以下、本発明に係る液体収容体について、図面を参照しつつ、実施例に基づいて説明する。なお、本明細書では、液体収容体としてインクカートリッジを例にとって説明する。
A1.インクカートリッジの構成:
図1は本実施例に係る液体収容体としてのインクカートリッジの外観斜視図である。図2は図1に示す本実施例に係るインクカートリッジを裏面から見た外観斜視図である。図3は図1に対応する本実施例に係るインクカートリッジの分解斜視図である。図4は図2に対応する本実施例に係るインクカートリッジの分解斜視図である。図5は本実施例に係るインクカートリッジをキャリッジに取り付けた状態を示す図である。なお、図1〜図5には、インクカートリッジの姿勢(方向)を特定するためにXYZ軸が図示されている。
インクカートリッジ1は、内部に液体のインクを収容する。図5に示すように、インクカートリッジ1は、例えば、インクジェットプリンタのキャリッジ200に装着され、インクジェットプリンタにインクを供給する。なお、図5では、インクカートリッジ1は、キャリッジ200に装着されているが(いわゆる、オンキャリッジ)、キャリッジ200とは別の場所に設けられた装着部に装着されても良い(いわゆる、オフキャリッジ)。
図1および図2に示すようにインクカートリッジ1は、略直方体形状を有し、Z軸正方向側の面1aと、Z軸負方向側の面1bと、X軸正方向側の面1cと、X軸負方向側の面1dと、Y軸正方向側の面1eと、Y軸負方向側の面1fとを有している。以下では、説明の便宜上、面1aを上面、面1bを底面、面1cを右側面、面1dを左側面、面1eを正面、面1fを背面とも呼ぶ。また、これらの面1a〜1fのある側を、それぞれ上面側、底面側、右側面側、左側面側、正面側、背面側とも呼ぶ。
底面1bには、インクジェットプリンタにインクを供給するための供給孔を有する液体供給部50が設けられている。底面1bには、さらに、インクカートリッジ1の内部に大気を導入するための大気解放孔100が開口している(図4)。
大気解放孔100は、インクジェットプリンタのキャリッジ200に形成された突起230(図5)が所定の隙間を有するように余裕を持って嵌るような深さと径を有している。ユーザは、大気解放孔100を気密に封止する封止フィルム90を剥がしてから、インクカートリッジ1をキャリッジ200に装着する。突起230は、封止フィルム90の剥がし忘れを防止するために設けられている。
図1および図2に示すように、左側面1dには、係合レバー11が設けられている。係合レバー11には、突起11aが形成されている。インクカートリッジ1がキャリッジ200に装着されると突起11aは、キャリッジ200に形成された凹部210と係合し、キャリッジ200に対してインクカートリッジ1が固定される(図5)。キャリッジ200はインクカートリッジ1が装着される装着部である。インクジェットプリンタの印刷時には、キャリッジ200は、印刷ヘッド(図示省略)と一体になって、印刷媒体の紙巾方向(図5においてY軸方向として示される主走査方向)に往復移動する。
左側面1dの係合レバー11の下方には、回路基板35が設けられている(図2)。回路基板35には、複数の電極端子35aが配置されており、これらの電極端子35aは、キャリッジ200に設けられた電極端子(図示省略)を介して、インクジェットプリンタと電気的に接続される。
インクカートリッジ1の上面1aと背面1fには、外表面フィルム60が貼り付けられている。
さらに、図3、図4を参照しながら、インクカートリッジ1の内部構成、部品構成について説明していく。インクカートリッジ1は、カートリッジ本体10と、カートリッジ本体10の正面側を覆う蓋部材20とを有している。
カートリッジ本体10の正面側には、様々な形状を有するリブ10aが形成されている(図3)。カートリッジ本体10と蓋部材20との間には、カートリッジ本体10の正面側を覆うフィルム80が設けられている。フィルム80は、カートリッジ本体10のリブ10aの正面側の端面に隙間が生じないように緻密に貼り付けられている。これらのリブ10aとフィルム80により、複数の小部屋、例えば、後述するタンク室、エンド室、バッファ室がインクカートリッジ1の内部に区画形成される。
カートリッジ本体10の背面側には、差圧弁収容室40aと気液分離室70aとが形成されている(図4)。差圧弁収容室40aは、バルブ部材41とバネ42とバネ座43とからなる差圧弁40を収容する。気液分離室70aの底面を囲む内壁には段差部70bが形成されている。段差部70bには、気液分離膜71が貼着されており、全体で気液分離フィルタ70を構成している。
カートリッジ本体10の背面側には、さらに、複数の溝10bが形成されている(図4)。これらの溝10bは、カートリッジ本体10の背面側の略全体を覆うように外表面フィルム60が貼り付けられたときに、カートリッジ本体10と外表面フィルム60との間に後述する各種の流路、例えば、インクや大気が流動するための流路を形成する。
次に、上述した回路基板35周辺の構造を説明する。カートリッジ本体10の左側面の底面側には、センサ収容室30aが形成されている(図4)。センサ収容室30aには、液体残量センサ31が収容され、フィルム32により接着されている。センサ収容室30aの左側面側の開口は、カバー部材33によって覆われ、カバー部材33の外表面33aに、中継端子34を介して、上述した回路基板35が固定される。センサ収容室30aと、液体残量センサ31と、フィルム32と、カバー部材33と、中継端子34と、回路基板35とを全体で、検出部(センサ)30とも呼ぶ。
詳細の図示は省略するが、液体残量センサ31は、後述するインク流動部の一部を形成するキャビティと、キャビティの壁面の一部を形成する振動板と、振動板上に配置された圧電素子とを備えている。圧電素子の端子は、電気的に回路基板35の電極端子の一部に接続されており、インクジェットプリンタにインクカートリッジ1が装着されたとき、圧電素子の端子は、回路基板35の電極端子を介してインクジェットプリンタと電気的に接続される。インクジェットプリンタは、圧電素子に電気エネルギを与えることにより、圧電素子を介して振動板を振動させることができる。その後、振動板の残留振動の特性(周波数等)を、圧電素子を介して検出することにより、インクジェットプリンタはキャビティにおけるインクの有無を検出することができる。具体的には、キャビティ内部にインクが存在する場合と存在しない場合とで異なる、振動板の振動数(検出信号の周波数)を利用する。すなわち、カートリッジ本体10に収容されていたインクが消尽されることにより、インクが満たされた状態から大気が満たされた状態に、キャビティの内部の状態が変化すると、振動板の残留振動数が変化する。インクジェットプリンタは、液体残量センサ31により検出された残留振動数に基づいて、キャビティにおけるインクの有無、すなわち、インクカートリッジにインクが残っているか否かを検出することができる。
回路基板35には、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)などの書き換え可能な不揮発性メモリが設けられており、インクカートリッジ内におけるインクの残量または消費量、インク種、製造年月日などが記録される。
カートリッジ本体10の底面側には、上述した液体供給部50と大気解放孔100と共に、減圧孔110が設けられている(図4)。減圧孔110は、インクカートリッジ1の製造工程においてインクを注入する際に、空気を吸い出してインクカートリッジ1内部を減圧するために用いられる。
液体供給部50、大気解放孔100、減圧孔110は、インクカートリッジ1が製造された直後には、それぞれ封止フィルム54、90、98によって封止されている。このうち、封止フィルム90は、上述したようにインクカートリッジ1がインクジェットプリンタのキャリッジ200に装着される前にユーザによって剥離される。これにより、大気解放孔100は外部と連通し、インクカートリッジ1の内部に大気が導入される。また、封止フィルム54は、インクカートリッジ1がインクジェットプリンタのキャリッジ200に装着された際に、キャリッジ200に備えられたインク供給針240によって破られるように構成されている。
液体供給部50の内部には、下面側から順に、シール部材51と、バネ座52と、閉塞バネ53とが収容されている。シール部材51は、液体供給部50にインク供給針240が挿入されているときに、液体供給部50の内壁とインク供給針240の外壁との間に隙間が生じないようにシールする。バネ座52は、インクカートリッジ1がキャリッジ200に装着されていないときに、シール部材51の内壁に当接して液体供給部50を閉塞する。閉塞バネ53は、バネ座52をシール部材51の内壁に当接させる方向に付勢する。キャリッジ200のインク供給針240が液体供給部50に挿入されると、インク供給針240の上端がバネ座52を押し上げ、バネ座52とシール部材51との間に隙間が生じ、この隙間からインク供給針240にインクが供給される。
A2.インクカートリッジの内部構造:
A2−1.インクカートリッジ内部の概要
次に、さらに詳しくインクカートリッジ1の内部構造について説明する前に、理解の容易のため、大気解放孔100から液体供給部50に至る経路を、図6を参照して概念的に説明する。図6は、大気解放孔から液体供給部に至る経路を概念的に示す図である。
大気解放孔100から液体供給部50に至るまでの経路は、インクを収容するためのインク収容部(液体収容部)と、インク収容部の上流側の大気導入部(大気連通部)と、インク収容部の下流側のインク流動部とに大きく分けられる。
インク収容部は、上流から順に、第1の液体収容室としての第1タンク室370と、第1収容室間連通路374と、第2の液体収容室としての第2タンク室380と、第2収容室間連通路382と、第3の液体収容室としてのエンド室390とから構成される。なお、インク収容部を3つの液体収容室、すなわち、第1タンク室370と、第2タンク室380と、エンド室390に分けることなく、1つまたは2つの液体収容室とした構成であってもよく、あるいは、4つ以上の液体収容室としても良い。一般的に、液体収容室を複数の部屋に分割することによって、環境温度変化等に起因する収容室に含まれる空気の体積変化の影響を抑制(吸収)することができる。第1収容室間連通路374の上流側は第1タンク室370と連通し、下流側は第2タンク室380と連通している。第2収容室間連通路382の上流側は第2タンク室380と連通し、下流側はエンド室390と連通している。
大気導入部は、上流側から順に、導入路310と、上述した気液分離膜71を収納する気液分離室70aと、気液分離室70aとインク収容部とを連結する空気室320〜360とから構成され、大気とインク収容部とを連通する大気連通部として機能する。導入路310は、上流端が大気解放孔100と連通し、下流端が気液分離室70aと連通している。気液分離膜71は、気体の透過を許容すると共に、液体の透過を許容しない素材で構成されている。気液分離膜71を、気液分離室70aの上流側と下流側との間に配置することにより、インク収容部から逆流してきたインクが、気液分離室70aより上流に進入することを抑制することができる。空気室320〜360の具体的構成は、後述する。
インク流動部は、上流側から順に、第1トラップ流路前室410と、第1トラップ流路420と、気泡分離室430と、上述した検出部30と、第1流動路440と、バッファ室450と、上述した差圧弁40を収容する差圧弁収容室40aと、第2流動路460と、第3流動路470とから構成されている。インク流動部は、インク収容部から液体供給部50までのインクの流路部であり、インクに含まれる気泡を下流側に移動させないための後述する種々の構成を備えている。第1トラップ流路前室410は、上流側のエンド室390と連通する導入部に第2トラップ流路400を備えている。
A2−2.インク流動部の具体的構成:
はじめに、インク流動部の具体的構成について説明する。図7は、カートリッジ本体10を正面側から見た図である。図8は、カートリッジ本体10を背面側から見た図である。図7に示すように、第2トラップ流路400、第1トラップ流路前室410、第1トラップ流路420、気泡分離室430は、カートリッジ本体10の正面側であって左側面1dに近接する位置に形成されている。第1トラップ流路420は、第1トラップ流路前室410の最下部と連通する導入部421と、気泡分離室430と連通する導出部422を有している。第2トラップ流路400は、エンド室390の最下部と連通する導入部401と、第1トラップ流路前室410と連通する導出部402を有している。第1トラップ流路420は、カートリッジ本体10の背面側と正面側との間を2往復して第1トラップ流路前室410と気泡分離室430とを連通する。また、第2トラップ流路400は、カートリッジ本体10の背面側と正面側との間を1往復してエンド室390と第1トラップ流路前室410とを連通する。
第1トラップ流路420および第2トラップ流路400は、鉛直方向(Z方向)と交差する方向で折り返されたコの字状の流路を含み、内部において気泡を滞留させるように形成されている。第1トラップ流路420および第2トラップ流路400の詳細な構成について、図9を参照して説明する。図9は図7に示すインクカートリッジのA−A断面およびB−B断面を例示した説明図である。
第1トラップ流路420は、上流側の第1トラップ流路前室410と連通するための開口である導入部421と、4つの円筒流路部(上流側から順に第3円筒流路部424a〜第6円筒流路部424d)と、5つの接続流路部(上流側から順に第2接続流路部425a〜第6接続流路部425e)と、下流側の気泡分離室430と連通するための開口である導出部422と、を備えている。第2トラップ流路400は、上流側のエンド室390と連通するための開口である導入部401と、2つの円筒流路部(上流側から順に第1円筒流路部404a、第2円筒流路部404b)と、1つの接続流路部(第1接続流路部405)と、下流側の第1トラップ流路前室410と連通するための開口である導出部402と、を備えている。以下では、第1トラップ流路420を構成する4つの円筒流路部を「円筒流路部424」とも呼び、第2トラップ流路400を構成する2つの円筒流路部を「円筒流路部404」とも呼ぶ。また、第1トラップ流路420を構成する5つの接続流路を「接続流路部425」とも呼び、第2トラップ流路400を構成する接続流路部を「接続流路部405」とも呼ぶ。
円筒流路部424は、流路の軸線が鉛直方向と交差するようにして形成(配置)されているとともに、各円筒流路部424a〜424dが鉛直方向において千鳥状となるように配置されている(図7、図9)。円筒流路部404についても円筒流路部424と同様に、流路の軸線が鉛直方向と交差するようにして形成(配置)されている。すなわち、円筒流路部404、424は、インクカートリッジ1の底面に対して平行に厚さ方向(Y方向)に横断し、かつ、それぞれ鉛直方向(高さ方向、Z方向)に異なる高さで配置されている。本実施例において、第1トラップ流路420は、4つの円筒流路部と導入部421および導出部422の鉛直方向の位置が、高い方から順に、導入部421、第4円筒流路部424b、第3円筒流路部424a、第5円筒流路部424c、第6円筒流路部424d、導出部422となるように形成されている(図7)。また、第2トラップ流路400は、下流側の第2円筒流路部404bの鉛直方向の高さが、上流側の第1円筒流路部404aより高くなるように形成されている。
接続流路部405、425は、インクカートリッジ1の背面側もしくは正面側において異なる2つの円筒流路部404、424の端部をそれぞれ接続することによって、第1トラップ流路420は、導入部421から導出部422にわたる1つの連通路が形成され、第2トラップ流路400は、導入部401から導出部402にわたる1つの連通路が形成される。具体的には、第1トラップ流路420は、インクカートリッジの正面側(図7に示す側)において、第3円筒流路部424aの一端と第4円筒流路部424bの一端が第3接続流路部425bによって接続されている。また、第5円筒流路部424cの一端と第6円筒流路部424dが第5接続流路部425dによって接続されている。第1トラップ流路420は、インクカートリッジの背面側(図8に示す側)において、導入部421と第3円筒流路部424aの他端が第2接続流路部425aによって接続されている。また、第4円筒流路部424bの他端と第5円筒流路部424cの他端が第4接続流路部425cによって接続されている。また、第6円筒流路部424dの他端と導出部422が第6接続流路部425eによって接続されている。これにより、第1トラップ流路420は、導入部421から導出部422に向かって折り返し階段状(あるいは螺旋状)に形成される。
第2トラップ流路400は、インクカートリッジの正面側(図7に示す側)において、第1円筒流路部404aの一端に導入部401が形成され、第2円筒流路部404bの一端に導出部402が形成されている。また、第2トラップ流路400は、インクカートリッジの背面側(図8に示す側)において、第1円筒流路部404aの他端と第2円筒流路部404bの他端が第1接続流路部405によって接続されている。これにより、第2トラップ流路400は、導入部401から導出部402に向かって折り返し階段状(あるいは螺旋状)に形成される。
さらに、第1トラップ流路420は、気泡が重力方向に移動しなければ下流側に移動できない配置および流路構成を有している。具体的には、図7および図9に示すように、インクカートリッジ1がインクジェットプリンタに装着される姿勢、すなわち、インクカートリッジ1の底部1bが下側を向く姿勢の場合において、第1トラップ流路420は、上流側の第1トラップ流路前室410より低い位置に配置されている。また、第1トラップ流路420は、下流側の検出部30より高い位置に配置されている。そのため、第1トラップ流路前室410の内部に気泡が存在する場合であっても、気泡は重力方向に移動しなければ第1トラップ流路420の導入部421に移動することができない。また、第1トラップ流路420の内部に気泡が存在する場合であっても、気泡は重力方向に移動しなければさらに下流側の検出部30に移動することができない。
第1トラップ流路420は、インクカートリッジ1がインクジェットプリンタに装着される姿勢以外の姿勢、すなわち、インクカートリッジ1の底部1bが下側を向く姿勢以外の姿勢の場合であっても、気泡が重力方向に移動しなければ下流側に移動できない流路構成を有している。具体的には、第1トラップ流路420は、第3接続流路部425bと第5接続流路部425dが平行に形成されるとともに、内部を流通するインクが互いに反対方向に移動するように形成されている(図7)。そのため、第3接続流路部425bと第5接続流路部425dのいずれか一方の流路が重力方向と反対の方向である場合は、他方が重力方向となるため、いずれの場合においても、第1トラップ流路420内の気泡は重力方向に移動しなければ下流側に移動することができない。
この構成を有する第1トラップ流路420によれば、インクカートリッジ1の姿勢によらず気泡の移動(流動)を抑制または防止することができる。すなわち、インクカートリッジ1がインクジェットプリンタに装着される姿勢においては、第1トラップ流路前室410の最下部に位置する第1トラップ流路420の導入部421は空気に晒されないため、第1トラップ流路420の内部において気泡が生じない。一方、その他の姿勢において、第1トラップ流路420内に気泡が混入した場合においても、気泡が重力方向に移動しなければ下流側に移動できない流路構成により気泡の移動が抑制または防止される。よって、本発明に係る第1トラップ流路420によれば、インクカートリッジ1の姿勢によらず、第1トラップ流路420から下流側への気泡Bの移動を抑制または防止することができる。
第2トラップ流路400は、インクカートリッジ1がインクジェットプリンタに装着される姿勢において、上流側のエンド室390より低い位置に配置されている(図7)。よって、インクカートリッジ1がインクジェットプリンタに装着される姿勢において、エンド室390の内部に気泡が存在する場合であっても、気泡は重力方向に移動しなければ第1トラップ流路420の導入部421に移動することができない。すなわち、第2トラップ流路400によれば、インクカートリッジ1がインクジェットプリンタに装着される姿勢において、気泡の移動(流動)を抑制または防止することができる。
第1トラップ流路前室410は、図7に示すように、カートリッジ本体10の左側面側において、エンド室390と第1トラップ流路420に挟まれた位置に形成されている。第1トラップ流路前室410は、右側面側に導入部としての第2トラップ流路400が形成され、第2トラップ流路400を介してエンド室390と連通している。また、第1トラップ流路前室410は、底部に形成された導入部421を介して第1トラップ流路420と連通している。第1トラップ流路420の導入部421は、第1トラップ流路前室410の下流側の開口部であるため、第1トラップ流路前室410の導出部にも該当する。第1トラップ流路前室410は、上流側のエンド室390の下部に配置され、エンド室390の底部と第1トラップ流路前室410の上部が同じリブ10aにより形成されている。エンド室390は、複数ある液体収容室のうち、第1トラップ流路前室410に隣接して連通する隣接液体収容室に該当する。よって、第1トラップ流路前室410は、隣接液体収容室の下部に配置されているため、インクカートリッジ1の底部1bが下側を向く姿勢の場合において、隣接するエンド室390の内部の気泡は、重力方向に移動しなければ、第1トラップ流路前室410に移動することができない。そのため、隣接液体収容室から第1トラップ流路前室410への気泡の移動は抑制される。なお、仮に、エンド室390の内部の気泡が第1トラップ流路前室410の方向に移動した場合であっても、第1トラップ流路前室410の導入部には第2トラップ流路400が形成されているため、第2トラップ流路400の内部で気泡は滞留し、第1トラップ流路前室410の内部への気泡の移動は抑制される。さらに、第1トラップ流路前室410は、第1トラップ流路420の鉛直方向上部に配置されているため、仮に、第1トラップ流路前室410の内部に気泡が混入した場合であっても、気泡は重力方向に移動しなければ、下流側の第1トラップ流路420に移動することができないため、第1トラップ流路前室410から第1トラップ流路420への気泡の移動は抑制される。
図10は第1トラップ流路前室の特徴を説明するための説明図である。第1トラップ流路前室410は、隣接するエンド室390の容積より小さい容積を有している。これにより、図10(a)に示すように、カートリッジ本体10に対するインクの充填時において、液体供給部50から充填されるインクが、少なくともインク収容部の1つ、例えば、エンド室390の一部に供給された場合には、第1トラップ流路前室410の内部はインクで充満した状態となる。すなわち、カートリッジ本体10は、第1トラップ流路前室410を備えることによって、カートリッジ本体10に充填されたインクが最小の充填状態であっても、第1トラップ流路420の上流側で連通する部屋(第1トラップ流路前室410)を気泡が混入されていない状態とすることができる。具体的には、図10(b)に示すように、第1トラップ流路前室410を備えることにより、カートリッジ本体10が最小の充填状態であっても、インクカートリッジ1の姿勢によらず、第1トラップ流路420の上流側の部屋(第1トラップ流路前室410)をインクが充満した状態とすることができる。これにより、上流側の部屋(第1トラップ流路前室410)から第1トラップ流路420への気泡の流入を抑制することができる。なお、最小の充填状態とは、例えば、インクカートリッジ1を出荷する際に、インクの充填量について複数の種類がある場合における、最も充填量の少ない状態である。
第1トラップ流路前室410の上方を区画するリブ10aは、左側面側になるに従い、第1トラップ流路前室410の内部の高さが高くなるように形成されている。これにより、仮に、第1トラップ流路前室410の内部に気泡が存在する場合であっても、気泡は導出部402や導入部421とは反対側の左側面方向に移動し、第1トラップ流路前室410の内部に滞留させることができる。また、第1トラップ流路前室410を区画するリブ10aは、インク収容部の他の第1タンク室370、第2タンク室380、エンド室390を区画するリブ10aより厚さが厚くなるように形成されている。これにより、第1トラップ流路前室410内部のインクの蒸発を抑制することができる。
気泡分離室430は、第1トラップ流路420の下側および右側面側で隣接するように形成され、鉛直方向(Z方向)において、検出部30より高い位置に配置されている。気泡分離室430は、導出部422により上流側の第1トラップ流路420と連通し、連通孔311により下流側の検出部30と連通している。気泡分離室430は、第1トラップ流路420から流入したインクに含まれる気泡を分離し、検出部30に対する気泡の移動を抑制または防止する。具体的には、気泡分離室430は、検出部30より上方(Z方向)に形成されている第1トラップ流路420の導出部422から導入されるインクを、導出部422より下方に形成されている連通孔311を介して検出部30へ導出する構成を備えている。この構成を備えることによって、第1トラップ流路420から気泡分離室430に流入した気泡を含有するインクは、気泡分離室430の上方に止まる気体成分(含有されている空気)と、気泡分離室430の内壁面を伝って下方へ移動する液体成分であるインクとに分離される。すなわち、気体と液体の比重の差を利用して、気泡分離室430の上面側で気泡が捕捉される。これにより、検出部30に気泡が進入し液体残量センサ31が誤検出する事態を抑制または防止することができる。誤検出とは、インクカートリッジ1にインクが残存しているにもかかわらず、気泡が検出部30に進入することによってインク切れを検出する場合や、インクカートリッジ1にインクが残存していないにもかかわらず、毛管作用によって空気と共にわずかに残留するインクが検出部30に吸引されてインク有りを検出する場合をいう。前者の場合には、インクが残存しているにもかかわらず印刷を実行することができず、後者の場合にはインクが残存していないにもかかわらず印刷を実行して印刷ヘッドの損傷を招く可能性がある。
インクは、インクカートリッジ1の製造時には、図6において破線ML1で液面(気液界面)を概念的に示すように、第1タンク室370まで充填されていてもよいし、また、第2タンク室380やエンド室390まで充填されていてもよい。インクカートリッジ1の内部のインクが、インクジェットプリンタによって消費されていくと、インクは、下流側に移動し、大気解放孔100を介して上流側から大気がインクカートリッジ1の内部に流入してくる。この結果、液面は鉛直方向(下方)に下がりインクの消費が進むと、破線ML2で液面を概念的に表す図6に示すように、気液界面が検出部30にまで到達する。
検出部30に対する大気の導入は液体残量センサ31により、インク切れとして検出される。すなわち、既述のように、液体残量センサ31は、検出部30に気体が存在する場合と存在しない場合(液体で満たされている場合と気泡が混入している場合)とでは、異なる信号波形(共振振動数)の検出結果信号を出力する。検出結果信号に基づきインク切れが検出されると、インクジェットプリンタは、インクカートリッジ1において、検出部30より下流側(バッファ室450等)に存在するインクが完全に消費されるより前の段階で、印刷を停止し、ユーザにインク切れを通知する。完全にインクが切れて、さらに印刷を行うと印刷ヘッドに空気が混入し、いわゆる空撃ちによって印刷ヘッドに不具合が発生する虞があるためである。
第1流動路440は、図8に示すように、カートリッジ本体10の背面側に形成され、上流端が連通孔312を介して検出部30に連通し、下流端が連通孔441を介してバッファ室450に連通している。バッファ室450は、図7に示すように、カートリッジ本体10の正面側のうち、中央部付近にそれぞれ形成されている。バッファ室450の内部には、撹拌球が配置されていてもよく、その場合には、インクの流動やカートリッジの主走査方向への往復動に伴う撹拌球の動作により、バッファ室450内のインクを撹拌して、インクの一部成分の沈降を防止し、均一性を確保することができる。バッファ室450は、途中に流動路を挟むことなく、連通孔452により直接的に背面側の差圧弁収容室40aと連通している。これによりバッファ室450から液体供給部50までの空間を少なくし、撹拌後のインクが滞留して沈降状態になる可能性を低減することができる。差圧弁収容室40aでは、差圧弁40により、差圧弁収容室40aより下流側のインクの圧力は、上流側のインクの圧力より低く調整され、下流側のインクが負圧となるようにされる。
第2流動路460は、図7に示すように、カートリッジ本体10の正面側のうち、中央部付近にそれぞれ形成されている。上流端が連通孔453を介して差圧弁収容室40aに連通し、下流端が連通孔462を介して、バネ座43に形成された流路と連通している。バネ座43に形成された流路は、連通孔464を介して液体供給部50の第3流動路470と連通している。
なお、上述した、導入部401、導入部421、連通孔311、連通孔452は、それぞれ、エンド室390、第1トラップ流路前室410、気泡分離室430、バッファ室450の底面側に形成されている。これは、底面側が鉛直下方となる向きでインクカートリッジ1をキャリッジ200に装着した際に、各連通孔をエンド室390、第1トラップ流路前室410、気泡分離室430、バッファ室450の鉛直下側に位置させることを目的としている。かかる構成とすることで、インクが消費されて残余量が減少した際に、これらの空間にインクを無駄に残留させることを抑制できる。また、気泡は鉛直上方へ移動するため、下流側への進入を抑制することができる。
A2−3.インク収容部の具体的構成:
つづいて、インク収容部の具体的構成について説明する。図7に示すように、第1タンク室370、第2タンク室380およびエンド室390は、カートリッジ本体10の正面側に形成されている。図7において、第1タンク室370、第2タンク室380およびエンド室390は、それぞれ、シングルハッチング及びクロスハッチングで示されている。第1タンク室370は、カートリッジ本体10の上方の右側面側に形成され、第2タンク室380の上部と隣接し、エンド室390の右側面側と隣接している。第2タンク室380は、カートリッジ本体10の下側に形成され、第1タンク室370の下部と隣接し、エンド室390の下方に配置されている。エンド室390は、カートリッジ本体10の上方の左側面側に形成され、第1タンク室370の左側面と隣接し、第2タンク室380の上方に配置されている。
第1収容室間連通路374は、図8に示すように、カートリッジ本体10の背面側の右側面付近に形成されている。第1収容室間連通路374は、第1タンク室370と第2タンク室380とを連通する連通路であり、上流端が第1タンク室370と連通され、下流端が第2タンク室380とを連通されている。第2収容室間連通路382は、図8に示すように、カートリッジ本体10の背面側の中央部付近に形成されている。第2収容室間連通路382は、第2タンク室380とエンド室390とを連通する連絡路であり、上流端が第2タンク室380と連通され、下流端がエンド室390と連通されている。
なお、上述した第1収容室間連通路374および第2収容室間連通路382のそれぞれの上流端は、それぞれ、第1タンク室370、第2タンク室380の底面側に形成されている。これは、既述の導入部401、導入部421、連通孔311、連通孔452と同様に、インクが消費されて残余量が減少した際に、これらの空間にインクを無駄に残留させることを抑制でき、また、気泡の下流側への進入を抑制できるためである。
A2−4.大気導入部の具体的構成:
最後に、大気導入部の具体的構成について説明する。大気導入部のうち、導入路310および気液分離室70aは、図8に示すように、カートリッジ本体10の背面側のうち右側面側にそれぞれ形成されている。連通孔102は、導入路310の上流端と大気解放孔100とを連通する。導入路310の下流端は、気液分離室70aの側壁を貫通して気液分離室70aと連通している。
図6に示す大気導入部の第1空気室320〜第5空気室360は、詳述すると、カートリッジ本体10の正面側に配置された第1空気室320、第3空気室340および第4空気室350(図7)と、カートリッジ本体10の背面側に配置された第2空気室330および第5空気室360(図8)とから構成され、各空間は上流から符合の順に直列に一本の流路を形成している。第1空気室320および第2空気室330は、カートリッジ本体10の上面1aの直下に、第3空気室340および第4空気室350は、カートリッジ本体10の右側面1cの直左に形成されている。連通孔322は、気液分離室70aと第1空気室320とを連通する。連通孔321、341は、第1空気室320と第2空気室330との間、第2空気室330と第3空気室340との間を、それぞれ連通する。第3空気室340と第4空気室350との間は、第3空気室340と第4空気室350を隔てるリブに形成された切欠342により連通している。連通孔351、372は、第4空気室350と第5空気室360との間、第5空気室360と第1タンク室370との間を、それぞれ連通する。このように、複数に区画され、立体的に構成された第1空気室320〜第5空気室360を設けることで、第1タンク室370から気液分離室70aへ、インクが逆流することを抑制することができる。
第4空気室350は、インク収容部を構成する複数の液体収容室、すなわち、第1タンク室370、第2タンク室380およびエンド室390のうちの最も容積の大きい部屋の容積の30%程度の容積を備えている。そのため、インク収容部に収容されているインクが逆流しても第4空気室350に収容することができ、大気解放孔100からインクが流出することを抑制することができる。具体的には、インクカートリッジ1は、インク収容部にインクが充填されると、内部のインクの溶存空気を抑制するため、カートリッジ本体10の内部に負圧を蓄積した状態で封止フィルム90により封止される。しかし、インクカートリッジ1の使用時に封止フィルム90を剥離することにより、大気解放孔100が外部と連通するため、インク収容部内のインクが、大気解放孔100側に逆流することがある。逆流するインクの量は、最大であっても、概ね、インク収容部を構成する複数の液体収容室のうちの最も容積の大きい部屋の容積の30%程度であるため、逆流するインクを収容可能な容積を有する第4空気室350を備えることで、逆流したインクは第4空気室350に収容され、第4空気室350より上流側への移動を抑制することができる。
以上説明したように、本実施例に係るインクカートリッジによれば、インク収容部および第1トラップ流路420と連通し、隣接液体収容室の容積より小さい容積を有する第1トラップ流路前室410を備えているので、検出部30を備える液体収容体において、検出部30への気泡の流入を抑制または防止することができる。具体的には、第1トラップ流路前室410が隣接するエンド室390の容積より小さい容積を有することで、カートリッジ本体10に対するインクの充填時において、液体供給部50から充填されるインクが、少なくともインク収容部の一部に供給された場合には、第1トラップ流路前室410の内部はインクで充満した状態となる。よって、第1トラップ流路420の上流側で連通する部屋(第1トラップ流路前室410)を気泡が混入されていない状態とすることができ、上流側の部屋(第1トラップ流路前室410)から第1トラップ流路420への気泡の流入を抑制することができる。この結果、検出部30に気泡が進入することによって発生するインク量検出の誤検出を抑制または防止することができる。
本実施例に係るインクカートリッジによれば、第1トラップ流路前室410は、隣接液体収容室であるエンド室390の鉛直方向下部に配置されているため、隣接液体収容室から第1トラップ流路前室410への気泡の移動を抑制または防止することができる。具体的には、インクカートリッジ1の底部1bが下側を向く姿勢の場合において、エンド室390の内部の気泡は、重力方向に移動しなければ、第1トラップ流路前室410に移動することができないため、隣接液体収容室から第1トラップ流路前室410への気泡の移動は抑制される。また、第1トラップ流路前室410は、第1トラップ流路420の鉛直方向上部に配置されていているため、第1トラップ流路前室410の内部の気泡が第1トラップ流路420へ移動することを抑制または防止することができる。具体的には、第1トラップ流路前室410の内部に気泡が混入した場合であっても、気泡は重力方向に移動しなければ、下流側の第1トラップ流路420に移動することができないため、第1トラップ流路前室410から第1トラップ流路420への気泡の移動は抑制される。
本実施例に係るインクカートリッジによれば、第1トラップ流路前室410は導入部に第2トラップ流路400を有しているため、隣接液体収容室であるエンド室390から第1トラップ流路前室410への気泡の移動をより抑制または防止することができる。具体的には、第2トラップ流路400は、鉛直方向(Z方向)と交差する方向で折り返されたコの字状の流路を含み、内部において気泡を滞留させるように形成されている。そのため、エンド室390の導入部401から第2トラップ流路400に気泡が流入した場合であっても、気泡は内部で滞留するため、下流側の第1トラップ流路前室410への気泡の移動は抑制される。
本実施例に係るインクカートリッジによれば、第1トラップ流路420は、検出部30より鉛直方向に高い位置に配置されているため、第1トラップ流路420の内部に気泡が存在した場合であっても、気泡は重力方向に移動しなければ検出部30に移動できない。よって、上流側の第1トラップ流路420から、検出部30への気泡の流入が抑制または防止することができる。
本実施例に係るインクカートリッジによれば、気泡分離室430は、検出部30よりも鉛直方向に高い位置に配置されているため、気泡分離室430の内部の気泡は重力方向に移動しなければ検出部30に移動できない。よって、気泡分離室430から検出部30への気泡の流入を抑制または防止することができる。
本実施例に係るインクカートリッジによれば、第1トラップ流路前室410を区画するリブ10aの厚さは、液体収容室を区画するリブ10aの厚さ以上であるため、第1トラップ流路前室410の内部からインクの蒸発を抑制することができる。
本実施例に係るインクカートリッジによれば、液体収容室のうち、容積の最も大きい液体収容室の容積に対して、30%程度の容積を有する第4空気室350を備えているため、インク収容部内のインクが逆流した場合であっても、逆流したインクを第4空気室350に収容することができ、インクが大気解放孔100から流出することを抑制できる。
B.その他の実施例:
(1)上記実施例では、第1トラップ流路前室410は、導入部に第2トラップ流路400を備える例を用いて説明したが、第1トラップ流路前室410は導入部に第2トラップ流路400を備えていなくても良い。この場合であっても、例えば、第1トラップ流路前室410の配置や、導入部にメニスカスが形成されることにより、エンド室390から第1トラップ流路前室410への気泡の移動の抑制または防止を行うことができる。また、上記実施例では、第1トラップ流路前室410を備える例を用いて説明したが、第1トラップ流路前室410を備えていなくても、第1トラップ流路420の配置や流路構造、気泡分離室430の配置や機能などにより、エンド室390から第1トラップ流路420への気泡の移動や、第1トラップ流路420から気泡分離室430への気泡の移動、気泡分離室430から検出部30への気泡の移動が抑制されているため、液体収容室から検出部30への気泡の移動を抑制することができる。
(2)上記実施例では、第1トラップ流路420は、4つの円筒流路部を備え、第2トラップ流路400は、2つの円筒流路部を備える例を用いて説明したが、円筒流路部の数には限定はないため、これ以外の数の円筒流路部や接続流路部を備えても良い。この場合であっても、第1トラップ流路420や第2トラップ流路400は気泡を内部に滞留させることができるため、下流側への気泡の移動の抑制または防止ができる。
(3)上記実施例では、第1トラップ流路420および第2トラップ流路400は、外表面フィルム60およびフィルム80の貼付によって完成されるが、螺旋形状の溝を有する別部材をカートリッジ本体10に挿入またはねじ込むことによって螺旋状の第2トラップ流路400および第1トラップ流路420を形成しても良い。この場合には、外部からの圧力変動、温度変化の影響を受けやすいフィルムを用いることなく第2トラップ流路400および第1トラップ流路420を形成することができるので、外部要因に起因する気泡の発生、移動を抑制または防止することができる。
(4)上記実施例では液体噴射装置としてインクジェットプリンタを例にとって説明したが、インク以外の他の液体(機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体を含む)や液体以外の流体(流体として噴射できる固体など)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置としての構成も可能である。具体的には、例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料の液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する粉体噴射式記録装置であってもよい。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。