JP2010213658A - 細胞内プロテアーゼ活性の解析方法及びキメラタンパク質 - Google Patents

細胞内プロテアーゼ活性の解析方法及びキメラタンパク質 Download PDF

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Abstract

【課題】 簡便且つ安価に行うことができ、その他の研究手法との組み合わせも容易な、細胞内のプロテアーゼ活性を解析する方法及びその方法に使用するキメラタンパク質を提供する。
【解決手段】 プロテアーゼ認識配列を含むリンカーを介してエネルギー受容タンパク質とエネルギー発生タンパク質とが連結して成るキメラタンパク質を細胞内に発現させ、前記細胞内における前記リンカーの切断を検出する、前記プロテアーゼの細胞内活性の解析方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、細胞内のプロテアーゼ活性、特に細胞内のカスパーゼ3活性を解析する方法および前記解析に使用されるキメラタンパク質に関する。
アポトーシスとは、多細胞生物において積極的に行われる細胞の死のことであり、組織形成、生体防御等に関与する。アポトーシスは、癌やアルツハイマー病等との関与が報告されており、これらの疾病を治療するためのターゲットと成り得るとして注目されている。
カスパーゼは、アポトーシスのシグナル伝達経路を構成する一群の因子である。カスパーゼは、システインプロテアーゼの1種であり、基質となるタンパク質を開裂することで下流へとシグナルを伝える。複数存在するカスパーゼのうち、カスパーゼ3は、様々なアポトーシス経路への関与が認められ、特に重要な因子と考えられている。
カスパーゼといったプロテアーゼの細胞内活性を解析する方法は、これまでにも考案されているものの、そのような方法では、主に細胞破砕液を使用する必要があり、手間を要する。また、ルシフェラーゼを用いた解析の場合には、細胞破砕液の使用に起因して発光基質が急速に消費されてしまい、長時間の検出が行えないという問題もある。
特許文献1には、カスパーゼ等を解析するための発光分析法が記載されている。この方法でも細胞破砕液が使用される(特許文献1の段落番号0017)。また、この方法に使用される発光基質にカスパーゼ3の活性検出能を付与した化合物が一般に市販されているが、その価格は高価である。
特許文献2には、高いBRET(生物発光共鳴エネルギー転移)効率を有する蛍光標識用キメラタンパク質が記載されている。しかし、このキメラタンパク質は、カスパーゼといったプロテアーゼの細胞内活性の検出を目的としておらず、酵素活性測定などの機能は有していない。
特開2005−530485号公報 特開2008−283959号公報
本発明の目的は、簡便且つ安価に行うことができ、その他の研究手法との組み合わせも容易な、細胞内のプロテアーゼ活性を解析する方法及びその方法に使用するキメラタンパク質を提供することにある。
本発明によれば、プロテアーゼ認識配列を含むリンカーを介してエネルギー受容タンパク質とエネルギー発生タンパク質とが連結して成るキメラタンパク質を細胞内に発現させ、前記細胞内における前記リンカーの切断を検出する、前記プロテアーゼの細胞内活性の解析方法が提供される。
本発明によるキメラタンパク質を使用すれば、プロテアーゼの活性を、細胞外液を用いて検出できるため、長時間にわたって簡便に解析でき、また、キメラタンパク質をコードするプラスミドは大腸菌等で増やすことができるため、市販される検出用試薬を用いるよりも安価に解析できる。
本発明に係る細胞内プロテアーゼ活性解析方法の概要を示す図。 本発明に係る細胞内プロテアーゼ活性解析方法に使用されるキメラタンパク質を示す模式図。 本発明に係るキメラタンパク質の発現ベクターの一例を示す模式図。 本発明に係るキメラタンパク質の発光スペクトルを示す図。 本発明に係るキメラタンパク質の発現ベクターの一例を示す模式図。 本発明に係る細胞内プロテアーゼ活性解析方法によって解析されたカスパーゼ3活性を示す図。
本発明は、細胞内プロテアーゼ活性解析方法に関するものである。また、本発明は、当該方法に使用できるキメラタンパク質に関するものである。更に、本発明は、当該キメラタンパク質の発現のためのベクター、当該キメラタンパク質をコードする塩基配列から成る核酸、当該キメラタンパク質の遺伝子が導入された細胞及び当該キメラタンパク質を発現している細胞に関するものである。
以下、図面を参照しながら本発明の実施態様を説明する。
図1は、本発明に係る細胞内プロテアーゼ活性解析方法の概要を示す図である。本発明に係る方法は、プロテアーゼ認識配列を含むリンカーを介してエネルギー受容タンパク質とエネルギー発生タンパク質とが連結して成るキメラタンパク質を細胞内に発現させること、および、前記細胞内における前記リンカーの切断を検出することを含む。その他に、任意の工程として、図1a〜gに示されるような工程を含んでよい。各工程を以下に説明する。
図1(a)に示すように、まず、特定のプロテアーゼ4の細胞内活性を解析しようとする細胞1に、本発明に係るキメラタンパク質3を発現するためのベクター2を導入する。
解析の対象となるプロテアーゼ4は、特定のアミノ酸配列を特異的に認識し、当該配列を切断する、すなわちペプチド結合の加水分解を触媒するものであれば、何れのプロテアーゼであってもよい。特に、そのプロテアーゼ活性が、細胞の生命機能にとって重要な働きとなることが解明されているものが好ましい。例えば、プロテアーゼ4は、カスパーゼ、カテプシンまたはカルパインであってよい。カスパーゼとはアポトーシスに関与するタンパク質の一群であるが、なかでもカスパーゼ3、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8またはカスパーゼ10であってよい。
ベクター2が導入される細胞1は、特定のプロテアーゼ活性を解析しようとする何れの細胞であってよい。例えば、動物細胞、植物細胞または微生物細胞を使用できる。好ましくは、これらの培養細胞、単離細胞または遊離細胞が使用される。特定のプロテアーゼ活性を解析する場合に、そのプロテアーゼ4を発現することがわかっている細胞を用いることが好ましい。しかし、そのプロテアーゼ4を発現するかまたはそのプロテアーゼ4の活性を有するかが不明である細胞について、発現または活性の有無を調べる目的で本発明に係る方法を適用することも可能である。プロテアーゼ4がカスパーゼである場合には、細胞1は多細胞性の動物細胞であることが好ましく、例えば、HeLa細胞、HEK293細胞、NIH3T3細胞またはU2OS細胞等、カスパーゼ活性が確認されている細胞を使用することができる。
細胞1にベクター2を導入する方法は、既知の何れかの方法を使用することができる。例えば、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法、ウイルスを使用する方法またはリポフェクション法等が使用できる。また、市販される遺伝子導入キットを使用してもよい
ベクター2は、後述するキメラタンパク質3をコードする核酸を含むプラスミドやウイルス等であってよい。例えば、使用する細胞1に合わせて、既知のベクターを適宜選択して使用できる。例えば、pcDNA3.1(インビトロジェン)、pCAT3(プロメガ)、pRSET(インビトロジェン)またはpBluescriptII(ストラタジーン)等であってよい。例えば、配列番号4に示されるpRSETBを使用できる。ベクター2は、少なくともキメラタンパク質3の遺伝子を含み、その他、キメラタンパク質3の発現を調節するための配列および/またはマーカー遺伝子(選択マーカー)等を含んでよい。発現を調節するための配列としては、例えば、プロモーター、ターミネーター、リプレッサーおよび/またはエンハンサーを含む。マーカー遺伝子としては、例えば、蛍光タンパク質遺伝子、薬剤耐性遺伝子を含む。また精製用のタグ配列(例えばHis−tag)を含んでよい。ベクター2は、既知の方法を用いて製造することができる。例えば、キメラタンパク質3を構成するエネルギー発生タンパク質31の遺伝子、エネルギー受容タンパク質32の遺伝子およびリンカー33の核酸を用意し、これらを何れかの発現ベクターに挿入することで作製できる。
図1(b)に示すように、次に、細胞1内において、導入したベクター2からキメラタンパク質3が発現される。当該キメラタンパク質の発現のための培養条件は、使用する細胞1およびベクター2等に合わせて適宜設定してよく、例えば、既知の培養条件を使用してよい。
発現されるキメラタンパク質3は、エネルギー発生タンパク質31、エネルギー受容タンパク質32、およびそれらを連結するリンカー33から成る(図2)。好ましくは、C末端側にエネルギー発生タンパク質31が位置し、N末端側にエネルギー受容タンパク質32が位置する。
本発明による方法は、キメラタンパク質3の有する「生物発光共鳴エネルギー移動(Bioluminescence Resonace Energy Transfer,BRET)」の作用を利用するものである。BRETにおいて、エネルギー発生タンパク質31は、最初にエネルギーを発生させる部分であり、いわゆるエネルギードナーとして作用する。それに対し、エネルギー受容タンパク質32は、エネルギー発生タンパク質31に起因するエネルギーを受けて、発光等のエネルギーを発生する部分であり、いわゆるエネルギーアクセプターとして作用する。
本発明において、エネルギー発生タンパク質31は、エネルギー受容タンパク質32に先立ってエネルギーを発生させるものであれば、何れのタンパク質も使用できる。例えば、BRETシステムにおいて一般的に使用される既知のタンパク質であってもよい。例えば、ルシフェラーゼをエネルギー発生タンパク質31として使用できる。特に、エネルギー発生タンパク質31は、プロテアーゼ4の触媒作用によってエネルギー受容タンパク質32と切り離された後(詳細は後述する)、細胞外へと分泌されることが本発明の方法に好適である。従って、エネルギー発生タンパク質31には分泌シグナルが含まれていることが好ましい。例えば、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼ、ウミホタルルシフェラーゼまたはメトリディア(Metridia)ルシフェラーゼといった分泌型ルシフェラーゼを使用できる。あるいは、分泌シグナルの付加により分泌性を獲得したルシフェラーゼを使用してもよい。すなわち、ルシフェラーゼに分泌シグナルとなるペプチドを融合させたタンパク質を使用できる。
エネルギー受容タンパク質32は、エネルギー発生タンパク質31に起因するエネルギーを受けて、発光等のエネルギーを発生するものであれば、あらゆるタンパク質が使用できる。例えば、BRETシステムにおいて一般的に使用される既知のタンパク質であってよい。特に、エネルギー受容タンパク質32は、エネルギー発生タンパク質31に起因して発生する発光エネルギーを吸収し、その発光の波長とは異なる波長の光エネルギーを発生させるタンパク質を使用することが好ましい。例えば、エネルギー受容タンパク質32として、蛍光タンパク質を使用してよく、とりわけ、GFP、YFP、BFP、CFP、DsRedおよびRFPから成る群から選択される蛍光タンパク質を使用してよい。特に、エネルギー発生タンパク質31としてガウシアルシフェラーゼを使用する場合には、エネルギー受容タンパク質32としてYFPを使用することが好ましい。
エネルギー発生タンパク質31とエネルギー受容タンパク質32とを連結するリンカー33は、プロテアーゼ認識配列331を含む。リンカー33は、その他に、エネルギー発生タンパク質31とプロテアーゼ認識配列331との間に発生側リンカー332を、エネルギー受容タンパク質32とプロテアーゼ認識配列331との間に受容側リンカー333を、それぞれ任意に含んでよい。プロテアーゼ認識配列331とは、プロテアーゼ4によって特異的に認識され、その配列またはその付近の配列が切断される配列のことをいう。従って、プロテアーゼ認識配列331は、標的とするプロテアーゼ4に対応して設定される。例えば、カスパーゼ3を標的とする場合、プロテアーゼ認識配列331はアミノ酸配列の一文字表記でDEVDである。発生側リンカー332および受容側リンカー333は、例えば、BRETの良好な機能のため、プロテアーゼ4による良好なプロテアーゼ認識配列331の認識および切断のため、または、キメラタンパク質3の細胞内での安定性の向上のために、任意に設定してよい。リンカー33は、好ましくは、4から16のアミノ酸から成ってよい。また、発生側リンカー332は0から6のアミノ酸から成ってよく、好ましくは6のアミノ酸から成る。受容側リンカー333は0から4のアミノ酸から成ってよく、好ましくは4のアミノ酸から成る。具体的には、リンカー33は、認識配列1に示される配列であってよい。
本発明に係るキメラタンパク質3は、例えば、配列番号3に示される配列から成るタンパク質である。また、本発明に係るキメラタンパク質3をコードする遺伝子は、例えば、配列番号2である。さらに、本発明に係る方法に使用されるベクター2は、例えば、配列番号5に示されるベクターである。
図1(c)に示されるとおり、細胞1がキメラタンパク質3を発現した後に、任意に、プロテアーゼ4の発現または活性化を誘導する処理が行なわれる。プロテアーゼ4がカスパーゼである場合には、アポトーシス誘導刺激をプロテアーゼの発現または活性化の誘導処理に使用できる。例えば、スタウロスポリン(staurosporine)、アクチノマイシンD、デキサメタゾンまたはシクロヘキシミドを使用してアポトーシスを誘導してもよい。このようなプロテアーゼの発現または活性化の誘導処理は、本発明に係る方法に必ずしも必要ではなく、自発的にプロテアーゼ活性を生じる細胞や、自発的にアポトーシスを行う細胞等を使用する場合には、省略することもできる。
図1(d)および(e)に示されるとおり、プロテアーゼ4が発現または活性化し、キメラタンパク質3を基質として触媒作用を及ぼす。プロテアーゼ4は、キメラタンパク質3のプロテアーゼ認識配列331を認識して切断し、エネルギー発生タンパク質31とエネルギー受容タンパク質32とに分ける(図1e)。
図1(f)に示されるとおり、プロテアーゼ4の触媒作用によって、エネルギー受容タンパク質32から切断されたエネルギー発生タンパク質31は、単独で細胞外へ分泌される。上述の通り、エネルギー受容タンパク32は、好ましくは、細胞外へと分泌されるための分泌シグナルを含んでいる。しかし、エネルギー受容タンパク質32と繋がっている状態では、分泌が阻害され、細胞内に留まっている。プロテアーゼ4によって切断され単独の分子となることをきっかけに、エネルギー発生タンパク質31の細胞外への分泌が活発化する。
図1(g)に示されるとおり、細胞を培養するための培地、すなわち細胞外液の一部が分取され、細胞外液中のエネルギー発生タンパク質31の量が定量される。好ましくは、経時的に細胞外液が分取および定量され、細胞内のプロテアーゼ活性の変化が解析される。当該定量は、エネルギー発生タンパク質31としてルシフェラーゼを使用する場合には、分取した細胞外液に発光基質であるルシフェリンを適当な量で添加し、その発光強度を計測することで行ってよい。発光基質は、使用するルシフェラーゼに合わせて、既知のものを使用してよい。エネルギー発生タンパク質31としてガウシアルシフェラーゼを使用する場合には、セレンテラジン(Coelenterazine)、セレンテラジンh(プロメガ)、ViviRen(プロメガ)、EnduRen(プロメガ)等を使用することができる。発光強度を測定する装置としては、例えば、ルミノメーター(ATTO製)を使用してよい。分取した細胞外液をそのまま発光強度測定に用いることも可能であるし、必要に応じて、精製、遠心分離または濾過等の処理を行った後に測定に用いてもよい。
以上、図面を参照しながら説明した本発明の一実施態様は、従来の細胞内プロテアーゼ活性解析方法と比較して格別顕著な効果を有する。本発明によれば、エネルギー発生タンパク質31の定量(図1g)に、従来の細胞破砕液ではなく、細胞外液が使用される。そのため、定量前における細胞破砕等の処理を省略でき、簡便に定量できる。また、細胞外液を使用するので、定量のための溶液に含まれる夾雑物は従来の場合より非常に少ない。すなわち、エネルギー発生タンパク質31と発光基質との反応を阻害する物質も少なく、より長時間に、より正確に、エネルギー発生タンパク質31の量を発光強度として計測することが可能となる。さらに、本発明の方法に使用するためのベクター2は、大腸菌を用いるなどの簡単な技術によって大量に増やすことができるため、市販されるキットを用いた解析よりも非常に安価に行うことができる。
本発明はまた、図1に示される方法と並行して細胞1の観察を行う方法に関する。例えば、図1による細胞内プロテアーゼ活性の経時的な解析と並行して、細胞の形態の変化が明視野観察される。または、図1による細胞内プロテアーゼ活性の経時的な解析と並行して、細胞内の特定のタンパク質が蛍光または発光によって観察される。また、図1による細胞内プロテアーゼ活性の経時的な解析と並行して、明視野観察と蛍光または発光による観察とを同時に行うことができる。
蛍光または発光による観察を並行して行う場合には、その観察の対象となるタンパク質に観察用ルシフェラーゼを付加したものを細胞内に発現させる。ここで、観察の対象とするタンパク質のことを「標的タンパク質」と称する。標的タンパク質はプロテアーゼ4とは異なるタンパク質である。エネルギー発生タンパク質31としてルシフェラーゼを用いる場合には、前記ルシフェラーゼと観察用ルシフェラーゼとが異なる種類のものである必要がある。標的タンパク質としては、プロテアーゼ4の働きとの関連が示唆されているものを選択することが好ましいが、プロテアーゼ4の働きに関連があるかどうかを調べる目的で、適当な細胞内タンパク質を標的タンパク質とすることもできる。プロテアーゼ4としてカスパーゼを選択し、図1による方法によってアポトーシスの経過を解析する場合には、標的タンパク質は、例えば、p53、NFκBまたはIκBが選択される。また、エネルギー発生タンパク質31としてガウシアルシフェラーゼを用いる場合には、観察用ルシフェラーゼとしてはホタルルシフェラーゼ、クリックビートルルシフェラーゼ、鉄道虫ルシフェラーゼ等のガウシアルシフェラーゼと発光基質または発光極大波長が異なるルシフェラーゼを使用できる。観察は、例えば蛍光顕微鏡を使用して行うことができ、経時的に観察画像を記録していくこともできる。
明視野観察を並行して行う場合には、例えば明視野顕微鏡等を使用して、細胞の形態等が経時的に観察される。このとき、経時的に観察画像を記録していくことも可能である。プロテアーゼ4をカスパーゼとする場合には、そのカスパーゼの活性の変化と、アポトーシスによる細胞形態の変化との関係を調べることが可能となる。
また、蛍光または発光による観察および明視野観察に限定されず、既存の研究手法と本発明による解析方法とを組み合わせることも可能である。例えばカスパーゼ3を解析の対象とする場合には、本発明による解析結果をアポトーシスの進行の指標として利用することも可能である。
このように、各研究手法と本発明による解析方法との組み合わせによれば、従来の組み合わせよりも、格別顕著な効果が得られる。すなわち、従来の組み合わせでは、エネルギー発生タンパク質の検出のために細胞破砕液を用意する必要があり、経時的に検出しようとする場合に、検出の都度細胞を回収し使用することになる。従って、従来の場合では、使用する細胞の培養液を大量に準備する必要があり、及び、大きなサイズで培養する必要がある。このように大きなサイズで実験を行うことは非常に手間を要し、さらに、細胞の成育条件を整えることが困難となるため、得られる実験結果の信頼性も下がる。それに対し、本発明に係る分析方法を各研究手法と組み合わせる場合には、プロテアーゼ活性の分析のために細胞外液を回収するだけであるため、培養液を管理しやすいサイズにすることが可能となり、信頼性の高い実験結果が得られる。
[例1]
キメラタンパク質として「YFP−4−DEVD−6−ガウシア」を、大腸菌を使用して作製し、その発光スペクトルを測定した。
YFP−4−DEVD−6−ガウシアとは、具体的には、YFPとガウシアルシフェラーゼとを、アミノ酸配列「GGSGDEVDGTGGSGGS」(配列番号1)で表されるリンカーで連結したものである。
大腸菌におけるYFP−4−DEVD−6−ガウシアの発現のために、pRSET B/YFP−4−DEVD−6−ガウシアと名付けられるプラスミドを大腸菌JM109(DE3)株に導入した。当該プラスミドは、図3に示されるように、YFP−4−DEVD−6−ガウシアの遺伝子を有している。なお、YFP−4−DEVD−6−ガウシアをコードする遺伝子の塩基配列は配列番号2に示され、ベクターpRSET B/YFP−4−DEVD−6−ガウシアの塩基配列は配列番号5に示される。
プラスミドを導入した大腸菌を37℃で24時間培養し、YFP−4−DEVD−6−ガウシアを発現させた。その後、大腸菌の破砕液を調製し、当該破砕液をNi−Agarカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィで精製し、YFP−4−DEVD−6−ガウシアを得た。
得られたYFP−4−DEVD−6−ガウシアを10μg/mlで含む0.1MのTris−HCl溶液(pH8.0)に、セレンテラジン(プロメガ)を60μMに成るように添加し、発光スペクトルを測定した。その結果を図4に(a)として示す。
ガウシアルシフェラーゼとセレンテラジンとの反応による発光波長は、一般に480nm付近であることが知られている。それに対し、YFPの発光波長は、一般に530nm付近であることが知られている。図4によると、530nm付近の発光強度が、480nm付近の発光強度を上回っている。すなわち、YFPに対する励起光を放射していないにも関わらず、YFPが強く発光している。このことから、ルシフェラーゼの発光反応に伴い、YFPが励起され発光していることがわかり、すなわちYFP−4−DEVD−6−ガウシア内でのBRETが良好に生じていることがわかる。
さらに、YFP−4−DEVD−6−ガウシアをカスパーゼ3によって60分間処理した後、その発光スペクトルデータを図4に(b)として示す。カスパーゼ3による処理は、YFP−4−DEVD−6−ガウシアを10μg/mlで含む0.1M Tris−HCl溶液(pH8.0)に、終濃度(20units/ml)となるようにカスパーゼ3(MBL)を添加し、37℃にて60分間インキュベートすることで行った。発光スペクトルの測定は、(a)の場合と同様に行った。
カスパーゼ3にて処理を行った場合(b)では、カスパーゼ3で処理しない場合(a)と比較して、530nm付近の発光強度が大きく低下した。このことは、YFP−ガウシア間におけるBRETの低下を意味する。すなわち、本発明にかかるキメラタンパク質を用いることで、カスパーゼ3によるリンカー部分の切断を、530nm付近の発光強度の低下として検出できることが示された。
[例2]
本発明に係る解析方法の有効性を、動物細胞中のカスパーゼ3の活性を対象として確認した。
35mmディッシュに播種したHeLa細胞に、Lipofectamin2000(インビトロジェン)を用いて、ベクターとしてpcDNA3.1/YFP−4−DEVD−6−ガウシア(図5)をトランスフェクションした。トランスフェクションの方法は、製造者の指示書通りに行った。
その後、37℃で24時間インキュベートし、細胞培養液(DMEM)を交換した。
終濃度が4μMとなるようにスタウロスポリン(Wako)を細胞培養液に添加し、HeLa細胞のアポトーシスを誘導した。添加後、経時的に細胞培養液を10μlづつ分取した。
分取した細胞培養液に、終濃度が60μMとなるようにセレンテラジン(Promega)を添加し、ルミノメーター(ATTO)を用いて発光量を測定した。測定結果に基づいて、以下の式からカスパーゼ3活性を算出した。
カスパーゼ3活性=全波長の発光量/530ロングパスフィルターによる分光後の発光量
その結果を図6に示す。
図6から、算出される発光強度比が、刺激後の時間の経過とともに増大することがわかる。これは、アポトーシスに進行に対応しており、本発明に係る解析方法によってカスパーゼ3の細胞内活性の変化を有効に解析出来ることが示されている。
1…細胞、2…ベクター、3…キメラタンパク質、31…エネルギー発生タンパク質、32…エネルギー受容タンパク質、33…リンカー、331…プロテアーゼ認識配列、332…発生側リンカー、333…受容側リンカー、4…プロテアーゼ。

Claims (19)

  1. プロテアーゼ認識配列を含むリンカーを介してエネルギー受容タンパク質とエネルギー発生タンパク質とが連結して成るキメラタンパク質を細胞内に発現させ、
    前記細胞内における前記リンカーの切断を検出する、
    前記プロテアーゼの細胞内活性の解析方法。
  2. 前記プロテアーゼがカスパーゼ3である請求項1に記載の方法。
  3. 前記リンカーの切断の検出が、細胞外液中に分泌されたエネルギー発生タンパク質の量を検出することで行われる請求項1に記載の方法。
  4. 前記エネルギー発生タンパク質が、分泌シグナルを含むルシフェラーゼ、または分泌シグナルが付加されたルシフェラーゼである請求項1に記載の方法。
  5. 前記ルシフェラーゼが、ガウシアルシフェラーゼである請求項4に記載の方法。
  6. 前記エネルギー受容タンパク質が、GFP、YFP、BFP、CFP、DsRedおよびRFPから成る群から選択される請求項1に記載の方法。
  7. 観察用ルシフェラーゼを付加した標的タンパク質を前記細胞内に発現させ、発光による前記標的タンパク質の観察を、前記リンカーの切断の検出と並行して行う請求項1に記載の方法であって、
    前記エネルギー発生タンパク質がルシフェラーゼである場合、前記ルシフェラーゼと前記観察用ルシフェラーゼとが異なるルシフェラーゼである方法。
  8. 前記細胞の形態の明視野観察を、前記リンカーの切断の検出と並行して行う請求項1に記載の方法。
  9. プロテアーゼ認識配列を含むリンカーを介してエネルギー受容タンパク質とエネルギー発生タンパク質とが連結して成るキメラタンパク質。
  10. 前記プロテアーゼが、カスパーゼ3である請求項9に記載のキメラタンパク質。
  11. 前記エネルギー発生タンパク質が、分泌シグナルを含むルシフェラーゼ、または分泌シグナルが付加されたルシフェラーゼである請求項9に記載のキメラタンパク質。
  12. 前記ルシフェラーゼが、ガウシアルシフェラーゼである請求項11に記載のキメラタンパク質。
  13. 前記リンカーが4から16のアミノ酸から成る請求項9に記載のキメラタンパク質。
  14. 前記リンカーが配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する請求項9に記載のキメラタンパク質。
  15. 前記エネルギー受容タンパク質が、GFP、YFP、BFP、CFP、DsRedおよびRFPから成る群から選択される請求項9に記載のキメラタンパク質。
  16. 配列番号3で示されるアミノ酸配列から成るキメラタンパク質。
  17. 請求項9から16の何れか1項に記載のキメラタンパク質をコードする核酸。
  18. 配列番号2で示される塩基配列を含む核酸。
  19. 請求項17または18に記載の核酸を含むベクター。
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