JP2010207787A - 二酸化炭素吸着材および分離または精製材 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも優れた選択吸着特性を有する二酸化炭素吸着材、および該吸着材を用いた従来よりも優れた二酸化炭素分離能力を有する分離または精製材の提供。
【解決手段】主鎖の二重結合がシス型でらせん構造を形成し、かつこれらのらせん構造が凝集した結晶構造を含有するプロピオール酸またはその誘導体から形成される重合体において、
一般式(I)
Figure 2010207787

[式中、nは10〜100,000の整数である。Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基、炭素数4〜7の複素環基、M(式中、Mは水素原子または1価の金属を表す)のいずれかを表す]
で表されるプロピオール酸またはその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型の重合体からなる二酸化炭素吸着材によって上記課題を解決する。
【選択図】なし

Description

本発明は、プロピオール酸またはその誘導体から形成される重合体で、主鎖の二重結合がシス型でらせん構造を形成し、かつ、これらのらせん構造が凝集した結晶構造を含有し、ヘリウム、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、炭素数1〜5の炭化水素およびそれらの混合物中に存在している二酸化炭素を選択的に吸着する特性を有する二酸化炭素吸着材および分離または精製材に関する。
これまでに、脱臭、排ガス処理などの分野で種々の吸着材が開発されている。活性炭はその代表例であり、活性炭の優れた吸着性能を利用して、空気浄化、脱硫、脱硝、有害物質除去など各種工業において広く使用されている。近年は半導体製造プロセスなどへ窒素の需要が増大しており、かかる窒素を製造する方法として、分子ふるい炭を使用して圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法により空気から窒素を製造する方法が使用されている。一方、近年、環境問題への意識の高まりから、温室効果ガスとして作用する二酸化炭素を積極的に回収するプロセスおよび材料開発も盛んに行われている。さらに、分子ふるい炭はメタノール分解ガスからの水素分離など各種ガスの分離または精製材として応用されている。
圧力スイング吸着法や温度スイング吸着法により混合ガスを分離する際には、一般に、分離吸着材として分子ふるい炭やゼオライトなどを使用し、その平衡吸着量または吸着速度の差により分離を行っている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、平衡吸着量の差によって混合ガスを分離する場合、これまでの吸着材では除去したいガスを選択的に吸着することができないため分離係数が小さくなり、装置の大型化は不可避であった。また、吸着速度の差によって混合ガスを分離する場合、ガスの種類によっては除去したいガスを吸着できるが、吸着と脱着を交互に行う必要があり、この場合も装置は依然として大型にならざるを得なかった。
一方、より優れた吸着性能を与える吸着材として、外部刺激により動的構造変化を生じる高分子金属錯体が開発されている(非特許文献2参照)。この新規な動的構造変化を生じる高分子金属錯体をガス吸着材として使用した場合、ある一定の圧力まではガスを吸着しないが、ある一定圧を超えるとガス吸着が始まるという特異な現象が観測されている。また、ガスの種類によって吸着開始圧が異なる現象が観測されている。
この現象を、例えば圧力スイング吸着方式のガス分離装置における吸着材に応用した場合、非常に効率良いガス分離が可能となる。また、圧力変化に要する時間を短縮することができ、省エネルギーにも寄与する。さらに、ガス分離装置の小型化にも寄与し得るため、高純度ガスを製品として販売する際のコスト競争力を高めることができることは勿論、自社工場内部で高純度ガスを用いる場合であっても、高純度ガスを必要とする設備に要するコストを削減できるため、結局最終製品の製造コストを削減する効果を有する。しかしながら、上記高分子金属錯体は有害な金属元素を使用しているため、環境への適合性においては課題を有する。また、比重の高い金属元素を含むこれらの錯体では、最終的に得られる材料が重くなることが懸念される。
すべての有機高分子素材は、大なり小なり分子吸着性および透過性を有し、その性能は素材の種類と対象分子の種類により大きく異なることから、有機高分子素材を用いて気体混合物から特定の成分を分離濃縮できることが古くから知られている。これらの高分子素材では、軽さ、成形性、生産性において特徴を有する。特に、膜による気体分離は、他の分離方法と比較して、エネルギー的に有利で、装置が小型軽量、機構が簡単でメンテナンスフリーなどの特徴を有するため、各種産業分野で活発に適用されている。
特に近年は、省資源、省エネルギー、有用なガスの回収などの観点から有機高分子素材が注目を集めている。例えば、空気の酸素と窒素への分離、プラットフォーミング法のオフガスからの水素の分離及び回収、アンモニア合成時の水素の分離回収、火力発電やゴミ焼却の排ガスからの二酸化炭素の回収及び窒素酸化物や硫黄酸化物の除去、油田のオフガスからの二酸化炭素の回収、天然ガスから二酸化炭素、硫化水素などの酸性ガスの除去やヘリウムの分離回収など、多くの分野に利用される。
このような観点から、種々の高分子材料が検討されている。中でもポリ置換アセチレンはユニークな構造により特異な性質を示すことが知られている。ポリ置換アセチレンはビニルポリマーに比較して剛直な主鎖構造を持ち、嵩高い置換基の存在により高い気体透過性能を示すことが知られている(例えば、非特許文献3)。中でもポリ(ジフェニルアセチレン)のようなポリ置換アセチレン類は、高い物質透過性、選択透過性と優れた熱安定性を有することが知られている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、触媒に五塩化タンタル(TaCl5)、助触媒にテトラブチル錫(n−Bu4Sn)を用いて得られるこれらのポリ置換アセチレン類において、得られるポリマーの幾何異性および高次構造に関する分析結果は無く、その詳細は不明であるし、二酸化炭素の吸着および分離性能については記載されていない。
一方、重合反応機構からは、シス型とトランス型が混合した重合体で、非晶質(アモルファス)を多く含むことが推察される(非特許文献4)。このようなポリ置換アセチレン類では、気体透過性に寄与する分子間隙のサイズおよび体積に分布が生じ、高度な選択吸着および選択透過性能を発現するには不利である。また、吸着・透過に関わる気体分子との接触により、その性質が経時的に変化していく懸念もある。さらに、複雑な構造を有するポリ(ジフェニルアセチレン)類を工業的に大量に合成することは困難である。
このため、より経時変化に安定で、より高い分離性能を有し、かつ工業的に大量生産が可能な高分子材料が求められている。
一方、重合触媒にロジウム(Rh)錯体を用いてp−メチルフェニルアセチレンのような置換アセチレンを重合した場合には、立体規則的に重合が進行し、主鎖の二重結合がシス型のポリ置換アセチレンが得られることが知られている(例えば非特許文献5)。こうして得られた主鎖の二重結合がシス型のポリ置換アセチレンはらせん構造を形成する。
特許文献2では、チオール基を有するRh触媒を金基板上に化学結合により固定化し、基板上に垂直に主鎖の二重結合がシス型のポリアセチレンを配置してなる螺旋型置換ポリアセチレン構造体からなる気体分離膜が報告されている。らせん構造の分子を一方向に配向させることは、機能を有効に利用する一つの手段であると考えられる。しかしながら、一面が金属基板であるこのような構造体において、気体分子が膜面に対して垂直に透過することは困難であることが推察される。Pdのような金属に対し、水素のような非常に小さな気体分子がわずかに溶解する現象は知られているが、二酸化炭素ほどのサイズを有する気体分子であれば、金基板を透過することはさらに困難である。一方、気体分子を吸着させる場合には、吸着機能を果たす機能表面のほぼ半分を失っており、吸着効率の面に課題が残る。また、金基板上に化学結合しているポリ置換アセチレンを、その構造を破壊することなく基板上から剥離することは困難である。さらには、このような複雑なプロセスを経て作製される構造体を、工業的に大量かつ安価に製造することは極めて困難である。
特開2002−322293号公報 特開2008−222796号公報
竹内雍 監修、「最新吸着技術便覧」第1版、株式会社エヌ・ティー・エス、p.84−163(1999) 松田亮太郎ら、Petrotec、第26巻、第2号、p.97−104(2003) T.Masuda,et.al.,J.Am.Chem.Soc.,Vol.105、p.7473−7474、(1983) 増田俊夫ら、有機合成化学、第43巻、第8号、p.744−752(1985) 田畑昌祥ら、高分子、第55巻、第12号、p.938−941(2006)
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、従来よりも優れた選択吸着特性を有する二酸化炭素吸着材、および該吸着材を用いた従来よりも優れた二酸化炭素分離能力を有する分離または精製材を提供することにある。
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討し、主鎖の二重結合がシス型でらせん構造を形成し、かつこれらのらせん構造が凝集した結晶構造を含有するプロピオール酸(アセチレンカルボン酸)またはその誘導体から形成される重合体によって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、以下のものが提供される。
(1)一般式(I)
Figure 2010207787
[式中、nは10〜100,000の整数である。Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数4〜7の複素環基、M(式中、Mは水素原子または1価の金属を表す)のいずれかを表す]
で表されるプロピオール酸またはその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型の重合体からなる二酸化炭素吸着材、
(2)前記のプロピオール酸またはその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型の重合体がポリ(メチルプロピオレート)である上記(1)記載の二酸化炭素吸着材、
(3)前記のプロピオール酸またはその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型の重合体がポリ(エチルプロピオレート)である上記(1)記載の二酸化炭素吸着材、
(4)nが100〜5,000である上記(1)記載の二酸化炭素吸着材、
(5)ヘリウム、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、炭素数1〜5の炭化水素またはそれらの混合物中の二酸化炭素吸着用である上記(1)記載の二酸化炭素吸着材、
(6)8−10族金属化合物を触媒として重合されたプロピオール酸またはその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型の重合体である上記(1)記載の二酸化炭素吸着材および
(7)上記(1)〜(6)に記載の二酸化炭素吸着材からなる分離または精製材を提供する。
本発明の二酸化炭素吸着材および分離または精製材は、主鎖の二重結合がシス型でらせん構造を形成し、かつこれらのらせん構造が凝集した結晶を含有することから、二酸化炭素吸着における材料の安定性が高い。また近傍に位置するカルボニル基を有する側鎖置換基同士が高度に配列し、ヘリウム、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、種々の炭化水素およびそれらの混合物などの中に混在する二酸化炭素を選択的に吸着することから、天然ガス、メタン発酵ガスの精製や、火力発電やゴミ焼却の排ガス、油田のオフガスからの二酸化炭素分離回収などに好適に用いることができる。
本発明によれば、二酸化炭素を選択的に吸着することのできる吸着材、およびそれらからなる分離または精製材を提供することができる。以下に本発明について詳細に述べる。
本発明の二酸化炭素吸着材は前記一般式(I)で表されるプロピオール酸またはその誘導体から形成される重合体からなる。以下、プロピオール酸またはその誘導体から形成される重合体を単に重合体と記載する。
前記重合体は主鎖の二重結合がシス型でらせん構造を形成し、かつ、これららせん構造が凝集した結晶を含有するものである。
重合体の平均重合度は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて測定を行い、ポリスチレン標準物質より求めた検量線を基に算出することができる。
重合体の一次構造は、例えば、1H−および13C−NMRにより測定することができる。
重合体の高次構造は、例えば、X線回折装置を用いた対称反射法(WAXD分析)で測定することができる。
[重合体の平均重合度]
前記一般式(I)における平均重合度nは、10〜100,000、好ましくは、100〜100,000、より好ましくは、nは100〜10,000の整数である。nを10以上とすることにより重合体から得られた成形体の機械的強度がより優れ、100以上とすることにより成形性がより優れるので好ましい。一方、重合体の製造コストおよび成形コストを考慮すると、10,000以下であることが好ましい。nが10〜100,000の重合体の数平均分子量は1,000〜30,000,000程度となる。後で述べる反応(重合)条件において、反応温度を低くするか、反応時間を短くするか、プロピオール酸またはその誘導体の濃度を低くすると得られる重合体の数平均分子量は低くなる。
[重合体の置換基R]
上記一般式(I)において、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10、好ましくは1〜5のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14、好ましくは6〜10のアリール基、炭素数4〜15、好ましくは4〜7の複素環基、M(式中、Mは水素原子または1価の金属を表す)のいずれかを表す。
[炭素数1〜10のアルキル基]
上記一般式中、Rが表す炭素数1〜10のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基が挙げられ、中でも、得られる二酸化炭素吸着材および分離または精製材の吸着容量、原料入手の容易さの観点からは、メチル基であることが好ましい。また、成形性の観点からは、エチル基であることが好ましい。
これらのアルキル基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ナフタセニル基、ペンタセニル基などのアリール基;ピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基などの複素環基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシル基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基などのアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基などのアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基などのアリールチオ基;tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基などの三置換シリルオキシ基;アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシロキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;メチルスルフォキシド基、エチルスルフォキシド基、フェニルスルフォキシド基などのスルフォキシド基;メチルスルフォニルオキシ基、エチルスルフォニルオキシ基、フェニルスルフォニルオキシ基、メトキシスルフォニル基、エトキシスルフォニル基、フェニルオキシスルフォニル基などのスルフォン酸エステル基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基などの1級または2級のアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基、ベンゼンスルホニル基、tert−ブトキシカルボニル基などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基などのアルキル基またはアリール基などで置換されていてもよいアミノ基;水酸基;シアノ基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、などのハロゲン原子などが挙げられる。
[炭素数6〜14のアリール基]
上記一般式(I)中、Rが表す炭素数6〜14のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基などの芳香族系炭化水素基が挙げられ、中でも、原料入手の容易さの観点から、フェニル基であることが好ましい。これらは、主鎖の二重結合がシス型の重合体が形成するらせん構造の外側に配置され、側鎖間でπ−πスタッキングを形成してらせん構造の安定化に寄与する。
[炭素数4〜7の複素環基]
上記一般式(I)中、Rが表す炭素数炭素数4〜7の複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピラジル基、ピリジル基、インドリル基、キノリル基などの複素環基などが挙げられる。中でも、主鎖の二重結合がシス型の重合体が形成するらせん構造の外側に配置され、側鎖間でπ−πスタッキングを形成してらせん構造の安定化に寄与し、二酸化炭素との親和性により選択性を高めるという観点から、ピロリル基、ピラジル基、ピリジル基が好ましい。
これらのアリール基および複素環基は置換基を有していてもよく、かかる置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの直鎖状、分岐状または環状のアルキル基;ビニル基、アリル基、クロチル基、プレニル基、7−オクテニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基、フェニルエチニル基などのアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシル基、シクロヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、などのアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基などのアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基などのアリールチオ基;tert−ブチルジメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジフェニルシリルオキシ基などの三置換シリルオキシ基;アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などのアシロキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基などのアルコキシカルボニル基;メチルスルフォキシド基、エチルスルフォキシド基、フェニルスルフォキシド基などのスルフォキシド基;メチルスルフォニルオキシ基、エチルスルフォニルオキシ基、フェニルスルフォニルオキシ基、メトキシスルフォニル基、エトキシスルフォニル基、フェニルオキシスルフォニル基などのスルフォン酸エステル基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基などの1級または2級のアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基、ベンゼンスルホニル基、tert−ブトキシカルボニル基などで置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、フェニル基などのアルキル基またはアリール基などで置換されていてもよいアミノ基;水酸基;シアノ基;ニトロ基;塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;などが挙げられる。
[M]
上記一般式(I)中、Rが示すM(式中、Mは水素原子または1価の金属を表す)が取り得る金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属および銅(1価)、銀などの遷移金属が挙げられる。中でも、アルカリ金属が好ましい。
[製造方法]
本発明において、一般式(I)で示される重合体を得る方法としては、下記化学反応式で示される工程で合成される。
Figure 2010207787
以下に化学反応の詳細を記す。
[重合用溶媒]
本発明におけるメチルプロピオレートやエチルプロピオレートのようなプロピオール酸またはその誘導体の重合は、通常、有機溶媒中で行う。
かかる有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、ネオペンチルアルコールなどのアルコール;(モノ、ジ、トリ)メチルアミン、(同)エチルアミン、(同)プロピルアミン、(同)ブチルアミンのようなアルキルアミン;エタノールアミンのようなアミノアルコール;ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ブチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル、エチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル;アセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、ジプロピルケトンなどのケトン;ヘプタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。
これらの有機溶媒の中で、反応速度の観点からアルコール、アミン、アミノアルコールのような極性の高い有機溶媒を用いるのが好ましい。これらの有機溶媒は1つを単独で使用してもよいし、2つ以上を併用してもよい。
有機溶媒を使用する場合、有機溶媒の使用量に特に制限はないが、プロピオール酸またはその誘導体および有機溶媒混合液全体中、通常、1〜95質量%であり、好ましくは70〜95質量%の範囲である。
有機溶媒の使用量を1質量%以上とすることにより、混合液の粘度が低下して効率的な攪拌ができるようになり、95質量%以下とすることにより、実用的な反応速度を維持することができる。
[重合用触媒]
本発明において、メチルプロピオレートやエチルプロピオレートのようなプロピオール酸またはその誘導体を重合させる際、反応を円滑に進行させるため、触媒を用いるのが好ましく、触媒としては8−10族金属化合物を用いることが好ましい。
好ましく用いられる8−10族金属化合物としては、例えばロジウム錯体、パラジウム錯体、イリジウム錯体、白金錯体などが挙げられる。
ロジウム錯体としては、例えばクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、アセチルアセトナトビス(エチレン)ロジウム、アセチルアセトナトビス(シクロオクテン)ロジウム、アセチルアセトナト(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム、(1,5−シクロオクタジエン)ビス(トリフェニルホスフィン)ロジウムヘキサフルオロホスフェート、(ノルボルナジエン)トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ロジウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(ノルボルナジエン)ロジウムテトラフルオロボレート、クロロビス(エチレン)ロジウム ダイマー、クロロビス(シクロオクテン)ロジウム ダイマー、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム ダイマー、クロロ(ノルボルナジエン)ロジウム ダイマー、クロロ(ジシクロペンタジエニル)ロジウム ダイマー、クロロ(テトラフルオロベンゾバレレン)ロジウム ダイマーなどが挙げられる。
パラジウム錯体としては、例えばジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウムが挙げられる。イリジウム錯体としては、アセチルアセトナト(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート、クロロビス(シクロオクテン)イリジウム ダイマー、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)イリジウム ダイマーなどが挙げられる。
白金錯体としては、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)白金、ジクロロ(ジシクロペンタジエニル)白金などが挙げられる。
これらの中でも、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム ダイマー、クロロ(ノルボルナジエン)ロジウム ダイマー、クロロ(テトラフルオロベンゾバレレン)ロジウム ダイマーが好ましく、重合活性ならびに工業的な入手性の観点からクロロ(ノルボルナジエン)ロジウム ダイマーがより好ましい。
上記触媒の使用量は、反応(重合)用混合液(プロピオール酸またはその誘導体および前記有機溶媒)1リットルあたり、金属原子換算で0.000001〜10モルの範囲であるのが好ましく、0.0001〜1モルの範囲であるのがより好ましい。触媒の使用量が、金属原子換算で反応(重合)用混合液1Lあたり0.000001モル未満であると、反応速度が極めて遅くなる傾向にあり、また10モルを超えてもそれに見合う効果が得られず、触媒コストが増大するのみである。
[重合用助触媒]
本発明における、メチルプロピオレートやエチルプロピオレートのようなプロピオール酸またはその誘導体の重合には、反応の活性を高めるために、必要に応じて、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、コリジン、キノリンなどの重合用助触媒の存在下に実施してもよい。
該助触媒を使用する場合、その使用量は、前記触媒の金属1モルに対して、通常、1モル以上添加するのが好ましく、反応のための有機溶媒として用いることもできる。
[重合条件]
本発明において、メチルプロピオレートやエチルプロピオレートのようなプロピオール酸またはその誘導体を重合させる際の反応温度は、−60〜100℃の範囲であるのが好ましく、0〜40℃の範囲であるのがより好ましい。反応温度を−60℃以上とすることにより、反応が適度な時間内に進行し、100℃以下とすることにより、シス型からトランス型への異性化などの副反応を抑制することができる。
プロピオール酸またはその誘導体の重合における反応時間は、通常、1分〜48時間の範囲であり、0.5〜10時間の範囲であるのが生産効率の観点から好ましい。通常、反応温度が低い場合は長時間で、反応温度が高い場合は短時間で反応を行うのが好ましい。
プロピオール酸またはその誘導体の重合における反応は、通常、常圧下に行われる。
反応は通常、下記の手順で反応が行われる。
まず、有機溶媒にプロピオール酸またはその誘導体を溶解させた混合液1を準備する。別途、同じ有機溶媒に8−10族金属化合物のような触媒およびトリエチルアミンのような添加剤を溶解させた混合液2を準備する。次いで、混合液1と混合液2を混合し、所定の反応温度に保ちながら撹拌して所定の時間反応させることにより重合体を含む反応液が得られる。
また、この重合に際して、得られる重合体の溶解度の低い貧溶媒、例えばアルコール、アミン、アセトニトリル、エーテル、酢酸エステル、アセトン、水またはn−ヘキサンなどを用いることが好ましい。また、アミンを含むアルコール、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたは超臨界液体炭酸ガスなどの混合溶媒を用いて、前記プロピオール酸またはその誘導体を室温付近で数時間掛けて重合してもよい。このようにして重合された重合体は溶媒中で凝集して沈殿するため、多孔質体または粉末が得られる。
[重合体の単離・精製法]
本発明においては、メチルプロピオレートやエチルプロピオレートのようなプロピオール酸またはその誘導体の重合工程で得られた反応液から重合体を一般的な手法によって単離、精製することができる。例えば、得られた反応液をメタノール、水のような貧溶媒中に添加して重合体を沈殿させ、ろ過により分離後、乾燥することにより、重合体を取得することができる。該重合体は、必要に応じて、さらに再沈処理を施すか、貧溶媒とソックスレー抽出器などを用いて、残留する金属化合物や低分子量成分を除去することができる。
[有機溶媒蒸気処理]
本発明の二酸化炭素吸着材として用いる重合体は、必要に応じて有機溶媒蒸気処理することにより、らせん構造ピッチや結晶性を変化させて用いることができる。有機溶媒蒸気処理を行う有機溶媒としては、重合体のらせん構造ピッチや結晶性を変化させるものであれば特に限定されないが、溶解度パラメータの差が10〜15である有機溶媒(アルコール、アミン、アミノアルコール、炭化水素など)、特に、処理効率の観点からn−ヘキサンが特に好ましい。ここで、重合体の溶解度パラメータは下記参考文献1に記載のBiceranoの方法に従って算出することができる。一方、有機溶媒蒸気の溶解度パラメータは下記参考文献2に記載の溶解度パラメータを用いることができる。
参考文献1:Prediction of polymer properties., Marcel Dekker Inc.,New York(1993)
参考文献2:A.F.M.Barton,Chem.Rev.,Vol.75,p.731−753(1975)
これらの溶媒蒸気下に重合体を暴露させることにより、らせん構造ピッチの減少および結晶性の増大を引き起こし、分子間隙のサイズおよび規則性を変化させ、所望の吸着性能を有する二酸化炭素吸着材を得ることができる。
具体的な処理方法としては、不活性ガス雰囲気下または空気雰囲気下、重合体を有機溶媒蒸気の気流下に暴露させるか、密閉容器内に重合体を加え、系内を減圧状態とした後、有機溶媒蒸気により減圧を解除することにより行うのが好ましい。例えば、重合体が粉末状の場合、塔内で不活性ガス雰囲気下または空気雰囲気下、有機溶媒蒸気の雰囲気を形成させ、同重合体の粉末を上部から散布してもよいし、粉末または顆粒状のものを積層した中に有機溶媒蒸気を流通させても良い。フィルム状で処理する場合は、網状のスペーサーとともに巻回した状態で有機溶媒蒸気を流通させても良い。
次に有機溶媒蒸気処理する際の具体的な条件について示す。有機溶媒蒸気の分圧は、処理条件における有機溶媒蒸気の飽和蒸気圧またはそれ以下であるが、処理速度の観点からは飽和蒸気圧に近いほど好ましい。処理温度は、−20〜100℃の範囲であるのが好ましく、0〜40℃の範囲であるのがより好ましい。処理時間は、1秒〜20時間の範囲であるのが好ましく、1分〜10時間の範囲であるのがより好ましい。
[加熱処理]
本発明の二酸化炭素吸着材として用いる重合体は、必要に応じて加熱処理することにより、らせん構造ピッチの減少および結晶性の増大を引き起こし、分子間隙のサイズおよび規則性を変化させ、所望の吸着性能を有する二酸化炭素吸着材を得ることができる。
具体的な処理方法としては、不活性ガス雰囲気下または空気雰囲気下、重合体を所定の温度に加熱して保持することが好ましい。
次に溶媒処理する際の具体的な条件について示す。好ましい加熱処理温度は50〜100℃である。50℃以上とすることにより、らせん構造のピッチや結晶性を効率良く変化させることができ、100℃以下とすることにより、主鎖骨格がシス型からトランス型に異性化して、らせん構造および結晶が崩壊するのを防止することができる。
[二酸化炭素吸着材の形状]
本発明の二酸化炭素吸着材の形状は特に制限されず、重合体を用いて製造できる成形体であればいずれでもよく、例えば、フィルム、シート、プレート、パイプ、チューブ、棒状体、粒状体、粉末状、各種異形成形体、繊維、中空糸、織布、編布、不織布などを挙げることができる。
特に効率的に二酸化炭素を吸着するという観点では、二酸化炭素吸着材の表面積が大きいほど有利であり、粉末状であることがより好ましい。また、本材料を分離膜として用いる場合には、気体分子の透過性、選択性、処理効率の観点よりフィルムであることが好ましく、処理効率の観点からは中空糸であることがより好ましい。
[粉末]
本発明の二酸化炭素吸着材として用いる重合体を粉末状で用いる場合には、ヘリウム、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、炭素数1〜5の炭化水素およびそれらの混合物中に存在している二酸化炭素を選択的、且つ効率良く吸着させることのできる粉末状の吸着材として利用することができる。
粉末状の重合体の形成方法としては、プロピオール酸またはその誘導体を重合する際の重合用溶媒として、プロピオール酸またはその誘導体に対して良溶媒で、重合体に対して貧溶媒であるものを用いることで、重合体の生成と同時に析出が起こり、粉末状の重合体を得ることができる。
また、製造した種々の重合体を良溶媒に溶解し、貧溶媒に滴下することで粉末状の重合体を得ることもできる。この場合、重合体溶液の濃度および貧溶媒の攪拌速度などにより、析出する粉末状の重合体の粒子径を制御することが可能である。溶液の濃度を低く、攪拌速度を速くすることにより粒径の小さな粉末状の重合体を得ることができる。
[フィルム]
本発明の二酸化炭素吸着材として用いる重合体をフィルム状で用いる場合には、二酸化炭素を選択的に吸着させることのできるフィルムとして利用することができる。フィルムの成形方法としては、本発明の二酸化炭素吸着材を適当な溶媒に分散または溶解させて液状の有機重合体組成物を調製し、当該液状の有機重合体組成物を、剥離性の基材または支持体上に塗工した後、乾燥して溶媒を除去する方法などを採用することによって製造することができる。本発明の二酸化炭素吸着材を溶解させる溶媒には、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフランなどが例示される。
離型性の基材または支持体への、本発明の二酸化炭素吸着材の塗工方法は特に制限されず、液状の塗工材料を用いる従来から知られている塗工方法のいずれもが採用でき、例えば、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、カーテンコーティング法、スリットダイコーター法、グラビアコーター法、スリットリバースコーター法、マイクログラビア法、コンマコーター法などの塗工方法を採用することができる。
[支持体]
本発明の二酸化炭素吸着材は単独のままで使用できるが、必要に応じて、酢酸セルロース、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン誘導体または紙などの天然若しくは合成繊維、或いはガラス若しくはアルミナなどの無機繊維と組み合わせて複合化してもよい。また。この二酸化炭素吸着材の形状としては、バルク体、織布、不織布またはフィルムなどが例示される。
[添加剤]
本発明の二酸化炭素吸着材は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、油剤、難燃剤、他の近赤外線吸収性化合物、紫外線吸収剤、色調補正剤、染料、酸化防止剤、その他の特殊機能剤の添加剤の1種または2種以上を含有することができる。
[対象ガス]
重合体からなる本発明の二酸化炭素吸着材は、種々の気体の中に混在している二酸化炭素を選択的に吸着するが、特に、ヘリウム、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、炭素数1〜5の炭化水素またはそれらの混合物中に混在している二酸化炭素を選択的に吸着するのに有効である。
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はそれらにより何ら限定されない。以下の実施例および比較例における分析および評価は次のようにして行った。
(1)重合体の確認
フーリエ変換型赤外分光光度計(FT−IR)を用いて測定を行い、化学結合の存在から重合体の生成を確認した。測定条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置 :フーリエ変換型赤外分光光度計 JIR−5500〔日本電子株式会社製〕
モード:減衰全反射(ATR)法
積算回数:128回
(2)重合体の分子量測定
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて測定を行い、ポリスチレン換算分子量として算出した。測定条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置 :高速液体クロマトグラフィー LC−10、〔株式会社島津製作所製〕
カラム:K−806L(昭和電工株式会社製)を2本連結(カラム温度:40℃)
移動相:クロロホルム(高速液体クロマトグラフィー用)〔和光純薬工業株式会社製〕
流速:1.0ミリリットル/分
検出器:RI
濾過:孔径0.45μmのフィルター
濃度:0.5mg/ミリリットル
注入量:55μL
標品:ポリスチレンスタンダードキット〔VARIAN,Inc.製〕
(3)重合体の分子構造:
[溶液1H−NMR]
得られた重合体がクロロホルム溶解する場合には、溶液1H-NMR(核磁気共鳴)測定を行い、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準物質とした場合の化学シフト値から構造を同定した。
<分析条件>
装置:270MHz超伝導核磁気共鳴装置 GSX−270〔日本電子株式会社製〕
溶媒:0.05v/v%TMS含有重クロロホルム〔Cambridge Isotope Laboratories,Inc.製〕
濃度:30mg/ミリリットル
温度:25℃
積算回数:128回
[固体13C−NMR(CP/MAS法)]
得られた重合体がクロロホルム溶解しない場合には、固体13C−NMR測定を行い、グリシンを第二基準物質とした場合の化学シフト値から構造を同定した。
<分析条件>
装置:300MHz超伝導核磁気共鳴装置 AV300〔VARIAN,Inc.製〕
温度:25℃
積算回数:12,800回
(4)重合体の結晶構造:
X線回折装置を用いて、回折角(2θ)=2〜40°の範囲を走査速度0.6°/分で走査し、対称反射法で測定した(WAXD分析)。測定条件の詳細を以下に示す。
<分析条件>
装置:回転対陰極X線回折装置 RINT2400〔株式会社リガク製〕
X線発生装置:封入管式X線発生装置
X線源:Cu 40kV 40mA
ゴニオメーター:試料水平ゴニオメーター
検出器:シンチレーションカウンター
ステップ幅:0.04°
スリット:発散スリット=1°、受光スリット=0.15mm、散乱スリット=1°
コリメーター:なし
サンプル:ガラス試料板に充填
(5)ガス吸着量測定
ガス吸着量測定について以下に具体的に示す。尚、以後の実施例および試験例においては、ヘリウムをHe、水素をH2、二酸化炭素をCO2、メタンをCH4とそれぞれ表記する。
<分析条件>
測定試料の前処理:室温下12時間ロータリーポンプにより減圧乾燥(到達真空度:5Pa)
吸着質:CO2、CH4、H2、Heのうち任意の純ガス、またはCO2/CH4混合ガス[CO2/CH4(体積比率)=75/25、50/50、25/75]
吸着平衡時間:60分
吸着温度:273°K
吸着圧力:101.3kPa(大気圧)
ガスブレンダー:SECB−2〔株式会社堀場エステック製〕
ガスクロマトグラフィー:GC−14B 〔株式会社島津製作所製〕
[ガスクロマトグラフィー分析条件]
カラム:ジーエル サイエンス株式会社製WG−100
INJ温度:100℃
DET温度:50℃
カラム温度:50℃
キャリアガス:ヘリウム
注入量:1ミリリットル
検出器:TCD
<分析手順>
測定試料の前処理:
測定試料に吸着されている不要な分子を除去するため、所定量秤量した試料を20ミリリットルのフラスコに封入し、室温下で12時間ロータリーポンプにより減圧乾燥した(到達真空度:5Pa)。
死容積の測定:
大気圧のHeガス(Heガスは試料に吸着されない)をシリンジの目盛りが100ミリリットルになるまで吸引した後、前処理後の試料が入ったフラスコを装置にセットし、フラスコ側のコックを開き、シリンジの目盛りからフラスコの死容積を求めた。死容積測定後、ロータリーポンプのラインを接続し、1時間減圧してフラスコ内のHeガスを除去した。
ガス吸着量測定:
所定の測定ガス(混合ガスの場合は、ガスブレンダーを通じて任意の混合ガスを調製)をシリンジの目盛りが100ミリリットルになるまで吸引した後、フラスコ側のコックを開き、ガスの吸着が平衡に達するまで60分間保持した。60分経過後、シリンジの目盛りからフラスコの死容積を引いて混合ガスの吸着容量を求めた。吸着ガスの組成は、残存ガスのガスクロマトグラフィー分析値より算出した。
[実施例1]
<ポリ(メチルプロピオレート)の合成>
マグネットスターラー、窒素ラインと窒素バルーンを三方コックにて接続したジムロート冷却器、セプタムを備えた50ミリリットルの三口フラスコに、窒素バブリングした蒸留メタノール20ミリリットルに溶解させたクロロ(ノルボルナジエン)ロジウム ダイマー230mg(0.5ミリモル)をフィードし、窒素雰囲気下、40℃に保持した後、窒素バブリングした蒸留メタノール5ミリリットルに溶解させたメチルプロピオレート4.205g(50ミリモル)を0.5ミリリットル/分でフィードした。フィード完了後、窒素雰囲気下、40℃で5時間保持した。所定時間経過後、過剰のメタノールを添加して反応を停止し、ろ別後さらにメタノールで数回洗浄し、室温で12時間減圧乾燥した。
得られた生成物についてFT−IR測定を行い、単量体の三重結合由来の2127cm-1(νC≡C)、3280cm-1(νH−C≡)のピークの消失、および重合体主鎖の二重結合由来の1621cm-1(νC=C)、2958cm-1(νH−C=)の出現をもって重合体が生成していることを確認した。得られた重合体は種々の有機溶媒に対して不溶であり、その数平均分子量を算出することはできなかった。
得られた重合体は種々の有機溶媒に対して不溶であることから、CP/MAS法により固体13C−NMR測定を行った結果、52ppm(−O3)、128ppm(=H−)、134ppm(=−)、164ppm(=O)にそれぞれ帰属されるピークを有しており、主鎖の二重結合がシス型のポリ(メチルプロピオレート)であることを確認した。
続いて、WAXD分析を行った結果、面間隔d=8.5Å(2θ=10.3°)に出現した回折ピークが六方晶の(100)面に帰属されると仮定した場合、面間隔dと格子定数の関係式
1/d2=4(h2+hk+k2)/3a2+l2/c2
a、c:結晶軸の長さ[Å]
h、k、l:ミラー指数[−]
から、a=9.8Åが得られる。同様に、面間隔d=4.8Å(2θ=18.2°)に出現した回折ピークが六方晶の(200)面に帰属されると仮定した場合、a/2=5.5Åが得られ、面間隔d=8.5Å(2θ=10.3°)に出現した回折ピークと等価の面であったので、得られた重合体の結晶構造は擬六方晶であると帰属した。
<ポリ(メチルプロピオレート)のガス吸着測定>
得られたポリ(メチルプロピオレート)について、CO2、CH4の各純ガス吸着量の測定を行った結果、273°K、大気圧下における吸着量は、CO2=11.0ミリリットル/gであり、CH4は全く吸着しなかった。
次に、CO2/CH4混合ガスについて吸着量の測定を行った結果を表1に示す。
[実施例2]
<ポリ(エチルプロピオレート)の合成>
実施例1において、メチルプロピオレートに代えてエチルプロピオレート4.905g(50ミリモル)を用いた以外は、実施例1と同様に反応を行った。
得られた生成物についてFT−IR測定を行い、単量体の三重結合由来の2127cm-1(νC≡C)、3280cm-1(νH−C≡)のピークの消失、および重合体主鎖の二重結合由来の1625cm-1(νC=C)、2985cm-1(νH−C=)の出現をもって重合体が生成していることを確認した。
得られた重合体の数平均分子量は22,000〔重合度≒224〕であった。
得られた重合体はクロロホルムに可溶であるため、重クロロホルムに溶解し、1H−NMR測定を行った結果、1.23ppm(−CH2 3 :3H)、3.97pm(−C 2 CH3:2H)、6.86ppm(−C=C−:1H)にそれぞれ帰属されるピークを有しており、主鎖の二重結合がシス型のポリ(エチルプロピオレート)であることを確認した。
続いて、WAXD分析を行った結果、面間隔d=10.7Å(2θ=8.3°)に出現した回折ピークが六方晶の(100)面に帰属されると仮定した場合、面間隔dと格子定数の関係式
1/d2=4(h2+hk+k2)/3a2+l2/c2
a、c:結晶軸の長さ[Å]
h、k、l:ミラー指数[−]
から、a=12.4Åが得られる。同様に、面間隔d=5.6Å(2θ=15.8°)に出現した回折ピークが六方晶の(200)面に帰属されると仮定した場合、a/2=6.5Åが得られ、面間隔d=10.7Å(2θ=8.3°)に出現した回折ピークと等価の面であったので、得られた重合体の結晶構造は擬六方晶であると帰属した。
<ポリ(エチルプロピオレート)のガス吸着量測定>
得られたポリ(エチルプロピオレート)について、CO2、CH4の各純ガス吸着量の測定を行った結果、273°K、大気圧下における吸着量は、CO2=5.2ミリリットル/gであり、CH4は全く吸着しなかった。
次に、CO2/CH4混合ガスについて吸着量の測定を行った結果を表1に示す。
[実施例3]
<ポリ(n−ブチルプロピオレート)の合成>
実施例1において、メチルプロピオレートに代えてn−ブチルプロピオレート6.305g(50ミリモル)を用いた以外は、実施例1と同様に反応を行った。
得られた生成物についてFT−IR測定を行い、単量体の三重結合由来の2127cm-1(νC≡C)、3280cm-1(νH−C≡)のピークの消失、および重合体主鎖の二重結合由来の1623cm-1(νC=C)、2988cm-1(νH−C=)の出現をもって重合体が生成していることを確認した。
得られた重合体の数平均分子量は32,000〔重合度≒254〕であった。
得られた重合体はクロロホルムに可溶であるため、重クロロホルムに溶解し、1H−NMR測定を行った結果、0.93ppm(−CH2 3 :3H)、1.38pm(−C 2 CH3:2H)、1.59pm(−CH2−C 2 −CH2−:2H)、3.76〜3.98ppm(−O−C 2 −CH2−:2H)、6.85ppm(−C=C−:1H)にそれぞれ帰属されるピークを有しており、主鎖の二重結合がシス型のポリ(n−ブチルプロピオレート)であることを確認した。
続いて、WAXD分析を行った結果、面間隔d=12.4Å(2θ=7.1°)に出現した回折ピークが六方晶の(100)面に帰属されると仮定した場合、面間隔dと格子定数の関係式
1/d2=4(h2+hk+k2)/3a2+l2/c2
a、c:結晶軸の長さ[Å]
h、k、l:ミラー指数[−]
から、a=14.3Åが得られる。同様に、面間隔d=5.6Å(2θ=15.8°)に出現した回折ピークが六方晶の(200)面に帰属されると仮定した場合、a/2=6.5Åが得られ、面間隔d=12.4Å(2θ=7.1°)に出現した回折ピークと等価の面であったので、得られた重合体の結晶構造は擬六方晶であると帰属した。
<ポリ(n−ブチルプロピオレート)のガス吸着量測定>
得られたポリ(n−ブチルプロピオレート)について、CO2、CH4の各純ガス吸着量の測定を行った結果、273°K、大気圧下における吸着量は、CO2=2.6ミリリットル/gであり、CH4は全く吸着しなかった。
次に、CO2/CH4混合ガスについて吸着量の測定を行った結果を表1に示す。
[比較例1]
<ポリ(フェニルアセチレン)の合成>
実施例1において、メチルプロピオレートに代えてフェニルアセチレン5.105g(50ミリモル)を用いた以外は、実施例1と同様に反応を行った。
得られた生成物についてFT−IR測定を行い、単量体の三重結合由来の2110cm-1(νC≡C)、3291cm-1(νH−C≡)のピークの消失、および重合体主鎖の二重結合由来の1597cm-1(νC=C)、3020cm-1(νH−C=)の出現をもって重合体が生成していることを確認した。得られた重合体の数平均分子量は44,200〔重合度≒433〕であった。
得られた重合体はクロロホルムに可溶であるため、重クロロホルムに溶解し、1H−NMR測定を行った結果、σ(ppm)=5.84ppm(−C=C−:1H)、6.62〜6.94pm(−C6 5 :5H)にそれぞれ帰属されるピークを有しており、主鎖の二重結合がシス型のポリ(フェニルアセチレン)であることを確認した。
続いて、WAXD分析を行った結果、面間隔d=11.2Å(2θ=7.9°)に出現した回折ピークが六方晶の(100)面に帰属されると仮定した場合、面間隔dと格子定数の関係式
1/d2=4(h2+hk+k2)/3a2+l2/c2
a、c:結晶軸の長さ[Å]
h、k、l:ミラー指数[−]
から、a=12.8Åが得られる。同様に、面間隔d=4.6Å(2θ=19.3°)に出現した回折ピークが六方晶の(200)面に帰属されると仮定した場合、a/2=5.3Åが得られ、面間隔d=11.2Å(2θ=7.9°)に出現した回折ピークと等価の面であったので、得られた重合体の結晶構造は擬六方晶であると帰属した。
<ポリ(フェニルアセチレン)のガス吸着量測定>
得られたポリ(フェニルアセチレン)について、CO2、CH4の各純ガス吸着量の測定を行った結果、273°K、大気圧下における吸着量は、CO2=5.6ミリリットル/g、CH4=1.8ミリリットル/gであった。
次に、CO2/CH4混合ガスについて吸着量の測定を行った結果を表1に示す。
Figure 2010207787
表1に示す結果より、本発明の二酸化炭素吸着材は、組成比の異なるCO2/CH4混合ガス吸着試験において、CO2を極めて高い選択率で吸着することが明らかである。
[比較例2]
実施例2で得られたポリ(エチルプロピオレート)について、H2の純ガス吸着量の測定を行った結果、273°K、大気圧下において、H2は全く吸着しなかった。
以上の結果および実施例2で測定したCO2純ガス吸着量(5.2ミリリットル/g)より、本発明の二酸化炭素吸着材は、CO2/H2混合ガスにおいてH2を吸着せず、二酸化炭素のみを選択的に吸着することが裏付けられた。
[比較例3]
実施例2で得られたポリ(エチルプロピオレート)のについて、Heの純ガス吸着量の測定を行った結果、273°K、大気圧下において、Heは全く吸着しなかった。
以上の結果および実施例2で測定したCO2純ガス吸着量(5.2ミリリットル/g)より、本発明の二酸化炭素吸着材は、CO2/He混合ガスにおいてHeを吸着せず、二酸化炭素のみを選択的に吸着することが裏付けられた。
本発明の二酸化炭素吸着材および分離または精製材は、主鎖の二重結合がシス型でらせん構造を形成し、かつこれらのらせん構造が凝集した結晶を含有することから、二酸化炭素吸着における材料の安定性が高い。またカルボニル基を有する側鎖置換基が高度に配列し、ヘリウム、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、種々の炭化水素およびそれらの混合物中に混在する二酸化炭素を選択的に吸着することから、天然ガス、メタン発酵ガスの精製や、火力発電やゴミ焼却の排ガス、油田のオフガスからの二酸化炭素分離回収などに好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. 一般式(I)
    Figure 2010207787
    [式中、nは10〜100,000の整数である。Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜14のアリール基、炭素数4〜7の複素環基、M(式中、Mは水素原子または1価の金属を表す)のいずれかを表す]
    で表されるプロピオール酸またはその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型の重合体からなる二酸化炭素吸着材。
  2. 前記のプロピオール酸またはその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型の重合体がポリ(メチルプロピオレート)である請求項1記載の二酸化炭素吸着材。
  3. 前記のプロピオール酸またはその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型の重合体がポリ(エチルプロピオレート)である請求項1記載の二酸化炭素吸着材。
  4. nが100〜5,000である請求項1記載の二酸化炭素吸着材。
  5. ヘリウム、水素、酸素、窒素、一酸化炭素、炭素数1〜5の炭化水素またはそれらの混合物中の二酸化炭素吸着用である請求項1記載の二酸化炭素吸着材。
  6. 8−10族金属化合物を触媒として重合されたプロピオール酸またはその誘導体から形成される主鎖の二重結合がシス型の重合体である請求項1記載の二酸化炭素吸着材。
  7. 請求項1〜6に記載の二酸化炭素吸着材からなる分離または精製材。
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