JP2010185399A - 内燃機関の圧縮比制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】アクチュエータによる駆動状態から保持機構による保持状態への切換を迅速かつ安定して行う。
【解決手段】駆動された偏心カム部(制御部材)の変位に応じて内燃機関の機関圧縮比を変化させる可変圧縮比機構1と、偏心カム部を駆動するアクチュエータ63と、偏心カム部を保持する保持機構64と、アクチュエータ63と保持機構64の作動を制御するエンジンコントロールユニット(制御部)4と、を有する。アクチュエータ63により偏心カム部を駆動する駆動状態から保持機構により偏心カム部を保持する保持状態へ切り換える切換過渡期には、アクチュエータ63の作動停止前に保持機構64の作動を開始する。
【選択図】図1
【解決手段】駆動された偏心カム部(制御部材)の変位に応じて内燃機関の機関圧縮比を変化させる可変圧縮比機構1と、偏心カム部を駆動するアクチュエータ63と、偏心カム部を保持する保持機構64と、アクチュエータ63と保持機構64の作動を制御するエンジンコントロールユニット(制御部)4と、を有する。アクチュエータ63により偏心カム部を駆動する駆動状態から保持機構により偏心カム部を保持する保持状態へ切り換える切換過渡期には、アクチュエータ63の作動停止前に保持機構64の作動を開始する。
【選択図】図1
Description
本発明は、可変圧縮比機構を備えた内燃機関の圧縮比制御装置に関する。
レシプロ式内燃機関の可変圧縮比機構として、複リンク式ピストン−クランク機構を用い、そのリンク構成の一部を動かすことによりピストン上死点位置を変化させるようにした機構を本出願人は種々提案している(例えば特許文献1)。この種の可変圧縮比機構は、制御部材としての制御軸の回転位置に応じて内燃機関の機械的な圧縮比つまり公称圧縮比を変化させるものであり、一般に、部分負荷時には、熱効率向上のために高圧縮比に制御され、高負荷時には、ノッキング回避のために低圧縮比に制御される。
特開2001−227367号公報
上記の制御軸(制御部材)は、例えば応答性に優れた電動モータなどのアクチュエータにより回転位置が変更・保持され、アクチュエータは、例えばセンサ類により検出される実圧縮比と目標圧縮比との偏差に応じてフィードバック制御される。但し、機関運転中には燃焼圧力や、複リンク式ピストン−クランク機構の慣性力やカウンターウェイトを含めたクランクシャフトの慣性力などの大きな負荷トルク・反力が制御軸に繰り返し作用するために、例えば目標圧縮比があまり変化しない定常運転時に制御軸を目標圧縮比に対応した所定の回転位置に保持する場合にも、上記の大きな負荷トルク・反力に抗してアクチュエータにより制御軸を保持するために大きな駆動力が必要となり、アクチュエータの消費エネルギー(例えばモータの消費電力)の増加やアクチュエータの大型化などを招くという問題がある。
そこで本出願人は、アクチュエータとは別に、アクチュエータよりも少ないエネルギーで制御軸を安定して所定の回転位置に保持し得る保持機構、例えばコギングブレーキとも呼ばれる非接触励磁式ブレーキの採用を検討している。保持機構として、作動時(通電時)にはロータとステータの歯が一致した磁気安定点にて制御軸を保持する非接触励磁式ブレーキであるコギングブレーキを用いた場合、少ない電力で安定した保持が可能であるとともに、磁気力を利用した保持のために摺動部位がなく潤滑が不要であり、信頼性や耐久性に優れ、部品点数も少ないなどの利点がある。但し、この場合、アクチュエータにより制御軸を駆動してその回転位置を変更・保持している駆動状態から保持機構により制御軸を保持する保持状態へ切り換える切換過渡期に、例えばアクチュエータの作動停止と同時に保持機構の作動を開始すると、アクチュエータの駆動トルクの低下に比して保持機構の保持トルクの立ち上がり遅れが生じ、これに起因して、過渡的に制御軸を良好に保持できなくなり、実圧縮比と目標圧縮比との偏差が増大したり、保持状態への移行に時間がかかり、消費エネルギーの増加や運転性の低下などの不具合を招くおそれがある。
例えば、アクチュエータの駆動を停止する際に、このアクチュエータの作動速度(具体的にはモータ回転速度)が保持機構で保持可能な回転速度を超えていると、制御軸を保持機構のみで良好に保持できず、再びアクチュエータを駆動して実圧縮比を目標圧縮比に近づける必要が生じるため、保持機構による保持状態へ完全に移行するのに長い時間がかかり、結果的にモータ消費電力が増大してしまうという問題が起こる。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の内燃機関の圧縮比制御装置は、制御部材の変位に応じて内燃機関の機関圧縮比を変化させる可変圧縮比機構と、上記制御部材を駆動するアクチュエータと、上記制御部材を保持する保持機構と、上記アクチュエータと保持機構の作動を制御する制御部と、を有し、この制御部は、上記アクチュエータにより制御部材を駆動する駆動状態から保持機構により制御部材を保持する保持状態へ切り換える切換過渡期に、上記アクチュエータの作動停止前に保持機構の作動を開始することを特徴としている。
目標圧縮比があまり変動しない定常運転時などには、アクチュエータにより制御部材を駆動する駆動状態から保持機構により制御部材を保持する保持状態へ切り換えることで、消費エネルギーの軽減を図りつつ、制御部材を所定の保持位置に安定して保持することができる。そして、上記の駆動状態から保持状態への切換過渡期に、アクチュエータの作動停止前に保持機構の作動を開始することで、保持機構の作動開始直後の保持トルクの立ち上がり遅れに起因する制御部材の不用意な変動等を招くことなく、保持状態へ安定して速やかに移行することができる。
以下、この発明の好ましい一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、この発明に係る内燃機関の圧縮比制御装置の一実施例を示している。この内燃機関は、火花点火式ガソリン機関であって、公称圧縮比εを可変制御する可変圧縮比機構1と、ノッキングを検出するノックセンサ3の検出信号に基づいて、微弱なノッキング状態となるように、点火時期を制御する点火進角制御装置2と、上記可変圧縮比機構1および点火進角制御装置2を制御する制御部としてのエンジンコントロールユニット4と、を備えている。上記エンジンコントロールユニット4は、機関運転条件に対応して目標圧縮比を予め割り付けた圧縮比制御マップ5を備えており、また、図示せぬセンサ類によって検出された機関回転数信号、負荷信号、冷却水温度信号、潤滑油温度信号、吸入空気温度信号、触媒温度信号、などが入力されている。なお、上記圧縮比制御マップ5としては、例えば、油水温や吸入空気温度等が異常に高くない通常時(ノッキングが生じにくい条件下)を前提として、機関の負荷および回転速度をパラメータとして基本の圧縮比値を割り当てたものとなっており、高油水温時等には、この基本の圧縮比値を補正することで目標圧縮比を得るようにしているが、これに限定されるものではなく、温度条件等の条件毎に異なる特性の圧縮比制御マップを備えることなども可能である。
図2は、可変圧縮比機構1の構成を示す図である。クランクシャフト51は、複数のジャーナル部52とクランクピン53とを備えており、シリンダブロック50の主軸受に、ジャーナル部52が回転自在に支持されている。上記クランクピン53は、ジャーナル部52から所定量偏心しており、ここに第2リンクとなるロアリンク54が回転自在に連結されている。上記ロアリンク54は、左右の2部材に分割可能に構成されているとともに、略中央の連結孔に上記クランクピン53が嵌合している。第1リンクとなるアッパリンク55は、下端側が連結ピン56によりロアリンク54の一端に回動可能に連結され、上端側がピストンピン57によりピストン58に回動可能に連結されている。上記ピストン58は、燃焼圧力を受け、シリンダブロック50のシリンダ59内を往復動する。なお、上記シリンダブロック50の一部に、図1に示したように、ノッキングに起因した振動を検出するノックセンサ3が配置されている。
第3リンクとなるコントロールリンク60は、上端側が連結ピン61によりロアリンク54の他端に回動可能に連結され、下端側が制御軸62を介して機関本体の一部となるシリンダブロック50の下部に回動可能に連結されている。詳しくは、制御軸62は、回転可能に機関本体に支持されているとともに、その回転中心から偏心して制御部材を成す偏心カム部62aを有し、この偏心カム部62aに上記コントロールリンク60下端部が回転可能に嵌合している。上記制御軸62は、エンジンコントロールユニット4からの制御信号に基づき作動する、電動モータを用いた圧縮比制御アクチュエータ63により回転駆動される。制御部材を成す偏心カム部62aは、制御軸62の回転位置の変更を介して、圧縮比制御アクチュエータ63により駆動され、変位させられる。
上記のような複リンク式ピストン−クランク機構を用いた可変圧縮比機構1においては、上記制御軸62が圧縮比制御アクチュエータ63によって回動されると、偏心カム部62aの中心位置、特に、機関本体に対する相対位置が変化する。これにより、コントロールリンク60の下端の揺動支持位置が変化する。そして、上記コントロールリンク60の揺動支持位置が変化すると、ピストン58の行程が変化し、ピストン上死点(TDC)におけるピストン58の位置が高くなったり低くなったりする。これにより、機関圧縮比を変えることが可能となり、特に、最大圧縮比と最小圧縮比との間で、圧縮比を連続的に変化させることができる。なお、本発明においては、この実施例の可変圧縮比機構に限定されず、制御部材を有し、制御部材の変位で圧縮比を変えるものであれば、種々の形式の可変圧縮比機構を適用することが可能である。
機関運転中には燃焼圧力や、複リンク式ピストン−クランク機構の慣性力などの負荷トルク・反力が制御軸に繰り返し作用するため、例えば目標圧縮比があまり変化しない定常運転時であっても、負荷トルク・反力に抗して制御軸を目標圧縮比に対応した所定の回転位置に保持する必要がある。本実施例では、制御軸62の回転位置を所定の回転位置に保持することにより、偏心カム部62a(制御部材)の位置を一定に保持する保持機構として、上記のアクチュエータ63とは別に、非接触励磁式ブレーキであるコギングブレーキ64が設けられている。アクチュエータ63とコギングブレーキ64は、それぞれ独立して制御軸の駆動・保持が可能なように構成されており、本実施例においては例えば歯車を介して互いに並列な関係となるように配置されている。従ってコギングブレーキ64を作動させることによって、圧縮比制御アクチュエータ63を作動させなくても制御軸を保持することができる。このコギングブレーキ64は、ここでは詳細な説明は省略するが、通電することにより作動し、ロータとステータの歯が一致した磁気安定点でロータを保持するものであり、少ない電力で安定した保持が可能であるとともに、磁気力を利用した保持のために摺動部位がなく潤滑が不要であり、信頼性や耐久性に優れ、部品点数も少ないなどの利点がある。コギングブレーキ64は、その出力軸がアクチュエータ63の出力軸と同様、適宜な減速ギヤ(図示せず)を介して制御軸62と連結され、少ないエネルギーで安定して制御軸62を保持できるように、制御軸62に対する減速比がアクチュエータ63よりも更に大きく設定されている。例えばコギングブレーキ64の減速比が300、アクチュエータ63の減速比が100程度に設定される。
次に、実施例の制御内容について図面を参照して説明する。これらの制御内容は、上記のエンジンコントロールユニット4により記憶及び実行される。
(1)図3は経過時間を横軸にして、アクチュエータにより制御部材を駆動する駆動状態から保持機構により制御部材を保持する保持状態へ切り換える切換過渡期における、目標圧縮比と実圧縮比の間の偏差、アクチュエータの作動速度(モータの回転速度)、アクチュエータの作動状態(作動か非作動か)、保持機構の作動状態(作動か非作動か)、の様子を示している。図3にも示すように、切換過渡期は、アクチュエータ63と保持機構64の双方を作動させる併用状態α2と、併用状態α2の直前で保持機構64を停止してアクチュエータ63により制御軸62を駆動する駆動状態α1と、併用状態α2の直後でアクチュエータ63を停止して保持機構64により制御軸62を保持する保持状態α3と、のようにアクチュエータ作動状態と保持機構作動状態の組合せによって3つの状態(期間)に分けて考えることができる。α1からα2に切り換る際には、実圧縮比が目標圧縮比に近づくように、アクチュエータ63の作動により制御軸が駆動され、制御部材の変位が続いている、制御部材の停止前に保持機構64の作動を開始する。これによって、保持機構64による保持トルクの立ち上がり遅れに起因する圧縮比の偏差の増加を防止し、速やかに安定して保持状態α3へ移行することが可能となる。このようにアクチュエータ63と保持機構64の併用状態α2を経由してから保持機構64のみによる保持へ移行することで、保持機構64の保持トルクが十分立ち上がるまではアクチュエータ63によるフィードバック制御(F/B制御)を継続することで、実圧縮比を目標圧縮比に良好に近づけることができ、短時間で安定して確実に保持機構64単独での保持状態α3に切り替えることができる。
(2)機関圧縮比の実際の値に相当する実圧縮比(以下、実εとも略す)を検出する制御軸センサ65が設けられている。あるいは、より簡易的に制御軸センサ65を省略し、機関運転状態等から実εを求めるようにしても良い。ECU4は、アクチュエータ63により制御軸62の回転位置を駆動している駆動状態α1および併用状態α2では、機関運転状態に応じて設定される目標圧縮比(以下、目標εとも略す)に基づいてアクチュエータ63を制御する。例えば、目標εと実εとの偏差|目標ε−実ε|に応じたフィードバック制御を行う。そして、切換過渡期には、実圧縮比と目標圧縮比との偏差に応じて、アクチュエータ63及び保持機構64の作動・停止を切り換えることで、精度よく圧縮比の偏差の増加を防止しつつ速やかに保持状態α3へ移行することが可能となる。
(3)より具体的には、図3や図11に示すように、切換過渡期に、上記偏差が、上記保持機構64による保持可能な偏差に対応する第1設定値S1よりも大きい第2設定値S2以下のときに、保持機構64の作動を開始する。尚、第1設定値S1は、目標圧縮比に対する実圧縮比の制御精度上許容可能な偏差の最大値(目標圧縮比に対する実圧縮比の偏差の許容範囲に対応する設定値)であり、偏差が第1設定値S1以下になれば実圧縮比は目標圧縮比である(目標値に到達した)とみなされる。ここで仮に、完全に立ち上がった状態でのコギングブレーキの作動中に、モータを駆動して圧縮比を制御しようとすると、コギングブレーキによるコギングトルクの抵抗に逆らって磁気安定点を超えるようにモータを回転駆動することとなるために、過大なモータトルクが必要となる。また、コギングトルクの抵抗を乗り越えた後、つまり磁気安定点を乗り越えると、コギングトルクがアシストトルクとして作用するためにモータが過大に回転してしまい、目標圧縮比の前後で実圧縮比がハンチングするおそれがある。さらに、コギングブレーキで保持可能な所定回転数を超えてモータ回転速度がオーバシュートしてしまうと、コギングブレーキによる保持が困難になり、あるいはコギングブレーキのみによる保持状態への移行が長期化し、消費エネルギーの増加や圧縮比が目標圧縮比から外れて運転性へ悪影響を与えるおそれがある。そこで、偏差が第1設定値S1より大きい第2設定値S2以下となると保持機構64の作動を開始することで、保持トルクの立ち上がりに遅れが生じる場合にも、偏差が第1設定値S1以下に到達する時には十分に保持トルクを上昇させておくことができるため、保持トルクの立ち上がり遅れに起因する偏差の増加(偏差が大きく留まること)などを招くことない。そして、完全に立ち上がった状態でコギングブレーキが作動している間に、モータを駆動して圧縮比を制御する時間を短くすることができるので、過大なモータトルクが必要になったり、目標圧縮比の前後で実圧縮比がハンチングしたりすることなく、偏差が第1設定値S1以下に到達したときに保持機構64のみによる保持状態α3へ短時間で良好に移行することができる。また、このようにアクチュエータ63のみによる駆動状態α1から保持機構64のみによる保持状態α3への移行を短時間で行うことで、アクチュエータ63の駆動時間を短縮することができるため、アクチュエータ63の消費エネルギー(具体的にはモータ消費電力)による燃費悪化を改善できる。ただし、機関回転・負荷が小さいかまたは機関側からアクチュエータ63への負荷トルクが減少する条件となる圧縮比において圧縮比保持する場合には、保持機構64を敢えて用いなくとも少ない消費エネルギーでの保持が可能な条件もあるため、そのような条件では保持機構64の保持を行わないようにすることも消費電力低減に有効である。
(4)上記切換過渡期に、上記偏差が第1設定値S1以下のときに、アクチュエータ63の作動を停止する。このように、保持機構64のみによる保持が可能な第1設定値S1以下になると速やかにアクチュエータ63の作動を停止することで、アクチュエータ63の消費エネルギーの軽減を図ることができる。言い換えると、第1設定値S1以下になるまで保持機構64のみによる保持を禁止することで、アクチュエータ63の作動停止後に偏差が増大する(大きく留まる)ような事態をより確実に防止することができる。
(5)図12は別の実施例を示しており、保持機構の作動開始の判断に、目標圧縮比と実圧縮比の間の偏差に加えて、アクチュエータの作動速度も考慮する。図12に示すように、上記切換過渡期に、上記偏差が第2設定値S2以下で、かつ、上記アクチュエータ63の作動速度(具体的には、モータ回転速度)が、保持機構64による保持可能な作動速度(例えばコギングトルクの抵抗(磁気安定点)を乗り越え始める作動速度より僅かに小さい作動速度)に対応する第4設定値S4(図8参照)よりも大きい第3設定値S3以下のときに、保持機構64の作動を開始する。つまり、アクチュエータ63の作動速度が保持機構64による保持可能な第4設定値S4よりも大きい第3設定値S3以下となると保持機構64の駆動を開始しておくことで、アクチュエータ63の作動速度が第4設定値S4まで低下したときには保持機構64単独での保持状態α3へより安定して確実に切り換えることができる。仮に偏差が第2設定値S2以下であっても、アクチュエータ63の作動速度が第3設定値S3より大きいときは、保持機構64を作動させない。これにより、保持できる見込みの無いときは保持機構64を作動させないようにして、無駄なエネルギ消費を抑えることができる。
(6)図10に示す実施例ではさらに、上記切換過渡期に、上記偏差が第1設定値S1以下で、かつ、上記アクチュエータ63の作動速度が、例えばコギングトルクの抵抗(磁気安定点)を乗り越え始める直前の(乗り越え始める作動速度より僅かに小さい)作動速度として設定された第4設定値S4以下のときに、上記アクチュエータ63の作動を停止する(図10はすでに偏差が第1設定値S1以下になっている状態を示している)。このように、アクチュエータ63の作動速度が保持機構64により保持可能な第4設定値S4以下となると速やかにアクチュエータ63の作動を停止することで、アクチュエータ63の消費エネルギーを軽減することができる。仮に偏差が第1設定値S1以下であっても、アクチュエータ63の作動速度が第4設定値S4より大きいときは、アクチュエータ63の作動を継続させる。これにより、保持機構64により制御軸を保持できる見込みの無いときは、アクチュエータ63の作動を継続して、目標値に速やかに収束させることができる。
(7)図8は、偏差が第2設定値S2以下で、かつ、アクチュエータ63の作動速度が第3設定値S3以下のときに保持機構64を作動させ、偏差が第1設定値S1以下で、かつ、アクチュエータ63の作動速度が第4設定値S4以下のときにアクチュエータ63の作動を停止させた場合の、圧縮比とアクチュエータの作動速度(モータ回転数)のタイミングチャートである。Aのタイミングで偏差|目標ε−実ε|が第2設定値S2以下になるが、アクチュエータ63の作動速度(モータ回転数)が第3設定値S3以下ではないので保持機構64を作動させない。Cのタイミングでアクチュエータ63の作動速度が第3設定値S3以下になったところで、保持機構64を作動させる。このように、偏差が収束する(偏差の許容範囲である第1設定値S1以下になる)までに時間がかかる状態では、保持機構64を作動させないことで、無駄なエネルギ消費を抑制し、偏差が収束する時期に合わせて保持機構の保持トルクを立ち上げることができる。Bのタイミングでは、偏差が第1設定値S1以下になるが、アクチュエータ63の作動速度が第4設定値S4以下ではないので、アクチュエータの作動は停止することなく継続する。また、Eのタイミングでアクチュエータ63の作動速度が第4設定値S4以下になるが、Dのタイミングで偏差が第1設定値S1より大きくなっているので、アクチュエータの作動は継続する。その後、Fのタイミングで偏差が第1設定値S1以下となり、かつ、アクチュエータ63の作動速度が第4設定値S4以下となったところで、アクチュエータの作動を停止する。このように、偏差が許容範囲内となり、かつ、アクチュエータ63の作動速度が保持機構64により保持可能な第4設定値S4以下となったところでアクチュエータ63の作動を停止することで、アクチュエータ63の消費エネルギーを軽減しつつ、速やかに保持状態へと移行させ、保持機構64により制御軸を保持できる見込みの無いときは、アクチュエータ63の作動を継続して目標値に速やかに収束させる。
(8)上記切換過渡期に、上記偏差が第2設定値S2以下であり、かつ、上記アクチュエータ63の駆動方向が高圧縮比側に向かう方向であるときに、上記保持機構64の作動を開始することもできる。図8において、偏差が第2設定値S2以下であり、かつ、上記アクチュエータ63の駆動方向が高圧縮比側に向かう向きへと変化するGのタイミングで、保持機構64の作動を開始する。このように、アクチュエータ63の駆動方向が高圧縮比側に向かう向きであるとき、燃焼荷重とアクチュエータ63のトルクが相殺方向に作用するために、アクチュエータ63の作動速度(モータ回転速度)の急速な変動が抑制されることから、保持機構64の作動を開始することで、保持可能なモータ回転速度以下にモータ回転速度を保持した状態を維持して保持状態α3へ移行することが容易になる。
(9)上記切換過渡期に、上記保持機構64の作動開始から所定時間経過すると、上記第1設定値S1を増加する。これにより、切換過渡期に保持状態への移行が長期化した場合にも、第1設定値S1を増加して保持機構64の作動条件を緩和することで、保持状態への移行をより確実に行うことができる。
(10)図4に示す実施例のように、上記切換過渡期に、上記偏差が第2設定値S2以下となった時点での上記保持機構64の作動開始から、所定の遅れ期間ΔT経過後に、上記アクチュエータ63の作動を停止することもできる。つまり、遅れ期間ΔTが経過するまで、アクチュエータ63の作動停止を禁止する。このように、偏差が第2設定値S2以下となった時点で予め保持機構64の作動を開始させ、所定の遅れ期間ΔTを持たせることで、保持機構64の駆動開始から保持トルクが十分に立ち上がるまでに時間遅れが有る場合にも、アクチュエータ63の駆動を所定の遅れ期間ΔT行うことで、圧縮比の偏差の増加を招くことなく、保持機構64のみによる保持状態へ良好に移行することが可能となる。また、図4に示すように、簡易的に保持機構64の作動開始から遅れ期間ΔT経過後にアクチュエータ63を停止する構成とすれば、制御が簡素化され、演算負荷やメモリ使用量を大幅に軽減できる。
(11)遅れ期間ΔT経過後にアクチュエータ63を停止する構成をしたときに、機関回転速度や負荷などの機関運転状態に応じて保持トルクの大きさが異なり、また保持トルクの大きさによって保持トルクが十分立ち上がるまでに要する時間が異なるため、上記遅れ期間ΔTを機関運転状態に応じて設定し、具体的には図5に示すように、機関負荷や機関回転数が高くなるほど遅れ期間ΔTを増加することで、機関運転状態に応じて遅れ期間ΔTを適切に短縮し、アクチュエータ63の消費エネルギーの軽減化などを図ることができる。
(12)上記遅れ期間ΔTを、保持状態での目標圧縮比,保持直前の圧縮比変化量,及び保持直前の圧縮比変化方向の少なくとも1つに応じて設定することで、次に述べるように、より適切に遅れ期間ΔTを短縮することができる。
図6に示すように、保持状態での目標圧縮比である保持圧縮比の大きさによって、同じ燃焼圧作用時でも機関側から制御軸62やアクチュエータ63へ作用する負荷トルク(図ではCTRL/Sトルクと記す)が変化するため、負荷トルクが増大する保持圧縮比のときには、遅れ期間ΔTを増加することで、確実に保持機構64による保持に移行できる。
また、図7に示すように、保持直前の圧縮比変化量が大きい場合、アクチュエータ63の作動速度(モータ回転速度)が大きいために、圧縮比の偏差が第2設定値S2以内に低下しても、アクチュエータ63の作動速度が保持機構64による保持が可能な第3設定値S3以下となるまでの時間が長期化する。従って、保持直前の圧縮比変化量が大きくなるほど遅れ期間ΔTもそれに応じて増大することで、保持機構64のみによる保持状態α3へ良好に移行させることができる。
更に、図8を参照して、保持直前の圧縮比変化方向が低圧縮比方向(モータ駆動方向−)の場合、燃焼圧がアシスト方向に作用することによって、実圧縮比が速やかに目標圧縮比に近づく。従って、保持直前の圧縮比変化方向が低圧縮比方向の場合には遅れ期間ΔTを短縮することで、消費エネルギーを軽減することができる。一方、保持直前の圧縮比変化方向が高圧縮比方向(モータ駆動方向+)の場合、逆に実圧縮比が目標圧縮比に近づくまでの時間が増大するため、遅れ期間ΔTを増大することで、確実に保持状態へ移行させることができる。
(13)切換過渡期において、保持状態α3に相当する状態(偏差がS1以下、かつ、クチュエータの作動速度がS4以下)になった後、例えばコギングブレーキによる保持が安定するまでの所定期間、図9に示すように、内燃機関からアクチュエータ63(モータ)へ作用する負荷トルクつまり反力を相殺するように、上記アクチュエータ63の駆動方向を周期的に変化させることもできる。つまり、負荷トルクを相殺する方向にアクチュエータ63(モータ)に高圧縮比方向のトルクを周期的に発生することで、モータ回転変動を低減することができる。一般的に、高負荷時にはノッキング回避のために低圧縮比化するために、制御軸62に大きな荷重が作用することから、このような低圧縮比・高負荷時にはアクチュエータ63に作用する負荷トルクが減少するような設定とすることが望ましい。すなわち、同一荷重がコントロールリンク60から制御軸62に作用する場合でも高圧縮比時では低圧縮比時に対して相対的にアクチュエータ63への負荷トルクが増大するため、機関高回転域では圧縮比を低下して使用する。また低回転・低負荷域では燃費向上のため高圧縮比に設定する。このように、アクチュエータ63への負荷が増大する高圧縮比の設定を低回転とし、アクチュエータ63への負荷を相殺する方向にアクチュエータトルクを周期的に発生することで、制御遅れを生じることなくアクチュエータ63の回転変動を低減可能となり、保持機構64による安定した保持への移行を容易に行うことができる。
(14)特に、保持機構64として、非接触励磁式ブレーキであるコギングブレーキ64は、少ない電力で保持が可能な反面、電流が安定するまでの保持トルクの立ち上がりが遅く、保持が不安定となり易いことから、このようなコギングブレーキ64を用いた場合に上記の制御が極めて有効である。
1…可変圧縮比機構
4…エンジンコントロールユニット(制御部)
62…制御軸(制御部材)
63…アクチュエータ
64…コギングブレーキ(保持部材)
65…制御軸センサ(実圧縮比取得手段)
4…エンジンコントロールユニット(制御部)
62…制御軸(制御部材)
63…アクチュエータ
64…コギングブレーキ(保持部材)
65…制御軸センサ(実圧縮比取得手段)
Claims (14)
- 駆動された制御部材の変位に応じて内燃機関の機関圧縮比を変化させる可変圧縮比機構と、
上記制御部材を駆動するアクチュエータと、
上記制御部材を保持する保持機構と、
上記アクチュエータと保持機構の作動を制御する制御部と、を有し、
この制御部は、上記アクチュエータにより制御部材を駆動する駆動状態から保持機構により制御部材を保持する保持状態へ切り換える切換過渡期に、上記アクチュエータの作動停止前に保持機構の作動を開始することを特徴とする内燃機関の圧縮比制御装置。 - 上記機関圧縮比に相当する実圧縮比を検出又は推定する実圧縮比取得手段を有し、
上記制御部は、上記駆動状態には、機関運転状態に応じて設定される目標圧縮比に基づいて上記アクチュエータを制御し、上記切換過渡期には、上記実圧縮比と目標圧縮比との偏差に応じて、上記アクチュエータ及び保持機構の作動・停止を切り換えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の圧縮比制御装置。 - 上記制御部は、上記切換過渡期に、上記偏差が、目標圧縮比に対する実圧縮比の偏差の許容範囲に対応する第1設定値よりも大きい第2設定値以下のときに、保持機構の作動を開始することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の圧縮比制御装置。
- 上記制御部は、上記切換過渡期に、上記偏差が第1設定値以下のときに、アクチュエータの作動を停止することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の圧縮比制御装置。
- 上記制御部は、上記切換過渡期に、上記偏差が第2設定値以下で、かつ、上記アクチュエータの作動速度が、上記保持機構による保持が可能なアクチュエータの作動速度に対応する第4設定値よりも大きい第3設定値以下のときに、保持機構の作動を開始することを特徴とする請求項3又は4に記載の内燃機関の圧縮比制御装置。
- 上記制御部は、上記切換過渡期に、上記アクチュエータの作動速度が、上記第4設定値以下のときに、上記アクチュエータの作動を停止することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の圧縮比制御装置。
- 上記制御部は、上記切換過渡期に、上記偏差が第2設定値以下であり、かつ、上記アクチュエータの駆動方向が高圧縮比側に向かう方向であるときに、上記保持機構の作動を開始することを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の内燃機関の圧縮比制御装置。
- 上記制御部は、上記切換過渡期に、上記保持機構の作動開始から所定時間経過すると、上記第1設定値を増加することを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の内燃機関の圧縮比制御装置。
- 上記制御部は、上記切換過渡期に、上記保持機構の作動開始から所定の遅れ期間経過後に、上記アクチュエータの作動を停止することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の圧縮比制御装置。
- 上記制御部は、上記遅れ期間を機関運転状態に応じて設定することを特徴とする請求項9に記載の内燃機関の圧縮比制御装置。
- 上記制御部は、保持状態での目標圧縮比,保持直前の圧縮比変化量,及び保持直前の圧縮比変化方向の少なくとも1つに応じて、上記遅れ期間を設定することを特徴とする請求項9に記載の内燃機関の圧縮比制御装置。
- 上記制御部は、上記切換過渡期における保持状態において、内燃機関からアクチュエータへ作用する負荷トルクを相殺するように、上記アクチュエータの駆動方向を周期的に変化させることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の内燃機関の圧縮比制御装置。
- 上記保持機構が、非接触励磁式ブレーキであることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の内燃機関の圧縮比制御装置。
- 上記可変圧縮比機構は、ピストンにピストンピンを介して連結された第1リンクと、この第1リンクに揺動可能に連結されるとともにクランクシャフトのクランクピンに回転可能に連結された第2リンクと、機関本体に回転可能に支持されるとともに回転中心に対して偏心して設けられた偏心カム部を備えた制御軸と、上記第2リンクに揺動可能に連結されるとともに上記偏心カム部を介して機関本体に揺動可能に支持された第3リンクと、を備えた複リンク式ピストン−クランク機構からなり、上記アクチュエータにより駆動された制御部材としての偏心カム部の変位に基づき、上記第3リンクの機関本体に対する支点位置を変化させることで圧縮比を変更することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の内燃機関の圧縮比制御装置。
Priority Applications (1)
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JP2009030815A JP2010185399A (ja) | 2009-02-13 | 2009-02-13 | 内燃機関の圧縮比制御装置 |
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US10215108B2 (en) | 2016-12-22 | 2019-02-26 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Control device and control method of internal combustion engine |
CN110486158A (zh) * | 2018-10-30 | 2019-11-22 | 长城汽车股份有限公司 | 冲程可变的可变压缩比机构及其控制方法 |
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2009
- 2009-02-13 JP JP2009030815A patent/JP2010185399A/ja active Pending
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