JP2010200624A - 糖の製造方法、エタノールの製造方法、及び乳酸の製造方法、並びにこれらに用いられる酵素糖化用原料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(a)セルロースI型を含むバイオマス原料を、アンモニア及び/又は有機アミンを含む処理剤で処理することにより、改質バイオマス原料を得る工程、(b)前記改質バイオマス原料を粉砕することにより、酵素糖化用原料を得る工程、及び、(c)前記酵素糖化用原料を、酵素糖化せしめ、糖を得る工程、を含むことを特徴とする糖の製造方法である。
【選択図】なし
Description
<1> (a)セルロースI型を含むバイオマス原料を、アンモニア及び/又は有機アミンを含む処理剤で処理することにより、改質バイオマス原料を得る工程、
(b)前記改質バイオマス原料を粉砕することにより、酵素糖化用原料を得る工程、及び、
(c)前記酵素糖化用原料を、酵素糖化せしめ、糖を得る工程、
を含むことを特徴とする糖の製造方法である。
<2> 工程(a)において用いる処理剤が、アンモニアであることを特徴とする前記<1>に記載の糖の製造方法である。
<3> セルロースI型を含むバイオマス原料が、木質バイオマスであることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の糖の製造方法である。
<4> 工程(b)において得られる酵素糖化用原料のメジアン径で表される平均粒径が、5〜80μmであることを特徴とする、前記<1>〜<3>のいずれか一項に記載の糖の製造方法である。
<5> 前記<1>〜<4>のいずれか一項に記載の糖の製造方法により得られた糖を、発酵させて、エタノールを得ることを特徴とするエタノールの製造方法である。
<6> 前記<1>〜<4>のいずれか一項に記載の糖の製造方法により得られた糖を、発酵させて、乳酸を得ることを特徴とする乳酸の製造方法である。
<7> (a)セルロースI型を含むバイオマス原料を、アンモニア及び/又は有機アミンを含む処理剤で処理することにより、改質バイオマス原料を得る工程、及び、
(b)前記改質バイオマス原料を、粉砕することにより、酵素糖化用原料を得る工程、
を含むことを特徴とする酵素糖化用原料の製造方法である。
本発明の糖の製造方法は、(a)セルロースI型を含むバイオマス原料を、アンモニア及び/又は有機アミンを含む処理剤で処理することにより、改質バイオマス原料を得る工程、(b)前記改質バイオマス原料を粉砕することにより、酵素糖化用原料を得る工程、及び、(c)前記酵素糖化用原料を、酵素糖化せしめ、糖を得る工程、を含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記工程(a)では、セルロースI型を含むバイオマス原料を、アンモニア及び/又は有機アミンを含む処理剤で処理することにより、改質バイオマス原料を得る。
前記セルロースI型を含むバイオマス原料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、農業や林業等の生産活動に伴う残渣として得られる「廃棄物系バイオマス」や、エネルギー等を得る目的で意図的に栽培して得られる「資源作物系バイオマス」などを使用することができる。前記「廃棄物系バイオマス」としては、例えば、廃建材、間伐材、稲わら、麦わら、もみ殻、バガスなどが挙げられ、また、前記「資源作物系バイオマス」としては、例えば、サトウキビ、トウモロコシ等の食物としても栽培される糖質・デンプン系作物及びセルロース類の利用を目的として栽培されるユーカリ、ポプラ、アカシア、ヤナギ、スギ、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、ミスカンサス、ススキなどが挙げられる。また、前記セルロースI型を含むバイオマス原料は、木を原料とした「木質バイオマス」、草を原料とした「草本バイオマス」などにも分類される。本発明においては、木質バイオマス及び草本バイオマス共に使用することができるが、本発明の効果がより顕著に得られるとの観点から、木質バイオマスが好ましく使用される。また、前記セルロースI型を含むバイオマス原料としては、前記したような各種バイオマスから精製等することにより得られたセルロースI型そのものであってもよい。前記セルロースI型を含むバイオマス原料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、天然型セルロースであるセルロースI型は、セルロースIα型とセルロースIβ型とに分類されるが、前記バイオマス原料に含まれるセルロースI型としては、これらのいずれであってもよく、また、これらの両者であってもよい。
前記セルロースI型を含むバイオマス原料を、処理剤としてアンモニアを用いた処理を行う場合、その方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記セルロースI型を含むバイオマス原料と、アンモニアとを、圧力容器内に導入し、前記圧力容器内を所望の圧力及び温度に設定して、所望の時間処理することにより行うことができる。前記アンモニアは液相であっても、気相であっても、また超臨界状態であってもよい。アンモニアによる処理により、バイオマス原料中のセルロースI型の少なくとも一部がより酵素糖化効率の高いセルロースIIII型へと変態するが、その変態効率を向上する観点からは、液体アンモニア又は超臨界状態のアンモニアが適する。しかし、目標とする糖化率、消費エネルギー等を勘案し、それぞれに適した条件での処理を選択することができる。アンモニアによる処理の条件も限定されるものではないが、一般的に好ましい条件としては、温度が−35〜140℃、圧力が0〜12.5MPaである。
前記アンモニア及び/又は有機アミンを含む処理剤による処理により、改質バイオマス原料が得られる。前記処理により、前記バイオマス原料に含まれるセルロースI型の少なくとも一部を、より結晶密度の低いセルロースIIII型へと変態させることができる。セルロースIIII型は、その結晶密度の低さから、酵素が作用し易い点で、有利である。更に、前記処理により、前記バイオマス原料に含まれるヘミセルロースの大部分は、オリゴ糖程度にまで分解され、水に可溶となる。したがって、前記バイオマス原料を、前記処理することにより、前記バイオマス原料に含まれるセルロースI型やヘミセルロースを、それぞれセルロースIIII型やヘミセルロース由来のオリゴ糖といった、より酵素が作用し易い状態へと変化させることができ、そのため、酵素糖化効率を向上させることが可能となる。なお、前記処理により、セルロースI型の少なくとも一部がセルロースIIII型へと変換されたことは、例えば、X線回折、FT−IR、固体NMR等により確認することができる。なお、本願における「改質バイオマス原料」とは、セルロースI型を含むバイオマス原料をアンモニア及び/又は有機アミンを含む処理剤により処理したものを意味するが、バイオマス原料中に含まれるセルロースI型の少なくとも一部がセルロースIIII型へと変態したものであることが好ましい。
前記工程(b)では、前記工程(a)により得られた改質バイオマス原料を、粉砕することにより、酵素糖化用原料を得る。
工程(b)において、前記工程(a)により得られた改質バイオマス原料を粉砕する。
本発明の方法に係る「酵素糖化用原料」とは、前記改質バイオマス原料を、粉砕処理したものをいう。前記改質バイオマス原料を、粉砕することにより、より酵素糖化効率を向上させることが可能となる。前記粉砕により得られる前記酵素糖化用原料の粒子の大きさとしては、特に制限はなく、また使用するバイオマス原料の種類によって好ましい大きさが変化することから、一概に限定することはできないが、その平均粒径として、5〜80μmが好ましく、5〜50μmがより好ましく、5〜30μmが更に好ましい。前記酵素糖化用原料の平均粒径を、5μm未満にしようとする場合、粉砕に多大なエネルギー及び時間を要して、経済合理性を失することとなり、一方、80μmを超えると、酵素糖化効率が充分に向上しないことがある。一方、前記酵素糖化用原料の平均粒径が、前記更に好ましい範囲内であると、粉砕に要するエネルギー及び時間と酵素糖化効率のバランスの点で、有利である。なお、本願における前記酵素糖化用原料の平均粒径としては、レーザー回折錯乱法により測定して得られるメジアン径を採用する。ここでメジアン径とは、その粒径以上の粒径を有する粒子と、その粒径以下の粒径を有する粒子との累計体積が同一となる粒径をいう。
前記工程(c)では、前記工程(b)により得られた酵素糖化用原料を、酵素糖化させて、糖を得る。
前記酵素糖化を行う方法としては、特に制限はなく、例えば、下記に示すような条件下で行うことができる。
前記酵素糖化に使用する酵素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セルラーゼ、セロビアーゼ(β−グルコシダーゼ)などが挙げられる。
前記酵素糖化により、例えば、前記工程(b)で得られた酵素糖化用原料に含まれるセルロースIIII型由来の糖である、グルコースを含む糖液を得ることができる。また、その他にも、前記酵素糖化により得られた糖液は、例えば、前記セルロースI型由来のグルコースを含んでいてもよいし、ヘミセルロース由来の糖を含んでいてもよい。へミセルロース由来の糖としては、例えば、キシロース、アラビノースといった五炭糖や、グルコース、ガラクトース、マンノースといった六炭糖が挙げられる。
前記糖液は、例えば、そのまま後述する本発明のエタノールの製造方法や乳酸の製造方法に供してもよいし、以下のようなその他の工程を経て、後述する本発明のエタノールの製造方法や乳酸の製造方法に供してもよい。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記糖液を、後述する各発酵工程に適切となるようなpHに調整する、pH調整工程などが挙げられる。
本発明のエタノールの製造方法は、前記した本発明の糖の製造方法により得られた糖を、発酵させて、エタノールを得る工程(発酵工程)を含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記エタノールの製造方法において、前記糖を発酵させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記糖を含む溶液に酵母等のアルコール発酵微生物を添加して、アルコール発酵を行わせる方法が、特に好ましい。前記酵母としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サッカロマイセス属酵母などが挙げられる。なお、前記酵母は、天然酵母であってもよいし、遺伝子組み換え酵母であってもよい。前記エタノール発酵微生物の具体的な例としては、サッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、クルイベロマイセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロマイセス・ラクティス(K.lactis)、クルイベロマイセス・マルキシアヌス(K.marxianus)、ピキア・スティピティス(Pichia stipitis)、ピキア・パストリス(P.pastoris)、パチソレン・タンノフィルス(Pachysolen tannophilus)、カンジダ・グラビラータ(Candida Glabrata)等の酵母又はこれらの遺伝子組換え体、ザイモモナズ・モビリス(Zymomonas mobilis)、サイモバクター・パルメ(Zymobacter palmae)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム・ルジュングダーリ(C.ljungdahlii)等の細菌又はこれらの遺伝子組換え体を用いることが出来る。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記発酵工程により得られたエタノールを分離精製する工程などが挙げられる。前記分離精製の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蒸留などが挙げられる。
本発明の乳酸の製造方法は、前記した本発明の糖の製造方法により得られた糖を、発酵させて、乳酸を得る工程(発酵工程)を含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記乳酸の製造方法において、前記糖を発酵させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記糖を含む溶液に乳酸菌等の乳酸発酵微生物を添加して、乳酸発酵を行わせる方法が、特に好ましい。前記乳酸菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラクトバチルス・マニホティヴォランス(Lactobacillus manihotivorans)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)などが挙げられる。なお、前記乳酸菌は、天然の乳酸菌であってもよいし、遺伝子組み換え乳酸菌であってもよい。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記発酵工程により得られた乳酸を分離精製する工程などが挙げられる。前記分離精製の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の酵素糖化用原料の製造方法は、(a)セルロースI型を含むバイオマス原料を、アンモニア及び/又は有機アミンを含む処理剤で処理することにより、改質バイオマス原料を得る工程、及び、(b)前記改質バイオマス原料を、粉砕することにより、酵素糖化用原料を得る工程、を含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
−バイオマス原料−
セルロースI型を含むバイオマス原料として、ユーカリを使用した。
用意したユーカリを、ウィレーミルを用い、目標平均粒径を200μmとして、粗粉砕した。
上記粗粉砕したユーカリを、以下の操作により、超臨界状態のアンモニアによる処理に供した。
60℃のオーブンで24時間乾燥させた粗粉砕ユーカリの試料4gを、内容積120mlのポータブルリアクターTVS−N2型(TAIATSU社製:以後、「容器」という。)に入れて密閉し、冷却装置にて容器を−13℃に冷却しながら、30分間、圧力0.5MPaにてアンモニアを流入せしめた。その後、PC−V型のヒーター(TAIATSU社製)を容器に取り付け、140℃にて1時間の加熱・加圧処理を行った。この時容器内の圧力が、アンモニアが超臨界状態となる11MPa以上になっていることを確認した。処理後、容器内を大気圧とすることで、アンモニアを除去し、温度を室温まで冷却して容器内の固形物試料を回収した。該試料を密封せずに一晩おいてアンモニアを十分蒸散させた。
セラミック製平臼、家庭用臼式お茶粉末器「まるごと緑茶 EU6820」(商品名、パナソニック社製)を使用し、上記アンモニア処理した試料2gを、目盛り「細かい」の設定にて1回当り10分間、3回繰り返して粉砕した。
上記粉砕された試料100mgを200kg/cm2の圧力にて加圧成型し、X線回折分析に供した。X線回折は管球型X線発生装置 RINT2200(商品名、リガク社製)を用い、ディフラクトメトリー法によって行った。電圧38kV、電流50mA、モノクロメーターで単色化したCuKα線(波長0.15418nm)を用い、操作範囲2θ=5〜30°、ステップ幅0.1°、積算時間20秒の条件にてステップスキャン法で測定した。また、粗粉砕後の試料、アンモニア処理後の試料についても、同様の操作により、X線回折分析を行った。粗粉砕後の試料の回折パターンを図1に、アンモニア処理後の試料の回折パターンを図3に、アンモニア処理、粉砕処理後の試料の回折パターンを図5にそれぞれ示す。
上記によりアンモニア処理及び粉砕処理を行った試料について、以下の操作により、酵素糖化反応を行った。
内容積1.5mlのマイクロチューブに、精秤した試料10mgを取り、試料濃度1%(wt/vol)、酵素としてCelluclast@1.5L及びNovozyme@188(共に商品名、Novozyme社製)を各酵素濃度0.01%(wt/vol)、計0.02%(wt/vol)の酵素濃度、pH4.5(酢酸緩衝液)となるように酵素糖化反応液を調製した。これを37℃の恒温室にて回転振とう機(15回転/分)を用い24時間転倒振とうして酵素糖化反応を行った。反応後遠心分離によって得られた上澄み液中のグルコース濃度をグルコースCIIテストワコー(商品名、和光純薬社製)を用いて測定し、グルコース収率を算出し、結果を表1に示した。
なお、グルコース収率は次式で定義される。
グルコース収率(%)=[酵素糖化反応液中のグルコース量/(酵素糖化原料の量×全グルコース化率/100)]×100
全グルコース化率(%):(バイオマス原料を別途化学的に完全に加水分解したときに得られるグルコースの量/バイオマス原料の量)×100(バイオマス原料基準の理論収率に相当)
なお、使用したユーカリの全グルコース化率は43.3%であった。
実施例1で用いた粗粉砕したユーカリについて、アンモニア処理及び粉砕処理を行うことなく、そのまま実施例1における酵素糖化反応と同様の操作にて酵素糖化反応を行った。結果を表1に示す。
−粉砕処理−
実施例1で用いた粗粉砕したユーカリを、アンモニア処理することなく、実施例1におけるアンモニア処理後の試料を粉砕した操作と同一の操作にて粉砕を行った。
上記粉砕された試料のX線回折分析を、実施例1と同様の操作にて行った。回折パターンを図2に示す。
上記粉砕された試料について、実施例1における酵素糖化反応操作と同様の操作により、酵素糖化反応を行った。実施例1と同様にグルコース収率を算出し、結果を表1に示す。
実施例1にて得た、粗粉砕したユーカリをアンモニア処理した試料について、その後粉砕処理することなく、実施例1における酵素糖化反応操作と同様の操作により、酵素糖化反応を行った。実施例1と同様にグルコース収率を算出し、結果を表1に示す。
−粉砕処理−
実施例1にて用いた粗粉砕したユーカリを、実施例1におけるアンモニア処理後の試料を粉砕した操作と同一の操作にて粉砕を行った。
上記粉砕後にアンモニア処理された試料のX線回折分析を、実施例1と同様の操作にて行った。回折パターンを図4に示す。
上記、粉砕処理後にアンモニア処理された試料について、実施例1における酵素糖化反応操作と同様の操作により、酵素糖化反応を行った。実施例1と同様にグルコース収率を算出し、結果を表1に示す。
実施例1において用いたユーカリに代えて、エゾノキヌヤナギを用いた以外は、実施例1と同様の操作にて、粗粉砕、アンモニア処理、粉砕、酵素糖化反応をこの順に行った。結果を表1に示す。また、各段階の試料について、実施例1と同様の操作により、X線回折分析を行った。それぞれの試料のX線回折パターンは、実施例1における相当する各ユーカリ試料と類似したものであった。粗粉砕後の回折パターンを図6に、アンモニア処理後の試料の回折パターンを図8に、アンモニア処理、粉砕処理後の試料の回折パターンを図10にそれぞれ示す。
なお、使用したエゾノキヌヤナギの全グルコース化率は45.1%、粗粉砕したエゾノキヌヤナギの平均粒径は252μmであった。
比較例1−1〜1−4のそれぞれにおいて、出発原料として用いた粗粉砕されたユーカリに代えて、実施例2において用いた粗粉砕されたエゾノキヌヤナギを用いた以外は、それぞれ相当する比較例1−1〜1−4と同様の操作にて前処理を行い、それぞれにおいて得た試料について、実施例2と同様の操作にて、酵素糖化反応を行った。各比較例について、グルコース収率を算出し、結果を表1に示す。また、比較例2−2〜2−4について、それぞれの前処理後の試料について、X線回折分析を行った。それぞれの試料のX線回折パターンは、それぞれに相当する比較例1−2〜1−4における各ユーカリ試料と類似したものであった。粉砕処理後の回折パターンを図7に、粉砕処理後にアンモニア処理した試料の回折パターンを図9にそれぞれ示す。
実施例1において用いたユーカリに代えて、スギを用いた以外は、実施例1と同様の操作にて、粗粉砕、アンモニア処理、粉砕、酵素糖化反応をこの順に行った。結果を表1に示す。また、各段階の試料について、実施例1と同様の操作により、X線回折分析を行った。それぞれの試料のX線回折パターンは、実施例1における相当する各ユーカリ試料と類似したものであった。粗粉砕後の回折パターンを図11に、アンモニア処理後の試料の回折パターンを図13に、アンモニア処理、粉砕処理後の試料の回折パターンを図15にそれぞれ示す。
なお、使用したスギの全グルコース化率は42.7%、粗粉砕したスギの平均粒径は207μmであった。
比較例1−1〜1−4のそれぞれにおいて、出発原料として用いた粗粉砕されたユーカリに代えて、実施例3において用いた粗粉砕されたスギを用いた以外は、それぞれ相当する比較例1−1〜1−4と同様の操作にて前処理を行い、それぞれにおいて得た試料について、実施例3と同様の操作にて、酵素糖化反応を行った。各比較例について、グルコース収率を算出し、結果を表1に示す。また、比較例3−2〜3−4について、それぞれの前処理後の試料について、X線回折分析を行った。それぞれの試料のX線回折パターンは、それぞれに相当する比較例1−2〜1−4における各ユーカリ試料と類似したものであった。粉砕処理後の回折パターンを図12に、粉砕処理後にアンモニア処理した試料の回折パターンを図14にそれぞれ示す。
Claims (7)
- (a)セルロースI型を含むバイオマス原料を、アンモニア及び/又は有機アミンを含む処理剤で処理することにより、改質バイオマス原料を得る工程、
(b)前記改質バイオマス原料を粉砕することにより、酵素糖化用原料を得る工程、及び、
(c)前記酵素糖化用原料を、酵素糖化せしめ、糖を得る工程、
を含むことを特徴とする糖の製造方法。 - 工程(a)において用いる処理剤が、アンモニアであることを特徴とする請求項1に記載の糖の製造方法。
- セルロースI型を含むバイオマス原料が、木質バイオマスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の糖の製造方法。
- 工程(b)において得られる酵素糖化用原料のメジアン径で表される平均粒径が、5〜80μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の糖の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の糖の製造方法により得られた糖を、発酵させて、エタノールを得ることを特徴とするエタノールの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の糖の製造方法により得られた糖を、発酵させて、乳酸を得ることを特徴とする乳酸の製造方法。
- (a)セルロースI型を含むバイオマス原料を、アンモニア及び/又は有機アミンを含む処理剤で処理することにより、改質バイオマス原料を得る工程、及び、
(b)前記改質バイオマス原料を、粉砕することにより、酵素糖化用原料を得る工程、
を含むことを特徴とする酵素糖化用原料の製造方法。
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