以下の説明においては、各形態に先行する形態ですでに説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。またそれぞれの実施形態は、本発明に係る技術を具体化するために例示するものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明に係る技術内容は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。
図1は、本発明の実施の第1形態に係る定着装置2の構成を模式的に示す断面図である。画像形成装置1に含まれる定着装置2は、定着ローラ3と、加圧ローラ4と、無端状の定着ベルト5と、定着ベルト5を懸架し加熱するための加熱ローラ6と、加熱ローラ6と加圧ローラ4をそれぞれ加熱するための熱源であるヒータランプ7a,7bと、定着ベルト5および加圧ローラ4などの温度を検出する温度検出手段を構成する温度センサとして第1サーミスタ10および第2サーミスタ11とを備える。
定着ローラ3は、略円筒形の形状を有し、略円筒形の中心軸から外周に向かって芯金および弾性層が形成される2層構造である。芯金には、鉄、ステンレス鋼、アルミニウムまたは銅などの金属あるいは、それらの合金などが用いられる。弾性層には、シリコンゴムまたはフッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料が適している。本実施形態において、定着ローラ3の直径は30mmである。芯金には、直径20mmのステンレス鋼が用いられ、弾性層には、厚さ5mmのシリコンスポンジゴムが用いられる。定着ローラ3は、略円筒形の中心軸を中心として回転可能に設けられ、加圧ローラ4の回転に従動回転する。定着ローラ3が、定着ベルト5を介して加圧ローラ4に圧接することによって、定着ベルト5を介して、定着ローラ3と加圧ローラ4とが互いに当接する部分である定着ニップ部12が形成される。
加圧ローラ4は、略円筒形の形状を有し、略円筒形の中心軸から外周に向かって芯金、弾性層および離型層が形成される3層構造である。芯金には、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム銅などの金属あるいは、それらの合金などが用いられる。弾性層にはシリコンゴムまたはフッ素ゴムなどの耐熱性を有するゴム材料が適している。離型層にはPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)またはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂が適している。本実施形態において、加圧ローラ4の直径は30mmである。芯金には、直径26mm、肉厚2mmの鉄(STKM)が用いられる。弾性層には、厚さ2mmのシリコンソリッドゴムが用いられる。離型層には、厚さ50μmのPFAチューブが用いられる。
ヒータランプ7aは、加圧ローラ4の内部に配置され、加圧ローラ4を加熱する。図示しない制御回路が図示しない電源回路からヒータランプに電力を供給(通電)させることによって、ヒータランプ7aが発光し、ヒータランプ7aから赤外線が放射される。加圧ローラ4は、加圧ローラ4の内周面がヒータランプ7aから放射される赤外線を吸収することによって、加圧ローラ4全体が加熱される。本実施形態では、定格電力300Wのヒータランプ7aが使用される。
加圧ローラ4は、略円筒形の中心軸を中心として回転可能に設けられる。加圧ローラ4は、図示しない駆動手段である駆動モータによって回転駆動するローラ状部材である。定着ローラ3は、定着ベルト5を介して加圧ローラ4に圧接することで定着ニップ部12を形成すると同時に、従動回転することによって定着ベルト5を搬送する。定着ローラ3は、加圧ローラ4とは逆方向に回転する。
定着ローラ3と加圧ローラ4とは、所定の荷重、たとえば400Nで互いに圧接される。定着ローラ3と加圧ローラ4とが圧接されると、定着ニップ部12が形成される。本実施形態においては、定着ニップ部12の記録紙搬送方向の幅(以下「ニップ幅」という)は8mmである。定着ニップ部12には、未定着トナー画像を担持した被定着部材である記録紙8が給紙される。記録紙8が定着ニップ部12を通過することによって、記録紙8にはトナー画像が定着される。記録紙8が定着ニップ部12を通過する際、定着ベルト5は、記録紙8のトナー画像形成面に当接し、加圧ローラ4は、記録紙8におけるトナー画像形成面とは裏面側の面に当接する。
定着ベルト5は、装着しない状態で、直径が50mmである。定着ベルト5は、ポリイミドなどの耐熱樹脂、または、ステンレスおよびニッケルなどの金属材料からなる中空円筒状の基材が形成される。基材の表面には、耐熱性および弾性に優れた、たとえばシリコンゴムなどのエラストマー材料からなる弾性層が形成される。弾性層の表面には、耐熱性および離型性に優れた、たとえばPFAまたはPTFEなどのフッ素樹脂である合成樹脂材料からなる離型層が形成される。定着ベルト5は、基材、弾性層および離型層の3層構成である。本実施形態においては、基材として厚さ70μmのポリイミドが用いられ、弾性層として厚さ150μmのシリコンゴムが用いられ、離型層として厚さ30μmのPFAチューブが用いられる。
加熱ローラ6によって所定の温度に加熱された定着ベルト5は、定着ニップ部12を通過する未定着トナー画像が形成された記録紙8を加熱する。定着ベルト5は、加熱ローラ6と定着ローラ3とによって懸架される。定着ベルト5は、加圧ローラ4の回転に従動し、矢符R2の方向に回転する。加圧ローラ4が矢符R1の方向に回転し、定着ベルト5が矢符R2の方向に回転することによって、記録紙8が定着ニップ部12を通過する。
加熱ローラ6は、略円筒形の形状を有し、略円筒形の中心軸から外周に向かって赤外線吸収層、芯金および保護層が形成された3層構造からなる。赤外線吸収層は、耐熱性のカーボン含有塗料が芯金内側に塗装、焼成されることによって形成される。芯金には、たとえば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅などの金属またはそれらの合金が用いられる。保護層としては、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)またはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂が適している。保護層は、定着ベルト5と加熱ローラ6との接触によって、定着ベルト5のポリイミド層および加熱ローラ6が磨耗することを防ぐ。
本実施形態においては、加熱ローラ6の直径は28mmであり、赤外線吸収層として厚さ100μmのカーボンブラック塗装が用いられ、芯金として直径28mmであって肉厚が1mmである中空アルミニウムが用いられる。保護層としては、厚さ50μmのPTFEコートが用いられる。
加熱ローラ6の内部には、加熱ローラ6を加熱するヒータランプ7bが配置される。図示しない制御回路が、図示しない電源回路からヒータランプ7bに電力を供給(通電)させることによって、ヒータランプ7bが発光し、ヒータランプ7bから赤外線が放射される。加熱ローラ6は、加熱ローラ6の内周面がヒータランプ7bから放射される赤外線を吸収することによって、加熱ローラ6全体が加熱される。本実施形態では、定格電力900Wのヒータランプ7bが使用される。加熱ローラ6には、加熱ローラ6から見て定着ローラ3が配置される方向とは逆方向に、所定の荷重、たとえば50Nが付与される。定着ベルト5にはテンションが与えられるので、加熱ローラ6は、定着ベルト5の回転に伴って回転する。
図2は、定着ベルト5の柔軟性測定方法を説明するための図である。図2(a)は、定着ベルト5の外径Aを示す。定着ベルト5の外径Aは、定着ベルト5が自重等で変形していない状態で測定することが好ましく、具体的には、定着ベルト5の外側の周長を測定し、それを円周率で割った値を定着ベルト5の外径Aとする。図2(b)は、第1の金属シャフトである金属パイプ21および第2の金属シャフトである測定用の荷重ローラ22が装着された状態の定着ベルト5を示す図である。
金属パイプ21は外径13mmで定着ベルト5の幅よりも十分に長く、金属パイプ21に定着ベルト5を通して、金属パイプ21を水平にして両端を固定する。その状態で、測定用の荷重ローラ22を定着ベルト5の下側に通す。荷重ローラ22は外径13mmで、定着ベルト5の幅よりも長いものを用いる。本発明では荷重ローラ22は長さ330mm、重さ115gである。柔軟性を測定する定着ベルト5の外径Aは50mm、ベルト幅は320mmである。荷重ローラ22の重さを定着ベルト5の幅で割った値は0.383mm/gとなる。ここで、荷重ローラ22が定着ベルト5の外にはみ出す量は、定着ベルト5の一方の端と、もう一方の端とで同じ長さであることが望ましい。また、金属パイプ21及び荷重ローラ22は柔軟性測定時に撓まない事が望ましい。
荷重ローラ22が通された定着ベルト5の外側の上下方向の長さをBとすると、定着ベルト5が柔らかいほど、長さBの値は大きくなる。ここで、定着ベルト5の柔軟性Sとして、S=(B−A)/Aと定める。定着ベルト5が柔らかいほど柔軟性Sの値は大きくなる。た、定着ベルト5の柔軟性Sは、定着ベルト5の層構成、膜厚が同じ場合、定着ベルト5の外径Aに比例する。例えば、外径50mmの定着ベルト5の柔軟性が0.15のとき、定着ベルト5の層構成、膜厚が同じ場合、定着ベルト5の外径が40mmの柔軟性は0.12、定着ベルト5の外径が60mmの柔軟性は0.18となる。ただし定着ベルト5の外径が、金属パイプ21及び荷重ローラ22の外径に近づくと、前記比例関係は崩れてくる。その場合は、金属パイプ21及び荷重ローラ22の外径が定着ベルト5の外径の30%以下になるように、小径のパイプ及びローラを用いる。
図3は、定着ローラ3の反発性測定方法を説明するための図である。定着ローラ3は水平に配置される。球状錘31は、外径11mm、重さが7gであって、長さ50cmの糸32に吊るされる。球状錘31は、静止状態において球状錘31の重心が定着ローラ3の中心軸線を含んだ水平面上に位置し、定着ローラ3と接するように配置される。球状錘31がこのように配置された位置を最下点33とする。球状錘31を吊るす高さは、球状錘31が最下点33に位置するように調整される。
次に、糸32が弛まないように、球状錘31は、最下点33から10cm引き上げられる。球状錘31が引き上げられた高さを初期高さH1とする。球状錘31を引き上げる方向は、定着ローラ3の軸方向と垂直な方向である。球状錘31が静かに放されると、球状錘31は定着ローラ3に当たり跳ね返る。このとき、最も高く上がった位置と最下点との垂直方向の差を戻り高さH2とする。定着ローラ3の反発性が高いほどH2は高くなる。定着ローラ3の反発係数Rとして、R=H2/H1と定める。定着ローラ3の反発性が高いほど反発係数Rの値は大きくなる。
表1は、定着ベルト5の外径が50mmの場合の定着ベルト5の柔軟性Sと定着ローラ3の反発係数Rと定着性との関係を示す。記録紙は、坪量64gの普通紙である。記録紙の用紙サイズは、A4である。画像は、用紙搬送方向の先端および後端にトナーYMCBkの4層ブラックが設けられ、トナー量は1.0mg/cm2である。トナーワックス含有量は3%である。先端ボイドは3mmである。定着温度は、設定温度に対し一定になるように制御されるが、温度リップルなどの温度変動によって、設定値に対して±7.5℃であり、15℃の温度幅を持つ。
定着性は、前記温度変動の範囲内で、オフセットが無く、良好な定着画像が得られた場合は○、オフセットが生じた場合は△、定着直後に用紙巻きつきが発生した場合は×とした。紙の出力は、ウォームアップ直後、待機中、スリープ復帰、連続通紙など様々なモードで行った。定着性は、定着ベルト5の柔軟性Sが0.15以上であって、定着ローラ3の反発係数Rが0.6以上である組み合わせにおいて良好である。つまり、定着ベルト5の柔軟性と定着ローラ3の反発性が組み合わさって初めて、所望の定着性が得られることになる。柔軟性Sの理論限界は外径50mmの定着ベルト5の場合は0.418であり、反発係数Rの理論限界は1である。
定着ベルト5の柔軟性は、定着ベルト5の外径に比例して変化することが実験からわかっている。しかしながら定着ベルト5の層を構成する材料及び各層の膜厚が同じであれば、定着性が良好な条件は変わらない。したがって、定着ベルト5の外径が変わった場合の定着性良好な柔軟性は、例えば外径が40mmの場合0.12以上、外径が60mmの場合0.18以上というように、外径によって定着性が良好となる柔軟性の値は変化する。定着ベルト5の外径をAmmとすると、定着性が良好となる柔軟性Sは
S=A×0.003
と表すことができる。
定着ベルト5の外径が変わった場合の良好な組み合わせは、外径が50mmの定着ベルト5の柔軟性が得られるベルトの層構成及び膜厚であり、定着ベルト5の外径が40mmのとき、柔軟性Sは0.12以上、定着ベルト5の外径が60mmのとき、柔軟性Sは0.18以上となる。
表2は、定着ベルト5の外径が50mmの場合の定着ベルト5の柔軟性Sとベルト基材の膜厚との関係を示す。ベルト基材としてユーピレックスS(宇部興産社の商標)およびカプトン(東レ・デュポン社の商標)の2種類のポリイミドが用いられた。表2は、ポリイミドの厚みを変えたときの柔軟性を示す。定着ベルト5は、ポリイミド基材と厚み150μmのシリコンゴム層と厚み30μmのPFAチューブとからなる。
定着ローラ3の反発係数Rは、定着ローラ3の硬度、またはスポンジゴムの材質、気泡の大きさなどに影響する。たとえば外径30mm、スポンジゴム厚5mm、アスカーC硬度40度の定着ローラ3の反発係数は0.6となる。また、外径30mm、スポンジゴム厚5mm、アスカーC硬度20度の定着ローラ3の反発係数は0.5となる。
表3は、柔軟性S=1.04の定着ベルト5および反発係数R=0.6の定着ローラ3を用いて、ニップ面圧を変化させたときの画像評価を示す。表4は、定着ローラ3の硬度に対する光沢ムラの発生の有無を示す。ニップ面圧を増すことによって、トナー量が多いカラーの未定着トナー像の定着性は、良好になる。ニップ面圧が低い場合には、定着ベルト5が記録紙8の凹凸に追従しにくいので、微小な光沢ムラが発生し画質が低下する。画質評価からニップ面圧の下限は、1.4kgf/cm2(1.37E+5 Pa)である。
スポンジローラの場合には、ニップ面圧の上限は、定着ローラ3の耐久性によって決まる。ニップ面圧の上限は、2.6kgf/cm2(2.55E+5 Pa)である。定着ローラ3の耐久性は、反発係数Rの低下による定着可能範囲の減少、および硬度低下による定着可能温度範囲の下限温度が上昇して定着可能温度範囲が狭くなることから決めることができる。通紙枚数が200K枚(20万枚)の時点で、オフセットが発生したときは、耐久性がないものとする。
定着ローラ3の反発性が良好であれば、定着可能温度範囲は広い。定着ローラ3の反発性を確保するために、定着ローラ3は、アスカーC30度以上の硬度が必要である。スポンジゴムは、熱伝導が小さいので、定着ローラ3としてスポンジゴムが用いられる。加熱ローラ6で加熱された定着ベルト5の熱が定着ローラ3に奪われないので、ウォームアップ時間が短縮される。
スポンジローラは、シリコンゴムを発泡することによって得られる。定着ローラ3の硬度の上限は、定着ローラ3がスポンジローラの気泡が均一な状態で製造される硬度である。定着ローラ3の硬度の上限は、アスカーC50度である。スポンジローラの気泡が均一でなければ、硬度が不均一になる。硬度が不均一であると、光沢ムラが発生して画質低下に繋がる。さらに、長時間の使用によって、気泡が潰れやすくなるので、定着ローラ3の反発性が低下する。たとえば、アスカーC30度の定着ローラ3を用いて、荷重300Nをかけると面圧は1.42kgf/cm2(1.39E+5 Pa)となる。このときのニップ幅は6.6mm、ニップ長さは320mmである。
図4は、定着ベルト5の寄り止め41について説明するための図である。定着ベルト5の寄り止め41に定着ベルト5が当接したとき、基材の耐久性が不十分な場合には、定着ベルト5に割れが生じる。ユーピレックスSの場合には、定着ベルト5に割れが生じない条件として、少なくとも45μm以上の厚さが必要である。円筒状のベルト寄り止め41は、加熱ローラ6に挿入され、加熱ローラ6の回転に伴って回転する。
定着ローラ3、加圧ローラ4および加熱ローラ6の各ローラの平行度、荷重の左右バランスおよびベルトテンションの左右バランスが適切でない場合には、定着ベルト5が軸方向に移動し、移動速度は大きくなる。定着装置2の組み立て精度および各部品の寸法が許容範囲内であって、十分にバランスが取れた状態において、ベルトの移動は、寄り止め41によって止めることができる。寄り止め41には、耐熱性樹脂であるPPSを用いる。寄り止め41は、定着ベルト5の端部と垂直に当たる。定着ベルト5の基材の強度が弱い場合には、寄り止め41に接する定着ベルト5の端部に割れが生じる。ここで、定着ベルト5の厚みは定着ベルト5端部の周方向の複数点の測定値の平均値である。好ましくは定着ベルト5の端部から10mmの範囲内の測定値である。仮に、定着ベルト5の厚みの一部分が40μmであっても、平均値が45μm以上あれば、定着ベルト5に割れが生じない。また、定着ベルト5の端部から10mmより内側の厚みが45μmよりも薄く、例えば40μmの場合でも定着ベルト5の端部割れは生じない。
表5は、定着ベルト5の外径が50mmの場合の定着性および耐久性が良好な定着ベルト5の基材の条件を示す。シリコンゴム層は、JIS硬度20度であって、厚さ150μmである。離型層は、厚さ30μmのPFAチューブが用いられる。ベルト基材として、宇部興産社製のユーピレックスSと東レ・デュポン社製のカプトンとを用いた例を示す。基材の厚みの下限は、基材の耐久性によって決められる。定着性は、前記温度変動の範囲内で、オフセットが無く、良好な定着画像が得られた場合は○、オフセットが生じた場合は△、定着直後に用紙巻きつきが発生した場合は×とした。耐久性については、通紙枚数が200K枚(20万枚)までオフセットが発生しない場合は○とし、ベルト端部に割れが発生した場合は×とした。なお、表6〜表8についても同様の評価とした。
他のシリコンゴム層、離型層の厚さの選択も可能である。表6においては、定着ベルト5のシリコンゴム層はJIS硬度20度であって、厚さ150μmである。離型層は、厚さ20μmのPFAチューブが用いられる。表7においては、定着ベルト5のシリコンゴム層はJIS硬度20度であって、厚さ250μm、離型層は、厚さ30μmのPFAチューブが用いられる。表8においては、定着ベルト5のシリコンゴム層はJIS硬度20度であって、厚さ150μm、離型層は、厚さ20μmのPFAコートが用いられる。
基材が同じでも、離型層を薄くすると柔軟性Sが向上することが分かる。またシリコンゴム層を厚くすると柔軟性Sは低下する。さらに離型層が同じ厚みでも、チューブよりもコートのほうが柔軟性Sが向上する。表5から表8までを総合して、ポリイミド基材の適切な膜厚は45〜90μmであることがわかる。
以上の実施例における柔軟性は、定着ベルト5の外径が50mmの場合であるが、他の外径φmmの定着ベルト5を用いた場合は、表1,2、5、6,7,8の柔軟性Sにφ/50を乗じた値が外径φmmの定着ベルト5の柔軟性の値となり、それ以外の値、及び評価結果は同じとなる。表9、10を用いて、外径が50mm以外の定着ベルト5について説明する。
表9に定着ベルト5の外径が40mmの場合の柔軟性と反発係数の良好な組み合わせを示す。また、表10に定着ベルト5の外径が65mmの場合の柔軟性と反発係数の良好な組み合わせを示す。良好な組み合わせは、φ40ベルトの場合、柔軟性が0.12以上かつ反発係数が0.6以上となり、φ65ベルトの場合、柔軟性が0.2以上かつ反発係数が0.6以上となる。このように定着ベルト5の外径をAとすると、柔軟性はA*0.003以上必要なことがわかる。
図8は、定着ベルト5の外径を変えたときの柔軟性の実施例A1,B1と柔軟性の理論限界を示す。横軸は、定着ベルト5の外径(mm)を示し、縦軸は、柔軟性指標を示す。四角形は実施例A1を示し、三角形は実施例B1を示す。実施例A1は、外径44mmと50mmと64mmの3種類の定着ベルト5の柔軟性を示す。定着ベルト5の構成は、表層がPFAコート20μm、ゴム層が150μm、基材が50μmのユーピレックスSポリイミドである。実施例B1は外径40mmと50mmと65mmの3種類の定着ベルト5の柔軟性を示す。定着ベルト5の構成は、表層がPFAチューブ30μm、ゴム層が150μm、基材が50μmのユーピレックスSポリイミドである。このように、定着ベルト5の外径が少なくとも40mmから65mmの範囲において、柔軟性は定着ベルト5の外径に比例する。実施例A1,B1は、ともに反発係数が0.6以上の定着ローラ3との組み合わせにおいて、良好な定着性能を示す。
表11は、定着ローラ3の弾性層の厚みと定着性との関係を示す。図9は、定着ローラ3の弾性層の定着ニップ部12の出口での形状と用紙剥離性との関係を説明するための図である。図9では、定着ローラ3および加圧ローラ4の芯金を省略して示している。定着ローラ3の弾性層の最適な厚み寸法について説明する。
実験条件を以下に示す。定着ローラ3は、外径が30mmであり、弾性層が厚み3〜7mmのシリコンスポンジゴム、芯金が無垢の鉄である。定着ベルト5は、柔軟性Sが0.15である。定着ローラ3の弾性層を、以下「定着ローラ弾性層」121ともいう。定着ベルト5の構成は、基材のポリイミド層が厚み50μm、弾性層であるゴム層が厚み150μm、離型層である表層のPFAチューブが厚み30μmである。
加熱ローラ6は、直径が28mmであり、芯金が肉厚0.7mmのアルミニウム、赤外線吸収層が厚み100μmのカーボンブラック塗料、保護層が厚み50μmのPTFEコートである。加圧ローラ4は、直径が30mmであり、弾性層が厚み1mmのシリコンソリッドゴム、芯金が厚み1mmの中空の鉄、離型層が50μmのPFAチューブである。加圧ローラ4の弾性層を、以下「加圧ローラ弾性層」122ともいう。
プロセス速度、すなわち定着速度は、220mm/sに設定し、用紙は、坪量64gの普通紙を用いた。画像は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(B)の4色積層によって、用紙搬送方向の先端に、トナー量が1.0mg/cm2の黒べたで形成される。
定着ローラ弾性層121において、定着ベルト5を介して加圧ローラ4によって圧接されているときの厚み寸法Mと、圧接されていないときの厚み寸法Nとの比率を、「押込み率」Lとする。定着ローラ弾性層121の押込み率Lは、
L=(N−M)/N
で表わされる。
本実験では、定着ローラ弾性層121の押込み率Lが30%となる荷重を、定着ローラ3と加圧ローラ4とに加えた。定着性については、前記温度変動の範囲において、トナーオフセットおよび極端な光沢の低下が見られないとき○とし、トナーオフセットおよび極端な光沢の低下が見られたとき×とした。
図9において、加圧ローラ4は、定着ベルト5を介して定着ローラ3を圧接している。定着ローラ3は、定着ベルト5と接する表面部が定着ローラ弾性層121によって形成される。定着ベルト5は、図示せず省略して説明する。矢符R2は、定着ローラ3が回転する向きを示し、矢符R1は、加圧ローラ4が回転する向きを示す。
本発明の定着ベルト5は、定着ローラ弾性層121であるシリコンスポンジゴムの変形に対する形状の追従性に優れるので、定着ベルト5の定着ニップ部12の出口での形状は、定着ローラ弾性層121の形状とほぼ同じである。定着ニップ部12の出口とは、定着ニップ部12において用紙が搬送される下流側の端部である。
定着ニップ部12の出口において、定着ローラ弾性層121と加圧ローラ弾性層122とは、互いに曲面を形成して接する。この定着ニップ部12の出口において、定着ローラ弾性層121の接線123と、加圧ローラ弾性層122の接線124との角度Vが大きいほど、用紙の剥離性が優れる。定着ローラ3および加圧ローラ4は、小径のものを用いることによって、角度Vを大きくして用紙の剥離性を良好にすることができる。
図9(a)の定着ローラ弾性層121は、厚み寸法が3mmで形成される。定着ローラ弾性層121は、加圧ローラ弾性層122によって荷重をかけられても、大きく圧縮することはない。したがって、定着ローラ弾性層121は、定着ニップ部12の出口において角度Vが小さくなって用紙の剥離性が劣るので、定着温度が変動したときに、ホットオフセット、用紙巻きつきなどの不具合を発生させやすくなる。
図9(c)の定着ローラ弾性層121は、厚み寸法が7mmで形成される。定着ローラ弾性層121は、定着ニップ部12では加圧ローラ4によって押し込まれて凹状に変形するのに対して、定着ニップ部12の出口付近では凸状に膨らむように変形する。この凸状の膨らみである凸部125は、角度Vを小さくして用紙の剥離性を悪化させる。
図9(b)の定着ローラ弾性層121は、厚み寸法が4mm以上6mm以下で形成される。角度Vは、上述の図9(a)および図9(c)で示した角度Vよりも大きくなるので、定着ローラ弾性層121は、トナー像に対する付着力が低減され、用紙の離脱性に優れる。
以上のように、定着ローラ弾性層121の厚み寸法は、用紙にトナー像を定着させるときの最適な厚み寸法が存在する。定着ローラ弾性層121の厚み寸法は、4mm以上6mm以下であることが好ましい。
表12は、定着ローラ弾性層121の押込み率L、定着性、および耐久性の関係を示す。実験条件を以下に示す。定着ローラ3は、外径が30mmであり、定着ローラ弾性層121が厚み5mmのシリコンスポンジゴム、芯金が無垢の鉄である。定着ベルト5は、柔軟性Sが0.15である。定着ベルト5の構成は、基材のポリイミド層が厚み50μm、弾性層であるゴム層が厚み150μm、離型層である表層のPFAチューブが厚み30μmである。
加熱ローラ6は、直径が28mmであり、芯金が肉厚0.7mmのアルミニウム、赤外線吸収層が厚み100μmのカーボンブラック塗料、保護層が厚み50μmのPTFEコートである。加圧ローラ4は、直径が30mmであり、加圧ローラ弾性層122が厚み1mmのシリコンソリッドゴム、芯金が厚み1mmの中空の鉄、離型層が50μmのPFAチューブである。
プロセス速度、すなわち定着速度は、220mm/sに設定し、用紙は、坪量64gの普通紙を用いた。画像は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(B)の4色積層によって、用紙搬送方向の先端に、トナー量が1.0mg/cm2の黒べたで形成される。
本実験では、定着ローラ弾性層121の押込み率Lが20%、25%、30%、35%、40%となる荷重を、定着ローラ3と加圧ローラ4とに加えた。定着性については、前記温度変動の範囲において、トナーオフセットおよび極端な光沢の低下が見られないとき○とし、トナーオフセットおよび極端な光沢の低下が見られたとき×とした。耐久性については、用紙枚数が200K枚の時点での定着性について、初期の定着性と変化が無ければ耐久性が良好であるとして○とし、初期の定着性よりも悪化すれば耐久性が良好でないとして×とした。
定着ローラ弾性層121は、押込み率Lが20%のとき、定着性が悪くなり、また図9(a)で示したように角度Vが小さくなるので、用紙の剥離性を低下させる。定着ローラ弾性層121は、押込み率Lが40%のとき、加圧ローラ4から押圧される負荷が大きくなり、耐久性が低下する。
以上のように、定着ローラ弾性層121の押込み率Lは、定着性および耐久性について最適な範囲が存在する。定着ローラ弾性層121の押込み率Lは、25%以上、35%以下が好ましい。
定着ニップ部12の出口での定着直後のトナーは、高温であって粘着性があるため、定着ベルト5から離れにくい。定着ベルト5の柔軟性と定着ローラ3の反発性に加えて、定着ベルト5とトナーとの離型性を高めるために、トナーに添加するワックスが重要な役割を果たす。ワックス量が多い場合には、定着ベルト5に対するトナーの離型性が向上するため、定着可能温度範囲は拡大する。ワックス量が多い場合には、その反面、トナー流動性が低下する。トナー流動性が低下すると、トナー補給が滞り、画質が低下する。ワックス量が少ない場合には、トナー流動性は良好であるが、定着可能温度範囲が狭くなる。ワックス量が少ないので、トナーと定着ベルト5の離型性が低下するためである。
表13は、ワックス量と定着可能温度範囲とトナー流動性との関係を示す。WAX含有量が1.5%以上であれば定着可能温度範囲に影響はなく、WAX含有率が4.8%以下であれば、トナー流動性の低下はない。
トナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤およびワックスを含む。結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、ブラックトナー用の結着樹脂またはカラートナー用の結着樹脂が使用される。たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレンおよびスチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、ならびにエポキシ樹脂などが挙げられる。
あるいは、結着樹脂として、原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応させて得られる樹脂を用いてもよい。この場合には、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。結着樹脂にポリエステル樹脂を含むことによって、離型剤の分散状態制御性が向上し、一層優れた定着性を有するトナーが得られる。さらに、トナーに優れた耐久性と透明性とを付与することができる。結着樹脂は、1種を単独で使用することができ、または2種以上を併用することもできる。
ポリエステル樹脂としては、とくに制限されるものではなく公知のものが使用される。たとえば、多塩基酸類と多価アルコール類との縮重合物が挙げられる。多塩基酸類とは、多塩基酸、および多塩基酸の誘導体たとえば多塩基酸の酸無水物またはエステル化物などのことである。多価アルコール類とは、ヒドロキシル基を2個以上含有する化合物のことであり、アルコール類およびフェノール類のいずれをも含む。
多塩基酸類としては、ポリエステル樹脂のモノマーとして常用されるものを使用できる。たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸およびナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸およびアジピン酸などの脂肪族カルボン酸類が使用される。多塩基酸類は、1種を単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を併用して使用してもよい。
多価アルコール類としては、ポリエステル樹脂のモノマーとして常用されるものが使用される。たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよびグリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールおよび水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類が挙げられる。
「ビスフェノールA」とは、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパンのことである。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物としては、たとえばポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物としては、たとえばポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。多価アルコール類は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。
ポリエステル樹脂は、縮重合反応によって合成することができる。たとえば、有機溶媒中または無溶媒下で、触媒の存在下に多塩基酸類と多価アルコール類とを重縮合反応、具体的には脱水縮合反応させることによって合成することができる。このとき、多塩基酸類の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用い、脱メタノール重縮合反応を行なってもよい。多塩基酸類と多価アルコール類との重縮合反応は、生成するポリエステル樹脂の酸価および軟化点が、合成しようとするポリエステル樹脂における値となったところで終了させればよい。
この重縮合反応において、多塩基酸類と多価アルコール類との配合比および反応率などの反応条件を適宜変更することによって、たとえば、得られるポリエステル樹脂の末端に結合するカルボキシル基の含有量、ひいては得られるポリエステル樹脂の酸価、軟化点、その他の物性値を調整することもできる。
本実施形態において、結着樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましい。結着樹脂の酸価が5mgKOH/g未満であると、結着樹脂の酸価が5mgKOH/g以上である場合と比較して、結着樹脂と離型剤との親和性が大きくなるので、定着の際に離型剤がトナー表面に溶出しにくくなり、定着不良として高温オフセットが発生しやすくなる。結着樹脂の酸価が30mgKOH/gを超えると、結着樹脂の酸価が30mgKOH/g未満の場合より、トナー表面に残存する官能基が多くなり、水分を吸収しやすくなるので、高湿条件下においてトナー帯電量が低下し、帯電安定性が損なわれるおそれがある。
さらに、結着樹脂中における離型剤の分散性が低下しやすくなるので、トナーの製造の際に混練が不充分である場合には、トナー表面の離型剤の分散径が大きくなる可能性がある。結着樹脂の酸価が5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることによって、トナー粒子中での離型剤の分散性を所望の範囲にする、具体的には、トナー表面の離型剤の分散径を300nm未満に安定してすることができ、高湿条件下でのトナー帯電量の低下を抑えることができ、定着性が良好になるように結着樹脂と離型剤との親和性を制御することができる。
したがって、帯電安定性をより一層良好にすることができ、かつより良好な定着性を有することができるので、長期間にわたって高精細で高解像度の高画質画像をより一層安定して形成することができる。結着樹脂の酸価は、結着樹脂の合成において、結着樹脂の原料モノマー混合物、たとえばポリエステル樹脂の場合には、多塩基酸類、多価アルコール類の配合比および反応率などの反応条件を適宜変更することによって、得られる結着樹脂の末端に結合するカルボキシル基の含有量、ひいては得られる結着樹脂の酸価を調整することができる。
着色剤としては、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤およびブラックトナー用着色剤などが挙げられる。
イエロートナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、およびC.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などの有機系顔料、黄色酸化鉄および黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、およびC.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。
マゼンタトナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、およびC.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。
シアントナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー25、およびC.I.ダイレクトブルー86などが挙げられる。
ブラックトナー用着色剤としては、たとえば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、およびアセチレンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。これら各種カーボンブラックの中から、得ようとするトナーの設計特性に応じて、適切なカーボンブラックを適宜選択すればよい。
これらの顔料以外にも、紅色顔料、緑色顔料などを使用することができる。着色剤は、1種を単独で使用することができ、あるいは、2種以上を併用することができる。同色系のものを2種以上用いることができ、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いることもできる。
本発明に用いるトナー中の着色剤は、マスターバッチとして使用されることが好ましい。着色剤のマスターバッチは、たとえば、合成樹脂の溶融物と着色剤とを混練することによって製造することができる。合成樹脂としては、トナーの結着樹脂と同種の樹脂またはトナーの結着樹脂に対して良好な相溶性を有する樹脂が使用される。合成樹脂と着色剤との使用割合は特に制限されないが、好ましくは合成樹脂100重量部に対して30重量部以上100重量部以下である。マスターバッチは、たとえば粒径2〜3mm程度に造粒されて用いられる。
着色剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは結着樹脂100重量部に対して4重量部以上20重量部以下である。マスターバッチを用いる場合、本発明のトナーにおける着色剤の含有量が前記範囲になるように、マスターバッチの使用量を調整することが好ましい。着色剤を前記範囲で用いることによって、充分な画像濃度を有し、発色性が高く画像品位に優れる良好な画像を形成することができる。
離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、ならびにマイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子ポリプロピレンワックスおよびその誘導体、ならびにポリオレフィン系重合体ワックスおよびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、エステル系ワックスなどが挙げられる。
本発明に用いる離型剤の含有量は、トナー全重量に対して1.5重量%以上、4.8重量%以下が良い。1.5重量%未満では、ベルトに対するトナーの離型性が低下し、定着オフセットが発生する。一方、4.8重量%超では、定着性は良好であるものの現像装置内の撹拌熱によりトナーが凝集し、良好な画像が得られない。離型剤の酸価は、4mgKOH/g未満である。離型剤の酸価が4mgKOH/g以上であると、離型剤の酸価が4mgKOH/g未満である場合と比較して、離型剤と結着樹脂との親和性が高くなるので、定着の際に離型剤がトナーから溶出しにくくなり、高温オフセットが発生しやすくなる。
トナーには、結着樹脂、着色剤、離型剤の他に、帯電制御剤などのトナー添加成分を含有することが好ましい。帯電制御剤を含有させることによって、トナーに好ましい帯電性を付与することができる。帯電制御剤としては、正電荷制御用または負電荷制御用の帯電制御剤が使用される。
帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、およびアミジン塩などの正電荷制御用の帯電制御剤と、たとえば、オイルブラックおよびスピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、ならびに樹脂酸石鹸などの負電荷制御用の帯電制御剤とが挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用することができ、あるいは2種以上を併用することができる。
帯電制御剤の使用量は、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下であり、より好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下である。帯電制御剤が5重量部よりも多く含まれると、キャリアが汚染されてしまい、トナー飛散が発生するおそれがある。帯電制御剤の含有量が0.5重量部未満であると、トナーに十分な帯電特性が付与されない。
本実施形態において、トナーの体積平均粒子径は5.0μm以上7.0μm以下であり、個数平均粒子径が5.0μm以下であるトナー粒子の含有率は、全トナー粒子の40個数%未満であることが好ましい。トナーの粒径分布および個数分布がこの範囲を満足することによって、トナーの飛散は抑えられ、高精細で高解像度の高画質画像が形成される。体積平均粒子径が5.0μm未満では、流動性低下によるトナー飛散が発生し、体積平均粒子径が7.0μmを超えると、充分に高精細で高解像度化された画像が形成されない。個数平均粒子径が5.0μm以下であるトナー粒子の含有率が、全トナー粒子の40個数%以上では、流動性低下によるトナー飛散および転写効率の悪化によるかぶりが生じる。
本実施形態において、トナーの体積平均粒径(D50V)および個数平均粒子径が5.0μm以下であるトナー粒子の含有率(体積%、個数%)は、ベックマン・コールター株式会社製粒度分布測定装置「Multisizer3」によって測定される。測定条件を以下に示す。
アパーチャ径:100μm
測定粒子数:50000カウント
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン1.19(ベックマン・コールター株式会社製)
電解液:ISOTON−II(ベックマン・コールター株式会社製)
分散剤:アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム
測定手順は、ビーカーに電解液50ml、試料であるトナー20mgおよび分散剤1mlを加え、超音波分散器にて3分間分散処理して測定用試料を調製し、測定装置「Multisizer3」により粒径の測定を行う。得られた測定結果から試料粒子の体積粒度分布および個数粒度分布を求め、体積粒度分布からトナーの体積平均粒径(D50V)を求める。また個数粒度分布から、個数平均粒子径が5.0μm以下であるトナー粒子の含有率(個数%)を求める。
トナーには、たとえば、粉体流動性向上、摩擦帯電性向上、耐熱性、長期保存性改善、クリーニング特性改善および感光体表面磨耗特性制御などの機能を担う外添剤を混合してもよい。外添剤としては、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末などが挙げられる。外添剤は、1種を単独で使用することができ、あるいは、2種以上を併用することができる。
外添剤の添加量としては、トナーに必要な帯電量、外添剤を添加することによる感光体の摩耗に対する影響、トナーの環境特性などを考慮して、トナー粒子100重量部に対し0.1重量部以上10重量部以下が好適であり、2.0重量部以上4.0重量部未満がより好適である。外添剤を2.0重量部以上4.0重量部未満含むことにより、さらに流動性が良好で個々のトナー粒子の帯電を適正に制御することができるので、定着性を損なうことなく、かぶりが発生しない、高画質な画像を形成することができる。
外添剤の含有量が2.0重量部未満であると、トナー(特に小粒径トナー)に十分な流動性を付与することができないため、個々のトナー粒子が十分帯電されずに非画像部でのかぶりが発生しやすくなる。外添剤の含有量が4.0重量部以上であると、外添剤粒子同士が凝集しやすくなるため、トナー表面を効率よく覆うことができずに流動性を上げることができないため、個々のトナー粒子が十分帯電されずに非画像部でのかぶりが発生しやすい。
トナーの製造方法は、少なくとも、結着樹脂、着色剤および離型剤を含む樹脂組成物を乾式混合(前混合)して溶融混練後、粉砕分級してトナーの母体(コア)を作成する。次いで、トナーの母体(コア)と外添剤とを乾式混合して所望のトナーを得る。乾式混合に用いられる混合機としては、公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)およびメカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、ならびにコスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
トナーは、前述の前混合における離型剤の添加量を結着樹脂100重量部に対して2.5重量部以上6.0重量部以下とする。混練機としては公知のものが使用される、たとえば、二軸押出し機、三本ロールおよびラボブラストミルなどの一般的な混練機が使用される。たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。これらの中でも、オープンロール方式の混練機が好ましい。トナー原料混合物は、複数の混練機を用いて溶融混練されてもよい。
トナーの粉砕には、たとえば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子であるロータと固定子であるライナとの間に形成される空間に、粗粉砕物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機などが用いられる。
分級には、遠心力による分級または風力による分級によって過粉砕トナー粒子および粗大トナー粒子を除去することができる公知の分級機が使用される。たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などが使用される。トナーは、球形化処理をしても良い。機械的衝撃力による球形化処理に用いられる衝撃式球形化装置としては、市販されているものを使用することができ、たとえば、ファカルティ(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)などが用いられる。熱風による球形化処理に用いられる熱風式球形化装置としては、市販されているものを使用することができる。たとえば、表面改質機メテオレインボー(商品名、日本ニューマチック工業株式会社製)などが用いられる。
球形化処理は、トナーの円形度が、前述の好ましいトナーの円形度の範囲、具体的には、0.950以上0.960以下となるように行われることが好ましい。本発明のトナーの製造方法として粉砕法を例示したが、特に粉砕法に限定しなくてもよい。たとえば、懸濁重合法、乳化重合法、溶解懸濁法、エステル伸張重合法などが用いられる。
上述のようにして製造される本発明のトナーは、そのまま1成分現像剤として使用することができ、またキャリアと混合して2成分現像剤として使用することができる。すなわち、本発明の実施の一形態である現像剤は、本発明のトナーを含む。これによって、良好な定着性と良好な帯電安定性とを有し、長期の使用にわたり特性の安定した現像剤とすることができるので、良好な現像性を維持することのできる現像剤が得られる。
現像剤は、本発明のトナーとキャリアとからなる2成分現像剤であることが好ましい。本発明のトナーは、保存安定性に優れるので、現像剤の流動性低下を抑え、帯電安定性および現像性の良好な2成分現像剤が得られる。このような2成分現像剤を用いることによって、トナー飛散がなく、長期間にわたって高精細で高解像度の高画質画像を安定して形成することができる。
2成分現像剤を構成するキャリアとしては、磁性を有する粒子が使用される。磁性を有する粒子の具体例としては、たとえば、鉄、フェライトおよびマグネタイトなどの金属、これらの金属とアルミニウムまたは鉛などの金属との合金などが挙げられる。これらの中でも、フェライトが好ましい。
磁性を有する粒子に樹脂を被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどをキャリアとして用いてもよい。樹脂被覆キャリアに用いられる樹脂としては特に制限はないけれども、たとえば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、エステル系樹脂、およびフッ素含有重合体系樹脂などが挙げられる。また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としても特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、およびフェノール樹脂などが挙げられる。
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。キャリアの体積平均粒子径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、10μm以上100μm以下であることが好ましく、30μm以上50μm以下であることが、より好ましい。キャリアの体積平均粒子径が10μm未満である場合には、キャリアの体積平均粒子径が10μm以上である場合と比較して、キャリアと現像ローラとの間の磁力が弱くなるので、現像工程において、キャリアがトナーと一緒に現像されやすくなる。
キャリアの体積平均粒子径が100μmを超えると、個々のトナー粒子を充分に帯電させることができないおそれがある。キャリアの体積平均粒子径が10μm以上100μm以下であることによって、キャリアの体積平均粒子径が100μmを超える場合と比較して、トナーとキャリアとの接触機会を増やすことができるので、個々のトナー粒子の帯電を制御し、充分なトナー帯電性を付与することができる。したがって、トナーの現像性が良好な2成分現像剤を得ることができる。キャリアの体積平均粒子径が30μm以上50μm以下であることによって、上記の効果をより安定して発揮することができる。
本実施形態において、キャリアの体積平均粒子径は、レーザ回折、散乱式粒度分布測定装置マイクロトラック(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装株式会社製)を用いて測定する。
本発明に用いたトナーの製造方法の一例を下記に示す。ポリエステル樹脂A、81.8重量部、マスターバッチ(C.I.Pigment Red57:1を40重量%含有)
12重量部、パラフィンワックス(離型剤、商品名:HNP10、日本精鑞株式会社製、酸価0mgKOH/g、融点75℃)5.0重量部、アルキルサリチル酸金属塩(帯電制御剤、商品名:BONTRON E−84、オリエント化学株式会社製)1.5重量部を、ヘンシェルミキサで10分間混合することによって、混合物を作製する。混合物を、オープンロール型連続混練機(商品名:MOS320−1800、三井鉱山株式会社製)で溶融混練し、溶融混練物を作製する。
溶融混練物をカッティングミル(商品名:VM−16、菱興産業株式会社製)で粗粉砕して粗粉砕物を作製した後、粗粉砕物をカウンタジェットミルで微粉砕する。粉砕後、ロータリー式分級機で過粉砕トナーを分級除去することによって、体積平均粒子径が約6.7μmであるトナー母体(コア)が作製される。
衝撃式球形化装置(商品名:ファカルティF−600型、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて粉砕物の球形化物を作製する。トナー100重量部、および外添剤として疎水性シリカ(商品名:R−974、日本アエロジル株式会社製)2.2重量部と、疎水性チタン(商品名:T−805、日本アエロジル株式会社製)1.6重量部との合計3.8重量部をヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)で混合することによってトナーに外添剤が外添される。WAXの含有量は、トナー全重量に対して4.8重量%である。
パラフィンワックスを1.5重量部(トナー全重量に対する含有量は、1.49重量%)、2重量部(トナー全重量に対する含有量は、1.98重量%)、3.5重量部(トナー全重量に対する含有量は、3.41重量%)とした場合は、いずれも良好な定着性が得られ、現像装置内でのトナーの凝集も見られず、良好な画像が得られる。ワックスの含有量は、1.5重量%以上4.8重量%以下の場合は良好である。
しかし、パラフィンワックスを1重量部(トナー全重量に対する含有量は、1.0重量%)では、定着オフセットが発生する。パラフィンワックスを5.5重量部(トナー全重量に対する含有量は、5.26重量%)では、定着性は良好であるが、現像装置内でトナーの凝集が発生し、画像にトナー凝集物が認められる。
2成分現像剤の作製は、キャリアとして、体積平均粒子径が45μmであるフェライトコアキャリアを用いて、キャリアに対するトナーの被覆率が60%となるようにV型混合器混合機(商品名:V−5、株会社特寿工作所製)で20分間混合することによって、実施例1のトナーを含む2成分現像剤とする。
図5は、定着装置2を備えた画像形成装置1を模式的に示す概略図である。画像形成装置1をカラー複合機に適用した例である。本発明の実施の形態に係るカラー複合機は、第1〜第4可視像形成ユニット51,52,53,54、中間転写ベルト55、2次転写ユニット56、定着ユニット2、内部給紙ユニット57および手差し給紙ユニット58を備える。第1〜第4可視像形成ユニット51,52,53,54、中間転写ベルト55および2次転写ユニット56は、トナー像形成手段を構成する。
第1可視画像形成ユニット51は、感光体59と、帯電ユニット60と、図示しない光学系ユニットと、現像ユニット61と、1次転写ユニット62とを含み、これらのユニットで感光体59にトナー像を形成し、それを中間転写ベルト55に転写する。第1可視画像形成ユニット51は、像担持体となる感光体59の周囲に、帯電ユニット60、現像ユニット61およびクリーニングユニット63を配置する。図示しない光学系ユニットは、光源64からのデータが4組の感光体59,65,66,67に届くように配置される。1次転写ユニット62は、中間転写ベルト55を介して第1可視画像形成ユニット51と圧接して配置される。
他の第2〜第4可視画像形成ユニット52,53,54は、第1可視画像形成ユニット51と同様の構成であるので、それらの記載は省略する。各ユニットの現像ユニットにはイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各色のトナーが収容される。
中間転写ベルト55には、上述の各色のトナー像が転写されて、カラートナー像が形成される。中間転写ベルト55は、テンションローラ68,69によってたわむことなく配置され、テンションローラ69側に廃トナーBOX70が当接して配置される。2次転写ユニット56は、中間転写ベルト55に形成されたカラートナー像を紙体に転写する。テンションローラ68側に2次転写ユニット56が当接して配置される。定着ユニット2は、本発明の定着装置2である。定着ユニット2は、定着部材71、加圧部材72から構成され、図示していない加圧手段により所定の圧力で圧接されており、2次転写ユニット56の下流に配置されている。
画像形成装置1を用いた画像形成の工程を示す。感光体59表面を帯電ユニット60で一様に帯電した後、図示しない光学系ユニットにより感光体59表面を画像情報に応じてレーザー露光し静電潜像を形成する。帯電ユニット60としては、感光体59表面を一様に、またオゾンを極力発生させることなく帯電するために、帯電ローラ方式を採用する。現像ユニット61により感光体59上の静電潜像に対しトナー像を現像し、この顕像化されたトナー像をトナーとは逆極性のバイアス電圧が印加された1次転写ユニット62により中間転写ベルト55上に転写する。他の3組の第2〜第4可視画像形成ユニット52,53,54も同様に動作し順次中間転写ベルト55上に転写するようになっている。
中間転写ベルト55上のトナー像は2次転写ユニット56まで搬送され、別途、内部給紙ユニット57の給紙ローラ73または手差し給紙ユニット58の給紙ローラ74から給紙された記録紙に、トナーとは逆極性のバイアス電圧が印加されて転写される。転写されたトナー像を担持する記録紙は、定着ユニットに搬送され、定着ローラ3および加圧ローラ4によって充分に加熱されて、トナー像が記録紙に融着し、外部へ排出される。
図6は、本発明の第2の実施形態に係る定着装置91の構成を模式的に示す断面図である。定着装置91は、第1のエンドレスベルトとしての定着ベルト92と、第2のエンドレスベルトとしての加圧ベルト93を備えている。定着部は、定着ベルト92と、定着ローラ94と、加熱ローラ111で構成され、加圧部は、加圧ローラ95と加圧ベルト93、加圧ローラ95とテンションローラ96で構成されたツインベルト定着装置の構成となっている。
定着ベルト92は、定着ローラ94と加熱ローラ111との間に張架されてループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材である。定着ベルト92は、定着ローラ94と加圧ローラ95との圧接点で加圧ベルト93に接触するように設けられ、記録紙97に担持されるトナー像を構成するトナーを加熱溶融させて記録紙97に定着させるものである。定着ベルト92は、定着ローラ94の矢符X方向の回転駆動によって、矢符X方向に従動回転する。
定着ベルト92は、基材層と、弾性層、離型層とを含む3層構造よりなり、直径80mmの円筒形状に形成された厚さ270μmの無端ベルトである。基材層を形成する材料としては、耐熱性および耐久性に優れるものであれば特に制限されず、たとえば、耐熱性合成樹脂が用いられる。耐熱性合成樹脂の中でも、ポリイミド(PI)またはポリアミドイミド(PAI)などが好ましい。これらの樹脂は、強度、耐熱性、価格性等に優れている。基材層の厚さは、45〜90μmが望ましい。本実施形態においては、ポリイミドが用いられ、厚さは70μmである。
弾性層を構成する材料としては、ゴム弾性を有するものであれば特に制限はないけれども、さらに耐熱性にも優れるものが好ましい。たとえば、シリコンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコンゴムなどが用いられるが、これらの中でも、特にゴム弾性に優れるシリコンゴムが好ましい。弾性層の硬度は、JIS−A硬度1〜60度であることが好ましい。JIS−A硬度の範囲内であれば、弾性層の強度の低下、密着性の不良を防止しつつ、トナーの定着性の不良を防止することができる。シリコンゴムとしては具体的には、1成分系、2成分系又は3成分系以上のシリコンゴム、LTV型、RTV型又はHTV型のシリコンゴム、縮合型又は付加型のシリコンゴム等が使用される。弾性層の厚さは、30〜500μmであることが好ましい。この厚さの範囲内であれば、弾性層の弾性効果を維持しつつ、断熱性を低く抑えることができるので、省エネルギー効果が発揮される。本実施形態では、JIS−A硬度5度、厚さ150μmのシリコンゴムが使用される。
離型層は、フッ素樹脂チューブよりなる。定着ベルト92の外周側に形成される離型層は、フッ素樹脂チューブより構成される。フッ素樹脂チューブより構成される離型層は、フッ素樹脂を含有する樹脂を塗布し、これを焼成することにて形成される離型層よりも耐久性に優れている。塗布・焼成によって離型層を形成する場合に、寸法精度の高い離型層を得ようとすると、高精度で高価な金型が必要となるが、チューブを用いることで、上述のような金型を用いずとも、寸法精度の高い離型層が得られている。離型層の厚さは、5〜50μmであることが好ましい。離型層の厚さがこの範囲内であれば、離型層は、適度な強度を持ち、弾性層の弾性を活かしながら、記録材の微小な凹凸に追従することができる。本実施形態において、離型層には、厚さ約30μmのPFAチューブが用いられる。
定着ローラ94としては、芯金98と、弾性体層99と表面層100とを含む直径30mmの円筒形状に形成されるローラ状部材が使用される。芯金98を形成する金属には熱伝導率の高い金属が使用される。たとえば、アルミニウム、鉄などが用いられる。芯金98の形状としては、円筒状、円柱状などが挙げられるけれども、芯金98からの放熱量が少ない円筒状の形状が好ましい。
弾性体層99を構成する材料としては、ゴム弾性を有するものであれば特に制限はされないが、さらに耐熱性にも優れるものが好ましい。たとえば、シリコンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、特にゴム弾性に優れるシリコンゴムが好ましい。定着ベルト92の寄りを修正するため、弾性層上に表面層100を設ける構成としてもよい。これにより定着ローラ94の表面の摺動性が向上し、定着ベルト92の寄りを修正し易くなる。
表面層を構成する材料としては、耐熱性および耐久性に優れ、摺動性が高いものであれば特に制限されない。たとえば、PFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素系樹脂材料、フッ素ゴムなどが使用される。
また、定着ローラ94の内部に、加熱手段を設けてもよい。これは、画像形成装置90の電源ONから画像形成可能になるまでの立ち上げ時間の短縮、トナー像定着時に記録紙97に熱が移行することに起因する定着ローラ94の表面温度の低下などを防止するためである。
加熱ローラ111は、回転自在に支持されかつ図示しない加圧手段によって定着ベルト92にテンションを加えられるように設けられたローラ状部材である。加熱ローラ111は、定着ベルト92の矢符X方向の回転に従動し回転する。加熱ローラ111には、アルミニウム、鉄などの熱伝導率の高い金属からなる金属製ローラが使用される。金属製ローラは必要に応じてその表面にフッ素樹脂層が形成されてもよい。
加熱ローラ111は、その内部に加熱手段101を有する。これによって、定着ベルト92が加熱される。加熱手段101には図示しない電源が接続され、加熱手段101を発熱させるための電力が供給される。加熱手段101には一般的な加熱手段が用いられる。本実施の形態では加熱手段101にはハロゲンランプが用いられる。
加圧ベルト93は、ベルト懸架部材としてのテンションローラ96と加圧ローラ95とによって張架されている。テンションローラ96と加圧ローラ95とは、各々定着装置91の不図示の左右の側板間に回転自由に軸受されて支持される。加圧ベルト93は、定着ベルト92に従動回転する。ここで、定着ニップ最下流の部分をローラ対により定着ベルト92と加圧ベルト93とを挟んで搬送する構成としたことで、ベルトのスリップを防止することができる。定着ニップ最下流の部分は定着ニップでの圧分布(記録材搬送方向)が最大となる部分である。
加圧ローラ95として、芯金102と、弾性体層103と、表面層104とを含む径30mmのローラ状部材が使用される。芯金102、弾性体層103および表面層104を形成する材料としては、それぞれ、定着ローラ94の芯金98、弾性体層99および表面層100を形成する金属または材料と同じものが使用される。芯金102の形状も定着ローラ94の芯金98と同様である。
加圧ローラ95の内部には、加熱手段105が設けられる。これは、画像形成装置90の電源ONから画像形成可能になるまでの立ち上げ時間の短縮、トナー像定着時に記録紙97に熱が移行することに起因する加圧ローラ95の表面温度の急激な低下などを防止するためである。本実施の形態では、加熱手段105にはハロゲンランプが用いられる。
テンションローラ96は、外径が30mmで、内径が26mmである鉄合金製の芯金106に、熱伝導率を小さくして加圧ベルト93からの熱伝導を少なくするためにシリコンスポンジ層を設けている。ここで、定着ベルト92と加圧ベルト93との間に画像加熱ニップとしての定着ニップを形成するために、加圧ローラ95は、所定の加圧力にて定着ローラ94に向けて加圧されている。
また、装置を大型化することなく幅広い定着ニップを得るために、定着ベルト92を加圧ベルト93に向けて加圧する第1の加圧パッドとしての定着パッド107と、加圧ベルト93を定着ベルト92に向けて加圧する第2の加圧パッドとしての加圧パッド108が設けられる。定着パッド107および加圧パッド108は装置の不図示の左右の側板間に支持させて配設される。加圧パッド108は、不図示の加圧機構により定着パッド107の方向である矢印Zの方向に、所定の加圧力にて加圧される。
第1の加圧パッドである定着パッド107および第2の加圧パッドである加圧パッド108はPPS製(ポリフェニレンサルファイド樹脂)のものが使用される。回転体ではないパッドによってニップを形成すると、ベルトの内周面はパッドと擦れる。ベルト内周面とパッドとの摩擦係数が大きい場合には、摺動抵抗が大きくなる。その結果として、画像のズレ、ギア破損、駆動モータの消費電力アップなどの問題が発生する。これらの問題は、特に上下のベルト方式において顕著である。そのために、第1の加圧パッドである定着パッド107および加圧パッド108には、低摩擦シートが設けられ、低摩擦シートがベルトと接する。これにより、ベルトとの摺擦によるパッド削れが防止され、摺動抵抗も低減することができ、良好なベルト走行性およびベルト耐久性が得られる。
図7は、定着装置91の制御を行うブロック図を示す。電源回路A2から加熱ローラ111のハロゲンヒータに電力が供給され、加熱ローラ111が加熱される。加熱ローラ111によって、回動する定着ベルト92が加熱される。定着ベルト92の表面温度が、サーミスタA109などの温度検知素子によって検知される。温度検知素子で検知される定着ベルト92の温度に関する信号が制御回路部に入力される。制御回路部は、温度検知素子から入力される温度情報が所定の定着温度に維持されるように、電源回路からハロゲンヒータに対する供給電力を制御して、定着ベルト92の温度を所定の定着温度に調整する。
定着ベルト92が所定の定着温度に立ち上がって温度が調整された状態において、定着ベルト92と加圧ベルト93間の定着ニップに、未定着トナー画像を有する記録紙97が搬送される。記録紙97は、未定着トナー画像を担持した面を、定着ベルト92側に向けて導入される。記録紙97の未定着トナー画像が定着ベルト92の外周面に密着したまま挟持搬送されていく。未定着トナー画像は、定着ベルト92から熱が付与され、さらに加圧力を受けて記録紙97の表面に定着される。
サーミスタA109は、定着ベルト92を介して加熱ローラ111に対向する位置において定着ベルト92に近接するように設けられる。サーミスタA109は、定着ベルト92の温度を検知する。サーミスタB110は、加圧ベルト93を介して加圧ローラ95に対向する位置において、加圧ベルト93に近接するように設けられる。サーミスタB110は、加圧ベルト93の温度を検知する。サーミスタA109およびサーミスタB110による検知結果は中央処理装置(以下CPUという)に入力される。
CPU112は、サーミスタA109の検知結果から、サーミスタA109の温度が設定範囲内にあるか否かを判定する。定着ベルト92の温度が設定範囲よりも低い場合には、加熱手段A101に接続される電源に制御信号が送られ、加熱手段A101に電力を供給して発熱を促す。定着ベルト92の温度が設定範囲よりも高い場合には、加熱手段A101への給電力の有無を確認する。電力供給が継続されている場合は、電力供給を停止する制御信号を送る。
さらに、CPU112は、サーミスタB110の検知結果から、サーミスタB110の温度が設定範囲内にあるか否かを判定する。加圧ベルト93の温度が設定範囲よりも低い場合には、加熱手段B105に接続される電源に制御信号を送り、加熱手段B105に電力を供給して発熱を促す。定着ベルト92の温度が設定範囲よりも高い場合には、加熱手段B105への給電力の有無を確認する。電力供給が継続されている場合には、電力供給を停止する制御信号を送る。
定着ベルト92を介して加熱ローラ111に対向し、かつサーミスタA109よりも定着ベルト92の回転方向下流側の位置には、図示しないサーモスタット115が配設される。サーモスタット115は、定着ベルト92に近接するように設けられ、定着ベルト92の異常昇温を検知する。サーモスタット115による検知結果はCPU112に入力される。CPU112はサーモスタット115の検知結果に応じて加熱手段A101に接続される電源からの給電を停止する。
定着ローラ94と加熱ローラ111と定着ベルト92と加圧ローラ95とを含む定着機構は、画像形成装置90の全動作を制御する図示しないCPU112によって制御される。CPU112は、画像形成指示の入力を受けると、加熱ローラ111、加圧ローラ95の内部に設けられる加熱手段A101および加熱手段B105に電力を供給する電源に制御信号を送る。画像形成指示は、画像形成装置90の鉛直方向上面に設けられる図示しない操作パネルまたは画像形成装置90に接続されるコンピュータなどの外部機器から入力される。制御信号を受けた電源は電力を供給して加熱手段A101および加熱手段B105を起動させる。
加熱手段A101および加熱手段B105は、定着ローラ94、加熱ローラ111、加圧ローラ95および定着ベルト92の表面がそれぞれの設定温度になるように加熱する。定着ローラ94および加圧ローラ95の近傍に設けられる図示しない温度検知センサが設定温度に到達したことを検知し、その検知結果がCPU112に入力されると、CPU112は定着ローラ94を回転駆動させる図示しない駆動手段に制御信号を送り、加圧ローラ95を矢符Yの方向に回転駆動させる。
それに伴って定着ベルト92、定着ローラ94および加熱ローラ111が従動回転する。この状態で、未定着トナー像を担持する記録紙97が定着ニップ部12に搬送される。この記録紙97が定着ニップ部12を通過する際に、トナー像を構成するトナーが加熱加圧され、記録紙97に定着され、画像が形成される。
図7に示した定着装置91では、加熱ローラ111内部に加熱手段A101としてハロゲンランプを用いたが、加熱ローラ111の外周に外部加熱装置を設けてもよい。また、誘導加熱を利用した誘導加熱装置を用いてもよく、これらを適宜組み合わせて構成しても良い。
このように、定着ベルト5は、前記定着ベルト5の外径をAmmとし、外径13mm、定着ベルト幅よりも十分に長い金属パイプ21に前記定着ベルト5を通して、金属パイプ21の両端を固定した状態で、さらに定着ベルト幅よりも十分長く、定着ベルト幅で割った重さが0.383g/mmで外径13mmの荷重ローラ22を定着ベルト5が下に伸びるように定着ベルト5に通したときの定着ベルト5の上下方向の長さをBmmとし、定着ベルト5の柔軟性をSとしたときに、次式
S=(B−A)/A
で表される定着ベルト5の柔軟性SがA*0.003以上であり、定着ローラ3は、長さ50cmの糸32に吊るした外径11mmで重さが7gの球状錘31が、静止状態において、定着ローラ3の中心軸線を含んだ水平面上に錘の重心が配置されるように接する最下点33にあるとき、錘を最下点からH1=10cmの高さだけ引き上げ、錘を静かに放して錘を定着ローラ3に衝突させたときに錘が跳ね返った最下点33からの高さをH2とし、定着ローラ3の反発係数をRとしたときに、R=H2/H1で表される定着ローラ3の反発係数Rが0.6以上であるので、従来よりも被定着部材上にトナーを定着させることができる温度範囲を広くすることができる。
さらに、定着ローラ3に加圧ローラ4が圧接する領域である定着ニップ部12の面圧が1.4kgf/cm2以上であるので、定着性を良好にすることができる。
さらに、定着ローラ3の硬度は、アスカーC30度以上50度以下であるので、定着ローラ3の反発性が良好であり、定着性を良好にすることができる。
さらに、定着ベルト5は、被定着部材上のトナー像と接する接触面を基準として、定着ローラ3との接触面に向かってフッ素樹脂層、ゴム弾性層および樹脂基材層を有し、樹脂基材層の厚みは45μm以上であって90μm以下であるので、定着ベルト5に割れが生じることなく定着ベルト5の柔軟性を確保することができ、定着性を良好にすることができる。
さらに、トナー像を形成するトナーの全重量に対するトナーワックスの重量が占める比率は1.5重量%以上、4.8重量%以下であるので、トナーの流動性の低下がなく定着ベルトに対するトナーの離型性を向上させることができる。
さらに、定着ローラ3は、定着ベルト5と接する表面部が定着ローラ弾性層121によって形成され、定着ローラ弾性層121の厚み寸法は、4mm以上であって6mm以下であるので、定着ローラ弾性層121は、トナーの定着性を良好にすることができる。また、定着ローラ弾性層121は、非定着部材である用紙の剥離性を向上させることがきる。これによって、定着装置2は、定着温度が変動したときに、ホットオフセット、用紙巻きつきなどの不具合が発生することを防止することができる。
さらに、定着ローラ3は、定着ベルト5と接する表面部が定着ローラ弾性層121によって形成され、定着ローラ弾性層121は、定着ベルト5を介して加圧ローラ4によって圧接されているときの厚み寸法Mと、圧接されていないときの厚み寸法Nとの比率である押込み率Lが、25%以上であって35%以下であるので、トナーの定着性を良好にし、かつ定着ローラ弾性層121の耐久性を高めることができる。
さらに、定着装置2を備えているので、従来よりも被定着部材上にトナーを定着させることができる温度範囲が広い定着装置2を備えた画像形成装置1を提供することができる。
このようにして、本実施形態の画像形成装置は実現される。本実施形態の定着装置は、前述のような優れた本発明の定着装置を備えて構成される。本発明の定着装置によれば、トナーの定着性が良好な温度範囲を広くすることができる。