以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
<概要>
図1〜図10を用いて、本発明の一実施の形態のシステム(商品直接交換取引システム)について説明する。概要として、本システム(図3、図4等)は、特徴的な商品直接交換取引モデル(図1(c)、図2)に基づき、ユーザ間での商品の直接交換取引を仲介、支援等し実現する機能を持つ。本システムは、大きくは、第1システム(第1の情報処理システム)である商品交換価値算出システム10と、第2システム(第2の情報処理システム)であるマッチングシステム(商品直接交換取引マッチングシステム)20とから構成される。
第1システム10は、複数種類の商品間における直接交換取引に供するために、各商品の交換価値の評価・算出及びその交換価値の情報の提供を独自に行う機能を持つ。第1システム10では、対象商品群に関し、広義リスクを考慮した独自の計算に基づき商品間の交換価値を算出する処理を行い(図2、図4等)、その交換価値を含む交換価値情報(例えば図5、G1)を出力する。
第2システム20は、複数ユーザ間での商品間の直接交換取引をマッチングする機能を持つ。第2システム20では、第1システム10の処理機能による交換価値の情報に基づき、ユーザからの交換取引の発注を受け付けて、所定の方式でマッチングを行い、またその状況などを表す取引情報(例えば図5、G2)を出力する。各ユーザは、本システム(第1または第2システム)が提供する交換価値情報や取引情報の参照などに基づき、比較検討などして、交換取引の発注(取引条件提示や応札など)を行う。
マッチングにより取引が成立した場合(例えば図6)、第2システム20は、決済支援機能により、各商品対応の決済システム80へ決済指示を行うことにより決済させる(図7)。このようにして、本システムでは、商品直接交換取引(図1(c))を実現し、従来の清算の介在による取引(図1(b))では存在しない価値(プレミアムなど)が創生される。
<交換価値>
図2を用いて、本システムにおける交換価値の基本的な概念を説明する。まず図2(a)では、本システムで適用される異なる種類の商品(直接交換取引可能な商品)の例(商品#1〜#6)における各商品の現在価値とその差を示している。本システムで適用対象の商品とは、図1(a)の例のように、市場取引可能な広義の商品全般である。これらの各商品の現在価値は、各市場で単位や特性などが異なるため、そのままでは商品同士を比較不可能である。
図2(a)の各商品の現在価値(言い換えれば原市場価値)は、各商品の市場における現在(直近)の取引価格の情報(後述の価格情報D1)などの参照により計算することができる。そして、本システム(第1システム10)は、図2(a)の各商品の現在価値(価格)を変換(補正)することで、図2(b)のように、各商品間の交換価値(Vで表す)を算出する。
図2(b)では、各商品間の交換価値(交換比率など)の算出後を示している。異なる商品に関して所定の方式で交換価値(V)を評価・算出することで、商品同士を比較可能となる。ユーザは交換価値(V)を用いた比較検討による交換取引が可能である。交換価値(V)の情報は、本システム(第1システム10)が独自に評価・算出する、交換取引用の基準や参考となる情報である。ユーザによる実際の交換取引実行時には、価値(価格)は、上記交換価値(V)に基づいて、その時点の取引状況や取引条件内容等の各種要因が反映されて変動した結果になる。
本システムでは、商品間の交換価値(V)を、主に、基礎価値(aで表す)と、補正値(bで表す)(それによるプレミアム(Pで表す))とによって組成する。[交換価値(V)]=[基礎価値(a)]×[補正値(b)]である。[基礎価値(a)]は、図2(a)の現在価値を元に得られ、数量×価格による。[補正値(b)]は、少なくともリスク係数(広義リスク補正値)(Rで表す)を含み、更に、取引オプション補正値(Oで表す)や、取引状況補正値(Qで表す)などを含む。取引オプション(後述)をOPと略す。[交換価値(V)]−[基礎価値(a)]=[プレミアム(P)]である。基礎価値(a)と、補正後の交換価値(V)とに生じる差を、プレミアム(P)と考える。
本システムにより算出する交換価値(V)においては、補正値(b)であるリスク係数(R)やOP補正値(O)などの反映によって、相応のプレミアム(P)が付くことになる。交換取引の実行時、対象商品同士では、従来のように単純に換金した場合に比べて、上記プレミアム(P)が反映された取引になる。
交換価値(V)は、図2(a)の各商品の現在価値を元に、まず比較可能な相対価値(例えば円換算値)である基礎価値(a)が計算され(後述の処理フロー、図4、S1)、その基礎価値(a)に対し、リスク係数(R)を含む補正値(b)により補正計算(同S2)することで、基本的な交換価値(V)の情報(交換比率など)が得られる。
基本的な交換価値(特にV1とする)は、補正値(b)としてリスク係数(R)を演算して得られる。即ち、[基本−交換価値(V1)]=[基礎価値(a)]×[リスク係数(R)]である。更に、本システムで、OP(図4、S3)や取引状況反映(同S4,S5)がある場合は、補正値(b)として、リスク係数(R)だけでなく、そのOP分や、取引状況反映分を演算(補正)するものである。即ち、それらの分の補正による交換価値(特にV2とする)は、[補正−交換価値(V2)]=[基本−交換価値(V1)(=a×R)]×[取引オプション補正値(O)]×[取引状況補正値(Q)]である。OP補正値(O)は、OP毎に設定される掛目(割引率など)である。取引状況補正値(Q)は、例えば、シナリオ補正値であり、市況シナリオ毎に設定される掛目である。なお各補正値(係数)の演算は、乗算に限らず、加算や、より複雑な演算の場合もある。
また、OP補正値(O)は、ユーザが交換取引実行時に所定のOP(条件)を付属的に設定する場合の補正値である。また、取引状況補正値(Q)は、その時点の状況を反映して値を更新する場合の補正値であるが、詳しくは、本システム(第2システム20)による交換取引状況を反映する分(S4)の補正値(Q1とする)と、一般の取引状況(市況)を反映する分(S5)の補正値(Q2とする)とがある。
また例えば、各商品単位の交換価値(V)をもとに、商品間の交換比率(rで表す)を算出して提示することができる(後述、図5、図6(a)等)。交換比率(r)は、交換対象として相対する商品の組み合わせ(対)における交換価値(V)の比率である。例えば商品Aを基準として相対商品Bとの交換比率(r)は、[交換比率(r)]=[商品Aの交換価値VA]/[商品Bの交換価値VB]である(VA:VB)。
なお、図2(b)では、各基礎価値(a)に対し各補正値(b)を演算した結果である各商品の交換価値(V)の大きさが概ね同じになる場合(例えば債券の基礎価値(a)が最大の場合)を示しているが、これに限らず、各Vの大きさが異なる場合もある。
<リスク係数(R)>
S2の補正計算では、補正値(b)の一部として、リスク係数(R)を用いる。リスク係数(R)は、本例では、(1)商品性差異、(2)流動性差異、(3)狭義リスク、の3つの要因を含めて、広義リスクと捉えており、それら広義リスクを考慮して計算することでリスク係数(R)とする。
(1)商品性差異は、商品ごとに、他商品との商品性(商品特性)の差異を計算したものであり、例えば換金性、期限などの商品性によるリスク(保有リスク)を反映したものであり、その商品を有することによって得られる利益や権利、義務に関わる部分を指している。例えば、株式には株主として議決権/配当/コーポレートアクション(例えば分割等)がある。これを、例えば石油と比較した際の差分を捉えたものである。また例えば、先物・オプション、デリバティブには、証拠金差し入れが必要であるが、現物取引には無い、といった差異を考慮したものである。
(2)流動性差異は、商品間の流動性の差異を計算したものであり、その商品の市場の厚み(取引量や取引成立の容易性)が商品毎に異なる部分を指している。例えば、決済の迫った期近の先物・オプションは、その取引の価値がおおよそ確定しているため、取引が極端に減少する(金融取引に限らず商品取引も同様)。これに比べて、現物株式はこうした変化が無い。また、一部のデリバティブ商品や、仕組み債は、そもそも市場流通量が少ないので、現物株式との比較において、交換相手が見つからない可能性が高いと言える。
(3)狭義リスクは、商品間の価格変動リスク(市場変動リスク)を計算したものであり、本実施の形態のシステムにおいては、翌日市場の値段の上下幅の大きさに対応付けられる。S2(補正計算)では、翌日市場を前日市場の終値をベースに、楽観/中立/悲観のシナリオによって補正値に傾きを持たせている。
<システム全体>
図3,図4を用いて、本システムの全体の構成例を説明する。本システムは、第1システム10、第2システム20、受付・分散サーバ30などを有し、ユーザ(U:投資家等の取引参加者)の利用する端末(コンピュータ)100群と、通信ネットワーク(インターネット等)90上で接続される情報処理システムとして構成されている。本システムは、例えば証券会社などにより提供、管理される。
また、本システムが利用(接続)する外部システム(情報処理システム)として、相場報道情報63を提供するシステム70、商品種類ごとの決済システム80(決済(清算)機関など)、その他の各種情報64(交換価値算出に用いる情報)を提供するシステム71、及びユーザの資産情報69を提供または管理するシステム81などを有する。
第1システム10は、交換価値算出部11、情報取得部12、情報提供部13、DB(データベース)40、交換価値情報表示部51などを備える。第2システム20は、図3のマッチング部21、情報提供部22、決済支援部23、クライアント機能50として取引情報表示部52、及び取引発注受付部53、図4のOP処理部25、取引支援部26などを備える。クライアント機能50に含まれる各機能(51,52,53,26)は、ユーザの端末100からの各動作(照会、発注など)に対応するサービス機能である。
第1システム10は、図4のような所定のフローや情報データなどに基づいて、各商品間の交換価値(図2)を評価・算出し、その交換価値をもとに、それを含む交換価値情報61を外部へ提供する。第1システム10は、情報取得部12を通じて外部のシステム70やその他のシステム71から取得する相場報道情報63(価格情報D1を含む)や各種情報64などをもとに、主に交換価値算出部11により、商品間の交換価値を算出する処理を行い、当該交換価値を含む交換価値情報61を、DB40に保存、管理すると共に、情報提供部13を通じて随時第2システム20へ提供する。
第2システム20は、第1システム10から得られる交換価値情報61などの情報データをもとに、主にマッチング部21により、ユーザ間の商品間の直接交換取引(その発注)をマッチングする処理を行う。またクライアント機能50により、ユーザの端末100からの照会や発注などを処理する。発注や取引の状況は、取引情報62として反映し表示する。マッチングの処理では、複数のユーザの端末100からの複数の交換取引の発注(取引条件提示や応札等)の情報を、所定の方式でマッチング、判定して、交換取引を成立させる。あるいは、近い内容の発注同士を取引成立させるべく支援する。それらにより、取引成立時には、決済支援部23の機能を用いて、各商品対応の決済システム80と連携し、決済支援部23から各決済システム80へ決済情報68(決済指示)を出力することにより決済させる。
また、第2システム20から第1システム10へ取引情報62などをフィードバック(提供)する機能を、情報提供部22として有する。第1システム10と第2システム20との間の情報(61,62)の授受を、例えば情報提供部13と情報提供部22との間で行う。この授受は、例えば第1システム10−第2システム20間の通信ネットワーク(またはサーバ30)を介して行われる。
ユーザ(U)の端末100は、本システムが提供するクライアント機能50を利用する。端末100は、ユーザ個人所有のPC等でもよいし、証券会社等の店舗端末等でもよい。ユーザである投資家や証券会社の担当者などは、端末100におけるキーボードやマウスの操作により、「照会」や「発注」、「取引支援」などの動作が実行可能であり、それに対して本システムのクライアント機能50から応答として得られる表示情報が、端末100の画面に表示される。
本システム(各システム)は、例えば分散サーバシステム(サーバやメインフレーム等のコンピュータ及びデータベース等)により構成される。システムのフロントには、受付・分散サーバ(群)30が設けられている。サーバ30は、多数の端末100からのアクセスを受け付けて分散して対応処理する機能を有する。端末100から通信ネットワーク90を介してサーバ30へアクセスすると、アクセス(要求)を受けたサーバ30から、アクセス先のシステム(10,20)(それを構成するサーバコンピュータ等)へ当該アクセス(要求)を転送する。アクセスの種類は、例えば、交換価値情報61(G1)や取引情報62(G2)の照会や、取引の発注などがある。
第1システム10のDB40には、外部システムから取得した各種情報データや、算出して得た交換価値情報61や、算出に用いる補正情報65や、第2システム20からフィードバックにより得た取引情報62などが格納される。なおDB40の位置は第1システム10の外としても構わない。
決済支援部23による決済支援機能では、マッチング部21を通じて成立した取引について、各商品ごとの決済システム80への決済指示データ(決済情報68)を発生させるこtで、決済代行する。
システム70は、情報ソースであり、相場報道情報63として、例えば各商品の現在取引価格などの情報(価格情報D1)(例えば株価などの市場速報)を配信、提供する。システム70は、例えば、東京証券取引所、東京工業品取引所、東京穀物商品取引所、その他市場の取引所などにおける情報処理システムである。
各商品ごとの決済システム80は、例えば、商品取引に関する清算(債務引き受け)業務を行う機関や、その他金融機関の決済機関などであり、差金決済や商品現物受渡しなどを処理する。これらは、既存のシステムを用いてもよい。
システム81では、ユーザ(取引参加者)群の資産情報69群を管理する。資産情報69は、本システムの交換取引に用いる情報である。システム81の資産情報69、及び取引支援部26等の機能を通じて、ユーザは、自他ユーザの資産情報69を参照して交換取引の判断に用いることができる(後述)。なおこのシステム81に相当する機能(処理部)を第2システム20内に設けても構わない。
<第1システム、交換価値算出(概略)>
図4を用いて、第1システム10側の詳しい構成例、及び交換価値算出処理フローなどについて説明する。なお図4では、情報提供部(13,22)などを図示省略する。
第1システム10(主に交換価値算出部11)は、外部システム(70,71)から、相場報道情報63(価格情報D1)などを入力し、また、第2システム20(主にマッチング部21)から、取引情報62(OP情報D5、交換取引状況情報D6などを含む)などをフィードバックにより入力する。また、交換価値算出部11は、交換価値の算出に用いる、制約情報D2や、シナリオ情報D3や、補正情報(商品間補正情報)D4(65)などを、DB40、または外部システム(各種情報64)などから入力する。
交換価値算出部11における交換価値算出(値洗い)の処理フローの概要は以下である(Sは処理ステップを表す)。交換価値算出部11は、順に、S1:基礎価値計算、S2:補正計算、S3:OP計算、S4:第1の取引状況反映、S5:第2の取引状況反映などの各処理を行う。
S1: 基礎価値計算処理では、ソースとして収集、取得される価格情報(現在取引価格情報)D1などに基づき、各商品ごとの基礎価値aを算出する。
S2: 補正計算処理では、ソースとしてリスク係数(R)を含む補正情報(商品間補正情報)D4に基づき、S1の結果の基礎価値aに対し、補正を行うことで、各商品間の基本的な交換価値b(V1)を得る(V1=a×R)。
S3: 更に、当該交換取引対象の商品に関する取引オプション(OP)が付く場合(OP付きの交換価値を計算する指示を第2システム20から受けた場合)には、S3のOP計算処理で、当該OPの条件内容を反映した交換価値を、基礎価値aの補正により計算する。OP計算処理では、第2システム20からの取引情報62の一部であるOP情報D5をソースとして、この内容をOP補正値(O)として加味して、S1の基礎価値aまたはS2の交換価値b(V1)を補正することで、OP付きの交換価値cを得る(V2=V1(=a×R)×O)。
S4: 更に、S4の第1の取引状況反映処理では、本システムでの交換取引状況の内容を反映するように交換価値を補正する。第1の取引状況反映処理では、第2システム20からの取引情報62の一部である交換取引状況情報D6(本システムでの交換取引の状況を表す情報)をソースとして、その時の交換取引状況における取引数量や取引参加者(ユーザ)などの状況を補正値(Q:Q1)として、S2またはS3で得た交換価値(b,c)に対し反映する演算を行うことで、補正(更新)された交換価値dを得る(例えば、V2=V1×Q1)。
S5: 更に、S5の第2の取引状況反映処理では、原市場の価格情報の変動を反映するように交換価値を補正する。第2の取引状況反映処理では、その時点の最新の価格情報D1(本システム以外の市中の一般的な取引状況を示す情報)をソースとして、その価格変動などを補正値(Q:Q2)として、S2またはS3の交換価値(b,c)に対し反映する演算を行うことで、補正(更新)された交換価値d(V2)を得る(例えば、V2=V1×Q2)。
上記フローで算出された交換価値(V:V1またはV2)により、交換価値情報61が構成され、DB40に保存される。そして、第2システム20へその交換価値情報61が提供される。また、交換価値情報表示部51により最新の交換価値情報61(G1)を提示する。
<第2システム、クライアント機能>
図4を用いて、第2システム20側の詳しい構成例、及びクライアント機能50などについて説明する。例えば、ユーザの端末100はWebブラウザ等を備え、クライアント機能50はWebサーバ機能により実現され、各種の画面表示情報(G1,G2)及び照会や発注等の動作は、Web形式のグラフィカルユーザインタフェースにより実現される。
第2システム20(主にマッチング部21)は、第1システム10(交換価値算出部21)からの交換価値情報61や、外部システム81(または端末100)からの取引参加者ユーザの資産情報69などを入力する。
マッチング部21は、入力した情報(61,69)や、取引情報62などの各種情報を管理し、交換価値算出部11との間で情報を授受する。マッチング部21による機能としては、直接交換取引の受注(発注受付部53を用いる)、取引状況の提示(取引情報表示部52を用いる)、マッチング、取引成立/不成立の判定、決済連携(決済支援部23を用いる)などの一連の機能を備える。
交換価値情報表示部51は、端末100からの照会動作(照会要求)に対して、交換価値情報61(その画面表示情報G1)を提供(表示)する処理を行う。交換価値情報表示部51は、照会要求を受けた場合、交換価値情報61を用いてその画面表示情報G1を生成して端末100に送信して表示させる。なお図3の例では、第1システム10側に交換価値情報表示部51を設けているが、図4の例のように第2システム20側に設ける形態でもよいし、その他、第1システム10と第2システム20の間などに別システムとして設ける形態などでもよい。
交換価値情報62(G1)は、その時点の各商品の交換価値(V)、または商品間の交換比率(r)などを、交換取引可能な所定の単位(数量など)で計算した情報を含む。例えば、交換価値情報61(G1)は、商品群の組み合わせ(対)における交換比率(r)などの一覧情報を記載した表である。
取引情報表示部52は、端末100からの照会動作(照会要求)に対して、取引情報62(その画面表示情報G2)を提供(表示)する処理を行う。取引情報表示部52は、照会要求を受けた場合、マッチング部21が管理している取引情報62を用いてその画面表示情報G2を生成して端末100に送信して表示させる。
取引情報62(G2)は、取引の発注やマッチングに係わる、その時の取引状況(商品、交換価値、取引参加者(ユーザ))や発注内容(基本条件やOP)、履歴や資産状態といった、取引に係わる各種情報を示す。例えば、取引情報62(G2)は、各商品の注文数量、取引量(成約取引)、取引参加者(未成約取引)、及び選択可能なOPの情報などを含む。
また、取引情報62(G2)では、発注により提示される取引条件をマッチング方式(後述)に応じた内容として表示する。例えば、各ユーザの発注情報を時間順、価格順、商品別などの順序で並べて表示する形や、相対する一方側と他方側のユーザにおける各対象商品などの条件を対比して表示する形などがある。また取引情報62(G2)では、個別取引や取引全体の状況が、指定(検索条件)により参照可能である。例えば、ユーザ指定による当該ユーザの全取引情報の表示や、商品指定による当該商品に関する全取引情報の表示、時間順での発注情報群や取引成立情報の表示、それらの中からの個別の項目の指定による個別取引詳細情報の表示などが可能である。
発注受付部53は、端末100からの発注動作に対して、当該発注の情報を受け付け、受け取った発注の情報を、マッチング部21(またはOP処理部25)等に送り、取引情報62に反映させる処理を行う。マッチング部21は、受け取った発注情報を、取引情報表示部52へ渡して、最新の取引情報62(G2)として反映させる。
発注情報は、条件提示の場合には、交換取引対象となるユーザ(または端末100)、商品(またはその種別)、数量、価格などの基本的な条件、更にはOPといった情報を含む。応札の場合には、対象の発注情報の指定などを含む。これらの情報は、数値、テキスト、ID(識別情報)等である。発注情報は、基本的には、交換元のユーザ及び商品と、その交換先(相対対象)のユーザ及び商品とを指定する情報を含む。また例えば、交換先のユーザや商品の指定など一部省略した発注も可能である。また発注動作により、一旦発注、提示済みの取引条件に対して、変更や取り消し、例えば後からのOPの追加なども勿論可能である。
マッチング部21は、OP処理部25を用いて、OPが有る場合の管理及び処理を行う。マッチング部21は、OP処理部25を通じて、発注(発注情報)における基本条件にOP条件が付く場合(発注情報の中にOPの情報が含まれている場合)、その情報をOP処理部25へ渡して処理させる。OP処理部25では、OPに関する処理(OP条件の取り出しや判定など)を行い、それにより処理されたOP情報D5(OP条件内容などを表す情報)を、取引情報62の一部として提供する。マッチング部21は、ユーザ要求などに基づきOP付きの交換取引に関する情報を取引情報62(G2)等として提示する場合、OP情報D5を含む取引情報62を第1システム10へフィードバックして、第1システム10での交換価値算出処理を経由して、当該OPを交換価値に反映した場合の情報を受け取り、取引情報表示部52を通じて表示する。
またマッチング部21は、取引支援部26を用いて、交換取引を成立させるための各種支援の処理を行う。取引支援部26による1つの機能として、ユーザが自他ユーザの資産情報69(取引に用いる商品などの情報)や、取引履歴などの基本的な情報を照会により端末100の画面で確認することができる。
端末100における「照会」動作では、交換価値情報(G1)や取引情報(G2)を閲覧可能である。また、「発注」動作では、詳しくは、(1)条件提示・オファー(申出)の場合と、(2)応札・同意の場合とを含む。(1)は、交換取引条件の提示、あるいは交換取引相手ユーザ等を探すオファーである。(2)は、上記(1)の条件提示・オファーに対する応札・同意であり、即時に取引成立する。この場合は特に「応札」と称する。また、「取引支援」動作では、資産情報69などの閲覧や、取引成立のための支援的な機能の利用などが可能である。
<交換取引事例>
図5を用いて、交換取引事例のシーケンスを説明する。ユーザ(投資家)U1は商品A(石油)を所有し、ユーザ(投資家)U2は商品B(株式)を所有するものとする。U1(A)−U2(B)間で、第1システム10の交換価値情報61の参照などに基づき、U1が先に発注して条件提示し、それに対しU2が対応する内容の発注で条件提示し、第2システム20でのそれらの条件のマッチングにより取引を成立させる場合である。なおU1の条件提示に対するU2の応札による即時取引成立の場合については、より簡単な処理になるので説明は省略する。
第1システム10は、商品群の組み合わせ(商品A−Bの対を含む)の各交換価値(交換比率rなど)を随時(例えば一定時間ごと)算出しており、最新の交換価値を含む交換価値情報61は、交換価値情報表示部51により照会が可能となっている。
S01: 各ユーザ、例えばU1は、端末100から、照会動作により、交換価値情報61(画面表示情報G1)を閲覧する。端末100からG1照会要求がサーバ30へ向けて送信されると、交換価値情報表示部51は、その時点の交換価値情報61(G1)を応答する。例えば、図5のG1の例では、基準(相対する一方側)の商品(例えば株式(ETF))と、その各相対商品(例えば、石油、小麦、……)との対における各交換比率(r:例えばa,b,c,……)が表示される。その参照により、例えばユーザU1は商品B−Aの交換比率rが現在どの程度か(例えばr=a)等を認識できる。なお上記照会先は交換価値情報61を含んで成る取引情報62(G2)としてもよい。
S02: そして、各ユーザは、上記参照情報及び自身の判断(例えば取引支援部26により自分の資産情報69を確認してもよい)のもとに、交換取引対象の商品、ユーザ、数量(価格)などを決定して、例えば自身の商品Aと他の商品Bとを交換したいと考え、発注動作により、その発注(条件提示)の情報を端末100から第2システム20(サーバ30)に対して送信する。例えばそのU1の条件提示の内容(基本条件)としては、その時点の交換比率r(=a)で、商品A(交換取引単位の数量X)を商品Bに交換したい旨の要求(言い換えれば、希望数量(価格)での商品A売り−商品B買いの要求)とする。またこの発注の際、所定のOP(例えば大口割引など)を上記基本条件に追加して提示することもできる。
上記発注された情報を含む多数の発注情報は、サーバ30を介して発注受付部53で受け付けて処理され、取引情報表示部52を通じて取引情報62(G2)の内容としてすぐに反映される。各ユーザは、取引情報(G2)を閲覧することで、その時点の発注(取引条件)の状態を含む取引状況を認識できる。
S03: 他のユーザ、例えばU2は、取引情報62(交換価値情報61でもよい)を照会動作により閲覧する。特にU2がS02のU1条件提示内容を参照、着目した場合である。取引情報表示部52は、U2の端末100からのG2照会要求に対して、その時点の取引情報62(G2)を応答する。これにより例えば、U2は、商品B−Aの交換比率r(=a)に基づくU1による発注(条件提示)の内容、それに関する取引状況などを認識できる。
取引情報62(G2)としては、ユーザからの要求、指定に応じて、交換価値情報61に加えて、その時点のOPや交換取引状況の情報を表示するもの(取引情報(1))や、その時点における自他ユーザ群の発注(条件提示)の内容や資産(商品)の情報を表示するもの(取引情報(2))などがある。例えば図5のG2(取引情報(1))では、G1のような交換価値情報61(交換比率rなど)に加えて、その時点で提示されている選択可能なOPの情報(例えば大口割引など)や、その時点の本システムでの交換取引状況の情報(活況割引、約定気配など)などが表示される。また他のG2(取引情報(2))では、マッチング方式に応じた内容として、例えば、相対する取引者(例えばU1,U2)の各資産における交換取引用に提示する商品を、左右に分けて表示し、更にOPがある場合は下側に表示する、等である。
S04: そして、ユーザU2は、上記参照情報及び自身の判断のもとに、例えば自身の商品BとU1の商品Aとを交換したいと考え、発注動作により、商品B−Aに関する交換取引の発注(条件提示)を端末100から第2システム20(サーバ30)に対して送信する。あるいはU1の条件提示に対する応札(同意)の発注動作を行うこともできる(この場合は即時取引成立)。例えばU2の発注(条件提示)の内容(基本条件)としては、その時点の交換比率r(=a)で、商品B(交換取引単位の数量Y)を商品Aに交換したい旨の要求(言い換えれば、希望数量(価格)での商品B売り−商品A買いの要求)とする。またこの発注の際、所定のOPを上記基本条件に追加して提示することもできる。
マッチング部21は、随時、上記のような複数の発注の条件内容をマッチングして、所定の判定により、取引を成立(約定)させる。なおこの際、すぐに取引成立(約定)させる機能だけでなく、取引成立(約定)の確認(一旦成立可能状態として提示してユーザによる確認動作を受けてから成立させる)や支援(条件が近いもの同士を提示して価格等を調整する(後述))などを行う機能も有する。
マッチング部21は、上記マッチングにより、例えばU1(A)−U2(B)における条件内容(交換対象商品等)が対応しているので、その価格や数量などの要素で適合する部分を抽出して当該交換取引を成立(成立確認)させる。
上記交換取引の成立に応じて、マッチング部21から、決済支援部23により、当該成立の商品(A,B)に対応付けられる各決済システム80へ、決済指示の決済情報68(及び関連する取引情報62など)を送信することにより、各決済システム80で決済の処理を行わせる。上記交換取引により、U1は目的の商品Bを取得でき、U2は目的の商品Aを取得できる。
<取引マッチング方式>
第2システム20における取引マッチングの方式(形態)として以下がある。まず第1システム10の交換価値情報61の利用有無による、大きく2種類の方式を有する。(1)第1システム10の交換価値情報61(G1)の利用(参照)に基づき、ユーザ間の交換取引のマッチングを行う方式と、(2)第1システム10の交換価値情報61(G1)を利用(参照)せずに、ユーザ間の任意の交換取引のマッチングを行う方式とがある。本実施の形態では、第2システム20で、上記の両方の機能を備えるが、上記(1)の方式の場合を基本として説明する。上記(2)の方式の場合は、単に第1システム10を利用せずに第2システム20単体で完結する処理として実現される。
また詳しくは以下のような公知の各種のマッチング方式(商品や相手ユーザや価格や数量などの決定の方式)が適用可能である。(a)オークション方式、(b)板寄せ方式、(c)入札方式、などがある。
(a)オークション方式(競争売買方式)による時間優先、価格優先に基づくマッチング。オークション方式では、一方の取引者が発注により交換取引条件を提示し、価格などの交換取引条件を変えてゆく。所定の条件で、早いもの順で、他方の相対取引者が同意(応札)すれば、取引を成立(約定)させる。
(b)板寄せ方式(単一約定値段方式)やザラバ方式(複数約定値段方式)などによる、定時点でのマッチング。この方式では、システム的には従来のオンライントレードシステム(板情報などを介在した金融商品取引システム)などにならう形である。所定の取引時間帯において、例えば商品A−Bの交換取引に関して、ユーザ群の発注(条件提示)による取引情報(G2)をまとめて板情報に表示し、最適価格を決定する。例えば一方側に商品Aの数量や価格などの条件を提示し、他方側に商品Bの数量や価格などの条件を提示する。板寄せ方式では、交換価値(価格)などの条件を変動させ、同じ値段で一気に取引を成立させる。ザラバ方式では、交換価値(価格)が一致したところから時間優先や価格優先で取引を成立させる。
(c)入札形式によるマッチング。入札方式では、発注により交換取引条件を提示する一方の取引者に対し、他方の複数の相対取引者が、交換価格などの交換取引条件を入札(発注)して競うことで、価格優先などによって取引を成立(約定)させる。
<取引成立(1)>
図6を用いて、基本的な交換取引の成立(約定)の形は以下である。マッチング部21は、発注情報を比較することで成立(約定)を判定する。基本的な取引成立の形としては、第1システム10による交換価値情報61(G1)を取引モデルとして、それに従った交換取引単位で交換取引を成立させることが一番簡単であるが、ユーザはその交換価値情報61(G1)(取引モデル)を基準として各自自由に条件を変えて提示して取引を行うことができる。
図6(a)では、交換価値の例として、商品A(石油)と商品B(株式(ETF))との交換比率rを示す。商品Aにつき相対商品Bとの交換比率rが、r=0.5(交換価値A(VA):B(VB)=1:2)の場合である(所定の交換取引単位での換算)。即ち、Aの1単位に対してBの1単位は価値が2倍であること(Bの1単位に対してAの1単位は価値が2分の1であること)を表している。
図6(b)では、図6(a)のような交換価値の情報の参照を利用した交換取引における、基本的な取引成立の事例として、ユーザ及び商品に関する1対1の取引で、相対する両者における各合計の交換価値の大きさを均等(等価または近似)に揃えるようにして、その全数(一括)の一致(差分無し)により、取引成立させる場合である。r=0.5に従い、商品Aの2交換取引単位(数量X×2)に対し、商品Bの1交換取引単位(数量Y)として、均等になる取引条件で全数(一括)で成立した場合である。r=0.5では、Aの1単位(数量X)はBの1単位(数量Y)に対して価値が2分の1であるから、均等化の調整のために、取引数量として、AをBに対して2倍としている。
<交換取引単位、数量>
なお、交換価値算出時及び取引実行時における交換取引単位や数量については以下の場合がある。いずれも可能である。
(1)交換価値算出時点では、方式に応じた算出結果として、各商品の単位数量の交換価値が概ね同じ値になる。取引実行時には、その概ね同じ交換価値を用いて取引が行われる。例えば、商品Aの1単位(数量X)の交換価値と、商品Bの1単位(数量Y)の交換価値とが概ね同じになる。取引実行時は、A−X単位とB−Y単位との交換を1交換取引単位として、当事者が好きな分(例えば100交換取引単位)を取引する。
(2)交換価値算出時点では、方式に応じた算出結果として、各商品の単位数量の交換価値が異なる値になる。取引実行時には、その異なる交換価値を用いて適宜調整するように取引が行われる。例えば、商品Aの1単位(数量X)の交換価値pと、商品Bの1単位(数量Y)の交換価値qとがあり、値が異なる(p≠q)。取引実行時は、A−X単位の価値p×数量Mと、B−Y単位の価値q×数量Nとにより、p×M≒q×Nとして、当事者が好きな分を取引する。
相対取引者における商品A,Bの交換価値がそれぞれの単位(数量)で同じになる場合(あるいは調整後の各合計交換価値が同じになる場合)には、当該発注における双方の交換希望数について図6(b)のように全数(一括)での交換(取引成立)が可能である。なお、方式上、2つの交換価値が厳密に同じ結果になることは少ないので、実装上は、差分が例えば±3%範囲では同額(概ね同じ交換価値)とみなして交換する、といったように設計される。
また、交換取引で扱う単位(交換取引単位)として、例えば、各商品(銘柄等)の市場での最低売買単位である1枚(例えば金の1キログラムなど)あたりの円価格などの所定単位を適宜用いる。また、交換価値の算出の単位として、既存の単一種類の商品による単位に限らず、既存の多数の商品群を、所定の種別によってグループ化して、交換取引単位としてもよい。例えば、複数銘柄セットによる「ハイテク株」単位などを構成する。
<OP>
取引オプション(OP)の例などについて以下である。交換取引の発注において、ユーザは、数量や価格などの基本的な条件提示の他に、選択的に所定の条件をOPとして付属させることができる。当該発注(条件提示)に対し、相対するユーザは、そのOPを自由に選択して取引(発注)を行うことができる。このOP付きの発注を受けた場合、第2システム20は、当該OPの有無に応じた処理を行う。また、当該OPの情報(D5)を第1システム10(交換価値算出部11)へ提供して、当該OPを反映した場合の交換価値を演算させて、画面表示情報として提示する。OPに適合した取引の成立の場合は、当該OPで決められた内容による交換取引(決済)が履行される。
OPとしては、取引数量、相手商品、決済方法や取得の条件などの指定がある。例えば、大口割引、他商品または銘柄の組み合わせ(複数銘柄を一括したバスケット取引など)、端数処理方法(差分現金、端株切捨など)、特定商品の取得事務コストや手数料(埠頭渡し費用など)の負担、クーポン利用などがある。
また、一部のOP条件(例えば端数処理など)については、ユーザが選択指定可能とするのではなく、本システムの静的な設定事項としても提示しても構わない。
なお、本実施の形態では、第1システム10の交換価値算出フロー内にOP計算(S3)を含めた例であるが、第2システム20側で独立してOP計算を行う形態(第1システム10からの情報を用いてOP処理部25でOP計算を行う等)も可能である。
OP例として、数量指定による大口取引(いわゆる大口割引)がある。所定の数量以上(大口)で一括して交換取引する場合は、この程度(所定%)価格を割引きする、という条件提示である。例としては、「商品A(30万口)のうち、10万口相当以上の一括取引については交換価値を20%割引く」、等である。
またOP例として、相手商品指定による複数注文の組み合わせ条件がある。単一の種類の商品同士を交換するのではなく、複数の種類の商品を組み合わせて1対多または多対多で交換する場合である。複数商品をセット(グループ)として扱う。例として、「商品A(30万口)に株式INDEX銘柄バスケットで相対する場合は、交換価値を20%割引く」、等である。この場合、OPによる交換価値の補正として、基本の交換価値から20%割引いた交換価値を算出して提示する。
<決済支援例>
図7を用いて、決済支援例を説明する。マッチング部21による交換取引成立後に、決済支援部23により、商品種類ごとに有する決済システム80を利用して、決済プロセスを実行する。決済支援部23は、商品ごとの各決済システム80向けに、決済指示データ(決済情報68)を生成して送信することで決済代行する。また関連して、決済支援部23は、当該決済した結果を反映した該当ユーザ(顧客)の資産情報68を作成して返し、それをクライアント機能50(取引支援部26)を通じてユーザが閲覧し、取引結果及び決済内容を確認できる。
事例として、ユーザU1の商品A(石油)(例えば30万バレル分:所定価格)とユーザU2の商品B(株式)(例えば5万株:所定価格)との交換取引の成立(約定)における決済の場合(OPとして石油現渡しコストをU1が負担)である。決済支援部23から、商品A(石油)対応の決済システム80A(商品清算機構など)への決済指示、及び商品B(株式)対応の決済システム80B(証券保管振替機構など)への決済指示を送信する。決済指示の内容は、例えば、該当ユーザの口座から他のユーザの口座へ、該当証券分を振替する内容や、また、該当ユーザの商品(石油)を他のユーザへ受け渡すための決済などである。なお、OPの石油現渡しコストについては、指定銀行振替、または現渡し手形の受渡しなどによって処理される。
即ち、第1に、ユーザU1に関して、商品A(石油)−決済機関80Aから、交換元であるユーザU1の商品A:石油(所定価格)の引き出し(受け渡し)を指示する。また、商品B(証券)−決済機関80Bへ、交換先であるユーザU2の商品B:株式(所定価格)の株券の預け入れを指示する。第2に、ユーザU2に関して、商品A(石油)−決済機構80Aへ、交換先であるユーザU1の石油(所定価格)の預け入れを指示する。また、商品B−(証券)決済機関80Bから、交換元であるユーザU2の商品B:株式(所定価格)の株券の引き出しを指示する。
<交換価値算出(補足)>
前述した交換価値算出部11の交換価値算出処理フロー(図4)についての補足及びより詳細な処理例は以下である。
S1: 基礎価値計算では、価格情報D1(前営業日の情報)をもとに、市況シナリオ(シナリオ情報D3)及び制約の有無(制約情報D2)などに沿った、各商品ごとの基礎価値aを算出する。価格情報D1は、例えば、前営業市場情報や当日のリアルタイムの情報であり、当該時点の終値や取引価格または取引量などの変動情報などである。制約情報(取引制約情報)D2は、市場価格形成に一定の制約を設けている場合の値であり、基準(基礎価値a)算出の際における例えば上限・下限などの値(制限値幅)として利用する。例えば株式の場合であれば、株価の急騰・暴落を防ぐために、1日に変動可能な株価の上下限の制限値幅がある。シナリオ情報(市況シナリオ定義)D3は、例えば、翌日の市場の楽観(上昇)・中立・悲観(下降)によるシナリオに分けて、当該シナリオごとの補正値を、基礎価値aの算出に利用するものである。
S2: 補正計算では、リスク係数Rを含む商品間補正情報D4をもとに、各商品(交換対象の商品対の一方)ごとに、相対する商品(交換対象の商品対の他方)との交換価値bを算出、決定する。また、各商品の交換価値b(V1)から簡単な計算により商品間の交換比率rも算出される。補正情報(商品間補正情報)D4は、前述したリスク係数(R)を、商品ごとに他商品との相対値として持つ情報である。リスク係数Rを含む補正情報D4は、S2の時点で既に算出しているものをDB40から参照するか、あるいはその時点で新たに算出してもよい。S2では、基本的には、一旦計算済みである静的な定義情報(補正情報D4)や過去の情報に基づいて補正する考え方である。補正情報D4は、別途、市況などをもとに内容が随時更新される。補正情報D4の更新は、第1システム10や外部のシステム71が自動的に計算により更新する形態としてもよいし、人間(本システム管理者等)が適宜更新設定する形態としてもよい。
S3: 第2システム20で、ユーザにより発注(条件提示)の際に当該取引に所定のOP(例えば前記大口割引)が指定(設定)されたとする。第2システム20は、OP付きの取引(発注)にあたり、そのOP情報D5を含む取引情報62を、第1システム10へフィードバックする。S3ではそのOP情報D5をもとに当該OPの内容に応じた交換価値cを計算し、第2システム20へ提供する。なお、画面に表示する場合の情報としては、OP反映後の交換価値だけでなく、OPを反映する前後の交換価値の両方を比較可能なように提示してもよい。
取引状況反映のための補正処理は、S4,S5のように2つがある。S4,S5の処理では、一旦S2またはS3までで算出した基本的な交換価値を、動的に更新するという考え方である。S4の処理は、交換取引状況情報D6が無い場合は省略される。S5の処理は、最新の価格情報D1が無い場合は省略される。
S4: 第2システム20での交換取引状況の例として、当日の交換取引における、取引高(数量)、及び取引参加者ユーザの規模(人数)、取引成立(約定)の数や、発注数、条件提示や応札したユーザの数、マッチング方式や取引成立の状況(全数一致や部分一致、1対1や1対多などの種別、交換価値の均衡・不均衡など)などがある。交換取引状況情報D6は、第2システム20におけるその時点の上記交換取引の状況を示す情報である。S4の第1の取引状況反映処理では、上記交換取引の状況を示すD6の内容を加味して、補正された交換価値dを得る。本実施の形態では特に、S4では、交換価値に対して、その時点で取引成立がしやすい状況であるか否か等によって、そのシナリオ(なおS1でのシナリオ(D3)とは別である)による補正値を掛け合わせる考え方である。
S5: また、一般の市況として、当日の原市場の値動き(相場変動)などがある。それに対応した最新の価格情報D1や、市場シナリオによる補正の情報などをもとに、S5の第2の取引状況反映処理では、その内容を反映した交換価値dを得る。
なお、上記フローでS3〜S5の計算順序が前後する形態も可能である。また、S2(補正)とS4やS5(更新)とを1つの処理ステップにまとめた形態も同様に実現可能である。その場合、フローは、S1(基礎価値計算)→S2(補正+更新計算)→S3(OP計算)といったようになる。最新の交換価値を取得したい場合は、S2の処理やフロー全体の処理を再度実行すればよい。
また例えば、第1システム10での交換価値情報61などを得るための計算処理(例えばS1,S2までの処理)については、例えば前日夜間などに、事前の計算処理をして求めておく。例えば事前に商品群のすべての組み合わせに関する情報を計算しておくと望ましい。そして、当日は、その計算済みの情報を用いて、最新の情報を反映するS4,S5等の更新計算処理のみ行えばよい。なおこれについてはシステムを構成するコンピュータの処理性能にも依存するものであり、性能が高い場合は分けずにすべてリアルタイムに処理してもよい。
また、第1システム10側の交換価値算出処理は、基本的に交換価値情報61を出力するために独立に実行しているが、第2システム20側からの要求をトリガとして当該交換価値の算出を実行する場合も同様に可能である。即ち、交換取引の実行時に、当該取引の発注やそのマッチングにおける内容(例えば図6(b)に対応した内容)、あるいは取引のシミュレーションの結果を、端末100の画面に表示したい場合、第2システム20から第1システム10へ当該取引情報62等と共に要求を出すことで、それを反映した場合の交換価値を算出させ、第2システム20で、その結果を用いた取引情報62(G2)を表示する、等である。
<交換価値算出例>
図8を用いて、前記フロー(図4)に基づき、交換取引事例における交換価値の具体的な算出例について以下である。交換取引事例として、ユーザ(投資家)U1の商品A−石油と、ユーザ(投資家)U2の商品B−株式(ETF)とを交換取引する場合である。図8の左側は前述のフローの各処理ステップ及び情報データ内容例などを示す。右側は、U1(A)とU2(B)における資産の交換価値(価格)の推移などを示す。
S1: 商品A(石油)−例えば1バレル=3000円(=30ドル)(1ドル=100円の場合)。翌日市場値幅(例えば中部大阪商品取引所)(制約情報D2):±10。市況シナリオ(シナリオ情報D3によるシナリオ補正値)として、第1のシナリオ−上昇:+5%超えの場合には、補正:+3%とし、第2のシナリオ−中立:±5%以内の場合には補正:−5%とし、第3のシナリオ−下降:−5%超えの場合には、補正:−15%とする。
右側で、ユーザU1の所有する商品A−石油30万バレルについて、前日終値が900万ドル、即ち9億円相当である。石油30万バレルを仮に前日終値ベースで算出したとき、1バレル30ドルとして、900万ドル相当とおく。一方、同様に、ユーザU2の商品B−ETF3万口について、前日終値が8000円、即ち2.4億円相当である。
S2: 補正情報D4をベースに算出された交換価値(補正比率r)において、商品A(石油) 対 商品B(株式(ETF)) 比 =0.5 (r=0.5)である。即ち、商品A(石油)と商品B(株式)の交換価値(補正比率)が、A(VA):B(VB)=1:2である(これは補正情報D4マスタ内の保有値である)。そのとき、A(石油)に対して、B(株式)は2倍の価値を持つことになる(図6(a))。
上記に基づき、商品A,Bに対する補正掛目(補正係数)をそれぞれ、1.0、2.0とする。即ち、S2により、商品A:9.0×1.0=9億円相当、商品B:2.4×2.0=4.8億円相当となる。
S3: 更に、U1(A)側には発注における個別のOP(例えば(1)OP1,(2)OP2,(3)OP3の3つ)が選択可能に提示されているとする。(1)OP1:5万バレル超えで20%割引、例として大口10万バレルで5%割引(U2(B)側を5%増加)。(2)OP2:株式−INDEX銘柄バスケット(複数銘柄割引)で5%割引(U2(B)側を5%増加)。複数銘柄は、ETFの他ハイテク銘柄を含む。(3)OP3:現物取得事務コスト負担(U1側)、例えば1%分をU1側が負担(U2(B)側を1%増加)。
U1(A)側のOP提示に対するU2(B)側の応札(OP利用選択)において、OP適用の事例として、OP1を適用外(部分取引成立)とし、OP2を適用(他のハイテク銘柄が3億分)とし、OP3を適用(1%分割引)とする。即ち、U1(A)側は、S2のまま9.0億円相当となり、U2(B)側は、上記OP適用、OP2の5%とOP3の1%により、合計6%の削減、即ち、S2の4.8億円×94%=4.5億円相当となる。
S4: 本例では交換取引状況については変化無しの場合とする。
S5: U1の商品A(石油)に関して、当日の最新の取引状況として、下振れが進んだものとして、例えば1バレル=30ドルから25ドルへの−5ドルの下降(−5%超え)とする。よって、前記S1の下降の第3のシナリオへ変更し、補正値を−15%とする。この補正値により交換価値を補正する。A(石油)の価値を−15%減少にする。即ち、B(株式)の価値を+15%増加にする。U1(A)側は、S3のまま9.0億円相当であり、U2(B)側では、上記+15%分増加により、即ち、S3の4.5億円×115%=5.2億円相当となる。
上記の結果は以下となる。上記S3で複数銘柄(ハイテク銘柄を含む)によるOP2を満たした場合としたが、このハイテク銘柄分についても、ETFと同様の計算をしたとして、3.0億円とする。U2(B)側では、S4,S5の5.2億円+S3の他ハイテク銘柄3.0億円分=8.2億円相当(事務コスト含む)となる。結果、条件提示側のU1(A)の9.0億円相当と、応札側のU2(B)の8.2億円相当とで、交換取引が成立する。またこの取引で、その差分(端数)、即ち9.0億円−8.2億円=0.8億円相当については、U2(B)側の現金払いで対応する。
<S2(補正計算)の詳細例>
S2(補正計算)に関する詳細例(特に商品間補正情報D4の組成)について以下である。フロー全体(S1〜S5)の流れに沿って説明する。例えば、商品Aが株式(日経225ETF)、商品Bが石油(WTI:WestTexuesImidiate標準品)の場合とする。
S1: 全ての比較商品の基礎値となる、ある日時(例えば各市場の2009年の初回取引日の終値)において、日経225:INDEX−仮:9000円(1口)、石油:WTI(同日の終値)−仮:30ドル(1バレル)−為替100円(1ドル)とする。上記を起算値として、基本比率を確定する(例:日経225INDEX(1口) 対 石油WTI(1バレル))。それぞれの起算値は、各商品の取引最小単位で、相互に比率が表現される。[基本比率=1:3]。
翌日の市場での補正値を、日経225との連関が高い指標との比較から算出する。NY、ロンドン、香港の各INDEXと、ある日(起算値)から、ベンチマーク(シナリオ補正値)を得る。例えば、楽観(上昇):+3%、中立:+1%、悲観(下降):−9%。
S2: 次に、商品間の交換比率r(補正情報)について、日経225(商品A)との比較対象をグループ単位(商品グループ(種別)単位)で算出する。例えば、日経225 対 日本株ハイテク(業種別)=1:0.90であり、以下同様に、対日本株銀行(〃)=1:0.80、対 日本株電力(〃)=1:1.05、対石油(WTI)=1:0.60、等である。その他同様に、対石油(北海ブレンド標準品)、対日本国債、対日本国内産標準品農作物、対鉱工業−鉄、対鉱工業−非鉄金属などについて計算される。交換対象となる銘柄が上記のいずれのグループに入っているかによって、適用する交換比率を決める。
なお、上記の比率の算出においては、(1)最初の起算日の価格をベースとした交換比率(固定)=起算値を決める。(2)その後、起算値との乖離率により、起算値を値洗い(交換価値算出)する。(3)値洗いでは、事前に決定した値洗い比率を適用する。
例えば、2009年1月5日、日経225 対 石油 (=1:0.6)、値洗い比率:対石油−日経225 上昇の場合、5%上昇毎に、起算値を102%で算出する。下降の場合、5%下降毎に、起算値を98%で算出する。日経225−9000円 対 石油−30ドル(為替100円)、基礎値=1:3、起算値(2009年1月5日): (10000円):(30ドル)=(起算値−10%):(起算値±0%)、値洗い(交換比率): 1×98%×98%:3=0.96:3=1:2.88。
<取引成立(2)>
前述した基本的な取引成立の形(図6)以外の各種の取引成立の形は以下である。実際には相対する商品同士の交換価値の大きさが異なる場合も多く、前述例のような一括、均等の取引成立が難しい場合も考えられる。その場合、相対する商品同士の交換価値の大きさにおいて、適合(部分一致)する部分のみをまず取引成立させる形(部分取引成立)が基本となる。また成立判定の方式については、例えば、予め、全数(一括)取引や部分取引などの方式のいずれを採用するかを、本システム内部設定、またはユーザ指定による選択設定を可能とする。
部分取引成立の例として、商品AとBの交換取引において、商品Aの数量Xと、商品Bの数量Yとで、X(その価値)>Y(その価値)のとき、一括取引指定等の条件が無ければ、数量Y分をまず取引成立させ、その残りの差分(X−Y)については不成立(該当条件待ち)とする。当該残り分については、新たな発注で該当する数量が出た場合に成立となる。一括取引指定等の条件がある場合は、部分取引成立させずに待ち状態とする。
図9(a)の例では、U1の商品A(数量X)に対し、まず第1に、Aの数量X1分に対する、ユーザU2の商品Bの数量Y1分で部分取引成立する。更に第2に、Aの数量X2分に対する、別のユーザU3の同じ商品Bの数量Y2分で部分取引成立する。残り(X−X1−X2)は該当条件待ちとなる。
<取引成立(3)>
別の取引成立の形として、ユーザ(商品)に関し1対多で取引する場合が可能である。また、多対多の場合も同様に可能である。複数ユーザ(商品)を、セット(グループ)として扱う。マッチング部21は、取引条件に該当するユーザ(商品)が複数存在する場合に、相対取引対象を1対多で、時間優先や価格優先などにより判定してマッチングする。商品に関する1対多(または多対多)の取引としては、バスケット取引(複数銘柄一括取引)などがある。
図9(b)の例では、一方のユーザU1の商品A(石油30万バレル)に対し、相対する複数(3人)のユーザU2,U3,U4の各商品B,C,Dをセットにして交換取引する。U2の商品B(例えば株式、7万バレル分)と、U3の商品C(例えば債権、20万バレル分)と、U4の商品D(例えば為替、3万バレル分)とを有する。また、B+C+Dの価値がAの価値と均等一致しないので、その差分をA側に加えるOP分(例えば受け渡し料金の負担)の価値により埋め合わせて、それらを全体として一括かつ均等の取引とする場合である。
また、本システムでは、OP有りの場合のマッチングについては、複数の相対取引者を合わせた条件成立判定についても扱う。例えば、ユーザU1が提示するOPが「株式10万口以上で20%割引」である場合に、その相対取引者としてユーザU2,U3の2人が該当する場合に、ユーザU2(5万口)+ユーザU3(5万口)、として当該OP付きの取引を成立させる。
<取引成立(4)>
別の取引成立の形として、交換価値情報を利用しないユーザ間での任意の交換取引の方式において、両者の交換価値の大きさが不均衡であっても同意により取引成立させることが可能である。本方式では、相対する商品同士(例えば商品AとB)を、交換価値で不均衡であっても当事者(相対取引者)の合意(それを示す情報の受領)により等価とみなして取引成立を認める。システム構成例としては、第2システム20では、例えば、相対取引者のうち、各交換価値の比較で不利になる一方側の同意(応札を示す発注情報の受領)により取引成立させる。
図10(a)では、上記任意の交換取引における、ユーザ1対1での不均衡の取引成立の場合である。ユーザU1の商品Aの交換価値(またはそれに基づく交換希望数量)に対し、ユーザU2の商品Bの交換価値(またはそれに基づく交換希望数量)が小さく、両者は不均衡である。即ちU1は不利(多くのAによって少ないBしか得られない)、U2は有利(少ないBによって多くのAを得られる)である。この時、当事者(U1,U2)の合意(特にU1側の応札)により取引成立する。また例えば、取引上有利なU2側に、OP分の負担を加えて緩和した場合である。
<取引支援機能(1)>
取引支援部26による機能については以下である。取引支援部26では、ユーザの資産情報69、及び交換価値情報61や取引情報62などを用いて情報処理を行うことで、下記の各種機能(情報管理、確認、差分表示、シミュレーション、目標値提示などの機能)を実現する。まず基本的な情報管理や確認の機能としては、本システム(サービス)の利用に関するユーザ(取引参加者)の資産(交換取引に用いる商品)の状態を情報管理する。ユーザは、端末100からの照会動作(または取引支援動作)によりその情報(自他ユーザの資産状況など)を画面で確認することができる。
取引支援部26の機能により、取引(マッチング)に参加するユーザ群の全体の資産状況や、個別の自他ユーザの口座別の預かり状況、即ち交換取引可能な候補として何の商品がどの程度存在するか等、の参照(照会)も可能である。なお他ユーザの資産情報69の参照の際は、匿名で処理される。例えば、ユーザは、自分の保有資産(商品)の現在の交換価値の状態などを確認できる。例えば、ユーザは、他ユーザの発注(取引条件提示内容)に対し、自分と他ユーザの各商品の交換価値やその差分の表示が可能であり、これにより自他ユーザ間の保有資産(商品)の交換価値を比較検討し、その結果、発注(応札)などに移行することができる。
また、情報管理の機能としては、交換取引の履歴照会機能を含む。例えば、ユーザ単位や、第2システム20全体(複数ユーザ)単位での過去(所定期間)の交換取引の履歴を確認できる。また例えば、指定商品単位での履歴を確認できる。
また、シミュレーションや差分表示の機能としては、ユーザが他ユーザの発注内容(提示条件)に対する交換取引を仮定(シミュレーション)した場合における自他ユーザの商品の交換価値やその差分などの情報を、画面で確認することができる。その際には、前述のように第1システム10の交換価値算出処理を用いることで実現できる。
シミュレーションの機能は、例えば以下の機能(ツール)を含む。(1)各商品毎の交換価値の計算。例えばユーザの所有資産(商品)毎に交換価値の計算及び表示ができる。(2)複数商品組み合わせの交換価値の計算。例えばユーザによる任意の商品の組み合わせの指定に対応してその交換価値の計算及び表示ができる。(3)将来の交換価値からのシミュレーション。例えばユーザが所有資産(商品)について、将来の値動きを仮定して、その仮定に基づいた交換価値の計算及び表示ができる。
<取引支援機能(2)>
図10(b)を用いて、取引支援部26の機能を用いた例を説明する。本例は、取引成立の調整のための目標値・参考値を提示する機能である。例えば相対する双方の取引参加者が多くても、各々が希望する交換価値(条件)に乖離があって取引成立に至らない場合があり得る。その場合、本機能を使用して各ユーザの取引条件の調整を図ることで、成立率を向上させる。ユーザは取引支援動作によりその情報を画面で閲覧でき、その内容に納得した場合は発注(応札)に移行できる。
本機能の処理では、例えば、前記S4(第1の取引状況反映)での交換価値の補正として、相対している取引参加者の双方の交換価格と数量の加重平均値を目標値として算出し、更に、取引参加者に対しては、その目標値に向けた参考値(成立の確度がより高い条件)を提示することで、取引成立を図るものである。取引参加者の意思確認を繰り返しながら、価値均衡を図る。基本的には、目標値として、元の発注条件提示値に対する中間的な値をとる。また参考値としては、例えば、目標値に少しずつ近付けるようにいくつかの段階に分けて補正した参考値(元の提示値から目標値へ向けて増減した値)を順に提示する。また複数の参加者の組み合わせの場合には、所定のルールに基づいて、目標値を形成するために各参加者が必要な交換価値及びOPに関する参考値を算出する。本機能の処理で用いる取引情報62としては、各発注情報の交換価値及び取引希望数量、取引非成立状態が続いた時間、取引参加者数などを用いる。
上記機能の事例は以下である。U1−商品A(石油)30万バレル(一括取引を希望)、U2−商品B(株式)10万株。石油1万バレル=株式1万株と仮定。U1,U2共に上記値洗い(目標値へ近付ける処理)を許容する契約(設定)とする。値洗いによる変化を例えば最大30%までと仮定(設定)する。処理の流れは以下である。
(1)マッチング開始時: A(石油)30万バレルが9億円相当、対して、B(株式)10万株が3億円相当。(2)加重平均による目標値設定: 例えば単純化により、A(9億円)とB(3億円)の中間である6億円相当を目標値に設定する。(3)所定の時間経過後、値洗いを開始する。A(石油)30万バレルは、10%減少により27万バレル相当(8.1億円相当)になり、対して、B(株式)10万株は、10%増加により、11万株相当(3.3億円相当)になる。(4)更に値洗い。(5)相互に上記30%の変化までを行う。(6)その間、他方(この場合は不利になるU1)が、取引成立を宣言した場合は、U2がそれを受ける。(7)上記30%に到達後、それでも宣言が無ければ、ここで値洗いは停止する。以後、様子見になる。
また、取引支援部26を用いたマッチングの機能として、ユーザ(取引参加者)からの受注(発注情報)やユーザの資産情報69を用いて、それらの内容のうち、対象商品や交換価値などの条件が近似または部分適合などして近いユーザ同士を引き合わせる機能を提供する。この機能を用いる場合、ユーザは、発注などの際に取引対象ユーザを指定する必要が無く、本機能の利用の設定を事前にしておけば、後は自動的にマッチング(引き合わせ)がなされ、その結果が情報として提示される。その際、取引支援部26等の処理により、その引き合わせの情報(例えば近似の資産保有者同士の交換取引のモデル)を、取引情報62の一種として画面に表示する。ユーザの端末100から取引支援の動作により、当該機能が利用可能である。
<取引支援機能(3)>
また、取引支援部26の機能による、取引参加者の資産情報69を用いたマッチングの例について以下である。第2システム20は、ユーザ(投資家)が保有する証券、債券、商品等の口座預かり情報をもとに、交換情報のシミュレーション(その情報表示)や、マッチングの候補者(交換取引相手ユーザ及び対象商品組み合わせなど)の選出の処理を行う。第2システム20は、各口座を有する証券会社や商品取引会社などのシステム(例えばシステム81)との情報(資産情報69)の連携を行う。
例えば、投資家U1について、証券会社口座(第1の口座預かり残高情報)に、ETF10万株、公社債5千万口、先物2000枚を保有しており、また、商品取引会社口座(第2の口座預かり残高情報)に、金100kg、小麦10トン、石油1万バレルを保有しているとする。これらの口座預かり残高情報(資産情報69)を、第2システム20に取り込んでおき、交換取引のマッチング候補の選出の際の入力情報とする。本機能は、ユーザによる動作や設定などに基づき有効にする。この機能によれば、ユーザが個別に発注(条件提示)する手間を削減できる。
これにより、投資家による実市場での商品の売却や買い付けと、その資産をもとに第2システム20の本機能を用いたマッチング(相手候補選出)による交換取引との組み合わせによる仕組みが提供される。
上記機能でマッチングにより交換取引が成立した場合、その取引に関する情報を、当該ユーザの口座管理(資産情報管理)をしている証券会社/商品取引会社などのシステム(システム81)に提供することで、口座(資産)状態を更新させる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、ユーザによる各商品間での直接交換取引を実現する仕組みにより、リアルタイム性や効率性に優れる取引を実現でき、新たな取引や収益の機会、価値を創生できる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。