JP2010189325A - 芳香族カルボン酸の精製装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 粗製芳香族カルボン酸の精製工程における装置材質の腐食による補修、および、補修のための運転停止に伴う生産損失等のコスト増加を抑制し、さらに設備の更新時期を延長させることのできる芳香族カルボン酸の精製装置を提供する。
【解決手段】 粗製芳香族カルボン酸と水とを含有する液状物を調製する液状物調製槽、該液状物を加熱溶解する加熱溶解装置、及び、加熱された該液状物中の粗製芳香族カルボン酸を精製する精製槽、を有する芳香族カルボン酸の精製装置において、液状物調整槽、加熱溶解装置、精製槽、及びこれらを接続する配管並びに該精製槽から精製反応液を排出する排出管のうち少なくとも一部分が固溶体化熱処理を施された金属からなることを特徴とする芳香族カルボン酸の精製装置。
【選択図】 なし

Description

本発明は芳香族カルボン酸の精製装置に関する。より詳しくは、粗製芳香族カルボン酸を精製して高純度芳香族カルボン酸を製造するに際し、装置の劣化が抑制され、安定的に高純度芳香族カルボン酸を製造することが可能な精製装置に関する。
芳香族カルボン酸の代表例であるテレフタル酸は、酢酸などの脂肪族カルボン酸を含む溶媒を用いて、コバルト、マンガンなどを主体とする重金属触媒、および臭素化合物の存在下、原料であるパラキシレンを分子状酸素を含有するガスによって加圧下に液相酸化して製造する方法が一般に行われている。テレフタル酸の商業的用途からの要求で微量不純物を極力削減するために、さらに高温、高圧での追酸化反応工程を設置したり、酸化反応後のテレフタル酸スラリーを分離、乾燥した後に高温、高圧で水などの溶媒に溶解させて触媒存在下に水素化、次いで分離、精製する工程を設置したりする方法などが行われている。特に高純度を必要とする場合には水素化による精製方式が一般的に実施されている。触媒としては、貴金属触媒、例えば活性炭に担持させたパラジウム触媒が主に用いられている。該精製工程の主たる狙いは4−カルボキシベンズアルデヒドなどの不純物を還元して水溶性を高めて、テレフタル酸と分離することによりテレフタル酸を高純度化することである。
該水素化による精製は高温高圧、水素共存下で実施されるので、精製装置の材質は耐腐食性(耐食性)を考慮して、ステンレス鋼に加えて、チタン、ニッケル合金などの高級材質を使用するのが一般的である。しかし、これら高級材質を使用しても、長期に運転することにより精製装置に応力腐食割れ、水素脆化割れおよび腐食による減肉が起こる。
応力腐食割れとは、ステンレス鋼等の合金表面に存在する、腐食の発生を防ぐ役割をもつ不動態被膜が、引張り応力と腐食環境の相互作用で損傷し、時間とともにき裂が進展する現象である。また、水素脆化割れとは、マルテンサイト系、フェライト系などのステンレス鋼では水素により脆化して割れる現象であり、チタンの場合ではチタンが水素と水素化物を形成して脆化して割れる現象である。
上記した応力腐食割れおよび水素脆化割れは、材料の全面で進行する全面腐食と異なり局所的かつ急激に進行するので、腐食の進行程度を予測しにくいことが多い。このため、装置が突然割れてしまい、内容物が漏洩して運転停止など緊急な対応が必要となることがあり、設備保全、安定運転の面で大きな問題である。このため従来は、この問題を解消するためには、応力腐食割れや水素脆化割れが発生すると考えられる時期よりも遥かに短い期間で新規装置に更新することがなされてきた。
特許文献1によると、反応器への粗製テレフタル酸溶液の流入速度を減速させることによって反応器内壁面の局所的な減肉または破壊現象を解消する提案がされている。該提案は粗製テレフタル酸溶液供給部周辺では有効であるが、他の部位での各種材料割れによる運転停止、補修工事などにより生じる生産トラブルへの対策としては不十分である。このように、芳香族カルボン酸精製装置に使用される各種材料の割れ対策については、まだ具体的な提案は見当たらず、解決策の早期確立が求められている。
特開2004−203864号公報
本発明は、粗製芳香族カルボン酸の精製工程における装置材質の腐食による補修、および、補修のための運転停止に伴う生産損失を抑制し、さらに設備の更新時期を延長させることのできる芳香族カルボン酸の精製装置を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解消するべく鋭意検討した結果、粗製芳香族カルボン酸の精製工程における装置の材質として特定の処理を施した金属を用いることにより、上記課題を解決でき、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は下記に存する。
本発明は、粗製芳香族カルボン酸と水とを含有する液状物を調製する液状物調製槽、該液状物を加熱溶解する加熱溶解装置、及び、加熱された該液状物中の粗製芳香族カルボン酸を精製する精製槽、を有する芳香族カルボン酸の精製装置において、液状物調整槽、加熱溶解装置、精製槽、及びこれらを接続する配管並びに該精製槽から精製反応液を排出する排出管のうち少なくとも一部分が固溶体化熱処理を施された金属からなることを特徴とする芳香族カルボン酸の精製装置である。
また、上記本発明の芳香族カルボン酸の精製装置において、固溶体化熱処理を施された金属が、固溶体状態を1分以上維持する条件でなされたものであることが好ましい。
また、上記本発明の芳香族カルボン酸の精製装置において、固溶体化熱処理を施された金属が、オーステナイト系ステンレス、ニッケル合金から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、上記本発明の芳香族カルボン酸の精製装置において、精製槽が水素化するための精製槽であることが好ましい。
また、上記本発明の芳香族カルボン酸の精製装置において、排出管の屈曲部が高周波ベンディングパイプであることが好ましい。
また、上記本発明の芳香族カルボン酸の精製装置において、精製槽が固定触媒床を有し、該固定触媒床の下流側に濾過材を備え、該濾過材が酸化皮膜処理された金属を含むことが好ましく、更に該濾過材の材質がチタンであることが好ましい。
また、上記本発明の芳香族カルボン酸の精製装置において、加熱溶解装置が熱媒との熱交換により該液状物を加熱する多管式熱交換器を備え、該多管式熱交換器のチャンネルカバーが固溶体化熱処理を施された金属を含むことが好ましい。
また、上記本発明の芳香族カルボン酸の精製装置において、加熱溶解装置が熱媒との熱交換により該液状物を加熱する多管式熱交換器を備え、該熱交換器の管板とチューブとの接続部の拡管率が2〜5%であることが好ましい。
本発明の芳香族カルボン酸の精製装置によれば、粗製芳香族カルボン酸の精製工程における装置材質の腐食による補修、および、補修のための運転停止に伴う生産損失を抑制することが可能になった。また、本発明の芳香族カルボン酸の精製装置によれば、設備の更新時期を大幅に延長させることが可能になった。
本発明に係わる精製装置の概略図である。 本発明に適用される好ましい精製槽13の概略図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
図1は、本発明に係わる精製装置の概念図である。芳香族カルボン酸の精製装置は、通常、液状物調整槽11、加熱溶解装置12、及び精製槽13及び加圧ポンプ14から構成される。通常、本発明の精製装置の前工程は、加圧液相酸化反応による粗製芳香族カルボン酸の生成・分離工程等であり、該精製装置の後工程は、通常、固液分離、洗浄、乾燥工程等から構成されている。
[前工程]
本発明が対象とする芳香族カルボン酸は限定されないが、代表的な芳香族カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、それぞれ公知の製造条件を適用して、目的の粗製芳香族カルボン酸4を得ることができる。
前工程の典型的な例としては、通常、原料1を、常圧を上回る圧力下で、溶媒及び触媒3の存在下、分子状酸素2を含む気体で140〜230℃にて酸化し、粗製芳香族カルボン酸スラリーを得る。溶媒としては、酢酸などの脂肪族カルボン酸が好適に使用される。粗製芳香族カルボン酸スラリーは、通常、固液分離、洗浄、乾燥され粗製芳香族カルボン酸4が得られる。
本発明において使用される原料1は限定されないが、通常、アルキル基を有する芳香族化合物が使用される。芳香族化合物を構成する芳香環は、単環であっても多環であってもよい。上記アルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基およびイソプロピル基等をあげることができる。またアルキル基は一部酸化していてもよく、例えばアルデヒド基、アシル基、カルボキシル基およびヒドロキシル基等を挙げることができる。アルキル置換芳香族化合物の具体的なものとしては、例えばm−ジイソプロピルベンゼン、p−ジイソプロピルベンゼン、m−シメン、p−シメン、m−キシレン、p−キシレン、トリメチルベンゼン類などの炭素数1〜4のアルキル基を2〜4個有するアルキルベンゼン類、アルキルナフタレン類、アルキルビフェニル類などである。また、アルキル基を有する芳香族化合物には、アルキル基以外の置換基を有していても良く、具体的には、例えば3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、m−トルイル酸、p−トルイル酸、3−ホルミル安息香酸、4−ホルミル安息香酸、および2−メチル6−ホルミルナフタレン類等を挙げることができる。これらの原料は、単独または2種以上を併用して用いられる。
[精製装置]
次に本発明の精製装置の具体例として、テレフタル酸の精製装置を例にして説明する。テレフタル酸以外の芳香族カルボン酸についても、以下に記載する精製装置を同様に適用することができる。精製装置は通常、液状物調製槽11、加圧ポンプ14、加熱溶解装置12、及び精製槽13を有し、通常、この順に配管で接続されて構成されている。
[液状物調整槽]
液状物調製槽11には、粗製芳香族カルボン酸4が固形分として供給され、溶媒5と混合されて、粗製芳香族カルボン酸スラリー6が調製される。
液状物調製槽11の材質は限定されないが、通常ステンレス鋼が用いられ、オーステナイト系ステンレス鋼が好ましい。オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えば、SUS304、SUS304L、SUS316L、SUS317L、日本冶金工業株式会社製のNAS254N、NAS354N、SANDVIK社製のAvesta(商標)254MOなどが用いられる。
液状物調製槽11の形状および方式は、溶媒と固形分との混合ができれば特に限定され
るものではないが、一般的には攪拌槽が用いられる。攪拌翼は1段以上設置し、翼形状はプロペラ、タービン、アンカー、平羽根、ヘリカルリボンなどが使用され、スラリー濃度の槽内分布を均一にするために攪拌動力を単位体積あたり0.3kw/m以上にすることが望ましい。好ましくは0.4kw/m以上、より好ましくは0.5kw/m以上であり、また通常2.0kw/m以下、好ましくは1.5kw/m以下である。攪拌動力が小さすぎると、均一攪拌ができなくなり、また固形分の十分な攪拌効果が得られず部分的に沈降したりする。一方、攪拌動力が大きすぎると、電力消費が過剰になるので、槽内のスラリーの流動状態の均一性を勘案しつつ適切に設定する。
溶媒5の種類は限定されないが、不純物としての有機物の溶解性、沸点などから水を含むことが望ましく、より好ましくは90重量%が水、さらに好ましくは100重量%が水であることが好ましい。溶媒5としての水の消費量を抑制するために、テレフタル酸製造工程内で生成する水を再利用することが好ましい。
溶媒5としてテレフタル酸製造工程内で生成する水を再利用する場合、その水の由来が限定されないが、前工程から発生する水や、後工程から発生する水を用いることができる。前工程から発生する水としては、溶媒と反応副生水との分離に使用される蒸留塔または脱水塔などの塔頂水、もしくは塔上部への還流水からの抜き出し水や、酸化反応排ガス中の水分の凝縮水、固液分離機で排出される分離ケーキの洗浄水などを利用することができる。また後述する後工程から発生する水としては、高純度芳香族カルボン酸10を分離した後に得られる母液を適宜精製して利用することもできる。すなわち、母液中に溶存する酸化中間体などの有機物を晶析等で分離し、必要に応じてさらに抽出処理などにより回収した後に、該母液を水として利用することもでき、さらに該母液の一部をイオン交換樹脂、逆浸透膜システムなどを用いて含有される触媒及び溶存有機物などの微量不純物を除去して水として利用することもできる。
溶媒5としてテレフタル酸製造工程内で生成する水を再利用する場合、その水には種々の有機化合物や金属化合物等を含有している。例えば、酢酸、酢酸メチル、ノルマルブチルアセテート、ブタノール、パラキシレン、4−カルボキシベンズアルデヒド、パラトル酸、安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、金属イオン(コバルト、マンガン)、臭素、臭化メチル、臭化水素、塩化物(塩素を含む)等が含まれている。
これらの水に含有されている成分は、本発明が対象とする精製装置に対し、応力腐食割れや水素脆化割れを促進させる作用をもつ。従って、溶媒5としての水の消費量を抑制するためにテレフタル酸製造工程内で生成する水を再利用すると、精製装置の寿命を悪化させる場合がある。しかしながら、後述する本発明の固溶体化熱処理を装置に施すことにより、上記のような水を利用しても装置寿命の悪化を抑制することができる。
液状物調製槽11で調整される粗製芳香族カルボン酸スラリー6の固形分濃度は限定されないが、通常10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上で、通常40%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下である。固形分濃度が前記下限よりも低濃度では、装置が大型化するため経済的ではなく、固形分濃度が前記上限よりも高濃度になると、スラリーの流動性が増大するため特殊機器が必要になり、さらに加熱溶解装置12での溶解条件が厳しくなるため設備費が増加する。液状物調製槽11における調整は通常、常圧で行われ、温度は通常50℃以上、好ましくは70℃以上であり、通常90℃以下、好ましくは85℃以下である。調整時の温度が高温度になり過ぎると、スラリーを移送する加圧ポンプ14でキャビテーションが起こり、うまく移送できなくなる場合があり、低温度では、熱バランス上不利になる傾向にある。
[加熱溶解装置]
ついで粗製芳香族カルボン酸スラリー6は、加熱溶解装置12に加圧ポンプ14により加圧されて送られる。加熱溶解装置12での加熱温度は、通常230℃以上、好ましくは
250℃以上、より好ましくは270℃以上で、通常320℃以下、好ましくは300℃以下、より好ましくは290℃以下である。圧力は、通常3MPa以上、好ましくは5MPa以上であり、通常20MPa以下、好ましくは15MPa以下、より好ましくは12MPa以下である。加熱媒体は限定されず、蒸気、ホットオイル、プロセス排ガスなどが用いられ、本発明に係る芳香族カルボン酸製造工程からの回収エネルギーを再利用することが望ましい。
粗製芳香族カルボン酸スラリー6は、上記の条件によって十分に溶解されていることが望ましく、実質的に固形分を含まず均一溶液とすることがより好ましい。加熱溶解装置12から粗製芳香族カルボン酸溶液7をスラリー状態(固形物を含んだ状態)のまま精製槽13に送られると、固形分中の不純物は水素化されないので、目的とする精製が不十分となる傾向にある。
加熱溶解装置12の材質は限定されないが、ステンレス鋼、好ましくはオーステナイト系ステンレス鋼、またはニッケル合金が適用できる。オーステナイト系ステンレス鋼としては、液状物調製槽11の材質として挙げられたものを同様に用いることが出来る。ニッケル合金としては、例えば、三菱マテリアル株式会社製のMAT21、MA22、MA276、MCアロイ、MA625、MA600、MA−Xや、ヘインズ社製のハステロイ(商標)C276、C22、B3、C4などが用いられる。
加熱溶解装置12の加熱方式及び構造は限定されず、通常の熱交換装置が使用できるが、多管式熱交換器、特に多管式円筒型熱交換器を用いると熱交換効率が高く、効率的である。多管式円筒型熱交換器とは、円筒胴内に多数の伝熱管を配列し、伝熱管内外面を流れる流体間で熱交換を行わせる形式の熱交換器である。多管式熱交換器における伝熱管の形状は限定されず、固定管板型、U字管型、遊動型、ケトル型などが適用できる。
多管式熱交換器は通常、熱交換器(円筒型熱交換器の場合は円筒胴)の両端もしくは片端には熱交換器のチャンネルカバー(蓋板)が設置され、該チャンネルカバーと伝熱管を固定する管板とで構成される空間に流体が導入され、多数の伝熱管に分岐されて流入し、熱交換を行う。
多管式熱交換器における管板とチューブ(伝熱管)との接続部は、応力腐食割れの防止対策として接続方法を改善することが好ましく、拡管率(Tube Expanding
Ratio)が通常2%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは4%以上であり、通常6%以下、好ましくは5%以下であることが望ましい。伝熱管と管板とを接続する場合、該伝熱管を少し拡管して管板と溶接するが、拡管率が前記範囲を超過すると残留応力が大きくなり、溶接によってさらに応力が加えられて応力腐食割れを生じる可能性がある。拡管が前記範囲未満であると、溶接による伝熱管と管板との接続が不十分となり、隙間が出来て溶存酸素、臭素または塩素等の応力腐食原因物質の影響で割れを発生しやすくなる傾向にある。
ここで、拡管率(R)%は次式で算出される。
拡管率R(%)=〔{d−(D−2t)}/2t〕×100
t:配管厚み(mm)=(拡管前配管外径−拡管前配管内径)/2
d:拡管後配管内径(mm)
D:管板孔直径(mm)
拡管率が前記範囲である接続部は、多管式熱交換器の全ての接続箇所である必要はないが、より多くの接続箇所の拡管率が前記範囲であることが好ましく、全ての接続箇所の拡管率が前記範囲であることが更に好ましい。
[精製槽]
加熱溶解装置12により粗製芳香族カルボン酸スラリー6は粗製芳香族カルボン酸溶液7となり、精製槽13に送られる。精製槽13では、粗製芳香族カルボン酸溶液7が水素8によって水素化される。水素化反応の目的は、溶媒に不溶性の不純物を水素化することによって溶媒に可溶化させ、製品としての芳香族カルボン酸と分離することにあり、テレフタル酸製造においては、4−カルボキシ安息香酸などの不純物が還元されてパラトルイル酸などに変化する反応を意味する。パラトルイル酸は水溶性が高いので、水に難溶性であるテレフタル酸と分離することができる。
精製槽13での水素化反応に用いる触媒は限定されないが、通常、ルテニウム、ロジウム、パラジウム,白金、オスミウム等の第8属金属を触媒として用い、活性炭等に担持させて固定床として精製槽13内に設置する。水素化反応の反応温度は限定されないが、通常250℃以上、好ましくは270℃以上であり、通常320℃以下、好ましくは300℃以下、より好ましくは290℃以下である。精製槽13での水素分圧は、通常0.05〜2MPaである。圧力は通常3MPa以上、好ましくは5MPa以上であり、通常20MPa以下、好ましくは15MPa以下、より好ましくは12MPa以下である。触媒との接触時間(水素化反応時間)は限定されないが、通常1〜100分である。
精製槽13に使用される材質は限定されないが、加熱溶解装置12の材質として挙げられた前記のニッケル合金が適用できる。
本発明に適用される好ましい精製槽13の概略図を図2に示す。精製槽13には固定触媒床101、濾過材108を備え、溶液供給管105から粗製芳香族カルボン酸溶液7を供給し、水素供給管106から水素8を供給し、精製反応液9は排出管107から排出されて後工程に移送される。精製槽13の上部は円型の仕切板104によって溶液滞留ゾーン103と下部の固定触媒床101の反応ゾーンに仕切られ、仕切板の中央には円筒型のオーバーフロー壁102が直立して設けられている。溶液供給管105は精製槽内部では環状管としてオーバーフロー壁の周囲に設置される。粗製芳香族カルボン酸溶液7は該環状管に設けられた多数の小孔から滞留ゾーンに分散供給され、オーバーフローゾーン壁102に沿って上昇し、仕切板104の上方から下方の固定触媒床101に供給される。すなわち、仕切板104はオーバーフロー壁102とともに溶液滞留ゾーン103を形成し、下部の固定触媒床101への粗製芳香族カルボン酸溶液7の進入均一化を図る。粗製芳香族カルボン酸溶液7は固定触媒床101にて水素供給管106から導入される水素8と反応し、濾過材108を通過した後に排出管107から排出される。
濾過材108の形状および濾過方式は限定されないが、通常はメッシュ状のスクリーンで、その目開きは10〜20メッシュ、スクリーンの線径は1〜2mmである。
濾過材108の材質は限定されないが、通常は金属が用いられ、チタンが好ましく用いられる。また、濾過材108の材質が金属である場合、該金属が酸化皮膜処理されていることが好ましい。本発明の精製装置において、特に水素脆化割れを発生しやすい部位は、濾過材108である。濾過材108の材質がチタンである場合、チタンと水素が接触すると水素脆化割れが発生することがある。これは、水素化反応に使用される水素8から原子状水素が発生し、金属チタン中に吸収されてチタン水素化物を形成して脆化し、圧力変動などにより割れが発生する現象である。脆化を抑制するためには、チタン表面に酸化皮膜を形成して、水素イオンと金属面との接触を断つことが好ましい。酸化皮膜を形成する方法としては、チタンを高温で加熱する方法、塩酸や硝酸で処理する方法、過酸化水素水で処理する方法、酸素を溶存させた水を使用して高温下で処理する方法などが挙げられる。中でも、酸素を溶存させた水を使用して高温下で処理する方法が好ましく、温度450±50℃で10分以上熱処理後、徐冷する方法が好ましい。
[排出管]
精製槽13で水素化された精製反応液9は、排出管107によって排出される。排出管
107は、通常、ニッケル合金で作製され、精製槽13に溶接により接合される。該排出管の形状は、通常、屈曲部を有しているのでL字型、曲管などが使用されるが、応力腐食割れ防止の観点で高周波処理したベンディングパイプが好ましい。L字型では、精製反応液9が排出管内で直角に流れの向きを変えることで、直角部の頂点に、いわゆるエロージョン・コロージョンが起こる場合がある。エロージョン・コロージョンとは配管を通る液状物の機械的作用による侵食(エロージョン)と化学的作用による腐食(コロージョン)との相互作用によって生じる減肉現象である。
[後工程]
後工程は、精製反応液9を晶析して芳香族カルボン酸スラリーを得、固液分離、洗浄、乾燥して製品を得る工程である。晶析方法としては、溶媒である水の蒸発除去および冷却による方法や、放圧冷却する方法等が挙げられる。
晶析槽は通常、直列に接続した複数の晶析槽で構成され、段階的に冷却して晶析する。晶析の段数は1段でもよいが、通常2段以上、好ましくは3段以上であり、通常6段以下、好ましくは5以下である。晶析槽では段階的に温度を低下させ、最終段での圧力は通常0.1MPa以上、好ましくは0.3MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上で、通常3MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下である。晶析の際に排出する高圧蒸気は、回収して熱エネルギーとして再利用することもできる。
晶析後の精製反応液9は固液分離、洗浄装置にて芳香族カルボン酸、母液及び洗浄液に分離される。芳香族カルボン酸は乾燥され、高純度芳香族カルボン酸10となる。母液・洗浄液からは、酸化中間体であるパラトルイル酸などを晶析分離により回収して前工程に再利用する。さらに、該母液中に残留する微量不純物を逆浸透膜等で濃縮して除去し、残部の水を溶媒5として再利用すると、水の使用量及び排水量を低減できる。
また別の実施態様として、母液・洗浄液に含有されるパラトルイル酸などの酸化中間体などを分離しないまま、上記前工程の酸化反応装置にリサイクルして、水使用量を削減し、排水量を削減することも可能である。
固液分離は、常圧、減圧、加圧のいずれでも行うことができる。加圧分離の場合、圧力は、通常0.01MPa以上、好ましくは0.03MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上とし、通常20MPa以下、好ましくは10MPa以下、より好ましくは5MPa以下、特に好ましくは2MPa以下とする。
分離機としては、例えば、スクリーンボウルデカンター、ソリッドボウルセパレーター、ロータリー加圧フィルター、ロータリーバキュームフィルター、水平ベルトフィルター等が、乾燥機としては、例えば、放圧蒸発による加圧乾燥機、通常の流動乾燥機など公知の装置が採用できる。なお固液分離、洗浄及び乾燥を一つの装置で行える固液分離洗浄乾燥装置により実施することも好ましく、前記の装置のうち、スクリーンボウルデカンター、ソリッドボウルデカンター、水平ベルトフィルター、ロータリー加圧フィルター、ロータリーバキュームフィルターなどを用いることができる。高純度芳香族カルボン酸10の乾燥が不十分な場合は、流動層乾燥機、回転乾燥機などを用いて、さらに乾燥することが好ましい。
[固溶体化熱処理]
本発明の特徴は、液状物調整槽11、加熱溶解装置12、精製槽13、これらを接続する配管、精製槽13から精製反応液9を排出する排出管107のうち少なくとも一部分が固溶体化熱処理を施された金属からなることを特徴とする。
本発明において、固溶体化熱処理を施す金属は限定されないが、前記したステンレス鋼またはニッケル合金であることが好ましい。
本発明において固溶体化熱処理とは、合金を固溶体温度に維持した後に急冷することにより、固溶体状態の構造を固定する処理を意味し、溶体化処理ともいう。該熱処理によって、本来低温で析出する筈の成分金属が固溶した状態となる。固溶体温度は対象とする合金の組成によって異なるが、例えば、オーステナイト系ステンレスの場合は、通常900℃〜1200℃、好ましくは1000℃〜1100℃であり、ニッケル合金の場合は、通常1050℃〜1220℃、好ましくは1100℃〜1200℃である。急冷する際の冷却速度や冷却後の温度は限定されないが、金属が固溶した状態が固定され、合金成分の析出が起こらない条件とする必要がある。急冷する際の冷却手段も限定されないが、水に浸漬させる方法が好適に用いられる。
本発明では、固溶体化熱処理を施された金属が、固溶体状態を1分以上維持する条件でなされたものであることが好ましい。固溶体状態を維持する時間は、より好ましくは5分以上、更に好ましくは10分以上、特に好ましくは30分以上である。固溶体状態を維持時間が前記範囲未満であると、部分的に固溶体温度に達しないために合金成分の固溶化が不十分となり、残留応力の低減効果が低下する傾向にある。固溶体状態を維持する時間の上限は限定されないが、通常60分以下、好ましくは50分以下、より好ましくは40分以下である。維持時間が前記範囲を超過すると、製造効率が低下する傾向にある。ここで、固溶体状態の維持時間とは、対象とする金属が、その金属としての固溶体温度に保持された時間を意味する。
なお、市販のステンレス鋼やニッケル合金としては、既に固溶体化熱処理が施されているものもある。しかしながら、これらの平板等の鋼材は固溶体化熱処理が施されていたとしても不十分である場合がある。従って、固溶体状態を維持する時間を前記下限値以上にするなどの方法で、十分な固溶体化熱処理を行うことが好ましい。また、ステンレス鋼やニッケル合金の素材が固溶体化熱処理されていたとしても、これらを熱間加工や冷間加工することによって応力腐食割れ等の原因となることがある。従って、ステンレス鋼やニッケル合金を熱間加工や冷間加工などによって装置形状に加工した後に、固溶体化熱処理を行うことが好ましい。
以下に、本発明の特徴である固溶体化熱処理を施すことの技術的意義を説明する。
応力腐食割れは、応力が作用する状態で腐食性の環境に金属材料、特に合金がさらされるときに生じる割れ現象である。すなわち材料と環境の特定の組み合わせの下で、ある水準以上の応力が存在する場合に起こる。応力としては、通常、引張応力のほかに、捩り、曲げ応力等でも起こり、更には材料内に蓄積している残留応力等でも起こりうる。残留応力は、装置を製造する際の溶接による歪、材料の冷間加工、機械切削などでも生じる。環境としては酸化雰囲気と微量のハロゲンが原因物質になる。
応力腐食割れ対策としては、装置に使用する金属材料の改善、装置を用いる環境の改善、応力負荷状況の改善などが考えられる。しかしながら、芳香族カルボン酸製造工程では、溶媒、触媒、原料、目的物等として酸素、ハロゲン化合物、酸などを用い、かつ高圧条件で製造することから、装置を用いる環境には制約がある。また、このような環境下で使用できる装置の材質も、ステンレス鋼やニッケル合金等に限られている。残された方策は応力である。本発明では、装置を構成する合金材料に固溶体化熱処理を施すことにより、装置の残留応力を極力低減することが出来、応力腐食割れを防止することが出来る。前記の通り、固溶体化熱処理によれば、合金を構成する金属成分が互いに一様に溶け合うため、材料の耐食性向上及び、応力の均質化ができるので応力腐食割れを防止することが出来る。この効果は、固溶体温度未満での熱処理や、いわゆる焼きなまし等の熱処理では十分には奏することができない。
上記の通り、本発明の固溶体化熱処理を施せば、装置の残留応力を低減することが出来、これにより応力腐食割れを防止することが出来る。従って、本発明の固溶体化熱処理を施す箇所としては、特に残留応力を生じ易く、応力腐食割れを起こし易い箇所に適用することが好ましい。このため、液状物調整槽11、加熱溶解装置12、精製槽13、これらを接続する配管、精製槽13から精製反応液9を排出する排出管107のうち、熱間加工、冷間加工がなされた箇所に固溶体化熱処理を施すことが好ましい。この観点で、本発明の精製装置の中で応力腐食割れを特に発生しやすい部位は、加熱溶解装置12の熱交換器のチャンネルカバー、加熱溶解装置12の伝熱管を固定する管板と伝熱管との接続部、精製槽13内の液状物供給部(固定床上流)、精製槽13から精製反応液9を排出する排出管107、などである。
以下に、本発明の固溶体化熱処理を加熱溶解装置12に施す場合について説明する。加熱溶解装置12としては、前記したように多管式円筒熱交換器が好適に使用されるが、その場合に応力腐食割れが発生しやすいのはチャンネルカバーである。従って、チャンネルカバーに固溶体化熱処理を施すことが好ましい。チャンネルカバー部に固溶体化熱処理を実施することにより、残留応力を除去することが出来、応力腐食割れを防止することが出来る。加熱溶解装置12にオーステナイト系ステンレス鋼を使用する場合は、前記の通りSUS304、SUS304L、SUS316L、SUS317Lなどが挙げられるが、特にモリブデンを含有しないSUS304またはSUS304Lが好ましく使用される。モリブデンを含有するステンレス鋼では、モリブデンが製品である芳香族カルボン酸に混入して品質が低下する場合がある。なお、加熱溶解装置12における好適な固溶体化熱処理条件は、使用する金属材料、すなわちステンレス鋼やニッケル合金等の種類、組成や、装置の形状、金属材料の厚み等に応じて適宜設定される。
以下に、本発明の固溶体化熱処理を精製槽13に施す場合について説明する。図2に示される精製槽13の概略図において、溶液滞留ゾーン103には、複雑な加工処理を施された部品が使用されているので残留応力が大きく、応力腐食割れの原因となる。従って、溶液滞留ゾーン103を形成する部材、すなわち仕切板104やオーバーフロー壁102、これらの接合部に固溶体化熱処理を施すことが好ましい。これらの箇所に固溶体化熱処理を施すことにより、残留応力を除去することが出来、応力腐食割れを防止することが出来る。なお、精製槽13における好適な固溶体化熱処理条件は、使用する金属材料、すなわちニッケル合金等の種類、組成や、装置の形状、金属材料の厚み等に応じて適宜設定される。
精製槽13から精製反応液9を排出する排出管107も応力腐食割れが発生しやすい箇所である。従って、固溶体化熱処理を排出管107に施すことが好ましい。前記の通り、該排出管の形状としては高周波処理したベンディングパイプが好ましいが、高周波処理済みのベンディングパイプを製造する際の残留応力によって発生する応力腐食割れを除去するために、固溶体化熱処理を施すことが好ましい。
以上記載の通り、芳香族カルボン酸の精製装置に対し固溶体化熱処理を施すことにより、装置材質の腐食による補修、および、補修のための運転停止に伴う生産損失を抑制することが可能となる。また、本発明の芳香族カルボン酸の精製装置によれば、設備の更新時期を大幅に延長させることが可能となる。
一般的には、応力腐食割れの防止対策は容易ではなく、他産業では、引張応力を圧縮応力に変える工法、異種金属を注入する方法、環境条件の改善としてハロゲン元素を徹底的に除去する方法などが提案され、実施されているが、何れの方法も複雑な操作、工程を必要とする。本発明に係る固溶体化熱処理を施すことにより、容易な方法によって応力腐食割れを防止することができる。この点で、本発明に係る固溶体化熱処理を施すことにより、溶媒、触媒、原料、目的物等として酸素、ハロゲン化合物、酸、水素などを用い、高圧条件で製造するような種々の装置に対しても適用することができる意義は大きい。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明する。なお、本発明はその趣旨に反しない限り実施例に限定されるものではない。
(比較例1)
粗製テレフタル酸および高純度テレフタル酸を一貫して製造する製造設備(生産量75Ton/hr)を用いた。先ず、液相酸化反応器に連続的にパラキシレンおよび、パラキシレンの約3重量倍の酢酸、触媒として酢酸コバルト、酢酸マンガン、臭化水素を供給し、温度185〜195℃、圧力1.0〜1.7MPa、反応時間(平均滞留時間)90分で酸化反応を行った。触媒使用量は、溶媒に対し、コバルト成分およびマンガン成分が金属換算で各々300重量ppm、臭素成分は700ppmとした。分子状酸素による酸化反応を行うためのガスとしては、空気を用いた。このとき空気の酸素含有率は21体積%であり、反応器から排出されるガス中の酸素濃度が3〜7体積%になるように、反応器中に圧縮空気を供給した。
次いで、得られた酸化スラリーを、低温酸化反応器に連続的に移送し、温度180〜195℃、圧力0.9〜1.7MPa、反応時間40〜60分で追酸化反応を行った。酸化反応を行うためのガスとして、圧縮空気(酸素含有率21体積%)を、排ガス中の酸素濃度が3〜7体積%になるように供給した。反応終了した粗製テレフタル酸スラリーの温度及び圧力を維持したまま、スクリーンボウルデカンターにより固液分離・洗浄し、粗製テレフタル酸を得た。
ついで、粗製テレフタル酸を精製装置に導入した。液状物調製槽(オーステナイト系ステンレス製)は、バッフルを4枚備えた傾斜パドル翼を備え、攪拌軸の動力0.5kw/mで運転した。操作圧力は常圧で、温度は90℃、滞留時間は30分とした。
得られたスラリーは、加圧ポンプを用いて複数の直列に連結した加熱溶解装置を通過させ、蒸気及び熱媒油(ホットオイル)で290℃、8.5MPaまで加熱加圧して、テレフタル酸を完全に溶解させた。なお、加熱溶解装置は7器あり、全て多管式円筒型熱交換器とした。液状物調整槽側の5器をオーステナイト系ステンレス製(チューブもオーステナイト系ステンレス製であり、管板とチューブとの接続部の拡管率は1.5%)とし、精製槽側の2器はカーボンスチールおよびチタン製とした。
その後、該溶解物を精製槽(オーステナイト系ステンレスおよびカーボンスチール製)に、水素と共に導入し、不純物の4−カルボキシベンズアルデヒドをパラトルイル酸に変えた。精製槽には、パラジウム−活性炭を固定触媒床として備え、その下流に触媒など固形分の漏出を防止するためのろ過材(チタン製)を設けた。
得られたテレフタル酸水溶液は、次いで後工程に送られた。連続的に晶析槽に送られ、4段の晶析工程で、順次に放圧冷却、晶析させた後、100℃で固液分離し、高純度テレフタル酸ケーキを水洗、乾燥した。固液分離機にはスクリーンボウルデカンターを用いた。乾燥機は放圧蒸発による加圧乾燥機、および流動層乾燥機が用いられ、高純度テレフタル酸ケーキが75Ton/hrの収量で得られた。分離母液にはパラトルイル酸などの酸化中間体が含有されているので、さらに冷却して結晶析出させ、固液分離して固形分として回収し、液相酸化反応工程にリサイクルした。酸化中間体分離後の母液の一部は、精製工程の水溶媒として再利用した。
上記条件で連続運転した結果、数ヶ月から1年程度の間隔で運転を止めて補修する際に確認すると、オーステナイト系ステンレス製の液状物加熱溶解装置のチャンネルカバー、精製槽の排出管で応力腐食割れが発生していた。このため、装置を補修する必要が生じた。また、多管式円筒型熱交換器の管板とチューブとの接続部には、割れが生じていることが目視で確認され、装置を補修する必要が生じた。さらに、精製槽内部に設けたチタン製のろ過材も水素脆化割れを起こしていたため、ろ過材を交換する必要が生じた。
(実施例1)
比較例1で用いた精製装置に以下の変更を施した以外は比較例1と同様にして高純度テレフタル酸を製造した。
オーステナイト系ステンレス製の加熱溶解装置(多管式円筒型熱交換器)のうち、精製槽に近い側の2器について、チャンネルカバー(オーステナイト系ステンレス製)を固溶体化熱処理して用いた。固溶体化熱処理の条件は、1000℃〜1150℃において30分以上の固溶体状態を維持した後に急冷することにより、固溶体の状態を固定した。
排出管を固溶体化熱処理した後に、精製槽底部に溶接接合し、熱処理した。固溶体化熱処理の条件は、1100℃〜1150℃において30分以上の固溶体状態を維持した後に急冷することにより、固溶体の状態を固定した。
上記処理を実施した精製装置を用いて連続運転した結果、2年以上の間、液状物加熱溶解装置、精製槽の排出管の何れにも応力腐食割れが発生していないことを目視により確認した。しかし、多管式円筒型熱交換器の管板とチューブとの接続部には、割れが生じていることが目視で確認され、装置を補修する必要が生じた。さらに、精製槽内部に設けたチタン製のろ過材を確認した結果、水素脆化割れを起こしていたため、ろ過材を交換する必要が生じた。
(実施例2)
精製槽内部に設けたチタン製のろ過材を酸化皮膜処理して用いた以外は、実施例1と同様にして高純度テレフタル酸を製造した。酸化皮膜処理の方法は、酸素存在下、炉内で加熱処理する方法を用いた。
上記処理を実施した精製装置を用いて連続運転した結果、2年以上の間、液状物加熱溶解装置、精製槽の排出管の何れにも応力腐食割れが発生していないことを目視により確認した。さらに、2年の連続運転後に精製槽内部に設けたチタン製のろ過材を確認した結果、ろ過材も水素脆化割れが発生していないことを目視により確認した。以上の通り、応力腐食割れ対策及び水素脆性割れ対策を実施することにより、精製装置における材質に由来するトラブルは、ほぼ完全に解消することができた。
(実施例3)
多管式円筒型熱交換器の管板とチューブとの接続部の拡管率を3.5%とした以外は、実施例1と同様にして高純度テレフタル酸を製造した。
上記処理を実施した精製装置を用いて連続運転した結果、2年以上の間、液状物加熱溶解装置、精製槽の排出管の何れにも応力腐食割れが発生していないことを目視により確認した。さらに、多管式円筒型熱交換器の管板とチューブとの接続部にも、割れは生じていなかった。
なお、拡管率を4.5%とした場合も同様に、管板とチューブとの接続部に割れは生じていなかったが、拡管率1.5%では割れが生じていた。
1 原料
2 分子状酸素
3 溶媒及び触媒
4 粗製芳香族カルボン酸
5 溶媒
6 粗製芳香族カルボン酸スラリー
7 粗製芳香族カルボン酸溶液
8 水素
9 精製反応液
10 高純度芳香族カルボン酸
11 液状物調製槽
12 加熱溶解装置
13 精製槽
14 加圧ポンプ
101 固定触媒床
102 オーバーフロー壁
103 溶液滞留ゾーン
104 仕切板
105 溶液供給管
106 水素供給管
107 排出管
108 濾過材

Claims (9)

  1. 粗製芳香族カルボン酸と水とを含有する液状物を調製する液状物調製槽、該液状物を加熱溶解する加熱溶解装置、及び、加熱された該液状物中の粗製芳香族カルボン酸を精製する精製槽、を有する芳香族カルボン酸の精製装置において、
    液状物調整槽、加熱溶解装置、精製槽、及びこれらを接続する配管並びに該精製槽から精製反応液を排出する排出管のうち少なくとも一部分が固溶体化熱処理を施された金属からなることを特徴とする芳香族カルボン酸の精製装置。
  2. 固溶体化熱処理を施された金属が、固溶体状態を1分以上維持する条件でなされたものである請求項1に記載の芳香族カルボン酸の精製装置。
  3. 固溶体化熱処理を施された金属が、オーステナイト系ステンレス、ニッケル合金から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の芳香族カルボン酸の精製装置。
  4. 精製槽が水素化するための精製槽である請求項1〜3のいずれか1項に記載の芳香族カルボン酸の精製装置。
  5. 排出管の屈曲部が高周波ベンディングパイプである請求項1〜4のいずれか1項に記載の芳香族カルボン酸の精製装置。
  6. 精製槽が固定触媒床を有し、該固定触媒床の下流側に濾過材を備え、該濾過材が酸化皮膜処理された金属を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の芳香族カルボン酸の精製装置。
  7. 濾過材の材質がチタンである請求項6に記載の芳香族カルボン酸の精製装置。
  8. 加熱溶解装置が熱媒との熱交換により該液状物を加熱する多管式熱交換器を備え、該多管式熱交換器のチャンネルカバーが固溶体化熱処理を施された金属を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の芳香族カルボン酸の精製装置。
  9. 加熱溶解装置が熱媒との熱交換により液状物を加熱する多管式熱交換器を備え、該熱交換器の管板とチューブとの接続部の拡管率が2〜5%である請求項1〜8のいずれか1項に記載の芳香族カルボン酸の精製装置。
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