JP2010230613A - 光学式遠隔気流計測装置 - Google Patents

光学式遠隔気流計測装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、遠距離領域の計測であっても計測信頼性劣化が少なく、より遠距離まで計測可能な小型省電力の遠隔気流計測装置を提供することにある。
【解決手段】本発明の光学式遠隔気流計測装置は、レーザ光を送信信号として大気中に放射して、該レーザ光の大気中のエアロゾルによるレーザ散乱光を受信信号として受信し、該送信信号と該受信信号との間の周波数のドップラーシフト量に基づき遠隔領域の気流の風速を計測する光学式遠隔気流計測装置において、連続的に計測されるレンジ方向の複数の計測値をカルマンフィルタにより処理し、信頼性が低い計測値を確からしい風速値に置き換えるデータ処理を行うことを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、光学式遠隔気流計測装置に関し、特にレーザ光を大気中に放射して、そのレーザ光の大気中での散乱光を受信することにより、数100mから10km程度までの遠隔領域の風速をドップラー効果に基づき計測する光学式遠隔気流計測装置に関するものである。
航空機事故の主要因として近年乱気流が注目されており、航空機に搭載して乱気流を事前に検知する装置として、レーザ光を利用したドップラーライダーが研究開発されている(例えば、非特許文献1を参照。)。なお、ライダー(LIDAR)とは、光を利用した検知手法で「Light Detection And Ranging」を略したものである。また、照射された光線が、大気中に浮遊する微小なエアロゾルによって散乱され、そのレーザ散乱光を受信してドップラー効果による周波数変化量(波長変化量)を測定することによって風速を測定することからドップラーライダーと呼ばれている。一般的なドップラーライダーは、パルス状のレーザ光を放射して、そのレーザ光の大気中のエアロゾルによるレーザ散乱光を前記ドップラーライダーで受信することにより、ドップラー効果に基づき遠隔領域の風速を計測するものであり、地上に設置して上空の気流を観測する装置は既に実用化されている。
本発明者は先に特許文献1の「風擾乱予知システム」を提示した。この発明は、3次元的な風擾乱を計測することができ、従来のウインドシア警告システムのような予告なしの突然の警告ではなく、信頼できる警告かどうかを事前に確認することができ、どのような対処をするべきか判断しやすい形態で検知でき、そして、航空機に搭載する際、空気力学的や構造的な影響が少なく、更に、ピト一管では計測出来ない20〜30m/S以下の速度、さらに気流方向が機体軸線と大きく異なる場合でも測定が可能で位置誤差を生じない計測システムを提供することを目的としたもので、この風擾乱予知システムは、ヘテロダイン受信器を内蔵したコヒーレント方式のレーザ風速計を航空機に搭載し、レーザ光を円錐状に走査しながら照射して、飛行中の機体前方の風擾乱領域からの散乱光を受光することにより、遠方の三次元的な気流の速度を計測する方式を採用した。また、計測した3次元の気流情報を上下風および前後風が機体に及ぼす影響を考慮して、上下風のみに換算して2次元に簡易化表示し、風擾乱について乱流強度および平均風に分解して表現するようにした。また、計測した気流情報を操縦者に伝達する際、擾乱の位置を距離ではなく、その擾乱に遭遇するまでの時間を基準として表示するようにし、風計測ライダの円筒状の光学系を一部切欠いて搭載性を向上させるようにしたものである。
しかし、この種のドップラーライダーで検出するレーザ散乱光の受信強度は装置と計測領域との距離の2乗にほぼ反比例するために、一般的に近距離の計測では受信信号強度が高く、計測精度も高くなるが、遠距離になるに従い内部ノイズ成分に対して受信信号強度が低くなり、徐々に不正計測値が増加して計測信頼性が低下するという性質(特性)がある。従来の技術では遠距離の計測性能の向上を図ろうとする場合、送信出力を増加させる方法及び受光面積を増大させる方法があるが、いずれも装置の大型化や消費エネルギー増大によるコスト増加が避けられない。特に航空機に搭載する場合には、搭載用に利用することができる空間や装置を駆動する電力に制限があり、かつ旅客機の巡航する高高度では大気中のエアロゾル量が減少するために、性能低下は避けられず、送信出力を増加させる方法等で計測性能を向上させることには限界がある。
本発明は、上記の問題点を解決するものであり、その目的は、遠距離領域の計測であっても計測信頼性劣化が少なく、より遠距離まで計測可能な小型省電力の遠隔気流計測装置を提供することにある。
前記目的を達成するために本発明の光学式遠隔気流計測装置は、レーザ光を送信信号として大気中に放射(送信)して、該レーザ光の大気中のエアロゾルによるレーザ散乱光を受信信号として受信し、該送信信号と該受信信号との間の周波数のドップラーシフト量に基づき遠隔領域の気流の風速を計測する光学式遠隔気流計測装置において、連続的に計測されるレンジ方向の複数の計測値をカルマンフィルタにより処理し、信頼性が低い計測値を確からしい風速値に置き換えるデータ処理を行うことを特徴とする。
一般的なカルマンフィルタは、システム方程式により予測された状態を観測データにより逐次修正していくプロセスを通して、対象とするデータの予測・ろ波・平滑化を行うアルゴリズムである(例えば、非特許文献2を参照。)。本ライダシステムに適用する場合、レンジビン毎に時々刻々得られる計測データ(風速)はシステムの状態として信頼性(分散)と共に蓄積され、新たに得られた計測データはシステムの状態と信頼性(分散)に基づいて比較を行い、重み付けを行った上で新たなシステムの状態として採用される。
請求項2に記載の光学式遠隔気流計測装置では、前記ドップラーシフト量の計測の際に、信号強度の高い周波数値を複数個選択して記憶した上で、前記フィルタリング処理により求めた確からしい風速値と比較することにより、その値に最も近いものを真値とするデータ処理を行うこととした。
請求項3に記載の光学式遠隔気流計測装置では、前記ドップラーシフト量の計測の際に、前記フィルタリング処理により求めた確からしい風速値に一定の幅を持たせたゲートを設定し、その風速値に対応する周波数ゲート内のみで信号強度の極大値を判定することにより真値を特定するデータ処理を行うこととした。
請求項4に記載の光学式遠隔気流計測装置では、前記ドップラーシフト量の計測の際に、前記フィルタリング処理により求めた確からしい風速値を中心とした重み付け関数を、前記レーザ散乱光の周波数分布に重畳することにより最大値を強調し、該強調した周波数分布について前記ドップラーシフト量を再検出することにより真値を求めるデータ処理を行うこととした。
本発明の光学式遠隔気流計測装置は、従来のレーザ送信出力を増加させる方式または受光面積を増大させる方式には依らずに、それに代わり計測信号をフィルタリング処理することにより、計測レンジの拡大を実現しながら、同時に遠距離領域の計測精度劣化を防止することが可能となるものであるから、航空機に搭載可能な小型省電力の装置として構成することが可能となる。このフィルタリング処理は多点同時計測であり、かつ、計測情報が遠方から伝わってくる本ライダシステムのような計測装置において、いくつかの計測点(レンジビン)で異常な計測値があった場合にも、それらをフィルタリングすることが可能になり、計測値の信頼性向上のために有効である。
本発明装置が航空機に搭載されることによって、パイロットが飛行前方の乱気流を事前に余裕を持って容易かつ確実に検知し、危険を回避するための適切な措置を取ることが出来るようになる。従って、本光学式遠隔気流計測装置は、航空機の乱気流事故を防止することが好適に期待でき、空の安全性を高めることに大きな貢献ができる。
請求項2に記載の光学式遠隔気流計測装置では、受信光の信号強度の低下によりノイズ成分に妨げられて、ドップラーシフト周波数の極大値を特定することが困難な場合でも、複数の極大値の中には真の値が含まれている可能性がある。したがって、前記フィルタリング処理により求めた確からしい風速値に最も近い風速に相当する周波数値を真値と見なすこととした。この結果、従来不正な計測が行われていたか、あるいは信号強度が低いことにより欠測とされていた遠方領域の計測信頼性が向上し、結果的に最大有効計測レンジが拡大する。
請求項3に記載の光学式遠隔気流計測装置では、受信光の信号強度の低下によりノイズ成分に妨げられて、ドップラーシフト周波数の極大値を特定することが困難な場合でも、確からしい範囲内に限定して極大値を求めれば、それが真値である可能性が高い。したがって前記フィルタリング処理により求めた確からしい風速値に一定の幅を持たせて、その幅の範囲内の風速に相当する周波数範囲を限定した上で、そのゲート内の最も信号強度が高い周波数値を真値と見なすこととした。この結果、従来不正な計測が行われていたか、あるいは信号強度が低いことにより欠測とされていた遠方領域の計測信頼性が向上し、結果的に最大有効計測レンジが拡大する。
請求項4に記載の光学式遠隔気流計測装置では、受信光の信号強度の低下によりノイズ成分に妨げられて、ドップラーシフト周波数の極大値を特定することが困難な場合でも、重み付け関数の重畳により確からしい風速値周辺の受信スペクトルを強調してから受信スペクトルの極大値を求めれば、それが真値である可能性が高い。したがって、前記フィルタリング処理により求めた確からしい風速値に相当する周波数を中心とした凸型分布(例えば、ガウス分布)を重み付け関数として受信スペクトルに重畳し、確からしい風速値付近の受信スペクトルを強調した上で最大値の再検出を行い、検出された最大値を真値と見なすこととした。この結果、従来不正な計測が行われていたか、あるいは信号強度が低いことにより欠測とされていた遠方領域の計測信頼性が向上し、結果的に最大有効計測レンジが拡大する。
本発明の光学式遠隔気流計測装置としてのドップラーライダーを示す構成説明図である。 本発明のフィルタリング処理が特に有効である場合の計測例を説明する図である。 ドップラーライダーによる良好な計測状態での周波数スペクトルを示す説明図である。 本発明のフィルタリング処理の手順を示す図である。 本発明に係るフィルタリングの適用結果の一例を示す図である。 本発明に係る受信強度の周波数のスペクトル分布の局所的な極大値を周波数帯域分割により求める方法を示す説明図である。 本発明に係る受信強度の周波数のスペクトル分布の局所的な極大値を微分回路により求める方法を示す説明図である。 本発明に係る周波数制限ゲートを示す説明図である。 本発明に係る受信スペクトルの重み付け処理を示す説明図である。
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
図1は、本発明の光学式遠隔気流計測装置としてのドップラーライダー100の基本構成をを示す図である。このドップラーライダー100は、大気中に浮遊するエアロゾルに対しレーザ光を送信光として照射して、エアロゾルからのレーザ散乱光を受信光として受信する光学系10と、その受信光と送信光との波長変化量(ドップラーシフト量)に基づいて風速を計測する計測器本体20とからブロック構成されている。
光学系10は、送信光となる微弱なレーザ光を発生する基準光源1と、その微弱なレーザ光を増幅して送信光とする光ファイバアンプ2と、該光ファイバアンプ2を励起するポンプ光としてのレーザ光を発生する励起光源3と、送信光を遠方に放射すると共に遠方からの散乱光を集光する光学望遠鏡4とから成る。なお、送信光としては例えば波長1.5μm帯の近赤外線レーザ光を、励起光源としては高効率のレーザダイオードを各々使用することが可能である。また、上記ドップラーライダー100のような、ファイバアンプ式のドップラーライダーは、小型、軽量、省電力、低電磁ノイズ、レイアウトの高い自由度、耐振動性、高い防塵性、加工容易性を備え、液体冷却機構の省略を可能にする等、枚挙に暇がない程の多項目にわたり航空機搭載用として優れた利点を備えている。
計測器本体20は、レーザ散乱光を受信し参照光と合成しビート信号を出力する光受信機5と、そのビート信号を処理し機体前方の気流の風速を計測する信号処理器6と、風速の計測結果を表示する表示器7とから構成されている。なお、後述するように、信号処理器6では、計測信号のフィルタリング処理により、受信強度が低下する主に遠距離に係る計測精度の劣化を防止している。
前述したように、上記ドップラーライダー100は、パルス状のレーザ光(送信光)を大気中に放射して、そのレーザ光の大気中でのレーザ散乱光(受信光)を受信することにより、ドップラー効果に基づき遠隔領域の風速を計測する装置である。そして、受信光を時系列に分割することにより、距離方向の計測領域を特定して、同時に複数領域の風速を計測することが可能である。
このようなドップラーライダー100において送信光については、光線が収束されているために空間伝搬損失は少ないが、該受信光は散乱光が拡散するために距離の2乗にほぼ反比例して受信強度が低下する。このため遠方領域の計測では内部ノイズ成分の比率が卓越し、不正な計測値が増加することとなる。また近距離であっても特異な大気状態により一時的に受信強度が低下するという現象が生じることもある。
従来は受信強度と内部ノイズ成分の強度との比率(SN比)に閾値を設定し、その閾値を上回ったときに計測が有効であり、下回ったときに計測が無効であると判定していた。しかしながら、実際の計測データを解析したところ、その閾値を上回ったときでも不正計測と思われるケースや、その閾値を下回った場合でも有効計測と思われるケースが散見された。本発明者はこのような現象に着目する中で不正計測と思われるデータをフィルタリング処理により適正値に置き換えれば、該閾値を低めに設定して有効データ数が増加することが期待できるであろうとの知見を得るに至った。
図2に本フィルタリング処理が特に有効である場合の計測例を説明する図を示す。計測値として得られる風速情報は、ドップラーライダーを用いて航空機の飛行により遠方から航空機に向かって伝わってくる。受信強度が弱く計測エラーと判断される計測値は計測レンジが遠くなるに従い散見されるようになるが、その発現の様子はランダムである。したがって、過去に正しい計測値が得られており、短いサンプリング時間では大きく風速が変化しないであろうと予想されるレンジビンにおいて、計測値が計測エラーとなってしまう場合も発生しうる。以上の状況を踏まえ、本フィルタリングにおいては、レンジビン毎に時々刻々得られた計測値はシステムの状態として信頼性(分散)と共に蓄積され、新たに得られた計測データはシステムの状態と信頼性(分散)に基づく比較から新たなシステムの状態として採用する。このようなフィルタリング処理により、過去に得られた正しい計測値(分散=小)が存在するレンジビンでは、新たな計測値がエラー(分散=大)となった場合に過去の正しい計測値を採用することができる。
図3に示すとおり、従来のドップラーライダーでは受信強度の周波数のスペクトル分布から、信号強度が最大となる1周波数値のみを抽出し、それを送信光の基準周波数と比較して、両者の差分を風速に比例するドップラーシフト量として利用している。しかしながら信号強度がノイズ成分よりも低下してくると、真の値とは別の周波数で信号強度が一時的に最大値をとる場合がある。このため局所的な極大信号強度に対応する周波数の候補値を複数個抽出して、その中から前記フィルタリング処理により求めた風速値に対応する周波数値に最も近い候補値を真値と見なすというルールを採用する。ただし、ノイズ成分が完全に卓越して、無数の極大信号が全周波数にわたって現れた場合には、もはや計測が不能となる。
局所的な極大値を求める方法としては、以下の2通りが考えられる。まず1番目の方法は、周波数のスペクトル分布を複数個の帯域に分割し、それぞれの周波数帯域で信号強度が最大となる周波数値を求める。各周波数帯域の最大値の中から前記フィルタリング処理により求めた風速値に対応する周波数値の属する周波数帯域の最大値を真値と見なすという手法である。この方法は処理が単純で、計測値の算出速度が高いという利点がある。
次に2番目の方法であるが、これは受信強度の周波数のスペクトル分布を微分回路に通して微分値が正から負へ向かうゼロクロス点を極大値として抽出するというものであって、微分回路を通す前の受信強度が大きい方から複数個を選び、その中から前記フィルタリング処理により求めた風速値に対応する周波数値に最も近い候補値を真値と見なすという手法である。この方法では微分回路を通す前に、周波数スペクトル分布のスムージング処理が必要である。
上記の2通りの方法は、ドップラーシフト周波数の候補値を複数個選択して記憶する必要があるため、ノイズの周波数分布に偏りが生じて候補値が多数必要な場合には、事前に予定した記憶個数では不足する場合がある。これに対処する手法としては、前記フィルタリング処理により求めた風速値に対応する周波数値の上下に一定の幅を持った周波数ゲートを設定し、そのゲート内の周波数帯域で信号強度が最大となる周波数値を真値と見なすという手法を適用することが考えられる。この方法の場合、一旦従来の方法で風速を求めた上でフィルタリング処理を行い、再度周波数のスペクトル分布からドップラーシフト周波数を求める手順となり、演算処理に時間を要するという欠点がある。最初のフィルタリング処理で求めた風速値が適正であれば1回の処理で済むが、適正でない可能性も否定できない。さらに計測の信頼性を向上させるには、この手順を繰り返せばよいが、その反面繰り返しが多くなれば、更に時間を要しその場合実時間処理は期待できなくなるという問題が生じることも考慮する必要がある。
前記フィルタリングで求められた風速値を中心とする凸型分布(例えば、ガウス分布)を重み付け関数として受信スペクトルに掛け合わせるという手法を採用すれば、フィルタリングで求められた風速値の近くに存在する受信スペクトルの最大値が強調されることになる。これに対して、最大値検出を再度行うことにより正しい風速値に相当する受信スペクトルを選択することができる。
図4はフィルタリング処理の手順を示す図である。初期の風速をV(-) j,kとしたとき、計測時間間隔T秒後の各レンジビンの風速は、飛行速度をVaとすると線形補間により数1に示す式から求まる。このとき、風速の分散σ(-) j,kも同様に補間する。計測開始時の推定値は風速、分散共に計測値をそのまま採用すればよい。
上記により状態が推定された時刻に新たに得られた(計測エラーを含む可能性がある)風速値をV j,k、その分散をσ j,kとしたとき、カルマンゲインKj,kを数2式より計算する。
上記の推定値、計測値およびカルマンゲインを用いて、数3式によりフィルタリングされた風速V(+) j,kおよび分散σ(+) j,kを計算する。数3式では風速に関しては、推定値と計測値の分散を用いた重み付け平均を行っていることになる。このとき重みとなっているのがカルマンゲインである。一方、分散に関してはカルマンゲインで計測値の分散をスケーリングしている。
図5は、本発明に係るフィルタリングの適用結果の一例を示す図であり、実際の飛行試験により得られたデータを用いたものである。この例では、数1式におけるLが150m、Tが1秒、Vが約60m/sである。フィルタリング前後の風速計測値を左右に並べて示す。フィルタリング前では距離3,000m付近以遠から風速の異常値が現れ始め、4,500m以遠では殆どの計測が異常値となる。一方、フィルタリング処理を行った場合、適用初期に異常値が若干見られるものの、フィルタリング前に見られた風速の異常値は取り除かれている。風速異常値の多かった4,500m以遠においても風速が推定されているが、それらが図中斜め右下へ伝わり、3,000mより手前の信頼性の高い領域の計測値と同様な傾向が得られていることから、4,500m以遠の風速推定値の妥当性が確認できる。
フィルタリング処理後では5,000m以遠においても、時間が経過することにより滑らかな速度分布が得られている。これは隣り合うレンジビンで速度が逆転しているようなランダムなノイズにおいて、数1式によるレンジビン間の補間を行うことにより平滑化作用が働いているためである。このようなノイズ構造を持つ領域においても、分散の小さな正しい計測値が存在する場合は、それらを反映するが、その絶対数が少ないために推定された風速の信頼性は低くなると考えられる。
図6は、本発明に係る受信強度の周波数のスペクトル分布の局所的な極大値を周波数帯域分割により求める方法を示す説明図である。受信強度の周波数のスペクトル分布において、局所的な極大値を求めるために、周波数のスペクトル分布をA〜Fまでの6帯域に分割し、それぞれの周波数帯域で信号強度が最大となる周波数値を合計6個抽出する。この抽出した6個の数値は、一旦メモリーに記憶しておく。次にこの6個の数値の最大値を用いて、風速を算出し前記フィルタリング処理を行う。前記メモリーに記憶した6個の数値の中から、前記フィルタリング処理により求めた風速値に対応する周波数値の属する周波数帯域の最大値を真値と見なして、フィルタリング処理前のデータと置き換える。
図7は、本発明に係る受信強度の周波数のスペクトル分布の局所的な極大値を微分回路により求める方法を示す説明図である。まず受信強度の周波数のスペクトル分布をローパスフィルタによりスムージングする。次に受信強度の周波数のスペクトル分布を微分回路に通して微分値が正から負へ向かうゼロクロス点を極大値として抽出する。微分回路を通す前の受信強度が大きい方から6個を選び、その中から前記フィルタリング処理により求めた風速値に対応する周波数値に最も近い候補値を真値と見なして、フィルタリング処理前のデータと置き換える。
図8は、本発明に係る周波数制限ゲートを示す説明図である。まず、通常の良好な計測状態と同様に周波数のスペクトル分布の最大値の周波数を用いて風速を算出し、前記フィルタリング処理を行う。次に先に求めた周波数のスペクトル分布の最大値の周波数が、前記フィルタリング処理の結果として求められた風速に相当する周波数から一定の範囲内である場合は、計測データを修正しない。次に先に求めた周波数のスペクトル分布の最大値の周波数が、前記フィルタリング処理の結果として求められた風速に相当する周波数から一定の範囲外である場合には、その一定の範囲内に限定して周波数のスペクトル分布の最大値の周波数を再度求め、該周波数から風速を算出する。
演算時間に余裕がある場合には、該風速を用いて再度前記フィルタリング処理を行う、あるいは繰り返し前記行程を行うことにより、さらに計測データの信頼性が向上する。
上記、ゲート幅は数1式により推定された風速に対応する受信スペクトルを中心として定義することもできる。この場合、受信スペクトルの最大値検出は一度で済む。
なお、周波数制限ゲートを表す周波数の許容範囲(一定値)としては、諸条件によって適正な値は異なるものの、例えば風速差3m/sに相当する2MHzである。
図9は、本発明に係る受信スペクトルの重み付け処理を示す説明図である。まず、通常の良好な計測状態と同様に周波数のスペクトル分布の最大値の周波数を用いて風速を算出し、前記フィルタリング処理を行う。次に先に求めた周波数のスペクトル分布の最大値の周波数が、前記フィルタリング処理の結果として求められた風速に相当する周波数から一定の範囲内(例えば、2MHz)である場合は、計測データを修正しない。次に先に求めた周波数のスペクトル分布の最大値の周波数が、前記フィルタリング処理の結果として求められた風速に相当する周波数から一定の範囲外である場合には、フィルタリングで求められた風速値を中心とする凸型分布(例えば,ガウス分布)を重み付け関数として受信スペクトルに重畳する。ガウス分布は数4式により定義される正規分布をあらわす関数である。これにより、フィルタリングで求められた風速値の近くに存在する受信スペクトルピークが強調されることになり、ピーク検出を再度行うことにより正しい風速値に相当する受信スペクトルピークを選択する。
なお、数4式で用いる風速および分散は数1式による推定値、数3式によるフィルタリング値どちらを使ってもよい。数1式による推定値を用いる場合、最大値検出の処理は一度行えばよいので、追加される計算処理コストはガウス分布の計算とそれを受信スペクトルに掛け合わせる乗算のみとなる。一方、数3式によるフィルタリング値を用いる場合には、受信スペクトルの最大値検出を二度行うことになる。
本発明の光学式遠隔気流計測装置は、航空機の前方の乱気流を検知する危険回避手段または危険予知手段として好適に適用することが出来る。また、地上に設置して上空の気流を計測するドップラーライダーにも適用可能である。
1 基準光源 2 光ファイバアンプ
3 励起光源 4 光学望遠鏡
5 光受信機 6 信号処理器
7 表示器 10 光学系
20 本体
100 ドップラーライダー
特開2003−14845号公報(特許第3740525号公報)「風擾乱予知システム」 平成15年1月15日公開
H.Inokuchi,H.Tanaka, and T.Ando, "Development of an Onboard Doppler LIDAR for Flight Safety," Joumal of Aircraft, 2009. 片山徹著「 新版 応用カルマンフィルタ」 朝倉書店, 2000.

Claims (4)

  1. レーザ光を送信信号として大気中に放射(送信)して、該レーザ光の大気中のエアロゾルによるレーザ散乱光を受信信号として受信し、該送信信号と該受信信号との間の周波数のドップラーシフト量に基づき遠隔領域の気流の風速を計測する光学式遠隔気流計測装置において、前記ドップラー信号に対し過去に計測された信頼性が高い計測値に基づくフィルタリング処理により、信頼性が低い計測値を確からしい風速値に置き換えるデータ処理を行い、前記ドップラーシフト量の計測値の信頼性を高めることを特徴とする光学式遠隔気流計測装置。
  2. 前記ドップラーシフト量の計測の際に、前記レーザ散乱光の信号強度の高い周波数値を複数個選択して記憶した上で、前記フィルタリング処理により求めた確からしい風速値に最も近い風速に相当する周波数値を真値と見なすデータ処理を行う請求項1に記載の光学式遠隔気流計測装置。
  3. 前記ドップラーシフト量の計測の際に、前記フィルタリング処理により求めた確からしい風速値に一定の幅を持たせたゲートを設定し、そのゲート内の風速に相当する周波数範囲の最も信号強度が高い周波数値を真値と見なすデータ処理を行う請求項1に記載の光学式遠隔気流計測装置。
  4. 前記ドップラーシフト量の計測の際に、前記フィルタリング処理により求めた確からしい風速値を中心とした重み付け関数を、前記レーザ散乱光の周波数分布に重畳することにより最大値を強調し、該強調した周波数分布について前記ドップラーシフト量を再検出することを特徴とする請求項1に記載の光学式遠隔気流計測装置。
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