JP2010213689A - 新規な核酸合成用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】分子生物学研究等の分野において実施される核酸の増幅、特にサイズの大きなターゲット遺伝子において有用性の高い、新規な核酸合成方法ならびに組成物を提供する。
【解決手段】DNAポリメラーゼを用いた核酸合成用組成物であって、該DNAポリメラーゼに加えて、ベタイン(トリメチルグリシン)およびdUTPアーゼ活性を有するポリペプチドを有することを特徴とする核酸合成用組成物および、これらの存在下で核酸合成反応を行う核酸の合成方法、に関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、主に分子生物学の分野において、DNAポリメラーゼを用いた鋳型核酸からDNAの合成を行う際に有用な新規組成物及び方法に関するものであり、特にはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に有用な核酸合成用組成物及び核酸合成方法に関する。
DNAポリメラーゼを用いた鋳型核酸を用いたDNAの合成は、分子生物学の分野において、シーケンシング法や核酸増幅法等、様々な方法に利用・応用されている。中でも、PCR法に代表される核酸増幅法は、研究分野のみならず、遺伝子診断、親子鑑定といった法医学分野、あるいは、食品や環境中の微生物検査等において、既に実用化されている。
PCR法による遺伝子増幅方法は、標的核酸、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸、一対のプライマー及びDNAポリメラーゼの存在下で、変性、アニーリング、伸長からなるサイクルを25〜40サイクル繰り返すことにより、上記一対のプライマーで挟まれる標的核酸の領域を指数関数的に増幅させる方法である。
ここで、PCR法に用いるDNAポリメラーゼとしては、真正細菌由来のPolI型酵素(「ファミリーA」に属する。)とアーキア(超高熱始原菌)由来のα型酵素(「ファミリーB」に属する。)がある。一般的に、TaqやTthに代表されるPolI型酵素は、DNA合成速度が比較的速く、プロセッシビティ(Processivity;DNAポリメラーゼが基質DNAに結合してから離れるまでに合成されるヌクレオチドの数である)に優れる反面、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性が無いことからDNA合成時の正確性が低く、熱安定性が低いという特徴がある。また、誤って取り込んだ塩基を取り除くことができないため、一般的にPCR反応における増幅効率が低く、増幅可能なターゲットの長さも5kb程度が限界となっている。
一方、PolI型酵素におけるこれらの短所を補う方法として、PolI型酵素に微量のα型酵素を添加する技術が知れられている(特許文献1)。この方法により、PCR反応における増幅効率が向上し、かつ比較的長いターゲットの増幅が可能になったものの、ターゲットの配列を正確に増幅する「正確性」の点においては、PolI型酵素単独の場合とほとんど大差はなく、正確性を要するクローニング等の用途には使用できないといった問題点が依然として存在している。これに対し、KODやPfuに代表されるα型酵素は、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を持つことからDNA合成時の正確性が高く、さらに、熱安定性に優れるという特徴がある。さらに、KOD DNAポリメラーゼはα型酵素でありながら、DNA合成速度が速く、プロセッシビティにも優れるため、高正確性PCR酵素として、現在広く利用されている。
しかしながら、その一方で、特にα型酵素の場合は、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有することから非特異的増幅が生じやすく、またdCTP(2’−deoxycytidine 5’−triphosphate)の脱アミノ化によって生じるdUTP(2’−Deoxyuridine,5’−Triphosphate)を取り込むとそこで反応が停止してしまうことから、ターゲットDNAの増幅量が低下したり、長いターゲットDNAの増幅ができなくなったりする等の問題があった。
これらの短所に対して、これまでに、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を抑制する抗体を用いたホットスタート法(特許文献2)や、非特異的増幅を抑える効果のあるバッファー組成への改良(特許文献3)にて非特異増幅が抑制できることが報告されている。さらに、dUTP取り込みによる合成反応停止については、特許文献4や非特許文献1に示されるように、PCR反応中にdUTPase(dUTP pyrophosphatase)を添加することにより、dUTPを分解し、合成反応停止を抑制することによって、増幅効率を高め、あるいは増幅可能なターゲット長を向上させることができることが知られている。
さらに、α型酵素に限らず、PCRパフォーマンスの向上を目指して、様々な添加剤が検討され、有効であることが報告されている。例えば、化学物質性の添加剤としては、DMSO、ベタイン(トリメチルグリシン)等のTm降下剤や、タンパク性の添加剤として、SSB(Single Strand Binding Protein)、PCNA(Proliferating cell nuclear antigen)、RFCS(replication factor C small subunit)、RFCL(replication factor C large subunit)等が知られている。これらの添加剤は、鋳型DNAとPCRプライマー、あるいは、鋳型DNAとDNAポリメラーゼの結合を促進させることによって、ポリメラーゼ反応を亢進させるものである
しかしながら、これらの添加剤を加えても、ターゲットDNAの長さやサンプルの形態によっては、ターゲットDNAの増幅ができない、あるいは、十分量の増幅産物が得られない場合がある。例えば、ヒトのゲノムDNAを鋳型に、30kbを超える長さのターゲットを正確に増幅することは、これまでの技術では不可能であり、特にファミリーBに属するDNAポリメラーゼを用いる場合に、汎用的に核酸増幅に関して優れた系の確立が求められている。
米国特許第5,436,149号公報 特許第3968606号公報 特許公開2003−144169公報 特表2002−505572号公報
Proc.Natl.Acd.Sci.USA 99,596−601(2002) J.Biol.Chem.273,6024−6029
上述したように、核酸の増幅に関しては様々な関連技術が報告されているものの、DNA増幅効率及び増幅可能なターゲットDNA長には限界があり、更なるDNA合成活性の向上、すなわちPCRパフォーマンスの向上が求められている。
本発明者らは、DNAポリメラーゼ、特にKOD DNAポリメラーゼをはじめとする、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼによるDNA合成活性を更に改良するため、その組成の改良に関して鋭意検討を行った結果、ベタイン(トリメチルグリシン)存在下に、Sulfolobus isladicus rod−shaped virus(SIRV)やThermococcus Kodakaraensis KOD1株等のアーキア由来のdUTPaseを添加することにより、PCRパフォーマンスを飛躍的に向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明によれば、以下が提供される。
(1)アーキア由来のDNAポリメラーゼ、dUTPアーゼ活性を有するポリペプチド、及びベタイン(トリメチルグリシン)を含有することを特徴とする、核酸合成用組成物。
(2)DNAポリメラーゼがファミリーBに属するDNAポリメラーゼである、(1)に記載の核酸合成用組成物。
(3)DNAポリメラーゼがKOD DNAポリメラーゼである(2)に記載の核酸合成用組成物。
(4)dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドがアーキア由来のdUTPアーゼ活性を有すポリペプチドである、(1)〜(3)のいずれかに記載の核酸合成用組成物。
(5)dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドがSIRV(Sulfolobus islandicus rod−shaped virus)由来、もしくはThermococcus Kodakaraensis由来のdUTPアーゼ活性を有するポリペプチドである、(4)に記載の核酸合成用組成物。
(6)dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドが以下の(a)〜(c)のいずれかである、(5)に記載の核酸合成用組成物。
(a)配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(b)配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(c)配列番号1又は2のアミノ酸配列において、1ないしは数個のアミノ酸が欠失、挿入、付加、もしくは置換したアミノ酸配列からなり、かつdUTPアーゼ活性を有するポリペプチド
(7)アーキア由来のDNAポリメラーゼを用いた核酸合成方法であって、dUTPアーゼ活性を有するポリペプチド及びベタイン(トリメチルグリシン)の存在下で行うことを特徴とする、核酸合成方法。
(8)DNAポリメラーゼがファミリーBに属するDNAポリメラーゼである、(7)に記載の核酸合成方法。
(9)DNAポリメラーゼがKOD DNAポリメラーゼである、(8)に記載の核酸合成方法。
(10)dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドがアーキア由来のdUTPアーゼ活性を有するポリペプチドである、(7)〜(9)のいずれかに記載の核酸合成方法。
(11)dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドが、SIRV(Sulfolobus islandicus rod−shaped virus)由来、もしくはThermococcus Kodakaraensis由来のdUTPアーゼ活性を有するポリペプチドである、(10)に記載の核酸合成方法。
(12)dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドが以下の(d)〜(f)のいずれかである、(10)に記載の核酸合成方法。
(d)配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(e)配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド
(f)配列番号1又は2のアミノ酸配列において、1ないしは数個のアミノ酸が欠失、挿入、付加、もしくは置換したアミノ酸配列からなり、かつdUTPアーゼ活性を有するポリペプチド
本発明により、DNAポリメラーゼを用いた核酸の合成方法、特にPCR方法において、PCRパフォーマンスを飛躍的に向上させることができる。すなわち、本発明によって、PCR増幅量の増大、あるいは、従来のDNAポリメラーゼ組成物では難しいとされてきたDNAの長断片の増幅が可能になる。
特に、KOD DNAポリメラーゼに代表されるようなファミリーBに属するDNAポリメラーゼを用いる場合においては、DNA増幅の高い正確性、つまり極めて低い誤塩基取り込み(エラー)率を保ちながら、PCR産物量を増大させ、あるいは増幅可能なターゲット遺伝子の鎖長を向上させることができる。
実施例3におけるPCR産物のアガロースゲル電気泳動を行った結果を示す図である。 実施例4におけるPCR産物のアガロースゲル電気泳動を行った結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一の側面は、DNAポリメラーゼ、dUTPアーゼ活性を有するポリペプチド及びベタインを含有する核酸合成用組成物である。
本発明において用いられるDNAポリメラーゼの種類は、いずれのDNAポリメラーゼであっても本発明の効果を奏し、特に限定されるものではないが、アーキア(始原菌)由来であることが好ましい。アーキアの種類としては、Thermococcus属、Pyrococcus属、Sulfolobus属、Aeropyrus属、などが例示される。アーキア由来のDNAポリメラーゼには、DNAの3’端から5’端方向にDNA鎖を端から消化し、削る活性(3’−5’エキソヌクレアーゼ活性(DNA校正活性))を有するものがあり、高い正確性をもってDNA合成を行うため、これらを用いるのが好ましい。これらのDNAポリメラーゼは、さらに、dUTPの取り込みを検知して、そこでポリメラーゼ反応によるDNA鎖の伸長を停止させる機構を備えている。
アーキア由来のDNAポリメラーゼにおいて、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼを使用することがより好ましい。ファミリーB(α型)のDNAポリメラーゼとして、現在の市場にて購入できるものは、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡績)、Pfu DNAポリメラーゼ(ストラタジーンなど)、Pwo DNAポリメラーゼ(ロシュ・アプライド・サイエンス)、Ultima DNAポリメラーゼ(インビトロジェン)、PrimeSTAR DNAポリメラーゼ(タカラバイオ)などが例示される。なかでも、KOD DNAポリメラーゼがより好ましいものであるが、本発明で使用するDNAポリメラーゼは、dUTPの取り込みを検知して、そこでポリメラーゼ反応によるDNA鎖の伸長を停止させる機構を持つDNAポリメラーゼであれば、それらのいずれにおいても適用することが可能であり、特に限定されるものではない。
本発明は、dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドを含有することを特徴とする。dUTPアーゼ活性とは、dUTPにおけるリン酸結合を加水分解する酵素活性を指す。dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドの存在により、核酸合成反応中にdUTPが取り込まれることにより生じる合成反応停止を阻止することが可能となる。
dUTPアーゼの活性測定法としては、dUTPアーゼが触媒するdUTP→dUMP+PPi(ピロリン酸)の反応において、その単位時間あたりに減少するdUTPの量を測定する方法や、あるいは生成されるピロリン酸を測定する方法が挙げられる。
本明細書では、後者(ピロリン酸の定量)を具体的に以下のとおり行った。
活性測定したいdUTPアーゼをdUTP溶液(10mM dUTP、50mMトリス−塩酸バッファー(pH8.0)、5mM MgCl)に添加し、80℃で1時間反応させた後、生成されたピロリン酸量をピロリン酸定量試薬(Pyrophosphatase reagent:Sigma社)を用いて定量する。活性は、「80℃、1時間の反応で、0.1μmolのピロリン酸を生成する酵素量を1unit」と定義する。
dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドであれば、いずれの由来のものであっても使用することができるが、アーキア由来のdUTPアーゼ活性を有するポリペプチドを好適に用いることができる。具体的には、Sulfolobus isladicus rod−shaped virus(SIRV)等のアーキアウイルス由来のdUTPaseや、Thermococcus Kodakaraensis KOD1株やPyrococcus furiosus等のアーキア由来のdUTPaseが挙げられる。
より具体的には、Sulfolobus isladicus rod−shaped virus由来のdUTPase(SIRV-dUTPase)としては、配列番号1に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドが好ましい。あるいは、配列番号1に記載のアミノ酸配列において1ないしは数個のアミノ酸が欠失、挿入、付加、もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつdUTPアーゼ活性を有するものが好ましい。即ち該ポリペプチドは、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、公知の技術方法による特定部位への変異導入により改変されたものであってもよい。別の側面から見ると、配列番号1に記載のアミノ酸配列と70%以上のホモロジーを有するものであることが好ましい。また、より好ましくは80%以上のホモロジーを有するもの、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上のホモロジーを有するものが挙げられる。
また、Thermococcus Kodakaraensis KOD1株由来のdUTPase(KOD-dUTPase)としては、配列番号2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドが好ましい。あるいは、配列番号2に記載のアミノ酸配列において1ないしは数個のアミノ酸が欠失、挿入、付加、もしくは置換されたアミノ酸配列からなり、かつdUTPアーゼ活性を有するものが好ましい。即ち該ポリペプチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列において、公知の技術方法による特定部位への変異導入により改変されたものであってもよい。別の側面から見ると、配列番号2に記載のアミノ酸配列と70%以上のホモロジーを有するものであることが好ましい。また、より好ましくは80%以上のホモロジーを有するもの、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上のホモロジーを有するものである。
添加するdUTPアーゼの量は、核酸合成反応組成液中の終濃度にして、下限として好ましい濃度は0.001ng/μl、さらに好ましくは0.005ng/μl、より好ましくは0.01ng/μlである。上限として好ましい濃度は10ng/μl、さらに好ましくは6ng/μl、より好ましくは4ng/μlである。下限以下であれば、核酸合成のパフォーマンスの向上の効果があまり見られず、上限以上であってもそれ以上の際立った核酸合成のパフォーマンスの向上の効果が見られなくなる。
本発明ではさらにベタインが用いられる。本発明において用いられるベタインとは、アミノ酸のアミノ基に 3つのメチル基が付いた化合物の総称であるが、本発明においては、トリメチルグリシン(分子式:C11NO)を指す名称として用いられる。ベタインは、アカザ科フダンソウ属の植物、テンサイ、その他にもキノコやサトウダイコン、エビ、カニなどに含まれている。添加するベタイン(トリメチルグリシン)の量は、核酸合成反応組成液中の終濃度にして、下限として好ましい濃度は0.1M、さらに好ましくは0.5M,より好ましくは1Mである。上限として好ましい濃度は5M、さらに好ましくは3M,より好ましくは2Mである。下限以下であれば、核酸合成反応のパフォーマンスの向上の効果が見られず、上限以上であってもそれ以上の際立った核酸合成のパフォーマンスの向上の効果が見られなくなる。加えて、5M以上ではベタインが溶解しにくくなる。
dUTPアーゼ活性を有するポリペプチド及びベタインの両者を組み合わせて用いることにより、その相乗効果によって、DNAの増幅効率、及び増幅可能なターゲットのサイズが飛躍的に向上する。特にdUTPアーゼおよびベタインをそれぞれ上記好ましい範囲の比率で組み合わせて用いることが好ましい。
本発明における核酸合成用組成物は、少なくとも以下の構成を含む。
(1)DNAポリメラーゼ
(2)ベタイン
(3)SIRV−dUTPaseもしくはKOD−dUTPase
あるいは、以下の構成を少なくとも含む。
(4)DNAポリメラーゼ
(5)ベタイン
(6)SIRV−dUTPase及びKOD−dUTPase
さらには以下の構成を含むこともある。
(7)DNAポリメラーゼ
(8)ベタイン
(9)配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号1もしくは配列番号2のアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸が欠失、挿入、付加、もしくは置換したアミノ酸配列からなり、かつdUTPアーゼ活性を有するポリペプチド
さらに、以下の構成を少なくとも含む核酸合成用組成物であってもよい。
(10)DNAポリメラーゼ
(11)ベタイン
(12)配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸が欠失、挿入、付加、もしくは置換したアミノ酸配列からなり、かつdUTPアーゼ活性を有するポリペプチド
本発明における核酸合成用組成物とは、DNAポリメラーゼを含むストック液(DNAポリメラーゼ保存溶液)を指す場合と、核酸合成反応のための反応溶液を指す場合とがある。
核酸合成用組成物がDNAポリメラーゼを含むストック液である場合は、さらにバッファーを加えることができる。反応バッファーを含む構成である場合、2倍から20倍程度の濃度、好ましくは2倍から10倍程度の濃度に濃縮されたストック液として含まれることが好ましい。この核酸合成用組成物を核酸合成反応に用いる場合は、核酸合成反応前に必要に応じて、反応バッファーや4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs;dATP、dCTP、dTTPおよびdGTPの混合物)溶液、さらには金属イオンや無機塩等を加えて、核酸合成反応を行うことができる。また、予めこれらの任意の構成要素を混合しておいて、核酸合成反応前にさらに必要な構成要素を加えて反応溶液を調製することもできる。これらの種類や濃度は当業者であれば適宜設定しうるものである。
核酸合成用組成物を核酸合成反応のための反応溶液を指すものとして用いる場合、核酸合成用組成物は、さらに必要により、DNAポリメラーゼ用の反応バッファー、基質である4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs;dATP、dCTP、dTTPおよびdGTPの混合物)溶液などを含む。反応バッファーとしては、トリス−塩酸緩衝液、トリス−硫酸緩衝液、トリシン緩衝液などが挙げられるが、トリス−硫酸緩衝液が特に好ましい。濃度としては、10〜200mMが好ましく、20〜100mMがより好ましい。pHとしては、7.0〜9.5の範囲が好ましく、7.5〜9.0の範囲がより好ましい。また、反応バッファー中には、1.0〜5mM、好ましくは1.5〜2.5mMの濃度でMg2+を含むことが好ましい。更には、KCl等の塩を含んでいてもよい。また、必要に応じて、界面活性剤その他の安定化剤を含んでいてもよい。
核酸合成用組成物が核酸合成反応のための反応溶液である場合、DNAポリメラーゼ、ベタイン、dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドは、予め混合された形状にて構成されていてもよいし、あるいは各々が別チューブに入っていて、反応を行う前に混合し核酸合成用組成物を作製する態様をとってもよい。
本発明における核酸合成反応とは、鋳型となる核酸に対し、相補的な配列を持つ核酸を配列依存的に合成する反応を指す。具体的には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法、Loop−Mediated Isothrmal Amplification(LAMP)法、Transcription Reverse Transcription Concerted Reaction(TRC)法、Nucleic Acid Sequence−Based Amplification(NASBA)法、Isothermal and Chimeric primer−initiated Amplification of Nucleic acids(ICAN)法などが例示される。これらのなかで、PCR法が好適に用いられる。
本発明の核酸合成用組成物は、これまで合成・増幅することのできなかったDNAの長い領域を、極めて正確に合成する点で顕著な効果を有する。例えば、dUTPアーゼ活性を有するポリペプチド及びベタインを有さない、KOD DNAポリメラーゼを含む核酸合成用組成物でPCR反応を行った場合、DNAを増幅できる断片長は6〜7kbpが限界である。また、ベタインのみを添加して、KOD DNAポリメラーゼを含む核酸合成用組成物でPCR反応を行った場合、約8.5kbp以上のDNAの合成は難しい。他方、dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドのみを添加する場合、特許文献4によれば、Pyrococcus fliosus由来のdUTPアーゼ活性を有するポリペプチドのみを用いて、ファミリーBに属するDNAポリメラーゼ(Pwo DNAポリメラーゼやPfu DNAポリメラーゼ)により増幅が確認されているDNAの断片長は6.2kbp前後であった。本発明者らがdUTPアーゼ活性を有するポリペプチドを添加してPCR反応を行った結果、6.2kbp以上を増幅することはできたが、10kbp以上のDNA断片を確実に増幅することはできなかった。DNAの合成の難しさは、増幅したい領域の鎖長が長くなるにしたがって、指数関数的に難しくなる。
しかしながら、本発明を用いた場合、32kbp前後であっても増幅することができる。しかも、アーキア由来のDNAポリメラーゼ、とりわけファミリーBに属するDNAポリメラーゼは校正活性を有するため、誤塩基の取り込みによるエラー率は、0.001〜0.01%であり、ファミリーAに属するDNAポリメラーゼに比べ、高い正確性を示す。したがって、本発明は、DNAの長断片を正確に増幅できるようになった点で極めて顕著な効果を奏するものである。
本発明の第二の側面は、dUTPアーゼ活性を有するポリペプチド及びベタイン(トリメチルグリシン)の存在下で、DNAポリメラーゼを用いた核酸合成を行うことを特徴とする核酸合成方法である。
dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドの濃度の好ましい範囲は、核酸合成反応溶液において、下限として好ましくは0.001ng/μlであり、より好ましくは0.005ng/μl、さらに好ましくは0.01ng/μlである。上限としては好ましくは10ng/μlであり、より好ましくは6ng/μl、さらに好ましくは4ng/μlである。下限以下であれば、核酸合成のパフォーマンスの向上の効果があまり見られず、上限以上であってもそれ以上の際立った核酸合成のパフォーマンスの向上の効果が見られなくなる。
ベタインの濃度の好ましい範囲は、核酸合成反応溶液において、下限として好ましくは0.1M、より好ましくは0.5M、さらに好ましくは1Mである。上限として好ましくは5M、より好ましくは3M、さらに好ましくは2Mである。下限以下であれば、核酸合成のパフォーマンスの向上の効果があまり見られず、上限以上であってもそれ以上の際立った核酸合成のパフォーマンスの向上の効果が見られなくなる。
本核酸合成方法は、さらに必要により、DNAポリメラーゼ用の反応バッファー、基質である4種類のデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTPs;dATP、dCTP、dTTPおよびdGTPの混合物)溶液などの存在下で行われる。反応バッファーとしては、トリス−塩酸緩衝液、トリス−硫酸緩衝液、トリシン緩衝液などが挙げられるが、トリス−硫酸緩衝液が特に好ましい。濃度としては、10〜200mMが好ましく、20〜100mMがより好ましい。pHとしては、7.0〜9.5の範囲が好ましく、7.5〜9.0の範囲がより好ましい。また、反応バッファー中には、1.0〜5mM、好ましくは1.5〜2.5mMの濃度でMg2+を含むことが好ましい。更には、KCl等の塩を含んでいてもよい。また、必要に応じて、界面活性剤やその他の安定化剤を添加して行うことができる。
核酸合成方法としては、PCR法、LAMP法、TRC法、NASBA法、ICAN法などが挙げられるが、PCR法による核酸合成方法が好ましい。
PCR法における、変性反応、アニーリング反応、伸長反応の各段階の温度及び時間、並びに反応サイクル数は当業者であれば適宜設定しうるものである。また、PCR法を利用した、RT−PCRやリアルタイムPCRについても本発明は有効である。
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。もっとも、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
Sulfolobus isladicus rod−shaped virus(SIRV)由来のdUTPase(SIRV−dUTPase)のクローニングと該dUTPaseの取得
本発明者らは、DNAポリメラーゼ関連因子の1つであるSulfolobus islandicus rod−shaped virus由来のdUTPaseをコードする遺伝子(SIRV−dut)を以下の方法によってクローニングした。SIRV−dutの塩基配列は474塩基対のオープンリィーディングフレームから構成されていることが報告されていた(非特許文献2)。そこで、我々は、16組の人工合成プライマーを用いたPCR法にて目的配列を含むDNA断片の合成を行い、このDNA断片を鋳型にしたnested PCR法にてDNA断片の連結を行い、目的のDNA鎖長を取得するに至った。
具体的には、SIRV−dut遺伝子のクローニングは32本の合成オリゴヌクレオチド(配列番号3〜34)とKOD−Plus−(東洋紡績社製)を用いたnested PCRにて行った。まず、はじめに、[1]SIRVdut f1とr16(配列番号3と34)、[2]SIRVdut f2とr15(配列番号4と33)、[3]SIRVdut f3と r14(配列番号5と32)、[4]SIRVdut f4とr13(配列番号6と31)、[5]SIRVdut f5とr12(配列番号7と30)、[6]SIRVdut f6と r11(配列番号8と29)、[7]SIRVdut f7とr10(配列番号9と28)、[8]SIRVdut f8とr9(配列番号10と27)、[9]SIRVdut f9と r8(配列番号11と26)、[10]SIRVdut f10とr7(配列番号12と25)、[11]SIRVdut f11とr6(配列番号13と24)、[12]SIRVdut f12と r5(配列番号14と23)、[13]SIRVdut f13とr4(配列番号15と22)、[14]SIRVdut f14とr3(配列番号16と21)、[15]SIRVdut f15と r2(配列番号17と20)、[16]SIRVdut f16とr1(配列番号18と19)の16組のプライマーセットをアニーリングさせた後、伸長反応を行い、45塩基対の2本鎖DNA16本を形成した(DNA断片[1]〜[16]、[16]のみ34塩基対)。
次に、(a)プライマー:SIRVdut f1とr15,鋳型:DNA断片[1]と[2],(b)プライマー:SIRVdut f3とr13,鋳型:DNA断片[3]と[4],(c)プライマー:SIRVdut f5とr11,DNA断片[5]と[6],(d)プライマー:SIRVdut f7とr9,鋳型:DNA断片[7]と[8],(e)プライマー:SIRVdut f9とr7,鋳型:DNA断片[9]と[10],(f)プライマー:SIRVdut f11とr5,DNA断片[11]と[12],(g)プライマー:SIRVdut f13とr3, 鋳型:DNA断片[13]と[14],(h)プライマー:SIRVdut f15とr1,鋳型:DNA断片[15]と[16]、この8組のプライマー,DNA断片を用いてPCRを行い、75塩基対の2本鎖DNA8本を形成した(DNA断片(a)〜(h)、(h)のみ64塩基対)。
引続き、[17]プライマー:SIRVdut f1とr13,鋳型:DNA断片(a)と(b),[18]プライマー:SIRVdut f5とr9,鋳型:DNA断片(c)と(d),[19]プライマー:SIRVdut f9とr5,鋳型:DNA断片(e)と(f),[20]プライマー:SIRVdut f13とr1,鋳型:DNA断片(g)と(h)、この4組のプライマー,DNA断片を用いてPCRを行い、135塩基対の2本鎖DNA4本を形成した(DNA断片(a)〜(h)、(h)のみ124塩基対)。さらに引続き、(i)プライマー:SIRVdut f1とr9,鋳型:DNA断片[17]と[18],(j)プライマー:SIRVdut f9とr1,鋳型:DNA断片[19]と[20]、この2組のプライマー,DNA断片を用いてPCRを行い、255塩基対と244塩基対の2本鎖DNA2本を形成した(DNA断片(i)と(j))。最後に、SIRVdut f1とr1をプライマー,DNA断片(i)と(j)を鋳型としてPCRを行い、478塩基対の2本鎖DNAを形成した。
次に、発現プラスミドベクターを作製するために、SIRVdut Nde1とSIRVdut Xba1(配列番号36と37)をプライマー,先の478塩基対の2本鎖DNAを鋳型としてPCRを行い、増幅したDNA断片を制限酵素NdeI,XbaIで切断した後、予めNdeI/NheIにて切断したpET11cプラスミド(ノバジェン社製)に連結した。このクローニングしたプラスミドは、DNAシーケンシング解析にてSIRV−dut遺伝子の塩基配列に変異が導入されていないことを確認した。このプラスミドをpDUT(SIRV)と命名した。
pDUT(SIRV)を用いてE.coli BL21(DE3)(ストラタジーン社製)を形質転換した後、LB培地にて37℃で約2時間培養した。菌体の生育状態を確認するため、OD660が0.5〜1.0になっていることを確認した後、1mM IPTGを添加して、37℃で更に約5時間発現誘導を行った。得られた培養液から菌体を回収し、菌体破砕緩衝液(30mM Tris−HCl, pH8、30mM NaCl、0.1mM EDTA)に懸濁して超音波破砕した。この破砕懸濁液を加温処理(80℃,30分間)して、遠心分離により菌体破砕片を分離した後、終濃度で50mM KClと0.2%ポリエチレンイミンを添加して、室温で30分間攪拌しながら除核酸処理を行った。この除核酸処理液に0.5飽和となるように硫安を添加して目的蛋白質を沈殿させた後、精製緩衝液1(50mM Tris−HCl, pH8、50mM NaCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、5% グリセロール)に再溶解した。この塩析再溶解液をG−25カラムにて脱塩した後、へパリンクロマトに吸着して、精製緩衝液1をベースに200〜1000mMのグラジエントにて目的蛋白質を溶出分画した。SDS−PAGEにてSIRV−dUTPaseの予想分子量(18kD)付近に溶出されている画分をプールして、まず、緩衝液2(50mM Tris−HCl, pH8、50mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、10% グリセロール、0.001% Tween(登録商標)−20、0.001% Nonidet P−40)で透析した。次に、十分量の最終形状緩衝液(50mM Tris−HCl, pH8、50mM KCl、0.1mM EDTA、1mM DTT、50% グリセロール、0.001% Tween(登録商標)−20、0.001% Nonidet P−40)により数回透析して、評価用のSIRV−dUTPase精製標品を取得した。
Thermococcus Kodakaraensis KOD1株由来のdUTPase(KOD−dUTPase)のクローニングと該dUTPaseの取得
Thermococcus Kodakaraensis KOD1株由来のdUTPaseについては、コードする遺伝子(KOD−dut)を以下の方法によってクローニングした。すなわち、公共データベースに公開されているKOD−dutの塩基配列(データベース名:GenBank、アクセッションNo. NC_006624)を参考に、クローニング用のPCRプライマー:KODdut f1とr1(配列番号38と39)を合成した。なお、KODdut f1には、増幅断片の移し変えを容易にするために、その5’端にNdeIの制限酵素サイトを付加した。PCRは、これらのプライマーとKOD−Plus−(東洋紡績社製)を用いて、Thermococcus Kodakaraensis KOD1株由来のゲノミックDNAを鋳型にして実施した。次に、得られた増幅産物を、TArget Clone −Plus−(東洋紡績社製)を用いてベクターpTA2(東洋紡績社製)にTAクローニングを行った。得られたプラスミド(pTA2−KOD−dut)は、DNAシーケンシングにより、塩基配列の確認を行い、目的のKOD−dut遺伝子がクローニングされていることを確認した。
次に、発現プラスミドベクターを作製するために、KOD−dut遺伝子をpTA2−KOD−dutから、制限酵素NdeIとBamHIにて切り出し、予めNdeI/BamHIにて切断したpET14bプラスミド(ノバジェン社製)にサブクローニングした。このプラスミドをpDUT(KOD)と命名した。このpDUT(KOD)を用いてE.coli BL21(DE3)を形質転換した後、実施例1と同様の精製方法にて酵素の精製を行い、KOD−dUTPaseの精製標品を取得した。
dUTPase及びベタインによる核酸増幅効果
実施例1で得られたSIRV−dUTPaseおよび実施例2で得られたKOD−dUTPaseを用いて、ヒトゲノムDNA(200ng/50μl)を鋳型とした様々な鎖長の遺伝子領域をターゲットとしたPCRを行い、dUTPaseとベタインのPCR反応への添加効果の評価を行った。ターゲットとしては、HBg(ヒトβ-グロビン)遺伝子領域の3.6kbp、8.5kbp、17.5kbp、32kbpおよびtPA(ヒトティッシュープラスミノーゲンアクチベーター)遺伝子領域の24kbpを用いた。PCR反応は、KOD Plus Ver.2(東洋紡績社製)を用いて、表1に示すような反応組成にて、表2に示すプライマーセットとPCRサイクル条件によりPCRを行った。
比較例として、添加剤なし、SIRV−dUTPaseのみを添加した場合、KOD−dUTPaseのみを添加した場合、及び1.5Mベタインのみを添加した場合についても、同様に試験を行った。
PCRは、サーマルサイクラー(GeneAmp(登録商標)PCRSystem9700;アプライドバイオシステムズ)を用いて行い、PCR反応終了後4℃で保持した。その後、PCR産物5μlを1%アガロース電気泳動に供して、目的のターゲットが増幅されているかの確認を行った。これらの結果を表3、及び図1に示す。
表3及び図1から分かる通り、添加剤なしの組成物では、8.5kbpの核酸の増幅ができなかった。さらに、dUTPaseあるいはベタインを各々単独で添加した条件では、8.5kbpを確実に増幅できるようになるものの、17.5kbpや24kbpのようなさらに長いターゲットでは、全く増幅できないか、あるいは、微弱な増幅のみが見られた。
これに対し、dUTPase及びベタインを同時に添加した条件では、17.5kbp及び24kbpの増幅に加え、32kbpの増幅産物までもが得られるようになることが確認された。また、8.5kbpの増幅からわかるように、dUTPaseとベタインを共存させた場合、各々単独で添加した場合と比較して、増幅産物のバンドが非常に強くなっており、増幅効率が大きく向上していることが示された。このように、dUTPase及びベタインを同時に作用させることで、DNAの増幅効率、及び増幅可能なターゲットのサイズが飛躍的に向上することが確認できた。アーキア由来のDNAポリメラーゼ、特にファミリーBに属するDNAポリメラーゼは、3’−5' エキソヌクレアーゼ活性を示し校正活性を有することから、DNA合成における極めて高い正確性を示す。本発明が、DNAの長断片を正確に合成する点で、従来にはない効果を奏することが示された。
SIRV−dUTPase及びKOD−dUTPaseによる長核酸断片の核酸増幅効果の再確認
実施例2で得られたKOD−dUTPase、及び実施例1で得られたSIRV−dUTPaseを用いて、再度実施例3と同様の条件にてヒトゲノムDNAを鋳型にHBg遺伝子(32kbp)をターゲットとするPCRを行なった。
PCR反応後、PCR産物5μlを1%アガロースゲル電気泳動に供した。その結果を図2に示した。KOD−dUTPaseを用いた場合でも、SIRV−dUTPaseを用いた場合と同様に、ベタイン単独では増幅が見られない32kbpの増幅が可能となり、dUTPaseとベタインとを共存させることにより確実に増幅可能サイズを向上させうることが確認できる。また、KOD−dUTPaseとSIRV−dUTPaseで、その効果に殆ど差は見られないことから、dUTPaseとベタインとの共存によるPCRパフォーマンスを格段に向上させる本効果は、これら2種類のdUTPaseに限らず、他のdUTPase、なかでも、特にアーキア由来の耐熱性を有するdUTPaseであれば、同様な効果を得ることができると推測される。
本発明は、従来から知られている核酸合成方法と比べて、増幅効率に優れ、長いサイズのターゲットDNAの増幅に関しても良好な増幅を示すことから、分子生物学の研究分野はもとより、遺伝子診断、法医学、食品や環境中の微生物検査等の幅広い分野において利用されることが期待される。

Claims (12)

  1. アーキア由来のDNAポリメラーゼ、dUTPアーゼ活性を有するポリペプチド、及びベタイン(トリメチルグリシン)を含有することを特徴とする、核酸合成用組成物。
  2. DNAポリメラーゼがファミリーBに属するDNAポリメラーゼである、請求項1に記載の核酸合成用組成物。
  3. DNAポリメラーゼがKOD DNAポリメラーゼである請求項2に記載の核酸合成用組成物。
  4. dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドがアーキア由来のdUTPアーゼ活性を有すポリペプチドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸合成用組成物。
  5. dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドがSIRV(Sulfolobus islandicus rod−shaped virus)由来、もしくはThermococcus Kodakaraensis由来のdUTPアーゼ活性を有するポリペプチドである、請求項4に記載の核酸合成用組成物。
  6. dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドが以下の(a)〜(c)のいずれかである、請求項5に記載の核酸合成用組成物。
    (a)配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (b)配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (c)配列番号1又は2のアミノ酸配列において、1ないしは数個のアミノ酸が欠失、挿入、付加、もしくは置換したアミノ酸配列からなり、かつdUTPアーゼ活性を有するポリペプチド
  7. アーキア由来のDNAポリメラーゼを用いた核酸合成方法であって、dUTPアーゼ活性を有するポリペプチド及びベタイン(トリメチルグリシン)の存在下で行うことを特徴とする、核酸合成方法。
  8. DNAポリメラーゼがファミリーBに属するDNAポリメラーゼである、請求項7に記載の核酸合成方法。
  9. DNAポリメラーゼがKOD DNAポリメラーゼである、請求項8に記載の核酸合成方法。
  10. dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドがアーキア由来のdUTPアーゼ活性を有するポリペプチドである、請求項7〜9のいずれか一項に記載の核酸合成方法。
  11. dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドが、SIRV(Sulfolobus islandicus rod−shaped virus)由来、もしくはThermococcus Kodakaraensis由来のdUTPアーゼ活性を有するポリペプチドである、請求項10に記載の核酸合成方法。
  12. dUTPアーゼ活性を有するポリペプチドが以下の(d)〜(f)のいずれかである、請求項11に記載の核酸合成方法。
    (d)配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (e)配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (f)配列番号1又は2のアミノ酸配列において、1ないしは数個のアミノ酸が欠失、挿入、付加、もしくは置換したアミノ酸配列からなり、かつdUTPアーゼ活性を有するポリペプチド
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