す測定電圧Voutは、気泡の混入が最も少ない状態における電圧と考えられるので、測定電圧Voutについては10回の測定データのうち最も小さい値のデータを算出に用いている。このようにして電気伝導度の算出に用いるデータが取得される。そして、取得したデータに基づいて、上記式(6)に示した電気伝導度κ(θ)を算出する。さらに、試薬の温度θが25℃でない場合には、上記式(7)および式(8)を用いて、試薬の温度が25℃の場合の電気伝導度の値κ(25)に補正する。
次に、ステップS56において、CPU49aは、ROM49bに記憶されている標準液体の25℃における電気伝導度(第1実施形態では、13.25)を読み出す。
そして、ステップS57において、CPU49aは、ステップS55において取得した測定による電気伝導度κ(25)およびROM49bから読み出した標準液体の電気伝導度(13.25)に基づいて、上記式(13)を用いて新たな補正値P1を算出する。
次に、ステップS58において、CPU49aは、算出した補正値P1が所定の補正許容範囲内(0.8≦P1≦1.2)か否かを判断する。算出した補正値P1が所定の補正許容範囲内である場合には、ステップS59において、CPU49aは、算出した補正値P1を制御部49のメモリに記憶するとともに、ステップS60において、校正結果表示画面807(図22参照)を表示部4aに表示する。また、CPU49aは、ステップS61において、校正結果画面807においてOKボタン807aが押されたか否かを判断し、OKボタン807aが押された場合には、ステップS64に進み、校正後の校正指示画面808(図23参照)を表示する。この校正指示画面808では、校正前の校正指示画面801(図16参照)と異なり、補正値の値が異なっている。
算出した補正値P1が所定の補正許容範囲外である場合には、ステップS62において、CPU49aは、校正エラー表示画面809(図24参照)を表示部4aに表示する。また、CPU49aは、ステップS63において、校正エラー表示画面809においてOKボタン809aが押されたか否かを判断し、OKボタン809aが押された場合には、ステップS65に進み、校正前の校正指示画面801(図16参照)を再度表示する。この校正指示画面801では、校正前の補正値の値が表示される。
第1実施形態では、上記のように標準液体の既知の電気伝導度と、標準液体の電気伝導度を電気伝導度計により計測することによって取得される電気伝導度とに基づいて、電気伝導度計を校正することによって、電気伝導度計によって試薬の電気伝導度を取得した場合にその試薬の電気伝導度の真の値が電気伝導度計によって示されない場合(真の値からずれた値が示される場合)にも、電気伝導度計が試薬の電気伝導度の真の値を示すように校正することができる。これにより、電気伝導度計によって取得された試薬の電気伝導度が許容範囲内にあるか否かの判定を、試薬の電気伝導度の真の値を用いて判定することができる。したがって、測定部2への試薬の供給を許可するか否かの判断を正確に行うことができる。すなわち、試薬の電気伝導度の真の値が許容範囲内にあることが正確に判定された試薬のみを測定部2に供給することができるので、品質の低い試薬が測定部2に供給されてしまうことを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、電気伝導度計から出力される基準電圧および測定電圧を用いて算出される電気伝導度κ(θ)と、電気伝導度κ(θ)を補正する補正値Pとに基づいて試薬の電気伝導度κ1(θ)を取得しており、その補正値Pを変更することによって電気伝導度計を校正している。このように構成することによって、電気伝導度κ(θ)と補正値Pとに基づいて取得された試薬の電気伝導度κ1(θ)が真の値を示さない場合にも、既知の電気伝導度と、電気伝導度計によって標準液体の電気伝導度を計測することによって取得される電気伝導度とに基づいて、κ1(θ)が真の値を示すように補正値Pを変更することにより、校正を行うことができる。これにより、κ(θ)と、校正後の補正値P1とに基づいて、試薬の電気伝導度の真の値を取得することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、試薬の電気伝導度に基づいて試薬の濃度を判定することによって、電気伝導度計によって計測された試薬の電気伝導度と試薬の濃度とは所定の関係を有するので、既知の電気伝導度に基づいて校正された電気伝導度計により取得した試薬の電気伝導度に基づいて、その試薬の濃度を正確に判定することができる。これにより、試薬の電気伝導度の真の値が許容範囲内にある場合に、その試薬が所望の濃度を有すると正確に判定することができる。したがって、所望の濃度を有することが正確に判定された試薬のみを測定部2に供給することができるので、所望の濃度と異なる濃度を有する試薬が測定部2に供給されてしまうことを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、電気伝導度計から出力されるデータに基づいて算出した電気伝導度κ(θ)と、試薬の温度θと、補正値Pとに基づいて電気伝導度を取得している。このように構成することによって、温度変化を考慮した電気伝導度を取得することができる。この温度変化を考慮した電気伝導度を用いて、より正確に試薬の濃度を判定することができる。また、温度変化を考慮した電気伝導度に基づいて校正を行うことができるので、より正確に校正を行うことができる。
また、第1実施形態では、上記のように、算出した補正値P1が補正許容範囲内(0.8≦P2≦1.2)である場合に、算出した補正値を校正後の補正値とすることによって、算出した補正値が補正許容範囲内である場合に、校正が適切に行われたとして、算出した補正値を校正後の補正値とすることができるとともに、算出した補正値が補正許容範囲外である場合には、算出した補正値が校正後の補正値となってしまうことを防止することができる。これにより、不適切な校正が行われた場合に、その不適切な校正後の補正値を用いて試薬の電気伝導度が計測されてしまうことに起因して、品質の低い試薬が測定部2に供給されてしまうことを防止することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、算出した補正値P1が補正許容範囲外(P2<0.8、P2>1.2)である場合には補正値を変更せず、補正値の変更を行わなかったことを使用者に通知することによって、使用者は校正が失敗したことを認識することができるので、校正のやり直しや試薬調製装置4の調整などを行うことができる。これにより、校正が行われないまま、試薬の調製が行われてしまうことを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、算出された電気伝導度が許容範囲外にあるとき、試薬を供給チャンバ47に供給せずに廃棄することによって、真の値を示すように校正された試薬の電気伝導度が許容範囲外にあるときには、試薬を試薬収容部に供給せずに廃棄することができるので、品質の低い試薬が測定部2に供給されてしまうことを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、タッチパネル式の表示部4aによって校正の指示を受け付けた場合に、試薬調製装置4が校正を行うように構成することによって、使用者の望む時に容易に校正を行うことができる。
また、第1実施形態では、上記のように、標準液体として試薬が含有する成分と同じ成分を同じ濃度で含む液体を使用することによって、校正を行う際に標準液体を試薬調製装置4内に導入したとしても、校正が終了した後に試薬調製装置4内を洗浄する必要がない。このため、校正を行った後にすぐに試薬の調製を行うことができる。
(第2実施形態)
次に、図25および図26を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、RO水作製部700が外部に設けられた試薬調製装置600について説明する。
血液分析装置1は、図25に示すように、血液の測定を行う機能を有する測定部22と、測定部22から出力された測定データを分析して分析結果を得るデータ処理部3と、検体の処理に用いられる試薬を調製する試薬調製装置600とにより構成されている。
ここで、第2実施形態では、図25および図26に示すように、試薬調製装置600は、外部に設けられたRO水作製部700により作製されたRO水を用いて高濃度試薬を所望の濃度に希釈することによって、血液分析に用いられる試薬を調製するように構成されている。
また、試薬調製装置600には、図25に示すように、タッチパネル式の表示部601が設けられている。試薬調製装置600のCPU49aは、タッチパネル式の表示部601を介して、ユーザから、試薬調製装置600の起動、シャットダウンおよび各種設定などの指示を受け付けるように構成されている。
なお、第2実施形態のその他の構造は、上記第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、上記のように、RO水作製部700を試薬調製装置600の外部に設けることによって、試薬調製装置600の構成を簡易な構成とすることができる。
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1実施形態および第2実施形態では、試薬調製装置の一例として、測定部2と別個に設置される試薬調製装置を示したが、本発明はこれに限らず、図27に示すように、測定部2内に設けられ、試薬調製機構として機能する試薬調製装置4(600)であってもよい。このように試薬調製機構を備える測定部2(装置)としては、たとえば、血球計数装置、免疫測定装置および塗抹標本作製装置などがあるが、特に、希釈用液体の使用量が多い血球計数装置に適している。
また、上記第1および第2実施形態では、試薬の濃度を判定するために、試薬の電気伝導度を測定した例を示したが、本発明はこれに限らず、試薬の濃度を反映する特性であれば、他の特性を計測してもよい。たとえば、試薬の吸光度は試薬の濃度を反映すると考えられるので、試薬の吸光度を測定してもよい。また、試薬のpHを測定してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、使用者が表示部4aを操作することにより校正の指示を行った場合に、試薬調製装置4が校正を開始する例を示したが、本発明はこれに限らず、試薬調製装置が自動的に校正を行うように構成してもよい。この場合、たとえば、試薬調製装置に、前回の校正からの経過時間を計時するタイマーを設け、所定の時間が経過する毎に自動的に校正を行うように構成してもよい。また、血液分析装置1の分析結果のうちの所定の項目が所定の範囲外であった場合に、校正を実行してもよい。この所定の項目としては、電気伝導度の校正が行われていない場合に分析結果に影響が大きい項目(たとえば、MCV:Mean Corpuscular Volume)が挙げられる。また、所定の範囲外であるか否かの判定に用いられる分析結果は、精度管理試料の分析結果であってもよいし、複数の患者検体の分析結果の平均値であってもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、サーミスタ407を用いて試薬の温度を計測した例を示したが、本発明はこれに限らず、白金測温抵抗体または熱電対などを用いて計測してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、補正値Pを変更することによって電気伝導度取得部を校正する例を示したが、本発明はこれに限らず、交流電圧408の出力電圧の大きさを変更することによって電気伝導度取得部を校正してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、測定部2から供給される陰圧力により供給チャンバ47内の試薬を測定部2に供給する例を示したが、本発明はこれに限らず、供給チャンバ47に陽圧力を供給することにより試薬を測定部2に供給してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、調製された試薬を血液分析装置1に供給可能に構成された試薬調製装置を示したが、本発明はこれに限らず、調製された試薬を尿分析装置に供給可能に構成された試薬調製装置であってもよい。