JP2010200660A - 改良された増幅試薬 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋳型核酸からDNAの生成及び更なるDNA増幅を行う際に有用な新規組成物及び方法を提供する。
【解決手段】高分子材料からなる反応容器上部が通気性フィルターにより塞がれ、試料中の核酸をDNAポリメラーゼと接触させポリメラーゼ連鎖反応により増幅する方法において、増幅試薬にアルブミンおよび/又はDMSOが含まれていることを特徴とする核酸増幅方法
【選択図】 図1

Description

本発明は、分子生物学の分野に属する。本発明は、鋳型核酸からDNAの生成及び更なるDNA増幅を行う際に有用な新規組成物及び方法に関する。本発明は、具体的にはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に有用な新規組成物及び方法に関する。
核酸類の検出、分析、転写及び増幅は、現代の分子生物学において最も重要な操作法である。DNA分析のためにそのような操作法の適用は、遺伝子発現の研究、伝染性病原体(infectious agents)又は遺伝病の診断、cDNAの生成及びレトロウイルス類の分析等においてとりわけ重要である。
DNAの増幅に用いられるPCRは、当分野においては周知の技術である。具体的には、PCR法に基づく遺伝子増幅方法は、標的核酸、4種類のデオキシヌクレオシド三リン酸、一対のプライマー及びDNA合成酵素の存在下で、変性、アニーリング、伸長の3工程からなるサイクルを繰り返すことにより、上記一対のプライマーで挟まれる標的核酸の領域を指数関数的に増幅させる方法である(Nature, 324 (6093), 13−19(1986))(非特許文献1)。すなわち、変性工程で試料の核酸を変性し、続くアニーリング工程において各プライマーと、それぞれに相補的な一本鎖標的核酸上の領域とをハイブリダイズさせ、続く伸長工程で、各プライマーを起点としてDNAポリメラーゼの働きにより鋳型となる各一本鎖標的核酸に相補的なDNA鎖を伸長させ、二本鎖DNAとする。この1サイクルにより、1本の二本鎖DNAが2本の二本鎖DNAに増幅される。従って、このサイクルをn回繰り返せば、理論上上記一対のプライマーで挟まれた試料DNAの領域は2倍に増幅される。増幅のために好ましい反応条件は、熱循環(themocyc1ing)、即ちPCRサイクルの各々のステップを達成させるために、反応混合物の温度を変化させることである。熱循環は、約23℃〜約100℃の間、好ましくは約37℃〜約95℃の間の温度範囲で行う。核酸変性は、約90℃〜約100℃の間、好ましくは約95℃において通常行う。アニーリングは、約37℃〜約75℃の間、好ましくは約60℃において通常行う。DNAの伸長は、約55℃〜約80℃の間、好ましくは約65〜72℃において通常行う。サイクリング数は、所望のDNA生成物の量により大きく異なる。PCRサイクルの数は、好ましくは約5〜約99の範囲であり、より好ましくは約20サイクルより多く、最も好ましくは約25〜50サイクルである。
PCR技術ははじめ、大腸菌などの常温菌由来のDNA合成酵素を用いて行われており、その成功率(実際に目的DNAが増幅する確率)は低いものであった。やがて、好熱菌由来の耐熱性DNA合成酵素が利用されるようになり、自動的に温度サイクリングを行う機器も開発されPCR成功率が向上した。更に、PCR成功率を向上させるため、使用するDNA合成酵素の改良、反応液組成の改良、サイクル温度条件の改良、温度サイクリング機器の性能向上、試薬の管理状態の改善など、多岐にわたり、ありとあらゆる改善がなされてきた。以上の結果、PCR成功率は格段に向上したが、増幅に時間を要する課題が指摘されていた。
増幅時間を短縮する手段として、特許文献1および2には、変性反応などのための温度調整を行なう熱媒に空気などの気体を用いる装置が開示されている。具体的には、ヒーターで加熱した空気をPCR反応液の周囲に送り込むことで、それぞれの反応温度に調整している。これにより、ヒートブロック等を用いるより迅速に温度調整が可能になるとされている。
核酸増幅容器としては、キャピラリーサンプルチューブが用いられている。キャピラリーサンプルチューブは、PCR反応液の貯留部位が極めて細く形成されているため、温度調整の時間を短縮することができる。
また、当該装置では、キャピラリーサンプルチューブなどに含まれるPCR反応液の蛍光を検出する手段も備えている。つまり、核酸の増幅に応じて発する蛍光が変化するPCR試料を用いれば、リアルタイムにPCRの結果を確認することができる。
特許文献1および2に開示の装置のように、核酸増幅容器としてキャピラリチューブを用いる場合は、別途、遠心機によって試料などを充填する工程が必要となる。つまり、キャピラリチューブは液溜部が細いため、試料などを当該液溜部すなわち核酸増幅反応を行なうための反応部に充填するためには、注入口すなわち試料などを受け入れるための導入部に注いだ上で遠心機にかける工程が必要になり、当該工程を行なった上で、装置に搭載する必要がある。
このとき、特許文献1および2に開示の核酸増幅容器では反応部の材質としてガラスを使用しているため、当該導入部に注いだ試料などを当該反応部に充填するための遠心の際に生じる遠心力によって核酸増幅容器が破損する可能性がある。遠心時の他にも、持ち運びなど通常の実験操作においても核酸増幅容器が破損する可能性がある。当該充填操作の際に核酸増幅容器が破損すると試料などを失うことになるため、例えば、患者から採取できる検体の量が限られている遺伝子診断の場合には、診断結果を得ることができない。
また、特許文献1および2に開示の核酸増幅容器は、プラスチック製の導入部とガラス製の反応部を組み合わせた複雑な構造であるため、大量生産することが困難であり安価に供給することができない。
特許文献1および2に開示の装置では、核酸増幅反応の前に、別途、核酸増幅容器であるキャピラリチューブにキャップを装着する必要がある。これは、一旦増幅させた同種の核酸、すなわち増幅核酸断片のコンタミネーションを防止するために、従来、一般的に行なわれている対策であるが、それぞれのキャピラリチューブへのキャップの装着は、特にPCRを行なうサンプルの数が多い場合には、大変煩雑な作業となる。
特許文献3には、蓋が一体的に設けられた検出容器に、試薬と、標的核酸を含むことが疑われる試料とを分注する分注手段と、検出容器への試薬および試料の分注が終了した後に、検出容器の蓋を閉める蓋閉手段と、蓋が閉められた検出容器内の標的核酸を増幅する増幅手段と、蓋が閉められた検出容器内の標的核酸の存在を検出する検出手段とを備えた装置が開示されている。つまり、当該装置では、自動的に、核酸増幅容器へ蓋を装着することができる。
特許文献3に開示の装置では、核酸増幅容器へ蓋を装着する作業を自動的に行なうための手段として、当該装置に、検出容器の蓋を蓋閉位置まで移動させる回動部材と、回動部材を上方向から下方向に押圧することにより蓋に上方向からの押圧力を加えて蓋の蓋閉動作を完了させる押圧部材とを含んでおり、押圧部材による上方向からの押圧力による蓋閉め動作により、検出容器の蓋閉め動作を行う。これは、コンタミネーションを防止するために、従来、一般的に行なわれている対策を自動化したものであるが、装置が大型化、複雑化するという問題を有する。また、特許文献3に開示の装置においても、特許文献1および2に開示の装置と同様に、他の患者などに由来する検体のコンタミネーションを防止するための対策は開示されていない、すなわち、核酸増幅反応のための溶液を核酸増幅容器に充填する際に、上記検体中に含まれる核酸が飛散する問題が解決されていない。
本課題に対し、特許文献4には、通気性フィルターを備えたピペットチップにて試薬を吸引し、該チップと勘合する容器に直接ピペットチップを装着させ、遠心操作を行うことによって、コンタミネーションを防止しつつ、簡便に溶液を容器内に移行させる方法が報告されている。
特許文献5および6には、PCRによって得られる二本鎖核酸に結合して蛍光を発する蛍光染料を用いて、当該蛍光を検出することで、迅速にPCRの結果を確認する技術が開示されている。
特許文献7には、PCRによって得られる二本鎖核酸に結合する化合物と、当該化合物が当該二本鎖核酸に結合したときに発する蛍光が変化する反応分子で標識したプライマーとを用いるIFP法が開示されている。当該蛍光の変化を検出することで、PCRの結果を簡便に確認することができるとされている。
特許文献8には、3’末端にC(シトシン)を有し、C(シトシン)とG(グアニン)とが水素結合したときに蛍光が消える蛍光色素で標識したプライマーを用いてPCRを行なうQ−Probe法が開示されている。これにより、当該蛍光の変化を確認することで、PCRの結果を簡便に確認することができるとされている。
Nature, 324 (6093), 13−19(1986) Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Third Edition、第8章、第8.1〜8.126頁、2001年
特表2000−511435号公報 特表2000−512138号公報 特開2005−95134号公報 特開2008−289473号公報 特開平5−184397号公報 特開平10−210464号公報 特表2003−500001号公報 特開2001−286300号公報
特許文献4において、核酸増幅容器に直接、通気性フィルターを備えたピペットチップを装着させ、遠心操作を行うことによって、コンタミネーションを防止しつつ、簡便に溶液を容器内に移行させることができ、また、高分子材料からなるピペットチップを用いることで、容器が破損することなく簡便かつ迅速に遺伝子増幅を行うことが可能と考えられた。しかし、実際にそのような容器を用いた場合は、操作は簡便になるものの、全く増幅されない、あるいは不均一な増幅が観察される場合があることが判明した。
本発明者らは、上記課題を解決するために、まずその原因を解明すべく鋭意検討を重ねた結果、プラスチック容器を使用し、その容器上部を通気性フィルターが装着されたピペットチップで塞いだ場合、ディナチャリング(denaturing、変性)に必要な加熱を行うとPCR中に容器内で溶液が沸騰し十分な増幅が得られず、加温する温度を低下させると、乖離に必要な温度が得られず、結果として充分な増幅が得られないことを見出した。
次いで、本発明者らは、試薬にアルブミンとDMSOを添加することによって、高分子材料からなる反応容器上部が通気性フィルターにより塞がれた核酸増幅容器の材質と形状を変えることなく、増幅性能が得られることを見出し本発明に至った。
すなわち本発明は、以下のような構成からなる。
[項1]
高分子材料からなる反応容器上部が通気性フィルターにより塞がれ、試料中の核酸をDNAポリメラーゼと接触させポリメラーゼ連鎖反応により増幅する方法において、増幅試薬にアルブミンおよび/又はDMSOが含まれていることを特徴とする核酸増幅方法。
[項2]
増幅試薬に含まれるDMSOの濃度が2.5〜12.5%(v/v)である項1記載の核酸増幅方法。
[項3]
増幅試薬に含まれるアルブミンの濃度が0.01〜0.5%(w/v)である項1記載の核酸増幅方法。
[項4]
通気性フィルターが装着されたパーツが、高分子材料からなる反応容器と着脱可能である項1記載の核酸増幅方法。
[項5]
高分子材料が熱可塑性樹脂である項1記載の核酸増幅方法。
[項6]
熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、メタクリル樹脂、ABS樹脂及びポリ塩化ビニルからなる群より選ばれた1種の樹脂または2種以上のポリマーアロイまたは2種以上のポリマーブレンドである項5記載の核酸増幅方法。
[項7]
着脱可能なパーツがピペットチップである項4記載の核酸増幅方法。
特許3881009号には、増幅試薬にアルブミン、DMSOを添加することが記載されているが、いずれもNASBA法への適用について述べられているに過ぎず、また、NASBA法にアルブミン、DMSOを添加することにより、増幅反応にどのような影響を及ぼすかについては全く言及されていない。ましてや、NASBA法とは全く反応機構の異なるPCR法への適用、および、それによる影響については何ら言及されておらず、示唆もされていない。
さらに、特許3881009号には、本願発明の高分子材料からなる反応容器上部が通気性フィルターにより塞がれた核酸増幅容器の材質と形状を変えることなく、PCR増幅性能が得られることに関し何ら言及されておらず、示唆もされていない。
特表2005−512572号公報にはDMSOを添加する記載があるが、ソルビトールを添加することが必須とされている。本願ではソルビトールは必須の成分ではなく、また添加されるDMSO濃度も本願発明より少なく、アルブミンが必須とされることに関しては何ら言及されておらず、示唆もされていない。さらにこれらの記載は、あくまでPCRを実行するために適した温度コントロール下における反応改善を目的とした場合の例示に過ぎない。
特開2004−141105号公報には、陰イオン性物質とDMSOの組み合わせおよび、反応改善剤としてDMSO、グリセロール、ホルムアミド、ベタイン、塩化テトラメチルアンモニウム、P EG、ツイン(Tween)20,NP40、エクトイン(ectoine)、ポリオール類、大腸菌(E.coli)SSBタンパク質、ファージT4遺伝子32タンパク質、BSAが挙げられているが、あくまでPCRを実行するために適した温度コントロール下における反応改善を目的とした場合の例示に過ぎない。
一方、本願発明は、不十分な温度コントロール条件下であっても、反応容器上部が通気性フィルターにより塞がれた核酸増幅容器の材質と形状を変えることなく、増幅性能が得られることを目的に完成させたものであって、特開2004−141105号公報には、この点に関し何ら言及されておらず、示唆もされていない。
本発明により、破損しにくく取り扱いが簡便であり、さらに簡易な構造で安価に大量生産することが可能な核酸増幅容器を用いた迅速かつ簡便な核酸増幅検出方法が提供される。
本発明により、簡易な操作で確実に核酸増幅反応液の飛散を防ぐことができるため、自動化が容易であり、簡易な構造の核酸増幅装置でコンタミネーションを予防することが可能な核酸増幅方法が提供される。
DMSOおよび牛血清アルブミンの添加による増幅反応への影響 DMSOの添加による増幅反応への影響 牛血清アルブミンの添加による増幅反応への影響 DMSOおよび牛血清アルブミンの両方を添加しない場合の増幅反応への影響 DMSO添加濃度の増幅反応への影響 牛血清アルブミン添加濃度の増幅反応への影響 他の有機溶媒の増幅反応への影響 本発明に核酸増幅方法に用いる、上部が通気性フィルターにより塞がれている高分子材料からなる反応容器
本発明の一つの形態は、高分子材料からなる反応容器上部が通気性フィルターにより塞がれ、試料中の核酸をDNAポリメラーゼと接触させポリメラーゼ連鎖反応により増幅する方法において、増幅試薬にアルブミンおよび/又はDMSOが含まれていることを特徴とする核酸増幅方法である。
本発明の核酸増幅方法は、試料中の核酸をDNAポリメラーゼと接触させてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅させる方法であり、種々の公知の方法に基づいて実施することが出来る。
また、本発明は、特許文献1および2に開示の装置など、種々の公知の核酸増幅装置に適用することができる。このような装置として、市販のものではロシュ社のライトサイクラーなどが例示できる。これらの装置においてPCRにおける熱媒体は空気などが例示されるが、特に限定されない。
本発明に核酸増幅方法に用いる、上部が通気性フィルターにより塞がれている高分子材料からなる反応容器としては、特許文献4に記載の容器が例示できる。
当該容器を用いた核酸増幅方法について、さらに具体的に図8を用いて説明する。
図8において、まず、(A)に示すような、通気性フィルター付き容器を用意する。容器と着脱可能なパーツとしてはピペットチップがその用途から好ましい形状である。ピペットチップとしては、化学反応のための溶液を保持させることが可能な性質を有していれば特に限定されないが、入手が容易であるという観点から、ピペットチップを介して溶液を吸引および吐出することが可能な分注機構を有する手動分注器または自動分注装置に使用するために、市販されているピペットチップであることが好ましい。例えば、レイニン・インスツルメント社、ギルソン社、エッペンドルフ社、イナ・オプティカ社などから市販されているマイクロピペット用のチップを使用することができる。また、従来公知の成型技術を用いれば、任意の形状のピペットチップを設計および作製することができ、上記ピペットチップとして使用することができる。
本発明で用いる反応容器は、通気性フィルターが装着された部分が着脱可能であっても良い。図8に示すピペットチップは(D)に示すように反応容器と着脱可能になっている。このピペットチップに、手動分注器または自動分注装置を用いて、(B)に示すように、核酸増幅反応のための溶液を吸引し、溶液を保持する。当該ピペットチップを、手動または自動にて、(C)に示すように、核酸増幅容器まで移動させ、(D)に示すように、ピペットチップを核酸増幅容器に収納する。次に、ピペットチップを手動分注器または自動分注装置から取り外す。このとき、手動分注器または自動分注装置の分注機構から空気を吐出しながら、当該ピペットチップを取り外す動作を行なうことにより、当該動作の際に生じる圧力によってピペットチップに保持された溶液の位置が変化する現象を回避することもできる。
続いて、ピペットチップを装着した核酸増幅容器を遠心することにより、(E)に示すように、核酸増幅反応のための溶液を核酸増幅容器の底部に移動させる。このとき、遠心の代わりに空気圧を用いることにより、当該溶液を移動させることもできる。空気圧を用いる場合には、例えば、手動分注器または自動分注装置の分注機構を再度ピペットチップに装着し、空気を吐出することにより、ピペットチップに保持された溶液を押し出すことができる。
次に、(E)の状態のままで核酸増幅反応および増幅核酸断片の検出を行い、(E)の状態のままでピペットチップおよび核酸増幅容器を廃棄する。
反応容器の素材としては、熱可塑性樹脂が例示されるが融点が100℃以上であれば特に限定されない。
熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、メタクリル樹脂、ABS樹脂及びポリ塩化ビニルからなる群より選ばれた1種の樹脂または2種以上のポリマーアロイまたは2種以上のポリマーブレンドが例示される。
好ましくはポリプロピレン、ポリスチレンが例示される。
ピペットチップが吸引することができる溶液の量は、ピペットチップに化学反応のための溶液を保持させることができれば特に限定されないが、例えば、核酸増幅反応では、0.5マイクロリットル以上100マイクロリットル以下であることが好ましく、1マイクロリットル以上50マイクロリットル以下であることがより好ましく、5マイクロリットル以上20マイクロリットル以下であることがさらに好ましい。また、溶液の量は、ピペットチップが反応容器に収納された際に、当該ピペットチップの先端、すなわち吸入吐出口部位に溶液が接触しない量であることが好ましい。さらに好ましくはピペットチップ内部にコンタミネーションと同時に、反応溶液の蒸散を防止するための通気性フィルターを備えたピペットチップが用いられる。
通気性フィルターは、疎水性フィルターであることが好ましく、飛沫だけでなく、エアゾールの通過をも阻止し得る疎水性フィルターであることがより好ましい。このようなフィルターはとしては、従来公知の方法にて作製することが可能であるが、例えば、ポリエチレン製の基材からなる、フィルター孔の大きさが平均約20ミクロンのフィルターを用いれば、エアゾールの通過によるコンタミネーションを好適に防止し得る。
本発明の方法に用いられる増幅試薬は、アルブミンまたはDMSOを含む。
アルブミンの添加濃度は特に限定されないが、好ましい下限0.05%、より好ましい下限は0.1%である。好ましい上限は5%、より好ましくは2%である。
DMSOの添加濃度は特に限定されないが、好ましい下限は2.5%、より好ましい下限は5%である。好ましい上限は12.5%、より好ましい上限は10%である。
本発明の方法に用いられる増幅試薬は、アルブミンおよびDMSOの両方を含んでいてもよい。その場合のそれぞれの添加濃度の組合せは特に限定されないが、上記範囲内の組合せであれば好ましい。
なお、上記において、%(v/v)は容量%、%(w/v)は重量%(1mg/mlが0.1%)をそれぞれ意味する。
本発明の方法に用いるDNAポリメラーゼは一般的に核酸増幅反応に使用できるものであればよく、現在知られているDNAポリメラーゼ(単独あるいは組みあわせ)としてのTaq DNAポリメラーゼや,EX−Taq,LA−Taq,Expandシリーズ,Plutinumシリーズ,Tbr,Tfl,Tru,Tth,T1i,Tac,Tne,Tma,Tih、Tfi(以上はPolI型酵素),Pfu,Pfutubo,Pyrobest(登録商標),Pwo,KOD,Bst,Sac,Sso,Poc,Pab,Mth,Pho,ES4,VENT,DEEPVENT(以上はα型酵素)などが挙げられる。天然型のDNAポリメラーゼのアミノ酸配列を公知の手段により、1もしくは数個が欠失、置換若しくは付加させたもの(変異体)であっても良い。あるいは、上記の酵素(天然型、もしくは変異体)に化学修飾などの手段によりさらに改変を加えたものであっても良い。例えば、最も一般的であるTaq DNAポリメラーゼやKOD DNAポリメラーゼを用いることができる。KOD DNAポリメラーゼは、東洋紡績製のもの(製品コードKOD−101など)を容易に入手することができる。中でも、KOD DNAポリメラーゼが好ましい。
本発明の方法に用いられる増幅試薬は、上記のほかに、試料中の核酸をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅するために必要な組成を備えるものであれば特に限定されない。
増幅試薬には、オリゴヌクレオチド、4種類のデオキシヌクレオシド、DNAポリメラーゼ、Mg塩、DMSO、アルブミンの他、界面活性剤、塩類、糖類が適宜加えられる。
界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤が好適である。
非イオン界面活性剤としては、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル類として例えばエマルゲン104P、エマルゲン105、エマルゲン106、エマルゲン108、エマルゲン109P、エマルゲン120、エマルゲン123P、エマルゲン147、エマルゲン130K、ノニオンK−204、ノニオンK−215、ノニオンK−220、ノニオンK−230、NIKKOL BL−2、NIKKOL BL−4.2、NIKKOL BL−9EX、NIKKOL BL−21、NIKKOL BL−25、
ポリオキシエチレンセチルエーテル類として、エマルゲン210、エマルゲン220、NIKKOL BC−2、NIKKOL BC−5.5、NIKKOL BC−7、NIKKOL BC−10TX、NIKKOL BC−15TX、NIKKOL BC−20TX、NIKKOL BC−23、NIKKOL BC−25TX、NIKKOL BC−30TX、NIKKOL BC−40TX、ノニオンP−208、ノニオンP−210、ノニオンP−213、
ポリオキシエチレンステアリルエーテル類として、エマルゲン306P、エマルゲン320P、NIKKOL BS−2、NIKKOL BS−4、NIKKOL BS−20、ノニオンS−206、ノニオンS−207、ノニオンS−215、ノニオンS−220、
ポリオキシエチレンオレイルエーテル類としては、エマルゲン404、エマルゲン408、エマルゲン409P、エマルゲン420、エマルゲン430、NIKKOL BO−2、NIKKOL BO−7、NIKKOL BO−10TX、NIKKOL BO−20、NIKKOL BO−50、ノニオンE−206、ノニオンE−215、ノニオンE−230、
ポリオキシエチレンベヘニルエーテル類としては、NIKKOL BB−5、NIKKOL BB−10、NIKKOL BB−20、NIKKOL BB−30等が挙げられる。
また、
ポリオキシエチレン2級アルキルエーテル類としては、エマルゲン707、NIKKOL BT−5、NIKKOL BT−7、NIKKOL BT−9、アデカトールSO−80、アデカトールSO−105、アデカトールSO−120、アデカトールSO−135、アデカトールSO−145、アデカトールSO−160、エマルゲン705、エマルゲン707、エマルゲン709等が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類としては、エマルゲン810、エマルゲン840S、エマルゲン909、エマルゲン910、エマルゲン930、エマルゲン950、トリトンX−100、トリトンX−114、NIKKOL NP−5、NIKKOL NP−7.5、NIKKOL NP−10、NIKKOL NP−15、NIKKOL NP−20、NIKKOL OP−10、NIKKOL OP−30、等が挙げられる。
ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル類としてはエマルゲンA60、エマルゲンA90、エマルゲンB66等が挙げられる。
オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー類としては、エマルゲンPP−150、エマルゲンPP−230、エマルゲンPP−250、エマルゲンPP−290、NIKKOL PBC−34、NIKKOL PBC−44、等が挙げられる。
ポリオキシプロピレン(2)ポリオキシエチレンデシルエーテル類としては、エマレックスDAPE0207、エマレックスDAPE0210、エマレックスDAPE0212、エマレックスDAPE0215、エマレックスDAPE0220、エマレックスDAPE0220等が挙げられる。
脂肪酸エステル類としては、レオドールTW−L120、レオドールTW−L106、レオドールTW−P120、レオドールTW−S120、レオドールTW−O120、レオドール460、エマノーン1112、エマノーン3115、エマノーン3170、エマノーン3299、エマノーン3130
ポリオキシエチレンステロール類としては、NIKKOL BPS−10、NIKKOL BPS−20、NIKKOL BPS−30、NIKKOL BPSH−25、NIKKOL DHC−30等が挙げられる。その他には、n−オクチル−β−D−グルコシド、n−ドデシル−β−D−マルトシド、N,N−ビス(3−D−グルコノアミドプロピル)コラミド、N,N−ビス(3−D−グルコノアミドプロピル)デオキシコラミド、n−オクタノイル−N−メチルグルコアミド、n−ノナノイル−N−メチルグルコアミド、n−デカノイル−N−メチルグルコアミド、シュークロースモノカプレート、シュークロースモノラウレート、シュークロースモノコレート、ジギトニン等が挙げられる。
両性イオン界面活性剤としては、例えばアルキルイミダゾリウムベタイン、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アルキルアラニン、アルキルアミンオキサイド、これらの誘導体等が挙げられる。これらのアンヒトール20BS、アンヒトール24B、アンヒトール86B、アンヒトール20Z、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]プロパンスルホン酸、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、等が挙げられる。
塩類としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が用いられる。
糖類としては、グルコース、ガラクトース等の単糖類、シュークロース、フルクトース、マルトース等の二糖類、グリセロール、トレハロース等が用いられる。
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
下記実施例は、発明を明確にするための例示に過ぎず、技術的範疇に含まれるものは全て包含されうる。
[アルブミンおよび/またはDMSOの添加による増幅の改善試薬組成(実施例1)]
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus(東洋紡績製) DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ1(配列番号1) 250nM、
オリゴ2(配列番号2) 1500nM、
オリゴ3(配列番号3)(5’末端をBODIPY−FL標識)(蛍光消光プローブ) 250nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO 4mM、
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.2U、
牛血清アルブミン 10μgまたは添加無し
DMSO 7.5%または添加無し
試料液 1μL

実施例として、牛血清アルブミンおよび/またはDMSOを添加した試薬を調製し検討に使用した。(図1〜3)
比較例として、牛血清アルブミンおよびDMSOをどちらも添加しない試薬を調製し検討に使用した。(図4)
核酸増幅および検出は以下の順序で実施した。
94℃・2分
98℃・0秒、60℃・5秒(50サイクル)
98℃・30秒
40℃・30秒
40℃から75℃に温度上昇させながら蛍光検出する。温度上昇速度は0.2℃/秒。
結果を図1〜図4に示す。
上記の蛍光検出のデータから蛍光微分値を求め、その極大値を蛍光強度とした。蛍光微分値は一定の温度変化あたりの蛍光値変化量を示す。
各図において、標的核酸が増幅されている場合、プローブがハイブリダイズし蛍光強度の低下が認められ、蛍光微分値はマイナスの値を示す。一方、標的核酸が増幅されていない場合、蛍光強度は変化せず、蛍光微分値の値は零である。
図4に示すように、牛血清アルブミンおよびDMSOの両方が添加されない組成では、全く増幅されないことが確認された。
図2に示すように、DMSOのみを添加した組成では蛍光微分値にピークが得られ増幅されていることが確認された。また、図3に示すように、牛血清アルブミンのみを添加した組成では蛍光微分値にピークが得られ増幅されていることが確認された。これらの結果が示すとおり、核酸増幅効率を向上するためには、牛血清アルブミンまたはDMSOの添加により十分な増幅効果があることが認められた。
さらに、図1に示すように、牛血清アルブミンおよびDMSOの両方を添加することにより蛍光微分値のピークがさらに高くなることが確認され、両者を共存させることによる相乗効果があることが認められた。
[DMSO濃度の増幅への影響(実施例2)]
試薬組成(実施例)
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus(東洋紡績製) DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ1(配列番号1) 250nM、
オリゴ2(配列番号2) 1500nM、
オリゴ3(配列番号3) (5’末端をBODIPY−FL標識)(蛍光消光プローブ) 250nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO 4mM、
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.2U、
牛血清アルブミン 10μg
DMSO 0、2.5、5.0、7.5、10.0、12.5%
試料液 1μL
核酸増幅および検出は以下の順序で実施した。
94℃・2分
98℃・0秒、60℃・5秒(50サイクル)
98℃・30秒
40℃・30秒
40℃から75℃に温度上昇させながら蛍光検出する。温度上昇速度は0.2℃/秒。
結果を図5に示す。
図5の縦軸は、蛍光微分値のピークの値からバックグラウンドの蛍光微分値を差し引いた値を蛍光強度の低下の絶対値として示している。したがって図5では蛍光強度の低下の絶対値が高いほど、標的核酸の増幅程度が高いことを示している。
図5に示すように、DMSOを添加した組成では蛍光強度の低下が認められた。DMSO濃度を検討した結果、DMSO濃度が2.5%未満および12.5%を超えると大幅に蛍光強度の低下が少なくなることから、増幅効率が低くなったと考えられる。上記結果より、核酸増幅効率を向上するためには、単にDMSOが含まれる組成ではなく、2.5〜12.5%、特に5〜10%で増幅効率が高くなることが確認された。
[アルブミンの添加の増幅への影響(実施例3)]
試薬組成(実施例)
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus(東洋紡績製) DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ1(配列番号1) 250nM、
オリゴ2(配列番号2) 1500nM、
オリゴ3(配列番号3)(5’末端をBODIPY−FL標識)(蛍光消光プローブ) 250nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO 4mM、
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.2U、
牛血清アルブミン 0、0.01、0.025、0.05、0.1、0.25、0.5%
DMSO 7.5%
試料液 1μL
核酸増幅および検出は以下の順序で実施した。
94℃・2分
98℃・0秒、60℃・5秒(50サイクル)
98℃・30秒
40℃・30秒
40℃から75℃に温度上昇させながら蛍光検出する。温度上昇速度は0.2℃/秒。
結果を図6に示す。
図6の縦軸は、蛍光微分値のピークの値からバックグラウンドの蛍光微分値を差し引いた値を蛍光強度の低下の絶対値として示している。したがって図6では蛍光強度の低下の絶対値が高いほど、標的核酸の増幅程度が高いことを示している。
図6に示すように、牛血清アルブミン濃度を検討した結果、核酸増幅効率を向上するためには、単に牛血清アルブミンが含まれる組成ではなく、0.01〜0.5%、特に0.025〜0.05%で増幅効率が高くなることが確認された。
[他の有機溶媒の増幅への影響(実施例4)]
試薬組成(実施例)
以下の試薬を含む10μL溶液を調製した。
KOD plus(東洋紡績製) DNAポリメラーゼ反応液
オリゴ1(配列番号1) 250nM、
オリゴ2(配列番号2) 1500nM、
オリゴ3(配列番号3) (5’末端をBODIPY−FL標識) 250nM、
×10緩衝液 1μL、
dNTP 0.2mM、
MgSO 4mM、
KOD plus DNAポリメラーゼ 0.2U、
牛血清アルブミン 10μg
エタノール、メタノール、アセトンまたはDMSO 7.5%
試料液 1μL
核酸増幅および検出は以下の順序で実施した。
94℃・2分
98℃・0秒、60℃・5秒(50サイクル)
98℃・30秒
40℃・30秒
40℃から75℃に温度上昇させながら蛍光検出する。温度上昇速度は0.2℃/秒。
結果を図7に示す。
上記の蛍光検出のデータから蛍光微分値を求め、その極大値を蛍光強度とした。蛍光微分値は一定の温度変化あたりの蛍光値変化量を示す。
図7において、標的核酸が増幅されている場合、プローブがハイブリダイズし蛍光強度の低下が認められ、蛍光微分値はマイナスの値を示す。一方、標的核酸が増幅されていない場合、蛍光強度は変化せず、蛍光微分値の値は零である。
図7に示すように、エタノール、メタノール、アセトンでは蛍光強度の低下が認められず、増幅されていないことが確認された。一方DMSOを添加した組成は蛍光強度の低下が認められたことから、標的核酸の増幅が行われていることが確認された。上記結果よりDMSO以外の有機溶媒では増幅が不十分であることが確認された。
本願発明は、遺伝子発現の研究、伝染性病原体(infectious agents)又は遺伝病の診断、cDNAの生成及びレトロウイルス類の分析等の産業分野においてきわめて有益なものである。

Claims (7)

  1. 高分子材料からなる反応容器上部が通気性フィルターにより塞がれ、試料中の核酸をDNAポリメラーゼと接触させポリメラーゼ連鎖反応により増幅する方法において、増幅試薬にアルブミンおよび/又はDMSOが含まれていることを特徴とする核酸増幅方法。
  2. 増幅試薬に含まれるDMSOの濃度が2.5〜12.5%(v/v)である請求項1記載の核酸増幅方法。
  3. 増幅試薬に含まれるアルブミンの濃度が0.01〜0.5%(w/v)である請求項1記載の核酸増幅方法。
  4. 通気性フィルターが装着されたパーツが、高分子材料からなる反応容器と着脱可能である請求項1記載の核酸増幅方法。
  5. 高分子材料が熱可塑性樹脂である請求項1記載の核酸増幅方法。
  6. 熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリメチルペンテン、環状ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、メタクリル樹脂、ABS樹脂及びポリ塩化ビニルからなる群より選ばれた1種の樹脂または2種以上のポリマーアロイまたは2種以上のポリマーブレンドである請求項5記載の核酸増幅方法。
  7. 着脱可能なパーツがピペットチップである請求項4記載の核酸増幅方法。
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