JP2010177537A - 圧電アクチュエータ - Google Patents

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Abstract

【課題】圧電滑り歪み効果を利用しており、大きな変位量を得ることができるだけでなく、圧電素子におけるクラックが生じ難く、信頼性に優れた圧電アクチュエータを提供する。
【解決手段】分極方向Pが第1の方向である圧電体5と、圧電体5の第1の方向と直交する方向に電界を印加するために、圧電体5の外表面に形成された第1,第2の励振電極6,7とを有する圧電素子2に、圧電素子2の変形を受けて、圧電素子2の変形よりも大きく変位する被動部材4が被動部材の最も大きく変位する部分以外において圧電素子2に固定されている、圧電アクチュエータ1。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧電素子を用いた圧電アクチュエータに関し、より詳細には、圧電素子に圧電素子の変形を受けて変位する部材が連結されている圧電アクチュエータに関する。
従来、プリンタのヘッドやハードディスクドライブのヘッドを駆動するためなどに、圧電アクチュエータが広く用いられている。圧電アクチュエータは、圧電素子の圧電効果による変位を利用している。
上記圧電素子としては、圧電縦効果及び横効果を利用したものが広く知られている。しかしながら、比較的低電圧で大きな変位を得ることが困難であった。そこで、下記の特許文献1には、圧電縦効果及び横効果ではなく、圧電滑り歪み効果を利用した圧電アクチュエータが開示されている。
図9(a)及び(b)は、特許文献1に記載の圧電アクチュエータを説明するための模式的平面図及び模式的正面断面図である。
圧電体アクチュエータ101は、圧電板102を有する。圧電板102は、中央に貫通孔102aを有する。複数の円環状の圧電体103〜108が貫通孔102aと同心に配置され、かつ一体化されている。
各圧電体103〜108は、図示の矢印で示すように、圧電板102の径方向に分極処理されている。また、隣り合う円環状の圧電体では、分極方向は径方向において逆方向とされている。例えば、圧電体103の分極方向と、圧電体103のすぐ外側に位置する圧電体104の分極方向とが逆方向とされている。
圧電アクチュエータ101では、上記圧電板102の上面に第1の励振電極109が、下面に第2の励振電極110が形成されている。また、上記圧電板102の下面には、金属板111が貼り合わされている。第1,第2の励振電極109,110間に直流電圧を印加することにより、圧電板102が変位する。例えば、図9(b)に示すように、第1の励振電極109に+の電位を、第2の励振電極110に−の電位を与えた場合、圧電板102が、中央部分が上方に突出するように変位する。
特許文献1では、分極方向と電圧印加方向とが直交する圧電滑り歪み効果を利用することにより、より低い電圧で駆動しており大きな変位を得ることができるとされている。
特公平2−57354号公報
特許文献1に記載の圧電アクチュエータ101では、圧電滑り歪み効果を利用しているため、比較的低い電圧で大きな変位を得ることができる。しかしながら、図9の矢印Aで示したように、圧電板102と金属板111とが積層された積層体において、中央部分が上方に突出するように変位するため、圧電板102自体に変位によって発生する大きな応力が加わっていた。他方、圧電板102は、セラミックスからなるため、引っ張り応力に対しては弱い。よって、大きな引っ張り応力が加わると、図9の圧電板102の上面にクラックが発生し、脆性破壊するおそれがあった。
また、上記クラックが生じると、最終的に第1,第2の励振電極109,110が短絡するおそれもあった。
本発明の目的は、圧電滑り歪み効果を利用しており、大きな変位量を得ることができるだけでなく、圧電素子におけるクラックや破壊が生じ難い、信頼性に優れた圧電アクチュエータを提供することにある。
本発明によれば、第1の方向に分極処理された圧電体と、前記圧電体の第1の方向と直交する方向に電界を印加するために、前記圧電体の外表面に形成された第1,第2の励振電極とを有する圧電素子と、前記圧電素子に固定されており、該圧電素子の変形を受けて変位する被動部材とを備える、圧電アクチュエータが提供される。
本発明に係る圧電アクチュエータのある特定の局面では、前記被動部材の内、変位が最も大きくなる部分が前記圧電体に比べて脆性破壊しにくい材料からなる。一般的な圧電素子はセラミックスであり、脆性破壊しやすく、歪みが大きくなると亀裂が入り破壊に至る。例えば金属であれば、弾性限界となる歪みがセラミックスよりも大きいため、機械的に壊れにくく、信頼性が向上する。被動部材は圧電素子の滑り歪み変形を受けて変位するため、てこの原理と同様に変位を拡大することができる。この場合、被動部材全体が弾性変形し易い上記材料により形成されていてもよい。その場合には、被動部材の構造を簡略化することができる。
本発明に係る圧電アクチュエータの他の特定の局面によれば、前記圧電体が、上面及び下面と、円筒状曲面からなる内周側面と、円筒状曲面からなる外周側面とを有するドーナツ型の形状を有する。この場合には、圧電体の上面または下面を突出するように圧電体が変形されるため、大きな変位量を得ることができる。
ドーナツ型の圧電体を用いた場合、本発明の他の特定の局面では、前記分極方向が前記円筒曲面の径方向であり、前記第1,第2の励振電極が前記圧電体の上面及び下面にそれぞれ形成されている。この場合には、圧電体を得た後に、第1,第2の励振電極を圧電体の上面及び下面に容易に形成することができる。
本発明に係る圧電アクチュエータのさらに他の特定の局面では、前記分極方向が前記ドーナツ型の圧電体の上面と下面とを結ぶ方向であって、前記第1,第2の励振電極は前記圧電体の内周側面及び外周側面にそれぞれ形成されている。このように、分極方向は、圧電体の上面と下面とを結ぶ方向であってもよい。その場合には、分極が容易となる。
本発明に係る圧電アクチュエータのさらに別の特定の局面によれば、前記被動部材が、弾性変形し得る板状部材からなり、前記ドーナツ型の圧電体の上面または下面の全領域を覆うように固定されている。被動部材が板状部材からなるため、ドーナツ型の圧電体の上面または下面に容易に固定することができるとともに、ドーナツ型の圧電体の変形を受けて、板状部材からなる被動部材が容易に変位するため、大きな変位量を得ることができる。
本発明に係る圧電アクチュエータのさらに別の特定の局面では、前記被動部材が、前記圧電素子に片持ち梁態様で支持されている。片持ち梁態様で支持されているため、被動部材においてより大きな変位量を取り出すことができる。
本発明に係る圧電アクチュエータのさらに他の特定の局面では、前記被動部材が両持ちで前記圧電体に支持されている。この場合には、被動部材を圧電体により安定に支持することができる。
本発明に係る圧電アクチュエータにおいて、上記被動部材は様々な材料により形成されるが、好ましくは、金属板からなる。金属板の場合、容易に弾性変形するため、大きな変位量を取り出すことができる。
本発明に係る圧電アクチュエータによれば、第1,第2の励振電極から印加される電界の方向が分極方向と直交する方向であるため、圧電滑り歪み効果を利用して圧電素子を変形させることができる。圧電素子の変形を利用して被動部材を変位させるものであり、圧電素子の変形は相対的に小さくともよいため、圧電素子におけるクラックや破壊が生じ難い。特に従来のバイモルフの場合、圧電体自体の変形以上に変形するため、圧電素子に大きな応力がかかり、破壊しやすくなっている。これに対して本発明では、電圧印加による圧電素子の変形以上の変形はほとんどないため、圧電素子に応力がかからない。従って強度の信頼性は高い。従って、圧電アクチュエータの信頼性を高めることができる。
(a)は本発明の第1の実施形態に係る圧電アクチュエータの分解斜視図であり、(b)は該圧電アクチュエータの正面断面図である。 (a)は、第1の実施形態の圧電アクチュエータの同時の変位分布を模式的に示す断面図であり、(b)は(a)中の線Xで示した部分の拡大図であり、(c)は(a)及び(b)に示したハッチングに現わされるスケールを示す模式図である。 (a)は、比較のために用意した圧電アクチュエータの変位状態と応力分布を示す模式的正面断面図であり、(b)は、(a)中の線Yで示した部分を拡大して示す模式図である。 (a)は、圧電体の縦効果及び横効果を説明するための模式的正面図であり、(b)は、圧電滑り歪み効果を説明するための模式的正面図である。 (a)及び(b)は、圧電滑り歪み効果を利用した圧電素子の分極方向と電界印加方向との関係を示す各模式的斜視図である。 (a)は、本発明の第2の実施形態に係る圧電アクチュエータの模式的斜視図であり、(b)は該圧電アクチュエータの正面断面図であり、(c)は該圧電アクチュエータの変位状態を説明するための模式的斜視図である。 本発明の第3の実施形態に係る圧電アクチュエータを示す斜視図である。 本発明の第4の実施形態に係る圧電アクチュエータを示す斜視図である。 (a)及び(b)は、それぞれ、従来の圧電アクチュエータを説明するための模式的平面図及び模式的正面断面図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る圧電アクチュエータの分解斜視図及び正面断面図である。
圧電アクチュエータ1は、ドーナツ型の形状を有する圧電素子2と、圧電素子2に接着剤層3を介して接合された円板状の被動部材4とを有する。
圧電素子2は、圧電体5を有する。圧電体5は、ドーナツ状の形状を有する。圧電体5は、円筒状曲面からなる内周側面5aと、円筒状曲面からなる外周側面5bと、平面状の上面5cと、平面状の下面5dとを有する。
上記圧電体5は、適宜のペロブスカイト型圧電セラミックスにより形成することができる。このような材料としては、PbNiNb−PbZrTi系セラミックス、PbZrNb−PbZrTi系セラミックスあるいはこれらの固溶系のセラミックスなどを例示することができる。
圧電体5は、図示の矢印Pで示す方向に分極処理されている。すなわち、第1の方向として上記ドーナツ型の形状における径方向に圧電体5が分極処理されている。このような分極処理は、圧電体5の内周側面5aと外周側面5bとに、それぞれ分極用の電極を形成し、両者の間に直流電圧を印加することにより容易に行われ得る。分極後に分極用電極を削除すればよい。
他方、圧電体5の上面5c上には、第1の励振電極6が形成されており、下面5d上には、第2の励振電極7が形成されている。第1,第2の励振電極6,7は、圧電体5と同じ平面形状を有する。すなわち、励振電極6,7もまた、円環状の形状を有する。駆動に際しては、第1,第2の励振電極6,7間に励振電圧が印加される。従って、励振電圧印加方向は、分極方向Pと直交する方向となる。
上記励振電極6,7は、Ag、Al、Cu、Ag−Pd合金などの適宜の金属もしくは合金からなる。
接着剤層3は、被動部材4を圧電体5の上面に接合し得る限り、適宜の接着剤により形成され得る。このような接着剤として、本実施形態では、エポキシ系接着剤が用いられているが、特に限定されるものではない。例えば、フェノール樹脂系接着剤のような他の熱硬化性樹脂を主体とする接着剤を用いてもよい。
上記接着剤層3は、エポキシ樹脂系接着剤を上記第1の励振電極6上の全面に塗布し、被動部材4を貼り合わせた後、加熱することにより形成されている。従って、接着剤層3は、第1の励振電極6と同じ平面形状を有する。
被動部材4は、本実施形態では、円板状の金属板からなる。金属板を構成する金属は特に限定されず、リン青銅、ステンレスなどを挙げることができる。金属板からなる被動部材4は、外力が加わると容易に弾性変形する。金属板からなる被動部材4は、圧電セラミックスからなる圧電体5に比べ脆性破壊しにくく、弾性限界となる歪みが圧電セラミックスよりも大きい材料である。
次に、圧電アクチュエータ1を駆動した場合に、大きな変位を得ることができ、かつ圧電体5におけるクラックや破壊が生じ難いことを説明する。
圧電アクチュエータ1の駆動に際しては、第1,第2の励振電極6,7間に直流電圧を印加する。その結果、圧電滑り歪み効果により、圧電体5が傾くように変形する。この圧電体の変形を受けて、圧電体5に貼り合わされている被動部材4の変位を拡大することとなる。
すなわち、圧電体5が円環状の形状を有するため、内周側面5aで囲まれた空間においては、金属板からなる被動部材4は拘束されていない。従って、図2(a)に示すように、圧電体5が変形すると、圧電体5に貼り合わされている金属板からなる被動部材4が下方に突出するように大きく変位する。特に、上記圧電体5の内周側面5aで囲まれた空間では、被動部材4が圧電体5により拘束されていないので、被動部材4の中心部分が最も大きく変位し、下方に突出することとなる。
図2(a)及び図2(a)中の線Xで示す部分を拡大して示す図2(b)の変位及び応力分布は以下のような圧電アクチュエータ1をモデルとした有限要素法による解析を行った結果である。
圧電体5:内径20mm、外形30mm、内周側面5aと外周側面5bとの間の寸法=5mm、厚み1mm。材料は、チタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックス
被動部材4:リン青銅板、直径30mm、厚み0.5mm
このような圧電アクチュエータは以下のような方法で作製可能である。上記圧電体5の上面及び下面に導電ペーストを塗布し、分極用電極を形成する。次に、分極処理した後に、分極用電極を除去し、圧電体5の上面及び下面にスパッタにより、第1,第2の励振電極を形成した。上記被動部材4をエポキシ系接着剤を用いて圧電体5に貼り合わせ、圧電アクチュエータ1を得ることができる。
上記実施形態の圧電アクチュエータ1に、境界条件として、第1の励振電極の電圧が+20V、第2の励振電極の電圧が−20Vとなるように厚み方向に電界を印加し、その応力分布を求めた。図2(a)及び(b)においてハッチングを示す各領域は、図2(c)に示すスケールの応力量であることを示す。なお、図2(c)における4.000000e+004は、応力が+4.0×10であることを示す。従って、図2(c)におけるスケールにおいて4種類のハッチングで示した領域の内、クロスのハッチングで示した領域12aが最も引っ張り応力が大きく、斜線で示したハッチング領域12b、小さな多数のドットで示したハッチング領域12cは応力が小さい。及び大きな多数のドットで示したハッチング領域12dにいくにつれて、圧縮応力が大きいことを示す。
図2(a)及び(b)から明らかなように、金属板からなる被動部材4は、中央部分において、圧電体5から最も距離が離れているため、てこの原理で、中央部分が最も大きく変位し、下方に突出している。他方、圧電体5においては、本来の圧電歪みによる変形しかしていないため、さほど大きな応力は生じていない。すなわち、圧電体5において圧電滑り歪み効果により生じた変位が、上記被動部材4に伝えられ、被動部材4において、中央が最も大きく変位し、変位量が拡大していることがわかる。
よって、本実施形態によれば、圧電滑り歪み効果を利用して、大きな変位を得ることができる。しかも、圧電体5は、さほど大きく変位しないため、圧電体5には、圧電体5を破壊に至らせる引っ張り応力が加わり難い。よって、圧電体5のクラックが生じ難い。従って、短絡等も生じ難いため、信頼性を効果的に高めることができる。
図3(a)及び(b)は、比較のために用意した圧電アクチュエータの変位及び応力分布を示す模式的正面断面図及びその中央部の線Yで囲まれた部分における変位及び応力分布を示す模式図である。
この比較例では、直径30mm×厚み0.5mm圧電体を2層貼り合わせたバイモルフ構造の圧電アクチュエータをモデルとした有限要素法の解析結果である。使用した圧電材料は、上記実施形態の圧電材料と同じである。境界条件として、2枚の圧電素子を貼り合わせた中央の電極に+1.3Vの電圧を印加し、両面の励振電極に−1.3Vの電圧を印加した。比較例の変位量が図2(a)の変位量と同じになるように境界条件の電圧を設定した。なお、分極方向は、厚み方向であり、2層の圧電体は、厚み方向において互いに逆方向に分極処理した。
上記比較例では、分極方向と同じ方向に電圧が印加され、圧電横効果を利用したバイモルフ型圧電アクチュエータが形成されている。なお、図3におけるハッチングを示した領域の意味は、図2(c)と同じである。図3(a)及び(b)から明らかなように、比較例の圧電アクチュエータ111では、中央部分が最も大きく変位するが、この最も大きく変位する部分において、圧電体自体が大きく変形する。すなわち、下方に突出するように変位した状態では、下面側の圧電体の下面側が大きく変形していることがわかる。従って、圧電アクチュエータ111では、圧電体自体に大きな引っ張り応力が加わり、クラックが生じ易いことがわかる。
図4(a)は上記比較例として用意した圧電アクチュエータにおける圧電横効果を模式的に示す図であり、圧電横効果では、圧電体121が実線で示す状態と破線で示す状態との間で変形することとなる。
これに対して、図4(b)は、上記実施形態で利用した圧電滑り歪み効果を示す模式図である。圧電滑り歪み効果では、図4(b)の圧電素子31のように、実線で示す状態から、破線で示す平行四辺形の形状に変形する。すなわち、斜め方向に変形することとなる。従って、圧電素子31の一端31a側を拘束した場合、他端31b側の延長線上の点では、圧電変形を拡大して変位させることができる。
図5(a)〜(b)は、このような圧電滑り歪み効果を利用した圧電素子の変形量を説明するための各模式的斜視図である。
図5(a)に示す圧電素子32では、上記圧電体5の場合と同様に、分極方向Pが水平方向であり、電界印加方向Eが該水平方向と直交する方向Eとされている。
他方、図5(b)に示す圧電素子33では、分極方向Pが圧電素子33の上面と下面とを結ぶ方向であり、電界印加方向Eが水平方向とされている。このように、圧電滑り歪み効果を利用するに際し、分極方向と電界印加方向が直交する限り、分極方向は水平方向に限らず、様々な方向とすることができる。
なお、図5(a)及び(b)における太線Z1,Z2は、それぞれ、圧電滑り歪み効果で変形した場合の変形状態を模式的に示す図であり、図4(b)に示した破線に相当する図である。
図5(b)の点線の矢印のように電界を印加した場合には、圧電素子33が点線のように変形する。上記のように圧電滑り歪み効果を利用した場合、圧電素子において、比較的大きな変形を得ることができ、しかも上記実施形態のように、本発明では、圧電滑り歪み効果による圧電素子の変形が被動部材に伝えられて、被動部材において変位が拡大するので、より一層大きな変位量を得ることができる。
図6(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態に係る圧電アクチュエータの斜視図、正面断面図及び変位状態を示す模式的斜視図である。
圧電アクチュエータ41は、第1の実施形態と同様に、ドーナツ型すなわち円環状の圧電素子42を有する。圧電素子42に、接着剤層43を介して金属板からなる円板状の被動部材44が貼り合わされている。
本実施形態の圧電アクチュエータ41が、第1の実施形態の圧電アクチュエータ1と異なるところは、圧電素子42の分極方向及び励振電極形成位置にある。すなわち、図6(b)に示すように、圧電体45は、圧電体5と同様に、環状の形状を有し、円筒状曲面からなる内周側面45a及び外周側面45bと上面45cと下面45dとを有する。ここでは、上面45cと下面45dとを結ぶ方向、すなわち厚み方向が分極方向Pとされている。すなわち、本発明の第1の方向は、圧電体45の厚み方向とされている。そして、内周側面45a及び外周側面45b上に、それぞれ、第1,第2の励振電極46,47が形成されている。従って、電界印加方向Eは水平方向であり、円環状圧電体45の径方向である。よって、電界印加方向Eが分極方向Pと直交する方向とされている。
本実施形態においても、第1,第2の励振電極46,47間に励振電圧を印加した場合、図6(c)に示すように、圧電滑り歪み効果により圧電素子42が変形し、一点鎖線で示すように被動部材44の中央が下方に突出するように大きく変位することとなる。
また、本実施形態においても、圧電滑り歪み効果を利用しており、変位量が被動部材44において拡大されるので、大きな変位量を取り出すことができる。さらに、圧電体45は、第1の実施形態の圧電体5と同様に変形するため、圧電体45において大きな引っ張り応力は加わり難い。従って、本実施形態においても、圧電体45においてクラックが生じ難く、また圧電素子42における短絡も生じ難い。
図7は、本発明の第3の実施形態に係る圧電アクチュエータを示す模式的斜視図である。本実施形態の圧電アクチュエータ51は、細長いストリップ状の圧電素子52を有する。圧電素子52には、接着剤層53を介して被動部材54が接合されている。
圧電素子52は、細長いストリップ状の圧電体55と、第1,第2の励振電極56,57とを有する。圧電体55は、細長い矩形形状の一対の側面55a,55bと、細長い矩形形状の上面55c及び下面55dとを有する。圧電体55は、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスのような圧電セラミックスからなり、矢印P方向に分極処理されている。すなわち、分極方向Pは、上面55cと下面55dとを結ぶ方向である。圧電体55に電圧を印加するために、第1,第2の側面55a,55b上に、それぞれ第1,第2の励振電極56,57が形成されている。よって、電界印加方向Eは、分極方向Pと直交する方向とされている。従って、第1,第2の励振電極56,57間に励振電圧を印加すると、図7の太線Z3で示すように、圧電素子52が圧電滑り歪み効果により変形する。
他方、接着剤層53は、第1の実施形態の接着剤層3と同様の材料からなる。
被動部材54は、本実施形態では、金属板からなり、圧電素子52の平面形状よりもかなり大きな矩形の金属板からなる。この相対的に大きな矩形の金属板からなる被動部材54の下面54aにおいて、一方端部54b側に寄せられて圧電素子52が被動部材54の下面に接合されている。従って、被動部材54の下面の他方側の端部54c側が自由端とされている。言い換えれば、被動部材54は、圧電素子52に片持ち梁態様で支持されている。従って、圧電素子52を駆動した場合、圧電素子52の変形を受けて一点鎖線で示すように被動部材54が大きく変位する。特に、圧電素子52に支持されている側とは反対側の端部54cが大きく変位し、被動部材54にて変位を拡大することが可能とされている。
第3の実施形態の圧電アクチュエータ51において、被動部材54が最も大きく変位する部分は、上記端部54c側である。
本実施形態においても、圧電体55自体はさほど大きく変形しないため、大きな引っ張り応力が圧電体55に加わり難い。従って、圧電体55における亀裂が生じ難く、圧電素子52の短絡も生じ難い。
図8は、本発明の第4の実施形態に係る圧電アクチュエータを示す模式的斜視図である。本実施形態の圧電アクチュエータ61では、図7に示した圧電アクチュエータ51の変形例に相当する。ここでは、被動部材54が、矩形の金属板からなるが、該被動部材54が、両持ちで一対の圧電素子52,52により支持されている。その他の点については、圧電アクチュエータ61は、圧電アクチュエータ51と同様とされている。被動部材54が、圧電素子52,52で両持ちで支持されているため、圧電素子52,52を駆動した場合、圧電体52の側面が固定されているため、一点鎖線で示すように被動部材54の中央部分が下方に突出するように変位することとなる。
本実施形態においても、圧電体55自体は、大きく変形しないため、圧電体55におけるクラックは生じ難く、圧電素子52の短絡も生じ難い。
なお、被動部材54において最も大きく変位する部分は、被動部材54の中央部分であり、該中央部分が弾性変形し、下方に突出する。この変位量は、圧電素子52における圧電体55の変形量より大きくされている。従って、本実施形態においても、被動部材54において、変位量を拡大することが可能とされている。もっとも、図7に示した片持ち張りで被動部材54が支持されている構造では、端部54cがより大きな変位量を得ることができるので、第3の実施形態の圧電アクチュエータ51が第4の実施形態の圧電アクチュエータ61よりも好ましい。もっとも、第4の実施形態では、被動部材54が両端において、圧電素子52,52で支持されているので、被動部材54を安定に支持することができる。
上述してきた第1〜第4の実施形態では、被動部材として、円板または矩形板状の金属板を用いたが、他の平面形状の被動部材を用いてもよい。また、板状でなく、棒状、あるいは無定形形状のような様々な形状の被動部材を用いてもよい。加えて、金属材料に限らず、圧電セラミックスよりも脆性破壊しにくい適宜の材料により、被動部材を形成することができる。このような材料としては、アクリル樹脂などの脆性破壊しにくい硬質の合成樹脂を挙げることができる。
1…圧電アクチュエータ
2…圧電素子
3…接着剤層
4…被動部材
5…圧電体
5a…内周側面
5b…外周側面
5c…上面
5d…下面
6,7…第1,第2の励振電極
31…圧電素子
32,33…圧電素子
41…圧電アクチュエータ
42…圧電素子
43…接着剤層
44…被動部材
45…圧電体
45a…内周側面
45b…外周側面
45c…上面
45d…下面
46,47…第2の励振電極
51…圧電アクチュエータ
52…圧電素子
52a,52b…側面
52c…上面
52d…下面
53…接着剤層
54…被動部材
55…圧電体
55a,55b…側面
55c…上面
55d…下面
56,57…第2の励振電極
61…圧電アクチュエータ

Claims (10)

  1. 第1の方向に分極処理された圧電体と、前記圧電体の第1の方向と直交する方向に電界を印加するために、前記圧電体の外表面に形成された第1,第2の励振電極とを有する圧電素子と、
    前記圧電素子に固定されており、該圧電素子の変形を受けて変位する被動部材とを備える、圧電アクチュエータ。
  2. 前記被動部材の内、変位が最も大きくなる部分が前記圧電体に比べて脆性破壊しにくい材料からなる、請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
  3. 前記被動部材の全体が、前記脆性破壊しにくい材料からなる、請求項2に記載の圧電アクチュエータ。
  4. 前記圧電体が、上面及び下面と、円筒状曲面からなる内周側面と、円筒状曲面からなる外周側面とを有するドーナツ型の形状を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
  5. 前記分極方向が前記円筒曲面の径方向であり、前記第1,第2の励振電極が前記圧電体の上面及び下面にそれぞれ形成されている、請求項4に記載の圧電アクチュエータ。
  6. 前記分極方向が前記ドーナツ型の圧電体の上面と下面とを結ぶ方向であって、前記第1,第2の励振電極が前記圧電体の内周側面及び外周側面にそれぞれ形成されている、請求項4に記載の圧電アクチュエータ。
  7. 前記被動部材が、弾性変形し得る板状部材からなり、前記ドーナツ型の圧電体の上面または下面の全領域を覆うように固定されている、請求項4〜6のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
  8. 前記被動部材が、前記圧電素子に片持ち梁態様で支持されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
  9. 前記被動部材が両持ちで前記圧電体に支持されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。
  10. 前記被動部材が金属板からなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の圧電アクチュエータ。

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