JP2010222210A - ナノカーボンの精製方法およびその分析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】アモルファスカーボン等のカーボン不純物が含まれるカーボンナノチューブやナノカーボン粗生成物から、カーボンナノチューブ等のナノカーボンを高純度で且つ容易に精製できる、ナノカーボンの精製方法を提供する。また、ナノカーボンを精製する過程において、ナノカーボン粗生成物を分析する方法を提供する。
【解決手段】還元雰囲気中において、原料ナノカーボン粗生成物を、600〜900℃に加熱して精製することを特徴とする、ナノカーボンの精製方法。また、ダイナミックTG法、広角X線回折装置およびRAMAN分光法により測定することを特徴とするナノカーボン粗生成物の分析方法。
【選択図】図1
【解決手段】還元雰囲気中において、原料ナノカーボン粗生成物を、600〜900℃に加熱して精製することを特徴とする、ナノカーボンの精製方法。また、ダイナミックTG法、広角X線回折装置およびRAMAN分光法により測定することを特徴とするナノカーボン粗生成物の分析方法。
【選択図】図1
Description
本発明は、ナノカーボンの粗生成物(カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンナノファイバー、カーボンナノコイル、カーボンナノホーン等)から、カーボン不純物(アモルファスカーボン、欠陥構造を含むカーボンナノチューブ等)を除去し、ナノカーボンを高純度に精製する方法に関する。また、ナノカーボン粗生成物を分析する方法に関する。
カーボンナノチューブやフラーレン等の、カーボン原子からなるナノサイズの特殊な構造体、すなわち、ナノカーボンは、アーク放電法、レーザー蒸着法、プラズマCVD法などの周知の方法で合成することができる。このようにして合成されたナノカーボン粗生成物には、アモルファスカーボンや欠陥構造を含むカーボンナノチューブ等のカーボン不純物が混在しており、高純度のナノカーボンを得るためには、カーボン不純物を除去することが必要である。また、ナノカーボン粗生成物中には、カーボン不純物以外に、ナノカーボンを合成するために必要な触媒である金属微粒子も不純物として含まれている。従来、金属微粒子の除去は、塩酸や硝酸を用いて金属を溶解することにより行われている。
一方、カーボン不純物は、従来、酸化による除去が行われている。この方法は、カーボンナノチューブやフラーレン等のナノカーボンが、アモルファスカーボン等のカーボン不純物に比べて構造的に安定であり、それ故、ナノカーボンとカーボン不純物とでは、酸化するための酸化力に違いがあること、また、熱酸化で除去する場合には、熱酸化温度に違いがあることを利用したものである。具体的には酸化性の酸である硝酸、混酸、あるいは過酸化水素による化学的処理、また、乾燥空気中で加熱する熱酸化処理がこれまで行われている。その他、遠心分離法、限外ろ過法、電気化学的な処理法なども一般的に知られている。
しかしながら、酸化剤による化学的処理では、アモルファスカーボン等のカーボン不純物、カーボンナノチューブやフラーレン等のナノカーボンの両方を酸化してしまう。したがって、この処理は、十分有効な精製方法ではなく、アモルファスカーボン等のカーボン不純物のみを酸化し、カーボンナノチューブやフラーレン等のナノカーボンは酸化しない、最適な酸化力の酸化剤が必要とされている。また、従来の熱酸化除去法では、カーボン不純物の酸化除去(燃焼除去)と同時にナノカーボンの酸化(燃焼)が生じ、カーボン不純物のみを選択的に酸化する事が困難であった。例えば、酸素を酸化剤として用い、アモルファスカーボンのみが酸化する温度で加熱しても、酸素による酸化反応は発熱が大きいため、反応に伴って粗生成物の温度が上昇して、ナノカーボンの酸化温度に達してしまい、ナノカーボンの酸化反応も進行してしまう。すなわち、発熱の大きな酸化処理方法は、発熱による粗生成物の温度上昇が避けられず、それ故、選択的にカーボン不純物のみを酸化除去することが困難である。
上記の問題点を解決するため、例えば、特開平8−91815(特許文献1)には、カーボンナノチューブ、グラファイトおよびアモルファスカーボンを含む混合物からグラファイトの金属塩化物層間化合物を調製した後、層間の金属塩化物を気相中あるいは液中で超微粒子金属に還元処理し、その超微粒子金属担持グラファイトとカーボンナノチューブの酸化速度の違いを利用してグラファイトのみ除去することからなるカーボンナノチューブの分離精製方法が記載されている。しかし、この方法は操作が煩雑であり、多くの工程を要する。
また、特開2006−124225(特許文献2)には、圧力が1.3〜2.0Paであり、且つ、酸素濃度が0.01〜0.05%の不活性ガス雰囲気中において、原料カーボンナノチューブを1000〜1200℃で10〜15時間加熱する工程を少なくとも有するカーボンナノチューブの製造方法が記載されている。しかし、この方法は1000℃以上の高温を必要とし、処理に長時間を要する。
さらに、特開2006−306636(特許文献3)には、活性金属又は活性金属を担持した担体を用いてナノカーボン材料を製造した後、製造後のナノカーボン材料を含む生成物を、ハロゲンを含む雰囲気中で処理し、ナノカーボン材料を精製することを特徴とするナノカーボン材料の精製方法が記載されている。しかし、この方法は有害なハロゲンガスを使用しなければならないため、工程的および環境的にも問題が多い。
以上のように、従来のナノカーボンの精製方法における、カーボン不純物の除去は、いずれの方法によっても満足のいくものとは言えなかった。
本発明は、アモルファスカーボン等のカーボン不純物が含まれるカーボンナノチューブやナノカーボン粗生成物から、カーボンナノチューブ等のナノカーボンを高純度で且つ容易に精製できる、ナノカーボンの精製方法を提供することを目的とする。また、ナノカーボンを精製する過程において、ナノカーボン粗生成物を分析する方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の事項に関する。
1.還元雰囲気中において、原料ナノカーボン粗生成物を、600〜900℃に加熱して精製することを特徴とする、ナノカーボンの精製方法。
2.前記還元雰囲気が、水素を含む気体であることを特徴とする、項1に記載のナノカーボンの精製方法。
3.前記原料ナノカーボン粗生成物が、カーボンナノチューブの粗生成物であることを特徴とする、項1または2に記載のナノカーボンの精製方法。
4.前記カーボンナノチューブの粗生成物が、主成分の層数が10以下であるカーボンナノチューブを含むことを特徴とする、項3に記載のナノカーボンの精製方法。
5.項1〜4に記載のナノカーボンの精製方法において、ナノカーボン粗生成物を加熱して精製した後に、塩酸や硝酸などの強酸で処理することにより、金属不純物を溶解して除去することを特徴とする、ナノカーボンの精製方法。
6.項1〜4に記載のナノカーボンの精製方法において、ダイナミックTG法により測定を行うことにより、不純物を含むナノカーボンの組成を分析することを特徴とする、ナノカーボン粗生成物の分析方法。
7.項1〜4に記載のナノカーボンの精製方法において、広角X線回折装置を用いて測定を行うことにより、不純物を含むナノカーボンの精製度を評価することを特徴とする、ナノカーボン粗生成物の分析方法。
8.項1〜4に記載のナノカーボンの精製方法において、RAMAN分光法で、波長450nm以下の波長で測定することにより、MWCNT(多層カーボンナノチューブ)の精製度を測定することを特徴とする、ナノカーボン粗生成物の分析方法。
本発明のナノカーボンの精製方法によれば、アモルファスカーボンだけではなく、従来分離が困難であった欠陥構造を含むカーボンナノチューブ等のカーボン不純物を除去することができる。また、触媒残渣などの金属不純物を効率よく取り除くことができるため、高純度のナノカーボンを得ることができる。また、本発明のナノカーボンの分析方法によれば、従来の熱分析では明瞭でなかった、欠陥構造を含むカーボンナノチューブなどのカーボン不純物を、より詳しく観察することができる。
本発明において、原料として精製の対象とされるものは、アーク放電法、レーザー蒸着法、プラズマCVD法などによって合成されるカーボンナノチューブやフラーレン、カーボンナノファイバー、カーボンナノコイル、カーボンナノホーンなどのナノカーボン粗生成物である。
このナノカーボン粗生成物には、アモルファスカーボンや欠陥構造を含むカーボンナノチューブ等のカーボン不純物が含まれている。この粗生成物を水熱法、遠心分離法、限外ろ過法などの周知の方法で処理して、カーボンナノチューブなどの純度を高めることも行われているが、例えば、電子材料として使用する上で十分な純度にまでは精製することができない。また、化学薬品による酸化除去や熱酸化除去は、極めて困難である。
この原料となるナノカーボン粗生成物は、例えば、カーボンナノチューブを含んでいるのであれば、このカーボンナノチューブは、主成分が層数10以下の、比較的層数が少ないものが好ましい。その理由は、層数が多いものは熱的に安定であり、欠陥構造を含むものであっても耐熱性が高いため、カーボン不純物が分解する際はカーボンナノチューブも一緒に分解してしまい、精製効果が十分ではないからである。
本発明のナノカーボンの精製方法は、ナノカーボン粗生成物を、還元雰囲気中で加熱することを特徴とする。この精製方法では、ナノカーボンの合成に使用された触媒である金属微粒子の表面が、還元雰囲気により金属状態に還元され、この還元された金属微粒子の触媒作用により、カーボン不純物が選択的に還元分解(微量の酸素が存在するため、酸化分解も同時に起こっている)されて、ナノカーボン粗生成物の精製が進行すると考えられる。
本発明のナノカーボンの精製方法は、還元雰囲気下で行われるが、還元性ガスと不活性ガスを混合した雰囲気でもよい。還元性ガスや不活性ガスの種類は限定されることはなく、その混合比も限定されることはない。
ただし、爆発防止などの安全性を考慮すると、還元性ガスの全ガスに対する割合は、体積比6%程度であることが好ましい。
前記還元性ガスの具体例としては水素、アンモニアなどが挙げられるが、これらの中でも環境への負荷が比較的小さい、水素であることが好ましい。
前記不活性ガスの具体例としては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられるが、熱伝導性の観点からはヘリウムが好ましい。また、経済性の観点からは窒素が利用される。
この雰囲気中には、全ガスに対して体積比1%以下の微量の酸素が混入しても良い。
本発明のナノカーボンの精製方法における加熱温度は、600〜900℃が好ましい。その理由は、加熱温度が600℃未満であると、欠陥構造を含むカーボンナノチューブなどのカーボン不純物が分解除去されにくいことがあるためであり、また、加熱温度が900℃を超えると、層数の少ないカーボンナノチューブも分解除去されてしまうためである。
本発明のナノカーボンの精製方法では、[0023]で述べたように、還元性ガスと接触して活性化された触媒により、カーボン不純物が分解除去されると考えられる。したがって、ナノカーボン組成物と触媒との量の関係、および還元性ガスと触媒との接触状態が、カーボン不純物の分解時間に大きく影響する。これらの条件は、処理方法(反応器の大きさや形状など)により異なるため、加熱時間については、特に限定されることはない。
温度は室温から上昇させるが、昇温速度は特に限定されない。本発明が対象とするナノカーボン粗生成物では、昇温と共に緩やかな減量が起こり、その後に大きくみて、2段階の重量減少を示す。
最初の緩やかな減量では水分やアモルファスカーボン、さらに助触媒などの低分子化合物およびその分解物の揮散が起こっているものと考えられる。その次に始まる、1段目の減量は、欠陥構造を含むカーボンナノチューブやSWCNT(単層カーボンナノチューブ)等の耐熱性の低い炭素化合物の分解によるものと推察される。その後に起きる2段目の減量は、層数の少ないMWCNT(多層カーボンナノチューブ)の分解によるものと思われる。
このようにして、1段目の重量減少後に得られたものが、カーボン不純物などの不純物が分解除去された、ナノカーボンの精製物となる。
この精製方法では、ナノカーボンを合成するために使用された触媒である金属微粒子の表面が、還元雰囲気により金属状態に還元され、この還元された金属微粒子が触媒となってカーボン不純物が選択的に還元分解されると同時に、微量の酸素の存在により酸化分解も起こり、ナノカーボン粗生成物の精製が進行していると考えられる。使用される触媒は、Co、Mo、Ni、Feなどの、ナノカーボン合成に一般的に用いられるものである。
この精製方法によれば、カーボン不純物の分解による温度上昇が小さいので、その温度上昇によってナノカーボンまでが分解されることはない。したがって、ナノカーボン粗生成物中のカーボン不純物のみが分解除去され、ナノカーボンを高純度に精製できる。
本発明のナノカーボンの精製方法は、この方法単独でナノカーボン粗生成物を極めて高純度に精製できるが、上記の水熱法、遠心分離法、限外ろ過法などの周知の方法でナノカーボン粗生成物を精製した後に本発明の方法を適用してもよく、このようにすればより短時間でナノカーボンを精製することができる。
さらに、本発明の精製方法の後に、触媒として使用されている金属微粒子の溶解除去を行えば、熱酸化処理と比べて、飛躍的に高い効率でこれら金属微粒子を溶解除去することができる。なぜならば、熱酸化処理後の金属微粒子は酸化されて酸化物となっているため、塩酸などの酸処理では、十分に除去するとこが困難であるが、本発明の精製方法による還元処理後の金属微粒子は金属状態となっているため、塩酸などの酸処理で除去されやすいからである。このことにより、金属微粒子による電気的妨害を抑え、さらに精製によりカーボン不純物が劇的に減少するため、電子材料として使用できる純度のナノカーボンを製造することが可能となる。
このようにして、本発明のナノカーボンの精製方法を用いることにより、従来技術では得られなかった、高純度のナノカーボンを製造することが可能となる。
また、原料となるナノカーボン粗生成物および精製されたナノカーボンの評価は、以下のようにして行われる。
まず、原料ナノカーボン粗生成物は、ダイナミック温度制御TG(熱重量)法により、還元雰囲気下で測定を行い、その組成を調べることができる。ここで、ダイナミック温度制御TG法とは、重量減少速度を一定に近づけるように温度制御する方法であり、通常の等速昇温法に比較して、重量減少の温度依存性を、高い分解能で分析することが可能である。
続いて、本発明の精製方法により製造されたナノカーボンは、TEM(透過型電子顕微鏡)観察によりその精製度が観察される。精製されたナノカーボンは、カーボン不純物や、欠陥を含んでいる曲がったナノカーボン(カーボンナノチューブなど)が少なく、直線的なナノカーボン(カーボンナノチューブなど)の集合体として観察される。
また、RAMAN分光法で、波長450nm以下の波長で測定することにより、ナノカーボン(カーボンナノチューブなど)の精製度を評価することができる。この方法で得られたスペクトルにおいて、1600cm−1付近のピークをGバンドと呼び、結晶性ナノカーボン(カーボンナノチューブなど)由来のRAMAN光散乱強度を示すとされ、1350cm−1付近のピークをDバンドと呼び、欠陥あるいは非晶性カーボン由来のRAMAN光散乱強度を示すとされている。このGバンドとDバンドのピーク比であるG/D比が高いほど、不純物が少ないナノカーボン(カーボンナノチューブなど)であると考えられる。
さらに、広角X線回折法により、ナノカーボン(カーボンナノチューブなど)の精製度の評価が可能であると考えられる。この方法により得られたナノカーボン(カーボンナノチューブなど)のスペクトルにおいて、回折角2θが40〜45°のピークが観察される。これは、グラファイト2h構造の(100)面と(101)面などに見られるものであり、秩序のある構造を反映しているものと考えられる。このピークを評価することにより、ナノカーボン(カーボンナノチューブなど)の精製度の評価が可能であると考えられる。
以下に本発明の実施例を比較例とともに説明する。
<実施例1>
原料カーボンナノチューブ(マイクロフェーズ社製S−type未焼成)を、直径3mmで深さ2mmのアルミナ製セル内に入れ、(株)リガク社製差動型示差熱天秤TG−8120型中にセットし、5体積%水素/95体積%ヘリウムの混合ガスを50ml/分で流しながら、室温から1000℃まで、ダイナミック温度制御TG法により測定を行った。この方法により得られた測定結果を図1に示す。
原料カーボンナノチューブ(マイクロフェーズ社製S−type未焼成)を、直径3mmで深さ2mmのアルミナ製セル内に入れ、(株)リガク社製差動型示差熱天秤TG−8120型中にセットし、5体積%水素/95体積%ヘリウムの混合ガスを50ml/分で流しながら、室温から1000℃まで、ダイナミック温度制御TG法により測定を行った。この方法により得られた測定結果を図1に示す。
原料としたカーボンナノチューブはSWCNTとMWCNTの混合物であるが、2段階減量のTGA曲線を示した。700℃付近までの緩やかな減量は、水分やアモルファスカーボン、さらに助触媒などの低分子化合物およびその分解物が揮散したことによるものと考えられる。その次に始まる、700℃付近以降での1段目の減量は、欠陥構造を持つカーボンナノチューブおよびSWCNTの分解によるものと推察される。その後に起きる、800℃を超えた付近以降での2段目の減量は、層数の少ないMWCNTの分解によるものと思われる。
<比較例1>
原料カーボンナノチューブ(マイクロフェーズ社製S−type未焼成)を、直径3mmで深さ2mmのアルミナ製セル内に入れ、(株)リガク社製差動型示差熱天秤TG−8120型中にセットし、乾燥空気を100ml/分で流しながら、室温から1000℃まで、ダイナミック温度制御TG法により測定を行った。その結果を図2に示す。
原料カーボンナノチューブ(マイクロフェーズ社製S−type未焼成)を、直径3mmで深さ2mmのアルミナ製セル内に入れ、(株)リガク社製差動型示差熱天秤TG−8120型中にセットし、乾燥空気を100ml/分で流しながら、室温から1000℃まで、ダイナミック温度制御TG法により測定を行った。その結果を図2に示す。
原料としたカーボンナノチューブはSWCNTとMWCNTの混合物であるが、1段階減量のTGA曲線を示した。この反応は、熱酸化反応であり、実施例1よりも低い500℃付近で減量している。空気中に含まれている酸素による酸化反応は発熱が大きいため、カーボン不純物の分解反応に伴ってナノカーボン粗生成物の温度が上昇し、カーボンナノチューブの酸化温度に達してしまった結果、カーボンナノチューブも一気に酸化分解してしまったものと考えられる。
<実施例2>
原料カーボンナノチューブ(NTP社製LSWNTS)を、直径3mmで深さ2mmのアルミナ製セル内に入れ、(株)リガク社製差動型示差熱天秤TG−8120型中にセットし、5体積%水素/95体積%ヘリウムの混合ガスを100ml/分で流しながら、室温から1000℃まで、ダイナミック温度制御TG法により測定を行った。その結果を図3に示す。
原料カーボンナノチューブ(NTP社製LSWNTS)を、直径3mmで深さ2mmのアルミナ製セル内に入れ、(株)リガク社製差動型示差熱天秤TG−8120型中にセットし、5体積%水素/95体積%ヘリウムの混合ガスを100ml/分で流しながら、室温から1000℃まで、ダイナミック温度制御TG法により測定を行った。その結果を図3に示す。
この原料カーボンナノチューブはSWCNTとMWCNTの混合物であるが、実施例1と同様に2段階減量のTGA曲線を示した。1段目の減量は720℃付近で起こり、2段目の減量は850℃を越えた付近から始まっている。
<実施例3>
原料カーボンナノチューブ(NTP社製LDWNTS)を、直径3mmで深さ2mmのアルミナ製セル内に入れ、(株)リガク社製差動型示差熱天秤TG−8120型中にセットし、5体積%水素/95体積%ヘリウムの混合ガスを100ml/分で流しながら、室温から1000℃まで、ダイナミック温度制御TG法により測定を行った。その結果を図4に示す。
原料カーボンナノチューブ(NTP社製LDWNTS)を、直径3mmで深さ2mmのアルミナ製セル内に入れ、(株)リガク社製差動型示差熱天秤TG−8120型中にセットし、5体積%水素/95体積%ヘリウムの混合ガスを100ml/分で流しながら、室温から1000℃まで、ダイナミック温度制御TG法により測定を行った。その結果を図4に示す。
この原料カーボンナノチューブは層数の少ないMWCNTを含んでいるが、実施例1と同様に2段階減量のTGA曲線を示した。1段目の減量は700℃手前で始まり、2段目の減量は800℃を越えた付近から始まっている。
<実施例4>
原料カーボンナノチューブ(マイクロフェーズ社製S−type未焼成;TEM写真を図5に示す。図5より、直線的なカーボンナノチューブは少なく、欠陥構造を含む曲がったカーボンナノチューブなどのカーボン不純物が多く観られることがわかる。)を、直径3mmで深さ2mmのアルミナ製セル内に入れ、(株)リガク社製差動型示差熱天秤TG−8120型中にセットし、5体積%水素/95体積%ヘリウムの混合ガスを50ml/分で流しながら、室温から750℃(1段目の減量終了時:加熱時間は約2時間)まで、ダイナミック温度制御TG法により処理し、カーボンナノチューブ1を得た。
原料カーボンナノチューブ(マイクロフェーズ社製S−type未焼成;TEM写真を図5に示す。図5より、直線的なカーボンナノチューブは少なく、欠陥構造を含む曲がったカーボンナノチューブなどのカーボン不純物が多く観られることがわかる。)を、直径3mmで深さ2mmのアルミナ製セル内に入れ、(株)リガク社製差動型示差熱天秤TG−8120型中にセットし、5体積%水素/95体積%ヘリウムの混合ガスを50ml/分で流しながら、室温から750℃(1段目の減量終了時:加熱時間は約2時間)まで、ダイナミック温度制御TG法により処理し、カーボンナノチューブ1を得た。
カーボンナノチューブ1のTEM写真を図6に示す。図5と比較すると、図6のカーボンナノチューブ1はそのほとんどが金属微粒子および直線的なカーボンナノチューブの集合体であり、欠陥構造を含む曲がったカーボンナノチューブなどのカーボン不純物は非常に少ないことがわかる。この結果から、カーボン不純物のみが選択的に分解され、カーボンナノチューブが精製されていることがわかる。
<比較例2>
熱酸化により精製されたカーボンナノチューブ2(マイクロフェーズ社製S−type500℃焼成)のTEM写真を図7に示す。図5と比較すると、カーボンナノチューブ2は、欠陥を含む曲がったカーボンナノチューブなどのカーボン不純物が減少しているものの、図6ほどには精製されていないことがわかる。この結果から、熱酸化による精製でも、カーボン不純物が選択的に分解されているものの、還元雰囲気下での加熱による精製ほどには、カーボンナノチューブが精製されていないことがわかる。
熱酸化により精製されたカーボンナノチューブ2(マイクロフェーズ社製S−type500℃焼成)のTEM写真を図7に示す。図5と比較すると、カーボンナノチューブ2は、欠陥を含む曲がったカーボンナノチューブなどのカーボン不純物が減少しているものの、図6ほどには精製されていないことがわかる。この結果から、熱酸化による精製でも、カーボン不純物が選択的に分解されているものの、還元雰囲気下での加熱による精製ほどには、カーボンナノチューブが精製されていないことがわかる。
<実施例5>
原料カーボンナノチューブ(マイクロフェーズ社製S−type未焼成)および実施例4で得られたカーボンナノチューブ1を、日本分光社製NRS−3300型を用いて、RAMAN分光分析法により測定した。原料カーボンナノチューブの測定結果の一例を図8に、カーボンナノチューブ1の測定結果の一例を図9に示す。GバンドとDバンドの強度比であるG/D比それぞれ3点の測定を行った結果を表1に示す。ここで、Gバンドは1600cm−1付近のピークであり、結晶性カーボンナノチューブ由来のRAMAN光散乱強度、Dバンドは1350cm−1付近のピークであり、欠陥構造を含むカーボンナノチューブなどのカーボン不純物由来のRAMAN光散乱強度を示す。したがって、G/D比が高いほど、不純物が少ないカーボンナノチューブであると考えられる。
原料カーボンナノチューブ(マイクロフェーズ社製S−type未焼成)および実施例4で得られたカーボンナノチューブ1を、日本分光社製NRS−3300型を用いて、RAMAN分光分析法により測定した。原料カーボンナノチューブの測定結果の一例を図8に、カーボンナノチューブ1の測定結果の一例を図9に示す。GバンドとDバンドの強度比であるG/D比それぞれ3点の測定を行った結果を表1に示す。ここで、Gバンドは1600cm−1付近のピークであり、結晶性カーボンナノチューブ由来のRAMAN光散乱強度、Dバンドは1350cm−1付近のピークであり、欠陥構造を含むカーボンナノチューブなどのカーボン不純物由来のRAMAN光散乱強度を示す。したがって、G/D比が高いほど、不純物が少ないカーボンナノチューブであると考えられる。
不純物含量に関係する結晶性の指標であるG/D比は、カーボンナノチューブ1の方が高い結果となり、結晶性が高いことが示された。したがって、還元雰囲気下での精製により、不純物が減少したものと考えられる。
<実施例6>
原料カーボンナノチューブ(マイクロフェーズ社製S−type未焼成)、酸化により生成されたカーボンナノチューブ2(マイクロフェーズ社製S−type500℃焼成)および実施例4で得られたカーボンナノチューブ1を、(株)リガク社製広角X線回折装置、RINT−TTRIII型により測定した結果を図10に示す。
原料カーボンナノチューブ(マイクロフェーズ社製S−type未焼成)、酸化により生成されたカーボンナノチューブ2(マイクロフェーズ社製S−type500℃焼成)および実施例4で得られたカーボンナノチューブ1を、(株)リガク社製広角X線回折装置、RINT−TTRIII型により測定した結果を図10に示す。
回折角2θが40〜45°のピークは、グラファイト2h構造の(100)面と(101)面などに見られるものであり、秩序のある構造を反映しているものと考えられる。原料カーボンナノチューブでは、このピークが1つのブロードなものになっており、熱酸化により精製されたカーボンナノチューブ2では、ピークが小さく2つに分かれている。これらと比較して、実施例4で得られたカーボンナノチューブ1では、ピークが大きく2つに分かれていることが明瞭になっている。
一般的に、広角X線回折法においては、原子配列の構造が秩序のあるものになれば、ピークはシャープになり、不純物(構造の乱れたもの)が多く存在すると、ピークはブロードになる。したがって、還元雰囲気下での加熱による精製法は、熱酸化による精製法に比較して優れていると考えられる。
また、この結果は、TEM観察の結果とも一致している。
また、この結果は、TEM観察の結果とも一致している。
<実施例7>
実施例1と同様に、室温から1000℃まで、ダイナミック温度制御TG法により測定を行った。その際に発生したガスを、島津製作所製質量分析計QP−5000型で測定し、カーボンナノチューブが分解する際に発生するガスを調べた。
実施例1と同様に、室温から1000℃まで、ダイナミック温度制御TG法により測定を行った。その際に発生したガスを、島津製作所製質量分析計QP−5000型で測定し、カーボンナノチューブが分解する際に発生するガスを調べた。
図11は横軸が時間であり、どのように温度がコントロールされ、それに伴ってどのように重量が変化したかを示している。図12も横軸は時間で図11と同一であり、図11に示したダイナミック温度制御TG法による測定の際に、どのようなガスが発生しているかを示している。図12において、「4:メタン」のm/z=15、「5:二酸化炭素」のm/z=44および「6:二酸化硫黄」のm/z=64は、ガス発生量が少なく、イオン強度が弱いため、チャートでは、イオン強度をそれぞれ、m/z=15は200倍、m/z=44は20倍およびm/z=64は200倍で表示している。
その結果、時間の経過と共に温度がどのように変化し、それに伴ってガスが発生している状況が観察された。ここで、横軸が時間では状況を把握しにくいため、横軸を温度に変換して、どの温度でガスが発生しているかについてまとめたものを、図13に示す。
図13において、300℃付近で、助触媒の酸化物であるSO2が発生し、400℃付近で、CO2が発生している。さらに530℃付近で、水が発生しているが、これは触媒表面の酸化物が還元されて発生したものと推定される。その結果、触媒表面が酸化状態から金属状態に還元されて活性化され、その後に、触媒作用により不純物や欠陥部が優先して分解され、炭素の酸化物であるCOおよび炭素が還元されたCH4が発生しているものと推察される。
本発明により得られたナノカーボンは、精製度が高く、かつ金属不純物が非常に少ないため、燃料電池や二次電池などのエネルギー分野や、熱伝導性、導電性および高強度を要求される樹脂などのナノ材料分野などに利用される。
Claims (8)
- 還元雰囲気中において、原料ナノカーボン粗生成物を、600〜900℃に加熱して精製することを特徴とする、ナノカーボンの精製方法。
- 前記還元雰囲気が、水素を含む気体であることを特徴とする、請求項1に記載のナノカーボンの精製方法。
- 前記原料ナノカーボン粗生成物が、カーボンナノチューブの粗生成物であることを特徴とする、請求項1または2に記載のナノカーボンの精製方法。
- 前記カーボンナノチューブの粗生成物が、主成分の層数が10以下であるカーボンナノチューブを含むことを特徴とする、請求項3に記載のナノカーボンの精製方法。
- 請求項1〜4に記載のナノカーボンの精製方法において、ナノカーボン粗生成物を加熱して精製した後に、塩酸や硝酸などの強酸で処理することにより、金属不純物を溶解して除去することを特徴とする、ナノカーボンの精製方法。
- 請求項1〜4に記載のナノカーボンの精製方法において、ダイナミックTG法により測定を行うことにより、不純物を含むナノカーボンの組成を分析することを特徴とする、ナノカーボン粗生成物の分析方法。
- 請求項1〜4に記載のナノカーボンの精製方法において、広角X線回折装置を用いて測定を行うことにより、不純物を含むナノカーボンの精製度を評価することを特徴とする、ナノカーボン粗生成物の分析方法。
- 請求項1〜4に記載のナノカーボンの精製方法において、RAMAN分光法で、波長450nm以下の波長で測定することにより、MWCNT(多層カーボンナノチューブ)の精製度を測定することを特徴とする、ナノカーボン粗生成物の分析方法。
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