JP2010209753A - 内燃機関の操作対象パラメータの適合装置、及び適合方法 - Google Patents

内燃機関の操作対象パラメータの適合装置、及び適合方法 Download PDF

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Abstract

【課題】内燃機関の運転時に評価の対象とされる複数の出力評価対象量の評点を適切に算出し、且つ、「1操作」に対するそれぞれの評点の変化量を調整すること。
【解決手段】複数の出力評価対象量の評点xiが、目標値tiと、計測値diと、基準値biとを利用して、「xi=(di−ti)/bi」なる式に従って計算される。この式において目標値tiが分子側にあるから、目標値tiがゼロ近傍、或いはゼロであっても評点xiが適切に算出され得る。基準値biは、「1操作」毎に得られる「計測値diの変化量の絶対値」の平均値に設定・更新されていく。これにより、複数の出力評価対象量のそれぞれについて、「1操作」に対する評点xiの変化量が「1」近傍に調整されていく。即ち、複数の出力評価対象量の間で、「1操作」に対するそれぞれの評点xiの変化量が同程度に調整され得る。
【選択図】図2

Description

本発明は、内燃機関の複数の操作対象パラメータの適合値を取得する内燃機関の操作対象パラメータの適合装置、及び適合方法に関する。
内燃機関が運転される際に評価の対象とされる項目の一例として、排ガス中の有害物質の排出量、燃焼騒音、燃料消費率等が挙げられる。以下、これらの量を「出力評価対象量」と称呼する。内燃機関の燃料噴射時期、EGR弁の開度等を変更することで、上述の複数の出力評価対象量のそれぞれが変化する。以下、燃料噴射時期、EGR弁の開度等のようにその値が操作(変更)されることで上述の複数の出力評価対象量に影響を与えるパラメータを「操作対象パラメータ」と称呼する。
或る定常運転状態(燃料噴射量及び運転速度が一定)について上述の複数の出力評価対象量のそれぞれを対応する目標値以下とするために必要な上述の複数の操作対象パラメータのそれぞれの値は、その定常運転状態において複数の操作対象パラメータを適宜操作する適合実験を繰り返すことで適合・取得され得る。特許文献1には、複数の操作対象パラメータのそれぞれの(定常)適合値を取得する手法の1例が紹介されている。
具体的には、或る定常運転状態について、複数の出力評価対象量の目標値がそれぞれ取得される。複数の出力評価対象量の実際に計測された値(計測値)がそれぞれ取得される。各出力評価対象量について、計測値を目標値で除して得られる値(計測値/目標値)が出力評価対象量の評点として算出される。算出された複数の出力評価対象量のそれぞれの評点の総和が評点総和値として算出される。この評点総和値に基づいて、複数の操作対象パラメータについての複数の操作項目のうちから、評点総和値を小さくするために必要な次に操作すべき対象が決定される。操作すべき対象となった操作項目に対応する操作が行われる。この操作後の状態に対して各計測値が新たに取得され、新たに取得された計測値に基づいて評点総和値が新たに算出される。
このように複数の操作対象パラメータを操作する適合実験を繰り返して評点総和値を小さくしていくことで、複数の出力評価対象量の計測値のそれぞれを対応する目標値以下とするために必要な操作対象パラメータのそれぞれの(定常)適合値が取得される。以上の手順が、適合が行われる複数種類の定常運転状態のそれぞれについて行われる。
特開2004−124935号公報
上述のように、上記文献では、評点総和値の計算に使用される各出力評価対象量の評点として、(計測値/目標値)が使用される。このことに起因して以下の2つの問題が発生し得る。
第1に、評点の算出式において目標値が分母側にあるから、複数の出力評価対象量のうちで目標値がゼロ近傍、或いはゼロに設定されるものが含まれる場合、この出力評価対象量の評点が非常に大きい値(或いは、無限大)となる。この結果、他の出力評価対象量の評点にかかわらず評点総和値も非常に大きい値(或いは、無限大)となる。このため、評点総和値が、複数の操作対象パラメータの値を適合するための適切な値に算出され得ず、複数の操作対象パラメータの値を適合できなくなるという問題が発生する。
第2に、複数の出力評価対象量の間において、目標値が大きく異なる場合、操作対象パラメータの1回の操作(以下、「1操作」と呼ぶ。)に対するそれぞれの計測値の変化量が同じであっても1操作に対するそれぞれの評点の変化量が大きく異なる。ここで、複数の出力評価対象量の計測値のそれぞれを対応する目標値以下とするために行われるべき次の操作対象パラメータの操作項目を適切に選択するためには、複数の出力評価対象量の間において、1操作に対するそれぞれの評点の変化量が同程度であることが好ましいと考えられる。係る観点から、複数の出力評価対象量の間で、1操作に対するそれぞれの評点の変化量を調整したいという要求があった。しかしながら、上述のように、各出力評価対象量の評点として(計測値/目標値)が使用される場合、この要求を満たすことができないという問題が発生する。
本発明は、係る問題に対処するためになされたものであり、複数の出力評価対象量のうちで目標値がゼロに設定されるものが含まれてもその出力評価対象量の評点を適切に算出でき、且つ、複数の出力評価対象量の間で1操作に対するそれぞれの評点の変化量を調整することができる、内燃機関の操作対象パラメータの適合装置(方法)を提供することにある。
本発明に係る操作対象パラメータの適合装置の特徴は、各出力評価対象量の評点として、(計測値/目標値)に代えて、((計測値−目標値)/基準値)が採用されたことにある。ここにおいて、各出力評価対象量について、基準値は、計測値及び目標値と同じ次元を有する正の値である。
これによれば、複数の出力評価対象量の間で、それぞれの基準値を調整することで、1操作に対するそれぞれの評点の変化量を調整することができる。具体的には、各出力評価対象量について、基準値を大きく(小さく)することで、(計測値の変化量が同じであっても)1操作に対する評点の変化量を小さく(大きく)することができる。
加えて、評点の算出式において目標値が分子側にある。従って、目標値がゼロ近傍、或いはゼロであっても、上記文献の場合のように評点が非常に大きい値(或いは、無限大)とはならない。従って、複数の出力評価対象量のうちで目標値がゼロに設定されるものが含まれてもその出力評価対象量の評点が適切に算出され得る。
上記本発明に係る操作対象パラメータの適合装置においては、各出力評価対象量について、基準値が、1操作毎に得られる出力評価対象量の計測値の変化量の絶対値の平均値に設定されると好ましい。これによれば、複数の出力評価対象量の間で、1操作に対するそれぞれの評点の変化量を同程度(具体的には、1近傍)に調整することができる。
上記本発明に係る操作対象パラメータの適合装置においては、各出力評価対象量について、算出された評点が負の値になった場合(即ち、計測値が目標値よりも小さい場合)、評点がゼロに設定されることが好適である。この構成は、評点総和値がゼロになったことを条件に適合実験が完了する場合(即ち、その時点での複数の操作対象パラメータのそれぞれの値が対応する操作対象パラメータの適合値として使用される場合)に特に有効である。
各出力評価対象量について、評点がゼロ以下(即ち、計測値が目標値以下)であることは目標が達成されたことを意味し、評点がゼロよりも大きい(即ち、計測値が目標値よりも大きい)ことは目標が達成されていないことを意味する。複数の出力評価対象量のうちで評点がゼロ以下のものと評点がゼロより大きいものとが混在する場合、目標が達成されていない出力評価対象量が存在しているにもかかわらず評点総和値がゼロとなって適合実験が完了してしまう事態が発生し得る。加えて、計測値が目標値以下である限りにおいて、計測値が目標値と一致していても(即ち、評点=0)、計測値が目標値より小さくても(即ち、評点<0)、目標が達成されていることに変わりはない。
以上のことから、上記構成のように、算出された評点が負の値になった場合に評点がゼロに設定されることで、目標が達成されていない出力評価対象量が存在しているにもかかわらず適合実験が完了してしまう事態の発生を防止できる。
上記本発明に係る操作対象パラメータの適合装置においては、現在の評点総和値に基づいて、複数の操作対象パラメータについての(予め定められた)複数の操作項目のうちから、評点総和値を小さくするために必要な次に操作すべき対象が決定される。操作すべき対象となった操作項目に対応する操作(1操作)が行われる。この1操作後の状態に対して各計測値が新たに取得され、新たに取得された計測値に基づいて評点総和値が新たに算出される。このように1操作が繰り返されて評点総和値を小さくしていくことで、複数の出力評価対象量の計測値のそれぞれを対応する目標値以下とするために必要な操作対象パラメータのそれぞれの(定常)適合値が取得される。
このように、次の操作すべき対象が繰り返し決定されていく際、具体的には、評点総和値の最新値が前回値よりも小さい場合、操作すべき対象が前回の操作項目と同じ操作項目に決定され(適合方針維持)、評点総和値の最新値が前回値以上の場合、操作すべき対象が前回の操作項目と異なる操作項目に決定される(適合方針変更)ことが好適である。
これは、評点総和値の最新値(現在値)が前回値よりも小さい場合、前回の操作項目と同じ操作項目に対応する操作(1操作)を再び行うことで(適合方針を維持することで)評点総和値の次回値が現在値よりも小さくなる可能性が高く、一方、評点総和値の最新値(現在値)が前回値以上の場合、前回の操作項目と同じ操作項目に対応する操作(1操作)を再び行うと(適合方針を維持すると)評点総和値の次回値が現在値よりも大きくなる可能性が高いであろう、との知見に基づく。適合方針が変更される場合において、次の操作項目は、予め定められた操作順序(及び操作方向)に従うものであってもよい。
本発明に係る操作対象パラメータの適合装置では、適合が行われる複数種類の定常運転状態(燃料噴射量及び運転速度が一定)のそれぞれについて、上述のように適合実験が完了するまで1操作が繰り返し実行される。
本発明の実施形態に係る内燃機関の操作対象パラメータの適合装置(方法)を4気筒ディーゼル機関に適用したシステム全体の概略構成図である。 本発明の実施形態に係る操作対象パラメータの適合方法を実行する際における処理の流れを示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係る操作対象パラメータの適合方法を実行して次の操作項目が繰り返し決定されていく際における、適合方針の維持・変更の一例を示した図である。
図1は、本発明の実施形態に係る操作対象パラメータ適合装置が適用される、内燃機関(4気筒ディーゼル機関)10を含むシステム全体の概略構成を示している。このシステムは、燃料供給系統を含むエンジン本体20、エンジン本体20の各気筒の燃焼室(筒内)にガスを導入するための吸気系統30、エンジン本体20からの排ガスを放出するための排気系統40、排気還流を行うためのEGR装置50、及び電気制御装置60を含んでいる。
エンジン本体20の各気筒の上部には燃料噴射弁21が配設されている。各燃料噴射弁21は、図示しない燃料タンクと接続された燃料噴射用ポンプ22に燃料配管23を介して接続されている。燃料噴射用ポンプ22は、電気制御装置60と電気的に接続されていて、電気制御装置60からの駆動信号により各燃料噴射弁21から噴射される燃料の圧力(レール圧)を調整できるようになっている。また、各燃料噴射弁21は、電気制御装置60と電気的に接続されていて、電気制御装置60からの駆動信号により各燃料噴射弁21から噴射される燃料の量(燃料噴射量)を調整できるようになっている。
吸気系統30は、エンジン本体20の各気筒の燃焼室にそれぞれ接続された吸気マニホールド31、吸気マニホールド31の上流側集合部に接続され同吸気マニホールド31とともに吸気通路を構成する吸気管32、吸気管32内に回動可能に保持されたスロットル弁33、電気制御装置60からの駆動信号に応答してスロットル弁33を回転駆動するスロットル弁アクチュエータ33a、スロットル弁33の上流において吸気管32に順に介装されたインタクーラー34と過給機35のコンプレッサ35a、及び吸気管32の先端部に配設されたエアクリーナ36とを含んでいる。
排気系統40は、エンジン本体20の各気筒にそれぞれ接続された排気マニホールド41、排気マニホールド41の下流側集合部に接続された排気管42、排気管42に配設された過給機35のタービン35b、及び排気管42に介装されたディーゼルパティキュレートフィルタ(DPNR)43を含んでいる。排気マニホールド41及び排気管42は排気通路を構成している。タービン35b内には、タービン35bの容量を調整するためのバリアブルノズル35b1が備えられている。バリアブルノズル35b1は、電気制御装置60からの駆動信号に応答し、タービン35bの容量を変更し得るようになっている。
EGR装置50は、排気ガスを還流させる通路(EGR通路)を構成する排気還流管51と、排気還流管51に介装されたEGR制御弁52と、EGRクーラー53とを備えている。排気還流管51はタービン35bの上流側排気通路(排気マニホールド41)とスロットル弁33の下流側吸気通路(吸気マニホールド31)を連通している。EGR制御弁52は電気制御装置60からの駆動信号に応答し、再循環される排気ガス量(排気還流量、EGRガス流量、EGR率)を変更し得るようになっている。なお、EGR率とは、本例では、燃焼室に流入する全ガス流量(新気流量+EGRガス流量)に対するEGRガス流量の割合をいう。
電気制御装置60は、互いにバスで接続されたCPU61、CPU61が実行するプログラム、テーブル(マップ)、及び定数等を予め記憶したROM62、RAM63、バックアップRAM64、並びにADコンバータを含むインターフェース65等からなるマイクロコンピュータである。
インターフェース65は、熱線式エアフローメータ71、スロットル弁開度センサ72、吸気酸素濃度センサ73、クランクポジションセンサ74、アクセル開度センサ75、EGR制御弁開度センサ76、及び水温センサ77と接続されていて、これらのセンサからの信号をCPU61に供給するようになっている。
また、インターフェース65は、燃料噴射弁21、燃料噴射用ポンプ22、スロットル弁アクチュエータ33a、バリアブルノズル35b1、及びEGR制御弁52と接続されていて、CPU61の指示に応じてこれらに駆動信号を送出するようになっている。
熱線式エアフローメータ71は、吸気通路内を通過する吸入空気の質量流量(単位時間当りの吸入空気(新気)量)を計測するようになっている。スロットル弁開度センサ72は、スロットル弁33の開度を検出するようになっている。吸気酸素濃度センサ73は、吸気マニホールド31と排気還流管51との合流地点よりも下流の吸気通路内のガス(従って、エンジン10の燃焼室に吸入されるガス)に含まれる酸素の濃度を検出するようになっている。
クランクポジションセンサ74は、実クランク角度とともにエンジン10の回転速度であるエンジン回転速度を検出するようになっている。アクセル開度センサ75は、アクセルペダルAPの操作量を検出するようになっている。EGR制御弁開度センサ76は、EGR制御弁52の開度を検出するようになっている。水温センサ77は、冷却水の温度を検出するようになっている。
(操作対象パラメータの適合)
内燃機関10が運転される際に評価の対象とされる項目の代表例として、排ガスに含まれる有害物質である、NOx、スモーク(パティキュレート・マター、PM)、HC、COのそれぞれの排出量、燃焼騒音、燃料消費率等が挙げられる。以下、これら6つの量を「出力評価対象量」と称呼する。これらの出力評価対象量のそれぞれに影響を与えるパラメータの代表例として、燃料噴射弁21から噴射される燃料の噴射時期、EGR制御弁52の開度、バリアブルノズル35b1の開度等が挙げられる。以下、これら3つのパラメータを「操作対象パラメータ」と称呼する。
上記のように構成されたシステムに適用される、本発明の実施形態に係る操作対象パラメータ適合装置(以下、「本装置」という。)では、予め定められた複数種類の定常運転状態(燃料噴射量及びエンジン回転速度が一定)のそれぞれについて、上述の6つの出力評価対象量のそれぞれを対応する目標値以下とするために必要な上述の3つの操作対象パラメータのそれぞれの値(定常適合値)が、適合実験の繰り返しにより取得される。
以下、本装置による操作対象パラメータの適合方法について、その処理の流れを示す図2を参照しながら説明する。以下、内燃機関10が、適合される予め定められた複数種類の定常運転状態の1つに維持されている(即ち、燃料噴射量、及びエンジン回転速度が一定に維持されている)ものとして説明を進める。
ステップ205では、6つの出力評価対象量のそれぞれの目標値tiが取得される(i:1,2,…,5,6)。これらの目標値tiは、現在維持されている定常運転状態に対応する値である。ステップ210では、6つの出力評価対象量のそれぞれが実際に計測されて、それぞれの計測値diが取得される(i:1,2,…,5,6)。計測値は、目標値と同じ次元を有する値である。これらの計測は、周知の手法の1つにより実行される。
ステップ215では、6つの出力評価対象量のそれぞれの基準値biが更新される。基準値とは、6つの出力評価対象量の間で1操作に対するそれぞれの評点xi(後述)の変化量を調整するための値である。基準値は、計測値及び目標値と同じ次元を有する正の値である。基準値の更新については後に詳述する。ステップ220では、6つの出力評価対象量のそれぞれの評点xiが算出される(i:1,2,…,5,6)。評点xiは、下記(1)式に従って算出される。
Figure 2010209753
ステップ225では、評点xiのそれぞれについて、xiが「0」以上であるか否かが判定され、「No」と判定される場合(即ち、xi<0の場合)、ステップ230にて、xiが「0」とされる。これにより、目標が達成された(即ち、計測値di≦目標値ti)出力評価対象量についてはxi=0となり、目標が達成されていない(即ち、計測値di>目標値ti)出力評価対象量についてはxi>0となる。
ステップ235では、評点総和値yが、評点xi(i:1,2,…,5,6)の和に算出される。従って、y>0の場合、目標が達成されていない出力評価対象量が残っていることを意味し、y=0の場合、全ての出力評価対象量について目標が達成していることを意味する。
ステップ240では、評点総和値yが「0」よりも大きいか否かが判定され、「No」と判定される場合(即ち、y=0の場合)、現在の定常運転状態についての適合が終了する。即ち、全ての出力評価対象量について目標が達成している(計測値di≦目標値ti)場合、上記3つの操作対象パラメータの現在値がそれぞれ、対応する定常適合値として取得される。
一方、ステップ240にて「Yes」と判定される場合(即ち、y>0であり、目標が達成されていない出力評価対象量が残っている場合)、ステップ245にて、評点総和値yの現在値(最新値)が前回値よりも小さいか否かが判定される。ここで、「Yes」と判定される場合、ステップ250にて、前回実行された操作(1操作)と同じ操作(1操作)が実行され(適合方針維持)、「No」と判定される場合、ステップ255にて、前回実行された操作(1操作)と異なる操作(1操作)が実行される(適合方針変更)。
ここで、「操作」とは、操作対象パラメータの値を変更することを意味する。本装置では、上述した3つの操作対象パラメータのそれぞれについて2つの操作項目が存在する。具体的には、燃料噴射時期を現在値から所定角度だけ進角する操作(進角操作)、燃料噴射時期を現在値から所定角度だけ遅角する操作(遅角操作)、EGR制御弁52の開度を現在値から所定量だけ大きくする操作(EGR増操作)、EGR制御弁52の開度を現在値から所定量だけ小さくする操作(EGR減操作)、バリアブルノズル35b1の開度を現在値から所定量だけ大きくする操作(VN増操作)、及び、バリアブルノズル35b1の開度を現在値から所定量だけ小さくする操作(VN減操作)、の6つの操作項目が存在する。
ステップ250、255での「操作」とは、これら6つの操作項目のうちの何れか1つを指す。即ち、操作対象パラメータの1回の操作(1操作)では、上述した3つの操作対象パラメータの値のうちの1つのみが予め定められた量だけ変更される。
ステップ250の処理は、評点総和値yの現在値が前回値よりも小さい場合、前回の操作項目と同じ操作項目に対応する「1操作」を再び行うことで(即ち、適合方針を維持することで)、評点総和値yの次回値が現在値よりも小さくなる可能性が高いであろう、との知見に基づく。一方、ステップ255の処理は、評点総和値yの現在値が前回値よりも大きい場合、前回の操作項目と同じ操作項目に対応する1操作を再び行うと(即ち、適合方針を維持すると)、評点総和値yの次回値が現在値よりも大きくなる可能性が高いであろう、との知見に基づく。ステップ255では、新たな操作項目として、例えば、前回の操作に起因して評点xiが増大した(より具体的には、計測値diが増大した)出力評価対象量を低減するために効果的な操作項目が選択されることが好ましい。
ステップ240にて「Yes」と判定される場合(即ち、目標が達成されていない出力評価対象量が残っている場合)、ステップ250(適合方針維持)又はステップ255(適合方針変更)にて「1操作」がなされた後、各出力評価対象量の計測値diがそれぞれ安定した段階で、上述のステップ210以降の処理が再び繰り返される。
以下、ステップ215における基準値biの更新について説明する。本装置では、ステップ250又は255にて「1操作」がなされる毎に、ステップ215にて、各出力評価対象量について、基準値biが、下記(2)式に従って算出・更新される。
Figure 2010209753
上記(2)式において、nは、現在の定常運転状態について適合実験が開始された時点から現在までの「1操作」がなされた回数である。di(k)は、現在の定常運転状態について適合実験が開始された時点以降においてk回目に取得された計測値diであることを表す。特に、di(1)は、内燃機関10が現在の定常運転状態に維持開始された初期状態(即ち、3つの操作対象パラメータがそれぞれの初期値に設定された初期状態)において初めて取得された計測値である。即ち、このdi(1)は、1回目の「1操作」の実行前の計測値である。一般に、k回目の「1操作」の実行前の計測値はdi(k)と、k回目の「1操作」の実行後の計測値はdi(k+1)と表すことができる。従って、|di(k+1)−di(k)|は、k回目の「1操作」に対する計測値diの変化量の絶対値を表す。
上記(2)式から理解できるように、各出力評価対象量について、基準値biは、「1操作」毎に得られる計測値diの変化量(「1操作」に起因する変化量)の絶対値の平均値に設定される。即ち、基準値biは、新たな「1操作」がなされる毎に(即ち、値nが「1」だけ増大する毎に)、上記(2)式に従って更新されていく。
このように、新たな「1操作」がなされる毎に各出力評価対象量について基準値biが更新されていくこと、各出力評価対象量について目標値tiは一定であること、並びに、上記(1)式から、各出力評価対象量について、「1操作」に対する評点xiの変化量が「1」近傍に調整されていく、ということができる。即ち、6つの出力評価対象量の間で、「1操作」に対するそれぞれの評点xiの変化量が同程度に調整されていく。
以上のようにして、ステップ240にて「Yes」と判定される場合(即ち、目標が達成されていない出力評価対象量が残っている場合)、ステップ250又は255にて「1操作」がなされると共に、各出力評価対象量について、ステップ210にて取得された新たな計測値diと、ステップ215にて更新された基準値biと、ステップ205にて既に取得されている目標値ti(現在の定常運転状態について一定)とに基づいて、ステップ220にて評点xiが新たに算出・更新される。このように新たに算出されたそれぞれの評点xiに基づいて、ステップ235にて評点総和値yが更新され、更新されたyについてステップ240にて判定がなされる。
このような処理が、更新されたy=0になるまで(即ち、全ての出力評価対象量について目標が達成するまで)繰り返される。この過程において、y=0になった時点で(ステップ240にて「No」と判定)、上述のように現在の定常運転状態について適合が完了する。即ち、上記3つの操作対象パラメータの現在値がそれぞれ、対応する定常適合値として取得される。
以上説明したような操作対象パラメータの適合が、適合が行われる複数種類の定常運転状態(燃料噴射量及びエンジン回転速度が一定)のそれぞれについて順に行われていく。これにより、種々の定常運転状態について、上述の6つの出力評価対象量(の計測値di)のそれぞれを対応する目標値ti以下とするために必要な上述の3つの操作対象パラメータのそれぞれの定常適合値が取得される。
図3は、或る定常運転状態において、i=1,2がそれぞれ、NOxの排出量、燃料消費率に対応する場合における、各種値の変化の一例を示す。図3において、「操作n」は、n回目の「1操作」を表す。この例では、初期状態から「操作1」として「進角操作」が行われ、これにより評点総和値yが減少している。この結果、適合方針維持により「操作2」でも「進角操作」が行われ、これにより、評点総和値yが減少している。この結果、適合方針維持により「操作3」でも「進角操作」が行われ、これにより、評点総和値yが増加している。この結果、適合方針変更により、「操作4」では「進角操作」に代えて「EGR増操作」が行われている。「EGR増操作」が選択されたのは、yの増加がNOx排出量の増大(d1(3)<d1(4)を参照)に起因すると考えられること、並びに、NOxを減少させるにはEGR制御弁52の開度を大きくすることが効果的であること、に基づく。
そして、「操作4」により、評点総和値yが減少している。この結果、適合方針維持により「操作5」でも「EGR増操作」が行われている。なお、図3に示した例では、適合方針変更の場合、前回の「1操作」の実行前の状態(即ち、「操作3」の実行前の状態)から操作項目が変更された後の「1操作」(即ち、「操作4」)が実行されている。これにより、前回の「1操作」の実行後の状態(即ち、「操作3」の実行後の状態)から操作項目が変更された後の「1操作」(即ち、「操作4」)が実行される場合に比して、操作項目が変更された後の「1操作」(即ち、「操作4」)の実行後における評定総和値yが小さくなることが期待され得る。
以上、説明したように、本発明に係る操作対象パラメータの適合装置によれば、複数の出力評価対象量の評点xiが、目標値tiと、計測値diと、基準値biと、上記(1)式に従って計算される。これにより、複数の出力評価対象量の間で、それぞれの基準値diを調整することで、「1操作」に対するそれぞれの評点xiの変化量を調整することができる。加えて、上記(1)式において目標値tiが分子側にある。従って、目標値tiがゼロ近傍、或いはゼロであっても、評点xiが非常に大きい値(或いは、無限大)とはならない。従って、複数の出力評価対象量のうちで目標値tiがゼロに設定されるものが含まれてもその出力評価対象量の評点xiが適切に算出され得る。
加えて、基準値biが、上記(2)式に従って、「1操作」毎に得られる計測値diの変化量の絶対値の平均値に更新されていく。これにより、複数の出力評価対象量のそれぞれについて、「1操作」に対する評点xiの変化量が「1」近傍に調整されていく。即ち、複数の出力評価対象量の間で、「1操作」に対するそれぞれの評点xiの変化量が同程度に調整され得る。
また、評点xiが負の値になった場合に評点xiがゼロに設定される(図2のステップ230を参照)。これにより、目標が達成されていない(計測値di>目標値ti)出力評価対象量が存在しているにもかかわらず評点総和値y=0となって適合実験が完了してしまう事態の発生を防止できる。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、出力評価対象量として、上述した6つの物理量が採用されているが、これらに加えて、或いはこれらに代えて、その他の物理量が採用されてもよい。
同様に、上記実施形態では、操作対象パラメータとして、上述した3つのパラメータが採用されているが(即ち、6種類の操作項目が採用されているが)、これらに加えて、或いはこれらに代えて、その他の操作対象パラメータが採用されてもよい。その他の操作対象パラメータとしては、例えば、スロットル弁33の開度、燃料噴射圧力(レール圧)が採用され得る。
また、上記実施形態では、操作対象パラメータの1回の操作(「1操作」)として、上述した3つの操作対象パラメータの値のうちの1つのみが予め定められた量だけ変更されるが、「1操作」として、上述した3つの操作対象パラメータの値のうちの2つが予め定められた量だけ個別に変更されるように構成されてもよい。
加えて、上記実施形態においては、内燃機関としてディーゼル機関が採用されているが、火花点火式内燃機関(ガソリンエンジン)が採用されてもよい。
21…燃料噴射弁、22…燃料噴射用ポンプ、33…スロットル弁、35b…タービン、35b1…バリアブルノズル、52…EGR制御弁、60…電気制御装置、61…CPU、74…クランクポジションセンサ、76…EGR制御弁開度センサ

Claims (6)

  1. 内燃機関の運転時に評価の対象とされる所定の複数の出力評価対象量の目標値をそれぞれ取得する評価対象量目標値取得手段と、
    前記複数の出力評価対象量の実際に計測された値である計測値をそれぞれ取得する評価対象量計測値取得手段と、
    前記複数の出力評価対象量の基準値をそれぞれ取得する評価対象量基準値取得手段と、
    前記各出力評価対象量について、前記計測値から前記目標値を減じて得られる値を前記基準値で除した値を前記出力評価対象量の評点として算出する評点算出手段と、
    前記算出された複数の出力評価対象量のそれぞれの評点の総和を評点総和値として算出する評点総和値算出手段と、
    前記評点総和値に基づいて前記複数の出力評価対象量の計測値に影響を与える前記内燃機関の複数の操作対象パラメータについての複数の操作項目のうちから操作すべき対象を決定するとともに前記操作すべき対象となった操作項目に対応する操作を行い前記操作後の状態に対して前記評点総和値算出手段に前記評点総和値を新たに算出させること、を繰り返すことで、前記各出力評価対象量について前記計測値を前記目標値以下とするために必要な前記複数の操作対象パラメータの適合値をそれぞれ取得するパラメータ適合値取得手段と、
    を備えた、内燃機関の操作対象パラメータの適合装置。
  2. 請求項1に記載の内燃機関の操作対象パラメータの適合装置において、
    前記評価対象量基準値取得手段は、
    前記各出力評価対象量について、前記基準値を、前記操作すべき対象となった操作項目に対応する1回の操作毎に得られる前記出力評価対象量の計測値の変化量の絶対値の平均値に設定するように構成された内燃機関の操作対象パラメータの適合装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の操作対象パラメータの適合装置において、
    前記評点算出手段は、
    前記各出力評価対象量について、前記算出された評点が負の値になった場合、前記評点をゼロに設定するように構成された内燃機関の操作対象パラメータの適合装置。
  4. 請求項3に記載の内燃機関の操作対象パラメータの適合装置において、
    前記パラメータ適合値取得手段は、
    前記評点総和値がゼロになった場合、その時点での前記複数の操作対象パラメータのそれぞれの値を、対応する前記操作対象パラメータの適合値として使用するように構成された内燃機関の操作対象パラメータの適合装置。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の内燃機関の操作対象パラメータの適合装置において、
    前記パラメータ適合値取得手段は、
    前記評点総和値の最新値が前回値よりも小さい場合、前記操作すべき対象を前回の操作項目と同じ操作項目に決定し、前記評点総和値の最新値が前回値以上の場合、前記操作すべき対象を前回の操作項目と異なる操作項目に決定するように構成された内燃機関の操作対象パラメータの適合装置。
  6. 内燃機関の運転時に評価の対象とされる所定の複数の出力評価対象量の目標値をそれぞれ取得し、
    前記複数の出力評価対象量の実際に計測された値である計測値をそれぞれ取得し、
    前記複数の出力評価対象量の基準値をそれぞれ取得し、
    前記各出力評価対象量について、前記計測値から前記目標値を減じて得られる値を前記基準値で除した値を前記出力評価対象量の評点として算出し、
    前記算出された複数の出力評価対象量のそれぞれの評点の総和を評点総和値として算出し、
    前記評点総和値に基づいて前記複数の出力評価対象量の計測値に影響を与える前記内燃機関の複数の操作対象パラメータについての複数の操作項目のうちから操作すべき対象を決定するとともに前記操作すべき対象となった操作項目に対応する操作を行い前記操作後の状態に対して前記評点総和値を新たに算出すること、を繰り返すことで、前記各出力評価対象量について前記計測値を前記目標値以下とするために必要な前記複数の操作対象パラメータの適合値をそれぞれ取得する、内燃機関の操作対象パラメータの適合方法。
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